(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874865
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】送液装置
(51)【国際特許分類】
F04B 53/18 20060101AFI20210510BHJP
F04B 53/22 20060101ALI20210510BHJP
F04B 53/00 20060101ALI20210510BHJP
F04B 23/06 20060101ALI20210510BHJP
G01N 30/32 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
F04B53/18
F04B53/22
F04B53/00 H
F04B23/06
G01N30/32 C
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-568561(P2019-568561)
(86)(22)【出願日】2018年8月23日
(86)【国際出願番号】JP2018031064
(87)【国際公開番号】WO2019150626
(87)【国際公開日】20190808
【審査請求日】2020年6月4日
(31)【優先権主張番号】特願2018-15062(P2018-15062)
(32)【優先日】2018年1月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100221372
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 信治
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 真一
【審査官】
岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭60−073885(JP,U)
【文献】
特開2006−029117(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/122259(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 53/18
F04B 23/06
F04B 53/00
F04B 53/22
G01N 30/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1のプランジャポンプ、及び、第2のプランジャポンプを含む複数のプランジャポンプと、
前記第1のプランジャポンプ、及び、前記第2のプランジャポンプを収容し、外装面の1つが開放可能面となっている筐体とを備え、
前記第1のプランジャポンプ、及び、前記第2のプランジャポンプの各々は、
ポンプヘッドと、
プランジャと、
前記ポンプヘッド内に設けられたポンプ室内で前記プランジャをその軸方向に往復動させる機構部分を含む駆動部と、
前記駆動部の前記機構部分へ注油するための注油部と、を有し、
前記開放可能面に対して垂直な第1方向において、前記第1のプランジャポンプは、前記第2のプランジャポンプよりも前記開放可能面に近い側に配され、
前記開放可能面に対して平行な第2方向において、前記第1のプランジャポンプは、前記第2のプランジャポンプの前記注油部が前記第1方向から見える程度に前記第2のプランジャポンプの前記第2方向における配置位置からずれて配され、
前記筐体の前記開放可能面が開放されたときに前記第1のプランジャポンプ、及び、前記第2のプランジャポンプの各注油部が前記第1方向から見えるように構成されている、液体クロマトグラフ送液装置。
【請求項2】
第1のプランジャポンプ、第2のプランジャポンプ、第3のプランジャポンプ及び第4のプランジャポンプと、
前記第1のプランジャポンプ、前記第2のプランジャポンプ、前記第3のプランジャポンプ及び前記第4のプランジャポンプを収容し、外装面の1つが開放可能面となっている筐体とを備え、
前記第1のプランジャポンプ、前記第2のプランジャポンプ、前記第3のプランジャポンプ及び前記第4のプランジャポンプの各々は、
ポンプヘッドと、
プランジャと、
前記ポンプヘッド内に設けられたポンプ室内で前記プランジャをその軸方向に往復動させる機構部分を含む駆動部と、
前記駆動部の前記機構部分へ注油するための注油部と、を有し、
前記開放可能面に対して垂直な第1方向において、前記第1のプランジャポンプ、及び、前記第3のプランジャポンプは、前記第2のプランジャポンプ、及び、前記第4のプランジャポンプよりも前記開放可能面に近い側に配され、
前記開放可能面に対して平行な第2方向において、前記第1のプランジャポンプ、前記第2のプランジャポンプ、前記第3のプランジャポンプ及び前記第4のプランジャポンプの各々は、他のプランジャポンプの前記注油部が前記第1方向から見える程度に相互にずれて配され、
前記筐体の前記開放可能面が開放されたときに前記第1のプランジャポンプ、前記第2のプランジャポンプ、前記第3のプランジャポンプ及び前記第4のプランジャポンプの各注油部が前記第1方向から見えるように構成されている、液体クロマトグラフ送液装置。
【請求項3】
前記注油部は、前記各プランジャポンプの前記機構部分をそれぞれ覆うカバーの前記開放可能面側の面に設けられた開口である、請求項1または2に記載の液体クロマトグラフ送液装置。
【請求項4】
前記開放可能面は前記プランジャの軸方向に対して略平行な面である、請求項1から3のいずれかに記載の液体クロマトグラフ送液装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速液体クロマトグラフ(HPLC)や超臨界流体クロマトグラフ(SFC)などの分析装置において移動相の送液に用いられる送液装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
HPLCやSFCにおいて移動相の送液に用いられる送液装置としては、プランジャをその軸方向に往復動させることによって液の吸入と吐出を行なうプランジャポンプが搭載されたものが一般的である。通常、送液装置には少なくとも2台のプランジャポンプが搭載されており、2台のプランジャポンプを直列又は並列に接続して1つの溶媒を連続的に送液する1組の送液ポンプが構成される。送液装置には、2台のプランジャポンプからなる送液ポンプが2組搭載されたバイナリポンプと呼ばれるものもあり、2種類の溶媒の流量比率を変化させながら送液するグラジエント送液を1つの送液装置で実現することもできる。
【0003】
送液装置に搭載されている各プランジャポンプのプランジャの駆動部として、偏心カムを利用したもの(特許文献1参照。)やボールネジを利用したもの(特許文献2参照。)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−089383号公報
【特許文献2】特開2011−012591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような送液装置は、移動相の送液の安定性を維持するために、プランジャポンプの駆動部の機構部分(例えば、ボールネジ)への定期的な注油を行なうことが好ましい。定期的に注油を行なうことで、プランジャの駆動部の潤滑性が持続され、駆動部を構成する部品の長寿命化を図ることができる。
【0006】
しかし、プランジャポンプの駆動部の機構部分に注油を行なう際、駆動部を送液装置の筐体から取り外すなどして機構部分にアクセスできる状態にする必要があり、注油作業が煩雑である。特に、バイナリポンプの場合には4台のプランジャポンプが搭載されているため、注油作業がより煩雑になる。
【0007】
そこで、本発明は、送液装置に搭載された複数のプランジャポンプの各駆動部への注油作業を容易に行なうことができるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る送液装置は、ポンプヘッド及び前記ポンプヘッド内に設けられたポンプ室内でプランジャをその軸方向に往復動させるための駆動部を有する複数のプランジャポンプを備えた送液装置である。前記複数のプランジャポンプを収容する筐体の外装面の1つが開放可能面となっている。そして、前記複数のプランジャポンプのそれぞれが前記駆動部の機構部分へ注油するための注油部をもち、前記筐体の前記開放可能面が開放されたときにすべての前記プランジャポンプの前記注油部が露出するように構成されている。
【0009】
すなわち、本発明の送液装置は、複数のプランジャポンプを収容する筐体の外装面の1つを開放可能な面とし、当該面を開放したときに筐体内のすべてのプランジャポンプの各注油部がその開放面側へ露出した状態、すなわち各注油部へアクセス可能な状態となるように構成されている。筐体の開放可能面を開放するだけで、すべてのプランジャポンプの各注油部へのアクセスが可能となるため、各プランジャポンプの駆動部を筐体から引き出すなどの作業を行なう必要がなく、機構部分への注油作業の煩雑性が軽減される。
【0010】
前記注油部は、例えば、前記各プランジャポンプの前記機構部分をそれぞれ覆うカバーの前記開放可能面側の面に設けられた開口によって実現されるものである。
【0011】
前記開放可能面としては、筐体の外装面のうち前記プランジャの軸方向に対して略平行な面を利用することができる。
【0012】
本発明においては、前記複数のプランジャポンプをすべての前記開放可能面と平行な同一平面内に配置してもよい。そのように配置すれば、前記開放可能面が開放されたときにすべての前記プランジャポンプの注油部が露出することになる。しかし、すべてのプランジャポンプを同一平面内に配置すると、プランジャポンプの台数分だけ前記開放可能面を広くとる必要があり、送液装置全体の大きさも大きくなる。そこで、前記プランジャポンプの少なくとも2つは、前記開放可能面に対して平行な方向と垂直な方向のそれぞれへ互いにずれた位置に配置されていることが好ましい。そうすれば、すべてのプランジャポンプを同一平面内に配置する場合に比べて前記開放可能面を小さくすることができ、送液装置の小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る送液装置では、筐体の開放可能面を開放するだけで、すべてのプランジャポンプの各注油部へのアクセスが可能となるため、各プランジャポンプの機構部分への注油作業が容易である。また、プランジャポンプの機構部分への注油の際にプランジャポンプを筐体から引き出す必要がないので、プランジャポンプを筐体に対して出し入れするための機構が不要になるとともに、モータ等に接続されるケーブルの長さを短くすることができ、装置構成の簡略化及び製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】送液装置の一実施例を正面側から見た斜視図である。
【
図2】同実施例の筐体内に収容されているプランジャポンプを示すために筐体を透明視した斜視図である。
【
図3】同実施例の各プランジャポンプの駆動部の位置関係を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る送液装置の一実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1に示されているように、この実施例の送液装置1は、筐体2とその筐体2内に収容された4つのプランジャポンプ4a−4dを備えたバイナリポンプである。各プランジャポンプ4a−4dは、それぞれのポンプヘッド6a−6dが筐体2の正面パネル2a側を向くように水平に配置されている。筐体2の正面パネル2aにはポンプヘッド6a−6dの先端部が露出している。
【0017】
図示は省略されているが、各ポンプヘッド6a−6dには各ポンプヘッド6a−6d内に設けられたポンプ室に対して液を流出入させる配管が接続されている。このほか、送液装置1には逆止弁等が搭載されていてもよい。
【0018】
筐体2の上面パネル2bは取外し可能に構成されており、上面パネル2bを取り外すことによって各プランジャポンプ4a−4dのメンテナンスを行なうことができる。すなわち、筐体2の上面パネル2bは、開放可能に構成された開放可能面である。
【0019】
図2に示されているように、プランジャポンプ4aはポンプヘッド6a、モータ8a及び駆動機構10aによって構成され、プランジャポンプ4bはポンプヘッド6b、モータ8b及び駆動機構10bによって構成され、プランジャポンプ4cはポンプヘッド6c、モータ8c及び駆動機構10cによって構成され、プランジャポンプ4dはポンプヘッド6d、モータ8d及び駆動機構10dによって構成されている。
【0020】
各プランジャポンプ4a−4dのモータ8a−8d及び駆動機構10a−10dは、各ポンプヘッド6a−6dの内部に設けられたポンプ室内でプランジャを軸方向へ往復動させるための駆動部を構成する。駆動機構10a−10dは、モータ8a−8dによって回転させられるボールネジと、そのボールネジと羅合しボールネジの回転に伴ってボールネジの軸方向へ移動する移動部とを有する機構部分を備えており、その機構部分がカバーで覆われている。プランジャは移動部によって保持されており、モータによってボールネジを回転させてプランジャを駆動する。
【0021】
駆動機構10a−10dのそれぞれのカバーの上面(すなわち、筐体2の開放可能面(上面パネル2b)側の面)に、各機構部分へ注油するための開口12a−12dが注油部として設けられている。プランジャポンプ4a−4dは、筐体2の開放可能面が開放されたとき、すなわち上面パネル2bが取り外されたときに、すべての駆動機構10a−10dの開口12a−12dが上方に露出してアクセスが可能となるように配置されている。
【0022】
この実施例では、4つのプランジャポンプ4a−4dを上下2段に配置している。プランジャポンプ4aと4c、プランジャポンプ4bと4dはそれぞれ同じ高さに配置されている。さらに、プランジャポンプ4aの下方にプランジャポンプ4bが配置され、プランジャポンプ4cの下方にプランジャポンプ4dが配置されている。
【0023】
プランジャポンプ4bの直上の位置にプランジャポンプ4aがあると、プランジャポンプ4bの駆動機構10bの開口12bがプランジャポンプ4aによって上面パネル2b側から見えなくなるため、開口12bが上面パネル2b側から見える程度に、プランジャポンプ4aと4bが水平方向へ互いにずれている。同様に、プランジャポンプ4dの直上の位置にプランジャポンプ4bがあると、プランジャポンプ4dの駆動機構10dの開口12dがプランジャポンプ4cによって上面パネル2b側から見えなくなるため、開口12dが上面パネル2b側から見える程度に、プランジャポンプ4cと4dが水平方向へ互いにずれている。
【0024】
上記配置により、
図3に示されているように、上面パネル2bが取り外されたときに、すべての駆動機構10a−10dの開口12a−12dが上方へ露出し、開口12a−12dを介して上方から注油を行なうことができる。
【0025】
なお、プランジャポンプ4a−4dの配置は上記のものに限らず、上面パネル2bが取り外されたときにすべての駆動機構10a−10dの開口12a−12dが上方へ露出するような配置であればいかなるものであってもよい。したがって、すべてのプランジャポンプ4a−4dを同一水平面上に配置してもよい。
【0026】
ただし、すべてのプランジャポンプ4a−4dを同一水平面上に配置すると、送液装置全体の水平方向の幅寸法が大きくなり、設置面積が増大する。上記実施例のように、プランジャポンプ4a−4dを複数段にわたって配置し、互いに上下に配置されたプランジャポンプ4a−4b、4c−4dの水平方向の位置を、注油部をなす開口が上方へ露出する程度にずらすことで、すべてのプランジャポンプ4a−4dを同一水平面上に配置する場合に比べて、送液装置全体の水平方向の幅寸法を小さくすることができ、設置面積の縮小化を図ることができる。
【0027】
以上において説明した実施例では、4台のプランジャポンプ4a−4dを搭載したバイナリポンプの例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、2台のプランジャポンプを搭載したダブルプランジャ方式の送液装置に対しても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 送液装置
2 筐体
2a 正面パネル
2b 上面パネル(開放可能面)
4a−4d プランジャポンプ
6a−6d ポンプヘッド
8a−8d モータ
10a−10d 駆動機構
12a−12d 開口(注油部)