(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6874880
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】ドア装置を具えるエレベーター
(51)【国際特許分類】
B66B 13/30 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
B66B13/30 R
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-50611(P2020-50611)
(22)【出願日】2020年3月23日
【審査請求日】2020年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野坂 茂行
【審査官】
八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2019−18998(JP,A)
【文献】
特開2016−188111(JP,A)
【文献】
特開平8−127485(JP,A)
【文献】
特開平10−81476(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第108193982(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごに吊下げ支持されてスライド開閉可能なカードア本体と、前記カードア本体の下端に設けられるドアシューとを具えるカードアと、
前記ドアシューがスライド可能に嵌まる敷居溝を有するカーシルと、
利用者が乗車するプラットフォームに取り付けられ、前記カーシルが設けられるシルブラケットと、
を有するドア装置を具えるエレベーターであって、
前記カーシルと前記シルブラケットは、昇降手段によって連繋され、前記昇降手段は、前記カーシルを上方向に移動させて前記カードアと前記カーシルを気密に当接させる、
ドア装置を具えるエレベーター。
【請求項2】
前記昇降手段は、前記カードアの下端と前記カーシルを気密に当接させる、
請求項1に記載のドア装置を具えるエレベーター。
【請求項3】
前記昇降手段は、前記ドアシューと前記敷居溝を気密に当接させる、
請求項1に記載のドア装置を具えるエレベーター。
【請求項4】
前記昇降手段は、前記かごが昇降する間、前記カーシルを上方向に移動させる、
請求項1乃至請求項3の何れかに記載のドア装置を具えるエレベーター。
【請求項5】
前記カーシルと前記シルブラケット又は前記プラットフォームは、摺動部材を介して気密に接触している、
請求項1乃至請求項4の何れかに記載のドア装置を具えるエレベーター。
【請求項6】
前記カーシルは、上方向に移動したときに前記シルブラケット又は前記プラットフォームに対して気密に接触する、
請求項1乃至請求項4の何れかに記載のドア装置を具えるエレベーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かご内の気密性を高めることのできるドア装置を具えるエレベーターに関するものであり、より具体的には、カーシルとカードアとの気密性を高めたエレベーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建物の高層化に伴い、分速数百メートルの速さでかごを昇降させる高速エレベーターが種々提案されている。この種のエレベーターでは、昇降時の急激な気圧変化により乗客に違和感を与えることがないように、かご内を吸排気するブロワーの如き気圧調整装置を用いてかご内の気圧調整を行なっている。
【0003】
かご内の気圧を最適な状態に制御するためには、かごの気密性を高める必要がある。そこで、利用者が乗降するカードアにも気密性が求められる。たとえば、特許文献1では、カードアの下端に、カーシルに形成された敷居溝に摺動可能な摺動部材を配置し、カードアの開閉時に敷居と摺動部材とを摺接させることで気密性を確保したドア装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−323222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記摺接部材は、カードアのスライド開閉時にも敷居溝に対して摺接しているから、摩耗が進行して気密性が低下してしまうことがある。また、摺接部材がカードアのスライド開閉時にも敷居溝に対して摺接することで、ドア駆動装置に過大なトルクが必要になる。
【0006】
本発明の目的は、かごの昇降時にカーシルとカードアとの気密性を確保し、ドア開閉時にはカーシルとカードアとの間に隙間を確保できるドア装置を具えたエレベーターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のドア装置を具えたエレベーターは、
かごに吊下げ支持されてスライド開閉可能なカードア本体と、前記カードア本体の下端に設けられるドアシューとを具えるカードアと、
前記ドアシューがスライド可能に嵌まる敷居溝を有するカーシルと、
利用者が乗車するプラットフォームに取り付けられ、前記カーシルが設けられるシルブラケットと、
を有するドア装置を具えるエレベーターであって、
前記カーシルと前記シルブラケットは、昇降手段によって連繋され、前記昇降手段は、前記カーシルを上方向に移動させて前記カードアと前記カーシルを気密に当接させる。
【0008】
前記昇降手段は、前記カードアの下端と前記カーシルを気密に当接させることが望ましい。
【0009】
前記昇降手段は、前記ドアシューと前記敷居溝を気密に当接させることができる。
【0010】
前記昇降手段は、前記かごが昇降する間、前記カーシルを上方向に移動させる構成とすることができる。
【0011】
前記カーシルと前記シルブラケットは、摺動部材を介して気密に接触する構成とすることができる。
【0012】
前記カーシルは、上方向に移動したときに前記シルブラケットに対して気密に接触する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のドア装置を具えたエレベーターは、カーシルを昇降手段により上下動可能に配置したことで、かご走行時にはカーシルを上方向に移動させてカードアとカーシルを当接させ、気密性を確保できる。一方、ドア開閉時にはカーシルを下方向に移動させることでカードアをカーシルから離間させることで、カードアのスライド開閉をスムーズに行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明のドア装置を具えるかごのカードアとカーシルの要部構造を示す正面図である。
【
図3】
図3は、
図2の枠囲み部Aの拡大図であって、カーシルを下方向に移動させた状態を示す第1実施形態の断面図である。
【
図4】
図4は、
図2の枠囲み部Aの拡大図であって、カーシルを上方向に移動させた状態を示す第1実施形態の断面図である。
【
図5】
図5は、
図2の枠囲み部Aの拡大図であって、カーシルを下方向に移動させた状態を示す第2実施形態の断面図である。
【
図6】
図6は、
図2の枠囲み部Aの拡大図であって、カーシルを上方向に移動させた状態を示す第2実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
図1は、エレベーターのかごのカードア11の下縁側とカーシル20の近傍を塔内側から見た図であって、カードア11、カーシル20及びシルブラケット30とを含むドア装置10の正面図である。また、
図2は、
図1の右側面図である。かごは、図示の実施形態では、カードア11は4枚であり、かごには、カードア11がスライド移動して利用者がかごに乗降するための通路になる入口幅Eの開口が形成されている。かご内は入口幅Eよりも幅広の空間である。
【0017】
カードア11は、利用者がかごに乗降する際に開閉する板状のカードア本体12と
図2に示すようにカードア本体12の下端から突出したドアシュー13を有する。カードア本体12はかごの鴨居に吊り下げ支持され、図示しないドア駆動装置により開閉可能となっている。建物の各階床には乗場側のドアが配置されており、カードア11と連動して乗場側ドアも開閉する。
【0018】
シルブラケット30は、かごの枠体に連続して形成され、次に説明するカーシル20を支持する。シルブラケット30は、図示の実施形態では上縁がかご外側に向けて屈曲した鋼板から構成している。
【0019】
カーシル20は、かごの枠体に固定されたシルブラケット30に配備される。カーシル20は、
図2に示すようにカードア11の開閉方向に沿って敷居溝21が凹設されており、敷居溝21は、ドアシュー13をガイドして、カードア11が開閉の際にカードア本体12の前後動を阻止する。図示では敷居溝21を2列形成している。
【0020】
本発明では、カーシル20は、シルブラケット30に昇降手段40を介して支持されており、カードア11を開閉する際にはカーシル20に対してカードア本体12及びドアシュー13が浮いた状態となるように隙間Gを存して離間し、かごが昇降する際にはカーシル20はカードア本体12及び/又はドアシュー13に密着してカードア11とカーシル20との間の隙間Gをなくして気密性を確保できるようにしている。
【0021】
たとえば、昇降手段40は、ボールネジ41やシリンダーなどのアクチュエーターを含む構成とすることができる。図示の実施形態では、昇降手段40はボールネジ41であり、モーター42により回転するネジ軸43に、ボールを内装したナット44を装着して構成される。モーター42はネジ軸43が垂直に向くようシルブラケット30に取り付けられ、ナット44はブラケット45を介してカーシル20に連繋されている。然して、モーター42を駆動することでネジ軸43が回転し、ネジ推力によりナット44が上下動する。これにより、ナット44に連繋されたカーシル20も上下に移動する。
【0022】
なお、昇降手段40は、カゴ走行を阻害しないように、
図2に示す如く、カーシル20の端縁(カーシルラインL)の内側に設置する。
【0023】
上記構成のドア装置10において、カーシル20は、カードア11の開閉を許容する通常位置(
図2、
図3参照)と、通常位置からカーシル20が上方に移動してカードア11に気密に密着する密着位置(
図4参照)との間を往復移動する。
【0024】
図2及び
図3は、通常位置を示しており、カードア本体12及びドアシュー13はカーシル20との間に隙間G(
図3参照)が形成されている。隙間Gは、高さ3mm〜7mm程度、望ましくは5mm程度とする。これにより、カードア本体12は、カーシル20に対してスムーズにスライド移動できる。また、カーシル20はかごの床面であるプラットフォーム50と段差なく面一となるように位置調整されており、利用者の躓きを防止できる。
【0025】
これに対して、
図4は密着位置を示している。密着位置へのカーシル20の移動は、昇降手段40のモーター42を所定方向に回転させ、
図4中矢印で示すようにネジ推力によりナット44を上方に移動させることで行なわれる。カーシル20は、図中矢印で示すように上方に移動しており、図示の実施形態では、カーシル20の上面がカードア本体12の下端と隙間なく密着Cしており、気密性が確保できていることがわかる。もちろん、ドアシュー13を敷居溝21と密着させる構成であってもよく、この場合、ドアシュー13は、カードア本体12の下端全長に亘って形成する。
【0026】
なお、カーシル20をカードア11と密着させるタイミングは、たとえば、戸閉完了後、エレベーターの起動(かごの昇降)の間とすることができる。たとえば、密着位置へのカーシル20の移動は、戸閉検知センサーが戸閉を検知したタイミングで行なうことができる。これにより、かごの昇降中は、カーシル20とカードア11とを密着させてかご内の気密性を高めることができる。
【0027】
密着位置から通常位置へカーシル20を移動させるタイミングは、かごが着床した後、戸開までの間とすることができる。たとえば、通常位置へのカーシル20の移動は、かごの着床をセンサーが検知したタイミングで行なえばよい。具体的には、モーター42を逆回転させ、
図3中矢印で示すように、ナット44を下方向に移動させる。これにより、カーシル20は図中矢印で示すように下降する。カーシル20とカードア11との間に隙間Gが形成されることで、カードア11はカーシル20に対してスムーズにスライドさせることができる。また、カーシル20が下降してプラットフォーム50と面一になることで、利用者の乗降の妨げにはならない。
【0028】
上記の構成とすることで、かごの昇降中はカードア11とカーシル20との間を隙間なく密着Cした状態で、気密に塞ぐことができる。一方で、カーシル20はシルブラケット30及びプラットフォーム50に対して上下動可能に配置される結果、カーシル20とシルブラケット30又はプラットフォーム50との間に隙間が生じて、気密性が低下する虞がある。従って、カーシル20とシルブラケット30又はプラットフォーム50との間も気密性を確保する必要がある。
【0029】
そこで、
図3及び
図4に示すように、カーシル20とシルブラケット30又はプラットフォーム50との摺動面に樹脂材や摺動テープなどの摩擦係数の小さい摺動部材52を設置している。これにより、カーシル20とシルブラケット30又はプラットフォーム50との密着性C1を確保して気密性向上を図りつつ、カーシル20の円滑な移動を実現できる。図示の実施形態ではプラットフォーム50の上縁前端に凹み51を設け、当該凹み51に摺動部材52を設置している。摺動部材52は、少なくとも
図1に示す入口幅Eの全長に亘る長さ分設置すればよい。もちろん、摺動部材52は一部又は全部がシルブラケット30に設置されていてもよい。
【0030】
また、
図5及び
図6に示すように、カーシル20は、上昇したときにシルブラケット30又はプラットフォーム50にゴムなどの気密部材54を介して押し付けられる構成とすることで、カーシル20とシルブラケット30又はプラットフォーム50との気密性を確保することもできる。図示の実施形態では、カーシル20にはプラットフォーム50に向けて突条22を形成し、プラットフォーム50には、突条22が上下動可能に嵌まる切欠き53を形成し、突条22の上面又は切欠き53の天井面に気密部材54を設置している。これにより、カーシル20が上昇したときに突条22と切欠き53は気密部材54を介して気密に密着C2する。本実施形態は、気密部材54を突条22又は切欠き53で押し付けて気密性を確保する構成であるから、
図5、
図6に示すようにカーシル20とプラットフォーム50との間に可動隙間G2を設けることができる。すなわち、
図3及び
図4のように摺接する構造ではないから摩耗はなく、また、押し付けて密着C2する構成であるから気密性を確保し易い利点があり、長期に亘り安定して気密性を確保できる。突条22及び切欠き53は、
図1に示す入口幅Eを超える長さE1に形成し、気密部材54も突条22及び切欠き53の全長に亘る長さ分設置することで、気密性をより高めることができる。もちろん、切欠き53は一部又は全部がシルブラケット30に形成されていてもよい。また、カーシル20に切欠き53、シルブラケット30又はプラットフォーム50に突条22を設けても構わない。
【0031】
本発明によれば、かごの昇降中はカードア11とカーシル20の気密性を確保して、かご内の気圧調整を気圧調整機構により行なうことができる。また、カードア11の開閉時にはカードア11とカーシル20との間に隙間Gを確保することでカードア11をスムーズにスライドさせることができ、ドア駆動装置への負荷も抑えることができる。
【0032】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0033】
たとえば、昇降手段40は上記実施形態に限定されず、ボールネジ41、アクチュエーターの他、リンク機構などを用いた構成としてもよい。また、カーシル20の上昇により密着するカーシル20とカードア11の当接部分にゴムなどの気密部材を設置することでより気密効果を高めることができる。
【符号の説明】
【0034】
10 ドア装置
11 カードア
12 カードア本体
13 ドアシュー
20 カーシル
21 敷居溝
30 シルブラケット
40 昇降手段
【要約】
【課題】本発明は、かごの昇降時にカーシルとカードアとの気密性を確保し、ドア開閉時にはカーシルとカードアとの間に隙間を確保できるドア装置を具えたエレベーターを提供する。
【解決手段】本発明のドア装置10を具えたエレベーターは、かごに吊下げ支持されてスライド開閉可能なカードア本体12と、前記カードア本体の下端に設けられるドアシュー13とを具えるカードア11と、前記ドアシューがスライド可能に嵌まる敷居溝21を有するカーシル20と、利用者が乗車するプラットフォーム50に取り付けられ、前記カーシルが設けられるシルブラケット30と、を有するドア装置を具えるエレベーターであって、前記カーシルと前記シルブラケットは、昇降手段40によって連繋され、前記昇降手段は、前記カーシルを上方向に移動させて前記カードアと前記カーシルを気密に当接させる。
【選択図】
図3