特許第6874901号(P6874901)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874901
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】高度不飽和脂肪酸を含有する食品
(51)【国際特許分類】
   A23C 9/13 20060101AFI20210510BHJP
   A23C 19/00 20060101ALI20210510BHJP
   A23D 9/00 20060101ALI20210510BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20210510BHJP
【FI】
   A23C9/13
   A23C19/00
   A23D9/00 518
   A23L5/00 L
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-504835(P2020-504835)
(86)(22)【出願日】2019年1月21日
(86)【国際出願番号】JP2019001606
(87)【国際公開番号】WO2019171788
(87)【国際公開日】20190912
【審査請求日】2020年10月2日
(31)【優先権主張番号】特願2018-40718(P2018-40718)
(32)【優先日】2018年3月7日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】盛川 美和子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真晴
【審査官】 楠 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−322464(JP,A)
【文献】 特開平07−227227(JP,A)
【文献】 特開2005−185234(JP,A)
【文献】 特開2002−204656(JP,A)
【文献】 小西寛昭、外2名,魚油の酸化安定性に対する植物油およびバターオイルの添加効果−ラジカル連鎖に及ぼす希釈作用−,日本油化学会平成11年度年会(第38回油化学討論会)講演要旨集,1999年10月20日,p.152,特に緒言,実験,結果および考察
【文献】 第四版油化学便覧−脂質・界面活性剤−,丸善株式会社,2001年11月20日,p.604,特に表8・2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 9/13
A23C 19/00
A23D 9/00
A23L 5/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の要件を満たす、pH3〜5.5の、無脂乳固形分を1質量%以上含有する食品。
1.DHA及び/又はEPAを含む油脂を含有する。
2.DHA及びEPAを合計で0.05〜2質量%含有する。
3.DHAとEPAの合計量に対する、植物脂由来のラウリン酸の量が0.005〜8質量倍である。
【請求項2】
食品がヨーグルト、酸性乳飲料、チーズから選ばれる1つである、請求項1記載の食品。
【請求項3】
ラウリン酸を含む植物脂の由来が、ヤシ油、パーム核油から選ばれる1以上である、請求項1に記載の食品。
【請求項4】
ラウリン酸を含む植物脂の由来が、ヤシ油、パーム核油から選ばれる1以上である、請求項2に記載の食品。
【請求項5】
DHA及び/又はEPAを含む油脂が、抗酸化処理を施されたものである、請求項1に記載の食品。
【請求項6】
DHA及び/又はEPAを含む油脂が、抗酸化処理を施されたものである、請求項2に記載の食品。
【請求項7】
DHA及び/又はEPAを含む油脂が、抗酸化処理を施されたものである、請求項3に記載の食品。
【請求項8】
DHA及び/又はEPAを含む油脂が、抗酸化処理を施されたものである、請求項4に記載の食品。
【請求項9】
DHAとEPAの合計量に対する、植物脂由来のラウリン酸の量が0.005〜8質量倍となるようにラウリン酸を含む植物脂を配合することを特徴とする、DHAとEPAを合計で0.05〜2質量%含有し、pH3〜5.5の、無脂乳固形分を1質量%以上含有する食品の製造法。
【請求項10】
DHAとEPAの合計量に対する、植物脂由来のラウリン酸の量が0.005〜8質量倍となるようにラウリン酸を含む植物脂を配合することを特徴とする、DHAとEPAを合計で0.05〜2質量%含有し、pH3〜5.5の、無脂乳固形分を1質量%以上含有する食品における、経時的な異風味発生の抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高度不飽和脂肪酸を含有する食品、特に、乳原料を含有し、pHが3〜5.5の食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)等の高度不飽和脂肪酸を含有する油脂を含有するヨーグルトに関する出願としては、特許文献1がある。この出願には、「通常期待される保存期間中は魚臭を感じさせることのない風味良好で品質安定性に優れた高度不飽和脂肪酸入りヨーグルトを提供する」目的で、「乳酸菌とビフィドバクテリウム菌を含有するヨーグルトにパラチノース、パラチニット、マルトース、マルチトール、水飴、還元水飴およびトレハロースからなる群から選ばれた甘味物質を一種以上添加したものにDHA等の高度不飽和脂肪酸を含有する精製魚油を添加し、さらに、酸素遮断性密封容器に充填する」ことに関し記載されている。
【0003】
特許文献2は、発明の名称が「魚油乳化組成物及び該魚油乳化組成物を配合した乳関連飲料」であり、「乳関連飲料」として、ヨーグルトへの適用について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−214774号公報
【特許文献2】特開2004−248593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高度不飽和脂肪酸含有油脂を含有する、pH3〜5.5の、乳原料を含有する食品のうち、経時的に発生する異風味が改善された食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、課題の解決に向け鋭意検討を行った。
特許文献1の方法では、「酸素遮断性密封容器に充填する」必要があり、煩雑であった。また、特許文献2の方法では、「無臭化処理」された魚油を使用する必要があるが、その詳細は開示されておらず、参考にならなかった。
【0007】
本発明者がさらに検討を行ったところ、DHAとEPAの合計量に対して、所定範囲の倍率のラウリン酸となるように、ラウリン酸を含む植物脂を配合することにより、経時的な異風味の発生を抑制することができることを見いだし、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)以下の要件を満たす、pH3〜5.5の、無脂乳固形分を1質量%以上含有する食品、
1.DHA及びEPAを合計で0.05〜2質量%含有する、
2.DHAとEPAの合計量に対する、植物脂由来のラウリン酸の量が0.005〜8質量倍である、
(2)乳原料を含有する食品がヨーグルト、酸性乳飲料、チーズから選ばれる1つである、前記(1)記載の食品、
(3)ラウリン酸を含む植物脂の由来が、ヤシ油、パーム核油から選ばれる1以上である、前記(1)に記載の食品、
(4)ラウリン酸を含む植物脂の由来が、ヤシ油、パーム核油から選ばれる1以上である、前記(2)に記載の食品、
(5)DHA及び/又はEPAを含む油脂が、抗酸化処理を施されたものである、前記(1)に記載の食品、
(6)DHA及び/又はEPAを含む油脂が、抗酸化処理を施されたものである、前記(2)に記載の食品、
(7)DHA及び/又はEPAを含む油脂が、抗酸化処理を施されたものである、前記(3)に記載の食品、
(8)DHA及び/又はEPAを含む油脂が、抗酸化処理を施されたものである、前記(4)に記載の食品、
(9)DHAとEPAの合計量に対する、植物脂由来のラウリン酸の量が0.005〜8質量倍となるようにラウリン酸を含む植物脂を配合することを特徴とする、DHAとEPAを合計で0.05〜2質量%含有し、pH3〜5.5の、無脂乳固形分を1質量%以上含有する食品の製造法、
(10)DHAとEPAの合計量に対する、植物脂由来のラウリン酸の量が0.005〜8質量倍となるようにラウリン酸を含む植物脂を配合することを特徴とする、DHAとEPAを合計で0.05〜2質量%含有し、pH3〜5.5の、無脂乳固形分を1質量%以上含有する食品における、経時的な異風味発生の抑制方法、
に関するものである。
又換言すれば、
(21)以下の要件を満たす、pH3〜5.5の、無脂乳固形分を1質量%以上含有する食品、
1.DHA及びEPAを合計で0.05〜2質量%含有する、
2.DHAとEPAの合計量に対する、植物脂由来のラウリン酸の量が0.005〜8質量倍である、
(22)乳原料を含有する食品がヨーグルト、酸性乳飲料、チーズから選ばれる1つである、(21)記載の食品、
(23)ラウリン酸を含む植物脂の由来が、ヤシ油、パーム核油から選ばれる1以上である、(21)又は(22)に記載の食品、
(24)DHA及び/又はEPAを含む油脂が、抗酸化処理を施されたものである、(21)〜(23)いずれか1つに記載の食品、
(25)DHAとEPAの合計量に対する、植物脂由来のラウリン酸の量が0.005〜8質量倍となるようにラウリン酸を含む植物脂を配合することを特徴とする、DHAとEPAを合計で0.05〜2質量%含有し、pH3〜5.5の、無脂乳固形分を1質量%以上含有する食品の製造法、
(26)DHAとEPAの合計量に対する、植物脂由来のラウリン酸の量が0.005〜8質量倍となるようにラウリン酸を含む植物脂を配合することを特徴とする、DHAとEPAを合計で0.05〜2質量%含有し、pH3〜5.5の、無脂乳固形分を1質量%以上含有する食品における、経時的な異風味発生の抑制方法、
に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な方法で、高度不飽和脂肪酸含有油脂を含有する、pH3〜5.5の、乳原料を含有する食品のうち、経時的な異風味の発生が抑制されたものを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明でいう、pH3〜5.5の、乳原料を含有する食品とは、具体的には、ヨーグルト、酸性乳飲料、チーズを挙げることができる。より望ましくはヨーグルトである。
ここでヨーグルトとは、乳に乳酸菌などの微生物を混ぜて発酵させて作る発酵食品と定義できるが、本発明では、発酵を行わず、即ち乳原料に乳酸をはじめとする酸を混ぜ、所定のpHとしたものもヨーグルトの範疇に含める。
また酸性乳飲料とは、乳成分を含む酸性の飲料である。
【0011】
pHは、より望ましくはpH3.5〜5.5であり、更に望ましくはpH4〜4.6である。
なお、理由は不明であるが、高度不飽和脂肪酸含有油脂を含有する食品においては、pHが酸性域にあると異風味が生じやすい傾向が見られた。本発明は、pHが低い場合でも、高度不飽和脂肪酸に由来する異風味を抑制できる点で特徴的であり、pHの低い食品に適用することで、効果が顕在化するため好ましい。
【0012】
乳原料とは、乳に由来する原料であり、具体的には、乳、乳脂、脱脂粉乳、全脂粉乳、低脂肪乳、ホエー、カゼインナトリウムを挙げることができる。本発明では、これらから選ばれる1以上を使用することができる。
本発明に係る食品における乳原料の量は、無脂乳固形分として1質量%以上である必要があり、より望ましくは2〜50質量%であり、さらに望ましくは3〜15質量%である。適当な乳原料を適当な量含むことで、本発明の効果が顕著に表れ、好適である。
【0013】
本発明に係る食品には、ドコサヘキサエン酸(DHAと略称する)とエイコサペンタエン酸(EPAと略称する)を合計で0.05〜2質量%含有する。ここでDHA、EPAはトリグリセライドとして含有するものである。DHAとEPAの合計量は、より望ましくは0.1〜1.5質量%であり、更に望ましくは0.1〜1質量%である。DHA及びEPAは、近年、各種有益な生理作用が報告されている素材であり、これを所定量含むことで、DHAやEPAの効果を訴求点とする、各種食品を得ることができる。
【0014】
本発明に係る食品には、植物脂由来のラウリン酸を、DHAとEPAの合計量に対し0.005〜8質量倍含有する。この量は、より望ましくは0.008〜7質量倍であり、更に望ましくは0.009〜7質量倍である。なお、ここで言うラウリン酸は、油脂の構成脂肪酸として含有されているもので、本発明で「ラウリン酸を含む」とは、ラウリン酸を構成脂肪酸として有する油脂を含むことを意味し、脂肪酸の状態でラウリン酸を含むことを意味するのではない。
ラウリン酸がDHAとEPAの合計量に対し所定の量含まれることで、DHAやEPAに由来する、経時的な異風味の発生を抑制することができる。
【0015】
ラウリン酸を含む植物脂としては、ヤシ油、パーム核油が代表である。本発明では、これらの油脂の他、これらの油脂に対し、分別、硬化、エステル交換から選ばれる1以上の加工を施した油脂を使用できる。なお、特にエステル交換においては、ラウリン酸を含む油脂以外の油脂をパーツとして使用する態様も含まれる。
なお、本発明においては、動物脂、具体的には原料としての牛乳に由来するラウリン酸では、効果は限定的である。また、そもそも、ラウリン酸を多く含有する動物脂は実用的には存在せず、本発明においては、植物脂を配合することにより、ラウリン酸量を調整する。
【0016】
本発明においては、DHAやEPAを含む油脂は、抗酸化処理を施したものを使用することが望ましい。抗酸化処理としては、公知の方法を適宜採用することができ、特定の方法に限られるものではない。
本発明の趣旨は、DHAやEPA含有油脂を含む食品において、所定量のラウリン酸を含む油脂を配合することで、その異風味発生を抑制することができる点にある。そのため、DHAやEPAを含む油脂が抗酸化処理を施されたものであるか否かは、適用する食品で求められる賞味期間や、配合するDHAやEPAの量により適宜設定することが可能である。
【0017】
本発明は、DHA及びEPAを合計で0.05〜2質量%含有し、pH3〜5.5の、乳原料を含有する食品の製造法と見ることもできる。その特徴は、DHA及びEPAの合計量に対する、植物脂に由来するラウリン酸の量が0.005〜8質量倍となるように、ラウリン酸を含む植物脂を配合することである。
【0018】
本発明はまた、DHA及びEPAを合計で0.05〜2質量%含有し、pH3〜5.5の、乳原料を含有する食品において、経時的な異風味の発生を抑制する方法に関する発明とみることもできる。その特徴は、DHA及びEPAの合計量に対する、植物脂に由来するラウリン酸の量が0.005〜8質量倍となるように、ラウリン酸を含む植物脂を配合することである。
【0019】
本発明においては、各種の原材料を、本発明の効果を妨げない範囲で、適宜使用することができる。具体的には、甘味料や着色料、香料、乳化剤、増粘剤を挙げることができる。
以下の実施例を記載する。
【実施例】
【0020】
検討1 高度不飽和脂肪酸含有油脂を含有する食品における、pHと風味の関係について
表1−1の配合により、高度不飽和脂肪酸含有油脂を含有する水中油型乳化物を調製した。調製法は「○水中油型乳化物の調製法」に従った。得られた水中油型乳化物を一定期間保管後、官能評価に供した。方法は、「○水中油型乳化物の評価法」に従った。結果を表1−2に示した。
【0021】
表1−1 配合
・高度不飽和脂肪酸含有油脂には、DHAとEPAを合計で62.5質量%含有する油脂を使用した。
・乳化剤1には、不二製油株式会社製の水溶性大豆多糖類「ソヤファイブ-SDA100」を使用した。
・ゲル化剤には、三栄源エフエフアイ社製のキサンタンガム「サンエース」を使用した。
【0022】
○水中油型乳化物の調製法
1.イオン交換水に3質量%のゲル化剤水溶液、5質量%の乳化剤水溶液、高度不飽和脂肪酸含有油脂を配合に従い、順次添加した。
2.TKホモミキサーにて8000rpm×5分 処理した。
3.配合に従い、pH調整した。この際、リン酸又は重曹を使用した。
4.高圧ホモゲザイザー2回(150+50bar)にて均質化した。
5.達温90℃にて殺菌した。
6.容器へ充填した。
7.5℃へ急冷した。
【0023】
○水中油型乳化物の評価法
1.「○水中油型乳化物の調製法」で得られた各サンプルを、5℃のインキュベーターで14日間保管した。
2.保管後のサンプルを、パネラー5名の合議にて、以下の基準で官能評価を行った。
4点 劣化臭を全く感じないもの。
3点 若干の臭いの変化はあるが、劣化臭とは感じられないもの。
2点 若干の劣化臭が感じられるもの。
1点 明確な劣化臭が感じられるもの。
【0024】
表1−2 結果
【0025】
考察
簡易的な評価であるが、結果に示した様に、pHが低いと、高度不飽和脂肪酸含有油脂に由来する劣化臭がより強く感じられることが示された。
なお、pHの違いによる物理的性状(外観やメディアン径など)の相違は、ほとんど無かった。
【0026】
検討2 高度不飽和脂肪酸含有油脂の抗酸化処理
表2−1の記載に従い、高度不飽和脂肪酸含有油脂の抗酸化処理をおこなった。処理法は「○高度不飽和脂肪酸含有油脂の抗酸化処理法」に従った。
【0027】
表2−1 配合
・カテキン製剤には太陽化学株式会社製「サンフェノン90S」を使用した。
・高度不飽和脂肪酸含有油脂にはDHAとEPAを合計48.5重量%含有する油脂を用いた。
・乳化剤には阪本薬品工業株式会社製ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル「CRS-75」を使用した。
【0028】
○高度不飽和脂肪酸含有油脂の抗酸化処理法
1.水相に分類されている成分、及び油相に分類されている成分をそれぞれ混合し、溶解した。
2.水相と油相を混合し、略乳化した。
3.2の乳化液を高圧ホモゲナイザー(37Mpa、20パス)にて乳化した。
【0029】
検討3 ヨーグルトの調製
表3−1の記載に従い、ヨーグルトを調製した。調製法は「○ヨーグルトの調製法」に従った。
得られたヨーグルトを、官能評価に供した。方法は「○ヨーグルトの官能評価法」に従った。結果を表3−2に示した。
【0030】
表3−1 配合
・高度不飽和脂肪酸含有油脂には、DHAとEPAを合計48.5質量%含有する油脂を使用した。
・ラウリン系油脂1には、不二製油株式会社製「精製ヤシ油」を使用した。
・非ラウリン系油脂1には、不二製油株式会社製のPMFである「パーメル26」を使用した。
・ラウリン系油脂2には、不二製油株式会社製「パーム核油」を使用した。
・ラウリン系油脂3には、不二製油株式会社製のパーム核油の硬化油である「ニューメラリン-38」(融点38℃)を使用した。
・乳化剤1には、太陽化学株式会社製「サンソフトA-181E」を使用した。本品はモノステアリン酸ペンタグリセリンであった。
・乳化剤2には、辻製油株式会社製のレシチン「SLP-ペースト」を使用した。
・牛乳、低脂肪乳、脱脂粉乳の無脂乳固形分はそれぞれ8.3質量%、10質量%、96.2質量%であった。
【0031】
○ヨーグルトの調製法
1.水相に分類されている成分、及び油相に分類されている成分をそれぞれ混合し、溶解した。
2.水相と油相を混合し、60℃に加温後略乳化した。
3.2の乳化液を高圧ホモゲナイザー(15Mpa)にて乳化した。
4.3の乳化液を70℃5分で殺菌を行った。
5.4の乳化液を45℃まで冷却し、スターターとして市販のヨーグルトを3.0%添加した。
6.5の乳化液を45℃でpH4.5になるまで発酵し、ヨーグルトを得た。
【0032】
○ヨーグルトの官能評価法
各ヨーグルトのサンプルを、10℃で14日ないし15日保管した。
実施例3-1の配合で得られたサンプルのうち、10℃ 2日目のサンプル(以下、コントロールと称した)を比較対象に、パネラー5名の合議にて、以下の評価基準で官能評価を行った。
なお、コントロールは絶対評価として、異臭は感じられず、好ましいものであった。
5点 コントロールに比べ、異臭がさらに強く、食すことができなかったもの。
4点 コントロールに比べ、異臭が強く感じられたもの。
3点 コントロールに比べわずかながら異臭が感じられたもの。
2点 コントロールに比べ、若干の相違はあるものの、差はわずかであり、許容できると判断されたもの。
1点 コントロールと同等であったもの。
14日目ないし15日目の評価で、1点もしくは2点であるものを合格と判断した。
【0033】
表3−2 結果
【0034】
考察
表3−2に示したように、DHAとEPAが合計で所定量以上含まれるヨーグルトにおいて、DHAとEPAの合計量に対する、ラウリン酸の量が所定の値となる様に、ラウリン酸を含む植物脂を配合することで、該ヨーグルトにおける経時的な異風味の発生を抑制できることが確認された。