(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態のシステム構成]
図1は、実施の形態にかかる圧延プラント50の構成を示す模式図である。圧延プラント50は、単数または複数の圧延スタンドからなる。圧延プラント50は、鉄鋼又はその他の金属材を熱間または冷間で板状に圧延するものである。
【0014】
圧延プラント50は、加熱炉52と、一つの圧延スタンドを持つ粗圧延機53と、バーヒータ54と、仕上圧延機57と、水冷装置63と、巻取機61と、それらの間で被圧延材1を搬送するローラーテーブル(図示せず)とを備える。
【0015】
粗圧延機53は、圧下装置(図示せず)およびロール回転用電動機(図示せず)を含んでいる。仕上圧延機57は、複数の圧延スタンドF
1〜F
5を備える。各圧延スタンドF
1〜F
5は、複数のロールと、圧下装置5と、ロール回転用の電動機7とを備えている。仕上圧延機57のスタンド数は限定がなく、例えば五基〜七基の圧延スタンドが設けられてもよいが、実施の形態は一例として五基とされる。
【0016】
以下の説明では、上述した各圧延機の圧下装置およびロール回転用電動機などを、便宜上、圧延プラント50の「機器」と称することがある。機器には、圧延機の具体的構造に応じて、圧下装置と電動機の他にも様々なものが含まれてもよい。これらの機器はアクチュエータ(図示せず)を備える。
【0017】
被圧延材51は、圧延プラント50で圧延される素材である。被圧延材51は、加熱炉52で昇温された後、圧延ラインのローラーテーブル(図示せず)の上に抽出される。この段階の被圧延材51は、例えば鋼片である。
【0018】
被圧延材51が粗圧延機53に到達すると、圧延方向を変えながら繰り返し圧延されて被圧延材55となる。被圧延材55は、例えば数十ミリメートル程度の厚みを持つバーである。
【0019】
次に、被圧延材55は、圧延スタンドF
1〜F
5に順次咬込む。被圧延材55は、一方向に圧延され、所望の板厚となる。この段階の被圧延材1は、ストリップとも称される。
【0020】
その後、被圧延材1は水冷装置63で冷却される。冷却後の被圧延材1は、巻取機61で巻き取られる。その結果、コイル状製品62が得られる。
【0021】
圧延プラント50の要所には各種センサが設置されている。圧延プラント50の要所とは、例えば、加熱炉52の出側、粗圧延機53の出側、仕上圧延機57の出側、および巻取機61の入側などである。各種センサは、仕上圧延機57の圧延スタンドF
1〜F
5の間にも設けられうる。
【0022】
各種センサは、仕上圧延機57の入側温度計(Pyrometer)56と、板厚および板幅を計測する板厚板幅計58と、仕上圧延機57の出側温度計59と、圧延荷重センサ6とを含む。各種センサは、被圧延材1と各機器の状態とを逐次的に計測している。
【0023】
圧延プラント50は、計算機を用いた制御システムにより運転されている。計算機は、ネットワークを介して互いに接続された上位計算機20とプロセス計算機21とを含む。プロセス計算機21には、ネットワークを介してインターフェース画面21aが接続されている。
【0024】
上位計算機20は、予め設定された生産計画に基づいて、プロセス計算機21に圧延命令を指示する。圧延命令は、例えば、各被圧延材の目標寸法、及び、目標温度などを含む。目標寸法は、例えば、厚み、幅、および板クラウンなどを含む。目標温度は、例えば、仕上圧延機57の出側温度および巻取機61の入側温度などを含む。
【0025】
加熱炉52から被圧延材51が抽出されると、プロセス計算機21は、上位計算機20からの圧延命令に従って圧延プラント50の各機器に対する設定値を算定する。プロセス計算機21は、算定した設定値をコントローラ22に出力する。設定値は、圧下装置5の圧下位置、ロール回転速度、ベンディング力、およびワークロールシフト量などを含んでいる。
【0026】
被圧延材51、被圧延材55、および被圧延材1それぞれが各機器の手前の所定の位置まで搬送されると、コントローラ22は、設定値に基づき、圧延プラント50の各機器のアクチュエータ(図示せず)を操作する。圧延が開始されると、放射温度計、X線板厚計、ロードセルなどのセンサ計測値などに基づき、被圧延材1の目標寸法および目標温度などが圧延命令に適合するように、コントローラ22が各アクチュエータを逐次操作する。
【0027】
プロセス計算機21の具体的構造に限定はないが、一例として次のようなものであってもよい。
図4は、実施の形態にかかる圧延プラント50が備えるプロセス計算機21のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0028】
プロセス計算機21の演算処理機能は、
図4の処理回路により実現されてもよい。この処理回路は、専用ハードウェア150であってもよい。この処理回路は、プロセッサ151及びメモリ152を備えていてもよい。この処理回路は、一部が専用ハードウェア150として形成され、更にプロセッサ151及びメモリ152を備えていてもよい。
図4の例は、処理回路の一部が専用ハードウェア150として形成されるとともに、処理回路がプロセッサ151及びメモリ152をも備えている。
【0029】
処理回路の少なくとも一部が、少なくとも1つの専用ハードウェア150であってもよい。この場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらを組み合わせたものが該当する。
【0030】
処理回路が、少なくとも1つのプロセッサ151及び少なくとも1つのメモリ152を備えてもよい。この場合、プロセス計算機21の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェア及びファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ152に格納される。プロセッサ151は、メモリ152に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。
【0031】
プロセッサ151は、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPとも呼ばれる。メモリ152は、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリー、EPROM、EEPROM等の、不揮発性又は揮発性の半導体メモリ等が該当する。
【0032】
このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって、プロセス計算機21の各機能を実現することができる。
【0033】
[実施の形態の板厚スケジュール計算方法]
圧延命令で命令された所望の目標板厚を達成するために、仕上圧延機57の板厚スケジュールが数式モデルで算定される。板厚スケジュールは、各圧延スタンドF
1〜F
5の出側板厚を含んでいる。この数式モデルは、各圧延スタンドF
1〜F
5の温度、圧延荷重、及び、圧延トルクなどを予測するための数式群である。
【0034】
荷重比配分法に基づく板厚スケジュール計算では、荷重比γ
iが用いられる。荷重比γ
iは、各圧延スタンドF
1〜F
5における荷重P
iの配分比率である。
【0035】
「荷重比配分法」の概要を説明する。圧延荷重は板クラウンを変化させる要因の一つであり、あるスタンドの圧延荷重が高いほど当該スタンド出側の板クラウンは大きくなる。したがって、クラウン比率変化を小さくし、平坦度を良好に保つためには、圧延荷重が各スタンドで同じように変化することが望ましい。ところが、圧延荷重は、圧延材温度の変動などにより、1本1本の圧延材毎、スタンド毎に刻々と変化し、これにより平坦度が悪化する場合がある。そこで、圧延材温度の変動などが生じても、各スタンドの出側板厚を自動的に調整し、圧延荷重の比率(即ち圧延荷重比)を可能な限り一定に保つ板厚スケジュール計算方法が考案されている。この計算方法によれば、何らかの外乱により圧延荷重が変動するとき、どのスタンドも圧延荷重の増減傾向がほぼ同じになるので、平坦度の悪化を抑制することができる。このような板厚スケジュール計算法は「荷重比配分法」と呼ばれる。
【0036】
荷重比γ
iは、以下のように定義される。なお、Nは圧延スタンド数であり、仕上圧延機57の場合はN=5である。また、iは、複数の圧延スタンドF
1〜F
5を区別する識別子である。iには、仕上圧延機57の圧延スタンド番号(i=1〜N)が代入される。
【0038】
なお、この式(1)は、後述する式(2)と等価である。式(2)の値uは荷重比と荷重値の関係を示す。この値uは、各圧延スタンドF
1〜F
5で共通である。以下の説明では、値uを、便宜上「圧延荷重項u」とも称する。
【0040】
この荷重比γ
iが満たすべき数値を、便宜上、荷重比テーブル値γ
iTBLとも称す。実機では、プロセス計算機21が、例えば数表テーブル(ルックアップテーブル)の方式で荷重比テーブル値γ
iTBLを保存している。実際の設定計算が実行されるタイミングで、この数表テーブルが検索される。
【0041】
なお、作業者(オペレータ)が、テーブル値を微調整できるようにしてもよい。微調整の仕組みは、オペレータが設定計算のインターフェース画面21aにオフセット値γ
iOFSを入力すると、入力したオフセット値γ
iOFSがテーブル値に加算されるように構築されてもよい。この微調整機能があるので、板厚スケジュール計算に用いる荷重比の目標値γ
iAIMは、次の式(3)で得られる。
【0043】
各圧延スタンドF
1〜F
5の出側板厚とロール周速は、「体積速度一定則」を満たす。体積速度一定則は、「マスフロー一定速」とも称される。圧延スタンド間の揃速性を保つためである。マスフロー一定則は、以下の式(4)で表現できる。
【0045】
ここで、f
iは第i番目圧延スタンドF
iにおける先進率(−)である。h
iは第i番目圧延スタンドF
iの出側板厚(mm)であり、V
iは第i番目圧延スタンドF
iのロール周速(m/s)であり、Uは体積速度(mm・m/s)である。
【0046】
式(2)及び式(4)は、各圧延スタンドF
1〜F
5の出側板厚h
iとロール周速V
iとが満足すべき条件である。条件式の本数は2N本である。この非線形の連立方程式を数値的に解くためには、様々な方法がある。ただし、オンライン計算に適用するためには短時間で解が得られることが好ましい。
【0047】
そこで、実施の形態では、比較的計算負荷の少ない方法であるニュートンラフソン法(Newton−Raphson法)を用いる。以下、その求解法が説明される。式(2)及び式(4)はそれぞれN個の式から成り、全部で2N個の式が与えられる。
【0048】
変数は、初段圧延スタンドF
1の入側板厚h
0と、各圧延スタンドF
1〜F
5の出側板厚h
1〜h
Nと、ロール周速V
1〜V
Nと、マスフロー項Uと、圧延荷重項uとである。初段圧延スタンドF
1の入側板厚h
0(mm)と最終圧延スタンドF
5の出側目標板厚h
N(mm)とが既知である。これに対し、各圧延スタンドF
1〜F
4の出側目標板厚が未知なので、未知の出側板厚はN−1個である。
【0049】
ロール周速については、最終圧延スタンドF
Nの速度V
N(mps)が既知である。すなわち実施の形態では圧延スタンドF
5の速度V
5が既知である。V
Nは、最終圧延スタンドF
Nの出側温度を目標値に一致させるように別途に決められる。これに対し、残るN−1個のロール周速が未知である。体積速度Uと圧延荷重項uも未知であるから、これらを上記出側目標板厚と上記ロール周速とに加えて、全部で2N個の未知の変数が存在する。
【0050】
式(2)及び式(4)は、2N個の未知変数に対し、全部で2N個の式からなる。よって、この式はニュートンラフソン法によって解くことができる。これら未知変数のベクトルxは、次の式(5)で定義される。
【0052】
計算開始時には、式(5)の未知変数ベクトルxに、初期値が与えられる。この初期値は、解そのものには影響しないものの、繰り返し計算の収束性に影響を及ぼす。そこで、初期値は、過去に類似の製品を圧延した際の値などを参考にして、数表や簡易式として与えられてもよい。
【0053】
式(2)及び式(4)をニュートンラフソン法で解くために、評価関数ベクトルgが導入される。式(2)及び式(4)を下記のように変形すると、誤差を評価する評価関数g
iと評価関数g
i+Nが得られる。
【0056】
評価関数g
iおよび評価関数g
i+Nの全てを0に近づけるように、未知変数ベクトルxが繰り返し修正される。
【0057】
ここで、式(6)及び式(7)を評価関数ベクトルgとすると、評価関数ベクトルgは次のように表される。
【0059】
ベクトル形式のニュートンラフソン法は、次のように表される。ここで、nは収束計算の繰返し回数である。
【0061】
Jはヤコビ行列である。ヤコビ行列Jは、次の式(10)のように2N×2Nの次元の行列である。実施の形態では一例としてN=5なので10×10の行列となる。
【0063】
ヤコビ行列Jに含まれる各偏微分項は、解析解または数値微分として得られる。詳細な方法は後述する。
【0064】
一例として5つの圧延スタンドF
1〜F
5を持つ圧延ラインの場合について説明する。未知変数ベクトルxが式(11)で示され、ヤコビ行列Jの非ゼロ成分が式(12)に示される。
【0067】
実施の形態では、ヤコビ行列Jの逆行列J
−1も計算される。逆行列の計算方法については、ガウス掃き出し法およびLU分解法などが知られており、それらを利用することができる。
【0068】
式(9)により、逆行列J
−1を用いて未知変数ベクトルxは次のように更新される。
【0070】
n番目の繰り返しにおける誤差が許容誤差ε
cより小さくなるまで、計算が続行される。最終的に得られる未知変数ベクトルx
nの値は、同時に式(2)及び式(4)の両方を満たす解である。
【0071】
繰り返し計算の収束判定条件は次の式(14a)および式(14b)の両方を満たすことである。
【0074】
右辺の収束条件ε
cは、要求される計算精度に対して十分に小さくされる。収束条件ε
cは、例えば0.001程度としてもよい。
【0075】
(変形例:パワー比配分法)
なお、実施の形態では荷重比配分法に基づく計算を行ったが、その代わりに変形例としてパワー比配分法に基づく板厚スケジュール計算が行われてもよい。
【0076】
「パワー比配分法」の概要を説明する。パワー比配分法は、各スタンドのパワーの比を可能な限り一定に保つように板厚スケジュールを計算する計算方法である。パワー比配分法は、モータパワー(電力)を用いる。モーターパワーは、圧延荷重と相関があり、モーターのドライブ装置から実績値を得ることができる。
【0077】
荷重比配分法とパワー比配分法とで、両者の計算内容はほぼ同様であるが、以下の点が異なる。
【0078】
パワー比配分法による板厚スケジュール計算では、パワー比γ
iを用いる。パワー比γ
iは、各圧延スタンドF
1〜F
5におけるモーターパワーPw
iの配分比率である。本変形例では、式(1)に代えて次の式(15)が用いられる。
【0080】
式(15)は、次の式(16)と等価である。本変形例では、式(2)に代えて次の式(16)が用いられる。式(16)のuはパワー比とパワー値の関係を示している。uは各圧延スタンドF
1〜F
5で共通値である。式(16)のuはモーターパワー項でもある。
【0082】
パワー比配分法を用いる本変形例では、評価関数g
i+Nについても、式(7)に代えて次の式(17)が用いられる。
【0084】
なお、ヤコビ行列のための導関数の計算法については、後述する。
【0085】
(圧下率の直接指定)
次に任意の圧延スタンドに対して圧下率r
iを直接指定する場合について述べる。プロセス計算機21は、圧下率の目標値r
iTBLを数表テーブル(具体的にはルックアップテーブル)の方式で保存している。ルックアップテーブルは鋼種および目標板厚などの区分を持っていてもよい。
【0086】
r
iTBLを、「ルックアップテーブル参照値」とも称す。実際の設定計算が実行されるタイミングで、このテーブルが検索される。なお、ルックアップテーブル参照値r
iTBLがゼロの場合は目標値の指定がなかったものとして扱ってもよい。
【0087】
作業者(オペレータ)は、インターフェース画面21aにオペレータ圧下率指定値r
iOPを入力することができる。入力があった場合、オペレータ圧下率指定値r
iOPが圧下率の目標値r
iAIMとして取り扱われる。オペレータ圧下率指定値r
iOPがゼロの場合には、目標値の指定がなかったものとして扱ってもよい。
【0088】
したがって、板厚スケジュール計算に用いる圧下率目標値r
iAIMは、次の式で得られる。
【0091】
なお、r
iTBL=0かつr
iOP=0の場合は、圧下率指定がなかったものとして取り扱われる。また、r
iTBL>0かつr
iOP>0の場合は、r
iOPが用いられる。
【0092】
板厚スケジュール計算においては、まず、プロセス計算機21が、各圧延スタンドF
1〜F
5について圧下率指定がなされているかを順次チェックする。
【0093】
第j番目圧延スタンドで圧下率指定がなされていた場合には、当該圧延スタンドF
jが荷重比配分法の対象外とされて、当該圧延スタンドF
jが指定された圧下率に基づいて制御される。具体的には、荷重比についての式(7)が、次の式(20)で置き換えられる。式(20)は、圧下率に対する制約を表している。r
jAIMは第j番目スタンドの圧下率指定値である。
【0095】
一例として、圧延プラント50において第三番目圧延スタンドF
3に圧下率指定がなされたと仮定する。この場合には、N=5かつj=3なので、式(8)の評価関数ベクトルgにおいてg
8が次の式(21)で置換される。
【0097】
(リミット超過判定)
また、プロセス計算機21は、各圧延スタンドF
1〜F
5において、リミット値を超過した項目がないかを順次チェックする。第j番目圧延スタンドF
jでリミット超過が発生した場合、当該圧延スタンドF
jが荷重比配分法の対象外とされ、当該圧延スタンドF
jがリミット値に基づいて制御される。具体的には、荷重比についての式(7)が、以下の各数式で置き換えられる。以下の各数式は、リミット超過項目に対する制約を表している。
【0098】
(a)圧延荷重リミット
圧延荷重リミット超過の判定条件は、式(22)である。ここで、P
jMAXは荷重リミット値であり、ε
Pはマージン率である。マージン率ε
Pは例えば数%程度に設定してもよい。
【0100】
圧延荷重リミット超過時には、式(7)が次の式(23)で置換される。
【0102】
(b)モータパワーリミット
モータパワーリミット超過の判定条件は、式(24)である。ここで、Pw
jMAXは荷重リミット値であり、ε
PWはマージン率である。マージン率ε
PWは例えば数%程度に設定してもよい。
【0104】
圧延荷重リミット超過時には、式(7)が次の式(25)で置換される。
【0106】
(c)圧下率リミット
圧下率リミット超過の判定条件は、式(26)である。ここで、r
jMAXは圧下率リミット値であり、ε
rはマージン率である。マージン率ε
rは例えば数%程度に設定してもよい。
【0108】
圧下率リミット超過時には、式(7)が式(27)で置換される。
【0110】
なお、繰り返し計算の過程で一度リミット超過と判定されたものは、荷重配分比またはパワー配分比が指定された配分比を下回っている限り、その後もリミット超過したままとして扱ってもよい。
【0111】
こうして得られた評価関数gを式(10)に適用することにより、圧下率指定、及び、リミット超過を考慮したヤコビ行列Jが得られる。このヤコビ行列Jを式(13)等に適用し、収束計算が行われる。これにより、圧下率指定、リミットチェックが無い場合と同様に未知変数ベクトルxの解が得られる。
【0112】
プロセス計算機21は、板厚スケジュール計算結果をインターフェース画面21aに表示する。板厚スケジュール計算結果は、予め与えられた初段圧延スタンドF
1の入側板厚と、未知変数ベクトルxに含まれる各圧延スタンドF
1〜F
5の出側板厚と、予め与えられた最終圧延スタンドF
5の出側板厚とを含んでいる。プロセス計算機21は、これらの計算結果どおりに、下位コントローラに設定値を出力する。
【0113】
(導関数の詳細)
なお、前述した式(10)ヤコビ行列Jが含む導関数の項は、以下のように計算される。ここでは、
図2を用いつつヤコビ行列Jの構成も説明する。
図2は、実施の形態にかかる板厚スケジュール計算方法で用いられるヤコビ行列Jの構成を説明するための図である。ヤコビ行列Jは、第一成分グループMX
1と第二成分グループMX
2とを含んでいる。第一成分グループMX
1は、ヤコビ行列Jの中の一行〜N行の成分である。第二成分グループMX
2は、ヤコビ行列Jの中のN+1行〜2N行の成分である。
【0114】
図2の第一成分グループMX
1の成分はマスフロー項である。マスフロー項は、下記の式(28)〜(31)のとおりである。
【0119】
なお、数値微分の微小変位Δh
i−1とΔh
iは、第i番目圧延スタンドF
iの出側板厚の1%未満とされてもよい。
【0120】
図2の第二成分グループMX
2の成分は、荷重比配分法が用いられるときには荷重比項であり、パワー比配分法が用いられるときにはパワー比項である。
【0121】
荷重比項は、下記の式(32)〜(35)のとおりである。
【0126】
なお、数値微分の微小変位ΔV
iは、第i番目圧延スタンドF
iのロール周速度V
iの1%未満としてもよい。
【0127】
パワー比項は、下記の式(36)〜(39)のとおりである。
【0132】
(パラメータ制限があるときの導関数)
いずれかの圧延スタンドで、圧下率指定またはリミット超過が発生したと仮定する。圧下率指定とリミット超過をまとめて、「パラメータ制限」とも称する。パラメータ制限が発生した場合には、第二成分グループMX
2のうち、当該圧延スタンドの成分がその制限の種類に応じて下記のように置換される。圧下率指定とリミット超過とがいずれも発生していない圧延スタンドについては、当初の荷重比項またはパワー比項が保持されて成分置換は行われない。
【0133】
(i)圧下率指定時の導関数
圧下率の指定がされている圧延スタンドについては、次の式(40)〜(43)が用いられる。
【0138】
(ii)リミッタ超過時の導関数
リミッタ超過は、圧延荷重P
iとモーターパワーPw
iと圧下率r
iとでそれぞれ発生しうる。
【0139】
まず、ある圧延スタンドの圧延荷重P
iがリミットを超過した場合には、その圧延スタンドには次の式(44)〜(47)が用いられる。これらの式のうち、式(44)〜(式46)は、リミット超過時用に設定された最大値P
iMAXを含んでいる。
【0144】
ある圧延スタンドのモーターパワーPw
iがリミットを超過した場合には、その圧延スタンドには次の式(48)〜(51)が用いられる。これらの式のうち、式(48)〜式(50)は、リミット超過時用に設定された最大値Pw
iMAXを含んでいる。
【0149】
ある圧延スタンドの圧下率r
iがリミットを超過した場合には、その圧延スタンドには次の式(52)〜(55)が用いられる。これらの式のうち、式(52)および式(53)は、リミット超過時用に設定された最大値r
iMAXを含んでいる。
【0154】
例えば、第三番目圧延スタンドF
3のみに圧下率指定があったと仮定する。このケースでは、実施の形態ではN=5であり、i=3なので、i+N=8である。よって、
図2の行R
i+N(=R
8)を構成する評価関数g
8のみに、圧下率指定時用の式(40)〜(43)が選択される。
【0155】
実施の形態では、上記の各導関数のうち式(32)〜式(55)を、説明の便宜上、「第一導関数」と「第二導関数」とに区別して呼称することがある。これは説明の便宜上の呼称に過ぎず、その内容を限定するものではない。なお、マスフロー項である式(28)〜式(31)は第一導関数および第二導関数には含まれない。
【0156】
「第一導関数」は、荷重比またはパワー比を満たすように求められた導関数である。第一導関数は、実施の形態では式(32)〜(35)と式(36)〜式(39)とである。
【0157】
「第二導関数」は、各種パラメータ(つまり圧下率r
i、モーターパワーPw
i、荷重P
i)を圧下率指定あるいはリミッタ超過などのパラメータ制限に従って設定するように、予め定められた導関数である。第二導関数は、実施の形態では式(40)〜式(55)である。
【0158】
第一導関数と第二導関数とは、少なくとも下記の点において相違している。
【0159】
相違点の一つは、変数uの有無である。第一導関数では、各式に変数uが含まれており、具体的には各式にu
−1が含まれている。第一導関数は、荷重比またはパワー比を満たすように導出されている。第二導関数では、各式に変数uが含まれていない。この点で両者は異なる。
【0160】
他の相違点は、変数uの偏微分項に関する。変数uは、式(2)の圧延荷重項または式(16)のモーターパワー項である。第一導関数ではuの偏微分項である式(35)と式(39)とが数式で提供される。第一導関数は、荷重比またはパワー比を満たすように導出されている。これに対し、第二導関数では、uの偏微分項である式(43)と式(47)と式(51)と式(55)とがゼロである。つまり、第一導関数ではuの偏微分項が算入されるのに対し、第二導関数ではuの偏微分項が非算入である点で、両者は異なる。
【0161】
更に他の相違点は、目標値γ
iAIMの有無である。第一導関数では、各式にγ
iAIMが含まれており、具体的には各式に1/γ
iAIMが含まれている。第二導関数では、各式に変数γ
iAIMが含まれていない。その代わりに、第二導関数は、パラメータ制限の種別に応じてr
iAIMとP
iMAXとPw
iMAXとr
iMAXとを各式に含んでいる。この点で両者は異なる。
【0162】
更に他の相違点は、圧下率指定時および圧下率のリミット超過時の第二導関数が持つ違いである。第一導関数ではV
iの偏微分項である式(34)と式(38)とが数式で提供される。これに対し、第二導関数では、圧下率指定時におけるV
iの偏微分項の式(42)と、圧下率のリミット超過時におけるV
iの偏微分項の式(54)とが、いずれもゼロである。つまり、第一導関数ではV
iの偏微分項が算入されるのに対し、圧下率指定時および圧下率のリミット超過時に関しては第2導関数にV
iの偏微分項が非算入である点で、両者は異なる。
【0163】
図2に示したヤコビ行列Jの第二成分グループMX
2の成分として、第一導関数と第二導関数とのいずれかが選択的に用いられる。
【0164】
なお、
図2の列C
10は、圧延荷重項uの偏微分成分である。ヤコビ行列Jに列C
10が導入されていることは、実施の形態の特徴の一つである。
【0165】
[実施の形態の具体的制御]
図3は、実施の形態にかかる圧延プラント50で実行される制御を説明するためのフローチャートである。
図3は、上述した板厚スケジュール計算方法をプロセス計算機21で実行するための計算の流れを表している。
【0166】
プロセス計算機21は、
図3の処理を実行するためのプログラムを記憶している。以下の説明では、重複説明を避けるために、前述した「実施の形態の板厚スケジュール計算方法」で述べた数式、記号、および用語などが必要に応じて参照される。
【0167】
(ステップS100)
図3の制御フローでは、まずステップS100において、プロセス計算機21が、導関数ベクトルxに初期値をセットする。導関数ベクトルxは式(5)で述べたものである。
【0168】
(ステップS101)
次にステップS101において、プロセス計算機21は、圧延モデル式を計算する。圧延モデル式は、被圧延材温度と変形抵抗と荷重P
iとトルクとを含む。被圧延材温度は、1、52、55の温度計測値または温度推定値を含む。被圧延材温度は、プロセス計算機21の制御にリアルタイムでフィードバックされることが好ましい。荷重配分法とパワー比配分法とで、圧延モデル式は下記のように相違する。
【0169】
荷重比配分法を用いる場合には、圧延モデル式は荷重比γ
iを含む。この場合の圧延モデル式は、圧延荷重モデル(P
i)を含む式(2)と、先進率モデル(f
i)を含む式(4)とを備える。
【0170】
一方、変形例のパワー比配分法を用いる場合には、圧延モデル式はパワー比γ
iを含む。この場合の圧延モデル式は、モータパワーモデル(Pw
i)を含む式(16)と、先進率モデル(f
i)を含む式(4)とを備える。
【0171】
実施の形態では、説明の便宜上、圧延荷重比γ
iとモーターパワー比γ
iとを「第一の値」とも称する。なお、圧延荷重比とモーターパワー比とを包括する上位概念用語として「負荷配分比」という用語がある。第一の値は負荷配分比であってもよい。
【0172】
(ステップS102、S102a、S102b)
次に、ステップS102において、プロセス計算機21は、「パラメータ制限」が生じているか否かを判定する。「パラメータ制限」とは、各圧延スタンドF
1〜F
5の圧延荷重P
iとモーターパワーPw
iと圧下率r
iとのうち少なくとも一つのパラメータが何らかの理由で制限されていることである。
【0173】
実施の形態では、説明の便宜上、圧延荷重P
iとモーターパワーPw
iと圧下率r
iとを「第二の値」とも称する。
【0174】
ステップS102にかかるパラメータ制限判定処理は、第一の制限を判定する処理(ステップS102a)と第二の制限を判定する処理(ステップS102b)とを含んでいる。実施の形態では「第一の制限」と「第二の制限」との両方の制限機能が設けられているが、変形例としていずれか一方が省略されてもよい。
【0175】
まず「第一の制限」を説明する。ステップS102aにかかる第一の制限は、第二の値を指定値によって指定する制限である。第一の制限における指定値に複数の種類がある。以下、第一指定値と第二指定値とを例示する。
【0176】
第一指定値は、ルックアップテーブル参照値である。実施の形態では、具体例として圧下率のルックアップテーブル参照値r
iTBLが例示されている。これに代えて又はこれとともに、圧延荷重またはモーターパワーのルックアップテーブル参照値が必要に応じて設けられてもよい。
【0177】
第二指定値は、オペレータがインターフェース画面21aを介して入力したオペレータ指定値である。実施の形態では、具体例としてオペレータ圧下率指定値r
iOPが例示されている。これに代えて又はこれとともに、オペレータ圧延荷重指定値P
iOPとオペレータモータパワー指定値Pw
iOPとのうち少なくとも一方が必要に応じて設けられてもよい。
【0178】
次に「第二の制限」を説明する。ステップS102bにかかる第二の制限は、第二の値が予め定められたリミット範囲の外側に超過したときに、このリミット範囲で第二の値を制限するものである。第二の制限におけるリミット範囲に複数の種類がある。以下、第一リミット範囲と第二リミット範囲とを例示する。
【0179】
「第一リミット範囲」は、圧延プラント50が含む機器の機械定数に基づいて予め定められた範囲である。これに対し、「第二リミット範囲」は、圧延プラント50の操業上の制約に基づいて、第一リミット範囲とは異なる範囲に予め定められている。第二リミット範囲は、第一リミット範囲の内側に収まるように第一リミット範囲よりも狭く設定されてもよい。
【0180】
(ステップS104)
次に、ステップS104において、評価関数ベクトルgを計算する処理が実行される。まず、ステップS104では、プロセス計算機21が、ステップS102におけるパラメータ制限の有無に応じて、「モデルベース評価関数」と「修正評価関数」とのいずれかを選択する。
【0181】
モデルベース評価関数とは、式(7)または式(17)で定義される評価関数g
i+Nを参照するための便宜上の呼称である。パラメータ制限が生じていない場合にはモデルベース評価関数が選択される。
【0182】
修正評価関数とは、式(20)と式(23)と式(25)と式(27)で定義される複数の評価関数g
i+Nのうち任意の一つを参照するための便宜上の呼称である。パラメータ制限が生じている場合には、パラメータ制限の種別に応じて修正評価関数が選択的に使用される。修正評価関数は、変数u(つまり圧延荷重項またはモーターパワー項)と目標値γ
iAIMとを含んでいない点で、モデルベース評価関数と相違している。
【0183】
ある圧延スタンドで圧下率指定またはリミット超過があった場合には、その圧延スタンドに対応する評価関数ベクトルg
i+Nの置換が行われる。置換の具体的方法は、実施の形態の板厚スケジュール計算方法で式(21)〜式(27)を例示しつつ説明したので、その詳細は省略する。
【0184】
ステップS104では、当該評価関数ベクトルg
i+Nの置換が行われた後、置換後の評価関数ベクトルが計算される。
【0185】
(ステップS105)
次に、ステップS105において、プロセス計算機21が、ステップS104における評価関数g
iおよび評価関数g
i+Nの計算結果を用いて、式(14a)および式(14b)に基づく収束判定を行う。式(14a)および式(14b)の条件が両方とも成立したらループから抜けて、
図3の処理は後述するようにメインルーチン(図示せず)にリターンする。
【0186】
(ステップS106、S107)
ステップS105で収束判定条件が満たされていない場合には、ステップS106において、プロセス計算機21が、ヤコビ行列Jを構成するとともにその成分である各導関数(各偏微分項)を計算する。
【0187】
ヤコビ行列Jの構成は、ステップS102でのパラメータ制限判定の結果に応じて変わる。具体的には、ステップS102でパラメータ制限が生じていなければ、ステップS106において第一導関数(つまり式(32)〜(35)または式(36)〜式(39))がヤコビ行列Jの成分として選択される。一方、ステップS102でパラメータ制限が生じているときには、その制限の種類に応じて、第二導関数(つまり式(40)〜式(55))がヤコビ行列Jの成分として選択される。
【0188】
実施の形態では、前述したステップS104で評価関数が選択されると、これに応じてステップS106におけるヤコビ行列Jの導関数も決まる。モデルベース評価関数と第一導関数とが対応しており、修正評価関数と第二導関数とが対応しているからである。プロセス計算機21は、第一導関数と第二導関数とのうちステップS106で選択された導関数を含むようにヤコビ行列Jを構築する。その後、ヤコビ行列Jが含む各導関数の計算が行われる。
【0189】
次のステップS107で、プロセス計算機21は、ステップS106で計算されたヤコビ行列Jの逆行列J
−1を計算する。
【0190】
(ステップS108)
次に、ステップS108で、プロセス計算機21は、各圧延スタンドF
1〜F
5の出側板厚を修正する。具体的には、ステップS107で計算した逆行列J
−1を用いて、式(13)に従って未知変数ベクトルxが更新される。
【0191】
その後処理は図示しないメインルーチンにリターンする。板厚スケジュール計算のサブルーチンからメインルーチンへと処理が戻った後、その板厚を使って各種モデルの計算処理が実行される。この計算の結果に基づいて、ネットワークを介して、コントローラ22に対してアクチュエータ設定値が出力される。
【0192】
以上説明した実施の形態によれば、圧延に関するパラメータ制限(ステップS102)が発生したかどうかに応じて、板厚スケジュール計算に用いる関数(評価関数gおよびその導関数)を変更することができる。パラメータ制限の発生時には、状況によってはモデルベース評価関数に基づいて解を求めることが過大な演算時間または過大な演算不可をもたらすので、収束条件が満たされず、板厚スケジュール計算が停滞する可能性がある。この点、実施の形態では、計算内容が適切に修正されるので、板厚スケジュールの計算が停滞することを抑制することができる。
【0193】
ステップS102aに関して、プロセス計算機21は、第一指定値と第二指定値とのうち両方を受け入れるように構築されてもよいし、片方の指定値のみを受け入れるように構築されてもよい。
【0194】
ステップS102bに関して、プロセス計算機21は、第一リミット範囲と第二リミット範囲との両方を備えてもよいし、片方のリミット範囲のみを備えてもよい。
【0195】
図3の制御フローでは、ステップS102が、第一の制限と第二の制限とからなる複数種類のパラメータ制限を含んでいる。この場合には、パラメータ制限の優先順位が定められてもよく、複数の制限が発生したときに優先順位の高い制限が適用されるように構築されてもよい。
【0196】
以下、優先順位のバリエーションを説明する。以下の説明では、便宜上、不等号を用いて優先順位を説明する。「制限A>制限B」と記載したときには制限Aの優先順位が相対的に高いものとする。
【0197】
例えば「上記第一の制限>上記第二の制限」であってもよく、その逆であってもよい。第一の制限において、「オペレータ指定値>ルックアップテーブル参照値」であってもよく、つまりr
iTBLよりもr
iOPを優先してもよい。しかし、その逆であってもよい。第二の制限において、第一リミット範囲と第二リミット範囲とのうち狭い方のリミット範囲が優先されてもよい。
【0198】
複数の第一の制限と複数の第二の制限とが混在してもよい。混在の一例として、「オペレータ指定値>第二リミット範囲>ルックアップテーブル参照値>第一リミット範囲」の順番に、優先順位が定められてもよい。オペレータ指定値とルックアップテーブル参照値と第二リミット範囲と第一リミット範囲とのうち、圧延プラント50が備えない制限は上記優先順位から省略されてもよい。
【0199】
なお、機器の保護または操業効率を維持する観点から、第一リミット範囲または第二リミット範囲を超えるようにパラメータが指定されたときに、その指定は無視されてもよい。
【0200】
ニュートンラフソン法の代わりに、非線形の連立方程式を解くための他の公知の解法あるいは他の公知の求根アルゴリズムが用いられてもよい。ニュートンラフソン法以外にも、例えば変形例としてガウスの掃き出し法に従って未知変数ベクトルの解を求めてもよい。
【0201】
なお、上述した実施の形態にかかる板厚スケジュール計算方法の計算順序および具体的制御のステップ群の順序は、前後関係が明確に限定されている場合を除いて、その順序を変更してもよいものとする。
板厚スケジュール計算方法は、複数のステップを備える。一つのステップは、圧延荷重モデルまたはモータパワーモデルを含む圧延モデル式を取得する。他のステップは、各圧延スタンドの圧延荷重とモーターパワーと圧下率とのうち少なくとも一つのパラメータを制限するパラメータ制限が生じているか否かの判定をする。更に他のステップは、パラメータ制限が生じていないときに第一導関数を選択しパラメータ制限が生じているときに第二導関数を選択するように判定の結果に応じた導関数の選択を各圧延スタンドについて行う。更に他のステップは、第一導関数と第二導関数とのうち判定の結果に応じて選択された導関数を含む行列を用いて、各圧延スタンドの出側板厚を修正する。