【実施例】
【0036】
〔実施例1〕
本実施例では、まず、Eガラス繊維組成のガラスフィラメントを紡糸して経糸と緯糸とを得た。前記経糸は長径DLtが4.2μm、短径DStが3.2μm、円換算直径が3.7μmの扁平ガラスフィラメントが40本集束されてなり、撚数Ttが0.30回/25mmのガラスヤーンであり、前記緯糸は長径DLyが4.2μm、短径DSyが3.2μm、円換算直径が3.7μmの扁平(楕円)ガラスフィラメントが40本集束されてなり、撚数Tyが0.30回/25mmのガラスヤーンである。
【0037】
次に、エアージェット式織機を用い製織し、前記経糸の織密度を95本/25mmとし、前記緯糸の織密度を95本/25mmとして、平織のガラスクロスを得た。
【0038】
前記ガラスクロスに、脱油処理、表面処理及び開繊処理を施して、本実施例のガラスクロスを得た。
【0039】
ここで、脱油処理としては、ガラスクロスを雰囲気温度が350℃〜400℃の加熱炉内に60時間配置し、該ガラスクロスに付着している紡糸用集束剤と製織用集束剤を加熱分解する処理を採用した。
【0040】
また、表面処理としては、ガラスクロスにシランカップリング剤を塗布し、130℃の加熱炉内に連続的に通しながら硬化させる処理を採用した。
【0041】
また、開繊処理としては、ガラスクロスの経糸に50Nの張力をかけ、水流圧力を1.0MPaに設定した水流圧力による開繊処理を採用した。
【0042】
次に、本実施例で得られたガラスクロスを、メチルエチルケトンで希釈したエポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名:EPICLON1121N?80N)中に浸漬して、該ガラスクロスに樹脂を含浸させ、幅13μmのスリット間を通過させて余剰の樹脂を除去した後、乾燥機にて、150℃の温度下に1分間保持して、前記エポキシ樹脂を含浸させたガラスクロスを半硬化させて評価用プリプレグシートサンプルを得た。結果を表1に示す。
【0043】
表1において、前記ガラスクロスの厚さは、JIS R 3420に準拠して、ガラスクロス中15点でその厚さをマイクロメーターで測定したときの測定値の平均値である。
【0044】
また、前記経糸又は緯糸の長径と短径は、該経糸又は該緯糸の断面それぞれ50点について、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、商品名:S-3400N、倍率:3000倍)で、該経糸又は該緯糸を構成するガラスフィラメント断面の略中心を通る最長の辺を長径とし、該長径とガラスフィラメント断面の略中心で直交する辺を短径として、それぞれの長さを測定したときの測定値の平均値である。また、前記経糸又は緯糸を構成するガラスフィラメントの本数は、該経糸又は該緯糸の断面それぞれ50点について、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、商品名:S-3400N、倍率:500倍)で、該経糸又は該緯糸を構成するガラスフィラメントの本数を計測したときの計測値の平均値である。
【0045】
また、前記経糸又は緯糸の撚数は、JIS R 3912に準拠して、検撚器を用い、試験片の解撚に必要なターン数および試験片の解撚前の標準張力下での長さから算出して求めることができる。
【0046】
また、前記経糸の織密度は、JIS R 3420に準拠して、織物分解鏡を用い、緯方向の25mmの範囲にある経糸の本数を数えることにより求めることができる。また、前記緯糸の織密度は、JIS R 3420に準拠して、織物分解鏡を用い、経方向の25mmの範囲にある緯糸の本数を数えることにより求めることができる。
【0047】
また、前記経糸又は緯糸の糸幅は、ガラスクロスから60mm×100mmのサンプル3枚を切り出し、各サンプル当たりそれぞれ30本の経糸又は緯糸について、マイクロスコープ(株式会社キーエンス製、商品名:VHX?2000、倍率:200倍)で測定したときの測定値の平均値である。
【0048】
また、前記評価用プリプレグシートサンプルのピンホールの発生数(ピンホール数)は、前記評価用プリプレグシートサンプルの表面の200mm×600mmの領域を目視で確認して、ピンホールが無い場合を「○」(良)、ピンホールが存在する場合を「×」(不可)とした。前記ピンホールは、ガラスクロス中の空隙部に樹脂が充填されていない部分として観察される。
【0049】
また、製造時間指数は、経糸を引き揃える整経工程から、10000mの本実施例のガラスクロスを製織するまでの製造時間を求め、後述の比較例1において、経糸を引き揃える整経工程から、10000mの比較例1のガラスクロスを製織するまでの製造時間で除した数値である。製造時間指数が小さい程、作業性・製造効率が向上していることを意味する。
【0050】
〔実施例2〕
本実施例では、まず、Eガラス繊維組成のガラスフィラメントを紡糸して経糸と緯糸とを得たときに、前記経糸を長径DLtが4.6μm、短径DStが2.8μm、円換算直径が3.6μmのガラスフィラメントが38本集束されてなり、撚数Ttが0.03回/25mmのガラスヤーンとし、前記緯糸を長径DLyが4.6μm、短径DSyが2.8μm、円換算直径が3.6μmのガラスフィラメントが38本集束されてなり、撚数Tyが0.03回/25mmのガラスヤーンとした以外は、実施例1と全く同一にして、本実施例のガラスクロスを得た。
【0051】
次に、本実施例で得られたガラスクロスを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、本実施例の評価用プリプレグシートサンプルを得た。結果を表1に示す。
【0052】
〔実施例3〕
本実施例では、まず、Eガラス繊維組成のガラスフィラメントを紡糸して経糸と緯糸とを得たときに、前記経糸を長径DLtが3.6μm、短径DStが2.8μm、円換算直径が3.2μmのガラスフィラメントが40本集束されてなり、撚数Ttが0.30回/25mmのガラスヤーンとし、前記緯糸を長径DLyが3.6μm、短径DSyが2.8μm、円換算直径が3.2μmのガラスフィラメントが40本集束されてなり、撚数Tyが0.30回/25mmのガラスヤーンとした以外は、実施例1と全く同一にして、本実施例のガラスクロスを得た。
【0053】
次に、本実施例で得られたガラスクロスを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、本実施例の評価用プリプレグシートサンプルを得た。結果を表1に示す。
【0054】
〔実施例4〕
本実施例では、まず、Eガラス繊維組成のガラスフィラメントを紡糸して経糸と緯糸とを得たときに、前記経糸を長径DLtが3.6μm、短径DStが3.6μm、円換算直径が3.6μmのガラスフィラメントが38本集束されてなり、撚数Ttが0.70回/25mmのガラスヤーンとし、経糸の織密度を105本/25mmとし、前記緯糸を長径DLyが5.2μm、短径DSyが3.3μm、円換算直径が4.1μmのガラスフィラメントが38本集束されてなり、撚数Tyが0.03回/25mmのガラスヤーンとした以外は、実施例1と全く同一にして、本実施例のガラスクロスを得た。
【0055】
次に、本実施例で得られたガラスクロスを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、本実施例の評価用プリプレグシートサンプルを得た。結果を表1に示す。
【0056】
〔実施例5〕
本実施例では、まず、Eガラス繊維組成のガラスフィラメントを紡糸して経糸と緯糸とを得たときに、前記緯糸を長径DLyが4.5μm、短径DSyが3.5μm、円換算直径が4.0μmの扁平ガラスフィラメントが38本集束されてなり、撚数Tyが0.03回/25mmのガラスヤーンとした以外は、実施例4と全く同一にして、本実施例のガラスクロスを得た。
【0057】
次に、本実施例で得られたガラスクロスを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、本実施例の評価用プリプレグシートサンプルを得た。結果を表1に示す。
【0058】
〔実施例6〕
本実施例では、まず、Eガラス繊維組成のガラスフィラメントを紡糸して経糸と緯糸とを得たときに、前記緯糸を長径DLyが4.6μm、短径DSyが2.8μm、円換算直径が3.6μmの扁平ガラスフィラメントが38本集束されてなり、撚数Tyが0.03回/25mmのガラスヤーンとした以外は、実施例4と全く同一にして、本実施例のガラスクロスを得た。
【0059】
次に、本実施例で得られたガラスクロスを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、本実施例の評価用プリプレグシートサンプルを得た。結果を表1に示す。
【0060】
〔実施例7〕
本実施例では、まず、Eガラス繊維組成のガラスフィラメントを紡糸して経糸と緯糸とを得たときに、前記緯糸を長径DLyが4.6μm、短径DSyが2.8μm、円換算直径が3.6μmの扁平ガラスフィラメントが38本集束されてなり、撚数Tyが0.09回/25mmのガラスヤーンとした以外は、実施例4と全く同一にして、本実施例のガラスクロスを得た。
【0061】
次に、本実施例で得られたガラスクロスを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、本実施例の評価用プリプレグシートサンプルを得た。結果を表1に示す。
【0062】
〔比較例1〕
本比較例では、まず、Eガラス繊維組成のガラスフィラメントを紡糸して経糸と緯糸とを得たときに、前記緯糸を長径DLyが3.6μm、短径DSyが3.6μm、円換算直径が3.6μmのガラスフィラメントが38本集束されてなり、撚数Tyが0.70回/25mmのガラスヤーンとし、緯糸の織密度を110本/25mmとした以外は、実施例4と全く同一にして、本比較例のガラスクロスを得た。
【0063】
次に、本比較例で得られたガラスクロスを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、本比較例の評価用プリプレグシートサンプルを得た。結果を表2に示す。
【0064】
〔比較例2〕
本比較例では、まず、Eガラス繊維組成のガラスフィラメントを紡糸して経糸と緯糸とを得たときに、前記緯糸を長径DLyが3.9μm、短径DSyが3.5μm、円換算直径が3.7μmの扁平ガラスフィラメントが38本集束されてなり、撚数Tyが0.03回/25mmのガラスヤーンとした以外は、実施例4と全く同一にして、本比較例のガラスクロスを得た。
【0065】
次に、本比較例で得られたガラスクロスを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、本比較例の評価用プリプレグシートサンプルを得た。結果を表2に示す。
【0066】
〔比較例3〕
本比較例では、まず、Eガラス繊維組成のガラスフィラメントを紡糸して経糸と緯糸とを得たときに、前記緯糸を長径DLyが4.4μm、短径DSyが2.2μm、円換算直径が3.1μmの扁平ガラスフィラメントが38本集束されてなり、撚数Tyが0.03回/25mmのガラスヤーンとした以外は、実施例4と全く同一にして、本比較例のガラスクロスを得た。
【0067】
次に、本比較例で得られたガラスクロスを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、本比較例の評価用プリプレグシートサンプルを得た。結果を表2に示す。
【0068】
〔比較例4〕
本比較例では、まず、Eガラス繊維組成のガラスフィラメントを紡糸して経糸と緯糸とを得たときに、前記緯糸を長径DLyが4.6μm、短径DSyが2.8μm、円換算直径が3.6μmの扁平ガラスフィラメントが32本集束されてなり、撚数Tyが0.03回/25mmのガラスヤーンとした以外は、実施例4と全く同一にして、本比較例のガラスクロスを得た。
【0069】
次に、本比較例で得られたガラスクロスを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、本比較例の評価用プリプレグシートサンプルを得た。結果を表2に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
表1から、実施例1〜7のガラスクロスによれば、作業性・製造効率を向上させながら、厚さを10μm未満というように高度に薄型化したときにも、該ガラスクロスを含むプリプレグにおいてピンホールの発生が無いことが明らかである。
【0073】
一方、表2から、経糸と緯糸とが何れも扁平ガラスフィラメントではない比較例1のガラスクロスによれば、該ガラスクロスを含むプリプレグにおいてピンホールの発生は無いものの、該ガラスクロスの厚さを10μm未満とすることができない。
【0074】
また、緯糸が扁平ガラスフィラメントからなるものの、DL/DSの値が1.11であって異形比が低く、該扁平ガラスフィラメントの本数Fと、撚数Tと、長径DLと、短径DSとが前記式(1)を満たさない比較例2のガラスクロスによれば、該ガラスクロスの厚さを10μm未満とすることができず、しかも該ガラスクロスを含むプリプレグにおいてピンホールが発生する。
【0075】
また、緯糸が扁平ガラスフィラメントからなるものの、DL/DSの値が2.00であって異形比が高く、該扁平ガラスフィラメントの本数Fと、撚数Tと、長径DLと、短径DSとが前記式(1)を満たさない比較例3のガラスクロスによれば、該ガラスクロスを含むプリプレグにおいてピンホールの発生は無いものの、該扁平ガラスフィラメントの長径が厚さ方向に位置することがあり、該ガラスクロスの厚さを10μm未満とすることができない。
【0076】
また、緯糸が扁平ガラスフィラメントからなるものの、該扁平ガラスフィラメントの本数Fと、撚数Tと、長径DLと、短径DSとが前記式(1)を満たさない比較例4のガラスクロスによれば、該ガラスクロスの厚さは10μm未満とすることができるが、該ガラスクロスを含むプリプレグにおいてピンホールが発生する。