(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記係合子本体は、前記1対の本体プレート同士の間の、前記第2方向に関する両側部において、該1対の本体プレート同士の間に軸方向に挟持された中間プレートをさらに備えており、
前記揺動支持軸は、前記1対の本体プレートの、前記第2方向に関する中間部に、その軸方向両側部を支持されており、
前記リンク部材は、前記1対の本体プレート同士の間の、前記第2方向に関する中間部に、揺動可能に配置されている、
請求項1または2に記載の逆入力遮断クラッチ。
前記1対の係合子同士の間に配置され、該1対の係合子のそれぞれを前記被押圧面に近づける方向に弾性的に付勢するばねをさらに備える、請求項4に記載の逆入力遮断クラッチ。
【背景技術】
【0002】
逆入力遮断クラッチは、駆動源などの入力側機構に接続される入力部材と、減速機構などの出力側機構に接続される出力部材とを備えており、入力部材に入力される回転トルクを出力部材に伝達するのに対し、出力部材に逆入力される回転トルクを完全に遮断して入力部材に伝達しないか、または、その一部のみを入力部材に伝達して残部を遮断する機能を有する。
【0003】
図26〜
図32は、国際公開2019/026794号に記載された、逆入力遮断クラッチの従来構造の1例を示している。
【0004】
逆入力遮断クラッチ101は、入力部材102と、出力部材103と、被押圧部材104と、1対の係合子105とを備える。
【0005】
入力部材102は、電動モータなどの入力側機構に接続され、回転トルクが入力される。入力部材102は、
図28に示すように、入力軸部106と、1対の入力側係合部107とを有する。入力軸部106のうちの小径の基端部が、前記入力側機構の出力部に接続される。1対の入力側係合部107は、入力軸部106の先端面の直径方向反対側2箇所位置から軸方向に伸長した凸部により構成されている。
【0006】
出力部材103は、減速機構などの出力側機構に接続され、回転トルクを出力する。出力部材103は、入力部材102と同軸に配置されており、
図29に示すように、出力軸部108と、出力側係合部109とを有する。出力軸部108の基端部が、前記出力側機構の入力部に接続される。出力側係合部109は、略長円柱状であり、出力軸部108の先端面の中央部から軸方向に伸長している。出力側係合部109は、1対の入力側係合部107の間部分に配置される。
【0007】
被押圧部材104は、
図27に示すように、円環状であり、ハウジングなどの図示しない他の部材に固定されて、その回転が拘束されている。被押圧部材104は、入力部材102および出力部材103と同軸に、かつ、1対の入力側係合部107および出力側係合部109の径方向外側に配置されている。被押圧部材104の内周面は、円筒状の凹面である被押圧面110により構成されている。
【0008】
1対の係合子105のそれぞれは、略半円形板状であり、被押圧部材104の径方向内側に配置されている。1対の係合子105は、被押圧面110に対向する径方向外側面と、互いに対向する径方向内側面とを有する。1対の係合子105のそれぞれの径方向外側面は、部分円筒状の凸面である押圧面111により構成されており、その径方向内側面は、後述する出力側被係合部114が形成された部分以外が平坦面となった底面112により構成されている。押圧面111の曲率半径は、被押圧面110の曲率半径以下である。なお、係合子105に関して径方向とは、
図26に矢印Aで示した底面112に対して直角な方向をいい、
図26に矢印Bで示した底面112に対して平行な方向を、係合子105に関して幅方向という。
【0009】
1対の係合子105を被押圧部材104の径方向内側に配置した状態で、被押圧面110と押圧面111との間部分、および、底面112同士の間部分のうちの少なくとも一方の間部分に隙間が存在するように、被押圧部材104の内径寸法および係合子105の径方向寸法が規制されている。
【0010】
1対の係合子105のそれぞれは、入力側被係合部113と、出力側被係合部114とを有する。入力側被係合部113は、係合子105の径方向中間部を軸方向に貫通する孔により構成されている。入力側被係合部113は、入力側係合部107を緩く挿入できる大きさを有する。このため、入力側係合部107は、入力側被係合部113(係合子105)に対し、入力部材102の回転方向に関する変位が可能であり、入力側被係合部113(係合子105)は、入力側係合部107に対し、係合子105の径方向の変位が可能である。出力側被係合部114は、係合子105の底面112の幅方向中央部から径方向外方に向けて凹んだ略矩形状の凹部により構成されている。出力側被係合部114は、その内側に出力側係合部109の短軸方向の先半部を配置できる大きさを有する。
【0011】
逆入力遮断クラッチ101は、その組立状態で、軸方向一方側に配置した入力部材102の1対の入力側係合部107を、1対の係合子105の入力側被係合部113に軸方向に挿入し、かつ、軸方向他方側に配置した出力部材103の出力側係合部109を、1対の出力側被係合部114同士の間に軸方向に挿入している。すなわち、1対の係合子105は、それぞれの出力側被係合部114により、出力側係合部109を径方向外側から挟むように配置されている。
【0012】
入力部材102に入力側機構から回転トルクが入力されると、
図30に示すように、入力側被係合部113の内側で、入力側係合部107が入力部材102の回転方向(
図30の例では時計方向)に回転する。すると、入力側係合部107の径方向内側面が入力側被係合部113の内面を径方向内方に向けて押圧し、1対の係合子105を、被押圧面110から遠ざかる方向にそれぞれ移動させる。この結果、1対の出力側被係合部114が出力部材103の出力側係合部109を径方向両側から挟持し、出力側係合部109と1対の出力側被係合部114とが、がたつきなく係合する。この結果、入力部材102に入力された回転トルクが、1対の係合子105を介して、出力部材103に伝達され、出力部材103から出力される。
【0013】
一方、出力部材103に出力側機構から回転トルクが逆入力されると、
図31に示すように、出力側係合部109が、1対の出力側被係合部114同士の内側で、出力部材103の回転方向(
図31の例では時計方向)に回転する。すると、出力側係合部109の角部が出力側被係合部114の底面を径方向外方に向けて押圧し、1対の係合子105を、被押圧面110に近づく方向にそれぞれ移動させる。この結果、1対の係合子105のそれぞれの押圧面111が、被押圧部材104の被押圧面110に対して押し付けられる。この結果、出力部材103に逆入力された回転トルクが、図示しない他の部材に固定された被押圧部材104に伝わることで完全に遮断されて入力部材102に伝達されないか、または、出力部材103に逆入力された回転トルクの一部のみが入力部材102に伝達され残部が遮断される。
【0014】
出力部材103に逆入力された回転トルクを完全に遮断して入力部材102に伝達されないようにするには、押圧面111が被押圧面110に対して摺動(相対回転)しないように、1対の係合子105を出力側係合部109と被押圧部材104との間で突っ張らせ、出力部材103をロックする。これに対し、出力部材103に逆入力された回転トルクのうちの一部のみが入力部材102に伝達され残部が遮断されるようにするには、押圧面111が被押圧面110に対して摺動するように、1対の係合子105を出力側係合部109と被押圧部材104との間で突っ張らせ、出力部材103を半ロックする。出力部材103が半ロックした状態で、さらに出力部材103に回転トルクが逆入力されると、1対の係合子105が、出力側係合部109と出力側被係合部114との係合に基づいて、押圧面111を被押圧面110に対して摺動させつつ、出力部材103の回転中心を中心として回転する。1対の係合子105が回転すると、入力側被係合部113の内面が入力側係合部107の径方向内側面を周方向(回転方向)に押圧して、入力部材102に回転トルクの一部が伝達される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述した従来の逆入力遮断クラッチ101は、入力部材102への回転トルクの入力に伴って、
図31に示したロックまたは半ロック状態から、
図30に示した非ロック状態への切り換えを円滑に行う面から改良の余地がある。
【0017】
従来構造では、
図31に示したロックまたは半ロック状態から、入力部材102に回転トルクTが入力されることで、
図32に示すように、入力部材102の入力側係合部107が、係合子105の入力側被係合部113に当接すると、入力側係合部107と入力側被係合部113との当接部Xには、回転トルクTに基づく並進荷重Ft(T=Ft・R(Rは、入力部材102の回転中心Oから当接部Xまでの距離))が作用する。この並進荷重Ftの方向、すなわち、入力部材102から係合子105に作用する荷重の方向は、ロックまたは半ロック状態から非ロック状態への切り換え時に係合子105が移動すべき方向である、係合子105の径方向(被押圧面110に対する係合子105の遠近方向)に対して大きく傾いている。ロックまたは半ロック状態から非ロック状態への切り換えを円滑に行う面からは、入力部材102から係合子105に作用する荷重の方向を、係合子105の径方向とほぼ平行にすることが好ましい。
【0018】
本発明の目的は、上述のような事情に鑑み、入力部材への回転トルクの入力時に、ロックまたは半ロック状態から非ロック状態への切り換えを円滑に行うことができる逆入力遮断クラッチの構造を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一態様の逆入力遮断クラッチは、被押圧部材と、入力部材と、出力部材と、係合子とを備える。
【0020】
前記被押圧部材は、内周面に被押圧面を有する。
【0021】
前記入力部材は、前記被押圧面の径方向内側に配置された入力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に配置されている。
【0022】
前記出力部材は、前記被押圧面の径方向内側において前記入力側係合部よりも径方向内側に配置された出力側係合部を有し、前記被押圧面と同軸に配置されている。
【0023】
前記係合子は、係合子本体とリンク部材とを有し、前記被押圧面の径方向内側に、前記被押圧面に対する遠近方向である第1方向の移動を可能に配置されている。
【0024】
前記係合子本体は、前記被押圧面の軸方向に重畳して配置され、かつ、互いに結合された1対の本体プレートと、前記第1方向に関して前記入力側係合部よりも前記被押圧面に近い側に配置され、かつ、前記1対の本体プレートに軸方向両側部を支持された揺動支持軸とを備える。
【0025】
前記1対の本体プレートは、前記被押圧面に対向し、かつ、前記第1方向と前記被押圧面の軸方向とのそれぞれに直交する第2方向に関する両側部に配置された1対の押圧面と、前記出力側係合部と係合する出力側被係合部とを有する。
【0026】
前記1対の押圧面のうちの一方の押圧面は、前記1対の本体プレートのうちの一方の本体プレートに備えられている。
【0027】
前記1対の押圧面のうちの他方の押圧面は、前記1対の本体プレートのうちの他方の本体プレートに備えられている。
【0028】
前記リンク部材は、前記1対の本体プレート同士の間に配置され、かつ、前記揺動支持軸に揺動可能に連結された第1の端部と、前記入力側係合部に揺動可能に連結された第2の端部とを有する。
【0029】
前記係合子は、前記入力部材に回転トルクが入力されると、前記入力側係合部によって、前記リンク部材を介して前記揺動支持軸が引っ張られることにより、前記被押圧面から遠ざかるように変位するとともに、前記出力側被係合部を前記出力側係合部に係合させることにより、前記入力部材に入力された回転トルクを前記出力部材に伝達し、前記出力部材に回転トルクが逆入力されると、前記出力側係合部と前記出力側被係合部との係合に基づいて、前記1対の押圧面を前記被押圧面に押し付けることで、前記1対の押圧面を前記被押圧面に摩擦係合させる。
【0030】
本発明の一態様では、前記係合子本体は、挿通孔を有しており、前記入力側係合部は、前記挿通孔に挿入されており、前記入力側係合部と前記挿通孔の内面との間に、前記入力側係合部が前記係合子本体に対し前記入力部材の回転方向に関して変位することを可能にする隙間、および、前記係合子本体が前記入力側係合部に対し前記第1方向に変位することを可能にする隙間が存在する。
【0031】
本発明の一態様では、前記係合子本体は、前記1対の本体プレート同士の間の、前記第2方向に関する両側部において、前記1対の本体プレート同士の間に軸方向に挟持された中間プレートをさらに備えており、前記揺動支持軸は、前記1対の本体プレートの、前記第2方向に関する中間部に、その軸方向両側部を支持されており、前記リンク部材は、前記1対の本体プレート同士の間の、前記第2方向に関する中間部に、揺動可能に配置されている。
【0032】
本発明の一態様では、1対の前記係合子が、前記出力側係合部を径方向両側から挟むように備えられている。
【0033】
本発明の一態様では、前記1対の係合子同士の間に配置され、該1対の係合子のそれぞれを前記被押圧面に近づける方向に弾性的に付勢するばねをさらに備える。
【0034】
本発明の一態様では、前記ばねが、コイルばねであり、前記1対の係合子のそれぞれの前記係合子本体が、前記コイルばねに挿入され、かつ、該コイルばねを保持する凸部を有する。
【0035】
本発明の一態様では、前記凸部は、前記係合子本体を構成する前記中間プレートに備えられる。
【0036】
本発明の一態様では、前記ばねが、コイルばねであり、前記1対の係合子のそれぞれの前記係合子本体が、前記コイルばねの端部を挿入することで該コイルばねを保持する凹部を有する。
【0037】
本発明の一態様では、前記凹部は、前記係合子本体を構成する前記中間プレートに備えられる。
【0038】
本発明の一態様では、前記1対の本体プレートが、互いに同じ形状を有する。
【0039】
本発明の一態様では、前記出力側被係合部は、前記係合子本体のうち前記第1方向に関して前記被押圧面から遠い側の側面に備えられた凹部により構成されており、前記凹部の内面は、前記第2方向の両側部に、前記第2方向に関して互いに対向する1対の被ガイド面を有しており、前記出力側係合部は、前記1対の被ガイド面と対向する2箇所に、1対のガイド面を有しており、前記入力部材に回転トルクが入力されることによって前記係合子が前記第1方向に関して前記被押圧面から遠ざかる方向に変位する際に、前記1対の被ガイド面が前記1対のガイド面に案内されることにより、前記係合子が、前記第2方向に移動することを規制される。
【0040】
本発明の一態様では、前記1対の被ガイド面が、前記第1方向に関して前記被押圧面から遠ざかる方向に向かうほど互いの間隔が拡がる方向に傾斜した1対の凹曲面により構成されており、前記1対のガイド面が、前記1対の凹曲面に接触可能な1対の凸曲面により構成されている。
【発明の効果】
【0041】
本発明の一態様の逆入力遮断クラッチによれば、入力部材への回転トルクの入力時に、押圧面が被押圧面に押し付けられた状態(ロックまたは半ロック状態)から、押圧面が被押圧面から離れた状態(非ロック状態)への切り換えを円滑に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
[第1例]
本発明の実施の形態の第1例について、
図1〜
図20を用いて説明する。
【0044】
なお、以下の説明において、軸方向、径方向、および周方向とは、特に断らない限り、逆入力遮断クラッチ1の軸方向、径方向、および周方向をいう。本例において、逆入力遮断クラッチ1の軸方向、径方向、および周方向は、入力部材2の軸方向、径方向、および周方向と一致し、かつ、出力部材3の軸方向、径方向、および周方向と一致する。逆入力遮断クラッチ1に関して、軸方向一方側は、
図1、
図3、
図4、
図9、
図12、
図13、および、
図15〜
図18の右側であり、軸方向他方側は、
図1、
図3、
図4、
図9、
図12、
図13、および、
図15〜
図18の左側である。
【0045】
[逆入力遮断クラッチの構造の説明]
本例の逆入力遮断クラッチ1は、入力部材2と、出力部材3と、被押圧部材であるハウジング4と、1対の係合子5と、1対のばね56とを備える。逆入力遮断クラッチ1は、入力部材2に入力される回転トルクを出力部材3に伝達するのに対し、出力部材3に逆入力される回転トルクは完全に遮断して入力部材2に伝達しないか、または、その一部のみを入力部材2に伝達して残部を遮断する逆入力遮断機能を有する。
【0046】
(入力部材2)
入力部材2は、電動モータなどの入力側機構に接続され、回転トルクが入力される。入力部材2は、例えば
図3および
図4に示すように、入力軸部6と、1対の入力腕部7と、1対の入力側係合部8とを有する。入力軸部6は、円柱状であり、その軸方向一方側の端部が前記入力側機構の出力部に接続される。1対の入力腕部7は、入力軸部6の軸方向他方側の端部から、互いに径方向反対側に向けて伸長しており、かつ、それぞれの径方向中間部に、軸方向の貫通孔である支持孔9を有する。1対の入力側係合部8は、それぞれが円柱状のピンにより構成されており、それぞれの軸方向一方側の端部が、1対の入力腕部7の支持孔9に圧入により内嵌固定されている。この状態で、1対の入力側係合部8は、1対の入力腕部7から軸方向一方側に伸長している。なお、入力部材は、全体を一体に(1部品として)構成することもできる。
【0047】
(出力部材3)
出力部材3は、減速機構などの出力側機構に接続され、回転トルクを出力する。出力部材3は、入力部材2と同軸に配置されており、例えば
図3および
図4に示すように、出力軸部10と、出力側係合部11とを有する。出力軸部10は、円柱状であり、その軸方向他方側の端部が前記出力側機構の入力部に接続される。出力側係合部11は、略長円柱状であり、出力軸部10の軸方向一方側端面の中央部から軸方向一方側に伸長している。出力側係合部11の外周面は、例えば
図5、
図6、
図20(A)、および
図20(B)に示すように、短軸方向(
図5、
図6、
図20(A)、および
図20(B)の上下方向)の両側の側面12と、長軸方向(
図5、
図6、
図20(A)、および
図20(B)の左右方向)の両側の側面である1対のガイド面13とを有する。
【0048】
1対の側面12のそれぞれは、出力側係合部11の短軸方向に対して直交する平坦面により構成されている。1対のガイド面13のそれぞれは、凸曲面により構成されている。具体的には、1対のガイド面13のそれぞれは、出力側係合部11の中心軸(出力部材3の中心軸)を中心とする部分円筒状の凸面により構成されている。したがって、出力部材3に関しては、例えば丸棒素材の外周面を、1対のガイド面13として利用することができ、その分、加工コストを抑えられる。ただし、本発明を実施する場合には、1対のガイド面である凸曲面は、出力部材3の中心軸と平行な軸を中心とする部分円筒状の凸面としたり、あるいは、部分楕円筒状の凸面などの非円筒状の凸面としたりすることもできる。また、本例では、出力軸部10と出力側係合部11とが一体に造られているが、本発明を実施する場合には、互いに別体に造られた出力軸部と出力側係合部とを互いに結合固定することもできる。出力側係合部11は、1対の入力側係合部8よりも径方向内側に配置されており、具体的には、1対の入力側係合部8同士の間部分に配置される。
【0049】
(ハウジング4)
ハウジング4は、例えば
図1〜
図4に示すように、中空円盤状であり、図示しない他の部材に固定されて、その回転が拘束されている。ハウジング4は、入力部材2および出力部材3と同軸に配置され、かつ、その内側に、1対の入力側係合部8、出力側係合部11、1対の係合子5および1対のばね56などを収容している。ハウジング4は、軸方向他方側に配置された、出力側ハウジング素子(ハウジング本体)14と、軸方向一方側に配置された入力側ハウジング素子(ハウジング蓋体)15とを、複数本のボルト16により結合することで構成されている。
【0050】
出力側ハウジング素子14は、外径側筒部17と、内径側筒部18と、側板部19とを備える。外径側筒部17は、円筒状である。内径側筒部18は、円筒状であり、外径側筒部17の軸方向他方側に、外径側筒部17と同軸に配置されている。側板部19は、円輪板状であり、その径方向外側の端部が外径側筒部17の軸方向他方側の端部に結合され、かつ、その径方向内側の端部が内径側筒部18の軸方向一方側の端部に結合されている。
【0051】
外径側筒部17の内周面は、出力側ハウジング素子14の中心軸を中心とする円筒面からなる被押圧面20を構成している。外径側筒部17は、軸方向一方側の端部の外周面に、軸方向他方側に隣接する部分の外周面よりも外径寸法が大きい、出力側インロー嵌合面21を有する。出力側インロー嵌合面21は、出力側ハウジング素子14の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。外径側筒部17は、軸方向一方側の端部の円周方向等間隔となる複数箇所(図示の例では8箇所)に、軸方向一方側の側面に開口するねじ孔22を有する。内径側筒部18は、内周面の軸方向一方側の端部から中間部にかけての部分に、出力側軸受嵌合面23を有する。出力側軸受嵌合面23は、出力側ハウジング素子14の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。すなわち、被押圧面20と出力側インロー嵌合面21と出力側軸受嵌合面23とは、互いに同軸に配置されている。
【0052】
入力側ハウジング素子15は、外径側筒部24と、内径側筒部25と、側板部26とを備える。外径側筒部24は、円筒状である。内径側筒部25は、円筒状であり、外径側筒部24の軸方向一方側に、外径側筒部24と同軸に配置されている。側板部26は、円輪板状であり、その径方向外側の端部が外径側筒部24の軸方向一方側の端部に結合され、かつ、その径方向内側の端部が内径側筒部25の軸方向他方側の端部に結合されている。
【0053】
外径側筒部24は、内周面に入力側インロー嵌合面27を有する。入力側インロー嵌合面27は、入力側ハウジング素子15の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。入力側インロー嵌合面27は、出力側ハウジング素子14の出力側インロー嵌合面21に対してがたつきなく嵌合することが可能な内径寸法を有する。側板部26は、出力側ハウジング素子14のねじ孔22と整合する、径方向外側の端部の円周方向等間隔となる複数箇所に、通孔28を有する。内径側筒部25は、内周面の軸方向他方側の端部から中間部にかけての部分に、入力側軸受嵌合面29を有する。入力側軸受嵌合面29は、入力側ハウジング素子15の中心軸を中心とする円筒面により構成されている。すなわち、入力側インロー嵌合面27と入力側軸受嵌合面29とは、互いに同軸に配置されている。
【0054】
ハウジング4は、出力側ハウジング素子14の出力側インロー嵌合面21に対して、入力側ハウジング素子15の入力側インロー嵌合面27をがたつきなく嵌合させ、かつ、入力側ハウジング素子15の通孔28に挿通したボルト16を、出力側ハウジング素子14のねじ孔22に螺合し、さらに締め付けることにより、出力側ハウジング素子14と入力側ハウジング素子15とを結合固定することによって組み立てられる。本例では、出力側ハウジング素子14の出力側インロー嵌合面21と出力側軸受嵌合面23とが互いに同軸に配置され、かつ、入力側ハウジング素子15の入力側インロー嵌合面27と入力側軸受嵌合面29とが互いに同軸に配置されている。このため、出力側インロー嵌合面21と入力側インロー嵌合面27とをがたつきなく嵌合させた、ハウジング4の組立状態で、入力側軸受嵌合面29と出力側軸受嵌合面23とは、互いに同軸に配置される。
【0055】
ハウジング4を組み立てた状態で、入力部材2の入力軸部6は、入力側ハウジング素子15の入力側軸受嵌合面29に対し、入力側軸受57により回転可能に支持される。また、出力部材3の出力軸部10は、出力側ハウジング素子14の出力側軸受嵌合面23に対し、出力側軸受58により回転可能に支持される。これにより、入力部材2と出力部材3とが、互いに同軸に配置されるとともに、ハウジング4の被押圧面20に対して同軸に配置される。さらに、この状態で、1対の入力側係合部8および出力側係合部11は、ハウジング4の被押圧面20の径方向内側に配置される。なお、逆入力遮断クラッチ1に関して、後述するロックまたは半ロック状態を非ロック状態に切り換える性能(ロック解除性能)などを高いレベルにしたい場合は、入力部材2と出力部材3との同軸および傾きを厳密に管理する必要がある。その場合は、入力側軸受57と出力側軸受58とのそれぞれを、図示のような単列の転がり軸受から複列の転がり軸受に変更するなどの、一般的な軸受利用方法を適用することもできる。
【0056】
(1対の係合子5)
本例の逆入力遮断クラッチ1では、1対の係合子5が備えられる。1対の係合子5は、被押圧面20の径方向内側に配置されている。1対の係合子5のそれぞれは、係合子本体30と、係合子本体30に対して揺動可能に連結されたリンク部材31とを備える。
【0057】
(係合子本体30)
本例の構造では、係合子本体30は、
図13〜
図18に示すように、複数の部品を組み合わせることにより構成されている。以下、組立後の係合子本体30の構造について説明した後、係合子本体30を構成するそれぞれの部品の構造について説明する。
【0058】
係合子本体30は、略半円形板形状であり、被押圧面20に対向する1対の押圧面32a、32bと、揺動支持部である揺動支持軸33と、出力側係合部11と係合する出力側被係合部34とを備える。
【0059】
本例では、係合子本体30の外周面は、係合子本体30の弧に相当する凸円弧状の径方向外側面と、係合子本体30の弦に相当するクランク状の径方向内側面から構成されている。なお、係合子本体30に関して径方向とは、係合子本体30の弦に直交する、
図5に矢印Aで示す方向をいう。また、係合子本体30に関して幅方向とは、係合子本体30の弦に対して平行な、
図5に矢印Bで示す方向をいう。なお、本例では、係合子本体30に関する径方向が、係合子本体30(係合子5)の被押圧面20に対する遠近動方向であって、第1方向に相当する。また、本例では、係合子本体30の幅方向が、第1方向と被押圧面20の軸方向とのそれぞれに直交する第2方向に相当する。
【0060】
本例では、1対の係合子5は、それぞれの係合子本体30の径方向外側面を、互いに反対側に向け、それぞれの係合子本体30の径方向内側面を対向させた状態で、被押圧面20の径方向内側に配置されている。このように1対の係合子5が被押圧面20の径方向内側に配置された状態で、被押圧面20と係合子本体30の径方向外側面との間部分、および、係合子本体30の径方向内側面同士の間部分のうちの少なくとも一方に、係合子本体30が径方向に移動することを許容する隙間が存在するように、被押圧面20の内径寸法および係合子本体30の径方向寸法が規制されている。
【0061】
係合子本体30は、径方向外側面に、被押圧面20に対向する1対の押圧面32a、32bを有する。1対の押圧面32a、32bは、出力部材3のロック状態または半ロック状態で、被押圧面20に対して押し付けられる部分であり、係合子本体30の幅方向に関する両側部に配置されている。換言すれば、1対の押圧面32a、32bは、係合子本体30の径方向外側面の周方向両側部に、周方向に離隔して配置されている。1対の押圧面32a、32bのそれぞれは、係合子本体30の径方向外側面のうち、該押圧面32a、32bから外れた部分よりも、被押圧面20に向けて突出している。1対の押圧面32a、32bのそれぞれは、被押圧面20の曲率半径よりも小さな曲率半径を有する部分円筒状の凸面により構成されている。係合子本体30の径方向外側面のうち、1対の押圧面32a、32bから周方向に外れた部分(周方向に関して1対の押圧面32a、32b同士の間に位置する部分)は、被押圧面20に対して接触することのない、非接触面である。
【0062】
係合子本体30は、幅方向中央部の厚さ方向(軸方向)中央部に、内部空間35を有する。内部空間35の径方向両側の端部は、係合子本体30の径方向外側面と径方向内側面とにそれぞれ開口している。係合子本体30は、軸方向に配置された揺動支持軸33を有し、揺動支持軸33の軸方向中間部は、内部空間35の幅方向中央部の径方向外側部に配置されている。揺動支持軸33は、円柱状のピンにより構成されており、その軸方向両側の端部が、係合子本体30のうち、内部空間35を軸方向両側から挟む部分に支持されている。
【0063】
係合子本体30は、径方向内側面の幅方向中央部に、出力側被係合部34を有する。出力側被係合部34は、係合子本体30の径方向内側面(被押圧面20に対して遠い側の側面)の幅方向中央部から径方向外方に向けて凹んだ、略矩形状の凹部により構成されている。
【0064】
出力側被係合部34は、例えば
図5、
図6、
図20(A)、および
図20(B)に示すように、その内側に出力側係合部11の短軸方向の先半部を配置できる大きさを有する。特に、本例では、出力側被係合部34は、
図6および
図20(B)に示すように、出力側係合部11の短軸方向の先半部の外周面に合致する内面形状を有する。
【0065】
出力側被係合部34の内面は、底面36と、1対の被ガイド面37とを有する。底面36は、係合子本体30の径方向に対して直交する平坦面により構成されている。1対の被ガイド面37は、出力側被係合部34の内面のうち、係合子本体30の幅方向に関して両側の端部に位置し、かつ、該幅方向に関して互いに対向している。1対の被ガイド面37は、係合子本体30の径方向内側に向かうほど、すなわち、係合子本体30の径方向に関して被押圧面20から遠ざかる方向に向かうほど、互いの間隔が拡がる方向に傾斜した1対の凹曲面により構成されている。
【0066】
1対の被ガイド面37のそれぞれは、出力側係合部11の1対のガイド面13に接触可能であり、ガイド面13と同じ大きさの曲率半径またはガイド面13よりも僅かに大きい曲率半径を有する、部分円筒状の凹面により構成されている。つまり、本例では、出力側被係合部34は、
図6および
図20(B)に示すように、出力側係合部11の短軸方向の先半部の外周面に合致する内面形状を有する。すなわち、出力側被係合部34の底面36を、出力側係合部11の側面12に面接触させるとともに、出力側被係合部34の1対の被ガイド面37を、出力側係合部11の1対のガイド面13のうち短軸方向に関する先半部に面接触させることが可能である。なお、本発明を実施する場合には、被ガイド面を、部分楕円筒状の凹面などの非円筒状の凹面により構成することもできる。
【0067】
係合子本体30は、幅方向中央部の径方向内側部に、挿通孔38を有する。挿通孔38は、係合子本体30の幅方向中央部の径方向内側部を軸方向に貫通し、かつ、円周方向に伸長する円弧形の長孔により構成されている。挿通孔38は、入力側係合部8を緩く挿入できる大きさを有する。具体的には、挿通孔38の内側に入力側係合部8を挿入した際に、入力側係合部8と挿通孔38の内面との間に、円周方向に関する隙間および係合子本体30の径方向に関する隙間が存在する。このため、入力側係合部8は、前記円周方向に関する隙間の存在に基づいて、挿通孔38(係合子本体30)に対し、入力部材2の回転方向に関する変位が可能であり、挿通孔38(係合子本体30)は、前記係合子本体30の径方向に関する隙間の存在に基づいて、入力側係合部8に対し、係合子本体30の径方向の変位が可能である。換言すれば、後述する逆入力遮断クラッチ1の動作時に、挿通孔38の内周縁と入力側係合部8とが干渉して該動作が阻害されることがないように、挿通孔38の大きさが規制されている。
【0068】
係合子本体30は、径方向内側面の幅方向両側部に、径方向内側に突出する突起状の凸部39を有する。凸部39は、係合子本体30の径方向内側面の幅方向両側部における厚さ方向(軸方向)中央部から径方向内側に突出している。凸部39は、後述するばね56を保持するために用いられる。
【0069】
係合子本体30は、複数の部品を組み合わせることにより構成されている。具体的には、係合子本体30は、1対の本体プレート40a、40bと、1対の中間プレート41と、揺動支持軸33と、結合部材である複数ずつのボルト42およびナット43とを備える。
【0070】
1対の本体プレート40a、40bは、係合子本体30の厚さ方向の両側部を構成する部品であり、軸方向に重畳して配置されている。1対の本体プレート40a、40bのそれぞれは、鋼板などの金属板にプレス加工による打ち抜き加工を施して造られたプレス成形品であり、略半円形板形状を有する。特に、本例では、1対の本体プレート40a、40bのそれぞれは、径方向外側面の幅方向両側部が、幅方向に関して非対称な形状を有しており、換言すれば、幅方向中央部を通りかつ幅方向に直交する仮想平面に関して非鏡面対称な形状を有する。具体的には、本例では、1対の本体プレート40a、40bは、互いに同じ形状および大きさを有する部品であり、厚さ方向(軸方向)に関する向きを互いに逆にした状態で配置されている。
【0071】
1対の本体プレート40a、40bのうち、一方(軸方向一方側)の本体プレート40aは、径方向外側面の周方向一方側の端部に凸面44aを有し、径方向外側面の周方向他方側の端部に退避面61aを有する。凸面44aは、一方の本体プレート40aの径方向外側面のうちで周方向に関して凸面44aから外れた部分よりも被押圧面20に向けて突出した、部分円筒状の凸面により構成されている。凸面44aは、係合子本体30を組み立てた状態で、1対の押圧面32a、32bのうちの一方(周方向一方側)の押圧面32aを構成する。退避面61aは、一方の本体プレート40aの径方向外側面のうちで周方向に関して退避面61aから外れた部分よりも被押圧面20に対して退避した、平坦面(切り落とし面)により構成されている。
【0072】
1対の本体プレート40a、40bのうち、他方(軸方向他方側)の本体プレート40bは、径方向外側面の周方向一方側の端部に退避面61bを有し、径方向外側面の周方向他方側の端部に凸面44bを有する。凸面44bは、他方の本体プレート40bの径方向外側面のうちで周方向に関して凸面44bから外れた部分よりも被押圧面20に向けて突出した、部分円筒状の凸面により構成されている。凸面44bは、係合子本体30を組み立てた状態で、1対の押圧面32a、32bのうちの他方(周方向他方側)の押圧面32bを構成する。退避面61bは、他方の本体プレート40bの径方向外側面のうちで周方向に関して退避面61bから外れた部分よりも被押圧面20に対して退避した、平坦面(切り落とし面)により構成されている。
【0073】
一方の本体プレート40aの退避面61aは、他方の本体プレート40bの凸面44bと整合する周方向位置に配置されている。また、他方の本体プレート40bの退避面61bは、一方の本体プレート40aの凸面44aと整合する周方向位置に配置されている。1対の本体プレート40a、40bの径方向外側面のうち、凸面44a、44b(押圧面32a、32b)から外れた部分は、被押圧面20に対して凸面44a、44bよりも退避しており、被押圧面20に対して接触することはない。なお、本発明を実施する場合、1対の本体プレート40a、40bの径方向外側面のうち、凸面44a、44bから外れた部分は、被押圧面20に対して凸面44a、44bよりも退避しているという条件、換言すれば、被押圧面20に対して接触しないという条件を満たせば、その形状は特に限定されない。例えば、本例の退避面61a、61bが位置する部分は、必ずしも平坦面である必要はなく、被押圧面20に対して凸面44a、44bよりも退避した曲率を持った曲面であっても良い。
【0074】
1対の本体プレート40a、40bのそれぞれは、幅方向中央部の径方向外側部に、円形の支持孔45を有する。1対の本体プレート40a、40bのそれぞれは、径方向内側面の幅方向中央部に、係合子本体30を組み立てた状態で出力側被係合部34を構成する凹部46を有する。1対の本体プレート40a、40bのそれぞれは、幅方向中央部の径方向内側部に、係合子本体30を組み立てた状態で挿通孔38を構成する貫通孔47を有する。1対の本体プレート40a、40bのそれぞれは、幅方向両側部のそれぞれに、複数(図示の例では3個)の通孔48を有する。1対の本体プレート40a、40bのそれぞれは、幅方向両側部のそれぞれにおいて、複数の通孔48から外れた箇所に、位置決め孔49を有する。
【0075】
1対の中間プレート41は、係合子本体30の厚さ方向の中間部を構成する部材である。1対の中間プレート41のそれぞれは、鋼板などの金属板にプレス加工による打ち抜き加工を施して造られたプレス成形品であり、略扇板形状を有する。1対の中間プレート41は、1対の本体プレート40a、40bの幅方向両側部同士の間に挟持されている。1対の中間プレート41のそれぞれは、径方向内側面の幅方向中間部に凸部39を有する。凸部39は、1対の本体プレート40a、40bの径方向内側面よりも径方向内側に突出している。1対の中間プレート41のそれぞれのうち、凸部39以外の部分は、1対の本体プレート40a、40b同士の間に配置されている。特に、1対の中間プレート41のそれぞれの径方向外側面は、1対の本体プレート40a、40bの径方向外側面よりも径方向内側に位置しており、被押圧面20と接触することはない。1対の中間プレート41のそれぞれは、1対の本体プレート40a、40bのそれぞれの通孔48と整合する複数箇所に、通孔50を有する。1対の中間プレート41のそれぞれは、1対の本体プレート40a、40bのそれぞれの位置決め孔49と整合する箇所に、位置決め孔51を有する。
【0076】
1対の本体プレート40a、40bおよび1対の中間プレート41は、互いに整合する1対の本体プレート40a、40bの通孔48と1対の中間プレート41の通孔50とを挿通した複数のボルト42の先端部に、ナット43を螺合し、さらに締め付けることによって、互いに結合固定されている。なお、本例の構造では、このような結合固定の作業を行う際に、互いに整合する1対の本体プレート40a、40bの位置決め孔49と1対の中間プレート41の位置決め孔51とに、作業用の位置決めロッドを挿通することによって、1対の本体プレート40a、40bの通孔48と1対の中間プレート41の通孔50とを整合させる作業を容易に行うことができる。本例の構造では、上述のように1対の本体プレート40a、40bと1対の中間プレート41とを結合固定した状態で、1対の本体プレート40a、40b同士の間で、幅方向に関して1対の中間プレート41同士の間に、内部空間35が形成される。
【0077】
揺動支持軸33は、円柱状のピンにより構成されている。揺動支持軸33の軸方向両側の端部は、1対の本体プレート40a、40bの支持孔45に圧入により内嵌固定されている。揺動支持軸33の軸方向中間部は、内部空間35内に配置されている。
【0078】
(リンク部材31)
リンク部材31は、鋼板などの金属板にプレス加工による打ち抜き加工を施して造られたプレス成形品であって、略矩形板形状または略長円板形状を有しており、係合子本体30の内部空間35(1対の本体プレート40a、40b同士の間)に配置されている。
【0079】
リンク部材31の厚さ寸法は、内部空間35の軸方向幅寸法(=1対の本体プレート40a、40bの互いに対向する側面同士の間隔=中間プレート41の厚さ寸法)よりも小さい。リンク部材31は、その長手方向の一方側の端部である第1の端部52に第1の孔53を有し、かつ、その長手方向の他方側の端部である第2の端部54に、入力側被係合部に相当する第2の孔55を有する。
【0080】
第1の孔53には、揺動支持軸33が挿通している。これにより、第1の端部52は、揺動支持軸33に揺動可能に連結されている。第2の孔55には、入力側係合部8が挿通している。これにより、第2の端部54は、入力側係合部8に揺動可能に連結されている。
【0081】
第1の孔53の内径寸法は、揺動支持軸33の外径寸法よりも大きく設定されており、第2の孔55の内径寸法は、入力側係合部8の外径寸法よりも大きく設定されている。さらに、本例では、例えば
図5および
図8に示すように、係合子5の1対の押圧面32a、32bが被押圧面20に接触し、かつ、入力側係合部8が係合子本体30の幅方向中央部に位置する状態で、
図10に示すように、揺動支持軸33と入力側係合部8との互いに遠い側の端縁同士の間隔Waが、第1の孔53と第2の孔55との互いに遠い側の端縁同士の間隔Wb以下(Wa≦Wb)、好ましくは間隔Wbよりも小さく(Wa<Wb)なるように設定されている。なお、これらの間隔WaとWbとの差Wb−Waは、逆入力遮断クラッチ1の組み立てを容易にする観点からは、極力大きいことが望ましいが、その一方で、後述するように入力部材2に回転トルクが入力された際に、速やかに係合子5を径方向内側に移動させて非ロック状態を実現できるようにする観点からは、極力小さいことが望ましい。
【0082】
(1対のばね56)
1対のばね56は、1対の係合子5を構成する、1対の係合子本体30の径方向内側面の幅方向両側部同士の間に配置されている。つまり、1対のばね56は、第2方向に相当する係合子本体30の幅方向に関して出力側係合部11から外れた位置に配置されている。1対のばね56のそれぞれは、1対の係合子5のそれぞれを径方向外側に向かう方向、すなわち、1対の係合子5のそれぞれを被押圧面20に近づける方向に弾性的に付勢している。これにより、入力部材2および出力部材3のそれぞれにトルクが加わっていない中立状態において、1対の係合子5のそれぞれの押圧面32a、32bが被押圧面20に接触した状態となるようにしている。
【0083】
本例では、1対のばね56のそれぞれは、コイルばねにより構成されており、該ばね56のそれぞれの軸方向両側部の内側に、1対の係合子5の凸部39を挿入することによって、該ばね56のそれぞれが1対の係合子本体30の径方向内側面同士の間から脱落することを防止している。
【0084】
本例では、1対のばね56のそれぞれの外径寸法は、係合子本体30の軸方向の厚さ寸法よりも小さい。このため、1対のばね56のそれぞれは、例えば
図15および
図16に示すように、係合子本体30の軸方向両側の側面よりも軸方向両側(外側)に突出しない。
【0085】
なお、上述のように中立状態において1対の係合子5のそれぞれの押圧面32a、32bが被押圧面20に接触した状態となるようにしておく理由は、後述するように出力部材3に回転トルクが逆入力された際に、速やかにロック状態が実現されるようにするためである。
【0086】
本例の逆入力遮断クラッチ1は、その組立状態で、軸方向一方側に配置した入力部材2の1対の入力側係合部8を、1対の係合子5のそれぞれの挿通孔38(1対の本体プレート40a、40bのそれぞれの貫通孔47)および第2の孔55に軸方向に挿入し、かつ、軸方向他方側に配置した出力部材3の出力側係合部11を、1対の係合子5の出力側被係合部34同士の間に軸方向に挿入している。すなわち、1対の係合子5は、それぞれの出力側被係合部34により、出力側係合部11を径方向外側から挟むように配置されている。
【0087】
[逆入力遮断クラッチの動作説明]
入力部材2に入力側機構から回転トルクが入力されると、
図6に示すように、係合子本体30の挿通孔38の内側で、入力側係合部8が入力部材2の回転方向(
図6の例では時計方向)に回転する。すると、リンク部材31が揺動支持軸33を中心に揺動しつつ、入力側係合部8によって、リンク部材31を介して揺動支持軸33が引っ張られることにより、1対の係合子5が、被押圧面20から遠ざかる方向(径方向内側)にそれぞれ移動する。これにより、1対の係合子5のそれぞれの押圧面32a、32bが被押圧面20から離れるとともに、1対の出力側被係合部34が出力部材3の出力側係合部11を径方向両側から挟持し、出力側係合部11と1対の出力側被係合部34とが、がたつきなく係合する。この結果、入力部材2に入力された回転トルクが、1対の係合子5を介して、出力部材3に伝達され、出力部材3から出力される。
【0088】
特に、本例の構造では、上述のように係合子5が被押圧面20から遠ざかる方向(径方向内側)に移動する際に、
図5→
図6、および、
図20(A)→
図20(B)に示すように、出力側係合部11の短軸方向の先半部の長軸方向両側に位置する1対のガイド面13により、出力側被係合部34の幅方向両側に位置する1対の被ガイド面37が案内されることで、係合子5が幅方向に移動することを規制される。そして、
図6および
図20(B)に示すように、出力側被係合部34の底面36が、出力側係合部11の側面12に面接触するとともに、出力側被係合部34の1対の被ガイド面37が、出力側係合部11の1対のガイド面13に面接触する。このため、本例の構造では、ロックまたは半ロック状態の解除後に、係合子5が幅方向にずれ動いて被押圧面20に接触することを有効に防止できる。本例の構造では、上述したような係合子5の径方向内側への移動の案内を、出力側係合部11を用いて行えるため、該案内を行うためだけに用いられる別部品を組み込む構造に比べて、部品点数を少なくすることができる。
【0089】
また、本例の構造では、出力側被係合部34の1対の被ガイド面37のそれぞれが、径方向内側に向かうほど互いの間隔が拡がる方向に傾斜した1対の凹曲面により構成され、かつ、出力側係合部11の1対のガイド面13のそれぞれが、前記1対の凹曲面に合致する1対の凸曲面により構成されている。このため、
図20(A)に示すように、係合子5が出力側係合部11から径方向外側に離れた状態では、1対の被ガイド面37と1対のガイド面13との間に隙間が形成され、かつ、該隙間の大きさ(幅方向寸法)が、径方向外側に向かうほど大きくなっている。このため、本例の構造では、係合子5が出力側係合部11から径方向外側に離れた状態において、幅方向や回転方向に関する係合子5の動きを適度に許容することができ、係合子5に無理な力が加わることを有効に防止できる。
【0090】
一方、出力部材3に出力側機構から回転トルクが逆入力されると、
図7に示すように、出力側係合部11が、1対の出力側被係合部34同士の内側で、出力部材3の回転方向(
図7の例では時計方向)に回転する。すると、出力側係合部11の側面12とガイド面13との接続部である角部が、出力側被係合部34の底面36を径方向外方に向けて押圧し、1対の係合子5を、被押圧面20に近づく方向(径方向外側)にそれぞれ移動させる。これにより、1対の係合子5のそれぞれの押圧面32a、32bが、被押圧面20に対して押し付けられ、それぞれの押圧面32a、32bが被押圧面20に摩擦係合する。この結果、出力部材3に逆入力された回転トルクが、他の部材に固定されて回転しないハウジング4に伝わることで完全に遮断されて入力部材2に伝達されないか、または、出力部材3に逆入力された回転トルクの一部のみが入力部材2に伝達され残部が遮断される。
【0091】
出力部材3に逆入力された回転トルクを完全に遮断して入力部材2に伝達されないようにするには、押圧面32a、32bが被押圧面20に対して摺動(相対回転)しないように、1対の係合子5を出力側係合部11と被押圧面20との間で突っ張らせ、出力部材3をロックする。これに対し、出力部材3に逆入力された回転トルクのうちの一部のみが入力部材2に伝達され残部が遮断されるようにするには、押圧面32a、32bが被押圧面20に対して摺動するように、1対の係合子5を出力側係合部11と被押圧面20との間で突っ張らせ、出力部材3を半ロックする。出力部材3が半ロックした状態で、さらに出力部材3に回転トルクが逆入力されると、1対の係合子5が、出力側係合部11と出力側被係合部34との係合に基づいて、押圧面32a、32bを被押圧面20に対して摺動させつつ、出力部材3の回転中心を中心として回転する。1対の係合子5が回転すると、入力側係合部8がリンク部材31を介して揺動支持軸33に引っ張られ、入力部材2に回転トルクの一部が伝達される。
【0092】
以上のような本例の構造では、1対の係合子5のそれぞれが、係合子本体30の径方向外側面の周方向に離隔した2箇所に押圧面32a、32bを有しているため、出力部材3に回転トルクが逆入力された際に、くさび効果によって、被押圧面20と押圧面32a、32bとの摩擦係合力を大きくすることができる。
【0093】
また、本例の構造では、係合子本体30が備える1対の押圧面32a、32bのうち、一方の押圧面32aは、一方の本体プレート40aに備えられた1つの凸面44aのみによって構成されている。また、他方の押圧面32bは、他方の本体プレート40bに備えられた1つの凸面44bのみによって構成されている。このため、本例の構造によれば、1対の押圧面のそれぞれが、1対の本体プレートのそれぞれに備えられ、軸方向に離隔して配置された2つの凸面により構成された構造(以下、「第1の比較例の構造」という)に比べて、被押圧面20に対して1対の押圧面32a、32bを安定して接触させることができる。
【0094】
すなわち、第1の比較例の構造では、1対の押圧面のそれぞれを、1対の本体プレートにそれぞれ備えられ、軸方向に離隔して配置された2つの凸面により構成するため、凸面のそれぞれの加工誤差だけでなく、1対の本体プレートを重ね合わせることにより生じる組み立て誤差が、押圧面の精度に影響を与える。これに対して、本例の構造では、押圧面32a(32b)を、1つの凸面44a(44b)のみにより構成している。このため、組み立て誤差が押圧面32a(32b)の精度に影響を与えることを防止できる。
【0095】
また、係合子本体30の径方向外側面のうちで、押圧面32a、32bを構成する凸面44a、44bは、他の部分に比べて高い加工精度が必要になる。本例では、凸面44a、44bの数を、第1の比較例の構造に比べて少なくできる(半分にできる)ため、係合子本体30の製造コストを抑えることができる。
【0096】
また、本例とは異なる構造として、係合子本体が、1枚の本体プレートと、該1枚の本体プレートに軸方向の端部を片持ち式に支持された揺動支持軸とによって構成され、かつ、前記1枚の本体プレートの径方向外側面の周方向両側部のそれぞれに、押圧面を構成する凸面を有する構造(以下、「第2の比較例の構造」という)が考えられる。このような第2の比較例の構造は、1対の押圧面のそれぞれが、1つの凸面のみによって構成されている点で、本例の構造と共通する。ただし、第2の比較例の構造は、揺動支持軸が本体プレートに片持ち式に支持されているため、入力側係合部によりリンク部材を介して揺動支持軸を径方向内側に向けて引っ張る際に、前記1枚の本体プレートに加わるモーメントにより、該1枚の本体プレートが軸方向に関して前記リンク部材側に倒れる傾向となって、動作が不安定になる可能性がある。これに対し、本例の構造では、揺動支持軸33の軸方向両側の端部が1対の本体プレート40a、40bに支持されているため、入力側係合部8によりリンク部材31を介して揺動支持軸33の軸方向中間部を径方向内側に向けて引っ張る際に、1対の本体プレート40a、40bに加わるモーメントが互いに打ち消しあって、1対の本体プレート40a、40bが軸方向に倒れるのを防止することができ、動作を安定させることができる。
【0097】
また、本例の構造では、1対の本体プレート40a、40bとして、互いに同じ形状および大きさを有する部品を用いているため、係合子本体30を構成する部品の種類を少なくすることができ、係合子本体30の製造コストを抑えられる。
【0098】
また、本例の逆入力遮断クラッチ1によれば、入力部材2への回転トルクの入力時に、ロックまたは半ロック状態から非ロック状態への切り換えを円滑に行うことができる。この点について、
図19(A)および
図19(B)を参照しつつ説明する。
【0099】
図19(A)(a)および
図19(A)(b)は、本例の構造に関して、入力部材2の一部と係合子5の一部との相互の位置関係を示している。より具体的には、
図19(A)(a)は、
図7に示したロックまたは半ロック状態において、入力側係合部8が係合子5の幅方向中央部に位置し、かつ、リンク部材31が最も径方向内側に寄った状態での、前記位置関係を示している。
図19(A)(b)は、
図19(A)(a)に示した状態から、入力部材2に回転トルクTが入力されることにより、入力側係合部8が入力部材2の回転方向(図示の例では時計方向)に回転して、入力側係合部8から揺動支持軸33にリンク部材31を介して並進荷重Fが作用し始めた状態での、前記位置関係を示している。
【0100】
一方、
図19(B)(a)および
図19(B)(b)は、入力部材102zの入力側係合部107zの形状が円柱状である点を除き、前述した従来構造と同様の構成を有する構造(以下、「第3の比較例の構造」という)に関して、入力部材102zの一部と係合子105の一部との相互の位置関係を示している。より具体的には、
図19(B)(a)は、ロックまたは半ロック状態において、入力側係合部107zが係合子105の幅方向中央部に位置する状態での、前記位置関係を示している。
図19(B)(b)は、
図19(B)(a)に示した状態から、入力部材102zに回転トルクTが入力されることにより、入力側係合部107zが入力部材102zの回転方向(図示の例では時計方向)に回転して、入力側係合部107zが係合子105の入力側被係合部113に当接し、入力側係合部107zと入力側被係合部113との当接部Xに、回転トルクTに基づく並進荷重Ftが作用し始めた状態での、前記位置関係を示している。
【0101】
第3の比較例の構造では、
図19(B)(b)に示したように、並進荷重Ftの方向、すなわち、入力部材102zから係合子105に作用する荷重の方向は、ロックまたは半ロック状態から非ロック状態への切り換え時に係合子105が移動すべき方向である、係合子105の径方向(被押圧面に対する係合子105の遠近方向)に対して大きく傾いている。
【0102】
これに対して、本例の構造では、
図19(A)(b)に示したように、並進荷重Fの方向、すなわち、入力部材2から係合子5に作用する荷重の方向は、ロックまたは半ロック状態から非ロック状態への切り換え時に係合子5が移動すべき方向である、係合子5の径方向(被押圧面20に対する係合子5の遠近方向)とほぼ平行な方向になっている。換言すれば、並進荷重Fの方向と係合子5が移動すべき方向とのなす角度が、第3の比較例の構造における、並進荷重Ftの方向と係合子105が移動すべき方向とのなす角度よりも小さい。つまり、本例の構造では、入力部材2に入力された回転トルクTを、係合子5を径方向内側に移動させるための荷重に効率良く変換することができる。このため、本例の構造によれば、入力部材2への回転トルクの入力時に、ロックまたは半ロック状態から非ロック状態への切り換えを円滑に行うことができる。
【0103】
なお、本例の構造における、
図19(A)(a)に示した状態での、入力側係合部8の径方向内側面とリンク部材31の第2の孔55の内周面との間に存在する隙間Gの大きさ(前述した差Wb−Wa)、および、第3の比較例の構造における、
図19(B)(a)に示した状態での、入力側係合部107zの径方向内側面と入力側被係合部113との間に存在する隙間Gzの大きさは、いずれも、逆入力遮断クラッチの組み立てを容易にする観点からは、極力大きいことが望ましいが、その一方で、入力部材2、102zに回転トルクが入力された際に、直ちに係合子5、105を径方向内側に移動させて非ロック状態を実現できるようにする観点からは、極力小さいことが望ましい。したがって、逆入力遮断クラッチの製造においては、これらの事情を考慮して、隙間G、Gzの大きさを、適度な大きさに調整する必要がある。
【0104】
第3の比較例の構造では、隙間Gzの大きさを調整するために、入力側被係合部113のうち、入力側係合部107zの径方向内側面と当接する部分を、切削加工で高精度に仕上げることが必要になる場合があり、この場合には、コストが嵩むと想定される。これに対して、本例の構造では、リンク部材31の第1の孔53と第2の孔55との中心間距離を管理するだけで、隙間Gの大きさを調整することができ、リンク部材31は安価なプレス加工で造れるため、コストを抑えやすい。
【0105】
[第2例]
本発明の実施の形態の第2例について、
図21〜
図24を用いて説明する。
【0106】
本例では、係合子5aに対するばね(コイルばね)56aの保持構造が、第1例と異なっている。すなわち、本例では、係合子5aを構成する係合子本体30aが、ばね56aの端部を挿入することで該ばね56aを保持する凹部62を有する。特に、本例では、係合子本体30aを構成する中間プレート41aが、凹部62を有する。
【0107】
より具体的に説明すると、係合子本体30aは、径方向内側面の幅方向両側部における厚さ方向(被押圧面20(
図5参照)の軸方向、
図21の表裏方向、
図22の左右方向)の中央部のそれぞれに、径方向外側に向けて凹入する凹部62を有する。凹部62は、係合子本体30aを構成する中間プレート41aの径方向内側の端部の幅方向中間部に備えられた矩形の切り欠き63により構成されている。
図22に示すように、凹部62を構成する切り欠き63は、係合子本体30aの厚さ方向に関して、係合子本体30aを構成する1対の本体プレート40a、40bの径方向内側の端部同士の間に挟まれた位置に配置されている。すなわち、凹部62を構成する切り欠き63の軸方向両側の開口部は、1対の本体プレート40a、40bの径方向内側の端部により塞がれている。したがって、本例の構造では、切り欠き63により構成された凹部62は、係合子本体30aの径方向内方にのみ開口している。
【0108】
逆入力遮断クラッチの組立状態で、1対のばね56aは、それぞれの軸方向両側の端部を、1対の係合子本体30aの互いに対向する凹部62に挿入することによって、これらの凹部62に保持されている。これにより、1対のばね56aは、1対の係合子本体30aの径方向内側面同士の間から、幅方向、および、被押圧面20の軸方向に脱落することを防止されている。なお、ばね56aの軸方向端部は、凹部62に締め代を持たせて挿入(圧入)しても良いし、凹部62に締め代を持たせずに挿入(小さい隙間を介して挿入)しても良い。なお、本発明を実施する場合、ばね(コイルばね)の軸方向端部を挿入する凹部は、中間プレートの径方向内側面の厚さ方向中間部にのみ開口するように形成することもできる。
【0109】
本例の構造では、第1例の構造と異なり、1対の係合子本体30aのそれぞれの径方向内側面に、ばねを保持するための凸部を備えていない。したがって、その分、1対の係合子本体30aの径方向内側面同士を近づけて、1対の係合子本体30aの径方向内側面同士の距離を短くすることができる。このため、逆入力遮断クラッチの径方向のサイズを小さくすることが容易となる。その他の構成および作用効果については、第1例と同じである。
【0110】
(変形例)
なお、本発明を実施する場合には、第1例および第2例の変形例として、ハウジングを構成する入力側ハウジング素子と出力側ハウジング素子とを結合するための結合手段や、係合子本体を構成する1対の本体プレートと1対の中間プレートとを結合するための結合手段として、リベット、溶接、接着、かしめなどの、他の結合手段を用いることもできる。また、このような他の結合手段として、互いに結合すべき複数の部品の互いに整合する位置に形成された通孔に結合軸の軸方向中間部を挿通し、かつ、該結合軸の軸方向両端部に止め輪を係止し、これらの止め輪によって前記複数の部品を軸方向両側から挟持する結合手段を採用することもできる。
【0111】
また、第1例および第2例の変形例として、例えば、1対の本体プレートのうちの一方の本体プレートに、1対の中間プレートのうちの一方の中間プレートを一体に形成し、1対の本体プレートのうちの他方の本体プレートに、1対の中間プレートのうちの他方の中間プレートを一体に形成することもできる。あるいは、1対の本体プレートのうちの一方の本体プレートに、1対の中間プレートのそれぞれを一体に形成することもできる。これらの構成を採用すれば、係合子本体を1対の本体プレートの組み合わせによって構成することができ、部品点数を少なくすることができる。
【0112】
また、第1例および第2例の変形例として、
図25に示すような構成を採用することもできる。この変形例では、揺動支持軸33aの軸方向両端寄り部分を、1対の本体プレート40a、40bのそれぞれの支持孔45に締め代を持たせることなく挿通し、かつ、揺動支持軸33aの軸方向両端部外周面に備えられた周方向の係止溝59のそれぞれに止め輪60を係止し、これらの止め輪60によって、1対の本体プレート40a、40bを軸方向両側から軽く挟持している。この状態で、揺動支持軸33aは、1対の本体プレート40a、40bに対して、自身の中心軸を中心とする回転を可能とされている。このような構成によれば、係合子本体30に対して、リンク部材31を揺動支持軸33aとともに揺動させること、すなわち、リンク部材31をより円滑に揺動させることができるため、入力部材に回転トルクが加わった際の動作をより円滑に行うことができる。なお、リンク部材31をさらに円滑に揺動させたければ、本体プレートに対して揺動支持軸(ピン)を、軸受により、該揺動支持軸の中心軸を中心とする回転自在に支持する構成や、入力部材の入力軸部に対して入力側係合部(ピン)を、軸受により、該入力側係合部の中心軸を中心とする回転自在に支持する構成を採用することもできる。
【0113】
さらに、本発明を実施する場合に、1対の係合子を被押圧面に向けて弾性的に付勢するばねとして、第1例および第2例におけるコイルばねに代替して、板ばねなどの、他の種類のばねを採用することもできる。1対の係合子を被押圧面に向けて弾性的に付勢するばねは、1対の係合子同士の間で挟み込むようにして配置するほか、係合子と他の部材(例えば出力部材)との間に挟み込むようにして配置することもできる。
【0114】
第1例および第2例においては、係合子として1対の係合子が備えられているが、係合子が被押圧面に対して遠近方向に移動することが可能な構造を有する限り、1個の係合子を備え、該1個の係合子を1個の入力側係合部と組み合わせた構造を採用することも可能である。また、3個以上の係合子を備え、これらの係合子を対応する入力側係合部と組み合わせた構造も採用することが可能である。これらの構造も本発明の範囲に含められる。
【0115】
上述した本発明の実施の形態の第1例および第2例(これらの変形例および代替例を含む)の構成は、矛盾が生じない範囲で、適宜組み合わせて実施することができる。
【0116】
なお、本発明における、出力側係合部の1対のガイド面および出力側被係合部の1対の被ガイド面の構成は、前述した従来の逆入力遮断クラッチにも適用可能である。
【解決手段】被押圧面20を有する被押圧部材と、入力側係合部8を有する入力部材と、出力側係合部11を有する出力部材と、係合子5を備える。係合子5は、係合子本体30と、リンク部材31とからなる。係合子本体30は、1対の本体プレート40a、40bと揺動支持軸33とを備える。1対の本体プレート40a、40bは、1対の押圧面32a、32bと出力側被係合部34とを有する。一方の押圧面32aは、一方の本体プレート40aに備えられている。他方の押圧面32aは、他方の本体プレート40bに備えられている。リンク部材31は、揺動支持軸33に揺動可能に連結された第1の端部と、入力側係合部8に揺動可能に連結された第2の端部とを有する。