特許第6874934号(P6874934)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シー.アール.エフ. ソシエタ コンソルティレ ペル アツィオニの特許一覧

特許6874934車両のサスペンションシステムのための一体型負荷センサをもつ弾性支持体
<>
  • 特許6874934-車両のサスペンションシステムのための一体型負荷センサをもつ弾性支持体 図000002
  • 特許6874934-車両のサスペンションシステムのための一体型負荷センサをもつ弾性支持体 図000003
  • 特許6874934-車両のサスペンションシステムのための一体型負荷センサをもつ弾性支持体 図000004
  • 特許6874934-車両のサスペンションシステムのための一体型負荷センサをもつ弾性支持体 図000005
  • 特許6874934-車両のサスペンションシステムのための一体型負荷センサをもつ弾性支持体 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874934
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】車両のサスペンションシステムのための一体型負荷センサをもつ弾性支持体
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/18 20060101AFI20210510BHJP
   B60G 17/019 20060101ALI20210510BHJP
   B60K 5/12 20060101ALI20210510BHJP
   F16F 1/38 20060101ALI20210510BHJP
   F16F 1/36 20060101ALI20210510BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   G01L1/18 A
   B60G17/019
   B60K5/12 Z
   F16F1/38 Z
   F16F1/36 C
   F16F15/08 B
【請求項の数】4
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-227274(P2017-227274)
(22)【出願日】2017年11月27日
(65)【公開番号】特開2018-179964(P2018-179964A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年10月8日
(31)【優先権主張番号】17167486.4
(32)【優先日】2017年4月21日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513318515
【氏名又は名称】シー.アール.エフ. ソシエタ コンソルティレ ペル アツィオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ヴェカ アントニーノ ドメニコ
(72)【発明者】
【氏名】チアペロ パオロ
(72)【発明者】
【氏名】ダルマッソ フランセスカ
(72)【発明者】
【氏名】ランバティーニ ヴィトー ガイド
【審査官】 公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−106807(JP,U)
【文献】 特表2013−546179(JP,A)
【文献】 特開平06−147963(JP,A)
【文献】 特開2004−270832(JP,A)
【文献】 特開2006−329236(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0134617(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/18
G01L 5/00−5/28
B60G 17/019
B60K 5/12
F16F 1/36−1/38
F16F 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるサスペンションシステムのための弾性支持体であって、カーボン系ナノフィラーを加えられたポリマエラストマ材料で形成された少なくとも1つの本体を備え、前記本体の外面は、前記本体のカーボン系ナノフィラーを加えられたポリマ材料がレーザ照射によって局所的にピエゾ抵抗性にされた、1又は複数のピエゾ抵抗領域を有し、これにより、前記弾性支持体に加えられる負荷を検出することができる1又は複数の電気変形センサを画定し、
前記弾性支持体は、前記車両のサスペンションのショックアブソーバユニットのパッドであり、
前記1又は複数のピエゾ抵抗領域は、第1のセンサ付きのバンド及び第2のセンサ付きのバンドの形態であり、それら両方は、前記弾性支持体の円周の延在部に沿って延在し、前記第1のセンサ付きのバンドの幅は、前記第2のセンサ付きのバンドの幅より狭い、
弾性支持体。
【請求項2】
前記本体は、カーボン系ナノフィラーを加えられた前記ポリマ材料が、レーザ照射によって局所的に導電性にされた、1又は複数の導電性経路であって、これにより、前記本体と関連付けられた電極を有する前記1又は複数のピエゾ抵抗領域の1又は複数の電気接続線を画定する、1又は複数の導電性経路を含む、請求項1記載の弾性支持体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の少なくとも一対の弾性支持体を備える、
車両サスペンション。
【請求項4】
請求項1または2に記載の複数の弾性支持体と、
前記1又は複数のピエゾ抵抗領域を含む1又は複数の導電性経路の電気抵抗をモニタリングする、並びに、測定された前記電気抵抗が所定の閾値から外れる場合に、車両の運転者の快適さを改善すること及び前記車両のグリップを改善することのうち少なくとも1つを行うよう適合された前記車両の搭載システムを作動する、電子制御ユニットと
を備える
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるサスペンションシステムのための弾性支持体に関する。
【0002】
[先行技術] 車両に搭載されるサスペンションシステムが受ける負荷レベルの検出は、車両それ自体の快適さ及び/又はグリップを改善するよう適合される運転補助システムを操作すべく、この分野における企業によって特に感じられている課題である。市場で現在利用可能な解決手段は、JP S60 106807 Uの明細書において記載された解決手段等の、減衰システムに結合されたディスクリート変位センサの使用を含む。
【0003】
しかしながら、これらの解決手段は、あまりコンパクトではなく、また、比較的高い設置コストで非常に複雑な組立段階を必要とする。
【0004】
同一の出願人は、国際公開第2012/055934 A1において、レーザ照射によって、非導電性ポリマ基板内に導電性トレース及び/又はピエゾ抵抗トレースを製造する方法であって、上記基板は、熱劣化に続いて炭化しにくいポリマをもつマトリクスと、カーボンナノチューブ、又は窒化炭素又はカーボンナノファイバを含む分散段階とを含むコンポジットポリマ材料である方法を提案している。
【0005】
本発明は、車両サスペンションのためのパッド及びブッシング又はエンジンサスペンションのための弾性プラグ等の、車両の搭載サスペンションシステムのための一体型負荷センサをもつ弾性支持体を製造すべく、この方法の有利な応用を見出だす要求に基づく。 [本発明の目的]
【0006】
本発明の目的は、従って、車両に搭載されるサスペンションシステムのための弾性支持体を製造することであり、これは、国際公開第2012/055934 A1の明細書において本出願人により提案された方法によって提供される可能性を有利に活用する。
【0007】
本発明の別の目的は、追加のセンサを用いる必要、又は特定の場合において信頼性のない、ロジック回路上で動作するシステムに頼る必要なく、一体型負荷センサをもつエラストマ構成要素を介して上述の目的を達成することである。
【0008】
本発明の別の目的は、構築するのに簡単で経済的であり、同時に、それが提供される機能を実行する上で極めて信頼性の高い構成要素を製造することである。
【発明の概要】
【0009】
上述の目的を達成することを考慮すると、本発明は、車両に搭載されるサスペンションシステムのための弾性支持体であって、カーボン系ナノフィラーを加えられたポリマエラストマ材料で形成された少なくとも1つの本体を含み、上記本体の外面は、上記本体のカーボン系ナノフィラーを加えられたポリマ材料がレーザ照射によって局所的にピエゾ抵抗性にされた、1又は複数のピエゾ抵抗領域を有し、これにより、上記弾性支持体に加えられる負荷を検出することができる1又は複数の電気変形センサを画定することを特徴とする、弾性支持体を提供することを目的とする。
【0010】
これらの特性のおかげで、本発明による弾性支持体は、構成要素それ自体内に、追加のセンサを用いる必要、又は誤ったシグナリングの影響を受けやすいロジック回路に頼る必要なく、負荷検出機能を統合する。
【0011】
本発明の別の特性によると、カーボン系ナノフィラーを加えられたポリマエラストマ材料で形成された本体は又、カーボン系ナノフィラーを加えられたポリマ材料が、レーザ照射によって局所的に導電性にされた、1又は複数の導電性経路であって、これにより、上記本体と関連付けられた電極をもつ上記ピエゾ抵抗領域の1又は複数の電気接続線を画定する、1又は複数の導電性経路を含む。
【0012】
本発明の第1の実施形態において、弾性支持体は、車両サスペンションの旋回アームを関節連結するための弾性ブッシングである。
【0013】
第2の実施形態において、弾性支持体は、車両サスペンションのショックアブソーバユニットのパッドである。
【0014】
本発明はまた、車両を対象とし、車両は、上述のタイプの複数の弾性支持体と、上記ピエゾ抵抗領域を含む1又は複数の導電性経路の電気抵抗をモニタリングするよう構成される、及び車両の運転者の快適さを改善することができる車両の搭載システムを操作する、及び/又は測定された電気抵抗が所定の閾値から外れる場合に車両のグリップを改善するよう構成される電子制御ユニットとを含む。
【0015】
本発明の更なる特性及び利点が、以下の説明及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
添付図面は、非限定的な例としてにより純粋に提供される。
図1】本発明による複数の弾性支持体を設けられる車両サスペンションの斜視図である。
図2】本発明による弾性支持体の第1の実施形態の断面図を図示する。
図3】前述の図面の弾性支持体の斜視図を図示する。
図4】本発明の第2の実施形態による支持体の製造方法の段階を図示する概略図である。
図5】前述の図面の弾性支持体の別の斜視図を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図面において、参照1及び2は、車両の搭載サスペンションシステムのための、本発明による弾性支持体の2つの代替的な実施形態を示す。具体的には、図面で図示されている本実施形態は、ショックアブソーバユニットAのパッド1と、旋回アームBを関節連結するための弾性ブッシング2であり、それらの両方は、車両サスペンションSに配置されている。図1の斜視図において図示されているサスペンションSのアーキテクチャは、単に例としてみなされるべきである。なぜなら、他のサスペンションタイプが、本発明による弾性支持体と関連付けられ得るからである。加えて、弾性支持体(パッド及びブッシング)のこれらの特定の実施形態は、決して限定的なものであるとみなされるべきではない。なぜなら、本発明はまた、例えば、車両のエンジンサスペンションシステムのための弾性プラグを対象とするからである。
【0018】
本発明の本質的な特性によると、弾性支持体1、2は、同一の出願人による国際公開第2012/055934 A1の開示による、カーボン系ナノフィラーを加えられたポリマ材料からなる機能化された部分を有するポリマエラストマ材料で形成された少なくとも1つの本体Cを含む(図3図4)。
【0019】
本明細書の知られた方法において、ポリマ系の材料に、カーボンナノチューブ、又は窒化炭素又はカーボンナノファイバ等のカーボン系ナノフィラーが、材料を導電性にするには不十分な量加えられる。図面において図示されている本発明の本実施形態において、特に、ショックアブソーバ1及び弾性ブッシング2の形態の弾性支持体をそれぞれ図示する図2図3及び図4図5を参照して、これらの要素1、2の本体Cの表面は、国際公開第2012/055934 A1が適用される。この方法は、複数のピエゾ抵抗領域3、4、5を形成すべく、レーザヘッドHによって弾性支持体のポリマ材料に放射されるレーザビームLを方向付けることを想定する。
【0020】
図4は、レーザヘッドHを概略的に示す。レーザヘッドHは、2つの直交する方向X、Yに移動可能であり、1つの平面内で、又は2つの直交する平面内でレーザビームLを旋回するための手段も搭載する。図4において概略的に図示されている解決手段は、単に例示として提供され、代替的に、支持体2は、レーザヘッドHに対して移動すると想定することができ、又は、支持体2及びレーザヘッドHの移動の組み合わせを想定することができる。
【0021】
本発明の別の特性によると、弾性支持体1、2の本体Cの表面へのレーザ照射は、ピエゾ抵抗領域3、4、5に加えて、レーザビームLが材料の炭化を生じさせる1又は複数の導電性経路6を形成するように実行される。基材、ナノフィラーのタイプ、使用可能なレーザのタイプ、及びレーザヘッドHを移動させるための手段に関する詳細は、簡潔かつ明瞭にすべく、ここで図示されていない。なぜなら、それら自体において理解されるそのような詳細は、本発明の範囲内に含まれず、国際公開第2012/055934 A1に含まれる開示による、任意の知られた方法で達成可能であるからである。
【0022】
より具体的には、図2及び図3を参照すると、ショックアブソーバ1の形態で、本発明による弾性支持体の断面図及び斜視図がそれぞれ図示されている。知られたアーキテクチャによると、パッド1は、バネMと同軸となるようにショックアブソーバユニットAのステムS1の上端に配置される。パッド1の外面に、複数のピエゾ抵抗領域が形成され、第1のセンサ付きのバンド3及び第2のセンサ付きのバンド4の形状で作られる。2つのバンド3、4は、パッド1の全体の円周の延在部に沿って延在し、より具体的には、第1のセンサ付きのバンド3は、パッド1の外面上にまた提供される第2のセンサ付きのバンド4より実質的に小さい。2つのバンド3、4は、パッド1を構成する2つの異なるポリマ材料の外面上に形成される。
【0023】
パッド1の外面上のセンサ付きのバンド3、4の配置は、本発明によるセンサ付きのパッド1の操作を損なうことなく、図示されているものに対して大きく変わり得る。電極7が、各センサ付きのバンド3、4の近接する端にあり、それらは、導電性金属ターミナルとして機能し、これにより、その端は車両に搭載され配置される電子制御ユニットEに接続されている。電子制御ユニットEの機能が、以下の説明で更に説明される。
【0024】
図4及び図5において図示されている実施形態を参照すると、本発明による弾性支持体は、例えば、サスペンションSの旋回アームBのための弾性ブッシング2の形態である。それ自体知られたアーキテクチャによる弾性ブッシングは、エラストマ材料の内側本体Cをもつ金属外側シェル8を有し、金属ピン9が、その中を貫通する。しかしながら、車両サスペンションSと関連付けられる安定化バーのブラケットのためのブッシング20等の、他のタイプのサスペンションのための弾性ブッシングが、本発明の本開示によって製造され得る(図1)。
【0025】
ブッシング2は、国際公開第2012/055934 A1の明細書の開示による方法を受けるポリマエラストマ材料の本体Cを含み、これにより、複数のピエゾ抵抗領域5が取得され、導電性経路6によって接続される。図面で図示されている特定の形態において、導電性経路6は、ピエゾ抵抗領域5が互いに直列に接続されるように配置されているが、並列に接続された領域も提供され得る。2つの近接するピエゾ抵抗領域5の端に、2つの導電性経路が存在し、それらの端は、車両の電子制御ユニットEに接続されている(パッド1に関して先に説明されたものと完全に同様の方法で)。
【0026】
パッド1を構成する実施形態(図2及び図3)と、ブッシング2を構成する実施形態(図4及び図5)の両方を参照して、車両の搭載電子制御ユニットEは、ピエゾ抵抗領域を含む導電性経路のうちの1又は複数の電気抵抗をモニタリングするよう構成され、これにより、測定された電気抵抗が所定の閾値を超える場合に、車両の運転を容易にする補助システムを操作する。この補助システムは、例えば、車両の快適さを改善する、及び/又は車両のグリップを改善するために設計され得る。
【0027】
上述したように、本発明はまた、車両のエンジンサスペンションのための弾性支持体の形態で製造され得、支持体が受ける負荷検出機能は、支持体それ自体に統合される。
【0028】
上述した特性のおかげで、本発明による支持体は、構築が簡単で経済的であるが、同時に車両の搭載システムの作動をトリガする負荷を検出する場合に極めて信頼性の高い目的物を製造することによって、国際公開第2012/055934 A1の明細書において本出願人により提案された方法によって提供される可能性を有利に活用し、これは、車両の運転者の快適さを改善し得る、及び/又は車両それ自体のグリップを改善し得る。
【0029】
もちろん、本発明の原理を損なうことなく、構造の詳細及び実施形態は、純粋に例として説明され、図示されてきたものに対して、添付の特許請求の範囲において画定される本発明の範囲から逸脱することなく、広く変化してよい。
図1
図2
図3
図4
図5