特許第6874961号(P6874961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874961
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】導電部材、及びグランド対策構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/48 20060101AFI20210510BHJP
   H01R 4/64 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   H01R4/48 Z
   H01R4/64 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-221670(P2016-221670)
(22)【出願日】2016年11月14日
(65)【公開番号】特開2018-81765(P2018-81765A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2019年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 達哉
【審査官】 高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−072317(JP,A)
【文献】 特開2002−334964(JP,A)
【文献】 特開平11−068301(JP,A)
【文献】 特開2003−045521(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1309404(KR,B1)
【文献】 特開2016−134331(JP,A)
【文献】 特開2003−069250(JP,A)
【文献】 特開2007−324029(JP,A)
【文献】 実開平05−090984(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/48
H01R 4/64
H01R 12/51−12/52
H01R 12/55−12/57
H01R 13/24
H05K 1/18
H05K 3/32−3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差する方向に延びる第1面と第2面とを導通する金属製の導電部材であって、
前記第1面と側面が当接する筒状のボックス部と、
前記ボックス部の前記第1面と当接する側面を含む第1側壁、又は前記第1側壁と対向する第2側壁の端部から、この端部を基端として延伸する板状のバネ部と、
を備え、
前記バネ部は、前記第2面から離れる方向の力を弾性変形により緩衝する緩衝部と、前記緩衝部よりも前記バネ部の先端側に設けられた湾曲部とを有し、
前記湾曲部は、前記ボックス部の一方の開口から前記第2面に向かって突出すると共に、前記開口からの突出方向に凸となるよう湾曲しており、
前記バネ部は、前記第2面と平行かつ前記第1面から離れる方向の力が前記湾曲部に加わった際に、前記ボックス部の内部にその先端が存在し、かつ前記第2面と平行かつ前記第1面に向かう方向の力が前記湾曲部に加わった際に、前記ボックス部の前記第1側壁の内面に押圧され、
前記湾曲部は、前記第1面及び前記第2面の双方と平行な仮想線を囲むように湾曲しており、
前記バネ部に力が加わっていない状態で前記ボックス部の前記開口から突出している部分において、前記湾曲部の湾曲の中心から前記バネ部の先端に向かう側の平均曲率半径は、湾曲の中心から前記緩衝部に向かう側の平均曲率半径よりも小さい、導電部材。
【請求項2】
請求項1に記載の導電部材であって、
前記湾曲部は、前記第2面に当接する部分の幅方向の中央に、他の領域よりも前記第2面に向かって突出した凸部を有する、導電部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の導電部材であって、
前記ボックス部は、
前記バネ部と前記バネ部の幅方向に対向する第3側壁と、
前記第3側壁に設けられた係合開口と、
を有し、
前記バネ部は、前記係合開口から前記ボックス部の外側に突出する係合部を有する、導電部材。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の導電部材と、
プリント配線板と、
前記プリント配線板に前記プリント配線板の実装面と垂直となる向きに配設される板金と
を備え、
前記導電部材は、前記プリント配線板の実装面に前記第1側壁が半田付けされると共に、前記板金の表面に前記湾曲部が当接する、グランド対策構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導電部材に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は、電磁波から回路等をシールドする目的で板金によって被覆されることがある。この板金は、プリント配線板のグランド配線と電気的に接続されることで、シールドケースとして機能する。
【0003】
プリント配線板のグランド配線と板金との接続には、一方の端子がプリント配線板の実装面に半田付けされ、他方の端子が板金に押圧される導電部材が用いられる。この導電部材には、プリント配線板と対向配置される板金と接続する上下接触タイプと、プリント配線板に垂直に配置される板金と接続する側面接触タイプ(いわゆるサイドコンタクト)とがある。
【0004】
側面接触タイプとしては、例えば特許文献1に示されるように、プリント配線板と平行な方向に弾性変形可能なバネ部によって端子間を接続した導電部材が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−26502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
側面接触タイプの導電部材では、板金の組み付け時や組み付け後に、板金に当接するバネ部にプリント配線板と垂直な方向に力が加わることがある。例えば、プリント配線板から離れる方向(つまり、上方向)の力がバネ部に加わると、特許文献1の導電部材ではバネ部の先端が導体部の外に飛び出し、導体部のエッジに接触するおそれがある。また、プリント配線板に向かう方向(つまり、下方向)の力がバネ部に加わると、導体部の上板が押し上げられる。これらの現象によって、プリント配線板に半田付けされている下板にはプリント配線板から離間する力が働く。その結果、半田付け部分が剥離し、導電部材がプリント配線板から脱落するリスクがある。
【0007】
本開示の一局面は、側面接触タイプの導電部材において、プリント配線板からの脱落を防止できる導電部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、互いに交差する方向に延びる第1面と第2面とを導通する金属製の導電部材である。導電部材は、第1面と側面が当接する筒状のボックス部と、ボックス部の第1面と当接する側面を含む第1側壁、又は第1側壁と対向する第2側壁の端部から、この端部を基端として延伸する板状のバネ部とを備える。バネ部は、第2面から離れる方向の力を弾性変形により緩衝する緩衝部と、緩衝部よりもバネ部の先端側に設けられた湾曲部とを有する。湾曲部は、ボックス部の一方の開口から第2面に向かって突出すると共に、開口からの突出方向に凸となるよう湾曲している。バネ部は、第2面と平行かつ第1面から離れる方向の力が湾曲部に加わった際に、ボックス部内にその先端が存在する。また、バネ部は、第2面と平行かつ第1面に向かう方向の力が湾曲部に加わった際に、ボックス部の第1側壁の内面に押圧される。
【0009】
このような構成によれば、第1面をプリント配線板の実装面、第2面を板金の表面とした際に、板金の表面に平行でプリント配線板から離れる方向(以下、「第1方向」ともいう。)の力がバネ部に加わった際に、バネ部の先端がボックス部のエッジに接触しない。また、板金の表面に平行でプリント配線板に向かう方向(以下、「第2方向」ともいう。)の力がバネ部に加わった際には、半田付け面をプリント配線板側に押圧する力が発生する。そのため、板金の組み付け時又は組み付け後におけるプリント配線板からの導電部材の脱落を防止できる。
【0010】
本開示の一態様は、第1側壁の第1面と当接する側面は、ボックス部の中心軸方向において、複数の領域に分割されてもよい。このような構成によれば、湾曲部の突出側の領域(以下、「脚領域」ともいう)を第1面に固定せず、残りの領域(以下、「半田付け領域」ともいう)のみを半田付け等により第1面に固定することができる。これにより、第1方向の力がバネ部に加わった際に、固定されていない脚領域に応力が加わって変形することで、半田付け領域に加わる応力を低減することができる。
【0011】
本開示の一態様は、湾曲部は、第1面及び第2面の双方と平行な仮想線を囲むように湾曲していてもよい。また、バネ部に力が加わっていない状態でボックス部の開口から突出している部分において、湾曲部の湾曲の中心からバネ部の先端に向かう側の平均曲率半径は、湾曲の中心から緩衝部に向かう側の平均曲率半径よりも小さくてもよい。このような構成によれば、第1方向又は第2方向の力に対するバネ部の弾性変形量を大きくすることができる。その結果、第1方向又は第2方向の力が加わった際の応力を低減することができる。
【0012】
本開示の別の態様は、導電部材と、プリント配線板と、プリント配線板にプリント配線板の実装面と垂直となる向きに配設される板金とを備えるグランド対策構造である。導電部材は、プリント配線板の実装面に第1側壁が半田付けされると共に、板金の表面に湾曲部が当接する。このような構成によれば、プリント配線板のグランド配線と板金とを確実に導通しつつ、導電部材の脱落を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態の導電部材の模式的な斜視図である。
図2図2は、図1の導電部材の模式的な側面図である。
図3図3Aは、図1の導電部材の模式的な正面図であり、図3Bは、図1の導電部材の模式的な背面図であり、図3Cは、図1の導電部材の模式的な平面図であり、図3Dは、図1の導電部材の模式的な底面図である。
図4図4は、図3CのA−A線における模式的な断面図である。
図5図5は、図1の導電部材のバネ部に第1方向の力が加わった際の変形状態を示す模式的な断面図である。
図6図6は、図1の導電部材のバネ部に第2方向の力が加わった際の変形状態を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1−1.構成]
図1〜4に示す導電部材1は、互いに交差する方向に延びる第1面Pと第2面Qとを導通する金属製の部材である。第1面Pは、具体的にはプリント配線板の実装面であり、第2面Qは具体的にはプリント配線板の少なくとも一部を囲うシールドケースを構成する板金の内面である。図2Bに示すように、第1面Pと第2面Qとは互いに直交する方向に延びている。
【0015】
図1〜4に示すように、導電部材1は、筒状のボックス部2と、板状のバネ部3とを備える。導電部材1は、1枚の金属板を一定形状に打ち抜いたものを折り曲げることによって形成されている。また、導電部材1は、図中のY軸方向の中心を通り、Y軸に垂直な仮想平面に対して対称な形状を有する。
【0016】
(ボックス部)
ボックス部2は、バネ部3を内部に収納する筒状の部材である。ボックス部2は、第1面Pと当接する当接側面21を有する。ボックス部2は、中心軸が第1面Pと平行となるように第1面P上に配置される。
【0017】
ボックス部2は、具体的には四角筒状である。ボックス部2の中心軸と垂直な断面形状は、略長方形状、詳細には略正方形状である。ボックス部2は、当接側面21を含む第1側壁2Aと、第1側壁2Aと平行かつ対向する第2側壁2Bと、第1側壁2A及び第2側壁2Bの間に垂直に配置された1対の第3側壁2C,2Dとから構成される。
【0018】
ボックス部2の第1側壁2Aは、図3Dに示すように、ボックス部2の中心軸と平行なX軸方向、及び中心軸と垂直なY軸方向にそれぞれ2つの領域に分割されている。すなわち、当接側面21は、分割された4つの領域を有する。
【0019】
当接側面21の4つの領域のうち、X軸方向において第2面Qと反対側に位置する2つの半田付け領域22は、半田付けにより第1面P(具体的には、プリント配線板のランド部の表面)に電気的に接続されると共に、固定されている。当接側面21の4つの領域のうち、X軸方向において第2面Q側に位置する2つの脚領域23は、第1面Pに半田付け等により固定されていない。つまり、脚領域23は、第1面Pに対し相対的に変位できる。そのため、脚領域23は、変形により当接側面21に加わる応力を吸収し、半田付け領域22に加わる応力を緩和することができる。脚領域23は、第1面Pに導電部材1を取り付けた際に、第1面Pと当接するように形成されてもよいし、バネ部3に力が加わった際に当接する距離で第1面Pと離間するように形成されてもよい。
【0020】
なお、Y軸と平行に延伸し、半田付け領域22と脚領域23とを分割するスリット24は、導電部材1の半田付けの際に、半田付け領域22から脚領域23に半田が流動することを防止する役割を奏する。つまり、スリット24によって、脚領域23が第1面Pと接合されることが防止される。また、スリット24は、図2及び図4に示すように、1対の第3側壁2C,2Dにまで延伸している。つまり、1対の第3側壁2C,2Dは、スリット24による切欠きを有する。
【0021】
ボックス部2の1対の第3側壁2C,2Dは、図2及び図4に示すように中央部分に開口25をそれぞれ有する。この開口25には、バネ部3の係合部37が係合する。開口25は、長手方向がX軸と平行な略長方形状に形成されている。
【0022】
(バネ部)
バネ部3は、ボックス部2の第2側壁2Bの第2面Qと反対側の端部から、この端部を基端として延伸する板状のバネ部材である。具体的には、バネ部3は、ボックス部2の第2側壁2Bから延伸した板状体を複数回湾曲させることで形成されている。
【0023】
バネ部3は、図4に示すように、ボックス部2の第2面Qと反対側から、第2面Q側に向かってボックス部2内を貫通している。そのため、バネ部3の幅(つまり、図中Y軸方向の長さ)は、第1側壁2A及び第2側壁2Bの幅よりも小さい。また、バネ部3は、ボックス部2内を貫通したのち、第2側壁2Bから第1側壁2Aに向かう方向に延伸しつつ湾曲し、再度ボックス部2内に進入している。
【0024】
具体的には、バネ部3は、ボックス部2の中心軸方向(つまり、図中X軸方向)の力を弾性変形により緩衝する緩衝部31と、緩衝部31よりもバネ部3の先端側に設けられた湾曲部32と、湾曲部32よりもバネ部3の先端側に設けられた先端部33とを有する。なお、「先端側」とは、バネ部3の延伸方向において、バネ部3の基端である第2側壁2Bの端部(いわゆる固定端)と反対の側(いわゆる自由端)を意味する。
【0025】
緩衝部31は、バネ部3の幅方向(つまり、図中Y軸方向)を湾曲の軸とした複数の湾曲部分を含む。図5、6に示すようにバネ部3に力が加わると、緩衝部31が湾曲部分によって圧縮変形し、力を緩衝する。
【0026】
本実施形態では、図4に示すように、緩衝部31は、湾曲部分によって接続された、第1部分31Aと、第2部分31Bと、第3部分31Cと、第4部分31Dとを有する。以下、バネ部3に力が加わっていない状態(以下、「定常状態」ともいう。)における各部分の形状を説明すると、第1部分31Aは、第2側壁2Bの端部から第2方向(つまり、図4中Z軸下方向)に延伸している。第2部分31Bは、第1面Pに平行で第2面Qに向かう方向(つまり、図中X軸左方向)に延伸している。第3部分31Cは、バネ部3の根元部分である第2側壁2Bの端部に向かう方向(つまり、図中右上方向)に延伸している。第4部分31Dは、第1面Pに平行で第2面Qに向かう方向に再び延伸している。そのため、定常状態において緩衝部31は、Z字状の断面形状を有する。
【0027】
なお、緩衝部31のうち、第1部分31Aと、第2部分31Bの一部とは、ボックス部2の外側に位置し、残りの部分はボックス部2の内部に収納されている。ただし、図5、6に示すように、バネ部3に力が加わった際には、第3部分31C及び第4部分31Dの一部がボックス部2から飛び出す場合がある。
【0028】
緩衝部31は、第1部分31AからY軸方向に対称に突出する1対の板状の羽部34を有する。この羽部34は、第1部分31Aがボックス部2の内部に進入し、緩衝部31がボックス部2内で変形不能となることを防止する。
【0029】
湾曲部32は、緩衝部31と連続して設けられ、定常状態でボックス部2の第2面Q側の開口から突出している部分である。湾曲部32は、第1面P及び第2面Qの双方と平行な仮想線を囲むように湾曲している。また、湾曲部32は、開口からの突出方向に(つまり、第2面Qに向かって)凸となるよう湾曲している。つまり、湾曲部32は、Y軸に垂直な仮想平面(X−Z平面)における断面形状がC字状であり、かつこの断面形状がY軸方向に変化せずに一定となるように湾曲している。
【0030】
具体的には、湾曲部32は、第2側壁2B側から第1側壁2A側に向かって、つまり第1面Pに向かって延伸しており、その中央部分が第2面Qに向かって張り出すように湾曲している。
【0031】
図4に示すように、定常状態でボックス部2の開口から突出している部分において、湾曲部32の湾曲の中心Sから先端部33に向かう側の領域T1の平均曲率半径は、湾曲の中心Sから緩衝部31に向かう側の領域T2の平均曲率半径よりも小さい。ここで、「平均曲率半径」とは、各領域における湾曲部32の曲率半径を湾曲部32の延伸方向(つまり、長手方向)に沿って一定間隔で計測した値の平均値である。なお、「湾曲部32の曲率半径」とは、湾曲の中心軸(つまりY軸)に垂直な断面での湾曲部32の曲率半径を意味する。
【0032】
湾曲部32の最突出部分、つまり第2面Qに当接する部分の幅方向の中央には、凸部35が設けられている。凸部35は、湾曲部32の一部をボックス部2側から外側に向かって押し出すことで形成されている。
【0033】
また、湾曲部32は、図6に示すように、板金10の組み付けにより第2方向の力が湾曲部32に加わった際に、ボックス部2の第1側壁2Aの内面に押圧される押圧部分36を有する。押圧部分36は、凸部35と先端部33との間に位置する。
【0034】
先端部33は、湾曲部32の先端側に湾曲部32から連続して設けられ、定常状態でボックス部2内に収納されている部分である。先端部33は、湾曲部32の先端からバネ部3全体の先端までの部分である。
【0035】
本実施形態では、図4に示すように、先端部33は、湾曲部32から連続し、定常状態において第1方向(つまり、図4中Z軸上方向)に延びる第1部分33Aと、この第1部分33Aから連続し、定常状態において第1面Pと平行で第2面Qと反対側に延びる第2部分33Bとを有する。第2部分33Bの先端は、バネ部3の先端である。
【0036】
図5に示すように、板金10の組み付けにより第1方向の力が湾曲部32に加わった際に、先端部33の先端、すなわちバネ部3の先端は、ボックス部2の内部に存在する。なお、先端部33の先端は、図6に示すように、第2方向の力が湾曲部32に加わった際にも、ボックス部2の内部に存在する。つまり、バネ部3の先端は、常にボックス部2内に収納されている。
【0037】
先端部33は、第2部分33BからY軸方向に対称に突出する1対の板状の係合部37を有する。1対の係合部37は、それぞれボックス部2の1対の第3側壁2C,2Dの開口25に係合し、先端部33の移動を規制する。すなわち、1対の係合部37と開口25とによって、先端部33のX軸方向及びZ軸方向の移動が規制され、湾曲部32の押圧部分36が第1側壁2Aに押圧されるように案内される。また、先端部33が緩衝部31に衝突したり、バネ部3が過大に変形したりすることが防止される。
【0038】
[1−2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)第1方向の力がバネ部3に加わった際に、図5に示すように、バネ部3の先端がボックス部2のエッジに接触しない。また、第2方向の力がバネ部3に加わった際には、図6に示すように、半田付け領域22をプリント配線板側に押圧する力が発生する。そのため、板金の組み付け時又は組み付け後におけるプリント配線板からの導電部材1の脱落を防止できる。
【0039】
(1b)プリント配線板に当接する当接側面21は、プリント配線板に固定される半田付け領域22と、プリント配線板に固定されない脚領域23とを有する。そのため、第1方向の力がバネ部3に加わった際に、脚領域23が変形することで、半田付け領域22に加わる応力を低減することができる。その結果、プリント配線板からの導電部材1の脱落防止効果を促進できる。
【0040】
(1c)湾曲部32の湾曲の中心Sからバネ部3の先端に向かう側の領域T1の平均曲率半径は、湾曲の中心Sから緩衝部31に向かう側の領域T2の平均曲率半径よりも小さいので、湾曲部32の弾性変形量を大きくすることができる。その結果、第1方向又は第2方向の力が加わった際の応力を低減することができる。その結果、プリント配線板からの導電部材1の脱落防止効果を促進できる。
【0041】
(1d)湾曲部32が第1側壁2Aの内面に押圧される押圧部分36を有する、つまりバネ部3の湾曲している部分が第1側壁2Aに当接するので、押圧時に第1側壁2Aと第1面Pとの間に設けられた半田が損傷しにくい。
【0042】
(1e)導電部材1は、1枚の金属板から、溶接や接着等の固定手段を用いずに、折り曲げのみで形成可能な構成を有する。そのため、加工コスト及び材料コストを低減することができる。
【0043】
[2.第2実施形態]
[2−1.構成]
本開示の第2実施形態は、導電部材1と、プリント配線板と、このプリント配線板にプリント配線板の実装面と垂直となる向きに配設される板金とを備えるグランド対策構造である。
【0044】
プリント配線板の実装面は、上述のように、導電部材1が導通する第1面Pに該当し、板金の内面、つまり板金の導電部材1と対向する表面は、導電部材1が導通する第2面Qに該当する。
【0045】
板金は、電磁波をシールドしたい領域を被覆するシールドケースの壁を構成する。導電部材1は、プリント配線板の実装面Pに第1側壁2Aの半田付け領域22が半田付けされ、グランド配線と導通されている。また、導電部材1は、板金の表面Qに湾曲部32が当接することで、板金とも導通されている。
【0046】
[2−2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)プリント配線板のグランド配線と板金とを確実に導通しつつ、導電部材の脱落を防止できる。その結果、電磁波シールド効果を維持することができる。特に、自動車等のような振動を受けやすい環境におけるプリント配線板において、振動によって板金から荷重を受けた際の導電部材の脱落を効果的に防止できる。
【0047】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0048】
(3a)上記実施形態の導電部材1において、バネ部3は、ボックス部2の第2側壁2Bの端部からではなく、当接側面21を含む第1側壁2Aの端部から延伸したものであってもよい。
【0049】
(3b)また、バネ部3は、第1方向の力が湾曲部32に加わった際に、ボックス部2の内部にその先端が存在し、かつ第2方向の力が湾曲部32に加わった際に、ボックス部2の第1側壁2Aの内面に押圧される押圧部分36を有せば、上記実施形態の形状に限定されない。例えば、バネ部3は、ボックス部2内を貫通したのち、第1側壁2Aから第2側壁2Bに向かう方向(図4中Z軸上方向)に延伸しつつ湾曲し、再度ボックス部2内に進入してもよい。さらに、例えば、湾曲部32は、第1面P及び第2面Qの少なくとも一方と交差するような仮想線を囲むように湾曲していてもよい。
【0050】
(3c)上記実施形態の導電部材1において、バネ部3の押圧部分36は、湾曲部32に設けられなくてもよい。つまり、押圧部分36は、湾曲部32以外の部分、例えば先端部33に設けられてもよい。また、複数の押圧部分36がバネ部3に形成されてもよい。
【0051】
(3d)上記実施形態の導電部材1において、脚領域23は必須ではなく、省略が可能である。また、脚領域23を形成するスリット24は、第1側壁2Aのみに形成されてもよく、第3側壁2C,2Dには延伸していなくてもよい。
【0052】
(3e)上記実施形態の導電部材1において、ボックス部2は、第1面Pに当接する第1側壁2Aを有してさえいれば、四角筒状に限定されず、五角以上の多角筒状であってもよい。
【0053】
(3f)上記実施形態の導電部材1において、第1面Pと第2面Qとは必ずしも直交している必要はなく、これらの面は90°未満の角度で交わっていてもよい。つまり、導電部材1が導通する板金は、プリント配線板の実装面に対し傾斜して配置されてもよい。
【0054】
(3g)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0055】
1…導電部材、2…ボックス部、2A…第1側壁、2B…第2側壁、
2C,2D…第3側壁、3…バネ部、10…板金、21…当接側面、
22…半田付け領域、23…脚領域、24…スリット、25…開口、31…緩衝部、
31A…第1部分、31B…第2部分、31C…第3部分、31D…第4部分、
32…湾曲部、33…先端部、33A…第1部分、33B…第2部分、34…羽部、
35…凸部、36…押圧部分、37…係合部、P…第1面(実装面)、
Q…第2面(板金の表面)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6