特許第6874962号(P6874962)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 北川工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874962
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】エラストマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 91/00 20060101AFI20210510BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20210510BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20210510BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   C08L91/00
   C08L53/00
   C08K9/04
   C08K3/22
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-221755(P2016-221755)
(22)【出願日】2016年11月14日
(65)【公開番号】特開2018-80224(P2018-80224A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2019年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鷲野 真也
(72)【発明者】
【氏名】大屋 理佳
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−229072(JP,A)
【文献】 特開2016−089070(JP,A)
【文献】 特開2001−019861(JP,A)
【文献】 特開2008−260958(JP,A)
【文献】 特開昭60−243155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
C08J 3/00−3/28、99/00
A61F 13/15−13/84
A61L 15/16−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系エラストマーと、鉱物油系軟化剤と、高級脂肪酸によって表面処理された粒子状物である粒子状添加剤とを含有し、
前記スチレン系エラストマーは、重量平均分子量が15万〜30万であり、
前記鉱物油系軟化剤は、40℃における動粘度が50mm/s〜150mm/sであり、
前記スチレン系エラストマー100質量部に対する配合比で、1250質量部〜1800質量部の前記鉱物油系軟化剤と、60質量部〜170質量部の前記粒子状添加剤が配合されており、
前記高級脂肪酸は、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、ラウリン酸、カプリル酸、ベヘニン酸、及びモンタン酸のうちのいずれかである
エラストマー組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のエラストマー組成物であって、
前記高級脂肪酸は、オレイン酸である
エラストマー組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のエラストマー組成物であって、
前記粒子状添加剤は、水酸化マグネシウム粒子を核として、前記核の表面が前記高級脂肪酸によって表面処理された粒子状物である
エラストマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系エラストマー及び軟化剤を含有するエラストマー組成物によって構成された低硬度な衝撃緩衝材が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−19861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなエラストマー組成物の成形品を利用すれば、防振材や緩衝材等の製品(以下、単に製品という。)を低硬度化することができる。しかし、例えば製品の用途によっては、更に低硬度なエラストマー組成物を要望される場合がある。すなわち、エラストマー組成物の硬度に関しては、更なる改良が期待されている。
【0005】
ここで、単にエラストマー組成物の硬度だけに着目すれば、軟化剤の配合量を増大させるほど、エラストマー組成物の硬度を低下させることが可能である。しかし、上述のようなエラストマー組成物において、単に軟化剤の配合量を増やすと、成形品の離型性が低下する。また、成形品表面の平滑性が低下し、最終的に得られる製品の品質が低下する原因になる。
【0006】
また、上述のようなエラストマー組成物には、耐熱性の改善を要望される場合がある。具体的には、例えば、上述のようなエラストマー組成物の成形品が高温環境下で長時間にわたって使用された際、エラストマー組成物中に含まれる軟化剤が揮発することがある。この場合、エラストマー組成物における軟化剤の含有量は経時的に低下する。そのため、成形品の硬度が経時的に高くなり、防振性能や緩衝性能の低下を招く。
【0007】
ここで、単に軟化剤の揮発を抑制することだけに着目すれば、例えば、より高沸点で粘度が高い軟化剤を使用することにより、軟化剤の揮発を抑制することが可能である。しかし、そのような高沸点・高粘度の軟化剤を使用すると、これも成形品の離型性や成形品表面の平滑性を低下させる要因になる。
【0008】
本開示の一局面においては、極めて低硬度で離型性及び耐熱性に優れたエラストマー組成物を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、エラストマー組成物であって、スチレン系エラストマーと、鉱物油系軟化剤と、高級脂肪酸によって表面処理された粒子状物である粒子状添加剤とを含有し、スチレン系エラストマーは、重量平均分子量が15万〜30万であり、鉱物油系軟化剤は、40℃における動粘度が50mm2/s〜150mm2/sであり、スチレン系エラストマー100質量部に対する配合比で、1250質量部〜1800質量部の鉱物油系軟化剤と、60質量部〜170質量部の粒子状添加剤が配合されている。
【0010】
このように構成されたエラストマー組成物によれば、上述のような各成分が上述した通りの配合比で配合されているので、極めて低硬度でありながら離型性及び耐熱性に優れたエラストマー組成物となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示のエラストマー組成物について、例示的な実施形態を挙げて更に詳細に説明する。
(1)エラストマー組成物の構成
本開示のエラストマー組成物において、スチレン系エラストマーとしては、重量平均分子量が15万〜30万のスチレン系エラストマーが用いられる。重量平均分子量が15万以上のスチレン系エラストマーを用いることにより、軟化剤の保持能力を十分に高めることができ、低硬度でオイルブリードが抑制されたエラストマー組成物を得ることができる。また、重量平均分子量が30万以下のスチレン系エラストマーを用いることにより、成形品表面の平滑性を良好にすることができる。スチレン系エラストマーの具体例としては、例えば、スチレンエチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンエチレンプロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、及びスチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)等を挙げることができる。これらのスチレン系エラストマーは、いずれか一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0012】
鉱物油系軟化剤としては、40℃における動粘度が50mm2/s〜150mm2/sの軟化剤が使用される。動粘度が50mm2/s以上の軟化剤を用いることにより、高温環境下において軟化剤が揮発するのを抑制することができる。なお、本開示でいう高温環境とは、雰囲気温度が100℃の環境を想定している。また、動粘度が150mm2/s以下の軟化剤を用いることにより、成形品の離型性や成形品表面の平滑性を良好にすることができる。鉱物油系軟化剤の具体例としては、例えば、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、及びアスファルト系オイル等を挙げることができる。これらの中でもパラフィン系オイルは、スチレン系エラストマーとの相溶性が良好な点で好ましい。
【0013】
鉱物油系軟化剤の配合量は、スチレン系エラストマー100質量部に対する配合比で、1250質量部〜1800質量部とされる。母材がスチレン系エラストマー単独の場合には、上述のような大量の鉱物油系軟化剤を配合すると成形品の離型性が低下し、成形品表面の平滑性も低下する。この点、本開示のエラストマー組成物の場合は、スチレン系エラストマーに加えて、粒子状添加剤(詳細は後述。)が配合されているため、離型性が良好になり、成形品表面の平滑性も良好になる。鉱物油系軟化剤の配合量を1250質量部以上とすることにより、極めて低硬度なエラストマー組成物を得ることができる。なお、本開示のエラストマー組成物において、極めて低硬度とは、ASKER FP硬度で30以下となるような硬さのことをいう。鉱物油系軟化剤の配合量を1800質量部以下とすることにより、オイルブリードの発生や成形品表面にタック性が生じるのを抑制することができる。
【0014】
粒子状添加剤は、スチレン系エラストマー単独では保持しきれない鉱物油系軟化剤をエラストマー組成物中において保持する役割を果たす成分である。本開示のエラストマー組成物において、粒子状添加剤としては高級脂肪酸によって表面処理された粒子状物が用いられる。なお、本開示でいう表面処理とは、粒子の核となる物質を高級脂肪酸によってコーティングする処理のことを意味する。高級脂肪酸の具体例としては、例えばステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、ラウリン酸、カプリル酸、ベヘニン酸、及びモンタン酸等を挙げることができる。これらの中でも、オレイン酸が好ましい。粒子の核となる物質は、核としての機能を果たすことができれば特に限定されないが、核としての機能以外の特性を付与するために特定の物質が選定されてもよい。例えば、粒子の核となる物質として水酸化マグネシウムを利用すれば、エラストマー組成物の難燃性を向上させることができる。
【0015】
粒子状添加剤の平均粒子径や比表面積は、所期の物性が損なわれない範囲内で適宜選定されていればよい。一例としては、例えば、レーザー回折・散乱法によって測定される平均粒子径が0.1μm〜5μmとなる粒子状物などが好適である。また、粒子状添加剤の比表面積については、例えば3m2/g〜21m2/gとなる粒子状物などが好適である。粒子状添加剤の比表面積を3m2/g以上とすることにより、エラストマー組成物中を低硬度で維持したまま鉱物油系軟化剤の保持能力を高めることができる。また、粒子状添加剤の比表面積を21m2/g以下とすることにより、粒子状添加剤の付着凝集性を低減し、粒子状添加剤の分散性や流動性を良好にすることができる。
【0016】
粒子状添加剤の配合量は、スチレン系エラストマー100質量部に対する配合比で、60質量部〜170質量部とされる。粒子状添加剤の配合量を60質量部以上とすることにより、1250質量部以上となる大量の鉱物油系軟化剤をエラストマー組成物中で保持することができる。また、粒子状添加剤の配合量を170質量部以下とすることにより、エラストマー組成物の硬度が過剰に高くなる(すなわち、ASKER FP硬度で30超過となるような硬さになる。)のを抑制することができる。
【0017】
(2)実験例
下記の表1及び表2に示す各成分を含有するエラストマー組成物を作製した。表1及び表2に示した各成分に対応する数値は、いずれも各成分の配合量を示し、その単位は質量部である。表1及び表2において、各成分には(A1),(a1)等の符号を付してある。それらの符号のアルファベット部分が大文字となっている成分は実施例に該当し得る成分であり、アルファベット部分が小文字となっている成分は比較例に該当する成分である。ただし、各表中には、成分が実施例に該当する場合であっても、配合量という点で実施例には該当しない事例が含まれる。
【0018】
なお、表1及び表2に示した各成分のうち、スチレン系エラストマー(A1)は、株式会社クラレ製のセプトン4055(重量平均分子量約26万)である。スチレン系エラストマー(A2)は、株式会社クラレ製のセプトン4044(重量平均分子量約17.3万)である。スチレン系エラストマー(a1)は、株式会社クラレ製のセプトン4077(重量平均分子量約35万)である。スチレン系エラストマー(a2)は、株式会社クラレ製のセプトン4099(重量平均分子量約40万)である。
【0019】
鉱物油系軟化剤(b1)は、出光興産株式会社製のダイアナプロセスオイルPW−32(40℃における動粘度30mm2/s)である。鉱物油系軟化剤(B1)は、出光興産株式会社製のダイアナプロセスオイルPW−90(40℃における動粘度92mm2/s)である。鉱物油系軟化剤(b2)は、出光興産株式会社製のダイアナプロセスオイルPW−380(40℃における動粘度380mm2/s)である。酸化防止剤は、BASFジャパン株式会社製のイルガノックス1010である。
【0020】
粒子状添加剤(C1)は、水酸化マグネシウム粒子を高級脂肪酸(本実施形態ではオレイン酸。)で表面処理した粒子状物であり、神島化学工業株式会社製のマグシーズN4(平均粒子径1.1μm)である。粒子状添加剤(c1)は、ステアリン酸カルシウムの粒子状物であり、堺化学工業株式会社製のSC−P(平均粒子径1.1μm)である。粒子状添加剤(c2)は、水酸化マグネシウムの粒子状物であり、堺化学工業株式会社製のMGZ−1(平均粒子径0.8μm)である。粒子状添加剤(c3)は、水酸化マグネシウムの粒子状物であり、堺化学工業株式会社製のMGZ−3(平均粒子径0.1μm)である。粒子状添加剤(c4)は、水酸化マグネシウムの粒子状物であり、神島化学工業株式会社製の#200(平均粒子径3.5μm)である。液状添加剤(c5)は、オレイン酸であり、日油株式会社製のLA334である。
【0021】
試料の製造手順としては、スチレン系エラストマーに対して、表1に示す添加物(軟化剤、酸化防止剤、及び添加剤。)を配合して、その原料組成物をラボプラストミル(型番:150C、株式会社東洋精機製作所製。)にて混練した。混練時の温度条件は、スチレン系エラストマー及び添加物の溶融温度以上の温度に相当する180℃に設定し、混練時間は5分とした。混練を終えたコンポジットは、粗粉加工し、プレス機にて180℃、予熱1分、加圧1分、圧力5kN/cm2のプレス条件でプレス成形して、シート状に加工した。
【0022】
上述の製造手順で作製した試料1〜試料24に対し、成形品の硬度(ASKER FP)、混練後の金型離型性、成形品表面のオイルブリード、成形品表面の平滑性、成形品表面のタック性、耐熱性(外観変化)、及び耐熱性(重量変化)の7項目を評価し、これら7項目の評価結果に基づいて総合判定を行った。各項目の評価はAA,A,B,Cの4段階(AAからCの順でAAが高評価。)、又はA,B,Cの3段階(AからCの順でAが高評価。)、又はA,Cの2段階(A,Cの順でAが高評価。)で実施した。7項目の評価の中で最も低評価となった項目と同じ評価結果を総合判定の結果とした。
【0023】
具体的な評価基準として、成形品の硬度(ASKER FP)については、30以下であればA、31以上であればCと判定した。混練後の金型離型性については、量産する上で支障がない程度の離型性があればA、量産する上で支障がある程度まで離型性が低い場合はCと判定した。
【0024】
成形品表面のオイルブリードについては、10mm×10mm×3mmの成形品を50mm×50mmの紙片上に載置して、雰囲気温度70℃の環境下で24時間保持した後、紙片に移行した軟化剤の量を目視で確認した。紙片全体の面積を100%として、軟化剤が移行した領域の面積が10%以下の場合はAA、10%超過かつ50%以下の場合はA、50%超過かつ80%以下の場合はB、80%超過かつ100%以下の場合はCと判定した。
【0025】
成形品表面の平滑性は、表面が平坦な場合はA、表面に凹凸がある場合はCと判定した。成形品表面のタック性については、タック性が弱い場合はA、タック性がやや強い場合はB、タック性が強い場合はCと判定した。耐熱性(外観変化)については、雰囲気温度100℃の環境下で成形品を2000時間にわたって保持し、目視で外観に変化がなければA、外観に変化があればCと判定した。耐熱性(重量変化)については、雰囲気温度100℃の環境下で成形品を2000時間にわたって保持した後、重量変化がなければA、重量変化があればCと判定した。以上のような評価の結果も表1及び表2に併記する。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
表1及び表2に示す試料1〜試料24のうち、試料1は代表的な実施例に該当するエラストマー組成物であり、その総合判定はAとなった。試料2は軟化剤の量が過小となっている比較例である。この場合、成形品の硬度がASKER FPで45と硬くなり、十分に低硬度化を図ることができなかった。試料3は、試料2よりも軟化剤の量を増量した実施例である。試料3は、試料1よりも軟化剤の量が少ないため、試料1よりは硬度が上がったが、その硬度はASKER FPで30となり、総合判定はAとなった。
【0029】
試料4は、試料1よりも低粘度の軟化剤を使用した比較例である。この場合、成形品のタック性は弱く、成形品表面の平滑性も良好であったが、100℃での耐熱試験で軟化剤が揮発し、外観変化及び重量減少が見られた。試料5は、試料1よりも高粘度の軟化剤を使用した比較例である。この場合、成形品のタック性が強くなり、金型離型性も悪くなった。また、成形品表面の平滑性が低く、成形品表面に凹凸が生じた。試料6は、スチレン系エラストマーとして、実施例よりも高分子量のスチレン系エラストマーを用いた比較例である。この場合、成形品表面の平滑性が低く、成形品表面に凹凸が生じた。
【0030】
試料7は、試料1よりも軟化剤の量を増量した実施例である。この場合でも、総合判定はAとなった。試料7の場合は、試料1よりも更に低硬度化を図ることができた。試料8は、試料7よりも更に軟化剤の量を増量した比較例である。この場合は、成形品表面のタック性がやや強くなり、耐熱性についても外観変化及び重量変化が生じた。試料9は、試料8よりも更に軟化剤の量を増量した比較例である。この場合は、成形品表面のタック性が試料8よりも強くなり、耐熱性についても外観変化及び重量変化が生じた。
【0031】
試料10は、試料1よりも粒子状添加剤の配合量を増量した実施例である。試料10は、試料1よりは硬度が上がったが、その硬度はASKER FPで28となり、総合判定はAとなった。試料11は、試料10よりも粒子状添加剤の配合量を増量した実施例である。試料11は、試料10よりは硬度が上がったが、その硬度はASKER FPで30となり、総合判定はAとなった。試料12は、試料11よりも粒子状添加剤の配合量を増量した比較例である。試料12は、試料11よりも硬度が上がった結果、その硬度はASKER FPで34となった。試料13は、試料12よりも粒子状添加剤の配合量を増量した比較例である。試料13は、試料12よりも更に硬度が上がり、その硬度はASKER FPで36となった。
【0032】
試料14は、試料1よりも粒子状添加剤の配合量を減量した実施例である。試料14は、試料1と全く同評価となり、総合判定はAとなった。試料15は、試料14よりも更に粒子状添加剤の配合量を減量した比較例である。試料15は、金型からの離型性がやや悪くなった。試料16は、試料15よりも更に粒子状添加剤の配合量を減量した比較例である。試料16は、試料15以上に金型からの離型性が悪くなった。
【0033】
試料17は、粒子状添加剤として、同じ粒径で高級脂肪酸(オレイン酸)による表面処理が施されていない別物質(ステアリン酸カルシウム)を添加した比較例である。この場合、金型からの離型性が悪くなった。試料18〜試料20は、粒子状添加剤として、高級脂肪酸(オレイン酸)による表面処理が施されていない水酸化マグネシウムを添加した比較例である。これらの場合も、金型からの離型性が悪くなった。試料18〜試料20は、粒子状添加剤の粒径が異なるが、いずれの場合ともに金型からの離型性が悪くなることから、高級脂肪酸による表面処理が施されているか否かの違いで離型性に違いが生じるものと推察される。
【0034】
試料21は、粒子状添加剤に変えて、高級脂肪酸(オレイン酸)そのものを添加した比較例である。この場合は、耐熱性が低下し、100℃、2000時間の耐熱試験後に表面から軟化剤がブリードする結果となった。このことから、高級脂肪酸による表面処理が施された粒子状添加剤が有効ではあるが、高級脂肪酸そのものが有効ということではないことがわかる。試料22は、粒子状添加剤を配合しなかった比較例である。この場合、金型からの離型性が悪く、成形品表面に凹凸が生じる結果となった。
【0035】
試料23は、スチレン系エラストマーとして、試料1よりも低分子量のスチレン系エラストマーを用いた実施例である。この場合、試料1に比べると紙片に移行する軟化剤の量が僅かに増大したが、実用上は問題がない程度であった。試料24は、スチレン系エラストマーとして、試料1よりも高分子量のスチレン系エラストマーを用いた比較例である。この場合、成形品の成形後に成形品表面に凹凸があり、成形品表面の平滑性が低かった。
【0036】
(3)他の実施形態
以上、エラストマー組成物について、例示的な実施形態を挙げて説明したが、上述の実施形態は本開示の一態様として例示されるものに過ぎない。すなわち、本開示は、上述の例示的な実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内において、様々な形態で実施することができる。
【0037】
例えば、上記実施形態では、スチレン系エラストマーとして、スチレンエチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEEPS)を利用する例を示したが、他のスチレン系エラストマーを利用してもよい。他のスチレン系エラストマーの例を挙げれば、例えば、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンエチレンプロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)などのスチレン系エラストマーが好適である。これらのスチレン系エラストマーは、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、粒子状添加剤として、オレイン酸で表面処理された水酸化マグネシウムを例示したが、オレイン酸以外の粒子状添加剤を用いてもよい。そのような高級脂肪酸の例としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、リノール酸、ラウリン酸、カプリル酸、ベヘニン酸、及びモンタン酸等を挙げることができる。また、核となる物質は水酸化マグネシウム以外の物質であってもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、鉱物油系軟化剤として、パラフィン系オイルを例示したが、軟化剤としては、ナフテン系オイルやアスファルト系オイルを使用してもよい。