特許第6874967号(P6874967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社水道技術開発機構の特許一覧

特許6874967継手管の伸縮規制構造及び第2伸縮規制具
<>
  • 特許6874967-継手管の伸縮規制構造及び第2伸縮規制具 図000002
  • 特許6874967-継手管の伸縮規制構造及び第2伸縮規制具 図000003
  • 特許6874967-継手管の伸縮規制構造及び第2伸縮規制具 図000004
  • 特許6874967-継手管の伸縮規制構造及び第2伸縮規制具 図000005
  • 特許6874967-継手管の伸縮規制構造及び第2伸縮規制具 図000006
  • 特許6874967-継手管の伸縮規制構造及び第2伸縮規制具 図000007
  • 特許6874967-継手管の伸縮規制構造及び第2伸縮規制具 図000008
  • 特許6874967-継手管の伸縮規制構造及び第2伸縮規制具 図000009
  • 特許6874967-継手管の伸縮規制構造及び第2伸縮規制具 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874967
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】継手管の伸縮規制構造及び第2伸縮規制具
(51)【国際特許分類】
   F16L 27/12 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   F16L27/12 J
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-40379(P2017-40379)
(22)【出願日】2017年3月3日
(65)【公開番号】特開2018-146009(P2018-146009A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】396020361
【氏名又は名称】株式会社水道技術開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】酒井 篤史
【審査官】 渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−100910(JP,A)
【文献】 特開平08−121665(JP,A)
【文献】 国際公開第01/065164(WO,A1)
【文献】 特開2014−081012(JP,A)
【文献】 特開平09−280441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも伸縮構造を有する一対の継手部を備えた継手管における前記両継手部に亘って、当該両継手部を伸縮不能状態に拘束可能で、且つ、設計内圧に対応する不平均力以上の軸方向力で拘束力が低下する第1伸縮規制具が架設可能に構成されている継手管の伸縮規制構造であって、
前記継手管における前記両継手部に亘って、前記継手管内に加圧された前記設計内圧よりも大なる内圧に対応する軸方向力を単独又は前記第1伸縮規制具との協働で受け止める第2伸縮規制具が脱着自在に架設可能に構成され
前記第2伸縮規制具は、前記両継手部の外面側の各々に脱着自在に取付けられる取付け部材と、両取付け部材に亘って架設される移動規制部材から構成されている継手管の伸縮規制構造。
【請求項2】
前記第2伸縮規制具の取付け部材は、前記両継手部の外面の各々に脱着自在に取付けられる分割構造の環状取付け部材から構成され、前記移動規制部材は、前記両環状取付け部材にネジ固定される第2タイロッドから構成されている請求項記載の継手管の伸縮規制構造。
【請求項3】
前記両環状取付け部材の各々は、前記継手部の受口部における外方ほど縮径するテーパー状外周面に面当たり状態で脱着自在に固定されている請求項記載の継手管の伸縮規制構造。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の継手管の伸縮規制構造に用いられる前記第2伸縮規制具であって、前記設計内圧よりも大なる内圧に対応する軸方向力を単独又は前記第1伸縮規制具との協働で受け止め可能で、且つ、前記継手管における前記両継手部に亘って脱着自在に架設可能に構成され、前記両継手部の外面側の各々に脱着自在に取付けられる取付け部材と、両取付け部材に亘って架設される移動規制部材を備える第2伸縮規制具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも伸縮構造を有する一対の継手部を備えた継手管の伸縮規制技術に関する。
【背景技術】
【0002】
上述の継手管は、一対の継手部の伸縮構造により、耐震継手としての優れた伸縮性能を備えている。この伸縮性に優れた継手管を、曲管等の異形管に近接して設置すると、異形管において生じる設計内圧に対応する不平均力により、継手管の両継手部が最大伸長状態にまで伸びきってしまい、不同沈下等に起因する地盤の変位や地震による強い軸方向力が作用したときに伸縮作動代が確保できなくなる不都合がある。
【0003】
そこで、従来では、例えば、特許文献1に示すように、継手管の両継手部に亘って、当該両継手部を伸縮不能状態に拘束可能で、且つ、設計内圧に対応する不平均力以上の軸方向力で拘束力が低下する伸縮規制具を架設した継手管の伸縮規制構造が採用されている。
この継手管の伸縮規制構造に用いられる伸縮規制具は、両継手部の外面の管周方向複数個所に一体形成された取付け部と、軸方向で相対向する各組の両取付け部のロッド挿通孔に挿通されるタイロッドと、各取付け部をロッド軸芯方向の両側から挾持する状態でタイロッドの雄ネジ部に螺合固定されるナットから構成されている。
伸縮規制具のタイロッドは、設計内圧に対応する不平均力では両継手部を伸縮不能状態に拘束し、設計内圧に対応する不平均力を超える軸方向力が作用すると、タイロッドの変形や破断等よって拘束力が低下する。
【0004】
上述の継手管の伸縮規制構造では、一方の継手部の取付け部と他方の継手部の取付け部とに亘って挿通状態で架設されたタイロッドの両端部が、複数のナットで強固に固定されているので、継手管が異形管に近接して設置された場合でも、設計内圧に対応する不平均力であれば、両継手部をタイロッドで伸縮不能状態に拘束して初期の設定伸縮状態に維持することができる。
それでいて、不同沈下等に起因する地盤の変位や地震による強い軸方向力が作用したときには、タイロッドの変形、破断等によって拘束力が低下し、継手管の両継手部の伸縮作動によって管接合部での離脱を阻止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−150491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の継手管の伸縮規制構造では、継手管を含む管路構成部材の布設工事が完了すると、布設工事領域の管路構成部材で構成される管路に対する漏洩検査等のための流体圧試験が行われる。この流体圧試験の試験内圧は、設計内圧よりも大きい圧力で実施される場合がある。この流体圧試験時にタイロッドの変形、破断等を招来し、継手管の両継手部が伸縮作動する不都合がある。
また、タイロッドを、設計内圧よりも大きい試験内圧では変形、破断等を招来しないだけの機械強度に構成すると、タイロッドによる拘束力が強くなるため、不同沈下等に起因する地盤の変位や地震による強い軸方向力が作用したとき、最も必要とする継手管の両継手部での伸縮作動の追従性が低下する不都合がある。
【0007】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、例えば、継手管を含む管路に対して設計内圧よりも大きな内圧を一時的に加圧する場合には、両継手部の伸縮作動を確実に拘束し、それでいて、地盤の変位や地震による強い軸方向力が作用したときには、この強い軸方向力に追従して両継手部を確実、スムーズに伸縮作動させることのできる継手管の伸縮規制構造、及びそれに有効に用いられる第2伸縮規制具を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による第1の特徴構成は、少なくとも伸縮構造を有する一対の継手部を備えた継手管における前記両継手部に亘って、当該両継手部を伸縮不能状態に拘束可能で、且つ、設計内圧に対応する不平均力以上の軸方向力で拘束力が低下する第1伸縮規制具が架設可能に構成されている継手管の伸縮規制構造であって、
前記継手管における前記両継手部に亘って、前記継手管内に加圧された前記設計内圧よりも大なる内圧に対応する軸方向力を単独又は前記第1伸縮規制具との協働で受け止める第2伸縮規制具が脱着自在に架設可能に構成され
前記第2伸縮規制具は、前記両継手部の外面側の各々に脱着自在に取付けられる取付け部材と、両取付け部材に亘って架設される移動規制部材から構成されている点にある。
【0009】
上記構成によれば、例えば、継手管を含む管路構成部材の布設工事が完了し、布設工事領域の管路構成部材で構成される管路に対して設計内圧よりも大きな内圧を一時的に加圧する必要が生じた場合には、継手管における両継手部に亘って第2伸縮規制具を架設する。この第2伸縮規制具の単独、又は、継手管における両継手部に亘って架設されている第1伸縮規制具との協働により、加圧された設計内圧よりも大きな内圧に対応する軸方向力を確実に受け止めることができる。これにより、設計内圧よりも大きな内圧の一時的な加圧時における第1伸縮規制具の変形、破損等を回避して、継手管の両継手部を初期の設定伸縮状態に維持することができる。
【0010】
また、継手管を含む管路内への加圧が終了したとき、第2伸縮規制具を継手管の両継手部から撤去することにより、地盤の変位や地震による強い軸方向力が作用したときには、両継手部に亘って架設されている第1伸縮規制具でのみ受け止める状態となるため、第1伸縮規制具の拘束力が急速に低下し、地震等による強い軸方向力に追従して継手管の両継手部を確実、スムーズに伸縮作動させることができる。
【0011】
上記構成によれば、継手管における両継手部に亘って第2伸縮規制具を架設する場合、移動規制部材が架設されている両取付け部材を両継手部の外面の各々に取付けるだけで済む。また、第2伸縮規制具を撤去する場合も、移動規制部材が架設されている両取付け部材を両継手部の外面から取外すだけで済み、第2伸縮規制具の取り扱いの容易化を図ることができる。
特に、第2伸縮規制具と第1伸縮規制具との協働により、加圧された設計内圧よりも大きな内圧に対応する軸方向力を受け止める場合には、第1伸縮規制具による負担分だけ第2伸縮規制具の小型化、軽量化を図ることができる。
【0012】
記設計内圧よりも大なる内圧が試験内圧であ
【0013】
上記構成によれば、例えば、継手管を含む管路構成部材の布設工事が完了し、布設工事領域の管路構成部材で構成される管路に対する漏洩検査等のための流体圧試験を実行する場合には、継手管における両継手部に亘って第2伸縮規制具を架設する。この第2伸縮規制具の単独、又は、継手管における両継手部に亘って架設されている第1伸縮規制具との協働により、加圧された設計内圧よりも大きな試験内圧に対応する軸方向力を確実に受け止めることができる。これにより、流体圧試験時における第1伸縮規制具の変形、破損等を回避して、継手管の両継手部を初期の設定伸縮状態に維持することができる。
【0014】
記両継手部の各々は伸縮構造と屈曲構造とを備え、前記第1伸縮規制具は、前記両継手部の外面の管周方向複数個所に設けた取付け部と、軸方向で相対向する各組の両取付け部にネジ固定される第1タイロッドから構成されてい
【0015】
上記構成によれば、両継手部の外面の管周方向複数個所に設けた取付け部のうち、軸方向で相対向する各組の両取付け部に亘って第1タイロッドをネジ固定するだけの簡単な構造をもって、高い耐震性能を発揮する継手管の両継手部での伸縮作動及び屈曲作動を確実に拘束することができる。
【0018】
本発明による第の特徴構成は、前記第2伸縮規制具の取付け部材は、前記両継手部の外面の各々に脱着自在に取付けられる分割構造の環状取付け部材から構成され、前記移動規制部材は、前記両環状取付け部材にネジ固定される第2タイロッドから構成されている点にある。
【0019】
上記構成によれば、第2伸縮規制具の取付け部材が分割構造の環状取付け部材から構成されているため、この環状取付け部材を継手部の外面に対して簡単に脱着操作することができ、第2伸縮規制具の取り扱いの容易化、能率化を促進することができる。
【0020】
本発明による第の特徴構成は、前記両環状取付け部材の各々は、前記継手部の受口部における外方ほど縮径するテーパー状外周面に面当たり状態で脱着自在に固定されている点にある。
【0021】
上記構成によれば、第2伸縮規制具の両環状取付け部材は、両継手部の受口における外方ほど縮径するテーパー状外周面に対して面当たり状態で固定されるため、両継手部が伸長側に離脱移動するほど離脱移動抵抗が増大し、かつ、そのときの両者の衝突力を面当たり部で分散して受け止めることができる。
それ故に、継手管内に加圧された設計内圧よりも大なる内圧に対応する軸方向力が作用したとき、この軸方向力による両継手部の伸長側への離脱移動を、両継手部の受口部のテーパー状外周面に面当たり状態で接触している第2伸縮規制具の両環状取付け部材によって確実、強力に受け止めることができる。
【0022】
本発明による第の特徴構成は、特徴構成1〜のいずれか1項に記載の継手管の伸縮規制構造に用いられる前記第2伸縮規制具であって、前記設計内圧よりも大なる内圧に対応する軸方向力を単独又は前記第1伸縮規制具との協働で受け止め可能で、且つ、前記継手管における前記両継手部に亘って脱着自在に架設可能に構成され、前記両継手部の外面側の各々に脱着自在に取付けられる取付け部材と、両取付け部材に亘って架設される移動規制部材を備える点にある。
【0023】
上記構成によれば、例えば、継手管を含む管路構成部材の布設工事が完了し、布設工事領域の管路構成部材で構成される管路に対して設計内圧よりも大きな内圧を一時的に加圧する必要が生じた場合には、継手管における両継手部に亘って第2伸縮規制具を架設する。この第2伸縮規制具の単独、又は、継手管における両継手部に亘って架設されている第1伸縮規制具との協働により、加圧された設計内圧よりも大きな内圧に対応する軸方向力を確実に受け止めることができる。これにより、設計内圧よりも大きな内圧の一時的な加圧時における第1伸縮規制具の変形、破損等を回避して、継手管の両継手部を初期の設定伸縮状態に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態を示す伸縮可撓管の半断側面図
図2】第1実施形態を示す伸縮可撓管と第2伸縮規制具との分解側面図
図3】第1実施形態を示す要部の断面図
図4】第1実施形態を示す伸縮可撓管と第2伸縮規制具との正面図
図5】第1実施形態を示す伸縮可撓管と第1・第2伸縮規制具の側面図
図6】第2実施形態を示す伸縮可撓管と第1・第2伸縮規制具の側面図
図7】第2実施形態を示す伸縮可撓管と第1・第2伸縮規制具の要部の平面図
図8】第2実施形態を示す伸縮可撓管と第1・第2伸縮規制具の正面図
図9】第3実施形態を示す伸縮可撓管と第1・第2伸縮規制具の側面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔第1実施形態〕
第1実施形態の継手管の伸縮規制構造について図1図5に基づいて説明する。
図1は、流体配管経路の一例である水道配管経路の一部を構成する継手管の一例で、伸縮構造及び屈曲構造を各々有する一対の継手部2,3を備えた鋳鉄製の伸縮可撓管1を示す。
この伸縮可撓管1は、第1管体4の管軸芯方向の両側部に挿口部4aが形成され、各挿口部4aには、外周面5a全体が部分球面状に形成されている球状リング材5が、管軸芯方向に摺動自在に外嵌されている。各球状リング材5には、第2管体6の管軸芯方向の一側部に形成された受口部6Aが外嵌されている。各受口部6Aの内部には、球状リング材5の部分球状の外周面5aに沿って三次元方向に屈曲自在に外嵌される部分球面状の内周面6aが形成されている。
【0026】
そして、本実施形態においては、伸縮可撓管1の一方の継手部2は、第1管体4の一方の挿口部4aと、当該挿口部4aが挿入される一方の球状リング材5と、当該球状リング材5に外嵌される受口部6Aを備えた一方の第2管体6とをもって構成され、第2管体6の他側部には挿口部6Bが形成されている。
伸縮可撓管1の他方の継手部3は、第1管体4の他方の挿口部4aと、当該挿口部4aが挿入される他方の球状リング材5と、当該球状リング材5に外嵌される受口部6Aを備えた他方の第2管体6とをもって構成され、第2管体6の他端部にはフランジ6Cが形成されている。
【0027】
継手部2,3の各々の伸縮構造は、管軸芯方向に摺動自在に嵌合されている第1管体4の挿口部4aと球状リング材5との伸縮嵌合部から構成されている。
また、両挿口部4aの外周面の先端側には、ロックリング7が嵌着されている。両球状リング材5の内周面における管軸芯方向の外方側半領域には、挿口部4aのロックリング7との当接によって球状リング材5と第1管体4の挿口部4aとの管軸芯方向での伸縮作動範囲を規制する伸縮規制溝8が形成されている。
【0028】
継手部2,3の各々の屈曲構造は、三次元方向に屈曲自在に嵌合されている球状リング材5の部分球面状の外周面5aと、第2管体6の受口部6Aに形成されている部分球面状の内周面6aとの屈曲嵌合部から構成されている。
【0029】
また、各球状リング材5の内周面における管軸芯方向の内方側半領域には、第1管体4の挿口部4aの外周面との間を密封するための第1シール材としての第1ゴム輪10が装着されている。第2管体6の受口部6Aの部分球面状の内周面6aの各々には、球状リング材5の部分面球状の外周面5aとの間を密封する第2シール材としての第2ゴム輪11が装着されている。
【0030】
そして、図2図5に示すように、上述の如く構成された伸縮可撓管1の両継手部2,3に亘って、当該両継手部2,3を伸縮不能状態に拘束可能で、且つ、設計内圧に対応する不平均力以上の軸方向力で拘束力が低下する第1伸縮規制具20と、伸縮可撓管1内に加圧された設計内圧よりも大なる内圧に対応する軸方向力を第1伸縮規制具20との協働で受け止める第2伸縮規制具30とが脱着自在に架設可能に構成されている。
【0031】
第1伸縮規制具20は、図1図2図4に示すように、両第2管体6の受口部6Aの外周面のうち、伸縮可撓管1の管軸芯方向中央側に位置する略直線状の大径外周面6bの管周方向複数個所(本実施形態では、管周方向の4箇所)には、管径方向外方側に突出する板状の取付け部21が一体形成されている。そのうち、管軸芯方向で相対向する各組の取付け部21に形成されているロッド挿通孔(図示省略)に亘って、第1タイロッド22の両端部が挿通されている。この第1タイロッド22の両挿通部位に形成されている雄ねじ部22Aには、各取付け部21を管軸芯方向から挾持する状態でナット23が螺合固定されている。
【0032】
当該実施形態の第1伸縮規制具20では、管周方向に沿って4本の第1タイロッド22が配置され、この4本の第1タイロッド22は、設計内圧に対応する不平均力以下では変形、破断等を生じず、伸縮可撓管1の両継手部2,3を伸縮不能状態に拘束して初期の設定伸縮状態に維持する。
また、設計内圧に対応する不平均力以上の軸方向力が作用したときには、4本の第1タイロッド22は伸び、座屈等の変形や破断を生じ、第1タイロッド22による拘束力が低下し、伸縮可撓管1の両継手部2,3の伸縮作動を許容する。
特に、地盤の変位や地震による強い軸方向力が作用したときには、4本の第1タイロッド22は大きな変形を生じ、強い軸方向力に追従して伸縮可撓管1の両継手部2,3を確実、スムーズに伸縮作動させることができる。
【0033】
第2伸縮規制具30は、図2図5に示すように、両継手部2,3の外面に脱着自在に取付けられる取付け部材の一例で、両継手部2,3の外面の各々に径方向又は管軸芯方向から脱着自在に取付けられる分割構造の環状取付け部材31と、当該環状取付け部材31に亘って架設される移動規制部材の一例で、両環状取付け部材31に亘ってネジ固定される第2タイロッド32から構成されている。
【0034】
環状取付け部材31の各々は、図2図4に示すように、管周方向で二分割された半円弧状の一対の分割取付け体31Aと、両分割取付け体31Aの管周方向両端部から径方向外方に一体的に延設される連結片31Bのうち、同じ端部側に位置する連結片31B同士を締め付け固定する締結具33のボルト33A・ナット33Bから構成されている。
【0035】
また、各分割取付け体31Aの周方向二箇所で、且つ、第1タイロッド22に対して管周方向に偏位する位置齟齬部位には、第2タイロッド32の両端部を貫通状態で支持するロッド挿通孔(図示省略)を備えた板状のロッド挿通支持部34が一体形成されている。 第2タイロッド32の両挿通部位に形成されている雄ねじ部32Aには、各ロッド挿通支持部34に対して管軸芯方向の外方側から当接する状態でナット35が螺合固定されている。
【0036】
本実施形態では、伸縮可撓管1内に加圧される設計内圧よりも大なる内圧が、例えば、伸縮可撓管1を含む管路構成部材で管路の布設工事が完了し、布設工事領域の管路構成部材で構成される管路の漏洩検査等のための流体圧試験を実行する場合の試験内圧に設定されている。そのため、布設工事領域の管路構成部材で構成される管路内に、設計内圧よりも大なる圧力の試験流体を供給したとき、伸縮可撓管1の両継手部2,3は伸長側(引張側)に作動する。そのため、第2タイロッド32に螺合されたナット35は、伸縮可撓管1の伸長側(引張側)の作動のみを阻止すればよい。
尚、第2タイロッド32の両雄ねじ部32Aに、各ロッド挿通支持部34をロッド軸芯方向から挟持する状態で複数個のナット35を螺合してもよい。
【0037】
そして、上述の第2伸縮規制具30の構成により、例えば、伸縮可撓管1を含む管路構成部材の布設工事が完了し、布設工事領域の管路構成部材で構成される管路に対する漏洩検査等のための流体圧試験を実行する場合には、伸縮可撓管1における両継手部2,3に亘って第2伸縮規制具30を架設する。この第2伸縮規制具30は、伸縮可撓管1における両継手部2,3に亘って架設されている第1伸縮規制具20との協働により、加圧された設計内圧よりも大きな試験内圧に対応する軸方向力を確実に受け止めることができる。これにより、流体圧試験時における第1伸縮規制具20の変形、破断等を回避することができ、伸縮可撓管1の両継手部2,3の伸縮作動を確実に拘束して初期の設定伸縮状態に維持することができる。
【0038】
また、布設工事領域の伸縮可撓管1を含む管路に対する流体圧試験が終了したとき、第2伸縮規制具30を伸縮可撓管1の両継手部2,3から撤去することにより、地盤の変位や地震による強い軸方向力が作用したときには、両継手部2,3に亘って架設されている第1伸縮規制具20でのみ受け止める状態となるため、第1伸縮規制具20の拘束力が急速に低下し、地震等による強い軸方向力に追従して伸縮可撓管1の両継手部2,3を確実、スムーズに伸縮作動させることができる。
【0039】
しかも、伸縮可撓管1における両継手部2,3に亘って第2伸縮規制具30を脱着する場合でも、両環状取付け部材31が第2タイロッド32で一体的に連結され、且つ、両環状取付け部材31の各々が分割構造に構成されているため、伸縮可撓管1の両継手部2,3に対して能率良く容易に脱着することができ、第2伸縮規制具30の取り扱いの容易化を図ることができる。
【0040】
各環状取付け部材31の両分割取付け体31Aの内周面31aの各々は、図2図3に示すように、各第2管体6の受口部6Aの外周面のうち、大径外周面6bに連続して管軸芯方向外方側ほど縮径するテーパー状外周面6cと同一又は略同一の勾配に形成されている。そのため、各環状取付け部材31の両分割取付け体31Aが、各第2管体6の受口部6Aのテーパー状外周面6cに締結具33で締め付け固定されたとき、各分割取付け体31Aの内周面が、受口部6Aのテーパー状外周面6cに対して面当たり又は略面当たり状態で当接するテーパー状内周面31aに構成されている。
【0041】
第2伸縮規制具30の両環状取付け部材31は、上述の如く、両第2管体6の受口部6Aにおける外方ほど縮径するテーパー状外周面6cに対して面当たり状態又は略面当たり状態で固定されるため、両継手部2,3が伸長側に離脱移動するほど離脱移動抵抗が増大し、かつ、そのときの両者の衝突力を面当たり部で分散して受け止めることができる。
それ故に、伸縮可撓管1内に加圧された設計内圧よりも大なる試験内圧に対応する軸方向力が作用したとき、この軸方向力による両継手部2,3の伸長側への離脱移動を、両継手部2,3の受口部6Aのテーパー状外周面6cに面当たり状態で接触している第2伸縮規制具30の両環状取付け部材31によって確実、強力に受け止めることができる。
【0042】
〔第2実施形態〕
図6図8は、伸縮可撓管1内に一時的に加圧された設計内圧よりも大なる内圧(試験内圧)に対応する軸方向力を第1伸縮規制具20との協働で受け止める第2伸縮規制具30の別実施形態を示す。この別実施形態の第2伸縮規制具30は、両継手部2,3の外面の各々に脱着自在に取付けられる取付け部材の一例で、両第2管体6の受口部6Aの取付け部21に対して管径方向から脱着自在に係合保持される係合保持部41と、管軸芯方向で相対向する二組の両係合保持部41に亘ってネジ固定される第2タイロッド(移動規制部材の一例)42から構成されている。
【0043】
各係合保持部41には、第2管体6の受口部6Aの取付け部21に対して管径方向から脱着自在に係合溝41aが形成されている。両係合保持部41の管周方向中央部には、第2タイロッド42の両端部を貫通状態で支持するロッド挿通孔(図示省略)が形成されている。また、第2タイロッド42の両挿通部位に形成されている雄ねじ部42Aには、各係合保持部41に対して管軸芯方向の外方側から当接する状態でナット43が螺合固定されている。
尚、第2タイロッド42の両雄ねじ部42Aに、各係合保持部41をロッド軸芯方向から挟持する状態で複数個のナット35を螺合してもよい。
【0044】
尚、本実施形態では、第1伸縮規制具20の第1タイロッド22を取付けるために、両第2管体6の受口部6Aに一体形成されている両取付け部21を利用して、第2伸縮規制具30の両係合保持部41を、両取付け部21に対して管径方向から係脱自在に構成してあるので、第2伸縮規制具30の軽量化、簡素化を図ることができる。
【0045】
〔第3実施形態〕
図9は、第1実施形態で説明した第2伸縮規制具30の変形例を示す。第2伸縮規制具30の一方の環状取付け部材31の内周面31aは、一方の第2管体6の挿口部6Bの外周面と平行に形成されている。これにより、一方の環状取付け部材31は、一方の第2管体6の挿口部6Bの外周面に面当たり状態で固定される。他方の環状取付け部材31は、他方の第2管体6における受口部6Aとフランジ6Cとの間の直管部6Dの外周面と平行に形成されている。これにより、他方の環状取付け部材31は、他方の第2管体6の直管部6Dの外周面に面当たり状態で固定される。
【0046】
第2伸縮規制具30が両第2管体6に亘って固定された状態では、一方の環状取付け部材31における管軸芯方向の内方側端縁(伸縮可撓管1の管軸芯方向中央側の端縁)は、一方の第2管体6の挿口部6Bの外周面と受口部6Aの外周面との境界又はその近傍に位置する。他方の環状取付け部材31における管軸芯方向の内方側端縁(伸縮可撓管1の管軸芯方向中央側の端縁)は、他方の第2管体6の直管部6Dの外周面と受口部6Aの外周面との境界又はその近傍に位置する。
【0047】
そのため、第2伸縮規制具30が両第2管体6に亘って固定された状態では、一方の環状取付け部材31の内方側端縁は、一方の第2管体6の受口部6Aの外周面に接触又は近接する。他方の環状取付け部材31の内方側端縁は、他方の第2管体6の受口部6Aの外周面に接触又は近接する。これにより、両第2管体6の受口部6Aを利用して第2伸縮規制具30の管軸芯方向での位置決めを行うことができる。
【0048】
しかも、伸縮可撓管1内に加圧された設計内圧よりも大なる試験内圧に対応する軸方向力が作用したとき、この軸方向力による両継手部2,3の伸長側への離脱移動を、両継手部2,3の受口部6Aの外周面に係合する内方側端縁を備えた第2伸縮規制具30の両環状取付け部材31によって確実、強力に受け止めることができる。
【0049】
当該実施形態では、他方の第2管体6の直管部6Dの外径D2が、一方の第2管体6の挿口部6Bの外径D1よりも大きいため、他方の環状取付け部材31は、上述の外径差の分だけ一方の環状取付け部材31よりも大きく構成されている。
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0050】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の各実施形態では、継手管として、伸縮構造及び屈曲構造の各々を有する一対の継手部2,3を備えた伸縮可撓管1を例に挙げて説明したが、伸縮構造のみを有する継手部2,3から構成された継手管であってもよい。
【0051】
(2)上述の各実施形態では、第1伸縮規制具20と第2伸縮規制具30との協働により、伸縮可撓管1内に加圧された設計内圧よりも大なる内圧(試験内圧等)に対応する軸方向力を受け止めるように構成したが、第2伸縮規制具30の単独により、伸縮可撓管1内に加圧された設計内圧よりも大なる内圧(試験内圧等)に対応する軸方向力を受け止めるように構成してもよい。
第2伸縮規制具30の単独で大なる内圧(試験内圧等)に対応する軸方向力を受け止める場合には、例えば、伸縮可撓管1の両継手部2,3に亘って架設されている第1伸縮規制具20のナット23を緩み操作するなどして、第1伸縮規制具20が機能しない状態に変更する。
【0052】
(3)伸縮可撓管1の両継手部2,3に亘って架設されている第2伸縮規制具30を脱着可能に構成する他の方法としては、例えば、両第2管体6の受口部6Aに一体形成されている取付け部21に切欠き部を形成し、両受口部6Aの取付け部21の切欠き部に対して第2伸縮規制具30の第2タイロッド32を脱着自在に構成してもよい。
【0053】
(4)第2伸縮規制具30の取付け部材としては、上述の第1実施形態の環状取付け部材31や第2実施形態の係合保持部41の各形態に限定されるものではない。両継手部2,3の外面側に対して脱着できる構造の取付け部材であればよい。
また、第2伸縮規制具30の移動規制部材として、上述の各実施形態では第2タイロッド32,42を用いたが、この構成に限定されるものではなく、種々の形態の移動規制部材を用いることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 継手管(伸縮可撓管)
2 継手部
3 継手部
6A 受口部
6c テーパー状外周面
20 第1伸縮規制具
30 第2伸縮規制具
31 取付け部材(環状取付け部材)
32 移動規制部材(第2タイロッド)
42 移動規制部材(第2タイロッド)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9