特許第6874969号(P6874969)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874969
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】エアチャック
(51)【国際特許分類】
   B60S 5/04 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   B60S5/04
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-42572(P2017-42572)
(22)【出願日】2017年3月7日
(65)【公開番号】特開2018-144683(P2018-144683A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】311004865
【氏名又は名称】旭産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129539
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 康志
(72)【発明者】
【氏名】新保 和章
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−169220(JP,A)
【文献】 実開昭52−041517(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0299043(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 3/00−13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気管と、
前記通気管の一端に接続部材を連結するか或いは前記通気管にU字状の部分を設けることによって、前記通気管の他端側に向けて折り返した通気路と、
イヤバルブとの接続口が前記通気管の他端側から視認可能なように前記折り返した通気路に連結され、前記接続口が前記タイヤバルブに接続された際に前記通気管内部とタイヤ内とを通気可能に連通させるヘッドと、
前記ヘッドに対して第1の位置へ向けて弾性的に押圧されており、該弾性力に抗して押圧されることで第2の位置まで移動可能であり、前記第1の位置において前記ヘッドの前記タイヤバルブとの係合を許容し、前記第2の位置において前記ヘッドの前記タイヤバルブとの係合を解除する解除用部材と、
ユーザ操作により、少なくとも一部が前記通気管の長手方向に沿ってスライド可能であり、前記通気管の一端側に向けてスライド動作させることによってその先端側の部分で前記解除用部材を前記第1の位置から前記第2の位置まで押圧移動可能なスライド部材と、を備えるエアチャック。
【請求項2】
前記通気路の折り返し部分は、前記ヘッドの前記接続口を前記エアチャックの接続対象として規定されている所定のホイール群の内の最小径のホイールのタイヤバルブに接続した状態において、前記通気管の長手方向と交差する方向の最大幅となる部分が前記最小径のホイールの飾り孔を突き抜けて該ホイールの反対側に位置するように前記ヘッドと連結していることを特徴とする請求項1に記載のエアチャック。
【請求項3】
前記スライド部材は、前記通気管が挿通される筒状部材であることを特徴とする請求項1に記載のエアチャック。
【請求項4】
前記スライド部材は、弾性材料から構成される請求項3に記載のエアチャック。
【請求項5】
前記通気管は、その長手方向における所定位置において、前記ヘッド側から前記通気管の他端側に向かうにつれて前記ヘッドの中心軸から遠ざかる方向に屈曲していることを特徴とする請求項1に記載のエアチャック。
【請求項6】
前記ヘッドの接続口側の端部は、前記所定位置付近に位置することを特徴とする請求項5に記載のエアチャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤのバルブに接続されるエアチャックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラックやバス等の大型車両では、いわゆるダブルタイヤ(Double tire)と呼ばれる、二つのタイヤを連結して一つのタイヤのように使用する装着形態が知られる。このような装着形態は、ツインタイヤ(Twin tire)やデュアルタイヤ(Dual tire)とも呼ばれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図10は、一般的なダブルタイヤの車軸(不図示)を含む断面のタイヤ上部付近のみを示す図である。ここでは、車両中央に近い側に位置する内側タイヤTiと車両中央から離れた位置にある外側タイヤToとを組み合わせてダブルタイヤを構成している例を示している。
【0004】
このような構成のダブルタイヤを構成するそれぞれのタイヤTiおよびToは、空気の充填やタイヤ圧力の測定のためのバルブViおよびVoを有している。これらバルブへのエアチャックの接続は、外側タイヤToのホイールWoに形成されている飾り孔Kにエアチャックを挿通することによって実現される。
【0005】
同図に示すように、一般的なダブルタイヤでは、車両中央に近い側に位置する内側タイヤTiのバルブViの先端(すなわち接続口)は、車両の外側を向いており、車両中央から離れた側に位置する外側タイヤToのバルブVoの先端(すなわち接続口)は、車両の中央側を向いている。
【0006】
したがって、このようなダブルタイヤを車両に装着した状態のままで空気の充填作業やタイヤ圧力の測定を行いたい場合、内側タイヤTiのバルブViに対しては、作業者は車両の外側から車両の中央へ向かう方向C1(いわゆる押し方向)にエアチャックの接続口を挿し込めば、エアチャックの接続口をバルブViに接続することができる。
【0007】
一方、外側タイヤToのバルブVoに対しては、図10に示すように、作業者はエアチャックの接続口を上記飾り孔Kに挿し込んだ上で(押し方向C1)、さらに車両の内側から車両の外側へ向かう方向C2(いわゆる引き方向)にエアチャックの接続口を移動させることで、当該接続口をバルブVoに接続しなければならない。
【0008】
特に、ホイール径や飾り孔の径が小さいホイールの場合、そのようなダブルタイヤの外側タイヤのバルブへのエアチャックの接続は困難を極める場合がある。
【0009】
さらに、エアチャックは気密性や安全性の観点から、バルブに接続された際には、エアチャックの接続口がバルブから離間しないように、バルブに対して係合する機構を備えており、通常そのような係合機構は作業者がエアチャックの接続口付近に設けられる接続解除用の可動部品を操作することによって接続解除可能となっている。
【0010】
しかしながら、上述のようなダブルタイヤの外側タイヤのバルブにエアチャックを接続する場合、エアチャックの接続口はホイールの飾り孔内に挿入された状態にあり、たとえエアチャックをバルブに接続できたとしても、上述のような接続解除用の可動部品の操作が非常に困難あるいは不可能な場合もある。
【0011】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、いわゆる引き動作によって接続する必要があり且つ作業者の手が届きにくい位置にあるバルブにエアチャックを接続する場合においても、バルブとの接続を解除する際の操作性を損なうことのないエアチャックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、通気管と、前記通気管の一端に、タイヤバルブとの接続口が前記通気管の他端側から視認可能なように連結され、前記接続口が前記タイヤバルブに接続された際に前記通気管内部とタイヤ内とを通気可能に連通させるヘッドと、前記ヘッドに対して第1の位置へ向けて弾性的に押圧されており、該弾性力に抗して押圧されることで第2の位置まで移動可能であり、前記第1の位置において前記ヘッドの前記タイヤバルブとの係合を許容し、前記第2の位置において前記ヘッドの前記タイヤバルブとの係合を解除する解除用部材と、ユーザ操作により、少なくとも一部が前記通気管の長手方向に沿ってスライド可能であり、前記スライド動作に伴って前記解除用部材を前記第1の位置から前記第2の位置まで押圧移動させるスライド部材と、を備えるエアチャックに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、いわゆる引き動作によって接続する必要があり且つ作業者の手が届きにくい位置にあるバルブにエアチャックを接続する場合においても、バルブとの接続を解除する際の操作性を損なうことのないエアチャックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るエアチャックの全体構成を示す外観図である。
図2】本発明の第1の実施の形態によるエアチャックの基本構成を示す断面図である。
図3】本発明の第1の実施の形態によるエアチャックにおけるスライド部材の動作を示す図である。
図4】本発明の第1の実施の形態によるエアチャックをホイールの飾り孔に挿入した状態を示す概略断面図である。
図5】本発明の第1の実施の形態によるエアチャックをダブルタイヤにおける外側タイヤのバルブに接続した状態を示す概略断面図である。
図6】本発明の第1の実施の形態によるエアチャックをダブルタイヤにおける外側タイヤのバルブに接続した状態で、外側タイヤへの充気作業もしくは空気圧測定を行なう様子を示す概念図である。
図7】本発明の第1の実施の形態によるエアチャックにおいて、スライド部材を用いてバルブとの接続を解除する様子を示す概略断面図である。
図8】本発明の第1の実施の形態によるエアチャックにおいて、バルブとの接続解除後にバルブから退避している様子を示す概略断面図である。
図9】本発明の第2の実施の形態によるエアチャックの変形例を示す断面図である。
図10】一般的なダブルタイヤにおけるバルブ位置について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0016】
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態によるエアチャックについて説明する。
【0017】
<全体構成>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るエアチャックの全体構成を示す外観図である。図2は、本発明の第1の実施の形態によるエアチャックの基本構成を示す断面図である。
【0018】
本実施の形態によるエアチャック1は、例えば、通気管110と、ヘッド120と、解除用部材130と、接続部材140と、グリップ部150と、スライド部材160と、を備えている。
【0019】
通気管110は、例えば鉄等の金属材料により形成されるパイプ状部材である。通気管110の一端側にはヘッド120が接続部材140を介して連結され、他端側にはグリップ部150が設けられている。
【0020】
具体的に、ヘッド120はタイヤバルブとの接続口H2を有しており、当該接続口H2が通気管110の他端側から視認可能なように、通気管110の一端に連結されている。また、ヘッド120はその内部に通気路を有し、接続口H2がタイヤバルブに接続された際に通気管110内部とタイヤ内とを通気可能に連通させる。
【0021】
なお、ヘッド120の接続口H2が「他端側から視認可能」とは、接続口H2の中心軸(図2に示す軸120x)が厳密に通気管110に平行な方向を向いている必要はなく、通気管110の他端側から接続口H2の少なくとも一部が視認できる状態にあれば、「他端側から視認可能」の概念に含まれる。
【0022】
なお、ここでは一例としてヘッド120が接続部材140によって通気管110に保持されている構成を例示しているが、これに限られるものではなく、例えばU字状に屈曲させた通気管110の一端にヘッド120を直接連結する構成とすることもできる。
【0023】
また、本実施の形態では、一例としてヘッド120の接続口H2の向きが固定されている構成を例示したが、これに限られるものではなく、例えば、通気管110の一端に対してヘッド120を回転可能に保持し、対象であるホイールのバルブの位置等に応じてヘッド120における接続口H2の向きを任意に変更可能な構成とすることもできる。
【0024】
また、本実施の形態では、ヘッド120に接続口が1つのみ設けられた構成を例示しているが、これに限られるものではなく、例えば、ヘッド120における両サイドに接続口をそれぞれ設ける構成とすることもできる。
【0025】
解除用部材130は、例えば樹脂製や金属製の筒状部材である。解除用部材130は、その内側にヘッド120の先端付近が位置する状態で、ヘッド120に対して第1の位置P1へ向けて矢印N2の方向に例えばつるまきバネS等によって弾性的に押圧されており、該弾性力に抗して矢印N1の方向に押圧されることで第2の位置P2まで移動可能になっている。解除用部材130は、第1の位置P1においてヘッド120のタイヤバルブとの係合を許容し、第2の位置P2においてヘッド120のタイヤバルブとの係合を解除する。
【0026】
ここでのヘッド120の具体的な内部構成(内部機構)の一例としては、公知の一般的機構を採用可能であり、例えば、旭産業株式会社(登録商標)製の4−SCMチャック(登録商標)に採用されている構成等が挙げられる。もちろん、ヘッド120の構成はこれらの例に限られるものではなく、スライド部材160のスライド動作に連動して、解除用部材130が第1の位置P1と第2の位置P2との間で移動する他の構造を適宜採用可能である。
【0027】
本実施の形態におけるヘッド120は、解除用部材130が第1の位置P1にありタイヤバルブとの係合が許容される状態において、例えばタイヤバルブに対して接続口H2を
押し込むことによってタイヤバルブが接続口H2内で係合する。このようにしてタイヤバルブに対して押し込まれて係合するタイヤバルブと接続口H2との間の係合状態は、上述の解除用部材130を第2の位置P2に移動させることにより解除される。
【0028】
グリップ部150は、例えばゴム製の筒状部材であり、通気管110の他端の外周を包囲するように設けられている。グリップ部150は、作業者がエアチャック1を保持する際に握るための持ち手部分であり、同時に通気管110の外周を覆うことによってホイールとの干渉を避ける役割も担っている。
【0029】
また、本実施形態ではグリップ部150が通気管110の他端に設けられている構成を例示しているが、必ずしも厳密な端部に設けられていなくともよい。また、グリップ部150は、エアチャックに必須の構成部品ではなく、結果的に通気管110を保持することができれば、通気管110の外周面に滑り止め処理を施してもよいし、エアチャックの保持に問題が無いようであれば、グリップ部150を設けることなく特別な滑り止め処理は施されていない通気管の外周面を単に露出させた構成であってもよい。
【0030】
スライド部材160は、通気管110が挿通される筒状部材であり、ユーザ操作により、通気管110の長手方向に沿ってスライド可能となっている。スライド部材160は、当該スライド動作に伴って解除用部材130の端部を押圧し、解除用部材130を第1の位置P1から第2の位置P2まで押圧移動させる。
【0031】
このように、スライド部材160として筒状部材を採用することにより、例えば樹脂等の比較的安価な柔らかい材質を採用しても、スライド方向の押圧力を解除用部材130に確実に伝達し、第2の位置P2まで押圧移動させることができる。なお、スライド部材160として、筒状の金属部材を採用することもできることは言うまでもない。
【0032】
なお、スライド部材160として樹脂等の柔らかい筒状部材を採用することにより、スライド部材160が部分的に通気管のカバーの役割も果たし、エアチャックの通気管部分をホイールの飾り孔に挿し込む際に通気管がホイールを傷つける事態を防ぐことができる。
【0033】
ここで、スライド部材160は筒状の部材に限られるものではなく、結果として少なくとも一部が通気管の長手方向に沿ってスライド可能であり、そのスライドによって解除用部材130を第2の位置P2まで押圧可能な、様々な形状を採用することができる。
【0034】
なお、スライド部材160を弾性材料によって構成することにより、例えば、ホイールの飾り孔との関係で屈曲した通気管を採用したいような場合でも、通気管の形状に沿ってスライド部材160を変形させながらスライドさせることができる。
【0035】
具体的に、スライド部材160の材質としては、エラストマー、ウレタン、ナイロン等の樹脂系材料やゴム系材料を採用することができる。もちろん、ここで挙げた具体的材質に限らず、通気管110の外周面に対して良好な滑り特性を有していればよい。また、通気110が屈曲する構成を採用している場合には、通気管の外形に沿って柔軟に変形可能な材料であることが望ましい。
【0036】
また、本実施の形態では、通気管110は、その長手方向における中央位置よりも一端寄り(ヘッド120寄り)の所定位置Bにおいて、ヘッド120側から通気管110の他端側に向かうにつれてヘッド120の中心軸120xから遠ざかる方向に屈曲している(図2参照)。
【0037】
ここで、「ヘッドの中心軸」とは、ヘッド120の接続口H2の中心を通る軸120xであり、ヘッド120をバルブに接続する際のヘッドの移動方向(図10にて示した矢印C2の方向)と平行な軸となっている。
【0038】
このような構成とすることにより、ヘッド120がタイヤバルブに接続された状態において、通気管の他端側はホイールの壁面から遠ざかる位置関係となり、エアチャックのホイールへの接触を回避しやすい構成となっている。
【0039】
また、これにより、弾性部材からなるスライド部材160をスライドさせて第2の位置P2まで押圧する際に、スライド部材160はヘッド120から遠ざかる側に変形しながら解除用部材130端面を押圧する。つまり、スライド部材160に採用する弾性部材の変形等の要因により、スライド部材160の端部が解除用部材130だけでなくヘッド120の接続口H2側の端部にまで当接してしまい、結果として解除用部材130をスライドさせることができないといった事態が生じない。
【0040】
図3は、本発明の第1の実施の形態によるエアチャックにおけるスライド部材の動作を示す図である。
【0041】
作業者の操作によってスライド部材160が矢印M1の方向にスライドされると、スライド部材160の矢印M1の移動方向における先端の一部が、解除用部材130の接続口H2付近の端部の一部に当接する。この状態からさらにスライド部材160が矢印M1の方向にスライドされると、図3に示すように、スライド部材160の端部によって解除用部材130が矢印N1の方向に押圧され、第1の位置P1から第2の位置P2まで距離Dだけ移動する。このようにして解除用部材130が第2の位置P2まで移動された結果、ヘッド120のバルブに対する係合状態は解除され、バルブはヘッド120の接続口H2から離脱可能となる。
【0042】
図4は、本発明の第1の実施の形態によるエアチャックをホイールの飾り孔に挿入した状態を示す概略断面図である。同図に示すように、本実施の形態によるエアチャック1をダブルタイヤにおける外側タイヤToのバルブVoに接続する場合、まずエアチャック1をヘッド120側からホイールWoの飾り孔Kに矢印C1の方向に挿入する。
【0043】
続いて、エアチャック1をタイヤバルブVoへ向けて矢印C2方向に移動させることにより、ヘッド120の接続口H2にタイヤバルブVoが挿入され、ヘッド120の公知の内部機構により、ヘッド120の接続口H2とタイヤバルブVoとが係合状態となる。
【0044】
図5は、本発明の第1の実施の形態によるエアチャックをダブルタイヤにおける外側タイヤToのバルブVoに接続した状態を示す概略断面図である。図6は、本発明の第1の実施の形態によるエアチャックをダブルタイヤにおける外側タイヤToのバルブVoに接続した状態で、通気管110の他端側の開口H1に接続されたホースUを介して外側タイヤToの充気作業もしくは空気圧測定を行なう様子を示す概念図である。
【0045】
図5および図6に示すように、ヘッド120における接続口H2のエアチャック1の長手方向における位置は、ヘッド120の接続口H2をエアチャックの接続対象として規定されている所定のホイール群の内の最小径のホイールのタイヤバルブに接続した状態において、最小径のホイールの飾り孔K内の空間内に、エアチャック1のヘッド120側の端部Eの少なくとも一部が位置しないように設定されている。
【0046】
ここで、「エアチャックの接続対象として規定されている所定のホイール群の内の最小径のホイール」とは、一例として、ISO規格に従う19.5インチのホイール等が挙げられる。
【0047】
例えば、「所定のホイール群の内の最小径のホイール」の更に具体的な一例としては、本特許出願の出願日の時点におけるALCOA WHEELS社(登録商標)製のISO対応の19.5インチのアルミホイ−ル等を挙げることができる。
【0048】
上記のような、エアチャックの接続対象として規定されている所定のホイール群の内の最小径のホイールのバルブに本発明によるエアチャックのヘッド120が接続された際には、エアチャックのヘッド側の端部Eの少なくとも一部は、これらホイールの飾り孔内の空間内には位置しない設計(すなわち、エアチャック全体におけるヘッド側の端部からヘッド120の接続口H2までの距離が長い構成)となっている。
【0049】
したがって、設計上の事情からエアチャックにおけるヘッド120側の端部E付近のサイズが大きくなってしまう場合でも、その部位の少なくとも一部は、エアチャックのタイヤバルブへの接続時には飾り孔内には存在しないため、エアチャックにおけるヘッド側の端部E付近と飾り孔との干渉の問題が生じない。これは、飾り孔とヘッド120の干渉によるホイールの傷つきを防止することができるだけでなく、エアチャックのヘッド120側の端部E付近の寸法的制約を緩和することにつながり、設計上の自由度を高めることができる。
【0050】
また、「接続対象として規定されている所定のホイール群」とは、カタログ上あるいは仕様上で明確に表現されているか否かに拘わらず、そのエアチャックの使用が明示的に或いは暗示的に想定されるホイール群を意味する。
【0051】
また、「飾り孔内の空間」とは、対象となるホイールにおける、飾り孔の形成のために取り除かれている部分の空間を意味する。換言すれば、飾り孔が形成されていない状態のホイールと飾り孔が形成されている状態のホイールとの差分として得られる空間を意味する。
【0052】
つまり、ヘッド120における接続口H2のエアチャック1の長手方向における位置は、ヘッド120の接続口H2をエアチャック1の接続対象として規定されている所定のホイール群の内の最小径のホイールのタイヤバルブに接続した状態において、エアチャック1のヘッド120側の端部Eの少なくとも一部が、最小径のホイールの飾り孔を突き抜けてホイールの反対側(車両中央側)に位置する構成となっている。
【0053】
図7は、本発明の第1の実施の形態によるエアチャックにおいて、スライド部材を用いてバルブとの接続を解除する様子を示す概略断面図である。
【0054】
図5および図6にて示した係合状態を解除し、エアチャック1のヘッド120の接続口H2をタイヤバルブVoから離間させるため、作業者はスライド部材160を矢印M1の方向にスライドさせる。これに伴い、ヘッド120に設けられた解除用部材130が矢印N1の方向に第2の位置P2まで移動する。解除用部材130が第2の位置P2まで移動された状態のとき、解除用部材130の作用によりヘッド120におけるタイヤバルブVoへの係合状態は解除されているため、エアチャック1を図8に示す矢印C3の方向に移動させることで、ヘッド120の接続口H2をタイヤバルブVoから離間させることができる。
【0055】
このように、ヘッド120におけるタイヤバルブVoへの係合状態を解除する際には、スライド部材160を矢印M1の方向に押し込みつつ、そのままエアチャック1全体も矢印M1と同方向を向く矢印C3の方向に押し込めばよい。つまり、作業者は例えばスライド部材160を矢印M1の方向に押し込み続けることで、ヘッド120におけるタイヤバルブVoへの係合状態の解除とヘッド120のバルブVoからの離間の両方を実現することができる。
【0056】
なお、スライド部材160が筒状の弾性部材によって構成されている場合、スライド部材160が屈曲位置Bにおいて変形することで、スライド部材160と通気管110との間で強い摩擦力が働き、操作者がスライド部材160から手を離しても、スライド部材160によって解除用部材130を第2の位置P2に押圧したままの状態(係合解除された状態)で保持可能なような構成とすることもできる。
【0057】
このように、ヘッド120の接続口H2をタイヤバルブVoから離間させ、飾り孔Kから抜き出す際、本実施の形態によるエアチャック1のヘッド120の接続口H2側の端部120e(図2)が、通気管110の屈曲位置B付近に位置している(ヘッド120におけるタイヤバルブVoへの接続位置付近で通気管110が曲がっている)ため、ヘッド120におけるタイヤバルブVoへの接続位置付近を中心としたエアチャック1の姿勢変更を行った場合の、ホイール壁面、通気管110の飾り孔Kの内壁および縁部との干渉を最小限に抑えることができる。
【0058】
また、本実施の形態では通気管110は、一箇所で屈曲している構成を例示したが、これに限られるものではなく、複数箇所で曲がっているパイプであってもよい。また、通気管の曲がり方については、緩やかに弧を描くように曲がっている構成や鋭角に折り曲げられている構成を採用することができる。
【0059】
また、本実施の形態に係るエアチャックによれば、例えば鏡面仕上げ等が施されたような美観を重視したホイール表面を傷つけることなく、また自由曲面で構成されたデザイン性の高いホイ−ル壁面との干渉を避けながら、確実にタイヤバルブとの接続および接続解除を行なうことができる。
【0060】
(第2の実施の形態)
続いて、本発明の第2の実施の形態にかかるエアチャックについて説明する。
【0061】
本発明の第2の実施の形態にかかるエアチャックは、上述の第1の実施の形態にかかるエアチャックの変形例であり、通気管の形状が第1の実施の形態にかかるエアチャックとは異なっている。以下、本実施の形態において、上述した第1の実施の形態において説明した構成部分と実質的に同様な機能を有する部分については同一符号を付し、説明は省略する。
【0062】
図9は、本発明の第2の実施の形態によるエアチャック1’の変形例を示す断面図である。
【0063】
同図に示すように、第2の実施の形態によるエアチャック1’における通気管110’は、直線状の筒状部材となっている。本実施の形態における筒状部材110’のように途中に屈曲点のない構造することにより、スライド部材160がスライド動作に伴って通気管110の外形に沿って変形する必要がない。したがって、本実施の形態における状部材110’は、弾性材料に限らず例えば金属材料のような剛性の高い材料によって形成することもできる。
【0064】
上述のように、本発明の実施の形態によれば、以下のようなエアチャックを提供することができる。
(1) 通気管と、
前記通気管の一端に、タイヤバルブとの接続口が前記通気管の他端側から視認可能なように連結され、前記接続口が前記タイヤバルブに接続された際に前記通気管内部とタイヤ内とを通気可能に連通させるヘッドと、
前記ヘッドに対して第1の位置へ向けて弾性的に押圧されており、該弾性力に抗して押圧されることで第2の位置まで移動可能であり、前記第1の位置において前記ヘッドの前記タイヤバルブとの係合を許容し、前記第2の位置において前記ヘッドの前記タイヤバルブとの係合 を解除する解除用部材と、
ユーザ操作により、少なくとも一部が前記通気管の長手方向に沿ってスライド可能であり、前記スライド動作に伴って前記解除用部材 を前記第1の位置から前記第2の位置まで押圧移動させるスライド部材と、を備えるエアチャック。
(2) 前記ヘッドにおける前記接続口の前記エアチャックの長手方向における位置は、前記ヘッドの前記接続口を前記エアチャックの接続対象として規定されている所定のホイール群の内の最小径のホイールのタイヤバルブに接続した状態において、前記最小径のホイールの飾り孔内の空間内に、前記エアチャックの前記ヘッド側の端部の少なくとも一部が位置しないように設定されていることを特徴とする(1)に記載のエアチャック。
(3) 前記スライド部材は、前記通気管が挿通される筒状部材であることを特徴とする(1)に記載のエアチャック。
(4) 前記スライド部材は、弾性材料から構成される(3)に記載のエアチャック。
(5) 前記通気管は、その長手方向における中央 位置 よりも前記一端寄りの所定位置において、前記ヘッド側から前記通気管の他端側に向かうにつれて前記ヘッドの中心軸から遠ざかる方向に屈曲していることを特徴とする(1)に記載のエアチャック。
(6) 前記ヘッドの接続口側の端部は、前記所定位置 付近に位置することを特徴とする(5)に記載のエアチャック。
【0065】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0066】
1,1’ エアチャック、110,110’ 通気管、120 ヘッド、130 解除用部材、140 接続部材、150 グリップ部、160 スライド部材。
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