(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
レーザー光を照射してはんだ付けポイントを予熱する第1工程と、供給されたはんだをレーザー光により溶融させてはんだ付けポイントに拡散させる第2工程と、はんだ付けポイントに拡散したはんだをレーザー光で後加熱する第3工程とを有するレーザー式はんだ付け方法において、
第1工程の始めから第3工程の終わりまでのはんだ付け工程全域が、前半の波形制御域と後半の温度制御域とに区分され、
波形制御域では、はんだ付けポイントを目標温度まで加熱するために必要なレーザー光の出力及び照射時間が制御波形として予め設定され、この制御波形に沿ってレーザー光の出力が制御され、
温度制御域では、はんだ付けポイントの温度が時間毎の目標温度として予め設定され、この目標温度と、放射温度計で測定されたはんだ拡散後のはんだ付けポイントの測定温度とが比較され、これら目標温度と測定温度との偏差が零になるようにレーザー光の出力が制御され、
放射温度計による温度測定対象の放射率は、はんだの主成分である錫の放射率に設定されている、
ことを特徴とするレーザー式はんだ付け方法。
レーザー光を出力するレーザー発振器と、該レーザー発振器からのレーザー光をはんだ付けポイントに向けて照射する照射ヘッドと、前記はんだ付けポイントの温度を測定する放射温度計と、前記はんだ付けポイントにはんだを供給するはんだ供給装置と、はんだ付け装置全体を制御プログラムに従って制御する制御装置とを有し、
前記放射温度計の放射率は、はんだの主成分である錫の放射率に設定され、
前記制御装置は、はんだ付けポイントを目標温度に加熱するために必要なレーザー光の出力及び照射時間を制御するための制御波形と、該はんだ付けポイントの時間毎の目標温度とが入力されていて、はんだ付けポイントにはんだが拡散するまで前記制御波形に沿ってレーザー光の出力を制御する波形制御を行ったあと、前記放射温度計で測定されたはんだ拡散後のはんだ付けポイントの測定温度と前記目標温度との偏差が零になるようにレーザー光の出力を制御する温度制御を行うように構成されている、
ことを特徴とするレーザー式はんだ付け装置。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザー光を用いてプリント基板と電子部品とのはんだ付けすべき部分(はんだ付けポイント)をはんだ付けする技術は知られている。例えば、特許文献1には、レーザー光を出力するためのレーザー発振器と、レーザー発振器から出力されたレーザー光をはんだ付けポイントに照射する照射ヘッドと、はんだ付けポイントに線状はんだを供給するはんだ供給装置と、レーザー発振器の出力を制御するコントローラとを有するレーザー式はんだ付け装置が開示されている。このレーザー式はんだ付け装置は、前記コントローラからの制御信号に応じた強度のレーザー光をレーザー発振器から出力させてはんだ付けポイントを加熱すると共に、該はんだ付けポイントに供給される線状はんだを前記レーザー光により溶融させて、はんだ付けを行うものである。
【0003】
このとき、前記レーザー式はんだ付け装置には、赤外線により温度を測定する非接触式の温度センサ(放射温度計)を設け、この放射温度計により、前記はんだ付けポイントから放射される赤外線を受光して、受光した赤外線量から前記はんだ付けポイントの温度をリアルタイムで測定し、その測定温度に基づいて、はんだ付けポイントの温度が常に最適な温度(目標温度)になるように前記レーザー光の出力が増減制御される。
【0004】
ところで、前記放射温度計によりはんだ付けポイントの温度を測定する場合には、該はんだ付けポイントにおける赤外線の放射率を予めコントローラに設定し、その放射率に基づいて温度が測定される。ところが、物体の放射率は材質ごとに固有の値があり、また、物体の表面状態によっても放射率は異なるため、前記はんだ付けポイントが複数の金属を含む場合、どの金属の放射率を設定すべきかの選択が非常に難しく、選択を誤ると、正確な温度測定ができないため、前記レーザー光の出力を正確に制御することはできない。
【0005】
例えば、前記はんだ付けポイントが、プリント基板に形成された端子と、電子部品のリードである場合、両者は異なる金属素材(例えば、銅、銀、金、錫など)で形成されていて、互いの放射率が異なるため、何れか一方の金属素材の放射率を設定する必要があるが、一方の放射率を設定しても、複数のはんだ付けポイントの中に、前記端子とリードとの位置が少しでもずれているものがあると、そのはんだ付けポイントで、放射温度計による測定対象が、端子からリードに変化したり、又はリードから端子に変化し、それによって測定誤差を生じ易い。また、はんだ付けポイントに線状はんだが供給され、この線状はんだがレーザー光により溶融されてはんだ付けポイントに拡散すると、拡散したはんだで前記端子又はリードが覆われるため、その時点で放射温度計の測定対象がはんだに変わり、錫を主成分とするはんだの放射率は前記端子及びリードの放射率と異なることから、測定温度にばらつきが発生する。
【0006】
このように、従来は、放射温度計によってはんだ付けポイントの温度をリアルタイムで測定し、その測定温度が目標温度になるようにレーザー光の出力を制御していたが、様々な原因によって測定温度にばらつきが発生するため、レーザー光の出力を目標温度に合わせて高精度に制御するのが難しく、はんだ付けポイントが適正な温度に加熱されないことによってはんだ不良を起こすケースが多かった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前述のような事情に鑑みてなされたもので、はんだ付けポイントが目標温度に加熱されるようにレーザー光の出力を精度良く制御し、それによって品質の高いはんだ付けを行うことができるようにすることを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、レーザー光を照射してはんだ付けポイントを予熱する第1工程と、供給されたはんだをレーザー光により溶融させてはんだ付けポイントに拡散させる第2工程と、はんだ付けポイントに拡散したはんだをレーザー光で後加熱する第3工程とを有するレーザー式はんだ付け方法において、第1工程の始めから第3工程の終わりまでのはんだ付け工程全域が、前半の波形制御域と後半の温度制御域とに区分され、波形制御域では、はんだ付けポイントを目標温度まで加熱するために必要なレーザー光の出力及び照射時間が制御波形として予め設定され、この制御波形に沿ってレーザー光の出力が制御され、温度制御域では、はんだ付けポイントの温度が
時間毎の目標温度として予め設定され、この目標温度と、放射温度計で測定された
はんだ拡散後のはんだ付けポイントの測定温度とが比較され、これら目標温度と測定温度との偏差が零になるようにレーザー光の出力が制御され
、放射温度計による温度測定対象の放射率は、はんだの主成分である錫の放射率に設定されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明においては、制御波形による波形制御から、測定温度に基づく温度制御への切換えは、
はんだ付けポイントへのはんだ供給後に行われることでもよい。
【0011】
さらに、前記課題を解決するため、本発明によれば、レーザー光を出力するレーザー発振器と、該レーザー発振器からのレーザー光をはんだ付けポイントに向けて照射する照射ヘッドと、前記はんだ付けポイントの温度を測定する放射温度計と、前記はんだ付けポイントにはんだを供給するはんだ供給装置と、はんだ付け装置全体を制御プログラムに従って制御する制御装置とを有し、
前記放射温度計の放射率は、はんだの主成分である錫の放射率に設定され、前記制御装置は、はんだ付けポイントを目標温度に加熱するために必要なレーザー光の出力及び照射時間
を制御するための制御波形と、該はんだ付けポイントの時間毎の目標温度とが入力されていて、はんだ付けポイントにはんだが拡散するまで前記制御波形に沿ってレーザー光の出力を制御する波形制御を行ったあと、前記放射温度計で測定されたはんだ拡散後のはんだ付けポイントの測定温度と前記目標温度との偏差が零になるようにレーザー光の出力を制御する温度制御を行うように構成されていることを特徴とするレーザー式はんだ付け装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、レーザー光の出力及び照射時間を、予め設定した制御波形に基づく波形制御を行い、波形制御を行ったあと、予め設定した目標温度とはんだ付けポイントの測定温度とを比較して、該目標温度と測定温度との偏差を零にするように温度制御するように構成されている。よって、従来のように、はんだ付け工程全域にかけて、常に放射温度計による測定温度に基づいてレーザー光を出力制御するものと比較して、レーザー光の出力を精度良く制御し、それによって品質の高いはんだ付けを行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係るレーザー式はんだ付け方法及びレーザー式はんだ付け装置について、図面を用いて詳細に説明する。
【0015】
図1は、はんだ付け装置1の第1実施形態を示すもので、このはんだ付け装置1は、レーザー光Bを出力するレーザー発振器2と、レーザー発振器2から出力されたレーザー光Bを、プリント基板20上のはんだ付けポイントPに集光状態で照射する照射ヘッド3と、前記レーザー発振器2を制御するためのレーザーコントローラー4と、前記はんだ付けポイントPに線状はんだ15を供給するためのはんだ供給装置5と、前記はんだ付けポイントPから放射される赤外線(放射赤外線)を受光して該ポイントPの温度を非接触で測定する放射温度計6と、このはんだ装置1全体を設定されたプログラムに従って自動的に制御する制御装置7とを有している。
【0016】
前記はんだ付けポイントPは、
図2(a),(b)に示すように、プリント基板20に形成された環状の端子21と、電子部品23から延出するリード22であり、該リード22は、前記端子21の内部に下から上向きに挿入されている。
【0017】
前記照射ヘッド3は、略円筒形状の外形を有し、その側面には、前記レーザー発振器2に通じる第1の光ファイバー8が接続され、レーザー発振器2から出力されたレーザー光Bが該光ファイバー8を通って照射ヘッド3の内部へと導かれるように構成されている。そして、前記照射ヘッド3の内部には、導入されたレーザー光Bの向きを変える半透鏡や、レーザー光Bをはんだ付けポイントPにて所定径に集光させる光学レンズ等の、光学部品(図示略)が内蔵されている。また、前記照射ヘッド3におけるはんだ付けポイントPと対向する先端部には、照射口3aが設けられていて、前記光学部品を通過したレーザー光Bが、当該照射口3aからはんだ付けポイントPに向けて照射されるように成っている。
【0018】
さらに、前記照射ヘッド3の側面における、前記第1の光ファイバー8が接続された部分と異なる位置には、前記放射温度計6に通じる第2の光ファイバー12が接続されており、はんだ付けポイントPから放射された放射赤外線が、この第2の光ファイバー12を通じて放射温度計6で受光されるように構成されている。すなわち、前記はんだ付けポイントからの放射赤外線は、前記照射ヘッド3の照射部3aを通じて該照射ヘッド3の内部に至り、レーザー光Bが通過する前記光学部品を透過して該照射ヘッド3の基端側へと進んだあと、レンズや半透鏡等からなる光学ユニット13を通じて前記第2の光ファイバー12内に導かれ、該光ファイバー12を介して前記放射温度計6に伝送される。
【0019】
そして、前記放射温度計6では、受光した放射赤外線のエネルギー量に基づいてはんだ付けポイントPの温度H1が求められ、求められた測定温度H1に比例する測定温度信号(温度データ)がレーザーコントローラ4を経由して前記制御装置7に送られる。なお、放射温度計6で得られた温度データはレーザーコントローラ4を経由せずに、そのまま制御装置7に送られてもよい。
【0020】
また、前記照射ヘッド3の基端部には、CCDカメラ10がレーザー光Bと光軸Lを一致させて取り付けられており、このCCDカメラ10で前記照射口3aを通じてはんだ付けポイントPを撮像できるようになっている。CCDカメラ10で撮像した前記はんだ付けポイントPの画像は、前記制御装置7を介してモニター11に表示され、はんだ付け前には、モニター11に表示された画像を見ながら、はんだ付けポイントPに対するレーザー光Bの照準調整を行うのに使用したり、また、はんだ付け作業時には、前記はんだ付けポイントPの状態を観察することができる。
【0021】
前記はんだ供給装置5は、例えば、プーリーに巻いた線状のはんだ15を所要量ずつはんだ付けポイントPに向けて送るためのものである。はんだ供給装置5は、はんだ付けポイントPの近くに配置されたはんだガイド16を有し、はんだ付け作業時に、前記制御装置7から、はんだ15の供給タイミングや供給量等の制御指令を受け、その制御指令に応じてはんだガイド16からはんだ15がはんだ付けポイントPに供給される。そして、レーザーコントローラー4から発振制御の指令を受けたレーザー発振器2が、所定の出力及び照射時間でレーザー光Bを出力し、そこにはんだ15を供給することで、レーザー光Bにより該はんだ15が加熱溶融されてはんだ付けが行われるように構成されている。
【0022】
次に、前記構成を有するはんだ付け装置1を使用して、はんだ付けポイントPをはんだ付けする方法について説明する。
【0023】
本発明で実施されるはんだ付け工程は、
図3(a)に示すように、レーザー光Bをはんだ付けポイントPに照射して該はんだ付けポイントPを予備加熱する第1工程S1と、
図3(b)に示すように、はんだ供給装置5からはんだ付けポイントPに線状はんだ15を供給し、この線状のはんだ15をレーザー光Bにより加熱、溶融させて該はんだ付けポイントPに拡散(濡れ)させる第2工程S2と、
図3(c)に示すように、はんだ付けポイントPに拡散したはんだ15をレーザー光Bで後加熱し、はんだ付けに必要な金属加工物が生成されるように仕上げる第3工程S3との、3つの工程に分かれている。また、
図6に示すように、これら第1工程S1の始めから第3工程S3の終わりまでのはんだ付け工程の全域が、前半の波形制御域と後半の温度制御域とに区分されている。
【0024】
前記第1−第3行程のはんだ付けを行うに先立ち、前工程として、前記制御装置7に対し、前記レーザー光Bの出力(W)及び照射時間(秒)を制御するための制御波形C(
図4参照)の設定と、前記放射温度計6により温度を測定する測定対象の設定、及び、前記測定対象の材質に応じた放射率の設定等が行われる。本実施形態においては、前記放射温度計6による温度の測定対象がはんだ15に設定されているため、前記放射率は、はんだ15の主成分である錫の放射率に設定されている。また、前記制御装置7には、はんだ付けポイントPの目標温度(測定目標温度)H2(
図5参照)が設定されると共に、前記放射温度計6による測定温度H1がこの測定目標温度H2に近づくようにレーザー光の出力を制御する温度制御のための制御プログラムが設定されている。そして、はんだ付け工程の前半の波形制御域で、この前工程で設定された制御波形Cに沿ってレーザー光Bの出力及び照射時間が制御され、後半の温度制御域では、前記放射温度計6で設定された測定温度H1と、予め定められた上記測定目標温度H2とが比較され、これら測定目標温度H2と測定温度H1との偏差(即ち温度差)が零になるように、レーザー光Bの出力が制御される。
【0025】
このように、はんだ付け工程の前半で温度制御を行わずに波形制御を行うようにしているのは、前記放射温度計6による温度測定対象の放射率がはんだの主成分である錫に設定されているため、工程前半のまだはんだが供給されていない時にはんだ付けポイントの温度を測定しても、測定した温度が正確であるとは限らないからである。
【0026】
前記制御波形Cは、第1−第3工程毎に、はんだ付けポイントPの加熱目標温度と、はんだ付けポイントPをこの加熱目標温度にまで加熱するために必要なレーザー光Bの出力及び照射時間を求めることにより決められる。
【0027】
前記加熱目標温度は、はんだ付けポイントPを形成する端子21やリード22の材質、形状、大きさ、表面状態等により、前もって行った数値
シミュレーションや過去の経験則等に基づいて、好ましい加熱目標温度が予め求められている。例えば、本実施形態のようにはんだ付けポイントPが通常の端子21及びリード22からなる場合、はんだ15が供給される前の第1工程S1における好ましい加熱目標温度は150−250℃であり、また、供給されたはんだ15を溶融させて拡散させる第2工程S2においては、はんだ15を含むはんだ付けポイントPを200−300℃に保つ必要があるため、好ましい加熱目標温度は200−300℃であり、さらに、はんだ付けポイントPを後加熱する第3工程S3においては、はんだ付けに必要な金属化合物が生成されるようにはんだ付けポイントPを250−300℃に保つ必要があるため、好ましい加熱目標温度は250−300℃である。
【0028】
そして、第1−第3の各工程について、はんだ付けポイントPを前記加熱目標温度に加熱するために必要なレーザー光Bの出力及び照射時間を実験や演算等によって求めることにより、
図4に示すように、第1−第3の全工程にわたって、レーザー光Bの出力及び照射時間を制御するための制御波形Cが決められ、この制御波形Cが制御装置7に入力される。
【0029】
また、
図5に示すように、後半の温度制御域ではんだ付けポイントPの測定温度H1と比較される測定目標温度H2は、第2工程S2及び第3工程
S3について設定されており、第2工程S2の始めから終わりまでは300℃に設定され、第3工程S3の始めから終わりまでは250℃に設定され、第3工程S3の終了時点で0℃に落とされるように設定されている。図示の例では、第1工程S1における目標温度H2を省略しているが、これは、第1工程S1中には温度制御によるレーザー光Bの出力制御が行われない為である。
【0030】
そして、前述したように、制御装置7に対する波形制御及び温度制御のための制御プログラム等の設定が終了し、また、ティーチングによってはんだ付けポイントPに対するレーザー光Bの照射位置や、複数のはんだ付けポイントPをはんだ付けする順番等が決められたあと、スタートボタンを押すことにより、複数のはんだ付けポイントPの各々に対して、レーザー発振器からレーザー光Bが照射され、はんだ付けが行われる。また、はんだ付けの開始と同時に、前記放射温度計6によるはんだ付けポイントPの温度測定も開始される。
【0031】
図6には、前半の波形制御及び後半の温度制御で出力されるレーザー光Bの制御例が示されていて、レーザー光Bの出力及び照射時間と、放射温度計6による測定温度H1と、目標温度H2との関係が示されている。図示のように、制御波形Cによる波形制御から測定温度H1による温度制御への切換えは第2工程S2で行われる。詳しくは、第1工程S1の始めから第2工程S2の途中までが波形制御域として区分され、第2工程S2の途中から第3工程S3の終わりまでが温度制御域として区分されている。
【0032】
図6の制御例において、第1工程S1(
図3(a))で、破線で示す制御波形Cに沿って出力20Wのレーザー光Bが照射されると、端子21及びリード22からなるはんだ付けポイントPの測定温度H1は次第に上昇し、該第1工程S1の終了直前に、目標温度の150−200℃を上回る約220℃まで上昇する。
【0033】
第2工程S2(
図3(b))に移行した直後はまだ波形制御域にあるので、前記制御波形Cに基づいてレーザー光Bの出力が35Wに上昇し、この出力でレーザー光Bが照射される。また、この第2工程S2の開始とほぼ同時に、一定量の線状はんだ15がはんだ付けポイントPに供給され、供給されたはんだ15は、レーザー光Bにより溶融されてはんだ付けポイントP全体に拡散する。このとき、該はんだ15の溶融にレーザー光Bの熱エネルギーが消費されるため、はんだ付けポイントPの測定温度H1は一時的に少し低下するが、そのあと直ぐに持ち直して上昇を続ける。
【0034】
第2工程S2に移行してから所定時間経過後、レーザー光Bの出力制御が、上記制御波形Cから温度制御へと切換えられる。この温度制御への切換えは、前記はんだ15が溶融してはんだ付けポイントP全域に拡散するタイミングで行うことが好ましい。その理由としては、前記放射温度計6による温度測定の基準となる放射率は、はんだ15の主成分である錫の放射率に設定されているためであり、該はんだ15の拡散後に温度制御に切換えることで、はんだ付けポイントPの測定温度H1の精度を高めることができる。
【0035】
レーザー光Bの出力制御が温度制御に切り換えられると、前記制御装置7が、放射温度計6で測定された測定温度H1と該制御装置5に入力した測定目標温度H2とを比較し、該測定目標温度H2と測定温度H1との偏差が零になるようにレーザー光Bの出力が制御される。前述したように、第2工程S2の測定目標温度H2は300℃に設定されているため、測定温度H1が300℃になるようにレーザー光Bの出力が制御される。その結果、レーザー光Bの出力は約35W付近にキープされ(
図6の実測波形参照)、測定温度H1が上昇して300℃に達したあと、増減を繰り返しつつも第2工程S2の終わりまで当該300℃付近に維持される。なお、測定目標温度H2と測定温度H1との比較自体は、第2工程S2途中までの波形制御域で行われていても差し支えない。
【0036】
続いて、第3工程S3(
図3(c))に移行すると、該第3工程S3の直前に約300℃であった測定温度H1を該第3工程S3の目標温度H2である250℃に低下させるべく、レーザー光Bの出力が緩やかに落とされ、それに追随して測定温度H1が下降する。そして、測定温度H1が250℃になったあたりで、レーザー光Bの出力レベルが約30W付近にキープされて、該測定温度H1は250℃付近に維持される。このようにして、前記はんだ付けポイントPに対し、レーザー光Bが0.3秒間照射されて後加熱が行われ、その間に、はんだ付けに必要な金属加工物が生成される。
【0037】
そして、前記第3工程S3の終了の段階で測定目標温度H2は0℃に設定されているため、それに合わせてレーザー光Bの出力は零になる。その結果、はんだ付けポイントPは自然冷却されて測定温度H1は急激に低下し、最終的に一定の温度に落ち着く。
実際のはんだ付け工程では、前記第3工程S3が終了すると、前記のようにレーザー光Bの照射が停止されると共に、放射温度計6による温度測定や、測定目標温度H2と測定温度H1との比較も停止され、照射ヘッド3は次のはんだ付けポイントPに移動し、同様の動作が行われることによってこのはんだ付けポイントPのはんだ付けが行われ、全てのはんだ付けポイントPについて同様の動作が繰り返される。
【0038】
以上に詳述したように、本発明によれば、はんだ付けポイントを測定目標温度H2まで加熱するために必要なレーザー光Bの出力及び照射時間が制御波形Cとして予め設定されると共に、はんだ付けポイントPの測定目標温度H2が予め設定されており、はんだ付け工程の前半の波形制御域では、制御波形Cに沿ってレーザー光Bの出力が制御され、後半の温度制御域では、この測定目標温度H2と、放射温度計6で測定されたはんだ付けポイントPの測定温度H1とが比較されて、これら測定目標温度H2と測定温度H1との偏差が零になるようにレーザー光Bの出力が制御するように構成されている。それにより、前半の波形制御域では、放射温度計6による測定温度H1に左右されずにレーザー光の出力制御が行われ、後半の温度制御域では、はんだ付けポイントP全域にはんだ15が拡散された後、該はんだ15を温度測定の測定対象としていることから測定温度H1のばらつきの影響を受けることがないため、レーザー光の出力を精度良く制御し、それによって品質の高いはんだ付けを行うことができる。
【0039】
本発明のはんだ付け装置は、前記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない範囲で様々な設計変更が可能である。
例えば、
図1に示す例では、はんだ付けポイントPから放射される放射赤外線を、照射ヘッド3の内部から、第2の光ファイバー12を介して放射温度計6まで伝送しているが、
図7に示す第2実施形態のように、はんだ付けポイントPから放射される赤外線を、放射温度計6の受光部6aによりダイレクトに受光して、該はんだ付けポイントPの温度を測定することも可能である。
この第2実施形態の前記以外の構成は、前記第1実施形態と実質的に同じであるから、両者の主要な同一構成部分に第1実施形態の場合と同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0040】
また、前記実施形態で示されたレーザー光Bの制御波形Cや測定目標温度H2は、一つの例にすぎず、例えば、はんだ付けポイントPを形成する端子21やリード22の素材や形状、はんだ材料等の各種条件に併せて適宜変更することも可能である。
図3に一例として示した前記制御波形Cは、第1−第3の各工程中においてレーザー光Bを一定強度で出力するように平坦な直線形状を成しているが、例えば、レーザー光Bの出力が経時変化する傾斜直線状又は曲線状の波形であってもよく、これらの直線及び曲線を組み合わせた波形であってもよい。
また、波形制御から温度制御への切換えタイミングを、第2工程S2中のはんだ付けポイントP全体にはんだ15が拡散したあとに行っているが、その前後であってもよく、例えば、第3工程S3に移行したときに行うこともでき、適宜のタイミングで行うことが可能である。
また、
図3に示す制御波形Cは、第1工程S1−第3工程S3の全域に渡っているが、はんだ付け工程中の少なくとも前半の波形制御で使用されるものであることから、これを、温度制御域に移行したあとの波形がカットされたものであってもよい。