【実施例】
【0027】
(実施例1〜3)
<球状多孔質ヒドロキシアパタイトの合成>
sHAp合成のための擬似体液を調製した。擬似体液はPBS
−(NaCl:2.74mol/L,KCl:0.0537mol/L,KH
2PO
4:0.0294mol/L,Na
2HPO
4:0.162mol/L)、PBS
+(CaCl
2・2H
2O:0.068mol/L)を蒸留水で希釈してから混合して合成した。希釈割合は、最終的な擬似体液の組成がPBS
−:PBS
+:蒸留水=20.000:1.690:978.310となるようにすることで、Ca/P=0.300の条件を満たすように調整した。この擬似体液中には、Na
+が61.2mmol/L、Cl
−が58.1mmol/L、K
+が1.66mmol/L、HPO
42−が3.83mmol/L、Ca
2+が1.15mmol/L含有されている。
【0028】
この擬似体液をウォーターバス(SRS266PA;ADVANTEC社製)にて40℃に保持しながら1時間攪拌した。そして、1日静置した後にデカンテーションを行い、導電率が150μs/cm以下になるまで遠心分離機(5420;KUBOTA製)を用いて脱塩処理をした。導電率の測定には、電気導電率計(MPC227;メトラー製)を使用した。
【0029】
<チタニア担持球状多孔質ヒドロキシアパタイト複合体の合成>
スラリー状のsHAp0.150gと、TiO
2ゾル(TKS−203;テイカ株式会社製)を1.00Lの水中で1時間攪拌した。なお、イオン性界面活性剤は使用していない。TiO
2の混合量は、sHAp0.150gに対して0.0500g(実施例1)、0.100g(実施例2)、0.150g(実施例3)となるよう、各ゾルのTiO
2含有量から計算したうえで調節した。1日静置した後にデカンテーションを行い,水が濁らなくなるまで遠心分離機(5420;KUBOTA製)を用いて洗浄し、試験用の試料とした。
【0030】
(実施例4〜6)
<球状多孔質ヒドロキシアパタイトの合成>
実施例1〜3とは異なる擬似体液を用いて、sHAp合成を行った。具体的には、実施例4はPBS
−:PBS
+:蒸留水=50.000:1.548:948.452の割合で、実施例5はPBS
−:PBS
+:蒸留水=29.000:1.632:969.368の割合で、実施例6はPBS
−:PBS
+:蒸留水=10.000:1.970:988.030の割合で混合し、擬似体液の組成がそれぞれ表1に示すものとなるよう調整した。この擬似体液を用いて、実施例1〜3と同様に攪拌、デカンテーション、脱塩処理を行って、sHApを合成した。
【0031】
<チタニア担持球状多孔質ヒドロキシアパタイト複合体の合成>
上述のように合成したスラリー状のsHApと、TiO
2ゾルを表1で示す量1.00Lの水中で1時間攪拌した。なお、イオン性界面活性剤は使用していない。攪拌後は、実施例1〜3と同様に静置、デカンテーション洗浄を行い、試験用の試料とした。
【0032】
(比較例1)
sHApとTiO
2とを複合化する際に、イオン性界面活性剤としてスルホこはく酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム(関東化学株式会社)を5g混合した以外は、実施例3と同様にして複合体を調整した。その結果、形状は崩れており、球状多孔質ヒドロキシアパタイトは得られなかった。
【0033】
(比較例2)
TiO
2と複合化させず、各実施例用と同様に作製したsHAp単体を、比較例2として使用した。
【0034】
【表1】
※球状ヒドロキシアパタイトを得ることができず、メチレンブルー分解試験を行うことができなかった。
【0035】
<走査型電子顕微鏡(SEM)による表面観察>
各試料の表面を走査型電子顕微鏡(S−2600;日立製作所製)で観察した。測定条件は、加速電圧15.0kVである。
図1にTiO
2単体、
図2に比較例1、
図3に比較例2、
図4〜6に実施例1〜3、
図7〜9に実施例4〜6の表面SEM画像をそれぞれ示す。これにより、sHApは0.100〜0.400μmの細孔を有し、粒径1.00〜5.00μmの球状で多孔質となっていることが確認された。
【0036】
<比表面積測定・表面電位測定>
各試料の比表面積を、比表面積測定装置(モノソーブMS−21;ユアサアイオニクス株式会社製)でBET法により窒素ガスとヘリウムガスを流して測定した。また、各試料の表面電位を、表面電位測定装置(ゼータナノサイダーナノシリーズNano−Z;シスメックス株式会社製)により測定した。その際、設定温度は20℃とし、光源にHe−Neレーザー(633nm)を使用した。その結果を表1に示す。表1の結果から、複合化材料の比表面積がsHAp単体よりも大きくなっていることがわかった。また、複合化材料の表面電位がsHAp単体よりも負に大きく帯電していることがわかった。
【0037】
【表2】
【0038】
<電界放出形走査型電子顕微鏡(L-FE-SEM)による最表面観察>
L−FE−SEMの最表面観察では、試料を固定するためにグラファイト片を含むカーボンペーストを使用した。
図10,11に、実施例3の表面L−FE−SEMが像を示す。
図7,8より、sHApの表面に30.0〜50.0nmの微細なTiO
2粒子が担持していることが確認された。
【0039】
<メチレンブルー分解能試験>
実施例1〜6及び比較例2の試料0.0500gを10.0ppmのメチレンブルー(Mb)水溶液50.0mlに添加し、撹拌しながら30分間は暗所、90分間はブラックライト(三共電気株式会社製;27W;紫外線強度3.60×103μW/cm2)を当て、10分ごとに5.00ml注射器で2.50ml程度サンプリングし、プラスチック製セル(45.0×10.0×10.0mm)に入れた。この時、サンプリングしたMb水溶液中に混合している試料は、メンブレンフィルター(孔径0.200μm)で取り除き、メチレンブルーの吸収波長である660nmの光の吸光度をレシオビーム分光光度計(U−5100;HITACHI製)で測定した。
【0040】
実施例1〜6及び比較例2の試験結果を、
図12及び
図13に示す。
図12及び
図13の結果から、sHAp単体(比較例2)では、殆どMbは分解されていないが、光触媒複合体となっている実施例1〜6では、Mbが有意に分解されていた。