特許第6874996号(P6874996)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874996
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】人工RNA制限酵素
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/63 20060101AFI20210510BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20210510BHJP
   C12N 9/22 20060101ALI20210510BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20210510BHJP
   C12N 7/06 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20210510BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20210510BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20210510BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   C12N15/63 Z
   C12N15/62 Z
   C12N9/22ZNA
   C07K19/00
   C12N7/06
   A61K47/54
   A61K38/46
   A61P31/14
   A61P31/16
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-556462(P2017-556462)
(86)(22)【出願日】2016年12月16日
(86)【国際出願番号】JP2016087538
(87)【国際公開番号】WO2017104796
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2019年11月5日
(31)【優先権主張番号】特願2015-245405(P2015-245405)
(32)【優先日】2015年12月16日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター、「革新的技術創造促進事業(異分野融合共同研究)」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの
(73)【特許権者】
【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】世良 貴史
【審査官】 平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/163037(WO,A1)
【文献】 特表2008−540342(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/180754(WO,A1)
【文献】 特表2009−528816(JP,A)
【文献】 Nature Communications,2012年,3:1147,p.1-8
【文献】 WANG, C. C. et al., Inhibitor Binding Increases the Mechanical Stability of Staphylococcal Nuclease,
【文献】 ARCUS, V. L. et al., The PIN-domain ribonucleases and the prokaryotic VapBC toxin-antitoxin array, P
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C12N 1/00− 7/08
C07K 1/00−19/00
A61K 38/00−38/58
A61K 47/00−47/48
C12N 9/00− 9/99
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフルエンザウイルスRNAと結合するRNA結合タンパク質と、インフルエンザウイルスRNAの所定の部位を切断する酵素とを、ペプチドリンカーを介して連結して成る人工RNA制限酵素を含む、インフルエンザウイルス切断剤であって、インフルエンザウイルスのcRNAを標的とするインフルエンザウイルス切断剤
【請求項2】
前記酵素がSNaseの場合には、ペプチドリンカーの長さを5アミノ酸とする請求項1に記載のインフルエンザウイルス切断剤
【請求項3】
前記酵素がPINの場合には、ペプチドリンカーの長さを5アミノ酸または10アミノ酸とする請求項1に記載のインフルエンザウイルス切断剤
【請求項4】
インフルエンザウイルスRNAと結合するRNA結合タンパク質が、ヒトPumilio及びFBFホモロジー(hPUF)タンパク質又はその改変体である、請求項1から3の何れか一項に記載のインフルエンザウイルス切断剤
【請求項5】
ペプチドリンカーが、GlyGlyGlyGlySerからなるペプチド、又はGlyGlyGlyGlySer GlyGlyGlyGlySerからなるペプチドである、請求項1から4の何れか一項に記載のインフルエンザウイルス切断剤
【請求項6】
プロモーター、インフルエンザウイルスRNAと結合するRNA結合タンパク質をコードするDNA、ペプチドリンカーをコードするDNA、及びインフルエンザウイルスRNAの所定の部位を切断する酵素をコードするDNAとをこの順に有する組み換え発現ベクターを含む、インフルエンザウイルス切断剤であって、インフルエンザウイルスのcRNAを標的とするインフルエンザウイルス切断剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工RNA制限酵素に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、DNAを切断する核酸切断剤として、標的切断部位の上流に位置する塩基配列に対して特異的に結合するジンクフィンガータンパク質と、このジンクフィンガータンパク質に結合した核酸切断部とで構成した核酸切断剤を提案した(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−528816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
核酸切断剤の考え方をRNAに展開すれば、インフルエンザウイルス等のRNAウイルスに効果的な薬剤となり得ると考えた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の人工RNA制限酵素は、RNAと結合するRNA結合タンパク質と、RNAの所定の部位を切断する酵素とを、ペプチドリンカーを介して連結して成る人工RNA制限酵素である。
【0006】
さらに、本発明の人工RNA制限酵素では、ペプチドリンカーを介して連結する酵素がSNaseの場合には、ペプチドリンカーの長さを5アミノ酸とし、ペプチドリンカーを介して連結する酵素がPINの場合には、ペプチドリンカーの長さを5アミノ酸または10アミノ酸とすることにも特徴を有するものである。
【0007】
本発明においては、好ましくは、RNAと結合するRNA結合タンパク質は、ヒトPumilio及びFBFホモロジー(hPUF)タンパク質又はその改変体である。
本発明において、好ましくは、ペプチドリンカーは、GlyGlyGlyGlySerからなるペプチド、又はGlyGlyGlyGlySer GlyGlyGlyGlySerからなるペプチドである。
【0008】
本発明によればさらに、プロモーター、RNAと結合するRNA結合タンパク質をコードするDNA、ペプチドリンカーをコードするDNA、及びRNAの所定の部位を切断する酵素をコードするDNAとをこの順に有する組み換え発現ベクターが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インフルエンザウイルス等のRNAウイルスを効果的に切断して無害化可能とする人工RNA制限酵素を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、人工RNA制限酵素による基質RNAの切断によって生じる反応生成物の電気泳動である。
図2図2は、ペプチドリンカーの長さの最適化実験の電気泳動である。
図3図3は、ペプチドリンカーの長さの最適化実験の電気泳動である。
図4図4は、細胞内での人工RNA制限酵素の機能評価(非複製系)の概要を示す。
図5図5は、pCMV(-H)-hPUF-L10-SNase-FLAGのクローニングを示す。
図6図6は、pCMV(-H)-hPUF-L10-hPIN-FLAGのクローニングを示す。
図7図7は、pCMV(-H)-SNase-FLAGのクローニングを示す。
図8図8は、pCMV(-H)-hPIN-FLAGのクローニングを示す。
図9図9は、pCMV(-H)-hPUF-L10-SNase-FLAG(-NLS)のクローニングを示す。
図10図10は、pCMV(-H)-hPUF-L10-hPIN-FLAG(-NLS)のクローニングを示す。
図11図11は、pCMV(-H)-SNase-FLAG(-NLS)のクローニングを示す。
図12図12は、pCMV(-H)-hPIN-FLAG(-NLS)のクローニングを示す。
図13図13は、pCAGGS-hPUF-L10-SNase-FLAG(-NLS)のクローニングを示す。
図14図14は、pCAGGS-hPUF-L10-hPIN-FLAG(-NLS)のクローニングを示す。
図15図15は、pCAGGS-SNase-FLAG(-NLS)のクローニングを示す。
図16図16は、pCAGGS-hPIN-FLAG(-NLS)のクローニングを示す。
図17図17は、pcDNA-NRE-Lucのクローニングを示す。
図18図18は、pcDNA-NRE3X-Lucのクローニングを示す。
図19図19は、pcDNA-NRE6X-Lucのクローニングを示す。
図20図20は、pcDNA-MT-Lucのクローニングを示す。
図21図21は、pcDNA-MT3X-Lucのクローニングを示す。
図22図22は、pcDNA-MT6X-Lucのクローニングを示す。
図23図23は、細胞内での人工RNA制限酵素の機能評価(非複製系)の結果を示す。
図24図24は、細胞内での人工RNA制限酵素の機能評価(複製系)の概要を示す。
図25図25は、pCMV(-H)-hPUF-L5-SNase-FLAGのクローニングを示す。
図26図26は、pCMV(-H)-hPUF-L5-hPIN-FLAGのクローニングを示す。
図27図27は、pCAGGS-hPUF-L5-SNase-FLAGのクローニングを示す。
図28図28は、pCAGGS-hPUF-L5-hPIN-FLAGのクローニングを示す。
図29図29は、pUC-vRNA(MCS_Luc)(NCR_NS)のクローニングを示す。
図30図30は、pUC-vRNA(Luc_MCS)(NCR_NS)のクローニングを示す。
図31図31は、pUC-vRNA(TGTATATA_Luc)(NCR_NS)のクローニングを示す。
図32図32は、pUC-vRNA[(TGTATATA)3_Luc] (NCR_NS)のクローニングを示す。
図33図33は、pUC-vRNA(Luc_TGTATATA)(NCR_NS)のクローニングを示す。
図34図34は、pUC-vRNA[Luc_(TGTATATA)3](NCR_NS) のクローニングを示す。
図35図35は、vRNAを標的とした際に使用したRNA発現ベクターを示す(図36に対応)。
図36図36は、細胞内での人工RNA制限酵素の機能評価(複製系)の結果を示す。
図37図37は、cRNAを標的とした際に使用したRNA発現ベクターを示す(図38に対応)。
図38図38は、細胞内での人工RNA制限酵素の機能評価(複製系)の結果を示す。
図39図39は、細胞内での人工RNA制限酵素の機能評価(複製系)の概要を示す。
図40図40は、pUC-vRNA(Luc_Kuma_NP)(NCR_NS)のクローニングを示す。
図41図41は、pUC-vRNA(Luc_Aki_PA)(NCR_NS)のクローニングを示す。
図42図42は、Kuma_NPを標的とした際に使用したRNA発現ベクターを示す(図43に対応)。
図43図43は、細胞内での人工RNA制限酵素の機能評価(複製系)の結果を示す。
図44図44は、Aki_PAを標的とした際に使用したRNA発現ベクターを示す(図45に対応)
図45図45は、細胞内での人工RNA制限酵素の機能評価(複製系)の結果を示す。
図46図46は、細胞内での人工RNA制限酵素の機能評価(複製系)の概要を示す。
図47図47は、Kuma_NPを標的とした際に使用したRNA発現ベクターを示す(図49に対応)。
図48図48は、pUC-vRNA(Kuma_NP)(NCR_NS)のクローニングを示す。
図49図49は、細胞内での人工RNA制限酵素の機能評価(複製系)の結果を示す。
図50図50は、細胞毒性評価の際に使用したRNA発現ベクターを示す(図51に対応)。
図51図51は、細胞毒性評価(複製系)の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の人工RNA制限酵素は、RNAと結合するRNA結合タンパク質と、RNAの所定の部位を切断する酵素とを、ペプチドリンカーを介して連結して成る人工RNA制限酵素である。以下において、本発明の実施形態を具体的に説明する。
【0012】
本発明における「RNAと結合するRNA結合タンパク質」は、RNAと結合することができるタンパク質であればよく、その種類は特に限定されない。
【0013】
RNAと結合するRNA結合タンパク質としては、ヒトPumilio及びFBFホモロジー(hPUF)タンパク質又はその改変体を使用することが好ましいが、その他のRNA結合タンパク質を使用してもよい。その他のRNA結合タンパク質としては、例えば、スプライソソーム複合体に含まれるU1snRNP、U2snRNP、U6snRNP、あるいはポリA結合タンパク質、RNA修飾酵素、RISC複合体等が挙げられる。
【0014】
hPUFタンパク質は、後記する8つのリピートモチーフR1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8と、N末端のR1’ドメインと、C末端のをR8’ドメインとで構成されている。即ち、天然(野生型) hPUFタンパク質は、R1’-R1-R2-R3-R4-R5-R6-R7-R8 -R8’という構成を有している。hPUFタンパク質の改変体としては、上記したR1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8というモチーフの一部を欠失、置換、又は付加させた改変体を挙げることができる。一例としては、R7をR5に置き換えた改変体等を挙げることができ、この場合には、R1’-R1-R2- R3-R4-R5-R6-R5-R8 -R8’という構成を有することになる。RNAへの結合能を有する限り、上記したようなhPUFタンパク質の改変体を使用することも可能である。
【0015】
RNAの所定の部位を切断する酵素としては、RNA切断酵素等の核酸切断酵素を使用することができる。例えば、RNA切断酵素の全体又は該酵素の全長の一部である核酸切断ドメインを用いることができる。天然型の核酸切断酵素、例えばスタフィロコッカルヌクレアーゼ(SNase)などのほか、遺伝子工学的手法や他の手法により改変された核酸切断酵素を用いてもよい。核酸切断酵素中の核酸切断ドメインは常法により当業者が容易に特定することができ、遺伝子工学的な手法により容易に入手することが可能である。核酸切断酵素としては、例えば、DNA及びRNAに対して切断活性を有するSNase又はその核酸切断ドメイン、あるいはSNaseの1又は2以上、好ましくは数個の構成アミノ酸残基を置換、挿入、欠失した変異体SNaseなどを用いることができる。
【0016】
本発明で用いるペプチドリンカーの種類は、本発明の効果が損なわれない限り特に限定されない。例えば、通常、1から100アミノ酸、好ましくは3から50アミノ酸、より好ましくは5から30アミノ酸、さらに好ましくは5から15アミノ酸からなるペプチドリンカーを使用することができる。
【0017】
ペプチドリンカーとしては、
Gly-Ser、Gly-Gly-Ser、Ser-Gly-Gly、Gly-Gly-Gly-Ser、Ser-Gly-Gly-Gly、Gly-Gly-Gly-Gly-Ser、Ser-Gly-Gly-Gly-Gly、Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser、
Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly、Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser、Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly、 (Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)n、(Ser-Gly-Gly-Gly-Gly)n等を使用することができるが(式中、nは2〜20の整数であり、好ましくは2〜10整数であり、より好ましくは2〜5の整数であり、特に好ましくは2又は3である)、特に限定されない。
【0018】
本発明において、好ましくは、ペプチドリンカーは、GlyGlyGlyGlySerからなるペプチド、又はGlyGlyGlyGlySer GlyGlyGlyGlySerからなるペプチドである。
【0019】
本発明の組み換え発現ベクターは、上記した本発明の人工RNA制限酵素を発現するためのベクターである。本発明の組み換え発現ベクターは、プロモーター、RNAと結合するRNA結合タンパク質をコードするDNA、ペプチドリンカーをコードするDNA、及びRNAの所定の部位を切断する酵素をコードするDNAとをこの順に有する。本発明で用いるプロモーターの種類は特に限定されないが、T7プロモーター、T3プロモーター、SP6プロモーターなどを使用することができる。
【0020】
ベクターとしては、例えば、非ウイルスベクター又はウイルスベクターの何れでもよい。ウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター(オンコレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、シュードタイプベクター等)、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、シミアンウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター又はセンダイウイルスベクター、エプスタイン−バーウイルスベクター、HSVベクターなどのウイルスベクターが使用できるまた、pCMV系の各種ベクターを使用することができる。
【0021】
以下に本発明の具体例をさらに説明する。
【0022】
<人工RNA制限酵素の作製>
まず、本発明の人工RNA制限酵素を大腸菌を用いて作製可能とするために、RNA結合タンパク質の発現ベクターに、ペプチドリンカーをコードする配列を付加したプライマーで増幅した核酸切断酵素を導入して、大腸菌での発現ベクターを構築した。
【0023】
ここで、RNA結合ドメインとしては、実験上、よく利用している、human Pumilio and FBF homology (hPUF)タンパク質誘導体を用いた。hPUFタンパク質は、アミノ酸配列と長さが異なる8つのリピートモチーフR1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8と、N末端のR1’ドメインと、C末端のをR8’ドメインとで構成しており、各ドメインのアミノ酸配列は、以下のようになっている。
R1':GRSRLLEDFRNNRYPNLQLREIAG (配列番号9)
R1 :HIMEFSQDQHGSRFIQLKLERATPAERQLVFNEILQ(配列番号1)
R2 :AAYQLMVDVFGNYVIQKFFEFGSLEQKLALAERIRG(配列番号2)
R3 :HVLSLALQMYGCRVIQKALEFIPSDQQNEMVRELDG(配列番号3)
R4 :HVLKCVKDQNGNHVVQKCIECVQPQSLQFIIDAFKG(配列番号4)
R5 :QVFALSTHPYGCRVIQRILEHCLPDQTLPILEELHQ(配列番号5)
R6 :HTEQLVQDQYGNYVIQHVLEHGRPEDKSKIVAEIRG(配列番号6)
R7 :NVLVLSQHKFASNVVEKCVTHASRTERAVLIDEVCTMNDGPHS(配列番号7)
R8 :ALYTMMKDQYANYVVQKMIDVAEPGQRKIVMHKIRP(配列番号8)
R8':HIATLRKYTYGKHILAKLEKYYMKNGVDLG (配列番号10)
【0024】
また、変異型であるhPUF_MTは、8つのリピートモチーフR1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8が以下の配列を有している。
R1 :HIMEFSQDQHGSRFIQLKLERATPAERQLVFNEILQ(配列番号1)
R2 :AAYQLMVDVFGCYVIQKFFEFGSLEQKLALAERIRG(配列番号11)
R3 :HVLSLALQMYGCRVIQKALEFIPSDQQNEMVRELDG(配列番号3)
R4 :HVLKCVKDQNGNHVVQKCIECVQPQSLQFIIDAFKG(配列番号4)
R5 :QVFALSTHPYGCRVIQRILEHCLPDQTLPILEELHQ(配列番号5)
R6 :HTEQLVQDQYGNYVIQHVLEHGRPEDKSKIVAEIRG(配列番号6)
R7 :NVLVLSQHKFASNVVEKCVTHASRTERAVLIDEVCTMNDGPHS(配列番号7)
R8 :ALYTMMKDQYANYVVQKMIDVAEPGQRKIVMHKIRP(配列番号8)
【0025】
また、核酸切断酵素としては、実験上、よく利用している核酸切断酵素であるstaphylococcal nuclease(SNase)を用いた。さらに、ペプチドリンカーとしては、実験上、よく利用しているフレキシブルなGlyGlyGlyGlySerを3つタンデムにつなげたペプチドリンカーを用いた。
【0026】
上記の発現ベクターを発現用大腸菌株BL21(DE3)に導入した後、OD600が〜0.65になった時にIPTGを添加して、37℃で3時間培養して、人工RNA制限酵素を発現させた。
【0027】
人工RNA制限酵素を発現した大腸菌を回収して、超音波により破砕した。粉砕して得られた懸濁液をSDS-PAGEにより解析することで人工RNA制限酵素が可溶性であることを確認した。粉砕して得られた懸濁液を遠心分離して上清を得た。この上清をアフィニティーカラムを用いて精製することで人工RNA制限酵素を高純度で得ることができた。
【0028】
<標的配列を有する基質RNAの作製>
標的配列を含むインフルエンザゲノム由来の190塩基からなるRNAをコードするDNAを合成し、これをpET21aベクターのT7プロモーターの下流に導入した。
【0029】
このベクターのRNA領域の末端を制限酵素で切断した後、試験管内でT7 RNA polymeraseを用いて転写させた。しかし、RNA生成量が十分ではなかったため、様々な反応条件やキットを試したところ、最終的に、MEGAscript Kit(Invitrogen社製)を用いることにより、十分量の標的配列を有する基質RNAを一度に得ることができた。
【0030】
<標的配列を有する基質RNAの切断試験>
上述した方法で得られた基質RNAを用い、上述した方法で精製した人工RNA制限酵素のRNA切断活性を試験管内で検証した。
【0031】
反応条件は、標的配列を有する基質RNAを0.6〜1μgと、人工RNA制限酵素を終濃度5nMで含む反応緩衝液(20 mM Tris-HCl、pH 8.0、150 mM NaCl、10% Glycerol、1μg/μl tRNA)に、終濃度1mMのCa2+を添加することで反応を開始させた。
【0032】
37℃で所定時間(2分または10分)反応させた後、EDTAの添加により反応を停止させ、分解しやすいRNAの取り扱いに注意しながら反応生成物を回収した。
【0033】
回収した反応生成物を10%変性ゲルでの電気泳動により解析した。図1に電気泳動の結果を示す。反応後にみられる切断生成物が、人工RNA制限酵素が標的配列を有する基質RNA配列に正しく結合して切断したものかどうかは、適切な長さのサイズマーカーの泳動位置との比較により評価した。
【0034】
さらに、得られた2つの主切断生成物が目的の生成物かどうかを確認するために、基質RNA内の標的塩基配列を、人工RNA制限酵素のRNA結合タンパク質が結合できないように変異させ、同様の切断実験を行ったところ、目的の切断生成物と思われるバンドの減少が確認された。すなわち、基質RNAでの切断が、標的配列への結合により生じていることを確認した。
【0035】
<ペプチドリンカー長の最適化>
上述した人工RNA制限酵素では、ペプチドリンカーを、GlyGlyGlyGlySerの5アミノ酸からなるペプチドを3つ繰り返して、15アミノ酸のペプチドリンカーとしており、この場合の人工RNA制限酵素をL15型と呼ぶこととする。
【0036】
上述した人工RNA制限酵素の作製方法と同じ方法で、ペプチドリンカーを、GlyGlyGlyGlySerの5アミノ酸からなるペプチドを2つ繰り返して、10アミノ酸のペプチドリンカー(GlyGlyGlyGlySer GlyGlyGlyGlySer)を有する人工RNA制限酵素をL10型と呼び、ペプチドリンカーを、GlyGlyGlyGlySerの5アミノ酸からなるペプチドで構成した人工RNA制限酵素をL5型と呼び、ペプチドリンカーがなく、RNA結合タンパク質と核酸切断酵素とを直接結合させた人工RNA制限酵素をL0型と呼ぶこととする。
【0037】
上述したL15型の人工RNA制限酵素と同様に、L10型、L5型及びL0型の人工RNA制限酵素において、大腸菌でのタンパク質発現を行い、それぞれの作製したベクターをBL21(DE3)に導入して、可溶性を確認した。
【0038】
L10型、L5型及びL0型の人工RNA制限酵素では、L15型の人工RNA制限酵素と同じ37℃で3時間培養では可溶性が十分ではなかった。そこで、各種条件で培養を行ったところ、誘導剤終濃度:0.1 mMで、30℃・3時間培養で行った場合が、発現量が高く、かつ可溶量が多かった。そこで、この条件でL10型、L5型及びL0型の人工RNA制限酵素を培養した。
【0039】
図2は、ペプチドリンカー長の異なるL15型、L10型、L5型及びL0型の人工RNA制限酵素の切断活性を同一条件下で検証した結果である。図2より、L5型の人工RNA制限酵素が最も反応性が高かった。
【0040】
<他の実施形態について>
上述した実施形態では、核酸切断酵素としてSNaseを用いたが、他の核酸切断酵素を用いた場合でも同様の切断活性を有していることを確認するため、SNaseドメインの代わりにRNAを切断することが知られているPINドメインを用いることとした。
【0041】
すなわち、上述したSNase型の人工RNA制限酵素と同じ作製方法により、PIN型の人工RNA制限酵素の発現ベクターを構築した。ここで、ペプチドリンカーの長さの異なるL15型、L10型、L5型及びL0型の4種類のPIN型の人工RNA制限酵素を作製した。
【0042】
なお、作製したベクターをそれぞれBL21(DE3)に導入して可溶性を確認したが、37℃で3時間培養では可溶性が十分ではなかったため、誘導剤終濃度:0.1 mMで25℃・7時間培養で行った場合が、発現量が高く、かつ可溶量が多かった。そこで、この条件でL15型、L10型、L5型及びL0型のPIN型の人工RNA制限酵素を培養した。
【0043】
図3は、ペプチドリンカー長の異なるL15型、L10型、L5型及びL0型のPIN型の人工RNA制限酵素の切断活性を同一条件下で検証した結果である。図3より、L5型またはL10型の人工RNA制限酵素が最も反応性が高かった。
【実施例】
【0044】
実施例1:細胞内での人工RNA制限酵素の機能評価(非複製系)(図4)
(1)プラスミドの構築(図5図22
動物細胞用人工RNA制限酵素発現ベクターpCMV(-H)-hPUF_MT-L10-SNase-FLAGとpCMV(-H)-hPUF_MT-L10-hPIN-FLAGのEcoRIサイトとHindIIIサイト間にhPUFをコードするDNA配列をクローニングしてpCMV(-H)-hPUF-L10-SNase-FLAGとCMV(-H)-hPUF-L10-hPIN-FLAGを構築した。次に、pCMV(-H)-hPUF-L5-SNase-FLAGとpCMV(-H)-hPUF-L5-hPIN-FLAGからhPUFをコードするDNA配列を除去するためにEcoRIとHindIIIで切断・平滑化・ライゲーションを行い、pCMV(-H)-SNase-FLAGとpCMV(-H)-hPIN-FLAGを構築した。これらの4種類のプラスミドから核局在化シグナルをコードするDNA配列を除去するために、合成オリゴヌクレオチドのアニーリングにより作製したT7タグをコードするDNA配列をNheIサイトとBamHIサイトの間にクローニングしてpCMV(-H)-hPUF-L10-SNase-FLAG(-NLS)、pCMV(-H)-hPUF-L10-hPIN-FLAG(-NLS)、pCMV(-H)-SNase-FALG(-NLS)、およびpCMV(-H)-hPIN-FLAG(-NLS)を構築した。そして、これらの4種類のプラスミドを鋳型にしてPCRを行い、その増幅産物をそれぞれpCAGGSプラスミドのXhoIサイト間にクローニングしてpCAGGS-hPUF-L10-SNase-FLAG(-NLS)、pCAGGS-hPUF-L10-hPIN-FLAG(-NLS)、pCAGGS-SNase-FLAG(-NLS)、およびpCAGGS-hPIN-FLAG(-NLS)を構築した。
【0045】
CMVプロモーターの一部、その下流にhPUF結合サイトをコードするDNA配列(TGTATATA)とルシフェラーゼ遺伝子をコードするDNA配列を委託合成し、これをpcDNA3.1(+)のNdeIサイトとEcoRIサイト間にクローニングしてレポータープラスミドpcDNA-NRE-Lucを構築した。次に、hPUF結合サイトを3、および6コピーコードするDNA配列を合成オリゴヌクレオチドのアニーリング・ライゲーションにより作製し、これらをpcDNA-NRE-LucのSacIサイトとBamHIサイト間にクローニングしてpcDNA-NRE3X-Luc、およびpcDNA-NRE6X-Lucを構築した。また、同様の方法によりhPUF結合サイトの5か所に変異を導入した変異サイトを1、3、および6コピーコードするDNA配列(TCATATTA)を作製し、これらをpcDNA-NRE-LucのSacIサイトとBamHIサイト間にクローニングしてpcDNA-MT-Luc、pcDNA-MT3X-Luc、およびpcDNA-MT6X-Lucを構築した。
【0046】
(2)レポーターアッセイ(非複製系)(図23)
poly-D-lysine 96ウェルプレートに2×104個の293T細胞を播種し、10%非働化FBS含有DMEM培地で37℃・CO2 5%培養槽において24時間培養後、人工RNA制限酵素発現プラスミド81 ng、RNA分解ドメイン発現プラスミド81 ng、もしくは空ベクターpcDNA3.1(+) 81 ngをレポータープラスミド9 ng、およびβ-ガラクトシダーゼ発現プラスミドpCMV-b 10 ngとともにLipofectamine 3000を用いて293T細胞へコトランスフェクションした。37℃・CO2 5%培養槽で48時間培養後に1×Passive Lysis Buffer 100 mlで細胞ライセートを調製し、Luciferase Assay Systemを用いてルシフェラーゼ活性を測定した。また、ウェル間のトランスフェクション効率を標準化するためにLuminescent b-galactosidase Detection Kit IIを用いてβ-ガラクトシダーゼ活性を測定した。ルシフェラーゼ活性値をβ-ガラクトシダーゼ活性値で標準化した後、空ベクターpcDNA3.1(+)をトランスフェクションした条件を基準にして相対的なルシフェラーゼ活性を評価した。測定結果を図23に示す。標的配列のコピー数に依存してルシフェラーゼ活性が減少した。
【0047】
実施例2:細胞内での人工RNA制限酵素の機能評価(複製系、ルシフェラーゼ遺伝子使用)(図24)
(1)プラスミドの構築(図25図34
動物細胞用人工RNA制限酵素発現ベクターpCMV(-H)-hPUF_MT-L5-SNase-FLAGとpCMV(-H)-hPUF_MT-L5-hPIN-FLAGのEcoRIサイトとHindIIIサイト間にhPUFをコードするDNA配列をクローニングしてpCMV(-H)-hPUF-L5-SNase-FLAGとpCMV(-H)-hPUF-L5-hPIN-FLAGを構築した。そして、これらのプラスミドを鋳型にしてPCRを行い、その増幅産物をそれぞれpCAGGSプラスミドのXhoIサイト間にクローニングしてpCAGGS-hPUF-L5-SNase-FLAGとpCAGGS-hPUF-L5-hPIN-FLAGを構築した。
【0048】
ヒト由来のRNAポリメラーゼIプロモーターの下流にA型インフルエンザウイルス(A/PR/8/34(H1N1))のNSをコードするセグメント由来の5’非翻訳領域(5’NCR)、ルシフェラーゼ遺伝子のマイナス鎖、(A/PR/8/34(H1N1))のNSをコードするセグメント由来の3’非翻訳領域(3’NCR)、およびマウス由来のRNAポリメラーゼIターミネーターを配置した2種類のDNA配列を委託合成した。一つは5’NCRとルシフェラーゼ遺伝子の間にクローニングサイトAgeIとBglIIが配置されていて、もう一つはルシフェラーゼ遺伝子と3’NCRの間にクローニングサイトAgeIとBglIIが配置されている。これらをpUC19のXbaIサイトとAcc65Iサイト間にクローニングして2種類のレポータープラスミド前駆体pUC-vRNA(MCS_Luc)(NCR_NS)とpUC-vRNA(Luc_MCS)(NCR_NS)を構築した。次に、hPUF結合サイトを1、および3コピーコードするDNA配列を合成オリゴヌクレオチドのアニーリングにより作製し、これらをpUC-vRNA(MCS_Luc)(NCR_NS)のAgeIサイトとBglIIサイト間にクローニングしてpUC-vRNA(TGTATATA_Luc)(NCR_NS)とpUC-vRNA[(TGTATATA)3_Luc](NCR_NS)を構築した。また、hPUF結合サイトを1、および3コピーコードするDNA配列を合成オリゴヌクレオチドのアニーリングにより作製し、これらをpUC-vRNA(Luc_MCS)(NCR_NS)のAgeIサイトとBglIIサイト間にマイナス鎖が転写される向きにクローニングしてpUC-vRNA(Luc_TGTATATA)(NCR_NS)とpUC-vRNA[Luc_(TGTATATA)3](NCR_NS)を構築した。
【0049】
(2)レポーターアッセイ(複製系)(図35図38)
poly-D-lysine 96ウェルプレートに2×104個の293T細胞を播種し、10%非働化FBS含有DMEM培地で37℃・CO2 5%培養槽において24時間培養後、人工RNA制限酵素発現プラスミド86 ng、もしくは空ベクターpcDNA3.1(+) 86 ngを4種類のインフルエンザウイルス由来タンパク質発現プラスミドpCAGGS-PA、pCAGGS-PB1、pCAGGS-PB2、pCAGGS-NP各1 ng、レポータープラスミド0.1 ng、およびβ-ガラクトシダーゼ発現プラスミドpCMV-b 10 ngとともにLipofectamine 3000を用いて293T細胞へコトランスフェクションした。37℃、CO2 5%培養槽で48時間培養後に1×Passive Lysis Buffer 100 mlで細胞ライセートを調製し、Luciferase Assay Systemを用いてルシフェラーゼ活性を測定した。また、ウェル間のトランスフェクション効率を標準化するためにLuminescent b-galactosidase Detection Kit IIを用いてβ-ガラクトシダーゼ活性を測定した。ルシフェラーゼ活性値をβ-ガラクトシダーゼ活性値で標準化した後、空ベクターpcDNA3.1(+)をトランスフェクションした条件を基準にして相対的なルシフェラーゼ活性を評価した。レポータープラスミドにpUC-vRNA(TGTATATA_Luc)(NCR_NS)とpUC-vRNA[(TGTATATA)3_Luc](NCR_NS)を使用した時はvRNA(マイナス鎖)内にhPUF結合サイトが存在し、pUC-vRNA(Luc_TGTATATA)(NCR_NS)とpUC-vRNA[Luc_(TGTATATA)3](NCR_NS)を使用した時はcRNA(プラス鎖)およびmRNA内にhPUF結合サイトが存在する。
【0050】
測定結果を図36及び図38に示す。標的配列のコピー数に依存してルシフェラーゼ活性が減少した。また、図36及び図38の対比から、本発明の人工RNA制限酵素は、vRNAよりもcRNAに用いる方が有利であることも示唆される。
【0051】
実施例3:細胞内での人工RNA制限酵素の機能評価(複製系)(図39)
(1)プラスミドの構築(図40図41
A型インフルエンザウイルス(A/chicken/kumamoto/1-7/2014(H5N8))由来NPをコードするDNA配列を委託合成し、これを鋳型にしてPCRを行い、その増幅産物をpUC-vRNA(Luc_MCS)(NCR_NS)のAgeIサイトとBglIIサイト間にマイナス鎖が転写される向きにクローニングにしてpUC-vRNA(Luc_Kuma_NP)(NCR_NS)を構築した。同様に、A型インフルエンザウイルス(A/whooper swan/Akita/1/2008(H5N1))由来PAをコードするDNA配列を委託合成し、これを鋳型にしてPCRを行い、その増幅産物をpUC-vRNA(Luc_MCS)(NCR_NS)のAgeIサイトとBglIIサイト間にマイナス鎖が転写される向きにクローニングしてpUC-vRNA(Luc_Aki_PA)(NCR_NS)を構築した。
【0052】
(2)レポーターアッセイ(複製系、ウイルスゲノムにルシフェラーゼ遺伝子を連結)(図42図45
poly-D-lysine 96ウェルプレートに2×104個の293T細胞を播種し、10%非働化FBS含有DMEM培地で37℃・CO25%培養槽において24時間培養後、人工RNA制限酵素発現プラスミド85 ng、もしくは空ベクターpcDNA3.1(+) 85 ngを4種類のインフルエンザウイルス由来タンパク質発現プラスミドpCAGGS-PA、pCAGGS-PB1、pCAGGS-PB2、pCAGGS-NP各1 ng、レポータープラスミド1 ng、およびβ-ガラクトシダーゼ発現プラスミドpCMV-b 10 ngとともにLipofectamine 3000を用いて293T細胞へコトランスフェクションした。37℃、CO2 5%培養槽で48時間培養後に1×Passive Lysis Buffer 100 mlで細胞ライセートを調製し、Luciferase Assay Systemを用いてルシフェラーゼ活性を測定した。また、ウェル間のトランスフェクション効率を標準化するためにLuminescent b-galactosidase Detection Kit IIを用いてβ-ガラクトシダーゼ活性を測定した。ルシフェラーゼ活性値をβ-ガラクトシダーゼ活性値で標準化した後、空ベクターpcDNA3.1(+)をトランスフェクションした条件を基準にして相対的なルシフェラーゼ活性を評価した。レポータープラスミドにpUC-vRNA(Luc_Kuma_NP)(NCR_NS)を使用した時はvRNA(マイナス鎖)内にhPUF結合サイトが存在し、pUC-vRNA(Luc_Aki_PA)(NCR_NS)を使用した時はcRNA(プラス鎖)およびmRNA内にhPUF結合サイトが存在する。
【0053】
測定結果を図43及び図45に示す。本発明の人工RNA制限酵素によりルシフェラーゼ活性が減少した。
【0054】
実施例4:細胞内での人工RNA制限酵素の機能評価(複製系、ウイルスゲノムを使用した
RNAレベルでの解析)(図46
(1)プラスミドの構築(図47図48
ヒト由来のRNAポリメラーゼIプロモーターの下流にA型インフルエンザウイルス(A/PR/8/34(H1N1))のNSをコードするセグメント由来の5’非翻訳領域(5’NCR)、A型インフルエンザウイルス(A/chicken/kumamoto/1-7/2014(H5N8))由来のNP遺伝子のマイナス鎖、(A/PR/8/34(H1N1))のNSをコードするセグメント由来の3’非翻訳領域(3’NCR)、およびマウス由来のRNAポリメラーゼIターミネーターを配置したDNA配列を委託合成した。これをpUC19のXbaIサイトとAcc65Iサイト間にクローニングしてウイルスRNA発現プラスミドpUC-vRNA(Kuma_NP)(NCR_NS)を構築した。
【0055】
(2)定量リアルタイムPCRでのRNAレベルでの解析(複製系、ウイルスゲノムを使用したRNAレベルでの解析)
poly-D-lysine 35 mmディッシュに4×105個の293T細胞を播種し、10%非働化FBS含有DMEM培地で37℃・CO25%培養槽において24時間培養後、人工RNA制限酵素発現プラスミド2400 ng、もしくは空ベクターpcDNA3.1(+) 2400 ngを4種類のインフルエンザウイルス由来タンパク質発現プラスミドpCAGGS-PA、pCAGGS-PB1、pCAGGS-PB2、pCAGGS-NP各25 ng、ウイルスRNA発現プラスミドpUC-vRNA(Kuma_NP)(NCR_NS)2.5 ng、およびβ-ガラクトシダーゼ発現プラスミドpCMV-b 2.5 ngとともにLipofectamine 3000を用いて293T細胞へコトランスフェクションした。37℃、CO2 5%培養槽で48時間培養後にTRIzolとRNeasy Mini kitを用いてトータルRNAを抽出し、DNaseI処理後にウイルスRNA特異的プライマーを用いて逆転写反応をし、RNaseH処理をしてから細胞内で複製したウイルスRNAを定量するためにTaqMan Fast Advanced Master Mixを用いてリアルタイムPCR解析を行った。また、ディッシュ間のトランスフェクション効率を標準化するために抽出したトータルRNAを用いてランダムプライマーで逆転写反応をし、RNaseH処理をしてからβ-ガラクトシダーゼmRNA発現量を定量するためにリアルタイムPCR解析を行った。細胞内のウイルスRNA量をβ-ガラクトシダーゼmRNA発現量で標準化した後、空ベクターpcDNA3.1(+)をトランスフェクションした条件を基準にして相対的なウイルスRNA複製量を評価した。
【0056】
測定結果を図49に示す。本発明の人工RNA制限酵素により相対的なウイルスRNA複製量が減少した。
【0057】
実施例5:細胞内での人工RNA制限酵素の機能評価(複製系、ウイルスゲノムを使用、細胞毒性評価)
poly-D-lysine 96ウェルプレートに2×104個の293T細胞を播種し、10%非働化FBS含有DMEM培地で37℃・CO2 5%培養槽において24時間培養後、人工RNA制限酵素発現プラスミド96 ng、もしくは空ベクターpcDNA3.1(+) 96 ngを4種類のインフルエンザウイルス由来タンパク質発現プラスミドpCAGGS-PA、pCAGGS-PB1、pCAGGS-PB2、pCAGGS-NP各1 ng、ウイルスRNA発現プラスミドpUC-vRNA(Kuma_NP)(NCR_NS)0.2 ng、およびβ-ガラクトシダーゼ発現プラスミドpCMV-b 0.2 ngとともにLipofectamine 3000を用いて293T細胞へコトランスフェクションした。37℃、CO2 5%培養槽で48時間培養後にCell Counting Kit-8のWST-8を10 ml添加し、37℃、CO25%培養槽で培養してからマルチプレートリーダーにて450 nmの吸光度を測定した。空ベクターpcDNA3.1(+)をトランスフェクションした条件を基準にして細胞生存率を評価した。
【0058】
測定結果を図51に示す。本発明の人工RNA制限酵素は細胞毒性を示さないことが確認された。
図1
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図51
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]