特許第6875011号(P6875011)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875011
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】半導体加工用粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20210510BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20210510BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20210510BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   C09J7/38
   C09J201/00
   C09J133/04
   H01L21/304 622J
【請求項の数】12
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-540641(P2018-540641)
(86)(22)【出願日】2017年6月22日
(86)【国際出願番号】JP2017022969
(87)【国際公開番号】WO2018055859
(87)【国際公開日】20180329
【審査請求日】2019年7月10日
(31)【優先権主張番号】特願2016-182892(P2016-182892)
(32)【優先日】2016年9月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100158481
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】森下 友尭
(72)【発明者】
【氏名】小升 雄一朗
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/030186(WO,A1)
【文献】 特開2001−200215(JP,A)
【文献】 特開2013−074200(JP,A)
【文献】 特開2011−151355(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/010140(WO,A1)
【文献】 特開2014−227520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 −201/10
H01L 21/304
H01L 21/463
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の一方の面上に設けられ、かつ粘着剤組成物により形成される粘着剤層とを備える半導体加工用粘着シートであって、
前記粘着剤組成物が、反応性官能基(A1)を有するポリマー(A)と、反応性官能基(A1)とは異なる反応性官能基(B1)及びエネルギー線重合性基(B2)を有するポリマー(B)と、反応性官能基(A1)と反応する架橋剤(C)と、反応性官能基(B1)と反応する架橋剤(D)とを含有
架橋剤(C)と架橋剤(D)とが互いに異なる種類のものであり、
バンプが形成された半導体ウエハを被着体として、該半導体ウエハのバンプが形成された表面を保護するために用いられる、半導体加工用粘着シート。
【請求項2】
ポリマー(A)の重量平均分子量が、ポリマー(B)の重量平均分子量よりも高い請求項1に記載の半導体加工用粘着シート。
【請求項3】
ポリマー(A)及びポリマー(B)が、いずれもアクリルポリマーである請求項1又は2に記載の半導体加工用粘着シート。
【請求項4】
ポリマー(A)を構成するアクリルポリマーの重量平均分子量が、ポリマー(B)を構成するアクリルポリマーの重量平均分子量よりも高く、その差が200,000以上である請求項3に記載の半導体加工用粘着シート。
【請求項5】
ポリマー(A)を構成するアクリルポリマーの重量平均分子量が300,000〜1,000,000であるとともに、ポリマー(B)を構成するアクリルポリマーの重量平均分子量が、5,000〜100,000である請求項4に記載の半導体加工用粘着シート。
【請求項6】
ポリマー(A)を構成するアクリルポリマーが、反応性官能基(A1)を有する官能基モノマー(a1)由来の構成単位と、アルキル(メタ)アクリレート(a2)由来の構成単位とを含有するアクリル共重合体(A’)である請求項3〜5のいずれか1項に記載の半導体加工用粘着シート。
【請求項7】
ポリマー(B)を構成するアクリルポリマーが、反応性官能基(B1)を有する官能基モノマー(b1)由来の構成単位と、アルキル(メタ)アクリレート(b2)由来の構成単位とを含有するアクリル共重合体(B’)の反応性官能基(B1)の一部に、エネルギー線重合性基(B2)を有するエネルギー線重合性基含有化合物(S)を反応させた反応物である、請求項3〜6のいずれか1項に記載の半導体加工用粘着シート。
【請求項8】
反応性官能基(A1)がカルボキシ基であるとともに、反応性官能基(B1)が水酸基である請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体加工用粘着シート。
【請求項9】
架橋剤(C)がエポキシ系架橋剤であるとともに、架橋剤(D)がイソシアネート系架橋剤である請求項8に記載の半導体加工用粘着シート。
【請求項10】
架橋剤(D)の含有量が、粘着剤組成物において質量基準で架橋剤(C)の含有量より多く、かつ粘着剤組成物における架橋剤(D)の含有量が、ポリマー(B)100質量部に対して、2〜20質量部である請求項1〜9のいずれか1項に記載の半導体加工用粘着シート。
【請求項11】
基材と、前記基材の一方の面上に設けられ、かつ粘着剤組成物により形成される粘着剤層とを備える半導体加工用粘着シートであって、
前記粘着剤組成物が、反応性官能基(A1)を有するポリマー(A)と、反応性官能基(A1)とは異なる反応性官能基(B1)及びエネルギー線重合性基(B2)を有するポリマー(B)と、反応性官能基(A1)と反応する架橋剤(C)と、反応性官能基(B1)と反応する架橋剤(D)とを含有し、
反応性官能基(A1)がカルボキシ基であるとともに、反応性官能基(B1)が水酸基であり、架橋剤(C)がエポキシ系架橋剤であるとともに、架橋剤(D)がイソシアネート系架橋剤である、半導体加工用粘着シート。
【請求項12】
基材と、前記基材の一方の面上に設けられ、かつ粘着剤組成物により形成される粘着剤層とを備える半導体加工用粘着シートであって、
前記粘着剤組成物が、反応性官能基(A1)を有するポリマー(A)と、反応性官能基(A1)とは異なる反応性官能基(B1)及びエネルギー線重合性基(B2)を有するポリマー(B)と、反応性官能基(A1)と反応する架橋剤(C)と、反応性官能基(B1)と反応する架橋剤(D)とを含有し、
架橋剤(D)の含有量が、粘着剤組成物において質量基準で架橋剤(C)の含有量より多く、かつ粘着剤組成物における架橋剤(D)の含有量が、ポリマー(B)100質量部に対して、2〜20質量部である、半導体加工用粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体加工用粘着シートに関し、特に、バンプ付き半導体ウエハの表面を保護するために使用される半導体ウエハ表面保護用粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
情報端末機器の薄型化、小型化、多機能化が急速に進む中、それらに搭載される半導体装置も同様に、薄型化、高密度化が求められており、半導体ウエハの薄型化も要望されている。従来、その要望に対応するために、半導体ウエハの裏面を研削して、薄型化することが行われている。また、近年、半導体ウエハは、高さが数十〜数百μm程度のはんだ等からなるバンプがウエハ表面に形成されることがある。そのようなバンプ付き半導体ウエハが裏面研削される場合、バンプ部分を保護するために、バンプが形成されたウエハ表面には、表面保護シートが貼付される。
【0003】
表面保護シートとしては、従来、特許文献1に開示されるように、基材の上に、中間層、及び粘着剤層をこの順で設けた粘着シートが使用されることが知られている。特許文献1では、粘着剤層に、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤などの慣用の粘着剤が使用される。また、粘着剤に架橋剤を配合し、架橋構造を導入してもよいことが示されている。
さらに、特許文献1では、粘着剤にエネルギー線硬化型オリゴマーが配合され、或いは、粘着剤を構成するポリマーに炭素−炭素二重結合が導入されて、粘着剤がエネルギー線硬化性とされることも開示されている。表面保護シートは、エネルギー線硬化性粘着剤が使用されることで、エネルギー線の照射により粘着剤層の粘着力が低下するので、使用後、半導体ウエハから剥離しやすくなる。
【0004】
また、従来、ダブルネットワーク構造を有する超高強度ゲルが知られている。超高強度ゲルは、例えば非特許文献1に示されるように、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸)を重合してゲル(PAMPSゲル)を得て、そのPAMPSゲルをアクリルアミドモノマー溶液に浸漬した後、PAMPSゲル内部でアクリルアミドを重合することで得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4367769号公報
【非特許文献1】超高強度Double Networkゲルの創薬とその高強度化メカニズム、高分子論文集、Vol. 65, No. 12, (2008) pp.707-715
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、半導体装置の更なる高密度化、小型化に伴い、バンプ高さは大きくなる傾向にある。しかし、バンプ高さが大きい半導体ウエハに対しては、表面保護シート剥離時にバンプに粘着剤残渣(糊残り)が発生しやすくなる。糊残りは、粘着剤をエネルギー線硬化性にすることで低減する傾向にあるが、近年、半導体ウエハの汚染はより低減させることが求められつつあり、エネルギー線硬化性としただけでは、糊残りが所望のレベルまで低減できないことがある。
また、非特許文献1では、ダブルネットワーク構造を有する超高強度ゲルを、粘着剤に適用したり、エネルギー線硬化性に改変したりすることは試みられていない。
【0007】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、剥離したときに半導体ウエハ等のワーク表面に糊残りが生じにくくなる半導体加工用粘着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、粘着剤層を構成する粘着剤組成物に2種のポリマーを配合し、それぞれのポリマーを異なる架橋系により架橋するとともに、1種のポリマーをエネルギー線硬化性とすることで上記課題が解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の(1)〜(10)の半導体加工用粘着シートを提供する。
(1)基材と、前記基材の一方の面上に設けられ、かつ粘着剤組成物により形成される粘着剤層とを備える半導体加工用粘着シートであって、
前記粘着剤組成物が、反応性官能基(A1)を有するポリマー(A)と、反応性官能基(A1)とは異なる反応性官能基(B1)及びエネルギー線重合性基(B2)を有するポリマー(B)と、反応性官能基(A1)と反応する架橋剤(C)と、反応性官能基(B1)と反応する架橋剤(D)とを含有する、半導体加工用粘着シート。
(2)ポリマー(A)の重量平均分子量が、ポリマー(B)の重量平均分子量よりも高い上記(1)に記載の半導体加工用粘着シート。
(3)ポリマー(A)及びポリマー(B)が、いずれもアクリルポリマーである上記(1)又は(2)に記載の半導体加工用粘着シート。
(4)ポリマー(A)を構成するアクリルポリマーの重量平均分子量が、ポリマー(B)を構成するアクリルポリマーの重量平均分子量よりも高く、その差が200,000以上である上記(3)に記載の半導体加工用粘着シート。
(5)ポリマー(A)を構成するアクリルポリマーの重量平均分子量が300,000〜1,000,000であるとともに、ポリマー(B)を構成するアクリルポリマーの重量平均分子量が、5,000〜100,000である上記(4)に記載の半導体加工用粘着シート。
(6)ポリマー(A)を構成するアクリルポリマーが、反応性官能基(A1)を有する官能基モノマー(a1)由来の構成単位と、アルキル(メタ)アクリレート(a2)由来の構成単位とを含有するアクリル共重合体(A’)である上記(3)〜(5)のいずれか1項に記載の半導体加工用粘着シート。
(7)ポリマー(B)を構成するアクリルポリマーが、反応性官能基(B1)を有する官能基モノマー(b1)由来の構成単位と、アルキル(メタ)アクリレート(b2)由来の構成単位とを含有するアクリル共重合体(B’)の反応性官能基(B1)の一部に、エネルギー線重合性基(B2)を有するエネルギー線重合性基含有化合物(S)を反応させた反応物である、上記(3)〜(6)のいずれか1項に記載の半導体加工用粘着シート。
(8)反応性官能基(A1)がカルボキシ基であるとともに、反応性官能基(B1)が水酸基である上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の半導体加工用粘着シート。
(9)架橋剤(C)がエポキシ系架橋剤であるとともに、架橋剤(D)がイソシアネート系架橋剤である上記(8)に記載の半導体加工用粘着シート。
(10)架橋剤(D)の含有量は、粘着剤組成物において質量基準で架橋剤(C)の含有量より多く、かつ粘着剤組成物における架橋剤(D)の含有量は、ポリマー(B)100質量部に対して、2〜20質量部である上記(1)〜(9)のいずれか1項に記載の半導体加工用粘着シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、剥離したときにワーク表面に糊残りが生じにくくなる半導体加工用粘着シートを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1のエネルギー線硬化後の粘着剤層に対して、サイクル引張試験を行って作成した応力−歪み曲線である。
図2】実施例1のエネルギー線硬化前の粘着剤層に対して、サイクル引張試験を行って作成した応力−歪み曲線である。
図3】比較例1のエネルギー線硬化後の粘着剤層に対して、サイクル引張試験を行って作成した応力−歪み曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の記載において、「重量平均分子量(Mw)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されるポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定した値である。
また、本明細書中の記載において、例えば「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の双方を示す語として用いており、他の類似用語についても同様である。
【0012】
以下、実施形態を用いて本発明をより詳細に説明する。
本発明の半導体加工用粘着シート(以下、単に“粘着シート”ともいう)は、基材と、基材の一方の面上に設けられた粘着剤層とを備える。また、粘着シートは、基材と、粘着剤層の間に中間層を有していてもよい。粘着シートは、以上のように2層又は3層から構成されてもよいし、さらに他の層が設けられてもよい。例えば、粘着剤層の上に、さらに剥離材を設けてもよい。
以下、粘着シートを構成する各部材について詳細に説明する。
【0013】
<基材>
粘着シートに使用される基材は、特に限定はされないが、樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂フィルムは、紙、不織布等と比べて塵芥発生が少ないために電子部品の加工部材に好適であり、入手が容易であるため好ましい。基材は、1つの樹脂フィルムからなる単層フィルムであってもよく、複数の樹脂フィルムを積層した複層フィルムであってもよい。
基材として用いられる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリオレフィン系フィルム、ハロゲン化ビニル重合体系フィルム、アクリル樹脂系フィルム、ゴム系フィルム、セルロース系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、シクロオレフィンポリマー系フィルム等が挙げられる。
これらの中でも、ウエハを極薄にまで研削する際にウエハを安定して保持できるという観点、並びに厚みの精度が高いフィルムであるとの観点から、ポリエステル系フィルムが好ましく、ポリエステル系フィルムの中でも、入手が容易で、厚み精度が高いとの観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。
また、基材の厚みは、特に限定されないが、好ましくは10〜200μm、より好ましくは25〜150μm、更に好ましくは25〜100μmである。
【0014】
なお、基材の粘着剤層又は中間層に対する接着性を向上させる観点から、樹脂フィルムの表面に更に易接着層を設けた基材を用いてもよい。更に、本発明で用いる基材には、本発明の効果を損なわない範囲において、充填剤、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒等を含有させてもよい。また、基材は、透明なものであっても、所望により着色されていてもよいが、粘着剤層を硬化するのに十分な程度にエネルギー線を透過するものが好ましい。
【0015】
<粘着剤層>
粘着剤層は、基材の上に設けられ、また、中間層が設けられる場合には、その中間層の上に設けられるものである。粘着剤層は、粘着剤組成物により形成される。粘着剤組成物は、ポリマー(A)及びポリマー(B)と、架橋剤(C)及び架橋剤(D)とを含有する。以下、これら各成分について、詳細に説明する。
【0016】
[ポリマー(A)、(B)]
ポリマー(A)は、反応性官能基(A1)を有する。また、ポリマー(B)は、反応性官能基(A1)と異なる官能基である反応性官能基(B1)と、エネルギー線重合性基(B2)とを有する。ポリマー(A)の反応性官能基(A1)は、架橋剤(D)と架橋反応せずに、架橋剤(C)と優先的に架橋反応するものである。また、ポリマー(B)の反応性官能基(B1)は、架橋剤(C)と架橋反応せずに、架橋剤(D)と優先的に架橋反応するものである。
【0017】
反応性官能基(A1)、及び反応性官能基(B1)は、特に限定されず、それぞれ水酸基、カルボキシ基、アミノ基、エポキシ基などから選択されればよく、これらの中ではカルボキシ基、水酸基が好ましい。
そして、反応性官能基(A1)又は反応性官能基(B1)のいずれか一方がカルボキシ基、他方が水酸基であることがより好ましい。これにより、ポリマー(A)は架橋剤(C)、ポリマー(B)は架橋剤(D)と反応して、別々の網目構造を形成しやすくなる。
ここで、反応性官能基(A1)が水酸基、反応性官能基(B1)がカルボキシ基であってもよいが、反応性官能基(A1)がカルボキシ基であるとともに、反応性官能基(B1)が水酸基であることがさらに好ましい。ポリマー(B)の反応性官能基(B1)が水酸基であると、後述するエネルギー線重合性基含有化合物(S)と反応しやすくなる。
【0018】
ポリマー(A)は、エネルギー線重合性基を有しない化合物であり、そのため、エネルギー線を照射しても硬化しない非エネルギー線硬化性化合物である。一方で、ポリマー(B)は、エネルギー線重合性基(B2)を有するため、エネルギー線を照射することで硬化するエネルギー線硬化性化合物である。粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、エネルギー線を照射すると、ポリマー(B)が硬化して粘着力が低くなる。
なお、エネルギー線とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、電子線等が挙げられる。これらの中でも、紫外線を使用して粘着剤層を硬化させることが好ましい。
また、エネルギー線重合性基(B2)としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等の炭素−炭素二重結合を有するものが挙げられ、これらの中では(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0019】
ポリマー(A)は反応性官能基(A1)を有し、ポリマー(B)は反応性官能基(A1)とは異なる反応性官能基(B1)を有することで、ポリマー(A)は架橋剤(C)、ポリマー(B)は、架橋剤(C)とは異なる架橋剤(D)により、それぞれ架橋される。そのため、粘着剤層においては、ポリマー(A)と架橋剤(C)により構成される3次元網目構造(以下、“第1網目”ともいう)と、ポリマー(B)と架橋剤(D)により構成される3次元網目構造(以下、“第2網目”ともいう)とが形成される。また、第2網目は、ポリマー(B)にエネルギー線重合性基(B2)が含まれるため、エネルギー線が照射されることでさらに密な網目となり、硬くて脆い構造になると推定される。一方で、第1網目は、ポリマー(A)と架橋剤(C)により構成されることで、第2網目に比べると、柔軟で伸張しやすい構造になると推定される。
粘着剤層は、エネルギー線照射後、上記のように柔軟な第1網目に、硬直な第2網目が入り組んだいわゆるダブルネットワークが形成される。そのため、エネルギー線照射後の粘着剤層の破断強度、破断伸度、破断エネルギーなどの破断特性は良好となりやすく、粘着シートを半導体ウエハ等のワークから剥離するときワーク上に糊残りが生じにくくなる。
【0020】
ポリマー(A)及びポリマー(B)はそれぞれ、粘着剤層に粘着性を発現し得る粘着剤成分(粘着性樹脂)であり、例えば、アクリルポリマー、ウレタンポリマー、ゴム系ポリマー、及びポリオレフィンから選ばれる。ポリマー(A)及びポリマー(B)は、これらの中では、アクリルポリマー、及びウレタンポリマーから選択されることが好ましく、アクリルポリマーがより好ましい。
ポリマー(A)及びポリマー(B)としては、相溶性等の観点から、互いに同種のポリマーを使用することが好ましい。すなわち、ポリマー(A)がアクリルポリマーである場合には、ポリマー(B)もアクリルポリマーであることが好ましい。また、ポリマー(A)がウレタンポリマーである場合には、ポリマー(B)もウレタンポリマーであることが好ましい。
【0021】
粘着剤層において、ポリマー(A)の重量平均分子量が高くなると、第1網目はより柔軟で伸張する構造になりやすい一方で、ポリマー(B)の重量平均分子量が低くなると、第2網目はより硬くて脆い構造になりやすい。さらに、第1網目の間に第2網目が入り込みやすくなり、ダブルネットワークを形成しやすくなる。これら観点から、ポリマー(A)の重量平均分子量は、ポリマー(B)の重量平均分子量より高いことが好ましい。
【0022】
また、粘着剤組成物において、ポリマー(B)の含有量は、ポリマー(A)100質量部に対して、10〜100質量部であることが好ましく、20〜80質量部であることがより好ましく、30〜70質量部であることがさらに好ましい。
ポリマー(B)の含有量を上記下限値以上とすることで、粘着剤層に適切にエネルギー線硬化性を付与しやすくなる。また、含有量を上記範囲内とすることで、粘着剤組成物の塗工性、粘着剤層の成膜性等が良好になりやすくなる。さらには、第1網目と第2網目がバランスよく形成され、粘着剤層の破断特性を良好にしやすくなる。
なお、粘着剤組成物において、ポリマー(A)及びポリマー(B)は、主成分であることが好ましい。主成分であるとは、ポリマー(A)及びポリマー(B)の合計含有量が、粘着剤組成物(固形分基準)全量基準で、50質量%以上であることを意味し、より好ましくは70〜98質量%、さらに好ましくは80〜95質量%である。なお、本発明において固形分とは、有機溶媒以外の全成分を意味し、室温(25℃)で液状のものも含む。
【0023】
(アクリルポリマー)
以下、上記したポリマー(A)及びポリマー(B)それぞれがアクリルポリマーである場合について、より詳細に説明する。
ポリマー(A)を構成するアクリルポリマーは、(メタ)アクリレート由来の構成単位を含有するポリマーであって、好ましくは、反応性官能基(A1)を有する官能基モノマー(a1)(以下、単に“官能基モノマー(a1)”ということがある)由来の構成単位を含有するアクリル共重合体(A’)であり、官能基モノマー(a1)由来の構成単位と、アルキル(メタ)アクリレート(a2)由来の構成単位とを含有するアクリル共重合体(A’)がより好ましい。ポリマー(A)は、アルキル(メタ)アクリレート(a2)由来の構成単位を含有することで、粘着剤層の粘着性を良好なものとしやすくなる。
【0024】
官能基モノマー(a1)は、上記した反応性官能基(A1)を有するモノマーであって、好ましくはカルボキシ基含有モノマーが挙げられる。カルボキシ基含有モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和結合を有するカルボン酸等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
【0025】
官能基モノマー(a1)(例えば、カルボキシ基含有モノマー)由来の構成単位の含有量は、アクリル共重合体(A’)基準で、0.5〜15質量%であることが好ましく、1〜8質量%であることがより好ましく、1.5〜5質量%がさらに好ましい。カルボキシ基含有モノマー等の官能基モノマー(a1)の含有量が上記範囲内であると、適切な粘着力を粘着剤層に付与しやすくなる。また、架橋剤(C)による架橋によって、第1網目を好適に形成することが可能になる。
【0026】
アルキル(メタ)アクリレート(a2)としては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜20のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
アルキル基の炭素数が1〜20のアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記した中でも、粘着性を適切に発揮させる観点から、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、アルキル基の炭素数が4〜8のアルキル(メタ)アクリレート(以下、“モノマー(α)”ということがある)がより好ましい。モノマー(α)としては、具体的には、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレートが好ましく、n−ブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0027】
アルキル(メタ)アクリレート(a2)由来の構成単位の含有量は、アクリル共重合体(A’)基準で、50〜99.5質量%であることが好ましく、60〜99質量%であることがより好ましく、70〜98.5質量%がさらに好ましい。
また、アルキル(メタ)アクリレート(a2)としては、上記したようにアルキル基の炭素数が4〜8のアルキル(メタ)アクリレート、すなわち、モノマー(α)を使用することがより好ましいが、アクリル共重合体(A’)に含有されるアルキル(メタ)アクリレート(a2)の全てが、モノマー(α)であってもよいし、一部がモノマー(α)であってもよい。
具体的には、モノマー(α)は、アルキル(メタ)アクリレート(a2)全量に対して、70〜100質量%が好ましく、80〜100質量%がより好ましく、90〜100質量%がさらに好ましい。
【0028】
ポリマー(A)に使用される上記アクリル共重合体(A’)は、官能基モノマー(a1)と、アルキル(メタ)アクリレート(a2)との共重合体であってもよいが、(a1)成分と、(a2)成分と、これら(a1)及び(a2)成分以外のその他のモノマー(a3)との共重合体であってもよい。
その他のモノマー(a3)としては、上記(a1)〜(a2)成分以外の共重合可能なモノマーを意味し、具体的には、シクロアルキル基の炭素数が3〜20であるシクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの環状骨格を有する(メタ)アクリレート;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル化合物;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン;塩化ビニル、ビニリデンクロリドなどのハロゲン化オレフィン;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル系モノマーなどが挙げられる。
その他のモノマー(a3)は、アクリル系共重合体(A’)において単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
ポリマー(B)を構成するアクリルポリマーは、(メタ)アクリレート由来の構成単位を含有するポリマーであって、好ましくは、反応性官能基(B1)を有する官能基モノマー(b1)(以下、単に“官能基モノマー(b1)”ということがある)由来の構成単位を含有するアクリル共重合体(B’)に、エネルギー線重合性基(B2)を有するエネルギー線重合性基含有化合物(S)を反応させて得た反応物である。エネルギー線重合性基含有化合物(S)は、アクリル共重合体(B’)の反応性官能基(B1)の一部に反応するものである。また、アクリル共重合体(B’)は、さらにアルキル(メタ)アクリレート(b2)由来の構成単位を含有することがより好ましい。
すなわち、ポリマー(B)を構成するアクリルポリマーは、反応性官能基(B1)を有する官能基モノマー(b1)由来の構成単位と、アルキル(メタ)アクリレート(b2)由来の構成単位とを含有するアクリル共重合体(B’)の反応性官能基(B1)の一部に、エネルギー線重合性基(B2)を有するエネルギー線重合性基含有化合物(S)を反応させた反応物であることが好ましい。
【0030】
官能基モノマー(b1)は、上記した反応性官能基(B1)を有するモノマーであって、好ましくは水酸基含有モノマーが挙げられる。
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、架橋剤(D)及びエネルギー線重合性基含有化合物(S)との反応性及び他のモノマーとの共重合性の点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0031】
ポリマー(B)を形成するためのアクリル共重合体(B’)において、官能基モノマー(b1)(例えば、水酸基含有モノマー)由来の構成単位の含有量は、アクリル共重合体(B’)基準で、10〜45質量%が好ましく、15〜40質量%がより好ましく、20〜35質量%がさらに好ましい。水酸基含有モノマー等の官能基モノマー(b1)の含有量が上記範囲内であると、適切な粘着力を粘着剤層に付与しやすくなる。また、架橋剤(D)による架橋によって、第2網目からなる三次元網目構造を好適に形成することが可能になる。さらには、エネルギー線重合性基含有化合物(S)を反応性官能基(B1)に反応させることで、適切な量のエネルギー線重合性基(B2)をポリマー(B)に導入することが可能になる。
【0032】
アルキル(メタ)アクリレート(b2)の具体例は、上述の(a2)成分として選択し得るものと同じものが挙げられ、それらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、(a2)成分と同様に、炭素数が1〜8のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、さらには、モノマー(α)を使用することがより好ましい。モノマー(α)としての好適な化合物も同様であり、n−ブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
アルキル(メタ)アクリレート(b2)の含有量は、アクリル共重合体(B’)基準で、50〜90質量%であることが好ましく、60〜85質量%であることがより好ましく、65〜80質量%がさらに好ましい。
また、アルキル(メタ)アクリレート(b2)も、(a2)成分と同様に、モノマー(α)を使用することが好ましいが、アクリル共重合体(B’)に含有されるアルキル(メタ)アクリレート(b2)の全てが、モノマー(α)であってもよいし、一部がモノマー(α)であってもよい。なお、その含有量の詳細は、上記ポリマー(A)で説明したものと同様である。
【0033】
アクリル共重合体(B’)は、官能基モノマー(b1)と、アルキル(メタ)アクリレート(b2)との共重合体であってもよいが、(b1)成分と、(b2)成分と、これら(b1)及び(b2)成分以外のその他のモノマー(b3)との共重合体であってもよい。その他のモノマー(b3)は、上記(b1)〜(b2)成分以外の共重合可能なモノマーを意味し、具体的なモノマーとしては、モノマー(a3)として列挙したものから適宜選択して使用可能である。
【0034】
(エネルギー線重合性基含有化合物(S))
エネルギー線重合性基含有化合物(S)は、エネルギー線重合性基(B2)と、反応性官能基(B1)に反応することが可能な官能基(B3)(以下、単に“官能基(B3)”ということがある)とを有する。官能基(B3)は、反応性官能基(B1)に反応することが可能な官能基であればよいが、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシ基などが挙げられる。
また、上記したように、反応性官能基(B1)が、水酸基であれば、エネルギー線重合性基含有化合物(S)に含有される官能基(B3)はイソシアネート基であることが好ましい。また、反応性官能基(B1)がカルボキシ基であれば、官能基(B3)はエポキシ基であることが好ましい。さらに、反応性官能基(B1)がエポキシ基であれば官能基(B3)はカルボキシ基であることが好ましい。
これらの中でも、反応性等の観点から、反応性官能基(B1)が水酸基で、官能基(B3)がイソシアネート基であることがより好ましい。
【0035】
エネルギー線重合性基(B2)の好適な態様は、上記したとおりである。したがって、エネルギー線重合性基含有化合物(S)としては、イソシアネート基と、(メタ)アクリロイル基とを有する化合物であることが好ましい。
エネルギー線重合性基含有化合物(S)の具体例としては、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、イソシアナートプロピル(メタ)アクリレート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等のイソシアネート基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物が挙げられ、これらの中では、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0036】
ここで、アクリル共重合体(B’)が有する反応性官能基(B1)は、その一部に、エネルギー線重合性基含有化合物(S)が反応される。そのため、ポリマー(B)には、エネルギー線重合性基含有化合物(S)に反応しない反応性官能基(B1)が残り、それにより、ポリマー(B)は、反応性官能基(B1)とエネルギー線重合性基(B2)の両方を有することになる。
エネルギー線性重合性基含有化合物(S)の付加率は、アクリル共重合体(B’)の反応性官能基(B1)全量(100当量)に対して、75〜97当量であることが好ましく、80〜95当量であることがより好ましく、85〜93当量であることがさらに好ましい。
官能基モノマー(b1)由来の構成単位の含有量を上記した好ましい範囲(10〜45質量%、より好ましくは15〜40質量%、さらに好ましくは20〜35質量%)としつつ、付加率をこれら範囲内とすると、ポリマー(B)には、一定量の反応性官能基(B1)が残存する。そのため、ポリマー(B)が架橋剤(D)によって適切に架橋されるようになり、粘着剤層の粘着力を適切な値に調整しやすくなる。さらには、適切な量のエネルギー線重合性基(B2)をポリマー(B)に導入することも可能である。
【0037】
アクリル共重合体(A’)及びアクリル共重合体(B’)は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
また、アクリル共重合体(A’)及びアクリル共重合体(B’)は、各共重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法等により行うことができる。重合開始剤としては、公知のアゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。
【0038】
ポリマー(A)及びポリマー(B)が、いずれもアクリルポリマーである場合、ポリマー(A)を構成するアクリルポリマーの重量平均分子量が、ポリマー(B)を構成するアクリルポリマーの重量平均分子量よりも高く、かつその差が200,000以上であることが好ましい。このように、両ポリマーの分子量差を大きくすると、第1網目と第2網目の特性差が発現しやすくなり、ダブルネットワークも形成しやすくなる。そのため、破断特性が良好となって、糊残りを低減させやすくなる。これらの観点から、上記重量平均分子量の差は、300,000以上であることがより好ましく、400,000以上であることがさらに好ましい。
一方で、重量平均分子量の差の上限値は特に限定されないが、その差は850,000以下であることが好ましく、750,000以下であることがより好ましく、700,000以下であることがさらに好ましい。
【0039】
粘着剤組成物において、ポリマー(A)を構成するアクリルポリマーの重量平均分子量が300,000〜1,000,000であるとともに、ポリマー(B)を構成するアクリルポリマーの重量平均分子量が5,000〜100,000であることが好ましい。
中でも、ポリマー(A)を構成するアクリルポリマーの重量平均分子量は、350,000〜850,000であることがより好ましく、400,000〜750,000であることがさらに好ましい。
一方、ポリマー(B)を構成するアクリルポリマーの重量平均分子量は、15,000〜90,000であることがより好ましく、30,000〜80,000であることがさらに好ましい。
【0040】
ポリマー(A)の重量平均分子量を上記下限値以上とすることで、第1網目の構造がより柔軟で伸張しやすくなる。また、粘着剤層の成膜性が良好になりやすく、さらには、粘着剤層の凝集力も高くなりやすく糊残りが生じにくくなる。一方で、ポリマー(A)の重量平均分子量を上記上限値以下とすることで、粘着剤組成物の塗工性等を良好にしやすくなる。
また、ポリマー(B)の重量平均分子量を上記上限値以下とすることで、上記した第2網目をより硬くて脆い構造にしやすくなり、好適なダブルネットワークを形成しやすくなる。また、上記下限値以上とすることで、粘着剤層の凝集力が適切となり、糊残りが生じにくくなる。
【0041】
(ウレタンポリマー)
次に、ポリマー(A)及びポリマー(B)それぞれがウレタンポリマーである場合ついて説明する。ポリマー(A)及びポリマー(B)に使用されるウレタンポリマーは、ウレタン結合及び尿素結合の少なくとも一方を含有する重合体である。
ポリマー(A)を構成するウレタンポリマーは、上記した反応性官能基(A1)を有するものであって、例えばカルボキシ基含有ポリウレタン等が挙げられる。
また、ポリマー(B)を構成するウレタンポリマーは、例えば、水酸基含有ポリウレタンの水酸基の一部に、上記したエネルギー線重合性基含有化合物(S)を反応させてなるものが挙げられる。水酸基含有ポリウレタンは、末端に水酸基を有するものが好ましい。末端に水酸基を有するポリウレタンとしては、ポリオール及びポリイソシアネート化合物を反応させて得られるポリウレタンポリオールが挙げられる。ポリオール及びポリイソシアネート化合物としては、従来、ウレタン系粘着剤に使用される各種の化合物が使用可能である。
【0042】
ポリマー(A)及びポリマー(B)がいずれもウレタンポリマーである場合、ポリマー(A)の重量平均分子量は、ポリマー(B)の重量平均分子量よりも高く、かつその差が25,000以上であることが好ましく、50,000以上であることがより好ましい。また、重量平均分子量の差の上限値は、特に限定されないが、その差は、230,000以下であることが好ましく、120,000以下であることがより好ましい。
また、ポリマー(A)を構成するウレタンポリマーの重量平均分子量は、30,000〜250,000であることが好ましく、40,000〜150,000であることがより好ましい。
また、ポリマー(B)を構成するウレタンポリマーの重量平均分子量は、2,000〜25,000であることが好ましく、3,000〜20,000であることがより好ましい。
【0043】
[架橋剤(C)、(D)]
架橋剤(C)は、反応性官能基(A1)と反応する架橋剤であり、ポリマー(A)を架橋するために使用する。また、架橋剤(D)は、反応性官能基(B1)と反応する架橋剤であり、ポリマー(B)を架橋するために使用する。
架橋剤(C)及び架橋剤(D)による架橋は、通常、粘着剤組成物を加熱することで行われる。すなわち、粘着剤組成物は、後述するように、塗布等されて薄膜とされた状態で加熱されることで、架橋剤(C)及び架橋剤(D)により架橋され粘着剤層となる。
架橋剤(C)及び架橋剤(D)それぞれは、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、及びアンモニウム塩系架橋剤から選択される。架橋剤(C)及び架橋剤(D)それぞれは、これらの中から1種単独で使用されてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
架橋剤(C)はポリマー(A)が有する反応性官能(A1)の種類に応じて適宜選択され、架橋剤(D)は、ポリマー(B)が有する反応性官能基(B1)の種類に応じて適宜選択されるものである。すなわち、架橋剤(C)としては、反応性官能基(B1)とは架橋反応せずに、反応性官能基(A1)と反応するものを選択すればよい。また、架橋剤(D)としては、反応性官能基(A1)とは架橋反応せずに、反応性官能基(B1)と反応するものを選択すればよい。したがって、架橋剤(C)と架橋剤(D)としては互いに異なる種類のものが使用される。
例えば、上記したように、反応性官能基(A1)がカルボキシ基である場合には、架橋剤(C)としては、エポキシ系架橋剤、及び金属キレート系架橋剤から選択されることが好ましく、エポキシ系架橋剤がより好ましい。また、反応性官能基(A2)が水酸基である場合には、架橋剤(D)としてはイソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0045】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、エポキシ系架橋剤としては、これらの中では、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンが好ましい。
【0046】
金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属にアセチルアセトン、アセト酢酸エチル、トリス(2,4−ペンタンジオネート)等が配位した化合物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
また、イソシアネート系架橋剤としては、ポリイソシアネート化合物が挙げられる。ポリイソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネートなどが挙げられる。また、これらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体等も挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記した中では、トリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートの多価アルコール(例えば、トリメチロールプロパン等)アダクト体が好ましい。
【0048】
架橋剤(C)は、含有量を抑えることで第1網目を柔軟で伸張する構造としやすくなり、糊残りを低減しやすくなる。そのため、架橋剤(C)の含有量は、比較的少なくすることが好ましい。具体的には、粘着剤組成物における架橋剤(C)の含有量は、ポリマー(A)の種類、分子量等にもよるが、ポリマー(A)100質量部に対して、0.05〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましく、0.1〜0.3質量部がさらに好ましい。
【0049】
一方で、架橋剤(D)は、粘着剤組成物に多く含有されることで、第2網目を硬くて脆い構造にしやすくなる。そのため、架橋剤(D)の含有量は、比較的多くすることが好ましく、粘着剤組成物における架橋剤(D)の含有量は、質量基準で、架橋剤(C)の含有量より多いことが好ましい。
粘着剤組成物における架橋剤(D)の含有量は、ポリマー(B)の種類、分子量等にもよるが、具体的には、ポリマー(B)100質量部に対して、2〜20質量部が好ましく、4〜16質量部がより好ましく、5〜12質量部がさらに好ましい。
【0050】
[光重合開始剤(E)]
粘着剤組成物は、光重合開始剤(E)を含有することが好ましい。粘着剤層は、光重合開始剤(E)を含有することで、粘着剤層の紫外線等によるエネルギー線硬化を進行させやすくなる。
光重合開始剤(E)としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジフェニサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、ベンジルジメチルケタール、ジベンジル、ジアセチル、1−クロルアントラキノン、2−クロルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド等の低分子量重合開始剤;オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}等のオリゴマー化された重合開始剤などが挙げられる。これらを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
光重合開始剤(E)の含有量は、ポリマー(A)及びポリマー(B)の合計量100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜15質量部がより好ましく、2〜12質量部がさらに好ましい。
【0052】
また、粘着剤層は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の成分として、粘着付与剤、染料、顔料、劣化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、シランカップリング剤、連鎖移動剤、可塑剤、充填剤、上記したポリマー(A)及びポリマー(B)以外の樹脂成分等を含有してもよい。
粘着剤層の厚さは、ウエハ表面のバンプ高さ等、粘着シートが貼付される被着面の表面状態に応じて適宜調整することができるが、好ましくは2〜150μm、より好ましくは5〜100μm、更に好ましくは8〜50μmである。
【0053】
[粘着剤層の破断特性]
粘着剤層は、上記したようにエネルギー線が照射されることで硬化するものであり、エネルギー線硬化後の破断特性が以下のようになることが好ましい。
すなわち、エネルギー線硬化後の粘着剤層は、破断応力が1.5MPa以上、破断伸度が80%以上、破断エネルギーが1.0MJ/m3以上であることが好ましい。破断応力、破断伸度、破断エネルギーがこのように比較的高い値となると、粘着剤層の破断強度が良好となり、糊残りが生じにくくなる。また、糊残りをより防止する観点から、上記破断応力が1.8MPa以上、破断伸度が100%以上、破断エネルギーが1.4MJ/m3以上であることがより好ましく、破断応力が2.0MPa以上、破断伸度が180%以上、破断エネルギーが1.8J/m3以上であることがさらに好ましい。
また、これらの上限は、特に限定されないが、実用的には破断応力が10MPa以下、破断伸度が400%以下、破断エネルギーが5.0MJ/m3以下となることが好ましく、破断応力が6MPa以下、破断伸度が300%以下、破断エネルギーが3.5MJ/m3以下となることがより好ましい。
なお、破断応力、破断伸度、及び破断エネルギーは、JIS K7127:1999に準拠して引張試験を行って測定した値を意味し、具体的には後述する実施例に記載の方法で測定して得た値である。
【0054】
(ヒステリシス性)
エネルギー線硬化後の粘着剤層は、上記したダブルネットワークを有すると、一定の歪みをかけたとき、第2網目が破壊される一方で、第1網目が破壊せずに残存する。したがって、エネルギー線硬化後の粘着剤層は、一定の歪みをかけた後に再度歪みをかけると、第2網目が破壊されることに起因して、応力−歪み特性が初期のものと異なるようになる。このような性質をヒステリシス性と呼ぶが、ヒステリシス性の有無及び大きさは、以下に示すサイクル引張試験により確認可能である。
すなわち、伸長回数が増える毎に伸度(%)を高くし、かつサンプルが破断するまで、サンプルの伸長(歪み)と解放を繰り返すサイクル引張試験を行い、図1に示すように、伸長時ごとに応力−歪み曲線を作成する。そして、例えば、複数の応力−歪み曲線において、同じ伸度における曲線間の応力差の最大値(DSmax)を検出することで、ヒステリシス性の有無、及び大きさを確認できる。
【0055】
図1は、後述する実施例1で使用する粘着剤層のエネルギー線硬化後のサンプルに対し、サイクル引張試験を行ったときの応力−歪み曲線を示す。図1は、各伸長時の最大伸度を50%(1回目)から1回毎に50%ずつ大きくして、伸長と解放を繰り返したとき、5回目の伸長時に233%でサンプルが破断した例である。ここで、図1には、各伸長時の応力−歪み曲線が示され、この複数の応力−歪み曲線から図1に示すように、応力差の最大値(DSmax)が求められる。なお、図1の例では、4回目と5回目と連続する2つの回から作製された曲線より応力差の最大値(DSmax)が算出されたが、3回目と5回目などのように連続しない2つの回から作製された曲線より算出されてもよい。なお、伸度とは、サンプルを引っ張った際の増加分の長さを、元の長さで割って%で表したものである。
【0056】
ダブルネットワークが適切に形成され、ヒステリシス性が高ければ高いほど、複数の応力−歪み曲線は互いに離れ、上記した応力差の最大値(DSmax)が大きくなる。ダブルネットワークを適切に形成する観点から、応力差の最大値(DSmax)は、サイクル引張試験における破断時の応力(BS)に対して、20%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましく、35%以上であることがさらに好ましい。応力差の最大値(DSmax)は、製造容易性等の観点から、90%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。
【0057】
[粘着シートの剥離力]
粘着剤層は、エネルギー線硬化性であるため、エネルギー線照射前においては、比較的軟質にすることができ、これによって粘着剤層がワーク表面に形成された凹凸に追従しやすくなる。また、粘着シートは、エネルギー線が照射され硬化することで粘着力が低下して、ワークから剥離しやすくなる。
粘着シートのエネルギー線照射後の粘着力は、1,700mN/25mm以下であることが好ましい。粘着シートは、表面にバンプ等の突起があるワークに貼付される場合には、通常、突起が粘着シートの粘着剤層、又は粘着剤層及び中間層によって埋め込まれた状態となる。そのため、そこから粘着シートを剥離すると糊残りが発生しやすいが、粘着力を1,700mN/25mm以下とすることで、そのような糊残りの発生を防止しやすくなる。また、粘着シートをワークから容易に剥離することも可能になる。粘着シートのエネルギー線照射後の粘着力は、好ましくは50〜1,500mN/25mm、より好ましくは100〜1,300mN/25mmである。
【0058】
また、粘着シートのエネルギー線照射前の粘着力は、例えば1,700mN/25mmより大きくなるものであるが、好ましくは1,800〜20,000mN/25mm、より好ましくは1,800〜9,000mN/mである。エネルギー線照射前の粘着力がこのような範囲内であると、ワーク表面への接着性が良好となり、粘着シートのワークに対する保護性能を高めやすくなる。
なお、粘着シートの粘着力は、粘着シートの粘着剤層面をシリコンミラーウエハに貼付して、23℃の環境下、剥離角度180°、剥離速度300mm/分で剥離したときに測定されるものであり、具体的には後述する実施例に記載の方法で測定されるものである。
【0059】
粘着力は、ポリマー(A)及びポリマー(B)の種類、これらポリマーの配合量、架橋剤(C)及び架橋剤(D)の種類、これら架橋剤の配合量等を適宜変更することで調整することが可能である。例えば、ポリマー(A)及びポリマー(B)を上記したように、アクリルポリマーとすることで、上記した粘着力を有する粘着シートを得やすくなる。また、架橋剤(C)及び架橋剤(D)の配合量を多くすることで、粘着力を低くしやすくなる。
また、エネルギー線照射後の粘着力は、エネルギー線重合性基(B2)の量、ポリマー(B)の配合量によっても調整可能である。エネルギー線照射後の粘着力は、例えば、粘着剤組成物に含有されるエネルギー線重合性基(B2)の量を多くすると低くなり、少なくすると高くなる傾向にある。
【0060】
<中間層>
本発明の粘着シートでは、基材の一方の面に、中間層が設けられていてもよい。粘着シートは、中間層を有することで、ワークにバンプが設けられているなど、ワーク表面の凹凸の高低差が大きい場合であっても、凸部が粘着剤層及び中間層に埋め込まれることになる。そのため、粘着シートのワークに貼付されている面とは反対側の面を平坦に保つことが容易となる。
中間層の厚さは、粘着シートが貼付される被着面の状態に応じて適宜調整することができるが、比較的高さの高いバンプも吸収することが可能となる観点から、好ましくは10〜600μm、より好ましくは25〜550μm、更に好ましくは35〜500μmである。
中間層は、中間層用樹脂組成物より形成されたものである。また、中間層用樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート(X)を含むことが好ましい。
【0061】
(ウレタン(メタ)アクリレート(X))
ウレタン(メタ)アクリレート(X)は、少なくとも(メタ)アクリロイル基及びウレタン結合を有する化合物であり、エネルギー線照射により重合する性質を有するものである。ウレタン(メタ)アクリレート(X)中の(メタ)アクリロイル基数は、単官能、2官能、もしくは3官能以上でもよいが、中間層用樹脂組成物が単官能ウレタン(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。単官能ウレタン(メタ)アクリレートは、重合構造において3次元網目構造の形成に関与しないため、中間層に3次元網目構造が形成されにくくなり、ワーク表面の凹凸に追従しやすくなる。
ウレタン(メタ)アクリレート(X)としては、例えば、ポリオール化合物(x1)と、ポリイソシアネート化合物(x2)とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、(メタ)アクリロイル基を有する化合物(x3)を反応させて得ることができる。
ウレタン(メタ)アクリレート(X)は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
ウレタン(メタ)アクリレート(X)を形成するためのポリオール化合物(x1)は、ヒドロキシ基を2つ以上有する化合物であれば特に制限されない。具体的なポリオール化合物(x1)としては、例えば、アルキレンジオール、ポリエーテル型ポリオール、ポリエステル型ポリオール、ポリカーボネート型ポリオール等が挙げられる。これらの中でも、ポリエーテル型ポリオールが好ましい。
なお、ポリオール化合物(x1)としては、2官能のジオール、3官能のトリオール、4官能以上のポリオールのいずれであってもよいが、入手の容易性、汎用性、反応性等の観点から、2官能のジオールが好ましく、ポリエーテル型ジオールがより好ましい。ポリエーテル型ジオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが好ましい具体例として挙げられる。
【0063】
ポリエステル型ポリオールはポリオール成分と多塩基酸成分を重縮合させることにより得られる。ポリオール成分しては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオールなどの各種のアルカンジオール(好ましくは、炭素数2〜10程度のアルカンジオール)、各種グリコール類などが挙げられる。
ポリエステル型ポリオールの製造に用いられる多塩基酸成分としては、一般にポリエステルの多塩基酸成分として知られている化合物を使用することができる。具体的には、アジピン酸、セバシン酸などの炭素数4〜20程度の脂肪族二塩基酸、テレフタル酸等の芳香族二塩基酸、トリメリット酸等の芳香族多塩基酸、これらに対応する無水物、その誘導体及びダイマー酸、水添ダイマー酸等が挙げられる。
ポリカーボネート型ポリオールとしては、特に限定されず、例えば、グリコール類とアルキレンカーボネートとの反応物等が挙げられる。
【0064】
ポリイソシアネート化合物(x2)としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート類等が挙げられ、より具体的には、例えば、架橋剤(C)及び架橋剤(D)として例示された各種ポリイソシアネート化合物が使用可能である。
また、(メタ)アクリロイル基を有する化合物(x3)としては、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、上記した水酸基含有モノマーで例示されたものと同様のものが使用可能である。
【0065】
中間層用樹脂組成物用のウレタン(メタ)アクリレート(X)の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜100,000、より好ましくは3,000〜80,000、更に好ましくは5,000〜65,000である。当該重量平均分子量が1,000以上であれば、ウレタン(メタ)アクリレート(X)と後述する重合性単量体(Z)との重合物において、中間層に適度な硬さが付与されるようになる。
【0066】
中間層用樹脂組成物中のウレタン(メタ)アクリレート(X)の配合量は、中間層用樹脂組成物(固形分基準)全量基準で、好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜70質量%、さらに好ましくは25〜60質量%、より更に好ましくは30〜50質量%である。ウレタン(メタ)アクリレート(X)の配合量がこのような範囲にあれば、中間層をワーク表面の凹凸に追従させやすくなる。
【0067】
中間層用樹脂組成物は、上記ウレタン(メタ)アクリレート(X)に加えて、例えば、チオール基含有化合物(Y)及び重合性単量体(Z)からなる群から選択される1種以上をさらに含有することが好ましく、これらの両方を含有することがより好ましい。
【0068】
(チオール基含有化合物(Y))
チオール基含有化合物(Y)としては、分子中に少なくとも1つのチオール基を有する化合物であれば、特に制限されないが、多官能のチオール基含有化合物が好ましく、4官能のチオール基含有化合物がより好ましい。
具体的なチオール基含有化合物(Y)としては、例えば、ノニルメルカプタン、1−ドデカンチオール、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、トリアジンチオール、トリアジンジチオール、トリアジントリチオール、1,2,3−プロパントリチオール、テトラエチレングリコール−ビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグルコレート、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス[(3−メルカプトプロピオニロキシ)−エチル]−イソシアヌレート、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン等が挙げられる。
なお、これらのチオール基含有化合物(Y)は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
チオール基含有化合物(Y)の配合量は、ウレタン(メタ)アクリレート(X)及び後述する重合性単量体(Z)の合計100質量部に対して、好ましくは1.0〜4.9質量部、より好ましくは1.5〜4.8質量部である。
【0069】
(重合性単量体(Z))
中間層用樹脂組成物は、製膜性を向上させる観点から、更に、重合性単量体(Z)を含むことが好ましい。重合性単量体(Z)は、上記のウレタン(メタ)アクリレート(X)以外の重合性化合物であって、エネルギー線の照射により重合可能な化合物である。ただし、重合性単量体(Z)とは、樹脂成分を除くものを意味する。重合性単量体(Z)は、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。
なお、本明細書において、「樹脂成分」とは、構造中に繰り返し構造を有するオリゴマー又は高分子量体を指し、重量平均分子量が1,000以上の化合物をいう。
重合性単量体(Z)としては、例えば、炭素数1〜30のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等の官能基を有する(メタ)アクリレート、脂環式構造を有する(メタ)アクリレート、芳香族構造を有する(メタ)アクリレート、複素環式構造を有する(メタ)アクリレート、その他のビニル化合物等が挙げられる。
【0070】
官能基を有する(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、上記した水酸基含有モノマーで例示されたものと同様のものが使用可能である。
脂環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
芳香族構造を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェニルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
複素環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
重合性単量体(Z)としては、少なくとも脂環式構造を有する(メタ)アクリレートを使用することが好ましく、官能基を有する(メタ)アクリレート及び脂環式構造を有する(メタ)アクリレートの両方を使用することがより好ましく、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレートの両方を使用することがさらに好ましい。
【0071】
中間層用樹脂組成物中の重合性単量体(Z)の配合量は、中間層用樹脂組成物(固形分基準)全量基準で、好ましくは20〜80質量%、より好ましくは30〜80質量%、さらに好ましくは40〜75質量%、より更に好ましくは50〜70質量%である。重合性単量体(Z)の配合量がこのような範囲にあれば、中間層中における重合性単量体(Z)が重合してなる部分の運動性が高いために、中間層が柔軟となる傾向があり、中間層がワーク表面の凹凸に追従しやすくなる。
また、中間層用樹脂組成物中に含まれる重合性単量体(Z)の全量に対する、脂環式構造を有する(メタ)アクリレートの配合量は、好ましくは52〜87質量%、より好ましくは55〜85質量%、更に好ましくは60〜80質量%である。脂環式構造を有する(メタ)アクリレートの配合量がこのような範囲であると、中間層がワーク表面の凹凸に追従しやすくなる。
また、同様の観点から、中間層用樹脂組成物中のウレタン(メタ)アクリレート(X)と重合性単量体(Z)との質量比〔ウレタン(メタ)アクリレート(X)/重合性単量体(Z)〕は、好ましくは20/80〜60/40、より好ましくは30/70〜50/50、更に好ましくは35/65〜45/55である。
【0072】
(光重合開始剤)
中間層用樹脂組成物は、更に光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤を含有することで、中間層用樹脂組成物を紫外線等のエネルギー線により容易に硬化することが可能になる。
光重合開始剤としては、例えば、上記した光重合開始剤(E)で例示したものから適宜選択して使用可能である。光重合開始剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光重合開始剤の配合量は、ウレタン(メタ)アクリレート(X)及び重合性単量体(Z)の合計100質量部に対して、好ましくは0.05〜15質量部、より好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.3〜5質量部である。
【0073】
(その他の添加剤)
中間層用樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、架橋剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填剤、防錆剤、顔料、染料等が挙げられる。これらの添加剤を配合する場合、その他の添加剤の配合量は、ウレタン(メタ)アクリレート(X)及び重合性単量体(Z)の合計100質量部に対して、好ましくは0.01〜6質量部、より好ましくは0.1〜3質量部である。
なお、中間層用樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、ウレタン(メタ)アクリレート(X)に加えて、ウレタン(メタ)アクリレート(X)以外の樹脂成分を含有してもよい。
また、中間層は、ウレタン(メタ)アクリレート(X)の代わりに、オレフィン系樹脂等の他の樹脂成分を含む中間層用樹脂組成物により形成されてもよい。
【0074】
<剥離材>
粘着剤層の上に設けられる剥離材、及び後述する製造方法の工程で使用される剥離材としては、片面剥離処理された剥離シート、両面剥離処理された剥離シート等が用いられ、剥離材用の基材上に剥離剤を塗布したもの等が挙げられる。
剥離材用の基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂フィルム;ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルム等が挙げられる。
剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
また、剥離材の厚みは、特に限定されないが、好ましくは5〜200μm、より好ましくは10〜120μmである。
【0075】
[粘着シートの製造方法]
本発明の粘着シートは、その製造方法が特に制限されず、公知の方法により製造することができる。
中間層は、例えば、基材の一方の面に、中間層用樹脂組成物を直接塗布し塗布膜を形成した後、必要に応じて乾燥し、かつ硬化処理を行って形成することができる。また、中間層は、剥離材の剥離処理面に、中間層用樹脂組成物を塗布し塗布膜を形成した後、必要に応じて乾燥し、半硬化処理を行うことで剥離材上に半硬化層を形成し、この半硬化層を基材に貼り合わせ、半硬化層を完全に硬化して形成してもよい。この際、剥離材は、半硬化層を完全に硬化する前、又は硬化した後に適宜除去すればよい。なお、中間層の硬化は、塗布膜に、エネルギー線を照射して、重合硬化させることが好ましい。エネルギー線は、紫外線であることが好ましい。また、中間層をオレフィン樹脂を用いて形成する場合には、押出し成型等により中間層を形成してもよい。
【0076】
また、粘着剤層は、粘着剤組成物を塗布した後、粘着剤組成物を加熱して架橋し、かつ必要に応じて乾燥して、形成することが好ましい。この際、粘着剤組成物は、中間層又は基材上に直接塗布してもよいし、剥離材の剥離処理面に塗布して粘着剤層を形成し、その後、中間層又は基材の上に粘着剤層を貼り合わせて形成してもよい。粘着剤層の上に配置される剥離材は必要に応じて剥離してもよい。
また、粘着剤組成物の加熱温度及び加熱時間は、ポリマー(A)が架橋剤(C)によって架橋され、且つポリマー(B)が架橋剤(D)によって架橋される温度及び時間であればよく、加熱温度は、通常、80〜110℃、好ましくは90〜100℃である。また、加熱時間は、通常、1〜5分間、好ましくは2〜3分間である。
【0077】
中間層又は粘着剤層を形成する際には、中間層用樹脂組成物もしくは粘着剤組成物に、さらに有機溶媒を配合して、中間層用樹脂組成物もしくは粘着剤組成物の希釈液としてもよい。用いる有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、トルエン、キシレン、n−プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。
なお、これらの有機溶媒は、中間層用樹脂組成物もしくは粘着剤組成物中に含まれる各成分の合成時に使用された有機溶媒をそのまま用いてもよいし、それ以外の1種以上の有機溶媒を加えてもよい。
中間層用樹脂組成物もしくは粘着剤組成物は、公知の塗布方法により塗布することができる。塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
【0078】
[粘着シートの使用方法]
本発明の粘着シートは、各種ワークに貼付し、半導体ウエハ等のワークを加工する際に使用するものであって、凹凸、突起等があるワーク面に貼付して使用することが好ましい。
また、半導体ウエハ表面、特にバンプが形成されたウエハ表面に貼付して、半導体ウエハ表面保護用粘着シートとして使用することがより好ましい。また、粘着シートは、半導体ウエハ表面に貼付して、その後のウエハ裏面研削時に、ウエハ表面に形成された回路を保護するバッググラインドテープとして使用することがさらに好ましい。本発明の粘着シートが中間層を有する場合には、ウエハ表面にバンプ等により高低差があっても埋め込み性が良好であるため、ウエハ表面の保護性能が良好となる。
【0079】
本発明においては粘着剤層がエネルギー線硬化型であり、半導体ウエハ等のワーク表面に貼付された粘着シートは、エネルギー線が照射されてエネルギー線硬化された後、ワーク表面から剥離されるものである。したがって、粘着シートは、粘着力が低下させられてから剥離されるため、その剥離性が良好となる。また、上記のように硬化後の粘着シートは剥離される際に糊残りが発生しにくくなる。
なお、粘着シートは、半導体ウエハ用に使用する場合、バックグラインドシートに限定されず、その他の用途に使用することも可能である。例えば、粘着シートは、ウエハ裏面に貼付し、ウエハをダイシングする際にウエハを保持するダイシングシートとして使用してもよい。この場合のウエハは、貫通電極が形成されているもの等、ウエハ裏面にバンプ等の突起、凹凸等が形成されているものであってもよい。
【実施例】
【0080】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって制限されるものではない。
【0081】
本発明における測定方法、評価方法は以下のとおりである。
[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)]
ゲル浸透クロマトグラフ装置(製品名「HLC−8220」、東ソー株式会社製)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
カラム:「TSK guard column HXL−H」「TSK gel GMHXL(×2)」「TSK gel G2000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/min
【0082】
[引張試験]
引張試験は、JIS K7127:1999に準拠して以下に示す方法で行った。
なお、引張試験で使用した測定サンプルは以下のとおり作製し、その測定サンプルを用いて測定して得た値を、粘着剤層の破断応力、破断伸度、破断エネルギーとした。
(測定サンプル作製)
実施例1と同様の方法で、両面にポリエチレンテレフタレート(PET)系剥離フィルム(リンテック株式会社製、製品名「SP−PET381031」、厚さ38μm)が貼付された粘着剤層(厚み40μm)を調製した。また、同様の手順で、これと同じ剥離フィルムに挟まれた粘着剤層を5枚準備した。次に、一方の剥離フィルムを剥離して露出させた粘着剤層を2枚準備し、粘着剤層の表面同士を対向させて積層させた。この手順を繰り返していくことにより、5層の粘着剤層を積層し、2枚の剥離フィルムの間に挟まれた厚み200μmの粘着剤層を得た。
得られた積層体に対して、UV照射装置(リンテック株式会社製、商品名「RAD−2000m/12」)を使用して、照射速度15mm/秒、照度220mW/cm、光量500mJ/cmの条件で紫外線を照射して粘着剤層を硬化させた。得られた粘着剤層の硬化物を15mm×140mmに切り出して、測定サンプルを得た。
【0083】
(粘着剤層の破断応力、破断伸度、破断エネルギーの測定)
上記測定サンプルの両端20mm部分にフィルム引張り用のラベルを貼付し、測定対象部分が15mm×100mmのサンプルを作製した。該サンプルについて、引張試験機(株式会社島津製作所製、商品名「オートグラフAG−IS 1kN」)を使用して、チャック間100mm、引張速度200mm/分の条件で測定した時の破断応力、破断伸度を測定した。また、破断応力、破断伸度測定時に応力−歪み曲線を作成し、その曲線の下側の面積を算出して破断エネルギーを求めた。
【0084】
[サイクル引張試験]
上記引張試験と同様の方法で、測定サンプルを作製した。サイクル引張試験における引張試験は、その測定サンプルを用いて、引張試験機(株式会社島津製作所製、商品名「オートグラフAG−IS 1kN」)を使用して、引張速度200mm/分、解放速度600mm/分の条件にて行った。
サイクル引張試験は、伸長回数が増える毎に伸度(%)を高くし、かつサンプルが破断するまで、サンプルの伸長(歪み)と解放を繰り返した。その際、各サイクルの伸度は、伸度0%から1回毎に一定の増加%で増加するように設定した。具体的には、伸度の増加%は、3%、5%、8%、10%、20%、30%、50%、100%、(100+100n)%(nは、1以上の整数)のいずれかから、4〜6回のサイクルでサンプルが破断するように選択した。つまり、例えば、伸度の増加%が50%である場合には、50%、100%、150%、200%、250%と伸度を増加させた。
サイクル引張試験では、伸長時毎に応力−歪み曲線を作成して、作成された応力−歪み曲線を同じチャート上に記載し、得られた複数の応力−歪み曲線から、同じ伸度における曲線間の応力差の最大値(DSmax)を検出した。
【0085】
[エネルギー線照射後の粘着力]
実施例及び比較例の粘着シートを25mm幅に均等に切断し、被着体であるシリコンミラーウエハの上に、粘着剤層が被着体側になるように仮置きした。仮置きした粘着シートの上を、重さ1kgのロールを1往復させ、該ロールの自重による負荷をかけることにより、粘着シートを被着体に貼付した。貼付後、23℃、相対湿度50%環境下で20分間保管し、UV照射装置(リンテック株式会社製、商品名「RAD−2000m/12」)を使用して、照度220mW/cm2、光量560mJ/cm、照射速度15mm/秒の条件で、粘着シート側から紫外線を照射した。次いで、23℃、相対湿度50%環境下に5分間放置させた後に、引張試験機(オリエンテック社製、製品名「テンシロン」)を用いて、23℃、相対湿度50%環境下、剥離角度180°、剥離速度300mm/分の条件で、粘着シートを剥離したときの粘着力を測定した。
[エネルギー線照射前の粘着力]
紫外線照射及びその後の5分間放置を省略した点を除いて、上記と同様に測定した。
【0086】
[糊残り評価]
被着体として、バンプ高さ250μm、ピッチ500μm、平面視における直径300μmの球状バンプ付きのウエハ(Waltz社製、8インチウエハ、バンプ仕様Sn/Ag/Cu=96.5/3/0.5質量%、ウエハ表面材質SiO2)を準備した。
実施例及び比較例で作製した粘着シートを、粘着シートの粘着剤層がウエハのバンプ形成面と対向する状態で、ラミネーター(リンテック株式会社製、製品名「RAD−3510F/12」)を用いて、粘着シートをウエハに貼付した。なお、貼付する際、上記ラミネーターのラミネートテーブルとラミネートロールを60℃に設定した。
ラミネート後、UV照射装置(リンテック株式会社製、商品名「RAD−2000m/12」)を使用して、照度220mW/cm2、光量560mJ/cm、照射速度15mm/秒の条件で、粘着シート側から紫外線を照射した。
次いで、50℃、相対湿度50%の環境下で、引張試験機(株式会社島津製作所製、製品名「オートグラフAG−IS 1KN」)を使用して、引張速度120mm/分の条件で、ウエハから粘着シートを剥離した。
剥離後、表出したウエハのバンプ形成面をデジタル顕微鏡(株式会社キーエンス製、製品名「VHX−1000」)を用いて観察し、糊残りの有無を確認した。また、走査型電子顕微鏡(株式会社キーエンス製、製品名「VE−9800」を用いてウエハのバンプ部分を観察し、糊残りの有無を確認した。なお、走査型電子顕微鏡は、デジタル顕微鏡に比べてより微細な糊残りを観察可能である。
糊残りは、以下の評価基準にて評価した。
A:いずれの顕微鏡でも糊残りが観察されなかった。
B:デジタル顕微鏡では糊残りが観察されなかったが、走査型電子顕微鏡では、僅かな糊残りが観察された。
C:いずれの顕微鏡でも糊残りが観察された。
【0087】
次に、以下の手順で中間層付基材、粘着シートを作製した。なお、以下の説明において各質量部は、有機溶媒等の希釈液で希釈されているものについては固形分換算で示したものである。
[中間層付基材の作製]
単官能ウレタンアクリレート40質量部、イソボルニルアクリレート(IBXA)45質量部、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)15質量部、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(昭和電工株式会社、製品名「カレンズMT PE1」、第2級4官能のチオール含有化合物、固形分濃度100質量%)3.5質量部、架橋剤1.8質量部、及び光重合開始剤としての2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(BASF社製、製品名「ダロキュア1173」、固形分濃度100質量%)1.0質量部を配合して、中間層用樹脂組成物を調製した。この中間層用樹脂組成物を、PET系剥離フィルム(リンテック株式会社製、製品名「SP−PET381031」、厚み38μm)上にファウンテンダイ方式で、塗布して塗膜を形成した。
そして、塗膜側から紫外線を照射して半硬化層を形成した。なお、紫外線照射は、紫外線照射装置として、ベルトコンベア式紫外線照射装置(アイグラフィクス株式会社製、製品名「ECS-401GGX」)を用い、紫外線源として高圧水銀ランプ(アイグラフィクス株式会社製、製品名「H04−L41」)を使用し、照射条件として光波長365nmの照度112mW/cm2、光量177mJ/cm2(アイグラフィクス株式会社製、製品名「UVPF−A1」にて測定)の条件下にて行った。
形成した半硬化層の上に、PET系フィルム(東洋紡株式会社製、製品名「コスモシャインA4100」、厚み50μm)からなる基材をラミネートしてPET系フィルム側から更に紫外線照射(上記の紫外線照射装置、紫外線源を用い、照射条件として、照度271mW/cm2、光量1,200mJ/cm2)を行い、完全に硬化させて、基材のPET系フィルム上に厚さ300μmの中間層を形成し、中間層付基材を得た。
【0088】
[実施例1]
n−ブチルアクリレート(BA)97質量部と、アクリル酸(AA)3質量部とを共重合してなるアクリルポリマー(重量平均分子量:600,000)をポリマー(A)として用意した。
また、n−ブチルアクリレート(BA)70質量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)30質量部とを共重合してなるアクリル系共重合体(B’)に、2−イソシアナートエチルメタクリレート(昭和電工株式会社製、製品名「カレンズMOI」)を、2HEA由来の水酸基(100当量)に対して付加率が90当量となるように付加して得たアクリルポリマー(重量平均分子量:50,000)をポリマー(B)として用意した。
ポリマー(A)100質量部と、ポリマー(B)50質量部の混合物に、光重合開始剤(E)としての2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF社製、製品名「Irgacure651」)を14.9質量部、架橋剤(D)としてのトリメチロールプロパンアダクトトリレンジイソシアネート(東ソー株式会社製、製品名「コロネートL」)を4.2質量部、架橋剤(C)としての1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学株式会社製、製品名「TETRAD−C」)を0.19質量部添加し、有機溶媒(メチルエチルケトン)で固形分濃度20質量%に希釈して30分間撹拌を行って、粘着剤組成物の希釈液を調製した。
次いで、調製した粘着剤組成物の希釈液を、PET系剥離フィルム(リンテック株式会社製、製品名「SP−PET381031」、厚み38μm)に塗布し、100℃で2分間加熱させて乾燥させ、剥離フィルム上に厚さ10μmの粘着剤層を形成した。
先に作製した中間層付基材上の剥離フィルムを除去し、表出した中間層を、剥離フィルム上の粘着剤層に貼り合わせた後、幅方向における端部の不要部分を裁断除去して、基材/中間層/粘着剤層/剥離シートからなる粘着シートを得た。得られた粘着シート、及びその粘着シートに使用される粘着剤層を、上記評価方法に従って破断応力、破断伸度、破断エネルギー、粘着力、糊残りを評価した。その結果を表1に示す。
【0089】
実施例1で使用するエネルギー線硬化後の粘着剤層に対して、サイクル引張試験を実施した。サイクル引張試験で得られた複数の応力−歪み曲線を図1に示す。該試験の伸度の増加%は50%であり、伸度(%)は、1回目が50%、2回目が100%、3回目が150%、4回目が200%であり、5回目が250%である。
図1に示すように、サイクル引張試験では、5回目の伸長時に伸度233%でサンプルが破断し、そのときの応力が3.26MPaであった。
また、図1から読み取れる同じ伸度における曲線間の応力差の最大値(DSmax)は1.55MPaであり、DSmaxは、サイクル引張試験における破断時の応力に対して、48%であった。
【0090】
同様に、実施例1で使用するエネルギー線硬化前の粘着剤層に対して、サイクル引張試験を実施し、その試験にて得られる複数の応力−歪み曲線を図2に示す。該試験の伸度の増加%は100%であり、設定伸度(%)は、1回目が100%、2回目が200%、3回目が300%、4回目が400%である。
図2に示すように、エネルギー線硬化前においては、伸度321%でサンプルが破断し、そのときの応力が1.41MPaであった。
また、図2から読み取れる同じ伸度における曲線間の応力差の最大値(DSmax)は0.20MPaであり、DSmaxは、サイクル引張試験における破断時の応力に対して、14%であった。
【0091】
[実施例2]
架橋剤(C)としての1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学株式会社製、製品名「TETRAD−C」)の使用量を0.38質量部に変更した以外は、実施例1と同様の手順にて粘着シートを作製した。
【0092】
[実施例3]
架橋剤(C)としての1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学株式会社製、製品名「TETRAD−C」)の使用量を0.57質量部に変更した以外は、実施例1と同様の手順にて粘着シートを作製した。
【0093】
[比較例1]
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)90質量部と、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)10質量部とを共重合してなるアクリル共重合体に対して、2−イソシアナートエチルメタクリレート(昭和電工株式会社製、製品名「カレンズMOI」)を4HBA由来の水酸基(100当量)に対して付加率が65当量となるように付加してアクリルポリマー(重量平均分子量:1,000,000)を得た。このアクリルポリマー100質量部に対して、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製、製品名「Irgacure184」)を3質量部添加し、架橋剤としてトリメチロールプロパンアダクトトリレンジイソシアネート(東ソー株式会社製、製品名「コロネートL」)を1.1質量部添加し、有機溶媒(メチルエチルケトン)で濃度20質量%に希釈して30分間撹拌を行って粘着剤組成物の希釈液を調製した。次いで、調製した粘着剤組成物の希釈液を、PET系剥離フィルム(リンテック株式会社製、製品名「SP−PET381031」、厚み38μm)に塗布し、100℃で2分間加熱させて乾燥させ、剥離フィルムの上に厚さ10μmの粘着剤層を形成した。
先に作製した中間層付基材上の剥離フィルムを除去し、表出した中間層と、粘着剤層とを貼り合わせた後、幅方向における端部の不要部分を裁断除去して、基材/中間層/粘着剤層/剥離シートからなる粘着シートを得た。得られた粘着シート、及びその粘着シートに使用される粘着剤層を、上記評価方法に従って評価した。その結果を表1に示す。
【0094】
また、比較例1で使用するエネルギー線硬化後の粘着剤層に対して、サイクル引張試験を実施した。サイクル引張試験で得られた複数の応力−歪み曲線を図3に示す。該試験の伸度の増加%は5%であり、設定伸度(%)は、1回目が5%、2回目が10%、3回目が15%、4回目が20%である。
図3に示すように、サイクル引張試験では、4回目の伸長時に伸度20%でサンプルが破断し、そのときの応力が0.94MPaであった。
また、図3に示すように、1〜4回目の伸長時の応力−歪み曲線は、全て重なった。そのため、応力−歪み曲線から読み取れる同じ伸度における曲線間の応力差の最大値(DSmax)は、0MPaであり、サイクル引張試験における破断時の応力に対して0%であった。
【0095】
【表1】
【0096】
実施例1〜3の粘着剤組成物は、ポリマー(A)及びポリマー(B)と、これらそれぞれを架橋する架橋剤(C)及び架橋剤(D)とを含有し、かつポリマー(B)がエネルギー線重合性基(B2)を有していたため、エネルギー線照射後に適切なダブルネットワークが形成された。そのため、図1からも明らかなように粘着剤層が特異なヒステリシス性を示し、かつ破断特性も良好となり、ワーク(すなわち、ウエハのバンプ形成面)から粘着シートを剥離するときのワーク表面への糊残りを有効に防止することができた。また、エネルギー線照射前、照射後のいずれも粘着力の値は適切となった。なお、図2からも明らかなように、実施例の粘着剤組成物は、エネルギー線照射前において、ヒステリシス性を示すものの不十分であり、ダブルネットワークが適切に形成されていなかった。
それに対して、比較例1では、ポリマー及びポリマーを架橋するための架橋剤が1種ずつしか配合されていなかったため、破断特性が良好にならず、糊残りを適切に防止することができなかった。
図1
図2
図3