特許第6875013号(P6875013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875013
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】パズル型運動用マット
(51)【国際特許分類】
   A63B 6/00 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   A63B6/00
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-62980(P2019-62980)
(22)【出願日】2019年3月28日
(65)【公開番号】特開2020-157011(P2020-157011A)
(43)【公開日】2020年10月1日
【審査請求日】2020年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128153
【氏名又は名称】株式会社エバニュー
(74)【代理人】
【識別番号】100129539
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 康志
(72)【発明者】
【氏名】大部 隆志
(72)【発明者】
【氏名】須貝 実
(72)【発明者】
【氏名】岩井 満洋
(72)【発明者】
【氏名】中野 一寿
(72)【発明者】
【氏名】丸山 しおり
【審査官】 槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3143999(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0240350(US,A1)
【文献】 登録実用新案第3146951(JP,U)
【文献】 特開2017−213356(JP,A)
【文献】 特開2004−024599(JP,A)
【文献】 中国実用新案第203874358(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 6/00−6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外形及び外被表面のライン状の模様が同じである一方で、前記外被の内部に設けられる少なくとも2種以上の柔らかさの異なるクッション部材の配置が相互に異なる複数のマット部材を備え、
運動を行う際に、前記複数のマット部材を前記表面のライン状の模様に関連付けて自由に配列可能にしたことを特徴とするパズル型運動用マット。
【請求項2】
前記マット部材の外形は、長さ及び幅に比べて厚みの薄い扁平な四角形状であり、
さらに前記マット部材の内部に、四角形状としたクッション部材を長さ方向及び幅方向に少なくとも2個以上配置していることを特徴とする請求項1に記載のパズル型運動用マット。
【請求項3】
前記マット部材の表面の模様は、該マット部材の対角線上に中心を配置した複数の円弧状のラインであることを特徴とする請求項2に記載のパズル型運動用マット。
【請求項4】
前記マット部材の側面に、隣り合うマット部材の側面同士を、互いに角を揃えた位置のみならず角を揃えない位置でも接続可能な固定手段を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のパズル型運動用マット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッション性を有するパズル型運動用マットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、運動用マットは、例えば子供向けや高齢者向けなど、運動の種類や年齢等を問わず広く使用されている。子供向けの場合、学校体育やスポーツクラブの他、遊戯やゲームなどでも運動用マットが用いられる。また、高齢者向けの場合、病院,デイサービス,スポーツクラブなどで運動用マットが用いられる。
【0003】
運動用マットを使った運動(遊戯等含む)は、種々のメニューが考案されてきた。一方で、運動用マットの構成にはとりわけ変化が見られず、言い換えると、運動ツールとしての運動用マットの運動能力育成機能やリハビリ機能は従来より大きな変化がないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3146951号公報
【特許文献2】特開2005−40428号公報
【特許文献3】実全昭61−16163号公報
【特許文献4】実用新案登録第3218329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、運動能力育成機能やリハビリ機能を向上させたパズル型運動用マットを提供することにある。
好ましい一例として、視覚情報では判定が難しい環境変化に対して素早く対応する能力を養うことのできるパズル型運動用マットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のパズル型運動用マットは、外形及び表面の模様が共通する一方で、内部に設けられる少なくとも2種以上の柔らかさの異なるクッション部材の配置が相互に異なる複数のマット部材を備える。これらマット部材は、運動を行う際に、前記表面の模様に関連付けて自由な配列にすることが可能になっている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に従うパズル型運動用マットの斜視図である。
図2】上記パズル型運動用マットの他の斜視図である。
図3】上記パズル型運動用マットを構成するマット部材の斜視図である。
図4】上記マット部材の内部に設けるクッション部材の配置図である。
図5】上記マット部材の平面図、底面図、右側面図、正面図、縦断面図である。
図6】実際に製作したマット部材の写真である。
図7】運動メニューに合わせて上記マット部材を配列した一例である。
図8】運動メニューに合わせて上記マット部材を配列した他の例である。
図9】運動メニューに合わせて上記マット部材を配列したさらに他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好ましい実施形態に従うパズル型運動用マットについて、添付図面を参照しながら詳しく説明する。但し、以下に説明する実施形態によって本発明の技術的範囲は何ら限定解釈されることはない。
【0009】
本発明の好ましい実施形態に従うパズル型運動用マット1は、図1及び図2に示すように、例えば床の上に複数のマット部材2を配列することによって全体として一つの運動用マット1を形成する。図1及び図2は、いずれも16枚のマット部材2の配列の一例である。図1は、2列×8行で全体として長方形にした配列であり、例えばマット上を歩いたり、這ったり、前転するなど、一例として移動運動を行う際に多く選択される配列である。図2は、4列×4行で全体として正方形にした配列であり、例えば簡単な相撲やレスリングなど、一例として競技運動を行う際に多く選択される配列である。マット部材2の上面には、例えばライン21などの模様が付されており、配列時に隣り合うマット部材2同士の模様が相互に関連するようになっている。なお、マット部材2の数16枚は一例であり増減可能である。
【0010】
各マット部材2は、図3(a)に示すように、平面の長さ及び幅に比して厚みの薄い扁平な四角形状(立方形状)である。平面は、上から見ると正方形になっている(図4参照)。マット部材2の外郭は、外被22によって形成されている。外被22は、軟質なシート状の素材を用いて、マット部材2の外形に対応した袋状に形成されている。外被22の製法は、例えば縫製や成型などである。外被22の好ましい素材は、ターポリンである。勿論、素材がターポリンに限定されることはなく、布や樹脂シートなどで軟質な他の素材を採用してもよい。但し、肉眼で内部が透けて見えないように素材選びや着色等の処理を施す。
【0011】
外被22の上面に付すライン21は、好ましい一例として、マット部材2の対角線上に中心を配置した2本の円弧状である。好ましい一例として、2本のライン21の半径をそれぞれ上面の辺の長さの半分に設定し、内側のライン21の中心を角に位置させ、外側のライン21の中心を上面の中央に位置させている。他の例として、それぞれ上面の角を中心とした同心円上にあって径が互いに異なる2本の円弧状としてもよい。この場合も対角線上に中心が位置している。ライン21は、例えば塗料による着色や帯状の部材を取り付けるなどによって外被22の上面に付すことができる。ライン21は、例えば移動運動時の目印、競技運動時の境界線などとして用いられる。さらにライン21は、マット部材2を配列する際に、隣接するマット部材2のライン21と関連付けてどの位置にどの向きで置くか決めるのに用いることができる。関連付けとは、ライン21同士をつなげて移動運動時の進路を形成したり競技運動時のエリアを形成したりなど、少なくとも運動に寄与することを意味する。2本の円弧状のライン21は模様の好ましい一例であり、他の形状であってもよい。
【0012】
マット部材2の側面には、隣り合うマット部材2の側面同士を、互いに着脱可能に接続する固定手段23を設けている。固定手段23は、例えば隣接するマット部材2を跨いで踏んでも障害とならないように、側面の底部側(少なくとも側面高さの半分以下)の部分に配置するのが好ましい。固定手段23は、例えば面ファスナーである。面ファスナーは、一方をフック状とし他方をループ状としたもの、或いは双方にフックとループの両方を混在させているものがある。固定手段23は、好ましい一例として、双方にフックとループの両方を混在させているものを用いる。これにより、マット部材2同士を、自由な位置で接続できるようにする。すなわち、図1図2に示したように角を揃えて整列した接続のみならず、交互に位置をずらして角を揃えない位置でも接続可能であり、より配列の自由度が高まる。なお、同様の機能を備えていればフックとループによる面ファスナーでなくともよい。
【0013】
マット部材2の底面には、好ましい一例として、滑り防止部材24(図5参照)を設ける。滑り防止部材24は、例えばポリエステル基布にEVA樹脂を被覆させたシート状の部材などである。滑り防止部材24は、底面の全部又は一部に取り付けて例えば縫い合わせや接着等により固定する。
【0014】
外被22の内部には、図3(b)に示すように、複数のクッション部材3が配置されている。すなわち、外被22は、並べたクッション部材3の外周を覆うことによって、クッション性を有するマット部材2を形成している。クッション部材3の外形は、好ましい一例として、マット部材2を長さ方向及び幅方向に均等に4分割した四角形状(立方形状)である。外被22は、例えば面ファスナーなどの固定手段を用いて組み立て及び展開可能なようにしてもよい。この場合、クッション部材3の配置替えや交換が容易になる。
【0015】
複数のクッション部材3は、軟質な弾性材料で形成されており、すべて同じ柔らかさではなく異なる柔らかさのものを含んでいる。好ましい一例として、「柔らかめ」と「固め」の2種類の柔らかさのものを用いる。勿論、柔らかさの程度は、2段階に限らない。3段階以上であってもよい。例えばクッション部材3の素材として軟質発泡材料である発泡体を用いた場合、圧縮硬度(例えばJISK6400)が異なる発泡体を用いることによって柔らかさを調整する。圧縮硬度は、例えば40%圧縮硬度が50〜500[N]の範囲内で調整する。一例として、「柔らかめ」の40%圧縮硬度を180[N]、「固め」の40%圧縮硬度を400[N]とする。マット部材2は扁平であるため圧縮硬度が低すぎると踏んだ時に着床してしまう場合があるので40%圧縮硬度を100[N]以上に設定するのが好ましい。発泡体の好ましい一例は、発泡ポリウレタンである。なお、すべてのクッション部材3が同じ種類の発泡体でなくてもよい。
【0016】
複数のマット部材2は、内部のクッション部材3の配置を夫々異なる配置とすることができる。図4には、一例として、「柔らかめ」と「固め」の2種類の配置が相互に異なる4つのパターン(Aパターン〜Dパターン)を示している。Aパターンは、紙面縦方向に「柔らかめ」と「固め」を並べた配置であって、且つ、左が「柔らかめ」右が「固め」である。Bパターンは、紙面横方向に「柔らかめ」と「固め」を並べた配置であって、且つ、上が「柔らかめ」下が「固め」である。Cパターンは、紙面縦方向に「柔らかめ」と「固め」を並べた配置であって、且つ、左が「固め」右が「柔らかめ」である。Dパターンは、紙面横方向に「柔らかめ」と「固め」を並べた配置であって、且つ、上が「固め」下が「柔らかめ」である。図1及び図2のように16枚のマット部材2を用いる場合、例えば各パターン4枚ずつとする。
【0017】
但し、図4に示すように、4つのパターン(Aパターン〜Dパターン)はいずれも、マット部材2の向き(すなわち上面のライン21の向き)を同じ向きにした状態で、内部のクッション部材3の配列を夫々変えている。既述のように、外被22からは運動時に内部のクッション部材3を肉眼で見えないように構成している。従って、使用者が運動時に見るのは同じ外形で同じ模様のマット部材2であり、どのパターンであるか、どこがどの柔らかさなのかを、視覚情報で判別することが難しいようになっている。
【0018】
図5は、マット部材2の平面図、底面図、右側面図(左側面図も同様)、正面図(背面図も同様)、並びに縦断面図を示している。図6は、実際に製作したマット部材2の写真の一例である。マット部材2の寸法は、一例として、長さ40cm、幅40cm、高さ5cmである。高さ5cmに設定すると、車いすの足を載せるステップ台の高さの規格よりも低くすることができるので、車いすから安全にマットに移ることが可能となる。クッション部材3の寸法は、マット部材2の外形とクッション部材3の数に応じて設定する。ライン21の幅は、一例として、3cmとする。勿論、クッション部材3の数は、4個に限定されず、さらに長さ方向と幅方向に分割した四角形状にも限定されない。すなわち、長方形、三角形、ひし形、丸型などに変えることを除外するものではない。さらに互いに同じ形状でなくともよい。
【0019】
上述のように構成したパズル型運動用マット1は、使用時に、自由にマット部材2を配列することができる。図7(a)及び図7(b)は、マット部材2を2列×8行の長方形に配列したときのバリエーションの一例である。図7(a)は、例えばライン21上を歩いたりなどする運動に用い、図7(b)は、例えばライン21間の領域を歩いたり、這ったり、回転したりなどする運動に用いる。一方、図8(a)及び図8(b)は、マット部材2を4列×4行の正方形に配列したときのバリエーションの一例である。図8(a)は、例えばライン21を迷路に用い、図8(b)は、例えばライン21を土俵に用いる。勿論、2列×8行と4列×4行以外の並びであってもよい。
【0020】
さらに、図9(a)及び図9(b)は、マット部材2の角を揃えないで配列したときのバリエーションの一例である。図9(a)は、2つのひし形状を形成した配列であり、図9(b)は、ループ状にした配列である。図9(a)及び図9(b)は、例えばライン21間の領域を歩いたり、這ったり、回転したりなどする運動に用いる。なお、図7図9には、配置を理解するために参考として「柔」と「固」を記載しているが、勿論、実際にはこの表示はない。
【0021】
パズル型運動用マット1は、外被22からは柔らかさの程度が把握できないので、使用者は、体性感覚情報を活用して足元の柔らかさや回転時に背中を支える柔らかさの変化に対応しなければならない。すなわち、本実施形態に従うパズル型運動用マット1を使用すれば、視覚情報では判定が難しい環境の変化に対して素早く対応する能力が養われる。運動能力として、ポジション能力,スイッチ能力,リンク能力,リアクション能力,コントロール能力,リズム能力,バランス能力の7つのコーディネーション能力があるが、パズル型運動用マット1は、特に固有受容覚や前庭覚といったバランス・ポジション能力の育成、及びリハビリに貢献することが可能である。
【0022】
以上の説明のとおり、本実施形態によれば、運動能力育成機能やリハビリ機能を向上させたパズル型運動用マット1を提供することが可能である。例えば既述の特許文献1(実用新案登録第3146951号公報)のような構成では、複数回使えばどこがどの柔らかさなのかを覚えてしまい、継続使用する場合に次第に、視覚情報では判定が難しい環境の変化に対して素早く対応する能力を養う効果が薄れてしまう懸念がある。さらに全体形状や配列が固定されているので運動がマンネリ化する懸念がある。これに対し、本実施形態に従うパズル型運動用マット1は、外見からは柔らかさを識別するのが難しく、且つ、夫々柔らかさのパターンが異なる複数のマット部材2を用い、自由に配列することが可能な構成であるので、継続した運動効果を維持することができる。さらに、自由な配列を可能にすることで、使用者自身が新たな運動や配列を創造することを促進できる。高齢者には認知機能向上に役立つことが期待できる。
【0023】
変形例として、クッション部材3を発泡体などの弾性材料で形成するのに代え、例えばシート状の素材で気密構造(気密な空気袋)に形成したクッション部材3の内部に気体を充填した構成としてもよい。この場合、気体の内圧(充填圧)を調整することによって柔らかさの段階を調整する。
【0024】
また、平面が正方形のマット部材2を、好ましい一例として説明したが、変形例として、マット部材2の平面形状を長方形、三角形、ひし形、丸型などに変えてもよい。
【0025】
以上、本発明を具体的な実施形態に則して詳細に説明したが、形式や細部についての種々の置換、変形、変更等が、特許請求の範囲の記載により規定されるような本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われることが可能であることは、当該技術分野における通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0026】
1 パズル型運動用マット
2 マット部材
21 ライン(模様)
22 外被
23 固定手段
3 クッション部材

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9