特許第6875016号(P6875016)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875016
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】鋤簾
(51)【国際特許分類】
   E03F 9/00 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   E03F9/00
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-98646(P2019-98646)
(22)【出願日】2019年5月27日
(65)【公開番号】特開2020-193462(P2020-193462A)
(43)【公開日】2020年12月3日
【審査請求日】2020年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】591239003
【氏名又は名称】株式会社サンカ
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(74)【代理人】
【識別番号】100201237
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 将太郎
(72)【発明者】
【氏名】神子島 岩男
【審査官】 彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−085590(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3192404(JP,U)
【文献】 特開2016−211258(JP,A)
【文献】 特開2003−213784(JP,A)
【文献】 実開平03−018293(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3152182(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0218044(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
握柄体の先端部に、底面部と左右両側面部若しくは左右いずれか一方の側面部と後面部とを備え、少なくとも上部及び前面部が開口する掬い部が設けられて成り、この掬い部で側溝内に溜まった泥や砂などの堆積物を掬い取る鋤簾であって、前記握柄体の先端部は、少なくとも前記掬い部の前記後面部に沿設される取り付け部が管状に形成され、この管状の取り付け部が前記掬い部の前記後面部に当接状態で固定されており、前記掬い部の後面部には、前記取り付け部の左右両方向に当接状態若しくは近接状態に配設される挟込板部が後方に向けて突設されていることを特徴とする鋤簾。
【請求項2】
前記取り付け部及び前記掬い部は、金属製であることを特徴とする請求項1記載の鋤簾。
【請求項3】
前記挟込板部は、夫々、平板状に形成され、水平状態で前記取り付け部の外径寸法と同等の間隔をおいて前記掬い部の後面部の外側面に左右方向に並設され、前記取り付け部は、前記後面部に並設される前記挟込板部の間に配設されて前記後面部に止着されていることを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の鋤簾。
【請求項4】
前記挟込板部は、前記後面部の上縁部にこの後面部と一体に後方水平方向に折り曲げ形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋤簾。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側溝内に溜まった泥や砂などの堆積物を掬い取る際に用いられる鋤簾に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の鋤簾(掬い具)の中には握柄体にパイプ材を採用しているもの(以下、従来品と称す。)も多い。
【0003】
このような従来品は、掬い部が取り付けられる握柄体の先端部(取り付け部)がパイプ状のままでは掬い部との接合面が平坦でないため、位置決めが容易でなく取り付け作業が困難になることから、この取り付け部を押し潰して平板状にして、容易に位置決め、止着固定することができるように構成されているものが多い。
【0004】
しかしながら、このように握柄体の一部(取り付け部)をパイプ状から平板状に変形させることで、この握柄体の強度(耐久性)がパイプ状の状態に比べて低下して折れ曲り易くなってしまう問題が生じてしまう。
【0005】
そこで、従来、この取り付け部の折れ曲がりを防止するため、例えば、特許文献1に示すような、握柄体と掬い部との間に補強部材を付設(架設)したものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−322625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような折れ曲がり防止用の補強部材を付設した場合、掬い作業の際や掬った泥や砂などを掬い部から排出する作業の際にこの補強部材が邪魔になってスムーズに作業を行うことができない場合がある。
【0008】
本発明は、このような現状に鑑みなされたものであり、握柄体の取り付け部を管状(パイプ状)にして強度を保持しつつ、この管状の取り付け部を掬い部に容易に位置決めして取り付けことができる画期的な鋤簾を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0010】
握柄体1の先端部に、底面部3と左右両側面部4若しくは左右いずれか一方の側面部4と後面部5とを備え、少なくとも上部及び前面部が開口する掬い部2が設けられて成り、この掬い部2で側溝内に溜まった泥や砂などの堆積物を掬い取る鋤簾であって、前記握柄体1の先端部は、少なくとも前記掬い部2の前記後面部5に沿設される取り付け部1aが管状に形成され、この管状の取り付け部1aが前記掬い部2の前記後面部5に当接状態で固定されており、前記掬い部2の後面部5には、前記取り付け部1aの左右両方向に当接状態若しくは近接状態に配設される挟込板部6が後方に向けて突設されていることを特徴とする鋤簾に係るものである。
【0011】
また、前記取り付け部1a及び前記掬い部2は、金属製であることを特徴とする請求項1記載の鋤簾に係るものである。
【0012】
また、前記挟込板部6は、夫々、平板状に形成され、水平状態で前記取り付け部1aの外径寸法と同等の間隔をおいて前記掬い部2の後面部5の外側面に左右方向に並設され、前記取り付け部1aは、前記後面部5に並設される前記挟込板部6の間に配設されて前記後面部5に止着されていることを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の鋤簾に係るものである。
【0013】
また、前記挟込板部6は、前記後面部5の上縁部にこの後面部5と一体に後方水平方向に折り曲げ形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋤簾に係るものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上述のように構成したから、握柄体の強度が低下せず(保持され)、耐久性に優れた鋤簾となる。
【0015】
さらに、製造時においても、掬い部に握柄体の取り付け部を取り付ける作業の際、挟込板部により掬い部に対して取り付け部を容易に位置決めすることができ、取り付け作業が容易となる生産性に優れた鋤簾となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施例の要部を示す前面側からの説明斜視図である。
図2】本実施例の要部を示す後面側からの説明斜視図である。
図3】本実施例の要部を示す説明側断面図である。
図4】本実施例の要部を示す説明平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0018】
本発明は、握柄体1の先端部の取り付け部1aが平板状に潰されておらず管状のままだから、強度が低下せず、折れ曲がりが生じるおそれがない。
【0019】
ゆえに、従来品のような作業時に邪魔になり得る補強部材を設けなくても十分な強度を保持し、耐久性に優れた使い勝手の良い鋤簾となる。
【0020】
また、本発明は、掬い部2の後面部5に設けられた挟込板部6により握柄体1の取り付け部1aが位置決めされるから、製造時の握柄体1の取り付け部1aを掬い部2に取り付ける作業をスムーズに行うことができる。
【0021】
しかも、本発明は、挟込板部6を取り付け部1aに当接状態に配設した場合、この挟込板部6が握柄体1(取り付け部1a)を左右方向から挟み込むことで、この握柄体1の掬い部2に対する左右方向の位置ずれが抑制され、握柄体1(取り付け部1a)と掬い部2とが、より強固に固定されることとなり、掬い部2が握柄体1から外れるといった不具合の発生が抑制される。
【0022】
このように、本発明は、耐久性に優れ、壊れにくいから安心して使用することができ、また、作業に邪魔な補強部材がないから掬い作業や掬った泥や砂などを掬い部から排出する作業をスムーズに行うことができ、しかも、取り付け時の掬い部2に対する握柄体1(取り付け部1a)の位置決めが容易で簡易に作製可能な画期的な鋤簾となる。
【実施例】
【0023】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0024】
本実施例は、握柄体1の先端部に、底面部3と左右両側面部4と後面部5とを備え、上部及び前面部が開口する掬い部2が設けられて成り、この掬い部2で例えば側溝内に溜まった泥や砂などの堆積物を掬い取る鋤簾である。
【0025】
以下、本実施例に係る構成各部について詳述する。
【0026】
握柄体1は、一本の金属製(本実施例ではアルミニウム製)のパイプ部材からなる構成とされ、先端部の掬い部2が取り付けられる取り付け部1aの掬い部2と当接する位置には、上下方向にリベットやネジ(ボルト)などの固定部材7を挿通配設する複数の通孔(図示省略)が設けられている。
【0027】
具体的には、本実施例の握柄体1は、図示するように取り付け部1aとなる部分が握柄体1の他の部分に比べてパイプ材が潰れない程度の角度(約10°〜15°)で折り曲げられており、この握柄体1全体に対して傾斜している取り付け部1aを掬い部2の後面部5の外側面に沿設状態に固定することで、掬い部2が水平状態にあるときに握柄体1が前傾状態になる、言い換えると、握柄体1を上下方向に真っ直ぐに持った際に掬い部2の先端部側が上方に上がり傾斜した状態になって、掬い取った泥や砂などが掬い部2からこぼれ落ちにくくなるように構成されている。
【0028】
なお、握柄体1は、上述の構成に限定されるものではなく、例えば、取り付け部1aのみを金属製のパイプ部材からなる構成とし、他の部分を別部材、例えば、木製や合成樹脂製の部材で形成し、これを取り付け部1aに差込み連結してなる構成としても良い。
【0029】
また、掬い部2は、底面部3と左右両側面部4と後面部5とを備え、上部及び前面部が開口する平面視ほぼ方形状の箱状体に形成され、前述した握柄体1の取り付け部1aにリベットやネジなどの固定部材7(本実施例においてはリベット7を採用)を用いて止着固定されている。なお、止着固定方法は前記の固定部材7を用いた方法に限らず、例えば溶接により止着固定しても良い。
【0030】
具体的には、本実施例の掬い部2は、握柄体1と同様、アルミニウム製であり、詳しくは、一枚のアルミニウム板材により折曲形成されている。
【0031】
また、掬い部2は、底面部3、左右両側面部4及び後面部5の夫々に泥や砂などと一緒に掬い取った水を排出する複数の水抜き孔8が設けられている。
【0032】
具体的には、本実施例の掬い部2は、図示するように、底面部3の後面側、底面部3と後面部5との折り曲げ境界部、左右両側面部4及び後面部5の上部側に夫々適宜な数の水抜き孔8が設けられている。
【0033】
また、本実施例の掬い部2は、後面部5に握柄体1の取り付け部1aの左右両方向に当接状態に配設される挟込板部6が後方に向けて突設されており、本実施例は、握柄体1の取り付け部1aをこの掬い部2に取り付ける際、この挟込板部6により取り付け部1aを掬い部2に対して容易に位置決めすることができ、スムーズに取り付け作業を行うことができるように構成されている。
【0034】
具体的には、この挟込板部6は、夫々、平板状に形成され、水平状態で取り付け部1aの外径寸法と同等の間隔をおいて掬い部2の後面部5の外側面に左右方向に並設されている。
【0035】
より具体的には、本実施例の挟込板部6は、図示するように、後面部5の上縁部にこの後面部5と一体に後方水平方向に折り曲げ形成されており、この後面部5の上縁部に一体に設けた挟込板部6が補強桟となって後面部5が補強され、掬い部2が変形しにくい構成とされている。
【0036】
また、本実施例の掬い部2は、図示するように、掬い部2の左右両側の底縁部9、言い換えると底面部3と左右両側面部4との折り曲げ境界部9が夫々R形状に形成されており、側溝内を移動させる際に、掬い部2が側溝内面に引っ掛かりにくく、この側溝内面に沿ってスムーズに移動させることができるように構成されている。
【0037】
またさらに、本実施例の掬い部2は、後面部5に補強板10が設けられている。
【0038】
具体的には、補強板10は、側面部4の後面部に一体的に連設形成され、後面部5側に折曲され、後面部5の外側面に重合配設されている。
【0039】
すなわち、本実施例の掬い部2は、握柄体1が止着固定され、使用時に最も負荷がかかり変形する可能性が高い後面部5が、前述した挟込板部6と共にこの補強板10により補強されて、変形しにくい構成とされている。
【0040】
また、本実施例は、前述した補強板10が、掬い部2を保形するための連結代とされており、この左右両側面部4と一体の補強板10を後面部5に重ね合わせ、リベットやネジなどの固定部材で固定することで、前述のとおり後面部5がこの補強板10により補強されると共に、左右両側面部4が後面部5に固定され、底面部3、左右両側面部4及び後面部5が一体化され展開不能になって、掬い部2が保形されている。
【0041】
さらに、本実施例の掬い部2は、図示するように、後面部5の側縁に係止爪11が設けられ、左右両側面部4とこれに連設形成される補強板10との境界部となる折り曲げ部に前記係止爪11が差し込まれる爪差込み孔12が設けられ、補強板10を後面部5側に折り曲げこの後面部5に重合配設することにより係止爪11が爪差込み孔12に嵌り込み、これにより、左右両側面部4と後面部5との上下方向の位置ずれが防止され、水分を含んだ重い泥などを掬い取り負荷がかかった場合でも、掬い部2の面部同士の境界部での位置ずれが生じたり掬い部2が変形することが防止されるように構成されている。
【0042】
以上のように構成される本実施例の作用効果について以下に説明する。
【0043】
本実施例は、握柄体1の掬い部2に止着固定される取り付け部1aがパイプ形状を保持したままの状態で掬い部2に取り付けられているから、握柄体1の強度が低下することがなく、使用中に握柄体1が折れ曲がってしまう不具合が生じることがない耐久性に優れた鋤簾となる。
【0044】
また、本実施例は、掬い部2に、握柄体1の取り付け部1aをこの掬い部2の後面部5の所定の取り付け位置に位置決めする挟込板部6が設けられているから、取り付け部1aがパイプ状のままでも容易に位置決めでき、止着固定作業が容易になる生産性に優れた鋤簾となる。
【0045】
しかも、本実施例は、この挟込板部6が取り付け部1aの左右方向から当接しているから、この挟込板部6の押さえ付け効果により握柄体1(取り付け部1a)の掬い部2(後面部5)に対する止着固定状態が一層強化される。
【0046】
さらに、本実施例は、この挟込板部6が掬い部2の後面部5と一体に形成され、この後面部5の上縁部から折り曲げ形成されているから、この挟込板部6が後面部5の補強桟となり、後面部5の耐久性が向上する。
【0047】
しかも、本実施例の掬い部2は、後面部5にさらに左右両側面部4と一体の補強板10が重合配設されるとともに、後面部5の係止爪11が左右両側面部4の爪差込み孔12に差込み係止しているから、左右両側面部4と後面部5との間に上下方向の位置ずれが生じにくく、前述した挟込板部6と相俟って優れた耐久性を備えるものとなり、変形しにくい実用性に優れた鋤簾となる。
【0048】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0049】
1 握柄体
1a 取り付け部
2 掬い部
3 底面部
4 側面部
5 後面部
6 挟込板部
図1
図2
図3
図4