(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、本発明に係るコンパクト容器の第1実施形態を、
図1および
図2を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態のコンパクト容器1は、被収容体46が収容される収容部12を備える容器本体11と、収容部12を開放可能に閉塞する蓋体31と、容器本体11および蓋体31それぞれの外周縁部の一部同士を連結したヒンジ部30と、容器本体11と蓋体31との間に配置された中敷シート51と、を備えている。
容器本体11は、円板状の底壁部11aと、底壁部11aの外縁部から上方に向かって延びる周壁部11bと、を有する有底筒状に形成されている。この容器本体11の内側が、被収容体46が収容される収容部12となっている。蓋体31は、円板状の天壁部31aと、天壁部31aの外縁部から下方に向かって延びる周壁部31bと、を有する有頂筒状に形成されている。
【0012】
容器本体11および蓋体31それぞれの中心軸線は、共通軸と同軸に配置されている。以下、この共通軸に沿う容器本体11に対する蓋体31側を上方という。同様に、この共通軸に沿う蓋体31に対する容器本体11の底壁部11a側を下方という。この共通軸に沿う上下方向から見て、共通軸に直交する方向を径方向といい、共通軸周りに周回する方向を周方向という。
また、ヒンジ部30の回転中心(以下、ヒンジ軸という)Cは、ヒンジ部30が蓋体31を容器本体11に対して上下方向に回動させるように、上下方向に直交する水平方向に沿って延びている。以下、ヒンジ軸Cに沿う方向をヒンジ軸方向といい、上面視において、ヒンジ軸方向と直交する方向を前後方向という。また、前後方向に沿うコンパクト容器1のヒンジ部30側を後方、その反対側を前方という。
【0013】
容器本体11の底壁部11aには、外部からピン等を差し込むための貫通孔13が形成されている。貫通孔13の下端開口部から挿入したピン等により、収容部12内の被収容体46を上方に向けて押し出すことで、被収容体46が収容部12内から容易に取り出される。
本実施形態では、被収容体46は、例えば粉状の化粧品等の内容物が充填された中皿となっている。被収容体46は、偏平な有底筒状に形成されている。
【0014】
容器本体11の周壁部11bにおける後端部の外周面には、後方に向けて開口する後方切欠き15が上下方向の全域にわたって形成されている。後方切欠き15を画成する内面のうち、ヒンジ軸方向で互いに対向する一対の内側面における前端部に、上方に向けて開口する不図示の収納溝が各別に形成されている。これらの内側面には、ヒンジ軸Cと同軸に配置されるとともに、容器本体11をヒンジ軸方向に貫通する横孔15bが各別に開口している。
【0015】
後方切欠き15を画成する内面のうち、後方を向く底面には、後方に向けて突出する係止突部17が形成されている。係止突部17は、ヒンジ軸Cよりも上方に位置している。
なお、後方切欠き15の底面に形成される係止突部17の数に制限はなく、後方切欠き15に複数の係止突部17が形成されてもよい。
【0016】
容器本体11の周壁部11bにおける前端部の外周面には、前方および上方に向けて開口する前方切欠き19が形成されている。前方切欠き19を画成する内面のうち、前方を向く外面には、前方に向けて突出する前方突部20が形成されている。
容器本体11は、例えば合成樹脂材料等で一体に形成されている。
【0017】
蓋体31の周壁部31bの後端部には、下方に向けて突出するヒンジ脚部33が形成されている。ヒンジ脚部33の下端部には、ヒンジ軸方向に貫通する横孔34が形成されている。この横孔34、および容器本体11の横孔15bに連結ピン41が一体に挿入されることで、蓋体31を容器本体11に対してヒンジ軸C周りに回動自在とするヒンジ部30が構成されている。
周壁部31bの前端部には、下方に向けて突出する張出部35が設けられている。張出部35の前面は、周壁部31bの外周面よりも後方に凹んでいる。張出部35の後面には、後方に向けて突出する突部36が設けられている。
蓋体31が容器本体11の収容部12を閉塞した状態では、蓋体31の突部36が、容器本体11の前方突部20に前方突部20の下方から係止される。
蓋体31は、例えば合成樹脂材料等により一体に形成されている。
【0018】
図1および
図2に示すように、中敷シート51は、容器本体11の収容部12を覆う本体部52と、容器本体11の後端部の外面と蓋体31の後端部の内面との間に配設された固定部53と、本体部52の後端部と固定部53とを連結した連結部54と、を備えている。
本体部52は、円板状の底板52aと、底板52aの外縁部から上方に向かって延びる筒板52bと、を有する有底筒状に形成されている。筒板52bの上端部には、径方向外方に向けて突出するフランジ52cが形成されている。
フランジ52cは、筒板52bの全周にわたって形成されている。フランジ52cの前端部に、上面視でヒンジ軸方向に長い長方形状を呈する摘み部52dが形成されている。
【0019】
固定部53は、本体部52の後端部から下方に向けて延びる幅広部57と、幅広部57の下端部から下方に向けて延びる幅狭部58と、を備えている。幅広部57は、後方から見てヒンジ軸方向に長い長方形状を呈する。幅狭部58は、後方から見て幅広部57よりヒンジ軸方向の長さが短い矩形状に形成されている。幅広部57および幅狭部58それぞれのヒンジ軸方向の中央部は互いに一致している。
【0020】
幅広部57の中央部には、後方から見てヒンジ軸方向に長い長方形状を呈する窪み部60が形成されている。窪み部60のうち、後方を向く外面が前方に向けて窪み、かつ前方を向く内面が前方に向けて突出している。
幅狭部58の中央部には、後方から見て下方に向けて開口するC字状を呈する窓孔61が形成されている。幅狭部58における窓孔61で囲われた部分が舌片62である。舌片62は、上方に向かう従い漸次、前方に向けて延びている。舌片62の上端部は、幅狭部58のなかで最も前方に位置している。
固定部53の内面のうち、窪み部60の下端部と舌片62の上端部との間に位置する部分が、係止突部17に対して上下方向に係止可能な被係止部63を構成する。
幅狭部58の下端部には、幅狭部58よりも後方に向けて突出した操作部65が形成されている。操作部65は、被係止部63よりも下方に配置される。操作部65は、表裏面が前後方向を向く板状に形成され、後方から見てヒンジ軸方向に長い長方形状を呈する。
【0021】
連結部54には、貫通孔66が形成されている。貫通孔66は、ヒンジ軸方向に延びる長孔状に形成されている。貫通孔66の内周面のうち、ヒンジ軸方向に延びる一対の長内面同士の間には、短手方向の隙間が設けられている。
連結部54に貫通孔66が形成されていることで、本体部52を、固定部53に対して連結部54回りに上下方向に回動する際に、連結部54のなかで折り曲げられる位置が安定する。
【0022】
このように構成された中敷シート51は、本体部52の底板52aが被収容体46の上方に配置されるとともに、フランジ52cが容器本体11の周壁部11bの上方に配置される。フランジ52cと周壁部11bとの間には、上下方向に隙間が設けられている。なお、フランジ52cと周壁部11bとは、上下方向に接触していてもよい。
本体部52の底板52a上には、例えば化粧料等の内容物を被塗布部に塗布するための図示しないパフやブラシ等の塗布具が収容される。
【0023】
固定部53の幅広部57のヒンジ軸方向の端部が、容器本体11の後方切欠き15に形成された前記収納溝に挿入される。
固定部53の幅狭部58が、後方切欠き15の底面と、ヒンジ脚部33のうち、前方を向く内面と、の間に配設される。係止突部17の上方に窪み部60が配置されるとともに、係止突部17の下方に舌片62が配置される。すなわち、窪み部60は、係止突部17に係止突部17の上方から係合する。舌片62は、係止突部17に係止突部17の下方から係合する。舌片62は、容器本体11に対して固定部53が上方に抜けるのを防止する。
操作部65は、容器本体11の後端部の外面から後方に離れている。このため、操作部65を前方に向けて押込むことができる。なお図示の例では、操作部65は、後方切欠き15の底面から後方に離れている。
【0024】
次に、以上のように構成されたコンパクト容器1の動作について説明する。
蓋体31の前端部を引き上げ、蓋体31を、ヒンジ軸C回りに上方に向けて回動し、蓋体31の突部36を、容器本体11の前方突部20を上方に乗り越えさせ、突部36と前方突部20との係合を解除しつつ、
図1に二点鎖線で示されるように、蓋体31における周壁部31bの後端部の外周面が、前方を向く姿勢になるまで回動させ、収容部12を開放させる。この際、蓋体31のヒンジ脚部33の外面が、操作部65を前方に向けて押込む。これにより、中敷シート51が、固定部53の被係止部63回りに上方に向けて回動し、中敷シート51における本体部52の前端部が、容器本体11に対して上昇することで、中敷シート51の摘み部52dと、容器本体11の周壁部11bの上端開口縁と、の間の上下方向の隙間が拡げられる。
その後、中敷シート51の本体部52上から塗布具を取出すとともに、中敷シート51の摘み部52dを手で摘み、本体部52を上方に向けて連結部54回りに回動する。そして、被収容体46に充填された内容物を塗布具に付着させ、内容物を被塗布部に塗布する。
【0025】
以上説明したように、本実施形態のコンパクト容器1によれば、蓋体31をヒンジ軸C回りに上方に向けて回動したときに、蓋体31の後端部の外面が操作部65を前方に向けて押込むので、この蓋体31の回動時に、中敷シート51が、固定部53の被係止部63回りに上方に向けて回動させられることとなり、中敷シート51における本体部52の前端部を、容器本体11に対して上昇させることが可能になる。
したがって、蓋体31を開いた状態で、本体部52の前端部と容器本体11の前端部との間の上下方向の隙間を拡げることが可能になる。本体部52の前端部に設けられた摘み部52dを摘まむ等することで、本体部52を連結部54回りに上方に向けて容易に回動させることができる。これにより、コンパクト容器1の操作性を改善することができる。
【0026】
また、容器本体11の係止突部17は、ヒンジ軸Cよりも上方に位置している。このため、蓋体31により前方に向けて押込まれる操作部65と、容器本体11の係止突部17と、の上下方向の距離を確保することが可能になり、蓋体31を開いたときに、中敷シート51を、少ない力で円滑に、固定部53の被係止部63回りに上方に向けて回動させることができる。
また、連結部54の貫通孔66に短手方向の隙間が設けられているため、固定部53に対して本体部52が回動するときに、貫通孔66の一対の長内面同士が引っ掛かるのを抑制することが可能になり、本体部52の回動をスムーズに行うことができる。
【0027】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図3から
図6を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図3および
図4に示すように、本実施形態のコンパクト容器2は、第1実施形態のコンパクト容器1の中敷シート51に代えて、中敷シート71を備えている。中敷シート71は、中敷シート51の固定部53に代えて、固定部72を有している。なお、
図4においては、蓋体31を二点鎖線で示している。
【0028】
図3、
図5、および
図6に示すように、本実施形態の固定部72は、本体部52の後端部から下方に向けて延びる幅広部73と、幅広部73の下端部から下方に向けて延びる幅狭部74と、を備えている。なお、
図3における固定部72の断面形状は、
図5中のIII−III線に相当する断面図である。
幅広部73、幅狭部74は、前述の幅広部57、幅狭部58と同様に形成されている。
【0029】
幅狭部74は、上端部に設けられた傾斜部76と、傾斜部76の下端部から下方に延びる第1張出突部77と、下端部に設けられた前述の操作部65と、第1張出突部77と操作部65とを連結する第2連結部78と、を有する。
傾斜部76は、下方に向かうにしたがい漸次、後方に向けて延びている。
第1張出突部77は、表裏面が前後方向を向く板状に形成され、後方から見てヒンジ軸方向に長い長方形状を呈する。
傾斜部76におけるヒンジ軸方向の中央部には、第2張出突部79が形成されている。第2張出突部79の後方を向く外面は、第1張出突部77の後方を向く外面と面一である。第2張出突部79は、表裏面が前後方向を向く板状に形成され、後方から見てヒンジ軸方向に長い長方形状を呈する。
第2連結部78は、前方を向く内面が前方に向けて突出し、かつ後方を向く外面が前方に向けて窪む曲面状をなしている。第2連結部78は、後方から見てヒンジ軸方向に長い長方形状を呈する。
なお、
図3に示すように、固定部72の内面のうち、傾斜部76の下端部と第2連結部78の上端部との間に位置する部分が、係止突部17に対して上下方向に係止可能な被係止部80を構成する。
操作部65は、固定部72のなかで最も後方に位置している。
【0030】
幅広部73は、傾斜部76の上端部から上方に延びる基部81と、基部81のヒンジ軸方向の中央部に形成された第3張出突部82と、を有する。第3張出突部82は、表裏面が前後方向を向く板状に形成され、後方から見て、2辺がヒンジ軸方向に延び、かつ残りの2辺が上下方向に延びる矩形状を呈する。第3張出突部82および第2張出突部79それぞれのヒンジ軸方向の大きさは互いに同等になっている。第3張出突部82の下端は、第2張出突部79の上端と連なり、それぞれのヒンジ軸方向中央部は互いに一致している。第3張出突部82の後方を向く外面は、第2張出突部79の後方を向く外面と面一である。第3張出突部82の上端は、基部81の上部まで延びている。
【0031】
図4に示されるように、容器本体11の後方切欠き15を画成する内面のうち、ヒンジ軸方向で互いに対向する一対の内側面における前端部に、上方に向けて開口する収納溝15aが各別に形成されている。
中敷シート71は、固定部72の幅広部73のヒンジ軸方向の端部が、容器本体11の収納溝15aにそれぞれ挿入される。幅狭部74が、後方切欠き15の底面とヒンジ脚部33の内面との間に配設される。
係止突部17の下方に第2連結部78が配置され、かつ係止突部17の上方に傾斜部76が配置される。第2連結部78は、係止突部17に係止突部17の下方から係合し、傾斜部76は、係止突部17のヒンジ軸方向両端部に係止突部17の上方から係合する。第2連結部78は、容器本体11に対して固定部72が上方に抜けるのを防止する。
【0032】
以上のように構成されたコンパクト容器2によっても、前記実施形態と同様に、蓋体31がヒンジ軸C回りに回動されると、ヒンジ脚部33の外面が操作部65を前方に向けて押込む。これにより、中敷シート71が、固定部72の被係止部80回りに上方に向けて回動し、中敷シート71における本体部52の前端部が、容器本体11に対して上昇することで、中敷シート71の摘み部52dと、容器本体11の周壁部11bの上端開口縁と、の間の上下方向の隙間が拡げられる。
【0033】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について
図7および
図8を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図7および
図8に示すように、本実施形態のコンパクト容器3は、第1実施形態のコンパクト容器1の中敷シート51に代えて、中敷シート91を備えている。中敷シート91は、中敷シート51の固定部53および連結部54に代えて、固定部92および連結部93を有している。
【0034】
本実施形態の固定部92は、前述の幅広部57と、幅広部57の下端部から下方に向けて延びる幅狭部95と、を備えている。幅狭部95は、前述の幅狭部58と同様に形成されている。
幅狭部95には、後方から見て上下方向に長い長方形状を呈する第2窪み部96が、ヒンジ軸方向に間隔をあけて2つ形成されている。第2窪み部96のうち、後方を向く外面が前方に向けて窪み、かつ前方を向く内面が前方に向けて突出している。
幅狭部95の下端部には、操作部97が設けられている。操作部97は、固定部92のなかで最も後方に位置している。操作部97は、後方に向けて突の曲面状に形成されている。
なお、
図7に示すように、固定部92の内面のうち、窪み部60の下端部と第2窪み部96の上端部との間に位置する部分が、係止突部17に対して上下方向に係止可能な被係止部98を構成する。
図8に示すように、連結部93におけるヒンジ軸方向の中央部に、ヒンジ軸方向に延びるスリット100が形成されている。
【0035】
このように構成された中敷シート91は、固定部92の幅広部57のヒンジ軸方向の端部が、容器本体11の後方切欠き15に形成された前記収納溝に挿入される。幅狭部95が、後方切欠き15の底面とヒンジ脚部33の内面との間に配設される。
係止突部17の上方に窪み部60が配置され、かつ係止突部17の下方に第2窪み部96が配置される。窪み部60は、係止突部17のヒンジ軸方向中央部に係止突部17の上方から係合し、第2窪み部96は、係止突部17のヒンジ軸方向両端部に係止突部17の下方から係合する。第2窪み部96は、容器本体11に対して固定部92が上方に抜けるのを防止する。
【0036】
以上のように構成されたコンパクト容器3によっても、前記実施形態と同様に、蓋体31がヒンジ軸C回りに回動されると、ヒンジ脚部33の外面が操作部97を前方に向けて押込む。これにより、中敷シート91が、固定部92の被係止部98回りに上方に向けて回動し、中敷シート91における本体部52の前端部が、容器本体11に対して上昇することで、中敷シート91の摘み部52dと、容器本体11の周壁部11bの上端開口縁と、の間の上下方向の隙間が拡げられる。
【0037】
以上、本発明の第1実施形態から第3実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
例えば、前記第1実施形態から第3実施形態では、容器本体11の収容部12に収容する被収容体46として、内容物が充填された中皿を示したが、塗布具等であってもよい。
容器本体11の係止突部17は、ヒンジ軸Cよりも下方に位置させてもよいし、ヒンジ軸Cと同等の上下方向位置に配置してもよい。