(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る基板処理装置1の構成を示す平面図である。基板処理装置1は、キャリア保持部2と、基板受渡部3と、インデクサロボットIRと、センターロボットCRと、2つの洗浄ユニット4と、2つの熱処理ユニット5と、制御部10とを備える。
【0015】
キャリアCは、複数の基板9を積層して収容可能な収容器である。キャリアCは、未処理の基板9や、処理済の基板9を収容する。本実施の形態における基板9は円板状であり、直径は300ミリメートル(mm)である。キャリア保持部2は、複数のキャリアCを支持する。
【0016】
図1において破線の矢印で概念的に示すように、インデクサロボットIRは、基板9を保持した状態で旋回および進退自在のアームにより、基板9を任意の位置に搬送することが可能である。インデクサロボットIRは、基板9を保持した状態で上下方向にも進退自在である。キャリア保持部2に載置されたキャリアC内の未処理の基板9は、インデクサロボットIRによって、基板受渡部3のパス31に搬送される。パス31は、複数の基板9を一時的に保管するバッファとして機能する。パス31に載置された処理済の基板9は、インデクサロボットIRによってキャリア保持部2に載置されたキャリアC内に搬送される。
図1では、図示の都合上、パス31を二点鎖線にて示している。
【0017】
センターロボットCRは、基板9を保持した状態で旋回および進退自在のアームにより、基板9を任意の位置に搬送することが可能である。センターロボットCRは、この動作により、基板受渡部3のパス31と、洗浄ユニット4と、熱処理ユニット5との間で基板9を搬送する。
【0018】
熱処理ユニット5は、例えば、ホットプレートを有する。洗浄ユニット4において後述の処理が施された基板9が、センターロボットCRを介してホットプレート上に載置される。これにより、基板9が所定の温度に加熱される。熱処理ユニット5における基板9の加熱は、ランプによる赤外線の照射や、温風の付与等、他の手法にて行われてよい。
【0019】
図2は、洗浄ユニット4の構成を示す図である。洗浄ユニット4は、基板保持部であるスピンチャック42と、基板回転機構であるスピンモータ41と、スピンチャック42の周囲を囲むカップ43とを備える。センターロボットCRから受け渡された未処理の基板9は、スピンチャック42上に載置される。スピンチャック42は、その上面に図示省略の複数の吸引穴を有し、基板9の一の主面である下面92が複数の吸引穴に吸着される。これにより、基板9が水平状態で(すなわち、水平な姿勢で)スピンチャック42により保持される。スピンチャック42の下面には、上下方向(鉛直方向)に伸びるシャフト421が接続される。シャフト421の中心軸J1は、基板9の中心を通る。スピンモータ41は、シャフト421を回転する。これにより、スピンチャック42および基板9が中心軸J1を中心として回転する。なお、スピンチャック42は、基板9の裏面を吸着する構造に限らず、例えば、基板9の周縁に複数の挟持部材を接触させることにより、基板9を挟持する構造等であってもよい。
【0020】
洗浄ユニット4は、薬液供給部441と、純水供給部442と、第1ノズル443と、下ノズル444と、充填材溶液供給部451と、第2ノズル452と、第2ノズル移動機構453と、IPA供給部461と、第3ノズル462とをさらに備える。充填材溶液供給部451は、第2ノズル452に弁を介して接続される。薬液供給部441は、第1ノズル443に弁を介して接続される。純水供給部442は、第1ノズル443に弁を介して接続される。純水供給部442は、下ノズル444にも弁を介して接続される。IPA供給部461は、第3ノズル462に弁を介して接続される。
【0021】
第2ノズル移動機構453は、第2ノズル452を、基板9の上面91(他の主面)に対向する対向位置と、水平方向において基板9から離れた待機位置とに選択的に配置する。図示省略の第1ノズル移動機構により、第1ノズル443も、基板9の上面91に対向する位置と、水平方向において基板9から離れた他の待機位置とに選択的に配置される。同様に、図示省略の第3ノズル移動機構により、第3ノズル462も、基板9の上面91の外縁部に対向する位置と、水平方向において基板9から離れた他の待機位置とに選択的に配置される。下ノズル444は、スピンチャック42の下方に位置する支持台445に取り付けられる。
【0022】
図3は、基板処理装置1における基板9の処理の流れを示す図である。
図4は、基板処理の一部における基板9の回転数の変化を示す図である。
図4の上段は、基板9に対する各処理の内容を示し、下段は、各処理における基板9の回転数(回転速度)を示す(後述の
図13において同様)。
図4に示す基板9の回転数および各処理の時間は一例に過ぎず、適宜変更されてよい。
【0023】
基板処理装置1では、まず、キャリアC内の未処理の基板9が、インデクサロボットIRおよびセンターロボットCRにより洗浄ユニット4内へと搬送される。
図2の洗浄ユニット4では、スピンチャック42により基板9の下面92が保持され、基板9の上面91が上方を向く。基板9の上面91には、パターンが形成されている。当該パターンは、多数のパターン要素を含む。各パターン要素は、上面91上において直立する柱(ピラー)状であり、高アスペクト比を有する。基板9は、例えば、ピラー構造のメモリの製造に用いられる。基板9では、上面91に沿って伸びる複数のブリッジが設けられてもよい。ブリッジは、多数のパターン要素において、横方向に互いに隣接するパターン要素の先端を連結する。
【0024】
洗浄ユニット4では、まず、基板9の上面91に対して薬液による処理が行われる(ステップS11)。薬液による処理では、第1ノズル移動機構により第1ノズル443が基板9の上面91に対向する位置に配置される。また、スピンモータ41により、所定の回転数での基板9の回転が開始される。
図4の例では、基板9の回転数は、800rpm(すなわち、毎分800回)である。そして、薬液供給部441により薬液が第1ノズル443を介して上面91に連続的に供給される。回転する基板9の上面91から飛散する薬液は、カップ43にて受けられて回収される。本処理例では、薬液は、希フッ酸(DHF)またはアンモニア水を含む洗浄液である。すなわち、ステップS11では、薬液を処理液とする洗浄処理が行われる。薬液の供給は所定時間継続される。なお、薬液による処理、および、後述の純水による処理では、第1ノズル移動機構により、第1ノズル443が水平方向に揺動してもよい。
【0025】
薬液による処理が完了すると、純水供給部442により純水が第1ノズル443を介して上面91に供給される(ステップS12)。これにより、上面91上の薬液が純水により洗い流される。すなわち、ステップS12では、純水を処理液とするリンス処理が行われる。リンス処理では、例えば、毎分2リットル(L/min)の純水が上面91に連続的に供給される。
図4の例におけるリンス処理では、基板9の回転数が1200rpmで所定時間維持され、続いて、10rpmまでゆっくりと下げられ、その後、10rpmで所定時間維持される。基板9の回転数が10rpmである期間では、上面91を覆う純水の液膜(パドル)が形成されて保持される。このように、本処理例におけるリンス処理では、純水のパドルを形成する純水パドルが含まれる。純水の供給は所定時間継続され、その後、停止される。なお、ステップS11,S12に並行して、純水供給部442により純水が下ノズル444を介して下面92に供給されてもよい。
【0026】
上面91への純水の供給が停止されると、第1ノズル移動機構により第1ノズル443が待機位置へと移動する。また、第2ノズル移動機構453により、第2ノズル452が上面91の中央部に対向する対向位置に配置される。さらに、基板9の回転数が1200rpmまで短時間に上げられ、所定時間維持される。これにより、純水の振り切り処理(スピンオフ)が行われる(ステップS13)。純水の振り切り処理では、上面91の全体を覆う純水の液膜を保持しつつ、当該液膜の厚さ、すなわち、上面91上に残留する純水の量が低減される。本処理例において、振り切り処理後における純水の液膜の厚さは、3.5マイクロメートル(μm)である。以上のように、ステップS12,S13では、基板9の上面91に純水を供給するとともに基板9を回転することにより、純水の薄い液膜が形成される。
【0027】
純水の振り切り処理が完了すると、基板9の回転数が所定値(以下、「塗布回転数」という。)まで下げられ、維持される。
図4の例では、塗布回転数は400rpmである。また、充填材溶液供給部451により、対向位置に配置された第2ノズル452を介して上面91の中央部に常温の充填材溶液が、所定時間(
図4の例では、3秒)だけ継続して供給される(ステップS14)。本処理例では、毎秒3立方センチメートル(cc/sec)の流量で第2ノズル452から充填材溶液が吐出される。ステップS14および後述のステップS15〜S16の処理は、常温環境下にて行われる。なお、ステップS14では、純水供給部442により純水が下ノズル444を介して下面92に供給されることが好ましい。これにより、充填材溶液が下面92側に回り込むことが防止される。
【0028】
塗布回転数で回転する基板9の上面91では、純水の液膜に供給された充填材溶液が中央部から外周部の全体へと拡がる。また、上面91の中央部から外周部に亘って充填材溶液が均質である状態が保たれる。このように、充填材溶液が上面91の全体に適切に塗布される。本処理例では、充填材溶液の供給の完了後も、所定時間(
図4の例では、3秒)だけ塗布回転数での基板9の回転が継続され、上面91上の余分な充填材溶液(純水を含む。)が除去される。すなわち、充填材溶液の振り切り処理が行われる(ステップS15)。本処理例では、後述のステップS17にて充填材溶液の振り切り処理が繰り返されるため、以下、ステップS15における充填材溶液の振り切り処理を「第1振り切り処理」と呼び、ステップS17における充填材溶液の振り切り処理を「第2振り切り処理」と呼ぶ。
【0029】
ここで、充填材溶液について述べる。本実施の形態における充填材溶液は、アクリル樹脂等の水溶性のポリマーである充填材を溶媒(例えば、水)に溶解させた溶液である。充填材溶液における充填材の濃度が高くなるに従って、充填材溶液の粘度が高くなる。充填材溶液供給部451では、充填材溶液の濃度が所定値に調整されており、これにより、上面91に供給される充填材溶液の粘度(常温での粘度)は、3センチポアズ(cp)(0.003パスカル秒)以下となる。本処理例では、充填材溶液の粘度は、約2.8cpである。充填材は、例えば、所定温度以上に加熱することにより架橋反応が生じるものである。
【0030】
塗布回転数での基板9の回転が完了すると、基板9の回転数が10rpmまで下げられ、所定時間維持される。このとき、上面91上(純水の液膜上とも捉えられる。)において充填材溶液の液膜(パドル)が形成される。当該液膜は、上面91の全体を覆う一連の液層であり、当該液膜では、基板9と、当該液膜を構成する液体(充填材溶液)との上面91に沿う相対移動がほぼない状態が形成されている。既述のように、充填材は水溶性であり、充填材の供給を停止した状態で、上面91上において当該液膜を保持させることにより、互いに隣接するパターン要素間の隙間に存在する純水(純水の液膜に含まれる純水)にも、充填材が溶け込む。このように、上面91上の充填材溶液のパドルを維持することにより、パターン要素間の隙間への充填材の充填(埋め込み)が行われる(ステップS16)。
【0031】
その後、基板9の回転数が、300rpmまで上げられ、所定時間維持される。これにより、充填材溶液の2回目の振り切り処理(すなわち、第2振り切り処理)が行われる(ステップS17)。第2振り切り処理では、基板9の上面91の全体を覆う充填材溶液の液膜を保持しつつ、当該液膜の厚さが低減される。なお、基板処理装置1では、ステップS15〜S17に並行して、第2ノズル452が待機位置へと移動し、第3ノズル462が、上面91の外縁部に対向する位置に配置される。
【0032】
第2振り切り処理が完了すると、基板9の回転数が1000rpmまで上げられ、所定時間(例えば、120秒間)維持される。また、IPA供給部461により、上面91の外縁部にIPAが第3ノズル462を介して連続的に供給される。第3ノズル462におけるIPAの噴出方向は、上下方向の下向きから外側(中心軸J1から離れる方向)に傾斜しており、上面91の外縁部のみにIPAが供給される。これにより、パターン要素が形成されていない上面91の外縁部や、基板9の端面(縁面)に付着した充填材が、全周に亘って除去される(ステップS18)。基板9の外縁部等における充填材の除去処理は、「エッジカット処理」とも呼ばれる。外縁部等に付着する不要な充填材を除去することにより、後続の処理において基板9を搬送する際に、センターロボットCR等のアームが汚れることが防止される。なお、外縁部へのIPAの供給に並行して、純水供給部442により純水が下ノズル444を介して下面92に供給されてもよい。
【0033】
第3ノズル462からのIPAの噴出完了後、基板9の回転数が、例えば1500rpmまで上げられ、所定時間(例えば、15秒間)維持される。すなわち、基板9の高速回転により、外縁部のIPAを除去するスピンドライ処理が行われる(ステップS19)。その後、基板9の回転が停止される。
図1のセンターロボットCRにより基板9が洗浄ユニット4から搬出され、続いて、熱処理ユニット5内に搬入される。熱処理ユニット5では、基板9が、例えば120℃にて1分間加熱される。すなわち、基板9がベークされ(ステップS20)、上面91上の充填材溶液の液膜における溶媒成分(ここでは、水分)が除去されるとともに、充填材が硬化(固化)する。これにより、隣接するパターン要素間に固化した充填材が充填された状態で、充填材の膜が形成される。本処理例では、充填材の膜の厚さは、およそ400ナノメートル(nm)となる。
【0034】
その後、センターロボットCRにより基板9が熱処理ユニット5から搬出され、インデクサロボットIRを介してキャリアC内に戻される。これにより、基板処理装置1における基板9の処理が完了する。
【0035】
充填材が充填された基板9は、外部のドライエッチング装置またはアッシング装置へと搬送される。そして、ドライエッチングまたはアッシング(以下、「ドライエッチング等」という。)により充填材が除去される。このとき、隣接するパターン要素間に介在する介在物(充填材)は固体であるため、パターン要素に対して介在物の表面張力が作用しない状態で充填材が除去される。上記ステップS13〜S20の処理、および、充填材の除去処理は、上面91に付着する純水の乾燥処理と捉えることができ、上記乾燥処理により、乾燥途上の純水の表面張力によるパターン要素の倒壊が防止される。充填材の除去は、液体を用いない他の手法により行われてもよい。例えば、充填材の種類によっては、減圧下にて充填材を加熱することにより、充填材の昇華による除去が行われる。
【0036】
ここで、充填材溶液の塗布に係る実験の結果について述べる。本実験では、純水振り切り処理(ステップS13)後における純水の液膜の厚さ、および、溶液塗布処理(ステップS14)における塗布回転数を複数通りに変更しつつ
図3の処理が行われる。
図5は、純水の液膜の厚さおよび塗布回転数と、充填材溶液の塗布結果との関係を示す図である。
図5中の「×」は、塗布結果として後述のスパイク不良が発生したことを示し、「外周NG」は、後述の外周膜厚不良が発生したことを示し、「〇」はいずれの不良もほぼ発生しなかったことを示す(後述の
図8ないし
図12において同様)。なお、充填材溶液の吐出流量は3cc/secであり、充填材溶液の粘度は2.6cpである。
【0037】
図6は、スパイク不良が発生した基板9の周縁部を拡大して示す写真であり、
図7は、外周膜厚不良が発生した基板9の周縁部を拡大して示す写真である。ここで、水溶性の充填材は、水の凝集を生じさせる性質を有し、塗布回転数が200rpmである場合には、純水の液膜が
図5中のいずれの厚さであっても、溶液塗布処理および第1振り切り処理(ステップS14,S15)において、水の凝集により上面91の一部の領域が乾燥してしまう。当該領域の形状は、
図6に示すように、基板9の中心に向かって尖ったスパイク状であり、ここでは、当該領域を、「スパイク不良」と呼んでいる。スパイク不良が発生すると、水の表面張力に起因するパターン要素の倒壊が生じてしまう。スパイク不良は、純水の液膜の厚さが7μmである場合にも、塗布回転数に依らず発生する。塗布回転数が300rpm以上であり、かつ、純水の液膜の厚さが5μm以下である場合には、スパイク不良はほとんど発生しない。
【0038】
スパイク不良の発生原因は定かではないが、溶液塗布処理において充填材溶液が純水の液膜を覆うことが可能な度合い(カバレッジ)が低い場合に、スパイク不良が発生しやすくなると考えられる。塗布回転数が小さい場合、および、純水の液膜の厚さが大きい場合、上記度合いは低くなる。したがって、スパイク不良の抑制という観点では、塗布回転数を大きくする、および、純水の液膜の厚さを小さくすることが好ましい。実際には、塗布回転数が大きいほど、および、純水の液膜の厚さが小さいほど、スパイク状の領域の総面積は小さくなる。一方、純水の液膜の厚さが、パターン要素の高さ程度まで小さくなると、表面張力の影響によりパターン要素の倒壊が生じてしまう。したがって、純水の液膜の厚さは、上面91上のパターン要素の高さよりも大きいことが好ましく、例えば、2μm以上であることが好ましい。
【0039】
また、スパイク不良を抑制する条件であっても、塗布回転数を600rpmまで大きくすると、外周膜厚不良が発生する。外周膜厚不良は、上面91の外周部における充填材の厚さ(膜厚)が、中央部よりも過度に大きくなる(例えば、2倍以上となる)現象である。実際には、
図7に示すように、基板9の外周部においてモヤモヤした干渉縞も観察される。外周膜厚不良では、外周部における充填材の膜厚の径方向のばらつきも大きくなる(すなわち、ラフネスまたは凹凸が大きくなる。)。ドライエッチング等による充填材の除去では、上面91上における充填材の最大膜厚に合わせて処理時間が決定されるため、外周膜厚不良が発生することにより、ドライエッチング等に要する時間が長くなる。また、充填材の膜厚のばらつきにより生じる基板9の内部応力の影響により、パターン要素の倒壊が生じることもある。塗布回転数が500rpm以下である場合には、外周部における充填材の膜厚と中央部における充填材の膜厚との差が小さくなり、外周膜厚不良はほぼ発生しない。
【0040】
外周膜厚不良の発生原因は定かではないが、塗布回転数が高すぎる場合に、外周部における充填材溶液の溶媒の乾燥速度が、中央部よりも過度に速くなることが一因と考えられる。この場合、外周部では、充填材溶液の粘度が中央部よりも高くなり、遠心力により充填材溶液が移動しにくくなる。これにより、外周部において充填材の膜厚が大きくなるとともに、膜厚のばらつきも大きくなる。中央部では、充填材溶液の粘度が比較的低いため、充填材溶液が移動しやすく、充填材の膜厚が小さくなる。言い換えると、塗布回転数が500rpm以下である場合には、上面91の外周部と中央部とにおいて、充填材溶液の溶媒の乾燥速度の差が小さくなり、充填材の膜厚の差も小さくなる。したがって、外周膜厚不良の抑制という観点では、塗布回転数を小さくすることが好ましい。
【0041】
以上のように、パターンが形成された基板9の上面91に対する処理液による処理後に、当該上面91上に充填材溶液を塗布する塗布処理では、上面91を覆うとともに厚さが5マイクロメートル以下の純水の液膜が形成される。そして、基板9を毎分300回以上、かつ、500回以下の回転数にて回転しつつ、水溶性の充填材を含む充填材溶液が、上面91の中央部に供給される。これにより、処理液による処理後の基板9の上面91に対して、スパイク不良および外周膜厚不良の発生を抑制しつつ充填材溶液を塗布することができる。
【0042】
次に、充填材溶液の粘度に係る実験について述べる。
図8は、純水の液膜の厚さおよび充填材溶液の粘度と、充填材溶液の塗布結果との関係を示す図である。ここでは、塗布回転数は400rpmであり、充填材溶液の吐出流量は3cc/secである。
図8から、純水の液膜の厚さが5μm以下である場合に、充填材溶液の粘度が3.0cp以下であるときには、スパイク不良および外周膜厚不良が(ほとんど)発生しないことが判る。
【0043】
図9は、充填材溶液の粘度および塗布回転数と、充填材溶液の塗布結果との関係を示す図である。ここでは、純水の液膜の厚さは3μmであり、充填材溶液の吐出流量は3cc/secである。
図9から、塗布回転数が300〜500rpmである場合に、充填材溶液の粘度が3.0cp以下であるときには、スパイク不良および外周膜厚不良が発生しないことが判る。
【0044】
以上のように、純水の液膜の厚さが5μm以下であり、かつ、塗布回転数が300〜500rpmである場合、充填材溶液の粘度が過度に高くなければ(例えば、水の粘度に比べて過度に高くなければ)、スパイク不良および外周膜厚不良の発生を抑制することが可能である。好ましくは、充填材溶液の粘度は、3センチポアズ以下である。実際には、充填材溶液の粘度が低いほど、スパイク不良および外周膜厚不良は抑制される。例えば、充填材溶液の溶媒が水である場合には、充填材溶液の粘度は水の粘度よりも大きい。
【0045】
次に、充填材溶液の吐出流量に係る実験について述べる。
図10は、純水の液膜の厚さおよび充填材溶液の吐出流量と、充填材溶液の塗布結果との関係を示す図である。ここでは、塗布回転数は400rpmであり、充填材溶液の粘度は2.6cpである。
図10から、純水の液膜の厚さが5μm以下である場合に、充填材溶液の吐出流量が2cc/sec以上であるときには、スパイク不良および外周膜厚不良が発生しないことが判る。
【0046】
図11は、充填材溶液の吐出流量および塗布回転数と、充填材溶液の塗布結果との関係を示す図である。ここでは、純水の液膜の厚さは3μmであり、充填材溶液の粘度は2.6cpである。
図11から、塗布回転数が300〜500rpmである場合に、充填材溶液の吐出流量が2cc/sec以上であるときには、スパイク不良および外周膜厚不良が発生しないことが判る。
【0047】
以上のように、純水の液膜の厚さが5μm以下であり、かつ、塗布回転数が300〜500rpmである場合、充填材溶液の吐出流量が過度に低くなければ、スパイク不良および外周膜厚不良の発生を抑制することが可能である。好ましくは、充填材溶液は、毎秒2立方センチメートル以上の流量で上面91に供給される。実際には、充填材溶液の吐出流量が大きいほど、スパイク不良は抑制される。なお、充填材溶液の使用量を抑制して、充填材溶液の塗布に係る処理のコストを削減するという観点では、充填材溶液の吐出流量は、3cc/sec以下であることが好ましい。
【0048】
図12は、充填材溶液の吐出流量および粘度と、充填材溶液の塗布結果との関係を示す図である。ここでは、純水の液膜の厚さは3μmであり、塗布回転数は400rpmである。
図12では、充填材溶液の吐出流量が2cc/sec以上であり、かつ、充填材溶液の粘度が3cp以下である場合に、スパイク不良および外周膜厚不良が発生しないことが判る。
図5、並びに、
図8ないし
図12から、充填材溶液の塗布では、純水の液膜の厚さが5μm以下である、塗布回転数が300〜500rpmである、充填材溶液の粘度が3cp以下である、充填材溶液の吐出流量が2cc/sec以上であるという4つの条件が同時に満たされることがより好ましいといえる。
【0049】
図13は、基板処理の一部における基板9の回転数の変化の他の例を示す図である。
図13では、溶液塗布処理(ステップS14)および第1振り切り処理(ステップS15)における基板9の回転数が、
図4と相違する。
【0050】
具体的には、溶液塗布処理(ステップS14)では、基板9の回転数が、直前の純水振り切り処理における1200rpmから400rpmまで下げられ、その後、純水振り切り処理時の回転数よりも高い4000rpmまで上げられる。充填材溶液供給部451による上面91の中央部への充填材溶液の供給は、基板9の回転数を1200rpmから下げ始めた直後から開始され、回転数を400rpmに維持しつつ充填材溶液を3cc/secの流量で0.7秒間供給し続けて停止する。溶液塗布処理では、基板9の回転数が常時300rpm以上となるため、スパイク不良が抑制される。充填材溶液の粘度および吐出流量は、
図4を参照して説明した上記処理と同じである。
【0051】
ここで、
図13の処理例では、充填材溶液を基板9の上面91に供給している期間が、基板9の回転数が300〜500rpmの範囲内である期間と重なる。これにより、上面91の外周部と中央部とにおいて、充填材溶液の溶媒の乾燥速度の差が小さくなり、外周膜厚不良もある程度抑制される。その後、回転数が500rpmよりも大きい期間では、後述の第1振り切り処理と同様に、上面91上の余分な充填材溶液(純水を含む。)が除去される。
【0052】
続いて、第1振り切り処理(ステップS15)では、基板9の回転数が1500rpmまで下げられ、所定時間維持される。これにより、上面91上の余分な充填材溶液がさらに除去される。その後、
図4の処理例と同様に、基板9の回転数が10rpmまで下げられて所定時間維持され、充填材の充填が行われる(ステップS16)。そして、第2振り切り処理、エッジカット処理、スピンドライ処理およびベーク処理(ステップS17〜S20)が行われ、基板9の処理が完了する。本処理例では、およそ200nmの厚さの充填材の膜が形成される。
【0053】
図13の処理例においても、厚さが5μm以下の純水の液膜が形成された後、基板9を300〜500rpmで回転しつつ充填材溶液が上面91の中央部に供給される。これにより、処理液による処理後の基板9の上面91に対して、スパイク不良および外周膜厚不良の発生を抑制しつつ充填材溶液を塗布することができる。また、
図13の処理例では、
図4の処理例に比べて、充填材溶液を上面91に供給する時間が短いため、充填材溶液の使用量を低減することができる。また、充填材の膜厚の均一性も向上することが可能である。
【0054】
上記充填材溶液の塗布処理では様々な変形が可能である。
【0055】
上記実施の形態では、洗浄処理後に、基板9の上面91上に充填材溶液が充填されるが、充填材溶液の充填は、洗浄処理以外の様々な処理(例えば、エッチング処理)の後に行われてよい。また、基板処理装置1の設計によっては、基板9のベークが外部の装置にて行われてもよい。
【0056】
充填材溶液の塗布処理が行われる基板は半導体基板には限定されず、ガラス基板や他の基板であってもよい。
【0057】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。