(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
免疫チェックポイント遺伝子が、PD1、CTLA-4、LAG3、Tim3、BTLA、BY55、TIGIT、B7H5、LAIR1、SIGLEC10、および2B4からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
少なくとも第1および第2の不活性化される遺伝子が、PD1およびTCRα、PD1およびTCRβ、CTLA-4およびTCRα、CTLA-4およびTCRβ、LAG3およびTCRα、LAG3およびTCRβ、Tim3およびTCRα、Tim3およびTCRβ、BTLAおよびTCRα、BTLAおよびTCRβ、BY55およびTCRα、BY55およびTCRβ、TIGITおよびTCRα、TIGITおよびTCRβ、B7H5およびTCRα、B7H5およびTCRβ、LAIR1およびTCRα、LAIR1およびTCRβ、SIGLEC10およびTCRα、SIGLEC10およびTCRβ、2B4およびTCRα、ならびに2B4およびTCRβからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
少なくとも1種類のTALE-ヌクレアーゼが、SEQ ID NO:37またはSEQ ID NO:57〜SEQ ID NO:60より選択されるTCRαの遺伝子標的配列の1つに対して作られたものである、請求項8記載の方法。
少なくとも1種類のTALE-ヌクレアーゼが、SEQ ID NO:38およびSEQ ID NO:39からなる群より選択されるTCRβの遺伝子標的配列の1つに対して作られたものである、請求項8記載の方法。
少なくとも1種類のTALE-ヌクレアーゼが、SEQ ID NO:77 および SEQ ID NO:78からなる群より選択されるPD1の遺伝子標的配列の1つに対して作られたものである、請求項8記載の方法。
少なくとも1種類のTALE-ヌクレアーゼが、SEQ ID NO:74およびSEQ ID NO:76からなる群より選択されるCTLA-4の遺伝子標的配列の1つに対して作られたものである、請求項8記載の方法。
請求項1記載の方法によって入手可能な単離されたヒトT細胞もしくは細胞株、またはその継代培養物であって、少なくとも2種類の遺伝子が不活性化されており、第1の遺伝子が免疫チェックポイントタンパク質をコードし、かつ第2の遺伝子がT細胞受容体(TCR)の成分をコードし、かつキメラ抗原受容体をコードする外因性ポリヌクレオチド配列をさらに含む、前記単離されたヒトT細胞もしくは細胞株、またはその継代培養物。
少なくとも2種類の遺伝子が不活性化されており、第1の遺伝子が免疫チェックポイントタンパク質をコードし、かつ第2の遺伝子がT細胞受容体(TCR)の成分をコードし、かつキメラ抗原受容体をコードする外因性ポリヌクレオチド配列をさらに含む、請求項1記載の方法に従って調製された改変されたヒトT細胞の集団を含む、患者を処置するのに使用するための薬学的組成物。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な説明
本明細書において特に定義されない限り、使用される技術用語および科学用語は、全て、遺伝子治療、生化学、遺伝学、および分子生物学の領域の当業者によって一般的に理解されるのと同一の意味を有する。
【0029】
適当な方法および材料が本明細書に記載されるが、本明細書に記載されたものに類似しているかまたは等価である全ての方法および材料が、本発明の実施または試行において使用され得る。本明細書において言及された刊行物、特許出願、特許、およびその他の参照は全て、特に、参照が引用されている隣接する文章、段落、またはセクションにおける主題に関する各参照によって開示される主題について、参照によってその全体が組み入れられる。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が優先されるであろう。さらに、材料、方法、および実施例は、他に特記されない限り、例示的なものに過ぎず、限定するためのものではない。
【0030】
本発明の実施は、他に示されない限り、当技術分野の技術の範囲内にある細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の従来の技術を利用するであろう。そのような技術は、文献中に完全に説明されている。例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Frederick M.AUSUBEL,2000,Wiley and son Inc,Library of Congress,USA);Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Third Edition,(Sambrook et al,2001,Cold Spring Harbor,New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait ed.,1984);Mullisら、米国特許第4,683,195号;Nucleic Acid Hybridization(B.D.Harries & S.J.Higgins eds.1984);Transcription And Translation(B.D.Hames & S.J.Higgins eds.1984);Culture Of Animal Cells(R.I.Freshney,Alan R.Liss,Inc.,1987);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986);B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);the series,Methods In ENZYMOLOGY(J.Abelson and M.Simon,eds.-in-chief,Academic Press,Inc.,New York)、特に、第154巻および第155巻(Wu et al.eds.)および第185巻、"Gene Expression Technology"(D.Goeddel,ed.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller and M.P.Calos eds.,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London,1987);Handbook Of Experimental Immunology,Volumes I-IV(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.,1986);ならびにManipulating the Mouse Embryo,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1986)を参照されたい。
【0031】
一般的な局面において、本発明は、癌および感染症の処置における新たな養子免疫療法戦略のための方法に関する。
【0032】
免疫療法のための非アロ反応性かつ高活性のT細胞
特定の局面において、本発明は、特に免疫療法のために、T細胞を操作する方法に関する。特定の態様において、前記方法は、
(a)T細胞を準備する工程、
(b)免疫チェックポイント遺伝子をDNA切断によって選択的に不活性化することができるレアカッティングエンドヌクレアーゼを前記T細胞に導入する工程、および
(c)前記細胞を増殖させる工程
を含む。
【0033】
特に、この方法は、
(a)少なくとも、
-免疫チェックポイントタンパク質をコードする第1の遺伝子、および
-T細胞受容体(TCR)の成分をコードする第2の遺伝子
を不活性化することによってT細胞を改変する工程、ならびに
(b)前記細胞を増殖させる工程
を含む。
【0034】
T細胞性免疫は、抗原特異的細胞のクローン選択、二次リンパ系組織における抗原特異的細胞の活性化および増殖、抗原部位および炎症部位への抗原特異的細胞の輸送、直接的なエフェクター機能の実行、ならびに数多くのエフェクター免疫細胞のための(サイトカインおよび膜リガンドを介した)補助(help)の提供を伴う連続した複数の段階を含む。これらの段階はそれぞれ、この応答を微調整する刺激シグナルおよび阻害シグナルを釣り合わせることによって調節される。「免疫チェックポイント」という用語は、T細胞が発現する分子の一群を意味することが当業者により理解される。これらの分子は、免疫応答を下方制御または阻害するための「ブレーキ」として効果的に働く。免疫チェックポイント分子には、免疫細胞を直接阻害する、Programmed Death1(PD-1。PDCD1またはCD279とも知られる。アクセッション番号:NM_005018)、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4。CD152とも知られる。GenBankアクセッション番号AF414120.1)、LAG3(CD223とも知られる。アクセッション番号:NM_002286.5)、Tim3(HAVCR2とも知られる。GenBankアクセッション番号:JX049979.1)、BTLA(CD272とも知られる。アクセッション番号:NM_181780.3)、BY55(CD160とも知られる。GenBankアクセッション番号:CR541888.1)、TIGIT(VSTM3とも知られる。アクセッション番号:NM_173799)、B7H5(C10orf54とも知られる。マウスvista遺伝子のホモログ。アクセッション番号:NM_022153.1)、LAIR1(CD305とも知られる。GenBankアクセッション番号:CR542051.1)、SIGLEC10(GeneBankアクセッション番号:AY358337.1)、2B4(CD244とも知られる。アクセッション番号:NM_001166664.1)が含まれるが、これに限定されない。例えば、CTLA-4は、ある特定のCD4 T細胞上およびCD8 T細胞上で発現する細胞表面タンパク質であり、抗原提示細胞上に、そのリガンド(B7-1およびB7-2)が結合すると、T細胞活性化およびエフェクター機能が阻害される。従って、本発明は、特に免疫療法のために、T細胞を操作する方法に関し、本方法は、免疫チェックポイントに関与する少なくとも1種類のタンパク質、特にPD1および/またはCTLA-4を不活性化することによってT細胞を遺伝子組換えする工程を含む。
【0035】
特定の態様において、前記方法の遺伝子組換え工程は、PD1、CTLA-4、LAG3、Tim3、BTLA、BY55、TIGIT、B7H5、LAIR1、SIGLEC10、2B4、TCRα、およびTCRβからなる群より選択される1種類の遺伝子、好ましくは2種類の遺伝子の不活性化に頼る。別の態様において、前記方法の遺伝子組換え工程は、PD1およびTCRα、PD1およびTCRβ、CTLA-4およびTCRα、CTLA-4およびTCRβ、LAG3およびTCRα、LAG3およびTCRβ、Tim3およびTCRα、Tim3およびTCRβ、BTLAおよびTCRα、BTLAおよびTCRβ、BY55およびTCRα、BY55およびTCRβ、TIGITおよびTCRα、TIGITおよびTCRβ、B7H5およびTCRα、B7H5およびTCRβ、LAIR1およびTCRα、LAIR1およびTCRβ、SIGLEC10およびTCRα、SIGLEC10およびTCRβ、2B4およびTCRα、2B4およびTCRβからなる群より選択される2種類の遺伝子の不活性化に頼る。別の態様において、前記方法の遺伝子組換え工程は2種類を超える遺伝子の不活性化に頼る。遺伝子組換えは好ましくはエクスビボで行われる。
【0036】
以下の表1は網羅的なものではないが、操作されたT細胞の効率および適性を改善するために、本発明の開示に従って不活性化することができる免疫チェックポイント遺伝子を示す。免疫チェックポイント遺伝子は、好ましくは、共抑制(co-inhibitory)受容体機能、細胞死、サイトカインシグナル伝達、アルギニントリプトファン枯渇(arginine tryptophan starvation)、TCRシグナル伝達、誘導性T-reg抑制、疲弊またはアネルギーを制御する転写因子、ならびに低酸素を介した寛容に関与する、この表に列挙した遺伝子と同一性を有するこのような遺伝子より選択される。
【0037】
(表1)免疫療法のために同種異系T細胞を高活性にするのに適した免疫チェックポイント遺伝子
【0038】
遺伝子を不活性化するとは、関心対象の遺伝子が機能的なタンパク質の形で発現されないことが意図される。特定の態様において、前記方法の遺伝子組換えは、あるレアカッティングエンドヌクレアーゼが、標的とするある遺伝子の切断を特異的に触媒し、それによって、この標的とする遺伝子を不活性化するような、操作しようとする準備された細胞における前記レアカッティングエンドヌクレアーゼの発現に頼る。レアカッティングエンドヌクレアーゼによって引き起こされる核酸鎖切断は、一般的に、相同組換え末端結合または非相同末端結合(NHEJ)の別々の機構によって修復される。しかしながら、NHEJは、切断部位のDNA配列を変えることが多い不完全な修復プロセスである。機構は、直接的な再連結(Critchlow and Jackson 1998)によって、または、いわゆるマイクロホモロジー媒介末端結合(Ma, Kim et al. 2003)を介して2つのDNA末端の残存物を再結合することを伴う。非相同末端結合(NHEJ)を介した修復は小さな挿入または欠失をもたらすことが多く、特異的遺伝子ノックアウトを作り出すことに使用することができる。前記組換えは少なくとも1つのヌクレオチドの置換、欠失、または付加でもよい。切断によって誘導される変異誘発事象、すなわち、NHEJ事象に続く変異誘発事象が起こった細胞は、当技術分野において周知の方法によって特定および/または選択することができる。
【0039】
特定の態様において、細胞を操作する前記方法は、
(a)好ましくは細胞培養物または血液試料から、T細胞を準備する工程、
(b)DNA切断、好ましくは、二本鎖切断によって、
-免疫チェックポイントタンパク質をコードする前記遺伝子、および
-T細胞受容体(TCR)の成分をコードする少なくとも1種類の遺伝子
をそれぞれ選択的に不活性化することができるレアカッティングエンドヌクレアーゼを前記T細胞に導入する工程、
(c)前記細胞を増殖させる工程
の少なくとも1つを含む。
【0040】
さらに好ましい態様において、前記方法は、
(a)好ましくは細胞培養物または血液試料から、T細胞を準備する工程、
(b)DNA切断、好ましくは、二本鎖切断によって、
-免疫チェックポイントタンパク質をコードする前記遺伝子、および
-T細胞受容体(TCR)の成分をコードする少なくとも1種類の遺伝子
をそれぞれ選択的に不活性化することができるレアカッティングエンドヌクレアーゼをコードする核酸によって前記T細胞を形質転換する工程、
(c)前記レアカッティングエンドヌクレアーゼを前記T細胞内で発現させる工程、
(d)細胞表面にTCRを発現しない、形質転換されたT細胞を分別する工程、
(e)前記細胞を増殖させる工程
を含む。
【0041】
特定の態様において、前記レアカッティングエンドヌクレアーゼは、PD1、CTLA-4、LAG3、Tim3、BTLA、BY55、TIGIT、B7H5、LAIR1、SIGLEC10、2B4、TCRα、およびTCRβからなる群より選択される1種類の遺伝子を特異的に標的化する。別の態様において、前記方法の遺伝子組換えは、2種類のレアカッティングエンドヌクレアーゼのそれぞれが、PD1およびTCRα、PD1およびTCRβ、CTLA-4およびTCRα、CTLA-4およびTCRβ、LAG3およびTCRα、LAG3およびTCRβ、Tim3およびTCRα、Tim3およびTCRβ、BTLAおよびTCRα、BTLAおよびTCRβ、BY55およびTCRα、BY55およびTCRβ、TIGITおよびTCRα、TIGITおよびTCRβ、B7H5およびTCRα、B7H5およびTCRβ、LAIR1およびTCRα、LAIR1およびTCRβ、SIGLEC10およびTCRα、SIGLEC10およびTCRβ、2B4およびTCRα、2B4およびTCRβからなる群より選択される遺伝子ペアそれぞれの切断を特異的に、かつそれぞれ触媒し、それによって、前記標的とする遺伝子を不活性化するような、操作しようとする準備された細胞における2種類のレアカッティングエンドヌクレアーゼの発現に頼る。別の態様において、2種類を超える遺伝子を標的化および/または不活性化するために、操作しようとする細胞において2種類を超えるレアカッティングエンドヌクレアーゼが発現されてもよい。
【0042】
別の態様において、前記レアカッティングエンドヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、またはTALE-ヌクレアーゼでもよい。好ましい態様において、前記レアカッティングエンドヌクレアーゼはTALE-ヌクレアーゼである。TALE-ヌクレアーゼとは、転写アクチベーター様エフェクター(TALE)に由来するDNA結合ドメインと、核酸標的配列を切断する1つのヌクレアーゼ触媒ドメインからなる融合タンパク質を意図する(Boch, Scholze et al. 2009; Moscou and Bogdanove 2009; Christian, Cermak et al. 2010; Cermak, Doyle et al. 2011; Geissler, Scholze et al. 2011; Huang, Xiao et al. 2011; Li, Huang et al. 2011; Mahfouz, Li et al. 2011; Miller, Tan et al. 2011; Morbitzer, Romer et al. 2011; Mussolino, Morbitzer et al. 2011; Sander, Cade et al. 2011; Tesson, Usal et al. 2011; Weber, Gruetzner et al. 2011; Zhang, Cong et al. 2011; Deng, Yan et al. 2012; Li, Piatek et al. 2012; Mahfouz, Li et al. 2012; Mak, Bradley et al. 2012)。
【0043】
本発明では、養子免疫療法戦略のために、関係のある遺伝子を正確に標的化するように新たなTALE-ヌクレアーゼが設計されている。本発明による好ましいTALE-ヌクレアーゼは、SEQ ID NO:77およびSEQ ID NO:78(PD1)、SEQ ID NO:74〜SEQ ID NO:76(CTLA-4)、SEQ ID NO:37、57〜60(TCRα)、SEQ ID NO:38または39(TCRβ)からなる群より選択される標的配列を認識および切断するTALE-ヌクレアーゼである。本発明はまた、SEQ ID NO:79〜SEQ ID NO:88およびSEQ ID NO:41〜46からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むTALE-ヌクレアーゼポリペプチドに関する。
【0044】
本発明はまた、SEQ ID NO:79〜SEQ ID NO:88からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドに関する。本発明による前記レアカッティングエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、ベクターも本発明の範囲に含まれる。本方法は、本開示に記載の様々な方法のいずれか1つと関連してもよい。
【0045】
別の態様において、標的とする遺伝子を不活性化する細胞の能力を高めるために、変異誘発を高めるように、さらなる触媒ドメインが、前記レアカッティングエンドヌクレアーゼを有する細胞にさらに導入されてもよい。特に、前記さらなる触媒ドメインはDNA末端処理酵素(DNA end-processing enzyme)である。DNA末端処理酵素の非限定的な例には、5-3'エキソヌクレアーゼ、3-5'エキソヌクレアーゼ、5-3'アルカリエキソヌクレアーゼ、5'フラップエンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、ホスファターゼ、加水分解酵素、および鋳型非依存的DNAポリメラーゼが含まれる。このような触媒ドメインの非限定的な例は、hExoI(EX01_HUMAN)、酵母ExoI(EX01_YEAST)、大腸菌(E.coli)ExoI、ヒトTREX2、マウスTREX1、ヒトTREX1、ウシTREX1、ラットTREX1、TdT(末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ)、ヒトDNA2、酵母DNA2(DNA2_YEAST)からなる群より選択されるタンパク質ドメイン、またはこのタンパク質ドメインの触媒活性誘導体を含む。好ましい態様において、前記さらなる触媒ドメインは3'-5'-エキソヌクレアーゼ活性を有し、さらに好ましい態様では、前記さらなる触媒ドメインは、TREX、より好ましくはTREX2触媒ドメイン(WO2012/058458)である。別の好ましい態様において、前記触媒ドメインは単鎖TREXポリペプチド(WO2013/009525)によってコードされる。前記さらなる触媒ドメインは、任意で、ペプチドリンカーによって、本発明によるヌクレアーゼ融合タンパク質またはキメラタンパク質と融合されてもよい。
【0046】
ヌクレオチド鎖切断は相同組換えの割合を刺激することが知られている。従って、別の態様において、前記方法の遺伝子組換え工程は、相同組換えが標的核酸配列と外因性核酸との間で発生するように、少なくとも、標的核酸配列の一部に相同な配列を含む外因性核酸を細胞に導入する工程をさらに含む。特定の態様において、前記外因性核酸は、標的核酸配列の5'側の領域と相同な第1の部分および3'側の領域と相同な第2の部分を含む。これらの態様における前記外因性核酸はまた、標的核酸配列の5'側および3'側の領域と相同でない、第1の部分と第2の部分との間に配置される第3の部分も含む。標的核酸配列が切断された後に、標的核酸配列と外因性核酸との間で相同組換え事象が刺激される。好ましくは、少なくとも50bp、好ましくは100bp超、より好ましくは200bp超の相同配列が前記ドナーマトリックス内で用いられる。従って、外因性核酸は、好ましくは、200bp〜6000bp、より好ましくは1000bp〜2000bpである。実際には、共有される核酸相同性は切断部位の上流および下流に隣接する領域に配置され、導入しようとする核酸配列は、これらの2つのアーム(arm)の間に配置しなければならない。
【0047】
特に、前記外因性核酸は、前記切断の上流側にある配列と相同な第1の領域、免疫チェックポイント遺伝子、TCRα、およびTCRβからなる群より選択される1種類の標的とする遺伝子を不活性化するための配列、ならびに前記切断の下流側にある配列と相同な第2の領域を連続的に含む。前記ポリヌクレオチド導入工程は、前記レアカッティングエンドヌクレアーゼの導入または発現と同時、その前、またはその後でもよい。切断事象が起こった標的核酸配列の場所に応じて、このような外因性核酸は、例えば、外因性核酸が前記遺伝子のオープンリーディングフレーム内部に配置された場合、遺伝子をノックアウトするのに用いられてもよく、関心対象の新たな配列もしくは遺伝子を導入するのに用いられてもよい。このような外因性核酸の使用による配列挿入は、前記遺伝子の訂正または交換(非限定的な例として対立遺伝子の入れ替え)によって、既存の標的とする遺伝子を改変するのに用いられてもよく、前記標的とする遺伝子の訂正または交換(非限定的な例としてプロモーターの入れ替え)によって、標的とする遺伝子の発現をアップレギュレートまたはダウンレギュレートするのに用いられてもよい。好ましい態様において、免疫チェックポイント遺伝子、TCRα、およびTCRβからなる群からの遺伝子の不活性化は、特異的TALE-ヌクレアーゼが標的とする正確なゲノム位置において行われてもよく、前記特異的TALE-ヌクレアーゼは切断を触媒し、前記外因性核酸は、少なくとも、相同な領域、ならびに相同組換えによって組み込まれる、免疫チェックポイント遺伝子、TCRα、およびTCRβからなる群より選択される1種類の標的とする遺伝子を不活性化するための配列を連続的に含む。別の態様において、特異的な遺伝子不活性化のために、1つの規定された遺伝子およびいくつかの特定のポリヌクレオチドをそれぞれ、かつ特異的に標的とする、いくつかのTALE-ヌクレアーゼを使用することによって、いくつかの遺伝子が連続的に不活性化されてもよく、同時に不活性化されてもよい。
【0048】
さらなるゲノム改変工程とは、免疫チェックポイント遺伝子、TCRα、およびTCRβからなる群より選択される別の遺伝子の不活性化とも意図されてよい。前述のように、前記さらなるゲノム改変工程は、以下を含む不活性化工程でもよい:
(a) レアカッティングエンドヌクレアーゼが前記細胞のゲノムの1つの標的とする配列における切断を特異的に触媒するように、少なくとも1種類のレアカッティングエンドヌクレアーゼを前記細胞に導入する工程、
(b)任意で、前記切断の上流側にある配列と相同な第1の領域、前記細胞のゲノムに挿入しようとする配列、および前記切断の下流側にある配列と相同な第2の領域を連続的に含む外因性核酸を前記細胞に導入する工程であって、前記導入される外因性核酸が遺伝子を不活性化し、関心対象の少なくとも1種類の組換えタンパク質をコードする少なくとも1種類の外因性ポリヌクレオチド配列を組み込む、工程。
別の態様において、前記外因性ポリヌクレオチド配列は、免疫チェックポイント遺伝子、TCRα、およびTCRβからなる群より選択される遺伝子内に組み込まれる。
【0049】
特定の態様において、細胞を操作する前記方法は、さらなるゲノム改変工程をさらに含む。さらなるゲノム改変工程とは、関心対象の1つのタンパク質を操作するための細胞への導入と意図されてもよい。関心対象の前記タンパク質は、非限定的な例として、本開示に記載のような、pTαまたはその機能的変種、キメラ抗原受容体(CAR)、多鎖CAR、二重特異性抗体でもよい。細胞を操作する前記方法はまた、DNA切断によって、本開示に記載のような前記免疫抑制剤の標的をコードする遺伝子を選択的に不活性化することができるレアカッティングエンドヌクレアーゼを導入する工程をさらに含んでもよい。
【0050】
本発明はまたTALE-ヌクレアーゼに関する。一般的に、本発明は、
(a)免疫チェックポイント遺伝子、TCRα、およびTCRβからなる群より選択される遺伝子内の標的配列に結合するように操作されている、転写アクチベーター様エフェクター(TALE)DNA結合ドメイン、
(b)切断ドメインまたは切断半ドメイン
を含む、TALE-ヌクレアーゼに関する。
【0051】
本発明による好ましいTALE-ヌクレアーゼは、
-SEQ ID NO:77およびSEQ ID NO:78(PD1)、
-SEQ ID NO:74〜SEQ ID NO:76(CTLA-4)、
-SEQ ID NO:37、57〜60(TCRα)、および
-SEQ ID NO:38または39(TCRβ)
からなる群より選択される標的配列を認識および切断するTALE-ヌクレアーゼである。
【0052】
前記TALE-ヌクレアーゼは、好ましくは、SEQ ID NO:79〜SEQ ID NO:88からなる群より選択されるポリペプチド配列を、それぞれの標的SEQ ID NO:74〜78およびSEQ ID NO:41〜SEQ ID NO:46を切断するために、それぞれの標的配列SEQ ID NO:37〜39を切断するために含む。
【0053】
これらのポリペプチドが得られたゲノムデータから、いくらかのばらつきが生じ得るので、また、活性が大きく失われることなく、これらのポリペプチドに存在するアミノ酸のうちのいくつかが置換される可能性(機能的変種)も考慮に入れて、本発明は、この特許出願において提供される配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%の同一性を有する、上述のポリペプチドのポリペプチド変種を包含する。
【0054】
従って、本発明は、SEQ ID NO:79〜SEQ ID NO:88およびSEQ ID NO:41〜SEQ ID NO:46からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%、または99%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含むポリペプチドに関する。
【0055】
本発明による前記レアカッティングエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、ベクターも本発明の範囲に含まれる。
【0056】
本発明の範囲には、免疫チェックポイント遺伝子からなる群より選択される少なくとも1種類の遺伝子、好ましくは、PD1、CTLA-4、LAG3、Tim3、BTLA、BY55、TIGIT、B7H5、LAIR1、SIGLEC10、2B4、TCRα、およびTCRβの群より選択される遺伝子が不活性化されている、好ましくは、PD1およびTCRα、PD1およびTCRβ、CTLA-4およびTCRα、CTLA-4およびTCRβ、LAG3およびTCRα、LAG3およびTCRβ、Tim3およびTCRα、Tim3およびTCRβ、BTLAおよびTCRα、BTLAおよびTCRβ、BY55およびTCRα、BY55およびTCRβ、TIGITおよびTCRα、TIGITおよびTCRβ、B7H5およびTCRα、B7H5およびTCRβ、LAIR1およびTCRα、LAIR1およびTCRβ、SIGLEC10およびTCRα、SIGLEC10およびTCRβ、2B4およびTCRα、2B4およびTCRβからなる群より選択される2種類の遺伝子が不活性化されている、細胞、特に、T細胞を操作する前記方法によって入手することができる、単離された細胞または細胞株も包含される。
【0057】
本発明によれば、前記遺伝子は、好ましくは、少なくとも1種類のレアカッティングエンドヌクレアーゼによって不活性化される。T細胞において二重不活性化を成し遂げるためにはTALE-ヌクレアーゼを使用することが特に有利であると本発明者らによって示されている。本発明は、少なくとも2種類のポリヌクレオチドを含む単離されたT細胞を包含し、前記ポリヌクレオチドは少なくとも第1のTALE-ヌクレアーゼおよび第2のTALE-ヌクレアーゼをコードし、好ましくは、第1のTALE-ヌクレアーゼは、TCRをコードする遺伝子に対して向けられ、第2のTALE-ヌクレアーゼは、免疫チェックポイントタンパク質、例えば、PD1、CTLA-4、LAG3、Tim3、BTLA、BY55、TIGIT、B7H5、LAIR1、SIGLEC10、2B4をコードする遺伝子に対して向けられている。別の態様において、前記単離された細胞は1つのさらなるゲノム改変をさらに含む。別の態様において、前記さらなるゲノム改変は少なくとも1種類の外因性ポリヌクレオチド配列の組込みである。別の態様において、前記外因性配列は、PD1、CTLA-4、LAG3、Tim3、BTLA、BY55、TIGIT、B7H5、LAIR1、SIGLEC10、2B4、TCRα、およびTCRβからなる群より選択される1種類の遺伝子に組み込まれる。
【0058】
非アロ反応性かつ免疫抑制耐性のT細胞:
特定の局面において、本発明は、T細胞を操作する方法、特に、免疫療法のためにT細胞を操作する方法に関する。特に、この方法は、
(a)少なくとも、
-免疫抑制剤の標的を発現する第1の遺伝子、および
-T細胞受容体(TCR)の成分をコードする第2の遺伝子
を不活性化することによってT細胞を改変する工程、
(b)任意で前記免疫抑制剤の存在下で、前記細胞を増殖させる工程
を含む。
【0059】
免疫抑制剤は、いくつかの作用機序の1つによって免疫機能を抑制する薬剤である。言い換えると、免疫抑制剤は、免疫応答の程度および/または貪食を減らす能力によって示される化合物が果たす役割である。非限定的な例として、免疫抑制剤は、カルシニューリン阻害剤、ラパマイシン標的、インターロイキン-2α鎖遮断薬、イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ阻害剤、ジヒドロ葉酸還元酵素阻害剤、コルチコステロイド、または免疫抑制性代謝拮抗物質でもよい。古典的な細胞傷害性免疫抑制剤はDNA合成を阻害することによって作用する。その他の免疫抑制剤はT細胞を活性化することによって作用してもよく、ヘルパー細胞の活性化を阻害することによって作用してもよい。本発明による方法を用いると、T細胞内にある免疫抑制剤の標的を不活化することによって、免疫療法のためにT細胞に免疫抑制耐性を付与することが可能になる。非限定的な例として、免疫抑制剤の標的は、免疫抑制剤の受容体、例えば、CD52、グルココルチコイド受容体(GR)、FKBPファミリー遺伝子メンバー、およびシクロフィリンファミリー遺伝子メンバーでもよい。
【0060】
特定の態様において、前記方法の遺伝子組換え工程は、CD52、GR、TCRα、およびTCRβからなる群より選択される1種類の遺伝子の不活性化に頼る。別の態様において、前記方法の遺伝子組換え工程は、CD52およびGR、CD52およびTCRα、CDR52およびTCRβ、GRおよびTCRα、GRおよびTCRβ、TCRαおよびTCRβからなる群より選択される2種類の遺伝子の不活性化に頼る。別の態様において、前記方法の遺伝子組換え工程は2種類を超える遺伝子の不活性化に頼る。遺伝子組換えは好ましくはエクスビボで行われる。
【0061】
遺伝子を不活性化するとは、関心対象の遺伝子が機能的なタンパク質の形で発現されないことが意図される。特定の態様において、前記方法の遺伝子組換えは、あるレアカッティングエンドヌクレアーゼが、標的とするある遺伝子の切断を特異的に触媒し、それによって、この標的とする遺伝子を不活性化するような、操作しようとする準備された細胞における前記レアカッティングエンドヌクレアーゼの発現に頼る。特定の態様において、細胞を操作する前記方法は、
(a)好ましくは細胞培養物または血液試料から、T細胞を準備する工程、
(b)免疫抑制剤の標的を発現する前記T細胞内の遺伝子を選択する工程、
(c)DNA切断、好ましくは、二本鎖切断によって、
-前記免疫抑制剤の標的をコードする前記遺伝子、および
-T細胞受容体(TCR)の成分をコードする少なくとも1種類の遺伝子
をそれぞれ選択的に不活性化することができるレアカッティングエンドヌクレアーゼを前記T細胞に導入する工程、
(d)任意で前記免疫抑制剤の存在下で、前記細胞を増殖させる工程
の少なくとも1つを含む。
【0062】
さらに好ましい態様において、前記方法は、
(a)好ましくは細胞培養物または血液試料から、T細胞を準備する工程、
(b)免疫抑制剤の標的を発現する、前記T細胞内の遺伝子を選択する工程、
(c)DNA切断、好ましくは、二本鎖切断によって、
-前記免疫抑制剤の標的をコードする前記遺伝子、および
-T細胞受容体(TCR)の成分をコードする少なくとも1種類の遺伝子
をそれぞれ選択的に不活性化することができるレアカッティングエンドヌクレアーゼをコードする核酸によって、前記T細胞を形質転換する工程、
(d)前記レアカッティングエンドヌクレアーゼを前記T細胞内で発現させる工程、
(e)細胞表面にTCRを発現しない、形質転換されたT細胞を分別する工程、
(f)任意で前記免疫抑制剤の存在下で、前記細胞を増殖させる工程
を含む。
【0063】
特定の態様において、前記レアカッティングエンドヌクレアーゼは、CD52、GR、TCRα、およびTCRβからなる群より選択される1種類の遺伝子を特異的に標的化する。別の態様において、前記方法の遺伝子組換えは、2種類のレアカッティングエンドヌクレアーゼのそれぞれが、CD52およびGR、CD52およびTCRα、CDR52およびTCRβ、GRおよびTCRα、GRおよびTCRβ、TCRαおよびTCRβからなる群より選択される遺伝子ペアそれぞれの切断を特異的に、かつそれぞれ触媒し、それによって、これらの標的とする遺伝子を不活性化するような、操作しようとする準備された細胞における2種類のレアカッティングエンドヌクレアーゼの発現に頼る。別の態様において、操作しようとする細胞において、2種類を超える遺伝子を標的化および/または不活性化するために、2種類を超えるレアカッティングエンドヌクレアーゼが発現されてもよい。
【0064】
別の態様において、免疫抑制処置に特異的な、工程(b)の前記遺伝子はCD52であり、工程(d)または工程(e)の免疫抑制処置は、CD52抗原を標的とするヒト化抗体を含む。
【0065】
別の態様において、免疫抑制処置に特異的な、工程(b)の前記遺伝子はグルココルチコイド受容体(GR)であり、工程(d)または工程(e)の免疫抑制処置は、コルチコステロイド、例えば、デキサメタゾンを含む。
【0066】
別の態様において、免疫抑制処置に特異的な、工程(b)の前記遺伝子はFKBPファミリー遺伝子メンバーまたはその変種であり、工程(d)または工程(e)の免疫抑制処置は、タクロリムスまたはフジマイシン(fujimycin)とも知られるFK506を含む。別の態様において、前記FKBPファミリー遺伝子メンバーはFKBP12またはその変種である。
【0067】
別の態様において、免疫抑制処置に特異的な、工程(b)の前記遺伝子はシクロフィリンファミリー遺伝子メンバーまたはその変種であり、工程(d)または工程(e)の免疫抑制処置はシクロスポリンを含む。
【0068】
別の態様において、前記レアカッティングエンドヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、またはTALE-ヌクレアーゼでもよい。好ましい態様において、前記レアカッティングエンドヌクレアーゼはTALE-ヌクレアーゼである。本発明による好ましいTALE-ヌクレアーゼは、
-SEQ ID NO:1〜6(GR)、
-SEQ ID NO:37、57〜60(TCRα)、
-SEQ ID NO:38または39(TCRβ)、および
-SEQ ID NO:40、61〜65(CD52)
からなる群より選択される標的配列を認識および切断するTALE-ヌクレアーゼである。
【0069】
前記TALE-ヌクレアーゼは、好ましくは、SEQ ID NO:7〜SEQ ID NO:18およびSEQ ID NO:41〜SEQ ID NO:48より選択されるポリペプチド配列を、それぞれの標的配列SEQ ID NO:1〜6およびSEQ ID NO:37〜40を切断するために含む。
【0070】
別の態様において、標的とする遺伝子を不活性化する細胞の能力を高めるために、変異誘発を高めるように、さらなる触媒ドメインが、前記レアカッティングエンドヌクレアーゼを有する細胞にさらに導入されてもよい。特に、前記さらなる触媒ドメインはDNA末端処理酵素である。DNA末端処理酵素の非限定的な例には、5-3'エキソヌクレアーゼ、3-5'エキソヌクレアーゼ、5-3'アルカリエキソヌクレアーゼ、5'フラップエンドヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、ホスファターゼ、加水分解酵素、および鋳型非依存的DNAポリメラーゼが含まれる。このような触媒ドメインの非限定的な例は、hExoI(EX01_HUMAN)、酵母ExoI(EX01_YEAST)、大腸菌ExoI、ヒトTREX2、マウスTREX1、ヒトTREX1、ウシTREX1、ラットTREX1、TdT(末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ)、ヒトDNA2、酵母DNA2(DNA2_YEAST)からなる群より選択されるタンパク質ドメイン、またはこのタンパク質ドメインの触媒活性誘導体を含む。好ましい態様において、前記さらなる触媒ドメインは3'-5'-エキソヌクレアーゼ活性を有し、さらに好ましい態様では、前記さらなる触媒ドメインは、TREX、より好ましくはTREX2触媒ドメイン(WO2012/058458)である。別の好ましい態様において、前記触媒ドメインは単鎖TREXポリペプチドによってコードされる。前記さらなる触媒ドメインは、任意で、ペプチドリンカーによって、本発明によるヌクレアーゼ融合タンパク質またはキメラタンパク質と融合されてもよい。
【0071】
ヌクレオチド鎖切断は相同組換えの割合を刺激することが知られている。従って、別の態様において、前記方法の遺伝子組換え工程は、相同組換えが標的核酸配列と外因性核酸との間で発生するように、少なくとも標的核酸配列の一部に相同な配列を含む外因性核酸を細胞に導入する工程をさらに含む。特定の態様において、前記外因性核酸は、標的核酸配列の5'側の領域と相同な第1の部分および3'側の領域と相同な第2の部分を含む。これらの態様における前記外因性核酸はまた、標的核酸配列の5'側および3'側の領域と相同でない、第1の部分と第2の部分との間に配置される第3の部分も含む。標的核酸配列が切断された後に、標的核酸配列と外因性核酸との間で相同組換え事象が刺激される。好ましくは、少なくとも50bp、好ましくは100bp超、より好ましくは200bp超の相同配列が前記ドナーマトリックス内で用いられる。従って、外因性核酸は、好ましくは、200bp〜6000bp、より好ましくは1000bp〜2000bpである。実際には、共有される核酸相同性は、切断部位の上流および下流に隣接する領域に配置され、導入しようとする核酸配列は、これらの2つのアームの間に配置しなければならない。
【0072】
特に、前記外因性核酸は、前記切断の上流側にある配列と相同な第1の領域、CD52、GR、TCRα、およびTCRβからなる群より選択される1種類の標的とする遺伝子を不活性化するための配列、ならびに前記切断の下流側にある配列と相同な第2の領域を連続的に含む。前記ポリヌクレオチド導入工程は、前記レアカッティングエンドヌクレアーゼの導入または発現と同時、その前、またはその後でもよい。切断事象が起こった標的核酸配列の場所に応じて、このような外因性核酸は、例えば、外因性核酸が前記遺伝子のオープンリーディングフレーム内部に配置された場合、遺伝子をノックアウトするのに用いられてもよく、関心対象の新たな配列もしくは遺伝子を導入するのに用いられてもよい。このような外因性核酸の使用による配列挿入は、前記遺伝子の訂正または交換(非限定的な例として対立遺伝子の入れ替え)によって、既存の標的とする遺伝子を改変するのに用いられてもよく、前記標的とする遺伝子の訂正または交換(非限定的な例としてプロモーターの入れ替え)によって、標的とする遺伝子の発現をアップレギュレートまたはダウンレギュレートするのに用いられてもよい。好ましい態様において、CD52、GR、TCRα、およびTCRβからなる群からの遺伝子の不活性化は、特異的TALE-ヌクレアーゼが標的とする正確なゲノム位置において行われてもよく、前記特異的TALE-ヌクレアーゼは切断を触媒し、前記外因性核酸は、少なくとも、相同な領域、ならびに相同組換えによって組み込まれる、CD52、GR、TCRα、およびTCRβからなる群より選択される1種類の標的とする遺伝子を不活性化するための配列を連続的に含む。別の態様において、特異的な遺伝子不活性化のために、1つの規定された遺伝子およびいくつかの特定のポリヌクレオチドをそれぞれ、かつ特異的に標的とする、いくつかのTALE-ヌクレアーゼを使用することによって、いくつかの遺伝子が連続的に不活性化されてもよく、同時に不活性化されてもよい。
【0073】
さらなるゲノム改変工程とは、CD52、GR、TCRα、およびTCRβからなる群より選択される別の遺伝子の不活性化とも意図されてよい。前述のように、前記さらなるゲノム改変工程は、以下を含む不活性化工程でもよい:
(a)前記細胞のゲノムの1つの標的とする配列における切断を特異的に触媒するような少なくとも1種類のレアカッティングエンドヌクレアーゼを前記細胞に導入する工程、
(b)任意で、前記切断の上流側にある配列と相同な第1の領域、前記細胞のゲノムに挿入しようとする配列、および前記切断の下流側にある配列と相同な第2の領域を連続的に含む外因性核酸を前記細胞に導入する工程であって、前記導入された外因性核酸が遺伝子を不活性化し、関心対象の少なくとも1種類の組換えタンパク質をコードする少なくとも1種類の外因性ポリヌクレオチド配列を組み込む、工程。
別の態様において、前記外因性ポリヌクレオチド配列は、CD52、GR、TCRα、およびTCRβからなる群より選択される遺伝子内に組み込まれる。
【0074】
特定の態様において、細胞を操作する前記方法は、さらなるゲノム改変工程をさらに含む。さらなるゲノム改変工程とは、関心対象の1つのタンパク質を操作するための細胞への導入と意図されてもよい。関心対象の前記タンパク質は、非限定的な例として、本開示に記載のような、pTαまたはその機能的変種、キメラ抗原受容体(CAR)、多鎖CAR、二重特異性抗体、またはPDCD1もしくはCTLA-4を標的とするレアカッティングエンドヌクレアーゼでもよい。
【0075】
本発明はまたTALE-ヌクレアーゼに関する。一般的に、本発明は、
(a)CD52、GR、TCRα、およびTCRβからなる群より選択される遺伝子内の標的配列に結合するように操作されている、転写アクチベーター様エフェクター(TALE)DNA結合ドメイン、
(b)切断ドメインまたは切断半ドメイン
を含む、TALE-ヌクレアーゼに関する。
【0076】
本発明による好ましいTALE-ヌクレアーゼは、
-SEQ ID NO:1〜6(GR)、
-SEQ ID NO:37、57〜60(TCRα)、
-SEQ ID NO:38または39(TCRβ)、および
-SEQ ID NO:40、61〜65(CD52)
からなる群より選択される標的配列を認識および切断するTALE-ヌクレアーゼである。
【0077】
前記TALE-ヌクレアーゼは、好ましくは、SEQ ID NO:7〜SEQ ID NO:18およびSEQ ID NO:41〜SEQ ID NO:48より選択されるポリペプチド配列を、それぞれの標的配列SEQ ID NO:1〜6およびSEQ ID NO:37〜40を切断するために含む。
【0078】
これらのポリペプチドが得られたゲノムデータから、いくらかのばらつきが生じ得るので、また、活性が大きく失われることなく、これらのポリペプチドに存在するアミノ酸のうちのいくつかが置換される可能性(機能的変種)も考慮に入れて、本発明は、この特許出願において提供される配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%の同一性を有する、上述のポリペプチドのポリペプチド変種を包含する。
【0079】
従って、本発明は、SEQ ID NO:7〜SEQ ID NO:18およびSEQ ID NO:41〜SEQ ID NO:48からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%、または99%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含むポリペプチドに関する。
【0080】
本発明による前記レアカッティングエンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、ベクターも本発明の範囲に含まれる。
【0081】
本発明の範囲には、CD52、GR、TCRα、およびTCRβからなる群より選択される少なくとも1種類の遺伝子が不活性化されている、好ましくは、CD52およびGR、CD52およびTCRα、CDR52およびTCRβ、GRおよびTCRα、GRおよびTCRβ、TCRαおよびTCRβからなる群より選択される2種類の遺伝子が不活性化されている、細胞、特に、T細胞を操作する前記方法によって入手することができる、単離された細胞または細胞株も包含される。
【0082】
本発明によれば、前記遺伝子は、好ましくは、少なくとも1種類のレアカッティングエンドヌクレアーゼによって不活性化される。T細胞において二重不活性化を成し遂げるためにはTALE-ヌクレアーゼを使用することが特に有利であると本発明者らによって示されている。本発明は、少なくとも2種類のポリヌクレオチドを含む単離されたT細胞を包含し、前記ポリヌクレオチドは少なくとも第1のTALE-ヌクレアーゼおよび第2のTALE-ヌクレアーゼをコードし、好ましくは、第1のTALE-ヌクレアーゼは、TCRをコードする遺伝子に対して向けられ、第2のTALE-ヌクレアーゼは、免疫抑制剤の受容体、例えば、CD52またはGRをコードする遺伝子に対して向けられている。
【0083】
別の態様において、前記単離された細胞は1つのさらなるゲノム改変をさらに含む。別の態様において、前記さらなるゲノム改変は、少なくとも1種類の外因性ポリヌクレオチド配列の組込みである。別の態様において、前記外因性配列は、CD52、GR、TCRα、およびTCRβからなる群より選択される1種類の遺伝子に組み込まれる。
【0084】
プレTα
別の局面において、本発明は、TCRα欠損T細胞を増殖させる方法に関し、本方法は、pTα(プレTCRαとも呼ぶ)またはその機能的変種を前記T細胞に導入する工程、および任意でCD3複合体を刺激することによって、前記細胞を増殖させる工程を含む。好ましい態様において、前記方法は、
a)CD3表面発現を支援するために、少なくともpTα断片をコードする核酸で前記細胞を形質転換する工程、
b)前記pTαを前記細胞内で発現させる工程、
c)任意でCD3複合体を刺激することによって、前記細胞を増殖させる工程
を含む。
【0085】
本発明はまたT細胞を増殖させるための前記方法の工程を含む、免疫療法のためにT細胞を調製する方法に関する。
【0086】
特定の態様において、pTαポリヌクレオチド配列はランダムに導入されてもよく、そうでなければ相同組換えによって導入されてもよい。特に、この挿入はTCRα遺伝子の不活性化と関連する場合がある。
【0087】
本発明によれば、pTαの様々な機能的変種が用いられる。ペプチドの「機能的変種」とは、ペプチド全体またはその断片と実質的に類似する分子を指す。本発明のpTαまたはその機能的変種の「断片」とは、分子の任意のサブセット、すなわち、分子より短いペプチドを指す。好ましいpTαまたは機能的変種は完全長pTαでもよく、C末端切断型pTαバージョンでもよい。C末端切断型pTαはC末端にある1つまたは複数の残基を欠いている。非限定的な例として、C末端切断型pTαバージョンは、タンパク質のC末端から18個、48個、62個、78個、92個、110個、または114個の残基を欠いている(SEQ ID NO:107〜SEQ ID NO:114)。さらに、ペプチドのアミノ酸配列変種は、ペプチドをコードするDNA内の変異によって調製することができる。このような機能的変種には、例えば、アミノ酸配列内にある残基からの欠失または残基の挿入もしくは置換が含まれる。最終構築物が望ましい活性、特に、機能的CD3複合体の回復をもつのであれば、最終構築物に到達するために、欠失、挿入、および置換の任意の組み合わせが作られてもよい。好ましい態様において、前記の様々なpTαバージョンにおいて、二量体化に影響を及ぼすように少なくとも1つの変異が導入される。非限定的な例として、変異残基は、少なくとも、ヒトpTαタンパク質のW46R、D22A、K24A、R102A、もしくはR117A、またはpTαファミリーもしくはホモログメンバーにあるCLUSTALW法を用いてアラインメントされた位置でもよい。好ましくは、前記のpTαまたはその変種は、変異残基W46R(SEQ ID NO:123)、または変異残基D22A、K24A、R102A、およびR117A(SEQ ID NO:124)を含む。特定の態様において、前記pTαまたは変種はまた、非限定的な例として、CD28、OX40、ICOS、CD27、CD137(4-1BB)、およびCD8などのシグナル伝達ドメインとも融合される(SEQ ID NO:115〜SEQ ID NO:120)。前記のpTαまたは変種の細胞外ドメインは、TCRαタンパク質の断片、特に、TCRαの膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインと融合されてもよい(SEQ ID NO:122)。pTα変種はまたTCRαの細胞内ドメインとも融合されてもよい(SEQ ID NO:121)。
【0088】
別の態様において、前記pTαバージョンは細胞外リガンド結合ドメインと融合され、より好ましくは、pTαまたはその機能的変種は、可動性リンカーによってつながっている、標的抗原特異的モノクローナル抗体の軽鎖(V
L)可変断片および重鎖(V
H)可変断片を含む単鎖抗体断片(scFV)と融合される。非限定的な例として、pTαまたはその機能的変種のアミノ酸配列はSEQ ID NO:107〜SEQ ID NO:124からなる群より選択される。
【0089】
これらのポリペプチドが得られたゲノムデータから、いくらかのばらつきが生じ得るので、また、活性が大きく失われることなく、これらのポリペプチドに存在するアミノ酸のうちのいくつかが置換される可能性(機能的変種)も考慮に入れて、本発明は、この特許出願において提供される配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%の同一性を有する、上述のポリペプチドのポリペプチド変種を包含する。
【0090】
従って、本発明は、SEQ ID NO:107〜SEQ ID NO:124からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%、または99%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含むポリペプチドに関する。
【0091】
TCRα欠損T細胞とは、機能的TCRα鎖が発現しない単離されたT細胞を意図する。これは、様々な手段によって、非限定的な例として、細胞表面に機能的TCRαを全く発現しないようにT細胞を操作することによって成し遂げられてもよく、表面にごくわずかな機能的TCRα鎖しか産生しないようにT細胞を操作することによって成し遂げられてもよく、変異型TCRα鎖または切断型TCRα鎖を発現するようにT細胞を操作することによって成し遂げられてもよい。
【0092】
TCRα欠損細胞はもはやCD3複合体を介して増殖することができない。従って、この問題を克服し、かつTCRα欠損細胞の増殖を可能にするために、pTαまたはその機能的変種が前記細胞に導入され、従って、機能的CD3複合体が回復される。好ましい態様において、前記方法は、DNA切断によって、T細胞受容体(TCR)の1つの成分をコードする1種類の遺伝子を選択的に不活性化することができるレアカッティングエンドヌクレアーゼを前記T細胞に導入する工程をさらに含む。特定の態様において、前記レアカッティングエンドヌクレアーゼはTALE-ヌクレアーゼである。非限定的な例として、TALE-ヌクレアーゼは、SEQ ID NO:37およびSEQ ID NO:57〜60からなる群より選択されるTCRαの遺伝子標的配列の1つに対して作られたものである。好ましくは、TALE-ヌクレアーゼはSEQ ID NO:41およびSEQ ID NO:42からなる群より選択される。
【0093】
特定の態様において、TCRα欠損T細胞を増殖するための前記方法は、さらなるゲノム改変工程を含む。さらなるゲノム改変工程とは、関心対象の1つのタンパク質を操作するための細胞への導入と意図されてもよい。関心対象の前記タンパク質は、非限定的な例として、本開示に記載のような、キメラ抗原受容体(CAR)、特に、アミノ酸配列SEQ ID NO:73を含むCAR、多鎖CAR、特に、アミノ酸配列SEQ ID NO:125を含む多鎖CAR、二重特異性抗体、PDCD1またはCTLA-4を標的とするレアカッティングエンドヌクレアーゼ、特に、核酸配列SEQ ID NO:74〜SEQ ID NO:78を標的とするレアカッティングエンドヌクレアーゼまたは免疫抑制剤の標的を標的とするレアカッティングエンドヌクレアーゼでもよい。
【0094】
pTα、特に、前記の機能的変種をコードするポリペプチドも本発明に包含される。好ましい態様において、本発明は、CD28、OX40、ICOS、CD137、およびCD8などのシグナル伝達ドメインと融合したpTαまたはその機能的変種に関する。さらに詳細には、本発明は、SEQ ID NO:107〜SEQ ID NO:124からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むpTα機能的変種に関する。前記のpTαまたはその機能的変種をコードするポリヌクレオチド、ベクターも本発明に包含される。
【0095】
本発明の範囲には、前記方法によって入手することができる単離された細胞または細胞株も包含される。特に、前記単離された細胞または細胞株は、CD3表面発現を支援するためにpTαまたはその機能的変種を前記細胞に導入する工程によって得られる。好ましい態様において、前記単離された細胞または細胞株は、TCRα遺伝子を不活性化することによってさらに遺伝子組換えされる。この遺伝子は、少なくとも1種類のレアカッティングエンドヌクレアーゼによって不活性化される。好ましい態様において、前記レアカッティングエンドヌクレアーゼはTALE-ヌクレアーゼである。
【0096】
多鎖キメラ抗原受容体(CAR)
別の態様において、本発明は、特に本発明の操作されたT細胞の作製および増殖に合わせられた、多鎖キメラ抗原受容体(CAR)に関する。多鎖CARは、以下の成分:
a)FcεRIα鎖の膜貫通ドメインおよび細胞外リガンド結合ドメインを含む1つのポリペプチド、
b)FcεRIβ鎖のN末端細胞質テールおよびC末端細胞質テールの一部ならびに膜貫通ドメインを含む1つのポリペプチド、ならびに/または
c)それぞれが、FcεRIγ鎖の細胞質内テールの一部および膜貫通ドメイン含む2つのポリペプチド
の少なくとも2つを含み、異なるポリペプチドが自発的に一緒になって多量体化して、二量体CAR、三量体CAR、または四量体CARを形成する。
【0097】
四量体CARの一例を
図3に図示した。多鎖CARの様々なバージョンを
図4に示した。多鎖CARの一例はアミノ酸配列SEQ ID NO:125を含む。本明細書で使用する「の一部」という用語は、分子の任意のサブセット、すなわち、分子より短いペプチドを指す。または、ポリペプチドのアミノ酸配列機能的変種は、ポリペプチドをコードするDNA内の変異によって調製することができる。このような機能的変種には、例えば、アミノ酸配列内にある残基からの欠失または残基の挿入もしくは置換が含まれる。最終構築物が望ましい活性をもつのであれば、特に、特異的な抗標的細胞免疫活性を示すのであれば、最終構築物に到達するために、欠失、挿入、および置換の任意の組み合わせを作ることができる。
【0098】
好ましい態様において、前記細胞外リガンド結合ドメインはscFvである。リンパ球の予め規定された標的化のために、scFv以外の結合ドメイン、例えば、非限定的な例として、ラクダ科シングルドメイン抗体断片、または血管内皮増殖因子ポリペプチドのような受容体リガンド、インテグリン結合ペプチド、ヘレグリンまたはIL-13ムテイン、抗体結合ドメイン、抗体超可変ループまたはCDRも使用することができる。
【0099】
好ましい態様において、a)の前記ポリペプチドは、前記細胞外リガンド結合ドメインと前記膜貫通ドメインとの間にストーク領域をさらに含む。本明細書で使用する「ストーク領域」という用語は、一般的に、膜貫通ドメインを細胞外リガンド結合ドメインに連結するように機能する任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドを意味する。特に、ストーク領域は、細胞外リガンド結合ドメインにさらなる可動性および接近性を与えるために用いられる。ストーク領域は、300個までのアミノ酸、好ましくは10〜100個のアミノ酸、最も好ましくは25〜50個のアミノ酸を含んでもよい。ストーク領域は、天然分子の全てもしくは一部、例えば、CD8、CD4、もしくはCD28の細胞外領域の全てもしくは一部、または抗体定常領域の全てもしくは一部から得られてもよい。または、ストーク領域は天然ストーク配列に対応する合成配列でもよく、完全に合成のストーク配列でもよい。
【0100】
好ましい態様において、a)、b)、および/またはc)の前記ポリペプチドは少なくとも1つのシグナル伝達ドメインをさらに含む。最も好ましい態様において、前記シグナル伝達ドメインは、CD28、OX40、ICOS、CD137、およびCD8からなる群より選択される。
【0101】
好ましい態様において、FcεRIα鎖、β鎖、および/またはγ鎖断片の前記C末端細胞質テールはTNFR関連因子2(TRAF2)結合モチーフをさらに含む。最も好ましい態様において、FcεRIα鎖、β鎖、および/またはγ鎖の前記C末端細胞質テールは共刺激TNFRメンバーファミリーの細胞質内テールと交換される。共刺激TNFRメンバーファミリーの細胞質テールは、メジャーな保存されたモチーフ(P/S/A)X(Q/E)E)またはマイナーモチーフ(PXQXXD)からなるTRAF2結合モチーフを含有する。式中、Xは任意のアミノ酸である。TRAFタンパク質は、受容体三量体形成に応答して多くのTNFRの細胞内テールに動員される。
【0102】
別の好ましい態様において、FcεRIα鎖、β鎖、および/またはγ鎖の前記細胞質内ドメインは、TCRζ鎖(CD3ζとも呼ぶ)の細胞質内ドメインと交換される。別の好ましい態様において、FcεRIα鎖、β鎖、および/またはγ鎖の前記細胞質内ドメインは少なくとも1つのさらなる免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含む。ITAMは、syk/zap70クラスチロシンキナーゼの結合部位として働く、様々な受容体の細胞質内テールに発見された詳細に明らかにされたシグナル伝達モチーフである。本発明において用いられるITAMの例には、TCRζ、FCRγ、FCRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dに由来するITAMが含まれる。
【0103】
非限定的な例として、多鎖CARの様々なバージョンを
図4に図示した。
【0104】
好ましい態様において、多鎖CARはアミノ酸配列SEQ ID NO:125を含む。本発明は、SEQ ID NO:125からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、95%、97%、または99%の配列同一性を有するポリペプチド配列を含むポリペプチドに関する。
【0105】
本発明による前記多鎖CARをコードするポリヌクレオチド、ベクターも本発明の範囲に含まれる。
【0106】
包含される特定の態様において、本発明は、免疫療法のためにT細胞を調製する方法に関し、本方法は、前記多鎖CARを含む異なるポリペプチドを前記T細胞に導入する工程、および前記細胞を増殖させる工程を含む。
【0107】
別の態様において、前記方法は、TCRの1つの成分および/または免疫抑制剤の標的を発現する少なくとも1種類の遺伝子を不活性化することによって前記細胞を遺伝子組換えする工程をさらに含む。好ましい態様において、前記遺伝子は、TCRα、TCRβ、CD52、およびGRからなる群より選択される。好ましい態様において、前記方法は、DNA切断によって前記遺伝子を選択的に不活性化することができるレアカッティングエンドヌクレアーゼを前記T細胞に導入する工程をさらに含む。さらに好ましい態様において、前記レアカッティングエンドヌクレアーゼはTALE-ヌクレアーゼである。本発明による好ましいTALE-ヌクレアーゼは、SEQ ID NO:1〜6(GR)、SEQ ID NO:37、57〜60(TCRα)、SEQ ID NO:38または39(TCRβ)、およびSEQ ID NO:40、SEQ ID NO:61〜SEQ ID NO:65(CD52)からなる群より選択される標的配列を認識および切断するTALE-ヌクレアーゼである。
【0108】
特定の態様において、前記方法は、さらなるゲノム改変工程をさらに含む。さらなるゲノム改変工程とは、関心対象の1つのタンパク質を操作するための細胞への導入と意図されてもよい。関心対象の前記タンパク質は、非限定的な例として、本開示に記載のような、二重特異性抗体、PDCD1またはCTLA-4を標的とするレアカッティングエンドヌクレアーゼ、pTαまたはその機能的変種でもよい。
【0109】
本発明はまた、細胞を操作する前記方法によって入手することができる、単離された細胞または細胞株に関する。特に、前記単離された細胞は、前記多鎖CARを含むポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチド配列を含む。
【0110】
二重特異性抗体
さらなる態様によれば、以前に述べた様々な方法によって得られた操作されたT細胞は、二重特異性抗体を用いてさらに曝露されてもよい。前記T細胞は、患者に投与される前にエクスビボで、または患者に投与された後でインビボで、二重特異性抗体に曝露されてもよい。前記二重特異性抗体は、別個の抗原特性をもつ2つの可変領域を含み、これにより、操作された細胞は標的抗原に近接することができる。非限定的な例として、前記二重特異性抗体は、腫瘍マーカーおよびリンパ球抗原、例えば、CD3に対して向けられ、腫瘍に対する任意の循環T細胞を再誘導および活性化する能力を有する。
【0111】
送達方法
前記の様々な方法は、pTαまたはその機能的変種、レアカッティングエンドヌクレアーゼ、TALE-ヌクレアーゼ、CARまたは多鎖CARを、任意で、DNA末端処理酵素または外因性核酸と共に細胞に導入する工程を伴う。
【0112】
非限定的な例として、前記pTαまたはその機能的変種、レアカッティングエンドヌクレアーゼ、TALE-ヌクレアーゼ、CARまたは多鎖CARは、任意で、DNA末端処理酵素または外因性核酸と共に、1つのプラスミドベクターまたは異なるプラスミドベクターによってコードされるトランスジーンとして導入されてもよい。異なるトランスジーンが、リボソームスキップ(ribosomal skip)配列をコードする核酸配列、例えば、2Aペプチドをコードする配列を含む1つのベクターに入れられてもよい。ピコルナウイルスのアフトウイルス属(Aphthovirus)サブグループにおいて特定された2Aペプチドがあると、リボソームは、コドンによってコードされる2個のアミノ酸間にペプチド結合を形成することなく、あるコドンから次のコドンに「スキップ」する(Donnelly et al., J. of General Virology 82: 1013-1025 (2001); Donnelly et al., J. of Gen. Virology 78: 13-21 (1997); Doronina et al., Mol. And. Cell. Biology 28(13): 4227-4239 (2008); Atkins et al., RNA 13: 803-810 (2007)を参照されたい)。「コドン」とは、リボソームによって、1個のアミノ酸残基に翻訳される、mRNA上にある(またはDNA分子センス鎖上にある)3個のヌクレオチドを意味する。従って、ポリペプチドが、インフレームの2Aオリゴペプチド配列で分けられたとき、mRNAの中にある1つの連続したオープンリーディングフレームから2つのポリペプチドが合成される場合がある。このようなリボソームスキップ機構は当技術分野において周知であり、1つのメッセンジャーRNAによってコードされるいくつかのタンパク質を発現させるために、いくつかのベクターによって用いられることが知られている。非限定的な例として、本発明では、レアカッティングエンドヌクレアーゼおよびDNA末端処理酵素または多鎖CARの異なるポリペプチドを細胞内で発現させるために2Aペプチドが用いられた。
【0113】
前記プラスミドベクターは、前記ベクターを受け取った細胞を特定および/または選択する選択マーカーを含有してもよい。
【0114】
前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞に導入した結果として、ポリペプチドはインサイチューで細胞内で合成されてもよい。または、前記ポリペプチドは細胞外で産生され、次いで、細胞に導入される場合がある。ポリヌクレオチド構築物を動物細胞に導入するための方法は当技術分野において公知であり、非限定的な例として、ポリヌクレオチド構築物が細胞ゲノムに組み込まれる安定形質転換法、ポリヌクレオチド構築物が細胞ゲノムに組み込まれない一過的形質転換法、およびウイルスを介した方法を含む。前記ポリヌクレオチドは、例えば、組換えウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス)、リポソームなどによって細胞に導入されてもよい。例えば、一過的形質転換法には、例えば、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、またはパーティクルボンバードメントが含まれる。前記ポリヌクレオチドは、細胞内で発現されることを考えて、ベクター、さらに詳細にはプラスミドまたはウイルスに含まれてもよい。
【0115】
エレクトロポレーション
本発明のさらに好ましい態様では、本発明によるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、例えば、エレクトロポレーションによって、細胞に直接導入されるmRNAでもよい。本発明者らは、T細胞におけるmRNAエレクトロポレーションに最適な条件を確かめた。
【0116】
本発明者は、パルス電場を用いることで、材料を細胞に送達するために生細胞を一過的に透過処理するのを可能にするcytoPulse技術を使用した。この技術は、PulseAgile(Cellectisの所有権)エレクトロポレーション波形の使用に基づいており、パルス持続時間、強度、ならびにパルス間の間隔の正確な制御を与える(米国特許第6,010,613号および国際PCT出願WO2004083379)。高いトランスフェクション効率と最低限の死のための最高条件に達するために、これらのパラメータは全て変更することができる。基本的には、最初の高電場パルスによって孔が形成するのに対して、その後の低電場パルスによってポリヌクレオチドは細胞内に移動する。本発明の一局面において、本発明者は、T細胞におけるmRNAの>95%トランスフェクション効率の達成につながった工程、およびT細胞において様々な種類のタンパク質を一過的に発現させるためのエレクトロポレーションプロトコールの使用について説明する。特に、本発明は、T細胞を形質転換する方法に関し、本方法は、前記T細胞をRNAと接触させる工程と、
(a)電圧範囲が2250〜3000V/センチメートルであり、パルス幅が0.1msであり、工程(a)の電気パルスと(b)の電気パルスとの間のパルス間隔が0.2〜10msである、1回の電気パルス、
(b)電圧範囲が2250〜3000Vであり、パルス幅が100msであり、工程(b)の電気パルスと工程(c)の最初の電気パルスとの間のパルス間隔が100msである、1回の電気パルス、;および
(c)電圧が325Vであり、パルス幅が0.2msであり、4回それぞれの電気パルス間のパルス間隔が2msである、4回の電気パルス
からなる素早いパルスシーケンスをT細胞に適用する工程を含む。
【0117】
特定の態様において、T細胞を形質転換する方法は、前記T細胞をRNAと接触させる工程と、
(a)電圧が2250V、2300V、2350V、2400V、2450V、2500V、2550V、2400V、2450V、2500V、2600V、2700V、2800V、2900V、または3000V/センチメートルであり、パルス幅が0.1msであり、工程(a)の電気パルスと(b)の電気パルスとの間のパルス間隔が0.2ms、0.5ms、1ms、2ms、3ms、4ms、5ms、6ms、7ms、8ms、9ms、または10msである、1回の電気パルス、;
(b)電圧範囲が2250V、2250V、2300V、2350V、2400V、2450V、2500V、2550V、2400V、2450V、2500V、2600V、2700V、2800V、2900V、または3000Vであり、パルス幅が100msであり、工程(b)の電気パルスと工程(c)の最初の電気パルスとの間のパルス間隔が100msである、1回の電気パルス、および
(c)電圧が325Vであり、パルス幅が0.2msであり、4回それぞれの電気パルス間のパルス間隔が2msである、4回の電気パルス
からなる素早いパルスシーケンスをT細胞に適用する工程とを含む。
【0118】
前記の値の範囲に含まれる任意の値が本願において開示される。エレクトロポレーション培地は当技術分野において公知の任意の適切な培地でよい。好ましくは、エレクトロポレーション培地の伝導率は0.01〜1.0ミリシーメンスの範囲である。
【0119】
特定の態様において、非限定的な例として、前記RNAは、レアカッティングエンドヌクレアーゼ、レアカッティングエンドヌクレアーゼの1つの単量体、例えば、半TALE-ヌクレアーゼ、キメラ抗原受容体、多鎖キメラ抗原受容体の少なくとも1つの成分、pTαまたはその機能的変種、外因性核酸、1つのさらなる触媒ドメインをコードする。
【0120】
T細胞の活性化および増殖
T細胞を遺伝子組換えする前でも遺伝子組換えした後でも、T細胞は、一般的に、例えば、米国特許第6,352,694号;同第6,534,055号;同第6,905,680号;同第6,692,964号;同第5,858,358号;同第6,887,466号;同第6,905,681号;同第7,144,575号;同第7,067,318号;同第7,172,869号;同第7,232,566号;同第7,175,843号;同第5,883,223号;同第6,905,874号;同第6,797,514号;同第6,867,041号;および米国特許出願公開第20060121005号に記載の方法を用いて活性化および増殖することができる。T細胞はインビトロで増殖させてもよく、インビボで増殖させてもよい。
【0121】
一般的に、本発明のT細胞は、CD3 TCR複合体関連シグナルを刺激する薬剤と、T細胞表面にある共刺激分子を刺激するリガンドが取り付けられている表面と接触させることによって増殖する。
【0122】
特に、T細胞集団は、インビトロでは、例えば、表面に固定化された抗CD3抗体もしくはその抗原結合断片または抗CD2抗体との接触によって刺激されてもよく、プロテインキナーゼCアクチベーター(例えば、ブリオスタチン)とカルシウムイオノフォアとの接触によって刺激されてもよい。T細胞表面にあるアクセサリー分子を同時刺激するために、アクセサリー分子に結合するリガンドが用いられる。例えば、T細胞増殖を刺激するのに適した条件下で、T細胞集団を抗CD3抗体および抗CD28抗体と接触させることができる。CD4+T細胞またはCD8+T細胞の増殖を刺激するために、抗CD3抗体および抗CD28抗体。例えば、それぞれのシグナルを供給する薬剤が溶解状態にあってもよく、表面に結合されてもよい。当業者が容易に理解することができるように、粒子と細胞との比は標的細胞に対する粒径によって決まる場合がある。本発明のさらなる態様において、T細胞などの細胞は薬剤コーティングビーズと組み合わされ、ビーズおよび細胞は後で分離され、次いで、細胞は培養される。別の態様では、培養前に薬剤コーティングビーズおよび細胞は分離されず、一緒に培養される。抗CD3および抗CD28が取り付けられている常磁性ビーズ(3x28ビーズ)がT細胞と接触するのを可能にすることで、細胞表面タンパク質が連結される場合がある。一態様では、細胞(例えば、4〜10個のT細胞)およびビーズ(例えば、1:1比のDYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 T常磁性ビーズ)が、緩衝液中、好ましくは、PBS(カルシウムおよびマグネシウムなどの二価カチオンを含まない)の中で組み合わされる。これもまた、任意の細胞濃度を使用できることを当業者は容易に理解することができる。混合物は数時間(約3時間)〜約14日間、培養されてもよく、その間の任意の整数値の時間にわたって培養されてもよい。別の態様では、混合物は21日間、培養されてもよい。T細胞培養に適した条件には、血清(例えば、胎仔ウシ血清ウシまたは胎児ヒト血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インシュリン、IFN-g、1L-4、1L-7、GM-CSF、-10、-2、1L-15、TGFp、およびTNF-、または当業者に公知の細胞増殖のための他の任意の添加物を含む、増殖および生存に必要な因子を含有し得る適切な培地(例えば、最小必須培地またはRPMI培地1640またはX-vivo 5(Lonza))が含まれる。細胞増殖のための他の添加物には、界面活性剤、プラスマネート(plasmanate)、および還元剤、例えば、N-アセチル-システインおよび2-メルカプトエタノールが含まれるが、これに限定されない。培地には、アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、およびビタミンが添加され、無血清の、あるいは適量の血清(もしくは血漿)、または規定された一組のホルモン、ならびに/またはT細胞の成長および増殖に十分な量のサイトカインが加えられた、RPMI 1640、A1M-V、DMEM、MEM、a-MEM、F-12、X-Vivo 1、およびX-Vivo 20、Optimizerが含まれ得る。抗生物質、例えば、ペニシリンおよびストレプトマイシンは実験的培養物にだけ含まれ、対象に注入される細胞の培養物には含まれない。標的細胞は、増殖を支援するのに必要な条件、例えば、適切な温度(例えば、37℃)および雰囲気(例えば、空気+5%CO2)の下で維持される。異なる刺激時間に曝露されたT細胞は異なる特徴を示す場合がある。
【0123】
別の特定の態様において、前記細胞は組織または細胞と共培養することによって増殖させてもよい。前記細胞はまたインビボで増殖させてもよく、例えば、前記細胞を対象に投与した後に対象の血液中で増殖させてもよい。
【0124】
改変されたT細胞
本発明の範囲には、以前に述べられた方法のいずれか一つに従って得られた単離されたT細胞も包含される。本発明による前記T細胞は幹細胞に由来してもよい。幹細胞は、成人幹細胞、胚性幹細胞、さらに詳細には、非ヒト幹細胞、臍帯血幹細胞、前駆細胞、骨髄幹細胞、人工多能性幹細胞、全能性幹細胞、たは造血幹細胞でもよい。代表的なヒト細胞はCD34+細胞である。前記単離された細胞はまた、樹状細胞、NK細胞、B細胞、または炎症性Tリンパ球、細胞傷害性Tリンパ球、制御性Tリンパ球、もしくはヘルパーTリンパ球からなる群より選択されるT細胞でもよい。別の態様において、前記細胞は、CD4+Tリンパ球およびCD8+Tリンパ球からなる群に由来してもよい。本発明の細胞の増殖および遺伝子組換えの前に、様々な非限定的な方法によって対象から細胞供給源を得ることができる。T細胞は、末梢血単核球、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位に由来する組織、腹水、胸水、脾臓組織、および腫瘍を含む多数の非限定的な供給源から得ることができる。本発明のある特定の態様では、入手可能であり、かつ当業者に公知の任意の数のT細胞株を使用することができる。別の態様において、前記細胞は健常ドナーから得られてもよく、癌と診断された患者または感染症と診断された患者から得られてもよい。別の態様において、前記細胞は、異なる表現型特徴を示す細胞の混合集団の一部でもよい。本発明の範囲には、以前に述べられた方法による形質転換T細胞から得られた細胞株も包含される。免疫抑制処置に対して耐性があり、かつ前記の方法によって入手することができる改変された細胞が本発明の範囲に包含される。
【0125】
別の態様において、本発明による前記単離された細胞は、CD52、GR、PD1、CTLA-4、LAG3、Tim3、BTLA、BY55、TIGIT、B7H5、LAIR1、SIGLEC10、2B4、TCRα、およびTCRβからなる群より選択される1種類の不活性化された遺伝子を含む、ならびに/またはCAR、多鎖CAR、および/もしくはpTαトランスジーンを発現する。別の態様において、本発明による前記単離された細胞は、CD52およびGR、CD52およびTCRα、CDR52およびTCRβ、GRおよびTCRα、GRおよびTCRβ、TCRαおよびTCRβ、PD1およびTCRα、PD1およびTCRβ、CTLA-4およびTCRα、CTLA-4およびTCRβ、LAG3およびTCRα、LAG3およびTCRβ、Tim3およびTCRα、Tim3およびTCRβ、BTLAおよびTCRα、BTLAおよびTCRβ、BY55およびTCRα、BY55およびTCRβ、TIGITおよびTCRα、TIGITおよびTCRβ、B7H5およびTCRα、B7H5およびTCRβ、LAIR1およびTCRα、LAIR1およびTCRβ、SIGLEC10およびTCRα、SIGLEC10およびTCRβ、2B4およびTCRα、2B4およびTCRβからなる群より選択される2種類の不活性化された遺伝子を含む、ならびに/またはCAR、多鎖CAR、および/もしくはpTαトランスジーンを発現する。
【0126】
別の態様において、TCRα遺伝子および/またはTCRβ遺伝子を不活性化することによって、TCRは本発明による細胞において機能しなくなる。前述の戦略は、さらに詳細にはGvHDを回避するために用いられる。本発明の特定の局面において、個体に由来する改変された細胞を得る方法であって、前記細胞が主要組織適合遺伝子複合体シグナル伝達経路とは独立して増殖することができる方法がある。前記方法は、:
(a)前記個体から細胞を回収する工程、
(b)TCRα遺伝子またはTCRβ遺伝子を不活性化することによって前記細胞をエクスビボで遺伝子組換えする工程、
(c)遺伝子組換えされたT細胞をインビトロで適切な条件下で培養して、前記細胞を増幅する工程
を含む。
【0127】
この方法によって入手することができる、主要組織適合遺伝子複合体シグナル伝達経路とは独立して増殖することができる改変された細胞が本発明の範囲に包含される。前記改変された細胞は、本発明の特定の局面では、宿主対移植片(HvG)拒絶反応および移植片対宿主病(GvHD)に対する処置を必要とする患者を処置するために使用することができる。従って、宿主対移植片(HvG)拒絶反応および移植片対宿主病(GvHD)に対する処置を必要とする患者を処置する方法であって、不活性化されたTCRα遺伝子および/またはTCRβ遺伝子を含む有効量の改変された細胞を前記患者に投与することによって前記患者を処置する工程を含む方法が本発明の範囲にある。
【0128】
治療用途
別の態様において、以前に述べられた様々な方法によって得られた単離された細胞または前記単離された細胞に由来する細胞株は医薬として使用することができる。別の態様において、前記医薬は、癌または感染症の処置を必要とする患者において癌または感染症を処置するのに使用することができる。別の態様において、本発明による前記単離された細胞または前記単離された細胞に由来する細胞株は、癌またはウイルス感染症の処置を必要とする患者において癌またはウイルス感染症を処置するための医薬の製造において使用することができる。
【0129】
別の局面において、本発明は、処置を必要とする患者において患者を処置するための方法に依拠し、本方法は、
(a)以前に述べた方法のいずれか1つによって入手可能なT細胞を準備する工程、
(b)前記形質転換されたT細胞を前記患者に投与する工程
の少なくとも1つを含む。
【0130】
一態様において、本発明の前記T細胞は活発にインビボでT細胞増殖することができ、長期間にわたって持続することができる。
【0131】
前記処置は、寛解させる処置でもよく、根治的処置でもよく、予防的処置でもよい。前記処置は自己由来免疫療法の一環でもよく、同種異系免疫療法処置の一環でもよい。自己由来とは、患者の処置に用いられる細胞、細胞株、または細胞集団が前記患者またはヒト白血球抗原(HLA)適合ドナーに由来することを意味する。同種異系とは、患者の処置に用いられる細胞または細胞集団が前記患者に由来しないが、ドナーに由来することを意味する。
【0132】
本発明は、T細胞、典型的にはドナーから得られたT細胞を形質転換して非アロ反応性細胞にすることができる限り同種異系免疫療法に特に適している。これは標準的なプロトコール下で行われ、必要に応じて何回でも再現される場合がある。結果として得られた改変されたT細胞はプールされ、1人または数人の患者に投与される場合があり、それによって「既製の」治療製品として利用可能になる。
【0133】
開示された方法と共に使用することができる細胞は前の項において説明されている。前記処置は、癌、ウイルス感染症、自己免疫障害、または移植片対宿主病(GvHD)と診断された患者を処置するのに使用することができる。処置され得る癌には、血管新生していない腫瘍、またはまだ実質的に血管新生していない腫瘍、ならびに血管新生した腫瘍が含まれる。癌は、非固形腫瘍(例えば、血液腫瘍、例えば、白血病、およびリンパ腫)を含んでもよく、固形腫瘍を含んでもよい。本発明のCARを用いて処置される癌のタイプには、癌腫、芽腫、および肉腫、ならびにある特定の白血病またはリンパ系腫瘍、良性腫瘍および悪性腫瘍、ならびに悪性疾患、例えば、肉腫、癌腫、および黒色腫が含まれるが、これに限定されない。成人腫瘍/癌および小児科腫瘍/癌も含まれる。
【0134】
それは、抗体治療、化学療法、サイトカイン治療、樹状細胞治療、遺伝子治療、ホルモン治療、レーザー光線治療、および放射線治療の群より選択される、癌に対する1種以上の治療との組み合わせ処置であり得る。
【0135】
本発明の好ましい態様によると、処置は、免疫抑制処置を受けている患者に施すことができる。実際、本発明は、好ましくは、そのような免疫抑制剤の受容体をコードする遺伝子の不活性化のため、少なくとも1種の免疫抑制剤に対して抵抗性にされた細胞または細胞の集団に依拠する。この局面において、免疫抑制処置は、患者における本発明によるT細胞の選択および増大を支援するべきである。
【0136】
本発明による細胞または細胞の集団の投与は、エアロゾル吸入、注射、経口、輸液、植え込み、または移植を含む、便利な様式で実施され得る。本明細書に記載された組成物は、皮下に、皮内に、腫瘍内に、結節内に、髄内に、筋肉内に、静脈注射もしくはリンパ内注射によって、または腹腔内に、患者へ投与され得る。一つの態様において、本発明の細胞組成物は、好ましくは、静脈注射によって投与される。
【0137】
細胞または細胞の集団の投与は、これらの範囲内の細胞数の全ての整数値を含む、体重1kg当たり10
4〜10
9個の細胞、好ましくは、体重1kg当たり10
5〜10
6個の細胞の投与からなり得る。細胞または細胞の集団は、単回投与されてもよいしまたは複数回投与されてもよい。別の態様において、有効量の細胞が、単回投与される。別の態様において、有効量の細胞が、ある期間にわたり複数回投与される。投与のタイミングは、管理する医師の判断にあり、患者の臨床状態に依る。細胞または細胞の集団は、血液バンクまたはドナーのような任意の起源から入手され得る。個々の必要性は変動するが、特定の疾患または状態のための所定の細胞型の有効量の最適範囲の決定は、当技術分野の技術の範囲内にある。有効量とは、治療的または予防的な利益を提供する量を意味する。投与される投薬量は、レシピエントの年齢、健康、および体重、もしあれば、同時処置の種類、処置の頻度、ならびに望まれる効果の性質に依存するであろう。
【0138】
別の態様において、有効量の細胞またはそれらの細胞を含む組成物は、非経口投与される。投与は、静脈内投与であり得る。投与は、腫瘍内への注射によって直接行われてもよい。
【0139】
本発明のある種の態様において、細胞は、抗ウイルス治療、シドホビル、およびインターロイキン2、シタラビン(ARA-Cとしても公知)のような薬剤による処置、またはMS患者のためのナタリズマブ処置、または乾癬患者のためのエファリズマブ処置、またはPML患者のためのその他の処置を含むが、これらに限定されない、多数の関連する処置モダリティと共に(例えば、前に、同時に、または後に)患者へ投与される。さらなる態様において、本発明のT細胞は、化学療法、放射線、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸、およびFK506のような免疫抑制剤、抗体、またはCAMPATH、抗CD3抗体、もしくはその他の抗体治療のようなその他の免疫除去(immunoablative)剤、シトキシン(cytoxin)、フルダラビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、サイトカイン、ならびに照射と組み合わせて使用されてもよい。これらの薬物は、カルシウム依存性ホスファターゼカルシニューリンを阻害するか(シクロスポリンおよびFK506)、または増殖因子によって誘導されるシグナリングにとって重要なp70S6キナーゼを阻害する(ラパマイシン)(Liu et al., Cell 66:807-815, 1 1; Henderson et al., Immun. 73:316-321, 1991; Bierer et al., Citrr. Opin. mm n. 5:763-773, 93)。さらなる態様において、本発明の細胞組成物は、骨髄移植、フルダラビン、外部照射治療(XRT)、シクロホスファミドのような化学療法剤、またはOKT3もしくはCAMPATHのような抗体のいずれかを使用したT細胞除去治療と共に(例えば、前に、同時に、または後に)患者へ投与される。別の態様において、本発明の細胞組成物は、CD20と反応する薬剤、例えば、リツキサンのようなB細胞除去治療の後に投与される。例えば、一つの態様において、対象は、高用量化学療法による標準的な処置を受けた後、末梢血幹細胞移植を受けることができる。ある種の態様において、移植の後、対象は、増大させた本発明の免疫細胞の注入を受ける。付加的な態様において、増大させた細胞は、手術の前または後に投与される。本明細書に記載の方法のいずれか1つによって得られた前記改変された細胞は、宿主対移植片(HvG)拒絶反応および移植片対宿主病(GvHD)に対する処置を必要とする患者を処置するために本発明の特定の局面において使用することができる。従って、宿主対移植片(HvG)拒絶反応および移植片対宿主病(GvHD)に対する処置を必要とする患者を処置する方法であって、不活性化されたTCRα遺伝子および/またはTCRβ遺伝子を含む有効量の改変された細胞を前記患者に投与することによって、前記患者を処置する工程を含む方法が本発明の範囲にある。
【0140】
免疫療法のためにヒト同種異系細胞を操作する方法の例
本発明をさらに深く理解するために、免疫療法のためにヒト同種異系細胞を操作する方法の一例を
図5に図示した。この方法は、以下の工程の1つまたはいくつかからなる組み合わせを含む。
1.患者一人一人または血液バンクから入手した細胞培養物または血液試料からT細胞を準備する工程、および抗CD3/C28アクチベータービーズを用いて前記T細胞を活性化する工程。このビーズは、T細胞の活性化および増殖に必要な一次シグナルおよび共刺激シグナルを両方とも供給する。
2.a)CD3表面発現を支援するために、およびCD3複合体刺激を介した細胞の増殖を可能にするために、前記細胞にpTαまたはその機能的変種のトランスジーンを形質導入する工程。TCR破壊はTCR複合体を無くし、アロ反応性(GvHD)を取り除くと予想されるが、CD3シグナル伝達成分が消失するために同種異系細胞増殖を変える可能性がある。形質導入された細胞はpTα鎖またはその機能的変種を発現すると予想される。このpTα鎖はTCRβ鎖およびCD3シグナル伝達成分と対になってプレTCR複合体を形成し、従って、機能的CD3複合体を回復させ、不活性化TCRα細胞の活性化または刺激を支援する。TCRα不活性化前またはTCRα不活性化後に、pTαレンチウイルスベクターがT細胞に形質導入され得る。
b)前記細胞に多鎖CARを形質導入すると、リンパ腫および固形腫瘍を含む様々な悪性疾患に由来する標的細胞の表面に発現している抗原に対してT細胞を再誘導することが可能になる。共刺激ドメインの機能を改善するために、本発明者らは、以前に述べたようにFcεRIに由来する多鎖CARを設計した。形質導入がTCRαおよびCD52遺伝子などの他の遺伝子の不活性化の前に成し遂げられてもよく、TCRαおよびCD52遺伝子などの他の遺伝子の不活性化の後に成し遂げられてもよい。
3.非アロ反応性かつ免疫抑制耐性のT細胞を操作する工程:
a)細胞表面からTCRを無くし、同種異系TCRが宿主組織を異物として認識するのを阻止し、従って、GvHDを回避するために、前記細胞においてTCRαを不活性化することが可能である。
b)移植されたT細胞に影響を及ぼすことなく移植片拒絶反応を阻止するために、前記細胞が免疫抑制処置に対して耐性になるように、免疫抑制剤の標的をコードする1種類の遺伝子を不活性化することも可能である。この例では、免疫抑制剤の標的はCD52であり、免疫抑制剤はヒト化モノクローナル抗CD52抗体である。
T細胞において前述の二重不活性化を成し遂げるためには、T細胞内で高いDSB事象率を可能にすることでTALE-ヌクレアーゼを使用することが特に有利であると本発明者らによって示されている。好ましくは、TCRα遺伝子およびCD52遺伝子を標的とするTALE-ヌクレアーゼをコードするmRNAを用いてT細胞をエレクトロポレーション処理することによって前記遺伝子を不活性化する。高い形質転換率をもたらすmRNAを使用することはT細胞に有害でなく、そのため、T細胞を操作するプロセスにおいて重大な意味を持ったことが本発明者らによって見出された。次いで、磁気ビーズを用いて不活性化T細胞を分別した。例えば、CD52を発現するT細胞は固体表面への固定化によって除去され、不活性化細胞は、カラムを通るストレスに曝露されない。この穏やかな方法によって、正しく操作されたT細胞の濃度が上昇する。
4.操作されたT細胞を、CD3複合体刺激を介して、患者に投与する前にインビトロで増殖させるか、または患者に投与した後にインビボで増殖させる。投与工程の前に、患者を、ヒト化モノクローナル抗体抗CD52であるCAMPATH1-Hなどの免疫抑制処置に供することができる。
5.任意で、操作された細胞を標的抗原に近接させるために、前記細胞を患者に投与する前にエクスビボで二重特異性抗体に曝露するか、または前記細胞を患者に投与した後にインビボで二重特異性抗体に曝露する。
【0141】
他の定義
ポリペプチド配列内のアミノ酸残基は、1文字コードによって本明細書において表記され、例えば、QはGln、すなわちグルタミン残基を意味し、RはArg、すなわちアルギニン残基を意味し、DはAsp、すなわちアスパラギン酸残基を意味する。
【0142】
アミノ酸置換とは、あるアミノ酸残基の他のアミノ酸残基への交換を意味し、例えば、ペプチド配列内のアルギニン残基のグルタミン残基への交換は、アミノ酸置換である。
【0143】
ヌクレオチドは以下のように表記される:1文字コードがヌクレオシドの塩基を表記するために使用される:aはアデニンであり、tはチミンであり、cはシトシンであり、gはグアニンである。縮重ヌクレオチドのため、rはgまたはa(プリンヌクレオチド)を表し、kはgまたはtを表し、sはgまたはcを表し、wはaまたはtを表し、mはaまたはcを表し、yはtまたはc(ピリミジンヌクレオチド)を表し、dはg、a、またはtを表し、vはg、a、またはcを表し、bはg、t、またはcを表し、hはa、t、またはcを表し、nはg、a、t、またはcを表す。
【0144】
本明細書において使用されるように、「核酸」または「ポリヌクレオチド」とは、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)のようなヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成された断片、ならびにライゲーション、切断、エンドヌクレアーゼ作用、およびエキソヌクレアーゼ作用のいずれかによって生成された断片をさす。核酸分子は、(DNAおよびRNAのような)天然に存在するヌクレオチド、または天然に存在するヌクレオチドの類似体(例えば、天然に存在するヌクレオチドの鏡像異性体)、または両方の組み合わせであるモノマーから構成され得る。修飾型ヌクレオチドは、糖モエティおよび/またはピリミジン塩基モエティもしくはプリン塩基モエティに変化を有し得る。糖修飾には、例えば、1つ以上のヒドロキシル基のハロゲン、アルキル基、アミン、およびアジド基への交換が含まれ、または糖がエーテルもしくはエステルとして官能化されていてもよい。さらに、糖モエティ全体が、アザ糖および炭素環式糖類似体のような立体的かつ電子的に類似した構造に交換されてもよい。塩基モエティの修飾の例には、アルキル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンもしくはピリミジン、またはその他の周知の複素環式置換基が含まれる。核酸モノマーは、ホスホジエステル結合またはそのような結合の類似体によって連結され得る。核酸は、一本鎖または二本鎖のいずれかであり得る。
【0145】
「前記二本鎖切断の上流側にある配列と相同な第1の領域、前記細胞のゲノムに挿入しようとする配列、および前記二本鎖切断の下流側にある配列と相同な第2の領域を連続的に含むポリヌクレオチド」とは、インサイチューでDNA標的の5'側および3'側の領域と相同な第1の部分および第2の部分を含むDNA構築物またはマトリックスを意味することが意図される。DNA構築物はまた、インサイチューで対応するDNA配列といくらかの相同性を含むか、またはインサイチューでDNA標的の5'側および3'側の領域と相同性を含まない、第1の部分と第2の部分との間に配置される第3の部分も含む。DNA標的が切断された後に、関心対象の遺伝子座に含まれる標的とする遺伝子を含有するゲノムと、このマトリックスとの間で相同組換え事象が刺激され、DNA標的を含有するゲノム配列は、マトリックスの第3の部分ならびに前記マトリックスの第1の部分および第2の部分の可変部と交換される。
【0146】
「DNA標的」、「DNA標的配列」、「標的DNA配列」、「核酸標的配列」、「標的配列」、または「プロセシング部位」とは、本発明によるレアカッティングエンドヌクレアーゼによって標的化および処理することができるポリヌクレオチド配列を意図する。これらの用語は、細胞内にある特定のDNA場所、好ましくは、ゲノム場所だけでなく、遺伝物質の本体とは独立して存在することができる遺伝物質部分、例えば、非限定的な例として、プラスミド、エピソーム、ウイルス、トランスポゾン、またはミトコンドリアなどの細胞小器官の中にある遺伝物質部分も指す。TALE-ヌクレアーゼ標的の非限定的な例として、標的とするゲノム配列は、一般的に、15bpスペーサーで分けられた2つの17bp長の配列(半標的(half target)と呼ぶ)からなる。それぞれの半標的は、EF1-αプロモーターまたはT7プロモーターの制御下でプラスミドにコードされる、非限定的な例として表2、表6、表7、および表11に列挙したTALE-ヌクレアーゼの反復によって認識される。核酸標的配列は、表2、表6、表7、および表11に示したように、前記標的の一方の鎖の5'→3'配列によって規定される。
【0147】
キメラ抗原受容体(CAR)とは、特異的な抗標的細胞免疫活性を示すキメラタンパク質を生成するため、標的細胞上に存在する成分に対する結合ドメイン、例えば、所望の抗原(例えば、腫瘍抗原)に対する抗体に基づく特異性を、T細胞受容体を活性化する細胞内ドメインと組み合わせた分子を表す。一般に、CARは、細胞外単鎖抗体(scFvFc)がT細胞抗原受容体複合体ζ鎖の細胞内シグナリングドメインに融合したもの(scFvFc:ζ)からなり、T細胞において発現された時に、モノクローナル抗体の特異性に基づき、抗原認識を向け直す能力を有している。本発明において使用されるCARの一例は、CD19抗原に対するCARであり、非限定的な例として、アミノ酸配列:SEQ ID NO:73を含み得る。
【0148】
「送達ベクター」とは、本発明において必要とされる薬剤/化学物質および分子(タンパク質または核酸)を、細胞と接触させるため(即ち、「接触」)、または細胞もしくは細胞内区画へ送達するため(即ち、「導入」)、本発明において使用され得る送達ベクターを表す。それには、リポソーム送達ベクター、ウイルス送達ベクター、薬物送達ベクター、化学的担体、ポリマー担体、リポプレックス、ポリプレックス、デンドリマー、微小気泡(超音波造影剤)、ナノ粒子、乳濁液、またはその他の適切な移入ベクターが含まれるが、これらに限定されない。これらの送達ベクターは、分子、化学物質、高分子(遺伝子、タンパク質)、またはプラスミド、Diatosによって開発されたペプチドのようなその他のベクターの送達を可能にする。これらのケースにおいて、送達ベクターは分子担体である。「送達ベクター」とは、トランスフェクションを実施するための送達方法も表す。
【0149】
「ベクター」という用語は、それが連結された別の核酸を輸送することができる核酸分子をさす。本発明における「ベクター」には、ウイルスベクター、プラスミド、RNAベクター、または染色体核酸、非染色体核酸、半合成核酸、もしくは合成核酸からなり得る直鎖状もしくは環状のDNA分子もしくはRNA分子が含まれるが、これらに限定されない。好ましいベクターは、それらが連結された核酸の自律複製が可能なもの(エピソームベクター)および/または発現が可能なもの(発現ベクター)である。多数の適当なベクターが、当業者に公知であり、市販されている。
【0150】
ウイルスベクターには、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、オルソミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルスおよび水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹およびセンダイ)のようなマイナス鎖RNAウイルス、ピコルナウイルスおよびアルファウイルスのようなプラス鎖RNAウイルス、ならびにアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型および2型、エプスタインバーウイルス、サイトメガロウイルス)、およびポックスウイルス(例えば、ワクシニア、鶏痘、およびカナリアポックス)を含む二本鎖DNAウイルスが含まれる。他のウイルスには、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポーバウイルス、ヘパドナウイルス、および肝炎ウイルスが含まれる。レトロウイルスの例には、トリ白血病肉腫、哺乳動物C型、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルス、スプーマウイルスが含まれる(Coffin,J.M.,Retroviridae:The viruses and their replication,In Fundamental Virology,Third Edition,B.N.Fields,et al.,Eds.,Lippincott-Raven Publishers,Philadelphia,1996)。
【0151】
「レンチウイルスベクター」とは、比較的大きいパッケージング能力、低下した免疫原性、および広範囲の異なる細胞型を高い効率で安定的に形質導入する能力のため、遺伝子送達のために極めて有望である、HIVに基づくレンチウイルスベクターを意味する。レンチウイルスベクターは、一般的には、3種(パッケージング、エンベロープ、および移入)またはそれ以上のプラスミドを産生細胞に一過性トランスフェクションした後、生成される。HIVと同様に、レンチウイルスベクターは、ウイルス表面糖タンパク質の細胞表面上の受容体との相互作用を通して標的細胞に侵入する。侵入後、ウイルスRNAが、ウイルス逆転写酵素複合体によって媒介される逆転写を受ける。逆転写の産物は、感染細胞のDNAへのウイルス組み込みのための基質となる二本鎖の直鎖状ウイルスDNAである。「組込みレンチウイルスベクター(またはLV)」とは、非限定的な例として、標的細胞のゲノムに組み込まれ得るそのようなベクターを意味する。反対に、「非組込みレンチウイルスベクター(またはNILV)」とは、ウイルスインテグラーゼの作用を通して標的細胞のゲノムに組み込まれない効率的な遺伝子送達ベクターを意味する。
【0152】
送達ベクターおよびベクターは、ソノポレーション(sonoporation)もしくは電気穿孔のような細胞透過処理技術、またはこれらの技術の変法と関連しているかまたは組み合わせられていてよい。
【0153】
細胞とは、真核生物の生存細胞、初代細胞、およびインビトロ培養のためのこれらの生物に由来する細胞株を表す。
【0154】
「初代細胞」とは、集団倍化をほとんど受けておらず、従って、腫瘍形成性の連続細胞株または人為的に不死化された細胞株と比較して、それが由来した組織の主な機能的成分および特徴をよりよく表している、生存組織(即ち、生検材料)から直接採取され、インビトロでの増殖のために確立された細胞を表す。
【0155】
非限定的な例として、細胞株は、CHO-K1細胞;HEK293細胞;Caco2細胞;U2-OS 細胞;NIH 3T3細胞;NSO細胞;SP2細胞;CHO-S細胞;DG44細胞;K-562細胞、U-937細胞;MRC5細胞;IMR90細胞;ジャーカット細胞;HepG2細胞;HeLa細胞;HT-1080細胞;HCT-116細胞;Hu-h7細胞;Huvec細胞;Molt 4細胞からなる群より選択される。
【0156】
これらの細胞株は、全て、関心対象の遺伝子またはタンパク質を作製し、発現させ、定量化し、検出し、研究するための細胞株モデルを提供するため、本発明の方法によって改変され得;これらのモデルは、研究および作製、ならびに非限定的な例としての化学物質、生物燃料、治療薬、および農学のような様々な領域において、関心対象の生理活性分子をスクリーニングするためにも使用され得る。
【0157】
「変異」とは、ポリヌクレオチド(cDNA、遺伝子)またはポリペプチドの配列における1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、20個、25個、30個、40個、50個、またはそれ以上までのヌクレオチド/アミノ酸の置換、欠失、挿入を表す。変異は、遺伝子のコード配列またはその制御配列に影響を与える場合がある。また、ゲノム配列の構造またはコードされたmRNAの構造/安定性に影響を与える場合もある。
【0158】
「バリアント」とは、親分子のアミノ酸配列における少なくとも1個の残基の変異または交換によって入手されたリピートバリアント、バリアント、DNA結合バリアント、TALEヌクレアーゼバリアント、ポリペプチドバリアントを表す。
【0159】
「機能的バリアント」とは、タンパク質またはタンパク質ドメインの触媒活性変異体を表し;そのような変異体は、その親のタンパク質またはタンパク質ドメインと比較して、同一の活性、または付加的な特性、またはより高いかもしくはより低い活性を有し得る。
【0160】
「遺伝子」とは、特定のタンパク質またはタンパク質セグメントをコードする、染色体に沿って直線的に並べられたDNAセグメントからなる遺伝の基本単位を意味する。遺伝子は、典型的に、プロモーター、5'非翻訳領域、1つまたは複数のコード配列(エキソン)、任意で、イントロン、3'非翻訳領域を含む。遺伝子は、ターミネーター、エンハンサー、および/またはサイレンサーをさらに含んでもよい。
【0161】
本明細書で使用する「遺伝子座」という用語は、染色体上にあるDNA配列(例えば、遺伝子)の特定の物理的な場所である。「遺伝子座」という用語は、染色体上にあるレアカッティングエンドヌクレアーゼ標的配列の特定の物理的な場所を指すことがある。このような遺伝子座は、本発明によるレアカッティングエンドヌクレアーゼによって認識および/または切断される標的配列を含んでもよい。本発明の関心対象の遺伝子座は、細胞の遺伝物質の本体(すなわち、染色体)に存在する核酸配列だけでなく、遺伝物質の前記本体とは独立して存在することができる遺伝物質部分、例えば、非限定的な例として、プラスミド、エピソーム、ウイルス、トランスポゾン、またはミトコンドリアなどの細胞小器官の中にある遺伝物質部分も適格にできる(qualify)ことが理解される。
【0162】
「エンドヌクレアーゼ」という用語は、DNA分子またはRNA分子、好ましくは、DNA分子の内部にある、核酸間の結合の加水分解(切断)を触媒することができる任意の野生型酵素または変種酵素を指す。エンドヌクレアーゼは、DNA分子もRNA分子もその配列とは無関係に切断せず、DNA分子またはRNA分子の特定のポリヌクレオチド配列を認識および切断する。この特定のポリヌクレオチド配列は「標的配列」または「標的部位」とさらに呼ばれる。エンドヌクレアーゼは、典型的に、長さ12塩基対(bp)を超える、より好ましくは14〜55bpのポリヌクレオチド認識部位を有するときにレアカッティングエンドヌクレアーゼと分類することができる。レアカッティングエンドヌクレアーゼは、規定された遺伝子座においてDNA二本鎖切断(DSB)を誘導することによってHRを大幅に増加させる(Rouet, Smih et al. 1994; Choulika, Perrin et al. 1995; Pingoud and Silva 2007)。レアカッティングエンドヌクレアーゼは、例えば、ホーミングエンドヌクレアーゼ(Paques and Duchateau 2007)、操作されたジンクフィンガードメインとFokIなどの制限酵素の触媒ドメインとの融合に起因するキメラジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)(Porteus and Carroll 2005)、または化学的エンドヌクレアーゼ(Eisenschmidt, Lanio et al. 2005; Arimondo, Thomas et al. 2006)でもよい。化学的エンドヌクレアーゼにおいて、化学的クリーバー(cleaver)またはペプチドクリーバーは、核酸ポリマー、または特定の標的配列を認識する別のDNAと結合され、それによって、切断活性を特定の配列に標的化する。化学的エンドヌクレアーゼはまた、特定のDNA配列に結合することが知られている、オルトフェナントロリン結合体のような合成ヌクレアーゼ、DNA切断分子、および三重鎖形成オリゴヌクレオチド(TFO)(Kalish and Glazer 2005)も包含する。このような化学的エンドヌクレアーゼは、本発明による「エンドヌクレアーゼ」という用語に含まれる。
【0163】
レアカッティングエンドヌクレアーゼはまた、例えば、FokI触媒ドメインと、ザントモナス属(Xanthomonas)の植物病原体が感染プロセスにおいて使用するタンパク質ファミリーである転写アクチベーター様エフェクター(TALE)に由来するDNA結合ドメインを用いる新たなクラスのキメラヌクレアーゼであるTALE-ヌクレアーゼでもよい(Boch, Scholze et al. 2009; Moscou and Bogdanove 2009; Christian, Cermak et al. 2010; Li, Huang et al.)。FokIベースのTALE-ヌクレアーゼ(TALE-ヌクレアーゼ)の機能レイアウトは本質的にZFNの機能レイアウトであり、ジンクフィンガーDNA結合ドメインがTALEドメインと交換されている。従って、TALE-ヌクレアーゼによるDNA切断には、不特定の中心領域に隣接する2つのDNA認識領域が必要である。本発明に包含されるレアカッティングエンドヌクレアーゼはまたTALE-ヌクレアーゼに由来してもよい。
【0164】
レアカッティングエンドヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼの名前でも知られるホーミングエンドヌクレアーゼでもよい。このようなホーミングエンドヌクレアーゼは当業者に周知である(Stoddard 2005)。ホーミングエンドヌクレアーゼはDNA標的配列を認識し、一本鎖切断または二本鎖切断を生じる。ホーミングエンドヌクレアーゼは高度に特異的であり、長さが12〜45塩基対(bp)、通常、長さが14〜40bpのDNA標的部位を認識する。本発明によるホーミングエンドヌクレアーゼは、例えば、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼ、HNHエンドヌクレアーゼ、またはGIY-YIGエンドヌクレアーゼに対応してもよい。本発明による好ましいホーミングエンドヌクレアーゼはI-CreI変種でもよい。
【0165】
「TALE-ヌクレアーゼ」(TALEN)とは、典型的には転写アクチベーター様エフェクター(TALE)に由来する核酸結合ドメインと、核酸標的配列を切断する1つのヌクレアーゼ触媒ドメインからなる融合タンパク質を意図する。触媒ドメインは好ましくはヌクレアーゼドメインであり、より好ましくは、例えば、I-TevI、ColE7、NucA、およびFok-Iのようなエンドヌクレアーゼ活性を有するドメインである。特定の態様において、TALEドメインは、例えば、I-CreIおよびI-OnuIのようなメガヌクレアーゼまたはその機能的変種と融合されてもよい。さらに好ましい態様において、前記ヌクレアーゼは単量体TALE-ヌクレアーゼである。単量体TALE-ヌクレアーゼは、特異的な認識および切断のために二量体化を必要としないTALE-ヌクレアーゼ、例えば、WO2012138927に記載の操作されたTAL反復とI-TevI触媒ドメインとの融合である。転写アクチベーター様エフェクター(TALE)は細菌種ザントモナス属に由来するタンパク質であり、複数の反復配列を含み、それぞれの反復が、位置12および13に、標的とする核酸配列のそれぞれのヌクレオチド塩基に特異的な、二残基(RVD)を含む。同様のモジュラー塩基対塩基核酸結合特性(modular base-per-base nucleic acid binding property)(MBBBD)を有する結合ドメインが、異なる細菌種において本出願人が最近発見した新たなモジュラータンパク質からも得ることができる。この新たなモジュラータンパク質には、TAL反復より大きな配列可変性を示すという利点がある。好ましくは、異なるヌクレオチドの認識に関連するRVDは、Cを認識する場合はHD、Tを認識する場合はNG、Aを認識する場合はNI、GまたはAを認識する場合はNN、A、C、G、またはTを認識する場合はNS、Tを認識する場合はHG、Tを認識する場合はIG、Gを認識する場合はNK、Cを認識する場合はHA、Cを認識する場合はND、Cを認識する場合はHI、Gを認識する場合はHN、Gを認識する場合はNA、GまたはAを認識する場合はSN、およびTを認識する場合はYG、Aを認識する場合はTL、AまたはGを認識する場合はVT、およびAを認識する場合はSWである。別の態様において、ヌクレオチドA、T、C、およびGに対する特異性を調節するために、特に、この特異性を増強するために、重要なアミノ酸12および13は他のアミノ酸残基に変異されてもよい。TALE-ヌクレアーゼは既に説明されており、遺伝子ターゲティングおよび遺伝子組換えを刺激するために用いられている(Boch, Scholze et al. 2009; Moscou and Bogdanove 2009; Christian, Cermak et al. 2010; Li, Huang et al.)。操作されたTAL-ヌクレアーゼは商品名TALEN(商標)(Cellectis, 8 rue de la Croix Jarry, 75013 Paris, France)で市販されている。
【0166】
「切断」という用語は、ポリヌクレオチドの共有結合バックボーンの破壊を指す。ホスホジエステル結合の酵素的加水分解または化学的加水分解を含むが、これに限定されない様々な方法によって切断を開始することができる。一本鎖切断および二本鎖切断がいずれも可能であり、二本鎖切断は2つの別個の一本鎖切断事象の結果として発生してもよい。二本鎖DNA、RNA、またはDNA/RNAハイブリッド切断によって平滑末端または付着末端のいずれかが生じる可能性がある。
【0167】
「融合タンパク質」とは、元々は別々のタンパク質またはその一部をコードする2種類以上の遺伝子を結合することにある当技術分野において周知のプロセスの結果を意図する。前記「融合遺伝子」が翻訳されると、元のタンパク質のそれぞれに由来する機能的特性を有する1本のポリペプチドが生じる。
【0168】
「同一性」とは、2種の核酸分子またはポリペプチドの間の配列同一性をさす。同一性は、比較の目的のために整列化され得る各配列の位置を比較することによって決定され得る。比較された配列のある位置が同一の塩基によって占有される時、それらの分子はその位置において同一である。核酸またはアミノ酸配列の間の類似性または同一性の程度は、核酸配列が共有している位置における同一のまたは一致するヌクレオチドの数の関数である。GCG配列分析パッケージ(University of Wisconsin,Madison,Wis.)の一部として入手可能であるFASTAまたはBLASTを含む、様々なアライメントアルゴリズムおよび/またはプログラムが、2種の配列の間の同一性を計算するために使用され得、例えば、デフォルト設定で使用され得る。例えば、本明細書に記載された特定のポリペプチドとの少なくとも70%、85%、90%、95%、98%、または99%の同一性を有しており、好ましくは、実質的に同一の機能を示すポリペプチド、およびそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、企図される。
【0169】
「類似性」とは、2種以上のポリペプチドのアミノ酸配列の間の関係を記載する。BLASTPも、BLOSUM45、BLOSUM62、またはBLOSUM80のような類似性マトリックスを使用して、参照アミノ酸配列との少なくとも70%、75%、80%、85%、87.5%、90%、92.5%、95%、97.5%、98%、99%の配列類似性を有するアミノ酸配列を同定するために使用され得る。他に示されない限り、類似性スコアは、BLOSUM62の使用に基づくであろう。BLASTPが使用される時、類似性の割合(%)は、BLASTP陽性スコアに基づき、配列同一性の割合(%)は、BLASTP同一性スコアに基づく。BLASTP「同一性」は、同一である高スコア配列対における全残基の数および画分を示し;BLASTP「陽性」は、アライメントスコアが正の値を有しており、相互に類似している残基の数および画分を示す。本明細書に開示されたアミノ酸配列との同一性もしくは類似性のこれらの程度または同一性もしくは類似性の中間の程度を有するアミノ酸配列が、本開示によって企図され包含される。類似したポリペプチドのポリヌクレオチド配列は、遺伝暗号を使用して推定され、従来の手段によって入手され得る。たとえば、pTαの機能的バリアントは、SEQ ID NO:107のアミノ酸配列と70%、75%、80%、85%、87.5%、90%、92.5%、95%、97.5%、98%、99%の配列類似性を有し得る。そのような機能的バリアントをコードするポリヌクレオチドは、遺伝暗号を使用して、そのアミノ酸配列を逆翻訳することによって作製されるであろう。
【0170】
「シグナル伝達ドメイン」または「共刺激リガンド」とは、T細胞上の同族共刺激分子に特異的に結合し、それによって、例えば、ペプチドが負荷されたMHC分子とのTCR/CD3複合体の結合によって提供される一次シグナルに加えて、増殖活性化、分化等を含むがこれらに限定されないT細胞応答を媒介するシグナルを提供する抗原提示細胞上の分子をさす。共刺激リガンドには、CD7、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、PD-L1、PD-L2、4-1BBL、OX40L、誘導性共刺激リガンド(ICOS-L)、細胞間接着分子(ICAM、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA-G、MICA、M1CB、HVEM、リンホトキシンβ受容体、3/TR6、ILT3、ILT4、トールリガンド受容体に結合するアゴニストまたは抗体、およびB7-H3に特異的に結合するリガンドが含まれ得るが、これらに限定されない。共刺激リガンドには、とりわけ、以下に限定されないが、CD27、CD28、4-IBB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、CD2、CD7、LTGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンドのような、T細胞上に存在する共刺激分子と特異的に結合する抗体も包含される。
【0171】
「共刺激分子」とは、共刺激リガンドと特異的に結合し、それによって、これに限定されないが、増殖のような、細胞による共刺激応答を媒介するT細胞上の同族結合パートナーをさす。共刺激分子には、MHCクラスI分子、BTLA、およびトールリガンド受容体が含まれるが、これらに限定されない。
【0172】
「共刺激シグナル」とは、本明細書において使用されるように、TCR/CD3ライゲーションのような一次シグナルと組み合わせて、T細胞増殖および/または重要分子のアップレギュレーションもしくはダウンレギュレーションをもたらすシグナルをさす。
【0173】
「二重特異性抗体」とは、1つの抗体分子の中に、2つの異なる抗原に対する結合部位をもつ抗体を指す。標準的な抗体構造に加えて、2つの結合特異性をもつ他の分子が構築され得ることが当業者によって理解されるだろう。二重特異性抗体による抗原結合は同時に起こってもよく、連続して起こってもよいことがさらに理解されるだろう。二重特異性抗体は化学的技法によって作製されてもよく(例えば、Kranz et al. (1981) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78,5807を参照されたい)、「ポリドーマ(polydoma)」法(米国特許第4,474,893号を参照されたい)によって作製されてもよく、組換えDNA法によって作製されてもよい。これらの技法は全てそれ自体が公知である。非限定的な例として、それぞれの結合ドメインは、抗体重鎖に由来する少なくとも1つの可変領域(「VH領域またはH領域」)を含み、第1の結合ドメインのVH領域はCD3などのリンパ球マーカーに特異的に結合し、第2の結合ドメインのVH領域は腫瘍抗原に特異的に結合する。
【0174】
「細胞外リガンド結合ドメイン」という用語は、本明細書において使用されるように、リガンドと結合することができるオリゴペプチドまたはポリペプチドとして定義される。好ましくは、ドメインは、細胞表面分子と相互作用することができるであろう。例えば、細胞外リガンド結合ドメインは、特定の疾患状態に関連した標的細胞上の細胞表面マーカーとして作用するリガンドを認識するよう選択され得る。従って、リガンドとして作用し得る細胞表面マーカーの例には、ウイルス、細菌、および寄生虫の感染、自己免疫疾患、ならびに癌細胞に関連したものが含まれる。
【0175】
「対象」または「患者」という用語には、本明細書において使用されるように、非ヒト霊長類およびヒトを含む動物界の全てのメンバーが含まれる。
【0176】
上記の本発明の説明は、当業者が本発明を作成し使用することが可能になるよう、本発明を作成し使用する様式および過程を提供するものであり、この可能性は、当初明細書の一部を構成する添付の特許請求の範囲の主題のために特に提供される。
【0177】
本明細書において数的な限度または範囲が記述される場合、その終点が含まれる。数的な限度または範囲に含まれる全ての値および部分範囲も、明示的に記載されたかのごとく、具体的に含まれる。
【0178】
上記の説明は、当業者が本発明を作成し使用することを可能にするために提示され、特定の適用およびその必要条件に関して提供される。好ましい態様に対する様々な改変は、当業者に容易に明白になり、本明細書において定義された一般原理は、本発明の本旨および範囲から逸脱することなく、他の態様および適用に適用され得る。従って、本発明は、示された態様に限定されず、本明細書に開示された原理および特色と一致する最も広い範囲を与えられるものとする。
【0179】
本発明を全般的に説明したが、ある種の具体例を参照することによって、さらなる理解を得ることができる。それらの具体例は、例示目的のために本明細書に提供されるに過ぎず、他に特記されない限り、限定するためのものではない。
【実施例】
【0180】
実施例1:ヒトGR遺伝子を切断するTALE-ヌクレアーゼ
ヒトGR遺伝子のエキソンを標的とする6つのヘテロ二量体TALE-ヌクレアーゼを設計および作製した。以下の表2は、それぞれのTALE-ヌクレアーゼによって切断される標的配列を示す。GR TALE-ヌクレアーゼは2つの独立した実体(半TALE-ヌクレアーゼと呼ぶ)で構成され、それぞれの実体は、15bpスペーサーで分けられた2つの17bp長の配列(半標的と呼ぶ)からなるGR標的配列に結合し、切断するように操作された反復配列を含有した。
【0181】
(表2)GR TALE-ヌクレアーゼおよびヒトGR遺伝子内にあるTALE-ヌクレアーゼ標的部位の配列の説明
【0182】
N末端ドメイン、C末端ドメイン、および反復からなるアミノ酸配列はAvrBs3 TALE(ref: GenBank: X16130.1)に基づいている。C末端ドメインおよびN末端ドメインは2つのBsmBI制限部位で分けられている。望ましい配列(SEQ ID NO:1〜6)を標的とする反復アレイ(SEQ ID NO:7〜18)を、連続した制限/連結/洗浄工程で構成される固体支持体法(国際PCT出願WO2013/017950)を用いて合成した。手短に述べると、1番目のブロック(二反復をコードする)をビオチン/ストレプトアビジン相互作用によって固体支持体上に固定化し、次いで、1番目のブロックに2番目のブロック(三反復)を連結し、SfaNI消化後に3番目のブロック(三反復)を結合した。望ましい反復アレイを得るときには三反復ブロックまたは二反復ブロックを用いて、このプロセスを繰り返した。次いで、生成物を、大腸菌において増殖させるために古典的なpAPG10クローニングプラスミドに入れてクローニングし、配列決定した。このように得られた反復アレイ配列を、収容(receiving)プラスミドについてはIIS型制限酵素BsmBI、挿入される反復配列についてはBbvIおよびSfaNIを用いて、酵母発現TALEベクターに入れてサブクローニングした。FokI制限酵素の触媒ドメインと融合したTALE由来DNA結合ドメインを含有する、半TALE-ヌクレアーゼをコードするDNAを大腸菌において増幅し、標準的なミニプレップ法によって回収し、インサートの完全性を評価するために配列決定した。
【0183】
酵母におけるGR TALE-ヌクレアーゼの活性:
以前に述べた本発明者らの酵母SSAアッセイ(国際PCT出願WO2004/067736およびEpinat, Arnould et al. 2003; Chames, Epinat et al. 2005; Arnould, Chames et al. 2006; Smith, Grizot et al. 2006)において、15bpのスペーサーで分けられた、DNA鎖上で互いに向き合っている2つのTALE標的配列を含有してSEQ ID NO:1〜6となった、標的に対する6種類のGR-TALE-ヌクレアーゼのヌクレアーゼ活性を37℃および30℃で試験した。TALE-ヌクレアーゼDNA標的配列を含有する酵母標的レポータープラスミドは全て、以前に述べられたように構築した(国際PCT出願WO2004/067736およびEpinat, Arnould et al. 2003; Chames, Epinat et al. 2005; Arnould, Chames et al. 2006; Smith, Grizot et al. 2006)。酵母における、標的に対する個々のクローンのTALE-ヌクレアーゼ切断活性レベルを表3に示した。
【0184】
(表3)酵母におけるGR TALE-ヌクレアーゼの切断活性
値は0と1の間に含まれる。最大値は1である。
【0185】
HEK293細胞におけるGR TALE-ヌクレアーゼの活性:
それぞれのTALE-ヌクレアーゼ構築物を、制限酵素消化を用いて、pEF1αロングプロモーター制御下で哺乳動物発現ベクターに入れてサブクローニングした。
【0186】
トランスフェクションの1日前に百万個のHEK293細胞を播種した。細胞を、EF1αプロモーター制御下で、GR遺伝子にある関心対象の2つの半標的ゲノム配列を認識する、GRex2、GRex3T2、GRex3T4、GRex5T1、GRex5T2、またはGRex5T3 TALE-ヌクレアーゼの左半分および右半分をコードする、それぞれ2.5μgの2つのプラスミドで、25μLのリポフェクタミン(Invitrogen)を用いて製造業者の説明書に従ってコトランスフェクトした。対照として、細胞を、EF1αプロモーター制御下で、T細胞受容体α定常鎖領域(TRAC_T01)標的部位を標的とするTALE-ヌクレアーゼの左半分および右半分をコードする、それぞれ2.5μgの2つのプラスミド((TRAC_T01-Lおよび-R TALE-ヌクレアーゼ(SEQ ID NO:41およびSEQ ID NO:42、TRAC_T01標的部位(SEQ ID NO:37))でコトランスフェクトした。GRコード配列においてTALE-ヌクレアーゼによって生じる二本鎖切断は、エラープローン(error-prone)機構である非相同末端結合(NHEJ)を誘導する。TALE-ヌクレアーゼの活性は、標的とされたゲノム遺伝子座での挿入または欠失の頻度によって測定される。
【0187】
トランスフェクションの2日後または7日後に、細胞を収集し、以下のプライマー:
(フォワードアダプテイター(adaptator)配列)-10N(TAG)-遺伝子座特異的フォワード配列、GRエキソン2の場合:
、GRエキソン3の場合:
およびGRエキソン5の場合:
ならびにリバースプライマー
(リバースアダプター配列)-遺伝子座特異的リバース配列、GRエキソン2の場合:
、GRエキソン3の場合:
およびGRエキソン5の場合:
を用いて、抽出したゲノムDNAに対して遺伝子座特異的PCRを行った。
【0188】
PCR産物を454シークエンシングシステム(454 Life Sciences)によって配列決定した。PCR産物あたり約10,000個の配列を入手し、次いで、部位特異的な挿入事象または欠失事象の存在について分析した。表4は、試料中の配列の総数のうちTALE-ヌクレアーゼ標的部位において挿入または欠失を示した配列の割合(%)を示す。表4には、GRex2、GRex3T2およびGRex3T4について、代表的な実験の結果を列挙した。
【0189】
試験した全ての場合において、トランスフェクション後、2日目の試料の1つと比較して7日目の変異誘発の%は類似していた。変異事象がどういったものかも分析した。このことから、全ての場合において、挿入と比較して大多数が欠失であることが明らかになった。
【0190】
(表4)HEK293細胞における内因性TALE-ヌクレアーゼ標的部位での標的変異誘発の割合(%)
【0191】
初代Tリンパ球におけるGR TALE-ヌクレアーゼの活性:
それぞれのTALE-ヌクレアーゼ構築物を、制限酵素消化を用いて、T7プロモーター制御下で、発現ベクターに入れてサブクローニングした。
【0192】
GRゲノム配列を切断するTALE-ヌクレアーゼをコードするmRNAを、T7プロモーターの下流にコード配列を有する、それぞれのプラスミドから合成した。末梢血から単離したTリンパ球を、抗CD3/CD28アクチベータービーズ(Life technologies)を用いて5日間、活性化し、5百万個の細胞を、CytoLVT-P機器(BTX-Harvard apparatus)を用いてエレクトロポレーションによって、両方とも半TALE-ヌクレアーゼをコードする、それぞれ10μgの2つのmRNAでトランスフェクトした。CD52遺伝子を標的とする、両方とも半TALE-ヌクレアーゼをコードする、それぞれ10μgの2つのmRNA(CD52_T02-Lおよび-R TALEN(SEQ ID NO:55および56)、標的配列CD52_T02 SEQ ID NO:40)でトランスフェクトしたT細胞を対照として使用した。
【0193】
トランスフェクションの3日後および7日後に、トランスフェクトされた細胞からゲノムDNAを単離し、前記のプライマーを用いて遺伝子座特異的PCRを行った。PCR産物を454シークエンシングシステム(454 Life Sciences)によって配列決定した。PCR産物あたり約10,000個の配列を入手し、次いで、部位特異的な挿入事象または欠失事象の存在について分析した。結果は表5にある。
【0194】
(表5)初代Tリンパ球における内因性TALE-ヌクレアーゼ標的部位での標的変異誘発の割合(%)
【0195】
実施例2:ヒトCD52遺伝子、ヒトT細胞受容体α定常鎖(TRAC)、ならびにヒトT細胞受容体β定常鎖1および2(TRBC)を切断するTALE-ヌクレアーゼ
実施例1に記載のように、CD52遺伝子を標的とするヘテロ二量体TALE-ヌクレアーゼ、TRAC遺伝子を標的とするヘテロ二量体TALE-ヌクレアーゼ、およびTRBC遺伝子を標的とするヘテロ二量体TALE-ヌクレアーゼを設計および作製した。標的とするゲノム配列は、11bpスペーサーまたは15bpスペーサーで分けられた2つの17bp長の配列(半標的と呼ぶ)からなる。それぞれの半標的は、表6に列挙した半TALE-ヌクレアーゼの反復によって認識される。ヒトゲノムは2つの機能的T細胞受容体β鎖(TRBC1およびTRBC2)を含有する。α/βTリンパ球が発達している間に、これらの2つの定常鎖のうちの1つが各細胞において選択されてTCR-β可変領域にスプライスされ、機能的完全長β鎖を形成する。対応するTALE-ヌクレアーゼがTRBC1およびTRBC2を両方とも同時に切断するように、2つのTRBC標的はTRBC1とTRBC2との間で保存された配列において選択された。
【0196】
(表6)CD52 TALE-ヌクレアーゼ、TRAC TALE-ヌクレアーゼ、およびTRBC TALE-ヌクレアーゼ、ならびに対応するヒト遺伝子内にあるTALE-ヌクレアーゼ標的部位の配列の説明
【0197】
TRAC遺伝子およびCD52遺伝子の中にある他の標的配列が設計されており、表7に示した。
【0198】
(表7)TRAC TALE-ヌクレアーゼおよびCD52 TALE-ヌクレアーゼのさらなる標的配列
【0199】
HEK293細胞におけるCD52-TALE-ヌクレアーゼ、TRAC-TALE-ヌクレアーゼ、およびTRBC-TALE-ヌクレアーゼの活性
それぞれのTALE-ヌクレアーゼ構築物を、制限酵素消化を用いて、pEF1αロングプロモーター制御下で哺乳動物発現ベクターに入れてサブクローニングした。トランスフェクションの1日前に百万個のHEK293細胞を播種した。細胞を、EF1-αプロモーター制御下で、CD52遺伝子、T細胞受容体α定常鎖領域(TRAC)、もしくはT細胞受容体β定常鎖領域(TRBC)にある関心対象のゲノム配列内の2つの半標的を認識するTALE-ヌクレアーゼをコードする、それぞれ2.5μgの2つのプラスミド、または5μgの対照pUCベクター(pCLS0003)で、25μlのリポフェクタミン(Invitrogen)を用いて製造業者の説明書に従ってコトランスフェクトした。CD52コード配列またはTRACコード配列においてTALE-ヌクレアーゼによって生じる二本鎖切断は、生細胞では、エラープローン機構である非相同末端結合(NHEJ)によって修復される。生細胞におけるTALE-ヌクレアーゼの活性は、標的とされたゲノム遺伝子座での挿入または欠失の頻度によって測定される。トランスフェクションの48時間後に、トランスフェクトされた細胞からゲノムDNAを単離し、以下のプライマー:
(フォワードアダプター配列)-10N(TAG)-遺伝子座特異的フォワード配列、CD52の場合:
、TRACの場合:
、TRBC1の場合:
、またはTRBC2の場合:
、およびリバースプライマー
(リバースアダプター配列)-内因性遺伝子座特異的リバース配列、CD52の場合:
、TRACの場合:
、TRBC1およびTRBC2の場合:
を用いて、遺伝子座特異的PCRを行った。PCR産物を454シークエンシングシステム(454 Life Sciences)によって配列決定した。PCR産物あたり約10,000個の配列を入手し、次いで、部位特異的な挿入事象または欠失事象の存在について分析した。結果を表8に示した。
【0200】
(表8)CD52_T02、TRAC_T01、TRBC_T01、およびTRBC_T02標的を標的とするTALE-ヌクレアーゼについてのインデルの割合(%)
【0201】
初代Tリンパ球におけるCD52-TALE-ヌクレアーゼ、TRBC-TALE-ヌクレアーゼ、およびTRAC-TALE-ヌクレアーゼの活性
それぞれのTALE-ヌクレアーゼ構築物を、制限酵素消化を用いて、T7プロモーター制御下で哺乳動物発現ベクターに入れてサブクローニングした。
【0202】
CD52、TRAC、およびTRBCゲノム配列を切断するTALE-ヌクレアーゼをコードするmRNAを、T7プロモーターから下流に、これらのコード配列を有するプラスミドから合成した。末梢血から単離したTリンパ球を、抗CD3/CD28アクチベータービーズ(Life technologies)を用いて5日間、活性化し、次いで、5百万個の細胞を、CytoLVT-P機器を用いてエレクトロポレーションによって、両方とも半TALE-ヌクレアーゼをコードする、それぞれ10μgの2つのmRNA(または対照として非コードRNA)でトランスフェクトした。NHEJによって誘導された挿入および欠失の結果として、CD52および/またはTRACのコード配列は細胞の一部においてフレーム外(out of frame)になり、その結果、遺伝子が機能しなくなる。エレクトロポレーションの5日後に、細胞表面にCD52またはTCRが存在するかどうかフローサイトメトリーによって、細胞を蛍光色素結合抗CD52抗体または抗TCR抗体で標識した。末梢血から増殖させた全てのTリンパ球は、通常、CD52およびTCRを発現するので、CD52陰性細胞またはTCR陰性細胞の割合はTALE-ヌクレアーゼ活性の直接の尺度である。代表的な実験の結果を表9に列挙した。表10は、TRBC TALE-ヌクレアーゼの効率を試験した代表的な実験の結果を示す。
【0203】
(表9)対応するTALE-ヌクレアーゼ発現ポリヌクレオチドでトランスフェクトした後のCD52陰性Tリンパ球、TCR陰性Tリンパ球、およびCD52/TCR二重陰性Tリンパ球の割合(%)
【0204】
(表10)TRBC TALE-ヌクレアーゼ発現ポリヌクレオチドでトランスフェクトした後のTCR陰性Tリンパ球の割合(%)
【0205】
CD52遺伝子が標的化されたT細胞の機能分析
CD52遺伝子不活性化の目的は、Tリンパ球を抗CD52抗体を介した免疫抑制に対して耐性になるようにすることである。前段落に記載のように、Tリンパ球を、CD52を切断するTALE-ヌクレアーゼをコードするmRNAでトランスフェクトした。トランスフェクションの7日後に、細胞を、30%ウサギ補体(Cedarlane)と共に、または伴わずに、50μg/mlの抗CD52モノクローナル抗体(または対照としてラットIgG)で処理した。37℃で2時間インキュベートした後、細胞を、蛍光生死判別色素(eBioscience)と一緒に蛍光色素結合抗CD52抗体で標識し、生細胞間のCD52陽性細胞およびCD52陰性細胞の頻度を測定するためにフローサイトメトリーによって分析した。
図6は代表的な実験の結果を示す。これから、CD52陰性細胞は補体媒介性抗CD52抗体毒性に対して完全に耐性があることが証明された。
【0206】
TRAC遺伝子が標的化されたT細胞の機能分析
TRAC遺伝子不活性化の目的は、Tリンパ球をT細胞受容体刺激に反応しなくなるようにすることである。前段落に記載のように、Tリンパ球を、TRACまたはCD52を切断するTALE-ヌクレアーゼをコードするmRNAでトランスフェクトした。トランスフェクションの16日後に、細胞を、T細胞受容体を介して作用するT細胞マイトジェンである5μg/mlまでのフィトヘマグルチニン(PHA, Sigma-Aldrich)で処理した。機能的T細胞受容体をもつ細胞のサイズはPHA処理後に大きくなるはずである。3日間インキュベートした後に、細胞を蛍光色素結合抗CD52または抗TCR抗体で標識し、TCR陽性細胞とTCR陰性細胞との間またはCD52陽性細胞とCD52陰性細胞との間で細胞サイズ分布を比較するためにフローサイトメトリーによって分析した。
図7は、TCR陽性細胞のサイズがPHA処理後に著しく大きくなるのに対して、TCR陰性細胞のサイズが未処理細胞と同一であることを示す。このことから、TRAC不活性化によって細胞はTCRシグナル伝達に反応しなくなることが分かる。対照的に、CD52陽性およびCD52陰性のサイズは同程度まで大きくなる。
【0207】
CD52遺伝子およびTRAC遺伝子が標的化されたT細胞の機能分析
キメラ抗原受容体(CAR)が提供されたときに、T細胞の抗腫瘍活性を示す能力がゲノム操作によって影響を受けなかったことを検証するために、本発明者らは、CD52-TALE-ヌクレアーゼおよびTRAC-TALE-ヌクレアーゼで標的化されているT細胞を、抗CD19 CARをコードするRNA(SEQ ID NO:73)10μgでトランスフェクトした。24時間後に、T細胞をCD19発現ダウジ細胞と4時間インキュベートした。Tリンパ球による細胞傷害性顆粒放出(脱顆粒と呼ぶ)のマーカーであるCD107aの細胞表面アップレギュレーションをフローサイトメトリー分析によって測定した(Betts, Brenchley et al. 2003)。結果を
図8に含めた。この結果から、CD52陰性/TCRαβ陰性細胞およびCD52陽性/TCRαβ陽性は、PMA/イオノマイシン(正の対照)またはCD19+ダウジ細胞に応答して脱顆粒する能力が同じであることが分かる。CD107アップレギュレーションはCD19+の存在に依存する。これらのデータから、T細胞の、制御された抗腫瘍応答を開始する能力はゲノム操作によって悪影響を受けないことが示唆される。
【0208】
初代Tリンパ球におけるCD52-TALE-ヌクレアーゼおよびTRAC-TALE-ヌクレアーゼのゲノム安全性
本発明者らの構築物はヌクレアーゼサブユニットを含むので、重要な疑問は、複数のTALE-ヌクレアーゼトランスフェクションによって、遺伝毒性および「ぴったり一致する(close match)」標的配列でのオフターゲット切断または半TALE-ヌクレアーゼの誤対合が生じる可能性があるかどうかである。細胞ゲノムの完全性に及ぼすTRAC-TALE-ヌクレアーゼおよびCD52-TALE-ヌクレアーゼの影響を評価するために、本発明者らは、オフサイト切断の可能性を示すヒトゲノム内配列を列挙した。このリストを作成するために、本発明者らは、オリジナルの半標的と比較して4個までの置換を有するゲノム内配列を全て特定し、次いで、互いに9〜30bpのスペーサーのある、ヘッドトゥーヘッド方向の潜在的な半標的ペアを特定した。この分析は、1種類の半TALE-ヌクレアーゼ分子からなるホモ二量体、または1種類のCD52半TALE-ヌクレアーゼおよび1種類のTRAC半TALE-ヌクレアーゼによって形成されるヘテロ二量体によって潜在的に標的化される部位を含んだ。本発明者らは、個々の置換のコストおよび置換の位置を考慮して特異性データに基づいて潜在的なオフサイト標的をスコア付けした(半標的の3'末端にある塩基のミスマッチの方が許容される)。本発明者らは切断の可能性の推定値を反映するスコアをもつ173個のユニークな配列を入手した。本発明者らは、上位15位のスコアを選択し、CD52 TALE-ヌクレアーゼおよびTRAC TALE-ヌクレアーゼで同時にトランスフェクトし、CD52陰性、TCRαβ陰性として磁気分離によって精製したT細胞において、ディープシークエンシングによって、これらの遺伝子座において発見された変異の頻度を分析した。結果は
図9にある。挿入/欠失の最高頻度は7x10
-4である。これらの結果から、推定オフサイト標的が変異している可能性は、意図された標的の少なくとも1/600であることが分かる。従って、この研究において使用したTALE-ヌクレアーゼ試薬は極めて特異的であるように思われる。
【0209】
実施例3:ヒトCTLA4遺伝子を切断するTALE-ヌクレアーゼおよびヒトPDCD1遺伝子を切断するTALE-ヌクレアーゼ
実施例1に記載のように、PDCD1遺伝子を標的とするヘテロ二量体TALE-ヌクレアーゼおよびCTLA4遺伝子を標的とするヘテロ二量体TALE-ヌクレアーゼを設計および作製した。標的となるゲノム配列は、11bpスペーサーまたは15bpスペーサーで分けられた2つの17bp長の配列(半標的と呼ぶ)からなる。それぞれの半標的は、表11に列挙した半TALE-ヌクレアーゼの反復によって認識される。
【0210】
(表11)CTLA4 TALE-ヌクレアーゼおよびPDCD1 TALE-ヌクレアーゼならびに対応するヒト遺伝子内にあるTALE-ヌクレアーゼ標的部位の配列の説明
【0211】
HEK293細胞におけるCTLA4-TALE-ヌクレアーゼおよびPDCD1-TALE-ヌクレアーゼの活性
それぞれのTALE-ヌクレアーゼ構築物を、制限酵素消化を用いて、pEF1αロングプロモーター制御下で哺乳動物発現ベクターに入れてサブクローニングした。トランスフェクションの1日前に百万個のHEK293細胞を播種した。細胞を、EF1-αプロモーター制御下で、PDCD1遺伝子およびCTLA-4遺伝子にある関心対象のゲノム配列内の2つの半標的を認識するTALE-ヌクレアーゼをコードする、それぞれ2.5μgの2つのプラスミド、または5μgの対照pUCベクター(pCLS0003)で、25μlのリポフェクタミン(Invitrogen)を用いて製造業者の説明書に従ってコトランスフェクトした。
【0212】
PDCD1コード配列またはCTLA-4コード配列においてTALE-ヌクレアーゼによって生じる二本鎖切断は、生細胞では、エラープローン機構である非相同末端結合(NHEJ)によって修復される。生細胞におけるTALE-ヌクレアーゼの活性は、標的とされたゲノム遺伝子座での挿入または欠失の頻度によって測定される。トランスフェクションの48時間後に、トランスフェクトされた細胞からゲノムDNAを単離し、以下のプライマー:
(フォワードアダプター配列)-10N(TAG)-遺伝子座特異的フォワード配列、CTLA4_T01の場合:
、CTLA4_T03/T04の場合:
、PDCD1_T01の場合:
またはPDCD1_T03の場合:
およびリバースプライマー
(リバースアダプター配列)-内因性遺伝子座特異的リバース配列、CTLA4_T01の場合:
、CTLA4_T03/T04の場合:
、PDCD1_T01の場合:
またはPDCD1_T03の場合:
を用いて、遺伝子座特異的PCRを行った。
【0213】
PCR産物をT7-エンドヌクレアーゼアッセイによって分析した。簡単に述べると、PCR産物の変性および再アニーリング後に、T7エンドヌクレアーゼは、野生型鎖および変異鎖で構成されるミスマッチDNAを特異的に消化する。次いで、消化産物をポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離する。消化産物の存在は、TALE-ヌクレアーゼによって誘導された変異配列を示している。結果を
図10に示した。
図10の矢印は、消化されたPCR産物を示している。PDCD1_T1、PDCD1_T3、CTLA4_T1、CTLA4_T3、およびCTLA4_T4 TALE-ヌクレアーゼは全て、これらの標的部位において変異原性ヌクレアーゼ活性を示すことが証明された。
【0214】
初代T細胞におけるCTLA4不活性化:
ヒト初代T細胞をCD3/28ビーズによって活性化した。5日後に、CTLA4遺伝子について設計された3種類のTALEN(商標)(T1、T2、およびT3)のうちの1つをコードするRNA 20μgを用いて、または対照としてRNAを用いずに5x10
6個の細胞をエレクトロポレーション処理した。エレクトロポレーションの3日後に、蛍光抗体を用いた細胞内染色およびフローサイトメトリー分析によってCTLA4発現を測定した(
図27および
図28)。
【0215】
3種類全てのTALEN(商標)は、HEK293細胞株での効率と相互に関係する形でCTLA4発現のダウンレギュレーションを誘導した(T1はT3およびT4より効率が高かった)。
【0216】
454技術(Roche)を用いた、トランスフェクト細胞から単離したゲノムDNAのディープシークエンシング分析から、TALEN T1処理細胞ではCTLA4対立遺伝子の96%が変異していたのに対して、TALENを用いなかった対照試料では0.1%が変異していたことが明らかになった。
【0217】
初代T細胞におけるPD1不活性化:
ヒト初代T細胞をCD3/28ビーズによって活性化した。5日後に、ヒトPD1遺伝子に特異的な2種類のTALENのうちの1つをコードするRNA 20μgを用いて、または対照としてRNAを用いずに5x10
6個の細胞をエレクトロポレーション処理した。10日後に細胞を再活性化し、再活性化の3日後に、蛍光抗体を用いた表面染色およびフローサイトメトリー分析によってPD1発現を測定した(
図29を参照されたい)。
【0218】
両TALENともPD1発現の大幅なダウンレギュレーションを誘導した。454技術(Roche)を用いてTALEN T1でトランスフェクトした細胞およびTALEN T03でトランスフェクトした細胞から単離したゲノムDNAのディープシークエンシング分析から、それぞれ、PD1対立遺伝子の34%および39%が変異していたことが明らかになった(結果を
図30に示した)。
【0219】
PD1-TALEN処理細胞における抗腫瘍活性の上昇:
ヒト初代T細胞をCD3/28ビーズによって活性化した。5日後に、ヒトPD1遺伝子に特異的なTALENをコードするRNA 20μgを用いて、または対照としてRNAを用いずに5x10
6個の細胞をエレクトロポレーション処理した。一週間後、ヒトCD19に特異的なキメラ抗原受容体をコードするmRNAを用いて、または負の対照としてRNAを用いずに細胞をエレクトロポレーション処理した。翌日、CD19+ダウジ細胞(対して対照としてK562)、またはCD19発現ベクターが形質導入されたPD1リガンド1(PDL1)を発現するHCT116細胞(対して対照として親HCT116細胞)を用いた細胞傷害性アッセイにおいて前記細胞の抗腫瘍活性を測定した。標的細胞および対照細胞の生存率を比較することによって細胞傷害活性を求めた。結果を
図31の図に示した。PD1 TALENトランスフェクションは、PDL1発現HCT116細胞に対する細胞傷害活性を報告し、ダウジ細胞に対する細胞傷害活性を改善した。
【0220】
実施例4:pTαは不活性化TCRαTリンパ球におけるCD3表面発現を可能にする:
様々なプレTαバージョンの説明:
ヒトpTα遺伝子は、細胞外Ig様ドメイン、疎水性膜貫通ドメイン、および大きなC末端細胞質内テールを含む膜貫通糖タンパク質をコードする。ヒトpTα糖タンパク質に由来する様々なバージョンが設計されており、表12に説明し、
図11に示した。
【0221】
(表12)pTα構築物のサブセットの説明
【0222】
試験した様々なプレTα構築物には以下が含まれる。
1)pTα欠失変異体:ヒトpTαタンパク質の細胞内細胞質テール(114アミノ酸を含む)に様々な欠失を作製した(SEQ ID NO:107)。試験した構築物には、タンパク質の完全長バージョン(FL)、ならびにタンパク質のC末端から18個、48個、62個、78個、92個、110個、および114個のアミノ酸が欠失された変異体(SEQ ID NO:108〜SEQ ID NO:114)が含まれる。
2)細胞内活性化ドメインを含有するpTα変異体:C末端においてCD8、CD28、または41BBの細胞内活性化ドメインと融合したFLおよびΔ48変種(SEQ ID NO:115〜SEQ ID NO:120)。
3)pTα/TCRαキメラ変異体:構築物のうちの1つでは、TCRα細胞内ドメイン(IC)をpTαのテールレスバージョン(Δ114)と融合させた(SEQ ID NO:121)。pTα細胞外ドメインを、TCRαに由来する膜貫通(TM)ドメインおよびICドメインと融合させた第2の構築物も作製した(SEQ ID NO:122)。
4)pTα二量体化変異体:いくつかの変異が、プレTCR複合体のオリゴマー化/二量体化能力を変えることができると文献において記載されている。これらの変異体は、構成的シグナル伝達を誘導することなく(プレTCRオリゴマー化の際に誘導されると考えられる)、細胞表面でのプレTCR発現を可能にすると提唱された。これらの変異はpTαΔ48変種に導入されており、
-1xMUT: W46R(SEQ ID NO:123)
-4xMUT: D22A、K24A、R102A、R117A(SEQ ID NO:124)
である。
【0223】
TRAC不活性化ジャーカット細胞にける様々なプレTα構築物の活性
TCRα不活性化ジャーカット細胞においてCD3表面発現を回復させる能力について様々なpTα変種をスクリーニングするために、TRACを標的とするTALENを用いてTCRα遺伝子が破壊された細胞株を作製した。ジャーカット細胞(T細胞白血病細胞株)を、CytoPulseエレクトロポレーションを用いて、TRACを切断するTALENをコードするプラスミドでトランスフェクトし、次いで、KO細胞(TCR
α/βNEG; CD3
NEG)を、CD3磁気ビーズを用いた負の選択によって精製した。KO集団(JKT_KOx3細胞)を増幅し、様々なpTα変種のスクリーニングに使用した。百万個のJKT_KOx3細胞を、EF1αプロモーターの制御下で様々なpTα変種をコードするプラスミド15μgでトランスフェクトし、トランスフェクションの48時間後にCD3細胞表面発現のフローサイトメトリー分析を行うことによってスクリーニングを行った。
図12は、フローサイトメトリーによって確かめたCD3+細胞の割合(%)に基づく、JKT_KOx3細胞におけるFL、Δ18、およびΔ48p Tα構築物のトランスフェクション効率(BFP+細胞の%)および活性の代表例である。様々な構築物からの結果を表13にグループ分けした。
【0224】
(表13)TCRα不活性化ジャーカット細胞における様々なpTα構築物の活性。様々なプレTα構築物でトランスフェクトしたTCRα不活性化ジャーカット細胞において、CD3発現のフローサイトメトリー分析によって活性を測定した。
【0225】
TCRα不活性化初代Tリンパ球におけるpTα-FLおよびpTα-Δ48の活性:
pTα-FLおよびpTα-Δ48バージョンがTCRα不活性化Tリンパ球においてCD3表面発現を誘導する能力を試験するために、pTα-FLコード配列およびpTα-Δ48コード配列を、SFFVプロモーター下で青色蛍光タンパク質(BFP)をコードし、それに続いて自己切断T2Aペプチドをコードする自己不活性化pLV-SFFV-BFP-2A-PCTRAレンチウイルスベクターに入れてクローニングした(
図13)。
【0226】
末梢血から単離したTリンパ球を、抗CD3/CD28アクチベータービーズ(Life technologies)を用いて72時間、活性化した。450万個の細胞を、CytoLVT-S機器(BTX-Harvard Harbour)を用いてエレクトロポレーションによって、TCRα定常鎖領域(TRAC)を標的とするTALE-ヌクレアーゼをコードするmRNA 10μgでトランスフェクトした。エレクトロポレーションの2日後に、T細胞に、LV-SFFV-BFP-2A-pTα-Δ48またはLV-SFFV-BFP-2A-対照レンチウイルスベクターを形質導入した。次いで、抗CD3磁気ビーズ(Miltenyi Biotech)を用いて、CD3陰性T細胞およびCD3low 細胞を精製した。この実験プロトコールを
図14Aに示した。
【0227】
図14Bは、CD3ビーズによる精製前および精製後の、BFP-2A-pTαΔ48(KO/Δ48)または対照BFPレンチウイルスベクター(KO/BFP)が形質導入されたTCRα不活性化T細胞(KO)における、TCRα/β、CD3細胞表面発現、およびBFP発現のフローサイトメトリー分析を表す。BFP-T2A-pTα-Δ48ベクターが形質導入されたTCRα不活性化細胞(BFP+細胞)は非形質導入細胞(BFP-細胞)と比較して高レベルのCD3を示す。対照BFPベクターが形質導入された細胞間で差違は観察されない。これらの結果から、pTαはTCRα不活性化細胞の細胞表面におけるCD3発現の回復を媒介することが分かる。対照的に、TCRα/β染色は、予想した通り、pTα-Δ48発現ベクターが形質導入された細胞でもpTα-Δ48発現ベクターが形質導入されていない細胞でも変わらない。
【0228】
pTαを介したCD3発現はTCR欠損T細胞の活性化を支援する:
pTαが細胞活性化シグナルを伝達する能力を確かめるために、pTα-Δ48およびpTα-Δ48.41BBが形質導入されたTCRα不活性化T細胞における初期活性化マーカーおよび後期活性化マーカーの発現を分析した。pTα-Δ48およびpTα-Δ48.41BBが形質導入されたTCRα不活性化T細胞は前の項および
図14Aに記載のように初代ヒトT細胞から作製した。
【0229】
CD3を介したシグナル伝達を検出するために、CD3ビーズを用いてTCRα不活性化T細胞を精製して3日後に、抗CD3/CD28コーティングビーズを用いて細胞を再活性化した(
図14A)。細胞を、再活性化の24時間後に蛍光色素結合抗CD69(初期活性化マーカー)で染色し、再活性化の48時間後に抗CD25(後期活性化マーカー)で染色し、フローサイトメトリーによって分析した(
図15A〜B)。
図15A〜Bに示したように、pTα-Δ48を発現するTCRα不活性化細胞(KO/pTα-Δ48)またはpTα-Δ48.41BBを発現するTCRα不活性化細胞(KO/pTα-Δ48.BB)は、TCRα/βを発現する細胞(NEP:非エレクトロポレーション処理細胞)において観察されるレベルと同様のレベルまで活性化マーカーのアップレギュレーションを示す。
【0230】
T細胞活性化の別の指標は、「ブラスティング(blasting)」と呼ばれることもある細胞サイズの拡大である。プレTCR複合体が「ブラスティング」を誘導する能力は、抗CD3/CD28-ビーズを用いて再活性化した72時間後に細胞サイズをフローサイトメトリー分析することによって測定した(
図15C)。抗CD3/CD28ビーズによる刺激は、TCRα/β複合体を発現する細胞対pTα-Δ48またはpTα-Δ48.41BBを発現する細胞において同等の細胞サイズ拡大を誘導した。まとめると、これらの結果から、プレTCR複合体は、活性化マーカーアップレギュレーションを媒介する機構と効率的につながるシグナルを伝達する能力があることが示唆される。
【0231】
pTαを介したCD3発現は、刺激性抗CD3/CD28抗体を用いたTCR欠損初代T細胞の増殖を支援する
プレTCR複合体が長期細胞増殖を支援する能力を評価するために、以前に述べたように作製した細胞の増殖を測定した。初回活性化の10日後に、IL2(非再活性化)の中で、またはIL2と抗CD3/CD28ビーズ(再活性化)の中で細胞を維持した。それぞれの条件について、細胞を計数し、BFP+細胞の数を評価するために様々な時点でフローサイトメトリーによって分析した。BFPまたはBFP-T2A-プレTCRα-Δ48ベクターが形質導入されたTCRα不活性化細胞(KO)の増殖を比較し、これらの細胞の誘導倍率を、再活性化後、2日目に得られた値に対して評価した。
図16は2人の無関係のドナーから入手した結果を示す。両方の場合において、pTα-Δ48を発現するTCRα不活性化細胞は、BFP対照ベクターだけ発現するTCRα不活性化細胞より多くの増殖を示した。2人目のドナーについては、pTα-Δ48.41BBまたは完全長pTαを発現するTCRα不活性化細胞も含めた。これらも、BFP対照ベクターだけ発現するTCRα不活性化細胞より多くの増殖を示した。
【0232】
実施例5:Cytopulse技術を用いたT細胞におけるmRNAトランスフェクションの最適化
最適化されたcytopulseプログラムの決定
細胞をトランスフェクトすることができる電圧範囲を求めるために、非活性化PBMCに対して第1のセットの実験を行った。表14に記載のように5つの異なるプログラムを試験した。
【0233】
(表14)PBMC由来T細胞におけるエレクトロポレーションに必要な最低電圧を求めるのに使用した様々なcytopulseプログラム
【0234】
3百万個または6百万個の細胞を、0.4cmギャップ(gap)キュベット(30x10
6または15x10
6細胞/ml)に入れて、GFPをコードするプラスミドおよび対照プラスミドpUC20μgと様々なCytopulseプログラムを用いてエレクトロポレーション処理した。エレクトロポレーションの24時間後に、トランスフェクション効率を求めるために、GFP発現をフローサイトメトリーによってエレクトロポレーション処理細胞において分析した。
図17に示したデータは、PBMC由来T細胞におけるプラスミドエレクトロポレーションに必要な最低電圧を示している。これらの結果から、cytopulseプログラム3および4は効率的なT細胞形質転換を可能にすることが証明された(EP#3および#4)。
【0235】
活性化した精製T細胞へのmRNAのエレクトロポレーション
T細胞の効率的なDNAエレクトロポレーションを可能にする最良のcytopulseプログラムを決定した後に、本発明者らは、この方法がmRNAエレクトロポレーションに適用可能かどうかを試験した。
【0236】
PHA/IL2によって6日間、予め活性化した5x10
6個の精製T細胞をcytoporation buffer T(BTX-Harvard apparatus)に再懸濁し、0.4cmキュベットに入れて、GFPをコードするmRNA 10μgまたはGFPをコードするプラスミドもしくはpUC 20μgと、前の項において決定した好ましいcytopulseプログラムを用いてエレクトロポレーション処理した(表15)。
【0237】
(表15)精製T細胞をエレクトロポレーション処理するために使用したCytopulseプログラム
【0238】
トランスフェクションの48時間後に、細胞を生死判別色素(eFluor-450)で染色し、細胞の生存率および生GFP+細胞の割合(%)をフローサイトメトリー分析によって求めた(
図18)。
【0239】
図18に示したデータから、ここで確かめられた最適条件を用いたRNAエレクトロポレーションは毒性が無く、生細胞の95%超をトランスフェクトできることが分かる。
【0240】
合成において、全データセットから、T細胞をDNAまたはRNAで効率的にトランスフェクトできることが分かる。特に、RNAトランスフェクションは細胞の生存率に影響を及ぼさず、細胞集団における関心対象のトランスフェクトされた遺伝子の均一な発現レベルを可能にする。
【0241】
効率的なトランスフェクションは、使用した活性化方法(PHA/IL-2またはCD3/CD28コーティング-ビーズ)とは独立して、細胞活性化後、早い時点で成し遂げることができる。本発明者らは、活性化の72時間後から>95%の効率で細胞をトランスフェクトすることに成功した。加えて、同じエレクトロポレーションプロトコールを用いて、解凍および活性化後の効率的なT細胞トランスフェクションも得ることができる。
【0242】
TALE-ヌクレアーゼ機能的発現のための初代ヒトT細胞におけるmRNAエレクトロポレーション
mRNAエレクトロポレーションによって初代ヒトT細胞においてGFPを効率的に発現できることが証明された後に、本発明者らは、この方法が関心対象の他のタンパク質の発現に適用可能かどうかを試験した。転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALE-ヌクレアーゼ)は、TAL DNA結合ドメインとDNA切断ドメインとの融合によって作製された部位特異的ヌクレアーゼである。これらは、実質的に任意の望ましいDNA配列において二本鎖切断を誘導するので強力なゲノム編集ツールである。これらの二本鎖切断は、エラープローンDNA修復機構である非相同末端結合(NHEJ)を活性化し、これによって、潜在的に、関心対象の任意の望ましい遺伝子が不活性化される。または、十分な修復テンプレートが細胞に同時に導入されるのであれば、TALE-ヌクレアーゼによって誘導されるDNA切断は相同組換えによって修復することができ、従って、遺伝子配列を好きなように改変する可能性が生じる。
【0243】
本発明者らは、T細胞抗原受容体α鎖(TRAC)をコードするヒト遺伝子内の配列を特異的に切断するように設計されたTALE-ヌクレアーゼを発現させるためにmRNAエレクトロポレーションを使用した。この配列に含まれる変異は、遺伝子不活性化および細胞表面からのTCRαβ複合体の消失をもたらすと予想される。TRAC TALE-ヌクレアーゼRNAまたは対照として非コードRNAを、Cytopulse技術を用いて活性化初代ヒトTリンパ球にトランスフェクトした。エレクトロポレーションの順序は、表15に記載のように1200Vの2回のパルスに続いて130Vの4回のパルスからなった。
【0244】
エレクトロポレーションして7日後のTCR表面発現のフローサイトメトリー分析によって(
図19、上パネル)、本発明者らは、T細胞の44%がTCRαβ発現を失ったことを観察した。本発明者らは、TRAC遺伝子座のPCR増幅、その後に454ハイスループットシークエンシングによって、トランスフェクトされた細胞のゲノムDNAを分析した。配列決定された対立遺伝子のうち33%(2153のうち727)がTALE-ヌクレアーゼ切断部位に挿入または欠失を含んでいた。
図19(下パネル)は、変異した対立遺伝子の例を示す。
【0245】
これらのデータから、cytopulse技術を用いたmRNAエレクトロポレーションによってTRAC TALE-ヌクレアーゼが機能的に発現することが分かる。
【0246】
抗CD19単鎖キメラ抗原受容体(CAR)をコードするモノシストロニックmRNAを用いたT細胞のエレクトロポレーション:
抗CD3/CD28コーティングビーズおよびIL2によって数日間(3〜5日間)、予め活性化した5X10
6個のT細胞をcytoporation buffer Tに再懸濁し、0.4cmキュベットに入れて、mRNA無しで、または単鎖CARをコードするmRNA(SEQ ID NO:73)10μgと表15に記載のプログラムを用いてエレクトロポレーション処理した。
【0247】
エレクトロポレーションの24時間後に、細胞を、固定可能な生死判別色素eFluor-780、および生細胞上のCARの細胞表面発現を評価するために特異的なPE結合ヤギ抗マウスIgGF(ab')2断片で染色した。データを
図20に示した。Aは、前記のモノシストロニックmRNAでエレクトロポレーション処理した生T細胞の圧倒的多数が表面にCARを発現することを示している。エレクトロポレーションの24時間後に、T細胞をダウジ(CD19
+)細胞と6時間、共培養し、表面における脱顆粒マーカーCD107aの発現を検出するためにフローサイトメトリーによって分析した(Betts, Brenchley et al. 2003)。
【0248】
図20に示したデータから、前記のモノシストロニックmRNAでエレクトロポレーション処理した細胞の大多数は、CD19を発現する標的細胞の存在下で脱顆粒することが分かる。これらの結果から、エレクトロポレーション処理済みT細胞の表面に発現したCARには活性があることがはっきりと証明された。
【0249】
抗CD19マルチサブユニットキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリシストロニックmRNAを用いたT細胞のエレクトロポレーション:
抗CD3/CD28コーティングビーズおよびIL2によって数日間(3〜5日間)、予め活性化した5X10
6個のT細胞をcytoporation buffer T中でエレクトロポレーション処理し、0.4cmキュベットに入れて、mRNA無しで、または多鎖CARをコードするmRNA(SEQ ID NO:126によってコードされるSEQ ID NO:125、
図21Aおよび
図4B(csm4))45μgと表15に記載のプログラムを用いてエレクトロポレーション処理した。
【0250】
エレクトロポレーションの24時間後に、細胞を、固定可能な生死判別色素eFluor-780、および生細胞上のCARの細胞表面発現を評価するために特異的なPE結合ヤギ抗マウスIgGF(ab')2断片で染色した。
図21に示したデータから、前記のポリシストロニックmRNAでエレクトロポレーション処理した生T細胞の圧倒的多数は表面にCARを発現することが分かる。
【0251】
エレクトロポレーションの24時間後に、T細胞をダウジ(CD19
+)と6時間、共培養し、表面における脱顆粒マーカーCD107aの発現を検出するためにフローサイトメトリーによって分析した。
図21に示したデータから、前記のポリシストロニックmRNAでエレクトロポレーション処理した細胞の大多数は、CD19を発現する標的細胞の存在下で脱顆粒することが分かる。これらの結果から、エレクトロポレーション処理済みT細胞の表面に発現したCARには活性があることがはっきりと証明された。
【0252】
説明において引用された参考文献のリスト