(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(B)有機微粒子は、アクリル系重合体微粒子およびシリコーン系重合体微粒子から選択される1種以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光拡散フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、適宜図面を参照して説明する。なお、各図において、同様または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。また、以下に説明する材料、構成等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
【0011】
<光拡散フィルムの構成>
本発明の1つの実施形態によると、
(A)ポリカーボネート樹脂 100質量部と、
(B)有機微粒子 1〜10質量部と、
(C)無機微粒子 0.01〜0.5質量部と
を含有し、
前記(C)無機微粒子は、平均粒子径が1μm未満であり、波長589nmでの屈折率が2.00以上である
光拡散フィルムが提供される。
【0012】
実施形態に係る光拡散フィルムは、光拡散性および光源形状隠蔽性に優れている。そのため、ディスプレイ装置のバックライト、特に直下型バックライトにおける光拡散板として好適に使用され得る。ここで、光拡散性に優れるとは、光源からの光が光拡散フィルムを通過する際に、光がより拡散することを意味する。光拡散性に優れた光拡散フィルムを使用することにより、複数の光源を使用することに起因する輝度ムラを防ぐことができ、より均一な光を画像素子に送ることができる。また、光源形状隠蔽性に優れるとは、光拡散フィルムを通して光源を見たときに、光源形状の視認性が低いことを意味する。直下型バックライトでは光源が液晶パネルの真下にあるため、そのままでは、画面を通して光源のイメージが見えてしまう。そこで、光源のイメージを隠すために一般的に光拡散板が使用されるが、より光源形状が隠蔽される光拡散フィルムを使用することが、輝度ムラを防ぎ、より均一な光を画像素子に送るという観点から好ましい。
【0013】
一般的に、光拡散板の光拡散性を高めようとすると、全光線透過率および輝度が低下するという問題が生じる。このように、光拡散板は比較的簡単な構造でありながら、バックライトの光学系は複雑であり、最終的にバランスのとれた光学特性を得ることは難しい。本発明の一実施形態によると、上記光拡散性および光源形状隠蔽性に加え、好ましい範囲の全光線透過率、ヘイズ等が得られるため、バランスのとれた光学特性を有する光拡散フィルムを提供することができる。そのような光拡散フィルムをディスプレイ装置のバックライトにおける光拡散板として使用することにより、より均一で、明るく、解像度の高い映像が得られる。また、実施形態によれば、比較的厚みの薄い光拡散フィルムによって上記効果が得られるため、製品の軽量化を図ることができ、経済的にも好ましい。さらに、実施形態に係る光拡散フィルムは、押出成形によって製造する場合において、フィルム押出しを安定的に行うことができ、均一なフィルムを得られるという利点も有する。
【0014】
実施形態によって上記効果が得られる理由は定かではないが、以下のように推測される。
−有機微粒子のみまたは無機微粒子のみを配合した場合より、有機微粒子と無機微粒子を併用した方が光拡散性および光源形状隠蔽性が向上する。
−有機微粒子と無機微粒子を併用した場合、有機微粒子の量が少なすぎると光拡散性および光源形状隠蔽性が低下し、有機微粒子が多すぎると光透過性が低下する。また、無機微粒子の量が少なすぎると光拡散性および光源形状隠蔽性が向上せず、無機微粒子が多すぎると光透過性が低下する。これらを考慮すると、ポリカーボネート樹脂、有機微粒子および無機微粒子を所定の質量割合で配合することが、光拡散性、光源形状隠蔽性等の向上に寄与すると考えられる。
−無機微粒子の粒径が大きすぎると、光拡散フィルム内に存在する無機微粒子の粒子数が減少するため、光拡散性および光源形状隠蔽性が低下する。従って、平均粒子径が1μm未満の無機微粒子を使用することが、光拡散性、光源形状隠蔽性等の向上に寄与すると考えられる。また、無機微粒子の屈折率が2.00未満であると、光拡散性が低下する。従って、屈折率が2.00以上の無機微粒子を使用することが、光拡散性の向上に寄与すると考えられる。
−さらに、フィルム表面に凹凸形状を付与することにより、光拡散性および光源形状隠蔽性により優れた光拡散フィルムの作製が可能となる。
これらを総合的に考慮すると、上記実施形態によれば、無機微粒子が有機微粒子の光拡散性を補助する役割を担うことにより光拡散フィルムの光拡散性および光源形状隠蔽率が向上し、全光線透過率等のその他の特性との間でもバランスの取れた光拡散フィルムを作製できると考えられる。
【0015】
以下、光拡散フィルムを構成する材料について、順に説明する。
(A)ポリカーボネート樹脂
実施形態に係る光拡散フィルムに含まれるポリカーボネート樹脂は、一般的にポリカーボネート樹脂として分類されるものであれば特に限定されない。例えば、「プラスチック読本」(改訂第14版)(1985年5月10日、(株)プラスチックエージ発行)第152頁〜第153頁に記載されるように、ビスフェノールAとホスゲンとを反応させるホスゲン法(溶液法)、ビスフェノールAとジフェニルカーボネートとを反応させるエステル交換法(溶融法)等の通常の方法により製造することができるものであってよい。製造にあたっては、触媒、末端停止剤、酸化防止剤等が添加されてもよい。また、ポリカーボネート樹脂は、三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であってもよいし、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよい。さらに、2種以上のポリカーボネート樹脂を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、25℃におけるメチレンクロライド溶液粘度より測定した粘度平均分子量で、好ましくは13000〜40000であり、より好ましくは14000〜38000である。粘度平均分子量が13000未満では、光拡散フィルムの強度が不足する為、光拡散フィルムに割れが発生するという問題が生じ得る。また、逆に粘度平均分子量が40000を超えると、溶融粘度が高すぎるため押出成形が困難になるという問題が生じ得るので好ましくない。
【0017】
(B)有機微粒子
実施形態に係る光拡散フィルムは、光拡散剤として有機微粒子を含む。有機微粒子としては、ポリカーボネート樹脂との屈折率の差が絶対値で0.01〜0.30であるものが好ましい(ここで、屈折率は、波長598nmでの屈折率を意味する)。ポリカーボネート樹脂と有機微粒子の屈折率差が絶対値で0.01未満であると、光拡散性が劣る傾向にある。一方、屈折率差の絶対値が0.30を超えると、全光線透過率が大きく低下する傾向にある。
【0018】
具体的には、重合体微粒子であることが好ましく、特に、主成分がアクリル化合物であるアクリル系重合体微粒子、主成分がシリコーン化合物であるシリコーン系重合体微粒子等が挙げられる。有機微粒子は、単一構造の化合物であっても共重合体であってもよく、1種類を単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、コアシェル型の層構造を有する材料またはコーティングされた材料であってもよい。
【0019】
有機微粒子は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して1〜10質量部、好ましくは1〜8質量部の量で光拡散フィルムに含まれる。有機微粒子の量が1質量部より少ないと、十分な光拡散性を得ることができない。一方、10質量部より多いとペレットを押出成形してフィルム化する際、押出機内へのフィード不良を起こしてフィルム化ができない場合がある。また、衝撃強度が大きく低下する。
【0020】
有機微粒子の平均粒子径は、1μm〜15μm、好ましくは1μm〜10μm、より好ましくは1μm〜6μmである。有機微粒子の平均粒子径が15μmより大きいと、十分な光拡散性を得ることができず、1μm未満では分散不良による光拡散フィルムの外観の低下および光拡散性の低下が起こり得る。本明細書において、「有機微粒子の平均粒子径」とは、透過型電子顕微鏡で測定され、長さ平均径で定義された一次粒子の平均粒子径を意味する。ここで、長さ平均径は、Σ(nd
2)/Σ(nd)で規定され、dは各粒子径の代表値を表し、nは個数基準のパーセントを表す。
【0021】
(C)無機微粒子
実施形態に係る光拡散フィルムは、光拡散剤として無機微粒子を含む。無機微粒子としては、平均粒子径が1μm未満であり、屈折率n
dが2.00以上であるものが使用される。ここで、屈折率n
dは、波長589nmの光に対する絶対屈折率を意味する。屈折率n
dが2.00以上であり、ポリカーボネート樹脂との反応性が低いことから、無機微粒子は遷移金属を含む材料であることが好ましい。本明細書において、「遷移金属」には、周期表の12族に属する金属(すなわち、亜鉛、カドミウム等)も含まれるものとする。遷移金属として、具体的には、亜鉛、クロム、ジルコニア、カドミウム、タングステン、鉄、銅、チタン、白金、またはこれら金属を含む化合物(例えば、金属酸化物、金属硫化物等)が挙げられる。上記金属を含む化合物の具体例としては、硫化亜鉛、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化カドミウム、硫化カドミウム、酸化鉄(2価および3価)、酸化銅、酸化チタン等が挙げられる。中でも、酸化チタン、ジルコニア、亜鉛および硫化亜鉛が好ましく、酸化チタンが特に好ましい。無機微粒子は、1種類を単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。本明細書において、「無機微粒子の平均粒子径」とは、透過型電子顕微鏡で測定され、長さ平均径で定義された一次粒子の平均粒子径を意味する。ここで、長さ平均径は、Σ(nd
2)/Σ(nd)で規定され、dは各粒子径の代表値を表し、nは個数基準のパーセントを表す。
【0022】
無機微粒子の屈折率n
dは、2.00〜3.50であることが好ましく、2.00〜3.00であることがより好ましい。屈折率n
dが2.00未満である場合、無機微粒子の光反射性能が低いため、得られる光拡散フィルムの光拡散性が劣る。
【0023】
無機微粒子の平均粒子径は、好ましくは0.01μm以上〜1μm未満であり、より好ましくは0.1〜0.5μmである。無機微粒子の平均粒子径が1μm以上であると全光線透過率が低下し、十分な照明強度が得られなくなる。
【0024】
無機微粒子は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.01〜0.5質量部、好ましくは0.01〜0.3質量部の量で光拡散フィルムに含まれる。無機微粒子の量が0.01質量部より少ないと、十分な光拡散性を得ることができない。一方、無機微粒子の量が0.5質量部より多いと全光線透過率が低下し、十分な照明強度が得られなくなる。
【0025】
無機微粒子は、従来公知の表面処理剤によって表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、脂肪酸、シランカップリング剤、ポリハイドロジェンメチルシロキサン等が挙げられる。
【0026】
(D)その他の成分
実施形態に係る光拡散フィルムは、例えば、光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、離型剤、難燃剤、帯電防止剤等、周知の添加剤をさらに含有していてもよい。
【0027】
さらに、光拡散フィルムは、本発明の目的を損なわない限りにおいて、ポリカーボネート樹脂以外の他の樹脂成分を含有していてもよい。配合し得る他の樹脂成分としては、例えば、ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、水添ポリスチレン樹脂、ポリアクリルスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、SMA樹脂、ポリアルキルメタクリレート樹脂、ポリメタクリルメタクリレート樹脂、ポリフェニルエーテル樹脂、非晶性ポリアルキレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0028】
上記添加剤および樹脂成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。しかしながら、ポリカーボネート樹脂を用いることによる効果を得るために、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂成分は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して40質量部以下とすることが好ましい。
【0029】
<光拡散フィルムの特性>
(1)全光線透過率(Tt)
実施形態に係る光拡散フィルムは、全光線透過率(Tt)が好ましくは50〜90%であり、より好ましくは60〜85%であり、例えば60〜75%であってよい。全光線透過率が50%未満であると、十分な照明強度が得られず、90%を越えると、光源の形状イメージが出易くなったり、輝度ムラを生じ易くなったりする。全光線透過率は、JIS K−7361に従って測定することができる。
【0030】
(2)ヘイズ(H)
実施形態に係る光拡散フィルムは、ヘイズ(H)が好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、特に好ましくは99%以上である。ヘイズが90%未満であると、十分な光拡散性および光源形状隠蔽性を得ることができない。ヘイズは、JIS K−7136に従って測定することができる。
【0031】
(3)拡散率(D)
実施形態に係る光拡散フィルムは、拡散率(D)が好ましくは30%以上であり、より好ましくは30〜99%である。拡散率(D)の算出方法を、
図2を参照して説明する。拡散率(D)は、光拡散フィルム1に法線方向aから入射光Liを入射させたときの透過光L0のうち、法線方向aに対して5°の角度への透過光L5の強度をL
5、20°の角度への透過光L20の強度をL
20、70°の角度への透過光L70の強度をL
70としたときに、下記式(1)により求められる。
【数1】
拡散率は、通常は100%未満である。拡散率(D)が30%未満であると、十分な光拡散性を得ることができない。
【0032】
(4)分散度
実施形態に係る光拡散フィルムは、分散度が好ましくは15°以上であり、より好ましくは20°以上である。ここで、分散度とは、拡散率の測定と同様に
図2の光拡散フィルム1に法線方向aから光Liを入射させ、法線方向aすなわち0°の角度への透過光の強度を100%としたときに、強度が50%となる透過光の角度(法線方向aに対する角度)を意味する。分散度の数値が大きいほど、光拡散性に優れていると言える。分散度が15°未満であると、十分な光拡散性を得ることができない。
【0033】
<光拡散フィルムの製造方法>
実施形態に係る光拡散フィルムは、例えば、ポリカーボネート樹脂の粉粒体と光拡散剤(すなわち、有機微粒子および無機微粒子)とを混合して混合紛体を調製し、得られた混合紛体を公知の成形方法によって成形することにより製造することができる。
【0034】
具体的には、例えばポリカーボネート樹脂、光拡散剤および任意の添加剤を、ヘンシェルミキサー、タンブラー等の混合機で機械的に混合した後、一軸押出機、二軸押出機等の押出機、各種ニーダー等を用いて溶融混練してポリカーボネート樹脂組成物を得る。次いで、得られた樹脂組成物を、押出成形法、射出成形法、プレス成形法等の通常の成形方法により、フィルム状に成形する。より具体的には、例えば押出成形を使用する場合、ポリカーボネート樹脂組成物を一軸押出機または二軸押出機を用いて溶融混練した後、Tダイおよびロールユニットを介して押し出すことにより、実施形態に係る光拡散フィルムを製造することができる。
【0035】
実施形態に係る光拡散フィルムは、その少なくとも一方の面が凹凸構造を有していてもよい。表面に凹凸構造を有することにより、いわゆる外部拡散によって光をより拡散させることができる。光拡散フィルムの少なくとも一方の面における凹凸構造は、1〜10μmの算術平均粗さ(Ra)を有していることが好ましく、より好ましくは1〜8μmであり、特に好ましくは2〜6μmである。算術平均粗さ(Ra)が1μmより小さいと、十分な光拡散性を得ることができない。一方、算術平均粗さ(Ra)が10μmより大きいと輝度ムラが起こり、均一な拡散性を得ることができない。算術平均粗さ(Ra)は、JIS B0601 :2001に従って測定することができる。光拡散フィルム表面の算術平均粗さは、例えば、押出成形時に使用する押出機の冷却ロールの表面を修飾することにより、適宜調節することができる。
【0036】
光拡散フィルム表面に凹凸を設ける方法としては、例えば、ロール転写により凹凸を設ける方法、セル転写により凹凸を設ける方法等が挙げられる。また、凹凸構造としては、プリズム構造、マイクロレンズ構造、ラインアンドスペース構造、マット構造等が好適に用いられる。光拡散フィルム表面に凹凸を設けることで、光拡散性および光源形状隠蔽性が向上するため、光拡散剤の添加量を低減することができ、経済的にも有利である。
【0037】
実施形態に係る光拡散フィルムの厚さは、100〜500μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは100〜300μmであり、特に好ましくは100〜200μmである。一般的に、ヘイズを大きくするためには光拡散フィルムを厚く形成する必要がある。しかしながら、実施形態に係る光拡散フィルムの構成によると、比較的薄いフィルムであっても、高いヘイズを得ることができる。そのため、薄い光拡散フィルムであっても十分な光拡散性および光源形状隠蔽性を得ることができる。実施形態に係る光拡散フィルムは、特に直下型バックライトを備えるディスプレイ装置の光拡散板として使用されるが、光拡散フィルムの薄肉化は、ディスプレイ装置の軽量化、経済性等の観点で望ましい。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明の内容がこれにより限定されるものではない。
<評価方法>
以下の実施例および比較例において作製した光拡散フィルムの評価方法について説明する。
(1)全光線透過率(Tt)およびヘイズ(H)
全光線透過率(Tt)およびヘイズ(H)は、ヘイズメーター((株)村上色彩技術研究所製、「HM−150」)を用いて、JIS K−7361、JIS K−7136に従って測定した。
【0039】
(2)拡散率(D)および分散度
拡散率(D)は、ゴニオフォトメーター((株)村上色彩技術研究所製、「GP−200」)を用いて光拡散フィルムを透過した透過光の強度を測定し、その強度の値から算出した。具体的には、上記で
図2を参照して説明した通り、法線方向aに対して5°の角度への透過光L5の強度をL
5、20°の角度への透過光L20の強度をL
20、70°の角度への透過光L70の強度をL
70とし、上述した式(1)により拡散率(D)を求めた。
分散度についても、同じゴニオフォトメーターを使用し、法線方向aすなわち0°の角度への透過光の強度を100%としたときに、強度が50%となる透過光の角度を求めた。
【0040】
(3)光源形状隠蔽性
光源形状隠蔽性は、複数のLEDを配置した光源から40mmの高さに光拡散フィルムを配置し、光拡散フィルムを介して光源を目視で観察することにより評価した。評価は、以下の通り行った。
a:光源形状が確認されない。
b:概ね光源形状が確認されない。
c:光源形状が確認される。
【0041】
(4)押出性
押出性は、以下の実施例および比較例に示すようにスクリュー径26mmの二軸押出機を用いて押出しを行った場合に、押出しを安定的に行うことが可能か否かによって評価した。押出機の概略を、
図3に示す。押出し条件は、バレル温度280℃、ダイス(D)温度300℃、
図3に示す圧着ロール(R1)温度40℃、第一冷却ロール(R2)温度150℃、第二冷却ロール(R3)温度130℃であった。ここで、第一冷却ロール(R2)は、第一冷却ロール上に光拡散フィルムを供することにより光拡散フィルム表面に凹凸構造が形成されるように、ロール表面が修飾されている。押出しの安定性は、フィルム押出し時のトルク変動、樹脂圧変動、および吐出変動によって判断した。
a:フィルム押出を安定的に行うことが可能
b:フィルム押出を安定的に行うことが困難
【0042】
(5)表面形状
光拡散フィルムの表面形状は、算術平均粗さ(Ra)によって評価した。算術平均粗さは、表面性状測定機(ミツトヨ株式会社製、「CNCハイブリッド CS H−5000 CNC」)を用いて、JIS B0633 :2001に従って測定した。また、光拡散フィルム表面に凹凸形状がない場合には、「鏡面」とした。
【0043】
<実施例1>
ビスフェノールAとホスゲンから界面重合法により製造されたポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)、「ユーピロンE−2000F」)100質量部、アクリル系重合体微粒子(綜研化学(株)製、「ケミスノー KMR−3TA」、平均粒子径3μm)5質量部、および酸化チタン(石原産業(株)製、「タイペーク PC−3」、平均粒子径0.21μm、屈折率n
d=2.71)0.2質量部をタンブラーで混合したのち、二軸押出機による溶融混練によりペレット化した。得られたペレットを、スクリュー径26mmの二軸押出機を用いて押出成形し、厚さ約180μmの光拡散フィルムを得た。ここでの押出し条件は、上記「(4)押出性」に記載した通りであり、表面にマット構造(算術平均粗さ(Ra)=3μm)を有する光拡散フィルムが得られた。
【0044】
<実施例2>
光拡散フィルム表面の算術平均粗さ(Ra)が5μmとなるような冷却ロールを使用して押出成形したことを除き、実施例1と同様に光拡散フィルムを作製した。
【0045】
<実施例3>
光拡散フィルムの表面形状が鏡面となるような冷却ロールを使用して押出成形したことを除き、実施例1と同様に光拡散フィルムを作製した。
【0046】
<実施例4および5>
有機微粒子と無機微粒子の配合量を表1に示すように変更したことを除き、実施例1と同様に光拡散フィルムを作製した。
【0047】
<実施例6>
有機微粒子と無機微粒子の配合量を表1に示すように変更したことを除き、実施例2と同様に光拡散フィルムを作製した。
【0048】
<実施例7>
有機微粒子と無機微粒子の配合量を表1に示すように変更したことを除き、実施例1と同様に光拡散フィルムを作製した。
【0049】
<実施例8>
有機微粒子としてアクリル系重合体微粒子(アイカ工業(株)製、「スタフィロイド GM−0630H」、平均粒子径6μm)を使用したことを除き、実施例2と同様に光拡散フィルムを作製した。
【0050】
<実施例9>
有機微粒子としてシリコーン系重合体微粒子(サムスン製、「STAROR B−L SL−200M」、平均粒子径1.7μm)を使用し、有機微粒子と無機微粒子の配合量を表1に示すように変更したことを除き、実施例2と同様に光拡散フィルムを作製した。
【0051】
<比較例1〜4>
有機微粒子と無機微粒子の配合量を表1に示すように変更したことを除き、実施例1と同様に光拡散フィルムを作製した。
【0052】
<比較例5>
無機微粒子として炭酸カルシウム(林化成(株)製、軽質炭酸カルシウム「KFW−200」、平均粒子径1.2μm、屈折率n
d=1.59)を使用し、有機微粒子と無機微粒子の配合量を表1に示すように変更したことを除き、実施例1と同様に光拡散フィルムを作製した。
【0053】
<比較例6>
無機微粒子として酸化亜鉛(堺化学工業(株)製、大粒子酸化亜鉛「LPZINC−2」、平均粒子径2.0μm、屈折率n
d=2.00)を使用したことを除き、実施例1と同様に光拡散フィルムを作製した。
【0054】
<比較例7>
無機微粒子としてガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ(株)製、低アルカリガラス「EMB−10」、平均粒径5.0μm、屈折率n
d=1.51)を使用し、有機微粒子と無機微粒子の配合量を表1に示すように変更したことを除き、実施例1と同様に光拡散フィルムを作製した。
【0055】
<比較例8>
無機微粒子としてシリカ(堺化学工業(株)製、「Sciqas」、平均粒子径0.4μm、屈折率n
d=1.45)を使用したことを除き、実施例1と同様に光拡散フィルムを作製した。
【0056】
<比較例9>
ベース樹脂としてポリカーボネート樹脂の代わりにアクリル樹脂100質量部(三菱レイヨン(株)製、アクリペット「VH001」)を使用したこと、押出し条件におけるバレル温度を260℃、ダイス温度を280℃、第一冷却ロール(R2)温度を100℃、第二冷却ロール(R3)温度を110℃としたことを除き、実施例1と同様に光拡散フィルムを作製した。
【0057】
実施例1〜9および比較例1〜9で作製した光拡散フィルムについて、全光線透過率(Tt)、ヘイズ(H)、拡散率(D)、分散度、光源形状隠蔽性、押出性および表面形状を、上記<評価方法>に記載した通りに評価した。結果を表1に示す。表1において、有機微粒子および無機微粒子の配合量(質量部)は、ポリカーボネート樹脂を100質量部としたときの値である。実施例1〜9および比較例1〜9で使用した無機微粒子は、無機微粒子に対しハイドロジェンメチルシロキサン3%で表面処理を行ったものである。なお、比較例1および5は、安定的に押出成形することができず、評価可能な光拡散フィルムを得ることができなかった。
【0058】
なお、表1において、光拡散剤A〜Hは、以下の通りである。
A:アクリル系重合体微粒子(綜研化学(株)製、「ケミスノー KMR−3TA」)
B:アクリル系重合体微粒子(アイカ工業(株)製、「スタフィロイド GM−0630H」)
C:シリコーン系重合体微粒子(サムスン製、「STAROR B−L SL−200M」)
D:酸化チタン(石原産業(株)製、「タイペーク PC−3」 n=2.71)
E:炭酸カルシウム(林化成(株)製、軽質炭酸カルシウム「KFW−200」 n=1.59)
F:酸化亜鉛(堺化学工業(株)製、大粒酸化亜鉛「LPZINC−2」 n=2.00)
G:ガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ(株)製、低アルカリガラス「EMB−10」 n=1.51)
H:シリカ(堺化学工業(株)製、「Sciqas」 n=1.45)
【表1】
【0059】
表1より、実施例1〜9は、光拡散性および光源形状隠蔽性に優れ、その他の光学特性を考慮してもバランスのとれた光拡散フィルムであると言える。また、実際に、実施例1〜9で作製した光拡散フィルムをLEDの直下に使用したところ、全面に均一で十分な明るさを有するディスプレイ装置が得られた。
【0060】
一方、比較例1は、アクリル系重合体微粒子の添加量が15質量部と多いため、安定的に押出しを行うことができなかったものと思われる。比較例2は、アクリル系重合体微粒子の添加量が0.1質量部と不足しているため、十分な光拡散性、光源形状隠蔽性を得ることができなかったものと思われる。比較例3は、酸化チタンの添加量が2質量部と多いため十分な全光線透過率が得られなかったものと思われる。比較例3のような光拡散フィルムをディスプレイ装置に使用しても、十分な照明強度が得られない。比較例4は、酸化チタンの添加量が0.005質量部と少ないため、十分な光拡散性、光源形状隠蔽性を得ることができなかったものと思われる。また、比較例5は、屈折率が小さく、炭酸カルシウムが1質量部添加されているため、ポリカーボネートの分子量低下が引き起こされ、安定的に押出しを行うことができなかったものと思われる。比較例6は、粒子径が大きい酸化亜鉛を添加したため、十分な光拡散性を得られなかったものと思われる。比較例7は、屈折率が低く、粒子径が大きいガラスビーズを添加したため、十分な光拡散性を得られなかったものと思われる。比較例8は、屈折率が小さいシリカを添加したため、十分な光拡散性を得られなかったものと思われる。比較例9は、ベース樹脂にアクリル樹脂を用いているため、有機微粒子による光拡散効果が十分に発揮されなかった結果、十分な光拡散性を得られなかったものと思われる。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。