(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記パスデータ変換処理として、前記搬送情報取得処理で取得した搬送情報が、スプレーパス設定時に前提とした搬送方向と異なっている場合は、塗布処理対象物の平面に相当する座標の原点位置が変更されることに対応するようにスプレーパス情報の座標変換を行う
請求項1に記載の塗布装置。
前記制御部は、前記パスデータ変換処理として、前記搬送情報取得処理で取得した搬送姿勢が、スプレーパス設定時に前提とした塗布処理対象物の回転方向姿勢と異なっている場合は、塗布処理対象物の平面に相当する座標が回転方向に変更されることに対応するようにスプレーパス情報の座標変換を行う
請求項1に記載の塗布装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を説明する。実施の形態では、塗布処理対象物である回路基板100に薄膜を形成するためのコーティング剤を吐出するコーティング装置1と、そのコーティング装置1と通信可能なコンピュータ装置200の例を挙げる。
コーティング装置1が本発明の塗布装置に相当する。またコンピュータ装置200、もしくはコーティング装置1に内蔵された演算処理装置(主制御部30)が、本発明の情報処理装置として構成可能である。
説明は次の順序で行う。
<1.コーティング装置の構成>
<2.コーティング装置の制御構成>
<3.コンピュータ装置の構成>
<4.スプレーパス設定及び各種設定>
<5.搬送方向/搬送姿勢に応じた処理>
<6.まとめ及び変形例>
<7.プログラム>
【0013】
<1.コーティング装置の構成>
図1にコーティング装置1の外観例を示す。
このコーティング装置1は搬入されてきた回路基板100に対して、吐出部であるノズル3からコーティング剤を吐出して吹き付けるコーティング処理を行い、回路基板100に防湿や防錆のための保護薄膜を形成する装置である。
なお後述するが、ノズル3は塗布液体(コーティング剤)を扇状又は円錐状に吐出する吐出部である。
【0014】
図示のように、回路基板100の搬入のためにX方向に延伸するコンベア機構10が設けられている。
コンベア機構10は、Y方向に離隔したコンベア10a、10aと、コンベア10a、10aをそれぞれ支持するとともに搬送される回路基板100をガイドする搬送ガイド10b、10bとを有する。搬送ガイド10bの上面は高さ基準面10cとされている。
コンベア10a、10aには、回路基板100のY方向における両端部がそれぞれ載置される。回路基板100は、コンベア10a、10aの駆動により搬送される。回路基板100の搬入時、搬出時にコンベア10a、10aは図示しないモータにより駆動される。
なお搬送ガイド10b、10bのX方向における所定の位置には、位置決め部としてのストッパ20、20が設けられている。ストッパ20は、コンベア10a、10aの上方(Z方向)に張り出すように搬送ガイド10b、10bからY方向に突出されている。コンベア10a、10a上を搬送される回路基板100は、先端面がストッパ20、20に突き当てられることでその移動が規制され、コーティング処理が行われるコーティング位置に位置決めされる。
【0015】
例えばこのコーティング装置1は電子回路基板等の製造ラインの一部として使用することができ、コーティング装置1の操作者もしくは図示しない前工程からの搬入機構により回路基板100がコンベア機構10にセットされ、矢印DRin1の方向に搬入される。そしてコーティング装置1でコーティング処理が行われ、その後コンベア機構10で矢印DRout1の方向に搬出され次工程に移送される。これによりライン上で連続作業としてのコーティング処理が実行される。
もちろん、コーティング装置1は、このようにラインを構成するだけでなく、個別に回路基板100等の処理対象物に対してコーティングを行う機器としてもよい。
【0016】
なお、製造ラインの都合などによっては、前工程からの回路基板100が矢印DRin2の方向に搬入される場合もある。その場合、コーティング装置1でコーティング処理が行われた後、コンベア機構10で矢印DRout2の方向に搬出され次工程に移送される。
【0017】
矢印DRin1、DRout1の方向性の搬送方向、即ち表示部9等を視認するオペレータから見て回路基板100が左から右に進行することになる搬送方向を、説明上「右流れ」と呼ぶこととする。
また矢印DRin2、DRout2の方向性の搬送方向、即ち表示部9等を視認するオペレータから見て回路基板100が右から左に進行することになる搬送方向を「左流れ」と呼ぶこととする。
ストッパ20の位置は、右流れ/左流れにかかわらず固定でも良いが、搬送方向に応じて変更可能としてもよい。
【0018】
また回路基板100の搬送姿勢は、実際のラインで異なる場合がある。例えば図示の回路基板100の姿勢を0°とした場合、回路基板100の姿勢は、平面方向に90°回転した状態、180°回転した状態、270°回転した状態とされることも考えられる。詳しくは後述する。
【0019】
搬入された回路基板100の上方には、コーティング剤を吐出するノズル3が位置される。
ノズル3は、筒状先端部3aがノズルベース部3bに取り付けられた構造とされている。
ノズル3は、ホルダ4に取り付けられた状態で、搬入された回路基板100の上方空間をX方向、Y方向、Z方向に移動可能とされている。
【0020】
またホルダ4にはレーザセンサ25が取りつけられている。レーザセンサ25は高さ測定を行うためのセンサであり、塗布処理対象物である回路基板100の高さを測定できる。レーザセンサ25は、例えば基台10bの天面である高さ基準面10cを基準として回路基板100上の各所の高さを測定する。
レーザセンサ25がホルダ4に装着されていることで、レーザセンサ25はノズル3とともにX方向、Y方向、Z方向に移動可能とされている。
【0021】
ホルダ4は、Y方向ガイド11に対して、Y方向にスライド可能に取り付けられている。Y方向ガイド11には、Yモータ7と、Yモータ7によって回転される駆動軸11aが配備されており、ホルダ4は駆動軸11aの回転により、Y方向ガイド11に沿ってY方向に移動可能とされている。このため駆動軸11aとホルダ4の間では、駆動軸11aの回転がスライド移動方向に変換されるギア構成等による連結機構が採用される。
【0022】
Y方向ガイド11は、ガイドホルダ13に固定されている。そしてガイドホルダ13は、X方向ガイド12に対して、X方向にスライド可能に取り付けられている。X方向ガイド12には、Xモータ8と、Xモータ8によって回転される駆動軸12aが配備されており、ガイドホルダ13(即ちY方向ガイド11全体)は駆動軸12aの回転により、X方向ガイド12に沿ってX方向に移動可能とされている。このため駆動軸12aとガイドホルダ13との間は、駆動軸12aの回転がスライド移動方向に変換されるギア構成などによる連結機構が採用される。
【0023】
ホルダ4には、ノズルZモータ5が配置されており、このノズルZモータ5によって、ノズル3の先端が上下(Z方向)に移動される。つまり塗布処理対象物に対するノズル3の筒状先端部3aの高さ位置が変動される。
以上の構成により、ノズル3の位置は、Xモータ8、Yモータ7、ノズルZモータ5によってX方向、Y方向、Z方向に移動可能となる。X方向、Y方向、Z方向に移動することで、搬入された回路基板100上の各所を移動しながらのコーティング剤のスプレーを行うことができる。
またレーザセンサ25の位置はXモータ8、Yモータ7によりX方向、Y方向に移動可能となる。これにより回路基板100の平面をスキャンして、回路基板100の各部の高さを計測できる。
【0024】
またさらにホルダ4には、ノズル回転モータ6が取り付けられており、ノズル回転モータ6によりノズル3の回転角度位置を変化させることができる。回転角度位置とは、
図2Aのθ方向の位置である。
【0025】
図2Aには、ノズル3が回路基板100の上方からコーティング剤(スプレーパターン90)を吐出して吹き付けている様子を拡大して示している。
図2Aに示すように、回路基板100には、抵抗、コンデンサ、ICチップ等の各種の電子部品110,111,112,113がマウントされており、その各種電子部品の高さw,vや、電子部品間のサイズk,mなども多様である。本実施の形態では、例えばこのような回路基板100に対して、X方向、Y方向、Z方向にノズル3が移動されながら吹きつけを行うことで、回路基板100の形状や部品配置に応じた適切な薄膜形成を可能とする。
【0026】
X方向、Y方向の移動制御に関しては、例えばコーティング処理にあたっては、ストッパ20により規定されるコーティング位置に位置された状態の回路基板100の角部(隅部)を座標上の原点aとし、この原点aを中心としてノズル3のX−Y方向の移動距離が設定される。
【0027】
ノズル3の筒状先端部3aは、
図2B、
図2Cに示すように形成され、吐出孔3cから加圧液体のコーティング剤を吐出する。突端部3d,3dより奥まった位置に吐出孔3cが形成されていることで、吐出されるコーティング剤のスプレーパターン90は、
図2Dに示すように扁平な扇状となる。
図2Eには、
図2Dのスプレーパターン90のa−a断面を示しているが、扇状のスプレーパターン90は、縁部近傍に、厚幅部分90aが生じ、縁部及び中央部は、厚みが比較的薄くなる。
この
図2Dのようなスプレーパターン90は、a−a断面線の位置よりさらに下方にいくと、霧化状になり、コーティングに適さなくなる。霧化状のパターンで塗布したコーティング剤は塗布されない部分やピンホールが多くなり、不良品になることがある。そのため、例えばa−a断面線の位置あたりで、回路基板100の表面に達することが適切である。
図2Aでは、上述のZ方向移動によりノズル3の回路基板100の表面からの高さ位置が、距離tの状態に調整され、コーティング剤の塗布が行われている様子を示している。この場合の塗布面からの距離tは、スプレーパターン90による塗布幅が、最も効率よく塗布ができる幅hとなる高さを得る距離である。この状態でX方向に移動されることで、幅hの状態でのX方向へ帯状に進行する塗布が行われることになる。
なお、最適な距離tは、塗布液体の粘度やノズル3のサイズ・形状等にもよるが、例えば本実施の形態では距離t=10mmとして説明する。
【0028】
また上述のようにノズル回転モータ6によりノズル3の回転角度位置を変化させることができる。例えば
図2Aの状態から90°回転角度位置を変化させてY方向に移動させれば、幅hの状態でのY方向へ帯状に進行する塗布が行われることになる。
さらに回転角度位置により、進行させる塗布の帯の幅を調節することもできる。例えば
図2Aの状態から45°回転角度位置を変化させてX方向に移動させれば、図示の幅hの半分の幅の状態でのX方向へ帯状に進行する塗布を行うことが可能になる。
図3A、
図3B、
図3Cには、各種回転角度位置θ1、θ2、θ3の場合に、例えばX方向側から見た場合のスプレーパターン90及び塗布領域92の塗布幅を示している。図のように、塗布幅を回転角度位置によって調整できる。
従って重ね塗り部分を考慮して塗布幅を調整したり、比較的狭い箇所にスプレーを行う場合などは、回転角度位置を調整して、進行方向からみたスプレーパターン幅を調整することで、適切な幅の塗布が可能となる。
【0029】
なお
図1,
図2には示していないが、ノズル3に対しては、加圧液体としてのコーティング剤を吐出させるために、コーティング剤を供給する供給機構や吐出機構が設けられる。吐出機構で圧力が調節されることで、コーティング剤の吐出量やスプレーパターン幅が調整される。
コーティング剤は例えばポリオレフィン系若しくはアクリル系若しくはポリウレタン系の絶縁コーティング剤である。シンナーで希釈して液状で回路基板100に塗布した場合、10分程度乾燥させることで、回路基板100に基板遮蔽層としての薄膜が形成される。
【0030】
図1に示すようにコーティング装置1には、光センサを構成する発光部21,受光部22や、捨て打ち部23、浸け置き部24が設けられる。
光センサを構成する発光部21と受光部22は、X方向に対向するように配置されている。発光部21は例えば半導体レーザ等により構成され、例えば直径1.5mm程度のレーザ光を出力する。このレーザ光は受光部22によって受光される。受光部22では、受光光量に応じて、検出信号を出力する。
この場合、レーザ光の光線はX方向に伸びる線状となり、例えばノズル3がY方向に移動されてレーザ光の光線を横切ると、光線がノズル3によって妨げられ、受光部22に達しない。これによって受光部22では、受光光量が低下し、光量低下状態を示す検出信号を出力することとなる。
適切な塗布幅で塗布を行うために、ノズル3からの扇状のスプレーパターン90の幅を調整することが行われる。そのために、ノズル3のからスプレーパターン90を吐出させながら、センサの光線を横切る方向性でノズル3を移動させて、スプレーパターン90の幅を測定する。測定結果に応じて、コーティング剤のスプレー圧を調整することで、スプレーパターン幅を所望の幅に調整できる。
【0031】
捨て打ち部23は、いわゆる捨て打ちとしてコーティング剤を吐出する場合などに用いられる。また浸け置き部24は、ノズル3の先端を希釈剤に浸け置きするために設けられている。また浸け置き部24の側壁にはブラシ26を取り付けている。
本例では、揮発性の高い溶剤で希釈されたコーティング剤を用いており、これが乾燥してノズル3の筒状先端部3a(吐出孔)で硬化し、吐出するスプレーパターン90を変化させてしまうことがある。
そこで不使用時には、希釈剤を入れた浸け置き部24にノズル3の先端が浸されるようにしておく。浸け置き部24には例えばシンナー系の溶剤を入れておく。これによりノズル3の詰まりを防ぐ。
また使用前には捨て打ち部23の上方にノズル3を位置させた状態で、捨て打ちとしての吐出を行って硬化部分を吹き飛ばしたり、ノズル3の先端をブラシ26に接触させるようにY方向に移動させて清掃できるようにしている。これらの作業により、実際のコーティング作業時には、安定したスプレーパターンが得られるようにしている。
【0032】
また上述のスプレーパターン90の幅の測定の際にも、上述の浸け置き、捨て打ち、ブラシ洗浄が行われていることで、安定したスプレーパターン90の幅の測定ができることとなる。
また、捨て打ち部23の上方は、発光部21からのレーザ光の光線位置となる。従って、後述する測定処理としてスプレーパターン90を吐出しながらノズル3を移動させる動作は、捨て打ち部23の上方で行うことができる。つまり捨て打ち部23が測定処理の際に吐出されるスプレーパターン90の受け部としても機能する。
また捨て打ち部23には図示の様に斜面が形成されており、該斜面によって捨て打ちされたコーティング剤は一定方向に飛び散るように構成されている。この
図1の場合、浸け置き部24の方向にコーティング剤が飛び散るようにされている。このため捨て打ちの際や、測定処理の際に、むやみにコーティング剤が飛散することがないようにできる。
【0033】
また例えば液晶パネル等により構成された表示部9が設けられている。表示部9には、タッチパネルが搭載されてオペレータが入力操作を行うことも可能とされる。
この表示部9には、このコーティング装置1に取り込まれた回路基板100の画像(撮像画像)や撮像画像を加工した画像、操作アイコン、メッセージ表示、その他、ユーザインターフェースのための各種画像が表示される。
回路基板100の画像が表示されることで、オペレータは、画像上で、コーティングを行う部位を指定したり、あるいはコーティングを禁止する領域を指定したりすることも可能とされる。
【0034】
<2.コーティング装置の制御構成>
図4にコーティング装置1の制御構成を示す。なおここでは特に電気系統を示し、コーティング剤の供給、加圧制御等の流体制御系についての説明は省略する。
【0035】
主制御部30は、例えばマイクロコンピュータ(CPU:Central Processing Unit)により形成された演算処理装置であり、各部の動作制御を行う。
メモリ部34は、主制御部30が各種制御で用いるROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEP−ROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の不揮発性メモリ等の記憶領域を総括的に示している。
なお、このメモリ部34としては、マイクロコンピュータ内部に形成される記憶領域(レジスタ、RAM、ROM、EEP−ROM等)や、マイクロコンピュータとしてのチップ外部で外付けされるメモリチップの領域の両方をまとめて示している。つまり、いずれの記憶領域が用いられても良いため区別せずに示したものである。
【0036】
メモリ部34におけるROM領域には、主制御部30としてのCPUが実行するプログラムが記憶される。
メモリ部34におけるRAM領域は、主制御部30としてのCPUが各種演算処理のためのワークメモリとして用いたり、画像データ等の一時的な記憶等に用いられる。
メモリ部34における不揮発性メモリ領域は、演算制御処理のための係数、定数等、必要な情報が格納される。
主制御部30は、メモリ部34に格納されるプログラムや、入力部31からのオペレータの操作入力に基づいて、或いは外部装置であるコンピュータ装置200等からの指示に基づいて、必要な演算処理、制御処理を行う。
【0037】
本実施の形態では、主制御部30は、搬送情報取得機能300、パスデータ変換機能301、スプレーパス設定機能302を有するものとされている。これらの機能は主制御部30において起動するプログラムによって実現される機能である。
【0038】
スプレーパス設定機能302は、後述するように塗布処理対象物である回路基板100に対してスプレーパス設定を行う機能である。
搬送情報取得機能300は、塗布処理対象物の搬送方向又は搬送姿勢を示す搬送情報を取得する機能である。搬送方向又は搬送姿勢は、コーティング装置1が設置されたラインにおいて決まる。搬送方向や搬送姿勢の情報は、例えばオペレータの入力等に応じて取得する。
パスデータ変換機能301は、搬送情報取得機能300の処理で取得した搬送情報が、スプレーパス設定時に前提とした搬送方向又は搬送姿勢と異なっている場合は、搬送情報に応じてスプレーパスを変換するパスデータ変換処理を行う。
【0039】
入力部31は、オペレータが操作入力を行う部位とされる。例えば上述のように表示部9にタッチパネルが形成される場合、該タッチパネルが入力部31となる。また操作キーや、リモートコントローラ等による入力部31が設けられても良い。
入力部31からの入力情報は主制御部30に供給され、主制御部30は入力情報に応じた処理を行う。
【0040】
センサ駆動部32は主制御部30の指示に応じてレーザセンサ25を駆動する。レーザセンサ25による高さ測定のための検出信号は主制御部30に供給される。主制御部30は回路基板100の表面をスキャンする測定をレーザセンサ25に実行させるが、その際の検出信号から、回路基板100の各部の高さ値を検出し、メモリ部34に記憶する。
【0041】
主制御部30は、表示駆動部33に表示データを供給し、表示部9での表示を実行させる。表示駆動部33は、供給された表示データに基づいて画像信号を生成し、表示部9を駆動する。
例えば主制御部30は、回路基板100の撮像画像データを表示駆動部33に受け渡して、撮像画像を表示部9に表示させたり、撮像画像データを編集して表示部9に表示させたりすることができる。
なお主制御部30は、例えばコンピュータ装置200やデジタルスチルカメラ等の外部機器から撮像画像データを取り込んで、メモリ部34に格納する。そして主制御部30は、例えばスプレーパスの設定などのために必要に応じて撮像画像データを読み出して画像解析処理、拡大/縮小処理、画像編集処理、或いは外部送信処理等を行うことができる。
【0042】
外部インターフェース46は外部機器(例えばコンピュータ装置200等)との通信やネットワーク通信を行う。主制御部30は外部インターフェース46を介して、各種情報を通信により入力したり、送信出力することができる。例えばライン上の各機器がネットワークシステム化させている場合、ホスト機器や他の機器との間で通信を行うことができる。
この通信により、外部機器から撮像画像データ等の供給を受けたり、或いはバージョンアッププログラムをロードしたり、各種処理係数、定数の変更設定を受け付けたりすることができる。また主制御部30がホスト機器に対し、エラーメッセージ、ワーニング等を送信したり、撮像画像データを送信することなども可能とされる。
また図示のようにコンピュータ装置200と通信可能とされた場合、コンピュータ装置200から撮像画像データ、動作プログラム、スプレーパスの設定データ等を取り込むことができる。
【0043】
主制御部30はモータコントローラ35に対してノズル3の移動のためのコマンドを送信する。コマンド内容は、移動方向(X、Y、Z方向及び回転角度位置θ方向)、移動量、移動速度を指示する内容などとされる。
例えば主制御部30は、コーティング処理を開始する前に、回路基板100を撮像した撮像画像の解析、及びオペレータの操作入力による禁止エリア設定等に応じて、スプレーパスを作成する処理を行う。もしくはコンピュータ装置200側で設定したスプレーパスのデータを取得する。
実際のコーティング処理を開始した後は主制御部30は、スプレーパスに応じて、ノズル移動方向をモータコントローラ35に指示していくこととなる。
また、高さ測定の際にも、主制御部30は、モータコントローラ35に対してレーザセンサ25(ホルダ4)の所定の移動を指示する。
これらの移動のコマンドに応じて、モータコントローラ35は、各モータドライバ(36,37,38,39)を駆動制御することとなる。
【0044】
Yモータドライバ36は、Yモータ7に正方向回転又は逆方向回転の駆動電流を与える。これによりYモータ7が駆動され、ノズル3とレーザセンサ25を装着したホルダ4全体がY方向の正方向又は逆方向にスライド移動される。
Xモータドライバ38は、Xモータ8に正方向回転又は逆方向回転の駆動電流を与える。これによりXモータ8が駆動され、ホルダ4を支持するY方向ガイド11全体がX方向の正方向又は逆方向にスライド移動される。
ノズルZモータドライバ39は、ノズルZモータ5に正方向回転又は逆方向回転の駆動電流を与える。これによりノズルZモータ5が駆動され、ノズル3が垂直方向に繰り出されたり、引き上げられたりするように移動される。
ノズル回転モータドライバ37は、ノズル回転モータ6に正方向回転又は逆方向回転の駆動電流を与える。これによりノズル3の回転角度位置を変化させる回転動作が行われる。
モータコントローラ35は、主制御部30からのコマンドに応じて、各モータドライバ36,37,38,39に指示を出し、電流印加を実行させることで、各モータが連携してノズル3とレーザセンサ25の移動が実行される。
【0045】
位置検出部51は、Yモータ7により移動されるホルダ4のY方向の位置を検出する。例えばストッパ20に規定されて配置された回路基板100の上方空間が、X座標、Y座標、Z座標としての三次元座標空間として管理されるとする。位置検出部51は、Y方向の位置をY座標値として検知し、現在のY座標値を主制御部30に通知する。
位置検出部52は、ノズル回転モータ6により回転駆動されるノズル3の回転角度位置を検出する。そして回転角度位置を主制御部30に通知する。
位置検出部53は、Xモータ8により移動されるホルダ4のX方向の位置を、X座標値として検知し、主制御部30に通知する。
位置検出部54は、ノズルZモータ5により上下移動されるノズル3のZ方向の位置を、Z座標値として検知し、主制御部30に通知する。
位置検出部51,53,54は、それぞれY方向ガイド11,X方向ガイド12、ホルダ4に機械的或いは光学的なセンサが設けられて位置を検出するようにしても良いし、或いはYモータ7,Xモータ8,ノズルZモータ5がステッピングモータの場合、位置検出部51,53,54は、正逆方向の駆動ステップ数をアップ/ダウンカウントするカウンタとし、そのカウント値を検出位置とするものでもよい。またYモータ7,Xモータ8,ノズルZモータ5に取り付けられたFG(Frequency Generator)やロータリエンコーダ等の信号を用いて、現在位置を計測するものでもよい。いずれにせよ位置検出部51,53,54は、ノズル3の現在位置としてX座標値、Y座標値、Z座標値が検出できる構成であればよく、その具体的手法は問われない。
また位置検出部52も同様に、ノズル回転位置を機械的或いは光学的に検出するセンサでもよいし、例えばノズル回転モータ6のFGやロータリエンコーダ、或いはステッピングモータの場合のステップ数のアップダウンカウンタなどとしてもよい。
【0046】
従って位置検出部51,52,53,54は、モータコントローラ35の内部カウンタ等による構成となってもよいし、機械的或いは光学的な外部センサの情報をモータコントローラ35が取り込む形式で構成してもよい。
モータコントローラ35は、位置検出部51,52,53,54からの位置情報を監視しながら、主制御部30から求められたノズル駆動を実行することになる。
また主制御部30は、モータコントローラ35を介して位置検出部51,52,53,54による位置情報の通知を受けることで、ノズル3とレーザセンサ25の現在位置を把握でき、正確かつ無駄のない移動制御が実行できる。
【0047】
なお、この場合、ノズル3の位置、レーザセンサ25の位置としてのX、Y座標値は、あくまでホルダ4の位置として検出される。従って主制御部30は、ノズル3の塗布位置、レーザセンサ25の検出位置としてのそれぞれのX、Y座標値は、ホルダ4の位置から所定量オフセットさせるように計算上求めるようにすればよい。
【0048】
吐出制御部40は、主制御部30の指示に応じて、ノズル3からのコーティング剤の吐出の実行/停止を制御する。この図では吐出機構41として、ノズル3へのコーティング剤の供給及び加圧・吐出を行う機構部位として概念的に示している。
また吐出制御部40は、主制御部30の指示に応じて、吐出の際の圧力を調整することで、コーティング剤のスプレーパターン90の幅や量を調整することもできる。
例えば吐出機構41では、コーティング剤の吐出用の空気圧の調整に電空レギュレータを使用する。吐出制御部40は電空レギュレータを制御することで、噴射圧でコーティング剤のスプレーパターン90の幅を調整できる。電空レギュレータによって電気信号に比例して空気圧を無段階に制御できることで、スプレーパターン90の幅を無段階で変化させることができる。これにより、スプレーパターン90の調整、あるいは設定変更などが容易に実行できる。
【0049】
センサ駆動部42は、発光部21からのレーザ発光駆動を実行させるとともに、受光部22の受光信号を検出し、検出信号を生成する。
このセンサ駆動部42は主制御部30の指示に応じてレーザ発光駆動を行い、またその際、検出信号を主制御部30に供給することになる。
【0050】
搬送制御部43はコンベア機構10内のモータを駆動制御する。回路基板100の搬入時、排出時に主制御部30は搬送制御部43に指示してコンベア機構10を駆動させる。
【0051】
<3.コンピュータ装置の構成>
図5Aにコンピュータ装置200の構成を示す。コーティング装置1と接続されるコンピュータ装置200は、例えば
図5Aのようなハードウエア構成で実現される。
【0052】
コンピュータ装置200は、CPU251、ROM252、RAM253を有して構成される。CPU251は、ROM252に記憶されているプログラム、または記憶部259からRAM253にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM253にはまた、CPU251が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。CPU251、ROM252、RAM253は、バス254を介して相互に接続されている。このバス254には入出力インターフェース255も接続されている。
【0053】
入出力インターフェース255には、液晶パネル或いは有機EL(Electroluminescence)パネルなどよりなるディスプレイ256が接続される。また入出力インターフェース255には、キーボード、マウスなどよりなる入力部256、スピーカ258、HDD(Hard Disk Drive)などより構成される記憶部259、通信部260などが接続可能である。
通信部260は、例えばLANなどによりコーティング装置1を含む周辺装置との間の通信を行う。
【0054】
入出力インターフェース75にはまた、必要に応じてドライブ261が接続され、メモリカード262が装着され、メモリカード262から読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて記憶部278にインストールされたり、CPU251で処理したデータが記憶される。もちろんドライブ261は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク等のリムーバブル記憶媒体に対する記録再生ドライブとされてもよい。
【0055】
このようなハードウエア構成の本実施の形態のコンピュータ装置200においては、特に搬送情報取得機能300、パスデータ変換機能301、スプレーパス設定機能302を有するものとされる場合がある。これらの機能はCPU251において起動するプログラムによって実現される機能である。
【0056】
スプレーパス設定機能302は、後述するように塗布処理対象物である回路基板100に対してスプレーパス設定を行う機能である。コーティング装置1の塗布処理のためのスプレーパス設定をCPU251が実行し、通信部260から設定情報をコーティング装置1に転送することができる。
なおスプレーパスに限らず、各種のコーティング条件設定その他の各種設定処理をCPU251が実行し、コーティング装置1に転送することもできる。
このようにコーティング装置1で必要とされる処理をコンピュータ装置200側で行うことでコーティング装置1の主制御部30の処理負担を軽減できる。
【0057】
搬送情報取得機能300は、塗布処理対象物の搬送方向又は搬送姿勢を示す搬送情報を取得する機能である。搬送方向又は搬送姿勢は、コーティング装置1が設置されたラインにおいて決まる。搬送方向や搬送姿勢の情報は、例えばオペレータの入力等に応じて取得する。
パスデータ変換機能301は、搬送情報取得機能300の処理で取得した搬送情報が、スプレーパス設定時に前提とした搬送方向又は搬送姿勢と異なっている場合は、搬送情報に応じてスプレーパスを変換するパスデータ変換処理を行う。
【0058】
<3.スプレーパス設定及び各種設定>
以上の構成の本実施の形態のコーティング装置1(主制御部30)では、コーティングを効率よくかつ正確に行うために、実際の塗布作業の前には、ノズル3による塗布作業時の移動経路(スプレーパス)を設定している。
なお、ここでは主制御部30が行う各種設定として説明するが、以下説明するスプレーパス設定及び各種設定はコンピュータ装置200(CPU251)において行って、設定情報を主制御部30に転送するようにしてもよい。
即ち以下はスプレーパス設定機能302を備えた主制御部30又はCPU251による処理である。
【0059】
図6,
図7でスプレーパス設定の概要を説明する。
図6Aはコーティング処理対象物である回路基板100を示している。この回路基板100にはコーティングを行わない領域も存在するため、あらかじめ
図6Bのように禁止エリアARを設定する。
禁止エリアARは、ノズル3によるスプレーパターン90の吐出を行わない領域であるとする。
【0060】
図7はこのような禁止エリア設定と、その後のスプレーパス設定の様子を示している。
図7Aは、表示部9に表示される回路基板100の撮像画像である。回路基板100や電子部品110、111、112、113等が画像として表示されている。
このような画像に対し、オペレータのタッチ入力、もしくは主制御部30の画像解析により
図7Bのように禁止エリアARを設定する。主制御部30はこの禁止エリアARを考慮してスプレーパスを設定する。即ち禁止エリアARを避けるようにノズル3を移動させる経路を算出する。
【0061】
図6Cは作成したスプレーパスを表示部9に表示させている状態を示している。各パスマーカPMがスプレーパスを示す。三角形のパスマーカPMによりノズル3の移動方向が示される。また例えば各パスマーカPMには数字が付されており、塗布時にノズル3を移動させる経路の順序が示される。
なお各パスマーカPMによっては、ノズル3がコーティング剤を吐出しながら移動する吐出移動経路が示される。各パスマーカPMで示されるのが、それぞれ1つの吐出移動経路となる。或る吐出移動経路から次の吐出移動経路に移動するときは、ノズル3からの吐出を継続させながら移動できる箇所もあれば、一旦コーティング剤の吐出を停止させて移動させる場合もある。例えば
図6Cで「7」のパスマーカPMの吐出移動経路で塗布を行った後、「8」のパスマーカPMの吐出移動経路での塗布に移る場合、ノズル3は非吐出状態で移動される。このような非吐出状態で移動する経路(非吐出移動経路)は、パスマーカPMによって直接的には示されないが、実質的には塗布作業時のノズル移動経路であり、スプレーパスに含まれることになる。
【0062】
すなわち主制御部30は後述する各種コーティング条件や、禁止エリアAR、さらには回路基板100上で計測した高さ測定データに基づいて塗布する経路の方向や順序、各経路上での高さ位置を演算し、塗布禁止エリアを除いた吐出移動経路と非吐出移動経路を含むスプレーパスを作成する。
具体的なスプレーパス作成処理は、全体の経路を設定するとともに、1つのパスマーカPMで示される1つ1つの吐出移動経路について、開始位置(開始X座標位置と開始Y座標位置)、パス長(Length)、方向(パスの進行方向)、ノズル回転角度(θ)としての開始角度と終了角度、塗布高さ(吐出時のノズル高さのZ座標値)、移動速度などを設定する処理となる。また非吐出移動経路のノズル高さのZ座標値(移動高さ)もスプレーパスの情報に含まれる。
例えば後述する
図10Aには、設定されたスプレーパスの例を示し、
図10Bにはそのスプレーパスを示す上記の各情報を示している。
このようなスプレーパス設定により、ノズル3の吐出移動経路の移動が禁止エリアARを含まず、また吐出移動経路及び非吐出移動経路の移動が適切な高さで行われ、さらに各種コーティング条件に応じて効率良く行われるようにする。
【0063】
なお、以上のスプレーパス設定では各パスマーカPM等で示される位置は上述の原点aを(0,0)とするX−Y平面のX、Y座標値で登録される。
図2のように原点aは、回路基板100におけるストッパ20に接する端辺の前方側とされている。これは右流れの場合であり、左流れの場合は異なる。この点は後述する。
また、設定されたスプレーパスによるノズル移動過程では、禁止エリアARや電子部品を避けるためにノズルの移動高さも設定されるが、その高さはZ座標値で登録される。
【0064】
以上はスプレーパス設定について説明したが、コーティング装置1は、スプレーパス以外にも各種の設定を行う。
例えば主制御部30は作業者の入力等に基づいてコーティング条件設定を行う。ここでは例えば以下の(1)〜(8)のような設定を行う。
【0065】
(1)ノズル3の扇状スプレーパターン90の幅や塗布厚の設定
扇状のスプレーパターン90の幅は加圧液体の加圧力やノズル3の種別によって異なる。スプレーパターン90の幅が異なれば効率の良いスプレーパスも変わる。そこでスプレーパス作成のために扇状スプレーパターン90の幅を設定する。また塗布厚の設定はノズル3の移動速度や、隣のすでに塗布された部分への重ね塗り量に関わる。
【0066】
(2)重ね塗り量の設定
塗布幅hで塗布する際に、隣の既に塗布された部分にどれだけ重ねて塗布するかを設定する。通常は重ね塗りしないでスプレーパスを設定しても、液化したコーティング剤の塗布後の僅かな拡張によって隣同士の塗布が合体し隙間のない塗布が完成する。しかし付着しない部分やピンホールを完全に防ぐための塗布作業ないし厚みのある塗布を必要とする場合は重ね塗り量を多く設定する必要がある。
【0067】
(3)基板外周のり代の設定
回路基板100の端面までコーティング剤を塗布すると、コーティング剤が流れ落ちピンホールや付着しない部分を形成することがある。また、コーティング剤が流れ出して回路基板100の側面や裏面に付着すると粘着性が発生するともに厚みが変化し、後の搬送に支障をきたす恐れがある。また、無駄なコーティング剤の消費ともなる。そこで外周でコーティング剤を塗布しないのり代を設定できるようにしている。回路基板100の外周に数ミリ間隔の塗布しないのり代を設定すると、のり代の手前に塗布されたコーティング剤の表面張力によって、回路基板100上に塗装厚を保持しコーティング膜を作成することができる。この表面張力によってコーティング剤が流れ落ちることもない。
【0068】
(4)塗布方向の設定
効率的で短時間に塗布作業を完成させる為に、回路基板100の横方向(X方向)か縦方向(Y方向)のどちらに主にノズル3を移動させたほうが良いかを設定する。
【0069】
(5)塗布高さの設定
回路基板100上の電子部品110,111等の高さにも応じたノズル3の高さ位置の設定であって、扇状スプレーパターン90が霧化しないダブテイル状の部分を使って塗布するための高さ設定である。過去のデータが揃っていれば条件を入力するだけで自動的に効率よい塗布幅hに設定することができる。
例えば
図2Aに示した距離tが塗布高さであり、例えばt=10mmとする。
【0070】
(6)移動高さ設定
上述のように塗布作業時の移動経路であるスプレーパスは、吐出移動経路と非吐出移動経路を含む。
非吐出移動経路においてコーティング剤の吐出を行わずに回路基板100上をノズル3が通過するときは、回路基板100上の電子部品110,111等の高さに考慮して移動しなくてはならない。そこでノズル3が電子部品等に当接して破損することがないように、移動高さ(ノズル移動高さ、及びニードル移動高さ)を設定する。基本的には、移動高さとは、回路基板100上の電子部品110等に衝突しない十分な高さに設定される。例えば移動高さ=30mmなどとする。
【0071】
(7)塗布速度設定
ノズル3の選定と吐出圧の設定と塗布速度の設定によってコーティング剤の塗布厚が決定する。塗布速度を下げるとコーティング剤が厚く塗布され、ひび割れの原因になったり、あふれて禁止エリアARに入ってしまうことがある。塗布速度を早くするとコーティング剤が薄く塗布され、塗布されない箇所ができてしまうと共に、飛沫量が大きくなり、禁止エリアARに飛沫が飛んでしまうことがある。そこで適切な塗布速度を設定する。
なお、設定する塗布速度としては、ノズル3による直線方向塗布速度、θ回転角度に応じた塗布速度、斜め方向移動のための塗布速度、円弧移動のための塗布速度などがある。
【0072】
(8)塗布タイミング設定
塗布方向にノズル3が移動する際、停止した状態から加速して一定速度に達するまでの期間に吐出したコーティング剤は厚く塗布されてしまう。同様にノズル3の速度が減速して停止するまでの間に吐出したコーティング剤も厚く塗布されてしまう。また、一定速度で移動していたノズル3が停止するまでコーティング剤が吐出されると、慣性力によって停止位置よりも先にコーティング剤が塗布されてしまう。そこでノズル3の移動が一定速度に達してからコーティング剤を塗布するとともに、一定速度より減速するとコーティング剤の塗布を中止するように、塗布タイミングを設定する。
【0073】
<5.搬送方向/搬送姿勢に応じた処理>
例えば回路基板100の製造工場の製造ラインにコーティング装置1が配置される場合、回路基板100の搬送方向としては右流れの場合と左流れの場合があり得る。また、例えば通常は右流れが想定されていたとしても、ラインの事情によって左流れに変更されることもある。
【0074】
一例を示す。ある工場のラインでコーティング装置1を2台導入したとする。このとき
図8に示すように2台のコーティング装置1A、1Bが、オペレータの作業位置を間において向かい合って設置されたとする。このように設置することで一人のオペレータにより2台に対する動作確認や指示が効率よくできるためである。
ここで図の紙面の左方向が前工程であって左側から回路基板100が搬入されるとする。コーティング装置1Aについては、回路基板100の搬送方向は右流れとなる。つまりコーティング装置1Aの正面側のオペレータから見て、左から右に移動するように回路基板100が搬送されている。
しかしコーティング装置1Bについては回路基板100の搬送方向が左流れとなる。つまりコーティング装置1Bの正面側のオペレータから見て、右から左に移動するように回路基板100が搬送されている。
【0075】
右流れと左流れの場合のX−Y座標を
図9A、
図9Bに示している。
右流れの場合、
図9Aのように基板100はストッパ20に接する端辺150の手前側が原点aとなる。仮に回路基板100の平面サイズを160mm×80mmとし、原点aからの距離をそのまま座標値とする。すると回路基板100の平面としてのX軸の座標値は、原点aの0mmから左に向かって160mmまで増加する。
一方、左流れの場合、
図9Bのように基板100はストッパ20に接する反対側の端辺151の手前側が原点aとなる。回路基板100の平面としてのX軸の座標値は、原点aの0mmから右に向かって160mmまで増加する。
【0076】
このように右流れと左流れでX座標の方向が逆になる。
なおストッパ20に接する側に原点aを設定するのは、各種の回路基板100のサイズによらずにX座標原点を固定できることや、位置決めにより原点位置が正確に確定できること、さらにはオペレータが原点位置を把握しやすいことなどによる。
【0077】
右流れと左流れによって座標が変化するため、スプレーパス設定を搬送方向に応じて作り直さなければならない場合が生ずる。
例えばある回路基板100について、基本的には
図9Aのような右流れで端辺150側が前方の搬送姿勢でストッパ20の位置まで搬送されることが想定されるとする。するとこの状態の回路基板100に対してスプレーパス設定を行う。スプレーパス情報としては各経路の開始位置や進行方向等が設定される。
ところが、右流れを想定してスプレーパスを設定した場合、そのスプレーパスは、左流れのコーティング装置1Bでは使用できない。スプレーパス設定情報が指示する座標位置を、コーティング装置1は右流れの場合と異なる位置として把握するためである。
例えば
図8のコーティング装置1Aを想定して設定されたスプレーパスは、コーティング装置1Bでは座標値や方向性の変化により、適正な塗布ができなくなる。
【0078】
図9Aと
図9Bを比較してわかるように、回路基板100自体は、コーティング装置1上で同じ姿勢である。従って、
図9Bの場合も
図9Aの場合と同じスプレーパスで塗布を進行させれば良いのだが、コーティング装置1Bが認識する座標がコーティング装置1Aと異なるため、同じ塗布が実行されない。
【0079】
ここまでは搬送方向について述べてきたが、搬送姿勢に関しても、スプレーパス設定が適切でなくなる場合がある。
搬送姿勢とは、搬送時の回路基板100の平面の回転方向の向きのことをいう。搬送時に回路基板100のどの端辺が前方となるかということである。
図10に右流れの場合に回路基板100の姿勢が、0°の状態、平面方向に90°回転した状態、180°回転した状態、270°回転した状態を示している。
また左流れの場合についても、回路基板100の姿勢が、0°の状態、平面方向に90°回転した状態、180°回転した状態、270°回転した状態を示している。
回路基板100が長方形状の場合、通常、このように搬送姿勢については右流れ、左流れでそれぞれ例えば4通り想定される。この搬送姿勢をどのようにするかは、ラインの事情、例えば前工程の都合や、搬送機構の事情などによる。
仮に、搬送方向が右流れで搬送姿勢が回転0°を想定してスプレーパスを設定した場合、そのスプレーパス設定情報は、回路基板100が90°、180°、又は270°のいずれかの回転状態で搬送されてくるコーティング装置1では用いることができない。ある座標示す回路基板100上の位置が異なることになるためである。
また同様に、搬送方向が左流れで搬送姿勢が回転0°を想定してスプレーパスを設定した場合、そのスプレーパス設定情報は、回路基板100が90°、180°、又は270°のいずれかの回転状態で搬送されてくるコーティング装置1では用いることができない。
つまり、
図10に示すうちで、ある搬送方向と搬送姿勢を前提条件として設定されたスプレーパスは、他の7通りの場合には用いることができない。
【0080】
すると、実際の搬送方向や搬送姿勢に応じて別個のスプレーパス設定が必要になる。この場合、塗布プログラム(スプレーパス)の作成、選択、変更として余計な手間がかかる。例えば
図8のコーティング装置1A、1Bにそれぞれ別のスプレーパスを取得させる必要がある。またライン変更などの際の対応が面倒である。
また共通の塗布プログラムを使用できないことで、塗布工程のランニングに不便なだけでなく、メンテナンスにも不便なことが生じ易い。例えばスプレーパス設定の不具合などがあっても、別個に対応が必要になる。
【0081】
そこで本実施の形態では、コーティング装置1B又はコンピュータ装置200において、は搬送情報(搬送方向や搬送姿勢)がスプレーパス設定時の前提と異なる場合、スプレーパス情報を変換することで対応できるようにする。
以下、具体例を説明する。
【0082】
図11Aは例えば表示部9又はディスプレイ256に表示されるスプレーパスの例を示している。回路基板画像170上に、破線及びパスマーカPMで示すようにパスが設定されている。
これは、平面サイズが160mm×80mmの回路基板100について、塗布幅を10mmとしたときにパスマーカPM内の数値「1」から「10」で示される10個のパスが設定された状態である。
このスプレーパスは搬送方向が右流れで搬送姿勢が0°の状態を想定しているとする。
【0083】
図11Bは、このスプレーパスの具体的な設定値である。スプレーパス設定情報として1つのパスマーカPMで示される1つ1つのパス(移動経路)についての各種情報が設定される。ここではパスマーカに示される「1」から「10」のパスが塗布軌跡ナンバ001〜010で示されている。
各塗布軌跡ナンバのパスについては、例えば開始X、開始Y、Length(パス長)、方向(パスの進行方向)、開始角度、終了角度、塗布高さ、移動高さ、速度、DOT時間、ガン(ノズルの指定情報)が設定される。
【0084】
「開始X」「開始Y」は、塗布の開始位置としてのX−Y座標値である。例えば塗布軌跡ナンバ001のパス(以下、「パス(001)」の形式で表記する)は、X=0.000mm、Y=5.000mmとなっている。これは
図11Aの開始位置STの座標値である。Y=5.000mmとなるのは、塗布幅が10mmで、Y座標値として0mmから10mmの範囲が1回のパスで塗布されるため、その中央値の5mmが開始位置となるためである。
「Length(パス長)」によりパスの長さが示される。パス(001)のパス長は87.500となっている。「方向」によりパスの進行方向が示される。パス(001)は左に進行するものとされている。
その他、開始角度、終了角度としてノズル回転角度(θ)が設定され、また塗布高さ、移動高さ、速度等が設定されている。これらによりパス(001)としての具体的な動作が規定されることになる。
他のパス(002)〜パス(010)についても、
図11Aに示すパスを規定する情報が
図11Bのように設定されている。
この
図11Bの設定情報が上述のスプレーパス設定処理で設定される。
【0085】
このスプレーパス設定を左流れに対応させる場合を
図12に示す。
左流れの場合(搬送姿勢は0°)、
図12Aに示すようにX座標の方向性が変化する。
しかしながら、スプレーパスを構成するパス(001)〜パス(010)は、回路基板画像170上では、
図11Aと全く同じである。
ところが、
図11Bの設定情報をそのまま実行しても、
図12Aに示されるような塗布は行われない。例えば
図11Aでは、パス(001)は、X=0.000mm、Y=5.000mmから左方向に進行するという設定である。しかしこれを
図12Aに当てはめて、X=0.000mm、Y=5.000mmから左方向に進行すると、基板外に塗布が行われてしまうようなパスとなってしまう。このため搬送方向に応じた座標変換を行う。
【0086】
図12Bが変換したスプレーパス設定情報である。
図11Bと比較してわかるように、「開始X」「開始Y」が変更されている。即ち右流れの原点位置と左流れの原点位置の違いに対応して各パス(001)〜パス(010)の開始座標を座標変換することで、左流れの場合でも、右流れの場合と同じスプレーパスで塗布を実行できるようにスプレーパス設定情報を改変したものとなっている。
この
図12Bのスプレーパス設定情報によれば、パス(001)〜パス(010)は
図12Aに示す通りとなる。例えばパス(001)は
図12Aに示す開始位置STから左方向に塗布を行うパスとなる。結果として回路基板100の基板面から見れば、
図11Aの場合と全く同様のパスで塗布が行われることになる。
【0087】
また
図11のスプレーパス設定を、搬送姿勢が回転角度90°となった場合に対応させた例を
図13に示す。搬送方向は変わらず右流れとする。
この場合、右流れであるため
図13Aに示すようにX−Y座標は
図11Aと変わらないが、90°回転によって
図11Bのスプレーパスはそのまま使用できない。
しかしながら、回路基板画像170で示される回路基板100の基板面から考えると、
図13Aのスプレーパスを構成するパス(001)〜パス(010)は、
図11Aと全く同じである。
これを実現するために変換したスプレーパス設定情報が
図13Bのようになる。
図11Bと比較してわかるように、パス(001)〜パス(010)の「開始X」「開始Y」「方向」が変更されている。例えばパス(001)は
図13Aに示す開始位置STから上方向に塗布を行うパスとなる。
即ち回転により生ずる開始位置座標の変化とパス進行方向の変化に対応して各パス(001)〜パス(010)の「開始X」「開始Y」「方向」を改変することで、異なる搬送姿勢の場合でも、0°の場合と同じスプレーパスで塗布を実行できるようにしている。
【0088】
図12,
図13のいずれの場合も、
図11のスプレーパスとは別に新たなスプレーパス設定を行うものではない。あくまで回路基板100の基板面からみると、全く同じスプレーパスで塗布が行われることになる。コーティング装置1にとっては、搬送方向又は搬送姿勢に応じて各パスの開始位置や塗布進行方向が変更されることになる。
ここでは、
図11を右流れ0°とし、
図12を左流れ0°に対応して改変した場合、
図13を右流れ90°に対応して改変した場合の具体例を示したが、
図10のいずれの搬送方向、搬送姿勢の場合も同様に対応できる。
【0089】
以上のようなスプレーパス設定情報の改変を行う処理例を
図14に示す。
図14は例えば主制御部30の処理として説明する。なおこの処理はコンピュータ装置200のCPU251が実行しても良い。
【0090】
ステップS100で主制御部30は、塗布処理対象となるある回路基板100についてのスプレーパス情報を取得する。例えばCPU251が作成して転送され、メモリ部34に保存しているスプレーパス設定情報を読み出す。或いはそれ以前に主制御部30自身が作成して保存しているスプレーパス設定情報を読み出す。
【0091】
ステップS101で主制御部30は、搬送情報を取得する。搬送情報とは、搬送方向と搬送姿勢の情報である。これは例えば塗布処理対象の回路基板100に対する初期設定としてオペレータが入力する情報を取得する処理とすればよい。
なお、これは搬送方向又は搬送姿勢の変更を指示するオペレータの操作を認識する処理であって、特にオペレータが搬送情報の変更の指示を入力しない場合は、主制御部30はそのままデフォルトの搬送方向又は搬送姿勢(スプレーパス設定時の搬送方向又は搬送姿勢である例えば右流れ0°)であると解釈すればよい。
また主制御部30は、コンピュータ装置200から送信される情報として搬送情報を確認する場合もある。オペレータがコンピュータ装置200側で操作入力を行う場合などである。
【0092】
搬送情報の入力がないまま、実際の塗布を開始するような場合、或いはデフォルトの搬送方向/搬送姿勢が指示された場合、主制御部30はステップS102→S104を介して
図14の処理を終え、実際の塗布制御に移行する。例えば
図11のようなスプレーパス設定をそのまま用いる場合である。
【0093】
搬送情報としてデフォルトとは異なる搬送方向が指示された場合、主制御部30はステップS102からS103に進み、流れ方向の変更に対応するようにスプレーパス設定情報の座標変換を行う。
具体的には、「開始X」の値を、
(開始X)=(基板X幅)−(元の開始X値)
とする。「開始Y」やその他の情報は変更不要である。
これにより
図11Bのスプレーパス設定情報を
図12Bのように改変する。
図12Bのパス(001)〜パス(010)の「開始X」の値は、全て、基板X幅である160mmから
図11Bの「開始X」の値を減算した値になっている。
【0094】
また、搬送情報としてデフォルトとは異なる搬送姿勢(つまり基板の回転)が指示された場合は、主制御部30はステップS104からS105に進む。
ステップS105では、回転数Nを設定する。ここでいう回転数Nとは0°の状態(デフォルトの姿勢)から90°単位の回転を何回行った状態かを示す値である。例えば90°の場合は回転数N=1、180°の場合は回転数N=2、270°の場合は回転数N=3とする。
【0095】
そして主制御部30はステップS105で変数n=1とし、ステップS107で座標回転を行う。ステップS108では回転数N=変数nとなっているか否かを確認し、変数nが回転数Nに達していなければステップS109で変数nをインクリメントしてステップS107で再び座標回転を行う。
つまり、指示された搬送姿勢が90°回転の場合は座標回転を1回、180°の場合は座標回転を2回、270°の場合は座標回転を3回実行する。
【0096】
ステップS107の座標回転は次のように行う。
(開始X)=(回転前の基板Y幅)−(回転前の開始Y)
(開始Y)=(回転前の開始X)
【0097】
例えば
図11Bと
図13Bを比較すると、
図13Bの「開始X」「開始Y」は、上記式で
図11Bの「開始X」「開始Y」から変換されたものであることがわかる。なおこの場合の「回転前の基板Y幅」とは、
図11のY幅であり、80mmである。
なお、これらの座標変換に伴って、「方向」の情報も変更する。
ステップS107の処理を1回行うと、この
図11Bから
図13Bのように座標変換され、これによってスプレーパス設定情報は、右流れ90°に対応したものとなる。
【0098】
180°回転の場合は図示していないが、
図13Bのスプレーパス設定情報の「開始X」「開始Y」を再度、上記式で変換するとともに「方向」を変更する。つまりステップS107の座標変換を2回行えば良い。
270°回転の場合は、180°回転に対応するスプレーパス設定情報の「開始X」「開始Y」を再度、上記式で変換するとともに「方向」を変更する。つまりステップS107の座標変換を3回行えば良い。
なお、ここでは説明上の一例として、180°回転の場合は上記式の座標回転を2回、270°回転の場合は3回行うものとしたが、もちろん1回の座標変換で直接180°変換、270°変換を行うようにしてもよい。
【0099】
以上の
図14の処理を行うことで、元のスプレーパス設定情報を、実際の搬送方向/搬送姿勢に対応したものとすることができる。
【0100】
<6.まとめ及び変形例>
以上の実施の形態では次のような効果が得られる。
実施の形態のコーティング装置1は、塗布液体を吐出する吐出部(ノズル3)と、吐出部を三次元の各方向である横方向、縦方向、高さ方向に移動させる移動機構(ノズルZモータ5,Xモータ8,Yモータ7,X方向ガイド12,Y方向ガイド11等)と、塗布処理対象物である回路基板100を塗布作業位置に搬送する搬送機構(コンベア機構10)とを有する。また搬送機構により搬送されてきた回路基板100に対して、設定されたスプレーパスに従って移動機構により吐出部を移動させながら塗布液体を吐出させる塗布制御処理を実行する主制御部30を備える。主制御部30は、回路基板100の搬送方向又は搬送姿勢を示す搬送情報を取得する搬送情報取得処理(S101)と、取得した搬送情報が、スプレーパス設定時に前提とした搬送方向又は搬送姿勢と異なっている場合は、搬送情報に応じてスプレーパス情報を変換するパスデータ変換処理(S103,S105〜S109)を行うようにしている。
このように搬送情報(搬送方向や搬送姿勢)がスプレーパス設定時の前提と異なる場合、スプレーパス情報を変換することで、スプレーパス設定をやり直さなくても、実際の搬送方向や搬送姿勢に適したスプレーパスでの塗布動作が可能となる。従って、スプレーパス(塗布プログラム)を再作成する手間は必要なくなる。
換言すれば、ある回路基板100に対して一度スプレーパスを設定すれば、工程ラインの事情にかかわらず、そのスプレーパスを有効に利用でき、多様な工程事情に対応することができる。例えば右流れで設定したスプレーパスにおいて、ラインの都合上、コーティング装置1が左流れで設置されても、スプレーパスの再設定の必要はない。
右流れのコーティング装置1と左流れのコーティング装置1が混在する工場においても、共通のスプレーパスを使用できる。
さらには、回路基板100の搬送方向や搬送姿勢を使用工場側の都合に合わせて選択できることになり、非常に融通の利くシステムを構築できる。
また、流れ方向等にかかわらず共通のスプレーパス(塗布プログラム)を使用できるため、例えば製造元やメンテナンス業者が想定している流れ方向と、使用工場での流れ方向が異なっても、製造元やメンテナンス業者等は、テスト機で同一の塗布プログラムにより各種の検証ができる。例えば塗布プログラムの不具合の疑いがあるような場合で、使用工場がメンテナンス業者と逆の流れであっても共通プログラムで検証ができる。これによりメンテナンスや検証等の効率も向上される。
【0101】
実施の形態の主制御部30は、パスデータ変換処理(S103)として、実際の搬送方向がスプレーパス設定時に前提とした搬送方向と異なっている場合は、回路基板100の平面に相当する座標の原点位置が変更されることに対応するようにスプレーパス情報の座標変換を行うようにしている。
搬送方向が異なる場合でもストッパ20による規定位置に応じて原点位置を変えることで、塗布装置のオペレータにもわかりやすく、また原点位置がストッパで確実に規定されるため、正確な塗布が実現される。この場合に、原点位置が異なることに対応してスプレーパスの座標変換を行うことで、適切なスプレーパスに改変できる。
【0102】
実施の形態の主制御部30は、パスデータ変換処理(S105〜S109)として、実際の搬送姿勢が、スプレーパス設定時に前提とした回転方向姿勢と異なっている場合は、回路基板100の平面に相当するX−Y座標が回転方向に変更されることに対応するようにスプレーパス情報の座標変換を行うようにしている。
回路基板100の搬送時の回転方向姿勢がスプレーパス設定時の前提と異なる場合、そのことに対応してスプレーパスの座標変換を行うことで、搬送姿勢の違いに対応した適切なスプレーパスに改変できる。
【0103】
なお
図14の処理例では、搬送方向に応じたスプレーパスの改変と、搬送姿勢に応じたスプレーパスの改変の両方を行うようにしたが、搬送方向に応じたスプレーパスの改変のみを行うような処理例も考えられる。当然、搬送姿勢に応じたスプレーパスの改変のみを行うような処理例も考えられる
【0104】
図14の処理はコンピュータ装置200のCPU251が実行し、搬送方向又は搬送姿勢に応じて改変したスプレーパス設定情報を生成して、これをコーティング装置1に転送するようにしてもよい。
【0105】
実施の形態のコンピュータ装置200、主制御部30は、塗布処理対象物の搬送方向又は搬送姿勢を示す搬送情報を取得する搬送情報取得機能300と、搬送情報取得機能300により取得した搬送情報が、スプレーパス設定時に前提とした搬送方向又は搬送姿勢と異なっている場合は、搬送情報に応じたスプレーパス情報の変換を行うパスデータ変換機能301を備えている。これにより
図14の処理を実行する。従ってコンピュータ装置200、或いは主制御部30は、本発明の情報処理装置に相当する。
【0106】
実施の形態では、ノズル3から扇状のスプレーパターンが吐出される例としたが、必ずしも扇状のスプレーパターンを吐出するノズルでなくともよい。
例えば円錐状に広がるスプレーパターンを吐出するノズルであっても本発明は適用できる。
またノズル3とニードルという2つの吐出部を備えた液体吐出装置としても実現可能である。ニードルとは細径の吐出口を持つ針状ノズルであり、電子部品間の狭い領域等に塗布できるものである。その場合、ニードルについてもスプレーパスが設定される。このスプレーパスについても、搬送方向又は搬送姿勢に応じて改変されるようにすれば良い。
【0107】
また実施の形態のコーティング装置1は、回路基板100に薄膜を形成する装置に限ることなく、各種の塗布処理対象物に対して薄膜等を形成するコーティング装置に適用できる。薄膜とは、防湿膜、防さび膜、塗装膜、着色膜など、各種の膜のコーティングに適用できる。
また本発明の搬送方向又は搬送姿勢に応じた設定情報の変更処理は、膜形成、洗浄、塗装など、各種の目的で加圧液体の吐出を行う液体吐出装置において広く適用できる。さらに基板接着装置やレーザ加工装置などに応用することもできる。
【0108】
<7.プログラム>
実施の形態のプログラムは、上述の
図14の処理を、例えばCPU、DSP(Digital Signal Processor)等の演算処理装置に実行させるプログラムである。
即ち塗布処理対象物の搬送方向又は搬送姿勢を示す搬送情報を取得する搬送情報取得手順(S101)と、搬送情報取得手順で取得した搬送情報が、スプレーパス設定時に前提とした搬送方向又は搬送姿勢と異なっている場合は、搬送情報に応じたスプレーパス情報の変換を行うパスデータ変換手順(S103,S105〜S109)を情報処理装置に実行させるプログラムである。
このようなプログラムによれば、実施の形態のコンピュータ装置200やコーティング装置1等の塗布装置の広範な提供に適している。
【0109】
以上のプログラムは、コーティング装置1やコンピュータ装置200に内蔵されている記録媒体としてのメモリ部34或いは、HDD等や、CPUを有するマイクロコンピュータ内のROM等に予め記録しておくことができる。
あるいはまた、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、MO(Magneto optical)ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスク(Blu-ray Disc(登録商標))、磁気ディスク、半導体メモリ、メモリカードなどのリムーバブル記録媒体に、一時的あるいは永続的に格納(記録)しておくことができる。このようなリムーバブル記録媒体は、いわゆるパッケージソフトウェアとして提供することができる。
また、このようなプログラムは、リムーバブル記録媒体からパーソナルコンピュータ等にインストールする他、ダウンロードサイトから、LAN(Local Area Network)、インターネットなどのネットワークを介してダウンロードすることもできる。