(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Nは2以上の予め定められた整数であり、Mは2以上N以下を満たす予め定められた整数であり、iは1以上M以下の各整数を表し、tは時刻を表し、k[i,t]は1以上M以下の各整数を表わすとして、
予め決められた位置に固定されているN個のアンテナ素子A1,…,ANを含み、
N個のアンテナ素子A1,…,ANはM個のグループG1,…,GMに分類されており、
Ap(p∈{1,…,N}),Gq(q∈{1,…,M})について、
・∀q,∃p s.t. Ap∈Gq
・Gq1∩Gq2=φ (q1,q2∈{1,…,M}、q1≠q2、φ:空集合)
・∪q∈{1,…,M}{k|Ak∈Gq}={1,…,N}
が成立し、
指向性の方向が予め定められた互いに異なるM個のビームB1,…,BMが上記M個のグループG1,…,GMによって形成される
マルチビームアレーアンテナシステムにおいて、
或る時刻tにてi番目のビームBiがk[i,t]番目のグループGk[i,t]によって形成されている場合に、時刻tにおけるビームの添字集合{1,…,M}からグループの添字集合{1,…,M}への全単射写像f<t>:{1,…,M}→{1,…,M}をf<t>(i)=k[i,t]によって定義すると、
上記マルチビームアレーアンテナシステムの運用期間内に条件Cを満たす第1の時刻t1および当該第1の時刻t1と異なる第2の時刻t2が存在する
(条件C)『f<t1>≠f<t2>』
ことを特徴とするマルチビームアレーアンテナシステム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0010】
本発明の実施形態のマルチビームアレーアンテナシステム100は、N個のアンテナ素子A
1,…,A
Nを含む。アンテナ素子の配列の形状に限定はない。マルチビームアレーアンテナシステム100では、N個のアンテナ素子A
1,…,A
NがM個のグループG
1,…,G
Mに分類されており、各グループがビームを形成する。Nは2以上の予め定められた整数であり、Mは2以上N以下を満たす予め定められた整数である。典型的な例では、NはMの整数倍である。この実施形態では、N≧2,2≦M≦N,A
p(p∈{1,…,N}),G
q(q∈{1,…,M})について、
・∀q,∃p s.t. A
p∈G
q
・G
q1∩G
q2=φ (q1,q2∈{1,…,M}、q1≠q2、φ:空集合)
・∪
q∈{1,…,M}{k|A
k∈G
q}={1,…,N}
が成立する。第1項は、アンテナ素子を含まないグループが存在しないことを意味し、第2項は、複数のグループに属するアンテナ素子が存在しないことを意味し、第3項は、どのグループにも属さないアンテナ素子が存在しないことを意味する。マルチビームアレーアンテナシステム100において、各アンテナ素子A
1,…,A
Nは予め決められた位置に固定されている。
以下、特に断りがない限り、「ビーム」は「主ビーム」を意味する。ただし、主ビームの方向は単一の方向であるとは限らない。また、「ビーム」は、電波をマルチビームアレーアンテナシステム100と送受信できる範囲に向けられた指向性の電波を意味する。
【0011】
マルチビームアレーアンテナシステム100の運用期間中の或る時刻tにてi番目のビームB
iがk[i,t]番目のグループG
k[i,t]によって形成されているとする。iは1以上M以下の各整数を表わし、k[i,t]は1以上M以下の各整数を表わす。この場合、ビームの添字集合{1,…,M}からグループの添字集合{1,…,M}への全単射写像f<t>:{1,…,M}→{1,…,M}をf<t>(i)=k[i,t]によって定義する。つまり、ビームB
iの添え字i∈{1,…,M}は、時刻tでの全単射写像f<t>によって、グループG
k[i,t]の添え字k[i,t]∈{1,…,M}に対応付けられる。また、ビームB
iの方向とビームB
jの方向は一致しないものとする(i,j∈{1,…,M}、i≠j)。なお、運用期間とは、マルチビームアレーアンテナシステム100が稼働している時間、言い換えれば、マルチビームアレーアンテナシステム100から予め定められた方向にM個のビームが放射されている時間のことである。
【0012】
下記の説明に先立ち、写像の相等について説明する。集合A,B,A’,B’について2つの写像h
1:A→Bとh
2:A’→B’が等しいとは、A=A’かつB=B’であって、任意のa∈Aに対してh
1(a)=h
2(a)となるときをいう。このとき、h
1=h
2と表す。2つの写像が等しくないときは、h
1≠h
2と表す。
【0013】
マルチビームアレーアンテナシステム100では、マルチビームアレーアンテナシステム100の運用期間内に条件Cを満たす第1の時刻t1および第1の時刻t1と異なる第2の時刻t2が存在する。条件Cは、「運用期間中、任意の異なる二つの時刻t1,t2でf<t1>=f<t2>となる」場合を排除する。
(条件C) f<t1>≠f<t2>
【0014】
これは、マルチビームアレーアンテナシステム100の運用期間中、少なくとも二つの異なるグループG
k[i,t1]とグループG
k[i,t2]によって形成されるi番目のビームB
iが存在することを意味する(t1≠t2,∃i s.t. k[i,t1]≠k[i,t2])。ただし、このようなビームを識別する添え字をrとすると、少なくとも二つの異なるグループG
k[r,t1]とグループG
k[r,t2]によって同時にr番目のビームB
rが形成されるのではない。このことを実際の例に即して述べれば、k1,k2∈{1,…,M}、k1≠k2として、運用期間中の或る区分時間(T1,T2)(註:記号(a,b)は、時刻aから時刻bまでの時間を表わしている)ではグループG
k1によってビームB
rが形成され、運用期間中の或る区分時間(T3,T4)ではグループG
k2によってビームB
rが形成され、(T1,T2)と(T3,T4)に重複は無いということである((T1,T2)∩(T3,T4)=φ)。
【0015】
要するに、マルチビームアレーアンテナシステムの運用期間中、M個のビームのうち或る1個のビーム(ビーム1)をM個のグループのうち或る1個のグループ(グループ1)が形成しているとき、ビーム1を形成するグループを、グループ1から、M個のグループのうちグループ1と異なる1個のグループ(グループ2)に、切り換えるのである。
【0016】
この実施形態の一つの具体例を説明する。この例ではM=3とする。
或る時刻t1で、ビームB
1はグループG
1によって形成されており、ビームB
2はグループG
3によって形成されており、ビームB
3はグループG
2によって形成されているとする。この場合、k[1,t1]=1,k[2,t1]=3,k[3,t1]=2である。
そして、時刻t1と異なる時刻t2では、k[1,t2]≠1,k[2,t2]≠3,k[3,t2]≠2のうち少なくともいずれか二つが成立しなければならない。このため、例えば、時刻t2では、ビームB
1はグループG
3によって形成され、ビームB
2はグループG
1によって形成され、ビームB
3はグループG
2によって形成される。この場合、k[1,t2]=3,k[2,t2]=1,k[3,t2]=2である。
別の観点からは、ビームB
1は、時刻t1ではグループG
1によって、時刻t2ではグループG
3によって、形成され、ビームB
2は、時刻t1ではグループG
3によって、時刻t2ではグループG
1によって、形成され、ビームB
3は、時刻t1でも時刻t2でもグループG
2によって、形成される、と説明できる。つまり、ビームB
1を形成するグループがグループG
1からグループG
3に切り換わり、ビームB
2を形成するグループがグループG
3からグループG
1に切り換わったことになる。
M個のビームB
1,…,B
MのそれぞれをM個のグループG
1,…,G
Mのいずれか一つに対応付ける関係は、ビームの添え字(識別子)をグループの添え字(識別子)に対応付ける関係と見ることができ、この対応関係は全単射写像である。M=3の場合、ビームの添字集合{1,2,3}からグループの添字集合{1,2,3}への全単射写像は全部で6個ある。具体的には、6個の全単射写像は、
f
1:1→1,2→2,3→3
f
2:1→1,2→3,3→2
f
3:1→2,2→1,3→3
f
4:1→2,2→3,3→1
f
5:1→3,2→1,3→2
f
6:1→3,2→2,3→1
である。上記の例では、時刻t1での全単射写像f<t1>はf
2なので、時刻t2での全単射写像f<t2>はf
2以外が選択され、具体的にはf
5である。時刻t1でのグループから時刻t2でのグループへの切り換えは、全単射写像f
2から全単射写像f
5への変更に対応する。
【0017】
マルチビームアレーアンテナシステム100によると、マルチビームアレーアンテナシステム100の出力を抑制しなくてもマルチビームアレーアンテナシステム100の周りの強電磁界領域を時間平均で狭くできる。なお、ここで「狭い」とは、マルチビームアレーアンテナシステムの中心から強電磁界領域の境界までの最大距離が短いことを意味し、必ずしも強電磁界領域の面積が小さいことを意味しない。「マルチビームアレーアンテナシステムの中心」は、リニアアレーである場合には両端のアンテナ素子を結ぶ線分の等分点であり、サーキュラーアレイである場合にはアンテナ素子の配列が従う円の中心であり、矩形状のプレーナアレイである場合にはアンテナ素子の配列が従う矩形の対角線の交点であり、コンフォーマルアレイの場合は例えば、全てのアンテナ素子を内包できる円のうち面積が最小の円の中心である。
このことを、具体例を挙げて説明する。
【0018】
図1に示すように、マルチビームアレーアンテナシステム100がアンテナ素子としての8個の半波長ダイポールアンテナA
1,…,A
8を含み、これらのアンテナ素子A
1,…,A
8が添え字の順番に従ってリニア且つ等間隔(隣り合う二つのアンテナ素子の間隔は半波長)に配列されており、4個のダイポールアンテナA
1,…,A
4が第1グループG
1を構成し、4個のダイポールアンテナA
5,…,A
8が第2グループG
2を構成し、二つのグループが二つのビームを形成する場合を考える。
【0019】
まず、比較例として、(T1,T2)において、第1グループG
1が−30°の方向にビームB
1を形成し、第2グループG
2が+30°の方向にビームB
2を形成する(パターン1)。ビームはY軸に関して対称であり、ビームの角度計測では、X軸を基準として角度(絶対値)を計測し、ビームの方向がX軸に関して+Y軸側に存在すれば正の符号を計測値に与え、X軸に関して−Y軸側に存在すれば負の符号を計測値に与える(座標系については
図1,
図2を参照)。第1グループG
1が作るマルチビームアレーアンテナシステム100の周りの電界分布を
図2(a)に示し、第2グループG
2が作るマルチビームアレーアンテナシステム100の周りの電界分布を
図2(b)に示す。但し、図示の範囲は、X軸、Y軸ともに、−20波長から+20波長までの範囲である。パターン1におけるマルチビームアレーアンテナシステム100の周りの電界分布は、
図2(a)の電界分布と
図2(b)の電界分布との合成(これはX−Y平面内の各点での電界強度の二乗和の平方根で与えられる)で得られる。
比較例では、(T3,T4)において、パターン1のビームを形成する。このときの、マルチビームアレーアンテナシステム100の周りの電界分布は、(T1,T2)における電界分布と同じである。
ここで、T2-T1=T4-T3、T2≒T3(ただし、記号≒は、T2=T3にて瞬間的にグループが切り換えられることを意味する)として、(T1,T4)における時間平均のマルチビームアレーアンテナシステム100の周りの電界分布を
図2(c)に示す。
図2(c)中、所定の電界強度E以上の範囲を含むことのできる矩形のうち面積が最小の矩形を破線で示す。
【0020】
次に、本発明の実施形態に従って、(T1,T2)においてパターン1のビームを形成し、(T3,T4)において、第1グループG
1が+30°の方向にビームB
2を形成し、第2グループG
2が−30°の方向にビームB
1を形成する(パターン2)。第1グループG
1が作るマルチビームアレーアンテナシステム100の周りの電界分布を
図2(d)に示し、第2グループG
2が作るマルチビームアレーアンテナシステム100の周りの電界分布を
図2(e)に示す。パターン2におけるマルチビームアレーアンテナシステム100の周りの電界分布は、
図2(d)の電界分布と
図2(e)の電界分布との合成(これはX−Y平面内の各点での電界強度の二乗和の平方根で与えられる)で得られる。
ここで、T2-T1=T4-T3、T2≒T3として、(T1,T4)における時間平均のマルチビームアレーアンテナシステム100の周りの電界分布を
図2(f)に示す。
図2(f)中、所定の電界強度E以上の範囲を含むことのできる矩形のうち面積が最小の矩形を実線で示す。
図2(f)では、
図2(c)に示した破線の矩形も示している。
図2(f)から、実施形態によると電界強度E以上の強電磁界領域を時間平均で狭くできることがわかる。
【0021】
或るビームを形成した時の強電磁界領域は一般的に当該ビームの形成を担当するグループの周囲に形成される。所定の方向へのビームの形成を担当するグループを時間的に変更すれば、同一グループの周りに形成される強電磁界領域が時間平均で狭くなる。したがって、マルチビームアレーアンテナシステム100の出力を抑制しなくてもマルチビームアレーアンテナシステム100の周りの強電磁界領域を時間平均で狭くできる。
【0022】
この観点からは、所定の方向へのビームの形成を担当する少なくとも二つのグループの距離が大きいことが好ましい(言い換えると、所定の方向へのビームの形成を担当する各グループについて、同一グループの周りに形成される強電磁界領域が時間平均でできるだけ狭くすることが好ましい)。したがって、全単射写像f<t1>とf<t2>が満たすべき好ましい2通りの条件が考えられる。
【0023】
第1例として、全単射写像f<t1>とf<t2>は条件D1を満たすことが好ましい。
(条件D1) グループの添字集合{1,…,M}からグループの添字集合{1,…,M}への全単射写像g:{1,…,M}→{1,…,M},f<t1>(i)→f<t2>(i)によって定まるグループG
f<t1>(i)とグループG
f<t2>(i)との間の距離をL
iとして、Σ
i=1ML
iが予め定められた値以上である。
【0024】
なお、写像の合成の記号を・で表わすと、f<t2>=g・f<t1>であり、f<t2>(i)=g(f<t1>(i)) (i∈{1,…,M})である。
【0025】
また、異なる二つのグループの距離は、グループの中心間の距離で与えられる。グループの中心は、グループ内のアンテナ素子の配列に応じて定義でき、例えば、リニアアレーである場合には両端のアンテナ素子を結ぶ線分の等分点であり、サーキュラーアレイである場合にはアンテナ素子の配列が従う円の中心であり、矩形状のプレーナアレイである場合にはアンテナ素子の配列が従う矩形の対角線の交点であり、コンフォーマルアレイの場合は例えば、全てのアンテナ素子を内包できる円のうち面積が最小の円の中心である。ただし、f<t1>(i)=f<t2>(i)の場合、グループG
f<t1>(i)とグループG
f<t2>(i)との間の距離は0である。
【0026】
上記第1例を別の観点から説明する。グループの添字集合{1,…,M}からグループの添字集合{1,…,M}への全単射写像は全部でM!個である(記号!は階乗を表わす)。恒等写像を除くM!-1個の全単射写像g:{1,…,M}→{1,…,M},j→g(j)のうち、グループG
jとグループG
g(j)との間の距離をL
jとしてΣ
j=1ML
jが予め定められた値以上となる全単射写像g
w(w∈{1,…,W}、W≦M!-1)を予め特定しておく。このとき、グループの切り換えは、全単射写像g
wから任意に選択された一つの写像g
w1によって行われる。この場合、マルチビームアレーアンテナシステムを運用期間中、等時間間隔でグループの切り換えを行うことが望ましい。実施形態では、全単射写像g
w(w∈{1,…,W}、W≦M!-1)は予めメモリに保存されている。
【0027】
特に、全単射写像が2種類に限定されている場合、つまり、ビームの添字集合{1,…,M}からグループの添字集合{1,…,M}への異なる二つの全単射写像をf1,f2として、マルチビームアレーアンテナシステムの運用期間内の任意の時刻Tでの全単射写像f<T>がf1またはf2である場合には、全単射写像f1とf2が条件D1’を満たすのが好ましい。この場合、マルチビームアレーアンテナシステムを運用期間中、全単射写像f1によって運用されている時間と全単射写像f2によって運用されている時間がほぼ同じであるのが望ましい。
(条件D1’) グループの添字集合{1,…,M}からグループの添字集合{1,…,M}への全単射写像g:{1,…,M}→{1,…,M},f1(i)→f2(i)によって定まるグループG
f1(i)とグループG
f2(i)との間の距離をL
iとして、Σ
i=1ML
iが予め定められた値以上である。
【0028】
第2例として、全単射写像f<t1>とf<t2>は条件D2を満たすことが好ましい。
(条件D2) 異なる二つのグループ間の距離の最大値をL
maxとし、グループの添字集合{1,…,M}からグループの添字集合{1,…,M}への全単射写像g:{1,…,M}→{1,…,M},f<t1>(i)→f<t2>(i)によって定まるグループG
f<t1>(i)とグループG
f<t2>(i)との間の距離をL
iとして、L
max∈{L
1,…,L
M}である。
【0029】
なお、「異なる二つのグループ間の距離の最大値L
max」はマルチビームアレーアンテナシステムにおけるグループの配置によって一意に定まる。
【0030】
上記第2例を別の観点から説明する。グループの添字集合{1,…,M}からグループの添字集合{1,…,M}への全単射写像は全部でM!個である。異なる二つのグループ間の距離の最大値をL
maxとしたとき、恒等写像を除くM!-1個の全単射写像g:{1,…,M}→{1,…,M},j→g(j)のうち、グループG
jとグループG
g(j)との間の距離をL
jとしてL
max∈{L
1,…,L
M}を満たす全単射写像g
y(y∈{1,…,Y}、Y≦M!-1)を予め特定しておく。このとき、グループの切り換えは、全単射写像g
yから任意に選択された一つの写像g
y1によって行われる。この場合、マルチビームアレーアンテナシステムを運用期間中、等時間間隔でグループの切り換えを行うことが望ましい。実施形態では、全単射写像g
y(y∈{1,…,Y}、Y≦M!-1)は予めメモリに保存されている。
【0031】
第1例と同様に、特に、全単射写像が2種類に限定されている場合、つまり、ビームの添字集合{1,…,M}からグループの添字集合{1,…,M}への異なる二つの全単射写像をf1,f2として、マルチビームアレーアンテナシステムの運用期間時間内の任意の時刻Tでの全単射写像f<T>がf1またはf2である場合には、全単射写像f1とf2が条件D2’を満たすのが好ましい。この場合、マルチビームアレーアンテナシステムを運用期間中、全単射写像f1によって運用されている時間と全単射写像f2によって運用されている時間がほぼ同じであるのが望ましい。
(条件D2’) 異なる二つのグループ間の距離の最大値をL
maxとし、グループの添字集合{1,…,M}からグループの添字集合{1,…,M}への全単射写像g:{1,…,M}→{1,…,M},f1(i)→f2(i)によって定まるグループG
f1(i)とグループG
f2(i)との間の距離をL
iとして、L
max∈{L
1,…,L
M}である。
【0032】
上記第1例と上記第2例は、別の観点からは、グループ2は、M個のグループのうち、グループ1から所定の距離以上離れているグループの中から選択される、と言うことができる。
【0033】
さらに、他の例として、時刻tにおける全単射写像f<t>を、マルチビームアレーアンテナシステムの周辺で電磁界強度が所定の値以下である範囲、または、当該範囲を含む最小の円または多角形、の移動平均に基づいて動的に決定してもよい。
【0034】
「範囲の移動平均」は、当該範囲の面積の移動平均でもよいし、マルチビームアレーアンテナシステムの中心から当該範囲の境界までの距離のうち最大の長さの移動平均でもよい。同様に、「最小の円または多角形の移動平均」は、当該円または多角形の面積の移動平均でもよいし、マルチビームアレーアンテナシステムの中心から当該円または多角形の境界までの距離のうち最大の長さの移動平均でもよい。
【0035】
移動平均を計算するためのサンプリング時刻は、一つの区分時間につき当該区分時間から任意に選択された一つの時刻である(特別の事情が無い限り、一つの区分時間につき複数のサンプリング時刻は採用されない)。例えば、運用期間に互いに重複しない3つの区分時間(T1,T2),(T3,T4),(T5,T6)が含まれる場合、サンプリング時刻t1,t2,t3は、t1∈(T1,T2),t2∈(T3,T4),t3∈(T5,T6)である。以下、サンプリング時刻tにおいて「マルチビームアレーアンテナシステムの周辺で電磁界強度が所定の値以下である範囲、または、当該範囲を含む最小の円または多角形」をS
tと記載する。
【0036】
また、「移動平均」は、例えば、単純移動平均、加重移動平均、指数移動平均である。
【0037】
この例では、i番目のビームB
iをk番目のグループG
kが作る場合にk番目のグループG
kが作る電磁界分布D
i,k ((i,k)∈{1,…,M}×{1,…,M})がデータとして予めメモリに保存されている。S
tがf<t>によって定まるグループが作る電磁界分布の合成によって決まることに注意すると、グループの切り換えは、
argmin
f<t> (Σ
i=0Z-1S
t-i)/Z
の中から選択されるf<t>によって行われる。記号argminは最小点集合(関数がその最小値をとる定義域の元全体の成す集合)であり、Zは移動平均の計算に用いられるデータの総数である。具体的には、メモリに保存されている電磁界分布D
i,k ((i,k)∈{1,…,M}×{1,…,M})を用いて、切り換えた後の区分時間までの移動平均(つまり、移動平均の計算にZ個のデータを用いる場合、切り換えた後の区分時間のS
tと過去Z-1個の区分時間のS
t-Z+1,S
t-Z+2,…,S
t-1に基づく移動平均である)を集合{1,…,M}から集合{1,…,M}への全単射写像(全部でM!個)ごとに計算し、計算結果の移動平均のうち最小の計算結果を与えた全単射写像f<t>が一つ選択される。
【0038】
上記他の例は、別の観点からは、グループ2が、マルチビームアレーアンテナシステムの周辺で電磁界強度が所定の値以下である範囲、または、当該範囲を含む最小の円または多角形、の移動平均に基づいて決定される、と言うことができる。
【0039】
(ハードウェア構成例)
図3にマルチビームアレーアンテナシステム100の構成例を示す。基地局装置(または移動局装置)は、マルチビームアレーアンテナシステム100を含む。マルチビームアレーアンテナシステム100は、制御装置10と、M個のグループG
1,…,G
Mを含む。制御装置10は、データ送信部11、位相設定部13、制御部15を含む。各グループはN/M個のアンテナ素子を含む(この例では、NはMの倍数である)。
各グループはビームB
1,…,B
Mのうち一つを形成する。一つのビームは複数のアンテナ素子から放射される電波によって形成される。グループG
kの高周波移相器群PSG
kによってグループG
kが作るビームの向きが制御される。
【0040】
時刻t1を含む区分時間にてi番目のビームB
iがk[i,t1]番目のグループG
k[i,t1]によって形成される場合、制御部15の制御の下、データ送信部11は送信データD
iをグループG
k[i,t1]に与える。DAC101
k[i,t1]は、グループG
k[i,t1]に入力された送信データD
iをアナログ信号に変換する。混合器102
k[i,t1]は、DAC101
k[i,t1]の出力に中間周波数ローカル発振器103
k[i,t1]が生成する中間周波数ローカル信号を乗算する。分配器104
k[i,t1]は、混合器102
k[i,t1]の出力をN/M分配する。分配器106
k[i,t1]は、高周波ローカル発振器105
k[i,t1]が生成する高周波ローカル信号をN/M分配する。混合器107
k[i,t1],hは、分配器104
k[i,t1]のh番目の出力に分配器106
k[i,t1]のh番目の出力を乗算する。ただし、hは1≦h≦N/Mを満たす整数である。混合器107
k[i,t1],hの出力は、高周波移相器群PSG
k[i,t1]に含まれる移相器108
k[i,t1],hによって移相される。移相器108
k[i,t1],hの移相量は、制御部15の制御の下で位相設定部13によって設定される。移相器108
k[i,t1],hの出力は増幅器109
k[i,t1],hによって増幅され、増幅器109
k[i,t1],hの出力はアンテナ素子A
k[i,t1],hに送られる。
【0041】
そして、時刻t2を含む区分時間にてi番目のビームB
iがk[i,t2]番目のグループG
k[i,t2]によって形成される場合、制御部15の制御の下、データ送信部11は送信データD
iをグループG
k[i,t2]に与える。さらに、移相器108
k[i,t2],hの移相量は、制御部15の制御の下で位相設定部13によって設定される。つまり、この例では、制御部15が上述した全単射写像f<t>に基づくグループの切り換えを行う。このような構成によると、受信側の移動局装置あるいは受信側の基地局装置における受信レベルや受信速度を変えることなく、送信側のビームを切り換えることができる。なお、必要に応じて、全単射写像g
w(w∈{1,…,W}、W≦M!-1)、全単射写像g
y(y∈{1,…,Y}、Y≦M!-1)、電磁界分布D
i,k ((i,k)∈{1,…,M}×{1,…,M})のデータはメモリ17に保存されており、制御部15が、上述した処理によって一つの全単射写像f<t>を選択し、さらに、選択された写像f<t>に基づくグループの切り換えを行う。
【0042】
なお、
図3に示す構成では、高周波移相器群が、高周波ローカル発振器とのミキシングによってアップコンバートされた信号の移相を調整するが、このような構成に限定されない。例えば、中間周波移相器群が、中間周波ローカル発振器とのミキシングによってアップコンバートされた信号の移相を調整してもよい。
【0043】
<補遺1>
本発明を別の観点からまとめると、下記のように表現することができる。
(1)
Mを2以上の予め定められた整数とし、iを1以上M以下の各整数を表わすとし、k[i,t]を1以上M以下の各整数を表わすとして、
M個のグループがそれぞれ1個以上のアンテナ素子を含み、
予め定められたM個のビームが上記M個のグループによって形成される
マルチビームアレーアンテナシステムにおいて、
或る時刻tにてi番目のビームB
iがk[i,t]番目のグループG
k[i,t]によって形成されている場合に、全単射写像f<t>:{1,…,M}→{1,…,M}をf<t>(i)=k[i,t]によって定義すると、
当該マルチビームアレーアンテナシステムの運用期間内に条件Cを満たす第1の時刻t1および当該第1の時刻t1と異なる第2の時刻t2が存在する
(条件C)『f<t1>≠f<t2>』
ことを特徴とするマルチビームアレーアンテナシステム。
(2)
上記(1)に記載のマルチビームアレーアンテナシステムにおいて、
上記全単射写像f<t1>とf<t2>は条件D1を満たすことを特徴とする
(条件D1)『グループG
f<t1>(i)とグループG
f<t2>(i)との間の距離をL
iとして、Σ
i=1ML
iが予め定められた値以上である』
マルチビームアレーアンテナシステム。
(3)
上記(1)に記載のマルチビームアレーアンテナシステムにおいて、
上記全単射写像f<t1>とf<t2>は条件D2を満たすことを特徴とする
(条件D2)『異なる二つのグループ間の距離の最大値をL
maxとし、グループG
f<t1>(i)とグループG
f<t2>(i)との間の距離をL
iとして、L
max∈{L
1,…,L
M}である』
マルチビームアレーアンテナシステム。
(4)
上記(1)に記載のマルチビームアレーアンテナシステムにおいて、
上記全単射写像f<t>が、マルチビームアレーアンテナシステムの周辺で電磁界強度が所定の値以下である範囲、または、当該範囲を含む最小の円または多角形、の移動平均に基づいて決定される
ことを特徴とするマルチビームアレーアンテナシステム。
【0044】
<補遺2>
明細書と特許請求の範囲では、用語「含む」とその語形変化は非排他的表現として使用されている。例えば、「XはAとBを含む」という文は、XがAとB以外のものを含むことを否定しない。ただし、当該用語またはその語形変化が否定辞と結合した場合はその限りではない。例えば、「XはAとBを含まない」という文は、XがAとB以外のものを含む可能性を認めている。
【0045】
上述の説明における「第○」との用語は、実施形態の構成を明確に説明するために使用した用語である。当該用語それ自体によって、つまり、構成要素の序列それ自体によって、本発明は限定されるものではない。また、当該用語の使用は、そのような限定を意図するものでもない。
【0046】
本明細書で説明した各態様/実施形態は、LTE(Long Term Evolution)、LTE-A(LTE-Advanced)、SUPER 3G、IMT-Advanced、4G、5G、FRA(Future Radio Access)、W-CDMA(登録商標)、GSM(登録商標)、CDMA2000、UMB(Ultra Mobile Broadband)、IEEE 802.11(Wi-Fi)、IEEE 802.16(WiMAX)、IEEE 802.20、UWB(Ultra-WideBand)、Bluetooth(登録商標)、その他の適切なシステムを利用するシステム及び/又はこれらに基づいて拡張された次世代システムに適用されてもよい。
【0047】
基地局は、1つまたは複数(例えば、3つ)の(セクタとも呼ばれる)セルを収容することができる。基地局が複数のセルを収容する場合、基地局のカバレッジエリア全体は複数のより小さいエリアに区分でき、各々のより小さいエリアは、基地局サブシステム(例えば、屋内用の小型基地局RRH:Remote Radio Head)によって通信サービスを提供することもできる。「セル」または「セクタ」という用語は、このカバレッジにおいて通信サービスを行う基地局および/または基地局サブシステムのカバレッジエリアの一部または全体を指す。さらに、「基地局」「eNB」、「セル」、および「セクタ」という用語は、本明細書では互換的に使用され得る。基地局は、固定局(fixed station)、NodeB、eNodeB(eNB)、アクセスポイント(access point)、フェムトセル、スモールセルなどの用語で呼ばれる場合もある。
【0048】
移動局は、当業者によって、加入者局、モバイルユニット、加入者ユニット、ワイヤレスユニット、リモートユニット、モバイルデバイス、ワイヤレスデバイス、ワイヤレス通信デバイス、リモートデバイス、モバイル加入者局、アクセス端末、モバイル端末、ワイヤレス端末、リモート端末、ハンドセット、ユーザエージェント、モバイルクライアント、クライアント、またはいくつかの他の適切な用語で呼ばれる場合もある。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、当業者にとって、本発明が本明細書中で説明された実施形態に限定されないことは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載によって定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施され得る。本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、特段の断りが無い限り、本発明に対して何ら制限的な意味を有しない。