【実施例1】
【0013】
<構成>以下、構成について説明する。
【0014】
住宅などの建物に対し、
図1に示すような配管構造を設置する。この配管構造は、建物1の基礎2を貫通して建物1の内外に開口するように埋設されたさや管3と、建物1の内部4からさや管3を通して建物1の外部5へ導かれる配管部6と、を備えたものとされる。
【0015】
ここで、建物1は、どのようなものであっても良いが、この場合には、工場で予め製造した建物ユニットを現場へ輸送して、現場で複数の建物ユニットを組み立てることにより、短期間で構築できるようにしたユニット建物としている。図では、建物ユニットの下部に床梁1aや床小梁1bなどが設置されている様子を示している。
【0016】
基礎2は、建物1を地面GLに支えるために、建物1の床下部分に設けられるものであり、鉄筋コンクリートによって構成されている。この場合、基礎2は、建物1の下部全面を覆うベタ基礎とされている。ベタ基礎は、底板を構成するスラブ部2aと、スラブ部2aから上方へ延びる立壁部2bとを有している。
【0017】
さや管3は、文字通り、配管部6のさやとなる管のことであり、さや管3は内部を通る配管部6よりも大径のものとされる。さや管3は、例えば、硬質ポリ塩化ビニルなどの硬質樹脂製で構成される。さや管3には、円形断面のものなどが使用される。
【0018】
そして、以上のような基本的または全体的な構成に対し、この実施例は、以下のような構成を備えている。
【0019】
(1)さや管3が、水平部11と水平部11から斜めに立ち上がる立ち上がり部12とを備えている。
そして、さや管3の建物1の外側の端部が地上で開口し(外側開口部3a)、さや管3の建物1の内側の端部が、建物1の外側の開口よりも高い位置で開口される(内側開口部3b)。
また、配管部6のさや管3に挿通される部分が、配管14または配線15の少なくとも一方を有している。
さや管3と配管部6との隙間が、少なくともさや管3における建物1の外側の端部の位置で(防水材17によって)防水されている。
【0020】
ここで、水平部11は、水平な管部材とされる。水平部11は、基礎2の立壁部2bの厚みとほぼ同じ長さを有して、全長に亘り均一肉厚で水平に延びるものとされる。また、立ち上がり部12は、斜めに延びる管部材などとされる。そして、さや管3は、水平部11と立ち上がり部12とを有することで、全体として屈曲形状のものとなっている。
【0021】
地上とは、地面GLよりも上の部分のことである。この場合、さや管3の建物1の外側の端部(外側開口部3a)は、地面GLよりも若干高い位置で開口されている。さや管3の建物1の内側の端部(内側開口部3b)は、さや管3の外側の端部より僅かでも高くなっていれば良いが、この場合には、さや管3の外側の端部よりも十分に高くなるように、基礎2の天端(立壁部2bの最上部)よりも高くまで延ばされている。
【0022】
さや管3に挿通される部分は、配管部6におけるさや管3内を通っている部分のことである。配管14は、例えば、排水管や給水管や給湯管やガス管や(エアコンなどの)冷媒管などとすることができる。配線15は、例えば、電源ケーブルやアース線や信号線や光ケーブルなどとすることができる。
【0023】
さや管3と配管部6との隙間には、例えば、建物1の外側からモルタルなどの遮蔽材などを防水材17として充填することができる。但し、モルタル以外の防水材17を用いることもできる。
【0024】
(2)
図2に示すように、配管部6は、配管14を複数有していても良い。
【0025】
ここで、配管部6を建物1の外部5の機器に接続する場合、例えば、外部5の機器が全館空調システムの室外機などであれば、複数の配管14は、供給側および排出側の冷媒管14a,14bなどとされる。この場合、複数の配管14は、バラの状態でさや管3へ直接通すようにしているが、まとめて軟質樹脂製の可撓管などに収容した状態でさや管3に通すようにしても良い。
【0026】
なお、外部5の機器は、全館空調システムの室外機以外に、例えば、ヒートポンプ式の電気温水器や、家庭用燃料電池コージェネレーションシステムなどとしても良い。また、複数の配管14は、冷媒管14a,14bに限るものではない。
【0027】
(3)配管部6は、配線15を複数有していても良い。
【0028】
ここで、配管部6を建物1の外部5の機器に接続する場合、例えば、外部5の機器が全館空調システムの室外機などであれば、複数の配線15は、電源ケーブル15aやアース線15bなどとされる。この場合、複数の配線15は、バラの状態でさや管3へ直接通すようにしているが、(配管14などと共に)まとめて軟質樹脂製の可撓管などに収容した状態でさや管3に通すようにしても良い。
【0029】
なお、上記したように、外部5の機器は、全館空調システムの室外機以外に、例えば、ヒートポンプ式の電気温水器や、家庭用燃料電池コージェネレーションシステムなどとしても良い。また、複数の配線15は、電源ケーブル15aやアース線15bに限るものではない。
【0030】
(4)
図1に示すように、さや管3と基礎2との間は、防水するのが好ましい。
【0031】
ここで、さや管3と基礎2との間の防水には、例えば、水膨張性の粘土シール材や、水膨張性の一液弾性シール材などのシール材21(第二の防水材)を用いることができる。このシール材21は、さや管3の外周に巻き付けるようにして使用するものである。このシール材21は、基礎2を構成するコンクリートの水分によって膨張し、基礎2と一体化される。
【0032】
(5)建物1の外側では、配管14または配線15の少なくとも一方に、防食テープ25を巻くようにしても良い。
【0033】
ここで、防食テープ25は、各配管14や各配線15ごとに単独で巻いても良いし、配管14と配線15とに分けて巻いても良いし、配管14と配線15とを一緒にまとめて巻いても良い。この場合には、一緒にまとめて巻いている。そして、さや管3の外側の端部の開口を覆うように防食テープ25を巻くようにすれば、気密性の確保や、虫の侵入防止などを行うことが可能になる。
【0034】
(6)建物1の内側では、配管14または配線15の少なくとも一方に、防食テープ26を巻くようにしても良い。
【0035】
ここで、防食テープ25は、各配管14や各配線15ごとに単独で巻いても良いし、配管14と配線15とに分けて巻いても良いし、配管14と配線15とを一緒にまとめて巻いても良い。この場合には、一緒にまとめて巻いている。そして、さや管3の内側の端部の開口を覆うように防食テープ25を巻くようにすれば、気密性の確保や、虫の侵入防止などを行うことが可能になる。
【0036】
(7)基礎2は、断熱材27を有していても良い。
【0037】
ここで、断熱材27には、所要の厚みを有する固形の断熱材27や、現場施工が可能な吹付け式の断熱材27などを使用することができる。この場合には、基礎2の立壁部2bの内面と、スラブ部2aの外周側の所要範囲の部分とに対して断熱材27を施工するようにしている。断熱材27は、さや管3が通るように設けられる。
【0038】
(8)さや管3は、支持部31によって支持しても良い。
【0039】
ここで、支持部31は、建物1の内部4にてさや管3(の立ち上がり部12など)を支持するものとなっている。支持部31は、さや管3を支持できれば、どのようなものでも良いが、この場合には、
図3に示すように、さや管3の外周に取付け可能な環状のバンド部材32と、このバンド部材32を基礎2の上部に支持する支持脚部33とを有するものとされている。支持脚部33はコンクリートピン34などで基礎2に固定される。
【0040】
このうち、バンド部材32は、
図3(a)に示すように、半円弧状をした2つのバンド片の一端部間をヒンジ部32aで開閉可能に連結し、他端部にそれぞれ支持脚部33に対する取付片32bを設けたものとされる。取付片32bには、支持脚部33に対する取付孔32cが、位置調整用に複数設けられている。
【0041】
支持脚部33は、
図3(b)に示すように、さや管3の支持に必要な所要の長さを有して上下方向へ延びる脚部33aと、脚部33aの下端部に設けられた足部33bとを有している。脚部33aの上端部には、バンド部材32の取付片32bに対する取付孔33cが、位置調整用に複数設けられている。足部33bには、
図3(c)に示すようなコンクリートピン34を用いて基礎2に固定するための取付孔33dが設けられている。
【0042】
(9)
図1に示すように、さや管3の建物1の内側の部分を、立ち上がり部12としても良い。
そして、立ち上がり部12は、エルボ管41に直管42を接続したものとしても良い。
【0043】
ここで、エルボ管41は、
図4(a)に示すように、一端部に水平部11の建物側の端部に対して挿入可能な差口部41aを有し、他端部に直管42を収容・接続可能な受口部41bを有すると共に、中間部に、90°よりも小さい角度(例えば、45°など)で屈曲された屈曲部41cを有する屈曲継手とされる。但し、図では、水平部11にエルボ管41を直接接続して立ち上がり部12を基礎2の位置から直ちに開始するようにしているが、水平部11とエルボ管41との間に直管状の継手や直管などを適宜介在させて立ち上がり部12をより建物1の奥側の位置から開始するようにしても良い。
【0044】
また、直管42は、
図4(b)に示すように、全長に亘って均一肉厚で所要長さに延びる短管部材などされる。直管42は、エルボ管41の受口部41bに接続されることで、斜め方向などに向けられる。
【0045】
そして、上記した支持部31は、斜めの直管42を下側から支持するものとされる。そのために、バンド部材32は、支持脚部33の上端部に対し、軸部材35によって、斜めの直管42の角度に合わせて傾動可能となるように軸支されている。
【0046】
なお、エルボ管41と直管42は、
図5の実施例に示すように、繰り返し継ぎ足しながら延長するようにしても良い(延長部43,44)。この場合、延長部43,44を二回設けることで、二番目の直管42を水平にして、水平とされた二番目の直管42を支持部31によって支持するようにしている。
【0047】
(10)以下、上記配管構造を施工する建物1の配管施工方法について説明する。
【0048】
この配管施工方法は、
建物1の基礎2を貫通するようにさや管3の水平部11を埋設する水平部埋設工程と、
水平部11に配管部6を挿通する配管挿通工程と、
水平部11における建物1の内側の端部に立ち上がり部12を接続する立ち上がり部設置工程と、
さや管3と配管部6との隙間を、少なくともさや管3における建物1の外側の端部の位置で防水する防水工程と、を行うものとなっている。
【0049】
水平部埋設工程は、基礎2の施工時に、
図6に示すように、鉄筋51の配筋が完了した時に、水平部11を鉄筋51に対して水平にセットすることで行う。水平部11は、鉄筋51に対し番線などの固定手段を用いて動かないように固定する。水平部11の外周には、予め水膨張性の粘土シール材や、水膨張性の一液弾性シール材などのシール材21を巻き付けておく。水平部11の両端部は塞いでおいても良い。
【0050】
配管挿通工程は、基礎2が固まった後で行うようにする。
【0051】
立ち上がり部設置工程は、
図7に示すような水平部11に立ち上がり部12を取付ける立ち上がり部取付工程と、立ち上がり部12を支持部31で支持する立ち上がり部支持工程とに分けて行われる。
【0052】
防水工程は、さや管3と配管部6との隙間に建物1の外側からモルタルなどの遮蔽材や防水材17を充填する防水材充填工程と、建物1の外側および内側で配管14または配線15の少なくとも一方に防食テープ25,26を巻く防食工程とに分けて行われる。
【0053】
また、上記以外に、基礎2に断熱材27を設置する断熱材設置工程なども行われる。
【0054】
上記した配管挿通工程や、立ち上がり部設置工程や、防水工程や、断熱材設置工程は、上記の順番で行うのが好ましいが、必ずしもこの順番でなくても良い。
【0055】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0056】
(作用効果1)基礎2のコンクリート層を貫通するさや管3に配管部6を通すことで、配管部6を容易に建物1の内外間を貫通するように設置することができる。
【0057】
また、さや管3に対して配管部6を通すことで、基礎2を壊すこと無く配管部6のメンテナンスが可能で、メンテナンスが容易にできる。
【0058】
この際、さや管3を、水平部11と立ち上がり部12とを有する屈曲形状のものとしているので、さや管3を比較的構造が簡単で安価なものとすることができる。
【0059】
そして、さや管3の建物1の外側の端部を地上で開口し、さや管3の建物1の内側の端部を地上に位置する外側の開口よりも高い位置に設けると共に、さや管3と配管部6との隙間が少なくともさや管3の外側の端部の位置で防水されていることによって、建物1の外部5から内部への浸水を確実に防止することができる。
【0060】
また、配管部6のさや管3に挿通される部分が、配管14または配線15の少なくとも一方を有していることによって、配管部6の種類に左右されることなく配管部6をさや管3に挿通することができ、しかも、高い防水性を確保した状態で挿通することができる。
【0061】
(作用効果2)配管部6は、配管14を複数有するものとしても良い。これにより、さや管3を通して建物1の内外間に複数の配管14を、防水性を確保した状態で貫通配置することができる。
【0062】
(作用効果3)配管部6は、配線15を複数有するものとしても良い。これにより、さや管3を通して建物1の内外間に複数の配線15を、防水性を確保した状態で貫通配置することができる。
【0063】
(作用効果4)さや管3と基礎2との間を防水するようにしても良い。これにより、さや管3と基礎2との間の防水性を確保することができる。
【0064】
(作用効果5)建物1の外側で、配管14または配線15の少なくとも一方に、防食テープ25を巻いても良い。これにより、建物1の外側における配管14または配線15の防食を行うことができる。
【0065】
(作用効果6)建物1の内側で、配管14または配線15の少なくとも一方に、防食テープ26を巻いても良い。これにより、建物1の内側における配管14または配線15の防食を行うことができる。
【0066】
(作用効果7)基礎2は、断熱材27を有していても良い。これにより、基礎2部分の断熱性を確保することができる。また、断熱性を有する基礎2に対して建物1の内外を貫通するように配管部6を設置することができる。
【0067】
(作用効果8)さや管3を支持部31によって支持するようにしても良い。これにより、さや管3を所要の支持強度を有して確実に支持することができる。
【0068】
(作用効果9)さや管3の建物1の内側の部分を、立ち上がり部12としても良い。立ち上がり部12を、建物1の内側の端部にすることで、立ち上がり部12を、基礎2に埋設しないものとすることができ、さや管3を屈曲形状にしても基礎2に対するさや管3の設置を容易化することができるようになる。
【0069】
また、さや管3の建物1の内側の立ち上がり部12を、エルボ管41に直管42を接続したものとしても良い。これにより、さや管3を単純な形状の小部品を用いて構成することができ、また、水平部11のみを基礎2(の立壁部2b)に埋設して、後から水平部11に対して立ち上がり部12を取付ければ良い構造にすることができるので、エルボ管41と直管42とを用いて基礎2の施工後に現場で簡単に立ち上がり部12を作成することができる。
【0070】
(作用効果10)上記配管構造と同様の作用効果を得ることができると共に、水平部埋設工程、配管挿通工程、立ち上がり部設置工程、防水工程を行うことで、配管構造を施工性の良いものとすることができる。特に、水平部埋設工程では、水平部11を基礎2における地面GLよりも高い位置に対して水平に埋設するだけで良いので、施工が容易である。また、立ち上がり部設置工程についても、基礎2の施工後に建物1の内側の位置で行うことができるので、施工の負担を少なくできる。
【0071】
以上、この発明の実施の形態を図面により詳述してきたが、実施の形態はこの発明の例示にしか過ぎないものである。よって、この発明は実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施の形態に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、実施の形態に複数の実施例や変形例がこの発明のものとして開示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。