特許第6875159号(P6875159)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875159
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】ブラシレスモータの位相調整装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/16 20160101AFI20210510BHJP
   G01D 5/244 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   H02P6/16
   G01D5/244 B
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-52050(P2017-52050)
(22)【出願日】2017年3月17日
(65)【公開番号】特開2018-157672(P2018-157672A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116666
【氏名又は名称】愛知電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 あゆか
(72)【発明者】
【氏名】片平 洋一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 嘉章
【審査官】 佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−012955(JP,A)
【文献】 特開2006−034090(JP,A)
【文献】 特開2015−035852(JP,A)
【文献】 実開平03−059522(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/00−6/34
G01D 5/244
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータの磁極位置を検出すべく、U相ステータ巻線とV相ステータ巻線の間、V相ステータ巻線とW相ステータ巻線の間、W相ステータ巻線とU相ステータ巻線の間に取り付けたセンサと、前記センサからの出力信号に基づきロータ磁極位置を検出して印加する電圧を制御する制御装置を備えた検査対象のブラシレスモータの前記ロータの磁極位置と前記ブラシレスモータの誘起電圧のゼロクロス点の位相ずれを調整する製造ラインに設置された位相調整装置において、前記ブラシレスモータを回転させる試験用モータ、前記ブラシレスモータと前記試験用モータを接続する接続部、前記試験用モータを任意の回転速度で駆動させる指令を出力する指令部、前記センサの出力信号を受信する信号受信部、前記ブラシレスモータの誘起電圧を測定する電圧測定部、前記信号受信部で受信した前記センサの出力信号を基に、前記U相ステータ巻線の前記センサの出力電圧がゼロ、前記V相ステータ巻線とW相ステータ巻線の間の前記センサの出力電圧がマイナス、前記W相ステータ巻線とU相ステータ巻線の間の前記センサの出力電圧がプラスの時をセンサのゼロ位置とし、前記電圧測定部で測定した前記ブラシレスモータの誘起電圧のゼロクロス点を基準点とした前記センサのゼロ位置におけるタイマーカウント値を、当該センサのゼロ位置と前記ブラシレスモータの誘起電圧のゼロクロス点間で生じる位相のずれとするか、或いは、前記電圧測定部をコンパレータで構成し、前記ステータ巻線で発生する誘起電圧がプラス側からマイナス側に変化する直前で前記コンパレータの出力信号が切り替わるタイミングを基準点とし、この基準点から前記誘起電圧のゼロクロス点の後で前記コンパレータの出力信号が切り替わるタイミングのタイマーカウント値を半分にしたものを前記ブラシレスモータの誘起電圧のゼロクロス点とし、当該ブラシレスモータの誘起電圧のゼロクロス点を基準点とした前記センサのゼロ位置におけるタイマーカウント値を、当該センサのゼロ位置と前記ブラシレスモータの誘起電圧のゼロクロス点間で生じる位相のずれとして、当該位相のずれを補正する補正値を演算する演算部、前記補正値を前記ブラシレスモータの制御装置の記憶部に書き込む書込み部を備えたことを特徴とするブラシレスモータの位相調整装置。
【請求項2】
ロータの磁極位置を検出するセンサと、前記センサからの出力信号に基づきロータ磁極位置を検出して印加する電圧を制御する制御装置を備えた検査対象のブラシレスモータの前記ロータの磁極位置と前記ブラシレスモータの誘起電圧のゼロクロス点の位相ずれを調整する製造ラインに設置された位相調整装置において、前記ブラシレスモータを回転させる試験用モータ、前記ブラシレスモータと前記試験用モータを接続する接続部、前記試験用モータを任意の回転速度で駆動させる指令を出力する指令部、前記センサの出力信号を受信する信号受信部、前記ブラシレスモータの誘起電圧を測定する電圧測定部、前記信号受信部で受信した前記センサの出力信号を分割して、各波形パターンの位相が何度から何度に相当するかをあらかじめ決定した角度取得ロジックを使用して前記センサから位置信号が0°を含む場合の前記波形パターンに相当したときをセンサのゼロ位置とし、前記電圧測定部をコンパレータで構成し、前記ステータ巻線で発生する誘起電圧がプラス側からマイナス側に変化する直前で前記コンパレータの出力信号が切り替わるタイミングを基準点とし、この基準点から前記誘起電圧のゼロクロス点の後で前記コンパレータの出力信号が切り替わるタイミングのタイマーカウント値を半分にしたものを前記ブラシレスモータの誘起電圧のゼロクロス点とし、当該ブラシレスモータの誘起電圧のゼロクロス点を基準点とした前記センサのゼロ位置におけるタイマーカウント値を、当該センサのゼロ位置と前記ブラシレスモータの誘起電圧のゼロクロス点間で生じる位相のずれとして、当該位相のずれを補正する補正値を演算する演算部、前記補正値を前記ブラシレスモータの制御装置の記憶部に書き込む書込み部を備えたことを特徴とするブラシレスモータの位相調整装置。
【請求項3】
前記検査対象のブラシレスモータの回転軸と前記試験用モータの回転軸を結合する接続部は、該ブラシレスモータの回転軸を挿入する挿入孔に、前記回転軸のキーが嵌合するキー溝を設けるとともに、前記挿入孔に前記キー溝を複数設けることで、前記ブラシレスモータのキーの位置がどの向きであっても入れやすい構造であることを特徴とする請求項1又は請求項2の何れかに記載のブラシレスモータの位相調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製造ラインにおいて、検査対象のブラシレスモータの回転子(以下、ロータ)の磁極位置を検出するセンサの出力信号がゼロとなる磁極位置(以下、センサのゼロ位置)と前記ブラシレスモータの誘起電圧のゼロクロス点(以下、ブラシレスモータのゼロ位置)の間の位置ずれを調整するブラシレスモータの位相調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ブラシレスモータでは磁極を検出するセンサを使用することでロータの磁極位置を検出し、検出した磁極位置信号に合わせてブラシレスモータに印加する電圧の制御を行い、駆動している。
【0003】
しかし、製造過程でロータの磁極位置を検出するセンサの感度やブラシレスモータのロータの着磁はバラつき、ブラシレスモータへのセンサの取付け誤差により、前記センサのゼロ位置とブラシレスモータのゼロ位置の間で大きな位相のずれが発生することがある。このため、ブラシレスモータの駆動時に通電タイミングのずれによる異音や振動等が発生している。
【0004】
そこで、問題を解決する方法として下記特許文献1の方法が提示されている。下記特許文献1は、ブラシレスモータに設けられたロータの磁極位置検出手段からのロータ位置検出誤差を、ブラシレスモータの誘起電圧を測定する誘起電圧測定手段で測定した誘起電圧の波形データを基に補正して運転制御を行う制御装置を備えたブラシレスモータである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−165480
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1記載のブラシレスモータでは、前記ブラシレスモータの駆動時に通電タイミングのずれにより発生する異音や振動等を防ぐために、前記ブラシレスモータのロータ位置を検出する位置検出手段、前記ブラシレスモータのステータ巻線に生じる誘起電圧を測定する誘起電圧検出手段、前記位置検出手段が出力する位置信号の反転タイミングと前記誘起電圧検出手段で測定した誘起電圧のゼロクロス点の位相ずれを基に前記ブラシレスモータに印加する電圧を補正する手段を備えているため、ブラシレスモータのロータの磁極位置を検出する位置検出手段により検出した磁極位置信号を基に印加する電圧を制御する従来のブラシレスモータよりも製造コストが高くなる。
【0007】
以上の事情に鑑みて、本発明は、ロータ磁極位置を検出する位置検出手段を備えるブラシレスモータに、前記ブラシレスモータ自体にステータ巻線に生ずる誘起電圧を測定する誘起電圧検出手段、前記位置検出手段で検出した磁極位置信号を前記誘起電圧検出手段で測定した誘起電圧の波形データを基に補正して前記ブラシレスモータの運転を制御する手段を備えなくとも、ロータの磁極位置を検出する位置検出手段からの位置検出誤差を補正できる手段を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、ロータの磁極位置を検出すべく、U相ステータ巻線とV相ステータ巻線の間、V相ステータ巻線とW相ステータ巻線の間、W相ステータ巻線とU相ステータ巻線の間に取り付けたセンサと、前記センサからの出力信号に基づきロータ磁極位置を検出して印加する電圧を制御する制御装置を備えた検査対象のブラシレスモータの前記ロータの磁極位置と前記ブラシレスモータの誘起電圧のゼロクロス点の位相ずれを調整する製造ラインに設置された位相調整装置において、前記ブラシレスモータを回転させる試験用モータ、前記ブラシレスモータと前記試験用モータを接続する接続部、前記試験用モータを任意の回転速度で駆動させる指令を出力する指令部、前記センサの出力信号を受信する信号受信部、前記ブラシレスモータの誘起電圧を測定する電圧測定部、前記信号受信部で受信した前記センサの出力信号を基に、前記U相ステータ巻線の前記センサの出力電圧がゼロ、前記V相ステータ巻線とW相ステータ巻線の間の前記センサの出力電圧がマイナス、前記W相ステータ巻線とU相ステータ巻線の間の前記センサの出力電圧がプラスの時をセンサのゼロ位置とし、前記電圧測定部で測定した前記ブラシレスモータの誘起電圧のゼロクロス点を基準点とした前記センサのゼロ位置におけるタイマーカウント値を、当該センサのゼロ位置と前記ブラシレスモータの誘起電圧のゼロクロス点間で生じる位相のずれとするか、或いは、前記電圧測定部をコンパレータで構成し、前記ステータ巻線で発生する誘起電圧がプラス側からマイナス側に変化する直前で前記コンパレータの出力信号が切り替わるタイミングを基準点とし、この基準点から前記誘起電圧のゼロクロス点の後で前記コンパレータの出力信号が切り替わるタイミングのタイマーカウント値を半分にしたものを前記ブラシレスモータの誘起電圧のゼロクロス点とし、当該ブラシレスモータの誘起電圧のゼロクロス点を基準点とした前記センサのゼロ位置におけるタイマーカウント値を、当該センサのゼロ位置と前記ブラシレスモータの誘起電圧のゼロクロス点間で生じる位相のずれとして、当該位相のずれを補正する補正値を演算する演算部、前記補正値を前記ブラシレスモータの制御装置の記憶部に書き込む書込み部を備えて構成したことに特徴を有する。
【0009】
請求項2記載の発明は、ロータの磁極位置を検出するセンサと、前記センサからの出力信号に基づきロータ磁極位置を検出して印加する電圧を制御する制御装置を備えた検査対象のブラシレスモータの前記ロータの磁極位置と前記ブラシレスモータの誘起電圧のゼロクロス点の位相ずれを調整する製造ラインに設置された位相調整装置において、前記ブラシレスモータを回転させる試験用モータ、前記ブラシレスモータと前記試験用モータを接続する接続部、前記試験用モータを任意の回転速度で駆動させる指令を出力する指令部、前記センサの出力信号を受信する信号受信部、前記ブラシレスモータの誘起電圧を測定する電圧測定部、前記信号受信部で受信した前記センサの出力信号を分割して、各波形パターンの位相が何度から何度に相当するかをあらかじめ決定した角度取得ロジックを使用して前記センサから位置信号が0°を含む場合の前記波形パターンに相当したときを前記センサのゼロ位置とし、前記電圧測定部をコンパレータで構成し、前記ステータ巻線で発生する誘起電圧がプラス側からマイナス側に変化する直前で前記コンパレータの出力信号が切り替わるタイミングを基準点とし、この基準点から前記誘起電圧のゼロクロス点の後で前記コンパレータの出力信号が切り替わるタイミングのタイマーカウント値を半分にしたものを前記ブラシレスモータの誘起電圧のゼロクロス点とし、当該ブラシレスモータの誘起電圧のゼロクロス点を基準点とした前記センサのゼロ位置におけるタイマーカウント値を、当該センサのゼロ位置と前記ブラシレスモータの誘起電圧のゼロクロス点間で生じる位相のずれとして、当該位相のずれを補正する補正値を演算する演算部、前記補正値を前記ブラシレスモータの制御装置の記憶部に書き込む書込み部を備えて構成したことに特徴を有する。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2の何れかに記載の位相調整装置において、検査対象のブラシレスモータの回転軸と試験用モータの回転軸を結合する接続部は、前記ブラシレスモータの回転軸を挿入する挿入孔に、前記回転軸のキーが嵌合するキー溝を設けるとともに、前記挿入孔に前記キー溝を複数設けることで、前記ブラシレスモータのキーの位置がどの向きであっても入れやすい構造であることをあることに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、製造ラインに設置された位相調整装置によって、検査対象のブラシレスモータの誘起電圧のゼロクロス点と前記ブラシレスモータのロータ位置を検出するセンサのゼロ位置の間で生じる位相のずれを補正する補正値を、前記ブラシレスモータを駆動させる制御装置の記憶部に書き込むことで、前記センサにおけるロータのゼロ位置の検出誤差を補正した制御ができるようになるため、前記ブラシレスモータの誘起電圧のゼロクロス点と前記センサのゼロ位置の位相ずれが原因となる異音や振動の発生を防ぐことができる。
【0012】
また、前記制御装置に補正値を書き込む不揮発性メモリ等の記憶部が無い場合は別途記憶部の追加が必要になるが、前記ブラシレスモータ自体に前記ブラシレスモータの誘起電圧を測定する測定部、前記測定部のデータから前記ブラシレスモータのゼロ位置とセンサのゼロ位置のズレを補正する補正値を演算する演算部を備える必要が無いので、上記特許文献1記載の誘起電圧を測定する誘起電圧検出手段で測定した誘起電圧の波形データに基づいて印加電圧を補正するブラシレスモータよりも製造コストを安くすることができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、製造ラインに設置された位相調整装置おいて、演算部では前記信号受信部で受信した前記センサの出力信号を前記ブラシレスモータの制御装置と同じ角度取得ロジックにより判定した前記ブラシレスモータのセンサのゼロ位置と前記電圧測定部で測定した前記ブラシレスモータの誘起電圧のゼロクロス点を前記演算部のマイコンで使うタイマーカウント値に変換する。そして、変換したそれぞれのタイマーカウント値から位相のずれ(角度)を演算によって求めて補正値とする。その後、前記補正値を前記制御措置の記憶部に書き込む。書き込まれた補正値は角度であるので、前記制御装置では補正値を変換することなく、そのまま使用することができる。このため、補正値を変換するためのプログラムを作成する必要をなくすことができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は請求項2の何れかに記載の位相調整装置の接続部において、検査対象のブラシレスモータの回転軸をネジ締めすることなく接続部の挿入孔に前記ブラシレスモータの回転軸のキー溝に取付けられたキーを挿入することができ、回転軸の挿入側においてキーよりも広くなるようにテーパ加工されたキー溝を複数設ける。この複数のキー溝により、前記回転軸のキーがどの方向を向いていても、前記回転軸を前記接続部に差し込むだけで、回転軸のキーと接続部のキー溝の位置合わせを行わずに結合できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例1及び実施例2に係るブラシレスモータの位相調整装置の構成図である。
図2】本発明の実施例1及び実施例2に係るブラシレスモータの位相調整装置の試験用モータでブラシレスモータを回転させた際の誘起電圧の波形である。
図3】本発明の実施例1及び実施例2に係る位相調整装置の接合部の正面図と断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態1について図1を用いて説明する。図1は本発明に係るブラシレスモータの位相調整装置の構成図である。図1において、Aは位相調整装置であり、Bは検査対象のブラシレスモータ、1はブラシレスモータBを回転させる試験用モータ(例えば、ステッピングモータ)、2は位相調整装置Aを制御する位相調整部である。
【0017】
3は前記ブラシレスモータBの駆動を制御する制御装置、4はブラシレスモータBのロータ、5はロータ4の磁極位置を検出するためのホールICから構成されるセンサである。
【0018】
6は試験用モータ1へ回転速度を指令する指令部、7はセンサ5からのロータ4の磁極位置信号を受信する信号受信部、8は前記ブラシレスモータBの誘起電圧を測定する電圧測定部、9は信号受信部7で受信した前記磁極位置信号を基にしたロータ4のゼロ位置と電圧測定部8で測定した前記誘起電圧のゼロクロス点の間で生じる位相のずれおよび前記位相のずれを補正する補正値を演算する演算部、10は前記補正値を制御装置3へ書き込む書込み部である。
【0019】
11はブラシレスモータBの位相調整の開始を位相調整部2へ指示する押しボタン、12はブラシレスモータBの位相調整の良否判断結果及び調整作業の進展を製造ラインの作業員に知らせる警告灯である。
【0020】
製造ラインで位相調整装置Aに検査対象のブラシレスモータBをセットした後、ライン作業員が押しボタン11を押すことでブラシレスモータBの位相調整が開始される。位相調整が始まると指令部6からの指令により試験用モータ1が駆動し、試験用モータ1によってブラシレスモータBのロータ4は任意の回転速度で回転する。
【0021】
ロータ4の磁極位置を検出するセンサ5は、ブラシレスモータBのケースにおいて、ブラシレスモータBのU相ステータ巻線とV相ステータ巻線の間、V相ステータ巻線とW相ステータ巻線の間、W相ステータ巻線とU相ステータ巻線の間の3個所に取付けたホールICで構成されており、各ホールICの出力電圧を信号受信部7で測定する。
【0022】
これら3つのホールICの出力電圧を測定し、ブラシレスモータBのU相ステータ巻線のホールICの出力電圧がゼロ、V相ステータ巻線とW相ステータ巻線の間のホールICの出力電圧がマイナス、W相ステータ巻線とU相ステータ巻線の間のホールICの出力電圧がプラスの時をセンサ5のゼロ位置とする。
【0023】
ブラシレスモータBを試験用モータ1で回転させることでブラシレスモータBの各相のステータ巻線で誘起電圧が発生する。位相調整装置Aの電圧測定部8でU相のステータ巻線で発生する誘起電圧を測定する。演算部9で測定された誘起電圧(正弦波)の電圧がプラスの値から0Vになる点(ゼロクロス点)を求め、ブラシレスモータBのゼロ位置とする。
【0024】
演算部9では、演算部9のマイコンのタイマーカウンターを使用して、ブラシレスモータBのゼロ位置(誘起電圧のゼロクロス点)を基準点とし、センサ5のゼロ位置のタイマーカウント値を求める。このセンサ5のゼロ位置のタイマーカウンター値を誘起電圧1周期のタイマーカウント値で除し、さらに2π(360°)を乗ずることでセンサ5のゼロ位置とブラシレスモータBのゼロ位置の間の位相のずれ(角度)を演算する。この位相のずれを6周期に渡って取得し、位相のずれの平均値を求める。
【0025】
さらに、演算部9で前記位相のずれの平均値を基にセンサ5のゼロ位置の誤差を補正する補正値を演算して求める。
【0026】
書込み部10では、前記補正値を制御装置3の不揮発性メモリへ書き込んだ後、正常な書き込みができたかの確認を行う。
【0027】
センサ5のゼロ位置とブラシレスモータBのゼロ位置の間の位相ずれが大きい場合や書込み部10からの前記不揮発性メモリへの書き込みが失敗した場合には、警告灯12の異常を示すランプが点灯して調整作業の不良を製造ラインの作業員に知らせる。
【0028】
この説明で試験用モータ1をステッピングモータとした場合で説明したが、速度が制御できるサーボモータ等を使用しても良い。また、ゼロクロス点を求めるために今回はU相のステータ巻線で発生する誘起電圧を直接測定する場合で説明したが、電圧測定部8を2つのコンパレータで構成させてもよい。
【0029】
電圧測定部8を2つのコンパレータで構成した場合について説明をする。まず、ステータ巻線で発生する誘起電圧が+側から−側に変化するゼロクロス点の直前でコンパレータの出力信号が切り替わるタイミングを基準点とする。さらに、この基準点から誘起電圧のゼロクロス点の後でコンパレータの出力信号が切り替わるタイミングでタイマーカウント値を取得し、取得したタイマーカウント値を半分にしたものを誘起電圧のゼロクロス点のタイマーカウント値とする。
【0030】
つまり、位相調整装置Aの試験用モータ1でブラシレスモータBを一定の回転速度で回転させると、図2に示すように誘起電圧の波形Cは正弦波となる。このため、コンパレータの基準電圧を+側と−側で同じ値Dに設定すると、+側のコンパレータで出力信号が切り合わるタイミングと−側のコンパレータで出力信号が切り替わるタイミング間のタイマーカウント値の半分の値がゼロクロス点Eのタイマーカウント値となる。
【0031】
また、前記基準点から信号受信部7で判定したセンサ5のゼロ位置となるタイミングをセンサ5のゼロ位置のタイマーカウント値(以下、センサ5のタイマーカウント値という)とする。センサ5のタイマーカウント値を6周期分、前記ゼロクロス点Eのタイマーカウント値と誘起電圧1周期のタイマーカウント値を7周期分測定して、測定した各タイマーカウント値を演算部9に記憶する。
【0032】
さらに、+側のコンパレータで出力信号が切り替わるタイミングで演算用の誘起電圧1周期のタイマーカウント値を測定して、測定した誘起電圧1周期のタイマーカウント値を演算部9に記憶する。
【0033】
演算部9に記憶した最初の1周期のセンサ5のタイマーカウント値とゼロクロス点Eのタイマーカウント値の差と、演算用の誘起電圧1周期のタイマーカウント値とセンサ5のタイマーカウント値の差を比較し、演算用の誘起電圧1周期のタイマーカウント値とセンサ5のタイマーカウント値の差がセンサ5のタイマーカウント値と前記ゼロクロス点Eのタイマーカウント値の差より大きい場合には、最初6周期分の前記ゼロクロス点Eのタイマーカウント値とセンサ5のタイマーカウント値を使用して、各周期におけるゼロクロス点Eとセンサ5のタイマーカウント値の差を求める。
【0034】
前記各周期におけるゼロクロス点Eとセンサ5のタイマーカウント値の差を、前記演算用の誘起電圧1周期のタイマーカウント値の平均値で除した後、2π(360°)を乗ずることで各周期での位相のずれ(角度)を求める。その後、前記各周期の位相のずれから平均値を求めてセンサ5のゼロ位置の誤差を補正する補正値とする。
【0035】
センサ5のタイマーカウント値と前記ゼロクロス点Eのタイマーカウント値の差と、演算用の誘起電圧1周期のタイマーカウント値とセンサ5のタイマーカウント値の差を比較し、演算用の誘起電圧1周期のタイマーカウント値とセンサ5のタイマーカウント値の差がセンサ5のタイマーカウント値と前記ゼロクロス点Eのタイマーカウント値の差より小さい場合には、2〜7周期目のゼロクロス点Eのタイマーカウント値Eと前記演算用の誘起電圧1周期のタイマーカウント値を足した演算用のゼロクロス点Eのタイマーカウント値と1〜6周期目のセンサ5のタイマーカウント値の差を、前記演算用の誘起電圧1周期のタイマーカウント値の平均値で除した後、2π(360°)を乗じて各周期での位相のずれ(角度)を求める。前記各周期の位相のずれの平均値をセンサ5のゼロ位置の誤差を補正する補正値とする。
【0036】
書込み部10では、演算部9で求めた補正値を制御装置3の不揮発性メモリへ書き込んだ後、正常な書き込みができたかの確認を行う。
【0037】
以下、本発明の実施の形態2について図1を用いて説明する。図1は本発明に係るブラシレスモータの位相調整装置の構成図である。図1において、Aは位相調整装置であり、Bは検査対象のブラシレスモータB、1はブラシレスモータBを回転させる試験用モータ、2は位相調整装置Aを制御する位相調整部である。
【0038】
3はブラシレスモータBの駆動を制御する制御装置、4はブラシレスモータBのロータ、5はロータ4の磁極位置を検出するためのホールICから構成されるセンサである。
【0039】
6は試験用モータ1へ回転速度を指令する指令部、7はセンサ5からの位置信号を受信する信号受信部、8はブラシレスモータBの誘起電圧を測定する電圧測定部、9は信号受信部7で受信したセンサ5の位置信号からブラシレスモータBの制御装置3と同じ角度取得ロジックにより判定したロータ4のゼロ位置で取得したタイマーカウント値と電圧測定部8で測定したブラシレスモータBの誘起電圧のゼロクロス点で取得したタイマーカウント値から位相のずれおよび前記位相のずれを補正する補正値を演算する演算部、10は前記補正値を制御装置3へ書き込む書込み部である。
【0040】
11はブラシレスモータBの位相調整の開始を位相調整部2へ指示する押しボタン、12はブラシレスモータBの位相調整の良否判断結果及び調整作業の進展を製造ラインの作業員に知らせる警告灯である。
【0041】
本発明の実施の形態2における位相調整装置Aの演算部9でのセンサ5のゼロ位置の取得について説明する。ブラシレスモータBの制御装置3においては、ブラシレスモータBのケースに組み込まれたセンサ5を構成する3個のホールICから得られたロータ4の磁極位置信号を6分割して、各波形パターンの位相が何度から何度に相当するかをあらかじめ実測により決定した角度取得ロジックを使用して、ブラシレスモータBのケースに組み込まれたセンサ5からの位置信号が0°を含む場合の波形パターンに相当したときをセンサ5のゼロ位置とする位置信号を得ている。
【0042】
波形パターンの取得は、ホールICの立ち上がりと立下りの両エッジで割り込みがかかり処理を行う。0°近辺では割り込みがかかる角度は−30°と30°であり、その両方のタイミングでタイマーカウント値を取得し、その平均を0°のタイマーカウント値とする。
【0043】
演算部9においては、信号受信部7で受けたセンサ5からの磁極位置信号を前記角度取得ロジックにより演算し、センサ5のゼロ位置を判定する。
【0044】
センサ5のゼロ位置のタイマーカウント値とゼロクロス点Eのタイマーカウントの測定と位相のずれ(角度)を求める方法は、本発明の実施の形態1と同様の方法にて行う。
【0045】
電圧測定部8を構成する2つのコンパレータで誘起電圧のゼロクロス点の直前でコンパレータの出力信号が切り替わるタイミングを判定し、このタイミングを基準点とする。さらに、演算部9のマイコンのタイマーカウンターを使用して、この基準点から誘起電圧のゼロクロス点の後でコンパレータの出力信号が切り替わるタイミングでタイマーカウント値を取得し、取得したタイマーカウント値を半分にしたものを誘起電圧のゼロクロス点(図2で示すゼロクロス点E)のタイマーカウント値とする。
【0046】
また、前記基準点から信号受信部7で判定したセンサ5のゼロ位置となるタイミングをセンサ5のゼロ位置のタイマーカウント値(以下、センサ5のタイマーカウント値という)とする。センサ5のタイマーカウント値を6周期分、誘起電圧のゼロクロス点のタイマーカウント値(以下、ゼロクロス点Eのタイマーカウント値という)と誘起電圧1周期のタイマーカウント値を7周期分測定して、測定した各タイマーカウント値を演算部9に記憶する。
【0047】
さらに、+側のコンパレータで出力信号が切り替わるタイミングで演算用の誘起電圧1周期のタイマーカウント値を測定して、測定した誘起電圧1周期のタイマーカウント値を演算部9に記憶する。
【0048】
演算部9に記憶した最初の1周期のセンサ5のタイマーカウント値と前記ゼロクロス点Eのタイマーカウント値の差と、演算用の誘起電圧1周期のタイマーカウント値とセンサ5のタイマーカウント値の差を比較し、演算用の誘起電圧1周期のタイマーカウント値とセンサ5のタイマーカウント値の差がセンサ5のタイマーカウント値と前記ゼロクロス点Eのタイマーカウント値の差より大きい場合には、最初6周期分の前記ゼロクロス点Eのタイマーカウント値とセンサ5のタイマーカウント値を使用して、各周期におけるゼロクロス点Eとセンサ5のタイマーカウント値の差を求める。
【0049】
各周期におけるゼロクロス点Eとセンサ5のタイマーカウント値の差を、前記演算用の誘起電圧1周期のタイマーカウント値の平均値で除した後、2π(360°)を乗ずることで各周期での位相のずれ(角度)を求める。その後、前記各周期の位相のずれの平均値をセンサ5のゼロ位置の誤差を補正する補正値とする。
【0050】
また、センサ5のタイマーカウント値と前記ゼロクロス点Eのタイマーカウント値の差と、演算用の誘起電圧1周期のタイマーカウント値とセンサ5のタイマーカウント値の差を比較し、演算用の誘起電圧1周期のタイマーカウント値とセンサ5のタイマーカウント値の差がセンサ5のタイマーカウント値と前記ゼロクロス点Eのタイマーカウント値の差より小さい場合には、2〜7周期目のゼロクロス点Eのタイマーカウント値Eと前記演算用の誘起電圧1周期のタイマーカウント値を足した演算用のゼロクロス点Eのタイマーカウント値と1〜6周期目のセンサ5のタイマーカウント値の差を、前記演算用の誘起電圧1周期のタイマーカウント値の平均値で除した後、2π(360°)を乗じて各周期での位相のずれ(角度)を求める。前記各周期の位相のずれの平均値をセンサ5のゼロ位置の誤差を補正する補正値とする。
【0051】
その後、実施形態1と同様に、書込み部10によって前記補正値を制御装置3の不揮発性メモリへ書き込んだ後、調整作業の良否の確認を行う。
【0052】
以下、本発明の実施の形態1及び2における位相調整装置Aの接続部について、図3を用いて説明する。Fは試験用モータ1に取付けられた接続部、13はブラシレスモータBの回転軸、14は回転軸13に取付けられたキー、15は回転軸3を挿入する当該接続部Fに設けられた挿入孔、16はキー14が嵌合するキー溝である。
【0053】
図3(a)に示すように、接続部Fには、キー14が1つであるのに対し、複数のキー溝16が設けられている。さらに、キー溝16は、回転軸13を挿入する側のキー溝16の溝巾がキー14より広くなるようにキー溝16の途中からテーパ加工されている。
【0054】
ブラシレスモータBの回転軸13を接続部Fに差し込む動作を行うだけで、隣り合う複数のキー溝16のどれかのテーパ加工部17に滑り込んで、キー14とキー溝16の位置合わせが行われる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、ブラシレスモータの製造ラインで、ブラシレスモータの位相調整を行うのに利用される。
【符号の説明】
【0056】
1 試験用モータ
2 位相調整部
3 ブラシレスモータBの制御装置
4 ブラシレスモータBのロータ
5 センサ
6 位相調整装置の指令部
7 信号受信部
8 電圧測定部
9 演算部
10 書込み部
11 押しボタン
12 警告灯
13 ブラシレスモータの回転軸
14 キー
15 挿入孔
16 接続部Fのキー溝
17 キー溝のテーパ加工部
A 位相調整装置
B 検査対象のブラシレスモータ
C 誘起電圧の波形
D 誘起電圧の基準電圧
E 誘起電圧のゼロクロス点
F 試験用モータ1に取付けられた接続部
図1
図2
図3