特許第6875162号(P6875162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6875162-回転機械 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875162
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】回転機械
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/26 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   F01D25/26 B
   F01D25/26 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-56268(P2017-56268)
(22)【出願日】2017年3月22日
(65)【公開番号】特開2018-159301(P2018-159301A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2020年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 久訓
(72)【発明者】
【氏名】近藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 雄久
【審査官】 中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−183650(JP,A)
【文献】 特開2002−115502(JP,A)
【文献】 特開2011−220332(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0169047(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/26
F01D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動翼が固定されて水平方向に延在して回転可能に配置されたロータと、前記ロータの動翼の周りを囲む内側ケーシングと、前記内側ケーシングの周りを囲む外側ケーシングと、を有する回転機械において、
前記ロータの回転軸を通過する水平面よりも上方の位置で前記外側ケーシング側において上方に向けて形成された支持面を有する支持台と、
前記内側ケーシング側に設けられて前記支持台の前記支持面に載置された形態で前記内側ケーシングを前記外側ケーシングに支持させる支持サポートと、
を備え
前記ロータの延在方向の一方側にて前記外側ケーシングに対して前記内側ケーシングを前記ロータが延在する軸方向への移動を規制する軸方向規制部と、前記ロータの延在方向の他方側にて前記外側ケーシングに対して前記内側ケーシングを前記ロータが回転する周方向への移動を規制する周方向規制部と、が設けられており、
前記支持台および当該支持台に載置される支持サポートが、前記ロータの延在方向の一方側と他方側にそれぞれ配置され、前記ロータの延在方向の他方側の前記支持台の前記支持面が前記水平面に対して前記軸方向に向けて傾斜して形成されている回転機械。
【請求項2】
前記支持台は、上下で半分に分割形成された前記外側ケーシングの下半部に設けられており、前記支持サポートは、上下で半分に分割形成された前記内側ケーシングの下半部に設けられている請求項1に記載の回転機械。
【請求項3】
前記支持台は、前記外側ケーシングに対して別部材で形成されており、前記支持サポートは、前記内側ケーシングに対して別部材で形成されている請求項1または2に記載の回転機械。
【請求項4】
前記外側ケーシングは、上下で半分に分割形成された上半部および下半部において外側に延在する各フランジを介して分割された上下が接合されており、前記支持台の前記支持面は、前記水平面よりも上方の位置であって前記外側ケーシングの上半部のフランジの上端以下の位置までの範囲に設置されている請求項1〜3のいずれか1つに記載の回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平方向に延在して回転可能に配置されたロータと、ロータを囲む内側ケーシングと、内側ケーシングを囲む外側ケーシングとを有する回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、蒸気タービンのダイアフラム下半部の外周部にダイアフラム支持バーを固定し、このダイアフラム支持バーを下側シェルにおける上側シェルと接合する分割線上の水平縁部に設置することで、ダイアフラム下半部をシェルに支持する構造について示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−115502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蒸気タービンにおいては、動翼が固定されたロータと、ロータの動翼を囲むように設けられて静翼が固定された内側ケーシング(内車ともいう)と、内側ケーシングの外側を囲むように設けられて内側ケーシングを支持する外側ケーシング(外車ともいう)とを有している。ロータは、両端側に設けられた軸受により回転可能に設けられて当該軸受がコンクリート製のタービンフロアに支持されている。外側ケーシングは、上半部と下半部とに分割されて下半部がロータとは別にタービンフロアに支持されている。内側ケーシングは、上半部と下半部とに分割されて下半部が外側ケーシングの下半部に載置されて支持されている。
【0005】
蒸気タービンの起動にあっては、内側ケーリングの内部に高温高圧の蒸気が供給され、静翼と動翼とをロータが延在する軸方向に通過することで動翼を介してロータが回転する。
【0006】
ここで、蒸気タービンの起動開始時にあっては、内側ケーリングの内部に高温高圧の蒸気が供給され内側ケーシングの温度が外側ケーシングよりも先に上昇する場合には、外側ケーシングとの熱伸び差により内側ケーシングが外側ケーシングと相対的に上下方向に移動することになる。
【0007】
蒸気タービンなどロータを水平方向に延在して配置する回転機械においては、上述したように、内側ケーシングが外側ケーシングと相対的に上下方向に移動すると、ロータの動翼先端部と内側ケーシングの内壁面とのクリアランスが変化する。そして、クリアランスが狭くなる側では、動翼先端部と内側ケーシングとが接触するおそれがある。一方、クリアランスが広くなる側では、蒸気が動翼先端側で漏れてタービン効率が低下するおそれがある。
【0008】
本発明の課題は、特に、内側ケーシングの下半部において内側ケーシングの内壁面と動翼先端部との下部クリアランスが狭くなり易い場合に顕著である。このような場合において、下部クリアランスを起動開始時に合わせて広くしてしまうと、起動後の定格運転において内側ケーシングと外側ケーシングとの温度差が小さくなったときに、内側ケーシングと外側ケーシングとの上下の相対位置がもとに戻って下部クリアランスが広すぎてしまい、蒸気が動翼先端側で漏れてタービン効率が低下する問題が生じてしまう。
【0009】
本発明は上述した課題を解決するものであり、起動開始時において内側ケーシングと動翼とのクリアランスを適した状態で確保することのできる回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するために、本発明の一態様に係る回転機械は、動翼が固定されて水平方向に延在して回転可能に配置されたロータと、前記ロータの動翼の周りを囲む内側ケーシングと、前記内側ケーシングの周りを囲む外側ケーシングと、を有する回転機械において、前記ロータの回転軸を通過する水平面よりも上方の位置で前記外側ケーシング側において上方に向けて形成された支持面を有する支持台と、前記内側ケーシング側に設けられて前記支持台の前記支持面に載置された形態で前記内側ケーシングを前記外側ケーシングに支持させる支持サポートと、を備える。
【0011】
また、本発明の一態様に係る回転機械では、前記支持台は、上下で半分に分割形成された前記外側ケーシングの下半部に設けられており、前記支持サポートは、上下で半分に分割形成された前記内側ケーシングの下半部に設けられていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の一態様に係る回転機械では、前記支持台は、前記外側ケーシングに対して別部材で形成されており、前記支持サポートは、前記内側ケーシングに対して別部材で形成されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の一態様に係る回転機械では、前記外側ケーシングは、上下で半分に分割形成された上半部および下半部において外側に延在する各フランジを介して分割された上下が接合されており、前記支持台の前記支持面は、前記水平面よりも上方の位置であって前記外側ケーシングの上半部のフランジの上端以下の位置までの範囲に設置されていることが好ましい。
【0014】
また、本発明の一態様に係る回転機械では、前記ロータの延在方向の一方側にて前記外側ケーシングに対して前記内側ケーシングを前記ロータが延在する軸方向への移動を規制する軸方向規制部と、前記ロータの延在方向の他方側にて前記外側ケーシングに対して前記内側ケーシングを前記ロータが回転する周方向への移動を規制する周方向規制部と、が設けられており、前記支持台および当該支持台に載置される支持サポートが、前記ロータの延在方向の一方側と他方側にそれぞれ配置され、前記ロータの延在方向の他方側の前記支持台の前記支持面が前記水平面に対して前記軸方向に向けて傾斜して形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、起動開始時に内側ケーシングと外側ケーシングとの熱伸び差により支持サポートが鉛直方向に熱伸びすると、支持サポートは、支持台の支持面を基点として鉛直方向の下方に熱伸びすることから、内側ケーシングは、外側ケーシングに対して相対的に鉛直方向の下方に移動する。一方、支持台の支持面は、水平面であって、ロータの回転軸よりも鉛直方向の上方の位置にあることから、内側ケーシングは、水平面よりも鉛直方向の上方の位置で支持され、このため水平面よりも鉛直方向の上方の位置で支持されている分の移動代が大きく、外側ケーシングに対して相対的に鉛直方向の下方に移動する移動量が少なく抑制される。このため、内側ケーシングの鉛直方向の下方においてロータの動翼との隙間である下部クリアランスが大きく変化する事態を抑制することができる。これとともに、内側ケーシングの鉛直方向の上方においてロータの動翼との隙間である上部クリアランスも大きく変化する事態を抑制することができる。この結果、起動開始時において内側ケーシングと動翼とのクリアランスを適した状態で確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態に係る回転機械の径方向断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る回転機械の他の例の径方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0018】
図1は、本実施形態に係る回転機械の径方向断面図である。
【0019】
図1は、回転機械である蒸気タービン1を示している。蒸気タービン1は、ロータ2と、内側ケーシング3と、外側ケーシング4と、を備える。
【0020】
ロータ2は、回転軸Rに沿って長手状(図1中の奥行方向)に延在して形成されている。ロータ2は、その延在方向の一方側と他方側とがそれぞれ軸受(図示省略)により支持されて、回転軸Rを中心に回転可能に設けられている。また、ロータ2は、軸受がコンクリート製のタービンフロアに対して支持部材により支持されることで、回転軸Rが水平となるようにタービンフロアに支持されている。ロータ2は、図1に示すように、その表面から回転方向に沿って動翼5が複数延出して設けられていると共に、回転軸Rに沿う延在方向に動翼5が所定間隔をおいて複数設けられている。
【0021】
ここで、ロータ2の延在方向である回転軸Rに沿う方向(図1中の奥行方向)を軸方向という。また、回転軸Rに対して鉛直に交差する方向を鉛直方向という。また、回転軸Rに対して水平方向で直交する方向を水平方向といい、当該水平方向に沿う平面を水平面Hという。また、回転軸Rを中心としてロータ2が回転する方向を周方向という。
【0022】
内側ケーシング3は、図1に示すように、ロータ2の動翼5の周りを囲むように設けられている。内側ケーシング3は、図1に示すように、上下で半分円に分割形成され、その上半部3Aと下半部3Bとが、平坦に形成された相互の接合面3Aa,3Baを合わせて接合されることで円筒形状に形成される。上半部3Aと下半部3Bとは、ボルト3Cにより接合される。内側ケーシング3は、その内壁面にロータ2の回転方向に沿って静翼(図示省略)が複数固定されていると共に、回転軸Rに沿う延在方向に静翼が動翼5と交互に配置されるように所定間隔をおいて複数設けられている。この内側ケーシング3は、外側ケーシング4に支持されている。内側ケーシング3が外側ケーシング4に支持される具体的な構成は後述する。
【0023】
外側ケーシング4は、図1に示すように、内側ケーシング3の周りを囲むように設けられている。外側ケーシング4は、図1に示すように、上下で半分円に分割形成され、その上半部4Aと下半部4Bとが、平坦に形成された相互の接合面4Aa,4Baを合わせて接合されることで円筒形状に形成される。上半部4Aと下半部4Bとは、各接合面4Aa,4Baに連続して径方向外側に延出して形成されたフランジ4D,4Dがボルト4Cにより接合される。外側ケーシング4は、ロータ2とは別にコンクリート製のタービンフロアに対して支持部材により支持されている。外側ケーシング4のタービンフロアに対する支持においては、図1に示すように、上半部4Aと下半部4Bとの相互の接合面4Aa,4Baが水平面Hに沿うように調整される。すなわち、外側ケーシング4は、上半部4Aと下半部4Bとの相互の接合面4Aa,4Baがロータ2の回転軸Rに対して水平面H上で一致するように支持される。
【0024】
内側ケーシング3の内部は、ロータ2との間で静翼が動翼5と交互に配置された流路10が形成されている。流路10は、軸方向であるロータ2の延在方向の一方側(前側ともいう)から他方側(後側ともいう)に向かって、静翼および動翼5が徐々に径方向に大きく形成されて徐々に拡大して形成されている。また、流路10の一方側(前側)の端部には、入口部が形成され、流路10の他方側(後側)の端部には、出口部が形成されている。そして、蒸気タービン1の稼働時には、高温高圧の蒸気が入口部から流路10に導入されて複数の動翼5および複数の静翼間を膨張しつつ通過する。すると、この蒸気により動翼5が駆動されてロータ2が回転する。これにより、蒸気の熱エネルギーがロータ2の回転エネルギーに変換されて動力が発生する。複数の動翼5および複数の静翼間を通過した蒸気は、出口部から回収ライン(図示省略)に還元される。
【0025】
以下、内側ケーシング3の支持構造について説明する。内側ケーシング3は、ロータ2とは別に外側ケーシング4に対して支持されている。図1に示すように、外側ケーシング4は、その下半部4Bの接合面4Baの上に、支持台21がボルト21Cにより固定されている。支持台21は、外側ケーシング4の上半部4Aの接合面4Aaの一部が切り欠かれることにより、下半部4Bの接合面4Baの上に配置され、外側ケーシング4の内側に突出して設けられている。従って、支持台21の上面は、下半部4Bの接合面4Baよりも上方であって、水平面Hよりも上方の位置に配置される。内側ケーシング3は、この支持台21の上面を支持面21Aとして載置され支持される。すなわち、内側ケーシング3は、水平面Hよりも上方の位置を基準にして支持される。
【0026】
内側ケーシング3は、上述したように、上下で半分円に分割形成され、その上半部3Aと下半部3Bとが平坦に形成された相互の接合面4Aa,4Baを合わせて接合されることで円筒形状に形成されている。内側ケーシング3の下半部3Bは、その外側に支持サポート22がボルト22Cにより固定されている。支持サポート22は、内側ケーシング3の下半部3Bに固定される固定部22Aと、支持台21の支持面21Aに載置される載置部22Bとを有する。固定部22Aは、鉛直方向に延在して形成されており、内側ケーシング3の下半部3Bに固定された部分から接合面4Ba(4Aa)を超えて鉛直方向の上方に延在して設けられる。載置部22Bは、固定部22Aが接合面4Ba(4Aa)を超えて鉛直方向の上方に延在した上端部に設けられて内側ケーシング3より水平方向の外側に突出して形成されている。載置部22Bは、固定部22Aから突出した下面が支持台21の支持面21Aにボルトなどを用いることなく掛け止められることで載置される。
【0027】
これら支持台21および支持サポート22は、内側ケーシング3の水平方向の両側に設けられ、かつ軸方向においてロータ2の延在する軸方向の一方側と他方側とにそれぞれ設けられて計4箇所に設けられている。従って、内側ケーシング3は、水平方向の両側の2箇所および軸方向の2箇所の計4箇所で外側ケーシング4に支持されている。内側ケーシング3の外側ケーシング4に対する支持においては、図1に示すように、上半部3Aと下半部3Bとの相互の接合面3Aa,3Baが水平面Hに沿うように調整される。すなわち、内側ケーシング3は、上半部3Aと下半部3Bとの相互の接合面3Aa,3Baがロータ2の回転軸Rに対して水平面H上で一致するように支持される。さらに、内側ケーシング3は、上半部3Aと下半部3Bとの相互の接合面3Aa,3Baよりも上方の位置であって水平面Hよりも上方の位置で、支持サポート22を介して支持台21に対して載置されて支持されている。
【0028】
また、内側ケーシング3は、その上半部3Aおよび下半部3Bが、外側ケーシング4に対して軸方向への移動を規制されている。内側ケーシング3の上半部3Aおよび下半部3Bは、鉛直方向の外側に延在する軸方向サポート(図示省略)が設けられている。軸方向サポートは、外側ケーシング4の内側に形成された軸方向キー(図示省略)に軸方向への移動が規制されつつ、周方向への移動が許容されて係合されている。これら、軸方向サポートおよび軸方向キーは、流路10に入口部が形成されたロータ2の延在方向の一方側(前側)に設けられている。なお、ロータ2の延在する一方側の支持台21および支持サポート22は、軸方向サポートおよび軸方向キーと軸方向において同様の位置に配置されている。これら軸方向サポートおよび軸方向キーを軸方向規制部という。
【0029】
また、内側ケーシング3は、図1に示すように、その上半部3Aおよび下半部3Bが、外側ケーシング4に対して周方向への移動を規制されている。内側ケーシング3の上半部3Aおよび下半部3Bは、鉛直方向の外側に延在する周方向サポート25が設けられている。周方向サポート25は、外側ケーシング4の内側に形成された周方向キー26に周方向への移動が規制されつつ、軸方向への移動が許容されて係合されている。これら、周方向サポート25および周方向キー26は、流路10に出口部が形成されたロータ2の延在方向の他方側(後側)に設けられている。なお、ロータ2の延在する他方側の支持台21および支持サポート22は、周方向サポート25および周方向キー26と軸方向において同様の位置に配置されている。これら周方向サポート25および周方向キー26を周方向規制部という。
【0030】
このように、内側ケーシング3は、外側ケーシング4に対して水平面Hよりも上方の位置で支持され、かつ上半部3Aと下半部3Bとの相互の接合面3Aa,3Baがロータ2の回転軸Rに対して水平面H上で一致するように支持されている。さらに、内側ケーシング3は、外側ケーシング4に対して軸方向および周方向の移動を規制して支持されている。
【0031】
このような蒸気タービン1において、起動開始時に入口部から流路10に高温高圧の蒸気が供給されると、流路10を構成する内側ケーシング3は、高温高圧の蒸気にさらされて温度が上昇する。一方、起動開始時において外側ケーシング4は、その外側が外気と同等の温度であることから、温度上昇は内側ケーシング3ほど高くはない。このため、起動開始時は、内側ケーシング3と外側ケーシング4とに温度差が生じ、この温度差が相互の熱伸び差として作用する。ここで、内側ケーシング3にかかる熱は、下半部3Bに固定された支持サポート22に伝わり、支持サポート22は、下半部3Bに固定されたボルト22Cを基点として鉛直方向に熱伸びする。支持サポート22の上端部に設けられた載置部22Bが支持台21の支持面21Aに掛け止められている。このため、支持サポート22は、支持台21の支持面21Aを基点として鉛直方向の下方に熱伸びすることから、内側ケーシング3は、外側ケーシング4に対して相対的に鉛直方向の下方に移動する。
【0032】
一方、支持台21の支持面21Aは、水平面Hであって、ロータ2の回転軸Rや、外側ケーシング4における上半部4Aおよび下半部4Bの接合面4Aa,4Baよりも鉛直方向の上方の位置にあることから、内側ケーシング3は、水平面Hよりも鉛直方向の上方の位置で支持されている。このため、内側ケーシング3は、水平面Hよりも鉛直方向の上方の位置で支持されている分の移動代が大きく、外側ケーシング4に対して相対的に鉛直方向の下方に移動する移動量が少なくなるように抑制される。このため、内側ケーシング3の鉛直方向の下方においてロータ2の動翼5との隙間である下部クリアランス(図1中のUC)が大きく変化する事態を抑制することができる。これとともに、内側ケーシング3の鉛直方向の上方においてロータ2の動翼5との隙間である上部クリアランス(図1中のOC)も大きく変化する事態を抑制することができる。この結果、起動開始時において内側ケーシング3と動翼5とのクリアランスを適した状態で確保することができる。
【0033】
ここで、例えば、内側ケーシング3の下半部3Bが、水平面Hよりも鉛直方向の下方の位置で外側ケーシング4に支持されている場合、起動開始時における熱伸び差により、内側ケーシング3は、外側ケーシング4に対して相対的に鉛直方向の上方に移動することになる。このため、内側ケーシング3の鉛直方向の下方においてロータ2の動翼5との下部クリアランスが狭くなると共に、内側ケーシング3の鉛直方向の上方においてロータ2の動翼5との上部クリアランスが広くなってしまい、下部クリアランス側では、内側ケーシング3と動翼5との接触が懸念され、上部クリアランス側では内側ケーシング3と動翼5との間で蒸気が通過して効率低下が懸念される。また、例えば、内側ケーシング3の下半部3Bが、水平面Hの位置で外側ケーシング4に支持されている場合、起動開始時において下部クリアランスおよび上部クリアランスは、内側ケーシング3が水平面Hよりも鉛直方向の下方の位置で外側ケーシング4に支持されている場合と比較して大きく変化しない。しかし、内側ケーシング3の下半部3Bにおいて内側ケーシング3と動翼5との下部クリアランスが狭くなり易い場合では、下部クリアランス側で内側ケーシング3と動翼5との接触が懸念される課題は解消できない。この点、本実施形態では、内側ケーシング3は、水平面Hよりも鉛直方向の上方の位置で支持されているため、内側ケーシング3の下半部3Bにおいて内側ケーシング3と動翼5との下部クリアランスが狭くなり易い場合であっても下部クリアランス側で内側ケーシング3と動翼5との接触が懸念される課題を解消することができる。
【0034】
このように、本実施形態の蒸気タービン1は、ロータ2の回転軸Rを通過する水平面Hよりも上方の位置で外側ケーシング4側において上方に向けて形成された支持面21Aを有する支持台21と、内側ケーシング3側に設けられて支持台21の支持面21Aに載置された形態で内側ケーシング3を外側ケーシング4に支持させる支持サポート22と、を備えることで、起動開始時において内側ケーシング3と動翼5とのクリアランスを適した状態で確保することができる。
【0035】
また、本実施形態の蒸気タービン1では、支持台21は、上下で半分に分割形成された外側ケーシング4の下半部4Bに設けられており、支持サポート22は、上下で半分に分割形成された内側ケーシング3の下半部3Bに設けられていることが好ましい。
【0036】
本実施形態の蒸気タービン1は、組み立て時に、外側ケーシング4の下半部4Bの内部に内側ケーシング3の下半部3Bを挿入して支持させ、その後、内側ケーシング3の下半部3Bの内部にロータ2を配置してから、内側ケーシング3の上半部3Aを下半部3Bに接合し、さらにその後、外側ケーシング4の上半部4Aを下半部4Bに接合する。このため、最初に外側ケーシング4の下半部4Bに内側ケーシング3の下半部3Bを支持させなければならないことから、外側ケーシング4の下半部4Bに支持台21を設けると共に、内側ケーシング3の下半部3Bに支持サポート22を設けている。
【0037】
また、本実施形態の蒸気タービン1では、支持台21は、外側ケーシング4に対して別部材で形成されており、支持サポート22は、内側ケーシング3に対して別部材で形成されていることが好ましい。
【0038】
外側ケーシング4が上下で半分に上半部4Aと下半部4Bとに分割形成されている場合、これらの接合を容易に行うために接合面4Aa,4Baは平坦に平面加工されていることが好ましく、そして、支持台21は、外側ケーシング4の下半部4Bの接合面4Baに別部材で設けることが、加工性がよく好ましい。同様に、内側ケーシング3が上下で半分に上半部3Aと下半部3Bとに分割形成されている場合、これらの接合を容易に行うために接合面3Aa,3Baは平坦に平面加工されていることが好ましく、そして、支持サポート22は、内側ケーシング3の接合面3Aa,3Baとは別部材で設けることが、加工性がよく好ましい。
【0039】
また、本実施形態の蒸気タービン1では、外側ケーシング4は、上下で半分に分割形成された上半部4Aおよび下半部4Bにおいて外側に延在する各フランジ4Dを介して分割された上下が接合されており、支持台21の支持面21Aは、水平面Hよりも上方の位置であって外側ケーシング4の上半部4Aのフランジ4Dの上端以下の位置までの範囲に設置されていることが好ましい。
【0040】
外側ケーシング4の上半部4Aの一部を切り欠いて支持台21を外側ケーシング4の下半部4Bに設ける場合、強度が担保されている上半部のフランジ4Dの上下の範囲内に支持台21を設ける領域を形成することが、外側ケーシング4の強度を確保するうえで好ましい。
【0041】
本実施形態の蒸気タービン1では、ロータ2の延在方向の一方側(前側)にて外側ケーシング4に対して内側ケーシング3の軸方向への移動を規制する軸方向規制部(軸方向サポートおよび軸方向キー)と、ロータ2の延在方向の他方側(後側)にて外側ケーシング4に対して内側ケーシング3の周方向への移動を規制する周方向規制部(周方向サポート25および周方向キー26)と、が設けられている。そして、本実施形態の蒸気タービン1は、支持台21および支持サポート22が、ロータ2の延在方向の一方側(前側)と他方側(後側)にそれぞれ配置され、図2に示すように、ロータ2の延在方向の他方側(後側)の支持台21の支持面21Aが水平面Hに対して軸方向に向けて傾斜して形成されていることが好ましい(図2では、支持面21Aの傾斜した面が紙面手前側に向いた形態として示している。)。すなわち、支持台21は、支持面21Aが水平面Hに対して軸方向に向けて傾斜し、当該傾斜した支持面21A上で支持サポート22を介して内側ケーシング3を外側ケーシング4に対して支持するテーパキーとして形成されている。
【0042】
軸方向規制部(軸方向サポートおよび軸方向キー)によりロータ2の延在方向の一方側(前側)にて外側ケーシング4に対して内側ケーシング3の軸方向への移動を規制することで、内側ケーシング3が軸方向に熱伸びしても、軸方向規制部を基準とした熱伸びとして他部材との取り合いを確保することができる。また、周方向規制部(周方向サポート25および周方向キー26)によりロータ2の延在方向の他方側(後側)にて外側ケーシング4に対して内側ケーシング3の周方向への移動を規制することで、内側ケーシング3が周方向に移動しないように位置を保持することができる。このような構成において、例えば、内側ケーシング3の下方が上方に比較して高熱となり軸方向の熱伸びが大きい場合、内側ケーシング3は、ロータ2の延在方向の一方側(前側)の軸方向規制部に規制されつつロータ2の延在方向の他方側(後側)が上方に持ち上がるように傾き、これにより周方向規制部(周方向サポート25および周方向キー26)が噛み込んで干渉するおそれがある。逆に、例えば、内側ケーシング3の上方が下方に比較して高熱となり軸方向の熱伸びが大きい場合、内側ケーシング3は、ロータ2の延在方向の一方側(前側)の軸方向規制部に規制されつつロータ2の延在方向の他方側(後側)が下方に落ち込むように傾き、これにより周方向規制部(周方向サポート25および周方向キー26)が噛み込んで干渉するおそれがある。
【0043】
この点、本実施形態の蒸気タービン1では、支持台21および支持サポート22が、ロータ2の延在方向の一方側(前側)と他方側(後側)にそれぞれ配置され、図3に示すように、ロータ2の延在方向の他方側(後側)の支持台21の支持面21Aが水平面Hに対して軸方向に向けて傾斜して支持台21がテーパキーとして形成されていることから、いずれかの傾きが生じ易い場合に応じて、ロータ2の延在方向の他方側(後側)の支持台21の支持面21Aを水平面Hに対して軸方向に向けて傾斜して形成することで、内側ケーシング3のロータ2の延在方向の他方側(後側)が上方に持ち上がったり、下方に落ち込んだりする事象を抑制することができ、周方向規制部(周方向サポート25および周方向キー26)の噛み込みを防止することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 蒸気タービン(回転機械)
2 ロータ
3 内側ケーシング
3A 上半部
3Aa 接合面
3B 下半部
3Ba 接合面
3C ボルト
4 外側ケーシング
4A 上半部
4Aa 接合面
4B 下半部
4Ba 接合面
4C ボルト
4D フランジ
5 動翼
10 流路
21 支持台
21A 支持面
21C ボルト
22 支持サポート
22A 固定部
22B 載置部
22C ボルト
25 周方向サポート(周方向規制部)
26 周方向キー(周方向規制部)
H 水平面
R 回転軸
図1
図2