(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一の流路を循環する前記熱媒体の一部を、前記副熱交換器と前記第一の膨張弁との間から分流させ、前記第二の膨張弁、及び前記蒸発器を順に経由して、前記主熱交換器と前記圧縮機との間に合流させる第三の流路を備え、
前記制御部は、
前記運転モードを除湿暖房とするときに、前記第一の流路及び前記第三の流路を使用することを特徴とする請求項3に記載の空気調和装置。
前記第四の流路を循環する前記熱媒体の一部を、前記凝縮器と前記第一の膨張弁との間から分流させ、前記第二の膨張弁、及び前記蒸発器を順に経由して、前記主熱交換器と前記圧縮機との間に合流させる第六の流路を備え、
前記制御部は、
前記運転モードを除湿暖房とするときには、前記第四の流路及び前記第六の流路を使用しつつ、定期的に前記第五の流路に切り替えることを特徴とする請求項9に記載の空気調和装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
《第1実施形態》
《構成》
図1は、第1実施形態の車両用空気調和装置を示す図である。
車両用空気調和装置11は、自動車に搭載されるヒートポンプシステムからなり、車室側に設けられた室内熱交換ユニット12(供給流路)と、車室外に設けられた室外熱交換ユニット13と、を備える。車室側と車室外とは、例えばダッシュパネルによって隔てられている。
室内熱交換ユニット12は、ダッシュボードの内部に配置されており、一端側から外気や内気を導入し、他端側から車室内へ空気を供給するダクトによって形成されている。室内熱交換ユニット12の内部には、送風ファン14と、蒸発器15と、凝縮器16と、エアミックスダンパ17(開閉扉)と、が設けられている。
【0010】
送風ファン14は、室内熱交換ユニット12の一端側に設けられており、モータによって駆動されるときに、外気や内気を吸引し、他端側へと吐出する。
蒸発器15は、送風ファン14よりも下流側に設けられており、吸熱器及び除湿器として、放熱フィンの周囲を通過する空気とチューブ内を通過する低温の熱媒体(冷媒)との間で熱交換を行なう。すなわち、チューブ内の熱媒体を蒸発気化させることで、放熱フィンの周囲の空気を冷却すると共に、放熱フィンの表面に結露を生じさせて除湿を行なう。送風ファン14から吹き出された空気は、全て蒸発器15を通過する。
【0011】
凝縮器16は、蒸発器15よりも下流側に設けられており、放熱器として、放熱フィンの周囲を通過する空気とチューブ内を通過する高温の熱媒体(熱媒)との間で熱交換を行なう。すなわち、チューブ内の熱媒体を凝縮液化させることで、放熱フィンの周囲の空気を加熱する。凝縮器16は、室内熱交換ユニット12の断面のうち、略半分を塞ぐように配置されることで、凝縮器16を通過する流路と、凝縮器16を迂回する流路と、が形成されている。すなわち、蒸発器15を通過した空気の一部が凝縮器16を通過し、残りが凝縮器16を迂回する。
【0012】
エアミックスダンパ17は、凝縮器16を通過する流路を開放して凝縮器16を迂回する流路を閉鎖する位置と、凝縮器16を通過する流路を閉鎖して凝縮器16を迂回する流路を開放する位置と、の間で回動可能である。エアミックスダンパ17が凝縮器16を通過する流路を開放して凝縮器16を迂回する流路を閉鎖する位置にあるときには、蒸発器15を通過した空気は全て凝縮器16を通過する。エアミックスダンパ17が凝縮器16を通過する流路を閉鎖して凝縮器16を迂回する流路を開放する位置にあるときには、蒸発器15を通過した空気は全て凝縮器16を迂回する。エアミックスダンパ17が凝縮器16を通過する流路と凝縮器16を迂回する流路の双方を開放する位置にあるときには、蒸発器15を通過した空気のうち、一部が凝縮器16を通過し、残りが凝縮器16を迂回する。そして、凝縮器16の下流側で、凝縮器16を通過した空気と、凝縮器16を迂回した空気とが混合される。
【0013】
室外熱交換ユニット13は、エンジンルーム内又はモータルーム内に設けられており、メインコア21(主熱交換器)と、サブクールコア22(副熱交換器)と、レシーバタンク23と、を一体化して形成されている。
メインコア21及びサブクールコア22は、夫々、放熱フィンの周囲を通過する外気とチューブ内を通過する熱媒体との間で熱交換を行なう。外気とは主に走行風であるが、メインコア21及びサブクールコア22の背面(風下側)には、共通の送風機24が設けられており、十分な走行風が得られないときは、この送風機24が駆動されることで、夫々の放熱フィンに対して外気が送風される。
【0014】
運転モードを暖房とするときには、メインコア21を蒸発器、つまり吸熱器として機能させ、放熱フィンの周囲を通過する外気とチューブ内を通過する低温の熱媒体(冷媒)との間で熱交換を行なう。すなわち、チューブ内の熱媒体を蒸発気化させ、吸熱させる。運転モードを冷房とするときには、メインコア21及びサブクールコア22を凝縮器、つまり放熱器として機能させ、放熱フィンの周囲を通過する外気とチューブ内を通過する高温の熱媒体(熱媒)との間で熱交換を行なう。すなわち、チューブ内の熱媒体を凝縮液化させ、放熱させる。
レシーバタンク23は、熱媒体の気液分離を行ない、液相の熱媒体のうち、負荷に応じて変動する余剰分を貯留する。
熱媒体は、後述する運転モードに応じて、蒸発器15、凝縮器16、メインコア21、サブクールコア22、及びレシーバタンク23のうち、所定のルートを経由して循環する。
【0015】
次に、熱媒体の回路構成について説明する。
凝縮器16の出口は、流路31を介してレシーバタンク23の入口に連通する。流路31には、開閉弁41が設けられている。
開閉弁41は、流路31を開放又は閉鎖する。
レシーバタンク23の出口は、サブクールコア22の入口に連通する。サブクールコア22の出口は、流路32を介してメインコア21における一方の連通口に連通する。流路32には、サブクールコア22の側からメインコア21の側に向かって、逆止弁42、開閉弁43、及び膨張弁44(第一の膨張弁)が、順に設けられている。
逆止弁42は、サブクールコア22の側からメインコア21の側への通過を許容し、逆方向の通過を阻止する。
開閉弁43は、流路32を開放又は閉鎖する。
膨張弁44は、液相である高圧の熱媒体を霧状にして吹き出すことにより、気化しやすい低圧の熱媒体に減圧するものであり、開度が調整可能である。
【0016】
メインコア21における他方の連通口は、流路33を介して凝縮器16の入口に連通する。流路33には、メインコア21の側から凝縮器16の側に向かって、開閉弁45、アキュムレータ46、及び圧縮機47が、順に設けられている。
アキュムレータ46は、熱媒体の気液分離を行ない、気相の熱媒体だけを圧縮機47へと供給する。
圧縮機47は、気相である低圧の熱媒体を圧縮することにより、液化しやすい高圧の熱媒体に昇圧させるものであり、熱媒体と共に循環するオイルによって潤滑が行なわれる給油式である。例えば、ロータリー圧縮機、斜板式圧縮機、スクロール圧縮機等である。熱媒体に対するオイル濃度は数%程度である。圧縮機47の駆動源は、エンジンや電動モータである。
【0017】
流路32のうち、逆止弁42と開閉弁43との間には分岐点があり、この分岐点は、流路34を介して蒸発器15の入口に連通する。流路34には、流路32の側から蒸発器15の側に向かって、開閉弁51、及び膨張弁52(第二の膨張弁)が、順に設けられている。
開閉弁51は、流路34を開放又は閉鎖する。
膨張弁52は、液化した高圧の熱媒体を霧状にして吹き出すことにより、気化しやすい低圧の熱媒体に減圧するものであり、開度が調整可能である。
流路33のうち、開閉弁45とアキュムレータ46との間には分岐点があり、蒸発器15の出口は、流路35を介してその分岐点に連通する。流路35には、逆止弁53が設けられている。
逆止弁53は、蒸発器15の側から流路33の側への通過を許容し、逆方向の通過を阻止する。
【0018】
流路31のうち、開閉弁41とレシーバタンク23との間には分岐点があり、流路32のうち、膨張弁44とメインコア21との間には分岐点があり、これら分岐点同士は、流路36を介して連通する。流路36には、開閉弁54が設けられている。
開閉弁54は、流路36を開放又は閉鎖する。
流路31のうち、凝縮器16と開閉弁41との間には分岐点があり、流路33のうち、メインコア21と開閉弁45との間には分岐点があり、これら分岐点同士は、流路37を介して連通する。流路37には、開閉弁55が設けられている。
開閉弁55は、流路37を開放又は閉鎖する。
車室側に設けられたコントローラ18(制御部)は、例えばマイクロコンピュータからなり、後述する空気調和制御処理を実行する。
【0019】
次に、空気調和制御処理について説明する。
図2は、空気調和制御処理を示すフローチャートである。
先ずステップS101では、各種データを読込む。例えば、車室内の設定温度TAO、及び外気温Tamである。
続くステップS102では、熱交換温度の目標値として、目標過冷却度や目標加熱度を演算する。
続くステップS103では、マップを参照し、車室内の設定温度TAO、及び外気温Tamに応じて、運転モードの設定を行なう。
図3は、運転モードの設定に用いるマップである。
このマップは、横軸を外気温Tamとし、縦軸を設定温度TAOとしている。外気温Tamについては、値T1と、このT1よりも大きな値T2と、を予め定めている。値T1は例えば0℃より僅かに大きな値であり、値T2は例えば20℃近傍の値である。設定温度TAOについては、値T3と、このT3よりも大きな値T4と、を予め定めている。値T3は例えば10℃近傍の値であり、値T4は例えば30℃近傍の値である。
【0020】
値T1を通り、縦軸と略平行な直線をL1とする。値T2を通り、値T4よりも大きな範囲で、縦軸と略平行な直線をL2とする。値T1及び値T3の座標と、値T2及び値T4の座標とを結ぶ直線をL3とする。値T1を通り、直線L3と略平行な直線をL4とする。外気温Tam及び設定温度TAOが、縦軸、横軸、及び直線L1で形成された領域にあるときには、運転モードを暖房に設定する。外気温Tam及び設定温度TAOが、直線L1、直線L3、及び直線L2によって形成された領域にあるときには、運転モードを除湿暖房(放熱温調)に設定する。外気温Tam及び設定温度TAOが、直線L2、直線L3、直線L1、及び直線L4によって形成された領域にあるときには、運転モードを除湿冷房(吸熱温調)に設定する。直線L4、及び横軸によって形成された領域にあるときには、運転モードを冷房に設定する。なお、運転モードのチャタリングを防ぐために、運転モードの境界線となる直線L1〜L4には、夫々、ヒステリシスを設けておく。
【0021】
続くステップS104では、運転モード、及び設定温度TAOに応じて、エアミックスダンパ17の開閉位置を制御する。
続くステップS105では、運転モード、及び設定温度TAOに応じて、圧縮機47の回転数や吸気量を制御する。
続くステップS106では、運転モードに応じて、開閉弁41、43、45、51、54、55の開閉を制御する。
続くステップS107では、運転モード、及び熱交換温度の目標値に応じて、メインコア21、サブクールコア22、及び蒸発器15の蒸発能力を制御してから、所定のメインプログラムに復帰する。
【0022】
次に、各運転モードについて説明する。
1.暖房モード
暖房モードのときには、第一の流路61を使用するように切り替える。
図4は、第1実施形態の暖房モードを示す図である。
図中、低圧の熱媒体が通過する流路を太い点線で示し、高圧の熱媒体が通過する流路を太い実線で示し、開放された開閉弁を白抜きで示し、閉鎖された開閉弁を黒塗りで示している。運転モードが暖房であるときには、開閉弁51、54、55を閉鎖し、開閉弁41、43、45を開放した状態で、圧縮機47を駆動すると共に、必要に応じて送風機24を駆動する。
【0023】
これにより、熱媒体は、圧縮機47、凝縮器16、開閉弁41、レシーバタンク23、サブクールコア22、逆止弁42、開閉弁43、膨張弁44、メインコア21、開閉弁45、及びアキュムレータ46を順に経由して循環する。このルートを第一の流路61とする。第一の流路61において、気相の熱媒体は、圧縮機47で圧縮され高圧となり、凝縮器16で凝縮液化し、放熱によって低温になる。液相の熱媒体は、膨張弁44で膨張され低圧となり、メインコア21で蒸発気化し、吸熱によって高温となる。
一方、室内熱交換ユニット12では、送風ファン14を駆動すると共に、エアミックスダンパ17で凝縮器16を通過する流路を開放する。これにより、導入された空気が凝縮器16で加熱され、温かい空気が車室内に供給される。
【0024】
2.除湿暖房モード(吸熱温調)
除湿暖房モードのときには、第一の流路61及び第三の流路63を使用するように切り替える。
図5は、第1実施形態の除湿暖房モードを示す図である。
図中、低圧の熱媒体が通過する流路を太い点線で示し、高圧の熱媒体が通過する流路を太い実線で示し、開放された開閉弁を白抜きで示し、閉鎖された開閉弁を黒塗りで示している。運転モードが除湿暖房であるときには、開閉弁54、55を閉鎖し、開閉弁41、43、45、51を開放した状態で、圧縮機47を駆動すると共に、必要に応じて送風機24を駆動する。
【0025】
これにより、熱媒体は、第一の流路61を循環する。さらに、流路32における逆止弁42と開閉弁43との間から分流した熱媒体は、開閉弁51、膨張弁52、蒸発器15、及び逆止弁53を順に経由して、流路33における開閉弁45とアキュムレータ46との間に合流する。このルートは第三の流路63とする。第三の流路63において、液相の熱媒体は、膨張弁52で膨張され低圧となり、蒸発器15で蒸発気化し、吸熱によって高温となる。
一方、室内熱交換ユニット12では、送風ファン14を駆動すると共に、エアミックスダンパ17で凝縮器16を通過する流路を開放する。これにより、導入された空気が蒸発器15で除湿された後に、凝縮器16で加熱され(リヒート)、除湿された温かい空気が車室内に供給される。
【0026】
3.除湿冷房モード(放熱温調)
除湿冷房モードのときには、第二の流路62を使用するように切り替える。
図6は、第1実施形態の除湿冷房モードを示す図である。
図中、低圧の熱媒体が通過する流路を太い点線で示し、高圧の熱媒体が通過する流路を太い実線で示し、開放された開閉弁を白抜きで示し、閉鎖された開閉弁を黒塗りで示している。運転モードが除湿冷房であるときには、開閉弁41、43、45を閉鎖し、開閉弁51、54、55を開放した状態で、圧縮機47を駆動すると共に、必要に応じて送風機24を駆動する。
【0027】
これにより、熱媒体は、圧縮機47、凝縮器16、開閉弁55、メインコア21、開閉弁54、レシーバタンク23、サブクールコア22、逆止弁42、開閉弁51、膨張弁52、蒸発器15、逆止弁53、及びアキュムレータ46を順に経由して循環する。メインコア21を通過するときの方向は、第一の流路61と逆となる。このルートを第二の流路62とする。第二の流路62において、気相の熱媒体は、圧縮機47で圧縮され高圧となり、凝縮器16で凝縮液化し、放熱によって低温になる。液化しつつある熱媒体は、メインコア21でさらに凝縮液化し、放熱によってさらに低温になる。液相の熱媒体は、サブクールコア22で放熱によってさらに低温になり、膨張弁52で膨張され低圧となり、蒸発器15で蒸発気化し、吸熱によって高温となる。
一方、室内熱交換ユニット12では、送風ファン14を駆動すると共に、エアミックスダンパ17で凝縮器16を通過する流路を開放する。これにより、導入された空気が蒸発器15で冷却及び除湿された後に、凝縮器16で加熱され(リヒート)、除湿された涼しい空気が車室内に供給される。
【0028】
4.冷房モード
冷房モードのときには、第二の流路62を使用するように切り替える。
図7は、第1実施形態の冷房モードを示す図である。
図中、低圧の熱媒体が通過する流路を太い点線で示し、高圧の熱媒体が通過する流路を太い実線で示し、開放された開閉弁を白抜きで示し、閉鎖された開閉弁を黒塗りで示している。運転モードが冷房であるときには、熱媒体は、第二の流路62を循環する。
一方、室内熱交換ユニット12では、送風ファン14を駆動すると共に、エアミックスダンパ17で凝縮器16を通過する流路を閉鎖する。これにより、導入された空気が蒸発器15で冷却及び除湿された後に、凝縮器16を迂回し、除湿された涼しい空気が車室内に供給される。
【0029】
上記のように、コントローラ18は、運転モードに応じて、蒸発器15、凝縮器16、メインコア21、サブクールコア22、及びレシーバタンク23を選択的に経由して、熱媒体を循環させる。
運転モードには、運転停止モード、暖房モード、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モードの5つがある。したがって、運転モードの切り替えには、下記に示すように、20通り(=5×4)の組み合わせがある。
・運転停止 → 暖房/除湿暖房/除湿冷房/冷房
・暖房 → 運転停止/除湿暖房/除湿冷房/冷房
・除湿暖房 → 運転停止/暖房/除湿冷房/冷房
・除湿冷房 → 運転停止/暖房/除湿暖房/冷房
・冷房 → 運転停止/暖房/除湿暖房/除湿冷房
【0030】
《作用》
次に、第1実施形態の主要な作用効果について説明する。
コントローラ18は、運転モードを暖房とするときには第一の流路61を使用し、除湿暖房とするときには第一の流路61及び第三の流路63を同時に使用し、除湿冷房又は冷房とするときには第二の流路62を使用する。何れの運転モードにおいても、サブクールコア22に熱媒体を通過させるため、サブクールコア22に熱媒体及びオイルが取り残されることがない。したがって、運転モードの切り替えに伴って熱媒体の循環量が低下することで、熱交換性能に影響を及ぼすことを抑制できる。また、オイルの循環率(OCR:Oil Circulation Ratio)が低下することで、圧縮機47の潤滑に支障を来すことも抑制できる。
【0031】
ここで、比較例について述べる。
図8は、比較例としての冷房モードを示す図である。
この比較例では、熱媒体は、圧縮機47、凝縮器16、メインコア21、レシーバタンク23、サブクールコア22、膨張弁52、蒸発器15、及びアキュムレータ46を順に経由して循環する。つまり、熱媒体はメインコア21及びサブクールコア22の双方を通過する。
図9は、比較例としての暖房モードを示す図である。
この比較例では、熱媒体は、圧縮機47、凝縮器16、膨張弁44、メインコア21、及びアキュムレータ46を順に経由して循環する。つまり、熱媒体はメインコア21だけを通過する。
【0032】
このように、暖房時にメインコア21だけに熱媒体を通過させる構成にすると、冷房から暖房に切り替えたときに、サブクールコア22に熱媒体及びオイルが取り残されることになる。特に冬季の間は、専ら暖房を使用し続けることが想定されるため、長期間(数か月間)にわたって熱媒体及びオイルがサブクールコア22に取り残されたままとなる。サブクールコア22に流入している熱媒体は液相であり、気相よりも比体積が小さい(密度が高い)ため、熱媒体の循環量に与える影響は少なくない。このように、熱媒体の循環量が低下した状態や、またオイルの循環率が低下した状態が続くことは、熱交換性能や潤滑性能にも影響を及ぼす可能性がある。
【0033】
そこで、暖房、除湿暖房、除湿冷房、及び冷房の何れの運転モードでも、メインコア21及びサブクールコア22の双方に熱媒体を通過させている。すなわち、暖房や除湿暖房のときでも、熱媒体を循環させる経路にサブクールコア22を含めることで、運転モードの切り替え時に熱媒体の循環量やオイルの循環率が変動することを抑制できる。また、比較例の構成と比べて流路を変更するだけで、新たに部品を追加する必要もないので、実施が容易である。また、暖房モード及び暖房除湿モードのときに、サブクールコア22を通過するのは、高圧の熱媒体であるため、低圧の熱媒体と比べて圧力損失の影響は小さくて済む。また、暖房モード及び暖房除湿モードのときに、サブクールコア22へと熱媒体を通過させることで、サブクールコア22の着霜を抑制することができる。すなわち、凝縮器16を通過した熱媒体は、放熱後であるとはいえ、ある程度の熱量が残っているため除霜効果がある。このとき、熱媒体の放熱がさらに促進されるので、メインコア21での熱交換効率も向上する。
【0034】
コントローラ18は、マップを参照し、車室内の設定温度TAO、及び外気温Tamに応じて、運転モードを切り替える。これにより、運転モードを容易に切り替えることができる。また、熱媒体と共に僅かなオイルが循環しているので、圧縮機47に対して良好な潤滑を行なうことができる。また、サブクールコア22の手前にレシーバタンク23を設けているので、気液分離により、液化しきれなかった熱媒体が膨張弁44や膨張弁52に供給されることを抑制でき、且つ負荷に応じて変動する余剰分を吸収することができる。また、第一の流路61に第三の流路63を追加するだけで、暖房モードから除湿暖房モードへと容易に切り替えることができる。また、エアミックスダンパ17の回動位置を切り替えるだけで、除湿冷房モードと冷房モードとを容易に切り替えることができる。
なお、暖房モードのときに、開閉弁51が閉鎖されていることで、蒸発器15に熱媒体が取り残されることになる。とはいえ、蒸発器15から逆止弁53に至るまでの領域においては、熱媒体が気相として存在しており、密度が低いため、熱媒体の循環量への影響は小さい。
【0035】
《応用例1》
第1実施形態では、運転モードが暖房のとき、熱媒体が常にサブクールコア22を通過する構成について説明したが、これに限定されるものではない。熱媒体が常にサブクールコア22を通過する構成では、常に圧力損失が生じることになるため、サブクールコア22を迂回する流路を形成し、必要なときだけ熱媒体がサブクールコア22を通過できるようにしてもよい。暖房モードにおいて、例えばイグニッションをONにしてから設定時間が経過するまでは、常にサブクールコア22に熱媒体を通過させ、それ以降は、予め定めた間隔毎に間欠的にサブクールコア22に熱媒体を通過させてもよい。また、外気温や湿度からサブクールコア22に着霜しているか否かを判定し、着霜していると判定されるときだけ、サブクールコア22に熱媒体を通過させてもよい。このように、選択的に熱媒体がサブクールコア22を通過したり、迂回したりするようにすれば、圧力損失を最小限に抑制しつつ、サブクールコア22の着霜を抑制できる。
【0036】
図10は、応用例1を示す図である。
流路31のうち、開閉弁41とレシーバタンク23との間に開閉弁71を追加する。
開閉弁71は、流路31を開放又は閉鎖する。
流路31のうち、開閉弁41と開閉弁71との間には分岐点があり、流路32のうち、開閉弁43と膨張弁44との間には分岐点があり、これら分岐点同士は、流路38を介して連通する。流路38には、開閉弁72が設けられている。
開閉弁72は、流路38を開放又は閉鎖する。
そして、運転モードが暖房であるときに、開閉弁71、43を閉鎖し、開閉弁72を開放すれば、熱媒体はサブクールコア22を迂回することができる。一方、開閉弁72を閉鎖し、開閉弁71、43を開放すれば、熱媒体はサブクールコア22を通過することができる。
【0037】
《応用例2》
暖房モードのときには、開閉弁51が閉鎖されているので、蒸発器15に熱媒体が取り残されることになる。そこで、冷房、除湿冷房、除湿暖房の何れかのモードから、暖房モードへと切り替える際には、先ずは切り替え前の運転モードの状態で、開閉弁51の閉鎖だけを行なう。そして、しばらくは圧縮機47の駆動を続けることで、蒸発器15に取り残された熱媒体を吸い出す(ポンプダウン)。そして、蒸発器15に取り残された熱媒体を概ね回収できたら、暖房モードへと切り替えればよい。これにより、蒸発器15に熱媒体が取り残されることを抑制できる。したがって、運転モードの切り替えに伴って熱媒体の循環量やオイルの循環率が変動することを抑制できる。
【0038】
《第2実施形態》
《構成》
第2実施形態は、熱媒体の回路構成を変更したものである。
前述した第1実施形態と共通する部分については、詳細な説明を省略する。
図11は、第2実施形態の車両用空気調和装置を示す図である。
ここでは、熱媒体の流路に変更を加えたことを除いては、前述した第1実施形態と同様の回路構成であり、膨張弁、開閉弁、逆止弁等、各種機器の部品点数に変更はない。そこで、膨張弁、開閉弁、逆止弁等の各種機器には、同一符号を付し説明する。
【0039】
凝縮器16の出口は、流路81を介してメインコア21における一方の連通口に連通する。流路81には、凝縮器16の側からメインコア21の側に向かって、開閉弁41、開閉弁43、膨張弁44(第一の膨張弁)が、順に設けられている。
開閉弁41及び開閉弁43は、夫々、流路81を開放又は閉鎖する。
膨張弁44は、液相である高圧の熱媒体を霧状にして吹き出すことにより、気化しやすい低圧の熱媒体に減圧するものであり、開度が調整可能である。
メインコア21における他方の連通口は、流路82を介して凝縮器16の入口に連通する。
流路82には、メインコア21の側から凝縮器16の側に向かって、開閉弁45、アキュムレータ46、及び圧縮機47が、順に設けられている。
アキュムレータ46は、熱媒体の気液分離を行ない、気相の熱媒体だけを圧縮機47へと供給する。
【0040】
圧縮機47は、気相である低圧の熱媒体を圧縮することにより、液化しやすい高圧の熱媒体に昇圧させるものであり、熱媒体と共に循環するオイルによって潤滑が行なわれる給油式である。例えば、ロータリー圧縮機、斜板式圧縮機、スクロール圧縮機等である。熱媒体に対するオイル濃度は数%程度である。圧縮機47の駆動源は、エンジンや電動モータである。
流路81のうち、膨張弁44とメインコア21との間には分岐点があり、この分岐点は、流路83を介してレシーバタンク23の入口に連通する。流路83には、開閉弁54が設けられている。
開閉弁54は、流路83を開放又は閉鎖する。
レシーバタンク23の出口は、サブクールコア22の入口に連通する。
【0041】
流路81のうち、開閉弁41と開閉弁43との間には分岐点があり、サブクールコア22の出口は、流路84を介してその分岐点に連通する。流路84には、逆止弁42が設けられている。
逆止弁42は、サブクールコア22の側から流路81の側への通過を許容し、逆方向の通過を阻止する。
流路81のうち、開閉弁41と開閉弁43との間には分岐点があり、この分岐点は、流路85を介して蒸発器15の入口に連通する。流路85には、流路81の側から蒸発器15の側に向かって、開閉弁51、及び膨張弁52(第二の膨張弁)が、順に設けられている。
開閉弁51は、流路85を開放又は閉鎖する。
膨張弁52は、液化した高圧の熱媒体を霧状にして吹き出すことにより、気化しやすい低圧の熱媒体に減圧するものであり、開度が調整可能である。
【0042】
流路82のうち、開閉弁45とアキュムレータ46との間には分岐点があり、蒸発器15の出口は、流路86を介してその分岐点に連通する。流路86には、逆止弁53が設けられている。
逆止弁53は、蒸発器15の側から流路82の側への通過を許容し、逆方向の通過を阻止する。
流路81のうち、凝縮器16と開閉弁41との間には分岐点があり、流路82のうち、メインコア21と開閉弁45との間には分岐点があり、これら分岐点同士は、流路87を介して連通する。流路87には、開閉弁55が設けられている。
開閉弁55は、流路87を開放又は閉鎖する。
【0043】
次に、各運転モードについて説明する。
1.暖房モード
暖房モードのときには、第四の流路91を使用しつつ、定期的に第五の流路92に切り替える。
先ず、第四の流路91について説明する。
図12は、第2実施形態の暖房モード(第四の流路)を示す図である。
図中、低圧の熱媒体が通過する流路を太い点線で示し、高圧の熱媒体が通過する流路を太い実線で示し、開放された開閉弁を白抜きで示し、閉鎖された開閉弁を黒塗りで示している。運転モードが暖房であり、且つ第四の流路91を使用するときには、開閉弁51、54、55を閉鎖し、開閉弁41、43、45を開放した状態で、圧縮機47を駆動すると共に、必要に応じて送風機24を駆動する。
【0044】
これにより、熱媒体は、圧縮機47、凝縮器16、開閉弁41、開閉弁43、膨張弁44、メインコア21、開閉弁45、及びアキュムレータ46を順に経由して循環する。このルートを第四の流路91とする。第四の流路91において、気相の熱媒体は、圧縮機47で圧縮され高圧となり、凝縮器16で凝縮液化し、放熱によって低温になる。液相の熱媒体は、膨張弁44で膨張され低圧となり、メインコア21で蒸発気化し、吸熱によって高温となる。
一方、室内熱交換ユニット12では、送風ファン14を駆動すると共に、エアミックスダンパ17で凝縮器16を通過する流路を開放する。これにより、導入された空気が凝縮器16で加熱され、温かい空気が車室内に供給される。
【0045】
次に、第五の流路92について説明する。
図13は、第2実施形態の暖房モード(第五の流路)を示す図である。
図中、低圧の熱媒体が通過する流路を太い点線で示し、高圧の熱媒体が通過する流路を太い実線で示し、開放された開閉弁を白抜きで示し、閉鎖された開閉弁を黒塗りで示している。運転モードが暖房であり、且つ第五の流路92を使用するときには、開閉弁41、43、45を閉鎖し、開閉弁51、54、55を開放した状態で、圧縮機47を駆動すると共に、必要に応じて送風機24を駆動する。
【0046】
これにより、熱媒体は、圧縮機47、凝縮器16、開閉弁55、メインコア21、開閉弁54、レシーバタンク23、サブクールコア22、逆止弁42、開閉弁51、膨張弁52、蒸発器15、逆止弁53、及びアキュムレータ46を順に経由して循環する。メインコア21を通過するときの方向は、第四の流路91と逆となる。このルートを第五の流路92とする。第五の流路92において、気相の熱媒体は、圧縮機47で圧縮され高圧となり、凝縮器16で凝縮液化し、放熱によって低温になる。液化しつつある熱媒体は、メインコア21でさらに凝縮液化し、放熱によってさらに低温になる。液相の熱媒体は、サブクールコア22で放熱によってさらに低温になり、膨張弁52で膨張され低圧となり、蒸発器15で蒸発気化し、吸熱によって高温となる。
一方、室内熱交換ユニット12では、内気だけを導入すると共に、送風ファン14を停止し、エアミックスダンパ17で凝縮器16を迂回する流路を閉鎖する。これにより、導入された内気が蒸発器15で除湿された後に、凝縮器16で加熱され(リヒート)、除湿された温かい空気が車室内に供給される。
【0047】
2.除湿暖房モード(吸熱温調)
除湿暖房モードのときには、第四の流路91及び第六の流路93を使用しつつ、定期的に第五の流路92に切り替える。
先ず、第四の流路91及び第六の流路93について説明する。
図14は、第2実施形態の除湿暖房モード(第四の流路、第六の流路)を示す図である。
図中、低圧の熱媒体が通過する流路を太い点線で示し、高圧の熱媒体が通過する流路を太い実線で示し、開放された開閉弁を白抜きで示し、閉鎖された開閉弁を黒塗りで示している。運転モードが除湿暖房であり、且つ第四の流路91及び第六の流路93を使用するときには、開閉弁54、55を閉鎖し、開閉弁41、43、45、51を開放した状態で、圧縮機47を駆動すると共に、必要に応じて送風機24を駆動する。
【0048】
これにより、熱媒体は、第四の流路91を循環する。さらに、流路81における開閉弁41と開閉弁43との間から分流した熱媒体は、開閉弁51、膨張弁52、蒸発器15、及び逆止弁53を順に経由して、流路82における開閉弁45とアキュムレータ46との間に合流する。このルートを第六の流路93とする。第六の流路93において、液相の熱媒体は、膨張弁52で膨張され低圧となり、蒸発器15で蒸発気化し、吸熱によって高温となる。
一方、室内熱交換ユニット12では、送風ファン14を駆動すると共に、エアミックスダンパ17で凝縮器16を通過する流路を開放する。これにより、導入された空気が蒸発器15で除湿された後に、凝縮器16で加熱され(リヒート)、除湿された温かい空気が車室内に供給される。
第五の流路92については、前述したとおりである。
【0049】
3.除湿冷房モード(放熱温調)
除湿冷房モードのときには、第五の流路92を使用するように切り替える。
図15は、第2実施形態の除湿冷房モード(第五の流路)を示す図である。
図中、低圧の熱媒体が通過する流路を太い点線で示し、高圧の熱媒体が通過する流路を太い実線で示し、開放された開閉弁を白抜きで示し、閉鎖された開閉弁を黒塗りで示している。運転モードが除湿冷房であるときには、開閉弁41、43、45を閉鎖し、開閉弁51、54、55を開放した状態で、圧縮機47を駆動すると共に、必要に応じて送風機24を駆動する。
【0050】
これにより、熱媒体は、圧縮機47、凝縮器16、開閉弁55、メインコア21、開閉弁54、レシーバタンク23、サブクールコア22、逆止弁42、開閉弁51、膨張弁52、蒸発器15、逆止弁53、及びアキュムレータ46を順に経由して循環する。メインコア21を通過するときの方向は、第四の流路91と逆となる。このルートを第五の流路92とする。第五の流路92において、気相の熱媒体は、圧縮機47で圧縮され高圧となり、凝縮器16で凝縮液化し、放熱によって低温になる。液化しつつある熱媒体は、メインコア21でさらに凝縮液化し、放熱によってさらに低温になる。液相の熱媒体は、サブクールコア22で放熱によってさらに低温になり、膨張弁52で膨張され低圧となり、蒸発器15で蒸発気化し、吸熱によって高温となる。
一方、室内熱交換ユニット12では、送風ファン14を駆動すると共に、エアミックスダンパ17で凝縮器16を通過する流路を開放する。これにより、導入された空気が蒸発器15で冷却及び除湿された後に、凝縮器16で加熱され(リヒート)、除湿された涼しい空気が車室内に供給される。
【0051】
4.冷房モード
冷房モードのときには、第五の流路92を使用するように切り替える。
図16は、第2実施形態の冷房モード(第五の流路)を示す図である。
図中、低圧の熱媒体が通過する流路を太い点線で示し、高圧の熱媒体が通過する流路を太い実線で示し、開放された開閉弁を白抜きで示し、閉鎖された開閉弁を黒塗りで示している。運転モードが冷房であるときには、熱媒体は、第五の流路92を循環する。
一方、室内熱交換ユニット12では、送風ファン14を駆動すると共に、エアミックスダンパ17で凝縮器16を通過する流路を閉鎖する。これにより、導入された空気が蒸発器15で冷却及び除湿された後に、凝縮器16を迂回し、除湿された涼しい空気が車室内に供給される。
【0052】
次に、暖房時制御処理について説明する。
暖房時制御処理とは、運転モードが暖房又は除湿暖房に設定されたときに実行される処理であり、主に前述したステップS104、S106で実行される処理に相当する。
図17は、第2実施形態の暖房時制御処理を示すフローチャートである。
先ずステップS111では、イグニッションスイッチのONに伴って暖房モード又は除湿暖房モードが起動した直後であるか否かを判定する。暖房モード又は除湿暖房モードが起動した直後であるときにはステップS112に移行する。一方、暖房モード又は除湿暖房モードが起動した直後でないときにはステップS117に移行する。
【0053】
ステップS112では、切替フラグをfc=1にセットする。切替フラグfcは、第五の流路92に切り替えるためのフラグであり、初期値はfc=0にリセットされている。
続くステップS113では、室内熱交換ユニット12で内気だけを導入する内気循環に設定する。
続くステップS114では、エアミックスダンパ17で凝縮器16を迂回する流路を閉鎖する。
続くステップS115では、送風ファン14を停止する。
続くステップS116では、開閉弁41、43、45、51、54、55の開閉を制御し、第五の流路92を使用するように切り替えてから所定のメインプログラムに復帰する。すなわち、開閉弁41、43、45を閉鎖し、開閉弁51、54、55を開放する。
【0054】
ステップS117では、切替フラグがfc=1にセットされているか否かを判定する。切替フラグがfc=1にセットされているときには、第五の流路92が使用されていると判断してステップS118に移行する。一方、切替フラグがfc=0にリセットされているときには、第五の流路92が使用されていないと判断してステップS123に移行する。
ステップS118では、第五の流路92に切り替えてから予め定めた設定時間Tc(第一の設定時間)が経過したか否かを判定する。設定時間Tcは例えば10秒程度である。設定時間Tcが経過していないときには、第五の流路92の使用を維持するためにステップS113に移行する。一方、設定時間Tcが経過しているときには、第四の流路91か、第四の流路91及び第六の流路93か、その何れかに切り替えるためにステップS119に移行する。
【0055】
ステップS119では、切替フラグをfc=0にリセットする。
続くステップS120では、運転モードが暖房に設定されているか否かを判定する。運転モードが暖房に設定されているときにはステップS121に移行する。一方、運転モードが除湿暖房に設定されているときにはステップS122に移行する。
ステップS121では、開閉弁41、43、45、51、54、55の開閉を制御し、第四の流路91を使用するように切り替えてから所定のメインプログラムに復帰する。すなわち、開閉弁51、54、55を閉鎖し、開閉弁41、43、45を開放する。
ステップS122では、開閉弁41、43、45、51、54、55の開閉を制御し、第四の流路91及び第六の流路93を使用するように切り替えてから所定のメインプログラムに復帰する。すなわち、開閉弁54、55を閉鎖し、開閉弁41、43、45、51を開放する。
【0056】
ステップS123では、冷房モードや除湿冷房モードから暖房モードや除湿暖房モードへと切り替えられた直後であるか否かを判定する。暖房モードや除湿暖房モードへと切り替えられた直後であるときにはステップS120に移行する。一方、暖房モードや除湿暖房モードへと切り替えられた直後ではないときにはステップS124に移行する。
ステップS124では、第四の流路91か、第四の流路91及び第六の流路93か、その何れかに切り替えてから予め定めた設定時間Th(第二の設定時間)が経過したか否かを判定する。設定時間Thは例えば30分程度である。設定時間Thが経過していないときには、第四の流路91か、第四の流路91及び第六の流路93か、その何れかの使用を維持するためにステップS120に移行する。一方、設定時間Thが経過しているときには、第五の流路92に切り替えるためにステップS125に移行する。
ステップS125では、切替フラグをfc=1にセットしてからステップS113に移行する。
【0057】
《作用》
次に、第2実施形態の主要な作用効果について説明する。
コントローラ18は、運転モードを暖房とするときに、第四の流路91を使用しつつ、定期的に第五の流路92に切り替える。具体的には、第四の流路91の使用を開始してから設定時間Thが経過したときに(S124の判定が“Yes”)、第五の流路92に切り替える(S116)。そして、第五の流路92の使用を開始してから設定時間Tcが経過したときに(S118の判定が“Yes”)、第四の流路91に切り替える(S121)。このように、暖房時に、熱媒体を循環させる経路にサブクールコア22を含めることで、サブクールコア22に熱媒体やオイルが取り残されることを抑制できる。したがって、暖房時における熱交換性能や潤滑性能の改善を図ることができる。
【0058】
除湿暖房のときも同様であり、第四の流路91及び第六の流路93を使用しつつ、定期的に第五の流路92に切り替える。具体的には、第四の流路91及び第六の流路93の使用を開始してから設定時間Thが経過したときに(S124の判定が“Yes”)、第五の流路92に切り替える(S116)。そして、第五の流路92の使用を開始してから設定時間Tcが経過したときに(S118の判定が“Yes”)、第四の流路91及び第六の流路93に切り替える(S122)。このように、除湿暖房時に、熱媒体を循環させる経路にサブクールコア22を含めることで、サブクールコア22に熱媒体やオイルが取り残されることを抑制できる。
【0059】
第五の流路92は、そもそも冷房用の流路であるため、室内熱交換ユニット12に導入された空気は、蒸発器15で冷却及び除湿されることになる。したがって、第五の流路92を使用するときには、内気だけを導入し(S113)、エアミックスダンパ17で凝縮器16を迂回する流路を閉鎖し(S114)、送風ファン14を停止する(S115)。このように、既に温められた内気だけを循環させることで、冷えた外気を導入する場合よりも、車室内に涼しい空気が供給されることを抑制できる。また、エアミックスダンパ17で凝縮器16を迂回する流路を閉鎖することで、導入された内気は全て凝縮器16を通過するので、車室内に涼しい空気が供給されることを抑制できる。また、送風ファン14を停止することで、車室内に涼しい空気が供給されることを抑制できる。
【0060】
また、前述した比較例と比べて、回路構成を変更する必要はなく、新たに部品を追加する必要もないので、実施が容易である。また、暖房モード及び暖房除湿モードのときに、第五の流路92としてサブクールコア22を通過するのは、高圧の熱媒体であるため、低圧の熱媒体と比べて圧力損失の影響は小さくて済む。
なお、暖房モードで第四の流路91を使用しているときに、開閉弁51が閉鎖されていることで、蒸発器15に熱媒体が取り残されることになる。とはいえ、蒸発器15から逆止弁53に至るまでの領域においては、熱媒体が気相として存在しており、密度が低いため、熱媒体の循環量への影響は小さい。
その他、前述した第1実施形態と共通する部分については、同様の作用効果が得られるものとし、詳細な説明は省略する。
【0061】
《応用例1》
第2実施形態では、第四の流路91か、第四の流路91及び第六の流路93の双方かを使用している状態で、設定時間Thが経過したときに第五の流路92に切り替える構成について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、外気温や湿度からサブクールコア22に着霜しているか否かを判定し、着霜していると判定されたときに、第五の流路92に切り替えてもよい。また、着霜していると判定されたときに、設定時間Thを短縮補正したり、設定時間Tcを延長補正したりしてもよい。このように、サブクールコア22の着霜状態に応じて第五の流路92を使用することにより、サブクールコア22の着霜を効果的に抑制できる。
【0062】
《応用例2》
第2実施形態では、運転モードを暖房又は除湿暖房とするときに、定期的に第五の流路92を使用するように切り替えているが、これに限定されるものではない。要は、長期間にわたって熱媒体及びオイルがサブクールコア22に取り残されたままとなることを抑制できればよい。したがって、イグニッションスイッチのONに伴って暖房又は除湿暖房が起動した直後、あるいは冷房や除湿冷房から暖房又は除湿暖房に切り替えられた直後に、一回だけ第五の流路92を使用するようにしてもよい。したがって、設定時間Tcが経過した以降は、第四の流路91か、第四の流路91及び第六の流路93の双方かを継続して使用する。これによれば、ステップS124、S125の処理を省略し、演算処理を簡略化できる。
【0063】
《変形例》
第1及び第2実施形態では、熱媒体と共に循環するオイルによって潤滑が行なわれる給油式の圧縮機47について説明したが、これに限定されるものではなく、無給油式の圧縮機を採用してもよい。
第1及び第2実施形態では、室内熱交換ユニット12において、暖房用の熱源として、凝縮器16のみを設けているが、これに限定されるものではなく、別途、他の熱源を追加してもよい。例えば、温度によって抵抗値が変化するPTCヒータ(PTC:Positive Temperature Coefficient)を設けてもよい。これによれば、暖房効果が向上する。
第1及び第2実施形態では、車両用の空気調和装置について説明したが、これに限定されるものではなく、他の用途の空気調和装置に適用してもよい。
【0064】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。