(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被検体内に超音波を送波し各々が被検体内に延び二次元的に配列された複数本の走査線の各々に沿う向きの反射超音波を受波して該各々の走査線上に並ぶ離散的な各点の受信データを得、該受信データに基づいて該被検体内の血流に関する二次元分布情報を抽出して表示する超音波診断装置において、
前記複数本の走査線上の離散的な各点の血流の、自己相関ベクトルを表わすデータおよびパワーを表わすデータを算出する相関演算部と、
前記相関演算部で算出された、前記各点の自己相関ベクトルの実部および虚部の各々のデータ、並びに、該各点のパワーのデータについて平滑化処理を行なう平滑化処理部と、
前記平滑化処理部による平滑化処理後のデータに基づいて、前記各点の血流の、速度を表わすデータおよび速度分散を表わすデータを算出する速度/分散演算部と、
前記速度/分散演算部で算出された血流の速度を表わすデータおよび速度分散を表わすデータ、並びに、前記平滑化処理部での平滑化処理後のパワーを表わすデータの中から選択された今回の表示対象のデータについて表示用の画素データに変換するデジタルスキャンコンバータと、
前記デジタルスキャンコンバータでの変換後の画素データに基づく画像を表示する表示部とを備え、
前記平滑化処理部が、前記相関演算部で算出された、前記各点の自己相関ベクトルの実部および虚部の各々のデータ、並びに、該各点のパワーのデータについて、該各点のデータと該各点の周囲の点のデータとを用いた重み付け処理であって、かつ、該各点のパワーの変数として定義されパワーが大きいほど該各点のデータの重みが大きく該各点の周囲の点のデータの重みを小さくした重みを用いた重み付け平均化処理を実行するものであることを特徴とする超音波診断装置。
前記デジタルスキャンコンバータでの変換後の画素データについて平滑化処理を行なう第2の平滑化処理部を備え、前記表示部が、該第2の平滑化処理部での平滑化後の画素データに基づく画像を表示するものであって、
前記第2の平滑化処理部が、前記デジタルスキャンコンバータでの変換後の各画素の画素データについて、該各画素の画素データと該各画素の周囲の画素の画素データとを用いた重み付け処理であって、かつ、該各画素のパワーの変数として定義されパワーが大きいほど該各画素の画素データの重みが大きく該各画素の周囲の画素のデータの重みを小さくした重みを用いた重み付け平均化処理を実行するものであることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、CFMを使った診断の分野が広がりつつあり、更なる高画質化が求められている。すなわち、細い血管についても高分解能で表示し、血管内の血流の分布についても高分解能で識別できる画像を表示することが求められている。
【0005】
ここで、反射超音波の受波により得られる受信データには、被検体内での超音波の干渉等に起因するかなり強いノイズが含まれており、平滑化処理を行なってノイズを低減させることが必須である。ただし、強い平滑化処理を行なうとノイズは目立たなくなるものの分解能が低下して高画質化の要求を満足することができず、一方、平滑化処理が弱いとノイズの多い画像となって、この場合も高画質化の要求を満足することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、この問題に鑑み、ノイズの低減と分解能の向上を高いレベルで両立させた超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の超音波診断装置は、被検体内に超音波を送波し各々が被検体内に延び二次元的に配列された複数本の走査線の各々に沿う向きの反射超音波を受波して各々の走査線上に並ぶ離散的な各点の受信データを得、その受信データに基づいて被検体内の血流に関する二次元分布情報を抽出して表示する超音波診断装置であって、
複数本の走査線上の離散的な各点の血流の、自己相関ベクトルを表わすデータおよびパワーを表わすデータを算出する相関演算部と、
相関演算部で算出された、各点の自己相関ベクトルの実部および虚部の各々のデータ、並びに、各点のパワーのデータについて平滑化処理を行なう平滑化処理部と、
平滑化処理部による平滑化処理後のデータに基づいて、各点の血流の、速度を表わすデータおよび速度分散を表わすデータを算出する速度/分散演算部と、
速度/分散演算部で算出された血流の速度を表わすデータおよび速度分散を表わすデータ、並びに、平滑化処理部での平滑化処理後のパワーを表わすデータの中から選択された今回の表示対象のデータについて表示用の画素データに変換するデジタルスキャンコンバータと、
デジタルスキャンコンバータでの変換後の画素データに基づく画像を表示する表示部とを備え、
上記平滑化処理部が、相関演算部で算出された、各点の自己相関ベクトルの実部および虚部の各々のデータ、並びに、各点のパワーのデータについて、各点のデータと各点の周囲の点のデータとを用いた重み付け処理であって、かつ、各点のパワーの変数として定義されパワーが大きいほど各点のデータの重みが大きく各点の周囲の点のデータの重みを小さくした重みを用いた重み付け平均化処理を実行するものであることを特徴とする。
【0008】
パワーが大きいときは、信号レベルが高くノイズが相対的に小さい受信データを得ることができる。本発明は、この点に着目して完成したものである。すなわち、本発明は、パワーが大きい点ほどその点のデータの重みが大きくその点の周囲の点のデータの重みを小さくした重みを用いた重み付け平均化処理を実行する平滑化処理部を備えたため、ノイズの低減と分解能の向上を高いレベルで両立させた高画質のCFM画像が生成、表示される。
【0009】
ここで、本発明の超音波診断装置において、
デジタルスキャンコンバータでの変換後の画素データについて平滑化処理を行なう第2の平滑化処理部を備え、上記表示部が、その第2の平滑化処理部での平滑化後の画素データに基づく画像を表示するものであって、
上記第2の平滑化処理部が、デジタルスキャンコンバータでの変換後の各画素の画素データについて、各画素の画素データと該各画素の周囲の画素の画素データとを用いた重み付け処理であって、かつ、各画素のパワーの変数として定義されパワーが大きいほど各画素の画素データの重みが大きく各画素の周囲の画素のデータの重みを小さくした重みを用いた重み付け平均化処理を実行するものであることが好ましい。
【0010】
この第2の平滑化処理部を備えると、さらに高画質のCFM画像を生成、表示することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パワーに応じた重みで重み付け平均化処理を実行することによって、ノイズの低減と分解能の向上を高いレベルで両立させた高画質のCFM画像が生成、表示される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態および比較例について説明する。
【0014】
図1は、超音波診断装置の構成を示したブロック図である。このブロック図に示す範囲では、本発明の実施形態も比較例も共通である。
【0015】
この超音波診断装置100には、超音波探触子10が備えられている。この超音波探触子10は、人体の体表に宛がわれ送信回路20からの送信信号に応じて人体内に超音波を送波し、反射超音波を受波する。この超音波探触子10での受波により得られた電気信号は受信回路30で増幅されて受信信号が生成される。
【0016】
超音波探触子10からは、人体内に延びる複数本の走査線11それぞれに沿う向きに超音波が送波される。これら複数の走査線11は、人体内の深さ方向に向かって扇状に広がっている。超音波は人体内を進行するのに時間を要し、受信回路30で得られる受信信号は、各走査線11の深さ方向の情報が時間軸方向に並んだ信号である。
【0017】
受信回路20から出力された受信信号は、Bモード処理部40とCFM処理部50とに入力される。ただし、Bモード処理部40での処理の対象となる受信信号は、例えば、超音波の送波、受波を各走査線11について順次に1回ずつ行ない、それを何度も繰り返すという走査方法で得た受信信号であり、CFM処理部50での処理の対象となる受信信号は、例えば、超音波の送波、受波を同じ走査線11について複数回(N回)連続的に行ない、その複数回の送波、受波を終えてから次の走査線11に沿う送波、受波に移るという走査方法で得た受信信号である。この走査方法の相違等は、広く知られた技術であり、ここでの詳細説明は省略する。
【0018】
Bモード処理部40では、受信回路30から入力されてきた受信信号を基にして、人体内における超音波の反射強度分布を表わしたBモード画像を生成するBモード処理が行われる。このBモード処理も広く知られた技術であり、ここで説明する実施形態の特徴部分でもないため、これ以上の説明は割愛する。
【0019】
CFM処理部50では、受信回路30から入力されてきた受信信号を基にして、人体内の各点の血流の速度、速度分散、パワーを算出するCFM処理が行われる。このCFM処理も広く知られた技術であるが、以下の実施形態の説明に不可欠な要素なので、この後、その概要を説明する。
【0020】
Bモード処理部40で得られたBモードデータおよびCFM処理部50で得られたCFMデータ(血流の速度、速度分散、パワーを表わすデータ)は、デジタルスキャンコンバータ60に入力される。Bモード処理部40で得られたBモードデータおよびCFM処理部50で得られたCFMデータは、各走査線11に沿う、人体内の深さ方向についてのデータ配列を有するデータである。デジタルスキャンコンバータ60は、これらのBモードデータやCFMデータを表示部70での画像表示に適した配列の表示データに変換する役割を担っている。表示部70には、このデジタルスキャンコンバータ60で得られた表示データに基づく画像が表示される。
【0021】
次に、CFM処理部50について説明する。
【0022】
受信回路30で生成された受信信号は、CFM処理部50に入力されると、そのCFM処理部50を構成する直交検波部51に入力されて直交検波が行われ、さらにMTIフィルタ52に入力されて血流についての信号成分が抽出される。このMTIフィルタ52から出力された信号は、相関演算部53に入力される。
【0023】
この相関演算部53では、MTIフィルタ52からの出力数(超音波の送波、受波を同じ走査線11について連続的に行なった数)をNとしたとき、
【0024】
【数1】
に基づいて、人体内の各点の自己相関ベクトル(DENO,NUME)と、各点のパワー(POWER)が算出される。
【0025】
さらに、速度/分散演算部54では、相関演算部53で算出された自己相関ベクトル(DENO,NUME)とパワー(POWER)を使って、
【0026】
【数2】
により、人体内の各点の血流速度とその速度分散が算出される。
【0027】
さらに、データ選択・ブランク処理部55では、操作者の操作に基づいて、今回表示部に、血流速度、速度分散、パワーのうちのどれを表示するかが選択されるとともに、パワーがごく小さく、ほとんどノイズとみられる領域について画像を表示させないようにするブランク処理が行われる。
【0028】
データ選択・ブランク処理部55からの出力データは、デジタルスキャンコンバータ60を経由して表示部70に入力され、表示部70に画像として表示される。
【0029】
この
図1に示したブロック図は、超音波診断装置100の全体構成についての説明用であり、ここでは、平滑化処理については省かれている。そこで、次に、平滑化処理を実行するブロックを明示した図を示し、その平滑化処理について説明する。以下では先ず、比較例について説明し、その説明を踏まえて、本発明の実施形態の平滑化処理について説明する。
【0030】
図2は、平滑化処理部を明示した、比較例としての超音波診断装置のブロック図である。ただし、ここでは、
図1に示した超音波探触子10、送信回路20、受信回路30、Bモード処理部40、並びに、CFM処理部50の直交検波部51およびMTIフィルタ52については図示を省略し、CFM処理部50の相関演算部53以降の構成部分、デジタルスキャンコンバータ60、および表示部70のみを示している。
【0031】
この
図2には、相関演算部53と速度/分散演算部54との間に平滑化処理部81が示されており、また、デジタルスキャンコンバータ60と表示部70との間にもう1つの平滑化処理部82が示されている。
【0032】
図3は、相関演算部から出力された自己相関ベクトル(DENO,NUME)とパワー(POWER)のデータ配列を示した模式図である。
【0033】
相関演算部53からの出力データは、各走査線11(
図1参照)ごとに深さ方向に並ぶデータ配列となっている。また、各走査線11は、人体内の深い位置ほど互いに広がり、全体として扇状を成している。
【0034】
ここでは、方位方向(走査線11が並ぶ方向)をm、深さ方向をnとし、ここに示す3本の走査線11_m−1,11_m,11_m+1のうちの中央の走査線11_m上の、深さnの点を着目点とし、その着目点(m,n)についての平滑化処理について説明する。
【0035】
ここでは、平滑化前のデータを、平滑化後のデータを、それぞれ、
【0037】
図2に示した比較例としての超音波診断装置100Aの平滑化処理部81では、平滑化係数KD,KLを、
【0038】
【数4】
としたとき、深さ方向について、
【0039】
【数5】
に従って平滑化処理が行われる。
【0040】
また、この平滑化処理部81では、方位方向については、
【0041】
【数6】
に従って平滑化処理が行われる。
【0042】
これら、深さ方向についての(5)式に従う平滑化処理と、方位方向についての(6)式に従う平滑化処理は、血管が延びる方向あるいは血流の向きに応じていずれか一方が選択される。あるいは、深さ方向について平滑化演算を行い、その深さ方向についての平滑化演算後のデータを使って方位方向について平滑化演算を行うなど、深さ方向と方位方向との双方の方向について平滑化処理を行なうこともある。
【0043】
図4は、デジタルスキャンコンバータから出力される表示データのデータ配列を示した図である。
【0044】
デジタルスキャンコンバータ60から出力される表示データは、表示部70での表示に合わせて、2次元的に等間隔に並んだデータ配列となっている。
【0045】
ここでは、デジタルスキャンコンバータ60から出力された平滑化前のデータ、および平滑化処理部82により平滑化された後のデータを、
【0046】
【数7】
と表現する。これらのデータDCFM(x,y)、DCFMsm(x,y)は、その点(x,y)の、血流速度、速度分散、および血流パワーを代表する標記である。
【0047】
このとき、
図2に示す比較例としての超音波診断装置100Aの平滑化処理部82では、平滑化係数KVを、
【0049】
【数9】
に従う平滑化処理が行われる。
【0050】
ここで、
図2に示す比較例としての超音波診断装置100Aの平滑化処理部81,82における(5)式、(6)式、(9)式に従う平滑化処理に用いている平滑化係数KD,KL,KVは、(4)式、(8)式に示す通り、いずれもパワーとは無関係の係数である。すなわち、
図2に示す比較例としての超音波診断装置100Aの平滑化処理部81,82では、パワーが大きく相対的にノイズが小さい点であっても、パワーが小さく相対的にノイズが大きい点であっても、同一の平滑化処理がおこなわれる。このため、パワーが大きく相対的にノイズが小さい点では、もっと高分解能の画像が得られるところ、必要以上に分解能が下がり、一方、パワーが小さく相対的にノイズが大きい点では、平滑化後の残存ノイズが多く、その残存ノイズに起因する画質低下が生じるおそれがある。
【0051】
この点を踏まえ、以下、本発明の実施形態の説明に移る。
【0052】
図5は、本発明の第1実施形態の超音波診断装置の構成を示したブロック図である。ただし、ここでは、
図2に示した比較例と同様、
図1に示した超音波探触子10、送信回路20、受信回路30、Bモード処理部40、並びに、CFM処理部50の直交検波部51およびMTIフィルタ52については図示を省略し、CFM処理部50の相関演算部53以降の構成部分、デジタルスキャンコンバータ60、および表示部70のみを示している。
【0053】
この
図5に示す第1実施形態としての超音波診断装置100Bの相関演算部53の後段には、
図2に示した比較例としての超音波診断装置100Aに備えられている平滑化処理部81に代わり、その平滑化処理部81とは異なる平滑化処理を行なう平滑化処理部83が備えられている。この
図5に示した超音波診断装置100Bの、この平滑化処理部83以外の要素は、デジタルスキャンコンバータ60の後段に配置されている平滑化処理部82を含め、
図2に示した比較例としての超音波診断装置100Aの構成要素と同一である。そこで、この
図5に示した超音波診断装置100Bの説明にあたり、以下では、比較例と相違する平滑化処理部83における平滑化処理についてのみ説明する。
【0054】
この平滑化処理部83は、相関演算部53で算出された各点のパワー(POWER)に応じて重み付けの係数を制御し、その制御された係数を使った重み付け平均化演算による平滑化処理が実行される。具体的には、上述の(4)式の平滑化係数KD,KLに代わり、ここでは、パワー(POWER)に応じて変化する平滑化係数
【0056】
図6は、平滑化係数KD,KLの、パワー(POWER)を変数とした関数形の一例を示した図である。横軸はパワー(POWER)、縦軸は、平滑化係数KD(
図6(A))あるいは平滑化係数KL(
図6(B))である。
【0057】
ここでは、この
図6に示すように、パワー(POWER)が小さいと大きな値、そしてパワー(POWER)が大きくなるほど小さな値に変化する平滑化係数KD,KLが採用される。
【0058】
そして、
図5に示す平滑化処理部83では、
図2に示す比較例としての平滑化処理部81における深さ方向の平滑化演算である前述の(5)式に代わり、
【0059】
【数11】
の演算式が採用され、
図2に示す比較例としての平滑化処理部81における方位方向の平滑化演算である前述の(6)式に代わり、
【0061】
(11)式、(12)式は、パワー(POWER)が大きい点については、その点自身の重みが大きく、かつ、周囲の点の重みが小さい重み付け平均演算を行い、パワー(POWER)が小さい点については、その点自身の重みを下げ、かつ、周囲の点の重みを上げた重み付け平均演算を行うことを表わしている。こうすることにより、(5)式、(6)式を採用した比較例と比べ、パワー(POWER)が大きく相対的にノイズが小さい点では分解能が向上しパワー(POWER)が小さく相対的にノイズが大きい点ではノイズが抑えられるという、各点ごとに最適な平滑化処理が行われることになる。すなわち、この第1実施形態の超音波診断装置100Bによれば、ノイズの低減と分解能の向上を高いレベルで両立させた高画質の画像が表示される。
【0062】
なお、
図2に示す比較例の場合と同じく、深さ方向についての(11)式に従う平滑化処理と、方位方向についての(12)式に従う平滑化処理は、血管が延びる方向あるいは血流の向きに応じていずれか一方が選択される。あるいは、深さ方向について平滑化演算を行い、その深さ方向についての平滑化演算後のデータを使って方位方向について平滑化演算を行うなど、深さ方向と方位方向との双方の方向について平滑化処理を行なってもよい。
【0063】
また、(11)式と(12)式との双方を使って深さ方向と方位方向との双方の方向について平滑化処理を行なっても、方位方向mと深さ方向nとの双方にずれた4点(
図3に示す、点(m−1,n−1),点(m+1,n―1),点(m−1,n+1),点(m+1,n+1)の4点)は重み付け平均演算から外れることになる。そこで、方位方向mと深さ方向nとの双方の方向について平滑化演算を行うにあたっては、それらの4点も平滑化演算に加えてもよい。これら4点を平滑化演算に加えるにあたっては、それら4点に関する平滑化係数KXとして、
図6に示す、深さ方向についての平滑化係数KD(POWER)や方位方向についての平滑化係数KL(POWER)と同様な、新たな関数形を定義してもよく、あるいは、深さ方向についての平滑化係数KD(POWER)と方位方向についての平滑化係数KL(POWER)とを使って、例えば、
【0064】
【数13】
のように算出してもよい。
【0065】
図7は、本発明の第2実施形態の超音波診断装置の構成を示したブロック図である。ただし、ここでも、
図2に示した比較例や
図5に示した第1実施形態と同様、
図1に示した超音波探触子10、送信回路20、受信回路30、Bモード処理部40、並びに、CFM処理部50の直交検波部51およびMTIフィルタ52については図示を省略し、CFM処理部50の相関演算部53以降の構成部分、デジタルスキャンコンバータ60、および表示部70のみを示している。
【0066】
この
図7に示す第2実施形態としての超音波診断装置100Cのデジタルスキャンコンバータ60の後段には、
図2に示した比較例としての超音波診断装置100Aや
図5に示した第1実施形態としての超音波診断装置100Bに備えられている平滑化処理部82に代わり、その平滑化処理部82とは異なる平滑化処理を行なう平滑化処理部84が備えられている。この
図7に示した超音波診断装置100Cの、この平滑化処理部84以外の要素は、相関演算部53の後段に配置されている平滑化処理部82を含め、
図5に示した第1実施形態としての超音波診断装置100Bの構成要素と同一である。そこで、この
図7に示した超音波診断装置100Cの説明にあたり、以下では、第1実施形態と相違する平滑化処理部84における平滑化処理についてのみ説明する。
【0067】
この平滑化処理部84は、デジタルスキャンコンバータ60から出力された各画素のパワー(POWER)
【0068】
【数14】
に応じて重み付けの係数を制御し、その制御された係数を使っての重み付け平均化演算による平滑化処理が実行される。具体的には、上述の(8)式の平滑化係数KVに代わり、ここでは、パワー(POWER)に応じて変化する平滑化係数
【0070】
図8は、平滑化係数KVの、パワー(POWER)を変数とした関数形に一例を示した図である。横軸はパワー(POWER)、縦軸は、平滑化係数KVである。
【0071】
図6に示す平滑化係数KV,KLと同様、ここでも、この
図8に示すように、パワー(POWER)が小さいと大きな値、パワー(POWER)が大きくなるほど小さな値に変化する平滑化係数KVが採用される。
【0072】
そして、
図7に示す平滑化処理部84では、
図2に示す比較例および
図5に示す第1実施形態の平滑化処理部82における平滑化演算である前述の(9)式に代わり、
【0074】
(15)式は、パワー(POWER)が大きい画素については、その画素自身の重みが大きく、かつ、周囲の画素の重みが小さい重み付け平均演算を行い、パワー(POWER)が小さい画素については、その画素自身の重みを下げ、かつ、周囲の画素の重みを上げた重み付け平均演算を行うことを表わしている。こうすることにより、(9)式を採用する第1実施形態と比べてもさらに、各画素ごとに最適な平滑化処理が行われることになる。
【0075】
このように、この第2実施形態の超音波診断装置100Cによれば、相関演算部53から出力された、速度/分散演算部54における速度や分散を算出する前のデータと、デジタルスキャンコンバータ60から出力された表示データとの双方のデータについて、パワー(POWER)を変数とする重みを採用した重み付け平均化演算による平滑化処理を実行している。このため、この第2実施形態の場合、相関演算部53から出力されたデータについてのみ、パワー(POWER)を変数とする重みを採用した重み付け平均化演算による平滑化処理を実行する第1実施形態と比べ、一層高画質の画像が表示される。
【0076】
なお、第1実施形態および第2実施形態のいずれにおいても、平滑化処理は、着目点(
図3に示す点(m,n))や着目画素(
図4に示す画素(x,y))の周りの、その着目点や着目画素のすぐ隣に隣接する点(画素)のみを重み付け平均演算に用いたが、着目点(着目画素)からさらに離れた点(画素)についても重み付け平均演算に用いてもよい。