(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の中空円柱は、吸込水槽内の液位に追従して浮動できるように、揚水管に対して上下方向に移動自在に取り付けられている。特許文献1の立軸ポンプでは、据付床の取付孔に挿通して設置する際、中空円柱が移動して取付孔の周囲に干渉するため、設置に関する作業性が悪い。
【0005】
本発明は、渦防止部材を備える立軸ポンプの設置に関する作業性の向上を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、据付床の取付孔から前記据付床の下部の吸込水槽内へ突出された筒状の揚水管と、前記揚水管の下側外周部に
水平方向へ旋回可能に取り付けられ、前記吸込水槽内での吸込渦の発生を抑制するための渦防止部材と、前記揚水管の軸線から前記渦防止部材の外端までの寸法が前記取付孔の半径よりも小さい第1位置と、前記揚水管の軸線から前記渦防止部材の外端までの寸法が前記取付孔の半径よりも大きい第2位置と
の間の任意の位置に、前記渦防止部材
を移動させて保持可能な作動部材とを備
え、前記作動部材は、互いに近接又は離反するように水平方向へ相対的に移動可能な一対の接続部を有し、前記一対の接続部のうちの一方が前記渦防止部材に接続されている、立軸ポンプを提供する。
【0007】
この立軸ポンプによれば、作動部材によって渦防止部材を第1位置に移動させて保持できるため、渦防止部材を取り付けた揚水管を取付孔に挿通させて設置する作業性を向上できる。また、取付孔への揚水管の挿通後には、作動部材によって渦防止部材を第1位置から第2位置に移動させることで、吸込水槽内での吸込渦の発生を抑制できる。特に、渦防止部材は、吸込水槽内の液位に追従して浮動するのではなく、作動部材によって第2位置に保持されるため、揚水管から径方向外側へ離れた位置に発生する吸込渦を効果的に抑制できる。
【0008】
前記渦防止部材は、前記揚水管に対して水平方向に旋回可能に取り付けられてい
るため、吸込水槽内の液位に影響されることなく、確実に吸込渦の発生を抑制できる。
【0009】
前記渦防止部材は、前記揚水管の外周部に周方向へ間隔をあけて複数配置されており、前記作動部材は、前記複数の渦防止部材にそれぞれ配置され、
前記一対の接続部のうちの他方が前記揚水管側に接続されている。又は、前記渦防止部材は、前記揚水管の外周部に周方向へ間隔をあけて複数配置されており、前記作動部材
の前記一対の接続部は、前記複数の渦防止部材のうち周方向に隣接する2個の渦防止部材に
それぞれ接続されている。
【0010】
2個の渦防止部材を1個の作動部材で移動させる場合、前記第2位置に移動された前記渦防止部材の水平方向の旋回を規制する規制部を有する。この態様によれば、揚水管の径方向の所定位置に、第2位置に広げた渦防止部材を確実に配置できる。
【0011】
前記作動部材
は、互い回転可能に接続された第1アーム及び第2アームと、互い回転可能に接続された第3アーム及び第4アームと、前記一対の接続部のうちの一方を有し、前記第1アームと前記第3アームを回転可能に接続した第1接続部材と、前記一対の接続部のうちの他方を有し、前記第2アームと前記第4アームを回転可能に接続した第2接続部材と、前記第1アーム及び前記第2アームの接続部分に配置されたナットと、前記第3アーム及び前記第4アームの接続部分に配置された軸受けと、前記ナットを貫通し、前記軸受けに軸支されたネジ軸とを有するパンタグラフジャッキである
。
又は、前記作動部材は、前記一対の接続部のうちの一方を有するシリンダ本体と、前記一対の接続部のうちの他方を有し、前記シリンダ本体に対して進退可能なロッドとを有するシリンダである。
これらの態様によれば、第1位置と第2位置に渦防止部材を確実に移動させて保持できる。
【0012】
前記据付床の上部に、前記作動部材を操作するための操作部を備える。この態様によれば、据付床への揚水管の設置後に、渦防止部材を第1位置から第2位置に広げることができる。また、メンテナンス時には、渦防止部材を第2位置から第1位置に引き込むことで、揚水管を据付床上に引き上げることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の立軸ポンプでは、渦防止部材は、揚水管に近づけた第1位置と揚水管から離反させた第2位置とに、作動部材によって移動可能かつ保持可能に取り付けられている。よって、渦防止部材を取り付けた揚水管を、取付孔に挿通させて据付床に設置する作業性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1から
図4は、本発明の第1実施形態に係る立軸ポンプ10を示す。立軸ポンプ10は、排水機場の吸込水槽1に流入した雨水等の液体を下流側へ排出するものであり、吸込水槽1の上方を覆う据付床2に設置されている。立軸ポンプ10は、ポンプケーシング12、羽根車24、及び回転軸25を備える。ポンプケーシング12には、吸込水槽1内での吸込渦の発生を抑制するための渦防止部材28が配置されている。本実施形態では、渦防止部材28を備えるポンプケーシング12の設置に関する作業性を向上する。
【0017】
(立軸ポンプの概要)
図1に示すように、ポンプケーシング12は、据付床2に形成された円形状の取付孔3に対して、上方から差し込んで据付床2に固定されるものである。ポンプケーシング12は、取付孔3から吸込水槽1内へ突出された揚水管14と、据付床2上に配管された吐出管20とを備える。ポンプケーシング12は、揚水管14の軸線A1と取付孔3の軸線A2とが一致するように、据付床2に設置されている。
【0018】
揚水管14は、ストレート管15、ベーンケース16、及び吸込ベルマウス17を備える。ストレート管15は、直径が一様な配管であり、取付孔3内から取付孔3の下部にかけて延びている。ベーンケース16は、径方向外向きに膨出した概ね楕円筒状の配管であり、ストレート管15の下端に接続されている。吸込ベルマウス17は、下向きに漸次拡径した概ね円錐筒状の配管であり、ベーンケース16の下端に接続されている。吸込ベルマウス17の下端開口は、吸込水槽1内の液体を吸い込むための吸込口18であり、吸込水槽1の底(図示せず)に対して定められた間隔をあけて配置されている。
【0019】
吐出管20は、揚水管14の上端に接続された曲がり管からなる吐出エルボ21と、据付床2上に配置された直管からなる送水管(図示せず)とを備える。吐出エルボ21と送水管との間には、軸方向と径方向に変形可能な可撓管(図示せず)が介設されている。吐出エルボ21の下端(揚水管14に接続されている)側には、揚水管14を含むポンプケーシング12を据付床2に固定するためのベースプレート22が一体に設けられている。ベースプレート22は、吐出エルボ21の外周から径方向外向きに突出しており、取付孔3の内径よりも大きい外径を有する。ベースプレート22は、ストレート管15の上端側に設けてもよい。
【0020】
羽根車24は、ベーンケース16の内側下部に回転可能に配置されており、回転軸25の下端に固定されている。
【0021】
回転軸25は、吐出エルボ21を貫通して揚水管14の軸線A1に沿って配置されている。回転軸25の上端は、吐出エルボ21から外方へ突出されている。吐出エルボ21の回転軸25が貫通する部分は、軸封装置26によって液密にシールされている。
【0022】
ポンプケーシング12から突出した回転軸25の上端には、駆動モータ(図示せず)が接続されている。駆動モータの駆動により回転軸25を回転させると、回転軸25と一体に羽根車24が回転することで、吸込水槽1内の液体がポンプケーシング12内を通って下流側へ排出される。
【0023】
立軸ポンプ10の運転により吸込水槽1内の液位が低下すると、吸込水槽1内に吸込渦が発生する。吸込渦は、液面から吸込口18に向けて生じる水流であり、吸込水槽1内の液位が低くなるに従って順に成長するクボミ渦、断続渦、及び連続渦を含む。吸込水槽1内の液位がベーンケース16よりも高い状態では、液面付近の流速が遅いため、吸込渦は発生しない。排水によりベーンケース16の上部まで液位が低下すると液面の流速が速くなり、吸込口18に向けた水流が発生することで、液面の一部が窪むクボミ渦が出現する。ベーンケース16の下部まで液位が低下すると、揚水管14内に空気が断続的に吸い込まれる断続渦に成長する。そして、吸込ベルマウス17の部分まで液位が低下すると、揚水管14内に空気が連続的に吸い込まれる連続渦に成長する。これら全ての渦を消滅(渦の発生を防止)するために、渦防止部材28が配置されている。
【0024】
(渦防止部材の概要)
図2Aから
図3に示すように、渦防止部材28は、揚水管14の下側外周部に配置した取付枠30に移動可能に取り付けられている。渦防止部材28は、吸込ベルマウス17からベーンケース16の上部にかけて、揚水管14の軸線A1に沿って鉛直方向に延びる平面視円形状の部材である。渦防止部材28は、中空状であってもよいし、中実状であってもよい。
【0025】
渦防止部材28は、取付枠30に対して周方向に間隔をあけて4個配置されており、作動部材45によって個別に移動可能に構成されている。本実施形態の渦防止部材28は、
図2Bに示すように揚水管14の外周部に近づいた第1位置と、
図2Aに示すように揚水管14の外周部から離反した第2位置とに、作動部材45によって移動され、保持される。第1位置と第2位置は、本実施形態では取付孔3の半径rを基準として設定しているが、取付孔3が非円形状である場合には取付孔3の内接円の半径を基準として設定する。
【0026】
図2B及び
図3に示すように、第1位置では、揚水管14の軸線A1から渦防止部材28の外端までの寸法S1が、取付孔3の半径rよりも小さい。これにより、渦防止部材28を搭載したポンプケーシング12を取付孔3に挿通させて、据付床2に設置できるとともに、据付床2から取り外すことができる。
【0027】
図2A及び
図3に示すように、第2位置では、揚水管14の軸線A1から渦防止部材28の外端までの寸法S2が、取付孔3の半径rよりも大きい。吸込渦は、揚水管14の近傍(取付孔3の直径2r内)ではなく、揚水管14から径方向外側へ離れた位置(取付孔3の直径2r外)で発生することが多い。つまり、吸込水槽1内の吸込渦が発生し易い領域に渦防止部材28が配置されるように、第2位置が設定されている。これにより、吸込渦の発生を効果的に抑制できる。
【0028】
(渦防止部材の取付構造)
図2Aから
図3に示すように、ポンプケーシング12には、渦防止部材28を移動可能に取り付けるための取付枠30が、吸込ベルマウス17からベーンケース16の上部にかけて設けられている。取付枠30は、横枠部材32、縦枠部材38、及び連結部材40を備える。また、取付枠30には、縦枠部材38に対して渦防止部材28を第1位置と第2位置に回転させ、所定位置に保持するための作動部材45が配置されている。
【0029】
横枠部材32は、揚水管14の軸線A1を中心とする円環状のパイプであり、吸込ベルマウス17の下部に配置されている。横枠部材32の内径は吸込口18の直径よりも大きく、横枠部材32の外径は取付孔3の直径2rよりも小さい。横枠部材32は、吸込口18の上方に間隔をあけて位置するように、吸込ベルマウス17の外周部に設けた枠体33に固定されている。
【0030】
枠体33は、概ね逆T字形状であり、横枠部材32の下端を保持する円環状の保持部34と、横枠部材32の内端を位置決めする位置決め部35とを備える。枠体33は、周方向に間隔をあけて設けた複数のリブ36を介して吸込ベルマウス17に設けられている。枠体33を含む横枠部材32も、吸込渦の発生を抑制する機能を有する。
【0031】
縦枠部材38は、横枠部材32に対して下端が接合され、ベーンケース16の上部に向けて揚水管14の軸線A1に沿って配置した直管である。この縦枠部材38の上部から下部にかけて延びるように、渦防止部材28が配置されている。縦枠部材38は、吸込水槽1内への液体の流入、及び可動式の渦防止部材28による負荷で変形しない剛体(金属)からなる。縦枠部材38は、上部や中間部分をベーンケース16に固定してもよし、下部を吸込ベルマウス17に固定してもよい。
【0032】
縦枠部材38は、横枠部材32に対して周方向に間隔をあけて、渦防止部材28と同数の4本配置されている。
図3に示すように、縦枠部材38は、ポンプケーシング12を軸線A1に沿って上方から見て、液体の流入方向Fにおいて揚水管14の軸線A1を通る線上には配置されていない。また、縦枠部材38は、液体の流入方向Fにおいて揚水管14の軸線A1を通る線に対して鏡面対称に配置されている。
【0033】
連結部材40は、縦枠部材38に対して渦防止部材28を回転可能、つまり揚水管14に対して渦防止部材28を水平方向に旋回可能に連結するもので、渦防止部材28の上下2箇所に配置されている。連結部材40は、縦枠部材38の外側に回転可能に取り付けられた筒部材41と、筒部材41から径方向外向きに突出したアーム42とを備える。アーム42の先端には渦防止部材28が接合されている。アーム42の全長は、渦防止部材28が設定した第2位置に配置される寸法に設定されている。
【0034】
作動部材45は、縦枠部材38の上端と渦防止部材28の上部とに回転可能に接続されたパンタグラフジャッキからなる。作動部材45は、4個の渦防止部材28にそれぞれ配置されており、渦防止部材28を第1位置と第2位置に個別に移動させる。
図4を参照すると、作動部材(パンタグラフジャッキ)45は、4本のアーム46A〜46D、2個の接続部材48,48、及び1本のネジ軸57を備える。
【0035】
アーム46A〜46Bの全長は全て同一寸法であり、第1位置から第2位置にかけた移動距離に応じて設定されている。各アーム46A,46Bの一端は、ピン47によって回転可能に接続され、各アーム46C,46Dの一端は、ピン47によって回転可能に接続されている。各アーム46A,46Cの他端は、ピン49によって一方の接続部材48に回転可能に接続され、各アーム46B,46Dの他端は、ピン49によって他方の接続部材48に回転可能に接続されている。
【0036】
接続部材48は、渦防止部材28に固定されたブラケット52、又は縦枠部材38に固定されたブラケット54を回転可能に接続する接続部50を備える。接続部50は、水平方向に延びる凹溝からなり、垂直方向に貫通するピン孔51を備える。渦防止部材28のブラケット52は、接続部50に差込可能な板厚の逆L字状部材であり、ピン孔51に一致するピン孔53を備える。縦枠部材38のブラケット54は、接続部50に差込可能な板厚の平板部材であり、ピン孔51に一致するピン孔55を備える。接続部50,50とブラケット52,54は、ピン56,56によって回転可能に接続されている。
【0037】
ネジ軸57の下端は、アーム46C,46Dの交差部分に配置された軸受け58に回転可能に接続されている。ネジ軸57の上端は、アーム46A,46Bの交差部分に配置されたナット(図示せず)を貫通して上方に突出している。ネジ軸57の上端には、四角柱状の頭部59が設けられている。頭部59の操作によりネジ軸57を正転させると、一対の接続部材48,48が近接するようにアーム46A〜46Dが移動する。頭部59の操作によりネジ軸57を逆転させると、一対の接続部材48,48が離反するようにアーム46A〜46Dが移動する。これらの移動状態は、ネジ軸57とナットの間の抵抗により保持される。
【0038】
図2Aから
図3に示すように、縦枠部材38のブラケット54は、渦防止部材28を回転させる向きの反対側に突出されている。作動部材45は、接続部材48,48を離反させることで渦防止部材28を押圧し、縦枠部材38に対して渦防止部材28を回転させて、揚水管14に対して渦防止部材28を近接させた第1位置に移動させる。また、作動部材45は、接続部材48,48を近接させることで渦防止部材28を引っ張り、縦枠部材38に対して渦防止部材28を回転させて、揚水管14に対して渦防止部材28を離反させた第2位置に移動させる。
【0039】
第1位置又は第2位置に移動された渦防止部材28は、ネジ軸57を回転させない限り、その位置に保持される。また、渦防止部材28は、第1位置と第2位置に限られず、作動部材45によって第1位置と第2位置の間の任意の位置に保持される。よって、渦防止部材28を吸込水槽1内の吸込渦が発生し易い領域に配置することで、吸込渦の発生を抑制できる。
【0040】
(渦防止部材の動作)
図1に示すように、立軸ポンプ10には、吸込水槽1の下部に位置する渦防止部材28を、据付床2の上部で操作するための操作部材60が設けられている。操作部材60は、作動部材45の頭部59に接続したロッド61A〜61Cと、上端のロッド61Aに着脱可能に配置した操作部65とを備える。
【0041】
第1のロッド61Aと第2のロッド61B、並びに第2のロッド61Bと第3のロッド61Cは、自在継手62によって角度を変更可能に接続されている。ロッド61Aの上端は、ベースプレート22の貫通孔22aを通して据付床2の上側に突出されている。ロッド61Aの上端には、操作部65としてのレバーを取り付けるための接続部63が設けられている。ロッド61Cの下端には、作動部材45の頭部59に接続するための接続部64が設けられている。
【0042】
立軸ポンプ10を据付床2に設置する際には、作動部材45によって渦防止部材28を第1位置に回転させる。この状態では、揚水管14の軸線A1から渦防止部材28の外端までの寸法S1が取付孔3の半径rよりも小さい。しかも、作動部材45によって渦防止部材28は、自由に回転することなく、第1位置に保持されている。よって、渦防止部材28を備える揚水管14を上方から取付孔3内に挿通させる作業性を向上できる。
【0043】
取付孔3への揚水管14の挿通後には、操作部材60を操作して渦防止部材28を第1位置から第2位置に移動させる。この作業は、揚水管14を取付孔3に挿通した直後に行ってもよいし、揚水管14を据付床2に設置した後に行ってもよい。このように、渦防止部材28を第2位置に広げることで、吸込水槽1内での吸込渦の発生を渦防止部材28によって抑制できる。
【0044】
特に、渦防止部材28は、吸込水槽1内の液位に追従して浮動するのではなく、揚水管14に対して水平方向に旋回可能に取り付けられ、作動部材45によって第2位置に保持される。よって、渦防止部材28の位置が吸込水槽1内の液位に影響されないため、揚水管14から径方向外側へ離れた位置での吸込渦の発生を渦防止部材28によって効果的に抑制できる。
【0045】
操作部65の操作によりロッド61A〜61Cを回転させることで、作動部材45のネジ軸57を連動して回転させることができる。よって、据付床2上から渦防止部材28の位置を必要に応じて調整できる。例えば、吸込水槽1内を目視するための覗き窓を据付床2に設けることで、吸込渦が発生する領域を確認し、その領域に渦防止部材28を配置すれば、吸込渦の発生を確実に防止できる。
【0046】
メンテナンス時に立軸ポンプ10を据付床2から引き上げる際には、操作部65の操作により渦防止部材28を第2位置から第1位置に回転させ、取付孔3の直径2rよりも小さくなるように渦防止部材28を引き込む。これにより、取付孔3の周囲に渦防止部材28を干渉させることなく、揚水管14を据付床2から作業性よく引き抜くことができる。
【0047】
このように、本実施形態の立軸ポンプ10では、据付床2への取り付け及び取り外しに関する作業性を向上できる。しかも、渦防止部材28によって吸込水槽1内での吸込渦の発生を効果的に抑制できるため、ポンプケーシング12の振動や据付床2の劣化を防止できる。
【0048】
(第2実施形態)
図5A及び
図5Bは第2実施形態の立軸ポンプ10を示す。この第2実施形態では、4個の渦防止部材28A〜28Dのうち、隣接する2個の渦防止部材28Aと28B、並びに28Cと28Dを、それぞれ1個の作動部材45で第1位置と第2位置に旋回させるようにしている。また、取付枠30には、第2位置を越える渦防止部材28A〜28Dの水平方向の旋回を規制するための規制部67が設けられている。
【0049】
詳しくは、作動部材45は、
図4に示す第1実施形態と同様のパンタグラフジャッキである。一方の接続部材48,48には、吸込水槽1への液体の流入方向Fの上流側に位置する渦防止部材28A,28Cのブラケット52,52が回転可能に接続されている。他方の接続部材48,48には、吸込水槽1への流入方向Fの下流側に位置する渦防止部材28B,28Dのブラケット52,52が回転可能に接続されている。吸込水槽1への液体の流入方向Fに沿ってアーム46A〜46Dが延びるように作動部材45を配置することで、液流による作動部材45への負荷(影響)を抑制できる。
【0050】
図5Aでは、一対の渦防止部材28A,28Bを第1位置に移動させ、他の一対の渦防止部材28C,28Dを第2位置に移動させた状態を示している。作動部材45は、接続部材48,48を近接させることで渦防止部材28A,28Bを引っ張り、縦枠部材38に対して渦防止部材28A,28Bを回転させて、これらを第1位置に保持する。また、作動部材45は、接続部材48,48を離反させることで渦防止部材28C,28Dを押圧し、縦枠部材38に対して渦防止部材28C,28Dを回転させて、これらを第2位置に保持する。
【0051】
規制部67は、横枠部材32から径方向外向きに突出する棒状部材である。渦防止部材28A〜28Dを縦枠部材38に連結するための連結部材40には、規制部67に当接する当接部68が設けられている。当接部68は、下側の連結部材40のアーム42から下向きに突出する棒状部材である。
【0052】
渦防止部材28A〜28Dを第1位置から第2位置に回転させる際には、渦防止部材28A,28Bのうちの一方と渦防止部材28C,28Dのうちの一方とが、先に第2位置まで回転する。すると、当接部68が規制部67に当接することで、一方の渦防止部材は、それ以上の回転が規制される。作動部材45の操作を続けると、第2位置まで回転していない他方の渦防止部材だけが回転し、第2位置まで回転する。
【0053】
この第2実施形態の立軸ポンプ10では、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。しかも、4個の渦防止部材28A〜28Dを2個の作動部材45で回転させる構成であるため、部品点数を削減し、コストダウンを図ることができる。
【0054】
(第3実施形態)
図6は第3実施形態の立軸ポンプ10を示す。この第3実施形態では、作動部材45として、
図4に示すパンタグラフジャッキの代わりに油圧式又は気圧式のシリンダを用いている。シリンダ本体70が縦枠部材38のブラケット54に回転可能に接続され、ロッド71が渦防止部材28のブラケット52に回転可能に接続されている。シリンダ本体70には、据付床2上に配置したポンプ(図示せず)に接続した可撓性及び耐圧性を有するチューブ(図示せず)が接続されている。
【0055】
図6では、左側の2個の渦防止部材28,28を第1位置に移動させ、右側の2個の渦防止部材28,28を第2位置に移動させた状態を示している。作動部材45は、ロッド71を進出させることで渦防止部材28を押圧し、縦枠部材38に対して渦防止部材28を回転させて、渦防止部材28を第1位置に保持する。また、作動部材45は、ロッド71を後退させることで渦防止部材28を引っ張り、縦枠部材38に対して渦防止部材28を回転させて、渦防止部材28を第2位置に保持する。
【0056】
この第3実施形態の立軸ポンプ10では、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。また、作動部材45としてシリンダを用いる場合でも、第2実施形態のように、隣接する2個の渦防止部材28,28を1個の作動部材45で旋回させることもできる。また、作動部材45は、パンタグラフジャッキやシリンダに限られず、歯車機構であってもよく、必要に応じて変更が可能である。
【0057】
(第4実施形態)
図7は第4実施形態の立軸ポンプ10を示す。この第4実施形態では、揚水管14の径方向に沿って渦防止部材28を移動(回転)させるようにした点で、第1実施形態から第3実施形態の立軸ポンプ10と相違する。
【0058】
渦防止部材28は、下部に湾曲部を有する概ねJ字状に形成されている。渦防止部材28の下端と上端には、軸着部73A,73Bが設けられている。
【0059】
横枠部材32には、上向きに突出する軸受部74が設けられている。この軸受部74には、渦防止部材28の下端の軸着部73Aが回転可能に取り付けられている。なお、図示のように、縦枠部材は、設けない構成としてもよいが、周方向に隣接する渦防止部材28,28の間に位置するように設けてもよい。
【0060】
作動部材45の一方の接続部材48は、揚水管14のベーンケース16に固定されている。作動部材45の他方の接続部材48は、渦防止部材28のブラケット52の一端に回転可能に接続され、このブラケット52の他端が軸着部73Bに回転可能に接続されている。
【0061】
図7では、左側の渦防止部材28を第1位置に移動させ、右側の渦防止部材28を第2位置に移動させた状態を示している。作動部材45は、接続部材48,48を近接させることで渦防止部材28を引っ張り、下端の軸着部73Aを中心として渦防止部材28を回転させて、渦防止部材28を揚水管14に近接させた第1位置に保持する。また、作動部材45は、接続部材48,48を離反させることで渦防止部材28を押圧し、下端の軸着部73Aを中心として渦防止部材28を回転させて、渦防止部材28を揚水管14に離反させた第1位置に保持する。
【0062】
この第4実施形態の立軸ポンプ10では、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。また、作動部材45は、第1実施形態と同様のパンタグラフジャッキによって構成しているが、第3実施形態と同様のシリンダによって構成してもよい。
【0063】
(第5実施形態)
図8は第5実施形態の立軸ポンプ10を示す。この第5実施形態では、第4実施形態と同様に、揚水管14の径方向に沿って渦防止部材28を移動(回転)させる。また、第5実施形態では、縦枠部材38の外周に上下方向に移動可能な可動部材76を配置し、この可動部材76を移動させることで、渦防止部材28を第1位置と第2位置に移動させる。
【0064】
渦防止部材28の上端と中間部分には、軸着部73A,73Bが設けられている。また、縦枠部材38の上端には、渦防止部材28の上側の軸着部73Aを回転可能に取り付けるための軸受部74が設けられている。渦防止部材28の全長は、第2位置(
図8において右側)に移動させた状態で、吸込渦が発生する領域に下端が位置する寸法に設定されている。
【0065】
可動部材76は、内径が横枠部材32の外径よりも大きく、外径が取付孔3(
図1参照)の内径よりも小さい円環状リングである。可動部材76には、周方向に間隔をあけて軸受部77が設けられている。軸受部77には、棒状のリンク78の一端が回転可能に接続されている。リンク77の他端は、渦防止部材28の中間部分の軸着部73Bに回転可能に接続されている。
【0066】
作動部材(図示せず)は、第1実施形態と同様のパンタグラフジャッキ、又は第3実施形態と同様のシリンダからなる。作動部材は、揚水管14又は縦枠部材38に一端が固定され、他端が可動部材76に固定されている。
【0067】
図8では、左側の渦防止部材28を第1位置に移動させ、右側の渦防止部材28を第2位置に移動させた状態を示している。作動部材によって可動部材76を下向きに移動させ、可動部材76を横枠部材32上に移動させる。これにより、リンク78を介して渦防止部材28を下向きに引っ張り、上端の軸着部73Aを中心として渦防止部材28を回転させることで、渦防止部材28を揚水管14に近接させた第1位置に保持する。また、作動部材によって可動部材76を上向きに移動させ、可動部材76を横枠部材32から離反させる。これにより、リンク78を介して渦防止部材28を上向きに押し上げ、上端の軸着部73Aを中心として渦防止部材28を回転させることで、渦防止部材28を揚水管14から離反させた第2位置に保持する。
【0068】
この第5実施形態の立軸ポンプ10では、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0069】
(第6実施形態)
図9は第6実施形態の立軸ポンプ10を示す。この第6実施形態では、操作部材60を作動部材45として用い、操作部材60によって縦枠部材38を直接回転させることで、渦防止部材28を第1位置と第2位置に回転させる。
【0070】
横枠部材32には、縦枠部材38を回転可能に取り付けるための軸受部材80が、周方向に間隔をあけて設けられている。この軸受部材80には、縦枠部材38の下端が回転可能に取り付けられている。この縦枠部材38には連結部材40の筒部材41が固定され、この連結部材40のアーム42に渦防止部材28が固定されている。また、縦枠部材38の上端には、操作部材60のロッド61Cが固定されている。
【0071】
この第6実施形態の立軸ポンプ10では、操作部65としてのレバーを回転させることで、第1実施形態と同様に、渦防止部材28を第1位置と第2位置に回転させることができる。また、操作部65又はロッド61Aの上端をベースプレート22に位置決めすることで、渦防止部材28を第1位置又は第2位置に保持できる。よって、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0072】
なお、本発明の立軸ポンプ10は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0073】
例えば、渦防止部材28の設置数は、3個以下にしてもよいし、5個以上にしてもよく、吸込水槽1の形状に合わせて必要に応じて変更が可能である。但し、第2実施形態のように、2個の渦防止部材28,28を1個の作動部材45によって連結する場合には、渦防止部材28の設置数は偶数にする。また、渦防止部材28は、液体の流入方向Fにおいて揚水管14の軸線A1を通る線上に配置されてもよいし、液体の流入方向Fに関連なく配置されていてもよいし、揚水管14の周方向に不等間隔で配置されていてもよい。
【0074】
作動部材45は、パンタグラフジャッキやシリンダに限られず、1自由度系の作動部品又は作動機構であれば、必要に応じて変更可能である。また、作動部材45を動作させる操作部材60の構成も、必要に応じて変更が可能である。
【0075】
第5実施形態に示す可動部材76を周方向に所定角度で分割した複数の分割部材で構成し、個々の分割部材を渦防止部材として、作動部材によって径方向外向き移動させてもよい。