(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリアミン化合物が、ポリエチレンアミン、ポリエチレンイミン及びポリアミドアミンのうちの少なくとも何れかであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の地盤注入用薬液組成物。
前記ポリオールが、50質量%以上がプロピレンオキサイドであるアルキレンオキサイドが付加されてなるポリエーテルポリオールであることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の地盤注入用薬液組成物。
【背景技術】
【0002】
従来より、不安定な岩盤や地盤の安定強化のための地盤改良用途や、人工構造物のクラックや空隙を充填する空洞充填用途において採用される方策の一つとして、無機乃至有機系グラウトの注入があり、ある程度の効果を上げている。例えば、特許文献1では、そのようなグラウトの一つとして、ポリオール及び/又は有機ポリアミン化合物、有機ポリイソシアネート化合物、並びに水からなる土質等の安定化用注入薬液組成物が、用いられている。しかし、かかる特許文献1に開示の薬液組成物は、それによって形成される発泡体の発泡倍率が全体的に高くなるところから、充分な固結強度を実現することが出来ず、大量の漏水や湧水に対しては、その水圧を支える強度が得られずに、完全に止水することが難しいという問題を内在するものであった。
【0003】
また、大量の漏水や湧水を止水する際には、注入した薬剤の一部が漏水や湧水と共に流出することで、水の白濁が惹起され、環境に悪影響をもたらすという問題があった。そして、注入薬剤が水に触れた際の発泡倍率が大きくなると、漏水や湧水と共に流出する発泡体の体積も大きくなり、環境への悪影響が増大するという問題も内在している。
【0004】
そこで、そのような水の白濁の発生防止乃至はその抑制対策として、特許文献2には、ポリオール及びアミン化合物を含んでなる(A)成分とイソシアネート化合物を含んでなる(B)成分とからなる、実質的に水を含まない薬液組成物において、かかるポリオールが、ポリエーテルポリオールを含有するものであり、またアミン化合物として、1級又は2級アミノ基を有するアミン化合物を含有せしめてなる土質の安定強化止水用注入薬液組成物が、提案されている。しかしながら、この特許文献2に記載の薬液組成物は、白濁の発生を或る程度は抑制し得るものではあるものの、その効果は、未だ充分なものではなかったのである。
【0005】
加えて、湧水の流れを止水すべく、上述の如き薬液組成物を注入する場合において、ポリオール及びアミン化合物を含む(A)成分とポリイソシアネートを含む(B)成分とを混合して注入したときから、それらが反応して、発泡・硬化が始まるまでには、タイムラグが発生することとなるが、湧水のある地盤に注入したときに、このタイムラグのために、薬液組成物が水と混ざり、希釈されることによって、注入した薬液組成物も湧水の流れによって流れ、充分な止水が出来なくなる問題や、湧水に流された薬液組成物が、水質汚染の原因になるという問題が発生する。このため、その対策として、薬液の粘度を上げることや、反応速度を上げる等の対策の採用が考えられるのであるが、粘度を上げた場合には、薬液を注入する際の注入圧が過大となって、装置や設備への負荷が大きくなる問題が発生し、また反応速度を上げた場合には、硬化が速くなり過ぎて、薬液が亀裂や地山内に充分に浸透しないという問題が惹起されるようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、大量の漏水や湧水下でも流出せずに止水することが出来、且つ水と触れた際の水の白濁を効果的に防止し、また薬液の流出を有利に抑え得るようにした薬液組成物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、本発明は、上記した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組合せにおいて、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載から把握される発明思想に基づいて理解されるものであることが、考慮されるべきである。
【0009】
(1) ポリオールを主成分とするA液と、ポリイソシアネートを主成分とするB液とか らなる地盤注入用薬液組成物において、前記A液中のポリオールの90質量%以上 がポリエーテルポリオールにて構成されていると共に、かかるA液が、1分子内に 3つ以上の1級及び/又は2級アミノ基を有するポリアミン化合物を含有している ことを特徴とする地盤注入用薬液組成物。
(2) 前記ポリアミン化合物が、脂肪族ポリアミンであることを特徴とする前記態様(
1)に記載の地盤注入用薬液組成物。
(3) 前記ポリアミン化合物が、ポリエチレンアミン、ポリエチレンイミン及びポリア ミドアミンのうちの少なくとも何れかであることを特徴とする前記態様(1)又は 前記態様(2)に記載の地盤注入用薬液組成物。
(4) 前記ポリアミン化合物が、前記A液中に、0.1質量%以上、2質量%未満の割 合で含有せしめられていることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(3)の 何れか1つに記載の地盤注入用薬液組成物。
(5) 前記A液が、金属触媒及び3級アミン触媒のうちの少なくとも何れかを含有して いることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(4)の何れか1つに記載の地 盤注入用薬液組成物。
(6) 前記金属触媒が、カリウム塩であることを特徴とする前記態様(5)に記載の地 盤注入用薬液組成物。
(7) 前記ポリオールが、50質量%以上がプロピレンオキサイドであるアルキレンオ キサイドが付加されてなるポリエーテルポリオールであることを特徴とする前記態 様(1)乃至前記態様(6)の何れか1つに記載の地盤注入用薬液組成物。
(8) 前記ポリエーテルポリオールを与えるアルキレンオキサイドの95質量%以上が 、プロピレンオキサイドであることを特徴とする前記態様(7)に記載の地盤注入 用薬液組成物。
(9) 前記ポリエーテルポリオールが、開始剤としての多価アルコールにアルキレンオ キサイドを付加したものである前記態様(7)又は前記態様(8)に記載の地盤注 入用薬液組成物。
(10) 前記ポリオール中、開始剤にアミン化合物を用いて得られたポリエーテルポリ オールの含有量が、5質量%以下の割合とされていることを特徴とする前記態様(
7)乃至前記態様(9)の何れか1つに記載の地盤注入用薬液組成物。
(11) 前記ポリエーテルポリオールの水酸基価が、10〜600mgKOH/gであ ることを特徴とする前記態様(7)乃至前記態様(10)の何れか1つに記載の地 盤注入用薬液組成物。
(12) 前記A液及び前記B液の少なくとも何れか一方に、難燃剤が含有せしめられて いることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(11)の何れか1つに記載の 地盤注入用薬液組成物。
(13) 前記難燃剤が、前記ポリオールの100質量部に対して、5〜50質量部の割 合で前記A液に含有せしめられていることを特徴とする前記態様(12)に記載の 地盤注入用薬液組成物。
(14) 前記難燃剤が、前記ポリイソシアネートの100質量部に対して、5〜40質 量部の割合で前記B液に含有せしめられていることを特徴とする前記態様(12) に記載の地盤注入用薬液組成物。
(15) 発泡倍率が1〜15倍である硬化反応生成物を与えるものであることを特徴と する前記態様(1)乃至前記態様(14)の何れか1つに記載の地盤注入用薬液組 成物。
(16) 前記A液と前記B液とが、体積基準にて、1:0.5〜1:3の割合において 用いられることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(15)の何れか1つに 記載の地盤注入用薬液組成物。
【発明の効果】
【0010】
そして、このような本発明に従う薬液組成物の構成によれば、以下に列挙せる如き各種の効果が奏され得ることとなるのである。
(1)薬液を注入するときに、水と接触しても、水が白濁することがないために、その注入作業を有利に実施することが出来る。
(2)薬液は、その注入に際して、A液とB液をミキサーで混合するまでは、取扱いが容易であって、注入施工性に優れ、また混合後は、直ちに、水に希釈され難い反応生成物を形成して、湧水への溶出が効果的に抑制乃至は阻止されることとなるため、水に流され難くなる特徴を発揮する。
(3)薬液が水に希釈されて流出することが効果的に防止されることとなるために、水質汚染が有利に防止され、また薬液が流されることによる反応生成物の物性の低下が、効果的に防止されることとなる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
要するに、本発明は、A液とB液とからなる二液型の薬液組成物において、かかるA液の主成分となるポリオールの90質量%以上の割合を占めるように、ポリエーテルオールを用いると共に、1分子内に3つ以上の1級及び/又は2級アミノ基を含有するポリアミン化合物を、A液に更に加えることによって、それらポリエーテルポリオールとポリアミン化合物のB液中のポリイソシアネートに対する反応性の違いを利用して、混合直後でも湧水に希釈され難い薬液組成物が形成されるように構成したものであり、これにより、所期の目的を達成したところに、大きな特徴を有しているのである。そして、それらA液やB液は、具体的には、以下の如く構成されることとなるのである。
【0012】
<A液>
先ず、本発明に従う地盤注入用薬液組成物を構成する二液のうちの一つであるA液中には、その主成分となるポリオールの90質量%以上を占めるように、ポリエーテルポリオールが含有せしめられ、更にそれと共に、1分子内に3つ以上の1級及び/又は2級アミノ基を含有するポリアミン化合物が、必須の成分として含有せしめられることとなる。
【0013】
(ポリオール)
そこにおいて、必須成分の一つであるポリオールを構成するポリエーテルポリオールとしては、特に限定されるものではなく、従来から薬液組成物におけるポリオール成分として用いられているものが、同様に使用され得るところであって、例えば、公知の各種のポリエーテルポリオールの中から、適宜に選択して、用いることが出来る。また、そのようなポリエーテルポリオールは、単独で使用することが出来る他、適宜に組み合わせて併用することも可能である。なお、このポリエーテルポリオールとしては、特に限定されるものではないものの、少なくとも2個以上の活性水素基を有する化合物、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類;エチレンジアミン等のアミン類;エタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類等の化合物を開始剤として、これに、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加乃至は付加重合させることにより製造されたもの等が好適に用いられることとなる。ここで、A液の主成分となるポリオールは、ポリエーテルポリオールの単独にて構成されていてもよく、或いは他の公知のポリオール(例えば、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリマーポリオール等)と混合されていてもよいが、本発明に従うポリエーテルポリオールの効果を有利に得るためには、かかるポリオールの90質量%以上、好ましくは95質量%以上が、ポリエーテルポリオールからなるものである必要がある。
【0014】
また、本発明においては、ポリエーテルポリオールの中でも、付加されるアルキレンオキサイドの50質量%以上がプロピレンオキサイドであるポリエーテルポリオールが好ましく用いられ、特に、アルキレンオキサイドの80質量%以上、更にはアルキレンオキサイドの95質量%以上がプロピレンオキサイドであるポリエーテルポリオールの使用が推奨される。なお、アルキレンオキサイドの一つであるエチレンオキサイドの使用割合が高くなると、薬液組成物の親水性が高くなって、水に希釈され易くなる問題があり、更にその他のアルキレンオキサイドを用いる場合にあっては、高価で、経済的ではなく、またハンドリング性等に問題を生じるようになる。
【0015】
特に、本発明において好適に用いられるポリエーテルポリオールとしては、開始剤にアミン化合物を用いていないものである。即ち、開始剤として、アミン化合物とは異なる、活性水素基が2個以上の化合物を用いて、これに、プロピレングリコールの所定量を付加せしめて得られるポリエーテルポリオールが、有利に用いられるのである。具体的に、そのようなポリエーテルポリオールとしては、プロピレングリコールを開始剤とするポリプロピレングリコール、グリセリンを開始剤とするポリプロピレングリコール、ビスフェノールAを開始剤とするポリプロピレングリコール等が挙げられる。換言すれば、プロピレングリコール、グリセリン、ビスフェノールA等の多価アルコールを開始剤として、これにプロピレンオキサイドを付加してなるポリプロピレングリコールが、望ましく用いられることとなる。開始剤にアミン化合物を用いて得られたポリエーテルポリオールを用いる場合にあっては、それが、ポリオール中の5質量%以下の割合となるように調整され、より好ましくは1質量%以下の割合とされるのである。開始剤にアミン化合物を用いると、水に希釈され易くなり、水の白濁の恐れが惹起されるようになるからである。
【0016】
そして、上述の如きポリエーテルポリオールは、一般に、200〜4000程度の分子量を有していることが望ましく、中でも250〜3200程度の分子量を有していることがより望ましく、特に300〜2000程度の分子量を有していることが、更に望ましいのである。かかる分子量が200よりも小さくなると、水に希釈され易く、白濁や流出の恐れがあり、また分子量が4000よりも大きくなると、A液の粘度が高くなる問題や固結強度の低下を引き起こす恐れがある。また、そのようなポリエーテルポリオールの水酸基価としては、10〜600mgKOH/gの範囲が好ましく、特に好ましくは20〜400mgKOH/gである。この水酸基価が10mgKOH/g未満であると、固結強度の低下を引き起こすという問題があり、また600mgKOH/gを超えるようになると、水に希釈されて流出するという問題を生じるようになるからである。
【0017】
(ポリアミン化合物)
また、本発明において用いられるポリアミン化合物は、1分子内に3つ以上の1級及び/又は2級アミノ基を含有する、換言すれば1級アミノ基及び2級アミノ基のうちの少なくとも何れか一方を、合計で3つ以上、分子内に有するポリアミン化合物を用いる必要がある。このようなポリアミン化合物を用いることにより、二液(A液及びB液)の混合直後でも、湧水に希釈され難くなるところから、本発明の目的が有利に達成され得るのである。これに対して、1分子内に3つ未満の1級及び/又は2級アミノ基を含有するポリアミン化合物を用いた場合には、水の白濁の発生の抑制が不充分となり、更に二液の混合直後では、薬液が湧水に希釈されて流されるような問題が、惹起されるようになるのである。なお、ポリアミン化合物としては、具体的には、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のようなポリエチレンアミン、ポリエチレンイミン、またはダイマー酸ポリアミドアミン等のポリアミドアミンを挙げることが出来る。これらのポリアミン化合物は、単独で用いてもよく、また2種類以上を混合して用いても何等差し支えない。
【0018】
さらに、かかるポリアミン化合物の含有量としては、A液中において、0.1質量%以上が有利に採用されることとなる。なお、ポリアミン化合物のA液中の含有量が、0.1質量%よりも少なくなると、反応が充分に進まず、薬液が湧水に流され易く、流出や白濁の恐れ等の問題が惹起され易くなる。また、ポリアミン化合物の含有量が多くなると、反応が急激に起こるようになるため、A液とB液との混合を悪化させる恐れがあるところから、一般に2質量%未満、好ましくは1.8質量%以下、特に1.5質量%以下とすることが望ましい。従って、ポリアミン化合物の含有量としては、有利には、0.1〜1.8質量%が採用され、特に好ましくは0.2〜1.5質量%が採用されることとなる。
【0019】
ところで、本発明にあっては、A液に、更に触媒を含有せしめることも有効である。そこで使用される触媒としては、金属触媒及び3級アミン触媒のうちの少なくとも何れかを含有させることが出来、中でも金属触媒及び3級アミン触媒の両方の触媒を併用することが、より好ましい。なお、金属触媒の含有量は、ポリオールの100質量部に対して0.1〜5質量部程度、好ましくは0.5〜2.5質量部程度である。また、3級アミン触媒は、ポリオールの100質量部に対して、一般に0.1〜5質量部程度、好ましくは0.5〜2.5質量部程度の割合で、含有せしめられることとなる。これらの触媒の含有量が、0.1質量部よりも少ないと、反応に対する寄与が低下し、強度発現が遅くなる問題があり、一方5質量部よりも多くなると、反応が速くなり過ぎて、反応速度の制御が困難となる問題がある。また、金属触媒と3級アミン触媒を併用することによって、薬液組成物を単に混合した場合や、その混合物が湧水と接した場合の何れの場合も、直ちにA液とB液とが反応し、必要十分な強度の反応生成物を形成させることが出来る。
【0020】
(金属触媒)
本発明において、上記の如き金属触媒としては、公知のものを特に制限なく用いることが出来、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、錫、鉛、ビスマス、亜鉛、鉄、ニッケル、ジルコニウム、コバルト等の有機酸金属塩や有機金属錯体を用いることが出来る。その中で、有機酸金属塩としては、酢酸、オクチル酸、ネオデカン酸、ナフテン酸、ロジン酸等と上記金属との塩が挙げられ、また有機金属錯体としては、アセチルアセトン等と上記金属との錯体が挙げられる。具体的には、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム、オクチル酸ビスマス、オクチル酸鉛、オクチル酸鉄、オクチル酸錫、オクチル酸カルシウム、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ジルコニウム、ネオデカン酸ビスマス、ネオデカン酸亜鉛、ネオデカン酸鉛、ネオデカン酸コバルト、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウリレート;アセチルアセトン鉄、アセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトンジルコニウム、アセチルアセトンニッケル、アセチルアセトン錫等を挙げることが出来る。これらの金属塩や金属錯体は、その取扱い性の向上のため、ミネラルスピリット、有機酸、グリコール類、エステル類等の希釈剤に溶解させたものとして、用いてもよい。また、これらの金属触媒は、単体で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、好ましくは、カリウム、錫、鉛、ビスマス又は亜鉛の酢酸塩、オクチル酸塩、ネオデカン酸塩、ラウリル酸塩や、アセチルアセトン錯体が挙げられ、より好ましくはカリウムを金属として用いた触媒が、好適に用いられることとなる。
【0021】
(3級アミン触媒)
また、3級アミン触媒には、外部の水との接触により発泡が意図される場合において、イソシアネート成分と水との反応を促進する作用を有する泡化触媒、イソシアネート成分とポリオール成分との反応を促進する作用を有する樹脂化触媒、更にはイソシアネート成分の3量化を促進する作用を有するイソシアヌレート化触媒等があるが、それらは、何れも、公知のものの中から適宜に選択されることとなる。
【0022】
具体的には、泡化触媒としては、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’−トリエチルアミノエチルエタノールアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’−トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、トリエチルアミン等を挙げることが出来る。また、樹脂化触媒には、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、トリエチレンジアミン、33%トリエチレンジアミン・67%ジプロピレングリコール、N,N−ジメチルアミノヘキサノール、N,N−ジメチルアミノエタノール、N−メチル−N’−ヒドロキシエチルピペラジン、N−メチルモルフォリン、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール等が挙げられる。更に、イソシアヌレート化触媒としては、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N’,N”−トリス(ジメチルアミノプロピル)−ヘキサヒドロ−s−トリアジン等が挙げられる。これらの触媒は、単独で使用しても、又は2種以上を併用しても、何等差し支えない。更に、これらの中でも、樹脂化触媒又は3量化触媒が好適に用いられる。
【0023】
<B液>
(ポリイソシアネート)
一方、本発明に従う地盤注入用薬液組成物を構成する二液のうちの他の一つであるB液は、従来と同様に、ポリイソシアネートを必須成分として調製されてなるものであり、本発明にあっては、そのようなB液中におけるポリイソシアネートの含有量が70〜100質量%、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%となるように、調製されることが望ましい。かかるポリイソシアネートの含有量が70質量%よりも少なくなると、反応生成物の強度が低下する問題がある。そのため、B液におけるポリイソシアネートの割合は高い方が望ましく、B液をポリイソシアネートのみで形成しても、何等差支えない。
【0024】
さらに、本発明においては、かかるB液の必須成分であるポリイソシアネートは、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機系イソシアネート化合物であり、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(クルードMDI)、トリレンジイソシアネート、ポリトリレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートの他、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー、ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体等を挙げることが出来る。これらのポリイソシアネート成分は、単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。一般的には、反応性や経済性、取扱性等の観点から、MDIやクルードMDIが好適に用いられる。
【0025】
(反応の形態)
そして、本発明において、A液中の主成分となるポリオールを構成するポリエーテルポリオールと、ポリアミン化合物とは、B液におけるポリイソシアネートに対して、並行して反応せしめられることとなるが、それらA液とB液の混合直後には、反応速度の違いにより、ポリアミン化合物との間において優先的に反応が起こり、そして反応の後半において、ポリエーテルポリオールとイソシアネートが反応するようになる。このような反応形態により、硬化時間が大きく変化することなく、混合物は注入直後より増粘挙動を示し、水に希釈され難い反応生成物を形成することで、水に混入され難くなり、白濁も有利に防ぐことが可能となるのである。
【0026】
ところで、本発明に従う薬液組成物を構成する、上述の如きA液及びB液には、その使用目的に応じて、難燃剤が含有せしめられていることが好ましい。この難燃剤は、A液に添加される場合において、ポリオールの100質量部に対して5〜50質量部程度、好ましくは10〜30質量部程度の割合となるように、用いられることが望ましい。また、B液に添加される場合にあっては、ポリイソシアネートの100質量部に対して5〜40質量部程度、好ましくは10〜30質量部程度の割合となるように、用いられることが望ましい。
【0027】
また、そのような難燃剤としては、具体的には、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、ハロゲン化リン酸エステル、無機系難燃剤等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、また2種以上が併用して用いられてもよい。これらの中でも、環境への負荷が少なく、発泡性組成物の減粘剤としても機能する点で、リン酸エステル及びハロゲン化リン酸エステルが好ましく用いられる。なお、リン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリキシレニルホスフェート等が挙げられる。また、ハロゲン化リン酸エステルとしては、例えば、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、テトラキス(2−クロロエチル)ジクロロイソペンチルジホスフェート、ポリオキシアルキレンビス(ジクロロアルキル)ホスフェート等が挙げられる。
【0028】
さらに、本発明においては、上述の如きA液及びB液には、発泡剤として、水、炭化水素、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィン等を添加することも可能である。この発泡剤は、特に限定されるものではないが、水が好適に用いられる。水は、B液のポリイソシアネートと反応して、炭酸ガスを発生するものであるところから、発泡剤として機能するものである。また、かかる発泡剤の配合量は、特に限定されるものではないが、A液の100質量部に対して、0.1〜2質量部程度の割合とすることが好ましい。
【0029】
なお、本発明に従う薬液組成物を構成する、上述の如きA液及びB液には、それぞれ、その使用目的に応じて、従来と同様な各種の添加剤を添加せしめることが可能である。例えば、A液又はB液に対する添加剤としては、整泡剤、減粘剤等を挙げることが出来る。これらの添加剤は、A液を構成するポリオールの100質量部に対して0.1〜3質量部程度、好ましくは0.3〜1質量部程度の割合において用いられることとなる。また、B液を構成するポリイソシアネートの100質量部に対して0.1〜3質量部程度、好ましくは0.3〜2質量部程度の割合となるように、用いられることとなる。
【0030】
それらの添加剤の中で、整泡剤は、A液とB液との反応によって形成されるフォームのセル構造を均一に整えるために用いられるものである。この整泡剤としては、例えば、シリコーン、非イオン系界面活性剤、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、ポリシロキサンオキシアルキレン共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ヒマシ油エチレンオキシド付加物、ラウリル脂肪酸エチレンオキシド付加物等が挙げられ、これらの中でも、シリコーン及び非イオン系界面活性剤が好ましく用いられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上を併用して用いられてもよい。また、整泡剤の中では、シリコーン系整泡剤がより好ましく、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、ポリシロキサンオキシアルキレン共重合体等が好ましい。
【0031】
加えて、減粘剤は溶剤として用いられ、A液又はB液に溶解されて、それらの液を減粘する働きを有するものであって、そのような機能を有するものである限りにおいて、特に限定されるものではなく、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類;エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のエーテル類;プロピレンカーボネート等の環状エステル類;ジカルボン酸メチルエステル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;石油系炭化水素類等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上を併用して、用いられてもよい。
【0032】
また、かくの如きA液とB液から構成される本発明に従う地盤注入用薬液組成物の使用に際しては、それら両液が、使用時に混合されて、目的とする地盤、岩盤等に対して、注入や流し込み等によって導入され、反応硬化せしめられることにより、基礎を形成することとなる。なお、かかるA液とB液との混合体積比(A:B)は、A液中の水酸基含有量とB液中のイソシアネート基含有量によって適宜に変化せしめられることとなるが、一般に、体積基準にて、A:B=1:0.5〜1:3、好ましくは1:1〜1:2.5の範囲内において、採用されることとなる。また、それらA液やB液の使用方法についても、それらの使用の直前に、二液の混合が確実に行われ得る手法であれば、特に制限はなく、従来から公知の注入手法や流し込み手法が、適宜に採用されることとなる。
【0033】
そして、それらA液とB液とを混合したとき、本発明に従う薬液組成物にあっては、有利には、発泡倍率が1〜15倍となるように構成されることとなる。特に、湧水が出るような地盤へ注入するときに用いられる場合、発泡剤を実質的に配合することなく、発泡倍率は1〜2倍、好ましくは1〜1.5倍、より好ましくは1〜1.3倍となるように設定されることが望ましい。A液とB液とを混合して、水中又は水存在下の地盤へ注入したときの発泡倍率は、発泡剤となる外部の水と接触することで、1〜15倍となるように設定され、例えば、止水用途では5倍以下、地山固結用途では5〜15倍程度の発泡倍率となるように、目的に応じて適宜に調整されることとなる。
【0034】
特に、湧水のある地盤に注入された薬液組成物にあっては、水と接触しない部分は発泡が1〜2倍程度の低い発泡倍率に抑えられる。一方、水と接触せしめられる部分が、2倍程度よりも高い発泡倍率において発泡するという部分的乃至は段階的な発泡形態が実現されることとなるのである。このときの地盤に注入された反応生成物は、その外側の水と接触する部分の発泡倍率は高くなるが、内側の水と接触しない部分は発泡倍率の低い高強度の硬化反応生成物を与える形態となるために、湧水の水圧を充分に支え得る強度を有利に実現することが出来るのである。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明の実施例や比較例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0036】
なお、以下の実施例及び比較例において得られたA液とB液を用い、それらA液とB液とを混合して反応硬化せしめた時の反応生成物の発泡倍率とその硬化時間、反応生成物の燃焼性、水中で反応・発泡せしめた後の水の光透過率、更には水中での発泡後の薬液流出量については、それぞれ、以下の手法に従って、測定乃至は評価した。また、以下に示す「%」及び「部」は、何れも、質量基準である。
【0037】
(1)発泡倍率
25℃の温度に調整されたA液とB液とを、下記表1又は表2に示される所定の混合比において、全量が100mlとなるようにそれぞれ計量して、それらを、2Lのディスカップに収容し、充分に混合撹拌して、硬化せしめた。そして、硬化反応終了後の反応生成物の発泡高さを測定し、発泡倍率を求めた。
【0038】
(2)硬化時間
25℃の温度に調整されたA液とB液とを、表1又は表2に示される混合比で、混合した後、反応生成物からガスが発生し、発泡高さが変化しなくなる時間、又は反応生成物に串を刺して、内部まで刺さらなくなった時間を測定し、その何れか遅い方を、硬化時間の終点とした。
【0039】
(3)燃焼性
JIS−A−9511に規定される燃焼性に準拠し、試験法Bにて試験した。なお、燃焼性試験では120秒を超えると燃焼性が悪いものとする。
【0040】
(4)水中発泡下での白濁試験(光透過率)
25℃の温度に調整されたA液とB液とを、表1又は表2に示される混合比で、全量が100mlとなるよう計量して、混合した。そして、その混合の後、直ちに、2Lのディスカップに収容された20℃の水1L中に、それらA液及びB液の混合物を、ホモディスパーによる1000rpmでの撹拌下に投入し、発泡が開始するまで、水中で撹拌した。発泡開始後は、撹拌翼を抜き、反応が収まるまで静置した。かかる反応が終了した後、分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製U−2800型分光光度計)を用いて、波長500nmでの光透過率を、測定した。なお、この光透過率が70%未満になると、水は白濁化しているものと評価した。
【0041】
(5)薬液流出量
直径50mm、長さ250mmの円筒型の下側開口部にメッシュ網を取り付け、更にその外側から蓋をして、閉塞せしめた後、よく洗浄した1号ケイ砂を50mm厚になるように詰め、次いで200mlの水を注いだ。その後、表1又は表2に示される混合比で混合した薬液20gを、混合せしめて、直ちに円筒型の上部開口部から流し込み、次いで、かかる円筒型の下部の蓋を取り除いた後、上部開口部よりピストン状のつき棒を押し込んで、型内の水をメッシュ網から押し出した。そして、その押し出された水を採取し、水と共に押し出された薬液の重量を算出した。
【0042】
(実施例1)
−A液の調製−
ポリオールとして、三洋化成工業株式会社製ポリエーテルポリオール:PP−400[開始剤:プロピレングリコール、アルキレンオキサイド:プロピレンオキサイド(PO)100質量%、分子量:400、官能基数:2、水酸基価:280mgKOH/g]の50部と、三洋化成工業株式会社製ポリエーテルポリオール:PP−1000(開始剤:プロピレングリコール、PO:100質量%、分子量:1000、官能基数:2、水酸基価:112mgKOH/g)の25部と、三洋化成工業株式会社製ポリエーテルポリオール:GP−3000(開始剤:グリセリン、PO:100質量%、分子量:3000、官能基数:3、水酸基価:56mgKOH/g)の25部とを用いると共に、これに、ポリアミン化合物として、東ソー株式会社製TETA(トリエチレンテトラミン、1級及び2級アミノ基数:4)の0.3部、金属触媒として、日本化学産業株式会社製プキャット15G(カリウム触媒:オクチル酸カリウム)の0.8部、3級アミン触媒として、花王株式会社製カオーライザーNo.31(樹脂化触媒:33%トリエチレンジアミンのジプロピレングリコール溶液)の0.8部、及び難燃剤として、大八化学工業株式会社製TMCPP[トリス(クロロプロピル)ホスフェート]の30部を添加して、均一に混合せしめることによって、A液を得た。
【0043】
−B液の調製−
ポリイソシアネートとして、万華化学ジャパン株式会社製Wannate PM−200(ポリメリックMDI)を用い、その100部を、B液として準備した。
【0044】
−A液とB液の反応−
上記で得られたA液とB液とを、体積比にて1:1の割合で組み合わせて、常温下において、均一に混合し、反応せしめた後、前述の評価手法に従って、各種評価試験を行い、それらの結果を、下記表1に示した。
【0045】
(実施例2,3)
実施例1において、ポリアミン化合物の使用量を、それぞれ、1部又は2部としたこと以外は、実施例1と同様の手法に従って、それぞれ試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表1に示した。
【0046】
(実施例4)
実施例2において、ポリアミン化合物を、東ソー株式会社製TEPA(テトラエチレンペンタミン、1級及び2級アミノ基数:5)に代えたこと以外は、実施例2と同様の手法に従って、それぞれ試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表1に示した。
【0047】
(実施例5)
実施例2において、ポリアミン化合物を、三洋化成工業株式会社製L−2513(変性ポリアミドアミン、1級及び2級アミノ基数:平均3〜5)に代えたこと以外は、実施例2と同様の手法に従って、それぞれ試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表1に示した。
【0048】
(実施例6)
実施例2において、ポリアミン化合物を、東ソー株式会社PEHA(ペンタエチレンヘキサミン、1級及び2級アミノ基数:6)に代えたこと以外は、実施例2と同様の手法に従って、それぞれ試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表1に示した。
【0049】
(実施例7)
実施例2において、金属触媒を添加せず、3級アミン触媒を、花王株式会社製カオーライザーNo.14[三量化触媒:N,N',N"−トリス(3−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン]に代えると共に、その使用量を2部としたこと以外は、実施例2と同様の手法に従って、それぞれ試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表1に示した。
【0050】
(実施例8)
実施例2において、金属触媒の使用量を1.3部とすると共に、3級アミン触媒を添加しないこととした以外は、実施例2と同様の手法に従って、それぞれ試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表1に示した。
【0051】
(実施例9)
実施例2において、難燃剤の使用量を15部としたこと以外は、実施例2と同様の手法に従って、それぞれ試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表1に示した。
【0052】
(実施例10)
実施例3において、金属触媒の使用量を1.5部とし、3級アミン触媒の使用量を1.5部とすると共に、更に、発泡剤として水を1.4部、整泡剤としてモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製シリコーン系整泡剤L−6970を1部、それぞれ加え、そして、A液とB液とを、体積比にて、1:2の割合で組み合わせて、均一に混合し、反応せしめること以外は、実施例3と同様の手法に従って、それぞれ試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表1に示した。
【0053】
(実施例11)
実施例2において、ポリオールとして、PP−400の70部と、株式会社アデカ製ポリエーテルポリオール:BM−54(開始剤:エチレンジアミン、PO:エチレンオキサイド(EO)=60:40、分子量:500、官能基数:4、水酸基価:450mgKOH/g)の30部とを用いると共に、金属触媒を0.5部、3級アミン触媒を0.5部としたこと以外は、実施例2と同様の手法に従って、それぞれ試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表1に示した。
【0054】
【表1】
【0055】
(比較例1)
実施例2において、ポリアミン化合物を、ロンザジャパン株式会社製DETDA80(ジエチルトルエンジアミン、1級アミノ基数:2)に代えたこと以外は、実施例2と同様の手法に従って、それぞれ試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表2に示した。
【0056】
(比較例2)
比較例1において、ポリアミン化合物の使用量を4部としたこと以外は、比較例1と同様の手法に従って、それぞれ試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表2に示した。
【0057】
(比較例3)
実施例2において、ポリアミン化合物を、三井化学ファイン株式会社製D2000(ポリエーテルアミン、1級アミノ基数:2)に代えたこと以外は、実施例2と同様の手法に従って、それぞれ試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表2に示した。
【0058】
(比較例4)
実施例2において、ポリアミン化合物を、東京化成工業株式会社製ジエタノールアミン(2級アミノ基数:1)に代えたこと以外は、実施例2と同様の手法に従って、それぞれ試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表2に示した。
【0059】
(比較例5)
実施例2において、ポリアミン化合物を、東京化成工業株式会社製トリエタノールアミン(3級アミノ基数:1)に代えたこと以外は、実施例2と同様の手法に従って、それぞれ試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表2に示した。
【0060】
(比較例6)
比較例5において、難燃剤の使用量を5部としたこと以外は、比較例5と同様の手法に従って、それぞれ試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表2に示した。
【0061】
(比較例7,8)
実施例1又は実施例11において、ポリアミン化合物を添加しないこと以外は、実施例1又は実施例11と同様の手法に従って、それぞれ試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表2に示した。
【0062】
【表2】
【0063】
かかる表1及び表2に示される結果より明らかな如く、本発明に従う実施例1〜11に係るA液とB液との組合せからなる薬液組成物においては、水中での反応硬化操作後における波長500nmでの光透過率測定において、何れも、光透過率が70%以上となり、水の白濁化は認められなかった。また、水と共に押し出された薬液の流出量も殆ど確認されなかったことから、混合直後でも湧水に希釈され難い薬液組成物を形成することにより、薬液が水に流されることによる水質汚染が防止され、地盤に注入した際も、硬化反応生成物の物性の低下が効果的に防止され得ることが認められた。
【0064】
これに対して、比較例1〜8に係るA液とB液の組合せでは、使用されたA液のポリアミン化合物のアミノ基が規定値未満であったり、またA液にポリアミン化合物が含有されていない構成のものであったりしたために、水中での反応硬化操作後において、水の白濁化が顕著に認められ、更には水と共に押し出された薬液の存在も確認されたことから、環境に与える影響が懸念されると共に、反応生成物の充分な強度発現に問題があることが予測されることとなった。