(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
薄板状の鋼板を環状に打ち抜いて形成された鉄心片を載置するステーションが複数の固定位置に設けられ、回転することによってそれぞれの前記ステーションを工程ごとに定められている複数の目標位置のいずれかに同時に位置決めするインデックステーブルと、前記ステーションに載置された前記鉄心片を積層方向に加圧する加圧機と、前記加圧機によって加圧された状態の前記鉄心片を溶接する溶接ロボットと、前記鉄心片の外周側に内周側に窪んで形成されている溶接部に対して、溶接を施す部位を露出させつつ当該部位の側方の少なくとも一部に押し付けられた状態で覆うとともに、当該部位から離間する向きに傾斜している傾斜面を有する溶接カバーを装着する装着機と、を備えた製造装置を用いて鉄心を製造する鉄心の製造方法であって、
複数の前記ステーションをそれぞれの目標位置に同時に位置決めし、
前記目標位置のうち前記鉄心片に溶接を施す溶接位置において前記ステーションに載置された前記鉄心片を積層方向に加圧しながら前記溶接カバーを装着した状態で溶接する工程と、前記溶接位置とは異なる前記目標位置において前記鉄心片を載置する工程および溶接された前記鉄心片を取り出す工程とを同時に実施可能にした鉄心の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の鉄心の製造装置1は、位置決め装置2、溶接ロボット3、加圧機4および拡張機5等を備えている。これら、位置決め装置2、溶接ロボット3、加圧機4および拡張機5は、制御装置6によって制御される。なお、制御装置6は、製造装置1側ではなく制御室等に設けられている構成であってもよい。
【0009】
位置決め装置2は、強固な構造体で形成されている基台7上に、基台7に対して水平回転可能なインデックステーブル8を有している。このインデックステーブル8は、
図2に示すように、平面視において概ね円形状に形成されており、テーブルモータ9によって回転軸(J)を中心に回転駆動される。また、インデックステーブル8には、
図3に示す鉄心片10を載置するためのステーション11がその上面に複数設けられている。
【0010】
ここで、製造装置1が対象とする鉄心片10についてまず説明する。鉄心片10は、例えば回転電機の固定子鉄心に用いられるものであり、周知のように例えば薄板状の電磁鋼板をプレス機により打ち抜くことによって形成される。この鉄心片10は、外形が概ね円形状であって、その内周側に回転子を配置可能とするための中空部12が形成された概ね円環状となっている。
【0011】
また、鉄心片10の中空部12には、コイルを挿入するためのスロット13が周方向に複数形成されているとともに、鉄心片10の外周部には、固定用の耳穴14が設けられている複数のタブ15と、溶接を施すための複数の溶接部16とが形成されている。タブ15は、鉄心片10の外周部に等間隔で3箇所形成されている。また、溶接部16は、鉄心片10の外周部に、タブ15に重ならないように等間隔で6箇所形成されている。つまり、鉄心片10は、各タブ15の間に2箇所の溶接部16が位置するように、換言すると、溶接部16の中間にタブ15が位置するように形成されている。
【0012】
溶接部16は、
図4に示すように、鉄心片10の外周部において、中央の凸部17と、凸部17の両側に位置する2つの凹部18とにより、概ねW字状に形成されている。このとき、凸部17の先端は、鉄心片10の仮想的な外縁を示す仮想線(CL)よりも内側に位置している。このため、後述するように凸部17に溶接ビード19(
図9参照)が形成された場合であっても、その溶接ビード19が鉄心片10の仮想的な外縁からはみ出すことが無い。なお、上記した鉄心片10の形状は一例であり、タブ15の数や溶接部16の数は、
図3に示すものに限定されない。
【0013】
さて、各ステーション11は、インデックステーブル8の回転方向つまりは周方向に対して等間隔になる3箇所に、インデックステーブル8の外縁からはみ出さない状態で設けられている。以下、
図1に示す各位置のステーション11を、便宜的にステーション11X、ステーション11Y、ステーション11Zとも称して説明する。
【0014】
各ステーション11は、
図2も示すように、概ね円筒状に形成され、鉄心片10を載置するベース11aと、ベース11aから上方に突出して設けられている複数のピン11bとで構成されている。ベース11aは、インデックステーブル8に対して固定的に設けられている。そのため、インデックステーブル8が回転する場合には、各ステーション11の位置も変化する。
【0015】
ピン11bは、1本がインデックステーブル8の回転中心側に設けられており、他の2本がベース11aの周方向に等間隔となる位置に設けられている。このため、鉄心片10を積層した状態においては、鉄心片10の外周部に形成されている耳穴14のいずれかがインデックステーブル8の回転軸(J)に向いた状態、換言すると、溶接部16の中間位置がインデックステーブル8の回転中心に向いた状態で載置される。また、ベース11aには、インデックステーブル8の下方側まで貫通する貫通孔11cが形成されている。この貫通孔11cには、拡張機5の拡張ロッド5a(
図1参照)が挿入される。
【0016】
これら各ステーション11は、インデックステーブル8が回転することによって、工程ごとに定められている3箇所の目標位置に位置決めされる。そして、各ステーション11は、現在の目標位置における工程が完了すると、インデックステーブル8の回転にともなって次工程に対応する目標位置に位置決めされる。
【0017】
本実施形態の場合、目標位置は、載置位置、溶接位置、および取り出し位置の3箇所が設定されている。例えば
図1の場合、ステーション11Xが載置位置に位置決めされており、ステーション11Yが溶接位置に位置決めされており、ステーション11Zが取り出し位置に位置決めされている状態となっている。
【0018】
載置位置では、作業者あるいはロボットによって、鉄心片10の積層あるいは積層された鉄心片10の載置が行われる。以下、載置位置にて積層された状態の鉄心片10を、積層鉄心100と称する。
溶接位置では、溶接ロボット3が配置されており、載置された積層鉄心100に対して溶接が施される。この溶接位置には、複数台の溶接ロボット3が配置されており、積層鉄心100の複数箇所に対して同時に溶接が施される。
取り出し位置では、溶接された積層鉄心100の取り出しが行われる。なお、周辺の装置等との兼ね合いに基づいて、取り出し位置と載置位置とを入れ替えることもできる。
【0019】
加圧機4は、溶接位置に対応して設けられており、溶接位置に位置決めされた積層鉄心100を加圧する。加圧機4は、上下方向に移動可能な油圧式のプッシュロッド4aを有しており、例えば20トン程度の力を積層方向に加圧してバリ取りを行うバリ取り加圧、および、例えば1〜10トン程度の力で積層方向に加圧して積層鉄心100の外形を調整する溶接加圧を行う。
【0020】
拡張機5は、溶接位置に対応して、且つ、加圧機4と同軸となるように設けられており、積層鉄心100を内周側から外周側に向けて拡張する。拡張機5は、積層鉄心100の中空部12に挿入され、径方向に伸縮可能な拡張ロッド5aを有しており、拡張ロッド5aを挿入した状態で径方向に伸長させることにより(
図7参照)、内周側を基準として鉄心片10や単位ブロック10A〜10C(
図6参照)が同心となるように位置決めする。この拡張機5による拡張は、マンドレル拡張等とも称される。
【0021】
また、製造装置1は、図示しない装着機を備えている。装着機は、溶接を施す鉄心片10の外周側に、凸部17を露出するとともに凹部18側の少なくとも一部を覆う溶接カバー22(
図8参照)を装着する。なお、装着機は、外部の図示しないロボットや、位置決めされたことを検知して作動する図示しない装着機構を位置決め装置2側に設けること等によって構成することができる。
【0022】
溶接ロボット3は、本実施形態では垂直多関節型のロボットに溶接トーチ20を取り付けた構成となっており、溶接位置に位置決めされた積層鉄心100の外周面の溶接部16に溶接を施す。本実施形態では、溶接ロボット3は、2台設けられており、溶接トーチ20(
図1、
図9参照)を用いて、鉄心片10とは異なる磁性部材21(
図9参照)をシールドガス(G。
図9参照)で覆いつつ溶融させて溶接部16の凸部17に溶接ビード19を形成するMAG溶接(Metal Active Gas welding)を施す。なお、MAG溶接の代わりに、MIG溶接(Metal Inert Gas welding)を施すこともできる。
【0023】
次に上記した製造装置1を用いて鉄心を製造する製造方法について説明する。
前述のように、実際の製造現場では、他の装置が既に周辺に設置されていること等が想定されるため、単純に製造装置1にとって都合の良い形状や配置とすることができないことがある。
【0024】
そこで、上記した本実施形態の製造装置1は、回転することによって各ステーション11を工程ごとに定められている目標位置に位置決めするインデックステーブル8を設けることにより、鉄心片10の載置、鉄心片10の溶接、および溶接された鉄心片10の取り出しを同時に行えるようにしている。これにより、例えば所謂ベルトコンベアのような直線的な流れ作業を行うものと比べて、設置スペースを大きく削減することができる。
【0025】
また、各ステーション11では、
図5に示す工程が同時進行で行われる。具体的には、例えばステーション11Xが載置位置に位置決めされたとする(S1)。このとき、各ステーション11はインデックステーブル8に固定的に設けられているため、ステーション11Xが載置位置に位置決めされた場合には、ステーション11Yは溶接位置に位置決めされ、ステーション11Zは取り出し位置に位置決めされることになる。このS1の工程、および後述するS3、S10の工程は、位置決め工程に相当する。
【0026】
そして、ステーション11Xにおいて鉄心片10が載置される(S2)。このとき、載置位置では、例えば
図6に示すように所定枚数を積層した例えば3つの単位ブロック10A〜10Cを用意して周方向に例えば120度ずつずらして積層する所謂回し積みや、既に回し積みされた状態の積層鉄心100の載置が行われる。なお、載置工程では、鉄心片10は、下端側に配置された下抑え板23A(
図8参照)と、上端側に配置される上抑え板23B(
図8参照)とで挟まれた態様で載置される。このS2の工程は、載置工程に相当する。
【0027】
また、鉄心片10は、耳穴14にピン11bが挿入されることにより位置決めされる。そのため、載置された積層鉄心100には、各鉄心片10の溶接部16が積層方向に並ぶことにより、溶接溝24が積層方向に延びて形成される。なお、回し積みされていないブロックや鉄心片10を載置することもできる。
【0028】
さて、ステーション11Xにおいて鉄心片10の載置が行われているときには、ステーション11Yでは溶接が施され、ステーション11Zでは溶接された鉄心片10の取り出しが行われている。このとき、本実施形態では溶接位置において行われる工程が最も時間を要するため、ステーション11Xにおいて載置が完了しても、溶接位置に位置決めされているステーション11Yでの各工程が完了するまでは、インデックステーブル8の回転は行われない。
【0029】
そして、ステーション11Yでの溶接が完了すると、ステーション11Xは、インデックステーブル8が回転することによって溶接位置に位置決めされる(S3)。溶接位置に位置決めされると、積層鉄心100は、
図7に示すように拡張機5によって内周側から外周側に向かって力を加えることにより拡張される(S4)。拡張工程では、積層された状態の各鉄心片10あるいは各ブロックが同心状に高精度に位置決めされるとともに、積層鉄心100の内径寸法も高精度に調整される。このS4の工程は、拡張工程に相当する。
【0030】
その後、積層鉄心100は、加圧機4によって積層方向に例えば20トン程度の力を加えるバリ取り加圧が行われる(S5)。これにより、プレス加工された鉄心片10のバリがつぶされる。このとき、他のステーション11Yでは鉄心片10の取り出しが行われ、ステーション11Zでは鉄心片10の載置が行われている。
【0031】
バリ取り加圧が完了すると、外形寸法を調整するための溶接加圧が行われる(S6)。このS6の工程は、加圧工程に相当する。これにより、積層鉄心100の外形および内径が所定の寸法に調整され、溶接の準備が整うことになる。
【0032】
ところで、溶接中には、飛散したスラグや金属粒等のスパッタが発生することがあり、飛散したスパッタが付着すると、後工程である巻線挿入工程やワニス含浸工程において異物として混入するおそれがあるため、付着したスパッタを除去する作業が必要になる。このとき、付着したスパッタは、その大きさにもよるものの、概ね0.5mm以上の場合には強固に固着してしまうことから、スパッタを取り除くために多大な労力が必要になる。
【0033】
また、本実施形態で採用しているMAG溶接は、従来利用されてきたTIG溶接(Tungsten Inert Gas welding)に比べると、スパッタが発生し易くなる。
そのため、溶接の準備が整うと、積層鉄心100には、
図8に側面視にて示すように溶接溝24を覆う溶接カバー22が装着される(S7)。この溶接カバー22は、銅材料、銅合金材料、銅メッキ材料、金メッキ材料、銀メッキ材料、錫メッキ材料、クロームメッキ材料、あるいは、各材料の組み合わせにより形成されている。このS7の工程は、装着工程に相当する。
【0034】
溶接カバー22は、
図9に平面視にて示すように、図示左右方向となる溶接溝24の外側を覆う形状の本体部22aと、本体部22aから溶接溝24に向かって傾斜している形状の腕部22bとを有している。そして、溶接カバー22は、溶接溝24の凸部17を露出した状態、且つ、凹部18側の少なくとも一部を覆う状態で積層鉄心100に取り付けられる。この腕部22bは、凹部18に面接触する接触部22cと、凸部17の側方において凹部18から立ち上がっている壁部22dとで構成されている。
【0035】
そして、一対の溶接カバー22は、接触部22cを凹部18に押し付ける態様で積層鉄心100の外周面に装着される。これにより、凹部18の少なくとも一部と溶接溝24の外側の部位とが溶接カバー22によって覆われるようになり、接触部22cと凹部18とが密に接触し、凸部17側から凹部18側への物体の侵入つまりはMAG溶接時に発生するスパッタの侵入が防止され、凹部18やその周囲へのスパッタの付着が抑制される。このように、溶接カバー22は、溶接部16およびその近傍へのスパッタの付着を防止する保護部材として機能する。
【0036】
また、腕部22bは、壁部22dの上端側から概ね45度〜60度程度の角度で凸部17から離間する向きに傾斜している。このため、一対の溶接カバー22を取り付けた状態においては、互いの腕部22bのなす角は、概ね90度〜120度となる。このため、溶接を施す際には、溶接時に供給されるシールドガス(G)が腕部22bに沿って凸部17に向かうように案内されるため、溶接不良が発生するおそれを低減することができる。
【0037】
また、腕部22bは、単純な平板を曲げ加工するのではなく、厚みを増大させた肉厚部分を有する削りだし加工されている。そのため、溶接カバー22の熱容量を大きくすることができ、スパッタが付着した際にスパッタの冷却を促すことが可能となり、溶接カバー22へのスパッタの付着の抑制を期待できる。
【0038】
また、壁部22dは、凸部17から所定の離間幅だけ離間した位置から立ち上がっており、形成される溶接ビード19の横幅を規制するとともに、供給されたシールドガス(G)を凸部17の両側へ逃がすことが可能になり、溶接が施されている位置以外においては、シールドガス(G)の拡散を促すことができるとともに、壁部22d間に余剰なシールドガス(G)が滞留することを抑制できる。
【0039】
溶接カバー22が装着されると、溶接トーチ20を用いて、鉄心片10以外の外部から供給される磁性部材21をシールドガス(G)で覆いつつ溶融させ、溶接部16の凸部17に溶接ビード19を形成することにより、積層鉄心100の側方側から溶接が施される(S8)。このS8の工程は、溶接工程に相当する。
【0040】
溶接トーチ20は、
図9に示すように、積層鉄心100側に開口する有底円筒状の本体部20a内を、外部からワイヤ状に供給される電極材料である磁性部材21が貫通するとともに、外部から供給されるシールドガス(G)が流れる構造となっている。この磁性部材21は、回転リール20bに挟まれることによって、溶接に必要な量がその都度供給される。このシールドガス(G)は、炭酸ガスと不活性ガスの混合物で構成されている。なお、MIG溶接の場合には、不活性ガスが単体で供給される。
【0041】
このとき、溶接ロボット3は、上記したようにMAG溶接を施している。この場合、外部から磁性部材21が供給されることから、鉄心片10を溶融する従来のTIG溶接に比べると、鉄心片10の溶融量が少なくなるとともに入熱量も少なくなる。そのため、積層鉄心100の端面の波打ち変形による直角度の狂い、内径の誤差による回転子との間のギャップの不均衡、および、熱の影響による鉄損の悪化等を抑制することができる。
【0042】
また、溶接ビード19が鉄心片10の特性や材質に因らないため、例えば0.2mm以下の薄板材の鉄心片10の溶接にも対応することができる。また、鉄心片10の薄板状化、つまりは、溶接部16分への絶縁材料の混入増加による影響を受けにくいことから、溶接ビード19の強度の低下等を招くおそれが少なくなり、設計通りの強度を得ることができるようにもなる。
【0043】
また、本実施形態では、2台の溶接ロボット3により、2箇所の溶接溝24を同時に溶接する。このとき、溶接ロボット3は、積層鉄心100の外周面において対向する位置にある2箇所の溶接溝24に対して同時に溶接を施し、それを3回繰り返すことによって、6箇所の溶接溝24に溶接を施す。これにより、1箇所ずつ溶接する場合に比べて溶接時間を大きく短縮することができ、作業効率を改善することができる。
【0044】
また、S8の工程では、2台の溶接ロボット3を用いて、対向する位置に形成されている2箇所の溶接溝24に対して同時に溶接を施す。これにより、熱の発生とその熱の冷却とが積層鉄心100の周方向において対向する位置で生じることになり、積層鉄心100内の熱のバランスを保つことができ、歪みが生じるおそれを低減することができる。
【0045】
また、溶接位置では積層鉄心100のタブ15がインデックステーブル8の回転軸(J)側を向いていることから、溶接溝24は
図2に示すように平面視において左右側に位置するようになり、インデックステーブル8の外側に溶接ロボット3を配置する場合であっても、溶接トーチ20を容易に溶接溝24に配置することができる。
【0046】
ところで、本実施形態では、拡張機5による拡張と加圧機4による溶接加圧とを行っている状態で溶接を施している。このとき、加圧機4は上記したように数トンの力を加える必要があるものの、そのような力で加圧した状態で積層鉄心100を回転させることは困難である。
【0047】
また、数トンの力を加えることができるようにするためには、上方に配置されている加圧機4の重量を支えるだけではなく、加圧機4とベース11aとを強固に繋ぐ柱等の構造物を設ける必要があることから、溶接位置の周辺においては、溶接ロボット3の可動範囲が制限される。この場合、積層鉄心100は上方から加圧機4によって加圧されるとともに下方側から拡張機5によって拡張されること、および、数トンの加圧に耐えるためにはインデックステーブル8自体も強固にする必要があることから、溶接位置の上方や下方に溶接ロボット3を配置することも困難である。
【0048】
このため、溶接溝24をインデックステーブル8の回転軸(J)側に位置させてしまうと、溶接トーチ20が届かないおそれがあるとともに、一台の溶接ロボット3では全ての溶接溝24に溶接を施すことができないおそれがある。
【0049】
そのため、積層鉄心100のタブ15をインデックステーブル8の回転軸(J)側に向けることにより、積層鉄心100の側方からの溶接を可能としている。これにより、溶接トーチ20を配置できなくなることがまず抑制される。そして、2台の溶接ロボット3を用いることにより、可動範囲が制限された溶接位置においても、全ての溶接溝24を溶接することができる。
【0050】
このように、2台の溶接ロボット3を用いること、および、積層鉄心100のタブ15つまりは偶数個形成されている溶接部16の中間がインデックステーブル8の回転軸(J)側を向いていることは、インデックステーブル8を備え、且つ、大きな力を加える必要がある鉄心の製造装置1において、効率化を図ること以外にも、溶接を実施可能にするという重要な技術的意義を有している。
【0051】
また、3箇所のステーション11を設ける構成も、コンパクト化を図る上で重要な技術的意義を有している。これは、大きな力を加える加圧機4が必要となることから、ステーション11を4箇所以上にすると、隣の工程の邪魔にならないようにインデックステーブル8を大型化する必要があり、コンパクト化が妨げられるためである。
【0052】
さらに、載置位置と取り出し位置とを別々に設けたことにより、各工程に時間的な余裕を持たせることができるとともに、鉄心片10の搬入ラインと搬出ラインとを別々に設置できる等、製造装置1だけで無く、周辺装置の設置の自由度を向上させることができる。
【0053】
溶接が完了すると、積層鉄心100の拡張を終えるとともに、溶接カバー22が取り外される(S9)。そして、ステーション11Xでは、取り出し位置に位置決めされた後(S10)、溶接された積層鉄心100の取り出しが行われる(S11)。このとき、ステーション11Yでは鉄心片10の載置が行われ、ステーション11Zでは積層鉄心100に溶接が施されることになる。このS11の工程は、取り出し工程に相当する。
【0054】
このように、本実施形態では、インデックステーブル8を用いることで各ステーション11を工程ごとに定められている個別の目標位置に同時に位置決め可能とするとともに、各目標位置において別々の工程を同時に実施可能とする製造装置1を用いて、
図5に示した製造方法の流れに従って鉄心が製造される。
【0055】
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
製造装置1は、鉄心片10を積層するステーション11が複数の固定位置に設けられ、回転することによってそれぞれのステーション11を工程ごとに定められている複数の目標位置のいずれかに同時に位置決めするインデックステーブル8と、ステーション11に積層された鉄心片10を積層方向に加圧する加圧機4と、加圧機4によって加圧された状態の鉄心片10を溶接する溶接ロボット3と、を備える。
【0056】
これにより、製造装置1が設置されている1つの設置場所で、溶接工程、載置工程および取り出し工程という連続的に行われる複数の工程を同時に行うことが可能となり、製造効率を向上させることができる。また、各工程を実施するための目標位置はインデックステーブル8内に治まっているため、製造装置1をコンパクト化することができ、周辺に存在する他の装置の邪魔になるおそれを低減できる。したがって、コンパクト化を図りつつも製造効率を改善することができる。
【0057】
また、上記した製造装置1を用い、複数のステーション11をそれぞれの目標位置に同時に位置決めし、溶接位置において鉄心片10を積層方向に加圧しながら溶接する工程と、溶接位置とは異なる目標位置において鉄心片10を載置する工程および溶接された鉄心片10を取り出す工程とを同時に実施可能にした製造方法によっても、製造装置1をコンパクト化することができ、周辺に存在する他の装置の邪魔になるおそれを低減できる。
【0058】
また、製造装置1が備える溶接ロボット3は、外部から供給される磁性部材21をシールドガス(G)で覆いつつ溶融させて溶接部16に溶接ビード19を形成することにより、鉄心片10に溶接を施す。これにより、鉄心片10の溶融量が少なくなるとともに入熱量も少なくなることから、鉄心片10の端面の波打ち変形による直角度の狂い、内径の誤差による回転子との間のギャップの不均衡、および、熱の影響による鉄損の悪化等を抑制することができる。
【0059】
また、製造装置1は、積層された状態の鉄心片10を内周側から外周側に向けて拡張する拡張機5を備える。これにより、積層された鉄心片10あるいは各ブロックを同心状に高精度に位置決めすることができるとともに、積層された鉄心片10の内径寸法も高精度に調整することができる。
【0060】
また、製造装置1は、加圧機4と拡張機5とを同軸上に配置し、加圧機4による加圧と拡張機5による拡張とを同時に実施可能とした。これにより、積層鉄心100の内径寸法の調整と外形寸法の調整とを同時に行うことができ、且つ、その調整が変化しない態様での溶接が可能となり、積層鉄心100の特に寸法に関する品質を向上させることができる。
【0061】
また、製造装置1は、溶接を施す鉄心片10の外周側に、溶接部16の凸部17を露出するとともに凹部18側の少なくとも一部を覆う溶接カバー22を装着する装着機を備える。これにより、スパッタが比較的発生しやすいMAG溶接やMIG溶接を施す際、溶接部16の周辺にスパッタが付着することを防止できる。
【0062】
また、溶接ロボット3は、複数台設けられており、鉄心片10に形成されている複数の溶接部16に対して同時に溶接を施す。これにより、溶接工程に要する時間を短縮することができ、製造効率を改善することができる。
【0063】
また、製造装置1は、載置位置、溶接位置および取り出し位置の3箇所の目標位置が設定されており、インデックステーブル8の回転方向に対して等間隔になるように3つのステーション11が設けられており、それぞれのステーション11を3箇所の目標位置に対して同時に位置決めする。これにより、3つの工程を同時に実施可能となり、製造効率をさらに改善することができる。
【0064】
そして、製造装置1は、互いに対向する位置関係で外周側に偶数個の溶接部16が形成されている鉄心片10を、いずれかの溶接部16の中間がインデックステーブル8の回転軸に向いた状態で載置し、溶接ロボット3は、2台設けられており、互いに対向する位置の2箇所の溶接部16を、鉄心片10の外周面側から同時に溶接する。これにより、上記したように積層鉄心100内の熱のバランスを保つことができ、歪みが生じるおそれを低減すること等が可能となる。
【0065】
また、3箇所のステーション11を設ける構成は、大きな力を加える加圧機4を必要とする鉄心の製造装置1において、インデックステーブル8の大型化を抑制でき、コンパクト化を図ることができるという技術的意義を有している。
【0066】
また、載置位置と取り出し位置とを別々に設けたことにより、各工程に時間的な余裕を持たせることができるとともに、鉄心片10の搬入ラインと搬出ラインとを別々に設置できる等、製造装置1だけで無く、周辺装置の設置の自由度を向上させることができる。この点、各工程における時間的な余裕があるので、溶接前の目視検査や溶接後の目視検査等を十分に行うことができ、品質の向上に寄与することもできる。
【0067】
なお、実施形態では鉄心片10を載置する工程と溶接された鉄心片10を取り出す工程とを別々の目標位置にて実施する例を示したが、溶接工程に要する時間を考慮すれば、ステーション11を2つ設け、溶接している最中に鉄心片10の載置と取り出しとを同じ目標位置にて実施する構成とすることもできる。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。