(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態.
以下、本発明に係る煙検出装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、
図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0011】
図1は、実施の形態に係る煙検出装置100の全体図である。
図2は、煙検出装置100の検煙部20及び煙検出装置100の光学台カバー30の斜視図である。煙検出装置100は、例えば家屋の室内等の監視空間に設置される光電式スポット型煙感知器であって、
図1に示すように、例えば天井200に取り付けられる。
【0012】
煙検出装置100は、煙流入部12Aを有する筐体10と、筐体10に設けられ、煙を検出する機構を有する検煙部20と、筐体10内に設けられ、検煙部20を覆う光学台カバー30とを備えている。
図1に示すように、筐体10は、図示省略の基板等が収容されている筐体上部11と、検煙部20及び光学台カバー30が収容されている筐体下部12とを備えている。筐体下部12には開口部である複数の煙流入部12Aを有している。
【0013】
図2に示すように、検煙部20は、上述の筐体上部11の基板に設けられている光学台21と、光学台21に設けられ、遮光機能を有しているラビリンス22と、煙の検出光を発する発光部23Aと、発光部23Aが収容されている発光部収容部23と、煙が流入したときに発光部23Aの光が散乱する煙検出空間24とを備えている。また、検煙部20は、発光部23Aの散乱光を受光する図示省略の受光部と、当該受光部を収容する受光部収容部25とを備えている。光学台21には、ラビリンス22、発光部収容部23及び受光部収容部25が形成されている。ラビリンス22は、光学台21から下側に延びる複数の壁体である。ラビリンス22は光学台カバー30外から光学台カバー30内の煙検出空間24へ光が入射してしまうことを防止する機能を有している。発光部23Aは例えばLED(Light Emitting Diode)等で構成され、発光部23Aのリード線は上述の筐体上部11の基板に接続されている。受光部収容部25には発光部23Aから出射された光を絞る開口が形成されている。図示省略の受光部は発光部23Aの光軸からずれた位置に設けられている。受光部収容部25は、光学台カバー30外の光等によって火災を誤検出しないように受光部を収容している。
【0014】
図2に示すように、光学台カバー30は、検煙部20に被せられる蓋状部31と、煙検出空間24に虫、埃及び湯気等(以下、埃等と総称する)が侵入することを抑制する網部32とを備えている。蓋状部31は、円形状である平板部31Aと、平板部31Aの周縁に接続され、平板部31Aの周縁から直線状に延びている複数のリブ31Bとを備えている。網部32はリブ31Bに接触している。また、網部32は筒状にして使用する金属製の板状部材である。なお、実施の形態において、網部32は円筒状に構成されている。検煙部20は網部32の内側に設けられている。網部32は煙流入部12Aを介して室内等の監視空間に臨んでいる。網部32の構成は次の
図3で詳しく説明する。
【0015】
図3は、煙検出装置100の網部32の説明図である。
図3(a)は、片部32B2を挿入部32B1から外した状態の網部32を示している。
図3(b)は、
図3(a)に示す開口群32Cの拡大図である。
図3(c)は、
図3(a)の矢印AR方向から網部32を見た図である。
図3(d)は、
図3(b)に示す開口群32Cに含まれる開口孔部Opの拡大図である。
図3(e)は、
図3(d)に示す開口孔部Opの要部拡大図である。
図3及び上述の
図1,
図2を参照して、網部32の構成を説明する。
【0016】
図3(a)に示すように、網部32は、矩形状の板状部材である網部本体32Aと、開口部である挿入部32B1と、挿入部32B1に挿入される片部32B2とを備えている。片部32B2を挿入部32B1から外した状態において、挿入部32B1は網部本体32Aの長手方向における一端側に形成され、片部32B2は網部本体32Aの長手方向における他端に形成されている。片部32B2が挿入部32B1に挿入されることで、網部32は筒形状を保持できるようになっている。また、
図3(c)に示すように、網部32の表面32Sは、光学台カバー30の外側の空間に面している外側面32S1と、光学台カバー30の内側の空間すなわち煙検出空間24に面している内側面32S2とを有している。
【0017】
図1及び
図3(a)に示すように、網部32には、網部本体32Aに形成され、煙流入部12Aから筐体10内に流入した煙を通過させる開口群32Cを備えている。開口群32Cは挿入部32B1側から片部32B2側にかけて形成されている。
図3(b)に示すように、開口群32Cは複数の開口孔部Opを備えている。つまり、開口孔部Opの集合体が開口群32Cに対応する構成である。開口孔部Opは、
図3(c)に示す外側面32S1及び内側面32S2を貫通している。
【0018】
図3(d)に示すように、開口孔部Opには、開口ptを囲む環状の縁部Edを有している。開口ptは煙流入部12A側と検煙部20側とを連通している。縁部Edの形状は、円環形状ではなく、円環状に凹凸が形成された形状である。つまり、縁部Edは、網部32の表面32Sに沿って形成されている複数の凸状部32C1と、網部32の表面32Sに沿って形成されている複数の凹状部32C2とを有している。凸状部32C1及び凹状部32C2は表面32Sに沿って形成されているので、凸状部32C1の突出方向は表面32Sに平行であり、凹状部32C2の凹む方向も表面32Sに平行である。縁部Edの周方向において、凸状部32C1及び凹状部32C2は交互に形成されている。つまり、凸状部32C1の両端部には、凹状部32C2がそれぞれ形成されている。ここで、凸状部32C1の端部は縁部Edの周方向における端部である。
【0019】
凸状部32C1は開口ptの中心領域Rg(
図4参照)に向かって突出している。凸状部32C1の突出幅が大きくなる程、開口ptの面積が狭くなる。
図3(e)に示すように、凸状部32C1は凸状部32C1のうちで最も開口ptの中心領域Rgに近い頂部pk1を備えている。凹状部32C2は開口ptの中心領域Rgから離れるように凹んでいる。凹状部32C2が中心領域Rgから離れる程、開口ptの面積は広がる。凹状部32C2では網部32を通過する空気に渦が形成されやすくなるように弧状に形成されている。また、凹状部32C2は凹状部32C2のうちで最も開口ptの中心領域Rgから離れている頂部pk2を備えている。
図3(e)に示すように、縁部Edは頂部pk1及び頂部pk2を有している。また、縁部Edは頂部pk1と頂部pk2とを滑らかに接続する裾状部skを有している。縁部Edが裾状部skを有していることで、裾状部skに沿った空気の流れが形成されやすくなる。
【0020】
実施の形態において、凸状部32C1及び凹状部32C2は8個ずつ設けられているので、頂部pk1及び頂部pk2の合計個数は16個である。ここで、中心角は、頂部pk1と開口孔部Opの中心とを結ぶ線と、頂部pk2と開口孔部Opの中心とを結ぶ線とがなす角度で定義することができる。なお、凸状部32C1及び凹状部32C2の数はそれぞれ8個に限定されるものではない。また、凸状部32C1の数と凹状部32C2の数とは等しくなくてもよい。
【0021】
図4は、網部32の開口孔部Opに渦Swが形成される様子を模式的に示した図である。
図4に示す中心領域Rgは開口ptの中心部に位置する領域である。
図4において、中心領域Rgは破線の円で模式的に示している。また、
図4に示す周縁領域Rdは凹状部32C2側に位置する領域である。次に、
図4及び上述の
図1〜
図3を参照して、煙検出装置100の動作について説明する。火災が発生すると、煙を含む空気が筐体10の煙流入部12Aを介して筐体10内に流入する。筐体10内に流入した煙は光学台カバー30へ導かれる。そして、光学台カバー30の周囲に至った煙は、網部32の開口孔部Opを介して光学台カバー30内の空間、すなわち煙検出空間24に流入する。このとき、開口ptの中心領域Rgにおいて、煙を含む空気は開口孔部Opを通過して煙検出空間24に流入する。また、
図4に示すように、開口ptの周縁領域Rdにおいて、煙を含む空気FLは渦Swを形成している。つまり、空気FLが凹状部32C2を通過する過程で凹状部32C2に沿う流れが生じ、周縁領域Rdでは渦Swが形成される。このため、周縁領域Rd付近の空気FLに含まれる煙は渦Swによって開口孔部Opに引き込まれ、煙検出空間24へ流入する。ここで、凹状部32C2の弧の半径は、開口孔部Opの縁部Edの外接円を縁部とする開口孔部の半径と比較すると非常に小さくなっている。このため、凹状部32C2では、空気の進路が急激に曲げられることになり、渦Swが形成されやすくなっている。煙検出空間24に流入した煙は、ラビリンス22を通り抜けて発光部23Aから出射された光を散乱させる。図示省略の受光部が散乱光を検出することで、煙検出装置100は火災が発生しているとの判定をする。
【0022】
空気中には煙だけでなく、埃等が含まれていることがある。ここで、開口孔部Opの直径を定義する。
図4に示すように、開口孔部Opの最小直径Ds1は、向かい合う一対の凸状部32C1の頂部pk1間の直線距離として定義する。また、開口孔部Opの最大直径Ds2は、向かい合う一対の凹状部32C2の頂部pk2間の直線距離として定義する。このように、開口孔部Opの直径は、一定ではなく、最小直径Ds1から最大直径Ds2までの幅を持っている。このため、埃等が最小直径Ds1よりも大きければ、埃等は開口孔部Opを通過することができない。
【0023】
次に、実施の形態の効果について説明する。網部32の開口孔部Opの縁部Edは、網部32の表面32Sに沿って形成されている凸状部32C1と、凸状部32C1の端部に位置し、網部32の表面32Sに沿って形成されている凹状部32C2とを有している。凸状部32C1は中心領域Rgに向かって突出しているので、開口孔部Opの直径は、
図4の最小直径Ds1で説明したように、凸状部32C1を通る位置において小さくなる。このため、開口孔部Opの縁部Edの外接円を縁部とする開口孔部の網部と比較して、開口率が低減するので、網部32は埃等の煙検出空間24への侵入を効果的に抑制することができる。なお、開口率とは、網部32の単位面積当たりにおける開口ptの面積を指す。
【0024】
網部32の開口孔部Opの縁部Edは凹状部32C2を有しているので、煙を含む空気が開口ptの周縁領域Rdで渦Swを形成する。ここで、開口孔部Opの縁部Edの外接円を縁部とする開口孔部の弧の半径と比較して、凹状部32C2の弧の半径は非常に小さくなっている。このため、凹状部32C2では、空気の進路が急激に曲げられることになり、渦Swが形成されやすくなっている。したがって、空気FLに含まれる煙は、渦Swによって開口孔部Opに引き込まれ、すみやかに煙検出空間24へ流入する。つまり、網部32は検煙部20の煙検出空間24への煙の流入性を向上させることができる。
【0025】
このように、煙検出装置100の網部32は凸状部32C1を有するので、検煙部20の煙検出空間24への埃等の侵入をより抑制することができる。また、煙検出装置100の網部32は凸状部32C1を有するので、開口孔部Opの縁部Edの外接円を縁部とする開口孔部の網部と比較して、開口率を低減させることで埃等の侵入をより抑制することができると共に、凹状部32C2により、周縁領域Rdに渦を形成しやすくして煙をすみやかに煙検出空間24へ流入させることができる。したがって、煙検出装置100は、検煙部20への埃等の侵入をより抑制すること、及び、検煙部20への煙の流入性を向上させること(開口孔部Opが、開口孔部Opの縁部Edの外接円である場合と同等の流入性を維持すること)、を両立させることができる。
【0026】
ここで、円形の開口孔部を網部に敷き詰めるように形成することで、網部の開口率を増大させることができる。一般的に、網部の開口率が増大すると網部における圧力損失が低減し、網部の煙の流入性が向上する。しかし、網部の開口率が増大すると埃等が網部の開口孔部を通過しやすくなる。特に、湯気は虫よりも更に小さく網部を通過してしまいやすいので、網部の開口率をむやみに増大させると湯気による火災の誤検出に繋がりやすい。実施の形態で説明した網部32は凸状部32C1を有しているので、上述のように、開口孔部Opの直径は凸状部32C1を通る位置において小さくなる。このため、湯気が開口孔部Opに近づいてきたときにおいて、湯気が凸状部32C1に衝突する可能性が高まる。したがって、湯気であっても、開口孔部Opを通過しにくくなっている。よって、煙検出装置100は湯気による火災の誤検出を抑制することができる。
【0027】
複数(実施の形態では8個)の凸状部32C1及び複数(実施の形態では8個)の凹状部32C2は、縁部Edの全域にわたって並んでいる。また、凸状部32C1及び凹状部32C2は、開口孔部Opの縁部Edの周方向において交互に並んでいる。このため、
図4に示すように、周縁領域Rdが縁部Edの周方向において均一に分布する。その結果、渦Swも、縁部Edの周方向において均一に分布することになる。なお、
図4に示す例では、渦Swが縁部Edの周方向において8箇所に分布している。したがって、開口孔部Opの煙流入特性が縁部Edの周方向でばらついてしまうことを抑制することができる。
【0028】
図5は、網部32の開口群32Cの変形例の説明図である。
図5(a)は開口群32Cの変形例1である開口群132Cを示し、
図5(b)は開口群132Cに含まれる開口孔部Op1の拡大図である。開口孔部Op1は環状の縁部Ed1を有しており、開口pt1は縁部Ed1に囲まれている。縁部Ed1は、4つの凸状部132C1と4つの凹状部132C2とを有している。隣接する凸状部132C1は開口孔部Op1の中心に対して概ね90度の角度をなしている。凸状部132C1の両端部には凹状部132C2がそれぞれ形成されている。凹状部132C2の外縁は略四角形状である。
【0029】
図5(c)は開口群32Cの変形例2である開口群232Cを示し、
図5(d)は開口群232Cに含まれる開口孔部Op2の拡大図である。開口孔部Op2は略扇形状である。開口孔部Op2は環状の縁部Ed2を有しており、開口pt2は縁部Ed2に囲まれている。縁部Ed2は、2つの凸状部232C1と、2つの凹状部232C2aと、1つの凹状部232C2bとを有している。凹状部232C2bは2つの凸状部232C1の間に形成されている。凹状部232C2bは凹状部232C2aよりも幅が小さくて鋭くなっている。
【0030】
図5(e)は開口群32Cの変形例3である開口群332Cを示し、
図5(f)は開口群332Cに含まれる開口孔部Op3の拡大図である。開口孔部Op3も略扇形状である。開口孔部Op3は環状の縁部Ed3を有しており、開口pt3は縁部Ed3に囲まれている。縁部Ed3は、2つの凸状部332C1と、2つの凹状部332C2aと、1つの凹状部332C2bとを有している。凹状部332C2bは2つの凸状部332C1の間に形成されている。凹状部332C2bは、
図5(d)の開口孔部Op2の凹状部232C2bほど鋭くなく、滑らかに形成されている。
【0031】
図5(g)は開口群32Cの変形例4である開口群432Cを示し、
図5(h)は開口群432Cに含まれる開口孔部Op4の拡大図である。開口群432Cは、変形例3で説明した開口孔部Op3と、開口孔部Op3を上下反転した形状を有する開口孔部Op4とを有している。開口孔部Op4は開口孔部Op3を上下反転した形状であるため、
図5(h)において開口孔部Op4の各構成要素は開口孔部Op3の各構成要素と同様の符号を付している。
【0032】
図5(i)は開口群32Cの変形例5である開口群532Cを示し、
図5(j)は開口群532Cに含まれる開口孔部Op5の拡大図である。開口孔部Op5は環状の縁部Ed5を有しており、開口pt5は縁部Ed5に囲まれている。縁部Ed5は、1つの凸状部532C1と2つの凹状部532C2とを有している。開口孔部Op5の凸状部532C1は1つだけであるが、突出幅及び突出方向に直交する方向の幅が、大きめに設定されている。
【0033】
変形例1〜5で説明した形態であっても、実施の形態で説明した効果と同様の効果を得ることができる。つまり、変形例1〜5についても、開口率を下げることで検煙部20への埃等の侵入をより抑制すること、及び、開口率を下げても煙流入量が減らないように検煙部20への煙の流入性を向上させること、を両立させることができる。また、
図5(b)に示すように、変形例1については、4個の凸状部132C1及び4個の凹状部132C2が縁部Ed1の全域にわたって並んでおり、また、凸状部132C1及び凹状部132C2が開口孔部Op1の縁部Ed1の周方向において交互に並んでいる。このため、変形例1については、開口孔部Op1の煙流入特性が縁部Ed1の周方向でばらついてしまうことを抑制する効果を得ることができる。