(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の治具は、動翼部材の前縁部を腹側からも押さえる構成であるため、動翼部材の前縁部を腹側から加熱する際には、治具を避けながら加熱器具を配置して加熱を行う必要があり、作業性の面で改善が求められていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、作業性を向上することが可能な貼付治具及び動翼の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る貼付治具は、動翼部材にエロージョンシールド部材を貼付する際に用いる貼付治具であって、前記動翼部材の背側に配置される本体部と、前記本体部に設けられ、前記動翼部材の前縁部に載置されるエロージョンシールド部材を前記動翼部材の背側から押圧する第1押圧部と、前記本体部に支持され、前記動翼部材の後縁部を背側から押圧する第2押圧部と、前記本体部に支持され、前記動翼部材の背側から腹側にかけて前記後縁部を迂回して配置され、前記本体部に設けられる回動軸の周りに回動可能であり、前記動翼部材の前記前縁部と前記後縁部との間の部分を腹側から押圧する第3押圧部とを備える。
【0008】
従って、第1押圧部が前縁部を背側から押圧し、第3押圧部が動翼部材の背側から腹側にかけて後縁部を迂回して配置されるため、エロージョンシールド部材が配置される前縁部の腹側については治具によって遮られることがない。これにより、加熱器具等を用いて前縁部を加熱する際の作業性を向上することができる。また、第3押圧部が動翼部材を腹側から押圧することにより、背側から動翼部材を押圧する第1押圧部及び第2押圧部との間で、動翼部材を腹側及び背側から挟持して保持することができる。この場合、第3押圧部が動翼部材の前縁部と後縁部との間の部分を腹側から押圧するため、最小限の押圧部位でバランスよく動翼部材を押圧することができる。更に、第3押圧部が本体部に設けられる回動軸の周りに回動可能であり、回動方向に押圧するため、湾曲面を有する動翼部材に対しても、湾曲面の位置に応じて確実にかつ容易に押圧することができる。
【0009】
また、上記の貼付治具において、前記第1押圧部は、前記動翼部材の翼幅方向に移動自在に支持されてもよい。
【0010】
従って、翼幅が異なる動翼部材についても用いることができる。
【0011】
また、上記の貼付治具は、前記本体部に設けられ、前記第3押圧部に押圧力を付与する押圧力付与部を備えてもよい。
【0012】
従って、第3押圧部に押圧力を付与することにより、第1押圧部、第2押圧部、第3押圧部において押圧力を効率的に発生させることができる。
【0013】
また、上記の貼付治具において、前記押圧力付与部は、エアシリンダであってもよい。
【0014】
従って、押圧力の制御を安定して行うことができる。
【0015】
また、上記の貼付治具において、前記第3押圧部は、円弧状の部材であってもよい。
【0016】
従って、第3押圧部の形状が、回動する際の軌跡に対応した円弧状であるため、第3押圧部が回動する場合のスペースを抑えることができる。
【0017】
また、上記の貼付治具において、前記第2押圧部に設けられ、前記動翼部材の前記後縁部を腹側から押圧し、前記後縁部を前記第2押圧部との間で挟持する第4押圧部を更に備えてもよい。
【0018】
従って、動翼部材を安定して保持することができる。
【0019】
また、上記の貼付治具において、前記第2押圧部は、前記第3押圧部の回動を案内する案内部を有してもよい。
【0020】
従って、第3押圧部の回動の安定化を図ることができ、動翼部材を押圧する押圧力を安定させることができる。
【0021】
本発明に係る貼付方法は、上記の貼付治具を用いて動翼を製造する動翼の製造方法であって、前記第2押圧部により前記動翼部材の後縁部を背側から支持する工程と、動翼部材の前縁部にエロージョンシールド部材を載置し、前記第1押圧部により前記エロージョンシールド部材を前記動翼部材の背側から支持する工程と、前記第1押圧部及び前記第2押圧部により前記動翼部材を支持した状態で、前記第3押圧部により前記動翼部材の前記前縁部と前記後縁部との間の部分を腹側から押圧することで、前記第1押圧部及び前記第2押圧部と共に前記動翼部材を挟持した状態で押圧する工程と、前記第1押圧部、前記第2押圧部及び前記第3押圧部により前記動翼部材を押圧した状態で前記動翼部材の前縁部を腹側から加熱して前記動翼部材の前記前縁部に前記エロージョンシールド部材を貼付する工程とを含む。
【0022】
従って、エロージョンシールド部材が配置される前縁部の腹側については治具によって遮られることがない。これにより、加熱器具等を用いて前縁部を加熱する際の作業性を向上することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、作業性を向上することが可能な貼付治具及び動翼の製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る貼付治具及び動翼の製造方法の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0026】
図1は、本実施形態に係る貼付治具100の一例を示す図である。
図1に示す貼付治具100は、動翼部材70にエロージョンシールド部材80を貼付して動翼75を製造する際に用いられる。この貼付治具100は、1つの動翼部材70に対して翼長方向に複数並べて用いてもよい。
図1に示すように、貼付治具100は、本体部10と、第1押圧部20と、第2押圧部30と、第3押圧部40と、第4押圧部50と、押圧力付与部60とを備える。
【0027】
本体部10は、湾曲面を有する動翼部材70に対して背側に配置される。本体部10は、例えば金属等により略長方形又は略平行四辺形の板状に形成される。以下、本体部10の長手方向を第1方向D1とし、本体部10の短手方向を第2方向D2とする。また、本体部10の厚さ方向、つまり第1方向D1及び第2方向D2のそれぞれに直交する方向を第3方向D3として説明する。
【0028】
本体部10は、案内部11と、突出部12と、回動軸13と、取り付けポート14とを有する。
【0029】
案内部11は、第1押圧部20を第1方向D1に案内する。案内部11は、例えば第1方向D1に直線状に延びる長穴である。案内部11は、本体部10を第3方向D3に貫通して設けられる。
【0030】
突出部12は、案内部11から第2方向D2の動翼部材70側に突出している。突出部12は、回動軸13を回動可能に支持する軸受部12aを有する。
【0031】
回動軸13は、例えば円筒状又は円柱状であり、中心軸AXが第3方向D3に平行に配置される。
【0032】
取り付けポート14は、本体部10の第1方向D1の端部に配置される。取り付けポート14は、押圧力付与部60が着脱可能に設けられる。
【0033】
第1押圧部20は、本体部10に設けられ、動翼部材70の前縁部73に載置されるエロージョンシールド部材80を動翼部材70の背部71側(以下、「背側」と表記する)から押圧する。第1押圧部20は、基部21と、当接部22と、挿入部23とを有する。
【0034】
基部21は、挿入部23及び当接部22を支持する。基部21は、案内部11に沿って第1方向D1に移動可能である。基部21は、本体部10を第3方向に挟むように配置される。
図1では、挿入部23と案内部11の位置関係を示すため、本体部10に対して紙面手前側に配置される部分の図示を省略している。なお、基部21の構成は、上記の構成に限定されず、他の構成であってもよい。
【0035】
当接部22は、エロージョンシールド部材80に当接する。当接部22は、基部21から動翼部材70側に突出している。当接部22は、突出方向の先端部が丸みを帯びた形状となっている。当接部22は、先端部においてエロージョンシールド部材80に当接する。なお、第1押圧部20は、後述する第3押圧部40及び第4押圧部50の押圧力の反力により、当接部22が動翼部材70の前縁部73を背側から押圧する。
【0036】
挿入部23は、例えば円柱状又は円筒状に形成され、上記の案内部11に挿入可能な径に形成される。挿入部23としては、例えば基部21を第3方向D3に貫通するネジ部材が用いられる。挿入部23は、例えば案内部11を第3方向D3に貫通する寸法に形成される。挿入部23が案内部11に挿入されることにより、挿入部23が案内部11に案内されて基部21と一体で第1方向D1に移動可能となる。
【0037】
第1押圧部20は、基部21を案内部11に沿って移動させることで第1方向D1における位置を任意に変更可能である。なお、挿入部23の中心軸を中心として基部21を回転させることにより、当接部22の突出方向についても任意に変更可能な構成としてもよい。また、挿入部23の先端は、不図示のナットによりネジ接合される。不図示のナットを挿入部23に対してネジ接合することにより、基部21が本体部10に固定可能となる。この場合、本体部10に対して第1押圧部20の位置を固定させることが可能となり、第1押圧部20の位置ずれが抑制される。
【0038】
第2押圧部30は、本体部10に支持され、動翼部材70の後縁部74の背側を押圧する。第2押圧部30は、突出部12の突出方向の先端に設けられる。
図2は、本実施形態に係る貼付治具100の一例を示す図であり、
図1における矢印S方向から見た場合の状態を示している。
図2では、
図1において紙面に垂直な方向から見た場合の重なり状態を示すため、各部材間の間隔を誇張して示している。また、
図2では、第2押圧部30と他の構成との位置関係を判別しやすくするため、
図1と同一方向から見た状態の第2押圧部30を対比させて示している。
図1及び
図2に示すように、第2押圧部30は、連結部31と、背側支持部32と、突き当て部33と、突起部34と、円弧部35とを有する。連結部31は、回動軸13を介して本体部10の突出部12と連結される。連結部31は、本体部10と一部材で設けられてもよい。
【0039】
背側支持部32は、動翼部材70の後縁部74を背側から支持する。第2押圧部30は、後述する第3押圧部40及び第4押圧部50の押圧力の反力により、背側支持部32が動翼部材70の後縁部74を背側から押圧する。突き当て部33は、背側支持部32から第2方向D2に突出する。突き当て部33は、動翼部材70の後縁部74の先端を突き当て可能である。突き当て部33に後縁部74の先端を突き当てることにより、第1方向D1について動翼部材70を位置決めすることが可能である。
【0040】
円弧部35は、突き当て部33の突出方向の先端に配置され、中心軸AXの軸回りに円弧状に配置される。円弧部35は、第3方向D3から見て、後述の第3押圧部40の円弧部42と重なる位置に配置される。また、円弧部35は、円弧方向の先端35aにおいて第4押圧部50を移動可能に支持する。
【0041】
案内部34は、後述する第3押圧部40の第1長穴部42aに挿入され、第3押圧部40の回動を案内する。案内部34は、例えば円弧部35から第3方向D3に突出する突起部である。
【0042】
第3押圧部40は、直線状である直線部41と、円弧状である円弧部42とを有する。直線部41及び円弧部42は、例えば一部材で形成されるが、これに限定されず、別個の部材が連結部材等により一体で連結された構成であってもよい。
【0043】
直線部41は、一端が回動軸13に回動可能に支持され、他端が円弧部42に接続される。直線部41は、本体部10の回動軸13により中心軸AXの軸回りに回動可能に支持される。直線部41が中心軸AXの軸回りに回動することにより、直線部41と円弧部42とが一体で回動する。直線部41は、長穴部41aを有する。長穴部41aは、例えば直線部41の長手方向に沿って設けられ、直線部41を第3方向D3に貫通する。長穴部41aは、後述する押圧力付与部60の挿入部64が挿入される。
【0044】
円弧部42は、円弧方向の一端が動翼部材70の背側において直線部41に接続される。円弧部42は、円弧方向の他端が動翼部材70の腹側に配置される。円弧部42は、円弧方向の一端から他端にかけて動翼部材70の後縁部74を迂回して配置される。このように、円弧部42は、動翼部材70の背側から腹側にかけて後縁部74を迂回して配置される。
【0045】
円弧部42は、第1長穴部42a及び第2長穴部42bを有する。第1長穴部42aは、円弧部42の円弧方向に配置され、円弧部42を第3方向D3に貫通する。第1長穴部42aには、上記した案内部34が挿入される。第1長穴部42aに案内部34が挿入されることにより、第3押圧部40が中心軸AXの軸回りに回動する場合、円弧部42の回動が案内部34によって案内される。
【0046】
第2長穴部42bは、円弧部42の円弧方向に配置され、円弧部42の外周面42cと内周面42dとの間を貫通する。第2長穴部42bは、第2押圧部30の円弧部35が挿入される。第2長穴部42bが設けられることにより、第3押圧部40が円弧部35と干渉することなく、中心軸AXの軸回りに回動可能となっている。
【0047】
第3押圧部40は、円弧部42が中心軸AXの軸回りに回動することにより、円弧部42の円弧方向の先端が動翼部材70の前縁部73と後縁部74との間の部分を腹部72側(以下、「腹側」と表記する)から押圧する。第3押圧部40は、第1押圧部20及び第2押圧部30とは、押圧する方向が反対である。第3押圧部40が動翼部材70を腹側から押圧することにより、第1押圧部20及び第2押圧部30が反力によって動翼部材70を背側から押圧する。
【0048】
第4押圧部50は、第2押圧部30に設けられ、動翼部材70の後縁部74を腹側から押圧し、後縁部74を第2押圧部30との間で挟持する。第4押圧部50は、第2押圧部30の円弧部35の先端に支持される。第4押圧部50は、円弧部35の径方向(中心軸AXに向けた方向)に円弧部35を貫通して設けられる。第4押圧部50は、円弧部35の径方向に移動可能である。
【0049】
第4押圧部50は、当接部51と、貫通部52と、操作部53とを有する。当接部51は、動翼部材70の後縁部74に腹側から当接する。貫通部52は、当接部51に接続され、円弧部35を貫通する。貫通部52は、円弧部35の径方向の外側に突出して配置される。貫通部52は、円弧部35の内側を通過する部分にネジ部を有する。また、当該ネジ部に対応するネジ部が円弧部35の内側に配置される。つまり、貫通部52は、円弧部35とネジ接合されている。操作部53は、貫通部52の径方向の外側の端部に設けられる。操作部53は、貫通部52と一体で設けられる。操作部53は、貫通部52の中心軸の軸回りに回転可能である。操作部53を回転させることにより、円弧部35に対して貫通部52を挿脱させることができる。貫通部52を円弧部35に対して挿脱させることにより、当接部51と動翼部材70の後縁部74との位置を調整可能となっている。したがって、操作部53を回転させることで、当接部51により後縁部74を押圧し、第2押圧部30の背側支持部32との間で挟持することが可能となっている。
【0050】
押圧力付与部60は、本体部10に設けられ、第3押圧部40に押圧力を付与する。押圧力付与部60は、例えばエアシリンダ等が用いられる。押圧力付与部60は、シリンダ61と、ピストンロッド62と、移動部63と、挿入部64とを有する。シリンダ61は、本体部10の取り付けポート14に着脱可能に取り付けられる。シリンダ61は、内部の圧力を調整するためのエアが流れるエア流路61aを有する。エア流路61aは、不図示のエア駆動機構に接続される。エア駆動機構により、シリンダ61内の圧力が調整可能となっている。なお、1つの動翼部材70に対して複数の貼付治具100を翼長方向に並べて行う場合には、例えば複数のシリンダ61にエアを供給可能なマニホールド部が設けられてもよい。シリンダ61の内部には、不図示のピストンが設けられる。ピストンは、シリンダ61内の圧力の変動により、シリンダ61の軸方向に移動する。本実施形態において、シリンダ61の軸方向が第2方向D2に平行である場合を例に挙げて説明するが、これに限定されない。
【0051】
ピストンロッド62は、シリンダ61の内部のピストンに一体に連結される。ピストンロッド62は、ピストンと一体で第2方向D2に移動する。移動部63は、ピストンロッド62に一体に連結される。移動部63は、ピストン及びピストンロッド62と一体で第2方向D2に移動する。挿入部64は、移動部63から第3方向D3に突出する突起部である。挿入部64は、第3押圧部40の直線部41の長穴部41aに挿入される。挿入部64が長穴部41aに挿入されることにより、移動部63が第3押圧部40に連結された状態となる。したがって、ピストンロッド62が突出する方向に移動する場合、挿入部64が直線部41を押圧する。直線部41が押圧されることにより、第3押圧部40は、直線部41と円弧部42とが一体で中心軸AXの軸回り方向に回動する。この回動により、円弧部42の円弧方向の先端が動翼部材70に当接され、動翼部材70を腹側から押圧する。このように、押圧力付与部60は、第3押圧部40に押圧力を付与する。
【0052】
図3は、本実施形態に係る動翼75を示す概略図である。
図3に示すように、動翼75は、翼根部76と、プラットホーム77と、動翼部材70と、を含む。翼根部76は、例えば蒸気タービンのロータのロータディスクに埋設され、動翼75をロータディスクに固定する。プラットホーム77は、翼根部76と一体となる湾曲したプレート形状物である。動翼部材70は、基端部がプラットホーム77に固定され、先端部が例えば蒸気タービンのケーシングの内壁面側に延出している。
【0053】
動翼部材70は、表面が湾曲面である。動翼部材70は、表面の一部にエロージョンシールド81が形成されている。エロージョンシールド81は、動翼75が回転して蒸気流が流れる際、動翼75のうち、蒸気流の上流側である前縁部73の一部に形成される。エロージョンシールド81は、例えば、コバルトを主成分とするコバルト基合金等を用いることができる。
【0054】
次に、上記のように構成された貼付治具100を用いて動翼部材70にエロージョンシールド部材80を貼付する動翼75の製造方法を説明する。
図4は、本実施形態に係る動翼部材70の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図5から
図9は、本実施形態に係る動翼部材70の製造方法の一工程を示す図である。本実施形態に係る動翼75の製造方法においては、例えば1つの動翼部材70に対して複数の貼付治具100を翼長方向に並べて行う。以下の説明では、1つの貼付治具100を例に挙げて説明するが、他の貼付治具100についても同様の説明が適用できる。
【0055】
図4及び
図5に示すように、まず、第2押圧部30により、動翼部材70の後縁部74を背側から支持する(ステップS10)。ステップS10では、
図5に示すように、第3押圧部40及び第4押圧部50を第2押圧部30の背側支持部32から離した状態とする。この状態で、動翼部材70の背部71を本体部10側に向けた状態で、後縁部74の背側71の上に背側支持部32を配置する。動翼部材70の後縁部74については、例えば先端を突き当て部33に突き当てた状態とする。なお、ステップS10に先立ち、動翼部材70の前縁部73にエロージョンシールド部材80を載置しておく。
【0056】
次に、
図4及び
図6に示すように、第1押圧部20によりエロージョンシールド部材80を動翼部材70の背側から支持する(ステップS20)。ステップS20では、
図6に示すように、第1押圧部20を案内部11に沿って移動させ、第1押圧部20の位置を合わせる。第1押圧部20の位置は、例えば当接部22の先端がエロージョンシールド部材80に当接する位置とする。第1押圧部20の位置を合わせた後、挿入部23にナットを締結し、第1押圧部20を本体部10に対して固定する。これにより、第1押圧部20が位置決めされる。なお、第1押圧部20により押圧力を付与する前に、第4押圧部50によって、動翼部材70の後縁部74を第2押圧部30との間で挟持してもよい。この場合、操作部53を回転させることにより、当接部51を後縁部74側に移動させ、当該当接部51により後縁部74を第2押圧部30の背側支持部32側に押圧する(
図6の点線矢印参照)。これにより、動翼部材70が固定される。なお、第4押圧部50は、用いなくてもよい。
【0057】
次に、
図4及び
図7に示すように、第1押圧部20及び第2押圧部30により動翼部材70を支持した状態で、第3押圧部40により動翼部材70の前縁部73と後縁部74との間の部分を腹側から押圧することで、第1押圧部20及び第2押圧部30と共に動翼部材70を挟持した状態で押圧する(ステップS30)。ステップS30では、
図7に示すように、不図示のエア駆動機構によってシリンダ61内の圧力を高めることにより、ピストンロッド62が移動部63と一体でシリンダ61から突出する方向に移動する。移動部63の移動により、挿入部64が第3押圧部40の直線部41を押圧し、直線部41及び円弧部42が中心軸AXの軸回り方向に回動する。この回動により、円弧部42の先端が、動翼部材70の前縁部73と後縁部74との間の部分に対して腹側から当接し、当該動翼部材70を腹側から押圧する。第3押圧部40の押圧により、動翼部材70が第1押圧部20及び第2押圧部30側に押される。第1押圧部20及び第2押圧部30は、本体部10に支持されている。このため、動翼部材70は、第1押圧部20及び第2押圧部30から反力を受ける。第1押圧部20及び第2押圧部30は、この反力により動翼部材70を背側から押圧する。したがって、第1押圧部20及び第2押圧部30は背側から、第3押圧部40は腹側から、動翼部材70を挟持した状態で押圧する。
【0058】
また、翼幅方向の寸法が異なる動翼部材70Aにエロージョンシールド部材80を貼付する場合、
図8に示すように、第1方向D1における第1押圧部20の位置を調整することができる。これにより、翼幅方向の寸法が異なる動翼部材70Aについても、翼幅方向の寸法に対応した位置でエロージョンシールド部材80を押圧することができる。
【0059】
次に、
図4及び
図9に示すように、第1押圧部20、第2押圧部30及び第3押圧部40により動翼部材70を押圧した状態で動翼部材70の前縁部73を腹側から加熱して動翼部材70の前縁部73にエロージョンシールド部材80を貼付する(ステップS40)。ステップS40では、
図9に示すように、加熱機構90を用いて動翼部材70の前縁部73を腹側から加熱する。加熱機構90としては、例えば加熱トーチ等が用いられる。加熱機構90により、動翼部材70の前縁部73に腹側から燃焼ガスが噴射され、前縁部73が加熱される。本実施形態では、第3押圧部40が動翼部材70の背側から腹側にかけて後縁部74を迂回して配置されるため、前縁部73を腹側から加熱する際に、加熱機構90と貼付治具100の間の干渉が抑制される。このため、作業性を向上することができる。ステップS40により、前縁部73が加熱され、エロージョンシールド部材80が動翼部材70の前縁部73に溶着される。これにより、前縁部73にエロージョンシールド81が形成された動翼75を得ることができる。
【0060】
以上のように、本実施形態に係る貼付治具100は、動翼部材70にエロージョンシールド部材80を貼付する際に用いる貼付治具100であって、動翼部材70の背側に配置される本体部10と、本体部10に設けられ、動翼部材70の前縁部73に載置されるエロージョンシールド部材80を動翼部材70の背側から押圧する第1押圧部20と、本体部10に支持され、動翼部材70の後縁部74を背側から押圧する第2押圧部30と、本体部10に支持され、動翼部材70の背側から腹側にかけて後縁部74を迂回して配置され、本体部10に設けられる回動軸13の周りに回動可能であり、動翼部材70の前縁部73と後縁部74との間の部分を腹側から押圧する第3押圧部40とを備える。
【0061】
従って、第1押圧部20が前縁部73を背側から押圧し、第3押圧部40が動翼部材70の背側から腹側にかけて後縁部74を迂回して配置されるため、エロージョンシールド部材80が配置される前縁部73の腹側については貼付治具100によって遮られることがない。これにより、加熱器具90を用いて前縁部73を加熱する際の作業性を向上することができる。また、第3押圧部40が動翼部材70を腹側から押圧することにより、背側から動翼部材70を押圧する第1押圧部20及び第2押圧部30との間で、動翼部材70を腹側及び背側から挟持して保持することができる。この場合、第3押圧部40が動翼部材70の前縁部73と後縁部74との間の部分を腹側から押圧するため、最小限の押圧部位でバランスよく動翼部材70を押圧することができる。更に、第3押圧部40が本体部10に設けられる回動軸13の周りに回動可能であり、回動方向に押圧するため、湾曲面を有する動翼部材70に対しても、湾曲面の位置に応じて確実にかつ容易に押圧することができる。
【0062】
また、本実施形態に係る貼付治具100において、第1押圧部20は、動翼部材70の翼幅方向に移動自在に支持される。従って、翼幅方向の寸法が異なる動翼部材70についても用いることができる。
【0063】
また、本実施形態に係る貼付治具100は、本体部10に設けられ、第3押圧部40に押圧力を付与する押圧力付与部60を備える。従って、第3押圧部40に押圧力を付与することにより、第1押圧部20、第2押圧部30、第3押圧部40において押圧力を効率的に発生させることができる。
【0064】
また、本実施形態に係る貼付治具100において、押圧力付与部60は、エアシリンダである。従って、押圧力の制御を安定して行うことができる。
【0065】
また、本実施形態に係る貼付治具100において、第3押圧部40は、円弧状の部材である。従って、第3押圧部40の形状が、回動する際の軌跡に対応した円弧状であるため、第3押圧部40が回動する場合のスペースを抑えることができる。
【0066】
また、本実施形態に係る貼付治具100において、第2押圧部30に設けられ、動翼部材70の後縁部74を腹側から押圧し、後縁部74を第2押圧部30との間で挟持する第4押圧部50を更に備える。従って、動翼部材70を安定して保持することができる。
【0067】
また、本実施形態に係る貼付治具100において、第2押圧部30は、第3押圧部40の回動を案内する案内部34を有する。従って、第3押圧部40の回動の安定化を図ることができ、動翼部材70を押圧する押圧力を安定させることができる。
【0068】
本発明に係る貼付方法は、上記の貼付治具100を用いて動翼75を製造する動翼75の製造方法であって、第2押圧部30により動翼部材70の後縁部74を背側から支持する工程と、動翼部材70の前縁部73にエロージョンシールド部材80を載置し、第1押圧部20によりエロージョンシールド部材80を動翼部材70の背側から支持する工程と、第1押圧部20及び第2押圧部30により動翼部材70を支持した状態で、第3押圧部40により動翼部材70の前縁部73と後縁部74との間の部分を腹側から押圧することで、第1押圧部20及び第2押圧部30と共に動翼部材70を挟持した状態で押圧する工程と、第1押圧部20、第2押圧部30及び第3押圧部40により動翼部材70を押圧した状態で動翼部材70の前縁部73を腹側から加熱して動翼部材70の前縁部73にエロージョンシールド部材80を貼付する工程とを含む。従って、エロージョンシールド部材80が配置される前縁部73の腹側については貼付治具100によって遮られることがない。これにより、加熱器具90を用いて前縁部73を加熱する際の作業性を向上することができる。
【0069】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、押圧力付与部60として、エアシリンダが用いられる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。押圧力付与部60としては、例えばバネやボールねじ機構等、第3押圧部40に押圧力を付与できる構成であれば、他の構成が用いられてもよい。