(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記非プロトン性極性溶剤は、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、スルホキシド系溶剤、アミド系溶剤、ニトリル系溶剤、カーボネート系溶剤、ラクトン系溶剤、及びウレア系溶剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の組成物は、一次粒子径の変動係数(CV値)が小さいシリカ粒子と、多価カルボン酸及びヒドロキシカルボン酸の少なくとも1種と、非プロトン性極性溶剤を含んでいる。シリカ粒子の分散性が特異的に向上する原因は定かではないが、本発明者らは以下のように推測している。一般的にCV値が大きくなるとシリカ粒子の一次粒子径のばらつき(粒子径の差異)が大きくなり、CV値が小さいほどシリカ粒子の一次粒子径は均一となる。また、多価カルボン酸及びヒドロキシカルボン酸の少なくとも1種(以下、特定カルボン酸と呼ぶ場合がある)はシリカ粒子の表面に吸着することで溶媒との親和性を高めていると考えられる。ここで、CV値が大きい場合には相対的に粒子径が小さいシリカ粒子と粒子径の大きなシリカ粒子が存在することになるが、それら粒子径の異なるシリカ粒子の表面活性が異なる為、前記特定カルボン酸の吸着量(シリカ粒子単位表面積あたりの特定カルボン酸吸着量を意味する)が異なり均一な分散性が付与できない一方、CV値の小さなシリカ粒子の場合はシリカ粒子表面活性が同等であることから個々のシリカ粒子表面に吸着する特定カルボン酸量はほぼ同一となり、全ての粒子に均一な分散性が付与されているものと推察される。このため、特定範囲のCV値のシリカ粒子において分散性を著しく向上でき、更に多価カルボン酸及びヒドロキシカルボン酸の少なくとも1種と、非プロトン性極性溶剤とを用いた時に分散性向上の効果が最も有効に発揮される。以下、シリカ粒子、特定カルボン酸、非プロトン性極性溶剤について順に説明する。
【0012】
1.シリカ粒子
本発明におけるシリカ粒子は、一次粒子径の変動係数(CV値)が20%以下である。CV値は、好ましくは15%以下であり、より好ましくは10%以下である。CV値が前記範囲であることによりシリカ粒子の分散性を著しく向上させることができる。CV値の下限は特に限定されないが、例えば2%以上であり、3%以上であってもよい。
【0013】
前記CV値は、シリカ粒子を拡大倍率20万倍の透過型電子顕微鏡で観察し、得られた透過型電子顕微鏡画像に含まれるシリカ粒子のうち、50〜100個のシリカ粒子の直径(長径と短径の平均値)を測定し、その標準偏差をその個数基準の平均値で除することにより算出することができる。
【0014】
前記シリカ粒子の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡像に基づいて測定することができ、拡大倍率20万倍の透過型電子顕微鏡で観察し、得られた透過型電子顕微鏡画像に含まれるシリカ粒子のうち、例えば300〜2000個程度のシリカ粒子の直径を測定し、その個数基準の平均値として算出することができる。シリカ粒子の平均一次粒子径は10nm以上が好ましく、10nm超がより好ましく、更に好ましくは15nm以上であり、特に好ましくは20nm以上であり、もっとも好ましくは30nm以上である。平均一次粒子径の上限は特に限定されないが、例えば5μm以下であり、1μm以下であってもよいし、500nm以下であってもよい。
【0015】
前記シリカ粒子の比表面積(BET法により測定された比表面積)は200m
2/g以下が好ましく、より好ましくは100m
2/g以下である。比表面積が200m
2/gを超えるとシリカ粒子間の分子間力が高くなるためか、十分な分散性向上効果が得られない虞がある。BET比表面積の下限は特に限定されないが、例えば1m
2/g以上であり、2m
2/g以上であってもよい。
【0016】
前記シリカ粒子の製造方法は、CV値が上記範囲である限り特に限定されないが、シリカ粒子のCV値、平均一次粒子径を上述の範囲に調整し易い点で、加水分解性基を有するケイ素化合物を加水分解及び縮重合させるゾルゲル法であることが好ましい。
【0017】
前記シリカ粒子は、シリカ単独で形成されたものであってもよく、シリカ粒子の表面の少なくとも一部にアルコールが結合しているものであってもよい。シリカ粒子の表面に存在しているアルコキシ基に、後述する特定カルボン酸のカルボキシル基及び/又はヒドロキシ基が配位することで、シリカ粒子と溶剤との相溶性が向上し、粘度の上昇を防止するのにより効果的である。
【0018】
前記アルコールは1価アルコールであってもよいし、多価アルコールであってもよく、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
1価アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ペンチルアルコール等の脂肪族1価アルコール;ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等の芳香族1価アルコールが挙げられる。1価アルコールの炭素数は1〜4が好ましく、より好ましくは1〜2である。
【0020】
多価アルコールとしては、例えば、グリコール類;グリセリン;グルコース、フルクトース、ガラクトース、マルトース、ラクトース等の糖類;イノシトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール等の糖アルコール;等が挙げられる。前記グリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ピナコール等の脂肪族グリコール;ヒドロベンゾイン等の芳香族グリコール;シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール等の脂環式グリコール;等が挙げられる。多価アルコールの炭素数は、2〜8が好ましく、より好ましくは2〜4である。
【0021】
中でも、脂肪族1価アルコール、芳香族1価アルコール、又は脂肪族グリコールが好ましく、脂肪族1価アルコール又は脂肪族グリコールがより好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、1−ブチルアルコール、2−メチル−2−プロパノール、ペンチルアルコール等の脂肪族1価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族グリコール;がよりいっそう好ましく、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ブタノール、又は2−ブタノール等の脂肪族1価アルコールがさらに好ましく、メタノール、又はエタノールが特に好ましい。
【0022】
アルコールが結合しているか否かは、以下の手順で測定可能である。まず、シリカ粒子分散液を遠心力10万G以上で1時間遠心分離して、取り出した沈殿物を80℃にて10時間、50Torr(6.7kPa)の条件で乾燥しておく。次に、シリカ粒子約1gと、0.05N水酸化ナトリウム水溶液50mLを室温で10時間撹拌して得られた懸濁液を、遠心力10万G以上で60分間遠心分離して上澄み液を分取し、この上澄み液をJIS K 0114に従いガスクロマトグラフにより分析することによって、アルコールが結合していることを確認することができる。ガスクロマトグラフの検出器は水素炎イオン化検出器(FID)を用いる。
【0023】
本発明の組成物中のシリカ粒子濃度は、例えば10質量%以上であり、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、更に好ましくは35質量%以上であり、上限は特に限定されないが、例えば60質量%以下である。本発明では、特定カルボン酸及び溶剤として後述の特定のものを用いるため、シリカ粒子濃度が高くなっても、シリカ粒子の凝集を防ぐことができ、粘度の低い組成物を得ることができる。
【0024】
2.特定カルボン酸
本発明において用いるカルボン酸は、多価カルボン酸及びヒドロキシカルボン酸の少なくとも1種である。これらカルボン酸によって、シリカ粒子の分散性が向上しており、分散剤として機能できると考えられる。多価カルボン酸は、一分子中にカルボキシル基を2以上有するカルボン酸であり、ヒドロキシカルボン酸は、一分子中にヒドロキシ基とカルボキシル基をそれぞれ1以上有する化合物である。多価カルボン酸及びヒドロキシカルボン酸は1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
多価カルボン酸の一分子中のカルボキシル基の個数は、4以下であってもよく、好ましくは3以下である。多価カルボン酸は、脂肪族多価カルボン酸であっても、芳香族多価カルボン酸であってもよく、好ましくは芳香族多価カルボン酸である。多価カルボン酸としては、特に一分子中のカルボキシル基の個数が2以上4以下の芳香族多価カルボン酸が好ましく、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、中でもフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸が好ましい。芳香族多価カルボン酸は、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸がより好ましく、フタル酸が特に好ましい。
【0026】
ヒドロキシカルボン酸の一分子中のヒドロキシ基の数は3以下であってもよく、2以下がより好ましい。またヒドロキシカルボン酸の一分子中のカルボキシル基の数は4以下であってもよく、3以下がより好ましい。ヒドロキシカルボン酸は、芳香族ヒドロキシカルボン酸であってもよく、脂肪族ヒドロキシカルボン酸であってもよく、好ましくは脂肪族ヒドロキシカルボン酸である。脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、一分子中、カルボキシル基中の炭素を除く炭素数が1〜4であり、カルボキシル基の数が3以下である脂肪族ヒドロキシカルボン酸が好ましく、例えばグリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸などが挙げられる。
【0027】
特定カルボン酸の量は、シリカ粒子100質量部に対して、5質量部以下が好ましく、より好ましくは3質量部以下であり、更に好ましくは1質量部以下(特に1質量部未満)である。特定カルボン酸の量の下限は、シリカ粒子100質量部に対して例えば0.1質量部以上であり、好ましくは0.3質量部以上であり、より好ましくは0.5質量部以上である。
【0028】
3.溶剤
非プロトン性極性溶剤としては、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、スルホキシド系溶剤、アミド系溶剤、ニトリル系溶剤、カーボネート系溶剤、ラクトン系溶剤、及びウレア系溶剤が挙げられ、これらの少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0029】
ケトン系溶剤としては、メチルエチルケトン、4−メチル−2−ペンタノンなどが挙げられ、メチルエチルケトンがより好ましい。
エーテル系溶剤としては、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサンなどが挙げられる。
スルホキシド系溶剤としては、ジメチルスルホキシド、スルホランなどが挙げられる。
アミド系溶剤としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−メチルピペリドン等が挙げられ、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンがより好ましい。
ニトリル系溶剤としては、アセトニトリル、プロピオニトリル等が挙げられ、アセトニトリルがより好ましい。
カーボネート系溶剤としては、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等が挙げられる。
ラクトン系溶剤としては、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられ、γ−ブチロラクトンがより好ましい。
ウレア系溶剤としては、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、1,3−ジメチルプロピレン尿素等が挙げられる。
【0030】
非プロトン性極性溶剤は、アミド系溶剤、ニトリル系溶剤、カーボネート系溶剤、ラクトン系溶剤、及びウレア系溶剤の少なくとも1種が好ましく、より好ましくはアミド系溶剤、ニトリル系溶剤、ラクトン系溶剤の少なくとも1種であり、更に好ましくはアミド系溶剤(特にN,N−ジメチルアセトアミド)である。
【0031】
次に、上記したシリカ粒子、特定カルボン酸及び溶剤を含む本発明の組成物の製造手順を説明する。
【0032】
本発明に用いられるシリカ粒子の製造方法は、一次粒子径のCV値を20%以下に調整できる限り限定されないが、ゾルゲル法を用いることが好ましい。ゾルゲル法では、加水分解が可能なケイ素化合物を加水分解・縮合することによって湿潤シリカ粒子を得ることができる。加水分解が可能なケイ素化合物は、ケイ素原子に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜5のアシロキシ基等の加水分解性基が少なくとも一つ結合している化合物を意味する。このようなケイ素化合物を用いることで、得られるシリカ粒子において、不純物としての金属含有量を低減することができる。加水分解性基としては、アルコキシ基が好ましい。また、ケイ素原子には、加水分解性基の他に、炭素数1〜10のアルキル基(特に、炭素数1〜6のアルキル基)、炭素数6〜10のアリール基が結合していてもよい。さらに、前記アルキル基の水素原子は、ハロゲン原子、ビニル基、グリシジル基、メルカプト基、アミノ基、(メタ)アクリロイルオキシ基等で置換されていてもよい。
【0033】
ケイ素原子に加水分解性基のみが結合したケイ素化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等の4官能性アルコキシシランが挙げられる。また、ケイ素原子に、アルコキシ基と無置換のアルキル基が結合したケイ素化合物としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等の3官能性アルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等の2官能性アルコキシシラン;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等の1官能性アルコキシシラン;等が挙げられる。さらに、ケイ素原子に、アルコキシ基と置換アルキル基が結合したケイ素化合物としては、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロアルキル基含有アルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有アルコキシシラン;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等の芳香族基含有アルコキシシラン;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のグリシジル基含有アルコキシシラン;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有アルコキシシラン;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有アルコキシシラン;等が挙げられる。
【0034】
中でも、1〜4官能性アルコキシシランが好ましく、より好ましくは3〜4官能性アルコキシシランであり、さらに好ましくは4官能性アルコキシシランである。アルコキシシランの官能数(アルコキシ基の数)が多いほど、得られるシリカ焼成体中に不純物が混入しにくくなる。また、反応性の観点から、アルコキシ基の炭素数は1〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、1〜2であることがさらに好ましい。すなわち、本発明のシリカ粒子の製造においてに特に好ましく用いられるアルコキシシランは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランである。中でもテトラメトキシシランが最も好ましい。
【0035】
ケイ素化合物を加水分解・縮合する反応液中、ケイ素化合物の濃度は、0.05mmol/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.1mmol/g以上であり、上限は特に限定されないが、例えば3mmol/g以下であることが好ましく、1mmol/g以下であることがより好ましい。反応液中、ケイ素化合物の濃度がこの範囲にあると、反応速度の制御が容易となり、粒子径を均一にすることができる。
【0036】
また、前記反応液中、水の濃度は、0.3mmol/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.4mmol/g以上であり、15mmol/g以下であることが好ましく、より好ましくは10mmol/g以下、さらに好ましくは5mmol/g以下である。ただし、ケイ素化合物の加水分解・縮合により水の量は変化するので、仕込み時(加水分解・縮合の開始前)の量を基準とする。水とケイ素化合物のモル比(水/ケイ素化合物)は、1以上が好ましく、より好ましくは1.5以上であり、20以下が好ましく、より好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下である。
【0037】
ケイ素化合物を加水分解・縮合する際、触媒を共存させることが好ましい。ケイ素化合物は、触媒が存在しない場合でも加水分解・縮合しうるが、触媒を用いることで、反応の制御が容易となり、粒子径やシラノール基の残存量を調整できる。触媒としては、反応速度を高める観点から、塩基性触媒が好ましく、塩基性触媒としては、アンモニア類、アミン類、第4級アンモニウム化合物等が挙げられる。前記アンモニア類としては、アンモニア;尿素等のアンモニア発生剤;等が挙げられる。また、前記アミン類としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族アミン;シクロヘキシルアミン等の脂環式アミン;ベンジルアミン等の芳香族アミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;等が挙げられる。また、前記第4級アンモニウム化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0038】
中でも、粒子径の制御が容易である観点から、アンモニア類、アミン類が好ましい。また、得られるシリカ粒子の純度を高める観点からは、シリカ中から除去が容易な触媒であることが好ましく、具体的には、アンモニア類、アミン類が好ましく、アンモニア、脂肪族アミンがより好ましい。また、触媒効果と除去容易性を兼ね備える観点からは、アンモニア類が好ましく、アンモニアが特に好ましい。
【0039】
反応液中、触媒の濃度は、0.1mmol/g〜3mmol/gであることが好ましい。また、触媒と水の合計に対する触媒の質量比(触媒/(触媒+水))は、0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.2以上であり、0.4以下であることが好ましく、0.32以下であることがより好ましい。
【0040】
さらに、ケイ素化合物を加水分解・縮合する際は、反応希釈剤を共存させることが好ましい。反応希釈剤を含有することで、疎水性のケイ素化合物と水とが混合しやすくなり、反応液中でケイ素化合物の加水分解・縮合の進行度合いを均一にすることができるとともに、得られる未焼成シリカの分散性が向上する。反応希釈剤としては適当な水溶性有機溶媒が使用でき、アルコールが好ましい。このアルコールとしては、シリカ粒子の表面の一部に結合していてもよいアルコールとして例示した前述のアルコールのいずれもが使用可能であり、特にメタノール又はエタノールが好ましい。
【0041】
また、希釈剤は、ケイ素化合物と水の合計100質量部に対して、60質量部以上であることが好ましく、より好ましくは100質量部以上、さらに好ましくは120質量部以上であり、500質量部以下であることが好ましく、より好ましくは300質量部以下、さらに好ましくは200質量部以下である。希釈剤が多いほど、反応の進行度合いを均一にしやすくなり、また、希釈剤が少ないと、反応速度を高めることができる。
【0042】
上記各成分は、適当な順で混合してもよいが、例えば、少なくとも上記各成分の一部(例えば、水、触媒、希釈剤等)を予め混合した予備混合液を調製した後、ケイ素化合物と混合してもよい。また、予備混合物にケイ素化合物を添加することが好ましく、添加方法としては一括添加、逐次添加(連続添加、断続的添加)のいずれでもよいが、逐次添加することが好ましい。ケイ素化合物は、予め希釈剤と混合した後、予備混合物と混合してもよい。
【0043】
得られるシリカ粒子のCV値を低減するためには、ケイ素化合物の加水分解・縮合反応開始時に、この反応ができるだけ均一に行われることが好ましく、例えばケイ素化合物を添加した直後の反応液の撹拌速度を調整することなどによってCV値を調整可能である。
【0044】
ケイ素化合物を加水分解・縮合する際、反応温度は、0〜100℃が好ましく、10〜60℃がより好ましく、10〜45℃がさらに好ましい。また、加水分解・縮合継続時間は、30分〜100時間であることが好ましく、50分〜20時間がより好ましく、1〜10時間がさらに好ましい。
【0045】
上記の方法によってシリカ粒子を製造した後は、反応液から湿潤シリカ粒子を分離し、該湿潤シリカ粒子を乾燥、あるいは焼成したのちに特定カルボン酸及び溶剤と混合すればよい。乾燥時の凝集・固着を抑制する観点から、濾過、遠心分離、溶媒蒸発(濃縮)等により反応液から湿潤シリカ粒子を分離しておいてもよく、特に、溶媒蒸発(濃縮)により分離しておくことが好ましい。また反応液から湿潤シリカ粒子を分離するに先立って、反応液をフィルターで濾過しておいてもよい。
【0046】
湿潤シリカ粒子を乾燥するためには、例えば、気流乾燥方式を採用することが好ましい。気流乾燥方式では、乾燥中の湿潤シリカ粒子が、気流により分散され、或いは、乾燥装置の内壁と衝突するため、乾燥しつつシリカ粒子の凝集を抑制することができる。気流乾燥方式で反応液(濃縮液)を乾燥する場合、直接加熱方式(加熱した気流を用いる方法)、間接加熱方式(乾燥装置の伝熱板(好ましくは乾燥装置の内壁)を加熱)のいずれを選択してもよい。直接加熱方式を採用すると、熱風発生炉等から発生した高温気流が反応液(濃縮液)と接触することで溶媒を蒸発させ湿潤シリカ粒子が乾燥されると同時に、高温気流により乾燥中の湿潤シリカ粒子が解砕され、乾燥シリカ粒子の凝集を抑制することができる。また、間接加熱方式を採用すると、伝熱板(好ましくは内壁)を介して反応液(濃縮液)が加熱されることで溶媒が蒸発し湿潤シリカ粒子が乾燥されると同時に、外部から導入された気流又は内部で循環している気流によって乾燥中の湿潤シリカ粒子が解砕され、乾燥シリカ粒子の凝集が抑制される。中でも、間接加熱方式が好ましい。
【0047】
本発明の組成物におけるシリカ粒子は、上記した通り、一次粒子径の変動係数が20%以下であり、また好ましい平均一次粒子径が10nm以上であり、このような要件を満たすようにするためには、上記した加水分解・縮重合後のシリカ粒子、又は乾燥シリカ粒子の粒子径の変動係数、平均一次粒子径をそれぞれ20%以下、10nm以上とすればよい。加水分解・縮重合後のシリカ粒子及び乾燥シリカ粒子の粒子径の変動係数、平均一次粒子径の好ましい範囲は、本発明の組成物におけるシリカ粒子の粒子径の変動係数、平均一次粒子径の好ましい範囲と同様である。
【0048】
このようにして得られた乾燥シリカ粒子は、本発明の組成物の原料となる。ところでこの乾燥シリカ粒子の表面には、上述した様に、アルコールが結合しているのが好ましい。表面にアルコールが結合したシリカ粒子は、前記製造工程において、遅くとも乾燥工程完了までにアルコールを加えることで製造できる。アルコールを含むシリカ粒子が乾燥されることで、アルコールがシリカ粒子表面に結合する。
【0049】
本発明の組成物を得るためのシリカ粒子、特定カルボン酸及び溶剤の混合順序は特に限定されず、シリカ粒子と溶剤を混合した液に特定カルボン酸を添加してもよいし、特定カルボン酸と溶剤を混合した液にシリカ粒子を添加してもよい。混合方法としては、例えば、スターラー、振盪機、練り込み機等を用いた撹拌混合、粉砕機を用いた粉砕混合等が挙げられる。中でも、粉砕機を用いて粉砕混合するのが好ましい。この際用いられる粉砕機としては、例えば、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、スターバースト等の圧力式分散機、ボールミル、ビーズミル、遊星型ボールミル等のメディアミル、マイクロス等の衝撃せん断式粉砕機、超音波分散機等が挙げられ、圧力式分散機が好ましく、スターバーストがより好ましい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0051】
以下の実施例及び比較例で用いた測定方法は、以下の通りである。
【0052】
[平均一次粒子径の測定]
平均一次粒子径は、任意に採取したシリカ粒子を、1視野に含まれるシリカ粒子の数が100〜300個となる測定倍率で透過型電子顕微鏡を用いて観察し、得られた5視野以上の透過型電子顕微鏡像において、電子顕微鏡画像に含まれる全粒子の一次粒子径の個数平均値として求めることができる。
【0053】
[一次粒子径の変動係数の測定]
一次粒子径の変動係数は、平均一次粒子径と一次粒子径の標準偏差を用い、下記式に基づいて算出することができる。
変動係数(%)=(一次粒子径の標準偏差/平均一次粒子径)×100
【0054】
[比表面積の測定]
シリカ粒子を110℃で真空乾燥した後、マウンテック(株)製マックソーブ1210全自動ガス吸着量測定装置を用い、BET法によりシリカ粒子の比表面積を測定した。
【0055】
(シリカ粒子の製造)
製造例1
攪拌機、滴下装置および温度計を備えた容量20Lのガラス製反応器に、有機溶媒としてのメチルアルコール3300gと、25重量%アンモニア水(水および触媒)730gとを仕込み、攪拌しながら液温を41±0.5℃に調節した。一方、滴下装置に、ケイ素化合物としてのテトラメトキシシラン2500gを仕込んだ。430rpmで撹拌しながら、滴下装置からテトラメトキシシランを3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間攪拌することにより、テトラメトキシシランの加水分解,縮合を行い、シリカ粒子の懸濁液を得た。
得られた懸濁液を、瞬間真空蒸発装置を用いて乾燥させることにより、粉体状のシリカ粒子を取り出した。瞬間真空乾燥装置としては、クラックス・システム 8B型(ホソカワミクロン株式会社製、気流乾燥方式、間接加熱方式)を使用した。また乾燥条件として、加熱管温度175℃、減圧度200Torrを採用した。上記の瞬間真空蒸発装置は、加熱水蒸気が供給されるジャケットで覆われた内径8mm、長さ9mのステンレス鋼管と、該鋼管の一端部に懸濁液を供給する供給部と、鋼管の他端部に接続された、粉体と蒸気とを分離するバッグフィルタが設けられた減圧状態の粉体捕集室とを備えていた。そして、供給部から供給された懸濁液は、鋼管内を通過する際に加熱されて粉体と蒸気とに分離し、粉体はバッグフィルタによって捕集され、蒸気は凝縮された後、装置外に排出される構成となっていた。
【0056】
製造例2〜製造例5
有機溶媒としてのメチルアルコール量、水および触媒としてのアンモニア水の量、メチルアルコールとアンモニア水を撹拌する際の液温、ケイ素化合物としてのテトラメトキシシランの量、テトラメトキシシランの滴下時間、滴下終了後の撹拌時間をそれぞれ表1に示す通りに変更した以外は、製造例1と同様にしてシリカ粒子を製造した。
【0057】
製造例6
攪拌機、滴下装置および温度計を備えた容量20Lのガラス製反応器に、有機溶媒としてのメチルアルコール2040gと、25重量%アンモニア水(水および触媒)470gとを仕込み、攪拌しながら液温を20±0.5℃に調節した。一方、滴下装置に、ケイ素化合物としてのテトラメトキシシラン2600gを仕込んだ。滴下装置からテトラメトキシシランを4時間かけて滴下した。最初5分間は20rpmで撹拌し、残りの滴下時間は430rpmで撹拌した。滴下終了後、さらに1時間攪拌することにより、テトラメトキシシランの加水分解,縮合を行い、シリカ粒子の懸濁液を得た。得られた懸濁液を、製造例1と同様にして瞬間真空蒸発装置を用いて乾燥させることにより、粉体状のシリカ粒子を取り出した。
【0058】
製造例7
有機溶媒としてのメチルアルコール量、水および触媒としてのアンモニア水の量、メチルアルコールとアンモニア水を撹拌する際の液温、ケイ素化合物としてのテトラメトキシシランの量、テトラメトキシシランの滴下時間、滴下終了後の撹拌時間をそれぞれ表1に示す通りに変更した以外は、製造例6と同様にしてシリカ粒子を製造した。
【0059】
なお、表1には、製造例1〜7で得られたシリカ粒子のCV値及び平均粒子径も合わせて記載した。
【0060】
【表1】
【0061】
(組成物の調製)
実施例1−1
20mLスクリュー管に、前記製造例1で得られたシリカ粒子4.0g、有機溶剤としてγ−ブチロラクトン6.0g、クエン酸をシリカ粒子100部に対して0.9部(0.036g)入れて、スターラーにて回転数150rpmで5分間撹拌し、シリカ濃度40%の溶剤分散体を調製した。
【0062】
実施例1−2〜1−5
クエン酸に代えて、表2に示す特定カルボン酸を用いたこと以外は実施例1−1と同様にしてシリカ濃度40%の溶剤分散体を調製した。
【0063】
実施例2−1〜2−5
20mLスクリュー管に、前記製造例2で得られたシリカ粒子4.0g、有機溶剤としてN,N−ジメチルホルムアミド6.0g、表2に示す特定カルボン酸をシリカ粒子100部に対して0.9部(0.036g)入れて、スターラーにて回転数150rpmで5分間撹拌し、シリカ濃度40%の溶剤分散体を調製した。
【0064】
実施例3、実施例4
20mLスクリュー管に、前記製造例3で得られたシリカ粒子4.0g、溶剤としてアセトニトリル6.0g(実施例3)又はN−メチルピロリドン(実施例4)クエン酸をシリカ粒子100部に対して0.9部(0.036g)入れて、スターラーにて回転数150rpmで5分間撹拌し、シリカ濃度40%の溶剤分散体を調製した。
【0065】
実施例5−1
前記製造例4で得られたシリカ粒子300.0gを40%の濃度となるように、有機溶剤としてのN,N−ジメチルアセトアミド450.0gと混合・撹拌することで予備分散してスラリーを得た。次いでこのスラリーを、粉砕混合機(スギノマシン社製「スターバースト」)を用いて粉砕混合した。上記で得られた粉砕混合後のスラリーに、混合・攪拌下で、クエン酸をシリカ粒子100部に対して0.9部(2.7g)添加し攪拌し、シリカ濃度40%の溶剤分散体を得た。
【0066】
実施例5−2〜5−8
特定カルボン酸の種類と量を表2に記載の値としたこと以外は実施例5−1と同様にして、シリカ粒子濃度40%の溶剤分散体を得た。
【0067】
実施例6
前記製造例5で得られたシリカ粒子を用い、有機溶剤をメチルエチルケトンとしたこと以外は実施例5−1と同様にして、シリカ粒子濃度40%の溶剤分散体を得た。
【0068】
実施例7
前記製造例3で得られたシリカ粒子を用い、溶剤を4−メチル−2−ペンタノンとしたこと以外は実施例5−1と同様にして、シリカ粒子濃度40%の溶剤分散体を得た。
【0069】
比較例1
特定カルボン酸を用いなかったこと以外は実施例1−1と同様にして、シリカ濃度40%の溶剤分散体を得た。
【0070】
比較例2
特定カルボン酸を用いなかったこと以外は実施例5−1と同様にして、シリカ濃度40%の溶剤分散体を得た。
【0071】
比較例3、比較例4
前記製造例6で得られたシリカ粒子(比較例3)又は前記製造例7で得られたシリカ粒子(比較例4)を用い、溶剤としてN,N−ジメチルホルムアミドを用いたこと以外は実施例1−1と同様にしてシリカ濃度40%の溶剤分散体を得た。
【0072】
実施例及び比較例で得られたシリカの溶剤分散体を下記の方法で評価した。
【0073】
[溶剤分散体の分散評価A]
各溶剤に分散したシリカ粒子分散体を20mLスクリュー管に10gとり、10回上下に手撹拌し、静置後、分散体の状態を目視で確認し、気泡の形成状態に応じて以下の通り評価した。粘度の高いものほど、撹拌時に空気を巻き込んで気泡が形成し、一旦形成した気泡が消滅しにくいが、粘度の低いものほど撹拌時の気泡の形成が少ない。
○:静置後直後にほとんど気泡が見られない
△:一晩静置後にほとんど気泡が見られない
×:一晩静置後に気泡が見られる
【0074】
[溶剤分散体の分散評価B]
各溶剤に分散したシリカ粒子分散体を20mLスクリュー管に10gとり、10分間スターラーで分散した後、スライドガラス(MICRO SLIDE GLASS 厚み1mm、松並硝子工業(株)製)上に、分散体1gを滴下しカバーガラス(COVER GLASS 厚み0.15mm)を被せ、顕微鏡(倍率400倍)にて凝集体の存在を目視で確認する。
○:凝集体は殆ど見られない
△:凝集体が僅かに見られる
×:凝集体が多数見られる
【0075】
結果を表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
本願で特定するシリカ粒子、特定カルボン酸、溶剤を用いた実施例1〜7では、分散性評価Bはいずれも○であり、評価Aも○又は△であった。一方、特定カルボン酸を用いなかった比較例1、2では、評価A及びBが共に×であり、シリカ粒子のCV値が20%を超えていた比較例3、4では分散評価Bが×となっていた。