(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、例えば壁体内等に設置されるセンサーには、バッテリー交換やその他の定期的なメンテナンスが必要なものがあり、その場合には、センサーを壁体内等から取り出さなければならず、手間であった。さらに、センサーが複数用いられる場合もあり、メンテナンス等の簡易化が求められていた。
また、センサーは、センサー本体や電源回路、通信回路等が収納された筐体を備えて構成され、壁体内等に設置する場合に場所を取ってしまうため、例えば壁体内等に充填された断熱材によって最適な場所に設置しにくい場合があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、メンテナンスを容易に行うことができるとともに、センサーを最適な場所に設置することができる建物状態検知装置の配置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、例えば
図1〜
図4に示すように、建物1の状態を検知する検知手段11,12,13,14と、
前記検知手段11,12,13,14に電力を供給し、前記検知手段11,12,13,14から取得した検知結果を外部装置(例えば管理用サーバ30)に送信する装置本体15と、
前記検知手段11,12,13,14と前記装置本体15とを電力供給可能かつ通信可能に接続する接続線16,17,18,19と、を備えた建物状態検知装置10の配置構造であって、
前記検知手段11,12,13,14は、前記建物1を構成する
外壁である壁体2の内部に配置され、
前記装置本体15は、前記壁体2における室内側面を構成する板材2cに対し、正面部が室内側に露出するようにして取り付けられ、
前記接続線16,17,18,19は、前記装置本体15から前記壁体2内に繰り出されて前記検知手段11,12,13,14に接続され
ており、
前記検知手段11,12,13,14には、含水率を測定する含水率センサー11が含まれており、
前記含水率センサー11は、前記壁体2における屋外側面を構成する板材2cに取り付けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、装置本体15が、壁体2における室内側面を構成する板材2cに対し、正面部が室内側に露出するようにして取り付けられているので、装置本体15のバッテリー交換やその他のメンテナンスを室内側から行うことができる。また、装置本体15の正面部が室内側に露出しているため、装置本体15の位置を室内側から正確に把握できる。さらに、壁体2の内部に配置された検知手段11,12,13,14も、装置本体15と接続線16,17,18,19で接続されているので、装置本体15を取り外せば、メンテナンス等を行うことができる。したがって、建物状態検知装置10のメンテナンスを容易に行うことができる。
また、検知手段11,12,13,14と装置本体15は接続線16,17,18,19によって接続され、それぞれ別体として壁体2に配置することができるので、例えば検知手段11,12,13,14と装置本体15とを同一の筐体に収めた場合に比して小型化を図ることができ、壁体2内の最適な場所に設置することが可能となる。
【0009】
さらに、請求項
1に記載の発明によれば、含水率センサー11が、外壁である壁体2の屋外側面を構成する板材2cに取り付けられているので、水による影響を受けやすい位置における含水率の測定を行うことができる。そのため、壁体2の含水による劣化状況、延いては建物1の劣化状況を正確に検知することができる。
【0010】
請求項
2に記載の発明は、例えば
図1〜
図3に示すように、請求項
1に記載の建物状態検知装置10の配置構造において、
前記外壁には窓(開口部3)が設けられており、
前記含水率センサー11は、前記板材2cのうち前記窓の直下に取り付けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項
2に記載の発明によれば、含水率センサー11が、壁体2における屋外側面を構成する板材2cのうち窓(開口部3)の直下に取り付けられているので、水による影響を一層受けやすい位置における含水率の測定を行うことができる。そのため、壁体2の含水による劣化状況、延いては建物1の劣化状況を正確に検知することができる。
【0012】
請求項
3に記載の発明は、例えば
図1,
図2に示すように、請求項1
又は2に記載の建物状態検知装置10の配置構造において、
前記壁体2は、当該壁体2の内部に設けられて鉛直荷重を支持する鉛直構造部材(例えば縦框材2a)を含んで構成されており、
前記検知手段11,12,13,14には、前記建物1の傾きを検知する傾斜センサー12が含まれており、
前記傾斜センサー12は、前記鉛直構造部材に取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項
3に記載の発明によれば、傾斜センサー12が、壁体2を構成する鉛直構造部材(例えば縦框材2a)に取り付けられているので、建物1の中で傾きが生じやすい位置における傾き具合の測定を行うことができる。そのため、建物1の傾き状況を正確に検知することができる。
【0014】
請求項
4に記載の発明は、例えば
図3に示すように、請求項1〜
3のいずれか一項に記載の建物状態検知装置10の配置構造において、
前記壁体2内には断熱材2dが充填されており、
前記検知手段11,12,13,14には、前記壁体2内の温湿度を測定する温湿度センサー13,14が含まれており、
前記温湿度センサー13,14は、前記壁体2内において前記断熱材2dによって保持
されていることを特徴とする。
【0015】
請求項
4に記載の発明によれば、温湿度センサー13,14が、壁体2内において断熱材2dによって保持されているので、温湿度センサー13,14を壁体2に対して取り付けて固定する必要がなく、最初に壁体2内に収める際やメンテナンスの際に手間を省くことができる。
【0016】
請求項
5に記載の発明は、例えば
図4に示すように、請求項1〜
4のいずれか一項に記載の建物状態検知装置10の配置構造において、
前記装置本体15には、前記壁体2内に位置する部位に開口部155が形成されており、
前記接続線16,17,18,19は、前記開口部155から前記壁体2内に繰り出されており、
前記開口部155には、当該開口部155を閉塞するとともに前記接続線16,17,18,19を保持する水密閉塞部材156が設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項
5に記載の発明によれば、装置本体15のうち壁体2内に位置する部位に形成された開口部155には、当該開口部155を閉塞するとともに接続線16,17,18,19を保持する水密閉塞部材156が設けられているので、水密閉塞部材156によって、開口部155から水分や埃が入ることを防ぐことができる。
【0018】
請求項
6に記載の発明は、例えば
図4に示すように、請求項
5に記載の建物状態検知装置10の配置構造において、
前記装置本体15の内部には、前記接続線16,17,18,19のプラグ16a,17a,18a,19aを接続可能なソケット151a,151b,151c,151dが前記開口部155側に設けられていることを特徴とする。
【0019】
請求項
6に記載の発明によれば、装置本体15の内部には、接続線16,17,18,19のプラグ16a,17a,18a,19aを接続可能なソケット151a,151b,151c,151dが開口部155側に設けられているので、メンテナンスの際に、開口部155を通じて接続線16,17,18,19のプラグ16a,17a,18a,19aをソケット151a,151b,151c,151dから抜き差ししやすい。
また、ソケット151a,151b,151c,151dが複数設けられていれば、開口部155を通じて新規のセンサーを増設しやすくなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、メンテナンスを容易に行うことができるとともに、センサーを最適な場所に設置することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態および図示例に限定するものではない。
【0023】
図1は、建物状態検知装置10が建物1を構成する壁体2に設けられた状態と、壁体2に設けられた建物状態検知装置10を含んで構成された建物状態モニタリングシステムの概略を説明する図である。
本実施形態においては、建物状態検知装置10が壁体2に設けられることで、当該壁体2の状態を検知することができ、その検知結果を、管理用サーバ30が蓄積・管理し、異常が発生した場合に適宜対応できるようになっている。
【0024】
本実施形態における建物1は住宅であり、その中でも戸建て住宅が採用されている。ただし、これに限られるものではなく、マンションやアパート等の集合住宅であってもよいし、住宅以外の建物1であってもよい。
また、本実施形態における建物1は木造であり、壁や床、屋根といった建物の構成要素を予め工場でパネル化しておき、施工現場でこれらのパネルを組み立てて構築するパネル工法で構築されている。
なお、パネルとは、縦横の框材が矩形状に組み立てられるとともに、矩形枠の内部に補助桟材が縦横に組み付けられて枠体が構成され、この枠体の両面もしくは片面に板材(面材とも言う)が貼設されたものであり、内部中空な構造となっている。さらに、その内部中空な部分には、通常、グラスウールやロックウール等の断熱材が装填される。
【0025】
壁体2は、上記のようにパネル化されたものであり、本実施形態においては、
図2に示すように、窓3が設けられた外壁である。
より詳細に説明すると、壁体2は、
図2(a)に示すように、縦横の框材2aが矩形状に組み立てられるとともに、矩形枠の内部に補助桟材2bが縦横に組み付けられて枠体が構成され、この枠体の両面に板材2cが貼設されたものである。縦横の框材2a及び補助桟材2bのうち、縦方向(上下方向)に設けられたものは、壁体2の内部に設けられて鉛直荷重を支持する鉛直構造部材として機能する。
また、壁体2の内部中空部分には、断熱材2dが充填されている。
さらに、壁体2の室内側に位置する板材2cの表面には、石膏ボード2eが貼設されており、さらにその上から仕上げ材が施されている。
【0026】
また、壁体2は、窓3が設けられた外壁であるため、補助桟材2bは、縦横の框材2aに対して、窓3用の開口を形成するようにして組み付けられ、板材2cに対しても開口が形成されている。このような開口には、窓3用のサッシが嵌め込まれて固定されており、これによって、壁体2における窓3が構成されている。
なお、本実施形態における窓3は、
図2(b)に示すように、嵌め殺し窓とされているが、これに限定されるものではない。
さらに、壁体2は外壁であるため、壁体2の屋外側には、図示しない胴縁を介して外壁材4が設けられている。なお、壁体2の屋外側に位置する板材2cの表面には、透湿防水シートが貼設されており、当該透湿防水シートと外壁材4との間には、胴縁の厚み分の隙間が形成されている。
【0027】
以上のような壁体2に対し、
図1〜
図3に示すように、建物状態検知装置10が設けられている。
建物状態検知装置10は、検知手段11,12,13,14と、装置本体15と、接続線16,17,18,19と、を備えている。
【0028】
検知手段11,12,13,14は、建物1の状態を検知するセンサーであり、壁体2の内部に配置されている。
本実施形態における検知手段11,12,13,14には、含水率を測定する含水率センサー11と、傾きを検知する傾斜センサー12と、温湿度を測定する第一温湿度センサー13と、第二温湿度センサー14と、が含まれている。
【0029】
接続線16,17,18,19は、検知手段11,12,13,14と装置本体15とを電力供給可能かつ通信可能に接続するものであり、装置本体15から壁体2内に繰り出されて検知手段11,12,13,14に接続されている。
このような接続線16,17,18,19は、装置本体15から各検知手段11,12,13,14への電力供給と、各検知手段11,12,13,14と装置本体15との間の信号の送受信を可能としている。
また、接続線16,17,18,19は、その一端部に、装置本体15の内部に設けられたソケット151a,151b,151c,151dに抜き差しできるプラグ16a,17a,18a,19aをそれぞれ備えている(
図4参照。)。図示はしないが、他端部側にプラグを設けて、各検知手段11,12,13,14に抜き差しできるようになっていてもよい。
【0030】
装置本体15は、壁体2における室内側面を構成する板材2cに対し、正面部が室内側に露出するようにして取り付けられている。
そして、装置本体15は、検知手段11,12,13,14に電力を供給し、検知手段11,12,13,14から取得した検知結果を外部装置(管理用サーバ30)に送信する機能を始め、種々の機能を有している。
また、このような装置本体15は、筐体150と、筐体150内に収容された回路基板151と、筐体150を壁体2上に保持する保持部152と、を備えている。
【0031】
回路基板151には、図示はしないが、検知手段11,12,13,14に電力を供給するための電源回路や、検知手段11,12,13,14から取得した検知結果を外部装置(管理用サーバ30)に送信するための通信回路が設けられている。また、含水率を測定するための含水率抵抗測定回路や、各種機能をオン・オフしたり、切り替えたりするための複数のスイッチング回路、各種機能の稼動状況を報知するLED表示部等が設けられている。
さらに、この回路基板151には、
図4に示すように、接続線16,17,18,19のプラグ16a,17a,18a,19aを接続可能なソケット151a,151b,151c,151dが設けられている。
なお、ソケット151a,151b,151c,151dの設置個数は、本実施形態においては、用いられるセンサーの個数に対応しているものとするが、センサーの増設を考慮して、用いられるセンサーの個数よりも多く設けてもよい。
【0032】
保持部152は、筐体150が収容される保持部本体152aと、保持部本体152aの正面側開口を閉塞するカバー部152bと、を有する。
保持部本体152aの縁部は、壁体2の室内側面に固定されており、カバー部152bは、保持部本体152aの縁部と係合するように構成されている。すなわち、カバー部152bが、室内側に露出し、室内から最もよく目に入る部材として設けられている。
なお、保持部152には、装置本体15に対して電力を供給するバッテリーも一緒に収容・保持されている。電源回路は、このバッテリーから電力を得ている。
【0033】
筐体150は、本体収容部150aと、蓋部150bと、立ち上がり板部150cと、を備えている。
【0034】
本体収容部150aは、回路基板151が収容されるとともに保持されるものであり、底板と、底板の両側端部に設けられて互いに対向する一対の側壁とを備え、断面略コ字状に形成されている。
また、図示はしないが、この本体収容部150aの内部には、後述する蓋部150b側から差し込まれたビスが捩じ込まれる筒状のビス受部が、回路基板151を避けて設けられている。
【0035】
蓋部150bは、底板と、底板の両側端部に設けられて互いに対向する一対の側壁とを備え、本体収容部150aと同様の断面略コ字状に形成されており、本体収容部150aと組み合わされることにより、本体収容部150aに収容された回路基板151等を覆うことができる。
また、図示はしないが、この蓋部150bの内部には、蓋部150bにおける底板の外側から内部側に向かってビスを差し込むことができる筒状のビス差込部が設けられ、本体収容部150aの内部に設けられたビス受部に対向するようにして配置されている。これによって、蓋部150bは、本体収容部150aに対し、ビス等によって着脱可能となっている。
【0036】
本体収容部150aに蓋部150bが取り付けられた状態においては、本体収容部150a及び蓋部150b双方の一対の側壁が設けられていない二つの面側が開口している。そして、このような開口(以下、開口部155)の少なくとも一方を利用して接続線16,17,18,19が設けられている。すなわち、装置本体15には、壁体2内に位置する部位に開口部155が形成され、接続線16,17,18,19は、このような開口部155から壁体2内に繰り出された状態となっている。
【0037】
立ち上がり板部150cは、本体収容部150a及び蓋部150bの開口部155側端部に形成された溝部155aに嵌め込まれるようにして設けられている。溝部155aは、本体収容部150a及び蓋部150bの底板から一対の側壁にかけて形成されており、立ち上がり板部150cは、このような溝部155aに差し込まれるようにして設けられている。
また、立ち上がり板部150cは、溝部155aに差し込まれて設けられた状態においては、蓋部150bの底板に到達しない立ち上がり寸法に設定されており、開口部155を完全に閉塞しない状態となっている。そのため、立ち上がり板部150cと蓋部150bとの間には隙間(開口部155)があり、この隙間に接続線16,17,18,19が通されている。
そして、このような開口部155の位置には、当該開口部155を閉塞するとともに接続線16,17,18,19を保持する水密閉塞部材156が設けられている。
【0038】
水密閉塞部材156は、例えばウレタンやポリエチレン等のような樹脂によって弾性を有して構成され、
図4に示すように、立ち上がり板部150cの外側面に取り付けられた第一閉塞材156aと、蓋部150bの底板における開口部155側に取り付けられた第二閉塞材156bと、を有する。
第一閉塞材156aは、立ち上がり板部150cにおける立ち上がり方向側端部よりも蓋部150bの底板側に突出し、第二閉塞材156bは、立ち上がり板部150c側に突出している。そのため、蓋部150bが本体収容部150aに被せられて取り付けられた際に、第一閉塞材156aと第二閉塞材156bは、互いに接触し、かつ接触部位が潰れるように変形した状態となる。
接続線16,17,18,19は、このような第一閉塞材156aと第二閉塞材156bとの接触部位から壁体2内に繰り出された状態となっており、第一閉塞材156aと第二閉塞材156bによって保持された状態となる。
【0039】
また、回路基板151に設けられたソケット151a,151b,151c,151dは、開口部155側に配置されている。換言すれば、装置本体15の内部には、接続線16,17,18,19のプラグ16a,17a,18a,19aを接続可能なソケット151a,151b,151c,151dが開口部155側に設けられている。
【0040】
次に、検知手段である各センサー11,12,13,14の配置について説明する。各センサー11,12,13,14は、全て壁体2内に設けられており、室内側からは見ることができないようになっている。
【0041】
含水率を測定する含水率センサー11は、本実施形態においては、壁体2における屋外側面を構成する板材2cのうち窓(開口部3)の直下に取り付けられている。換言すれば、本実施形態における含水率センサー11は、窓のない壁体には取り付けられず、雨水等の影響を受けやすい窓のある壁体2に取り付けられている。ただし、これに限られるものではなく、含水率センサー11は、窓のない壁体2(外壁)に取り付けられてもよいものとする。
このような含水率センサー11は、
図3に示すように、当該含水率センサー11における板材2c側の面から突出する一対の測定用ピンを備えており、一対の測定用ピンは、壁体2における屋外側面を構成する板材2cに差し込まれ、当該板材2cの含水率を測定している。
【0042】
傾きを検知する傾斜センサー12は、
図2(a)に示すように、壁体2の内部に設けられて鉛直荷重を支持する鉛直構造部材(本実施形態においては、縦方向の框材2a)に取り付けられている。鉛直構造部材である縦框材2aの取り付けは、両面テープによって行われているが、取付強度の向上を図るために、接着剤を併用するようにしてもよい。
なお、傾斜センサー12が取り付けられる縦框材2aは、建物1の施工段階で厳密に鉛直状態が確保されており、傾斜センサー12を取り付けた時点では傾きが生じていないものとする。
【0043】
温湿度を測定する第一温湿度センサー13及び第二温湿度センサー14は、
図3に示すように、壁体2内において断熱材2dによって保持されている。
断熱材2dは、上述のようにグラスウールやロックウール等の綿状断熱材が用いられており、弾性・反発性のある素材が用いられている。そのため、断熱材2dが、壁体2内の空間を満たすように充填されていれば、第一温湿度センサー13及び第二温湿度センサー14を、特に壁体2内のいずれかに固定せずに、断熱材2dによって保持することができる。接続線16,17,18,19は、断熱材2dの隙間を縫うようにして配線されているものとする。
なお、断熱材2dとして、グラスウールやロックウール等の綿状断熱材の代わりに、ボード状断熱材が用いられる場合がある。このような場合は、ボード状断熱材を切り欠くなどして加工し、第一温湿度センサー13及び第二温湿度センサー14を保持できる収容部を形成するようにする。これによって、ボード状断熱材でも、第一温湿度センサー13及び第二温湿度センサー14を保持することができる。ボード状断熱材には、接続線16,17,18,19を通す孔(ルート)も形成する。
【0044】
本実施形態においては、第一温湿度センサー13及び第二温湿度センサー14の二つの温湿度センサーが用いられており、一方を屋外側、他方を室内側に配置することで、一つの壁体2における屋外側と室内側の温湿度を測定することができる。このように第一温湿度センサー13及び第二温湿度センサー14を用いることで、含水率センサー11と共に、壁体2を構成する木材の状態を診断することが可能となる。
ただし、一つの壁体2における屋外側と室内側の温湿度を測定する必要がないと判断された場合は、いずれか一つの温湿度センサー13(14)のみを採用してもよい。この場合、回路基板151に設けられたソケットに空きができるため、例えば空気センサー等、その他のセンサーを温湿度センサーの代わりに用いるようにしてもよい。
また、含水率センサー11は、消費電力が多いため、第一温湿度センサー13及び第二温湿度センサー14のみで、壁体2を構成する木材の状態を診断するようにしてもよい。
【0045】
含水率センサー11、傾斜センサー12、第一温湿度センサー13及び第二温湿度センサー14によって得られた測定データ(検知結果)は、
図1及び
図5に示すように、装置本体15の回路基板151に設けられた通信回路によって外部装置である管理用サーバ30に送信される。
より詳細に説明すると、建物1内には、装置本体15をネットワークNに接続するための中継器20が設置されており、この中継器20及びネットワークNを介して、装置本体15からのデータが管理用サーバ30に送られるようになっている。すなわち、建物1と管理用サーバ30との間に、建物1の状態をモニタリングして診断する建物状態モニタリングシステムを構築することができる。この場合、装置本体15と中継器20はセットで用いられ、装置本体15は子機として、中継器20は親機として取り扱われる。
なお、中継器20としては、例えばルーターやゲートウェイが採用される。
また、ネットワークNとは、例えばインターネット、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、専用回線、またはこれらの組み合わせによって構成される情報通信ネットワークを指すものとする。
管理用サーバ30は、装置本体15から送信されたデータを受信して記憶・蓄積し、そのデータに基づいて建物1の状態を診断するための演算を行う。装置本体15から送信されたデータに異常値が含まれていた場合には、管理用サーバ30を管理する管理会社(例えば建物1の施工会社、メンテナンス業者など)の作業員が、建物1に赴いてメンテナンスを行うなど即時対応できるので好ましい。
【0046】
以上のように、ネットワークNを介して装置本体15と管理用サーバ30との間でデータの送受信を行うようにすれば、建物1内に、測定データ(検知結果)を演算して建物1の状態を診断する設備を導入する必要がなくなる。
また、建物1と管理用サーバ30との間に構築されたネットワークを、他の建物31,32にも適用すれば、広範な建物状態モニタリングシステムを構築できる。多数の建物1,31,32の状態をモニタリング・診断できれば、様々な種類の測定データを収集することができるので、管理用サーバ30を管理する管理会社を始め、測定データを利用する企業・業者は有益な情報を得ることができる。
【0047】
なお、本実施形態のように、ネットワークNを介して装置本体15と管理用サーバ30との間でデータの送受信を行うようにしない場合は、建物1内に、装置本体15から送信された測定データに基づいて建物の状態を診断する建物状態診断装置(例えばパソコン)を設けるようにする。
【0048】
本実施の形態によれば、装置本体15が、壁体2における室内側面を構成する板材2cに対し、正面部が室内側に露出するようにして取り付けられているので、装置本体15のバッテリー交換やその他のメンテナンスを室内側から行うことができる。また、装置本体15の正面部が室内側に露出しているため、装置本体15の位置を室内側から正確に把握できる。さらに、壁体2の内部に配置された検知手段11,12,13,14も、装置本体15と接続線16,17,18,19で接続されているので、装置本体15を取り外せば、メンテナンス等を行うことができる。したがって、建物状態検知装置10のメンテナンスを容易に行うことができる。
また、検知手段11,12,13,14と装置本体15は接続線16,17,18,19によって接続され、それぞれ別体として壁体2に配置することができるので、例えば検知手段11,12,13,14と装置本体15とを同一の筐体に収めた場合に比して小型化を図ることができ、壁体2内の最適な場所に設置することが可能となる。
【0049】
また、含水率センサー11が、壁体2における屋外側面を構成する板材2cのうち窓(開口部3)の直下に取り付けられているので、水による影響を受けやすい位置における含水率の測定を行うことができる。そのため、壁体2の含水による劣化状況、延いては建物1の劣化状況を正確に検知することができる。
【0050】
また、傾斜センサー12が、壁体2を構成する鉛直構造部材(例えば縦框材2a)に取り付けられているので、建物1の中で傾きが生じやすい位置における傾き具合の測定を行うことができる。そのため、建物1の傾き状況を正確に検知することができる。
【0051】
また、温湿度センサー13,14が、壁体2内において断熱材2dによって保持されているので、温湿度センサー13,14を壁体2に対して取り付けて固定する必要がなく、最初に壁体2内に収める際やメンテナンスの際に手間を省くことができる。
【0052】
また、装置本体15のうち壁体2内に位置する部位に形成された開口部155には、当該開口部155を閉塞するとともに接続線16,17,18,19を保持する水密閉塞部材156が設けられているので、水密閉塞部材156によって、開口部155から水分や埃が入ることを防ぐことができる。
【0053】
また、装置本体15の内部には、接続線16,17,18,19のプラグ16a,17a,18a,19aを接続可能なソケット151a,151b,151c,151dが開口部155側に設けられているので、メンテナンスの際に、開口部155を通じて接続線16,17,18,19のプラグ16a,17a,18a,19aをソケット151a,151b,151c,151dから抜き差ししやすい。
さらに、ソケット151a,151b,151c,151dが複数設けられていれば、開口部155を通じて新規のセンサーを増設しやすくなる。