(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来技術では、感度低下が発生したチャンネルや振動素子を特定できるものの、超音波画像における影響箇所をユーザが直観的に把握することはできなかった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、超音波プローブが有する素子の感度低下に起因した超音波画像への影響を、ユーザが直観的に把握することを可能にする超音波観測装置、超音波観測装置の作動方法および超音波観測装置の作動プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る超音波観測装置は、超音波を発生する複数の素子を有する超音波振動子を備えた超音波プローブを接続可能であり、接続された前記超音波プローブに超音波を発生させる送信信号を送信する一方、前記超音波プローブから受信したエコー信号をもとに超音波画像のデータを生成する超音波観測装置であって、前記複数の素子がそれぞれ受信する前記エコー信号に対応するデジタル信号のデータを用いて各素子が感度低下を有する感度低下素子であるか否かを判定する判定部と、前記判定部が感度低下素子であると判定した素子の超音波ビームに対する寄与度をもとに超音波画像中において感度が低下した領域を特定する領域特定部と、前記領域特定部が特定した前記領域を表示する感度低下部表示画像のデータを生成する感度低下部表示画像生成部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る超音波観測装置は、上記発明において、前記感度低下部表示画像生成部は、前記超音波ビームに対する感度低下素子の寄与度に応じた表示形態を有する感度低下部表示画像のデータを生成することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る超音波観測装置は、上記発明において、前記領域特定部は、前記感度低下素子の超音波ビームに対する寄与度を合計した合計寄与度を算出し、算出した合計寄与度に基づいて前記領域を特定することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る超音波観測装置は、上記発明において、前記感度低下部表示画像生成部は、前記合計寄与度に応じた視覚情報を前記領域に割り付けることによって前記感度低下部表示画像のデータを生成することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る超音波観測装置は、上記発明において、前記領域特定部は、前記超音波が到達する深度に応じた寄与度をもとに前記領域を特定することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る超音波観測装置は、上記発明において、前記領域特定部は、接続された超音波プローブの種類に応じた寄与度をもとに前記領域を特定することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る超音波観測装置は、上記発明において、前記判定部は、1または複数の素子の感度情報を取得し、該感度情報に基づいて各素子が感度低下素子であるか否かを判定することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る超音波観測装置は、上記発明において、前記判定部は、接続された超音波プローブの種類ごとに定められる条件に基づいて各素子が感度低下素子であるか否かを判定することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る超音波観測装置は、上記発明において、前記判定部は、前記超音波プローブの接続を検知した場合に判定を行うことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る超音波観測装置の作動方法は、超音波を発生する複数の素子を有する超音波振動子を備えた超音波プローブを接続可能であり、接続された前記超音波プローブに超音波を発生させる送信信号を送信する一方、前記超音波プローブから受信したエコー信号をもとに超音波画像のデータを生成する超音波観測装置の作動方法であって、判定部が、前記複数の素子がそれぞれ受信する前記エコー信号に対応するデジタル信号のデータを用いて各素子が感度低下を有する感度低下素子であるか否かを判定する判定ステップと、領域特定部が、前記判定ステップにおいて感度低下素子であると判定された素子の超音波ビームに対する寄与度をもとに超音波画像中において感度が低下した領域を特定する領域特定ステップと、前記判定ステップにおいて特定された前記領域を表示する感度低下部表示画像のデータを生成する感度低下部表示画像生成ステップと、を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明に係る超音波観測装置の作動プログラムは、超音波を発生する複数の素子を有する超音波振動子を備えた超音波プローブを接続可能であり、接続された前記超音波プローブに超音波を発生させる送信信号を送信する一方、前記超音波プローブから受信したエコー信号をもとに超音波画像のデータを生成する超音波観測装置の作動プログラムであって、判定部が、前記複数の素子がそれぞれ受信する前記エコー信号に対応するデジタル信号のデータを用いて各素子が感度低下を有する感度低下素子であるか否かを判定する判定ステップと、領域特定部が、前記判定ステップにおいて感度低下素子であると判定された素子の超音波ビームに対する寄与度をもとに超音波画像中において感度が低下した領域を特定する領域特定ステップと、前記判定ステップにおいて特定された前記領域を表示する感度低下部表示画像のデータを生成する感度低下部表示画像生成ステップと、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、超音波プローブが有する超音波素子の感度低下に起因した超音波画像への影響を、ユーザが直観的に把握することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る超音波観測装置を備えた超音波診断システムの構成を示すブロック図である。同図に示す超音波診断システム1は、観測対象である被検体へ超音波を送信し、該被検体で反射された超音波を受信する超音波プローブ2と、超音波プローブ2が取得した超音波信号に基づいて超音波画像を生成する超音波観測装置3と、超音波観測装置3が生成した超音波画像を表示する表示装置4と、を備える。
【0024】
超音波プローブ2は、その先端部に、超音波観測装置3から受信した電気的なパルス信号を超音波パルス(音響パルス)に変換して被検体へ照射するとともに、被検体で反射された超音波エコーを電圧変化で表現する電気的なエコー信号(超音波信号)に変換して出力する超音波振動子21を有する。超音波振動子21は、アレイ状に並べられた複数の素子を有する電子走査型である。素子は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸鉛(PT)、またはニオブ酸鉛等の圧電体を用いて構成され、機械的エネルギーと電気的エネルギーとの変換を行うことによって超音波を送受信する。以下の説明では、ラジアル型の超音波振動子21の場合を説明するが、これは一例に過ぎず、コンベックス型やリニア型であってもよい。
【0025】
超音波プローブ2は、撮像光学系および撮像素子をさらに有する超音波内視鏡でもよいし、光学系を有しない細径のミニチュアプローブでもよい。また、超音波プローブ2は、被検体の体内に挿入するタイプのみならず、被検体の体表から超音波を照射する体外式であってもよい。
【0026】
超音波観測装置3は、送信部31と、受信部32と、信号処理部33と、超音波画像生成部34と、判定部35と、領域特定部36と、感度低下部表示画像生成部37と、入力部38と、制御部39と、記憶部40と、を備える。
【0027】
送信部31は、超音波プローブ2と電気的に接続され、送信信号(パルス信号)を超音波振動子21へ送信する。送信部31が送信するパルス信号の周波数帯域は、超音波振動子21におけるパルス信号の超音波パルスへの電気音響変換の線型応答周波数帯域をほぼカバーする広帯域にするとよい。送信部31は、一つの音線を構成する複数の素子に対して、各素子への送信タイミングを制御しながら送信信号を送信する。このようにして送信信号を受信した複数の素子は、超音波ビームを照射する。送信部31は、制御部39が出力する各種制御信号を超音波プローブ2に対して送信する。なお、素子の感度低下の有無を検出する際に送信部31が送信する送信信号のパワーを、検査時の送信信号のパワーに比して強くしてもよい。
【0028】
受信部32は、超音波振動子21から電気的な受信信号であるエコー信号を受信して、A/D変換することによってデジタルの高周波(RF:Radio Frequency)信号のデータ(以下、RFデータという)を生成する。また、受信部32は、超音波プローブ2から識別用のIDを含む各種情報を受信して制御部39へ送信する機能も有する。
【0029】
信号処理部33は、受信部32から受信したRFデータをもとにデジタルの超音波画像用受信データを生成する。具体的には、信号処理部33は、複数のRFデータの位相を調整して加算するデジタルビームフォーミング(DBF)処理、包絡線検波処理、および対数変換処理等の公知の処理を施し、デジタルの超音波画像用受信データを生成する。超音波画像用受信データは、超音波パルスの反射の強さを示す受信信号の振幅または強度が、超音波パルスの送受信方向(深度方向)に沿って並んだ複数のラインデータ(音線データ)からなる。信号処理部33は、生成した1フレーム分の超音波画像用受信データを、超音波画像生成部34へ出力する。
【0030】
超音波画像生成部34は、信号処理部33から受信した超音波画像用受信データに基づいて超音波画像データを生成する。超音波画像生成部34は、超音波画像用受信データを表示装置4の表示方式に従ったデータに変換するデジタルスキャンコンバーター(DSC)を有する。超音波画像生成部34は、さらにゲイン処理、コントラスト処理等の公知の信号処理を行うことにより、超音波画像データを生成する。この超音波画像データは、いわゆるBモード画像データである。Bモード画像は、色空間としてRGB表色系を採用した場合の変数であるR(赤)、G(緑)、B(青)の値を一致させたグレースケール画像である。
【0031】
判定部35は、受信部32から受信したRFデータを解析することによって超音波振動子21が有する素子における感度低下の有無を判定する。判定部35は、RFデータの振幅を感度値として検出した後、この感度値を所定の閾値と比較し、閾値よりも小さい感度値を有する素子を感度低下がある素子(以下、感度低下素子という)と判定する。判定部35は、例えば感度低下素子と判定した素子を1とし、それ以外の素子は0とする感度情報を記憶部40に書き込んで記憶させる。
【0032】
この判定処理は、ユーザが超音波プローブ2を超音波観測装置3に接続した後、超音波プローブ2の先端部を空気中で保持した状態で行う。超音波プローブ2の先端部が空気中にある場合、送信部31が送信した送信信号に対して受信部32が受信するエコー信号は、超音波振動子21と空気との境界面で反射して戻ってきたエコー信号である。
【0033】
領域特定部36は、記憶部40が記憶する素子毎の感度情報を用いて、超音波画像中で感度低下の影響が及ぶ領域を特定する。領域特定部36は、超音波ビームに対する送信開口数分の素子の寄与度をもとに感度低下部の特定を行う。
【0034】
図2は、領域特定部36が行う処理の概要を説明する図である。
図2は、五つの素子E1〜E5を用いて一つの超音波ビームを形成する場合を例示しており、判定部35によって五つの素子E1〜E5のうち素子E2と素子E3が感度低下素子と判定された場合を例示している。また、超音波プローブ2は、五つの超音波ビームB1〜B5を照射するものとする。超音波振動子21が有する素子の数がこれに限定されないことは言うまでもない。各超音波ビームBiは、素子Eiからの寄与度が最も高く、素子Eiから遠いほど寄与度が低い。例えば超音波ビームB1は、素子E1の寄与度が75%、素子E2の寄与度が25%、素子E3〜E5の寄与度がそれぞれ0%である。また、超音波ビームB2は、素子E2の寄与度が50%、素子E1、E3の寄与度がそれぞれ25%、素子E4、E5の寄与度がそれぞれ0%である。素子ごとの超音波ビームに対する寄与度の情報は、記憶部40に記憶されている。
【0035】
なお、ここでは超音波ビームに対する寄与度に応じた重み付けをする場合を説明したが、超音波ビームに対する素子の寄与度をもとに他の方法によって重み付けをしてもよい。例えば、
図2において、超音波ビームBiを構成する素子のうち中心の素子Eiおよび個の素子Eiと隣り合う3つの素子の重みを等しく最大とし、それ以外の素子の重みを相対的に低くしてもよい。このように、少なくとも中心の素子の重みが最大であり、中心の素子から最も離れた素子の重みが最小であれば、重み付けの方法は上述した方法に限られない。
【0036】
領域特定部36は、各超音波ビームに対して、感度低下素子の寄与度を合計した合計寄与度を算出する。寄与度は超音波ビームに対する各素子の寄与具合(寄与している送信強度の割合)であり、一つの超音波ビームに対する寄与度の和は常に100%になる。このうち、感度低下素子の寄与度を合計したものが、表に示された合計寄与度の値である。この値が大きいほど、感度低下素子の影響が大きい。
図2に示す場合、感度低下素子E2、E3の寄与度を超音波ビームB1〜B5に対してそれぞれ算出する。算出結果は、超音波ビームB1の合計寄与度が25(%)+0(%)=25(%)、超音波ビームB2の合計寄与度が50(%)+25(%)=75(%)、超音波ビームB3の合計寄与度が25(%)+50(%)=75(%)、超音波ビームB4の合計寄与度が0(%)+25(%)=25(%)、超音波ビームB5の合計寄与度が0(%)+0(%)=0(%)である。
【0037】
感度低下部表示画像生成部37は、領域特定部36が特定した領域(感度低下部)を表示する感度低下部表示画像のデータを生成する。感度低下部表示画像生成部37は、領域特定部36が算出した合計寄与度に基づいて、感度低下部表示画像のデータを生成する。この際、感度低下部表示画像生成部37は、各超音波ビームによって生成される超音波画像の領域ごとに、合計寄与度に応じた色を割り当ててその領域の感度情報を表示する感度低下部表示画像のデータを生成する。例えば、合計寄与度が0%以上25%未満の場合は「白」、合計寄与度が25%以上60%未満の場合には「黄」、合計寄与度が60%以上の場合には「赤」をそれぞれ割り当てる。
【0038】
図3は、表示装置4が表示する感度低下部表示画像の表示例を示す図である。同図に示す感度低下部表示画像100は、
図2を参照して説明した処理を行い、上述した規則にしたがって色を割り当てた場合の表示例を示している。感度低下部表示画像100は、超音波ビームB1、B4にそれぞれ対応するビーム領域b1、b4を黄色(
図3ではドットで表示)で表示し、超音波ビームB2、B3にそれぞれ対応するビーム領域b2、b3を赤色(
図3では斜線で表示)で表示し、超音波ビームB5に対応するビーム領域b5を白色で表示している。なお、感度低下部表示画像生成部37は、合計寄与度に応じた色を割り当てる代わりに、彩度、明度、模様またはパターン等の視覚情報を合計寄与度に応じて割り当てることによって感度低下部表示画像のデータを生成してもよい。
【0039】
入力部38は、キーボード、ボタン、マウス、トラックボール、タッチパネル、タッチパッド等のユーザインタフェースを用いて構成され、各種操作信号の入力を受け付ける。各種操作信号の一つとして、超音波振動子21の素子の感度判定処理の開始を指示する信号が含まれる。
【0040】
制御部39は、記憶部40が記憶、格納する情報を記憶部40から読み出し、超音波観測装置3の作動方法に関連した各種演算処理を実行することによって超音波観測装置3を含む超音波診断システム1の動作を統括して制御する。
【0041】
記憶部40は、判定部35が判定する際に参照する感度値の閾値、判定部35が素子ごとに判定した結果等の情報、感度低下部表示画像生成部37が参照する超音波ビームと素子の寄与度との関係、および合計寄与度と感度低下部表示画像に対する色の割り当てとの関係等を記憶する。記憶部40が記憶する感度値の閾値は、超音波プローブ2の種類によって異なっていてもよい。記憶部40は、超音波診断システム1を動作させるための各種プログラム、および超音波診断システム1の動作に必要な各種パラメータ等を含むデータ等を記憶する。各種プログラムには、超音波診断システム1の作動方法を実行するための作動プログラムが含まれる。各種プログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ、CD−ROM、DVD−ROM、フレキシブルディスク等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶して広く流通させることも可能である。また、各種プログラムは、通信ネットワークを介してダウンロードすることによって取得することも可能である。ここでいう通信ネットワークは、例えば既存の公衆回線網、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等によって実現されるものであり、有線、無線を問わない。
【0042】
以上の構成を有する超音波観測装置3は、CPU(Central Processing Unit)等の汎用プロセッサ、またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)もしくはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の特定の機能を実行する専用の集積回路等、各種プログラム等が予めインストールされたROM(Read Only Memory)、および各処理の演算パラメータやデータ等を記憶するRAM(Random Access Memory)等を用いて実現される。
【0043】
表示装置4は、映像ケーブルを介して超音波観測装置3が生成した超音波画像および感度低下部表示画像のデータ信号を受信して表示する。表示装置4は、液晶または有機EL(Electro Luminescence)等のモニタを用いて構成される。
【0044】
図4は、以上の構成を有する超音波観測装置3が行う素子感度判定処理の概要を示すフローチャートである。以下に示すフローチャートにおいては、超音波観測装置3の電源が入った状態にあるものとする。
【0045】
超音波観測装置3のコネクタに超音波プローブ2が接続され、受信部32が超音波プローブ2からの信号を受信して制御部39が超音波プローブ2の接続を検知した場合(ステップS101:Yes)、制御部39は表示装置4に素子感度判定処理の開始メッセージを表示させる(ステップS102)。この開始メッセージは、例えば「超音波プローブの素子の素子感度判定処理を開始します。超音波プローブの先端部を空気中に保った状態でOKボタンを押してください。」という内容である。制御部39が超音波プローブ2の接続を検知しない場合(ステップS101:No)、超音波観測装置3はステップS101を繰り返す。
【0046】
その後、入力部38が開始指示信号の入力を受け付けた場合(ステップS103:Yes)、制御部39はカウンタiを初期値1にセットする(ステップS104)。続いて、送信部31は、超音波振動子21が有する複数の素子のうち素子Eiを選択し、素子Eiに送信信号を送信する(ステップS105)。なお、ここでは入力部38が開始指示信号の入力を受け付けたときに送信部31が送信信号を素子E1に送信する場合を説明したが、制御部39が超音波プローブ2の接続を検知したときに送信部31が自動的に素子E1に送信信号の送信し始めるようにしてもよい。
【0047】
続いて、受信部32は、超音波振動子21からエコー信号を受信して、A/D変換することによってRFデータを生成し、判定部35に出力する(ステップS106)。
【0048】
判定部35は、受信部32から受信したRFデータを用いて素子Eiが感度低下素子であるか否かを判定して判定結果を記憶部40に記憶させる(ステップS107)。判定部35は、RFデータから素子Eiの感度値を算出し、その感度値が閾値よりも低い場合、素子Eiを感度低下素子と判定する。
図2に示す場合、判定部35は二つの素子E2、E3を感度低下素子と判定する。
【0049】
この後、制御部39は、カウンタiが素子の数5より小さいか否かを判定する(ステップS108)。カウンタiが5より小さい場合(ステップS108:Yes)、すべての素子に対する判定処理が終了していないため、制御部39はカウンタiを1増やし(ステップS109)、ステップS105に戻る制御を行う。一方、カウンタiが5より小さくない場合(ステップS108:No)、すべての素子に対する判定処理が終了したため、制御部39はステップS110へ移行する制御を行う。判定部35によるすべての判定処理が終了すると、例えば
図2に示す情報が記憶部40に格納される。
【0050】
ステップS110以降の処理を説明する。領域特定部36は、記憶部40を参照して、超音波ビームごとの合計寄与度を算出する(ステップS110)。具体的な算出方法は、
図2を参照して説明した通りである。
【0051】
続いて、領域特定部36は、合計寄与度を用いて感度が低下した領域を特定する(ステップS111)。
【0052】
感度低下部表示画像生成部37は、合計寄与度に基づいて感度低下部表示画像のデータを生成する(ステップS112)。具体的には、感度低下部表示画像生成部37は、例えば合計寄与度に応じた色を超音波画像中の超音波ビーム対応領域に割り当てることによって感度低下部表示画像のデータを生成する。
【0053】
この後、制御部39は、感度低下部表示画像を表示装置4に表示させる(ステップS113)。表示装置4は、例えば
図3に示す感度低下部表示画像100を表示する。この際、制御部39は、感度低下部表示画像とともに、感度低下素子があることを報知するメッセージや、超音波ビームごとの感度低下の度合いを報知するメッセージを表示装置4に表示させてもよい。ステップS113の後、超音波観測装置3は一連の処理を終了する。
【0054】
なお、ステップS113の後、入力部38が感度低下部表示画像の消去を指示する信号の入力を受け付けた場合、制御部39は表示装置4に感度低下部表示画像の表示を終了させるようにしてもよい。また、表示装置4が感度低下部表示画像の表示を開始してから所定時間が経過した後、制御部39が表示装置4に感度低下部表示画像の表示を終了させるようにしてもよい。
【0055】
ステップS103において、入力部38が開始指示信号の入力を受け付けない場合(ステップS103:No)において、開始メッセージの表示を開始してから所定時間が経過したとき(ステップS114:Yes)、超音波観測装置3は一連の処理を終了する。ステップS114で所定時間が経過していないとき(ステップS114:No)、超音波観測装置3はステップS103に戻る。
【0056】
以上説明した本発明の実施の形態1によれば、感度低下を有する感度低下素子であると判定した素子の超音波ビームへの寄与度をもとに超音波画像中において感度が低下した領域を表示する感度低下部表示画像のデータを生成するため、超音波プローブが有する超音波素子の感度低下に起因した超音波画像への影響を、ユーザが直観的に把握することが可能になる。
【0057】
また、本実施の形態1によれば、例えば局所的な観測を行う際に、より感度低下の影響が少ない部分をユーザは選んで使うことができる。
【0058】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る超音波観測装置は、感度低下部の判定を深度ごとに行うことによって感度低下部を特定し、感度低下部表示画像のデータを生成する。本実施の形態2に係る超音波診断システムの構成は、実施の形態1と同様である。以下、超音波診断システムの構成要素には、実施の形態1と同じ符号を付して説明する。
【0059】
図5〜
図7は、本実施の形態2において、感度低下部表示画像生成部37が行う処理の概要を説明する図である。
図5〜
図7では、互いに異なる深度領域D1〜D3における処理の概要を示している。具体的には、
図5が最も深度が浅い深度領域D1における処理の概要を示しており、
図7が最も深度が深い深度領域D3の処理の概要を示している。
図5〜
図7では、
図2と同様に、五つの素子E1〜E5を用いて一つの超音波ビームを形成する場合であって、判定部35によって五つの素子E1〜E5のうち素子E2と素子E3が感度低下素子と判定された場合を例示している。
【0060】
超音波ビームBij(i=1〜5,j=1〜3)は、深度領域Djにおける超音波ビームBiを意味している。超音波ビームBijは、素子Eiからの寄与度が最も高く、素子Eiから遠いほど寄与度が低い。例えば超音波ビームB11は、素子E1の寄与度が75%、素子E2の寄与度が25%、素子E3〜E5の寄与度がそれぞれ0%である(
図5)。超音波ビームB12は、素子E1の寄与度が70%、素子E2の寄与度が20%、素子E3の寄与度が10%、素子E4、E5の寄与度がそれぞれ0%である(
図6)。超音波ビームB13は、素子E1の寄与度が68%、素子E2の寄与度が18%、素子E3の寄与度が9%、素子E4の寄与度が5%、素子E5の寄与度が0%である(
図7)。
【0061】
また、超音波ビームB21は、素子E2の寄与度が50%、素子E1、E3の寄与度がそれぞれ25%、素子E4、E5の寄与度がそれぞれ0%である(
図5)。超音波ビームB22は、素子E2、E3の寄与度がそれぞれ40%、素子E1、E4の寄与度がそれぞれ10%、素子E5の寄与度が0%である(
図6)。超音波ビームB23は、最も深度が大きい領域において、素子E2、E3の寄与度がそれぞれ38%、素子E1、E4の寄与度がそれぞれ9%、素子E5の寄与度が6%である(
図7)。
【0062】
なお、
図5〜
図7に示す寄与度の設定はあくまでも一例にすぎず、深度方向の区分けや寄与率の設定はこれに限られるわけではない。
【0063】
感度低下部表示画像生成部37は、各超音波ビームに対して、感度低下素子の寄与度を合計した合計寄与度を深度領域ごとに算出する。
図5に示す場合の超音波ビームBi1(i=1〜5)の合計寄与度は、
図2における超音波ビームBiの合計寄与度とそれぞれ同じである。
図6に示す場合、超音波ビームB12の合計寄与度が20(%)+10(%)=30(%)、超音波ビームB22の合計寄与度が40(%)+40(%)=80(%)、超音波ビームB32の合計寄与度が10(%)+40(%)=50(%)、超音波ビームB42の合計寄与度が10(%)+40(%)=50(%)、超音波ビームB52の合計寄与度が0(%)+10(%)=10(%)である。
図7に示す場合、超音波ビームB13の合計寄与度が18(%)+9(%)=27(%)、超音波ビームB23の合計寄与度が38(%)+38(%)=76(%)、超音波ビームB33の合計寄与度が20(%)+38(%)=58(%)、超音波ビームB43の合計寄与度が9(%)+38(%)=47(%)、超音波ビームB53の合計寄与度が5(%)+9(%)=14(%)である。
【0064】
図5〜
図7において、合計寄与度と表示色の対応は実施の形態1と同様である。すなわち、合計寄与度が0%以上25%未満の場合は「白」、合計寄与度が25%以上60%未満の場合には「黄」、合計寄与度が60%以上の場合には「赤」をそれぞれ割り当てる。
【0065】
感度低下部表示画像生成部37は、算出した合計寄与度に基づいて、感度低下部表示画像のデータを生成する。この際、感度低下部表示画像生成部37は、各超音波ビームによって生成される超音波画像の深度領域ごとに、合計寄与度に応じた色を割り当ててその深度領域の感度情報を表示する感度低下部表示画像のデータを生成する。
【0066】
図8は、表示装置4が表示する感度低下部表示画像の表示例を示す図である。同図に示す感度低下部表示画像200は、超音波ビームBijに対応する部分ビーム領域bijごとに表示態様が定められている。具体的には、感度低下部表示画像200は、超音波ビームB1(B11、B12、B13)に対応するビーム領域b1(b11、b12、b13)、および超音波ビームB4(B41、B42、B43)に対応するビーム領域b4(b41、b42、b43)を黄色(
図8ではドット)で表示する。また、感度低下部表示画像200は、超音波ビームB2(B21、B22、B23)に対応するビーム領域b2(b21、b22、b23)を赤色(
図8では斜線)で表示し、超音波ビームB5(B51、B52、B53)に対応するビーム領域b5(b51、b52、b53)を白色で表示する。感度低下部表示画像200は、超音波ビームB3に対応するビーム領域b3において、部分ビーム領域ごとに異なる色で表示している。具体的には、感度低下部表示画像200は、部分ビーム領域b31を赤色(
図8では斜線)で表示し、部分ビーム領域b32およびb33を黄色で表示している。
【0067】
本実施の形態2における処理の概要は、実施の形態1で説明した
図4のフローチャートに準じる。ただし、ステップS110において、領域特定部36は、上述したように、各超音波ビームの深度領域ごとに合計寄与度を算出する。また、ステップS111において、領域特定部36は、超音波ビームの深度領域ごとに感度が低下した領域を特定する。また、ステップS112において、感度低下部表示画像生成部37は、各超音波ビームの深度領域ごとに合計寄与度に応じた色を割り当てることによって感度低下部表示画像のデータを生成する。
【0068】
以上説明した本発明の実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、超音波プローブが有する超音波素子の感度低下に起因した超音波画像への影響を、ユーザが直観的に把握することが可能になる。
【0069】
また、本実施の形態2によれば、超音波が到達する深度に応じて異なる寄与度を用いて感度低下部表示画像のデータを生成するため、超音波画像に影響が生じる感度低下部のみをより的確に報知することができる。
【0070】
(その他の実施の形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、判定部35は、RFデータを用いて感度値を算出する代わりに、RFデータを超音波画像のデータ生成時と同様の処理を行うことによって画像データ化した後の各画素の輝度値の平均を算出し、この平均を感度情報として用いることによって素子の感度低下の有無を判定するようにしてもよい。
【0071】
また、判定部35における素子の感度低下の有無の判定処理は上述したものに限られない。例えば、判定部35は、閾値より感度値が小さい素子を候補素子として、その近傍の所定数の素子の感度値の平均や和、分散、最頻値、等の統計値を算出し、その統計値に応じて定められる第2閾値より小さい場合に候補素子を感度低下素子と判定するようにしてもよい。この場合の近傍領域は、例えば超音波画像を生成する際の送信開口数に応じて定めてもよいし、深度に応じて異なる受信開口数に応じて定めてもよいし、深さごとに受信開口数と送信開口数のうち小さい方の数に応じて定めてもよい。また、近傍領域は、候補素子を中心とする所定範囲内で所定の間隔で間引いても選択してもよいし、その所定範囲内でランダムに選択してもよい。また、判定部35は、超音波ビームを照射して音線ごとに感度低下を判定し、感度低下がある場合には、その超音波ビームの中心の素子を感度低下素子と判定してもよい。
【0072】
また、超音波診断システム1を用いて検査を行っている最中に感度低下部を表示できるようにしてもよい。例えば、検査中に入力部38が感度低下部の表示を指示する信号の入力を受け付けると、感度低下部表示画像生成部37は記憶部40を参照して感度低下素子を特定し、超音波画像の表示に合わせて感度低下部表示画像のデータを生成する。超音波画像がスクロールされた場合、感度低下部表示画像生成部37は、そのスクロールに応じて感度低下部表示画像の表示形態も変更する。制御部39は、表示装置4に感度低下部表示画像を超音波画像と並べて表示させる。なお、制御部39は、表示装置4に対し、感度低下部表示画像を超音波画像よりも小さく表示させてもよい。この後、入力部38が感度低下部の表示を削除する信号の入力を受け付けた場合、制御部39は、表示装置4に感度低下部表示画像の表示を終了させる。
【0073】
超音波観測装置が、超音波画像と感度低下部表示画像を重畳した重畳画像のデータを生成する重畳画像生成部をさらに備えてもよい。この場合には、検査中に入力部38が感度低下部の表示指示入力を受け付けたとき、感度低下部表示画像生成部37が上記同様に感度低下部表示画像のデータを生成した後、重畳画像生成部がこのデータを超音波画像のデータに重畳して重畳画像のデータを生成する。重畳画像は、感度低下部を色づけして表示してもよいし、感度低下部の透過度を高くして半透明にして表示してもよい。
【0074】
このようにして検査中も感度低下部を表示する機能を具備することにより、ユーザは検査中にも感度低下部を把握して、検査や診断の際に役立てることができる。