【文献】
岡田雅人他編集,「無敵のバイオテクニカルシリーズ タンパク質実験ノート(上)抽出と分離精製」、株式会社羊土社、1996年9月10日、pp. 47-48
【文献】
NATURE BIOTECHNOLOGY,2013年 7月 7日,VOL:31, NR:8,PAGE(S):753 - 758,URL,http://dx.doi.org/10.1038/nbt.2621
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリヌクレオチドが、プロモータの3つのコピーを更に含み、第1のコピーが、第1の翻訳単位と動作可能に組み合わされ、第2のコピーが、第2の翻訳単位と動作可能に組み合わされ、第3のコピーが、第3の翻訳単位と動作可能に組み合わされ、第1の鎖、第2の鎖、及びシャペロンタンパク質の転写を駆動する、請求項1または請求項2に記載の方法。
ポリヌクレオチドが、選択可能なマーカを更に含み、培養培地が、宿主細胞にポリヌクレオチドを保持させるように、単一の抗生物質からなる選択剤を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
第1の翻訳単位が、第1の鎖のコード領域と動作可能に組み合わされた第1の翻訳開始領域(TIR)を含み、第2の翻訳単位が、第2の鎖のコード領域と動作可能に組み合わされた第2の翻訳開始領域(TIR)を含み、第1及び第2のTIRの相対的翻訳強度が、約1.0〜約3.0である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
成長撹拌速度が、生産相中の宿主細胞におけるピーク酸素取り込み速度を0.5〜2.5mmol/L/分上回る、成長相中の宿主細胞における酸素取り込み速度を達成するために十分であり;または
成長相中の宿主細胞のピーク酸素取り込み速度が、3.5〜4.5mmol/L/分の範囲内であり、生産相中の宿主細胞の酸素取り込み速度が、1.0〜3.0mmol/L/分の範囲内である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
2つの鎖を含むポリペプチドが、重鎖及び軽鎖を含む半抗体であり、発現時に、重鎖及び軽鎖が組み立てられて、宿主細胞において半抗体を形成し;かつ半抗体が、少なくとも1つのホール形成突然変異または少なくとも1つのノブ形成突然変異を含む、請求項1に記載の方法。
2つの鎖を含むポリペプチドが、重鎖及び軽鎖を含む抗IL13半抗体であり、重鎖が、配列番号9のHVR−H1、配列番号10のHVR−H2、及び配列番号11のHVR−H3を含む重鎖可変ドメインを含み;軽鎖が、配列番号12のHVR−L1、配列番号13のHVR−L2、及び配列番号14のHVR−L3を含む軽鎖可変ドメインを含み、発現時に、重鎖及び軽鎖が組み立てられて、宿主細胞において抗IL13半抗体を形成する、請求項1に記載の方法。
2つの鎖を含むポリペプチドが、重鎖及び軽鎖を含む抗IL17半抗体であり;重鎖が、配列番号20のHVR−H1、配列番号21のHVR−H2、及び配列番号22のHVR−H3を含む重鎖可変ドメインを含み、かつ軽鎖が、配列番号23のHVR−L1、配列番号24のHVR−L2、及び配列番号25のHVR−L3を含む軽鎖可変ドメインを含み、発現時に、重鎖及び軽鎖が組み立てられて、宿主細胞において抗IL17半抗体を形成する、請求項1に記載の方法。
第1の抗原に結合することが可能な第1の半抗体、及び第2の抗原に結合することが可能な第2の半抗体を含む、二重特異性抗体の生産方法であって、第1の抗原と第2の抗原が相違し、
方法は、還元条件において、第1の半抗体を第2の半抗体と組み合わせて二重特異性抗体を生産することを含み、
第1の半抗体が、少なくとも1つのノブ形成突然変異を含み、かつ第2の半抗体が、少なくとも1つのホール形成突然変異を含み、並びに
第1の半抗体及び第2の半抗体の両方が、請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法によって生産される、
方法。
誘導プロモータが、IPTG誘導の不在下で、第1の鎖、第2の鎖、及びシャペロンタンパク質の転写を駆動するIPTG誘導プロモータであるか、または培養培地中のリン酸塩が枯渇したとき、第1の鎖、第2の鎖、及びシャペロンタンパク質の転写を駆動する、Phoプロモータである、請求項4に記載の方法。
ポリペプチドが、第1の鎖及び第2の鎖が免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖を含む一価抗体であり、一価抗体が、抗原に特異的に結合することが可能である、請求項9に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書に提供される例は、複数の鎖タンパク質の各鎖(例えば、半抗体の軽鎖及び重鎖)をコードする翻訳単位と組み合わせた1つ以上の特異的なシャペロンタンパク質の同時発現により、原核宿主細胞系における組み立てられた複数の鎖タンパク質の生成が増加することを示す。これらの例は、後続のプロセスの改善、例えば、発酵のある特定の相のための特定の温度及び撹拌速度により、発現ベクターの改善をこえて、生成及び頑健性が顕著に向上することを更に示す。全体として、本明細書に記載の方法は、例示的な2鎖ポリペプチド(例えば、半抗体)の生成において少なくとも10倍の増大を達成する。
【0013】
一態様においては、発現時に、2つの鎖が折り畳まれ、かつ組み立てられて、宿主細胞において生物学的に活性のポリペプチドを形成し、宿主細胞は、(1)ポリペプチドの第1の鎖をコードする第1の翻訳単位、(2)ポリペプチドの第2の鎖をコードする第2の翻訳単位、ならびに(3)ペプチジル−プロリルイソメラーゼ、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼ、及びこれらの組み合わせから選択される、少なくとも1つのシャペロンタンパク質をコードする第3の翻訳単位、を含む、ポリヌクレオチドを含有する、ポリペプチドの2つの鎖を発現させるように宿主細胞を培養することによる原核宿主細胞における2つの鎖を含むポリペプチドの生成方法が本明細書で提供され、宿主細胞は、成長温度及び成長撹拌速度を含む成長相、ならびに生成温度及び生成撹拌速度を含む生成相を含む条件下で、培養培地において培養され、成長温度は、生成温度を2〜10℃上回り、成長撹拌速度は、生成撹拌速度を50〜250rpm上回り、ならびに(b)宿主細胞から生物学的に活性のポリペプチドを回収すること。一態様において、本ポリペプチドは2つの鎖からなるが、別の態様においては、ポリペプチドは、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の鎖を含む。
【0014】
別の態様においては、発現時に、2つの鎖が折り畳まれ、かつ組み立てられて、宿主細胞において生物学的に活性のポリペプチドを形成し、宿主細胞は、(1)ポリペプチドの第1の鎖をコードする第1の翻訳単位、(2)ポリペプチドの第2の鎖をコードする第2の翻訳単位、(3)第1のシャペロンタンパク質をコードする第3の翻訳単位、(4)第2のシャペロンタンパク質をコードする第4の翻訳単位、(5)第3のシャペロンタンパク質をコードする第5の翻訳単位(第1、第2、及び第3のシャペロンタンパク質は、ペプチジル−プロリルイソメラーゼ、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼ、及びこれらの組み合わせから選択される)、を含む、ポリヌクレオチドを含有する、ポリペプチドの2つの鎖を発現させるように宿主細胞を培養することによる原核宿主細胞における2つの鎖を含むポリペプチドの生成方法が本明細書で提供され、宿主細胞は、成長温度及び成長撹拌速度を含む成長相、ならびに生成温度及び生成撹拌速度を含む生成相を含む条件下で、培養培地において培養され、成長温度は、生成温度を2〜10℃上回り、成長撹拌速度は、生成撹拌速度を50〜250rpm上回り、ならびに(b)宿主細胞から生物学的に活性のポリペプチドを回収すること。一態様において、本ポリペプチドは2つの鎖からなるが、別の態様においては、ポリペプチドは、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の鎖を含む。
【0015】
I.定義
本開示を詳細に説明する前に、本開示は、特定の組成物または生体系に限定されず、言うまでもなく多様であり得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定を意図するものではないことも理解されたい。
【0016】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容により別途明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「分子」への言及は、任意に、2つ以上のかかる分子の組み合わせ等を含む。
【0017】
本明細書で使用される「約」は、当業者であれば容易に分かるそれぞれの値に対する通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」の値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。値に関して本明細書で使用される「約」という用語は、最大でその値の90%〜110%を包含する(例えば、約1.0〜約3.0の第1及び第2のTIRの相対的翻訳強度は、0.9〜3.3の範囲にある相対的翻訳強度を指す)。
【0018】
本明細書に記載される本開示の態様及び実施形態は、態様及び実施形態を「含む」、態様及び実施形態「からなる」、及び「本質的に(態様及び実施形態)からなる」を含むことを理解されたい。
【0019】
本明細書で使用される「2つの鎖を含むポリペプチド」(「2鎖タンパク質」及び「2鎖ポリペプチド」も本明細書で互換的に使用され得る)という用語は、1つ超の別個のポリペプチド鎖を含有する任意のポリペプチドを指すように意図される。一部の実施形態において、2鎖タンパク質は、ジスルフィド結合を含むがこれに限定されない1つ以上の分子間連結を介して共に連結する2つ以上のポリペプチドの高分子複合体を含み得る。一部の実施形態において、2鎖タンパク質は、アミノ酸配列が、ポリペプチドリンカーによって連結する2つの別個のポリペプチド鎖(例えば、抗体重鎖及び抗体軽鎖)に属する、単一のポリペプチドを含み得る。この場合、2鎖タンパク質は、物理的には単一の鎖を表すが、単一の鎖のうちの2つ以上の部分は、機能的にはそれらが2つの別個のタンパク質鎖であるかのように挙動し得る。例えば、単一の鎖抗体は、機能的重鎖及び機能的軽鎖を含んでもよく、これらの機能的重鎖及び機能的軽鎖は、ポリペプチドリンカーによって接合されるが、それにもかかわらず、それらが分子間連結(例えば、1つ以上のジスルフィド結合)によってのみ会合している別個のポリペプチドであるかのように折り畳まれ組み立てられる。
【0020】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、連結している別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指すように意図される。ベクターの1つの種類は「プラスミド」であり、これは環状二本鎖DNAループを指し、これに追加のDNAセグメントがライゲーションされ得る。ベクターの別の種類はファージベクターである。ベクターの別の種類はウイルスベクターであり、これにおいて、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムへとライゲーションされる。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞における自己複製が可能である(例えば、細菌起源の複製を有する細菌ベクター及びエピソーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに統合することができるため、宿主ゲノムと共に複製される。更に、ある特定のベクターは、それらが動作可能に連結されている遺伝子の発現を導くことが可能である。かかるベクターは、本明細書において「組み換え発現ベクター」(または単純に「組み換えベクター」)と称される。一般に、組み換えDNA技法における利用される発現ベクターは、プラスミドの形態である場合が多い。本明細書では、「プラスミド」及び「ベクター」は、プラスミドがベクターの最も一般的に使用される形態であるため、互換的に使用され得る。
【0021】
本明細書で使用される「シストロン」という用語は、ポリペプチド鎖及び隣接する制御領域をコードするヌクレオチド配列を含む翻訳単位と広義で等しい遺伝要素を指すように意図される。「シストロン」は、例えば、1つ以上のオープンリーディングフレーム、翻訳開始領域(本明細書中の以下において定義するTIR)、シグナル配列、及び終結領域を含み得る。
【0022】
「多シストロン性」発現ベクターは、1つの単一プロモータの調節制御下にある複数のシストロンを含有してそれを発現する単一のベクターを指す。多シストロン性ベクターの一般的な例は、1つのプロモータの制御下にある2つの異なるポリペプチドを含有してそれを発現する「2シストロン性」ベクターである。2シストロン性または多シストロン性ベクターの発現の際、複数の遺伝子は、まず単一の転写単位として転写され、その後、別個に翻訳される。
【0023】
「転写単位」は、単一のRNA転写産物として転写されるポリヌクレオチドを指す。「翻訳単位」は、ポリペプチドをコードし、翻訳時にポリペプチドを生成するポリヌクレオチドを指す。上記のように、多シストロン性ポリヌクレオチドは、複数の翻訳単位を持つ単一の転写単位を含有し得る。
【0024】
本開示に従う「別個のシストロン」発現ベクターは、少なくとも2つの別個のプロモータ−シストロン対を含む単一のベクターを指し、各シストロンは、それ自体のプロモータの制御下にある。別個のシストロン発現ベクターの発現の際、異なる遺伝子の転写プロセス及び翻訳プロセスの両方は、別個のものでありかつ独立している。
【0025】
本明細書で使用される「シャペロンタンパク質」は、2鎖タンパク質を含むがこれに限定されない他の高分子の折り畳みまたは組み立てに役立つ任意のタンパク質を指す。一般に、シャペロンタンパク質は、多くの異なる機構によって、タンパク質折り畳みまたは組み立てを促進するように作用し得る。例えば、シャペロンタンパク質は、タンパク質折り畳み及び/または組み立ての促進、鎖内ジスルフィド結合の形成の触媒、(例えば、凝集またはミスフォールドしたタンパク質または多タンパク質複合体の)タンパク質アンフォールディング及び/または分解の促進、凝集の防止、タンパク質分解の支援等を行っても良い。
【0026】
本明細書で使用される「翻訳開始領域」またはTIRもしくは翻訳開始領域または翻訳開始配列は、目的の遺伝子の翻訳開始効率を提供する核酸領域を指す。一般に、特定のシストロン内のTIRは、リボソーム結合部位(RBS)及びRBSへの5’及び3’配列を包含する。RBSは、シャインダルガーノ領域及び開始コドン(AUG)を最低限含有するように定義される。したがって、TIRはまた、翻訳される核酸配列の少なくとも一部分を含む。好ましくは、本開示のTIRは、シストロン内の軽鎖または重鎖をコードする配列に先行する、シグナルペプチドをコードする分泌シグナル配列を含む。TIR変異形は、TIRの特性、例えば、本明細書の以下において定義されるその翻訳強度を改変する、TIR領域内の配列変異(特に置換)を含有する。好ましくは、本開示のTIR変異形は、シストロン内の軽鎖または重鎖をコードする配列に先行する分泌シグナル配列の最初の2〜約14個、好ましくは約4〜12個、より好ましくは約6個のコドン内の配列置換を含有する。
【0027】
本明細書で使用される「翻訳強度」は、制御系における分泌されたポリペプチドの測定値を指し、ここでは、TIRの1つ以上の変異形を使用してポリペプチドの分泌を導き、結果を同じ培養条件及びアッセイ条件下の野生型TIRまたは何らかの他の対照と比較する。いずれか1つの理論にも限定されるものではないが、本明細書で使用される「翻訳強度」は、例えば、mRNA安定性、リボソームのリボソーム結合部位への結合の効率等の測定を含むが、これらに限定されない。
【0028】
「分泌シグナル配列」または「シグナル配列」は、新たに合成された目的のタンパク質を、細胞膜、通常は原核細胞の内膜または内膜及び外膜の両方を介して導くために使用することができる、ショートシグナルペプチドをコードする核酸配列を指す。このように、免疫グロブリン軽鎖または重鎖ポリペプチド等の目的のタンパク質は、原核宿主細胞のペリプラズム中または培養培地中に分泌される。分泌シグナル配列によってコードされるシグナルペプチドは、宿主細胞に対して内因性であっても良く、またはこれらは外因性であっても良く、発現されるポリペプチドに特有のシグナルペプチドを含む。分泌シグナル配列は、典型的には、発現されるポリペプチドのアミノ末端に存在し、典型的には、生合成とポリペプチドの細胞質からの分泌との間で酵素的に除去される。したがって、シグナルペプチドは、通常、成熟タンパク質産物中には存在しない。
【0029】
「動作可能に連結した」は、2つ以上の構成要素の並列を指し、そのように説明される構成要素は、それらがその意図される様式で機能することを可能する関係にある。例えば、プロモータは、連結した配列の転写を制御または調節するためにシスにおいて作用する場合、コード配列に動作可能に連結する。一般的に、「動作可能に連結する」DNA配列は、必ずしも隣接しているわけではないが、2つのタンパク質コード領域を接合する必要がある場合、または分泌リーダーの場合には、隣接し、かつリーディングフレーム内にある。しかしながら、動作可能に連結したプロモータは、概して、コード配列の上流に位置するが、必ずしもそれと隣接するわけではない。動作可能に連結したエンハンサーは、プロモータから相当な距離を置いて、コード配列の上流、中、または下流に位置し得る。連結は、当該技術分野で既知の組み換え方法によって、例えば、PCR法を使用して、アニールによって、または簡便な制限酵素部位でのライゲーションによって、達成される。簡便な制限酵素部位が存在しない場合には、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが、慣行に従って使用される。
【0030】
本明細書で使用される、「調節要素」は、異種ポリペプチドをポリペプチドにコードするポリヌクレオチドの転写及び翻訳に不可欠な、シスに存在するヌクレオチド配列を指す。転写調節要素は、通常、発現される遺伝子配列のプロモータ5’、転写開始部位及び終結部位、ならびにポリアデニル化シグナル配列を含む。「転写開始部位」という用語は、一次転写産物、すなわち、mRNA前駆体に組み込まれる第1の核酸に対応する構築物中の核酸を指し、この転写開始部位はプロモータ配列と重複し得る。
【0031】
「プロモータ」は、遺伝子またはそれが動作可能に連結している配列の転写を制御するポリヌクレオチド配列を指す。プロモータは、RNAポリメラーゼの結合及び転写の開始のためのシグナルを含む。使用されるプロモータは、選択された配列の発現が企図される細胞型の宿主細胞において機能的となる。多様な異なるソースに由来する構成的な誘導及び抑制プロモータを含む多数のプロモータが当該技術分野で周知であり(かつGenBank等のデータベースにおいて特定され)、クローンポリヌクレオチドとして、またはその内で利用可能である(例えば、ATCC等の受託機関及び他の商業的または個人的ソースから)。誘導プロモータについては、プロモータの活性は、シグナル、例えば、IPTGの存在またはリン酸塩枯渇に応答して増加または減少する。
【0032】
本明細書で使用される、「宿主細胞」(または「組み換え宿主細胞」)は、遺伝子的に改変されているか、または組み換えプラスミドもしくはベクター等の外因性ポリヌクレオチドの導入よって遺伝子的に改変されることができる細胞を指すように意図される。かかる用語は、特定の対象細胞だけでなく、かかる細胞の子孫も指すように意図されることを理解されたい。突然変異または環境的影響のいずれかに起因してある特定の修飾が次の世代において生じ得るため、かかる子孫は実際には親細胞と同一でない場合があるが、それでもなお本明細書で使用される「宿主細胞」という用語の範囲内に含まれる。
【0033】
「医薬製剤」という用語は、活性成分の生物活性が有効になるような形態であり、製剤が投与されることになる対象にとって許容できないほど有毒である追加の構成成分を何ら含有しない調製物を指す。かかる製剤は滅菌されている。「薬学的に許容される」賦形剤(ビヒクル、添加物)は、対象の哺乳動物に合理的に投与して、用いる活性成分の効果的用量を提供するものである。
【0034】
治療する「対象」または「個体」は、ヒト、飼育動物及び家畜、ならびに動物園、競技用、または愛玩動物、例えば、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ等を含む、哺乳動物に分類される任意の動物を指す。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0035】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広義に使用され、具体的には、それらが所望の生物学的活性を示す限り、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を網羅する。
【0036】
「単離された抗体」は、その天然環境の構成要素から同定されている、分離されている、かつ/または回収されている抗体である。その天然環境の汚染構成要素は、抗体の研究的、診断的、または治療的使用に干渉し得る物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を含み得る。一部の実施形態において、抗体は、(1)例えばローリー法によって決定して、95重量%超の抗体、及び一部の実施形態においては、99重量%超まで精製されるか、(2)例えば、スピニングカップ配列決定器(Spinning Cup Sequenator)の使用によって、N末端のまたは内部のアミノ酸配列の少なくとも15残基を取得するのに十分な程度まで精製されるか、または、(3)例えばクマシーブルーまたは銀染色を使用する、還元条件下または非還元条件下でのSDS−PAGEによる均質に至るまで精製される。単離された抗体は、抗体の天然環境における少なくとも1つの構成要素が存在しないため、組み換え細胞内のインサイツの抗体を含む。しかしながら、通常は、単離された抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製されることになる。
【0037】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖で構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1つのジスルフィド共有結合によって重鎖に連結するが、ジスルフィド連結の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖及び軽鎖はまた、規則的に離間した鎖間ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、一端にて可変ドメイン(V
H)を有し、ある数の定常ドメインがそれに続く。各軽鎖は、一端にて可変ドメイン(V
L)、またその別の端部にて定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基は、軽鎖ドメインと重鎖可変ドメインとの間で干渉を形成すると考えられている。
【0038】
「定常ドメイン」という用語は、免疫グロブリンの他の部分である抗原結合部位を含有する可変ドメインと比較して、より保存されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の一部を指す。定常ドメインは、重鎖のC
H1、C
H2、及びC
H3ドメイン(まとめてCH)、ならびに軽鎖のCHL(またはCL)ドメインを含有する。
【0039】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは、「V
H」と称され得る。軽鎖の可変ドメインは、「V
L」と称され得る。これらのドメインは、概して、抗体の最も可変の部分であり、抗原結合部位を含有する。
【0040】
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定の部分が、配列において抗体間で広範囲に異なり、各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合及び特異性において使用されることを指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体で均一には分布しない。これは、軽鎖ドメイン及び重鎖可変ドメインの両方における超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中する。より高度に保存された可変ドメインの部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、4つのFR領域を含み、これらは、大部分はベータシート構成を用い、ベータシート構造を接続している、また一部の場合にはその一部を形成しているループを形成する3つのHVRによって接続される。各鎖におけるHVRは、FR領域によって互いに近接して保持され、他の鎖からのHVRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,Md.(1991)参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接的には関与しないが、抗体依存性の細胞毒性への抗体の関与等、種々のエフェクター機能を呈する。
【0041】
任意の哺乳動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」には、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(「κ」)及びラムダ(「λ」)と呼ばれる2つの明確に異なるタイプのうちの一方に割り当てることができる。
【0042】
本明細書で使用されるIgG「アイソタイプ」または「サブクラス」という用語は、その定常領域の化学的特性及び抗原特性によって定義される免疫グロブリンのサブクラスのうちのいずれかを意味する。
【0043】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)を異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンの5つの主要なクラス(IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM)が存在し、これらのうちのいくつかは、更に、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4、IgA
1、及びIgA
2に分割され得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、γ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び3次元構成は周知であり、例えば、Abbas et al.Cellular and Mol.Immunology,4th ed.(W.B.Saunders,Co.,2000)において概して説明されている。抗体は、1つ以上の他のタンパク質またはペプチドとの抗体の共有結合または非共有結合によって形成される、より大きい融合分子の一部であり得る。
【0044】
本明細書で使用される「完全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」という用語は、本明細書において、以下で定義される抗体断片ではなく、その実質的にインタクトな形態にある抗体を指すように互換的に使用される。これらの用語は、特に、Fc領域を含む重鎖を持つ抗体を指す。
【0045】
本明細書の「裸の抗体」は、細胞傷害性部分または放射標識に複合されていない抗体を指す。
【0046】
「抗体断片」とは、インタクトな抗体の部分、好ましくは、抗原結合領域を含む。一部の実施形態において、本明細書に記載の抗体断片は、抗原結合断片である。抗体断片の例としては、、Fab、Fab’、F(ab’)
2、及びFv断片、ダイアボディ、線状抗体、1本鎖抗体分子、及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。
【0047】
抗体のパパイン消化は、2つの同一の抗原結合断片(「Fab」断片と呼ばれ、各々、単一の抗原結合部位を有する)、及び残りの「Fc」断片とを生成し、この名称は容易に結晶化される能力を反映する。ペプシン処理は、2つの抗原を組み合わせる部位を有して、なお抗原を架橋することが可能なF(ab’)
2断片を生成する。
【0048】
「Fv」は、完全な抗原結合部位を含有する最小の抗体断片である。一実施形態において、2本鎖Fv種は、堅固な非共有結合的に会合した1つの重鎖及び1つの軽鎖の可変ドメインの二量体から成る。1本鎖Fv(scFv)種において、1つの重鎖及び1つの軽鎖の可変ドメインは、軽鎖及び重鎖が2本鎖Fv種におけるものと類似する「二量体」構造で会合し得るように、フレキシブルなペプチドリンカーによって共有的に連結し得る。この構成において、各可変ドメインの3つのHVRが相互作用してVH−VL二量体の表面上の抗原結合部位を定義する。集合的に、6つのHVRが、抗体に抗原結合特異性を与える。しかしながら、単一の可変ドメイン(あるいは、抗原に特異的なHVRを3つのみを含むFvの半分)でさえも、親和性は結合部位全体の親和性よりも低いが、抗原を認識して結合する能力を有する。
【0049】
「Fab」断片は、重鎖及び軽鎖の可変ドメインを含有し、また軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含む。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端にいくつかの残基が追加されるという点で、Fab断片と異なる。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基(単数または複数)が自由なチオール基を保有するFab’に対する記号である。F(ab’)
2抗体断片は、間にヒンジシステインを有する一対のFab’断片として生成された。抗体断片の他の化学カップリングも既知である。
【0050】
「1本鎖のFv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。概して、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーを更に含み、これにより、scFvが抗原結合のための所望の構造を形成することが可能となる。scFvの総論については、例えば、Pluckthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer−Verlag,New York,1994),pp.269−315を参照されたい。
【0051】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を持つ抗体断片を指し、この断片は、同じポリペプチド鎖(VH−VL)において軽鎖可変ドメイン(VL)に接続した重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖上の2つのドメインの対形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、このドメインは別の鎖の相補的なドメインと対形成して、2つの抗原結合部位を創出する。ダイアボディは、二価性または二重特異性であっても良い。ダイアボディについては、例えば、EP 404,097、WO 1993/01161、Hudson et al.Nat.Med.9:129−134(2003)、及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448(1993)により詳細に記載されている。トリアボディ及びテトラボディもまた、Hudson et al.,Nat.Med.9:129−134(2003)に記載されている。
【0052】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、例えば、その集団に含まれる個々の抗体は、少量で存在し得る想定される突然変異、例えば、自然発生突然変異を除いて同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、個別の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。ある特定の実施形態において、かかるモノクローナル抗体は、典型的には、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を典型的に含み、この場合、標的に結合するポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列からの単一の標的に結合するポリペプチド配列の選択を含むプロセスによって得られたものである。例えば、選択プロセスは、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、または組み換えDNAクローンのプール等の複数のクローンから固有のクローンを選択することであり得る。選択される標的に結合する配列を更に改変して、例えば、標的に対する親和性の改善、標的に結合する配列のヒト化、細胞培養におけるその生成の改善、そのインビボの免疫原性の減少、多重特異性抗体の創出等を行うことができること、及び改変された標的に結合する配列を含む抗体も本開示のモノクローナル抗体であることを理解されたい。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含む、ポリクローナル抗体製剤とは対照的に、モノクローナル抗体製剤の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を対象とする。これらの特異性に加えて、モノクローナル抗体製剤は、他の免疫グロブリンによる汚染を受けないことにおいても有利である。
【0053】
「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体の集団から得られるという抗体の特徴を示すものであり、いずれかの特定の方法による抗体の産生を必要とするものとして解釈されないものとする。例えば、本開示に従って使用されるモノクローナル抗体は、多様な技法によって作製され得、これらの技法としては、例えば、原核宿主細胞における発現、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein,Nature,256:495−97(1975)、Hongo et al.,Hybridoma,14(3):253−260(1995)、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988)、Hammerling et al.,in:Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas 563−681(Elsevier,N.Y.,1981))、組み換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)、ファージディスプレイ法(例えば、Clackson et al.,Nature,352:624−628(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581−597(1992)、Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299−310(2004)、Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073−1093(2004)、Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467−12472(2004)、及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1−2):119−132(2004)、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座またはヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部または全てを有する動物におけるヒト抗体またはヒト様抗体を生成するための技術(例えば、WO 1998/24893、WO 1996/34096、WO 1996/33735、WO 1991/10741、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993)、Jakobovits et al.,Nature 362:255−258(1993)、Bruggemann et al.,Year in Immunol.7:33(1993)、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、及び同第5,661,016号、Marks et al.,Bio/Technology 10:779−783(1992)、Lonberg et al.,Nature 368:856−859(1994)、Morrison,Nature 368:812−813(1994)、Fishwild et al.,Nature Biotechnol.14:845−851(1996)、Neuberger,Nature Biotechnol.14:826(1996)、及びLonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65−93(1995)を参照されたい)が挙げられる。
【0054】
本明細書におけるモノクローナル抗体は、具体的には、重鎖及び/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来するかまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における配列における対応する配列と同一であるかまたは同種である一方で、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来するかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるかまたは同種である、「キメラ」抗体、ならびにかかる抗体の断片を、これらが所望の生物学的活性を呈する限り含む(例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855(1984)を参照されたい)。キメラ抗体としては、PRIMATTZED(登録商標)抗体が挙げられ、抗体の抗原結合領域は、例えば、マカクザルを目的の抗原で免疫することによって産生された抗体に由来する。
【0055】
非ヒト(例えば、ネズミ)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含むキメラ抗体である。一実施形態において、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、これにおいては、レシピエントのHVR由来の残基が、所望の特異性、親和性、及び/またはキャパシティを有する、マウス、ウサギ、または非ヒト霊長類等の非ヒト種(ドナー抗体)のHVR由来の残基によって置き換えられる。一部の例においては、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体中で見い出されない残基を含んでも良い。これらの修飾を行うことで、抗体性能を更に改良し得る。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むことになり、その超可変ループの全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、そのFRの全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列のものに対応する。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、ヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部分を含むことになる。更なる詳細については、例えば、Jones et al.,Nature 321:522−525(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323−329(1988)、及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)を参照されたい。また、例えば、Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma & Immunol.1:105−115(1998)、Harris,Biochem.Soc.Transactions 23:1035−1038(1995)、Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.5:428−433(1994)、ならびに米国特許第6,982,321号及び第7,087,409号を参照されたい。
【0056】
「ヒト抗体」は、ヒトによって生成された抗体及び/または本明細書の開示のヒト抗体を作製するための技法のいずれかを使用して作製された抗体のものに対応するアミノ酸配列を保有するものである。このヒト抗体の定義は具体的に、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイ法を含む当該技術分野で既知の種々の技法を使用して生成することができる。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.227:381(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581(1991)。同様にヒトモノクローナル抗体の沈殿のために利用可能な方法は、Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)、Boerner et al.,J.Immunol.147(1):86−95(1991)に記載されている。van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368−74(2001)も参照されたい。ヒト抗体は、抗原曝露に応答してかかる抗体を生成するように修飾されているが内在遺伝子座が無効化されたトランスジェニック動物、例えば、免役した異種マウス(xenomice)に抗原を投与することによって調製することができる(例えば、XENOMOUSE(商標)技術については、米国特許第6,075,181号及び第6,150,584号を参照されたい。)また、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術によって産生されるヒト抗体については、例えば、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557−3562(2006)を参照されたい。
【0057】
「種依存性抗体」は、第1の哺乳動物種由来の抗原に対して、第2の哺乳動物種由来のその抗原のホモログに対してそれが有する結合親和性よりも強い結合親和性を有するものである。通常、種依存性抗体は、ヒト抗原に「特異的に結合」する(例えば、約1×10
−7M以下、好ましくは約1×10
−8M以下、好ましくは約1×10
−9M以下の結合親和性(Kd)値を有する)が、第2の非ヒト哺乳動物種由来の抗原のホモログに対しては、ヒト抗原に対する結合親和性の少なくとも約50分の1、または少なくとも約500分の1、または少なくとも約1000分の1の結合親和性を有する。種依存性抗体は、上で定義される種々のタイプの抗体のいずれかでもあり得るが、好ましくは、ヒト化またはヒト抗体である。
【0058】
本明細書で使用される「超可変領域」、「HVR」、または「HV」という用語は、配列が超可変性であり、かつ/または構造的に規定されたループを形成する、抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は、6つのHVRを含み、このうち3つがVH(H1、H2、H3)にあり、3つがVL(L1、L2、L3)にある。天然抗体では、H3及びL3は、6つのHVRの中で最大の多様性を示し、特にH3は、抗体への好適な特異性を与えることにおいて固有の役割を果たすと考えられる。例えば、Xu et al.,Immunity 13:37−45(2000)、Johnson and Wu,in Methods in Molecular Biology 248:1−25(Lo,ed.,Human Press,Totowa,N.J.,2003)を参照されたい。実際に、重鎖のみからなる自然発生ラクダ抗体は、軽鎖の不在下で機能的であり安定している。例えば、Hamers−Casterman et al.,Nature 363:446−448(1993)、Sheriff et al.,Nature Struct.Biol.3:733−736(1996)を参照されたい。
【0059】
ある数のHVR描写が本明細書で使用され、ここに含まれる。Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づき、最も一般的に使用されているものである(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。Chothiaは、代わりに構造的ループの位置に言及している(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901−917(1987))。AbM HVRは、KabatのHVRとChothiaの構造的ループとの間の妥協点を示し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用される。「接触」HVRは、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらのHVRの各々に由来する残基を以下に記載する。
【0060】
HVRは、次のような「延長HVR」を含み得る。VLにおける24−36または24−34(L1)、46−56または50−56(L2)、及び89−97または89−96(L3)、ならびにVHにおける26−35(H1)、50−65または49−65(H2)、及び93−102、94−102、または95−102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、前掲のKabatらに従って付番される。
【0061】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書で定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0062】
「Kabatにおける可変ドメイン残基付番」または「Kabatにおけるアミノ酸位置付番」、及びこれらの変化形は、前掲のKabatにおける抗体のコンピレーションの重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用される付番システムを指す。この付番システムを使用して、実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはHVRの短縮またはそれへの挿入に対応するより少ないアミノ酸または追加のアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入物(Kabatによる残基52a)を含み、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatによる残基82a、82b、及び82c)を含んでも良い。残基のKabat付番は、「標準的な」Kabatによって付番される配列との抗体の配列の相同領域での整列によって、所与の抗体に対して決定され得る。
【0063】
Kabat付番システムは、概して、可変ドメインにおける残基(ほぼ軽鎖の残基1〜107及び重鎖の残基1〜113)を参照するときに使用される(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。「EU付番システム」または「EUインデックス」は、概して、免疫グロブリン重鎖定常領域における残基を参照するときに使用される(例えば、前掲のKabatらで報告されているEUインデックス)。「KabatにおけるEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基付番を指す。
【0064】
発現「線状抗体」は、Zapataら(1995 Protein Eng,8(10):1057−1062)に記載されている抗体を指す。簡潔に述べると、これらの抗体は、相補的な軽鎖ポリペプチドと共に抗原結合領域の対を形成するタンデムFd部分(VH−CH1−VH−CH1)の対を含む。線状抗体は、二重特異性または単一特異性であり得る。
【0065】
II.分子最適化
ポリペプチドの2つの鎖を発現させるように宿主細胞を培養することによる原核宿主細胞における2つの鎖を含むポリペプチドの生成方法であって、発現時に、2つの鎖が折り畳まれ、かつ組み立てられて、宿主細胞において生物学的に活性のポリペプチドを形成し、宿主細胞は、(1)ポリペプチドの第1の鎖をコードする第1の翻訳単位、(2)ポリペプチドの第2の鎖をコードする第2の翻訳単位、ならびに(3)ペプチジル−プロリルイソメラーゼ、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼ、及びこれらの組み合わせから選択される、少なくとも1つのシャペロンタンパク質をコードする第3の翻訳単位、を含む、ポリヌクレオチドを含有する、方法が本明細書で提供される。また、ポリペプチドの2つの鎖を発現させるように宿主細胞を培養することによる原核宿主細胞における2つの鎖を含むポリペプチドの生成方法であって、発現時に、2つの鎖が折り畳まれ、かつ組み立てられて、宿主細胞において生物学的に活性のポリペプチドを形成し、宿主細胞は、(1)ポリペプチドの第1の鎖をコードする第1の翻訳単位、(2)ポリペプチドの第2の鎖をコードする第2の翻訳単位、(3)第1のシャペロンタンパク質をコードする第3の翻訳単位、(4)第2のシャペロンタンパク質をコードする第4の翻訳単位、(5)第3のシャペロンタンパク質をコードする第5の翻訳単位(第1、第2、及び第3のシャペロンタンパク質は、ペプチジル−プロリルイソメラーゼ、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼ、及びこれらの組み合わせから選択される)、を含む、ポリヌクレオチドを含有する、方法が本明細書で提供される。
【0066】
一部の実施形態において、宿主細胞は、ポリペプチドの2つの鎖を発現するように培養され、ここでは、発現時に、2つの鎖が折り畳まれ、かつ組み立てられて、宿主細胞において生物学的に活性のポリペプチドを形成する。本明細書で使用されるとき、2つの鎖の折り畳み及び組み立てとは、適切な3次元2鎖タンパク質立体構造、2鎖タンパク質組み立て、またはその両方の最終的な適合を促進する任意または全てのステップを指し得る。折り畳み及び組み立ては、各鎖をその適切な立体構成及び折り畳みに折り畳むこと及び組み立てることを指しても良く、または2つのタンパク質鎖の分子連結によって創出される複合体の折り畳み及び組み立てを指しても良い。同様に、各鎖は、折り畳まれ組み立てられて生物学的に活性のポリペプチドを形成しても良く、または2つのタンパク質鎖の分子連結によって創出される複合体は概して、折り畳まれ組み立てられて生物学的に活性のポリペプチドを形成しても良い。
【0067】
生物学的に活性のポリペプチドは、ポリペプチドに属する機能を実行することができる任意のポリペプチドを指し得る。生物学的に活性のポリペプチドの機能としては、適切な折り畳みまたは組み立て、別の高分子との結合または他の相互作用、及び酵素活性が挙げられるが、これらに限定されない。例示を目的として、生物学的に活性の抗体は、抗体に属する少なくとも1つの機能を実行することができる抗体を指しても良く、これらの機能としては、以下でより詳述するように、エピトープへの結合または抗体Fc領域の特性の保有が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
シャペロンタンパク質
一部の実施形態において、本開示のポリヌクレオチドは、少なくとも1つのシャペロンタンパク質をコードする翻訳単位を含有する。上記のように、シャペロンタンパク質は、2鎖タンパク質を含むがこれに限定されない他の高分子の折り畳みまたは組み立てに役立つ任意のタンパク質を指し得る。シャペロンタンパク質と例としては、ペプチジル−プロリルイソメラーゼ、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼ、及び熱ショックタンパク質(Hsp60、Hsp70、Hsp90、及びHsp100タンパク質等)を挙げることができるが、これらに限定されない。シャペロンタンパク質はまた、タンパク質を膜を通して輸送すること、例えば、原形質膜または小胞体膜を通したポリペプチド鎖の転座に役立ち得る。
【0069】
一部の実施形態において、シャペロンタンパク質はペプチジル−プロリルイソメラーゼであっても良い。ペプチジル−プロリルイソメラーゼ(「プロリルイソメラーゼ」、「ロタマーゼ」、及び「PPiase」という用語が本明細書で互換的に使用され得る)は、プロリンまたはプロリル−イミノペプチド結合のシス及びトランス異性体の相互変換を触媒する任意の酵素を指し得る。この反応のEC番号はEC 5.2.1.8である。このEC番号によって表される反応を触媒することが知られるまたは予測される任意のタンパク質も、本開示のペプチジル−プロリルイソメラーゼであり得る。ペプチジル−プロリルイソメラーゼ活性はまた、GO:0003755というGOタームIDによって表されても良い。このGOタームIDによって表される分子機能を保有することが知られるまたは予測される任意のタンパク質も、本開示のペプチジル−プロリルイソメラーゼであり得る。
【0070】
ペプチジル−プロリルイソメラーゼ活性は、タンパク質折り畳み及び組み立てを促進することが当該技術分野では知られている。一部の実施形態において、ペプチジル−プロリルイソメラーゼは、適切に折り畳まれた構造がシスプロリル結合を含むタンパク質について、トランスプロリル結合をシスプロリル結合に変換することで、タンパク質折り畳み及び組み立てに役立ち得る。一部のペプチジル−プロリルイソメラーゼは、シスプロリル結合を欠くタンパク質折り畳み及び組み立てを向上させることも知られている(Bothmann H and Pluckthun A 2000 J.Biol.Chem.275:17100)。一部の実施形態において、ペプチジル−プロリルイソメラーゼは、シスプロリル結合を欠くタンパク質のタンパク質折り畳み及び組み立てに役立ち得る。したがって、ペプチジル−プロリルイソメラーゼ活性は、本明細書に記載される方法に有用であるシャペロンタンパク質を特定するための機能特性として機能し得るが、ペプチジル−プロリルイソメラーゼの有用性は、その触媒活性自体に必ずしも限定されない。
【0071】
一部の実施形態において、ペプチジル−プロリルイソメラーゼは、FkpAタンパク質である。一部の実施形態において、FkpAタンパク質は、大腸菌FkpAである。大腸菌FkpAは、大腸菌種に属する細菌の任意の株または単離物におけるfkpA遺伝子によってコードされる任意のポリペプチドを指し得る。一部の実施形態において、大腸菌FkpAは、EcoGene受託番号EG12900によって表されるfkpA遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。一部の実施形態において、大腸菌FkpAは、NCBI RefSeq受託番号NP_417806によって表される配列を有するタンパク質を指す。
【0072】
他のFkpAタンパク質が当該技術分野で既知である。FkpAタンパク質の例としては、ボイド赤痢菌ペプチジル−プロリルイソメラーゼ(NCBI RefSeq番号WP_000838252)、シトロバクターヨウンゲ(C.youngae)ペプチジル−プロリルイソメラーゼ(NCBI RefSeq番号WP_006687366)、クレブシエラオキシトカペプチジル−プロリルイソメラーゼ(NCBI RefSeq番号WP_004125943)、サルモネラエンテリカペプチジル−プロリルイソメラーゼ(NCBI RefSeq番号WP_000838233)、肺炎桿菌ペプチジル−プロリルイソメラーゼ(NCBI RefSeq番号WP_019704642)、サッカロマイセスセレヴィシエFPR3p(NCBI RefSeq番号NP_013637)、ムスムスクルスFkpb1a(NCBI RefSeq番号NP_032045)、ムスムスクルスFkpb2(NCBI RefSeq番号NP_032046)、ホモサピエンスFKBP2(NCBI RefSeq番号NP_001128680)、キイロショウジョウバエCG14715(NCBI RefSeq番号NP_650101)を挙げることができるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、本開示のFkpAタンパク質は、大腸菌FkpAと少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の同一性を有する。
【0073】
一部の実施形態において、シャペロンタンパク質は、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼであっても良い。タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼ(「タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ」及び「チオール−ジスルフィドイソメラーゼ」という用語が本明細書で互換的に使用され得る)は、タンパク質におけるジスルフィド結合の再配列を触媒する任意の酵素を指し得る。例えば、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼは、システインの酸化を触媒して、タンパク質におけるジスルフィド結合を形成し得る。タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼはまた、タンパク質における不対合ジスルフィド結合の異性化を触媒しても良い。この反応のEC番号はEC 5.3.4.1である。このEC番号によって表される反応を触媒することが知られるまたは予測される任意のタンパク質も、本開示のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼであり得る。タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼ活性はまた、GO:0015035というGOタームIDによって表されても良い。このGOタームIDによって表される分子機能を保有することが知られるまたは予測されるいずれのタンパク質も、本開示のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼであり得る。
【0074】
タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼ活性は、タンパク質折り畳み及び組み立てを促進することが当該技術分野では知られている。例えば、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼ活性は、タンパク質折り畳み及び組み立ての最中に適切な分子内及び分子間ジスルフィド結合の形成を促進する。具体的には、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼ活性は、原核細胞のペリプラズムにおいて発現されるジスルフィド結合を持つタンパク質にとって重要である。
【0075】
一部の実施形態において、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼはDsbAタンパク質である。一部の実施形態において、DsbAタンパク質は大腸菌DsbAである。大腸菌DsbAは、大腸菌種に属する細菌の任意の株または単離物におけるdsbA遺伝子によってコードされる任意のポリペプチドを指し得る。一部の実施形態において、大腸菌DsbAは、EcoGene受託番号EG11297によって表されるdsbA遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。一部の実施形態において、大腸菌DsbAは、NCBI RefSeq受託番号NP_418297によって表される配列を有するタンパク質を指す。
【0076】
他のDsbAタンパク質が当該技術分野で既知である。DsbAタンパク質の例としては、シゲラフレックスネリチオール−ジスルフィドイソメラーゼ(NCBI RefSeq番号WP_000725335)、志賀赤痢菌チオール−ジスルフィドイソメラーゼ(NCBI RefSeq番号WP_000725348)、シトロバクターヨウンゲ(C.youngae)チオール−ジスルフィドイソメラーゼ(NCBI RefSeq番号WP_006686108)、及びサルモネラエンテリカチオール−ジスルフィドイソメラーゼ(NCBI RefSeq番号WP_023240584)を挙げることができるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、本開示のDsbAタンパク質は、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の大腸菌DsbAとの同一性を有する。
【0077】
一部の実施形態において、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼはDsbCタンパク質である。一部の実施形態において、DsbCタンパク質は、大腸菌DsbCである。大腸菌DsbCは、大腸菌種に属する細菌の任意の株または単離物におけるdsbC遺伝子によってコードされる任意のポリペプチドを指し得る。一部の実施形態において、大腸菌DsbCは、EcoGene受託番号EG11070によって表されるdsbC遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。一部の実施形態において、大腸菌DsbCは、NCBI RefSeq受託番号NP_417369によって表される配列を有するタンパク質を指す。
【0078】
他のDsbCタンパク質が当該技術分野で既知である。DsbCタンパク質の例としては、シゲラソネイタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(NCBI RefSeq番号WP_000715206)、志賀赤痢菌タンパク質−ジスルフィドイソメラーゼ(NCBI RefSeq番号WP_000715209)、エシェリキアフェルグソニイ(E.fergusonii)タンパク質−ジスルフィドイソメラーゼ(NCBI RefSeq番号WP_000715225)、サルモネラボンゴリ(S.bongori thiol):ジスルフィド交換タンパク質DsbC(NCBI RefSeq番号WP_020845161)、及びサルモネラエンテリカタンパク質ジスルフィドイソメラーゼDsbC(NCBI RefSeq番号WP_023183515)を挙げることができるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、本開示のDsbCタンパク質は、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の大腸菌DsbCとの同一性を有する。
【0079】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の同一性パーセントを決定するために、配列を最適な比較目的のために整列させる(例えば、最適な整列のためにギャップを第1及び第2のアミノ酸または核酸配列の一方または両方に導入し得、比較目的で非相同配列を無視し得る)。一実施形態において、比較目的で整列させた参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも50%、典型的には少なくとも75%、更により典型的には少なくとも80%、85%、90%、95%、または100%である。次に、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置にあるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列における位置が、第2の配列における対応する位置として同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占有される場合には、分子は、その位置にて同一である(本明細書で使用されるとき、アミノ酸または核酸「同一性」は、アミノ酸または核酸「相同性」と等しい)。
【0080】
2つの配列間の同一性パーセントは、ギャップの数、及び2つの配列の最適な整列のために導入する必要がある各ギャップの長さを考慮した、配列によって共有される同一の位置の数の関数である。配列比較のために、典型的には、1つの配列が参照配列として機能し、これと試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じてサブシーケンス座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトのプログラムパラメータを使用することができ、または代替的なパラメータを指定することができる。その後、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列についての配列同一性パーセントを算出する。同一性について2つの配列を比較するとき、配列が隣接している必要はないが、いずれのギャップも、全体的な同一性パーセントを減少させ得るペナルティを持ち得る。blastnについては、デフォルトのパラメータは、ギャップ隙間ペナルティが5、ギャップ延長ペナルティが2である。blastpについては、デフォルトのパラメータは、ギャップ隙間ペナルティが11、ギャップ延長ペナルティが1である。
【0081】
本明細書で使用される「比較ウィンドウ」は、20〜600、通常は約50〜約200、更に通常は約100〜約150からなる群から選択される隣接位置の数のうちのいずれか1つのセグメントへの言及を含み、この中で、配列が、2つの配列を最適に整列させた後で同じ数の隣接位置の参照配列と比較する。比較のための配列整列方法は、当該技術分野で周知である。比較のための配列の最適な整列は、既知のアルゴリズムを使用して(例えば、Smith and Waterman,Adv Appl Math,2:482,1981のローカル相同性アルゴリズムによって、Needleman and Wunsch,J Mol Biol,48:443,1970の相同性整列アルゴリズムによって、Pearson and Lipman,Proc Natl Acad Sci USA,85:2444,1988の類似性方法の探求によって、Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group,Madison,WI)における、アルゴリズムFASTDB(Intelligenetics)、BLAST(National Center for Biomedical Information)、GAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTAのコンピュータ化された実装によって、または手動の整列及び目視検査によって実施することができる。
【0082】
配列同一性パーセント及び配列類似性を決定するのに好適なアルゴリズムの好ましい例は、FASTAアルゴリズム(Pearson and Lipman,Proc Natl Acad Sci USA,85:2444,1988、及びPearson,Methods Enzymol,266:227−258,1996)である。同一性パーセントを算出するためにDNA配列のFASTA整列において使用される好ましいパラメータを最適化する。BL50 Matrix 15:−5、kタプル=2、ジョイニングペナルティ=40、最適化=28、ギャップペナルティ−12、ギャップ長さペナルティ=−2、及び幅=16。
【0083】
配列同一性パーセント及び配列類似性を決定するのに好適なアルゴリズムの別の好ましい例は、BLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムである(それぞれ、Altschul et al.,Nuc Acids Res,25:3389−3402, 1977、及びAltschul et al.,J Mol Biol,215:403−410,1990)。本明細書に記載のパラメータを用いてBLAST及びBLAST 2.0を使用し、本開示の核酸及びタンパク質についての配列同一性パーセントを決定する。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationのウェブサイトを介して一般に利用可能である。このアルゴリズムは、まず、データベース配列における同じ長さのワードと整列するときに何らかの正値の閾値スコアTと一致するかまたはそれを満たす、問い合わせ配列における長さの短いワードWを特定することによって、高スコアの配列対(HSP)を特定することを伴う。Tは、近傍のワードスコア閾値と称される。これらの最初の近傍のワードヒットは、それらを含むより長いHSPを見出すための検索を開始するためのシード値として機能する。ワードヒットは、累積整列スコアが増加することができる限り、各配列に沿って両方向に延びる。累積スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメータM(マッチする残基の対に対するリワードスコア、常に0超)及びN(ミスマッチの残基に対するペナルティスコア、常に0未満)を使用して算出する。アミノ酸配列については、スコア化マトリックスを使用して累積スコアを算出する。ワードヒットの各方向への延長は、累積整列スコアがその最大の実績値から量Xだけ外れる場合、累積スコアが、1つ以上の負とスコア化される残基整列の蓄積に起因してゼロ以下になる場合、またはいずれかの配列の終端に達する場合に停止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、及びXは、整列の感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列について)は、11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=−4、及び両方の鎖の比較をデフォルトで使用する。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、3のワード長、及び10の期待値(E)、ならびに50のBLOSUM62スコア化マトリックス(Henikoff and Henikoff,Proc Natl Acad Sci USA,89:10915,1989)整列(B)、10の期待値(E)、M=5、N=−4、及び両方の鎖の比較をデフォルトで使用する。
【0084】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計的分析を行う(例えば、Karlin and Altschul,Proc Natl Acad Sci USA,90:5873−5787,1993を参照されたい)。BLASTアルゴリズムが提供する類似性の1つの測定は、最小和確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間の一致が偶然に起こり得る確率の指標を提供する。例えば、核酸は、試験核酸の参照核酸との比較における最小和確立が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合に、参照配列に類似していると見なされる。
【0085】
有用なアルゴリズムの別の例はPILEUPである。PILEUPは、関係及び配列同一性パーセントを示すために進歩的な対整列を使用して関係する配列の群から複数の配列整列を創出する。これはまた、整列を創出するために使用されるクラスタ化関係を示す系図または樹状図をプロットする。PILEUPは、公開されている方法(Higgins and Sharp,CABIOS 5:151−153,1989)と類似した方法を用いる進歩的整列方法の単純化を使用する(Feng and Doolittle,J Mol Evol,35:351−360,1987)。プログラムは、最大で300配列を整列させることができ、各々、ヌクレオチドまたはアミノ酸の最大長は5,000である。複数整列手順は、2つの最も類似した配列の対整列から開始し、2つの整列した配列のクラスタを生成する。その後、このクラスタを、次に最も関係のある配列または整列した配列のクラスタに整列させる。配列の2つのクラスタを、2つの個々の配列の対整列の単純な延長によって整列させる。最後の整列は、一連の進歩的な対整列によって達成される。本プログラムは、特定の配列及びそのアミノ酸またはヌクレオチド座標を配列比較の領域に対して指定すること、ならびにプログラムパラメータを指定することによって実行される。PILEUPを使用することにより、参照配列を他の試験配列と比較し、以下のパラメータを使用して配列同一性パーセントの関係を決定する。使用するパラメータは次の通りである。デフォルトのギャップ加重(3.00)、デフォルトのギャップ長加重(0.10)、及び加重した終端ギャップ。PILEUPは、GCG配列分析ソフトウェアパッケージ、例えば、バージョン7.0から得ることができる(Devereaux et al.,Nuc Acids Res,12:387−395,1984)。
【0086】
複数のDNA及びアミノ酸配列整列に好適なアルゴリズムの別の好ましい例は、CLUSTALWプログラムである(Thompson et al.,Nucl Acids.Res,22:4673−4680,1994)。クラスタWは、配列群間の複数の対比較を行い、それらを相同性に基づいて組み立てて複数整列にする。ギャップ隙間ペナルティ及びギャップ延長ペナルティは、それぞれ、10及び0.05であった。アミノ酸整列については、BLOSUMアルゴリズムをタンパク質加重マトリックスとして使用することができる(Henikoff and Henikoff,Proc Natl Acad Sci USA,89:10915−10919,1992)。
【0087】
発現カセット及びベクター
一部の実施形態において、宿主細胞は、(1)ポリペプチドの第1の鎖をコードする第1の翻訳単位、(2)ポリペプチドの第2の鎖をコードする第2の翻訳単位、ならびに(3)ペプチジル−プロリルイソメラーゼ、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼ、及びこれらの組み合わせから選択される、少なくとも1つのシャペロンタンパク質をコードする第3の翻訳単位、を含む、ポリヌクレオチドを含有する。一部の実施形態において、宿主細胞は、(1)ポリペプチドの第1の鎖をコードする第1の翻訳単位、(2)ポリペプチドの第2の鎖をコードする第2の翻訳単位、(3)第1のシャペロンタンパク質をコードする第3の翻訳単位、(4)第2のシャペロンタンパク質をコードする第4の翻訳単位、ならびに(5)第3のシャペロンタンパク質をコードする第5の翻訳単位(第1、第2、及び第3のシャペロンタンパク質は、ペプチジル−プロリルイソメラーゼ、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される)を含む、ポリヌクレオチドを含有する。本開示の発見は、適切に折り畳まれ組み立てられた2鎖タンパク質の生成の増大が、単一プラスミド系(すなわち、2鎖タンパク質の各鎖をコードする翻訳単位及び1つ以上のシャペロンタンパク質をコードする1つ以上の翻訳単位を含む単一のポリヌクレオチド)または適合性プラスミド系(すなわち、2鎖タンパク質の各鎖をコードする翻訳単位を含む第1のポリヌクレオチド、及び1つ以上のシャペロンタンパク質をコードする1つ以上の翻訳単位を含む第2のポリヌクレオチド)を使用して達成され得ることである。
【0088】
一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、プロモータの3つのコピーを更に含有し、第1のコピーは、第1の翻訳単位と動作可能に組み合わされ、第2のコピーは、第2の翻訳単位と動作可能に組み合わされ、第3のコピーは、第3の翻訳単位と動作可能に組み合わされ、第1の鎖、第2の鎖、及びシャペロンタンパク質の転写を駆動する。一部の実施形態において、3つのシャペロンタンパク質のうちの2つをコードする翻訳単位のうちの2つは、単一の翻訳単位の一部である。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、各翻訳単位と動作可能に組み合わせたプロモータを更に含有する。
【0089】
一部の実施形態において、プロモータは、誘導プロモータである。上記のように、誘導プロモータの活性は、シグナルに応答して増加または減少する。例えば、IPTG等の誘導プロモータは、シグナルが存在することに応答して転写を促進しても良い。リン酸塩等の誘導プロモータは、シグナルが不在であることに応答して転写を促進しても良い。これらのシナリオのいずれにおいても、転写の量は、シグナルの量またはその欠如に比例する場合もしない場合もある。原核宿主細胞に好適な誘導プロモータの多数の例が当該技術分野で既知である。これらの例としては、lac、tac、trc、trp、pho、recA、tetA、nar、ファージP
L、cspA、T7、及びP
BADプロモータが挙げられるが、これらに限定されない(より詳細な説明については、Terpe K.2006 Appl.Microbiol.Biotechnol.72:211を参照されたい)。一部の実施形態において、別個の翻訳単位、例えば、2鎖タンパク質及びシャペロンタンパク質の両方の鎖の発現を協調させるように駆動するために、誘導プロモータの3つのコピーを使用する。
【0090】
一部の実施形態において、誘導プロモータはIPTG誘導プロモータである。IPTG誘導プロモータは、イソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)、または乳糖オペロンからの転写を促進することができる任意の他のラクトース誘導体(例えば、アロラクトース)に応答する様式で転写を促進する任意のポリヌクレオチド配列を指し得る。IPTG誘導プロモータの多くの例が当該技術分野で既知であり、これらの例としては、tac(例えば、tacI、tacII等)プロモータ、lacプロモータ、及びこれらの誘導体(例えば、lacUV5、taclac等)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
一部の実施形態において、誘導プロモータは、第1の鎖、第2の鎖、及びシャペロンタンパク質の転写を駆動する、IPTG誘導プロモータである。本開示のお驚くべき発見は、シャペロンタンパク質の発現を調節するIPTG誘導プロモータが、IPTGによる誘導なしで、IPTG誘導プロモータがIPTGによって誘導される場合のシャペロンタンパク質の発現と比較してより高い産物力価を促進するレベルでシャペロンタンパク質の発現を促進し得ることである。
【0092】
一部の実施形態において、誘導プロモータは、培養培地中のリン酸塩が枯渇したとき、第1の鎖、第2の鎖、及びシャペロンタンパク質の転写を駆動するphoプロモータである。phoプロモータは、細胞外リン酸塩(例えば、無機リン酸塩)に応答する様式で転写を促進する任意のポリヌクレオチド配列を指し得る。例えば、大腸菌におけるリン酸塩(Pho)レギュロンは、細胞外リン酸塩を感知し、リン酸塩レベルに応答してPhoプロモータを介して多数の下流遺伝子の発現を調節するタンパク質構成要素を含む(より詳細な説明については、Hsieh YJ and Wanner BL 2010 Curr.Opin.Microbiol.13(2):198を参照されたい)。細菌を培養培地中で成長させる場合、このPhoレギュロンの発現は、リン酸塩(例えば、無機リン酸塩、Pi)が培地中にあるときに抑制され、リン酸塩が枯渇しているときに誘導されることが知られている。本明細書に記載される方法において使用されるphoプロモータの1つの非限定的な例は、大腸菌phoAプロモータである。このプロモータは広く知られており、原核宿主細胞における組み換えタンパク質発現を、細胞培養培地中のリン酸塩濃度に依存する様式で調節するために当該技術分野で使用される(より詳細な記載については、Lubke C et al.1995 Enzyme Microb.Technol.17(10):923を参照されたい)。
【0093】
一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、選択可能なマーカを更に含有し、培養培地は、宿主細胞にポリヌクレオチドを保持させるために単一の抗生物質を持つ選択剤を含む。有利にも、本明細書に記載される方法により、1つ以上のシャペロンタンパク質が共発現する2鎖タンパク質の鎖の生成が可能となり、その結果、これらの構成要素の各々をコードする翻訳単位が全て単一のポリヌクレオチド(例えば、本明細書に記載される発現プラスミドまたは単一プラスミド系)に含まれるようになる。かかるシステムの利点は、これらの構成要素の全てが同じプラスミドによってコードされるため、原核宿主細胞におけるこれらのポリヌクレオチドの維持に必要とされる選択可能なマーカが1つのみである点である。
【0094】
選択可能なマーカは、細胞が、選択、すなわち、選択可能なマーカを欠く細胞(複数可)の存在量と比較して選択可能なマーカを保有する細胞(複数可)の存在量を選択的に増加させるために使用される任意の条件に曝露されるときに、宿主細胞の生存を促進するタンパク質をコードする任意のポリヌクレオチドを指し得る。選択可能なマーカの例は、抗生物質の存在下で宿主細胞の生存を促進する遺伝子である。多数の選択可能なマーカ、及び単一の抗生物質を持つ対応する選択剤が、当該技術分野で既知である。例えば、非限定的に、多くの選択可能なマーカ及び対応する抗生物質が、Jang CW and Magnuson T 2013 PLoS ONE 8(2):e57075において説明及び引用されている。一部の実施形態において、選択可能なマーカは、宿主細胞のゲノム内に存在する遺伝子欠失を補う遺伝子(例えば、プラスミドから発現される遺伝子)を指し得る。これらの例では、細胞を選択するとき(すなわち、宿主ゲノムから欠失した遺伝子の活性を必要とする条件下での成長)、プラスミドによって供給される遺伝子のコピーが宿主ゲノムの欠乏を補い、それにより外因性相補遺伝子を保有する細胞(複数可)を選択する。かかる遺伝子としては、細胞培地において欠乏している特定の栄養素を生成するために必要とされる栄養要求性マーカまたは遺伝子を挙げることができ、これらの例は、本明細書で更に記載される。いくつかの例示的な選択可能なマーカ及び抗生物質は、以下で更に記載される。
【0095】
一部の実施形態において、第1の翻訳単位は、第1の鎖のコード領域と動作可能に組み合わされた第1の翻訳開始領域(TIR)を含み、第2の翻訳単位は、第2の鎖のコード領域と動作可能に組み合わされた第2の翻訳開始領域(TIR)を含む。翻訳開始領域(TIR)は、原核宿主細胞における組換えタンパク質の翻訳に重要であることが知られている(例えば、Simmons LC and Yansura DG 1996 Nat.Biotechnol.14:629、及びVimberg V et al.2007 BMC Mol.Biol.8:100を参照されたい)。TIRは、翻訳単位の翻訳の効率を決定し得る。TIRは、典型的には、開始コドン、シャインダルガーノ(SD)配列、及び翻訳エンハンサー等の翻訳単位特性を含む。TIRは、シグナルペプチドをコードする分泌シグナル配列を更に含んでも良い。配列及びTIRの特性間の離間により翻訳開始効率が調節され得る。
【0096】
一部の実施形態において、第1及び第2のTIRの相対的翻訳強度は、約1.0〜約3.0である。2鎖タンパク質の各鎖をコードする翻訳単位を含むベクターが本明細書に記載される。各翻訳単位がTIRを含み得る。本明細書で使用される「翻訳強度」は、翻訳単位の翻訳を介したポリペプチドの生成を指し得る。この生成は、いくつかの特徴に依存しても良く、これらの特徴としては、mRNA翻訳、mRNA安定性、リボソームのmRNAへの結合効率、ならびにそれによってコードされるポリペプチドの折り畳み、組み立て、及び/または転座が挙げられるが、これらに限定されない。相対的翻訳強度は、実験TIRと対照TIRとの両方が、同じ条件下で培養した類似の原核宿主細胞(例えば、同じ属及び種)によって発現されるときに、野生型または対照TIRを持つ翻訳単位によってコードされるポリペプチドの生成と比較して、特異的または実験TIRを持つ翻訳単位によってコードされるポリペプチドの生成を指し得る。TIRの更なる説明は、米国特許第8,361,744号で見い出され得る。
【0097】
組み換えポリペプチド
本開示のある特定の態様は、2つの鎖を持つポリペプチドの生成方法に関する。有利にも、本明細書に記載される方法は、多くの異なる種類のタンパク質、特に、上記のような2鎖タンパク質等のジスルフィド結合を持つものの発現、折り畳み、及び組み立てを促進するのに有用であり得る。特定の2鎖タンパク質を以下に記載するが、本明細書に記載される方法は、これらの特定の実施形態に限定されない。本明細書で使用される2鎖タンパク質は、1つ超の別個のポリペプチド鎖を含有するタンパク質を含み得る。本明細書に記載の多くの実施形態は2つのポリペプチド鎖を含む2鎖タンパク質を伴うが、2つ超のポリペプチド鎖(例えば、3つ以上のポリペプチド)を持つ2鎖タンパク質が企図され、本明細書に記載される方法によって生成されても良い。上記のように、さもなければ、2つの別個のポリペプチド鎖(例えば、単鎖抗体、単鎖可変断片等)である場合に結合する、単一のポリペプチド鎖からなる2鎖タンパク質が企図され、本明細書に記載される方法によって生成されても良い。
【0098】
一部の実施形態において、本開示の2鎖ポリペプチドの2つの鎖は、少なくとも1つのジスルフィド結合によって互いに連結する。ジスルフィド結合は、2つのチオール群を連結している任意の共有結合を指し得る。ポリペプチドにおけるジスルフィド結合は、典型的には、システイン残基のチオール基の間で形成される。ポリペプチドジスルフィド結合は、本開示の2鎖タンパク質等の多くのポリペプチドの折り畳み及び組み立てに重要であることが当該技術分野で既知である。ポリペプチドジスルフィド結合は、単一のポリペプチド鎖におけるシステイン残基間のジスルフィド結合(すなわち、分子内または鎖内ジスルフィド結合)を含んでも良い。ポリペプチドジスルフィド結合はまた、別個のポリペプチド鎖上で見いだされるシステイン残基間のジスルフィド結合(すなわち、分子内または鎖内ジスルフィド結合)を含んでも良い。したがって、一部の実施形態において、2鎖ポリペプチドの2つの鎖は、少なくとも1つのジスルフィド結合によって互いに連結する。
【0099】
ジスルフィド結合は、抗体及び抗体断片の折り畳み及び組み立てに重要であることが当該技術分野で既知である。異なる抗体同位体、及び同位体内の異なるサブクラスは、異なるパターンのジスルフィド結合を保有することが既知である。例えば、IgG抗体は、特定のIgGサブクラスに応じて、鎖内ジスルフィド結合を12個、各軽鎖とその対応する重鎖との間の鎖内ジスルフィド結合を1個、重鎖間の鎖内ジスルフィド結合を2〜11個含有しても良い(より詳細な説明については、Liu H and May K 2012 MAbs.4(1):17を参照されたい)。IgM(例えば、Wiersma EJ and Shulman MJ 1995 J.Immunol.154(10):5265を参照されたい)、IgE(例えば、Helm BA et al.1991 Eur.J.Immunol.21(6):1543を参照されたい)、IgA(例えば、Chintalacharuvu KR et al.2002 J.Immunol.169(9):5072を参照されたい)、及びIgD(例えば、Shin SU et al.1992 Hum.Antibodies Hybridomas 3(2):65を参照されたい)も、折り畳み及び組み立て中にジスルフィド結合を形成することが既知である。
【0100】
一部の実施形態において、本開示の2鎖ポリペプチドは、宿主細胞に対して異種である。本明細書で使用されるとき、宿主細胞に関連して使用される場合の異種ポリペプチドは、宿主細胞において内因的に発現されない、すなわち、宿主細胞が自然から単離される場合の任意のポリペプチドを指し得る。異種ポリペプチドはまた、宿主細胞によって内因的に発現され得るが、宿主細胞が自然から単離される場合とは異なる規制の下で発現されるポリペプチドを指しても良い。異なる規制の例としては、発現の異なる量の発現、異なる刺激因子に応答した発現、または異種プロモータ、例えば誘導プロモータの使用によるもの等の、関連する任意の他の改変された発現を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0101】
一部の実施形態において、本開示の2鎖ポリペプチドは、ヘテロ二量体のモノマーである。本明細書で使用されるとき、ヘテロ二量体は、動作可能に連結している2つの別個のポリペプチドまたはポリペプチド複合体を含有する任意のポリペプチド複合体を指し得る。ヘテロ二量体の非限定的な例は、2つの別個の抗体モノマーで構成される二重特異性または二価抗体(すなわち、動作可能に連結している軽鎖−重鎖対)である。この例では、第1の抗原を認識する第1の重鎖−軽鎖対の折り畳み及び組み立ては、第1の抗体モノマーを生成する。第2の抗原を認識する第2の重鎖−軽鎖対の折り畳み及び組み立ては、第2の抗体モノマーを生成する。これらのモノマーは、当該技術分野で既知である任意の手段(二重特異性抗体に関して以下でより詳細に記載される)によって組み立てられて、ヘテロ二量体を形成し得る。例示的なヘテロ二量体抗体形成に関する更なる詳細については、Ridgway JBB et al.1996 Protein Eng.9(7):617を参照されたい。
【0102】
一部の実施形態において、本開示の2鎖ポリペプチドは、第1の鎖及び第2の鎖が免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖を表す一価抗体である。本明細書で使用されるとき、一価抗体は、共に動作可能に連結して重鎖−軽鎖対を形成する抗体重鎖及び抗体軽鎖から作製される任意のポリペプチド複合体を指しても良く、これにおいて、重鎖−軽鎖対は第2の重鎖−軽鎖対に動作可能に連結しない。「半抗体(hAb)」という用語が本明細書では互換的に使用され得る。
【0103】
一部の実施形態において、本開示の一価抗体は、抗原と特異的に結合することができる。本明細書で使用されるとき、「結合する」、「特異的に結合する」、または「〜に特異的である」という用語は、標的と(すなわち、生体分子を含む不均一な分子集団の存在下での標的の存在を決定する抗体と)の間の結合等の測定可能かつ再現可能な相互作用を指す。例えば、標的(エピトープであり得る)と結合するまたは特異的に結合する抗体は、それが他の標的と結合する場合よりも優れた親和性、結合力で、より容易に、かつ/またはより長い期間にわたってこの標的と結合する抗体である。一実施形態において、無関係の標的への抗体の結合の程度は、例えば、放射免疫測定法(RIA)によって測定した、標的への抗体の結合の約10%未満である。ある特定の実施形態において、標的と特異的に結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.1nM以下の解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施形態において、抗体は、異なる種に由来するタンパク質の間で保存されるタンパク質上のエピトープと特異的に結合する。別の実施形態において、特異的結合は、排他的結合を含み得るが、それを必要とするわけではない。
【0104】
一部の実施形態において、本開示の2鎖ポリペプチドは分泌タンパク質である。本明細書で使用されるとき、分泌タンパク質は、宿主細胞によって宿主細胞ペリプラズムまたは細胞外環境に分泌される任意のタンパク質を指し得る。分泌タンパク質は、宿主細胞によって内因的に分泌されるタンパク質であっても良く、または分泌タンパク質は、宿主細胞によって内因的に分泌されないが、その分泌を促進するような方法で修飾されるタンパク質であっても良い。例えば、典型的にはポリペプチドのN末端で見られるシグナル配列の存在により、ポリペプチドが分泌のための分泌経路に導かれ得る。多数のシグナル配列が当該技術分野で既知であり、分泌タンパク質の分泌を促進するため、または宿主細胞によって自然に分泌されないタンパク質を分泌させるために有用であり得る。例えば、Picken et al.,Infect.Immun.42:269−275(1983)、Simmons and Yansura,Nature Biotechnology 14:629−634(1996)、及びHumphreys DP et al.2000 Protein Expr.Purif.20(2):252を参照されたい。シグナル配列の1つの非限定的な例は、耐熱性エンテロトキシンII(STII)シグナル配列である。
【0105】
一部の実施形態において、本開示の分泌タンパク質は、宿主細胞のペリプラズムから回収される。ペリプラズムは、グラム陰性細菌性細胞の内膜または細胞膜と外膜との間の空間を指すことが当該技術分野で既知である。理論に束縛されることを意図するものではないが、ペリプラズムは、ジスルフィド結合の形成を促す酸化環境であると考えられる。したがって、ジスルフィド結合をその適切に折り畳まれ組み立てられた構造の一部として持つポリペプチド(例えば、本開示の2鎖タンパク質)をペリプラズムに局在させることが有利であり得る(より詳細な説明については、Schlapschy M et al.2006 Protein Eng.Des.Sel.19(8):385を参照されたい)。
【0106】
ペリプラズムタンパク質を回収するための多数の方法が当該技術分野で既知である。ペリプラズムタンパク質の大規模な精製の1つの非限定的な例は、欧州特許第EP1356052 B1号に記載されている(例えば、実施例4を参照されたい)。ペリプラズムタンパク質は、ペリプラズム画分をスフェロブラスト(spheroblast)調製から抽出することによって回収しても良い(例えば、Schlapschy M et al.2006 Protein Eng.Des.Sel.19(8):385を参照されたい)。ペリプラズム抽出物が産生されると、ペリプラズムタンパク質は、当該技術分野で既知の任意の標準的なタンパク質精製技法、例えば、親和性精製、クロマトグラフィー等によって精製され得る。
【0107】
抗体
本明細書に記載される2鎖タンパク質は、当該技術分野で既知である任意の好適な技法によって調製され得る。2鎖タンパク質の1つの例示的なクラスは抗体である。以下に記載されるように、抗体は、抗体を産生するための当該技術分野で利用可能な技法を使用して調製され、その例示的な方法は、以下の節により詳細に記載される。当業者であれば、以下に記載の方法の多くが抗体の他に2鎖タンパク質に適用され得ることを認識するであろう。
【0108】
抗体は、目的の抗原(例えば、非限定的に、PD−L1(ヒトPD−L1等)、HER2、またはCD3(ヒトCD3等)、IL13、IL4、VEGFC、VEGFA、及びVEGF)を対象とする。好ましくは、抗原は、生物学的に重要なポリペプチドであり、障害に罹患する哺乳動物への本抗体の投与により、その哺乳動物において治療的利益がもたらされ得る。
【0109】
IL13及びIL17抗体
一部の実施形態において、本開示の抗体は、インターロイキン−13(本明細書ではIL−13またはIL13と称する)を対象とする。例えば、本抗体は、IL13を対象とする一価抗体または「半抗体」、IL13を対象とする2つの一価重鎖−軽鎖対を含む完全抗体(例えば、2つの同一の一価重鎖−軽鎖対、各々IL13の同一のエピトープを認識する異なるHVRもしくはCDRを含む2つの一価重鎖−軽鎖対、または各々IL13の重複していないもしくは部分的に重複しているエピトープを認識する異なるHVRもしくはCDRを含む2つの一価重鎖−軽鎖対)、またはIL13を対象とする重鎖−軽鎖対、及び異なる抗原を対象とする重鎖−軽鎖対を含む二重特異性抗体であっても良い。
【0110】
IL13ポリペプチドの例は、当該技術分野で既知である。一部の実施形態において、IL13ポリペプチドは、ヒトIL13ポリペプチドである。一部の実施形態において、IL13ポリペプチドは、IL13の前駆体形態である。IL13ポリペプチドの前駆体形態の非限定的な例は、ヒトIL13前駆体であり、これは、Swiss−Prot受託番号P35225.2で表される。一部の実施形態において、IL13ポリペプチドは、以下の配列を含む。
【0111】
他の実施形態において、IL13は、IL13の成熟形態である(例えば、シグナル配列を欠く)。一部の実施形態において、IL13ポリペプチドは、以下の配列を含む。
【0112】
一部の実施形態において、本開示の抗体は、インターロイキン−17(本明細書ではIL−17またはIL17と称する)を対象とする。例えば、本抗体は、IL17を対象とする一価抗体または「半抗体」、IL17を対象とする2つの一価重鎖−軽鎖対を含む完全抗体(例えば、2つの同一の一価重鎖−軽鎖対、各々IL17の同一のエピトープを認識する異なるHVRもしくはCDRを含む2つの一価重鎖−軽鎖対、または各々IL17の重複していないもしくは部分的に重複しているエピトープを認識する異なるHVRもしくはCDRを含む2つの一価重鎖−軽鎖対)、またはIL17を対象とする重鎖−軽鎖対及び異なる抗原を対象とする重鎖−軽鎖対を含む二重特異性抗体であっても良い。
【0113】
IL17ファミリーには6つのメンバー、すなわちIL17A、IL17B、IL17C、IL7D、IL17E、及びIL17Fが存在する。IL17は、当該技術分野では、IL17ファミリーのプロトタイプであるIL17Aを指すように使用される場合がある。IL17A及びIL17Fは、全てのIL17ファミリーメンバーの中で最も高い配列相同性を共有する。IL17ファミリーのメンバーは、ホモ二量体、例えば、IL17AA及びIL17FFを形成する。加えて、IL17A及びIL17Fは、ヘテロ二量体(例えば、IL17AF)を形成する。例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれる、Gaffen,S.L.,2009,Nature Review 9:556−567、Hymowitz et al.,2001,EMBO J.20:5332−41、及びWO 2005/010044を参照されたい。ある特定の実施形態において、本開示の抗体は、IL17Aを対象とする。ある特定の実施形態において、本開示の抗体は、IL17Fを対象とする。ある特定の実施形態において、抗IL17抗体またはIL17と結合する抗体は、IL17AA、FF、及びAFと結合する抗体(またはIL17A F交差反応性抗体)を指す。ある特定の実施形態において、本開示の抗体は、IL17A及びIL17F(例えば、抗IL17AA、AF、及びFF)の両方と交差反応する。IL17AA、IL17FF、及びIL17AF抗体の更なる説明については、例えば、米国特許第8,715,669号を参照されたい。
【0114】
IL17ポリペプチドの例(例えば、IL17AまたはIL17F)は、当該技術分野で既知である。一部の実施形態において、IL17Aポリペプチドは、ヒトIL17Aポリペプチドである。一部の実施形態において、IL17Aポリペプチドは、IL17Aの前駆体形態である。IL17Aポリペプチドの前駆体形態の非限定的な例は、ヒトIL17A前駆体であり、これは、Swiss−Prot受託番号Q16552.1で表される。一部の実施形態において、IL17Aポリペプチドは、以下の配列を含む。
【0115】
他の実施形態において、IL17Aは、IL17Aの成熟形態である(例えば、シグナル配列を欠く)。一部の実施形態において、IL17Aポリペプチドは、以下の配列を含む。
【0116】
一部の実施形態において、IL17Fポリペプチドは、ヒトIL17Fポリペプチドである。一部の実施形態において、IL17Fポリペプチドは、IL17Fの前駆体形態である。IL17Fポリペプチドの前駆体形態の非限定的な例は、ヒトIL17F前駆体であり、これは、Swiss−Prot受託番号Q96PD4.3で表される。一部の実施形態において、IL17Fポリペプチドは、以下の配列を含む。
【0117】
他の実施形態において、IL17Fは、IL17Fの成熟形態である(例えば、シグナル配列を欠く)。一部の実施形態において、IL17Fポリペプチドは、以下の配列を含む。
【0118】
一部の実施形態において、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む抗IL13抗体が本明細書で提供され、これにおいては、
(a)重鎖可変ドメインは、それぞれAYSVN(配列番号9)、MIWGDGKIVYNSALKS(配列番号10)、及びDGYYPYAMDN(配列番号11)と少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR−H1、HVR−H2、及びHVR−H3配列を含み、かつ/あるいは
(b)軽鎖可変ドメインは、それぞれRASKSVDSYGNSFMH(配列番号12)、LASNLES(配列番号13)、及びQQNNEDPRT(配列番号14)と少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR−L1、HVR−L2、及びHVR−L3配列を含む。
特定の態様において、配列同一性は、参照配列と比較して、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。
【0119】
一部の実施形態において、抗IL13抗体は、配列番号7の重鎖可変ドメイン配列、及び/または配列番号8の軽鎖可変ドメイン配列を含む。また更なる実施形態において、重鎖及び/または軽鎖配列を含む単離した抗IL13抗体が提供され、これにおいては、
(a)重鎖可変ドメイン配列は、参照重鎖配列:
EVTLRESGPALVKPTQTLTLTCTVSGFSLSAYSVNWIRQPPGKALEWLAMIWGDGKIVYNSALKSRLTISKDTSKNQVVLTMTNMDPVDTATYYCAGDGYYPYAMDNWGQGSLVTVSS(配列番号7)と、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有し、かつ/あるいは
(b)軽鎖可変ドメイン配列は、参照軽鎖配列:
DIVLTQSPDSLSVSLGERATINCRASKSVDSYGNSFMHWYQQKPGQPPKLLIYLASNLESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQNNEDPRTFGGGTKVEIKR(配列番号8)と、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。
【0120】
一部の実施形態において、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む抗IL17A F交差反応性抗体が本明細書で提供され、これにおいては、
(a)重鎖可変ドメインは、それぞれDYAMH(配列番号20)、GINWSSGGIGYADSVKG(配列番号21)、及びDIGGFGEFYWNFGL(配列番号22)と少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR−H1、HVR−H2、及びHVR−H3配列を含み、かつ/あるいは
(b)軽鎖可変ドメインは、それぞれRASQSVRSYLA(配列番号23)、DASNRAT(配列番号24)、及びQQRSNWPPAT(配列番号25)と少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR−L1、HVR−L2、及びHVR−L3配列を含む。
特定の態様において、配列同一性は、参照配列と比較して、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。
【0121】
一部の実施形態において、抗IL17A F交差反応性抗体は、配列番号18の重鎖可変ドメイン配列及び/または配列番号19の軽鎖可変ドメイン配列を含む。また更なる実施形態において、重鎖及び/または軽鎖配列を含む単離した抗IL17A F交差反応性抗体が提供され、これにおいては、
(a)重鎖配列は、参照重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGRSLRLSCAASGFTFDDYAMHWVRQAPGKGLEWVSGINWSSGGIGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTALYYCARDIGGFGEFYWNFGLWGRGTLVTVSS(配列番号18)と、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有し、かつ/あるいは
(b)軽鎖配列は、参照軽鎖配列:
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVRSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPPATFGGGTKVEIK(配列番号19)と、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。
【0122】
本発明の一態様において、多特異性抗体が提供されるが、本抗体は、第1の一価または半抗体及び第2の一価または半抗体を含み、第1の半抗体が、IL−17と結合する第1のVH/VL単位を含み、第2の半抗体が、IL−13と結合する第2のVH/VL単位を含む。一部の実施形態において、第1の半抗体はIL−13と結合せず、第2の半抗体はIL−17と結合しない。ある特定の実施形態において、本明細書で提供される多特異性抗体は、IL−17AA、IL−17AF、及びIL−17FFと結合し、IL−17AA−、IL−17AF、及びIL−17FF誘導性の活性を阻害し、またIL−13誘導性の活性を阻害する。ある特定のかかる実施形態において、抗IL−13/IL−17AA、AF、及びFF二重特異性抗体は、有利なことに、IL−17AまたはIL−17Fのみによって誘導される活性とは対照的である、IL−17A及びFサイトカインの全てによって誘導される活性を阻止する。一部の実施形態において、本明細書で提供される多特異性抗体は、IL−17AA、IL−17AF、及びIL−17FFと結合する。一部の実施形態において、IL−17AA誘導性の活性は、IL−17AA誘導性遺伝子発現及び/またはインビボもしくはインビトロでの細胞の増殖である。一部の実施形態において、IL−17AF誘導性の活性は、IL−17AF誘導性遺伝子発現及び/またはインビボもしくはインビトロでの細胞の増殖である。一部のかかる実施形態において、IL−17FF誘導性の活性は、IL−17FF誘導遺伝子発現及び/またはインビボもしくはインビトロでの細胞の増殖である。一部の実施形態において、IL−13誘導性の活性は、IL−13誘導性遺伝子発現及び/またはインビボもしくはインビトロでの細胞の増殖である。一部の実施形態において、本明細書で提供される多特異性抗体は、IL−13のIL−13Rα1への結合を阻害しない。
【0123】
一部の実施形態において、抗IL13/IL17AA AF FF二重特異性抗体(または抗IL13/IL17二重特異性抗体)は、第1の半抗体及び第2の半抗体を含み、第1の半抗体は、IL−17AA、AF、及びFFと結合する第1のVH/VL単位を含み、第2の半抗体は、IL−13と結合する第2のVH/VL単位を含み、第1のVH/VL単位は、配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR−H1、配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR−H2、配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR−H3、配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR−L1、配列番号24のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び配列番号25のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含み、第2のVH/VL単位は、配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR−H1、配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR−H2、配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR−H3、配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR−L1、配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR−L2、及び配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。一部の実施形態において、第1の半抗体はIL−13と結合せず、第2の半抗体はIL−17と結合しない。米国特許第8,715,669号、米国特許第8,771,697号、米国特許第8,088,618号、及びPCT/US2015/017168を参照されたい。
【0124】
一部の実施形態において、第1のVH/VL単位は、配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するVH配列と、配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するVL配列とを含み、第2のVH/VL単位は、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するVH配列と、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するVL配列とを含む。一部の実施形態において、第1のVH/VL単位が、配列番号18のアミノ酸配列を有するVH配列と、配列番号19のアミノ酸配列を有するVL配列とを含み、第2のVH/VL単位が、配列番号7のアミノ酸配列を有するVH配列と、配列番号8のアミノ酸配列を有するVL配列とを含む、多特異性抗体が提供される。
【0125】
ある特定の実施形態において、IL17AA AF及びFFと結合する第1の半抗体は、配列番号26のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号28のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含み、IL13と結合する第2の半抗体は、配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号17のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。ある特定の実施形態において、IL17AA AF及びFFと結合する第1の半抗体は、配列番号27のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号28のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含み、IL13と結合する第2の半抗体は、配列番号16のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号17のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0126】
一部の実施形態において、本開示の抗体のCH3及び/またはCH2ドメインは、IgG(例えば、IgG1サブタイプ、IgG2サブタイプ、IgG2Aサブタイプ、IgG2Bサブタイプ、IgG3サブタイプ、またはIgG4サブタイプ)に由来する。一部の実施形態において、本開示の抗体のCH3及び/またはCH2ドメインは、以下の表2に記載されるもの等の1つ以上のノブまたはホール形成突然変異を含んでも良い。
【0127】
ある特定の実施形態において、本開示の抗体のCH3及び/またはCH2ドメインは、IgG4サブタイプに由来する。一部の実施形態において、本開示の抗体のIgG4 CH3及び/またはCH2ドメインは、S228P突然変異(EU付番)を含むがこれに限定されない、1つ以上の追加の突然変異を含んでも良い。
【0128】
本開示の抗体重鎖/軽鎖可変ドメインまたは重鎖/軽鎖をコードするポリヌクレオチド配列が、本明細書で更に提供される。ある特定の実施形態において、本開示の抗IL13抗体(例えば、IL13と結合する半抗体)は、配列番号29を含むポリヌクレオチド配列によってコードされる重鎖可変ドメイン、及び/または配列番号30を含むポリヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖可変ドメインを含む。ある特定の実施形態において、本開示の抗IL13抗体(例えば、IL13と結合する半抗体)は、配列番号31もしくは配列番号32を含むポリヌクレオチド配列によってコードされる重鎖、及び/または配列番号33を含むポリヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖可変ドメインを含む。ある特定の実施形態において、本開示の抗IL17A F交差反応性抗体(例えば、IL17AA、AF、及びFFと結合する半抗体)は、配列番号34を含むポリヌクレオチド配列によってコードされる重鎖可変ドメイン、及び/または配列番号35を含むポリヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖可変ドメインを含む。ある特定の実施形態において、本開示の抗IL17A F交差反応性抗体(例えば、IL17AA、AF、及びFFと結合する半抗体)は、配列番号36または配列番号37を含むポリヌクレオチド配列によってコードされる重鎖、及び/または配列番号38を含むポリヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖可変ドメインを含む。
【0129】
一部の実施形態において、本開示の抗体は、特定の宿主細胞、例えば、大腸菌等の原核宿主細胞における発現のためにコドン最適化されるポリペプチド配列を含んでも良い。例えば、一部の実施形態において、本開示の抗IL17AF抗体(例えば、IL17AA、AF、及びFFと結合する半抗体)は、配列番号39または配列番号40を含むポリヌクレオチド配列によってコードされる重鎖、及び/または配列番号41を含むポリヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖可変ドメインを含む。
【0130】
抗体特性
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、1μM以下、150nM以下、100nM以下、50nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、または0.001nM以下(例えば、10
−8 M以下、例えば、10
−8M〜10
−13M、例えば、10
−9M〜10
−13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0131】
一実施形態において、Kdは、次のアッセイにより記載されるように、目的の抗体のFabバージョン及びその抗原を用いて行われる放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。抗原に対するFabの溶液結合親和性は、未標識抗原の一連の滴定の存在下で、最小濃度の(
125I)標識抗原とFabを平衡化し、次いで、抗Fab抗体コーティングプレートで結合した抗原を捕捉することによって測定される(例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865−881(1999)を参照されたい)。アッセイの条件を確立するためには、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中5μg/mLの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、その後、PBS中2%(w/v)のウシ血清アルブミンにより、室温(およそ23℃)で2〜5時間ブロッキングする。非吸着性のプレート(Nunc番号269620)内で、100pMまたは26pMの[
125I]抗原を、目的のFabの段階希釈液と混合する。目的のFabを次いで一晩インキュベートするが、インキュベーションは、確実に平衡に到達させるために、より長い期間(例えば、約65時間)継続しても良い。その後、混合物を、室温での(例えば、1時間にわたる)インキュベーションのために、捕捉プレートに移す。次いでこの溶液を除去し、プレートを、PBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN−20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μL/ウェルのシンチラント(scintillant)(MICROSCINT−20(商標)、Packard)を添加し、TOPCOUNT(商標)ガンマ計数器(Packard)でプレートを10分間計数する。最大結合の20%以下をもたらす各Fabの濃度を、競合結合アッセイにおいて使用するために選定する。
【0132】
別の実施形態によれば、Kdは、BIACORE(登録商標)−2000またはBIACORE(登録商標)−3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を用いる表面プラズモン共鳴アッセイを使用して、25℃で、約10応答単位(RU)で固定化された抗原CM5チップを用いて測定される。簡潔に述べると、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサチップ(CM5、BIACORE,Inc.)を、供給業者の指示に従って、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて活性化させる。抗原を10mMの酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/mL(約0.2μM)まで希釈した後、カップリングされたタンパク質のおよそ10応答単位(RU)を達成するように、5μL/分の流速で注射する。抗原の注射後、1Mのエタノールアミンを注射して、未反応の基をブロッキングする。動態測定については、Fabの2倍段階希釈液(0.78nM〜500nM)を、0.05%ポリソルベート20(TWEEN−20(商標))界面活性剤を含むPBS(PBST)に、25℃で、およそ25μL/分の流速で注射する。会合速度(k
on)及び解離速度(k
off)は、単純な1対1のLangmuir結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して、会合センサグラムと解離センサグラムとを同時に当てはめることによって算出される。平衡解離定数(Kd)は、比率k
off/k
onとして算出する。例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865−881(1999)を参照されたい。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによって、オン速度が10
6M
−1s
−1を超える場合、このオン速度は、撹拌されたキュベットを備えるストップフロー装着分光光度計(Aviv Instruments)または8000シリーズSLM−AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)等の分光計において測定される、漸増濃度の抗原の存在下で、PBS(pH7.2)中20nMの抗抗原抗体(Fab型)の25℃における蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、16nm帯域通過)の上昇または減少を測定する、蛍光消光技法を使用することによって、決定することができる。
【0133】
(i)抗原調製
任意に他の分子と複合させた可溶性抗原またはその断片を、抗体を産生するための免疫原として使用することができる。受容体等の膜貫通分子については、これらの断片(例えば、受容体の細胞外ドメイン)を免疫原として使用することができる。代替的に、膜貫通分子を発現している細胞を免疫原として使用することができる。かかる細胞は、天然源(例えば、癌細胞株)に由来することができ、あるいは組み換え技法によって膜貫通分子を発現するように形質転換された細胞であっても良い。他の抗原及びその抗体の調製に有用な形態は、当業者には明らかとなるであろう。
【0134】
(ii)ある特定の抗体に基づく方法
ポリクローナル抗体は、関連抗原及びアジュバントを複数回皮下(sc)または腹腔内(ip)注射することにより動物で産生するのが好ましい。二機能性または誘導化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介した複合)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する)、グルタールアルデヒド、コハク酸無水物、SOCl
2、またはR
1N=C=NR(式中、R及びR
1は異なるアルキル基である)を使用し、関連抗原を、免疫する種において免疫原性であるタンパク質、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、またはダイズトリプシン阻害剤と複合することが有用であり得る。
【0135】
例えば、タンパク質または複合体100μgまたは5μgを(それぞれウサギまたはマウスに対して)完全フロイントアジュバント3容量と組み合わせ、この溶液を複数部位に皮内注射することにより、動物を抗原、免疫原性複合体、または誘導体に対して免疫する。1ヶ月後に、完全フロイントアジュバント中の、最初の量の1/5〜1/10のペプチドまたは複合体を複数箇所に皮下注射することにより動物をブーストする。7〜14日後に動物から採血し、血清の抗体力価をアッセイする。力価がプラトーに達するまで動物をブーストする。好ましくは、同じ抗原の複合体であるが、異なるタンパク質と複合したもの及び/または異なる架橋試薬によるものを用いて動物をブーストする。複合体は組換え細胞培養中でタンパク質融合物として作製することもできる。アラム等の凝集剤も免疫応答を向上させるために使用するのに適している。
【0136】
本開示のモノクローナル抗体はハイブリドーマ法を使用して作製することができ、このハイブリドーマ法は、最初にKohler et al.,Nature,256:495(1975)によって説明され、例えば、Hongo et al.,Hybridoma,14(3):253−260(1995)、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988)、Hammerling et al.,in:Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas 563−681(Elsevier,N.Y.,1981)、Ni,Xiandai Mianyixue,26(4):265−268(2006)(ヒト−ヒトハイブリドーマに関する)において更に説明されている。追加の方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株由来のモノクローナルヒト天然IgM抗体の生成に関する)に記載されているものが挙げられる。ヒトハイブリドーマ技術(Trioma technology)は、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927−937(2005)、及びVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185−91(2005)に記載されている。所望のモノクローナル抗体がハイブリドーマから単離されると、それらのコードしているポリヌクレオチドを原核発現ベクターへとサブクローニングすることができ、本明細書に記載される方法のいずれかによって原核宿主細胞中で発現させることで抗体を生成することができる。
【0137】
(iii)ライブラリ由来抗体
本開示の抗体は、コンビナトリアルライブラリを、所望の活性(単数または複数)を持つ抗体についてスクリーニングすることによって、単離されても良い。例えば、ファージディスプレイライブラリを生成し、かかるライブラリを、所望の結合特性を保有する抗体についてスクリーニングするための方法、例えば、実施例3に記載の方法等の多様な方法が当該技術分野で知られている。追加の方法は、例えば、Hoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178:1−37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)において概説されており、例えば、the McCafferty et al.,Nature 348:552−554、Clackson et al.,Nature 352:624−628(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581−597(1992)、Marks and Bradbury,in Methods in Molecular Biology 248:161−175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003)、Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299−310(2004)、Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073−1093(2004)、Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467−12472(2004)、及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1−2):119−132(2004)において更に説明されている。
【0138】
ある特定のファージディスプレイ法では、VH及びVL遺伝子のレパートリーを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別々にクローニングし、ファージライブラリ内でランダムに組み換え、次いでそれらを、Winter et al.,Ann.Rev.Immunol.12:433−455(1994)に記載されているように、抗原結合ファージについてスクリーニングすることができる。ファージは、典型的には、1本鎖Fv(scFv)断片またはFab断片のいずれかとして、抗体断片を提示する。免疫した源からのライブラリは、ハイブリドーマを構築する必要なしに、免疫原に対する高親和性抗体を提供する。代替的に、Griffiths et al.,EMBO J,12:725−734(1993)に記載されているように、いかなる免疫も行うことなく、ナイーブレパートリーを(例えば、ヒトから)クローニングして、広範な非自己抗原及びまた自己抗原に対する抗体の単一源を提供することができる。最後に、ナイーブライブラリは、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.227:381−388(1992)に記載されているように、再配列されていないV遺伝子セグメントを幹細胞からクローニングし、ランダム配列を含有するPCRプライマーを使用して高度可変CDR3領域をコードし、インビトロで再配列を実行することによって、合成的に作製することもできる。ヒト抗体ファージライブラリについて説明している特許公開には、例えば、米国特許第5,750,373号、ならびに米国特許公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、及び同第2009/0002360号が挙げられる。
【0139】
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体断片は、本明細書においてヒト抗体またはヒト抗体断片と見なされる。
【0140】
(iv)キメラ、ヒト化、及びヒト抗体
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、キメラ抗体である。ある特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855(1984)に記載されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサル等の非ヒト霊長類に由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む。更なる実施例において、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のものから変更された、「クラススイッチされた」抗体である。キメラ抗体には、それらの抗原結合断片が含まれる。
【0141】
ある特定の実施形態において、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的に、非ヒト抗体は、親の非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低減させるために、ヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、HVR、例えば、CDR(またはそれらの部分)が非ヒト抗体に由来し、FR(またはそれらの部分)がヒト抗体配列に由来する、1つ以上の可変ドメインを含む。ヒト化抗体は、任意に、ヒト定常領域の少なくとも一部分も含むことになる。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体におけるいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を復元もしくは改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
【0142】
ヒト化抗体及びそれらの作製方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619−1633(2008)に概説されており、また、例えば、Riechmann et al.,Nature 332:323−329(1988)、Queen et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029−10033(1989)、米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第7,087,409号、Kashmiri et al.,Methods 36:25−34(2005)(SDR(a−CDR)グラフティングを記載している)、Padlan,Mol.Immunol.28:489−498(1991)(「リサーフェシング(resurfacing)」を記載している)、Dall’Acqua et al.,Methods 36:43−60(2005)(「FRシャフリング」を記載している)、ならびにOsbourn et al.,Methods 36:61−68(2005)、及びKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252−260(2000)(FRシャフリングへの「誘導選択」アプローチを記載している)に更に記載されている。
【0143】
ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域には、「ベストフィット」法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296(1993)を参照されたい)、軽鎖可変領域または重鎖可変領域の特定の下位集団のヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992)、及びPresta et al.J.Immunol.151:2623(1993)を参照されたい)、ヒト成熟(体細胞突然変異)フレームワーク領域またはヒト生殖系列フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619−1633(2008)を参照されたい)、及びFRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678−10684(1997)、及びRosok et al.,J.Biol.Chem.271:22611−22618(1996)を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されない。
【0144】
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野で既知の種々の技法を使用して生成することができる。ヒト抗体は、概して、van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368−74(2001)及びLonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450−459(2008)において説明されている。ヒト抗体は、例えば、非限定的に、本明細書に記載される方法のいずれかによって原核発現ベクターから原核宿主細胞中で発現させることによって作製することができる。
【0145】
ヒト抗体はまた、ヒト由来ファージディスプレイライブラリから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって産生されても良い。かかる可変ドメイン配列は、次いで、所望のヒト定常ドメインと組み合わされても良い。抗体ライブラリからヒト抗体を選択するための技法が、以下に記載される。
【0146】
(v)抗体断片
抗体断片は、酵素消化等の従来の手段によって、または組み換え技法によって産生され得る。ある特定の状況においては、全抗体ではなく抗体断片を使用する利点がある。断片サイズがより小さいと、急速なクリアランスが可能となり、これにより固形腫瘍へのアクセスが改善され得る。ある特定の抗体断片の概説については、Hudson et al.(2003)Nat.Med.9:129−134を参照されたい。
【0147】
種々の技法が抗体断片の生成のために開発されている。従来、これらの断片は、インタクトな抗体のタンパク質分解消化によって得られた(例えば、Morimoto et al.,Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107−117(1992)、及びBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照されたい)。しかしながら、現在、これらの断片は、組み換え宿主細胞によって直接生成することができる。Fab、Fv、及びScFv抗体断片はすべて、大腸菌中で発現されて、それから分泌され得るため、これらの断片を容易に大量に生成することができる。抗体断片は、上記の抗体ファージライブラリから単離することができる。代替的に、Fab’−SH断片を大腸菌から直接回収し、化学カップリングして、F(ab’)
2断片を形成させることができる(Carter et al.,Bio/Technology 10:163−167(1992))。別のアプローチに従うと、F(ab’)
2断片は、組み換え宿主細胞培養から直接単離することができる。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、インビボ半減期が増加したFab及びF(ab’)
2断片については、米国特許第5,869,046号で説明されている。抗体断片の生成のための他の技法は、当業者には明らかとなる。ある特定の実施形態において、抗体は1本鎖Fv断片(scFv)である。WO 93/16185、米国特許第5,571,894号、及び同第5,587,458号を参照されたい。Fv及びscFvは、定常領域を欠くインタクトな結合部位を持つ唯一の種であり、このため、これらはインビボ使用中の非特異的結合の減少に好適であり得る。scFv融合タンパク質は、scFvのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかにてエフェクタータンパク質の融合が生じるように構築されても良い。前掲のAntibody Engineering,ed.Borrebaeckを参照されたい。抗体断片はまた、例えば、米国特許第5,641,870号に記載されているように「線状抗体」であっても良い。かかる線状抗体は、単一特異性または二重特異性であっても良い。
【0148】
(vi)多特異性抗体
多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有し、これらのエピトープは、通常、異なる抗原由来である。かかる分子は、通常、2つの異なるエピトープ(すなわち、二重特異性抗体、BsAb)のみに結合することになるが、本明細書で使用される場合、三重特異性抗体等の追加の特異性を持つ抗体がこの発現に包含される。二重特異性抗体は、完全長抗体または抗体断片(例えば、F(ab’)
2二重特異性抗体)として調製することができる。
【0149】
二重特異性抗体の作製方法は、当該技術分野で既知である。完全長二重特異性抗体の従来の生成は、2つの鎖が異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の共発現に基づく(Millstein et al.,Nature,305:537−539(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダムな組み合わせにより、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は10個の異なる抗体分子(そのうちの1個のみが正しい二重特異性構造を有する)の潜在的な混合物を生成する。通常は親和性クロマトグラフィーステップによって行われる正しい分子の精製は幾分煩雑であり、産物収率が低い。同様の手順は、WO 93/08829及びTraunecker et al.,EMBO J.10:3655−3659(1991)に開示されている。
【0150】
二重特異性抗体を作製するための当該技術分野で既知である1つのアプローチは、「ノブ−イン−ホール」または「空洞への隆起(protuberance−into−cavity)」アプローチである(例えば、米国特許第5,731,168号を参照されたい)。このアプローチにおいて、2つの免疫グロブリンポリペプチド(例えば、重鎖ポリペプチド)は各々、界面を含む。一方の免疫グロブリンポリペプチドの界面は、もう一方の免疫グロブリンポリペプチド上の対応する界面と相互作用することで、2つの免疫グロブリンポリペプチドを会合させる。これらの界面は、一方の免疫グロブリンポリペプチドの界面に位置する「ノブ」または「隆起」(これらの用語は本明細書では互換的に使用され得る)が、もう一方の免疫グロブリンポリペプチドの界面に位置する「ホール」または「空洞」(これらの用語は本明細書では互換的に使用され得る)と対応するように操作されても良い。一部の実施形態において、ホールは、ノブと同一または類似のサイズのものであり、2つの界面が相互作用するときに、一方の界面のノブがもう一方の界面の対応するホールの中に位置付け可能となるように、好適に位置付けられる。理論に束縛されることを意図するものではないが、これは、ヘテロ多量体を安定させ、他の種、例えば、ホモ多量体の形成と比較してヘテロ多量体の形成を優先すると考えられる。一部の実施形態において、このアプローチを使用して、2つの異なる免疫グロブリンポリペプチドのヘテロ多量体化を促進し、異なるエピトープに対する結合特異性を持つ2つの免疫グロブリンポリペプチドを含む二重特異性抗体を創出しても良い。
【0151】
一部の実施形態において、ノブは、小型のアミノ酸側鎖を大型の側鎖で置き換えることによって構築し得る。一部の実施形態において、ホールは、大型のアミノ酸側鎖を小型の側鎖で置き換えることによって構築し得る。ノブまたはホールは、元々の界面中に存在しても良く、または、合成によって導入されても良い。例えば、ノブまたはホールは、界面をコードする核酸配列を改変して少なくとも1つの「元々の」アミノ酸残基を少なくとも1つの「移入」アミノ酸残基で置き換えることによって合成によって導入されても良い。核酸配列の改変方法としては、当該技術分野で周知の標準的な分子生物学的技法を挙げることができる。種々のアミノ残基の側鎖体積を以下の表に示す。一部の実施形態において、原型残基は、小型の側鎖体積(例えば、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グリシン、セリン、トレオニン、またはバリン)を有し、ノブを形成するための移入残基は、自然発生アミノ酸であり、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンを含み得る。一部の実施形態において、原型残基は、大型の側鎖体積(例えば、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン)を有し、ホールを形成するための移入残基は、自然発生アミノ酸であり、アラニン、セリン、トレオニン、及びバリンを含み得る。
aアミノ酸の分子量から水の分子量を減算したものである。値は、Handbook of Chemistry and Physics,43
rd ed.Cleveland,Chemical Rubber Publishing Co.,1961からのものである。
b値は、A.A.Zamyatnin,Prog.Biophys.Mol.Biol.24:107−123,1972からのものである。
c値は、C.Chothia,J.Mol.Biol.105:1−14,1975からのものである。利用可能な表面積は、この参照文献の
図6〜20において定義される。
【0152】
一部の実施形態において、ノブまたはホールを形成するための原型残基は、ヘテロ多量体の3次元構造に基づいて特定される。3次元構造を得るための当該技術分野で既知の技法としては、X線結晶学及びNMRを挙げることができる。一部の実施形態において、界面は、免疫グロブリン定常ドメインのCH3ドメインである。これらの実施形態において、ヒトIgG
1のCH3/CH3界面は、4個の逆平行β鎖上に位置する各ドメイン上の16個の残基を伴う。理論に束縛されることを意図するものではないが、突然変異した残基は、好ましくは、ノブがパートナーであるCH3ドメインにおける補償ホールではなく周囲の溶媒によって収容され得る危険性を最低限に抑えるように、2つの中央の逆平行β鎖上に位置する。一部の実施形態において、2つの免疫グロブリンポリペプチドにおける対応するノブ及びホールを形成する突然変異は、以下の表で提供される1つ以上の対と対応する。
突然変異は、原型残基、続くKabat付番システムを使用した位置、その後の移入残基によって表される(全ての残基は一文字のアミノ酸コードで付与される)。複数の突然変異はコロンで分けられる。
【0153】
一部の実施形態において、免疫グロブリンポリペプチドは、上記の表2に列挙される1つ以上のアミノ酸置換を含むCH3ドメインを含む。一部の実施形態において、二重特異性抗体は、表2の左のカラムに列挙される1つ以上のアミノ酸置換を含むCH3ドメインを含む第1の免疫グロブリンポリペプチドと、表2の右のカラムに列挙される1つ以上の対応するアミノ酸置換を含むCH3ドメインを含む第2の免疫グロブリンポリペプチドとを含む。ノブ−アンド−ホール形成対の非限定的な例として、一部の実施形態において、二重特異性抗体は、T366W突然変異を含むCH3ドメインを含む第1の免疫グロブリンポリペプチドと、T366S、L368A、及びY407V突然変異を含むCH3ドメインを含む第2の免疫グロブリンポリペプチドとを含む。
【0154】
以上で考察したDNAの突然変異に続いて、1つ以上の対応するノブまたはホール形成突然変異によって修飾された免疫グロブリンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが発現され、当該技術分野で既知の標準的な組み換え技法及び細胞系を使用して精製され得る。例えば、米国特許第5,731,168号、同第5,807,706号、同第5,821,333号、同第7,642,228号、同第7,695,936号、同第8,216,805号、米国公開第2013/0089553号、及びSpiess et al.,Nature Biotechnology 31:753−758,2013を参照されたい。修飾された免疫グロブリンポリペプチドは、大腸菌等の原核宿主細胞を使用して生成されても良い。対応するノブ及びホールを保有する免疫グロブリンポリペプチドは、共培養において宿主細胞中で発現され、ヘテロ多量体と共に精製されても良く、またはこれらは、単一の培養において発現され、別個に精製され、インビトロで組み立てられても良い。一部の実施形態において、細菌性宿主細胞の2つの株(一方はノブを伴う免疫グロブリンポリペプチドを発現し、もう一方はホールを伴う免疫グロブリンポリペプチドを発現している)が、当該技術分野で既知の標準的な細菌培養技法を使用して共培養される。一部の実施形態において、これら2つの株は、特定の比率、例えば、培養において等しい発現レベルを達成する比率で混合され得る。一部の実施形態において、2つの株は、50:50、60:40、または70:30の比率で混合されても良い。ポリペプチド発現後、細胞は共に溶解され得、タンパク質が抽出され得る。ホモ多量体種対ヘテロ多量体種の存在度の測定を可能にする当該技術分野で既知の標準的な技法としては、サイズ排除クロマトグラフィーを挙げることができる。一部の実施形態において、修飾された免疫グロブリンポリペプチドの各々は、標準的な組み換え技法を使用して別個に発現され、回収され、共にインビトロで組み立てられる。以下でより詳細に記載されるように、組み立ては、例えば、修飾された免疫グロブリンポリペプチドの各々を精製し、それらを等しい質量で共に混合及びインキュベートし、ジスルフィドを還元し(例えば、ジチオスレイトールでの処理によって)、濃縮し、ポリペプチドを再酸化することによって達成され得る。形成された二重特異性抗体は、カチオン交換クロマトグラフィーを含む標準的な技法を使用して精製され、サイズ排除クロマトグラフィーを含む標準的な技法を使用して測定されても良い。これらの方法のより詳細な説明については、Speiss et al.,Nat Biotechnol 31:753−8,2013を参照されたい。
【0155】
各半抗体は、米国特許第7,642,228号に記載されるように重鎖内で操作されたノブ(隆起)またはホール(空洞)のいずれかを有することができる。簡潔に述べると、CH3ノブ突然変異体をまず産生し得る。次に、CH3ホール突然変異体のライブラリを、パートナーであるCH3ドメイン上のノブに近接する残基366、368、及び407をランダム化することによって創出し得る。ある特定の実施形態において、ノブ突然変異は、T366Wを含み、ホール突然変異は、IgG1またはIgG4骨格においてT366S、L368A、及びY407Vを含む。当業者であれば、他の免疫グロブリンアイソタイプにおける同等の突然変異を作製することができる。更に、当業者であれば、二重特異性抗体に使用される2つの半抗体が同じアイソタイプのものであることが好ましいことを容易に理解するであろう。
【0156】
ノブ突然変異またはホール突然変異のいずれかを含有する半抗体は、細菌性宿主細胞(例えば、大腸菌)において重鎖及び軽鎖構築物を発現させることによって、別個の培養において産生される。各半抗体は、タンパク質A親和性クロマトグラフィーによって別個に精製することができる。ノブ及びホール半抗体から浄化した細胞抽出物は、HiTrap MabSelect SuRe(商標)カラムによって精製することができる。異なる特異性を持つタンパク質A精製半抗体を組み立てて、還元剤の存在下でのインビトロの酸化還元反応において二重特異性抗体を形成することができる。
【0157】
任意の好適な方法を使用して、所望の還元条件を調製することができる。例えば、所望の還元条件は、還元体/還元剤を反応物(本発明の組み立て混合物等)に添加することによって調製し得る。好適な還元体としては、ジチオスレイトール(DTT)、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、チオグリコール酸、アスコルビン酸、チオール酢酸、グルタチオン(GSH)、ベータ−メルカプトエチルアミン、システイン/シスチン、GSH/グルタチオンジスルフィド(GSSG)、システアミン/シスタミン、グリシルシステイン、及びベータ−メルカプトエタノールが挙げられるが、これらに限定されず、好ましくは、GSHである。ある特定の実施形態において、還元体は、弱還元体であり、弱還元体としては、ベータ−メルカプトエチルアミン、システイン/シスチン、GSH/GSSG、システアミン/シスタミン、グリシルシステイン、及びベータ−メルカプトエタノールが挙げられるが、これらに限定されず、好ましくは、GSHである。ある特定の好ましい実施形態において、還元体はGSHである。ある特定の実施形態において、還元体はDTTではない。所望の還元条件を反応において達成するのに好適な実験条件下で好適な濃度の好適な還元体を選択することは、当業者の能力の範囲内である。例えば、20℃の二重特異性抗体タンパク質濃度が10g/Lである溶液中の10mMのL還元グルタチオンは、約−400mVの開始酸化還元電位をもたらすことになる。例えば、組み立て混合物に添加するグルタチオンは、ノブ−イン−ホール二重特異性組み立てに有利な弱還元条件を創出する。BMEA(ベータ−メルカプトエチルアミン)等の類似のクラスの他の還元体は、類似の効果を有し得る。全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2013/055958を参照されたい。反応の還元条件は、当該技術分野で既知の任意の好適な方法を使用して推定及び測定することができる。例えば、還元条件は、レザズリンインジケータ(還元条件における青から無色への変色)を使用して測定し得る。より正確に測定するためには、酸化還元電位メータ(BROADLEY JAMES(登録商標)によって作製されるORP電極等)を使用することができる。
【0158】
ある特定の実施形態において、還元条件は弱還元条件である。本明細書で使用される「弱還元体」または「弱還元条件」は、25℃で負の酸化電位を有する還元剤によって調製される還元剤または還元条件を指す。還元剤の酸化電位は、pHが7〜9でありかつ温度が15℃〜39℃である場合に、好ましくは、−50〜−600mV、−100〜−600mV、−200〜−600mV、−100〜−500mV、−150〜−300mV、より好ましくは、約−300〜−500mV、最も好ましくは、約−400mVである。当業者は、所望の還元条件を調製するのに好適な還元体を選択することができるであろう。当業者であれば、強還元体、すなわち、同じ濃度、pH、及び温度に対して、上述した還元体よりも大きい負の酸化電位を有するものを、より低い濃度で使用しても良いことを認識するであろう。好ましい実施形態において、タンパク質は、上述した条件下でインキュベートする場合に、還元剤の存在下でジスルフィド結合を形成することができる。弱還元体の例としては、グルタチオン、ベータ−メルカプトエチルアミン、シスチン/システイン、GSH/GSSG、システアミン/シスタミン、グリシルシステイン、及びベータ−メルカプトエタノールが挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、GSH:抗体の200倍のモル比のものと類似した酸化電位を、他の還元体を使用する効率的な組み立てが期待できる弱還元条件についての基準点として使用することができる。
【0159】
グルタチオン濃度は、モル濃度の観点から、または組み立て混合物中に存在する半抗体の量に対するモル比またはモル過剰の観点から表され得る。還元体の標的モル比を使用することで組み立て混合物中のタンパク質濃度が制御され、これにより、様々なタンパク質濃度による還元過剰または還元不足を防止する。ある特定の他の実施形態において、還元体は、半抗体の全量に対して、2〜600倍、2〜200倍、2〜300倍、2〜400倍、2〜500倍、2〜20倍、2〜8倍、20〜50倍、50〜600倍、50〜200倍、または100〜300倍のモル過剰、好ましくは50〜400倍、より好ましくは100〜300倍、最も好ましくは200倍のモル過剰で組み立て混合物に添加される。ある特定の実施形態において、組み立て混合物のpHは、7〜9、好ましくはpH8.5である。
【0160】
ある特定の実施形態において、第1の半抗体及び第2の半抗体の培養物を組み合わせ、続いてその組み合わせた培養物中で溶解することができる。放出された第1の半抗体及び第2の半抗体の組み合わせは、還元条件において二重特異性抗体を形成し得る。全体が参照により本明細書に組み込まれるWO 2011/133886を参照されたい。
【0161】
異なるアプローチに従い、所望の結合特異性を持つ抗体可変ドメイン(抗体−抗原を組み合わせる部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合する。融合は、好ましくは、ヒンジ領域、CH2領域、及びCH3領域の少なくとも一部を含む、免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。融合のうちの少なくとも1つにおいて存在する、軽鎖結合に必要な部位を含む第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが典型的である。免疫グロブリン重鎖融合をコードするDNA、及び所望の場合には免疫グロブリン軽鎖を別個の発現ベクター中に挿入し、好適な宿主生物へと同時トランスフェクトする。これにより、構築物中で使用される3つのポリペプチド鎖の不均衡な比率により最適な収率が提供される実施形態において、3つのポリペプチド断片の相互の割合を調整することにおける優れた柔軟性が提供される。しかしながら、等しい比率の少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現により高い収率がもたらされるとき、または比率が特別に有意でないときには、2つまたは3つ全てのポリペプチド鎖をコードする配列を1つの発現ベクター中に挿入することが可能である。
【0162】
このアプローチの一実施形態において、二重特異性抗体は、一方のアームに第1の結合特異性を持つハイブリッド免疫グロブリン重鎖と、もう一方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性を提供する)とで構成される。二重特異性分子の半分のみに免疫グロブリン軽鎖が存在することにより容易な分離方法が提供されるため、この非対称構造により所望の二重特異性化合物が不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから容易に分離されることが分かった。このアプローチは、WO 94/04690に開示されている。二重特異性抗体の産生の更なる詳細については、例えば、Suresh et al.,Methods in Enzymology,121:210(1986)を参照されたい。
【0163】
WO96/27011に記載されている別のアプローチに従い、抗体分子の対間の界面を、組み換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体の割合を最大化するように操作することができる。一方の界面は、抗体定常ドメインのC
H3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1の抗体分子の界面からの1つ以上の小型のアミノ酸側鎖を、より大型の側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置き換える。より大型の側鎖(複数可)と同一または類似のサイズの補償「空洞」を、大型のアミノ酸側鎖をより小型の側鎖(例えば、アラニンまたはトレオニン)で置き換えることによって、第2の抗体分子の界面上に創出する。これにより、ホモ二量体等の他の不要な最終産物と比較してヘテロ二量体の収率を増加させる機序が提供される。
【0164】
二重特異性抗体は、架橋または「ヘテロ複合体」抗体を含む。例えば、ヘテロ複合体中の抗体の一方はアビジンに、もう一方はビオチンにカップリングすることができる。かかる抗体は、例えば、免疫細胞を不要な細胞に標的化すること(米国特許第4,676,980号)及びHIV感染の治療用であること(WO 91/00360、WO 92/200373、及びEP 03089)が提案されている。ヘテロ複合体抗体は、任意の簡便な架橋方法を使用して作製し得る。好適な架橋剤は、いくつかの架橋技法と共に、当該技術分野で周知であり、米国特許第4,676,980号に記載されている。
【0165】
抗体断片からの二重特異性抗体の産生技法も、文献中で説明されている。例えば、二重特異性抗体は、化学連結を使用して調製することができる。Brennan et al.,Science,229:81(1985)は、インタクトな抗体をタンパク質分解的に切断して、F(ab’)
2断片を産生する手順を説明している。これらの断片をジチオール複合化剤亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元して、隣接ジチオールを安定させ、分子間のジスルフィド形成を防止する。次に、産生されたFab’断片をチオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換する。その後、Fab’−TNB誘導体の一方を、メルカプトエチルアミンを用いた還元によってFab’−チオールに再変換し、当モル量のもう一方のFab’−TNB誘導体と混合して、二重特異性抗体を形成する。生成された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化のための薬剤として使用することができる。
【0166】
近年の進歩により、化学カップリングして二重特異性抗体を形成することができるFab’−SH断片の大腸菌からの直接的回収が促進されている。Shalaby et al.,J.Exp.Med.,175:217−225(1992)は、完全ヒト化二重特異性抗体F(ab’)
2分子の生成を説明している。各Fab’断片を大腸菌から別個に分泌させ、それに対してインビトロでの指向性化学カップリングを行い、二重特異性抗体を形成した。
【0167】
二重特異性抗体断片を組み換え細胞培養物から直接的に作製及び単離するための種々の技法も説明されている。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを使用して生成されてきた。Kostelny et al.,J.Immunol.148(5):1547−1553(1992)。Fos及びJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドを、遺伝子融合によって2つの異なる抗体のFab’部分に連結させた。抗体ホモ二量体をヒンジ領域にて還元して、モノマーを形成した後、再酸化して、抗体ヘテロ二量体を形成した。この方法は、抗体ホモ二量体の生成にも利用することができる。Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)によって説明される「ダイアボディ」技術は、二重特異性抗体断片を作製するための代替的機序を提供している。断片は、同じ鎖上でこれら2つのドメイン間の対形成を許容するには短すぎるリンカーによって軽鎖可変ドメイン(V
L)に接続した重鎖可変ドメイン(V
H)を含む。したがって、一方の断片のV
H及びV
Lドメインは、別の断片の相補的V
L及びV
Hドメインと対形成させ、それにより、2つの抗原結合部位を形成する。1本鎖Fv(sFv)二量体の使用によって二重特異性抗体断片を作製するための別の方針も報告されている。Gruber et al,J.Immunol,152:5368(1994)を参照されたい。
【0168】
二重特異性抗体断片を作製するための別の技法は、「二重特異性T細胞エンゲージャー」またはBiTE(登録商標)アプローチである(例えば、WO2004/106381、WO2005/061547、WO2007/042261、及びWO2008/119567を参照されたい)。このアプローチは、単一ポリペプチド上に配列された2つの抗体可変ドメインを利用する。例えば、単一ポリペプチド鎖は、可変重鎖(V
H)ドメイン及び可変軽鎖(V
L)ドメインを各々有する2つの1本鎖Fv(scFv)断片を含み、これらのドメインは、2つのドメイン間の分子内会合を許容するのに十分な長さのポリペプチドリンカーによって分離される。この単一のポリペプチドは、2つのscFv断片間のポリペプチドスペーサ配列を更に含む。各scFvは、異なるエピトープを認識し、これらのエピトープは、異なる細胞型に特異的であっても良く、その結果として、2つの異なる細胞型の細胞が、各scFvがその同族のエピトープとエンゲージするときに近接近するかまたは係留される。このアプローチの1つの特定の実施形態は、免疫細胞によって発現される細胞表面抗原を認識するscFv、例えば、T細胞上のCD3ポリペプチドを含み、これは、悪性または腫瘍細胞等の標的細胞によって発現される細胞表面抗原を認識する別のscFvに連結する。
【0169】
これは単一ポリペプチドであるため、二重特異性T細胞エンゲージャーは、当該技術分野で既知の任意の原核細胞発現系を使用して発現され得る。しかしながら、特異的精製技法(例えば、EP1691833を参照されたい)が、モノマー二重特異性T細胞エンゲージャーを、モノマーの意図される活性以外の生物活性を有し得る他の多量体種から分離するために必要であり得る。1つの例示的な精製スキームでは、分泌ポリペプチドを含有する溶液に対してまず金属親和性クロマトグラフィーを行い、ポリペプチドをイミダゾール濃度の勾配を用いて溶出する。この溶出物を、アニオン交換クロマトグラフィーを使用して更に精製し、ポリペプチドを、塩化ナトリウム濃度の勾配を使用して溶出する。最後に、この溶出物に対してサイズ排除クロマトグラフィーを行い、モノマーを多量体種から分離する。
【0170】
原子価が2超である抗体が企図される。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tuft et al.J.Immunol.147:60(1991)。
【0171】
一部の実施形態において、2鎖タンパク質は、多重特性性抗体または二重特異性抗体の一部である。多重特性抗体または二重特異性抗体は、本開示の2つ以上の一価抗体を含有する。
【0172】
一部の実施形態において、二重特性抗体の第1の抗原結合ドメインは、1つ以上の重鎖定常ドメインを含み、この1つ以上の重鎖定常ドメインは、第1のCH1(CH1
1)ドメイン、第1のCH2(CH2
1)ドメイン、第1のCH3(CH3
1)ドメインから選択され、二重特性抗体の第2の抗原結合ドメインは、1つ以上の重鎖定常ドメインを含み、この1つ以上の重鎖定常ドメインは、第2のCH1(CH1
2)ドメイン、第2のCH2(CH2
2)ドメイン、及び第2のCH3(CH3
2)ドメインから選択される。一部の実施形態において、第1の抗原結合ドメインの1つ以上の重鎖定常ドメインのうちの少なくとも1つは、第2の抗原結合ドメインの別の重鎖定常ドメインと対形成される。一部の実施形態において、CH3
1及びCH3
2ドメインは、各々、突起または空洞を含み、CH3
1ドメインにおけるこの突起または空洞は、それぞれ、CH3
2ドメインにおける空洞または突起中に位置付けることができる。一部の実施形態において、CH3
1及びCH3
2ドメインは、該突起と該空洞との間の接合部にて接触する。CH3
1及びCH3
2ドメインにおけるアミノ酸置換の例示的なセットが本明細書の表2に示される。一部の実施形態において、CH2
1及びCH2
2ドメインは各々、突起または空洞を含み、CH2
1ドメインにおけるこの突起または空洞は、それぞれ、CH2
2ドメインにおける空洞または突起中に位置付けることができる。一部の実施形態において、CH2
1及びCH2
2ドメインは、該突起と該空洞との間の接合部にて接触する。一部の実施形態において、IgGのCH3
1及び/またはCH3
2ドメインは、米国特許第8,216,805号の
図5に示されているアミノ酸付番による347、349、350、351、366、368、370、392、394、395、398、399、405、407、及び409からなる群から選択される残基における1つ以上のアミノ酸置換を含有する。一部の実施形態において、突起は、アルギニン(R)残基、フェニルアラニン(F)残基、チロシン(Y)残基、及びトリプトファン(W)残基からなる群から選択される1つ以上の導入された残基を含む。一部の実施形態において、空洞は、アラニン(A)残基、セリン(S)残基、トレオニン(T)残基、及びバリン(V)残基からなる群から選択される1つ以上の導入された残基を含む。一部の実施形態において、CH3及び/またはCH2ドメインは、IgG(例えば、IgG1サブタイプ、IgG2サブタイプ、IgG2Aサブタイプ、IgG2Bサブタイプ、IgG3サブタイプ、またはIgG4サブタイプ)に由来する。一部の実施形態において、二重特異性抗体の一方のCH3ドメインは、アミノ酸置換T366Yを含み、もう一方のCH3ドメインは、アミノ酸置換Y407Tを含む。一部の実施形態において、一方のCH3ドメインは、アミノ酸置換T366Wを含み、もう一方のCH3ドメインは、アミノ酸置換Y407Aを含む。一部の実施形態において、一方のCH3ドメインは、アミノ酸置換F405Aを含み、もう一方のCH3ドメインは、アミノ酸置換T394Wを含む。一部の実施形態において、一方のCH3ドメインは、アミノ酸置換T366Y及びF405Aを含み、もう一方のCH3ドメインは、アミノ酸置換T394W及びY407Tを含む。一部の実施形態において、一方のCH3ドメインは、アミノ酸置換T366W及びF405Wを含み、もう一方のCH3ドメインは、アミノ酸置換T394S及びY407Aを含む。一部の実施形態において、一方のCH3ドメインは、アミノ酸置換F405W及びY407Aを含み、もう一方のCH3ドメインは、アミノ酸置換T366W及びT394Sを含む。一部の実施形態において、一方のCH3ドメインは、アミノ酸置換F405Wを含み、もう一方のCH3ドメインは、アミノ酸置換T394Sを含む。突然変異は、原型残基、続くKabat付番システムを使用した位置、その後の移入残基によって表される。米国特許第8,216,805号の
図5における付番も参照されたい。
【0173】
(vii)単一ドメイン抗体
一部の実施形態において、本開示の抗体は単一ドメイン抗体である。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部分または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部分を含む、単一のポリペプチド鎖である。ある特定の実施形態において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,Mass.、例えば、米国特許第6,248,516 B1号を参照されたい)。一実施形態において、単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てまたは一部分からなる。
【0174】
(viii)抗体変異形
一部の実施形態において、本明細書に記載される抗体のアミノ酸配列修飾(複数可)が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を向上させることが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列変異形は、抗体をコードするヌクレオチド配列中に適切な変化を導入することによって、またはペプチド合成によって、調製されても良い。かかる修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列からの残基の欠失、及び/またはそこへの残基の挿入、及び/またはその中での残基の置換が含まれる。最終構築物に到達するように、欠失、挿入、及び置換を任意に組み合わせることができるが、但し、その最終構築物が、所望の特性を保有することを条件とする。アミノ酸の改変は、配列が作製されるときに対象の抗体アミノ酸配列中に導入され得る。
【0175】
(ix)置換、挿入、及び欠失変異形
ある特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体変異形が提供される。置換型突然変異生成に対する目的の部位には、HVR及びFRが含まれる。保存的置換が、「保存的置換」の見出しの下に表1において示される。より実質的な変化は、表1において、「例示的な置換」の見出しの下に提供され、またアミノ酸側鎖クラスを参照して以下に更に記載される。アミノ酸置換が目的の抗体中に導入され、その産物が、所望の活性、例えば、抗原け都合の保持/向上、免疫原性の減少、またはADCCもしくはCDCの向上についてスクリーニングされても良い。
【0176】
アミノ酸は、次の一般的な側鎖特性に従って分類されても良い。
a.疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、
b.中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、
c.酸性:Asp、Glu、
d.塩基性:His、Lys、Arg、
e.鎖配向に影響する残基:Gly、Pro、
f.芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0177】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。
【0178】
置換型変異形の種類の1つは、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1個以上の超可変領域残基を置換することを伴う。一般に、更なる試験のために選択される、結果として生じる変異形(複数可)では、親抗体と比較して、ある特定の生物学的特性が改変され(例えば、向上)(例えば、親和性の増加、免疫原性の低下)を有することになり、かつ/または親抗体の、ある特定の生物学的特性が実質的に保持されることになる。例示的な置換型変異形は、例えば、本明細書に記載されるもの等のファージディスプレイベースの親和性成熟技法を使用して、簡便に産生され得る、親和性成熟抗体である。簡潔に述べると、1個以上のHVR残基を突然変異させ、変異形抗体をファージ上で提示させ、特定の生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。
【0179】
改変(例えば、置換)をHVRにおいて行って、例えば、抗体親和性を向上させても良い。かかる変化は、HVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で突然変異を経るコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179−196(2008)を参照されたい)、及び/またはSDR(a−CDR)において行われても良く、結果として生じる変異形VHまたはVLが、結合親和性について試験される。二次ライブラリを構築し、そこから再選択することによる親和性成熟は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1−37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001)に記載されている。)親和性成熟のいくつかの実施形態において、多様性が、多様な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性突然変異生成)のうちのいずれかによって、成熟のために選定された可変遺伝子中に導入される。次いで、二次ライブラリが創出される。次いでこのライブラリは、所望の親和性を有する任意の抗体変異形を特定するために、スクリーニングされる。多様性を導入するための別の方法は、数個のHVR残基(例えば、1回に4〜6個の残基)がランダム化される、HVR指向性アプローチを伴う。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング突然変異生成またはモデリングを使用して、特異的に同定されても良い。特に、CDR−H3及びCDR−L3が標的とされることが多い。
【0180】
ある特定の実施形態において、置換、挿入、または欠失は、かかる変化が、抗原に結合する抗体の能力を実質的に低減させない限り、1つ以上のHVR内で生じても良い。例えば、結合親和性を実質的に低減させない保存的変化(例えば、本明細書に提供される保存的置換)が、HVRにおいて行われても良い。かかる変化は、HVR「ホットスポット」またはSDRの外側のものであっても良い。以上で提供された変異形VH及びVL配列のある特定の実施形態において、各HVRは、未変化であるか、またはわずか1つ、2つ、もしくは3つのアミノ酸置換を含有するかのいずれかである。
【0181】
突然変異生成のための標的とされ得る抗体の残基または領域を特定するための有用な方法の1つは、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081−1085に記載される「アラニンスキャニング変異生成」と呼ばれるものである。この方法では、標的残基(例えば、arg、asp、his、lys、及びglu等の荷電残基)のうちのある残基または基を特定し、中性または負荷電アミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換えて、抗体と抗原との相互作用が影響を受けるかどうかを判定する。更なる置換が、最初の置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸の場所に導入されても良い。代替的に、または追加的に、抗体と抗原との間の接触点を特定するための抗原−抗体複合体の結晶構造。かかる接触残基及び隣接する残基は、置換の候補として標的とされるか、または排除されても良い。変異形をスクリーニングして、それらが所望の特性を含有するかどうかを判定しても良い。
【0182】
アミノ酸配列挿入には、1個の残基〜100個以上の残基を含有するポリペプチドの範囲の長さであるアミノ末端融合及び/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内(intrasequence)挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入型変異形には、抗体の血清中半減期を増加させる酵素(例えば、ADEPTのための)またはポリペプチドに対する抗体のN末端もしくはC末端への融合が含まれる。
【0183】
(x)Fc領域変異形
ある特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸修飾が、本明細書に提供される抗体のFc領域に導入され、それによってFc領域変異形を産生しても良い。Fc領域変異形は、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含む、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含んでも良い。
【0184】
ある特定の実施形態において、本開示は、全部ではなく一部のエフェクター機能を保有し、それにより、インビボでの抗体の半減期が重要であるが、ある特定のエフェクター機能(例えば補体及びADCC等)が不必要または有害である用途に関して望ましい候補となる、抗体変異形を企図する。インビトロ及び/またはインビボ細胞傷害性アッセイを実行して、CDC及び/またはADCC活性の低減/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実行して、抗体がFcγR結合を欠いている(そのため、ADCC活性を欠いている可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持することが確実にするることができる。ADCCを媒介するための主要な細胞であるNK細胞は、Fc(RIIIのみを発現するが、一方で単球は、Fc(RI、Fc(RII、及びFc(RIIIを発現する。造血細胞上でのFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457−492(1991)の464ページの表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 83:7059−7063(1986)を参照されたい)、及びHellstrom,I et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82:1499−1502(1985); 5,821,337(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166:1351−1361(1987)を参照されたい)に記載されている。代替的に、非放射性アッセイ法が用いられても良い(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA、及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照されたい。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。代替的に、または追加的に、目的の分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 95:652−656(1998)に開示されるもの等の動物モデルにおいて、評価されても良い。また、C1q結合アッセイを行って、抗体がC1qに結合不可能であり、そのためにCDC活性を欠いていることを確認しても良い。例えば、例えば、WO 2006/029879及びWO 2005/100402におけるC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行っても良い(例えば、Gazzano−Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)、Cragg,M.S.et al.,Blood 101:1045−1052(2003)、及びCragg,M.S.and M.J.Glennie,Blood 103:2738−2743(2004)を参照されたい)。FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期の判定も、当該技術分野で既知の方法を使用して行うことができる(例えば、Petkova,S.B.et al.,Int’l.Immunol.18(12):1759−1769(2006)を参照されたい)。
【0185】
低減したエフェクター機能を有する抗体には、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、及び329のうちの1つ以上の置換を有するものが含まれる(米国特許第第6,737,056号)。かかるFc突然変異体には、アラニンへの残基265及び297の置換を持ついわゆる「DANA」Fc突然変異体(米国特許第7,332,581号)を含む、アミノ酸265位、269位、270位、297位、及び327位のうちの2つ以上における置換を持つFc突然変異体が含まれる。
【0186】
FcRに対する結合性が向上したまたは減少したある特定の抗体変異形が記載される。(例えば、米国特許第第6,737,056号、WO 2004/056312、及びShields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591−6604(2001)を参照されたい)。
【0187】
ある特定の実施形態において、抗体変異形は、ADCCを向上させる1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298位、333位、及び/または334位(残基のEU付番)における置換を有する、Fc領域を含む。例示的な実施形態において、本抗体は、次のアミノ酸置換、すなわちS298A、E333A、及びK334Aを、そのFc領域に含む。
【0188】
一部の実施形態において、例えば、米国特許第6,194,551号、WO 99/51642、及びIdusogie et al.J.Immunol.164:4178−4184(2000)に記載されるように、C1q結合及び/または補体依存性細胞傷害(CDC)の改変(すなわち、向上または減少のいずれか)をもたらす改変が、Fc領域において行われる。
【0189】
半減期が増加し、かつ新生児型Fc受容体(FcRn)に対する結合性が向上した抗体は、母体IgGの胎児への移入に関与する(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)、及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))。これは、US2005/0014934A1(Hinton et al.)に記載されている。これらの抗体は、FcRnに対するFc領域の結合性を向上させる1つ以上の置換を中に有するFc領域を含む。かかるFc変異形には、Fc領域残基238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434のうちの1つ以上における置換、例えば、Fc領域残基434の置換(米国特許第7,371,826号)を持つものが含まれる。Fc領域変異形の他の例に関しては、Duncan & Winter, Nature 322:738−40(1988)、U.S.特許第5,648,260号、米国特許第5,624,821号、及びWO 94/29351も参照されたい。
【0190】
(xi)抗体誘導体
本開示の抗体は、当該技術分野で既知であり、容易に入手可能な、追加の非タンパク質性部分を含有するように、更に修飾され得る。ある特定の実施形態において、抗体の誘導体化に好適な部分は、水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストランまたはポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレン(propropylene)グリコールホモポリマー、プロリプロピレン(prolypropylene)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性に起因して、製造における利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量のものであっても良く、分岐していても非分岐であっても良い。抗体に結合したポリマーの数は様々であり得、1つを超えるポリマーが結合される場合、それらは、同じ分子または異なる分子であり得る。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/または種類は、向上させるべき抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が規定の条件下で療法において使用されることになるかどうか等を含むがこれらに限定されない考察に基づいて決定することができる。
【0191】
(xii)ベクター、宿主細胞、及び組み換え方法
抗体はまた、組み換え法を使用して生成されても良い。抗抗原抗体の組み換え生成では、抗体をコードする核酸が単離され、更なるクローニング(DNAの増幅)または発現のために、複製可能なベクター中に挿入される。抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能である、オリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、容易に単離されて配列決定され得る。多くのベクターが利用可能である。ベクター構成要素としては、概して、シグナル配列、複製源、1つ以上のマーカ遺伝子、エンハンサー要素、プロモータ、及び転写終結配列のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0192】
(a)シグナル配列構成要素
本開示の抗体は、直接的にのみではなく、異種ポリペプチドとの融合ポリペプチドとしても組み換え的に生成され得る。この異種ポリペプチドは、好ましくは、成熟タンパク質またはポリペプチドのN末端にて特異的切断部位を有するシグナル配列または他のポリペプチドである。選択される異種シグナル配列は、好ましくは、宿主細胞によって認識され処理されるもの(例えば、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。天然の抗体シグナル配列を認識し処理しない原核宿主細胞については、シグナル配列は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lpp、または耐熱性エンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核性シグナル配列によって置換される。
【0193】
(b)複製起点
発現及びクローニングベクターの両方は、ベクターが1つ以上の選択される宿主細胞において複製できるようにする核酸配列を含有する。一般に、クローニングベクターにおいて、この配列は、ベクターに宿主染色体DNAとは無関係に複製させるものであり、かつ複製または自己複製配列の起点を含むものである。かかる配列は、多様な原核宿主細胞についてよく知られている。例えば、プラスミドpBR322からの複製起点が大部分のグラム陰性細菌に好適である。
【0194】
(c)選択遺伝子構成要素
発現及びクローニングベクターは、選択可能なマーカとも称される選択遺伝子を含有しても良い。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素、例えば、アンピリシン、ネオマイシン、メトトレキサート、またはテトラサイクリンに対する耐性を与える、(b)栄養要求性欠乏を補充する、あるいは(c)複合培地から得ることができない必須の栄養素、例えば、桿菌のためのDアラニンラセマーゼをコードする遺伝子を供給する、タンパク質をコードする。
【0195】
選択スキームの一例は、宿主細胞の成長を停止するための薬物を利用する。異種遺伝子による形質転換に成功した細胞は、薬物耐性を与え、それにより選択レジメンで生存するタンパク質を生成する。かかる優勢選択の例は、薬物である、ネオマイシン、ミコフェノール酸、及びハイグロマイシンを使用する。
【0196】
別の選択スキームは、遺伝子産物が特定の培養培地における成長に不可欠である遺伝子を除去する染色体欠失を持つ原核宿主細胞を使用する。これらの例において、宿主細胞の染色体欠失を補う異種遺伝子による形質転換に成功した細胞は、特定の培養培地における成長時に生存することになる。このスキームにおいて有用な遺伝子の例としては、栄養要求性マーカ遺伝子、または宿主細胞を特定の培養培地において成長させるときに必須の栄養素を産生するために必要とされる他の遺伝子を挙げることができる。
【0197】
(d)プロモータ構成要素
発現及びクローニングベクターは、概して、宿主生物によって認識されるプロモータを含有し、抗体をコードする核酸に動作可能に連結する。原核宿主との使用に好適なプロモータは、phoAプロモータ、β−ラクタマーゼ及びラクトースプロモータ系、アルカリホスファターゼプロモータ、トリプトファン(trp)プロモータ系、及びプロモータ等のハイブリッドプロモータが挙げられる。しかしながら、他の既知である細菌性プロモータも好適である。細菌系における使用のためのプロモータはまた、抗体をコードしているDNAに動作可能に連結するシャインダルガーノ(S.D.)配列を含有することになる。
【0198】
(e)翻訳開始領域構成要素
上記のように、翻訳開始領域(TIR)は、原核宿主細胞における組換えタンパク質の翻訳に重要であることが知られている(例えば、Simmons LC and Yansura DG 1996 Nat.Biotechnol.14:629、及びVimberg V et al.2007 BMC Mol.Biol.8:100を参照されたい)。TIRは、翻訳単位の翻訳の効率を決定し得る。TIRは、典型的には、開始コドン、シャインダルガーノ(SD)配列、及び翻訳エンハンサー等の翻訳単位特性を含む。TIRは、シグナルペプチドをコードする分泌シグナル配列を更に含んでも良い。配列及びTIRの特性間の離間により翻訳開始効率が調節され得る。タンパク質生成におけるTIRの使用の更なる説明については、例えば、発現及び分泌を最適化するための翻訳開始領域(TIR)及びシグナル配列を説明している、米国特許第5,840,523号(Simmonsら)を参照されたい。
【0199】
(f)転写終結構成要素
原核宿主細胞において使用される発現ベクターはまた、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列を含有しても良い。原核細胞において、終結因子は、Rho依存性またはRho独立終結因子を含んでも良い。原核宿主細胞において有用な終結因子の一例としては、λt0終結因子が挙げられるが、これに限定されない(Scholtissek and Grosse,Nucleic Acids Res.15:3185,1987)。
【0200】
III.プロセス最適化
宿主細胞を培養してポリペプチドの2つの鎖を発現させることによって原核宿主細胞に2つの鎖を含有するポリペプチドを生成する方法が本明細書で提供され、この場合、発現時に、2つの鎖が折り畳まれ組み立てられて宿主細胞中に生物学的に活性のポリペプチドを形成し、宿主細胞は、成長温度及び成長撹拌速度を含む成長相、ならびに生成温度及び生成撹拌速度を含む生成相を含む、条件下で、培養培地において培養され、成長温度は、生成温度を2〜10℃上回り、成長撹拌速度は、生成撹拌速度を50〜250rpm上回る。ある特定の生成プロセス最適化により、本明細書に記載のデータが示すように2鎖タンパク質の収率が劇的に増加することは、本開示の驚くべき発見である。
【0201】
(g)宿主細胞の選択及び形質転換
本開示のある特定の態様は、原核宿主細胞に関する。本明細書のベクターにおけるDNAのクローニングまたは発現に好適な原核細胞としては、グラム陰性またはグラム陽性生物等の真正細菌、例えば、エシェリキア属等の腸内細菌科、例えば、大腸菌、エンテロバクター属、クレブシエラ属、プロテウス属、サルモネラ属、例えば、サルモネラ・チフィムリウム、セラチア属、例えば、セラチア・マルセッセンス、及び赤痢菌属、ならびにバシラス・サブチリス及びバシラス・リケニフォルミス等のバシラス(例えば、1989年4月12日出版のDD 266,710に開示されているバシラス・リケニフォルミス41P)、1989)、緑膿菌及びストレプトミセス等のシュードモナス属が挙げられる。1つの好ましい大腸菌クローニング宿主は大腸菌294(ATCC 31,446)であるが、大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC 31,537)、及び大腸菌W3110(ATCC 27,325)等の他の株が好適である。これらの例は、限定的なものではなく例示的なものである。
【0202】
一部の実施形態において、原核宿主細胞は、グラム陰性細菌である。グラム陰性細菌は、グラム染色によって検出されるペプチドグリカン層を取り囲む外膜を含有する任意の細菌を指す。多くのグラム陰性細菌性宿主細胞が当該技術分野で既知である。例えば、グラム陰性細菌として、プロテオバクテリア、例えば、アルファプロテオバクテリア、ベータプロテオバクテリア、ガンマプロテオバクテリア、ゼータプロテオバクテリア、イプシロンプロテオバクテリア、デルタプロテオバクテリア、及びアシドバクテリア、シアノバクテリア、ならびにスピロヘータが挙げられるが、これらに限定されないことが知られている。周知のグラム陰性細菌としては、エシェリシア属(Eschericia)、サルモネラ属、赤痢菌属、シュードモナス属、ヘリオバクター(Heliobacter)属、レジオネラ属、ナイセリア属、及びクレブシエラ属等の属に由来する種を挙げることができる。
【0203】
一部の実施形態において、本開示のグラム陰性細菌は大腸菌である。本明細書で使用される大腸菌は、大腸菌種に属する細菌の任意の株または単離物を指し得る。大腸菌は、自然発生株、または突然変異もしくは本明細書に記載のプラスミドによる形質転換等によって遺伝子修飾された株を含んでも良い。
【0204】
一部の実施形態において、本開示の大腸菌は、内因性プロテアーゼ活性を欠く株のものである。理論に束縛されることを意図するものではないが、内因性プロテアーゼ活性を欠く株は、一部の内因性プロテアーゼが組み換えによって発現された基質に対する活性を有するため、本開示のペリプラズムタンパク質等の組み換えタンパク質の生成の向上を可能にし得ると考えられる(1つのかかる例については、Baneyx F and Georgiu G 1990 J.Bacteriol.172(1):491を参照されたい)。内因性プロテアーゼ活性を欠く株は、内因性プロテアーゼをコードしている遺伝子が、突然変異、欠失、さもなければ不活性化している株を含んでも良い。かかる遺伝子の例としては、degP、prc、及びompTを挙げることができるが、これらに限定されない。様々な原核宿主細胞における突然変異の導入方法(例えば、内因性プロテアーゼ活性を欠く株を操作するため)は、当該技術分野で周知である(例えば、Snyder L et al.2013 Molecular Genetics of Bacteria 4
th ed.ASM Pressを参照されたい)。
【0205】
完全長抗体、抗体融合タンパク質、及び抗体断片等の2鎖タンパク質は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされない場合、例えば、治療用抗体が、単独で腫瘍細胞の破壊において効果を示す細胞傷害性薬剤(例えば、毒素)に複合される場合に、細菌において生成されても良い。完全長抗体は、より優れた血中半減期を有する。大腸菌における生成は、より早く、より費用効率が高い。細菌における抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号(Carterら)、米国特許第5,789,199号(Jolyら)、米国特許第5,840,523号(Simmonsら)(発現及び分泌を最適化するための翻訳開始領域(TIR)及びシグナル配列を説明している)を参照されたい。大腸菌における抗体断片の発現を説明している、Charlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,N.J.,2003),pp.245−254も参照されたい。発現後、抗体は、可溶性画分において大腸菌細胞ペーストから単離されても良く、またアイソタイプに応じてタンパク質AまたはGカラムを介して精製されても良い。最終精製は、例えば、CHO細胞において発現された抗体を精製するためのプロセスと同様に実行することができる。
【0206】
宿主細胞は、2鎖タンパク質生成のための上記の発現またはクローニングベクターによって形質転換され、プロモータの誘導、形質転換体の選択、または所望の配列をコードしている遺伝子の増幅に適切なものとなるように修飾される従来の栄養素培地において培養される。
【0207】
(h)宿主細胞の培養
本開示のある特定の態様は、成長相及び生成相を含む条件下での培養培地中の宿主細胞の培養に関する。これらの相の各々は、更に、宿主細胞が特定の相において成長する条件を指し得る。例えば、本明細書で使用される場合、成長相は、成長温度及び成長撹拌速度を含んでも良く、生成相は、生成温度及び生成撹拌速度を含んでも良い。
【0208】
成長相は、宿主細胞の培養が指数関数的に成長している間の任意の時間を指し得る。本明細書で使用される成長温度は、宿主細胞の成長相にある本開示の宿主細胞を含有する培養培地の温度を指し得る。宿主細胞培養物の成長相は、当該技術分野で一般的に知られている方法、例えば、経時的に培養物の吸光度(例えば、約550nmの波長、約600nmの波長、またはその間の波長にて)を測定し、指数成長相が停止する時間を決定することによって決定されても良い。宿主細胞がphoプロモータを持つベクターを含有する場合、成長相は、宿主細胞の培養物が指数的に成長し、培養培地中のリン酸塩の濃度が、phoプロモータ媒介性の遺伝子転写の誘導を防止するのに十分なものとなる任意の時間を指し得る。
【0209】
生成相は、宿主細胞の培養が産物を生成している任意の時間を指す。本明細書で使用される生成温度は、宿主細胞の生成相にある本開示の宿主細胞を含有する培養培地の温度を指し得る。宿主細胞が、産物の発現を駆動するphoプロモータを持つベクターを含有する場合、生成相は、培養培地中のリン酸塩の濃度がphoプロモータ媒介性産物の遺伝子転写を誘導するほど十分に低下する任意の時間を指し得る。
【0210】
一部の実施形態において、本開示の宿主細胞は、生成温度を2℃〜10℃上回る成長温度にて培養される。一部の実施形態において、本開示の宿主細胞は、生成温度を2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、または10℃上回る成長温度にて培養される。一部の実施形態において、成長温度は、以下のいずれかの量だけ、すなわち、約10、9.5、9、8.5、8、7.5、7、6.5、6、5.5、5、4.5、4、3.5、3、または2.5未満(℃)生成温度を上回る。一部の実施形態において、成長温度は、以下のいずれかの量だけ、すなわち、約2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、または9.5超(℃)生成温度を上回る。つまり、成長温度は、上限が10、9.5、9、8.5、8、7.5、7、6.5、6、5.5、5、4.5、4、3.5、3、または2.5であり、独立して選択される下限が2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、または9.5である量(℃)の範囲(下限は上限を下回る)のいずれかだけ生成温度を上回る。
【0211】
一部の実施形態において、成長温度は、成長相において約30℃〜約34℃の範囲である。一部の実施形態において、成長温度は、成長相において約30℃、約30.5℃、約31℃、約31.5℃、約32℃、約32.5℃、約33℃、約33.5℃、または約34℃である。一部の実施形態において、成長相における成長温度は、約34、33.5、33、32.5、32、31.5、31、または30.5の温度(℃)のうちのいずれかを下回る。一部の実施形態において、成長相における成長温度は、約30、30.5、31、31.5、32、32.5、33、または33.5の温度(℃)のうちのいずれかを上回る。つまり、成長相における成長温度は、上限が34、33.5、33、32.5、32、31.5、31、または30.5であり、独立して選択される下限が30、30.5、31、31.5、32、32.5、33、または33.5である温度(℃)の範囲(下限は上限を下回る)のいずれかであり得る。
【0212】
一部の実施形態において、生成温度は、生成相において約25℃〜約29℃の範囲である。一部の実施形態において、生成温度は、生成相において約25℃、約25.5℃、約26℃、約26.5℃、約27℃、約27.5℃、約28℃、約28.5℃、または約29℃である。一部の実施形態において、生成相における生成温度は、約29、28.5、28、27.5、27、26.5、26、または25.5の温度(℃)のいずれかを下回る。一部の実施形態において、生成相における生成温度は、約25、25.5、26、26.5、27、27.5、28、または28.5の温度(℃)のいずれかを上回る。つまり、生成相における生成温度は、上限が29、28.5、28、27.5、27、26.5、26、または25.5であり、独立して選択される下限が25、25.5、26、26.5、27、27.5、28、または28.5である温度(℃)の範囲(下限は上限を下回る)のいずれかであり得る。
【0213】
撹拌速度は、細胞培養物が撹拌される(例えば、振盪によって)速度を指す。本明細書で使用される成長撹拌速度は、本開示の宿主細胞を含有する培養物が宿主細胞の成長相において撹拌される速度を指す。本明細書で使用される生成撹拌速度は、本開示の宿主細胞を含有する培養物が宿主細胞の生成相において撹拌される速度を指す。細胞培養物を撹拌して、細胞培養物の曝気を維持する。
【0214】
一部の実施形態において、本開示の宿主細胞は、生成撹拌速度を50〜250rpm上回る成長撹拌速度にて培養される。一部の実施形態において、本開示の宿主細胞は、生成撹拌速度を50rpm、75rpm、100rpm、125rpm、150rpm、175rpm、200rpm、225rpm、または250rpm上回る成長撹拌速度にて培養される。一部の実施形態において、成長撹拌速度は、約250、225、200、175、150、125、100、または75未満の速度(rpm)のいずれかだけ生成撹拌速度を上回る。一部の実施形態において、成長撹拌速度は、約50、75、100、125、150、175、200、または225超の速度(rpm)のいずれかだけ生成撹拌速度を下回る。つまり、成長撹拌速度は、上限が250、225、200、175、150、125、100、または75であり、独立して選択される下限が50、75、100、125、150、175、200、または225である速度(rpm)の範囲(下限は上限を下回る)のいずれかだけ生成撹拌速度を上回る。
【0215】
一部の実施形態において、成長撹拌速度は、成長相において約600〜800rpmの範囲である。一部の実施形態において、成長撹拌速度は、成長相において約600rpm、約625rpm、約650rpm、約675rpm、約700rpm、約725rpm、約750rpm、約775rpm、または約800rpmである。一部の実施形態において、成長撹拌速度は、約800、775、750、725、700、675、650、または625未満の速度(rpm)のいずれかである。一部の実施形態において、成長撹拌速度は、成長相において約600、625、650、675、700、725、750、または775超の速度(rpm)のいずれかである。つまり、成長相における成長撹拌速度は、上限が800、775、750、725、700、675、650、または625であり、独立して選択される下限が600、625、650、675、700、725、750、または775である速度(rpm)の範囲(下限は上限を下回る)のいずれかである。
【0216】
一部の実施形態において、生成撹拌速度は、生成相において約300〜500rpmの範囲である。一部の実施形態において、生成相における生成撹拌速度は、約300rpm、約325rpm、約350rpm、約375rpm、約400rpm、約425rpm、約450rpm、約475rpm、または約500rpmである。一部の実施形態において、生成相における生成撹拌速度は、約500、475、450、425、400、375、350、325未満の速度(rpm)のいずれかである。一部の実施形態において、生成相における生成撹拌速度は、約300、325、350、375、400、425、450、または475超の速度(rpm)のいずれかである。つまり、生成相における生成撹拌速度は、上限が500、475、450、425、400、375、350、または325であり、独立して選択される下限が300、325、350、375、400、425、450、または475である速度(rpm)の範囲(下限は上限を下回る)のいずれかである。
【0217】
理論に束縛されることを意図するものではないが、酸素濃度が制限される場合、酸素移動速度(OTR)は、細胞の酸素取り込み速度(OUR)または代謝率と等しいと考えられる。撹拌速度を調整することによってOTRの操作の操作を容易にし得、従ってOURの操作を容易にし得る。OUR及びそのOTRとの関係のより詳細な説明は、Ochoa−Garcia et al.,Biotechnol.Adv.27:153,2009において見い出すことができる。細胞培養物のOURを測定するための技法は、当該技術分野で既知であり、質量分析計を使用して細胞培養物からのオフガスの組成物を監視し、細胞培養物の酸素取り込み及び二酸化炭素発生速度を算出することを含むが、これに限定されない。
【0218】
一部の実施形態において、本開示の宿主細胞は、生成相にある宿主細胞中のピーク酸素取り込み速度を0.5〜2.5mmol/L/分上回る成長相にある宿主細胞中の酸素取り込み速度を達成するために十分な成長撹拌速度にて培養される。本開示の発見は、生成相にある細胞培養の撹拌速度を、成長相と比較して、約2.5mmol/L/分未満の宿主細胞中の酸素取り込み速度を達成するために十分な速度に減少させることが、本開示の2鎖ポリペプチド等の産物の生成を大幅に向上させることである。
【0219】
一部の実施形態において、本開示の宿主細胞は、生成相にある宿主細胞中のピーク酸素取り込み速度を0.5mmol/L/分、1.0mmol/L/分、1.5mmol/L/分、2.0mmol/L/分、または2.5mmol/L/分上回る成長相にある宿主細胞中の酸素取り込み速度を達成するために十分な成長撹拌速度にて培養される。一部の実施形態において、本開示の宿主細胞は、生成相にある宿主細胞中のピーク酸素取り込み速度を次の酸素取り込み速度(mmol/L/分)のうちのいすれか、すなわち約2.5、2.0、1.5、または1.0未満上回る成長相にある宿主細胞中の酸素取り込み速度を達成するために十分な成長撹拌速度にて培養される。一部の実施形態において、本開示の宿主細胞は、生成相にある宿主細胞中のピーク酸素取り込み速度を次の酸素取り込み速度(mmol/L/分)のいずれか、すなわち約0.5、1.0、1.5、2.0、または2.5超上回る成長相にある宿主細胞中の酸素取り込み速度を達成するために十分な成長撹拌速度にて培養される。つまり、本開示の宿主細胞は、生成相にある宿主細胞中のピーク酸素取り込み速度を、上限が2.5、2.0、1.5、または1.0であり、独立して選択される下限が0.5、1.0、1.5、2.0、または2.5である酸素取り込み速度(mmol/L/分)の範囲(下限は上限を下回る)のいずれかだけ上回る成長相にある宿主細胞中の酸素取り込み速度を達成するために十分な成長攪拌速度にて培養される。
【0220】
一部の実施形態において、成長相にある宿主細胞のピーク酸素取り込み速度は、3.5mmol/L/分〜4.5mmol/L/分の範囲である。一部の実施形態において、成長相にある宿主細胞のピーク酸素取り込み速度は、3.5mmol/L/分、3.75mmol/L/分、4.0mmol/L/分、4.25mmol/L/分、または4.5mmol/L/分である。一部の実施形態において、生成相にある宿主細胞の酸素取り込み速度は、1.0mmol/L/分〜3.0mmol/L/分の範囲である。一部の実施形態において、生成相にある宿主細胞の酸素取り込み速度は、1.0mmol/L/分、1.25mmol/L/分、1.5mmol/L/分、1.75mmol/L/分、2.0mmol/L/分、2.25mmol/L/分、2.5mmol/L/分、2.75mmol/L/分、または3.0mmol/L/分である。
【0221】
一部の実施形態において、本開示の宿主細胞は、生成撹拌速度より約10%〜約40%(rpm/rpm)高い成長撹拌速度にて培養される。一部の実施形態において、宿主細胞は、下限が生成撹拌速度の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、または35%(rpm/rpm)であり、独立して選択される上限が生成撹拌速度の40%、35%、30%、25%、20%、または15%以下(rpm/rpm)である成長攪拌速度にて培養される。好ましい実施形態において、本開示の宿主細胞は、10Lの発酵装置中で1バールの背圧及び20L/分の曝気速度にて培養される。
【0222】
本開示の宿主細胞は、多様な媒体中で培養され得る。本明細書で使用される「培養培地」は、本開示の細菌の成長を支援する任意の組成物または培養液を指す。好適な培養培地は、液体または固体であり、任意の栄養素、塩、緩衝液、要素、ならびに細胞の成長及び生存率を支援する他の化合物を含有しても良い。一般的な培養培地の栄養素は、窒素、炭素、アミノ酸、炭水化物、微量元素、ビタミン、及びミネラルの源を含み得る。これらの栄養素は、個々の構成要素として(定義された合成培地中等)または複合エキスの構成成分(例えば、酵母エキス)として添加されても良い。培養培地は、急速な成長を支援するために栄養素に富んでいても良く、あるいはより遅い成長を支援するために栄養素が最低限であっても良い。培養培地はまた、汚染生物の成長を阻害するかまたはそれを殺滅するために使用される任意の薬剤(例えば、抗生物質)を含有しても良い。培養培地はまた、誘導プロモータまたは酵素の活性を制御するために使用される任意の化合物を含有しても良い(一例として、IPTGを含めることで、lacオペロンまたは機能的に類似するプロモータによって制御される任意のポリヌクレオチドの発現を誘導しても良い)。好適な培養培地の多数の例は、当業者に周知であり、M9培地、Lysogeny Broth(LB)、Terrific Broth(TB)、NZY培養液、SOB培地、及びYT培養液が挙げられるが、これらに限定されない。
【0223】
これらの培地のいずれも、必要に応じて、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩等)、緩衝液(HEPES等)、ヌクレオチド(アデノシン及びチミジン等)、抗生物質、抗真菌薬、微量元素(マイクロモル範囲の最終濃度で通常存在する無機化合物として定義される)、グルコース、及び/または適切なエネルギー源を補充され得る。原核細胞培養培地中で見い出される典型的な成分は、酵母エキス、塩(例えば、NaCl)、トリプトン、緩衝液(例えば、リン酸緩衝液)、グリセロール等を含む。任意の他の必要な補充物も、当業者に既知であり得る適切な濃度で含まれ得る。温度及びpH等の培養条件は、発現のために選択される原核宿主細胞で既に使用したものであり、当業者には明らかとなる。
【0224】
(i)生物学的に活性のポリペプチドの精製
本開示のある特定の態様は、宿主細胞から生物学的に活性のポリペプチドを回収することに関する。典型的には、本開示の生物学的に活性のポリペプチドを回収すること(「精製すること」または「精製」という用語が本明細書で互換的に使用されても良い)は、ポリペプチドを宿主細胞(ポリペプチドが培地中に排出される場合には細胞培養培地)から単離して、ポリペプチドを、他の関連する高分子、例えば、細胞残屑及び他のポリペプチドから精製することを伴う。多様なタンパク質を多様な宿主細胞内コンパートメントから精製するための多数の技法が当該技術分野で既知である(例えば、Evans,Jr.,TC and Xu MQ(eds.)Heterologous Gene Expression in E.coli(2011)Methods in Molecular Biology Vol 705,Humana Pressを参照されたい)。例示的な技法が以下に記載されるが、これらは、当業者の理解を助けるための例示のみを目的に含まれるものであり、限定するものでは全くない。
【0225】
組み換え技法を使用するとき、分泌タンパク質等の2鎖タンパク質は、細胞内で精製されるか、細胞膜周辺腔で精製されるか、または培地中に直接排出され得る。分泌タンパク質が細胞内で精製される場合、第1のステップとして、宿主細胞または溶解断片である粒子状破片が、例えば、遠心分離または限外濾過によって除去される。
【0226】
一部の実施形態において、分泌タンパク質は、宿主細胞のペリプラズムから回収される。Carter et al.,Bio/Technology 10:163−167(1992)は、大腸菌の細胞膜周辺腔に排出される分泌タンパク質を単離するための手順を説明している。簡潔に述べると、細胞ペーストを、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)の存在下で約30分かけて解凍する。細胞残屑は、遠心分離によって除去することができる。分泌タンパク質が培地中に排出される場合、概して、かかる発現系からの上清を、まず、市販のタンパク質濃縮フィルタ、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用して濃縮する。PMSF等のプロテアーゼ阻害剤を前述のステップのいずれかに含めてタンパク質分解を阻害しても良く、抗生物質を含めて、偶発的な汚染物質の成長を防止しても良い。
【0227】
細胞から調製された分泌タンパク質組成物は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及び親和性クロマトグラフィーを使用して精製することができ、中でも親和性クロマトグラフィーが典型的に好ましい精製ステップのうちの1つである。抗体に関して、タンパク質Aの親和性リガンドとしての安定性は、抗体中に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種及びアイソタイプに依存する。タンパク質Aを使用して、ヒトγ1、γ2、またはγ4重鎖に基づく抗体を精製することができる(Lindmark et al.,J.Immunol.Meth.62:1−13(1983))。タンパク質Gは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に推奨される(Guss et al.,EMBO J.5:15671575(1986))。親和性リガンドが結合するマトリックスは、ほとんどの場合アガロースであるが、他のマトリックスも利用可能である。制御された細孔ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定したマトリックスにより、アガロースを用いて達成され得るものよりも流速を早くして処理時間を短くすることが可能となる。抗体がC
H3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,N.J.)が精製に有用である。タンパク質精製のための他の技法、例えば、イオン交換カラム上での分別、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンでのクロマトグラフィー、アニオンまたはカチオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸等)でのSEPHAROSE(商標)クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿も、回収される抗体に応じて利用可能である。当業者であれば、分泌タンパク質等の他の2鎖タンパク質を回収するために、抗体回収に有用なこれらの技法の多くを容易に応用し得ることを認識するであろう。
【実施例】
【0228】
本開示は、以下の実施例を参照することにより十分に理解されることになる。しかしながら、これらは、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載の実施例及び実施形態が例示のみを目的とするものであること、ならびにこれらを考慮した種々の修飾または変化が当業者に示唆され、これらが本出願の趣旨及び範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれるべきであることが理解される。
【0229】
略記:Ab(抗体)、hAb(半抗体)、HC(重鎖)、IPTG(イソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド)、LC(軽鎖)、OD(吸光度)、ORF(オープンリーディングフレーム)、OTR(酸素移動速度)、OUR(酸素取り込み速度)、Tg(成長温度)、Tp(生成温度)、TIR(翻訳開始領域)、xIL4(抗インターロイキン−4)、xIL13(抗インターロイキン−13)、xIL17(抗インターロイキン−17)、及びxIL33(抗インターロイキン−33)。
【0230】
実施例1:シャペロン及びオキシドレダクターゼレベルが半抗体生成力価に与える影響
組み換え技法を使用する異種分泌タンパク質の生成は、多くの治療用分子にとって重要である。多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)は、多くの重要な治療的使用、例えば、癌における免疫療法及び他の用途を持つ異種分泌タンパク質の1つの非限定的な例である。治療的使用のための多特異性抗体の生成は、半抗体(hAb)等のこれらの抗体の構成単位を産業規模で生成する能力を必要とする。この要求を満たすために、標準的な方法と比べて顕著に増加した生成をもたらす最適化された発現ベクター及び処理ステップが本明細書に記載される。重要なことに、シャペロンタンパク質FkpA、DsbA、及びDsbCと組み合わせたhAbの重鎖(HC)及び軽鎖(LC)を共発現させるための単一プラスミドまたは適合性プラスミド系が、組み立てられたhAbの生成を顕著に向上させることが分かった。この系を試験して、複数のhAbの生成を改善することが分かったが、これは、多くの分泌タンパク質の生成に対するその幅広い有用性を示す。続く処理ステップの最適化(例えば、培養の異なる相における、撹拌速度、pH、FkpAプロモータ、及び培養温度を含む)により、産物収率がなお更に顕著に増加した。
【0231】
物質及び方法
半抗体(hAb)ベクター構築
ベクターを、EP1356052に記載されているものに類似した様式で構築した。具体的には、種々の発現ベクターをhAbの発現のために作製した。各ベクターでは、発現カセットをEcoRI部位にて大腸菌プラスミドpBR322のフレームワークにクローニングした(Sutcliffe,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.43:77−90,1978)。各発現カセットは、少なくとも次の構成要素を含有した。(1)転写の制御のためのphoAプロモータ(Kikuchi et al.,Nucleic Acids Res.9:5671−5678,1981)、(2)翻訳開始のための大腸菌trp由来のシャインダルガーノ配列、耐熱性エンテロトキシンII(STII)シグナル配列、またはこれら両方の組み合わせ(Chang et al.,Gene 55:189−196,1987)、及び(3)転写を終了するためのλt0終結因子(Scholtissek and Grosse,Nucleic Acids Res.15:3185,1987)。追加的に、STIIシグナル配列またはそのシグナル配列のサイレントコドン変異形は、軽鎖または重鎖をコードする配列に先行した。この配列は、ポリペプチドのペリプラズムへの分泌を導く(Picken et al.,Infect.Immun.42:269−275,1983、及びSimmons and Yansura,Nature Biotechnology 14:629−634,1996)。
【0232】
別個のシストロンを持つベクターを、免疫グロブリン軽鎖遺伝子及び重鎖遺伝子の独立した発現を提供するように設計した。かかるベクターにおいて、各鎖のためのシストロン単位は、それ自体のPhoAプロモータの制御下にあり、λt0終結因子が後に続く。更に、各シストロンは、軽鎖と重鎖との両方の発現を調節するためにTIR(翻訳開始領域)を組み込んだ(Simmons et al.,J.Immunol.Meth.263:133−147,2002)。例示的な実施形態において、発現カセットは、5’から3’へと、軽鎖のためのシストロンが後に続く第1のPhoAプロモータ(TIR−L+軽鎖)及び第1のλt0終結因子、ならびに重鎖のためのシストロンが後に続く第2のPhoAプロモータ(TIR−H+重鎖)及び第2のλt0終結因子を含有する。代替的に、発現カセットは、5’から3’へと、重鎖のためのシストロンが後に続く第1のPhoAプロモータ(TIR−H+重鎖)及び第1のλt0終結因子、ならびに軽鎖のためのシストロンが後に続く第2のPhoAプロモータ(TIR−L+軽鎖)及び第2のλt0終結因子を含有する。TIR−LとTIR−Hとの両方は、STIIシグナル配列またはその変異形の中に含有される。
【0233】
xIL13及びxIL4 IgG4 hAb発現ベクターについて、1,1及び2,2のTIRの組み合わせを評価した。xIL17及びxIL33 IgG4 hAb発現ベクターについて、TIR2,2を評価した。第1の数は軽鎖のTIR強度を表し、第2の数は重鎖のTIR強度を表す。xIL13、xIL4、xIL17、及びxIL33 IgG4 hAbに加えて、他のIgG1アイソタイプhAbベクターを構築し試験した。
【0234】
シャペロン発現プラスミド構築
xIL13、xIL4、xIL17、及びxIL33 hAbの最高力価を得るための上記のベクターと組み合わせるシャペロン発現を決定するために、プラスミドを共発現に対して提供した。シャペロン活性を持つペプチジルプロイルシス−トランスイソメラーゼであるFkpAタンパク質を含む、ある数の既知のシャペロンを試験した。そのために、適合性プラスミド(pACYC、Novagen,Madison,WI)を、EP1356 052に記載されているように、FkpAのためのORFを含有するように構築した(例えば、実施例9〜10、特に段落[0207]を参照されたい)。
【0235】
現在のプロセスのためのこの作業を更に詳述すると、FkpA適合性ベクターのセットを、FkpA共発現のレベルを調節するように同様に産生した。FkpAレベルの調節を、前述のシグナルペプチドの最適化によって達成した(前掲のSimmons and Yansura,1996)。簡潔に述べると、FkpA ORFの5’末端は、FkpAシグナルペプチド(天然または変異形)、またはSTIIシグナルペプチドのいずれかを含有した。全てのFkpA変異形遺伝子構築物は、tacIIプロモータの制御下にあった。
【0236】
次に、これらのプラスミドを上記のhAb発現プラスミドと共同で株66F8に形質転換した。宿主株66F8の遺伝子型は、W3110 ΔfhuA ΔphoA ilvG2096(Val
r)Δprc spr43H1 ΔdegP ΔmanA lacI
Q ΔompT ΔmenEである。
【0237】
xIL13 hAbについて、半抗体のLC及びHCならびにFkpAをコードするTIR1,1ならびにTIR2,2プラスミドを構築し、66F8を形質転換するために使用した。これらのプラスミド構築物において、FkpAの発現は、LCのためのORFの上流にあるphoAプロモータによって制御された。pBR322プラスミドは、典型的には、細胞あたり約30コピーで維持され(Bolivar et al.,Gene,2:95−113,1977)、pACYCプラスミドは、典型的には、細胞あたり約15コピーで維持される(Chang and Cohen,J.Bacteriol.134:1141−1156,1978)。理論に束縛されることを意図するものではないが、FkpAがAb発現プラスミドへと移動するときのコピー数が増加すると、作製されるFkpAの量が増加し得ると考えられる。
【0238】
オキシドレダクターゼプラスミド構築
FkpAの共発現について記載した適合性プラスミド系と同様に、適合性プラスミドを利用して、既に記載したFkpA TIR変異形のうちの1つを組み込むhAb発現プラスミドと組み合わせた種々の既知のオキシドレダクターゼをスクリーニングした。この作業は、pxIL13.2.2.FkpAc13として特定されたTIR2,2プラスミドを用いて行った。加えて、適合性プラスミドを利用して、xIL4及び他のIgG1 hAbと組み合わせたFkpA及びオキシドレダクターゼをスクリーニングした。
【0239】
元々のオキシドレダクターゼ適合性プラスミドの構築は、EP 1356052号に記載されている通りのものであった(例えば、実施例9を参照されたい)。オキシドレダクターゼのスクリーニングは、hAb発現プラスミドxIL13.2.2.FkpAc13を用いた適合性プラスミドJJ247からの発現を含んだ。xIL13 hAbの例において、オキシドレダクターゼ発現は、1mMのIPTGを用いて誘導するか、またはオキシドレダクターゼレベルを調節するために誘導しないままにするかのいずれかであった。
【0240】
hAbのLC及びHCならびにシャペロンFkpA、DsbA、及びDsbCをコードする単一プラスミドも構築し、66F8を形質転換するために使用した。xIL13 hAbの例において、FkpAの発現を駆動するために使用したプロモータが異なる、2つのTIR2,2単一プラスミドを構築した。単一プラスミドMD157は、FkpA発現のためのphoAプロモータを含有し、プラスミドKA01は、tacIIプロモータを含有した。異なるプロモータを利用することで、FkpA発現の更なる調節が可能となった。xIL17 hAbの例において、TIR2,2単一プラスミドを構築したが(MD341)、これは、FkpA発現のためのphoAプロモータを利用するものであった。全ての単一プラスミド条件において、DsbA及びDsbCの発現は、多シストロン性の様式でtacIIプロモータの制御下にあった。xIL4 hAbの例では、以下に記載のような、またCB1として特定される、適合性シャペロンプラスミドAH8145のORFを組み込むTIR2,2単一プラスミドを構築した。
【0241】
上記の単一プラスミド系に加えて、トリプルシャペロン適合性プラスミド系も、IgG1アイソタイプ及びIgG4アイソタイプ両方のいくつかのhAbを用いて評価した。適合性プラスミド系において、既に記載したFkpA TIR変異形のうちの1つを多シストロン性DsbA及びDsbC適合性プラスミド(JJ247)にクローニングし、これをAH8145として特定する。
【0242】
発酵プロセス
大規模生成は、本質的にはEP1356052に記載されている通りのものであった(例えば、実施例4及び段落[0159]〜[160]を参照されたい)。10リットルの発酵の各々では、0.5mLの凍結保存培養(10〜15%のDMSOを含む)を解凍して使用し、0.5mlのテトラサイクリン溶液(5mg/ml)ならびに/または2mLのカナマイシン溶液(5mg/mL)及び2.5mlの1Mリン酸ナトリウム溶液を補充した500mlのSoy LB培地を含む2Lの振盪フラスコに播種した。この種培養物を振盪しながら30℃で約16時間成長させた後、これを使用して10リットルの発酵器に播種した。
【0243】
発酵器は、当初、1.1gのグルコース、100mlの1M硫酸マグネシウム、10mlの微量元素溶液(1リットルの最終体積中、100mlの塩酸、27gの塩化第二鉄、8gの硫酸亜鉛七水和物、7gの塩化コバルト六水和物、7gのモリブデン酸ナトリウム二水和物、8gの硫酸銅五水和物、2gのホウ酸、5gの硫酸マンガン一水和物)、20mlのテトラサイクリン溶液(エタノール中5mg/ml)または250mLのアンピリシン溶液(2mg/mL)のいずれか、1袋のHCD塩(37.5gの硫酸アンモニウム、19.5gの第二リン酸カリウム、9.75gの第一リン酸ナトリウム二水和物、7.5gのクエン酸ナトリウム二水和物、11.3gの第一リン酸カリウム)、200gのBL4 Soy(ダイズタンパク質加水分解物)、及び100グラムの酵母エキスを含む約7.0リットルの培地を含んだ。発酵を、まず20毎分標準リットル(slpm)の気流を用いて30℃で行い、7.0±0.2のpHに制御した(しかし、場合によっては、時折この範囲を超える偏位が生じた)。発酵器の背圧を1バールゲージに維持し、撹拌速度をまずは650rpmに設定した。以下の実施例2で詳細に考察するように、撹拌速度も変化させて、発酵器における酸素移動速度を操作し、その結果、細胞呼吸速度を制御することができる。加えて、以下の実施例3で詳細に考察するように、成長相及び生成相中の温度を調整して、産物収率を最大化することができる。
【0244】
発酵器に振盪フラスコからの細胞を含有する培地を播種した後、濃縮グルコース溶液を発酵器に供給するためにコンピュータに基づくアルゴリズムを使用して、培養物を発酵器中で高細胞密度に成長させた。水酸化アンモニウム(58%溶液)及び硫酸(24%溶液)も、pHを制御するために必要に応じて発酵器に供給した。場合によっては、発泡を制御するためにL−61消泡剤も添加した。
【0245】
培養物が約40OD
550の細胞密度に到達したとき、追加の100mlの1M硫酸マグネシウムを発酵器に添加した。加えて、濃縮塩フィード(1250mlの最終体積中、12.5gの硫酸アンモニウム、32.5gの第二リン酸カリウム、16.25gの第一リン酸ナトリウム二水和物、2.5gのクエン酸ナトリウム二水和物、18.75gの第一リン酸カリウム、10mlの2.7%塩化第二鉄、及び10mlの微量元素)を発酵器に添加し、培養物が約20OD
550に到達したときに2.5ml/分の速度で開始し、約1250mlが発酵器に添加されるまで継続した。発酵を典型的には70〜80時間継続した。
【0246】
電気泳動、免疫ブロット、及びHPLC分析のための試料調製
非還元性可溶性試料調製は、EP1356052に記載されているものと同様である(例えば、実施例4、特に段落[0162]を参照されたい)。具体的には、非還元性可溶性試料を次のように調製した。発酵過程で採取した1mLの凍結した全培養液試料を室温で解凍した。100μLの解凍した全培養液を500μLの抽出緩衝液に添加した。(抽出緩衝液:10mMのトリス、pH6.8、5mMのEDTA、新たに添加した0.2mg/mLの鶏卵リゾチーム、及び新たに調製したヨード酢酸、最終濃度5〜10mM)。抽出緩衝液を加えた全培養液試料を、氷上で5〜10分間インキュベートした後、2×10のパルスで超音波処理し、続いて4℃及び14,000rpmで15〜20分間遠心分離した。上清を可溶性画分として除去した。SDS−PAGE及び免疫ブロットによる分析では、可溶性画分を、還元剤なしで、2倍のNovex Tricine試料緩衝液中に1:10で希釈した。10μLのこの調製物を、10ウェルのNovex 10% Bis−Tris NuPageゲルに充填し、MES緩衝液を用いて150Vで電気泳動させた。その後、このゲルを使用して、免疫ブロットまたはクマシーブルーによる染色を行った。
【0247】
可溶性画分の試料に対してLC−カッパ/RPアッセイによる分析を行った。このアッセイは、第1のカラムが、IgG構成要素を含有するカッパ軽鎖を捕捉する親和性カラムであり、第2のカラムが、逆相カラムである、2次元HPLCアッセイである。一体型HPLCワークステーションをデュアルカラムモードに設定した。溶媒貯蔵部は、溶媒1A、親和性添加緩衝液、溶媒1B、親和性溶出緩衝液、0.2%のTFA水、溶媒2A、逆相水性緩衝液、0.1%のTFA水、溶媒2B、逆相有機溶出緩衝液、0.1%のTFAの80%のアセトニトリルであった。第1のカラムは、POROS(登録商標)CaptureSelect(商標)LCカッパ親和性カラム(2.1×30mm)であり、これは、Life Technologies(Carlsbad,CA)から購入した。親和性カラムが関与する全ての手順は周囲温度で行った。
【0248】
第2のカラムは、POROS(登録商標)R2 20μm逆相カラム(2.1×30mm)であり、これは、Life Technologies(Carlsbad,CA)から購入した。逆相カラム温度を80℃に維持した。
【0249】
親和性カラムを添加緩衝液中で平衡化し、試料を2ml/分の流量で充填した。素通り画分は廃棄を対象とするものであった。試料を充填した後、親和性カラムを添加緩衝液(3ml)で洗浄して、非特異的に結合した構成要素を還元した。次に、バルブの切り替えによって、親和性カラムを逆相カラムに接続し、2ml/分の流量で溶出緩衝液(5ml)を用いて溶出し、親和性捕捉構成要素を逆相カラムに移動させた。この移動ステップの間、一体型UV検出器を親和性カラムの後、かつ逆相カラムの前に位置付け、それによって、逆相カラムへの充填物となる親和性カラムの溶出を監視した。逆相カラムからの溶出及び接続解除の後、親和性カラムを水(2ml)で洗浄し、続いて添加緩衝液(4ml)を用いて再度平衡化した。
【0250】
充填した逆相カラムを0.1%の水性TFA(1.1ml)で洗浄した。流量を2ml/分に設定し、急勾配(0.25分)を35%の溶媒2B(0.1%のTFA/80%のアセトニトリル)に、続いて浅い勾配を3分かけて50%の溶媒2Bに行った。溶出は、0.5分で100%の溶媒2Bへの勾配によって完了し、1.5分間保持した。次に、逆相カラムを0.05分で最初の状態に戻し、2分間保持して、再度平衡化した。カラム溶出を280及び214nmで監視した。逆相カラムからの分離に基づいて統合ピーク面積を標準的な既知濃度のものと比較することで、定量化を行った。
【0251】
発酵プロセス中に生成されたLC及びHCの可溶量及び全量も定量化した。全RP−HPLC定量化を行うために、発酵培養液試料を、100mMのDL−ジチオスレイトール(Sigmaカタログ番号43816)の6MのグアニジンHCL、360mMのTRIS、2mMのEDTA、pH8.6)により200mMで10倍に希釈した。試料をボルテックスし、60℃で20分間インキュベートし、13,000rpmで15分間、4℃で遠心分離した。可溶性画分を、0.22umのフィルタを使用して濾過した後、HPLCに注入した。使用したHPLCシステムは、Agilent Technologies 1290 Infinityシステムであった。試料を、Zorbax 300SB−C3 Rapid Resolution(4.6×150mm、3.5ミクロン)分析カラム(カタログ番号863973−909)に注入した。移動相Aは、0.1%のトリフルオロ酢酸(Thermoカタログ番号28901)のSQH2Oからなり、移動相Bは、0.08%のトリフルオロ酢酸のHPLCグレードのアセトニトリル(Honeywellカタログ番号AH015−4)からなった。
【0252】
全可溶性RP−HPLC定量化を行うために、発酵培養液試料に、Pro−Scientific DPS−20を用いて10秒間の均質化(10,000rpm)及び超音波処理(88%の振幅)の両方を4回行った。次に、試料を、4℃及び14,000rpmで15〜20分間遠心分離した。上清を可溶性画分として除去し、上記のようにRP−HPLCで変性させ処理した。
【0253】
二重特異性抗IL13/IL17抗体の組み立て
親和性精製した抗IL13及び抗IL17半抗体を1:1の質量比で組み合わせた後、pH8.5に滴定した。組み立てプロセスから予測した二重特異性抗体の理論最大量に対して還元した100倍の過剰モル比のL−グルタチオン(GSH)を混合物に添加し、温度を室温から35℃に調整した。2つの半抗体を酸化還元反応においてインビトロで組み立てて、抗IL13/抗IL17二重特異性抗体を形成した。酸化還元反応を35℃で12〜24時間継続した。組み立て反応を、pHを6.5に調整することによってクエンチし、プールを水で希釈した後、二重特異性抗体に対して、イオン交換クロマトグラフィーまたは疎水性カラムクロマトグラフィー単独による精製、またはそれらの組み合わせによる精製のいずれかを行った。
【0254】
結果
hAb力価に与えるFkpA発現の影響
図1Aに示すように、xIL13 hAb TIR1,1ベクターから軽鎖及び重鎖サブユニットを生成すると、総量2.9g/L及び1.2g/Lの軽鎖及び重鎖がそれぞれ生成された。TIR2,2については、生成された軽鎖及び重鎖の総量は、それぞれ、6.4g/L及び4.1g/Lであった。
【0255】
しかしながら、総サブユニット生成量は、顕著な可溶性サブユニット蓄積をもたらすものではなかった。xIL13 TIR1,1 hAbプラスミドを使用した際の、生成された軽鎖及び重鎖の総可溶量は、それぞれ、0.2g/L、及び0.1g/L未満であった(
図1B)。TIR2,2 hAbについては、生成された軽鎖及び重鎖の総可溶量は、それぞれ、0.3g/L及び0.3g/Lであった(
図1C)。TIR1,1発酵のために生成した組み立てたxIL13 hAbの力価はわずか0.1g/Lであり、TIR2,2発酵については、力価は0.2g/L未満であった(
図2)。これらの結果は、hAb産物の折り畳み及び/または組み立ては顕著に非効率的であることを示唆する。したがって、シャペロンの共発現を持つTIR1,1及びTIR2,2プラスミドを使用することが力価に与える影響を評価する更なる作業を行った。
【0256】
シャペロンタンパク質のいくつかのクラスは、タンパク質の折り畳み及び組み立てを促進することが知られている(
図3A〜B)。目的の特定のシャペロンは、ペプチジル−プロリルシス−トランスイソメラーゼ及びシャペロンとして機能することが知られているFkpA、ならびにオキシドレダクターゼとして機能することが知られているDsbA及びDsbCを含む。FkpA、DsbA、及びDsbCの発現がhAb生成に影響したかどうかを試験するために実験を開始した。
【0257】
具体的には、hAbのHC及びLCのORFをコードする別個のプラスミド(適合性プラスミド系)または同じプラスミド(単一プラスミド系)を使用してFkpAを発現させることの影響を検査した(
図4A〜B)。単一発現プラスミドの使用により、プラスミド保持を確実にするために複数の抗生物質または選択圧の他の手段を使用する必要性が排除される。xIL13 hAbに使用した単一プラスミド系において、FkpA発現を駆動するプロモータを、IPTG誘導性tacIIプロモータからphoAプロモータに変更した。このため、培養におけるリン酸塩枯渇により、HC、LC、及びFkpAの発現がもたらされる。
【0258】
FkpAシャペロン共発現のレベルの増加は、可溶性モノマー重鎖蓄積の量の増加、加えてIgG1アイソタイプhAb(xVEGF)に対する組み立てられたhAbの増加と相関した(
図5A)。この実験では、既に記載したFkpA発現変異形のセットを、1mMのIPTGの誘導によってスクリーニングした。FkpA共発現なしの場合、xVEGF hAbの力価は0.2g/Lであり、FkpA共発現(FkpA(wt))が最高レベルである条件においては、hAb力価は約0.4g/Lであった(
図5B)。
【0259】
xIL13 hAbの生成について、適合性プラスミド系(
図4Aに示すように、一方のプラスミドからのxIL13のHC及びLCの発現、ならびに別のプラスミドからのFkpAの発現)を、TIR1,1またはTIR2,2抗体発現ベクターを使用して試験した。FkpAの共発現を駆動するために1mMのIPTGを用いて誘導した適合性プラスミド系については、TIR1,1プラスミドに対する力価は0.2g/Lであり、TIR2,2プラスミドに対する力価は0.4g/Lであった(
図6A、列3及び4)。このため、FkpAが内因レベルであるTIR1,1及びTIR2,2条件と比較して、力価が約2倍増加した(
図6A、列1及び2)。
図6Bは、ミリ吸光単位(mAu)での超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)及びウェスタンブロットによって測定した、内因性発現と比較した場合の適合性の系において誘導されたFkpA発現の量を示す。
【0260】
図4Bに示すFkpA発現及びhAb生成のための単一プラスミド系も試験した。xIL13 hAbについては、単一プラスミドTIR1,1及びTIR2,2に対する力価は、それぞれ、0.4g/L及び0.7g/Lであった(
図6A)。これは、適合性プラスミド系と比べて約2倍の力価の増加に相当する。単一プラスミド系におけるFkpAの発現レベルも、誘導性の適合性プラスミド系よりも約2倍高かった(
図6B)。FkpA発現のレベルの増加は、両方のTIR条件における可溶性モノマー重鎖蓄積の量の増加と相関した。
【0261】
第3のhAb(xIL4 IgG4)を、適合性プラスミド系からの誘導性FkpA共発現を用いてTIR1,1条件とTIR2,2条件との両方によって試験した。この実験では、FkpA(wt)共発現は、両方のTIR条件において可溶性モノマー重鎖の量を増加させた(
図7A)が、生成されたhAbの力価を増加させなかった(
図7B)。
【0262】
第4のhAb(xVEGFC IgG1)を、適合性プラスミド系から誘導したFkpA共発現を用いて試験した。この実験では、FkpA(wt)共発現は、可溶性モノマー重鎖の量を増加させ、力価を0.5g/Lから0.8g/Lに増加させた(
図8A)。クマシー染色によって測定したFkpA発現の増加(
図8B)は、可溶性モノマーHC鎖蓄積の増加と相関した(
図8C)。要約すると、これらの結果は、FkpA発現が可溶性モノマー重鎖の蓄積を向上させるが、組み立てられたhAbの力価に与える影響は不定であることを示唆する。このことは、更なる最適化が望ましいことを示す。
【0263】
DsbA及びDsbC発現がhAb力価に与える影響
xIL13 hAb生成を、オキシドレダクターゼDsbA及びDsbCの発現のために上記のpxIL13.2.2.FkpAc13(単一プラスミド)を適合性プラスミドと組み合わせることによって更に最適化した(
図9)。pxIL13.2.2.FkpAc13を伴うDsbAとDsbCとの両方を発現しているプラスミド(JJ247)は、hAb力価を増加させた。
図10は、DsbA及びDsbCのIPTG誘導の存在下及び不在下での、経時的に生成されたxIL13 hAbの力価を示す。JJ247を伴うpxIL13.2.2.FkpAc13についての最高力価は、発酵開始から52時間で達成された。この時点では、IPTGのない条件(非誘導条件)で、xIL13力価は1.2±0.2g/Lであり、IPTGのある条件(誘導条件)では、xIL13力価は1.0±0.2g/Lであった(
図10)。試験した両条件では、52時間〜72時間における力価の低下が顕著であったが、これは実施例2に記載する発酵プロセス中の酸素取り込み速度(OUR)の低下及び浸透圧の上昇に起因するものであった。
【0264】
DsbA、DsbC、及びFkpA(AH8145)を発現している適合性の系も、xIL4 TIR1,1及びTIR2,2 Ab発現プラスミドを用いて評価した(
図11A)。3つ全てのシャペロンの非誘導性共発現により、TIR1,1及びTIR2,2力価がそれぞれ、0.8g/L及び1.2g/Lとなった(
図12、列5及び6)。これは、TIR2,2条件では、力価が、前述のFkpA適合性TIR2,2条件と比較して、約6倍増加したことを表した(
図12、列3及び4)。
【0265】
適合性の非誘導性AH8145プラスミド系を、別のhAbを用いて更に評価した。TIR2,2系ベクターを使用してxVEGFC IgG1 hAbを生成することで、非誘導性の適合性AH8145条件により、FkpA共発現のみの場合と比較して、力価が0.8g/Lから1.0g/Lに増加した(
図13)。TIR1,1条件とTIR2,2条件との両方による第5のhAb(xVEGFA IgG1)を、AH8145適合性プラスミドを用いて試験した。シャペロン共発現なしの場合、TIR1,1条件とTIR2,2条件との両方での力価は約0.9g/Lで類似していた(
図14、列1及び3)。非誘導性AH8145条件の適合性プラスミドの場合、TIR1,1及びTIR2,2プラスミドの力価は、それぞれ、1.2g/L及び1.7g/Lであった(
図14、列2及び4)。
【0266】
AH8145のシャペロンORFを組み込むxIL4 TIR2,2単一プラスミドの創出物を産生し(CB1)、これを
図11Bに図示する。IPTGを添加しないCB1プラスミドは、適合性プラスミド系で観察された力価よりもわずかに高い力価を生成した(
図15)。この比較において報告されたhAb力価は、実施例2に記載のように最適化撹拌方針を利用した発酵から産生されたことに留意されたい。ウェスタンブロットによると、3つ全てのシャペロンのレベルはCB1の場合にわずかに高かった(
図15)。理論に束縛されることを意図するものではないが、単一プラスミド系により、プラスミドコピー数がより高くなり、このため収率がより高くなり得る。
【0267】
xIL13単一プラスミド系MD157を、非誘導性の適合性pxIL13.2.2.FkpAc13及びJJ247適合性プラスミド系と比較した(
図16)。MD157単一プラスミド条件は、適合性の系における1.9±0.04g/Lと比較して、2.1±0.3g/Lの力価を生成した(
図17)。この比較において報告された力価は、実施例2に記載のように最適化撹拌戦略を利用した発酵から産生されたことに留意されたい。
【0268】
総合すると、これらの結果は、DsbA及びDsbCとFkpAとの共発現により、これらの硬化を確認するための複数のhAb構築物を使用した、組み立てられたhAbの生成が増加することを示す。
【0269】
実施例2:酸素取り込みが半抗体生成に与える影響
上記の結果は、hAb HC及びLCと、FkpA、DsbA、及びDsbCとの共発現によって達成されるhAb生成の改善を示す。しかしながら、このように生成が向上しても、力価は、プラトーであるか、または更には生成から52時間後の時点では減少したことが分かった。したがって、hAb生成を更に最適化するための追加の実験を開始した。
【0270】
既に記載したように、発酵を、まず20毎分標準リットル(slpm)の気流を用いて30℃で行い、7.0±0.2のpHに制御した。発酵器の背圧を1バールゲージに維持し、撹拌速度をまずは650rpmに設定した。背圧の追加のバールゲージにより、200%の初期の溶解酸素濃度(dO
2)がもたらされた。dO
2シグナルが典型的には産物培養から約2時間で開始レベルの2%未満に低下した後、濃縮グルコース溶液を供給し、グルコースが非限定的栄養素であるように、発酵過程にわたって継続して供給した。
【0271】
12時間の時点で、培養物中の細胞密度は、dO
2濃度をゼロパーセントに、またはゼロパーセント付近に維持するのに十分なものとなった。理論に束縛されることを意図するものではないが、酸素濃度が制限される場合、酸素移動速度(OTR)は、細胞の酸素取り込み速度(OUR)または代謝率と等しいと考えられる。OTRの操作は、撹拌速度を調整することによって促進され、培養物のOURに直接的な影響を与えた。質量分析計を使用することで、発酵からのオフガスの組成物を監視し、発酵における酸素取り込み及び二酸化炭素発生速度の算出が可能となった。
【0272】
図18に示すように、上記のJJ247プラスミド系を持つpxIL13.2.2.FkpAc13において、誘導性及び非誘導性TIR2,2培養物は12時間の時点で4.25mmol/L/分のピークOURを有し、この後、dO
2は限定されるようになった。これらの培養物を650rpmの一定速度での撹拌下で成長させた。
図19は、これらの培養の経時的な浸透圧を示す。総合すると、
図18〜19は、50時間後に、細胞培養物のOURが急激に低下し、浸透圧が上昇したことを示す。
【0273】
図20は、これらの培養物において経時的に生成されたxIL13 hAb力価を示す。52時間で1.2g/L±0.2g/Lであった力価が、72時間で0.7±0.04g/Lまで低下したことが観察された。同様に、誘導性の条件において、52時間で1.0±0.2g/Lであった力価が、72時間で0.5±0.05g/Lまで低下したことが観察された。興味深いことに、生成におけるこの低下は、これらの培養物中でのOUR低下及び浸透圧上昇と同時に生じた。
【0274】
力価の低下を軽減し、浸透圧の上昇を排除するために、26時間での撹拌移行を非誘導性TIR2,2条件で評価した。撹拌速度を、650rpmから標的のOUR設定値を達成するレベルに移行させた。約1.5、1.75、2.0、及び2.5mmol/L/分の4つの異なるOUR標的設定値を試験した。OUR設定値が約1.5〜2.0mmol/L/分である撹拌移行が、OURの低下(
図21)及び浸透圧の上昇(
図22)を排除した。
【0275】
重要なことに、撹拌移行条件の全てにおいて、力価は、54時間の時点で非移行条件におけるものよりも高かった(
図23)。約2.5mmol/L/分の条件において、OURは約60時間で低下し(
図21)、浸透圧は72時間で1200mOsmのピークに上昇した(
図22)。72時間で、約2.5mmol/L/分の条件の力価(0.7g/L)は、非以降条件(0.6±0.1g/L)と類似したレベルまで低下した。約2.0mmol/L/分の条件での平均力価は、試験した4つの条件の中で最高(2.4±0.6g/L)であったが、力価がわずかに変動し、OURプロファイルがわずかに低下したとみなされた。約1.5mmol/L/分の条件では、両方とも、2.1±0.3g/Lの平均力価を再現したが、ここでも、発酵後期においてOURプロファイルがわずかに変動したとみなされた。約1.75mmol/L/分の条件では、両方とも、再現可能な力価(1.8±0.2g/L)及び一貫したOUR傾向を有したため、これを好ましい設定値として選択した。
【0276】
これらの結果は、培養物の撹拌速度を移行させることで、観察されたOURの低下及び浸透圧の上昇が軽減されることを示す。また、重要なことは、これらの撹拌移行により、hAb生成力価が、特に後期の生成時点で向上することがである。
【0277】
実施例3:温度が半抗体生成に与える影響
これまでの実施例はhAb生成の顕著な増大を示すが、生成プロセスを更により最適化するための追加の試験を開始した。このため、xIL13 hAb生成では、実施例1で説明した高性能の単一プラスミド系及び実施例2で説明した約1.75mmol/L/分のOUR設定値を開始点として使用した。このプロセスを、以下に記載のように、顕著に優れた生成収率を得るために更により最適化した。
【0278】
本開示の好ましい実施形態の発酵プロセスは、成長相及び生成相という2つの異なる区分に分けられても良い。成長相では、大部分の栄養素が過剰であり、培養密度は急速に増加する。生成相では、リン酸塩が制限されるようになり、成長が停止し、目的の産物の発現が開始する。温度がhAb生成に与える影響を、これらの相の各々について試験した。
【0279】
温度実験と組み合わせて、第2の宿主を評価した。これらの実験では、MD157プラスミドを67A6生成宿主に形質転換した。67A6株の遺伝子型は、W3110 ΔfhuA ΔphoA ilvG+ Δprc spr43H1 ΔdegP ΔmanA lacIQ ΔompT ΔmenE742 degPS210Aである。
【0280】
67A6株は、degP遺伝子のプロテアーゼ欠損対立遺伝子(htrA及びptdとしても知られる)のノックインを含有し、これは、DegPをコードする。DegP(プロテアーゼDoとしても知られる)は、高温での生存に必要なペリプラズムセリンプロテアーゼである。加えて、DegPは、分子シャペロンとしても作用する。アラニンのセリンへの置換は、DegPのタンパク質分解活性を排除するが、そのシャペロン機能には影響しない(Spiess et al.,Cell,97:339−347,1999)。
【0281】
温度最適化を、xIL13 TIR2,2 単一プラスミド系について成長相(Tg)と生成相(Tp)との両方に行った。
図24は、30℃または28℃の一定Tg/Tpで成長させた培養物の成長を示す。28℃の一定Tg/Tpにより、30℃の一定Tg/Tpと比較して、成長率が停滞した。
図25は、これらの温度で成長させた培養物のOURを示す。成長率と同様に、OURは、30℃と比較して、培養物を28℃の一定Tg/Tpで成長させる場合に停滞する。
【0282】
図26に示すように、リン酸塩は、30℃の一定Tg/Tpを使用する場合に22±2時間で枯渇した。Tg/Tpを28℃に移行させると、培養物の成長速度は上記のように抑制され、リン酸塩の枯渇は26±2時間に移行した。
【0283】
図27は、これらの培養物のxIL13 hAb生成を示す。各条件では、産物発現は、リン酸塩枯渇が生じた時点で開始した。一定の28℃のTg/Tp条件により、一定の30℃のTg/Tp条件での1.3±0.2g/Lと比較して、2.5±0.2g/Lの最終力価が達成された。
【0284】
生成相における時間量を増加させるために、温度移行方針を試験した。この実験では、成長相の温度を30℃に設定し、20時間の時点で温度を28℃に移行させた。0〜20時間の間の成長(
図28)、リン酸塩(
図29)、及びOUR(
図30)プロファイルは、Tg30/Tp28℃移行及び一定のTg/Tp30℃条件に対して同様であった。
【0285】
図31では、Tg30/Tp28℃条件下で生成された3.1g/Lの最終力価と一定のTg/Tp28℃条件下で生成された2.5g/Lの最終力価とを比較すると、産物誘導時に温度を28℃に移行させることにより、力価が更に0.6g/L増加したことが示される。これらの結果は、より高温で培養物を成長させ、生成時に培養温度を低下させることにより、産物形成が顕著に増加し得ることを示す。
【0286】
一部実施要因実験計画(DoE)を行って、67A6宿主株を利用するxIL13 hAbのための最適な動作条件を決定した。DoEは、3つの動作パラメータ及びFkpAのレベルに焦点を当てた。
【0287】
表3−1に示すように、動作パラメータは、Tg及びTp、ならびにpHを含んだ。パターンは、特定のパラメータに対する動作範囲を指し、(−)は低値パラメータを指し、(+)は、高値パラメータを指し、0001及び0002は中心点パラメータを指す。Tgは30〜34℃の範囲であり、Tpは25〜28℃の範囲であり、pHは6.7〜7.0の範囲であった。生成されるFkpAの量を、使用したプロモータによって調節した。高レベルのFkpAがMD157上のphoAプロモータから産生され、低レベルのFkpAはKA01上の非誘導性tacプロモータから産生された。10の実験を実行することで、一部実施要因分析を行った。
【0288】
図32に示すように、これらの因子は、生成されたxIL13 hAbの力価に顕著な影響を与えた。表3−1に記載するDoE実験に使用した条件によって生成されたhAbの力価は、約1.5〜約4.5g/Lの範囲であった。
【0289】
xIL4単一プラスミド(CB1)を、xIL13のDoEから特定した最適な発酵条件(Tg34℃、Tp28℃、pH7.0)で試験した。しかしながら、CB1条件においては、IPTG誘導のないtacIIプロモータを使用してFkpA発現を駆動した。xIL14 hAb力価を、Tg/Tpを30℃で一定にして保持し、pHを7.0に維持した発酵条件と比較した。xIL4 hAb力価は、IPTGを添加しないこの新たなプロセス条件で、1.3g/Lから3.1g/Lに増加した(
図33)。
【0290】
一部実施要因DoEを行って、xIL17 hAbのための最適な動作条件を決定した。MD341単一プラスミドを、xIL13 hAb単一プラスミド(MD157)のLC及びHCのORFをxIL17のLC及びHCのORFで置き換えることによって構築した。抗体断片及びシャペロンの発現に使用したプロモータは、xIL13(MD157)プラスミドと同一であった。DoEは、3つの動作パラメータに焦点を当てた。
【0291】
表3−2に示すように、動作パラメータは、Tg及びTp、ならびにpHを含んだ。Tgは30〜34℃の範囲であり、Tpは25〜30℃の範囲であり、pHは6.7〜7.3の範囲であった。
図34は、最も顕著な力価蓄積が、Tpが25℃である条件において達成されたことを示す。
【0292】
図35は、まずシャペロンタンパク質の共発現を最適化し、次に処理ステップ(例えば、撹拌速度、Tg、及びTp)を最適化することがxIL13 hAb力価の生成に与える影響を示す。例示的な実施形態において、分子の最適化(例えば、シャペロンタンパク質発現及びベクターの特徴)は、力価を約16倍増加させた。この生成レベルは、プロセス(例えば、撹拌速度、Tg、及びTp)の進行を介して、更に約3.5倍向上した。総合すると、これらの結果は、生成及び頑健性における顕著な増大が、シャペロン発現、ベクター系、撹拌速度、pH、及び成長/生成温度を含む不定要素を最適化することによって達成され得ることを示す。最終的に、Tgが34℃であり、Tpが25℃であり、pHが6.7であり、かつFkpAのレベルがphoAプロモータによって生成された条件では、xIL13 hAb力価が最も高くなったと判定された。
【0293】
実施例4:宿主株が半抗体生成に与える影響
これまでの実施例はhAb生成の顕著な増大を示すが、宿主株66F8と67A6との間のhAb生成における潜在的な差異を特性評価するための追加の試験を開始した。このため、hAb生成では、実施例1で説明した高性能の単一プラスミド系、実施例2で説明したOUR移行、及び実施例3で記載した温度移行を、66F8及び67A6の2つの大腸菌宿主株において評価した。66F8株の遺伝子型は、W3110 ΔfhuA ΔphoA ilvG+ Δprc spr43H1 ΔdegP ΔmanA lacIQ ΔompT ΔmenE742である。67A6株の遺伝子型は、W3110 ΔfhuA ΔphoA ilvG+ Δprc spr43H1 ΔdegP ΔmanA lacIQ ΔompT ΔmenE742 degPS210Aである。
【0294】
xIL13 hAbを、66F8宿主株及び67A6宿主株の両方において発現させた。発酵は、上記の温度及び撹拌速度の移行を用いる条件下で行った。67A6株の使用により、66F8株(
図36B)と比較して、可溶性xIL13 hAb力価が増加し(
図36A)、かつLC及びHCの両方の総サブユニット蓄積が増加した。
【0295】
xIL4 hAbも、66F8宿主株及び67A6宿主株の両方において発現させた。xIL4 hAb発酵を30℃の一定温度で行うと、約1.5g/Lの類似した力価が両方の株から得られた(
図37A)。しかしながら、Tgを34℃から25℃のTpに低下させた発酵条件下では、67A6株は平均3.0g/Lを生成し、66F8株は平均2.0g/Lを生成した(
図37B)。加えて、67A6の発酵におけるLC及びHCの両方の総サブユニット蓄積は、温度移行を用いる条件下での66F8の発酵よりも大きかった(
図38A及び
図38B)。
【0296】
したがって、xIL13 hAb及びxIL4 hAbの両方は、67A6宿主株によって提供される力価利益、及び成長温度と比較して減少した生成温度の2つの例である。理論に束縛されることを意図するものではないが、組み換えタンパク質の蓄積は、DegPを欠く宿主細胞においてはプラトーであると考えられ、突然変異DegPS210Aを持つ宿主株においては、組み換えタンパク質は、発酵が終了するまで蓄積すると考えられた。
【0297】
実施例5:最適化した発現ベクター及び最適化した培養条件を使用するxIL33の生成
xIL33 hAb(MD501プラスミド)を、xIL13 hAb単一プラスミド(MD157)のLC及びHCのためのORFをxIL33のLC及びHCのORFで置き換えることによって構築した。抗体断片及びシャペロンの発現に使用したプロモータは、xIL13(MD157)プラスミドと同一であった(
図39)。単一発酵を、xIL33のLC及びHC(MD481)のORFのみを含有するxIL33 hAb発現ベクターを用いて行った。MD481プラスミドは、分子シャペロンDsbA、DsbC、またはFkpAのORFを含有しなかった。発酵を、30℃の一定温度、7.0のpH、及び650rpmの撹拌速度で行った(
図40の規範事例)。次に、単一発酵を、xIL33のLC及びHCのORF、ならびに分子シャペロンDsbA、DsbC、またはFkpAのORFを含有するxIL33 hAb発現ベクター(MD501)を用いて行った。MD481の発酵に対する条件と同じ動作条件をMD501の発酵に使用した。単一プラスミド(MD501)の使用により、規範事例と比較してxIL−33 hAb力価が約10倍増加した。
【0298】
一部実施要因DoEを行って、xIL33 hAb MD501単一プラスミドの最適な培養条件を決定した。DoEは、67A6宿主における2つの中心点複製を含む10の実験を伴う一部実施要因における4つのパラメータに焦点を当てた(表5−1)。撹拌速度及び温度移行は、150のOD
550で行った。
【0299】
表5−1に示すように、Tgは30〜34℃の範囲であり、Tpは25〜30℃の範囲であり、pHは6.7〜7.3の範囲であり、OUR設定値は1.9〜2.8mmolO
2/L/分の範囲であった。
図41は、中心点条件が力価に対する最も顕著な利益を提供し、達成された最高力価は4.0±0.05g/Lであり、これにより、最終的に規範事例(
図40の規範事例)の動作条件と比較して、hAb力価が更に増加することを示す。最良の培養条件は、7.0のpH、32℃のTg、27.5℃のTp(2時間の傾斜)、及び約2.3mmol/L分の標的OUR(2時間の撹拌速度傾斜)を含んだ。
【0300】
実施例6:FkpA最適化
FkpAの発現レベルを最適化するために、2つの追加のFkpA TIR変異形を、xIL13、xIL17、及びxIL33 hAbのための単一プラスミド(MD157、MD341、及びMD501プラスミド)において試験した。FkpA TIR変異形を、内因性FkpAシグナル配列との比較において説明したように特性評価した(
図42)。MD157、MD341、及びMD501プラスミドは、3つのTIR強度と相関したFkpAc13のORFを組み込んだ(
図43)。MD157、MD341、及びMD501において、単一プラスミドFkpAc13 ORFをFkpA TIR1またはTIR2 ORFで置き換え、各hAbについて、既に特定した最適化した発酵条件において試験した。
【0301】
FkpA発現のレベルの増加は、xIL13 hAb蓄積の増加と相関した(
図44)。FkpA TIR1及びTIR2条件により、それぞれ、0.5及び2.5g/Lの最終FkpA量、ならびに1.5及び2.5g/LのxIL13 hAb力価をもたらした。TIR3条件により、4g/LのFkpA及び3.8g/LのhAbが生成された。FkpA発現のレベルも、生成相OURプロファイルに影響した。全体として、FkpAの滴定により、生成されたhAbの量を約3倍増加させた。
【0302】
xIL33 hAb発酵において、最も低い力価蓄積プロファイルは、実行終了時の力価が2.4g/LであるFkpA TIR1条件と相関した(
図45)。xIL33 TIR2及びTIR3条件により、TIR1条件と比較して、xIL33 hAb力価の約2倍の増加した(
図45)。データは、FkpAのレベルの増加がhAb生成に有益であることを示唆する。
【0303】
xIL17 hAb発酵において、最も低い力価蓄積プロファイルは、実行終了時の力価が2.0g/LであるFkpA TIR1条件と相関した(
図46)。
【0304】
xIL13 hAbについて既に記載した最良の条件を使用して、2つの追加のFkpA TIR変異形を試験した(TIR2.3及びTIR6)。TIR2.3力価プロファイルは、既に試験したTIR2条件よりも高いことを示したが、依然として対照TIR3条件より低かった(
図47A)。TIR6条件は、TIR2.3条件と同様の力価蓄積プロファイルをもたらしたが、ここでもTIR3対照より低かった。ウェスタンブロット分析によって決定したFkpA蓄積は、TIR変異形にわたるFkpAの滴定を示した(
図47B)。データは、hAb生成と相関して最適な量のFkpAが発現することを示唆する。これは、xIL13 hAb(MD157単一プラスミド)の場合、TIR3となる。
【0305】
実施例7:酸素移動速度(OTR)条件の影響
実施例3で特定したxIL13 hAbの最良の条件を第2のOTR方針を用いてまた試験した。実験(N=3)において、容器背圧(BP)及び散布速度を、それぞれ、1.0から0.3バールに、また20から13SLPMに減少させた。背圧及び散布速度の減少に起因するOTRの損失を回復するために、成長相及び生成相の撹拌速度を、650から880rpmに、また475から650rpmに増加させた。容器背圧、散布速度、及び撹拌速度の異なる組み合わせを使用して、前述の実施例で述べたものと同様のOTR条件を達成することができる。
【0306】
発酵を、発酵プロセス全体で一定のBPを用いて行った。改変したOTR条件では、背圧を0.3バール(N=3)に維持し、対照条件では、背圧を1.0バール(N=5)に維持した。発酵を、発酵プロセス全体で一定の気流を用いて行った。改変したOTR条件では、気流を13SLPM(N=3)に維持し、対照条件では、気流を20SLPM(N=5)に維持した。発酵では、改変したOTRと対照条件との両方において、150OD
550での撹拌移行が実施された。改変したOTR条件では、初期撹拌速度を880rpmに設定して650rpmに移行させ、対照条件では、初期撹拌速度を650rpmに設定して475rpmに移行させた。
【0307】
撹拌速度の増加は、散布及び背圧の低下に起因するOTRの低下を補償した。OTR条件の改変により、対照条件と同様のピーク及び生成相OUR(
図48A)ならびに成長プロファイル(
図48B)がもたらされた。OTR条件の改変により、対照条件と同様の蓄積プロファイル及びピーク力価(4.1±0.4g/L)がもたらされた(
図49)。
配列
全てのポリペプチド配列は、別途記載のない限り、N末端からC末端へと表される。
全てのポリヌクレオチド配列は、別途記載のない限り、5’から3’へと表される。
ヒトIL13前駆体ポリペプチド
成熟ヒトIL13ポリペプチド
ヒトIL17A前駆体ポリペプチド
成熟ヒトIL17Aポリペプチド
ヒトIL17F前駆体ポリペプチド
成熟ヒトIL17Fポリペプチド
抗IL13重鎖可変ドメイン
抗IL13軽鎖可変ドメイン
抗IL13 HVR−H1
AYSVN (配列番号9)
抗IL13 HVR−H2
MIWGDGKIVYNSALKS (配列番号10)
抗IL13 HVR−H3
DGYYPYAMDN (配列番号11)
抗IL13 HVR−L1
RASKSVDSYGNSFMH (配列番号12)
抗IL13 HVR−L2
LASNLES (配列番号13)
抗IL13 HVR−L3
QQNNEDPRT (配列番号14)
ノブ形成T366W突然変異を持つ抗IL13 IgG4重鎖
ノブ形成T366W突然変異を持つ抗IL13 IgG4重鎖
抗IL13軽鎖
抗IL17A F交差反応性Ab重鎖可変ドメイン
抗IL17A F交差反応性Ab軽鎖可変ドメイン
抗IL17A F交差反応性Ab HVR−H1
DYAMH (配列番号20)
抗IL17A F交差反応性Ab HVR−H2
GINWSSGGIGYADSVKG (配列番号21)
抗IL17A F交差反応性Ab HVR−H3
DIGGFGEFYWNFGL (配列番号22)
抗IL17A F交差反応性Ab HVR−L1
RASQSVRSYLA (配列番号23)
抗IL17A F交差反応性Ab HVR−L2
DASNRAT (配列番号24)
抗IL17A F交差反応性Ab HVR−L3
QQRSNWPPAT (配列番号25)
ホール形成T366S/L368A/Y407V突然変異を持つ抗IL17A F交差反応性Ab IgG4重鎖
ホール形成T366S/L368A/Y407V突然変異を持つ抗IL17A F交差反応性Ab IgG4重鎖
抗IL17A F交差反応性Ab軽鎖
抗IL13重鎖可変ドメイン ポリヌクレオチド配列
抗IL13軽鎖可変ドメイン ポリヌクレオチド配列
ノブ形成T366W突然変異を持つ抗IL13 IgG4重鎖ポリヌクレオチド配列
ノブ形成T366W突然変異を持つ抗IL13 IgG4重鎖ポリヌクレオチド配列
抗IL13軽鎖ポリヌクレオチド
抗IL17A F交差反応性Ab重鎖可変ドメインポリヌクレオチド
抗IL17A F交差反応性Ab軽鎖可変ドメインポリヌクレオチド
ホール形成T366S/L368A/Y407V突然変異を持つ抗IL17A F交差反応性Ab IgG4重鎖ポリヌクレオチド
ホール形成T366S/L368A/Y407V突然変異を持つ抗IL17A F交差反応性Ab IgG4重鎖ポリヌクレオチド
抗IL17A F交差反応性Ab軽鎖ポリヌクレオチド
ホール形成T366S/L368A/Y407V突然変異を持つコドン最適化抗IL17A F交差反応性Ab IgG4重鎖ポリヌクレオチド
ホール形成T366S/L368A/Y407V突然変異を持つコドン最適化抗IL17A F交差反応性Ab IgG4重鎖ポリヌクレオチド
コドン最適化抗IL17A F交差反応性Ab軽鎖ポリヌクレオチド
FkpA TIR1
FkpA TIR2
FkpA TIR3 (c13)
FkpAシグナルペプチド