【文献】
放射能測定法シリーズ7 ゲルマニウム半導体検出器によるガンマ線スペクトロメトリー,日本,文部科学省,2004年 7月30日,3訂 第7刷,p.63−101,p.117−160
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記較正ステップは、隣り合う検出器の異なるグループで使用するために個別の較正測定値を取得するか、又は、各検出器で使用するために各検出器において個別の測定値を取得するステップを含む、
請求項1記載の方法。
総透過率の共通セットにおける各較正物質に対する前記較正表は、サンプルの既知の原子番号Z間の中間Z値に対する内挿又はサンプルの既知の原子番号Zの上又は下での外挿によって拡張される、
請求項4乃至7いずれか1項記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0046】
特に好ましい実施形態に関して本発明を記述することが便利である。しかしながら、本発明は、広範囲の方法及びシステムに適用可能であり、他の構造及び配置もまた、本発明の範囲の中に入ると考えられることが明確に理解されるべきである。本明細書において記述される構造及び配置に対する様々な変更、代替、変形及び/又は追加もまた、本発明の境界及び範囲の中に入ると考えられる。
【0047】
本発明は、分析のためにある範囲の放射線種を使用する物質同定のための方法及び機器に関する。具体的には、本明細書で例示される機器及び方法は、X線検査に適用されてもよい。しかしながら、機器及び方法は、具体的には、例えば電磁波、中性子、ガンマ線、光、音響を検出するための異なる形態の検出器ユニットを代わりに用いること又はその他の方法によって、中性子若しくはガンマ線のような他の種類の入射放射線、又は他の種類の出射放射線(emanating radiation)のために容易に変更され得ることが、明確に理解されるであろう。そのような変更は、本発明の最も広い態様の範囲内である。
【0048】
物を透過するときにX線が減衰されることに加えて、物を通過するX線は、以下を含む多数のモダリティ(modalities)を介してその物と相互作用する:結晶面からの散乱(scattering off)、元素の電子構造の中からの蛍光放X線放出(emission)を引き起こすこと;及び、走査されている物質の中のナノスケール構造からの散乱。これらの形式の相互作用は、透過するX線ビームのエネルギースペクトルをわずかに変更し、このエネルギースペクトルの変化を検出及び分析することによって、X線ビームが通った物品に関する元素の特有の情報(elemental specific information)を推測することが可能である。
【0049】
以下に記述される複数の実施形態のうちの一つのシステムは、検出器において受け取られる個々のX線光子のエネルギーを推定することができる検出システムを提供する。これは、アレイ内の検出器のそれぞれが、光電子増倍器に結合させられた適切な検出器物質から構成され、検出器において受け取られるときに重複していても、重複していなくてもよい一連のパルス‐各々の検出されるX線について一つのパルス、を含むアナログ信号を生成することを伴って、X線供給源ごとに検出器アレイを使用して達成される。検出器アレイは、物品の特徴(characteristics)の画像を行ごとに構築するために、従来技術の貨物又は荷物検査システムと同様に配置されてもよい。従来のシステムと異なり、検出器アレイは、各々の検出される光子のエネルギーを測定することができる。
【0050】
次いで、パルス処理システムは、各々の単一の検出器についてヒストグラムを生み出すために使用される。このヒストグラムは、所与の時間間隔において各ヒストグラムビン(histogram bin)に入るX線の数の計数を含む。ヒストグラムビンは受け取られたX線のエネルギーの範囲を表し、したがって、ヒストグラムは受け取られたX線ビームのエネルギースペクトルである。大きな数のヒストグラムビン‐例えば最大で512の別個のエネルギー帯又はそれ以上‐が存在してもよく、既存の検査システムの中の粗い二重エネルギー帯測定を超える非常に大きな強化を表す。
【0051】
記述される実施形態のシステムは、検査される物質の実効原子番号(実効Z)の遥かに正確な推定を得て、結果として検査される物質の大いに優れた分類をもたらすために、この全高分解能エネルギースペクトルを使用する。
【0052】
高レベルの概要
図1は、本発明の一つの好ましい実施形態による、X線貨物及び荷物検査システムの高レベルの概要を示す。
【0053】
システムの主な特徴は、以下の通りである:
1.試料(101)が検査されるX線チャンバ(100)。チャンバは、(複数の)X線供給源及び関連付けられる検出器ハードウェアを収容でき、操作者の安全を確かにするためにX線がチャンバを越えて放出されないことを確かにするように設計される。
2.検査されるべき試料(101)とX線チャンバ(100)との間の相対運動を引き起こすための手段。一つの実施形態において、これは、検査されるべき試料(101)をX線チャンバの中に運搬する手段(102)を有するであろう。一つの典型的なシステムにおいて、これは、コンベアベルト、ローラーシステム又は同様のものであってもよいが、本開示において記述されるシステムは、任意の運搬手段を用いて同等に良好に機能するであろう。一つの好ましい実施形態は、(複数の)X線供給源及び(複数の)検出器アレイが固定された位置に位置付けられているトンネルを試料が通過することである。しかしながら、一つの代替的な実施形態において、(複数の)X線供給源及び(複数の)検出器アレイは、試料を通り過ぎて移動してもよい。
3.X線チャンバ(100)の内部には、以下が存在する:
a.一つ又はそれ以上のX線供給源(200,201)
b.各X線供給源のために少なくとも1つの検出器アレイを備える、X線検出器の1つ又はそれ以上のアレイ(202,209)。
c.X線検出器アレイ(202,209)は、実装(implementation)のために望ましい場合には、より小さな検出器アレイに更に分割されてもよい。本開示において記述されるシステムは、検出器アレイの特定の配置及び/又は細分化に依存しない。
d.検出器アレイ(202,209)から受信されたX線パルスを処理するためのデジタルプロセッサ(203,210)。実装アーキテクチャに依存して、デジタルプロセッサは、以下であってもよい:
i.検出器サブシステムと同じボード上に存在する。
ii.別個のハードウェア上に存在し、X線走査器(scanner)筐体の内部又は外側に収容される。
iii.ホストシステムの一部を形成する、又は
iv.上記の組み合わせ。
【0054】
典型的に、X線検査システムの制御及び構成、並びにX線検査システムから収集されるデータの表示及び後処理のために、ホストコンピュータ(103)又は
図10aに示されるような無線制御及び表示システム(104)のような、適切な手段が存在する。
【0055】
自動脅威検出が実行されるいくつかのシステム構成によっては、制御/表示サブシステムについての要求がなく、代わりに検出された脅威を報告する何らかの手段ついての要求があってもよい。
【0056】
図2は、X線チャンバの内部の例示的な図を例示し、以下を示す:
1.X線供給源(200)及び(201)。X線供給源(200)及び(201)から、X線(204)及び(206)が被検試料(208)に入射する。
2.検出器アレイに入射するX線(205)及び(207)の検出のための検出器アレイ(202)及び(209)。
3.各検出器アレイからの信号は、デジタルプロセッサ(203)及び(210)に接続される。デジタルプロセッサは、X線チャンバの内部又は外部のいずれに取り付けられてもよく、一部はホストシステムと組み合わされてもよい。
4.デジタルプロセッサの出力(211)は表示のためにホストに渡され、一方でホストはデジタルプロセッサへ/から制御信号(212)を送信/受信する。
【0057】
図2における構成要素の配置は、例示的なものに過ぎず、供給源又は検出器の数に関する特定の要求を示さず、また、供給源又は検出器の設置に関する要求を指定するものでもない。本開示において記述される検出及び処理システムは、任意の数の供給源及び検出器アレイを用いて、及びどのようにそれらの供給源が置かれているかに関わらず、うまく動作するであろう。要点は、供給源1からのX線が試験試料を通過し、検出器アレイ1で受け取られ、供給源2から光源NまでのX線が試料を通過し、検出器アレイ2から検出器アレイNまでで受け取られることである(すなわち、システムは、任意の数の供給源、及び供給源の数と同じであってもなくてもよい任意の数の検出器アレイを用いて動作することができる)。
【0058】
図3は、検出システム及び処理のより詳細な図を示す。この図は、単一の検出器のための複数のステップを示す。全ての検出器からのスペクトルへのアクセスを、実効Zは利用してもよく、画像後処理は要求するであろう。
【0059】
各検出器アレイ内の各検出器について、以下を有する検出器システム及び処理エレクトロニクスが存在する:
1.各々の個別の検出器要素のための検出器サブシステム(301)であって(1×N個の検出器アレイについてN個のそのようなサブシステムを備える)、検出器サブシステムは、以下を有する:
a.入射X線(300)を検出し、各々の検出されたX線を光パルスに変換する検出器物質
b.入射光パルスを受け取り、増幅して、重複していてもよく又は重複していなくてもよいパルス(312)を含むアナログ信号に変換するための光電子増倍器
c.フィルタリングを含み得る、適切なアナログエレクトロニクス
d.任意的な可変利得増幅器(302)。固定されたアナログ利得が使用されてもよく、又は光電子増倍器に追加利得を使用することが望ましくない場合がある。
2.アナログ信号をデジタル値(313)に変換するための、アナログ/デジタル変換器(303)。
3.処理の前にデジタル信号レベルを適切に調整するための、可変デジタル利得(304)。
4.各検出器サブシステム(301)、例えば米国特許第7383142号明細書、米国特許第8812268号明細書及び国際公開第WO/2015/085372号に開示されているパルス処理システムのための高速パルス処理(305)であり、パルス処理は、以下を含む:
a.ベースライン追跡及び除去、又は固定されたベースラインの除去。
b.入って来る(incoming)パルスの検出。
c.各々の検出されるパルスのエネルギーの計算。
d.計算されたエネルギー値のエネルギーヒストグラム(エネルギーヒストグラム)(315)の中への蓄積。
e.ゲート信号が受信される度ごとの、蓄積されたヒストグラム値の出力。
f.次の収集間隔のための、ヒストグラム値のリセット。
5.規則的な予め設定された間隔でゲート信号(314)を出力するゲート信号供給源(306)。
a.ゲート間隔は、ヒストグラム蓄積期間を決定する一定の短い間隔である。
b.このゲート間隔はまた、結果として生じるX線画像における画素ピッチも決定する。画素ピッチはゲート間隔×試料速度で与えられる。例えば、10msのゲート間隔、及びコンベア上を0.1m/sで移動する試料は、進行の方向において1mmの画素ピッチを結果としてもたらす。
6.ゲート信号供給源及びゲート信号がない場合、全ての検出器にわたってエネルギーヒストグラム収集のタイミングを制御及び同期させるために、他の適切な手段が使用されてもよい。例えば、ゲート信号の代わりに適当に正確なネットワークタイミング信号が使用されてもよい。
7.適切なアナログ信号及びデジタル信号から入力を受信し、次いで、望ましい較正パラメータを様々な処理ブロックに返信する、較正システム(307)。較正システムは、以下を実行する:
a.パルスパラメータ同定
b.利得較正
c.エネルギー較正
d.ベースラインオフセット較正(固定されたベースラインが使用される場合)
e.計数率依存ベースラインシフト
8.各ゲート間隔の間に各検出器における計算されたエネルギースペクトルを取得し、試料の実効Zを決定する、実効Z計算(308)。これは、今度は実効Z画像の生成につながる。
9.強度画像生成。以下を含む:
a.エネルギースペクトルにわたる総受容エネルギーに基づく、強度画像(309)。
b.全エネルギースペクトルからの選択されたエネルギー帯の積分(integration)によって決定される、高ペネトレーション又は高コントラストの画像(310)。
10.画像後処理及び表示(311)、以下のうちの一つ又はそれ以上を含み得る特徴を備える:
a.画像鮮鋭化
b.エッジ検出及び/又は鮮鋭化
c.画像フィルタリング
d.同定された物質に基づいて画像画素を色付けするための実効Zカラーマップの適用。
e.各検出器アレイについての2D画像の選択、表示及びオーバーレイ
i.実効Z
ii.強度
iii.高ペネトレーション/高コントラスト画像
f.適切なモニター又は他の表示装置上への画像の表示。
【0060】
上述され、また
図9において例示されるように、表示のために生成された画像は、各々のN個の検出器要素(501)について及び各ゲート間隔(500)について記録された多数のデータ要素を含む。
【0061】
ゲート間隔jの間に検出器iについて得られたデータは、
図9に示されるように、実効Z、強度及び高ペネトレーション/高コントラストの画像の生成において使用される。処理の間、に以下のうちの一つ又はそれ以上を含む、多数の要素が、各画素502に記録される:
1.X線エネルギースペクトル。
2.計算された実効Z値
3.強度値(全スペクトル合計)
4.一つ又はそれ以上のエネルギー帯の積分から計算された、高ペネトレーション/高コントラストの強度値。
【0062】
図9は、更なる後処理及び画像表示の前に、どのようにこのデータが、走査される試料の画像に配置され、構築されるかを例示する。
【0063】
検出器サブシステム
一般的なX線走査機器に使用される検出器サブシステムは、産業用途及びセキュリティ用途の両方について、PINダイオードのアレイに結合させられたシンチレータ(燐光体(phosphor)等)を利用して、透過したX線を光に変換し、続いて電気信号に変換する。
【0064】
1‐2mm程度の解像度を達成するために、2,000個以上の検出器画素が使用される。二つの別個の検出器アレイ(及び電子読み出し回路)は、低エネルギーX線及び高エネルギーX線の検出のために要求される。
【0065】
X線が検出器に衝突するときに、それは、検出器内にX線のエネルギーに比例する電子電荷を生成し、エネルギーが高いほど検出器内に多くの電荷が誘導される。しかしながら、検出器アレイのより詳細な調査は、検出器システムは個々のX線光子を検出する分解能を持たず、代わりに、それらは検出器画素によって生成される電荷全てを所与の時間にわたって積分し、これをデジタル値に変換することを示している。検出器上のX線の瞬時フラックスが大きいところでは、大きなデジタル値が生成され(画像内の明るい画素)、少ないX線が検出器に衝突するところでは、小さなデジタル値が生成される(画像内の暗い画素)。
【0066】
この実施形態の検出器サブシステムは、以下を有する:
a)検出器物質
b)適切な手段を使用して検出器物質に結合させられた光電子増倍器物質
c)アナログエレクトロニクス
【0067】
検出器物質は、X×Y×Zの寸法、又はいくつかの他の形状であってもよい。光電子増倍器は、シリコン光電子増倍器(SiPM)であってもよく、結合手段は、光グリース又は光結合材料の形態であってもよい。検出器を光電子増倍器に対する所定の位置に保持するために、ブラケット又はシュラウドの形態を使用することが望ましい場合がある。光電子増倍器は、検出された信号の増幅の要求されるレベルを生み出すために、適切な電源及びバイアス電圧を要求する。
【0068】
X線走査用途において、大きな数の単一要素検出器サブシステムが、各々の検出器アレイを生成するために要求される。特定のX線走査器要件に依存して、適切な方法でこれらをグループ化することが望ましい場合がある。検出器物質の個別の要素は、M個の検出器の短いアレイにグループ化されてもよい。M個の検出器要素の小さなグループは、単一の検出器ボードの上に取り付けられてもよく、例えば、一つのボードの上に二つ、四つ又はそれ以上のM個のグループが取り付けられてもよい。そのとき、全検出器アレイは、アレイごとの検出器要素の総数Nを達成するために要求される数の検出器ボードで作り上げられる。
【0069】
検出器サブシステムは、以下を含む多数の異なる構成に配置されてもよい:1×N個の装置の直線アレイ;N×M個のデバイスの正方形又は長方形のアレイ;又はL字型、千鳥状、ヘリングボーン型若しくはインターリーブ型アレイ。入って来る放射線光子を電気信号に変換するために使用される検出装置の一つの例は、シリコン光電子増倍器(SiPM)又はマルチピクセル光子計数器(MPPC)に結合させられた、シンチレーション結晶の組み合わせである。
【0070】
そのような検出器装置において、LSYOのようなシンチレーション結晶(1701)は、入って来る放射線光子(1700)をUV光子(1703)に変換するために使用される。LYSOシンチレーション物質の場合、UV光子のピーク放出(peak emission)は420nmで生じ、表1に列挙されるもののような他のシンチレーション物質は異なる放出ピークを有し得る。UV光子(1703)を生成する、放射線光子(1700)のシンチレーション結晶(1701)との相互作用に続いて、UV領域に感受性を有するマルチピクセル光子計数器又はシリコン光電子増倍器(1704)は(例えば表2の性能メトリクスを持つもの等)は、これらの光子を検出し、電気信号を生成するために使用されてもよい。
【0071】
図16Aは、LYSOシンチレーション結晶(1600)の直線アレイを描写し、どのように単一の検出装置が一緒に接合されて直線アレイを形成するかを指し示す。この指示的な例において、個々のLYSO結晶(1600)は、1.8mmの断面及び5mmの高さを有し、個々のLYSO結晶(1600)は、全てのUV光子を収集することを補助するために、反射物質の側方の周りに巻き付けられる。この例示的なアレイのピッチは2.95mmであり、長さは79.2mmであり、アレイの幅は2.5mmである。
【0072】
図16B及び
図16Cは、それぞれ上面及び側面からの検出器アレイを描写し、基板(1605)上の電気パルス生成要素(1604)に結合させられた
図16Aに描写されるLYSO結晶の直線アレイを有する。電気パルス生成要素は、シリコン光電子増倍器(SiPM)を有してもよい。強化された鏡面反射体(ESR)若しくはアルミニウム又は反射箔(1601)は、シンチレーション結晶の側面の周りに配置されており、シンチレーション光子をシリコン光電子増倍器物質(1604)上に方向付け、隣接する検出装置の間の光漏れ(クロストーク)を防止する。任意的に、光学的結合(1606)は、LYSO結晶とSiPMとの間に置かれてもよく、任意の数の既知の適する物質、例えば、光学的に透明な接着剤の薄層を有してもよい。
【0073】
他の実施形態において、シンチレーション結晶(1607)は、
図16D及び
図16Eに描写されるように、電気パルス生成要素(1604)に個別に結合させられてもよい。結合は、多数の方法、例えば光学的に透明な接着フィルム(1609)又は光学的結合物質をシンチレーション結晶(1607)と電気パルス生成要素(1604)との間に置くことによって達成されてもよく、電気パルス生成要素(1604)は、SiPM又はMPCCを有してもよい。結合は、複数の構成要素及び結合物質を個々に整列及び結合する‘ピックアンドプレース(pick and place)’組み立て機械によって実行されてもよい。シンチレーション結晶は、光子の捕捉を助けるために、箔又はESR材料(1608)のような反射物質に包まれてもよい。
【0074】
いずれの実施形態においても、LSYO結晶(1600,1607)は、典型的には、断面(幅)約1‐2mm、深さ約1‐2mm、及び高さ約3‐5mmを有し、反射フィルム又はESRフィルム(1601,1608)は、約0.05mm‐0.1mmの厚さである。
図16Dに示される検出器の一つの好ましい実施形態において、断面は1.62mmであり、深さは1.24mmであり、高さは約4.07mmであり、またESRフィルムは0.07mmの厚さである。シンチレータ物質の断面積は、好ましくは1mm平方より大きく、また2mm平方より大きく且つ5mm平方より小さくてもよい。
【0075】
例示的な検出器サブシステムの設計は、コンパクトで、頑健で、費用効果が高く且つ非吸湿性のシンチレータを使用するが、本発明の最も広い態様において、他の検出器サブシステムが考えられ得る。これらは、代替無機又は無機シンチレータ物質を使用する検出器サブシステムが含み、いくつかのそのような材料の特性は表1に提供されている。放射線光子を電気信号に変換するための他の機構もまた、検出器サブシステムのために考えられ得る。他の検出器物質の選択肢は、以下を含む:
a)高純度ゲルマニウム(HPGe):5.9keVのFe55X線ラインについて120eVの‘ゴールドスタンダード’の分解能を達成し、検出器は、10mm以上(>10mm)の厚さで作られることができ、それ故に最大で何百keV(many 100s of keV)もの高エネルギーX線を検出することができる。
b)シリコンドリフトダイオード(SDD):比較的低エネルギーの放射線を測定するSDD検出器。5.9keVの同じFe55X線ラインについて、SDD検出器は約130eVの分解能を有する。また、これらの検出器は、HPGe検出器よりも高い計数率、且つ室温のすぐ下で動作させられることができる。
c)PINダイオード:最大で60keVのX線についての検出効率は、SDD検出器よりも実質的に高く、150keVより高いX線エネルギーについては約1%に低下する。これらの検出器は、室温で動作させられることができる。しかしながら、冷却に伴って分解能は向上するが、5.9keVラインの分解能は180eV程度(〜180 eV)である。
d)テルル化カドミウム亜鉛:中程度のエネルギーのX線及びガンマ線放射の直接検出のために使用される室温固体放射線検出器である。それは、100%に非常に近い、60keVのX線についての検出効率を有し、150eVのエネルギーをもつX線光子についてさえ、検出効率は50%より大きいままである。
e)ヨウ化セシウム(CsI(Tl)):これは、医療用画像化及び診断用途においてX線の検出のために使用されるシンチレーション物質である。このシンチレーション物質は、X線を光の光子に変換するために使用され、その光の光子は、概してその後に、同じく光電子増倍管によって電気信号に変換される。CsIは安価で密度が高い物質であり、数百keVまでのX線及びガンマ線の良好な検出効率を有する。
【表1】
【表2】
【0076】
本明細書において記述されるシンチレータ及び光電子増倍器の実施形態の一つの具体的な利点は、例えば大型貨物品に適用可能であるような、大型走査システムへの容易な適応可能性のための、検出要素のスケーラビリティであり、それは、長さ寸法で2メートル又はそれ以上であってもよい。これは、個々の検出器要素面積が増大するにつれて許容できないデッドタイムを有する、テルル化カドミウム亜鉛のような直接変換物質とは対照的である。
【0077】
処理ステップ
以下の節は、様々なアルゴリズムの各々の特定のステージの処理に伴われるステップを概説する。
【0078】
1.
較正
走査システムは多数の個別の検出器を含む。各検出器及び関連する電子機器は、理想的には入射放射線に対して同一の応答を有するように設計されているが、実際にはこれは不可能であろう。検出器の間でのこれらのばらつき(variations)は、結果としてエネルギースペクトル出力における検出器対検出器のばらつきをもたらす。検出システムを正しく且つ完全に較正することによって、パルス処理デジタルプロセッサから出力されるエネルギースペクトルは、それらが既知の狭いエネルギービンにおいて受け取られたX線強度を表すように、適切に較正されることができる。
【0079】
1.1.
検出器パルス較正
検出器パルス較正は、パルス処理システムによって要求される各検出器についてのパルス特性を同定するために使用される。要求される正確なパラメータは、検出システムに依存して異なる場合がある。米国特許第7383142号明細書及び米国特許第8812268号明細書に開示されているパルス処理方法を使用する典型的な用途のため、パルスは、以下の形式の平均二重指数としてモデル化される(modelled):
【数1】
ここで、α及びβは、それぞれ立ち下がりエッジ時定数及び立ち上がり時定数であり、t
0は到着のパルス時間であり、T
aはパルス平均化ウィンドウであり、Aはパルスエネルギーに関するパルススケーリング因数である。
【0080】
この処理は、適切な較正方法を介して、又は検出サブシステムの設計の知識から得られることができる、二つのパラメータα及びβ、並びにパルス形式p(t)を要求する。受信されたパルスからα、β及びp(t)を推定するために適した方法は、以下に記述される。
【0081】
1.2.
検出器利得較正
各検出器サブシステムは、アナログデジタル変換器と組み合わされて、製造におけるばらつきによりわずかに異なる特性を有するであろう。そのような構成要素のばらつきの一つの結果として、エネルギースペクトルは異なってスケーリングされるであろう。利得スケーリング以外のばらつきは、ベースラインオフセット較正又はエネルギー較正の中で取り扱われる。
【0082】
利得較正の目的は、全ての検出器にわたってパルス処理エレクトロニクスによって出力されるエネルギースペクトルのアライメントを達成することである。検出器ごとのエネルギー較正が適用されるならば、絶対精度の必要性は、低減又は排除され得る。
【0083】
利得較正は、多数の方法で達成されてもよい。以下の手法が適用されてもよい:
1.既知のX線供給源を設定する。
a.特定の特性を有する物質をビームの中に挿入してもよい。例えば、鉛(Pb)は88keVに既知の吸収端(absorption edge)を有する。
b.それ自体で検出される(自己スペクトル)、検出器物質(例えば、LYSO)の既知の放射線を利用する。
2.パルス処理エレクトロニクスによる出力として、各検出器のエネルギースペクトルを測定する。
3.最小限のノイズを伴う滑らかなスペクトルを達成するために、十分なデータが得られることを確かにする。
4.アライメントを実行する特徴又は複数の特徴を選択する。例えば、
a.スペクトル内の特定のピーク
b.(Pbの場合について)吸収端
c.(LYSO自己スペクトルについて適切な)スペクトル形状全体
5.各検出器について、特徴位置(feature location)に対応するヒストグラムビンを計算する。
6.これらの特徴位置ビンの中央値(median)を全ての検出器にわたって計算する。
7.次いで、各検出器について要求される利得は、特定の検出器の特徴位置に対する中央値位置の比として計算される。注:中央値又は他の適した基準(例えば、最大値又は最小値)が選ばれる。中央値が選択され、そのため全てのチャネルが最小振幅まで減衰させられるのではなく、むしろいくつかのチャネルが増幅され、いくつかは減衰させられる。
8.次いで、利得は、各検出器チャネルに対して適用される。利得は、具体的なシステム機能性に依存して、アナログ利得、デジタル利得、又はその二つの組み合わせとして適用されてもよい。最良の結果のために、利得の少なくとも一部はデジタル利得であり、任意的に繊細な利得変化(gain variation)が達成されることができる。
9.各検出器のエネルギースペクトルを再測定し、要求されるアライメントが達成されていることを確認する。
10.望ましい場合は、各検出器について、更新された/改良された利得較正を計算し、各検出器に対して更新された較正を適用する。
11.全ての検出器からのスペクトルの間の要求される調和(correspondence)を達成するために望ましい分だけ頻繁に、ステップ9及びステップ10を繰り返す。
【0084】
本開示において概説される実効Z計算の方法について、1‐2%以内へのスペクトルアライメントは、達成されることでき、且つ正確で一貫した実効Zの結果のために望ましいことが見出された。
【0085】
検出サブシステムの実際的な実装において、それぞれに多数の検出器を備えた、多数の検出器カード(cards)が存在してもよい。検出器の総数は、数千又はそれ以上であってもよい。そのような検出器ボードの一例の結果は、本明細書において提示される。例示的なボードは、この場合はシンチレータ物質として使用されているLYSOを備えた、108個の検出器を有する。これらの検出器は、27個の検出器の直線アレイにパックされる。そのとき各検出器ボードは、4×27の検出器アレイを使用して、総計で108個の検出器を達成する。
【0086】
X線が検出器に入射するときに、入射X線のエネルギーに基づいてLYSOによって光子が放出される。各検出器はSiPMの上に置かれ、そのSiPMが、放出された光子を検出及び増幅する。検出器は光学グリースを介してSiPMに結合させられる。各SiPMの利得は、印加されるバイアス電圧及びSiPM降伏電圧によって決定される。LYSO材料のばらつき、LYSOとSiPMとの間の結合の質、並びにまたSiPM利得及びSiPM材料特性のばらつきの一つの結果として、所与の入射X線エネルギーについての受信パルスエネルギーにはかなりの差があり得る。
【0087】
検出されるパルスエネルギーのばらつきの効果は、全ての検出器からのエネルギースペクトルが同じでないことである。これは
図11に見ることができ、ここでは108個の検出器全てからの未較正の受信スペクトルがプロットされている。これらのエネルギースペクトルは、鉛(Pb)の試料がX線ビーム内にある場合に測定され、Pbスペクトルの構造が明確に見られる。エネルギースペクトルの尾部は、約150個のヒストグラムビンの範囲にわたって広がることが見られることができる。これは、実際のビンごとのエネルギーが各検出器について全く異なることを意味する。
【0088】
上に概説した利得較正手順に従うことにより、
図12に示されるように、一組の検出器利得が計算された。この図から、較正された利得値は約0.75から1.45の範囲にわたる。
【0089】
デジタル利得を
図12における検出器利得と等しくなるように設定した後に、
図13に示されるように、108個の検出器からのエネルギースペクトルが再測定された。今、エネルギースペクトルが良好にアライメントされていることは明白であり、利得較正の成功を示している。異なるスペクトル振幅レベルは、結果として生じるエネルギースペクトルに影響を及ぼし得る、上で議論された要因の範囲を反映する。この場合、いくつかの検出器は、全体として他の検出器よりも大きな数のX線を捕捉しており、より高いスペクトル振幅によって指し示されている。それでもなお、スペクトルの特徴(features)のアライメントは、要求されたように非常に良好である。
【0090】
1.3.
ベースラインオフセット較正
各検出器サブシステムは、アナログデジタル変換器の出力において測定されるときに、わずかに異なるベースラインレベルを有し得る。パルス処理エレクトロニクスが受信されたパルスのエネルギーを正確に推定するために、ベースラインは、推定及び除去される。例えば以下を含む、任意の適した方法が使用されることができる:
1.(X線をオフにしての)ベースラインオフセットのオフラインの測定:
a.検出器からの一連のサンプルを記録及び平均する
b.この平均を、全てのデータから減算されるべきベースラインオフセットとして使用する
2.オンラインのベースラインオフセットの追跡と適応:
a.ベースラインオフセットを推定及び追跡するために、パルス処理出力を使用する、
b.(ノイズの多い)追跡されたベースライン値をフィルタ処理し、それに応じてベースラインオフセットレジスタを更新する
c.X線をオフにして最初の収束の期間(initial period of convergence)を使用し、続いてX線をオンにしたまま継続的な適応を行う
【0091】
1.4.
エネルギー較正
パルス処理エレクトロニクスは、較正されていないエネルギースペクトルを生成するであろう。すなわち、出力は、一組のヒストグラムビン内の多数の計数を含むであろうが、それらのヒストグラムビンの正確なエネルギーは未知である。正確な実効Z結果を達成するためには、各ビンのエネルギーの知識が要求される。
【0092】
これは、以下のように達成される:
1.既知のスペクトルピークをもつ供給源を使用する。一つの適した例は、31,80,160,302及び360keVにスペクトルピークをもつBa133供給源である
2.未較正のエネルギースペクトルを測定する。
3.既知のスペクトルピークに対応するヒストグラムビンを決定する
【0093】
複数のピークをもつ単一の供給源を使用することの代わりに、可変の(ただし既知の)エネルギーをもつ狭帯域供給源を使用し、ある範囲のエネルギーについて、エネルギーの関数としてヒストグラムビンを測定することも可能である。
【0094】
ひとたびヒストグラムビンとエネルギーとの間の関係が測定されると、以下のいずれかが可能である:
1.各ヒストグラムビンのエネルギーについての探索表(lookup table)を作成する。
2.適した関数の形式のパラメータを推定する。LYSO/SiPMの組み合わせについては、ある二次(quadratic)モデルが、観測されるパラメータに非常によく適合することが見出されている。これは、以下の形式の結果を与える:
【数2】
ここで、A、B及びCは、測定されたBa133スペクトルから決定される定数である。この式は、同じA、B及びCの観点から表現されたヒストグラムビンの関数としてエネルギーを定義するために反転されている。
【0095】
検出器の間のばらつきが十分に小さければ(良好な構成要素マッチング及び良好な利得較正を要求する)、そのとき、単一のエネルギー較正が全ての検出器に対して適用されてもよい。この場合、Ba133供給源に曝露された多数の検出器にわたって較正パラメータを平均化することは、エネルギー較正パラメータの優れた推定をもたらすであろう。
【0096】
代替的に、個別の較正表/較正パラメータが、各検出のために生み出されてもよい。
【0097】
1.5.
計数率依存ベースラインシフト
検出器/光電子増倍器の組み合わせに依存して、計数率に依存するベースラインシフトを補償することが望ましい場合がある。このシフトの結果は、計数率が増加するにつれてのエネルギースペクトルの右シフトである。エネルギー較正を正しく適用するために、スペクトルは、指定されたビンの数/エネルギーだけ左に戻される。要求される較正は、次のいずれかである:
a)補間によって得られる中間の結果を伴って、各計数率についてベースラインシフトを定義する、探索表。
b)ベースラインオフセットが計数率の関数として表現される、関数形式(functional form)。
【0098】
可変計数率の既知の供給源スペクトルを導入すること(injecting)、及び計数率が増加するにつれてのスペクトルシフトを記録することを含む、任意の適した方法がこの較正のために使用されることができる。理想的には、供給源は、狭いエネルギー帯を有して、そのためシフトが明確に測定されることができ、また可変エネルギーでもよく、そのため、望ましい場合には、オフセットがエネルギーの関数として較正されることができる。
【0099】
もしオンラインのベースラインオフセットの追跡及び除去が使用されるならば、計数率依存ベースラインシフトの除去の必要性は、減少させられるか、又は更には排除されることができる。
【0100】
1.6.
残余スペクトル較正
残余スペクトル(residual spectrum)は、大きな厚さの鋼のような、X線ビームを完全に遮断するのに十分な、ビーム内の大きな質量の物質を用いて測定される。実際には、散乱であろうと又は他のメカニズムからでも、小さなレベルのエネルギーは検出器アレイに尚も到達し、この残余スペクトルは、それが通常の動作中に受信スペクトルから除去され得るように、測定されなければならない。
【0101】
そのとき、残余スペクトルは、ビーム内の遮断質量体を用いて、多数のゲート間隔について受信スペクトルを平均化することによって測定される。
[0101] The residual spectrum is then measured by averaging the received spectra for a number of gate intervals with the blocking mass in the beam.
【0102】
1.7.
パイルアップパラメータ
パイルアップパラメータは、いくつかの方法で較正されてもよい。例えば:
a)受信スペクトルの本質的な性質からのパイルアップパラメータの推定。
b)信号、受信されたパルス計数率、ADCサンプリングレート及びパルス検出方法の知識からの、パイルアップパラメータの推定。
c)以下のような、パイルアップパラメータの測定:
i.エネルギー及び計数率が変えられることができる、狭いエネルギー供給源を使用する。
ii.供給源エネルギー及び計数率が変えられるときに、受信スペクトル(received spectrum)を測定する。
iii.受信された2パルス及び3パルスのパイルアップの主信号ピークに対する比を、直接的に測定する。
iv.係数率及びエネルギーの関数として、2パルス及び3パルスのパイルアップの探索表を形成する。
【0103】
2.
高速パルス処理
高速パルス処理(305)、例えば米国特許第7383142号明細書、米国特許第8812268号明細書及び国際公開第WO/2015/085372号に開示されているものが、各検出器サブシステムに割り当てられ、アナログデジタル変換器から出力されるデジタル化されたパルス信号に対して以下の動作を実行する:
a)ベースライン追跡及び除去、又は固定されたベースラインの除去。
b)入って来るパルスの検出。
c)各々の検出されるパルスのエネルギーの計算。
d)計算されたエネルギー値のエネルギーヒストグラム(エネルギーヒストグラム)の中への蓄積。
e)ゲート信号又は他のタイミング信号が受信される度ごとの、蓄積されたヒストグラム値の出力。
f)次の収集間隔のための、ヒストグラム値のリセット。
【0104】
3.
強度画像
強度値、又はより具体的には透過値は、各ゲート間隔jで各検出器iについて生み出されたエネルギースペクトルから、以下に従って計算される:
【数3】
ここで、合計は、受信エネルギースペクトル(I(B))及び基準エネルギースペクトル(I
0(B))について、全てのヒストグラムビンBにわたって(又は同等に、全てのエネルギーEにわたって)実行される。
【0105】
強度画像内の要素は、以下のように分類されてもよい:
a)R(i,j)<R
lowであれば、貫通不可能(Impenetrable)であり、0に設定する。
b)R(i,j)>R
highであれば、空であるか、又はビーム内に何もなく、1に設定する。
閾値R
low及びR
highは、予め設定されてもよく又は使用者が設定可能であってもよい。
【0106】
4.
高コントラスト画像
全エネルギースペクトルの使用を通じて、受信スペクトルを異なるエネルギー帯域にわたって積分することに基づいて、様々なコントラストを有する強度画像が生み出される。既存の二重エネルギーX線走査器において、システムは、検出器物質に固有の広いエネルギー範囲のみを利用することができる。全エネルギースペクトルが利用可能な場合、任意のエネルギー範囲が、そのエネルギー範囲において関連する強度画像を生み出すために、使用され得る。そのとき、例えば、有機物質、無機物質、又は軽、中若しくは重金属等のために調整された(tuned)エネルギー範囲を用いて、特定の物質種(material types)を最もよく分離及び表示するために、特有のエネルギー範囲が定義され得る。
【0107】
高コントラスト画像/高ペネトレーション画像は、各ゲート間隔jで各検出器iについて、以下に従って生み出される:
【数4】
ここで、E1及びE2はエネルギー範囲E12の下限及び上限である。エネルギー帯は、使用者に定義されても、予め設定されてもよい。一つ、二つ又はそれ以上の異なるエネルギー帯は、関心のある複数の画像の間で使用者が選択することを可能にするように構成されてもよい。
【0108】
5.
実効Z処理
実効Z処理は、試料物質の実効Zの推定を計算するための、エネルギー較正と組み合わされた、パルス処理エレクトロニクスによって計算された全エネルギースペクトルの使用を伴う。実効Z処理は、各検出器について実行され、また各検出器について以下のように進行する(そのため1×Nの検出器アレイについては、このプロセスがN回繰り返される)。計算上の要求を低減するために、実効Z処理は、貫通不可能(impenetrable)又は空(empty)のいずれかであると宣言されていない、受信された検出器i及びゲート間隔jに対してのみ実行される。
【0109】
5.1.
予備動作
1.
図4を参照して、FFTを使用してエネルギースペクトルデータ(400)を圧縮し、最初のN個のビン(破棄されたビン(discarded bins)に信号がほとんど又は全く無いように選択される)以外のすべてを破棄する。注:このステップは任意であるが、実効Zが中央処理コンピュータで計算されるシステム構成について、それは通信帯域幅の有意な縮小を可能にする。512ポイントのヒストグラムについて32個の複素FFTビンの転送は、通信帯域幅のわずか1/8しか要求しない。
2.受信され、FFTされたエネルギースペクトルの数2S+1を平均化することによってスペクトル積分(spectrum integration)を実行する(402)。このスペクトル積分は、強度画像が計算される空間解像度を低下させることなく、実効Zを計算するために利用可能な測定時間を増加させる。積分は、ゲート間隔jを中心とした移動平均を実行するために、ゲート間隔(数5)にわたって行われる。
【数5】
積分が要求されない場合は、S=0に設定する。
3.パイルアップ削減(pileup reduction)を実行する(403)。このFFTは、パイルアップ削減の第一段階であり、データ圧縮が既にFFTを使用して達成されている場合には要求されない。パイルアップ削減は、以下に概説されるような、適したアルゴリズムによって達成されてもよい。
4.望ましい場合には、エネルギースペクトルの所望の横方向シフトを達成するために、FFT領域位相シフト(FFT domain phase shift)を適用する(404)。このステップは、ある計数率に特有のベースラインシフトが存在する場合に望ましいことを見出されている。注:FFT領域において(FFTビンで)線形に増加する位相項による乗算は、iFFT後に横方向シフトが結果としてもたらす。横方向シフトの程度は、線形増加の傾きによって決定される。
5.iFFTの前に、周波数領域ウィンドウを適用する(405)。このウィンドウは、エネルギースペクトルの所望の平滑化を設計するために使用されてもよい。ウィンドウ設計プロセスは以下に概説される。エネルギースペクトルの滑らかなフィルタリングを実現するために、良いウィンドウが設計されている。エネルギースペクトル内のノイズのフィルタリングは、計算効率の全体的な向上のために、実効Z計算において低減された数のエネルギービンを使用することの可能性を与える。
6.FFTデータをゼロパッド(Zero pad)し、複素共役をFFTバッファの後半に挿入し(406)、iFFTを適用する(407)。この時点で、平滑化されたエネルギースペクトルがヒストグラムの形で得られる。
ゼロパディングは、FFT後に切り捨てられたデータを挿入する。全ての切り捨てられたビン(truncated bins)についてゼロを挿入することは必須ではない。例えば、より少ないゼロをパディングすることは、IFFTを計算することが計算上より効率的な、より小さなFFTバッファを生成することができる。
実ベクトル(real vector)x及びFFTサイズ2Nの場合、FFT出力の要素N+2から2Nは、要素2からNの複素共役(complex conjugate)である。ここで、N+1は、ゼロ埋め込みによってゼロに設定される要素の1つとなる。
7.各検出器について、残余スペクトルを減算する。先に述べられたように、これは、完全に遮断する物質の存在下であっても存在するであろうスペクトルを除去する。
8.ヒストグラムビンをエネルギー値に変換するために、エネルギー較正曲線/関数を適用する(408)。注:代替的に、エネルギー較正は、実効Zルーティン自体の中で適用されてもよい。この段階で、出力は滑らかな較正されたエネルギースペクトル(409)である。
9.もし必要ならば、隣接する複数の検出器にわたってスペクトル積分、そのため(数6)の検出器について2P+1エネルギースペクトルにわたる積分を実行する。
【数6】
ゲート間隔にわたる積分はFFT領域で実行され得るが、隣接する複数の検出器の生のヒストグラムビンは同じエネルギーに対応していない場合があるため、隣接する複数の検出器にわたる積分は、エネルギー較正が適用された後にのみ実行され得る。2Dスペクトル積分を実行することにより、物質同定性能は、単一の画素に対して実効Z処理を実行することに比べて改善されることができる。
【0110】
5.2.
基準スペクトル測定
実効Z(及び強度画像/高コントラスト画像)を計算するために、X線はオンであるが、試料がX線ビームに到達する前に、基準スペクトルが得られる。所与の機械設計内では、X線がオンにされる時間と、X線ビームに試料が到達するときの間に、基準スペクトルが収集され得る遅延があるであろう。処理は、以下の通りである:
1.X線をオンにする。
2.X線ビームが安定することを待つ。これは、時間遅延によって、又は変動が指定された閾値を下回るまでX線計数をフィルタリングすることによって達成されてもよい。
3.パルス処理エレクトロニクスの出力において、N個のX線エネルギースペクトルI
0(E,n)を収集及び合計する(すなわち、N個の連続するゲート間隔の終わりに記録されたエネルギースペクトルを収集する)。
4.平均基準スペクトルを計算するために、スペクトルの合計をNで割る(数7)
【数7】
ここで、I
0(E)は、エネルギーEにおける計数の基準数であり、Nはゲート間隔の数であり、EはX線のエネルギーレベルである。
【0111】
基準収集中の任意の時点において試料がX線ビーム内で検出される場合には、そのとき基準スペクトルの蓄積は停止し、M個の収集されたスペクトルの平均が基準のために使用されてもよく、又はMが不十分である場合には測定を終結される。
【0112】
5.3.
質量減衰定数のテーブルをロード又は作成する
所与の実効Z及び所与のエネルギーに対する質量減衰定数(mass attenuation constants)は、所与の物質ZがエネルギーXのX線を減衰させる程度を定義する。具体的に、特定のエネルギーにおける受け取られるエネルギーの強度は、以下により与えられる:
【数8】
ここで、I(E)は、エネルギーEにおける計数の受け取られる数であり、I
0(E)は、エネルギーEにおける計数の基準数であり、ma(Z,E)は、エネルギーEにおける実効原子番号Zを有する物質に関する質量減衰定数であり、ρは物質密度であり、xは質量減衰データの作成に使用される基準厚さに対する物質厚さである。
【0113】
質量減衰データは、有限の(小さな)数のエネルギー、或いは10,20又は50keVで利用可能であるが、本開示によって開示される方法によって作成されるエネルギースペクトルは、1keVもの小さなエネルギー間隔、又はそれ以下のエネルギー間隔で生み出されてもよい。実際に、これらのエネルギー値の有限の数は、実効Z計算における使用のために選択されることができる。
【0114】
エネルギースペクトル内の全てのエネルギーにおいて滑らかな質量減衰テーブルを達成するために、各Zについての中間エネルギーに関するデータは、3次スプライン補間(cubic spline interpolation)又は他の適した補間方法を使用して得られる。エネルギーの関数としての質量減衰値は、三次スプラインが適用するために良い補間方法であるように、十分に滑らかであると考えられる。
【0115】
5.4.
実効Z計算
次いで、実効Z処理は以下のように進行する:
1.各検出器、及び各ゲート期間(結果として生じる画像内の一つの画素を定義する特定のゲート期間における特定の検出器)について、較正されたエネルギースペクトルが“予備動作”節に概説されるように測定されるであろう。貫通不可能又は空であると分類されたエネルギースペクトルについては、実効Z処理は実行されない。
2.実効Z計算のために使用されるべき1組のエネルギービンを決定する。
a.受信スペクトルに基づいて、十分な計数が受信されるエネルギー領域を同定する。
b.これらは、計数が何らかの予め定められた閾値を超えるスペクトルビンであろう。
c.代替的に、透過率(受信スペクトルの基準スペクトルに対する比)がある閾値を超えるエネルギーを決定する。
3.エネルギービンのそれぞれにおいて質量減衰データが利用可能な各Z値について、以下の動作を実行する:
a.想定されるZ(assumed Z)について物質厚さを推定する。一つの可能な方法は、一つのエネルギー値Eにおいて、以下に従って厚さを推定することである。
【数9】
ここで、I(E)は、エネルギーEにおける計数の受け取られる数であり、I
0(E)は、エネルギーEにおける計数の基準数であり、ma(Z,E)は、エネルギーEにおける実効原子番号Zを有する物質に関する質量減衰定数であり、ρは物質密度であり、xは質量減衰データの作成に使用される基準厚さに対する物質厚さである。
改善された厚さ推定が、いくつかのエネルギーにおける厚さ推定を平均化して、単一のエネルギーにおけるノイズの影響力を低減することによって得られることができる。xを明示的に推定することは望まれず、組み合わされたパラメータρxで十分である。
b.このZについて、先に記録された基準スペクトル、厚さパラメータ及びmaテーブルに基づき、(数10)に従って、予測スペクトル(predicted spectrum)を計算する
【数10】
全ての選択されたエネルギーEにおいて計算され、I(Z,E)は予測スペクトルである。
c.このZについてのコスト関数を、受信スペクトルと予測スペクトルとの間の二乗誤差の合計として、物質Zの仮定の下で計算する
【数11】
ここで、C(Z)はコスト関数であり、W(E)は、受信スペクトルと予測スペクトルとの間の二乗誤差の各々の合計についての重みを表す。
重みW(E)は、一つのもの(unity)になるように選ばれてもよく、或いは代替的に、W(E)=I(E)は、計数の数が小さい受信スペクトルの領域により小さな重みを与え、より多くの計数が受信される領域により大きな重みを与えるコスト関数を、結果としてもたらすであろう。
4.(特定のゲート期間中に特定の検出器から受信されたエネルギースペクトルを構成する)この画素について、コスト関数を最小にするZ値として推定実効Zを計算する:
【数12】
【0116】
実効Zが整数であるという特別な要求はなく、実際には、質量減衰表は、複合材料を表すZの非整数値のための値を含んでもよいことが、留意されるべきである。しかしながら、可能なZ値の連続体を有限の表で表すことは明らかに不可能である。Zを任意の精度で計算するために、適切な補間アルゴリズムを使用して、要求される分解能にコスト関数を補間することが可能である。そのとき、選ばれるZの値は、補間されたコスト関数を最小にする値である。コスト関数C(Z)は滑らかな関数であり、したがって、この滑らかな関数を最小にする実際のZの浮動小数点又は連続値は、何らかの形の補間を介して、曲線から信頼性高く予測されることができる。
【0117】
加えて、上記のステップ3は、コスト関数が質量減衰表内の全ての利用可能なZ値について計算されることを示すことも留意される。実際に、コスト関数の挙動に依存して、計算上の要求を削減するために効率的な検索方法が適用されてもよい。そのような方法は、以下の一つ又はそれ以上を含む:
1.グラデーション検索
2.ベストファースト検索
3.いくつかの形式のパターン検索
【0118】
コスト関数形式は、スペクトル上のノイズに対して比較的敏感でないように選ばれている。
【0119】
6.
物質較正を使用した実効Z処理
実際には、検出器及び特徴付けが困難な処理特性のために、全ての検出器、全ての計数率及び全てのスペクトルビンにわたって正確なエネルギー較正を達成することは困難であり得る。
【0120】
既知の物質の様々な厚さの試料を使用してシステムが較正される代替的な方法が開発されている。目的は、物質、物質厚さ及びエネルギーヒストグラムのビンの関数として、予期される受信スペクトルを較正することである。これは、絶対的なエネルギー較正のための要求を回避し、また、(存在する場合は)計数率によるスペクトルシフトの影響を大きく回避する。パイルアップ除去の必要性もまた、排除され得る。
【0121】
6.1.
物質(自己)較正処理
理想的には、良好な利得較正がなされれば、全ての検出器からの受信スペクトルは互いに一致しており、そのため全ての検出器での使用のために、一つの検出器で較正データを得ることだけが望まれる。実際には、検出器間の一貫性に依存して、隣接する複数の検出器の複数のグループ又はもしかすると全ての検出器について、較正データを得ることが望ましいと思われる。
【0122】
較正プロセスの第一のステップは、較正されるべき検出器についてX線ビーム内に物質が無い状態で各ヒストグラムビンBについて基準スペクトルI
0(B)を取得することである。ヒストグラムビンは、今、正確なエネルギーの観点からビンを較正する要求が無いことを表示するために、EよりはむしろBによって表示されるであろう。
【0123】
次いで、各物質について、較正するために:
1.(独立した測定によるか又は物質純度の指定によるかのいずれかで、)その物質の実効Zを確かめる。
2.物質の“ステップウェッジ”を取得する。すなわち、既知の厚さxの一連のステップを有する物質の試料である。最大のステップは、理想的には、それが貫通不可能と考えられることができるレベルにまでX線ビームを減少させるのに十分である。注:他の物質サンプルも使用され得るが、そのようなステップウェッジは、それに対して較正するために便利な形である。
3.要求される検出器位置でステップウェッジを走査する。結果は、物質の各ステップに沿って記録された一連の未較正のエネルギースペクトルであろう(スペクトルの数は、試料寸法、走査速度及びゲート期間に依存するであろう)。
4.スペクトル内のノイズを最小化するように、各ステップ上で受信されたスペクトルを合計する。これらのスペクトルは、それらが物質、ヒストグラムビン及び物質厚さの関数であるため、I(Z,B,x)と表示される。また、I(Z,B,0)は、ちょうど基準スペクトルI
0(B)であることにも留意されたい。
5.全ての材料、ヒストグラムビン及び厚さについて、透過特性を次のように計算する
【数13】
6.Z及びxの関数として、総計の透過を次のように計算する
【数14】
再び、全てのZについて、R(Z,0)=1であることに留意する
【0124】
Tx(Z,B,x)及びR(Z,x)のテーブルは、各画素(検出器/ゲート間隔)における実効Zを推定するために使用される較正表を共に形成する。先に述べられたように、それらは、また全ての検出器からのデータの等価性(equivalence)に依存して、検出器の関数であっても、又はそうでなくてもよい。
【0125】
明らかに、全ての可能な物質の試料に対して較正することが望ましいが、しかしながら実際には、物質及び混合物の全連続体(full continuum)のうちの部分集合(subset)のみがサンプリングされ得る。中間のZ値に対するテーブルエントリを達成するためには、TxとRの両方の関数をZの中間値に補間してテーブル適用範囲(coverage)を拡張する(expand)ことが望ましい。
【0126】
較正表を取得したので、以下のように未知物質試料について実効Zを推定することが今や可能である。
【0127】
6.2.
予備動作
予備動作は、以下のコメントを除いて、実質的に上述されたものと同じである:
1.パイルアップ除去を実行することが、望まれない場合がある。
2.計数率に依存するベースラインシフトが存在することを補償するために横方向スペクトルシフトを実行することが、望まれない場合がある。
3.iFFTの前に、周波数領域ウィンドウは依然として要求される。
4.この方法を用いる場合は絶対エネルギー較正を行う要求が無いので、エネルギー較正曲線は適用されないが、ただし残余スペクトルの除去は、依然として要求される場合がある。
5.スペクトルの積分は、以下に記述されるように、複数のゲート間隔にわたって、且つ複数の検出器にわたって実行され得る。
6.受信スペクトルは、一連のヒストグラムビンBにおける強度、I(B)と表される。Bの使用は、ヒストグラムビンがそれらの実際のエネルギーの観点で較正される、先の節についてのEの使用と差異を生じさせる。
【0128】
6.3.
基準スペクトル測定
基準スペクトルは、上述されたものと全く同じ方法で得られるが、今、エネルギーではなく、I
0(B)と表示され、ヒストグラムビンの使用を表す。
【0129】
6.4.
実効Z計算
次いで、実効Z処理は以下のように進行する:
1.各検出器、及び各ゲート期間(結果として生じる画像内の一つの画素を定義する特定のゲート期間における特定の検出器)について、未較正のエネルギースペクトルI(B)が“予備動作”節に概説されるように測定されるであろう。再び、貫通不可能又は空であると分類されたエネルギースペクトルについては、実効Z処理は実行されない。
2.実効Z計算のために使用されるべき1組のエネルギービンを決定する:
a.受信スペクトルに基づいて、十分な計数が受信される領域を同定する。
b.これらは、計数が何らかの予め定められた閾値を超えるスペクトルビンであろう。B:I(B)>I
minを選ぶ
c.代替的に、透過率(受信スペクトルの基準スペクトルに対する比)がある閾値を超えるビンを決定する。
d.代替的に、コスト計算から望ましくないビンを除去するために、利用可能な全てのヒストグラムビンを使用し、コスト関数において重み付けを適用する。
e.注:処理されるヒストグラムビンの総数を最終的に削減することは、改善された計算効率を達成することができ、そのため全てのビンの使用は理想的ではない。
3.総受容X線(total received X-rays)を、基準に対する比として計算する。
【数15】
4.較正データが利用可能な各Z値について、以下の動作を実行する:
a.総受容透過率(total received transmission)R、及びこの物質ZについてのR(Z,x)の較正表値から物質厚さを推定する。これは、以下を介して達成される
i.例えば3次スプライン補間を介して行われる、対応するx
~を得るための、Rの測定値でのR(Z,x)の曲線の補間。
ii.較正されたR(Z,x)から、物質と透過率の関数としてxを計算するために、関数形式x=f(R,Z)を得る。
b.R(Z,x)のテーブルから、(数16)となるようなx
1及びx
2を求める(find)。
【数16】
x
1=0が基準スペクトルに対応し、もし受け取られた透過率Rがテーブルエントリよりも小さければ、そのときはx
1及びx
2について最後の二つのエントリを使用し、その結果はより厚い物質への外挿(extrapolation)になるであろうことに留意されたい。
c.それから、較正された透過率テーブルTx(Z,B,x)を使用し、
各ヒストグラムビンについて、以下に従って局所(local)質量減衰係数を決定する:
【数17】
d.次いで、以下に従って予期される受信スペクトルを計算する
【数18】
この予期される受信スペクトルは、最も近い二つの較正スペクトルの間の補間された受信スペクトルであるが、各ビンにおいて観察された異なる減衰に基づいている。複数のスペクトルの間の他の形式の補間も使用され得るが、本実施例において使用される物質特有の補間は、優れた補間結果を提供する。
e.このZについてのコスト関数を、受信スペクトルと予測スペクトルとの間の二乗誤差の合計として、物質Zの仮定の下で計算する
【数19】
重みW(B)は、一つのものになるように選ばれてもよく、或いは代替的に、W(B)=I(B)は、計数の数が小さい受信スペクトルの領域により小さな重みを与え、より多くの計数が受信される領域により大きな重みを与えるコスト関数を、結果としてもたらすであろう。
5.(特定のゲート期間中に特定の検出器から受信されたエネルギースペクトルを構成する)この画素について、コスト関数を最小にするZ値として推定実効Zを計算する:
【数20】
【0130】
実効Zが整数であるという特別な要求はなく、実際に、自己較正表は、複合材料を表すZの非整数値のための値を含んでもよいことが、留意されるべきである。しかしながら、可能なZ値の連続体を有限の表で表すことは明らかに不可能である。Zを任意の精度で計算するために、適切な補間アルゴリズムを使用して、要求される分解能にコスト関数を補間することが可能である。そのとき、選ばれるZの値は、補間されたコスト関数を最小にする値である。コスト関数C(Z)は滑らかな関数であり、したがって、この滑らかな関数を最小にする実際のZの浮動小数点又は連続値は、何らかの形の補間を介して、曲線から信頼性高く予測されることができる。
【0131】
計算を削減し、較正表内の全ての物質Zにわたる網羅的検索を回避するために、同じ形式の効率的な検索方法を使用されることができる。
【0132】
6.5.
システム適応
いくつかのシステムパラメータは継時的に変動するものである。そのため、システムは、継時的に較正を維持するために適応する:
1.利得較正更新。
a.較正スペクトルは、X線がオフである期間の間に測定される
b.利得は、測定されたスペクトルにおいて観察される変化に従って更新される
c.利得は「A
*古い利得+B
*新しい利得」であり、ここでA+B=1であり、Bはノイズを回避し、緩やかな適応を可能にするために小さくなるであろう。
2.パルス較正更新。
a.パルスパラメータは、最も多くても毎日、或いは毎週若しくは毎月、パルスパラメータの再較正が必要とされ得る程度に、継時的に十分に一定のままであることが判明しているが、定期的に新しいパルス較正が実行されてもよい。
3.ベースラインオフセット更新
a.これは、初期較正が実行されるのと同じように、X線がオフである期間の間に行われてもよい‐ベースラインオフセットには短いデータセットが要求される。
b.以下に記述されるように、ベースライン追跡アルゴリズムを介して継続的に適応させられる。
4.エネルギー較正、計数率に依存するスペクトルシフト、パイルアップパラメータ及び残余スペクトルは、臨時の(occasional)オフラインでの再較正を要求し得る。ある所与の機械に関しては、これらは、仮にあったとしても、再校正を要求することはめったにないことも見られ得る。
【0133】
7.
実効Z処理例
以下は、検出器ボードの較正のために使用されるプロセス、具体的には自己較正プロセスを実施し、且つ‘浮動小数点’実効Z計算を使用する選択肢を有するプロセスの概要である。
1.理想的には純粋な元素又は純粋な元素に近い、既知の物質の較正ウェッジを取得する。現在の較正のために、三つの物質が使用された:
a.炭素(Z=6)
b.アルミニウム(Z=13)
c.ステンレス鋼(Z約26)
2.ステップ寸法は、以下を考慮して選ばれる:
a.多数の検出器が一回の較正走査で較正され得ることを確かにするために、30cmの幅が使用される。
i.較正され得る画素の数を効果的に増加させるために、投影モード(Projection mode)が使用される
ii.30cmウェッジでは、2つのキャリブレーション高さが、エッジ効果を避けるために十分な重複を伴って、5つの検出器ボードを覆うことができる。
b.ステップの高さは、0.5%未満(<0.5%)のものから最大で95%までの
合理的に均一な透過間隔を得ることを試みるように決定された。
i.炭素について、0.5%よりも低い透過率を達成することは、ほぼ300mmの物質を要求した。
ii.より重い金属について、95%の透過率を達成することは、0.5mm以下の非常に薄い試料を要求した。スズのような金属(ここでは使用されていない)については、これは極めて困難であった。
c.ステップ長さは50mmである。4%の通常速度で走査される場合、走査速度は毎秒8mmであり、そのため各ステップから約6秒のデータが収集され得る。これは、結局の(eventual)実効Z処理から要求される精度を所与として、非常に正確な較正スペクトルを確かにするために必要である。
3.物質ウェッジがスキャンされ、結果として生じるデータはMatlab(登録商標)で以下のようにオフラインで処理される:
a.各走査の各画素について、ステップの開始位置及び終了位置を決定する。
b.ステップエッジ近くでの影響を回避するために、いくらかの余裕をもたせる。
c.同定される各ステップについて:
i.ステップの各スライスにおいて測定されるスペクトルに対応するバイナリデータを抽出する。
ii.(5秒以上(>5seconds)のデータを用いて)非常に正確なスペクトルを確立するために、全てのデータを統合する
iii.(ビーム内に何も置かずに同じ較正ラン(run)中に測定された光源スペクトルの長期平均に関連して)対応する総計の強度を計算する
d.以下を含む、各物質の各ステップ(強度)についてのテーブルを作成する:
i.ステップ強度に対するステップ厚さのマッピング。このテーブルは、任意の測定されるスペクトルを同等の物質厚さに補間するために使用される。
ii.基準スペクトルを含む、一連の較正スペクトル。各スペクトルは、物質厚さを表し、それから中間の物質厚さについてのスペクトルが補間されることができる。
【0134】
Z=6,13,26の三つの物質についての較正データは、物質を、有機(Z=6に近い)、無機/軽金属(Z=13に近い)又は金属(Z=26に近い)のいずれかに分類する、三色画像の生成のために適当である。+/−0.2Zに至るか又はより良好に物質を分離する、正確な実効Z推定の中心的な目的を達成するために、はるかに大きな物質の組から較正データを取得し、その結果それからZの連続的な推定が得られることが必要である。Z=3からZ=92までの全ての物質について較正走査を作動させる(run)ことは実用的ではなく、そのためある範囲の追加的な較正データセットが補間によって得られた。Z=3からZ=13までの較正セットは、炭素データセット及びアルミニウムデータセットの内挿/外挿から得られた。実効Z=13からZ=50までの較正セットは、アルミニウムデータセット及びステンレス鋼データセットの補間から得られてもよい。
【0135】
スキャナ内の全ての画素について、追加的な較正データセットを取得するための手順は以下の通りである:
1.Z=6,13,26のそれぞれについて、新しい強度のセットに対して較正スペクトルを補間する。現在のデモンストレーションについて、使用された強度(パーセント)は、95,90,80,70,60,50,40,30,20,15,10,6,4,2,1,0.5,0.2であった。この時点で、今や強度の共通のセットにおける各物質についての較正表が存在する。今のそのプロセスは、共通の強度のそれらの同じセットにおける他の物質についての較正表を作成するためである。
2.現在のデモンストレーションについて、要求される物質の組は、Z=3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,16,18,20,22,24,26,30,35である。物質Zについての、ヒストグラムBにおける、厚さxにおける(ここでは、定義された透過レベルの1つに対応する)スペクトルは、I(Z,B,x)と表示される。各々の要求される物質について、各強度について、新たな補間された物質スペクトルは、以下のように得られる:
【数21】
3.新たなテーブルは、実効Z処理のために使用される較正データのセット全体にその後含まれる。
4.全ての較正表は、PoCCソフトウェアへの入力のために適切なファイル形式で保存される。
【0136】
ここで留意すべきいくつかの重要な点が存在する:
1.Z<6については、処理は、補間よりはむしろ外挿である‐複数の係数のうちの一つが負になり、同時に他方は1よりも大きい。それはZ=3に至るまで許容可能ほど良好に機能しているように見えるが、それは迅速に発散し得るため、外挿についてはいくつかの注意が払われる必要がある。
2.同様にZ<26について、処理は、外挿である。ここで、利用可能な較正データを満たす(fill out)ために、スズSn及びまた鉛Pbについての較正データを含めることがより良いであろう。これらのより高いZの物質を用いた挑戦は、90%透過率‐この透過率を達成するために物質試料は非常に薄くなければならない、において、感受性の高い較正曲線を得るためである。
3.3より低いZの値を含むことにより、コスト関数は、Z=6付近の関心の領域内で合理的に良好に挙動する。これは、連続/浮動小数点実効Zを計算する処理が、6付近のZ値を正確に決定できること‐エッジにおける異常を原則的に(essentially)回避すること、又は少なくともそれらを関心の範囲の外側のZ値に押し出すこと、を確かにする。
4.より洗練された補間は、共通の交点(common point of intersection)を回避するために要求され得る‐これは、より低いZについては許容可能であるが、金属の中に移動する場合には真を保持しなくなる。各々の新たに補間された物質を得るために、いくつかのスペクトルを補間することが必要であるかもしれない。
5.全体の性能は、わずか三つの実際に測定された物質の使用によって幾分制限される。実際に、そのような優れた性能が較正物質の間隔を所与として達成されていることは非常に注目に値する。
6.鉛Pbのようなより高いZの物質は吸収端を有し、そのため、もし高い実効Zにおける正確な性能が達成されるべきならば、これらの物質に対して、結局のところいくつかの考慮が与えられる必要がある。この時点まで、吸収端はモデルに特別に組み込まれていない。
【0137】
コスト関数C(Z)は滑らかな関数であり、したがって、この滑らかな関数を最小にする実際のZの浮動小数点又は連続値は、何らかの形の補間を介して、曲線から予測されることができる。
【0138】
10%透過の場合についての補間処理の結果は、
図14に示される。全ての物質を通して非常に滑らかな進行が見られることでき、またこれは、実効Z処理の識別能力(discriminating power)を結果としてもたらすものである。実効Z範囲内の任意の測定された物質は、その物質の実効Zの非常に正確な推定を決定するために使用される較正曲線からの正確な変位を用いて、この曲線の組のどこかに置かれることができる。
【0139】
浮動小数点実効Zの実装は、コスト関数を最小にするZ値におけるコスト関数値及びこの両端のZ値を使用して、エッジにおいていくらかの特別な考慮を伴って、二次補間(quadratic interpolation)に基づいている。この手法は、(十分なスペクトル積分を用いて)既知の実効Z差が0.2よりも小さい複数の物質を正確に分解した、実効Z結果をもたらしている。
【0140】
実効Zの連続/浮動小数点推定の計算のための処理は、以下の通りである:
1.較正表内の全てのZ値においてコスト関数C(Z)を計算する。
2.C(Z)が最小化されるZの値を求める。
3.C(Z)を最小にするZ値の両側のZ値について、Zの値及び関連付けられるコスト関数値を求める。
4.二次モデルの係数が推定され、ここで最小の領域内のモデルは(数22)である:
【数22】
ここで、nはコスト関数上のノイズである。これは、今度は三つのZ値Z1、Z2及びZ3並びに関連付けられるコスト関数値C1、C2及びC3について、(数23)を用いて行列式の形式でモデル化される
【数23】
また、解は、行列反転によって(数24)として得られる:
【数24】
一般形inv(H’H)H’Cは、二次係数(quadratic coefficients)を推定するために三つよりも多くのZ値及びC値が使用される場合に対応するために使用される。
5.二次関数を最小にするZの値を計算する。転換点(turning point)があるZの値は単純に(数25)である:
【数25】
設計によって、Z値のうちの一つ(通常はエッジを除いてZ2)は最小値であり、そのため結果として生じる最適なZは最大ではなく最小であると仮定され得る。エッジには問題があり得るが、これは別個に扱われる必要がある。
【0141】
開示される実施形態において、以下の観察が行われる:
1.設計によって、Z値のうちの一つ(通常はエッジを除いてZ2)は最小値であり、そのため結果として生じる最適なZは最大ではなく最小であると仮定され得る。エッジには問題があり得るが、これは別個に扱われる必要がある。
2.もしコスト関数を最小にするZの値がいずれかのエッジにあるならば、そのときは
最小Z値の片側に二つの値を使用することが必要である。次いで、浮動小数点計算は、較正表内のZ値の範囲の外側の点に対する外挿となることがある。これが起こる場合、Z推定は迅速に発散する可能性があるので、そのときは最大又は最小のZ値推定(すなわち、どの程度の外挿が許されるか)に制限を置くように、注意が払われる必要がある。
3.6以下及び26以上のZ値の包含は、特にZ=6付近の関心の領域において、上述のエッジ効果がZ推定に悪影響を及ぼさないことを確かにするために設計されている。
4.二次係数を得ること及び関連付けられる最小の推定よりも計算上効率的な方法が存在しそうである。これは、この段階では探究されていない。
5.実際に、Z値の所与のセットについて、全ての必要な行列及び逆(inverses)は、より効率的な使用のためにオフラインで計算され、記憶されることができる。なぜなら、それらは、測定されたスペクトル及びコスト関数ではなく、Z値及びZ間隔にのみ依存するからである。
6.二次モデルは、コスト関数が良好に挙動し、滑らかであり且つ比較的ノイズが無い場合に許容可能である。非常に短い積分時間がエネルギースペクトルヒストグラムを収集するために使用される場合、コスト関数はノイズが多くなる可能性があり、ノイズのために局所的な最小値に収束し得る。この場合において、また一般に、コスト関数を平滑化し、ノイズ効果を回避するために、より洗練された補間モデルが要求され得る。これは、補間処理において三つよりも多くの点を伴い得る。
【0142】
二次モデルは、特定の物質について一貫した実効Zが得られることを確かにするための、一つのモデルに過ぎない。それは、コスト関数の挙動の正確な関数モデルであるように意図されておらず、必要であるとはみなされない。根本的な目的は、特定の物質について一貫した実効Zの推定を得ることであり、間隔の近い複数の物質の信頼性の高い分離を可能にする。二次モデルはこの目的を達成する。
【0143】
浮動小数点実効Zアルゴリズムは、ある範囲の物質試料に対して試験され、またブリーフケースに対しても幅広く試験された。性能について行われた、いくつかの観察がある。
1.高い透過値‐非常に薄い/低減衰の試料に対応する‐において、コスト関数は、ノイズが多くなる可能性があり、また、より高いZについての較正曲線は、90%を超える(>90%)透過率に対して、しばしば不十分に補間される。一つの結果として、出力は、より高いZ値を過剰に強調する傾向があった。
2.非常に低い透過率において、及び金属ブロックのエッジの近くのような透過レベルの大きな変化の近傍においては、例えその物質が金属であることが知られていた場合でも有機に偏った出力を結果として生じさせる、いくらかの散乱(scatter)が、受信スペクトルに存在する可能性がある。
3.可能性のある実効Zの先験的な知識は、以下の経験則(ヒューリスティクス)を与えた:
a.高い透過率は、非常に大きいので、有機物質又はより低いZ物質である可能性がより高い。
b.低い透過率は、低いZの物質の非常に大きな厚さが要求され得るので、より高いZの物質である可能性がより高い。
【0144】
これらの観察の一つの結果として、強度及びZの両方の関数としてコスト関数を調整するために、重み付けv(Z,I)が導入された。これらのコスト関数重みは、実効Z出力が既知の試験試料について要求されることを確かにするために調整される。PoCCにおいて、実装は三つの別々の(discrete)領域に限定されている。
1.高透過率,I>高閾値
高透過率については、出力は、かなり薄い有機物質が走査された場合の高いZに向かって幾分偏っていることが判明した。それ故に、コスト重みは有機物はについて低く、より高いZにおいて増大した。
2.中透過率,低閾値<I<高閾値
透過率の範囲の中央において、出力は概して予期される実効Zと一貫し、それ故に非常にわずかなコスト関数重み付けのみが適用された。
3.低透過率,I<低閾値
非常に低い透過率については、より高いZの物質が、時折(occasionally)低いZの物質として誤って同定されたことが判明した。これは、散乱が過剰な低エネルギーX線が検出器に到達することを可能にし得る、金属ブロックのエッジ付近において特に当てはまった。一つの結果として、低透過率において、より高いZの出力をより一貫して生成するために、低いZの物質のコストを増大させるように、コスト重みが設計された。この手法の一つの副作用は、非常に厚い有機物質が低透過率において金属として同定され始めることである。これは、根底にある誤った同定の源を除去することによってのみ、現実に克服され得る。それは、受信スペクトルにおける低エネルギーX線の過剰である。
【0145】
8.
実効Z処理実装
以下の節は、個別の処理段階及びアルゴリズムを更に詳細に概説する。
図20は、本方法において実装され(implemented)得る、様々な任意的な処理段階の概要を示す。
【0146】
8.1.
タイリング
タイリングアルゴリズムは事実上ブロック平均化関数である。タイリングアルゴリズムの目的は、一定の強度及び物質組成の、検出されることが要求される最も小さな物体を表す面積(mm
2)にわたって浮動実効Z画像を平均化することである。タイリングアルゴリズムは、我々が関心の物体を常にキャプチャすることを確かにするために、50%の重複を伴う複数のタイルを生み出す。タイリングアルゴリズムは、浮動実効Z画像内の複数の矩形タイルにわたって平均及び標準偏差を推定する。タイルの幅及び高さは、使用者によって定義される。タイルは、垂直及び水平の次元(vertical and horizontal dimensions)の両方において50%だけ重複させられる。画像の大きさNr×Nc(Nr by Nc)画素、及びタイル寸法Tr×Tc画素を所与として、垂直の次元のタイルの数は、最低(floor)で(Nr/Tr)*2となる。タイル寸法は、50%の重複を確かにするために規則正しい値(even valued)でなければならない。タイリングアルゴリズムは、各タイルにインデックスを付けるループを実行し、タイル内の全てのピクセルの平均及び標準偏差を計算する。
【0147】
タイル寸法の選択は、原則的に以下の間の妥協に帰着する:
1.検出されなければならない最も小さな物体の寸法、及び
2.要求される実効Z分解能。実効Z分散(variance)は、平均化された実効Z画素の数を用いてほぼ直線的に減少することが観測されており、そのため、より大きな面積は、より良好な実効Z分解能をもたらす。
【0148】
加えて、タイリング及びクラスタリングの着想は、この時点における洗練された画像分割(segmentation)を実装する必要性を回避するために使用されてきた。正確な実効Z測定を得ることは、いずれの場合も均一な物質の大きな連続ブロックを要求し、そのためタイリング及びクラスタリング手法は、完全な画像分割よりわずかに劣るのみであると感じられた。それにも関わらず、画像分割は、特に、より洗練された、いくつかの物体認識手法が実効Z測定と併せて使用され得る場合に、高度に不規則な形状について有利であると最終的に証明し得る。
【0149】
8.2.
クラスタリング
クラスタリングアルゴリズムは、共通の実効Zを有し、空間的に接続された複数のタイルをグループ化する。クラスタリングアルゴリズムの目的は、タイル寸法によって定義される最小物体大きさを超える面積に及ぶ物体を検出することである、2.1節参照。接続はエッジに沿って定義される。接続されたタイルには共通のクラスタIDが割り当てられる。クラスタリングアルゴリズムの出力は、クラスタマップ及びクラスタテーブルである。クラスタマップは、関連付けられたクラスタIDをもつ接続されたタイルのマトリックスである。クラスタテーブルは、クラスタ内のタイルの数、各クラスタの垂直方向及び水平方向の範囲を含む、各クラスタIDに関する情報を保持する。
【0150】
クラスタリングアルゴリズムは、タイル化された画像の行ごとの(row-wise)走査を実行する。もしタイルP(r,c)がセットA={P(r,c−1),P(r−1,c+1),P(r−1,c),P(r−1,c−1)}内の一つのタイルに接続されているならば、その時それは、クラスタIDを割り当てられる。もしタイルP(r,c)がセットAに接続されていないが、セットB={P(r,c+1),P(r+1,c−1),P(r+1,c),P(r+1,c+1)}内の一つのタイルに接続されているならば、その時そのタイルは、新しいクラスタIDを割り当てられる。セットA内のタイルとの接続性の場合において、P(r−1,c+1)については、セット内の他のもの対するクラスタIDと異なるクラスタIDを持つ可能性がある。この場合には、クラスタ併合(merge)が実行される。これは、単に一つのクラスタIDを他のクラスタIDに置き換えることによって達成され、特定の順序は重要ではない。セットA及びセットBは、画像エッジに沿って4つ、画像頂点での4つの、8つの境界条件で適合される。
【0151】
図19は、単一のタイルが無視されている、クラスタの形成を描写する。
【0152】
8.3.
脅威検出
脅威検出アルゴリズムは、近傍分類器(nearest neighbor classifier)である。このアルゴリズムは個別のタイルを分類する。アルゴリズムには二つのステップ、トレーニング及び分類が存在する。トレーニング段階は、‘脅威(threats)’と呼ばれる、ある範囲の物質について、正規化された強度を浮動実効Zに対してマッピングする探索表を確立する。この用語は、重要なことではない。探索表は、関心のある物質を単に包含する。現在の実装において、探索表は、それについて二次係数のみが記憶される、二次の適合(quadratic fit)として近似されている(threat.cppを参照)。
【0153】
分類段階の間、入力は、正規化された測定タイル強度(Imeas)、測定されたタイル浮動実効Z(Zmeas)、及び最大実効Z分類誤差(deltaZ)である。トレーニングセットにおける各物質について、もし(数26)ならば、分類器は、陽性(positive)の分類を宣言する
【数26】
ここで、C
iは、i番目の(i
th)脅威物質に関連付けられた二次関数である。
【0154】
脅威プロファイルにおける強度及び実効Zの両方の使用は、この手法の一つの重要な側面である。実効Zは、典型的に物質厚さと共に一定ではなく、そのため(厚さに関係する)強度を含めて、実効Z単独よりもはるかに優れた識別を伴う二次元の試験を提供する。
【0155】
図15は、二次補間と一緒に、ある範囲の検査された物質試料についての実効Z対強度を示す。ここで、強度による実効Zの変動は明らかである。
【0156】
8.4.
エッジ検出
エッジ検出アルゴリズムの目的は、節2.5の移動平均ウィンドウが、物質境界にまたがらないことを確かにすることである。エッジ検出は、物質エッジを宣言するために強度画像内の振幅移行(amplitude transitions)を使用する。エッジ検出アルゴリズムへの入力は、強度画像である。エッジは、水平の次元においてのみ検出される。垂直の次元においてエッジを検出しない理由は、移動平均ウィンドウが水平の次元でのみ動作するためである。強度画像内のエッジは、各検出器について計算される。エッジを検出するために一次勾配演算子(first order gradient operator)が使用される。勾配演算子マスク幅及び勾配閾値は、使用者によって定義される。
図23において描写されるように、列上に指標付けされた以下のエッジマスクL(c)を所与として、勾配は、G=sum(L(c).
*Inorm(c))であり、ここで、Inormは正規化された強度である、節2.6参照。エッジは、abs(G)>gの場合に宣言され、ここでgは使用者定義の閾値である。
【0157】
8.5.
移動平均
移動平均アルゴリズムの目的は、各検出器についての強度ヒストグラムをフィルタして、有効な信号対雑音比を増大させることである。このアルゴリズムは、スライスkを中心とする対称ウィンドウにわたって、測定された強度ヒストグラムを平均化することによって、各検出器について、フィルタされた強度ヒストグラム、スライスkを生み出す。エッジ検出器は、移動平均ウィンドウが異なる物質にまたがらないことを確かにすることにおいて重要な役割を果たす。もしウィンドウがエッジと重複するならば、平均は、最大でエッジ境界まで計算されるのみである。ウィンドウの幅は、使用者によって設定されてもよい。エッジ上では、平均化は実行されない。
図22は、移動平均がエッジにわたって移行する際の移動平均の挙動を例示する。
【0158】
より計算上効率的であり得る一つの実施形態は、適応的移動平均手法である:
1.エッジの存在下で全てのスライス上で実効Zを計算する。
2.移動平均ウィンドウの50%重複に基づいて(例えば、11画素MA長について5画素ごとに)実効Zを計算する。
【0159】
これは、正確な構成に依存して、計算速度に3‐5倍の向上をもたらし得る。
【0160】
追加的な詳細
1.
ガンマ線透過試験の実施形態
本発明の他の実施形態は、ガンマ線透過試験(Gamma-Ray Radiography)の実施形態である。そのような用途において、ガンマ線供給源(1800)、例えばコバルト60は、スキャナ(1801)のトンネルにガンマ線光子を照射するために使用されてもよい。ガンマ線供給源(1800)は遮蔽されてもよく(1802)、またコリメータ(1803)もまた、ガンマ線(1804)のファンビームを作り出すために使用されてもよい。ローラー(1805)のシステム又はコンベア等の他の装置は、積荷(1806)、小包、バッグ又は他の関心のある物品を、ガンマ線(1804)のファンビームを通過させるために使用されてもよい。ガンマ線光子は、吸収、散乱及びリコイル(recoil)を含むある範囲の相互作用を介して、積荷(1806)と相互作用するであろう。
【0161】
積荷を通過したガンマ線光子は、検出器サブシステムによってスキャナの反対側で検出されてもよい。そのような検出器サブシステム(1807)は、電気信号を生成するためにシリコン光電子増倍器に結合させられている、シンチレーション検出器のアレイであってもよい。代替的に、アレイは、ガンマ線光子の電荷への直接的な変換をすることができる、高純度ゲルマニウム(HPGe)のような半導体物質から成ってもよい。
【0162】
2.
高速パルス処理
原理的には、高速パルス処理の如何なる適した方法であっても、本明細書において記述される実施形態で使用されることができる。しかしながら、典型的なX線検査システム内に存在する高いX線フラックスは、高いパルス計測率、及び重複したX線パルスを受け取ることの高い見込みを結果としてもたらす。
【0163】
パルスパイルアップは、高速度放射線分光法の用途において長く対処すべき課題であった。従来のパルス整形の手法は、パルス持続期間を短縮するため線形フィルタを使用しており、それは、SNRを有意に低下させるかも知れず、従って数百kc/sの出力レートに制限される。放射線検出器からのデータを処理するための一つの代替的な手法は、パルスパイルアップによって損なわれた(corrupted)データを数学的にモデル化し、要求されるモデルパラメータについて解くという着想に基づく。パルスパイルアップによって損なわれたデータを破棄するのではなく回復することによって、この技術は、従来のエネルギー分解能の損失を伴わずに、高スループット、低デッドタイムのパルス処理を可能にする。
【0164】
国際公開第WO2006029475号,WO2009121130号,WO2009121131号,WO2009121132号,WO2010068996号,WO2012171059号及びWO2015085372号の開示は、本発明がパルスパイルアップ拒否(rejection)の低減と共に高速パルス処理を達成することにおいて有用であり、また、それらの全体について、本発明の実施形態において有用であるように、本明細書において逐語的に繰り返されているかのように、参照により全て本明細書に組み込まれる。また、出願人は、上記の国際公開において開示される任意の用語及び概念を、本出願における将来の請求の範囲の言語の補正において組み込む権利を留保する。
【0165】
以下の説明は、本発明に適する上記の国際公開において開示される技術からの選択を含むが、当業者は、これらの技術の全てが潜在的に有用であり、代替的手法の中からの選択は、処理速度、エネルギー決定精度、及び最大計数率を含む、様々な競合する性能制約の満足によって導かれることを、明確に理解するであろう。
【0166】
2.1.
モデルベースの高スループットパルス処理‐方法1
本明細書において簡単に記述され、国際公開第WO2006029475号(参照により組み込まれている)においてより詳細に記述される、放射線検出器からのデータを処理するためのアルゴリズムは、モデルベース(model-based)の、リアルタイムの信号処理アルゴリズムである。それは、放射線検出器y[n]の出力を、以下に示されるように特徴付ける:
【数27】
【0167】
デジタル化された放射線検出器時系列(y)は、ランダムな到着時間(τ)及び振幅(α)をもち、放射線検出器と相互作用し、予期されるパルス形状(h)及びノイズプロセス(ω)を有する、未知の数の放射事象(N)の合計としてモデル化される。
【0168】
したがって、放射線検出器のデジタル化された出力を完全に特徴付けるために、以下を推定することが望ましい:検出器の予期されるインパルス応答;デジタル化された検出器時系列における事象の数;それらの放射事象(radiation events)の各々の到着の時間;及び各事象の個々のエネルギー。ひとたびこれらのパラメータが決定されると、デジタル化された検出器データが個々の構成要素事象に正確に分解されることができ、各事象のエネルギーが決定されることができる。
【0169】
システム特性化
検出器の較正は、アルゴリズムの第一段階である;それは、検出器の時系列データを入力として取り込み、検出器の単位インパルス応答(予期される検出器からのパルス形状)を決定する。パルス較正処理のより詳細な概要については、パルスパラメータ較正を参照されたい。
【0170】
パルス局在化
検出器の単位インパルス応答が決定された後に、これは、デジタル化された検出器データ流における事象の数、及び互いに対するそれらのTOAを決定するためにパルス局在化段階によって使用される。
【0171】
デジタル化された検出器波形での事象の検出は、固定数のデータ点に指数モデル(exponential model)を適合させることによって達成される。システム特性化段階の後、パルス尾部の指数関数的減衰が十分に特徴付けられる。検出メトリック(パルスが到着したか否かについて判定を行うために最終的に使用される信号)は、指定される数のデータ点に指数曲線を適合させることによって形成される。この固定長さ‘検出ウィンドウ’は、デジタル化された検出器データにわたって連続的に作動させられ、誤差の二乗(squares)の合計が計算される(これはまた、適合残差(fit residual)の二乗の合計としても考えられ得る)。この操作は、三つの別個の動作のモードを結果としてもたらす:
1.ベースライン動作:信号が存在しない場合にデータサンプルを処理する。データが指数によって全く正確にモデル化されることができるので、誤差の二乗の合計は最小であり、全く一定のままである。
2.事象検出:放射事象が検出ウィンドウに入るときに、データは、もはや指数として正確にモデル化できない(データは、T=0の放射事象の正確な到着時間における非微分(non-differential)とみなされ得る)。その結果、誤差の二乗の合計が増加するであろう。この検出メトリックは、放射事象が検出ウィンドウの中央に配置されるまで増加し続けるであろう。
3.尾部動作:放射事象の尾部のデータを処理するとき、データ点は、指数として全く正確にモデル化される。その結果、誤差の二乗の合計はベースライン動作モードと同じレベルに戻る。
【0172】
このような指数パルス適合動作をデジタル化された検出器に対して使用することは、理想的な検出を生成する。それは、ベースラインの間は低いままであり、事象到着に応答して急速に上昇し、ひとたび放射事象の立ち下がりエッジが消失すると急速に減衰する。さらに、固定長さ検出ウィンドウにおけるADCサンプルの数を増加させることによって、検出器ノイズを抑制し、非常に低いエネルギーの事象を正確に検出することが可能である。しかしながら、(サンプルにおける)検出メトリックの幅は、検出ウィンドウと共に比例的に変動する。その結果、検出ウィンドウがより広くなるにつれて、二つの近くの分離したパルスを識別する能力は、減少させられる。
【0173】
二次ピーク検出
パルス局在化の最終段階は、検出器データ流内の放射事象の各々の到着の正確な回数及び時間に対して判定を行うことである。一つの手法は、検出メトリックに単純な閾値を適用し、閾値交差に最も近いサンプルにおいてパルス到着を宣言することである。しかしながら、単純な閾値交差はノイズの影響を受けやすく、パルス到着時間を決定することにおいて±0.5のサンプル精度しか提供しない。より正確なパルス到着時間を得るため、及びノイズに対して頑健であるために(ノイズフロアに近い低エネルギー信号を扱う際に特に重要である)、二次ピーク検出アルゴリズムが使用されてもよい。そのような手法は、二次式(quadratic)を検出メトリックのN個のサンプル(Nは5に等しくてもよい)のスライディングウインドウに適合させる。ピークが宣言されるために、我々は分解を調査し、もし曲率が許容範囲内であり、定数が閾値を超えており、且つ線形項が正から負に変化したならば、ピークを宣言する。係数はまた、サブサンプル到着時間を決定するために使用されてもよい。
【0174】
パルスエネルギー推定
パルスエネルギー推定段階は、検出器データ流内の全ての放射事象のエネルギーを決定する。その入力として、それは以下を使用する:検出器ユニットインパルス応答の先験的な知識;事象の数;及びそれらの個々の到着時間データ。等式1のデジタル化された検出器データ(y[n])はまた、以下のように行列形式で記述され得る:
【数28】
ここで、Aは、M×N行列であり、そのエントリは以下によって与えられる。
【数29】
【0175】
したがって、行列Aの列は、検出器の単位インパルス応答の複数のバージョンを包含する。個々の列の各々について、信号形状の開始点は、信号の時間的な位置によって定義される。例えば、もしデータ内の信号が位置2,40,78及び125に到達するならば、行列Aの列1は、第1行内の‘0’、第2行内の単位インパルス応答の第1データ点、第3行内の単位インパルス応答の2番目データ点、等を有するであろう。第2列は、最大で第39行まで‘0’を有し、その後に信号形式が続くであろう。第3列は、最大で第77行まで‘0’を有するであろう;第4列は、最大で第124行まで‘0’、次いで信号形式を有するであろう。それ故に、行列Aの大きさは、同定される信号の数(それは列の数になる)によって決定され、一方では、行の数は、‘時系列’内のサンプルの数に依存する。
【0176】
ひとたびシステム行列が作成されると、行列Aの一般逆行列を計算することによって使用して、各放射事象の所望のエネルギーについて解くことが可能である:
【数30】
【0177】
データ妥当性検証
リアルタイムの信号処理アルゴリズムの最終的な機能段階は、妥当性検証(validation)段階である。この段階で、以前のアルゴリズム段階によって推定されてきた全てのパラメータ(パルス形状、事象の数、到着時間及び事象エネルギー)は、検出器データの‘ノイズフリー’モデルを再構成するために、組み合わされる。
【0178】
実際のデジタル化された検出器の時系列から検出器データのこのモデルを減算することによって、推定されたパラメータの精度が決定されることができる。データセットの直線近似から残差を調べることによく似て、もし残差の大きさが小さければ、パラメータは、データを良好に記述する。しかしながら、もし大きな残差が観測されるならば、検出器データは、不十分に推定されており、データのその部分は拒否されてもよい。
【0179】
2.2.
モデルベースの高スループットパルス処理‐方法2
本明細書において簡単に記述され、国際公開第WO2010068996号(参照により組み込まれている)においてより詳細に記述される、放射線検出器からのデータを処理するためのアルゴリズムは、モデルベースの、リアルタイムの信号処理アルゴリズムである。ここで、信号処理は、少なくとも一部が変換空間(transform space)において実行される。
【0180】
一つの実施形態において、検出器出力データ内の個々の信号を分解するための方法は、以下を含む:
検出器出力データをデジタル系列(例えばデジタル時系列又はデジタル化されたスペクトル)として取得又は表現するステップ;
データ内に存在する信号の信号形式(又は同等にインパルス応答)を取得又は決定するステップ;
信号形式を数学的変換に従って変換することによって、変換された信号形式を形成するステップ;
デジタル系列を数学的変換に従って変換することによって、変換された系列を形成するステップであり、変換された系列は、変換された信号を含む、ステップ;
少なくとも変換された系列及び変換された信号形式の(並びに任意的に変換された信号の少なくとも一つのパラメータの)関数を評価し、それにより関数出力(function output)を提供するステップ;
(例えば、関数出力を複数のシヌソイド(sinusoids)としてモデル化することによって、)関数出力を一つのモデルに従ってモデル化するステップ;
モデルに基づいて、関数出力の少なくとも一つのパラメータを決定するステップ;及び
少なくとも一つの決定されたパラメータから、信号のパラメータを決定するステップ。
【0181】
検出器出力データ内の個々の信号はまた、検出器出力内又は検出器出力信号内の個々のパルスとして記述されてもよい(その場合は、信号形式はパルス形式と呼ばれ得る)ことが、当業者によって理解されるであろう。
【0182】
信号形式は、概して、データを収集するために使用されたか、又は使用されている検出器と放射線(又は他の検出された入力)との間の相互作用を特徴付けていると見なされてもよい。それは、決定されてもよく、或いは、もし以前の測定、較正又は同様のものから知られているならば、(例えば)データベースから得られてもよい。
【0183】
いくつかの実施形態において、デジタル系列を数学的な変換に従って変換することは、デジタル系列のモデルを形成すること及びデジタル系列のモデルを数学的な変換に従って変換することを含む。
【0184】
特定の実施形態において、方法は、例えば周波数及び振幅のような、変換された信号の複数のパラメータを決定することを含む。
【0185】
特定の具体的な実施形態において、変換は、例えば高速フーリエ変換若しくは離散フーリエ変換のようなフーリエ変換、又はウェーブレット変換である。実際に、特定の実施形態において、変換は、信号形式及びデジタル系列にそれぞれ幾分異なるように適用されてもよい。例えば、一つの実施形態において、数学的変換はフーリエ変換であるが、信号形式は離散フーリエ変換を用いて変換され、デジタル系列は高速フーリエ変換を用いて変換される。
【0186】
一つの実施形態において、変換はフーリエ変換であり、関数は以下のように表示可能である
【数31】
ここで、X(k)は、変換された系列であり、H(k)は、変換された信号形式である。
【0187】
したがって、この方法は、信号のパラメータ、及びそれ故に可能な限り多くのデータのパラメータを決定することを試みるが、以下に記述されるように、いくつかのデータについては、そうすることは可能ではない(それ故に‘破損データ’と呼ばれる)ことが明確に理解されるであろう。用語‘信号’は、それは個々の信号の合計を含む全体としての出力信号ではなく、個々の検出事象に対応する出力を参照するので、この文脈において‘パルス’と相互交換可能であることが理解されるであろう。信号の時間的な位置(又はタイミング)は、例えば信号の最大値又は信号の先端(leading edge)の時間(又は時間軸内の位置)に従うなど、様々な方法で測定又は表現されてもよいことも、明確に理解されるであろう。典型的に、これは、到着時間(‘到着の時間’)又は検出時間として記述される。
【0188】
用語‘検出器データ’は、検出器の内部又は外側の、関連付けられたエレクトロニクス又は他のエレクトロニクスによって続いて処理されるかどうかに関わらず、検出器に由来しているデータを参照することもまた、理解されるであろう。
【0189】
信号形式(又はインパルス応答)は、一つ又はそれ以上の単一事象の検出に対する検出器のインパルス応答(例えば時間領域応答又は周波数領域応答等)を測定し、そのデータから信号形式又はインパルスを導き出すことを伴う較正処理によって決定されてもよい。次いで、この信号形式の関数形式が、例えば多項式、指数関数又はスプラインのような、適した関数を用いてデータを補間すること(又はデータに適合させること)によって得られてもよい。次いで、フィルタ(例えば逆フィルタ等)が、この検出器信号形式から較正されてもよい。信号パラメータの初期的な推定は、フィルタを用いた検出器からの出力データの畳み込み(convolution)によって行われてもよい。特別な関心のある信号パラメータは、信号の数、及び複数の信号の各々の時間的な位置(又は到着の時間)を含む。
【0190】
次いで、関心のある特定の信号パラメータは、更に精緻化され(refined)てもよい。
【0191】
パラメータ推定の精度は、(信号パラメータ及び検出器インパルス応答の知識から構成された)検出器データ流のモデルと実際の検出器出力とを比較することによって、決定又は‘妥当性検証’されてもよい。この妥当性検証処理が、いくつかのパラメータが不十分に正確であると決定した場合は、これらのパラメータは破棄される。この方法を使用する分光分析において、十分に正確であるとみなされるエネルギーパラメータが、ヒストグラムとして表されてもよい。
【0192】
データは、異なる形式の信号を含んでもよい。この場合において、方法は、信号の各々の信号形式を可能な限り決定することを含んでもよい。
【0193】
一つの実施形態において、方法は、データから、複数の信号形式の連続的な信号形式に許容可能なほど一致するそれらの信号を漸進的に減算し、複数の信号形式のいずれにも許容可能なほど一致しないそれらの信号を拒否することを含む。
【0194】
2.3.
モデルベースの高スループットパルス処理‐方法3
本明細書において簡単に記述され、国際公開第WO2012171059号(参照により組み込まれている)においてより詳細に記述される、放射線検出器からのデータを処理するためのアルゴリズムは、モデルベースの、リアルタイムの信号処理アルゴリズムである。ここで、信号内のパルスの位置及び振幅を決定することは、関数を検出器出力データに適合させることによって達成される。
【0195】
方法は、以下によって、検出器出力データ内の一つのパルス又は複数のパルスを検出することを更に含む:
データにわたって連続的なウィンドウ位置へウィンドウをスライドさせるステップ;
各ウィンドウ位置において、ウィンドウ内のデータへのパルス適合を実行することによって、可能なパルスを同定するステップ;
可能なパルスのうちのいずれが、それぞれのウィンドウ位置の開始前且つ開始付近のパルス開始降下(pulse start falling)及びそれぞれのウィンドウ位置におけるウィンドウ内のノイズの標準偏差を超えるピーク振幅を有するかを決定するステップ;及び
可能なパルスのうちの、それぞれのウィンドウ位置の開始の1、2又は3サンプル前のパルス開始降下及びそれぞれのウィンドウ位置におけるウィンドウ内のノイズの標準偏差を超えるピーク振幅を有するものを、パルスとして同定するか、又は出力するステップ。
【0196】
多くの実施形態において、一つ又はそれ以上の関数は、時間の関数である。
【0197】
しかしながら、それらの実施形態のうちのいくつかにおいて、一つ又はそれ以上の関数が排他的に時間の機能ではないことを当業者は明確に理解するであろう。
【0198】
方法は、一つ又はそれ以上の関数を検出器出力データに適合させる前に、検出器出力データをデジタル形式で提供すること、又は検出器出力データをデジタル形式に変換すること含んでもよい。
【0199】
一つの実施形態において、一つ又はそれ以上の関数は、以下(数32)の形式である:
【数32】
【0200】
この実施形態において、例えば(数33)の式によって、t=0,1,2,…について(v(0)=0を用いて)、v(t)は数値的に計算することができる。
【数33】
【0201】
数学的には、β≠αであればいつでも、(数34)であるが、
【数34】
上記の式は、数値的にv(t)を評価するために使用されてもよい。さらに、上記の式は、α=βであっても正しいままであり、その場合(数35)に減少する。
【数35】
【0202】
一つの実施形態において、一つ又はそれ以上の関数は、以下(数36)の形式である:
【数36】
また、方法は、以下を含む方法を用いて、パルスの位置及び振幅を決定することを含む:
(付録で更に議論されるように)(数37)の畳み込みとして、基準パルスp(t)を定義すること、
【数37】
(数38)から、(数39)を用いて、f(t)の位置τ及び振幅Aを決定すること。
【数38】
【数39】
【0203】
本発明の本態様は、異なるが数学的に同等な、この手法の表現を企図していることを、当業者は明確に理解するであろう。
【0204】
当業者は、(数40)であることを明確に理解するであろう:
【数40】
【0205】
(数38)の展開は、以下の二つの等式を与える:
【数41】
【数42】
ここで、(数43)である。
【数43】
βがαと等しくなる極限(limit)において、定数(constant)γは1になり、等式(1)は(数44)となる。
【数44】
したがって、この形式は、τを計算するための数値的に安定した方法での使用に適している。
【0206】
もし|β−α|が非常に小さければ、γの計算に対して注意が払われる必要がある。これは、テイラー展開の最初の数項を合計することによって行われてもよい:
【数45】
【0207】
等式(1)を解くことは、特に左辺がτで単調であるため、二分法を用いる等で数値的に行われてもよい。τの異なる値に対する左辺の決定は、小さなτについてのテイラー級数展開を用いる等の、任意の適した技術によって行われてもよい。(実際には、τの値は概して小さいであろう。なぜなら、概してノイズは、遠くの過去に開始されたパルスの正確な特徴付けを妨げるためである。)
【0208】
等式(1)のτにおける線形近似は、(数46)であり、もしβ=αであれば厳密(exact)である。厳密な一般解は(理論上)、(数47)であり、そのテイラー級数展開は、(数48)である:
【数46】
【数47】
【数48】
これは、|x|<1であれば有効である。
【0209】
方法は、(数49)を要求することによってτを制約することを含んでもよい。
【数49】
したがって、等式の左辺はτで単調であるため、(数49)という制約は、a及びbに対する(数50)という制約と等価であり、ここで、スカラーcは、(数51)及び(数52)によって与えられる
【数50】
【数51】
【数52】
実際に、もしτ
*=−1ならば、そのとき(数53)である。
【数53】
このように、制約された最適化を提供することが可能である。
この制約は、α及びβが負でなく、α>βであるという制約でも実装され得る。
【0210】
方法はまた、パルスの振幅を制約することを含んでもよい。これは、例えば、適合されたパルスが過小又は過大となることを防ぐために使用されてもよい。実際に、上記の等式(2)を参照して、もしτが−1と0との間にあるように制約されていれば、そのときAは、γ
−1aとγ
−ae
βaとの間にある。したがって、aを制約することは、振幅Aを制約する。
【0211】
別の特定の実施形態によれば、関数fは、三つの指数を有する関数の形である。この実施形態のある例において、時定数τ
1,…,τ
3は既知且つ類似しておらず(そのため数値的な不正確さの問題がより少なくなる)、方法は、曲線を適合させることを含む:
【数54】
【0212】
この実施形態の他の例において、時定数τ
1,…,τ
3は既知且つ(数55)のように昇順であり、関数fを適合させることは、基底ベクトルを使用することを含む:
【数55】
【数56】
【数57】
【数58】
【0213】
参考のため、もし時定数が異なるならば、そのときは(数59)となる
【数59】
ここで、(数60)である。
【数60】
【0214】
しかしながら、‐二つの未知数(すなわち、パルスの位置及び振幅)及び(二つの基底ベクトルから由来する)二つの等式があった、先の‘二重指数関数’の場合と違い、この‘三重指数関数’の場合においては、二つの未知数であるが、三つの等式があることに留意されたい。したがって、これらの等式を反転する(それにより、パルスの位置及び振幅を回復する)多くの異なる方法があり、概して、これは、ノイズに対して頑健な戦略になるであろう。
【0215】
他の特定の実施形態において、関数fは、(数61)の形である:
【数61】
ここで、α及びβはスカラー係数であり、方法は、a及びbを決定することを含む。
【0216】
この手法は、α
[外1]
βである用途においては適切ではないかもしれないが、いくつかの用途においては、これが起こりそうにないことが知られており、この実施形態を許容可能にしている。
【0217】
この実施形態の一つの例において、位置を決定することは、t
*(a,b)を決定することを含み、ここで(数62)である:
【数62】
【0218】
e
−αt及びe
−βtを使用するこの実施形態は、(別個のままである、上述の実施形態における項v(t)及びe
−αtと違って)βがαに近付くにつれてこれらの項が収束するという不利を有することが、明確に理解されるであろう。実際に、e
−αtは、−∞で生じたパルスの尾部に対応すると言える(一方で、v(t)は時間0において生じたパルスを表す)。
【0219】
関数fは、複数の関数の重ね合わせ(superposition)であってもよい。
【0220】
方法は、t=t
*(a,b)においてf=f(f)を評価することによって、パルス振幅を決定することを含んでもよい。
【0221】
このように、本発明は、概して、検出器出力データのノイズの多い観測からパルスの合計の位置及び振幅を推定するための方法及び装置に関する。それは、ベンチマークとしての最尤推定値を提示した(それは、ノイズが加法性白色ガウス雑音であるため、最小平均二乗誤差推定値に等しい)。
【0222】
方法は、一つ又はそれ以上の関数を適合させることの前に、データをローパスフィルタにかけることを含んでもよい。
【0223】
しかしながら、一つの実施形態において、方法は、検出器出力データ内の低周波数アーチファクトを許容するように、一つ又はそれ以上の関数を適応させることを含む。これは、一つの例において、三つの指数関数の線形結合(linear combination)として一つ又はそれ以上の関数を表現することによって行われてもよい(例えば、(数63))。
【数63】
【0224】
特定の実施形態において、方法は、ウィンドウ内で開始するパルスを有する如何なる推定も、ウィンドウの境界で開始するように強制することを含む。
【0225】
特定の実施形態において、方法は、ウィンドウサイズを最大化すること又はウィンドウサイズを変動させることを含む。
【0226】
一つの実施形態において、方法は、一つ又はそれ以上の関数を変換された検出器出力データに適合させることの前に、変換を用いて検出器出力データを変換することを含む。
【0227】
この手法は、変換空間内で実行される場合に分析が単純化される用途において、望ましいことがある。そのような状況では、方法は、続いて一つ又はそれ以上の関数に対して逆変換を適用することを含んでもよいが、いくつか場合において、変換空間内において所望の情報を得ることが可能であり得る。
【0228】
変換は、ラプラス変換、フーリエ変換又は他の変換であってもよい。
【0229】
一つの実施形態において、ピークの位置を推定することは、ウィンドウの開始とパルスの開始との間のオフセットを最小化することを含む。
【0230】
特定の実施形態において、方法は、以下によって、データ内の一つのパルス又は複数のパルスを検出することを更に含む:
データにわたって連続的なウィンドウ位置へウィンドウをスライドさせるステップ;
各ウィンドウ位置において、ウィンドウ内のデータへのパルス適合を実行することによって、可能なパルスを同定するステップ;
可能なパルスのうちのいずれが、それぞれのウィンドウ位置の開始前且つ開始付近のパルス開始降下及びそれぞれのウィンドウ位置におけるウィンドウ内のノイズの標準偏差を超えるピーク振幅を有するかを決定するステップ;及び
可能なパルスのうちの、それぞれのウィンドウ位置の開始の1、2又は3サンプル前のパルス開始降下及びそれぞれのウィンドウ位置におけるウィンドウ内のノイズの標準偏差を超えるピーク振幅を有するものを、パルスとして同定するか、又は出力するステップ。
【0231】
本発明の第二の広い態様によれば、本発明は、検出器出力データ内のパルスの位置を特定するための方法であって:
複数の関数をデータに適合させるステップ;
それらの関数のうちのいずれであっても、そのデータをモデル化するときに選ばれたメトリックを最適化する、最良適合の関数を決定するステップ;及び
その最良適合の関数から、そのパルスのピークの位置及び振幅を決定するステップ、
を含む、方法を提供する。
【0232】
一つの実施形態において、一つ又はそれ以上の関数の各々は、複数の関数の重ね合わせである。
【0233】
2.4.
モデルベースの高スループットパルス処理‐方法4
本明細書において簡単に記述され、国際公開第WO2015085372号(参照により組み込まれている)においてより詳細に記述される、放射線検出器からのデータを処理するためのアルゴリズムは、モデルベースの、リアルタイムの信号処理アルゴリズムである。ここで、検出器出力データ内の個々の信号を分解することは、段階的なデータ(stepped data)を生成するために検出器データを変換すること又は既に段階的な形式であるデータを使用すること、並びに少なくとも一つの信号を検出すること及び少なくとも部分的にその段階的なデータに基づいて信号のパラメータを推定すること、を含む。
【0234】
方法は、段階的なデータ又は積分データを生成するために検出器出力データを変換すること、少なくとも一つの事象を検出すること、及びその事象に関連付けられるパルスエネルギーを推定すること、を含む。
【0235】
いくつか実施形態において、少なくとも一つの事象を検出することは、予期されるパルス形状を、変換されたパルス形状データのスライディングウインドウ区分と適合させることによって起こる。
【0236】
いくつか実施形態において、方法は、信号内のピークを検出するステップを更に含み、ここで、検出メトリックは、変換されたデータに対して適用される。いくつか実施形態において、検出メトリックは単純な閾値に対して比較される‐もしメトリックが閾値より小さければ、そのときパルスは存在しないとみなされる‐もしそれが閾値を越えれば、そのとき一つ又はそれ以上のパルスが存在し得る。正(positive)から負(negative)へ変化するピークの傾きが事象を示す場合に、検出メトリックにおける有意なピークの宣言は実行される。
【0237】
全てのデータを適当に特徴付けることが可能でない場合があり(特徴付けられないデータは‘破損データ’と呼ばれる);そのような破損データは、任意的に拒否されてもよいことが、明確に理解されるであろう。用語‘信号’は、それは個々の信号の合計を含む全体としての出力信号ではなく、個々の検出事象に対応する出力を参照するので、この文脈において‘パルス’と相互交換可能であることが理解されるであろう。信号の時間的な位置(又はタイミング)は、例えば信号の最大値又は信号の先端の時間(又は時間軸内の位置)に従うなど、様々な方法で測定又は表現されてもよいことも、明確に理解されるであろう。典型的に、これは、到着時間(‘到着の時間’)又は検出時間として記述される。
【0238】
用語‘検出器データ’は、検出器の内部又は外側の、関連付けられたエレクトロニクス又は他のエレクトロニクスによって続いて処理されるかどうかに関わらず、検出器に由来しているデータを参照することもまた、理解されるであろう。
【0239】
方法は、現実の変換されたパルスデータが理想的な変換されたパルスと異なる、各パルスのエッジ領域が、計算から排除されることを確かにするために、立ち下がりエッジの周りのセットウィンドウの中のサンプルを検出することを任意的に含む。
【0240】
方法は、データ内のエネルギー推定値の分散のアセスメント、及びモデル化されたデータの妥当性検証を任意的に含む。
【0241】
方法は、処理されたデータ出力からデータのモデルを構築すること、及び検出器出力データとモデルとの間の比較に基づいてモデル化の精度を決定することを含んでもよい。
【0242】
方法4の一つの例示的な実施形態において、方法は、信号パラメータを検出器インパルス応答と組み合わせて使用して、検出器出力のモデルを作成することを含む。他の例示的な実施形態において、方法は、例えば最小二乗を使用することによって、実際の検出器出力データを検出器出力のモデルと比較することによる誤差検出を実行することを含んでもよい。
【0243】
方法は、十分に正確でないとみなされたエネルギー推定を破棄することを含んでもよい。一つの実施形態において、方法は、ヒストグラム内の全ての十分に正確なエネルギー推定を提示することを含む。
【0244】
3.
パルスパイルアップ削減
適切な高速パルス処理方法が使用される場合であっても、間隔の近いパルス到着の間を識別することが可能でない状況が依然として存在するであろう。そのような状況は、パルス検出アルゴリズムが別個のパルスの到着を決定することができるウィンドウの中に、多数のパルスが到着するときに発生する。ADCサンプリングレート、パルス到着統計、及び検出器エレクトロニクスに依存して、パイルアップの総量は、尚も1Mc/sで5%程度であり得る。パイルアップは、2パルスを単一のパルスとして検出することの結果であり得るが、3パルスを1ルスとして検出することも可能性があり、一方で、4パルス又はそれ以上のパルスを1パルスとして検出することは可能ではあるが、はるかに見込みが小さい。
【0245】
3.1.
問題解決‐2パルスパイルアップ除去
もし根底にある(underlying)X線エネルギースペクトルがxと表示されるならば、そのとき2パルスパイルアップを有するスペクトルは(数64)である:
【数64】
ここで、*は畳み込みを表し、k
1は、データ観測から推定されたか或いは理論から計算されたパイルアップ係数である。根底にあるスペクトルxを推定するために、以下の処理が実行される:
1.各辺のFFTをとる。ここで今は畳み込みが乗算になり、そのため(数65)となる
【数65】
2.各FFTビンnにおいて、X(n)及びY(n)の両方が複素数(complex)であることを念頭に置いて、二次方程式(数66)を解く。解は、(数67)である
【数66】
【数67】
3.取るべき正しい解は“正(positive)”の解である。また、それは、複素平方根に正しい解を取ることにも依存する。
4.今、(数68)の逆FFTを取ることによって、パイルアップの無いスペクトルを計算する。
【数68】
【数69】
正しいパイルアップ係数を使用して、パイルアップが完全に除去されることが示される。
【0246】
3.2.
問題解決‐2パルス又は3パルスのパイルアップ除去
実際に、X線走査システムについて測定されるスペクトルについて、2パルスパイルアップのみが除去された場合は、より高いエネルギーにおいて依然としていくつかの残余パイルアップが存在したことが観測された。これは、これらのより高いエネルギーにおいて、いくつかの除去されない3(又はそれ以上)パルスパイルアップが存在したことを示した。この残余パイルアップのいくらか及び望むべくは大半を除去するために、モデルは、今は3パルスパイルアップを含むように拡張され、そのため受信スペクトルは以下によって与えられる:
【数70】
ここで、*は畳み込みを表し、k
1及びk
2は、それぞれ2パルスパイルアップ及び3パルスパイルアップについてのパイルアップ係数である。根底にあるスペクトルxを推定するために、以下の処理が実行される:
1.各辺のFFTをとる。ここで今は畳み込みが乗算になり、そのため(数71)となる
【数71】
2.FFT内のN個のビンの各々について、X及びYの両方が複素数であることを念頭に置いて、三次方程式(数72)を解く。
【数72】
二次と同様に、閉じた形の解が存在するが、三次に対する解は次のようにかなり複雑である:
a.X(n)及びc(n)が複素数であること留意しながら、k
2で割る。そのため今、各等式は(数73)の形になる
【数73】
b.(数74)を計算する
【数74】
c.(数75)を計算する
【数75】
d.Pをチェックし、望ましい場合は否定する。もしRe(conj(R).P)<0ならば、そのときP=−Pである。これは、次のステップにおいて正確な立方根が得られることを確かにするためである。
e.(数76)を計算する
【数76】
f.(数77)を計算する
【数77】
g.三次方程式に対する三つの解を計算する:
【数78】
3.(数79)に割り当てるべき解を選ぶ。正しい解は、r
2及びr
3の最も小さな大きさを伴うものである。
【数79】
【数80】
4.今、(数81)の逆FFTを取ることによって、パイルアップの無いスペクトルを計算する。
【数81】
【数82】
【0247】
正しいパイルアップ係数を使用して、パイルアップが完全に除去されることが、
図6に示される。もし同じデータが、2パルスパイルアップのみを仮定する二次ソルバー(solver)を用いて処理されるならば、より高いエネルギー値においてスペクトル内に残余パイルアップが依然として存在し、より低いエネルギーにおいてスペクトルのわずかな歪みが存在することが、
図7において見られることができる。
【0248】
4.
最適なスペクトル平滑化ウィンドウの設計
エネルギースペクトルの平滑化は、試料画像において高い空間分解能を達成するために、スペクトル測定のための持続時間が非常に短いX線検査システムにおいて特に有用である。広域エネルギーX線走査システムによって生成される典型的なエネルギースペクトルは、ほぼ排他的に低周波数成分を有する傾向があることが見出されている。最初に通信帯域幅を縮小するため、ただしまた計算上の要求を削減し、スペクトルを平滑化するという追加の利点を提供するために、スペクトルデータはFFTを通過させられる。
【0249】
FFTの後、エネルギースペクトルを正確に再構成するためにはFFTビンのわずか約1/8を保持するだけでよいので、FFTビンの大部分は破棄される。例えば、もし512個の計算されたヒストグラムビンがあるならば、32個の複素FFTビンのみが維持される。最後の32個の複素FFTビンはこれらのビンの複素共役に過ぎず、残りの448個のビンは(ほとんど)情報を含まない。
【0250】
これらのFFTビンを破棄することの効果は、以下の通りである:
1.ノイズ拒否を提供する。
2.(iFFT後に)再構成されたスペクトルをフィルタする
しかしながら、もし矩形FFTウィンドウが適用されるならば、iFFT後に、測定されるスペクトルは、sinc関数を用いて実質的に畳み込まれる。これは、sinc関数の長い範囲及び大きなリンギングのために望ましくない。
【0251】
FFTウィンドウ関数設計を改善するために、以下の手法が採用された:
1.所望の“時間領域”ウィンドウを指定する。この例においては、レイズドコサインパルスが使用される。
2.所望のウィンドウのFFTを取る(現実のFFT出力のみを与えるために0に対して対称にされる)。
3.この結果に既存の矩形ウィンドウのみを乗算する。
4.矩形ウィンドウを乗算することから結果として生じるリンギングを更に削減するために、エッジ上にわずかなテーパリングを有するウィンドウを更に乗算する。
【0252】
図8は、達成される結果を示す。矩形ウィンドウは、単独で使用されると、sinc関数を用いて畳み込まれた測定スペクトルを結果としてもたらす、約10サンプルの中央の振幅における幅であるが、有意な振動‐最初の負に向かうピークにおいて約22%、を伴う。使用者ウィンドウwを注意深く定義することにより、非常に小さな振動の本質的な性質‐約0.2%を有する、本質的にほぼレイズドコサインである“時間”領域応答を達成することが可能である。しかしながら、中央の振幅における幅は約20サンプルに増大する。
【0253】
通信及び計算負担を削減するためにFFT及びデータ切り捨てが使用されたが、適切に設計されたウィンドウ関数の追加的な利点は、受信されたエネルギースペクトルが処理前に平滑化され、同様の結果を達成しながら、実効Z推定におけるノイズの有意な削減、及び実効Z推定におけるより少ないビンの使用の潜在能力を、結果としてもたらすことである。
【0254】
5.
パルスパラメータ較正
以下は、(数83)の形式のパルスに関する、受信されたパルスパラメータα及びβの較正のための一つの適した方法である:
【数83】
ここで、α及びβは、それぞれ立ち下がりエッジ時定数及び立ち上がり時定数であり、t
0は到着のパルス時間であり、T
aはパルス平均化ウィンドウであり、Aはパルスエネルギーに関するパルススケーリング因数である。
【0255】
パルスパラメータは、デジタル化された検出器信号の時系列捕捉から、以下のように推定されてもよい:
1.X線がオンの期間の間に得られた、デジタル化された検出器信号のサンプルの数を取得する。全体としてのパルスレートは、分離されたパルスが抽出される程十分に低い。パルスパラメータに依存して、高速パルスの場合は、100MHzサンプルレート及び最大で500kパルス毎秒までの計数率において、約500kのサンプルを使用することが適当であり得る。
2.(nump0×サンプルレート(sampleRate)/名目計数率(nominalCountRate))の長さのサンプルのブロックを抽出する。nump0=40、サンプルレート100MS/s、名目計数率100kcsについて、これは、40,000サンプルである。
3.ノイズ閾値nthrを計算する
a.ヒストグラムデータブロック‐ヒストグラムビンは、14ビットの符号付きデータ(signed data)についてサンプルデータ+/−2^13の範囲内の整数である。
b.最高値のビンを求める。これは推定ノイズ平均である。
c.レベルがピークの0.63に降下するビンを求める。ピークとの差は、推定ノイズ標準偏差(シグマ)である
d.ノイズ閾値を平均から2シグマに設定する。nthr=ノイズ平均(noiseMean)+2×ノイズシグマ(noiseSigma)。用途に依存して、2以外の因数も使用され得る。
4.信号閾値sthrを計算する
a.[−1 −1 −1 0 1 1 1]の形式の“ジャンプ”フィルタを用いてデータブロックをフィルタする。
b.検出閾値をnthrに設定し、4xノイズシグマのステップで増加させる。
c.フィルタされたデータを閾値処理(Threshold)し、データがsthrを超えるランの数を決定する。“ラン”は、全てsthrを超え、sthrより低いサンプルによって各端で終結される、連続したサンプルのシーケンスである。
d.ステップkにおいてnruns(k)−nruns(k−1)>=−1となるまで、検出閾値の増加を継続する。すなわち、ランの数が減少をやめるまでである。(注:この停止基準は、より高い計数率において悲観的な閾値を生成する可能性がある)。
e.ステップkにおいて、sthrを現在の閾値に設定する。
5.計数率を、nruns(k)/(バッファ長(buffer length)/サンプルレート(sample Rate))として推定する。
6.任意的ステップ:もし計数率推定が名目計数率の半分以下又は2倍以上であるならば、nump0の検出パルスに近づくように、計数率推定から計算されたデータバッファー長を用いてノイズ及び信号の閾値計算をやり直す。
7.パルス検出状態機械を実装する。第一に、パルス長lenpを推定するために、nump1=50パルスを検出する(初期的にはlenpを0に設定する)。次いで、完全なパラメータ推定及び最適化のために、nump2=600パルスを検出する。パルス検出状態機械は、以下の通りである:
a.“seekPulse”状態に入る(Enter)
b.値がsthrを超えるときに、“detPulse”状態に入る
c.“detPulse”状態において、sthr以下の値を探索する。“seekEndPulse”状態に入る
d.“seekEndPulse”状態において
i.もし値>sthrであれば、パルスの終了前に新たな検出が起こっている。“pulsePileUp”状態を入る
ii.もし値<nthr且つパルス長(pulseLength)>lenpであれば、妥当なパルスの終了が検出される‐パルスの開始/終了/長さのパラメータを記録し、“seekPulse”状態に再び入る
e.“pulsePileUp”状態において、sthr以下の値を探索し、次いで“seekEndPileup”状態に入る
f.“seekEndPileup”において、状態を変更する
i.もし値>sthrであれば、パイルアップ事象の終了前に新たな検出が起こっており、更なるパイルアップを示す。“pulsePileUp”状態を戻る
ii.もし値<nthr且つパルス長(pulseLength)>lenpであれば、パイルアップ事象の終了に到達している。パルスの詳細を記録し、パイルアップとして印を付ける。そのため、それは較正に使用されない。実際には、このパルス事象に関する全ての詳細は、較正に使用されないので、破棄されてもよい。
8.第一のnump1の妥当な(分離された)パルスについて、以下を行う:
a.到着の時間(t0)立ち上がりエッジ指数(ベータ)、立ち下がりエッジ指数(アルファ)、平均化時間(Ta)、最大信号(Smax)、最大の時間(tmax)、パルスエネルギー(E)を計算する。
b.もし実際には一つよりも多くのパルス(未検出パイルアップ)が存在するようであれば、いくつかのパルスは、この時点で拒否されてもよい‐これは、フィルタされたデータの導関数(derivative)における複数のゼロ交差によって示される(導関数がゼロ=局所的な最大/最小位置)。
c.パルス長推定値を7/中央値(アルファ)に設定する。これは、パルスがピーク値の0.001に低下するサンプルについての近似値をもたらす。より正確な計算は、必要に応じてアルファ及びベータを使用して得られることができるが、0.001の閾値はいずれの場合も幾分任意的であり、尾部においてパルスはゆっくりとゼロに収束する。
9.ステップ8に戻り、nump2パルスを取得する。nump2=600が使用されているが、これは、幾分任意的であり、どれだけ多くのパルスがテストデータ内に実際にあったかに基づく。これらのパルスの半分のみが最終的に較正に使用され、そのためnump2は、較正プロセスにおいて要求される(所望の)パルスの数の2倍である必要がある。
10.nump2パルスの各々について:
a.到着の時間(t0)立ち上がりエッジ指数(ベータ)、立ち下がりエッジ指数(アルファ)、平均化時間(Ta)、最大信号(Smax)、最大の時間(tmax)、パルスエネルギー(E)を計算する。再び、いくつかのパルスは、もしそれらが未検出パイルアップであるようであれば、拒否されてもよい。
b.パルスをエネルギーシーケンスの増加にソートする。
c.上部四分位エネルギー値及び下部四分位エネルギー値を計算する。上部四分位及び下部四分位内のパルスを破棄する。これは、サンプルから外れ値のエネルギー値を効果的に除去するが、パルスエネルギーの混合においては、これは行うべき最善のことではないかも知れない。実際に、アルファ、ベータ又は最小二乗コスト関数にソートを行い、これに基づいて破棄する方が良いかも知れない。今のところ、エネルギーソートは適当であると思われる。
d.残りのパルスについて、今はnump2の半分のみ(そのため、もしnump2=600であれば、約300)である
i.パラメータ(アルファ、ベータ、Ta、t0)から、推定パルス形状を計算する。
ii.実際の受信パルスを、そのエネルギーによって正規化する。
iii.コスト関数=推定されたパルスと実際のパルスとの間の誤差の二乗の合計を計算する(両方とも、名目的に単位エネルギーであるように正規化される)。
iv.反復最小二乗最適化を実行して、最終コスト関数及び最小二乗オプティマイザの収束のための反復の数と共に、アルファ、ベータ、Taの最適推定値を得る。注:近似ガウス・ニュートンLSオプティマイザが実装されている。完全な3×3ヤコビアンの代わりに、各次元に対する一連の1Dヤコビアンが計算される。これらは数値的な導関数であり、そのため実質的な誤差を受ける可能性がある。これは、もし関数が良好に挙動しなければ、発散のリスクが大きく、軌道が常に最適な方向にあるとは限らないことを意味する。この形式で関数を使用することは推奨されないが、もし効率的なLSオプティマイザが利用できなければ、より頑健な実装が提供され得る。
11.最小二乗最適化結果から、アルファ、ベータ、Taの最終値を設定する。これは、最適化されたパラメータの中央値又は平均値のいずれであってもよい。t0の値は、a)t0=0(従って、パルスはサンプルk<0についての信号を有する)、又は、b)t0=ceil(Ta)、この場合パルスはk=0においてゼロであり、k>=1から正の値を有する、のいずれかとなるように、任意的に設定されることができる。
12.パルス形式p(t)は、式及び推定されたTa、α及びβから直接的に計算されてもよい。
【0256】
6.
ベースライン追跡のための方法
パルスのエネルギーを正確に決定するために、検出器からの信号内のDCオフセット(又は信号ベースライン、相互交換可能に使用される)を考慮することが望ましい。このDCオフセットは、アナログエレクトロニクスのバイアスレベル、アナログデジタル変換、及び検出器自体を含む様々なソースから発生し得る。制御理論は、信号の積分に対して比例的なフィードバック信号を生み出すことによってDCオフセット誤差は追跡され、ゼロに減少させられ得ることを示唆する‐しかしながら、パルス処理の場合には重要な問題がある。パルスは、非ゼロ平均を有する信号に追加的な特徴を導入する。これは、パルスエネルギー、計数率及びパルス形状に依存するバイアスを導入する。それは、フィードバック信号を破損し、標準制御ループ追跡がDCオフセットをうまく除去することを阻害する。
【0257】
この課題を克服するために、検出器信号出力は、アナログエレクトロニクスによって導入されるパルス整形効果を除去するために、デジタル処理される。DCオフセットが存在しない場合、この処理された信号は、パルス到着間の領域において一定値を有する信号形状、及びパルスが到着するところの値に急激な変化をもたらす。もし残余DCオフセットが検出器信号内に存在するならば、処理された信号は、パルス到達間の領域において時間と共に直線的に変化する。この信号の傾きに対して比例的な誤差フィードバック信号は、二つのサンプルの間の差を取ることによって形成されてもよい。これらのサンプルは連続する必要はなく、時間的に‘N’個のサンプルによって分離されてもよい。‘N’のために適切な値を選ぶことによって、適した信号対雑音比を有する信号が、フィードバックルックを駆動するために見出され得る。
【0258】
パルス事象によって導入されるバイアスの影響力を低減するために、ベースライン追跡ループは、フィードバック誤差信号を生み出すために使用される二つのサンプルの間にパルスが到着した場合には、更新されない。
【0259】
バイアスの影響力は、フィードバック誤差信号を生み出すために使用されるサンプルのいずれかの側のガード領域内にパルスが到着した場合には、ベースライン追跡ループが更新することを防止することによって、更に低減され得る。
【0260】
パルス到着によって引き起こされるバイアスのために、処理された検出器信号の値は、パルスが到着するたびに増加する。これは、結局のところ、信号の値を記憶するために使用される内部レジスタをオーバーフローさせる。処理された信号の値は監視され、オーバーフローが検出される場合には、オーバーフローの影響が過ぎ去るまでベースライン追跡ループの更新は防止されることが、留意されるべきである。
【0261】
サンプルnで処理されたパルス信号をx(n)と表示すると、以下のステップは、DC(n)と表示される、DCオフセット推定に対する更新を計算するための手順を要約する:
1.Nサンプル離れた信号サンプルの間の差を計算する2.更新が適用されるべきかどうかを決定する。以下の場合にはDC更新を適用しない
a.サンプルnとサンプルn+Nとの間のサンプルにおいて、パルス到着が検出される。
b.先に検出されたパルスからのトランジェントが減衰していない。トランジェントは、パルスが検出された後のM個のサンプルに持続すると考えられてもよい。
c.処理された信号x(n)が、正のオーバーフローに到達し、大きな負の値にラップアラウンドしようとしている。もしx(n)が正又は負のオーバーフローの閾値Δ以内にあるならば、処理を行わない。
3.もしDC更新が適用されるべきであるならば、そのときは以下のようにDCオフセット更新を計算する:
【数84】
ここで、k<<1は、更新利得であり、DC推定の際の高速応答とノイズとの間の所望のバランスを達成するように選ばれる。
【0262】
最後に、時分割多重方式の複数のチャネル内の複数のベースラインオフセットを追跡するために、同じハードウェアが使用されてもよい。各チャンネルについての追跡ループ変数の値は、チャンネルを切り替えるときに記憶/ロードされる。ベースライン追跡ループは、検出器チャネル変更の過渡的な影響が過ぎ去るまで、更新を防止される。
【0263】
7.
コリメーション
測定されるスペクトルへの散乱の影響を最小化するために、非常に密なコリメーションがスキャナ内で使用されてもよい。これは、高強度から低強度へ又は低強度から高強度への移行が起こる場合に特に重要である。全体としてのシステムの結果は、散乱が、密なコリメーションの包含によって大いに対処されたことを示している。
【0264】
8.
基準計算
基準計算の目的は、各検出器についての平均強度を確立することです。この値は、全ての強度ヒストグラムを単位エネルギーに対してスケーリングするために使用される。これは通常、正規化と呼ばれる。基準強度は、各検出器について計算される。基準強度は、一つの走査内の最初のN個のスライスにわたる平均強度として計算される。強度は、FFTの第一ビン、又はFFTベクトル内の全ての複素要素の合計である。
【0265】
同じ方法で‐測定されたエネルギーヒストグラムを最初のN個のスライスについて平均化することによって、計算される基準ヒストグラムも存在する。基準ヒストグラムは、全ての測定されたヒストグラムを正規化して、X線フラックスにおける如何なるラン対ランの変動も実効Z計算に影響を与えないことを確かにするために使用される。
【0266】
基準は、次の間隔で測定される:
1.X線が安定化され、そのためX線フラックスは変化せず、走査の持続期間にわたって変化しない場合(実際にはスミスソース(Smiths source)は‐特に弱っているときに‐変動し、これは結果に影響を与え得る)
2.試験中の試料の到着前。
【0267】
現在の実装は、スライスにおいて測定される持続期間を使用する。これは、スライスレートが例えば5ms以下まで遅くされた場合に、課題を引き起こし得る‐基準収集が試験中の試料に達する可能性がある。これは、完全に頑健であるために二つの方法で修正される必要がある:
1.基準が収集される期間を計算するために、設定されたスライスの数ではなく、設定されたスライスレート及び走査速度を使用する。
2.もし基準持続期間が完了する前に試料が検出されたならば、直ちに基準収集が停止されることを確かにするために、物体検出信号を組み込む‐これが起こる場合には、性能が保証されないので、使用者は警告されるべきである。
【0268】
より正確且つ一貫した実効Zは、より長い基準収集持続期間が使用された場合に取得され得る。