特許第6875283号(P6875283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6875283眼科用視覚化装置、システム、および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875283
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】眼科用視覚化装置、システム、および方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/12 20060101AFI20210510BHJP
   A61F 9/007 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   A61B3/12
   A61F9/007 200C
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-546612(P2017-546612)
(86)(22)【出願日】2016年4月28日
(65)【公表番号】特表2018-522598(P2018-522598A)
(43)【公表日】2018年8月16日
(86)【国際出願番号】IB2016052420
(87)【国際公開番号】WO2016174613
(87)【国際公開日】20161103
【審査請求日】2019年4月3日
(31)【優先権主張番号】62/155,181
(32)【優先日】2015年4月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/043,064
(32)【優先日】2016年2月12日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド ティー.スミス
(72)【発明者】
【氏名】リーンフオン ユイ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル パパック
(72)【発明者】
【氏名】アルジェリオ マイケル オリベラ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ティー.チャールズ
【審査官】 冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−034285(JP,A)
【文献】 特開2003−062003(JP,A)
【文献】 特開昭61−269108(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0012992(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第1575781(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0191280(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第1447146(CN,A)
【文献】 米国特許第04710000(US,A)
【文献】 国際公開第2013/165689(WO,A1)
【文献】 特開2006−247399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 − 3/18
A61F 9/00 − 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術中に手術用顕微鏡を通して網膜の中心領域を視認し易くするように前記手術用顕微鏡に対して位置決めされる第1のレンズであって、前記手術中に眼と前記手術用顕微鏡との間の光路に位置決め可能である第1のレンズと、
前記手術中に前記眼の前記網膜の周辺領域を視認し易くするように前記手術用顕微鏡および前記第1のレンズに対して選択的に位置決め可能な第2のレンズであって、前記手術中に前記第1のレンズの位置を変えずに前記周辺領域が選択的に視認可能であるように前記光路に選択的に位置決め可能な第2のレンズと
視認のために前記手術用顕微鏡の整合軸線と整合するように前記網膜の画像を移動させるように構造的に構成される画像シフト装置と、
を含む、眼科用視覚化システム。
【請求項2】
前記第1のレンズが間接非接触レンズである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第2のレンズが軸外プリズムレンズである、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第2のレンズが、前記周辺領域の異なる部分が選択的に視認可能であるように、前記手術用顕微鏡の整合軸線と整合され、かつ前記整合軸線を中心に回転可能である、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1のレンズが前記手術用顕微鏡に結合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第2のレンズが前記第1のレンズに移動可能に結合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記眼から反射された光の収差を補正するために位置決めおよび配設される第3のレンズであって、前記眼に隣接して前記光路に位置決めされる第3のレンズを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記第3のレンズが直接接触レンズである、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記顕微鏡と前記第1のレンズとの間に配置される波面補正装置であって、前記顕微鏡を通して視認可能な画像から光学収差を除去するために配設される波面補正装置を更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記波面補正装置が、前記光路におけるビームスプリッタと、波面補正器とを含み、前記ビームスプリッタが、処理のために前記光路から光の第1の部分を導くように構成され、前記波面補正器が、前記処理された第1の部分に基づいて光の第2の部分の位相を変更するように構成される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1のレンズおよび前記第2のレンズの少なくとも一方に結合された近接センサであって、前記第1のレンズおよび前記第2のレンズの前記少なくとも一方と前記眼との間の距離を監視するように構成される近接センサを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
眼科用視覚化システムであって、
患者の眼にかつ手術用顕微鏡の光路に位置決め可能な直接接触レンズと、
前記直接接触レンズと前記手術用顕微鏡との間の前記光路に選択的に位置決め可能な軸外プリズムレンズと、
前記直接接触レンズと前記手術用顕微鏡との間の前記光路に位置決めされる間接非接触レンズと
前記手術用顕微鏡の整合軸線と整合するように前記網膜の画像を移動させるように構造的に構成される画像シフト装置と、
を含み、
前記眼の網膜の周辺領域が、前記軸外プリズムレンズが前記光路に位置決めされるときに前記眼を動かさずに視認可能であり、かつ前記網膜の中心領域が、前記軸外プリズムレンズが前記光路から外されるときに前記眼を動かさずに視認可能である、眼科用視覚化システム。
【請求項13】
前記軸外プリズムレンズが、前記周辺領域の異なる部分が選択的に視認可能であるように前記手術用顕微鏡の整合軸線を中心に回転可能である、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記間接非接触レンズと前記手術用顕微鏡との間の前記光路に位置決めされる波面補正装置であって、前記顕微鏡を通して視認可能な画像から光学収差を除去するために配設される波面補正装置を更に含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記間接非接触レンズまたは前記軸外プリズムレンズの少なくとも一方に結合された近接センサであって、前記間接非接触レンズおよび前記軸外プリズムレンズの前記少なくとも一方と前記眼との間の距離を監視するように構成される近接センサを更に含む、請求項12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科用視覚化装置、システム、および方法を対象とする。より詳細には、限定されるものではないが、本開示は、眼の眼底/網膜の中心領域と周辺領域とを選択的かつ効率的に視覚化する装置、システム、および方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
特定の眼科手術中、外科医または他の医療専門家などの使用者は、患者の眼の種々の部分を視覚化する必要があり得る。例示の眼100が図1に図示されている。眼100は視神経104に接続された眼球102を含み、この眼球は前眼部118と後眼部120とに分割される。前眼部118は、レンズ112と、角膜114と、虹彩116とを含む。後眼部120は、眼100の内表面を規定する眼底108を含む。眼底108は、網膜122と、黄斑124と、視神経乳頭130とを含む。後眼部120は、硝子体液128で満たされている。視神経104は、眼100の後眼部120から延在する。眼100の内部にアクセスするために、使用者は、強膜126を切開することにより眼球102に切り込みを入れる場合がある。硝子体網膜手術中、例えば、使用者は、通常、黄斑124および/または視神経乳頭130の周囲の領域を含む眼底108の中心部分を視認する。しかしながら、使用者はまた、眼球102の赤道106の周囲の領域を含む眼底108の周辺部と、網膜122と眼100のより前側の前眼部分との間の境界を規定する鋸状縁110とを視認する必要があり得る。
【0003】
手術中、使用者は、眼底108を視認するために、手術用顕微鏡との組み合わせで、3つの異なる種類のレンズのうちの1つを利用してもよい。これらのレンズは、直接接触レンズ、間接接触レンズ、および間接非接触レンズを含む。直接接触レンズは、使用者が眼底108の中心部分を視認することを可能にする。しかしながら、眼底108の周辺部を視認することは、直接接触レンズが狭い視野のみを与えるため、直接接触レンズでは不可能である。間接接触レンズは、直接接触レンズよりも広い視野を与える。しかしながら、間接接触レンズは、上部が重く、通常、眼への最初の配置後に角度および位置の向きが移動し得る。したがって、使用者は、通常、間接接触レンズを適所に持続的に保持するために、または手術中にレンズを何度も頻繁に再配置するために、補助者の支援を必要とする。これらの非効率性により、間接接触レンズは一部の使用者の間では評判の良くない選択肢となる。更に、網膜解像度と網膜視野との間に反比例関係があるため、視野が広くなるにつれて観察される眼底の解像度が低下する。比較的低い解像度は、手術を使用者にとってより困難なものにする可能性がある。
【0004】
眼に直接接触する代わりに手術用顕微鏡に取り付けられる、間接非接触レンズにより、間接接触レンズに伴うある程度の位置不安定性に対処してもよい。しかしながら、間接非接触レンズは、間接接触レンズの視野と同じ広さの視野を与えない場合がある。間接非接触レンズで視認可能な眼底領域以外の領域を見るために、外科医は、強膜の周辺領域を圧入して、その領域の眼底をレンズの視野内に押し込むことがあり、または眼もしくは両眼を軸外で回転させることがある。眼を回転させることは、快適でない方法で患者の頭部を動かすことを含み得る。眼底の周辺領域を視認するために眼球を頻繁に回転させおよび/または強膜を押圧しなければならないことは、患者に大きい心的外傷をもたらし得、使用者が行う余分なステップを構成する可能性があり、手術時間を延ばす可能性があり、かつ外科的合併症の可能性を高め得るため、望ましくない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様によれば、本開示は、手術中に手術用顕微鏡を通して網膜の中心領域を視認し易くするように手術用顕微鏡に対して位置決めされる第1のレンズを含む眼科用視覚化システムを対象とする。第1のレンズは、手術中に眼と手術用顕微鏡との間の光路に位置決め可能であってもよい。眼科用視覚化システムはまた、手術中に眼の網膜の周辺領域を視認し易くするように手術用顕微鏡および第1のレンズに対して選択的に位置決め可能な第2のレンズを含み得る。第2のレンズは、手術中に第1のレンズの位置を変えずに周辺領域が選択的に視認可能であるように光路に選択的に位置決め可能であってもよい。
【0006】
本開示の別の態様は、患者の眼にかつ手術用顕微鏡の光路に位置決め可能な直接接触レンズと、直接接触レンズと手術用顕微鏡との間の光路に選択的に位置決め可能な軸外プリズムレンズと、直接接触レンズと手術用顕微鏡との間の光路に位置決めされる間接非接触レンズとを含む眼科用視覚化システムを対象とする。眼の網膜の周辺領域は、軸外プリズムレンズが光路に位置決めされるときに眼を動かさずに視認可能であってもよい。網膜の中心領域は、軸外プリズムレンズが光路から外されるときに眼を動かさずに視認可能であってもよい。
【0007】
本開示の第3の態様は、眼科手術を受けている眼を視覚化する方法を対象とする。方法は、眼の網膜の中心領域を視認するために眼と手術用顕微鏡との間の光路に間接非接触レンズを位置決めすることを含み得る。方法はまた、眼を動かさずにかつ間接非接触レンズを移動させずに網膜の周辺領域を視認するために眼と間接非接触レンズとの間の光路に軸外プリズムレンズを選択的に位置決めすることを含み得る。
【0008】
本開示の種々の態様は、以下の特徴の1つまたは複数を含み得る。第1のレンズは、間接非接触レンズであってもよい。第2のレンズは、軸外プリズムレンズであってもよい。第2のレンズは、周辺領域の異なる部分が選択的に視認可能であるように手術用顕微鏡の整合軸線と整合されてもよく、かつ整合軸線を中心に回転可能であってもよい。第1のレンズは、手術用顕微鏡に結合されてもよい。第2のレンズは、第1のレンズに移動可能に結合されてもよい。第3のレンズは、眼底から反射されて眼を透過する光の収差を補正するように位置決めおよび配設されてもよい。第3のレンズは、眼に隣接して光路に位置決めされてもよい。第3のレンズは、直接接触レンズであってもよい。波面補正装置は、顕微鏡と第1のレンズとの間に配置されてもよい。波面補正装置は、顕微鏡を通して視認可能な画像から光学収差を除去するために配設されてもよい。波面補正装置は、光路におけるビームスプリッタと、波面補正器とを含み得る。ビームスプリッタは、処理のために光路から光の第1の部分を導くように構成されてもよい。波面補正器は、処理された第1の部分に基づいて光の第2の部分の位相を変更するように構成されてもよい。近接センサは、第1のレンズおよび第2のレンズの少なくとも一方に結合されてもよい。近接センサは、第1のレンズおよび第2のレンズの前記少なくとも一方と眼との間の距離を監視するように構成されてもよい。画像シフト装置は、視認のために手術用顕微鏡の整合軸線と整合するように網膜の画像を移動させるように構造的に構成されてもよい。
【0009】
本開示の種々の態様はまた、以下の特徴の1つまたは複数を含み得る。直接接触レンズは、眼の角膜上に位置決めされてもよい。網膜の周辺領域の異なる部分を視認するために軸外プリズムレンズを回転させてもよい。
【0010】
前述の概要と以下の図面および詳細な説明との両方が、本質的に例示的および説明的なものであると共に、本開示の範囲を限定することなく本開示の理解を与えることを意図したものであることを理解すべきである。その点に関して、本開示の追加的な態様、特徴、および利点は、以下の内容から当業者に明らかになるであろう。
【0011】
添付の図面は、本明細書に開示するシステム、装置、および方法の実装形態を図示しており、説明と共に本開示の原理を解説する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】眼の図である。
図2】直接接触レンズと、間接非接触レンズと、光路から外された軸外プリズムレンズとを含む例示の眼科用視覚化システムの図である。
図3A】直接接触レンズと、間接非接触レンズと、光路に位置決めされた軸外プリズムレンズとを含む別の例示の眼科用視覚化システムの図である。
図3B図3Aのものと同様であるが、眼の眼底の異なる部分を視認するために軸外プリズムレンズを回転させた、例示の眼科用視覚化システムの図である。
図4】間接非接触レンズと、軸外プリズムレンズと、光路に位置決めされた波面補正装置とを含む、別の例示の眼科用視覚化システムの図である。
図5】直接接触レンズと、間接非接触レンズと、軸外プリズムレンズと、光路に位置決めされた波面補正装置とを含む例示の眼科用視覚化システムの図である。
図6】間接非接触レンズを含む従来の構成の図である。
図7】間接非接触レンズと回転させた眼とを含む従来の構成の図である。
図8】眼科手術において眼を視覚化する方法を図示する例示のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
これらの図は、以下の詳細な説明を参照することにより、より良く理解されるであろう。
【0014】
本開示の原理の理解を促進する目的で、ここで図面に図示されている実装形態に言及し、特定の用語を使用してそれらの実装形態を説明する。それでもなお、本開示の範囲を限定するように意図されていないことが理解されるであろう。説明する装置、器具、方法に対する任意の改変形態および更なる変更形態、ならびに本開示の原理の任意の更なる応用は、本開示が関係する技術分野の当業者が通常想到し得るものとして十分に考慮される。特に、1つまたは複数の実装形態に関して説明した特徴、部品、および/またはステップが、本開示の他の実装形態に関して説明した特徴、部品、および/またはステップと組み合わされ得ることが十分に考慮される。簡潔にするために、場合により、図面全体を通して同一または類似の部分を指すように同一の参照番号が使用される。
【0015】
本開示は、概して、眼底の中心領域と周辺領域とを視覚化するための装置、システム、および方法に関する。本開示の眼科用視覚化システムは、眼などの手術部位と手術用顕微鏡との間の光路に位置決めされる軸外プリズムレンズおよび間接非接触レンズを含む。軸外プリズムレンズは、選択的に光路に位置決めされるかまたは光路から外されてもよい。軸外プリズムレンズが光路に位置決めされると、使用者は、眼底の周辺部を視認し得る。軸外プリズムレンズが外されると、使用者は、眼底の中心部分を視認し得る。眼科用視覚化システムはまた、患者の角膜に関連する光学収差を最小限に抑える直接接触レンズを含み得る。さもなければ、これらの収差が、使用者により視認される画像を潜在的に劣化させる可能性がある。
【0016】
本開示の装置、システム、および方法は、多くの利点をもたらす。例えば、装置、システム、および方法は、眼を回転させおよび/または強膜を圧入することなく網膜および/または眼底の周辺領域を視認することを可能にする。本開示の装置、システム、および方法はまた、間接接触レンズの位置不安定性なしに広い視野を実現する。使用者は、軸外プリズムレンズを手術用顕微鏡の光路に出入りするようにスライドさせるのみで、視認対象の眼底の周辺領域と中心領域とを選択的かつ効率的に切り替え得る。使用者は、軸外プリズムレンズを回転させるのみで、周辺部の異なる部分を選択的かつ効率的に視認し得る。
【0017】
本開示の装置、システムおよび方法はまた、自己保持型光学素子を利用し、光学素子を再配置する補助者の必要性を最小限に抑え、かつレンズを容易に切り替えできるようにすることにより、手術中の外科医にとっての利便性を向上させる。本開示によれば、光学収差が直接接触レンズおよび/または波面補正装置により補正され得るため、比較的高解像度の網膜画像が生成され得る。追加的に、本開示は、角膜乾燥により生じる収差を最小限に抑えるかまたは補正し、眼と直接接触レンズとの間に位置する屈折率整合ゲルおよび/または屈折率整合液体に関連する画像ぶれを補正し、レンズとの接触の結果としての角膜上の跡を除去し、かつレンズ上および/またはレンズ内側の結露および/または液滴を最小限に抑え得る。
【0018】
図2は、例示の眼科用視覚化システム200を図示している。システム200は、手術用顕微鏡202と、間接非接触レンズ212と、軸外プリズムレンズ210と、直接接触レンズ208とを含む。システム200は、後眼部処置、硝子体網膜処置、硝子体切除処置、経毛様体扁平部硝子体切除術および/または他の所望の処置などの種々の眼科処置において使用されてもよい。外科医または他の医療提供者などの使用者は、手術用顕微鏡202を使用して眼204の内部を視認する。すなわち、手術用顕微鏡202は、眼204から反射された光218を受光する。手術用顕微鏡202は、眼科手術での使用に適した任意の顕微鏡であってもよい。手術用顕微鏡202は、1つまたは複数の集束レンズ、1つまたは複数のズームレンズ、および対物レンズなどの1つまたは複数のレンズを含み得る。手術用顕微鏡202はまた、1つまたは複数のミラー、フィルタ、格子、および/または他の光学部品を含み得る。これらの部品、すなわち、これらの部品の群が手術用顕微鏡202の光学系の全部または一部を形成してもよい。
【0019】
間接非接触レンズ212は、手術用顕微鏡202と眼204との間の光路に位置決めされてもよい。間接非接触レンズ212は、1つまたは複数の光学部品を含み得る。例えば、場合により、間接非接触レンズ212は、両凹レンズ、両凸レンズ、凸凹レンズ、平凹レンズ、平凸レンズ、正/負メニスカスレンズ、非球面レンズ、収束レンズ、発散レンズ、プリズムレンズ、他の適切なレンズ、ミラーのうちの1つもしくは複数、および/またはこれらの組み合わせを含み得る。間接非接触レンズ212は、単一の光学部品または2つ以上の光学部品の組立体であってもよい。間接非接触レンズ212は、眼204から反射された光218と相互作用して、レンズ212の前方に(例えば、レンズ212と手術用顕微鏡202との間に)中間像と呼ばれる、倒立実像を作り出す。使用者は、倒像を視認するために手術用顕微鏡202の焦点を中間像面214に合わせる。このようにして、使用者は眼底を間接的に視認し得る。いくつかの実装形態において、手術用顕微鏡202は、使用者が正立像を視認するように画像を再反転させるための反転レンズを含み得る。他の実装形態において、反転レンズは、手術用顕微鏡202と間接非接触レンズ212との間など、手術用顕微鏡202と眼204との間の光路に位置決めされてもよい。図2の中間像は、手術用顕微鏡202の整合軸線220と整合される。したがって、使用者は、手術用顕微鏡202を使用して光路の中央にある中間像を視認する。
【0020】
直接接触レンズ208は、手術用顕微鏡202と眼204との間の光路に位置決めされてもよい。直接接触レンズ208は、眼204に隣接していてもよい。例えば、直接接触レンズ208は、角膜216と物理的に接触していてもよい。直接接触レンズ208は、角膜216に接触する側に凹表面を有し得る。この凹表面により、直接接触レンズ208が角膜216を圧入せずに角膜216の凸表面を無理なく受けることが可能であってもよい。直接接触レンズ208は、両凹レンズ、両凸レンズ、凸凹レンズ、平凹レンズ、平凸レンズ、正/負メニスカスレンズ、非球面レンズ、収束レンズ、発散レンズ、プリズムレンズ、他の適切なレンズ、ミラーなどの1つもしくは複数の光学部品、および/またはこれらの組み合わせを含み得、あるいはこれらで形成されてもよい。直接接触レンズ208は、単一の光学部品または2つ以上の光学部品の組立体であってもよい。いくつかの実装形態において、直接接触レンズ208は、安定化機構に埋め込まれる。安定化機構は、眼204に対して直接接触レンズ208を安定させるように構成されてもよい。この目的を達成するために、安定化機構は、トロカール、カウンタウェイト、摩擦ベースシステム、弾性システム、もしくは角膜216上に直接接触レンズ208を安定させることができる他のシステムを含み得、またはこれらから形成されてもよい。
【0021】
いくつかの例において、直接接触レンズ208は、角膜表面に起因する眼底画像の劣化を最小限に抑えるように構成されてもよい。これは、角膜216などの角膜が種々の構造上の不規則性のいずれかを有する場合に生じる問題に対処するのに役立ち得る。角膜216が空気にさらされている間に眼204の内部が視認される場合、角膜と空気との不規則な界面は、眼底画像を損ない得るように光を屈折させる。直接接触レンズ208が角膜216上に位置決めされた状態で、屈折率整合ゲルまたは屈折率整合流体が角膜216と直接接触レンズ208との間に配置され、それにより角膜と空気との不規則な界面を排除する。これにより、不規則屈折および不所望の不要な界面反射(例えば、角膜216の凸面と直接接触レンズ208の凹面との間の界面反射)が防止され、かつ中間像面214に沿って生成される画像の品質が向上する。
【0022】
更に図2を参照すると、軸外プリズムレンズ210は、両凹レンズ、両凸レンズ、凸凹レンズ、平凹レンズ、平凸レンズ、正/負メニスカスレンズ、非球面レンズ、収束レンズ、発散レンズ、プリズムレンズ、他の適切なレンズ、ミラーなどの1つもしくは複数の光学部品、および/またはこれらの組み合わせを含み得、あるいはこれらで形成されてもよい。軸外プリズムレンズ210は、単一の光学部品または2つ以上の光学部品の組立体であってもよい。いくつかの実装形態において、軸外プリズムレンズ210は、リレーレンズであってもよい。
【0023】
図2の実装形態において、軸外プリズムレンズ210は、手術用顕微鏡202と眼204との間の光路から外される。軸外プリズムレンズ210が光路から外された状態で、眼204内の陰影部分で表される、視野206は、眼底の中心領域を含む。例えば、使用者は、網膜、黄斑、小窩、中心窩、傍中心窩、周中心窩、視神経乳頭、眼杯、網膜の1つまたは複数の層、硝子体などを視認し得る。眼底中心領域は、眼204および/または間接非接触レンズ212を動かすことなく視認可能であってもよい。
【0024】
図3Aおよび図3Bは、軸外プリズムレンズ210が手術用顕微鏡202と眼204との間の光路に位置決めされた状態の例示の眼科用視覚化システム300を図示している。図3Aおよび図3Bは、図2を含む、本開示の他の図を参照して説明したものと同様の種々の部品を含む。手術用顕微鏡202、眼204、直接接触レンズ208、軸外プリズムレンズ210、間接非接触レンズ210、および中間像面214の説明は、これらが他の図または本明細書における実装形態を参照して説明されているため、ここでは繰り返さない。
【0025】
軸外プリズムレンズ210が眼204と手術用顕微鏡202との間の光路に位置決めされたときに、眼底の周辺領域が使用者に視認可能となる。図示のように、眼204内の陰影領域で示される視野306は、例えば、網膜の周辺領域を含む。図3Aおよび図3Bの実装形態において、軸外プリズムレンズ210は、直接接触レンズ208と間接非接触レンズ212との間の光路に位置決めされる。他の実装形態において、軸外プリズムレンズ210は、間接非接触レンズ212と手術用顕微鏡202との間を含む、眼204と手術用顕微鏡202との間の光路に沿った任意の場所に位置決めされてもよい。
【0026】
本開示の例示的な態様によれば、使用者は、眼を回転させおよび/または強膜を圧入することなく間接非接触レンズで眼底の周辺領域を視認し得る。対照的に、従来、間接非接触レンズで周辺部を視認するのにそのような回転および/または圧入が必要であった。図6および図7は、間接非接触レンズ612のみを含む、従来の構成600および700をそれぞれ説明している。図6を参照すると、使用者は、手術用顕微鏡602を使用して光618と間接非接触レンズ612との相互作用により生成された中間像面614を視認する。図示のように、眼604内の視野606は、眼底の中心部分を含むが、より周辺の部分は含まない。図7は、眼604を手術用顕微鏡602の整合軸線620に対して回転させている眼科用装置700を示している。例えば、眼604を矢印705で示された方向に回転させてもよい。図6の整合軸線620に対する眼604の位置/向きと比較して、図7の眼604は、整合軸線620からオフセットされているか、または整合軸線620と整合されていない。図7の視野706を図示する眼内の陰影領域で示されるように、眼604を回転させたときに眼底のより周辺の部分が視認可能である。
【0027】
再び図3Aおよび図3Bを参照すると、軸外プリズムレンズ210は、周辺領域の異なる部分が選択的に視認可能となるように、手術用顕微鏡202の整合軸線220と整合されるか、またはその整合軸線220を中心に回転可能である。例えば、手術用顕微鏡202の整合軸線220を中心に、軸外プリズムレンズ210を矢印311で示される方向に回転させてもよい。その点に関して、軸外プリズムレンズ210の回転が、眼底のリングまたはドーナツ形状の視認可能域を掃引してもよい。例えば、眼内の陰影領域で示される、図3Aの視野306は、特定の向きの軸外プリズムレンズ210で視認可能である。図3Bのように、整合軸線220を中心に軸外プリズムレンズ210を回転させたときに、周辺領域の異なる部分が視認可能となる。例えば、使用者は、整合軸線220を中心に軸外プリズムレンズ210を180°回転させたときに視野307を観察する。同様に、図3Bの光218を描く光線は、軸外プリズムレンズ210を回転させたときに整合軸線220よりも上方に位置するように示されている。この光線は、整合軸線220よりも下方にある、図3の光線とは対照的である。上方および下方の方向表示は、単に図3Aおよび図3Bの説明を明確にするために使用されているに過ぎず、限定することを意図したものではないことが理解される。種々の実装形態において、システム300は、図3Aおよび図3Bに図示する方向と異なる方向に向けられてもよく、他の方向表示(例えば、左、右など)が適用可能であってもよい。使用者は、眼底の周辺領域の任意の所望の部分を視認するために、軸外プリズムレンズ210を選択的に回転させてもよい。異なる実装形態において、軸外プリズムレンズ210は、時計回り方向および/または反時計回り方向に回転可能であってもよい。軸外プリズムレンズ210は、整合軸線220を中心に1°〜360°で回転可能であってもよい。軸外プリズムレンズ310は、いくつかの実装形態では回転が整合軸線220を中心に360°を超え得るように、いくつかの実装形態では自由に回転可能であってもよい。眼科用視覚化システム300はまた、手術中に間接非接触レンズ212の位置を変えずに、使用者が間接非接触レンズ212で眼底の周辺領域を視認することを可能にする。例えば、間接非接触レンズ212が光路に留まっている間、眼底周辺領域を視認するために、軸外プリズムレンズ210のみを光路に移動させ、および/または回転させる必要があり得る。
【0028】
(例えば、図2に示すように)軸外プリズムレンズ210が所定位置から外れた状態で視認可能な眼底の中心領域と、(例えば、図3Aまたは図3Bに示すように)軸外プリズムレンズ310が所定位置にある状態で視認可能な眼底の周辺領域とを含む、眼科用視覚化システム300の全視野は広い視野である。中心領域または周辺領域のいずれかの任意の単一の視野は、網膜全域の一部分のみをカバーし得る。網膜解像度と網膜視野との間に反比例関係があるため、眼科用視覚化システム300での観察された網膜の解像度は、一視野でより広い網膜領域をカバーするシステムでの解像度よりも高い。
【0029】
直接接触レンズ208、軸外プリズムレンズ210、および/または間接非接触レンズ212は、手術用顕微鏡202との規定された光学的/光学機械的関係を有し得る。規定された光学的/光学機械的関係は、直接接触レンズ208、軸外プリズムレンズ210、および/または間接非接触レンズ212の位置および/または向きを維持するのを補助し得る。いくつかの実装形態において、光学的/光学機械的関係は、直接接触レンズ208、軸外プリズムレンズ210、および/または間接非接触レンズ212が、手術用顕微鏡に対してこれらのレンズを適所に固定するように手術用顕微鏡202に直接的または間接的に機械的に結合されるような関係であってもよい。いくつかの実装形態において、直接接触レンズ208、軸外プリズムレンズ210、および/または間接非接触のレンズ212のうちの1つは各々、直接接触レンズ208、軸外プリズムレンズ210、および間接非接触レンズ212のうちの別のレンズに機械的に結合されてもよい。手術用顕微鏡202、直接接触レンズ208、軸外プリズムレンズ210、および/または間接非接触レンズ212の間の直接または間接結合は、サスペンションシステム、機械フレーム、突出アーム、円錐構造体、磁性部材、弾性部材、プラスチック部材、および/または他の結合装置もしくは結合素子のうちの1つまたは複数を含み得る。いくつかの実装形態において、直接接触レンズ208、軸外プリズムレンズ210、および/または間接非接触レンズ212は、眼科用視覚化システム200または眼科用視覚化システム300などの眼科用視覚化システムの別の部品に直接的または間接的に結合されてもよい。いくつかの例において、直接接触レンズ208は、反射鏡に直接的または間接的に機械的に結合されてもよい。
【0030】
軸外プリズムレンズ210および/または間接非接触レンズ212は、手術用顕微鏡202と眼204との間の光路に出入りするように選択的に平行移動するか、回転するか、枢動するか、または他に移動するように構成される。例えば、使用者は、使用者が眼底の周辺領域または中心領域を選択的に視認することを可能にするために、光路に出入りするように軸外プリズムレンズ210を平行移動させるか、スライドさせるか、回転させるか、枢動させるか、および/または他に移動させてもよい。別の例として、網膜の任意の周辺部分を視認するために、手術用顕微鏡202の整合軸線220を中心に軸外プリズムレンズ210を回転および/または他に移動させてもよい。使用者は、手動でまたは電動アクチュエータまたは他の機械式および/または電気機械式制御装置を使用して、軸外プリズムレンズ210および/または間接非接触レンズ212を移動させてもよい。
【0031】
図3Aを参照すると、軸外プリズムレンズ210は、整合軸線220周りの軸外プリズムレンズ210の向きに応じて、中間像面214に沿って生成された画像を矢印325の方向に横方向にシフトしてもよい。したがって、手術用顕微鏡202を通して画像を視認する使用者は、画像を整合軸線220から矢印325の方向に横方向にオフセットされたものと見なす。いくつかの実装形態において、眼科用視覚化システム300は、矢印323の方向に整合軸線220と整合するように画像を横方向にシフトさせる画像シフト装置322を含む。実装形態に応じて、画像シフト装置322は、レンズ、ミラーもしくはプリズムを備えた光学中継システム、折り曲げミラー(例えば、2つの90°折り曲げミラー)、および/または他の適切な光学素子を含み得る。同様に、図3Bでは、軸外プリズムレンズ210は、整合軸線220を中心に回転させられ、中間像面214に沿って生成された画像を323の方向にシフトさせる。画像シフト装置322は、矢印325の方向に整合軸線220と整合するように画像を横方向にシフトさせる。図3Aおよび図3Bの実装形態において、画像シフト装置322は、間接非接触レンズ212と手術用顕微鏡202との間の光路に位置決めされる。他の実装形態において、画像シフト装置322は、直接接触レンズ208と軸外プリズムレンズ210との間、軸外プリズムレンズ210と間接非接触レンズ212との間を含む、眼204と手術用顕微鏡202との間の光路に沿った任意の場所に位置決めされてもよい。
【0032】
図4は、例示の眼科用視覚化システム400を図示している。図4は、図2および/または図3に関して説明したものと同様の種々の部品を含む。読み易くするために、手術用顕微鏡202、眼204、軸外プリズムレンズ210、間接非接触レンズ212、中間像面214、および画像シフト装置222の説明は、これらの素子が他の図または本明細書における実装形態を参照して説明されているため、ここでは繰り返さない。眼科用視覚化システム400は、直接接触レンズを含まない。図2に関して上で説明したように、光学収差は、角膜216の不規則な表面など、角膜の不規則な表面により光が屈折されたときに生じ得る。不規則な表面は、視野406に関連しかつ中間像面214に沿って生成される眼底画像を劣化させ得る。患者の眼における生理食塩水、屈折異常、非点収差、低次収差、および/または高次収差も眼底画像を劣化させ得る。これらおよび他の光学収差を最小限に抑えるために、眼科用視覚化システム400は、波面補正装置426を含む。波面補正装置426は、収差を含む波面424を受け取って補正し、補正された波面440を提示する。例えば、波面補正装置426は、光学収差に起因する画像劣化を最小限に抑えるために、眼204から反射された光218の位相をシフトさせてもよい。波面補正装置426は、いくつかの実装形態では補償光学装置であってもよい。
【0033】
図示の実装形態において、波面補正装置426は、ビームスプリッタ428と、波面センサ430と、制御電子機器432と、波面補正器434とを含む。ビームスプリッタ428は、ダイクロイックミラー、ノッチフィルタ、ホットミラー、コールドミラー、および/または他の適切な光学素子を含み得、またはこれらで形成されてもよい。収差を含む波面424に関連する光は、光の一部分が方向436に向かいかつ一部分が方向438に向かうように分割される。方向436に向かう光の部分は、波面センサ430において受光される。波面センサ430は、光学収差を検出するための任意の適切な装置であってもよい。いくつかの例として、例えば、シャックハルトマン波面センサ、タルボ−モアレ波面センサ、チェルニング収差計、レーザ光線追跡収差計、または他の収差測定装置が挙げられる。波面センサ430は、制御電子機器432と通信してもよい。ビームスプリッタ428は、処理のために光路から方向436に光218の部分を制御電子機器432に導くように構成される。例えば、波面センサ430により検出された、収差を含む波面424の変形を表す電気信号を制御電子機器432において受信してもよい。制御電子機器432は、波面補正器434によりなされるべき変更を決定して、補正された波面440を提示するために、光または光を表す信号を処理する。いくつかの実装形態において、波面補正器434は透過素子である。例えば、波面補正器434は、半透過型(液晶表示またはLCD)マイクロディスプレイ、液体レンズ、または他の適切な補償光学部品を含み得、またはこれらで形成されてもよい。いくつかの例において、波面補正器434は、HOLOEYE Photonics AG社(Berlin−Adlershof,Germany)から入手可能な空間光変調器を含む。制御電子機器432は、入射光(例えば、方向438に案内される光)の位相を変更して、波面センサ430により検出された収差を補償するために、制御信号を生成して波面補正器434に送信してもよい。例えば、波面補正器434は、方向436に向かう光の処理された部分に基づいて方向438に向かう光218の一部分の位相を変更するように構成される。補正された波面440に関連する光は、画像シフト装置322を通過し、使用者がより高解像度の眼底画像を視認するように手術用顕微鏡202により受け取られる。図4の実装形態において、波面補正装置426は、間接非接触レンズ212と手術用顕微鏡202との間の光路に位置決めされる。他の実装形態において、波面補正装置426は、眼204と手術用顕微鏡202との間の光路に沿った任意の場所に位置決めされてもよい。例えば、波面補正装置426は、軸外プリズムレンズ210と間接非接触レンズ212との間にまたは他の場所に位置決めされてもよい。
【0034】
図3Aおよび図3Bに関して上で説明したように、使用者は、眼底の周辺部の異なる部分を視認するために軸外プリズムレンズ210を回転させてもよい。波面補正装置426および/またはその個々の部品(例えば、ビームスプリッタ428、波面補正器434など)は、軸外プリズムレンズ210が任意の向きに配置された状態で光218に作用するような大きさおよび形状とされてもよい。例えば、ビームスプリッタ426は、軸外プリズムレンズ210を180°を回転させて光218を表す図示の光線が(例えば、図3Bに示すように)整合軸線220の上方に位置するときに光218の部分を矢印436および438の方向に向けるような大きさおよび形状とされてもよい。同様に、波面補正器434は、整合軸線220の上方に位置する光線により図示されている光218の位相を変更するように構成されてもよい。
【0035】
いくつかの状況では、手術用顕微鏡202、軸外プリズムレンズ210、間接非接触レンズ212、および/または他の光学素子の意図的なまたは意図しない動きにより、レンズ表面を角膜216に接触させてもよい。レンズ表面と角膜表面との接触は、光218を拡散させて眼底画像を劣化させる跡を生じさせる。手術用顕微鏡202、軸外プリズムレンズ210、間接非接触レンズ212、および/または他の光学素子はまた、互いに偶発的に接触する場合がある。このような接触は、眼底画像を劣化させるだけでなく、光学素子に損傷を与え得る。角膜216との接触および/または光学素子間の接触を防止するために、眼科用視覚化システム400は、近接センサ442を含む。図4の実装形態において、近接センサ442は、軸外プリズムレンズ210に結合される。他の実装形態において、近接センサ442は、直接接触レンズ208、間接非接触レンズ212、手術用顕微鏡202、および/または他の光学素子もしくは構造などの直接接触レンズに結合されてもよい。近接センサ442は、角膜216および/または別の光学素子までの距離を測定および監視して、距離が閾値未満であるときに警報を送信してもよい。場合により、警報は、可視警報、可聴警報、触覚警報、またはこれらの任意の組み合わせであってもよい。いくつかの例において、閾値は、3mm〜40mmの距離となるように選択されてもよい。より大きいおよびより小さい他の値も考慮される。閾値未満の距離は、接触の可能性が高いことを示し得る。
【0036】
図5は、例示の眼科用視覚化システム500を図示している。図5は、図2図3および/または図4に関して説明したものと同様の種々の部品を含む。読み易くするために、手術用顕微鏡202、眼204、直接接触レンズ208、軸外プリズムレンズ210、間接非接触レンズ212、中間像面214、画像シフト装置322、および波面補正装置426の説明は、これらが他の図または本明細書における実装形態を参照して説明されているため、ここでは繰り返さない。
【0037】
波面補正装置426は、眼科用視覚化システム500に直接接触レンズ208と組み合わせて実装される。図3に関して上で説明したように、直接接触レンズ208は、角膜216の不規則性に関連する光学収差を最小限に抑える。直接接触レンズ208と組み合わせて使用される場合、波面補正装置426は、高次収差などの他の光学収差を補正してもよい。結果として、眼科用視覚化システム500は、周辺視野506の比較的高解像度の画像を使用者に提供する。
【0038】
図8は、眼科手術において眼を視覚化する例示の方法800のフローチャートを図示している。図示のように、方法800は、多くの列挙されたステップを含むが、方法800の実装形態は、列挙されたステップの前、その後、およびその間に追加のステップを含み得る。いくつかの実装形態では、列挙されたステップの1つまたは複数を省略してもよく、または異なる順序で実行してもよい。
【0039】
ステップ810において、方法800は、眼の角膜上に直接接触レンズを位置決めすることを含む。例えば、外科医または他の医療専門家などの使用者は、直接接触レンズの表面上に屈折率整合ゲルまたは屈折率整合流体を配置してもよい。次いで、使用者は、直接接触レンズのその表面を眼の角膜に接触させてもよい。角膜上に直接接触レンズを配置することにより、眼底から反射されて眼を透過する光の収差を補正してもよい。いくつかの実装形態では、ステップ810を省略してもよく、かつ本明細書で説明するように、眼底画像を視認するために間接非接触レンズおよび軸外プリズムレンズを使用してもよい。このような実装形態における光学収差は、本明細書でも説明するように、波面補正装置により補正されてもよい。
【0040】
ステップ820において、方法800は、眼と手術用顕微鏡との間の光路に間接非接触レンズを位置決めすることを含む。例えば、使用者または使用者の補助者は、患者が手術用顕微鏡よりも下方のベッド上に位置決めされたときなどに、患者の眼が手術用顕微鏡の整合軸線と整合するように患者を移動させてもよく、または代替的に、患者と整合するように手術用顕微鏡を移動させてもよい。間接非接触レンズは、手術用顕微鏡に結合され(例えば、機械的に結合され)てもよい。間接非接触レンズを位置決めすることは、間接非接触レンズを平行移動させるか、回転させるか、枢動させるか、または他に移動させることを含み得る。直接接触レンズおよび間接非接触レンズが光路に位置決めされた状態で、使用者は、手術用顕微鏡を使用して眼の網膜の中心領域を視認し得る。使用者は、間接非接触レンズにより生成された中間像面に沿った眼底および/または網膜の画像を視認し得る。
【0041】
場合により、中間像面に沿って生成された画像を反転させてもよい。このような実装形態において、方法800は、使用者が手術用顕微鏡を通して眼を視認しながら正立画像を視認するように眼底画像を反転させるステップを含み得る。例えば、方法800は、間接非接触レンズと手術用顕微鏡との間など、眼と手術用顕微鏡との間の光路に反転レンズを位置決めすることを含み得る。いくつかの実装形態において、反転レンズは、手術用顕微鏡の光学系の一部であってもよい。他の実装形態において、反転レンズは、手術用顕微鏡に対して選択的かつ/または独立に位置決め可能であってもよい。
【0042】
ステップ830において、方法800は、眼と間接非接触レンズとの間の光路に軸外プリズムレンズを選択的に位置決めすることを含む。軸外プリズムレンズは、手術用顕微鏡に機械的に結合されてもよい。軸外プリズムレンズを位置決めすることは、軸外プリズムレンズを平行移動させるか、回転させるか、枢動させるか、または他に移動させることを含み得る。例えば、使用者は、軸外プリズムレンズを光路に出入りするように選択的にスライドさせてもよい。軸外プリズムレンズが光路に位置決めされた状態で、使用者は、手術用顕微鏡を使用して眼の網膜の周辺領域を視認し得る。その点に関して、使用者は、眼を回転させ、眼の強膜を圧入し、および/または他に眼を動かすことなく、網膜の周辺領域を視認し得る。使用者はまた、間接非接触レンズを移動させることなく周辺領域を視認し得る。方法800はまた、網膜の中心領域を視認するために光路から軸外プリズムレンズを外すことを含み得る。
【0043】
ステップ840において、方法800は、網膜の周辺領域の異なる部分を視認するために軸外プリズムレンズを回転させることを含む。軸外プリズムレンズは、手術用顕微鏡の整合軸線を中心に回転可能であってもよい。例えば、軸外プリズムレンズは、軸外プリズムレンズが手術用顕微鏡の整合軸線を中心に回転可能となるように、手術用顕微鏡および/または間接非接触レンズに結合され、例えば、機械的に結合されてもよい。使用者は、直接接触レンズおよび間接非接触レンズが静止した状態にあるかまたは他に適所に留まっている間に軸外プリズムレンズを回転させることにより、網膜の周辺領域の異なる部分を視認し得る。
【0044】
ステップ850において、方法800は、手術用顕微鏡の整合軸線と整合するように網膜の画像を移動させるために、画像シフト装置を光路に位置決めすることを含む。光路に軸外プリズムレンズを位置決めすること(ステップ830)は、網膜画像を手術用顕微鏡と整合しないように横方向にシフトさせてもよい。画像シフト装置は、使用者が手術用顕微鏡を通して網膜画像を効果的に視認し得るように、手術用顕微鏡と再び整合するように網膜画像を横方向にシフトさせる。
【0045】
ステップ860において、方法800は、例えば、直接接触レンズと手術用顕微鏡との間など、光路に波面補正装置を位置決めすることを含む。波面補正装置は、眼から反射された光の波面の収差を補正するように構成されてもよい。その結果、より高解像度の網膜画像が生成され、使用者により視認される。
【0046】
ステップ870において、方法800は、近接センサを間接非接触レンズおよび/または軸外プリズムレンズに結合することを含む。いくつかの実装形態において、近接センサはまた、直接接触レンズ、手術用顕微鏡、および/または他の光学素子に結合されてもよい。方法800は、光学素子間の距離と、眼と光学素子との間の距離とを測定および/または監視することを更に含み得る。方法800はまた、距離が、切迫した接触を示し得る閾値未満であるときに、視覚的警告、聴覚的警告、触覚的警告、またはこれらの組み合わせなどの警告を与えることを含み得る。
【0047】
方法800は、手術用顕微鏡を使用して眼の内部を視覚化しながら手術を実施することを更に含み得る。手術は、経毛様体扁平部硝子体切除術および/または他の所望の処置などの後眼部手術であってもよい。
【0048】
上で解説したように、本明細書で説明する例示の方法は、他のステップを省略する一方で、ステップのいくつかを含み得る。したがって、場合により、眼の角膜上に直接接触レンズを位置決めすることが省略されてもよい。したがって、例示の方法800の考察では直接接触レンズへの言及がなされているが、いくつかの実装形態では、直接接触レンズが含まれ得る一方で、他の実装形態では、直接接触レンズが除外され得ることが理解される。
【0049】
当業者であれば、本開示に包含される実装形態が、上で説明した特定の例示的な実装形態に限定されるものではないことを認識するであろう。その点に関して、例示的な実装形態を示し説明してきたが、幅広い変更形態、修正形態、組み合わせ、および置換形態が前述の本開示において考慮される。前述のものに対するそのような変形形態が、本開示の範囲から逸脱することなくなされ得ることが理解される。したがって、添付の特許請求の範囲が広範にかつ本開示と矛盾しないように解釈されることが適切である。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8