特許第6875289号(P6875289)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6875289難溶性薬物伝達用の溶解性マイクロニドル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875289
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】難溶性薬物伝達用の溶解性マイクロニドル
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/00 20060101AFI20210510BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20210510BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20210510BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20210510BHJP
   A61P 17/18 20060101ALI20210510BHJP
   A61M 37/00 20060101ALI20210510BHJP
   A61K 31/12 20060101ALN20210510BHJP
   A61K 31/122 20060101ALN20210510BHJP
   A61K 31/34 20060101ALN20210510BHJP
【FI】
   A61K9/00
   A61K47/36
   A61K47/38
   A61K47/32
   A61K47/26
   A61K47/34
   A61K31/05
   A61K31/352
   A61P17/00
   A61P17/18
   A61M37/00 500
   !A61K31/12
   !A61K31/122
   !A61K31/34
【請求項の数】19
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-552468(P2017-552468)
(86)(22)【出願日】2016年4月6日
(65)【公表番号】特表2018-510886(P2018-510886A)
(43)【公表日】2018年4月19日
(86)【国際出願番号】KR2016003598
(87)【国際公開番号】WO2016163752
(87)【国際公開日】20161013
【審査請求日】2019年3月4日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0048454
(32)【優先日】2015年4月6日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0048482
(32)【優先日】2015年4月6日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0151046
(32)【優先日】2015年10月29日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0151027
(32)【優先日】2015年10月29日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウ−スン・シム
(72)【発明者】
【氏名】スン−ファ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン−ミン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン−ア・キム
(72)【発明者】
【氏名】ネ−ギュ・カン
【審査官】 六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−504160(JP,A)
【文献】 特表2009−519299(JP,A)
【文献】 特表2009−512423(JP,A)
【文献】 特表2009−503187(JP,A)
【文献】 特表2008−546847(JP,A)
【文献】 特開2013−133303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61K 9/00−9/72
A61K 47/00−47/69
A61Q 1/00−99/00
WPI
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)難溶性フェノール化合物及び難溶性イソフラボンからなる群より選択される一つ以上の難溶性化合物、及び(ii)疎水性コアを形成する高分子を含むマイクロパーチクルを含む経皮投与用のマイクロニドルであって、
前記難溶性化合物が、前記疎水性コアを形成する高分子によって前記マイクロパーチクル中に無定形の状態で包接しており、
前記マイクロパーチクルを、マイクロニドルの総重量に対して0.05〜10重量%含
前記疎水性コアを形成する高分子が、ポリ(ラクタイド)、ポリ(グリコライド)、ポリ(ラクタイド−コ−グリコライド)、ポリアンハイドライド、ポリオルトエステル、ポリエーテルエステル、ポリカプロラクトン、モノ−メトキシポリエチレングリコール−ポリカプロラクトン(MPEG−PCL)、ポリエステルアミド、ポリ(ブチル酸)、ポリ(バレリアン酸)、ポリウレタン、ポリアクリレート、エチレン−ビニルアセテート重合体、アクリル置換セルロースアセテート、非分解性ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホネートポリオレフィン、ポリエチレンオキサイド、またはこれらの共重合体、またはこれらの混合物であることを特徴とする、
マイクロニドル。
【請求項2】
前記難溶性化合物が、難溶性フェノール化合物または難溶性イソフラボンであることを特徴とする請求項1に記載のマイクロニドル。
【請求項3】
前記難溶性化合物は、pH7、25℃の水における溶解度が1mg/ml以下であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロニドル。
【請求項4】
前記難溶性フェノール化合物は、ペオノール、クリソファノール、ミコフェノール酸、テトラブチルエチリデンビスフェノールまたはこれらの誘導体より選択されたいずれか一種以上であることを特徴とする請求項2に記載のマイクロニドル。
【請求項5】
前記難溶性フェノール化合物が、ペオノールまたはこれらの誘導体であることを特徴とする請求項4に記載のマイクロニドル。
【請求項6】
前記難溶性イソフラボンが、グリシテイン、ククルビタシン、クルビタシン、プランゲニジン、ゲニステイン、ダイゼインまたはこれらの混合物であることを特徴とする請求項2に記載のマイクロニドル。
【請求項7】
前記難溶性イソフラボンが、グリシテイン、ゲニステイン、ダイゼインまたはこれらの混合物であることを特徴とする請求項6に記載のマイクロニドル。
【請求項8】
前記マイクロニドルを形成する物質が、皮膚内で溶解されることを特徴とする請求項1に記載のマイクロニドル。
【請求項9】
前記マイクロニドルを形成する物質が、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、糖類またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項8に記載のマイクロニドル。
【請求項10】
前記マイクロニドルが、マイクロニドルを形成する物質に加え、可塑剤をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載のマイクロニドル。
【請求項11】
前記疎水性コアを形成する高分子が、ポリ(ラクタイド)、ポリ(グリコライド)及びポリ(ラクタイド−コ−グリコライド)のうちいずれか一種以上と、モノ−メトキシポリエチレングリコール−ポリカプロラクトンとの混合物であることを特徴とする請求項8に記載のマイクロニドル。
【請求項12】
前記マイクロパーチクルが、マトリクスタイプまたはリザーバータイプであることを特徴とする請求項1に記載のマイクロニドル。
【請求項13】
前記マイクロパーチクルの直径が、0.01〜10μmであることを特徴とする請求項1に記載のマイクロニドル。
【請求項14】
(S1)疎水性コアを形成する高分子を用いて難溶性フェノール化合物及び難溶性イソフラボンからなる群より選択される一つ以上の難溶性化合物が無定形の状態で含有されたマイクロパーチクルを製造する段階と、
(S2)皮膚内溶解性物質を用いて前記マイクロパーチクルを含むマイクロニドルを製造する段階と、を含む、難溶性化合物含有経皮投与用のマイクロニドルの製造方法であって、
前記マイクロパーチクルを、マイクロニドルの総重量に対して0.05〜10重量%含
前記疎水性コアを形成する高分子が、ポリ(ラクタイド)、ポリ(グリコライド)、ポリ(ラクタイド−コ−グリコライド)、ポリアンハイドライド、ポリオルトエステル、ポリエーテルエステル、ポリカプロラクトン、モノ−メトキシポリエチレングリコール−ポリカプロラクトン(MPEG−PCL)、ポリエステルアミド、ポリ(ブチル酸)、ポリ(バレリアン酸)、ポリウレタン、ポリアクリレート、エチレン−ビニルアセテート重合体、アクリル置換セルロースアセテート、非分解性ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホネートポリオレフィン、ポリエチレンオキサイド、またはこれらの共重合体、またはこれらの混合物であることを特徴とする、
難溶性化合物含有マイクロニドルの製造方法。
【請求項15】
前記難溶性化合物は、pH7、25℃の水における溶解度が1mg/ml以下であることを特徴とする請求項14に記載のマイクロニドルの製造方法。
【請求項16】
前記難溶性化合物が、難溶性フェノール化合物であり、前記難溶性フェノール化合物が、ペオノール、クリソファノール、ミコフェノール酸、テトラブチルエチリデンビスフェノール、またはこれらの誘導体より選択されたいずれか一種以上であることを特徴とする請求項14に記載のマイクロニドルの製造方法。
【請求項17】
前記難溶性化合物が難溶性イソフラボンであり、前記難溶性イソフラボンは、グリシテイン、ククルビタシン、クルビタシン、プランゲニジン、ゲニステイン、ダイゼインまたはこれらの混合物であることを特徴とする請求項14に記載のマイクロニドルの製造方法。
【請求項18】
請求項1〜13のうちいずれか一項に記載のマイクロニドルを用いてpH7、25℃の水における溶解度が1mg/ml以下である難溶性化合物を皮膚内に伝達して皮膚のしわを改善することを特徴とする、難溶性化合物の化粧学的皮膚投与方法。
【請求項19】
前記マイクロニドルは、皮膚しわ改善に用いられるためのものである、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のマイクロニドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶解性マイクロニドル、これを用いた難溶性化合物の皮膚投与方法、及び前記溶解性マイクロニドルの製造方法に関する。
【0002】
本出願は、2015年4月6日出願の韓国特許出願第10−2015−0048454号、2015年10月29日出願の韓国特許出願第10−2015−0151027号、2015年4月6日出願の韓国特許出願第10−2015−0048482号及び2015年10月29日出願の韓国特許出願第10−2015−0151046号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
イソフラボンは、抗酸化、抗菌、抗癌、骨粗鬆症の抑制、脂肪代謝と血中コレステロールの減少などに優れた効果があると知られている。また、イソフラボンの皮膚のアンチエイジング効能も報告され、皮膚老化改善のための用途として用いるために多い研究が進みつつある。しかし、イソフラボンは難溶性物質であって、水、オイル、エタノールなどによく解けず、飲み物、食品、化粧品、美容製品へ効果的な濃度で製剤化しにくいという短所がある。
【0004】
このような点を改善するための方法として、イソフラボンをシクロデキストリンで包接化してイソフラボンを可溶化する方法である特開1997−309902が提案された。しかし、シクロデキストリンを用いてもイソフラボンの溶解度が特別改善せず、かつ防腐剤と香料成分も包接してしまい、香りの発現と防腐力が劣るという問題点を有している。なお、特開2001−006678に開示されたプロピレングリコールで可溶化した技術を用いても化粧品剤形において効能を充分発揮できる程度の濃度に製剤化しにくい。
【0005】
ゲニステイン(Genistein)またはダイゼイン(Daidzein) などを含むイソフラボンのような難溶性生理活性成分は、水またはオイルに殆ど溶けず、比較的溶解度を向上させるジプロピレングリコール、PEG−8のような溶媒を用いても、溶解が容易でなく、析出されやすいことから限界がある。
【0006】
ペオノールは、東洋医学において伝統的に用いられてきたボタン(Paeonia suffruticosa)から得られた有効成分の一つであって、 抗酸化、抗菌、坑癌、抗炎、陣痛、鎮めなどに優れた効果があると知られている。ペオノールは、筋肉と皮膚組織の安定化に影響を与えるため、口腔、皮膚における抗刺激、抗炎効果のために用いられる。ペオノールは、天然ミントの香を有していることから口臭清涼剤として用いられるか、または歯痛の緩和のために歯磨きに含まれる。その他にも、ペオノールの皮膚角質細胞分化能力、皮膚障壁強化能力、皮膚保湿の増進、皮膚におけるメラニンの形成抑制及びアンチエイジング効能も報告されており、皮膚老化の改善のための用途として用いるために研究が盛んでいる。しかし、ペオノールは難溶性物質であって水によく解けず、飲み物、食品、化粧品、美容製品へ効果的な濃度に製剤化しにくいという不具合がある。
【0007】
上述の問題を改善するために、最近は難溶性生理活性成分を微粒子(Microparticle)またはリポソーム(Liposome)内に包接して剤形内に添加し、その含量を増加させる努力が試しており、ペオノールをリポソームまたはナノスフェアで包接化することでペオノールの安定性、経皮透過効率及び含量を増加させようとする努力が行われている(Zhong Yao Cai,35(5),803−807,2012,Int.J.Nanomedicine,9,1897−1908,2014)。しかし、パーチクル及びリポソームの大きさが大きいため(数十〜数百nmまたは数μm以上)、皮膚塗布だけでは皮膚内に直接吸収されにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国特許出願第10−2015−0048454号
【特許文献2】韓国特許出願第10−2015−0151027号
【特許文献3】韓国特許出願第10−2015−0048482号
【特許文献4】韓国特許出願第10−2015−0151046号
【特許文献5】特開2001−006678
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Zhong Yao Cai,35(5),803−807,2012,Int.J.Nanomedicine,9,1897−1908,2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、pH7、25℃の水における溶解度が1mg/ml以下である難溶性生理活性成分、特に、難溶性フェノール化合物を溶解性マイクロニドルに安定的に含浸させ、皮膚を通じて難溶性成分を効果的に伝達するシステム及びこのようなシステムの製造方法、このようなシステムを用いて難溶性成分を皮膚に投与する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を達成するため、本発明は、pH7、25℃の水における溶解度が1mg/ml以下である難溶性化合物が含有されたマイクロニドルを提供し、より望ましくは、前記マイクロニドルを形成する物質は皮膚内で溶解され、マイクロニドルの皮膚適用時、マイクロニドルが溶解または崩壊することで、マイクロニドルの内部に含まれていたマイクロパーチクルが迅速に皮膚内へ出て、内部に含まれたマイクロパーチクルからpH7、25℃の水における溶解度が1mg/ml以下である難溶性化合物を放出するようになる。
【0012】
本発明における「難溶性」とは、pH7、25℃の水における溶解度が1mg/ml以下、望ましくは0.5mg/ml以下のものを意味する。前記水のみならず、極性溶媒(エタノールなど)における溶解度が前記範囲である場合も含む。
【0013】
前記難溶性化合物は、難溶性フェノール化合物及び/または難溶性イソフラボンを含み得る。
【0014】
本発明に含まれ得る難溶性化合物としては難溶性フェノール化合物が挙げられ、例えば、ペオノール(paeonol)、クリソファノール(chrysophanol)、ミコフェノール酸(mycophenolic acid)、テトラブチルエチリデンビスフェノール(tetrabutyl ethylidenebisphenol)またはこれらの誘導体より選択されたいずれか一種以上を含むことができ、望ましくは、ペオノールまたはこれらの誘導体を含み得る。
【0015】
本発明に含まれ得る難溶性化合物としてはイソフラボンが挙げられ、例えば、グリシテイン(glycitein)、ククルビタシン(cucurbitacins)、クルビタシン(curbitacin)、プランゲニジン(prangenidin)、ゲニステイン(genistein)、ダイゼイン(daidzein)またはこれらの混合物を含むことができる。
【0016】
本発明者は、多様な投与システムを研究したが、いかなるシステムも上述の難溶性化合物のさまざまな問題点を同時に解決することはできなかった。本発明者は、鋭意研究の末、皮膚内溶解性のマイクロニドル内に、難溶性化合物を含むマイクロパーチクルを含浸させることで、難溶性化合物を効果的に皮膚内に伝達できるという驚くべき発明を完成した。難溶性成分の封入されたマイクロパーチクルを溶解性マイクロニドルに含浸させて皮膚に適用すれば、微細針が皮膚内の水分によって溶解しながら難溶性物質の封入されたマイクロパーチクルが皮膚内へ伝達される。それから、皮膚内へ伝達されたマイクロパーチクルから難溶性成分が放出することで効果的に皮膚内に伝達される。マイクロパーチクルから効果的に皮膚へ伝達された難溶性成分は、皮膚のしわを改善するのに卓越した効果を奏する。
【0017】
上記の課題を達成するために、マイクロニドルは、皮膚内において溶解性でなければならず、溶解性マイクロニドルを形成するために、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na−CMC,Sodium carboxymethyl cellulose)、ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体、ポリビニルアルコール(Poly vinyl alcohol)及びポリビニルピロリドン(Poly vinyl pyrrolidone)などの水溶性高分子;キシロース(Xylose)、スクロース(Sucrose)、マルトース(Maltose)、ラクトース(Lactose)、トレハロース(Trehalose)などの糖類;またはこれらの混合物を用いることができる。特に、マイクロニドルの皮膚透過強度、皮膚内における溶解速度などを総合的に考慮すれば、ヒアルロン酸(Oligo−Hyaluronic acid)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na−CMC,Sodium carboxymethyl cellulose)、及び糖類(saccharide)(より望ましくは、トレハロース(Trehalose))の混合物が望ましく、後述のグリセリン(Glycerine)まで混合したものがさらに望ましい。
【0018】
望ましくは、本発明によるマイクロニドルは、難溶性化合物を含有するマイクロパーチクル及びマイクロニドルを形成する前述の成分に加え、可塑剤、界面活性剤、保存剤、抗炎剤などをさらに含むことができる。
【0019】
前記可塑剤(plasticizer)としては、例えば、エチレングリコール(Ethylene glycol)、プロピレングリコール(Propylene glycol)、ジプロピレングリコール(Dipropylene glycole)、ブチレングリコール(Butylene glycol)、グリセリン(Glycerine)などのポリオールを単独または混合して用いることができる。
【0020】
本発明において、前記難溶性フェノール化合物とともにマイクロパーチクルを形成する物質は、マイクロニドルの製造過程において難溶性フェノール化合物が析出されないように安定して包接可能でなければならない。
【0021】
このようなマイクロパーチクルを形成する物質としては、疎水性コアが形成できる高分子を用いることができ、このような高分子としては、ポリ(ラクタイド)、ポリ(グリコライド)、ポリ(ラクタイド−グリコライド)、ポリアンハイドライド、ポリオルトエステル、ポリエーテルエステル、ポリカプロラクトン、モノ−メトキシポリエチレングリコール−ポリカプロラクトン(MPEG−PCL)、ポリエステルアミド、ポリ(ブチル酸)、ポリ(バレリアン酸)、ポリウレタン、またはこれらの共重合体のような生分解性高分子;及びポリアクリレート、エチレン−ビニルアセテート重合体、アクリル置換セルロースアセテート、非分解性ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホネートポリオレフィン(chlorosulphonate polyolefins)、ポリエチレンオキサイド、またはこれらの共重合体のような非生分解性高分子を単独または混合して用いることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0022】
難溶性化合物の安定した包接及び皮膚内における放出性などを総合的に考慮すれば、前記高分子としては、ポリ(ラクタイド)、ポリ(グリコライド)及びポリ(ラクタイド−グリコライド)のいずれか一つ以上と、モノ−メトキシポリエチレングリコール−ポリカプロラクトン(MPEG−PCL)との混合物であることがさらに望ましい。
【0023】
本発明において用いられる「難溶性化合物が封入されたマイクロパーチクル」とは、マイクロパーチクルの内部に難溶性化合物が位置している状態を意味し、難溶性化合物がマイクロパーチクルによって完全に囲まれた状態をいう。本明細書に記載の「封入」とは、「包接」という用語と同一な意味として使われ得る。
【0024】
「含浸」とは、含まれている状態を意味し、マイクロニドルの内部に位置して外部環境と完全に遮断された状態のみならず、マイクロパーチクルの一部がマイクロニドルの表面に露出した状態も含み得る。「マイクロニドルに含浸」という意味は、マイクロニドルの内部に完全に含まれる状態のみならず、マイクロニドルを皮膚に処理する際、マイクロニドルとマイクロパーチクルとが共に投与できる状態でマイクロニドルに含まれる全ての形態を含む概念として理解できる。
【0025】
このようなマイクロパーチクルは、本発明の目的を達成できれば、マトリクス(matrix)タイプであってもよく、リザーバー(reservoir)タイプであってもよい。
【0026】
本発明において使用可能なマイクロパーチクルとしては、本発明が属した分野における多様な公知の方法で製造できる。例えば、溶媒交換法(Solvent exchange method)、溶媒蒸発法(Solvent evaporation method)、メンブレン透過法(Membrane dialysis method)、噴霧乾燥法(Spray drying method)などを用いて本発明で使用可能なマイクロパーチクルが製造できる。例えば、非特許文献Journal of Controlled Release 70(2001)、1−20及びInternational Journal of PharmTech Research、3(2011)、1242−1254に記載の方法を用いることができる。望ましくは、通常の乳化及び溶媒蒸発法 (emulsification and Solvent evaporation method)によって製造することができる。
【0027】
望ましくは、本発明によるマイクロパーチクルの直径は、0.01〜10 μmである。パーチクルのサイズが10μm超過であれば、マイクロニドルへの含浸時、ニドルの強度が弱くなり皮膚透過が困難となる。本発明によるマイクロパーチクルの直径は、レーザー光散乱法(LLS)によって測定され、例えば、Malvern社製のZetasizer 2000TMを用いて測定できる。
【0028】
望ましくは、本発明のマイクロパーチクルは、難溶性フェノール化合物をマイクロパーチクルの総重量に対し0.01〜20重量%を含み、より望ましくは0.1〜10重量%を含み得る。また、本発明のマイクロニドルはこのようなマイクロパーチクルを、マイクロニドルの総重量に対し0.05〜10重量%を含むことが望ましく、さらに望ましくは、0.1〜5重量%を含むことができる。前記含量範囲内において、マイクロニドルの壊れが少なく、優れた皮膚透過率を有する。
【0029】
本発明において使用可能な難溶性物質としては、ペオノール、クリソファノール、ミコフェノール酸、テトラブチルエチリデンビスフェノールまたはこれらの誘導体より選択されたいずれか一種以上を含むことができる。また他の実施例によれば、グリシテイン、ククルビタシン、クルビタシン、プランゲニジン、ゲニステイン、ダイゼインまたはこれらの混合物を、本発明の難溶性物質として用いることができる。
【0030】
また、本発明は、前記マイクロニドルが付着している難溶性フィノール化合物の投与用(伝達用)マイクロニドルパッチ(patch)システムを提供する。望ましくは、本発明の一実施例は、難溶性化合物の化粧学的皮膚投与方法を提供する。
【0031】
また、本発明は、(S1)前述の高分子を用いて難溶性フェノール化合物が含有されたマイクロパーチクルを製造する段階と、(S2)皮膚内溶解性物質を用いて前記マイクロパーチクルを含むマイクロニドルを製造する段階と、を含む、難溶性フェノール化合物を安定的に包接して皮膚内に効果的に伝達し、優れた効果を奏し得る難溶性物質含有マイクロニドルの製造方法を提供する。
【0032】
また、本発明は、本発明によるマイクロニドルを用いることを特徴とする難溶性フェノール物質の効果的な皮膚伝達を達成する皮膚投与方法を提供する。望ましくは、前記皮膚投与方法は、皮膚のしわを改善するための化粧学的皮膚投与方法を提供する。
【0033】
本発明の一実施例によいて、本発明は、前記マイクロニドルを用いて、pH7、25℃の水における溶解度が1mg/ml以下である難溶性フェノール化合物を安定的に含浸し、pH7、25℃の水における溶解度が1mg/ml以下である難溶性フェノール化合物を皮膚内に効果的に伝達する難溶性フェノール化合物の皮膚投与方法を提供する。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、難溶性化合物を安定的に包接することができる。
【0035】
本発明は、難溶性化合物を効果的に皮膚に伝達することができる。
【0036】
本発明は、難溶性化合物を安定的に包接して皮膚に効果的に伝達することで、優れた皮膚のしわ減少効果が得られるマイクロニドルを提供する。
【0037】
本発明は、このようなマイクロニドルを用いることを特徴とする難溶性物質の皮膚投与方法を提供する。
【0038】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明によるマイクロニドルを製造する多くの方法の一例を示す図である。溶解性マイクロニドルは、溶液キャスト法(solution casting)により製造することができ、溶液をモールドにキャストして真空及び遠心回転(centrifuge)により微細モールドに液を満たした後、乾燥させることで製造することができる。マイクロニドル構造体を形成する材料としては、通常の合成及び天然水溶性高分子を用いることができる。
図2】本発明によるマイクロニドルに含まれた難溶性化合物の放出挙動を評価するためのフランツ型拡散セル(Franz diffusion cell)を示す。
図3】豚皮膚を載置したフランツ型拡散セルを用いて、豚皮膚及び受容体溶液(acceptor solution)内にペオノールを含有したクリーム(P−クリーム)、ペオノール溶液が含浸されたマイクロニドル(P−S MN)及びペオノールマイクロパーチクルが含浸されたマイクロニドル(P−MP MN)から放されたペオノールの総含量を示すことで、ペオノールの皮膚透過量を示すグラフである。
図4】豚皮膚を載置したフランツ型拡散セルを用して評価した、ペオノール溶液またはペオノールマイクロパーチクルを含むマイクロニドルからのペオノールの放出評価結果を示すグラフである。
図5】本発明によるペオノールを含むクリーム(P−クリーム)、ペオノール溶液が含浸されたマイクロニドル(P−Sマイクロニドル)及びペオノールマイクロパーチクルが含浸されたマイクロニドル(P−MPマイクロニドル)を目じりのしわに長期間使用した後に現われるしわの改善程度を示す実験結果である。
図6】豚皮膚を載置したフランツ型拡散セルを用いて評価した、マイクロニドルからのゲニステインまたはダイゼインの放出評価結果を示すグラフである。
図7】本発明によるゲニステイン溶液が含浸されたマイクロニドル(G−Sマイクロニドル)及びゲニステインマイクロパーチクルが含浸されたマイクロニドル(G−MPマイクロニドル)を目じりのしわに長期間使用した後に現われるしわの改善程度を示す実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。本明細書において、組成物の含量は特に言及しないかぎり、重量%で示した。
【0041】
ペオノールマイクロパーチクルを含むマイクロニドルの製造
<ペオノールクリームの製造>
下記の表1のように、ペオノール0.05%を含む水中油(oil in water)の剤形を製造した。
【0042】
【表1】
【0043】
<ペオノールマイクロパーチクルの製造>
メトキシポリ(エチレングリコール)−b−ポリ(カプロラクトン)(methoxy poly(ethyleneglycol)−b−poly(caprolactone),mPEG−PCL)二重ブロックコポリマーを用いて難溶性物質であるペオノールを包集した。先ず、mPEG−PCL(5k−5k,5k−10k 1:1で混合)10gを40mLのエタノールに溶かした溶液を、カプリリック/カプリックトリグリセリド20gにペオノール2gを溶かした溶液と混合した。0.5%ポリビニルアルコール水溶液60mLに撹拌しながら前記溶液を徐々に添加した。エタノール溶媒を蒸発させるために一定時間撹拌しながら放置した後、残余エタノールをロータリーエバポレーター(rotary evaporator)を用いて除去することで、ペオノール含量が2%以上になるように溶液を製造した。製造された溶液をろ過して析出されたペオノールを除去した。
【0044】
液体クロマトグラフィーで分析した結果、ペオノールの含量は2%と確認され、粒度分布計(Malvern Zetasizer 2000TM)で分析した結果、マイクロパーチクルの平均サイズは210nmであった。
【0045】
<ペオノールまたはペオノールマイクロパーチクルが含有されたマイクロニドルの製造>
下記の表2のように、ペオノール(溶液形態で添加される)含有マイクロニドル(P−S MN)またはペオノールマイクロパーチクルが含有されたマイクロニドル(P−MP MN)を製造した。
【0046】
【表2】
【0047】
具体的に、ペオノールが含浸された溶解性(soluble)マイクロニドル(P−S MN)は、次のように製造した。 Oligo−HA(Hyaluronic acid)、Na−CMC及びトレハロースを精製水に溶解した後、グリセリン、HCO−40及びペオノール−TG(カプリリック/カプリックトリグリセリド)溶液を添加して溶液を製造した。製造したペオノール溶液をシリコーンマイクロニドルモールドにキャストした後、3000rpmで10分間遠心回転して微細モールドに溶液を充填した。溶液の充填後、乾燥オーブン(70℃)で3時間乾燥し、接着フィルムを用いてマイクロニドルをシリコーンモールドから型抜きした。
【0048】
具体的に、ペオノールマイクロパーチクルが含浸された溶解性(soluble)マイクロニドル(P−MP MN)は、次のように製造した。Oligo−HA、Na−CMC及びトレハロースを精製水に溶解した後、グリセリン、HCO−40及びペオノールマイクロパーチクル(ペオノール2%)を添加して溶液を製造した。製造した溶液をシリコーンマイクロニドルモールドにキャストした後、3000rpmで10分間遠心回転して微細モールドに溶液を充填した。溶液の充填後、乾燥オーブン(70℃)で3時間乾燥し、接着フィルムを用いてマイクロニドルをシリコーンモールドから型抜きした。
【0049】
<ペオノールの放出挙動>
豚皮膚を載置したフランツ型拡散セルを用いて、上記で製造したクリーム及びマイクロニドルからのペオノールの放出を評価した(図2参照)。受容体溶液(acceptor solution)としては、30重量%のDPGが含有されたPBS溶液を用いた。
【0050】
即ち、フランツ型拡散セルを用いて、時間の経過による豚皮膚組織及び受容体溶液のペオノールの含量を液体クロマトグラフィーによって測定した。豚皮膚にペオノールクリームを塗るか、またはペオノールマイクロパーチクルが含浸されたマイクロニドルを付着し、時間の経過につれて皮膚内に透過したペオノールの総含量を確認した。その結果を図3に示した。図3に示したように、ペオノールを含むクリームは、皮膚を介して透過した量が約10μgであったが、マイクロニドルに含浸されたペオノール及びペオノールマイクロパーチクルは、ニドルによって皮膚に直接透過してその透過量が50、60μg以上となり、クリームに対して各々約5、6倍以上の高い皮膚透過量を示した。
【0051】
また、皮膚透過量が高かった二つのマイクロニドルの場合、豚皮膚にあったペオノールが皮膚内に浸透する様相を確認するために、ペオノールまたはペオノールマイクロパーチクルが含浸されたマイクロニドルを付着し、マイクロニドルを豚皮膚内へ浸透させて溶かした後(付着時間:2時間、温度:32℃)、マイクロニドルを除去した。マイクロニドルによってペオノールが吸収された豚皮膚をフランツ型拡散セルに入れ、ペオノールが時間の経過につれて豚皮膚から受容体溶液に放出される挙動を確認した。その結果を図4に示した。
【0052】
図4に示したように、ペオノール溶液が含浸したマイクロニドルによって、ペオノールが浸透した豚皮膚は時間の経過につれて豚皮膚内のペオノールの含量が徐々に減少し、受容体溶液のペオノールの含量も徐々に増加するに対し、ペオノールマイクロパーチクルが含浸されたマイクロニドルによってペオノールが浸透した豚皮膚は、豚皮膚内のペオノールの含量が急激に減少し、受容体溶液においても急激に増加することを確認した。これは、ペオノール溶液が含浸されたマイクロニドルの場合、ペオノールが沈殿した結晶形態で存在することで皮膚内でペオノールが吸収されないためであり、これに対し、マイクロニドルにペオノールマイクロパーチクルが含浸された場合は、マイクロパーチクルからペオノールが無定形の状態で放出されて皮膚を透過するためである。
【0053】
<しわの改善効果>
ペオノールクリーム、ペオノール溶液が含浸されたマイクロニドル(P−S マイクロニドル)と、ペオノールマイクロパーチクルが含浸されたマイクロニドル(P−MPマイクロニドル)と、を目じりのしわに12週間毎日処理した後、しわの改善程度を評価した。しわの改善程度は、シリコーン模写板(silicone replica)及びしわの画像分析方法により確認した(N=20)。その結果を図5に示した。
【0054】
ペオノールクリーム、ペオノール溶液が含浸されたマイクロニドルに比べ、ペオノールマイクロパーチクルが含浸されたマイクロニドルから各々3倍、2倍以上の優れた改善効果を奏し、これは、難溶性薬物であるペオノールがマイクロニドルによって皮膚内に浸透されたマイクロパーチクルから放出されることで、効果が高いことを確認した。
【0055】
ゲニステインマイクロパーチクルを含むマイクロニドルの製造
<ゲニステインマイクロパーチクルの製造>
メトキシポリ(エチレングリコール)−b−ポリ(カプロラクトン)二重ブロックコポリマーを用いて難溶性物質であるゲニステインを包集した。先ず、mPEG−PCL(5k−5k,5k−10k 1:1で混合)10gを40mLのエタノールに溶かした溶液を、PEG400 20gにゲニステイン2gを溶かした溶液と混合した。0.5%ポリビニルアルコール水溶液100mLに撹拌しながら前記溶液を徐々に添加した。エタノール溶媒を蒸発させるために一定時間撹拌しながら放置した後、残余エタノールをロータリーエバポレーターを用いて除去することで、ゲニステイン含量が2%になるように溶液を製造した。製造された溶液をろ過して析出されたゲニステインを除去した。
【0056】
液体クロマトグラフィーで分析した結果、ゲニステインの含量は1.9%と確認され(Encapsulation efficiency=1.9/2.0×100=95%)、粒度分布計(Malvern Zetasizer 2000TM)で分析した結果、マイクロパーチクルの平均サイズは150nmであった。
【0057】
<ゲニステインまたはゲニステインマイクロパーチクルが含有されたマイクロニドルの製造>
下記の表3のように、ゲニステイン(溶液形態で添加される)またはゲニステインマイクロパーチクルが含有されたマイクロニドルを製造した。
【0058】
【表3】
【0059】
具体的に、ゲニステイン(G−S MN)が含浸された溶解性マイクロニドルは、次のように製造した。 Oligo−HA、Na−CMC及びトレハロースを精製水に溶解した後、グリセリン、HCO−40及びゲニステイン−DPG溶液を添加して溶液を製造した。製造したゲニステイン溶液をシリコーンマイクロニドルモールドにキャストした後、3000rpmで10分間遠心回転して微細モールドに溶液を充填した。溶液の充填後、乾燥オーブン(70℃)で3時間乾燥し、接着フィルムを用いてマイクロニドルをシリコーンモールドから型抜きした。
【0060】
具体的に、ゲニステインマイクロパーチクル(G−MP MN)が含浸された溶解性マイクロニドルは、次のように製造した。Oligo−HA、Na−CMC及びトレハロースを精製水に溶解した後、グリセリン、HCO−40及びゲニステインマイクロパーチクル(ゲニステイン2%)を添加して溶液を製造した。製造した溶液をシリコーンマイクロニドルモールドにキャストした後、3000rpmで10分間遠心回転して微細モールドに溶液を充填した。溶液の充填後、乾燥オーブン(70℃)で3時間乾燥し、接着フィルムを用いてマイクロニドルをシリコーンモールドから型抜きした。
【0061】
<ゲニステインの放出挙動>
豚皮膚を載置したフランツ型拡散セルを用いて、上記で製造したマイクロニドルからのゲニステインの放出を評価した(図2参照)。受容体溶液としては、30重量%のDPGが含有されたPBS溶液を用いた。
【0062】
即ち、フランツ型拡散セルを用いて、時間の経過による豚皮膚組織及び受容体溶液のゲニステインの含量を液体クロマトグラフィーによって測定した。豚皮膚にゲニステインまたはゲニステインマイクロパーチクルが含浸されたマイクロニドルを付着し、マイクロニドルを豚皮膚内へ浸透させて溶かした後(付着時間:2時間、温度:32℃)、マイクロニドルを除去した。マイクロニドルによってゲニステインが吸収された豚皮膚をフランツ型拡散セルに入れ、ゲニステインが時間の経過につれて豚皮膚から受容体溶液に放出される挙動を確認した。その結果を図6に示した。
【0063】
図6に示したように、ゲニステイン溶液が含浸したマイクロニドルによって、ゲニステインが浸透した豚皮膚は時間の経過につれて豚皮膚内のゲニステインの含量に変化がなく、受容体溶液のゲニステインの含量も殆ど検出されないことに対し、ゲニステインマイクロパーチクルが含浸されたマイクロニドルによってゲニステインが浸透した豚皮膚は、豚皮膚内のゲニステインの含量が徐々に減少し、受容体溶液においても徐々に増加することを確認した。これは、ゲニステイン溶液が含浸されたマイクロニドルの場合、ゲニステインが沈殿した結晶形態で存在することで皮膚内でゲニステインが吸収されないためであり、これに対し、マイクロニドルにゲニステインマイクロパーチクルが含浸された場合は、マイクロパーチクルからゲニステインが無定形の状態で放出されるためである。
【0064】
<しわの改善効果>
ゲニステイン溶液が含浸されたマイクロニドル(G−Sマイクロニドル)と、ゲニステインマイクロパーチクルが含浸されたマイクロニドル(G−MP マイクロニドル)と、を目じりのしわに12週間毎日処理した後、しわの改善程度を評価した。しわの改善程度は、シリコーン模写板及びしわの画像分析方法により確認した(N=20)。その結果を図7に示した。
【0065】
本発明によるゲニステイン溶液が含浸されたマイクロニドルに比べ、ゲニステインマイクロパーチクルが含浸されたマイクロニドルから3倍以上の優れた改善効果を奏し、これは、難溶性薬物であるゲニステインがマイクロニドルによって皮膚内に浸透されたマイクロパーチクルから放出されることで、効果が高いことを確認した。
【0066】
本発明は、皮膚のしわ改善のための化粧品、薬学用途に用いることができる。
【0067】
本発明のマイクロニドルは、優れた皮膚のしわ減少効果を奏する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7