【文献】
The Journal of Clinical Investigation,2015年,Vol.125, No.5,p.2046-2058
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
SEQ ID NO:67と少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:68と少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖可変領域
を含む、請求項1に記載の抗体。
モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG4抗体、または抗原結合部位を含む抗体断片である、請求項1または請求項2に記載の抗体。
SEQ ID NO:63、SEQ ID NO:64、SEQ ID NO:67、SEQ ID NO:68、SEQ ID NO:69、SEQ ID NO:70、SEQ ID NO:71、およびSEQ ID NO:72からなる群より選択されるポリペプチド配列を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の抗体。
SEQ ID NO:65、SEQ ID NO:66、SEQ ID NO:73、SEQ ID NO:74、SEQ ID NO:75、およびSEQ ID NO:76からなる群より選択される配列を含むポリヌクレオチド配列によってコードされる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の抗体。
前記腫瘍または腫瘍細胞が、結腸直腸腫瘍、卵巣腫瘍、膵臓腫瘍、肺腫瘍、肝臓腫瘍、乳房腫瘍、腎臓腫瘍、前立腺腫瘍、胃腸腫瘍、メラノーマ、子宮頸部腫瘍、膀胱腫瘍、グリア芽細胞腫、および頭頚部腫瘍からなる群より選択される、請求項19に記載の薬学的組成物。
前記がんが、結腸直腸がん、卵巣がん、膵臓がん、肺がん、肝臓がん、乳がん、腎臓がん、前立腺がん、胃腸がん、メラノーマ、子宮頚がん、膀胱がん、グリア芽細胞腫、および頭頚部がんからなる群より選択される、請求項21に記載の薬学的組成物。
【発明を実施するための形態】
【0049】
発明の詳細な説明
本発明は、免疫応答を調整する、ポリペプチド、抗体、およびヘテロ二量体分子を含むが、これらに限定されない新規の作用物質を提供する。前記作用物質には、TIGITに特異的に結合するポリペプチド、抗体、およびヘテロ二量体分子、ならびにTIGIT活性化および/またはシグナル伝達を調整する作用物質が含まれる。前記作用物質には、TIGIT活性化および/またはシグナル伝達を阻害し、それによって、免疫応答を増強するポリペプチド、抗体、およびヘテロ二量体分子が含まれる。関連するポリペプチドおよびポリヌクレオチド、前記作用物質を含む組成物、ならびに前記作用物質を作製する方法も提供される。免疫応答を調整する作用物質をスクリーニングする方法が提供される。新規の作用物質を使用する方法、例えば、腫瘍成長を阻害する方法および/またはがんを処置する方法が提供される。ウイルス感染を処置する方法も提供される。新規の作用物質を使用する方法、例えば、免疫応答を活性化する方法、免疫応答を刺激する方法、免疫応答を促進する方法、免疫応答を増大させる方法、ナチュラルキラー(NK)細胞および/もしくはT細胞を活性化する方法、NK細胞および/もしくはT細胞の活性を増大させる方法、NK細胞および/もしくはT細胞の活性を促進する方法、サプレッサーT細胞を減少させかつ/もしくは阻害する方法、ならびに/または骨髄由来抑制細胞を減少させかつ/もしくは阻害する方法がさらに提供される。さらに、本明細書に記載の新規の作用物質は、免疫応答を阻害する方法、免疫応答を抑制する方法、T細胞の活性を減少させる方法、および/または自己免疫疾患を処置する方法において用いられてもよい。
【0050】
I.定義
本発明の理解を容易にするために、多数の用語および句を以下で定義する。
【0051】
本明細書で使用する「アゴニスト」および「アゴニストの」という用語は、標的および/または経路の生物学的活性を直接的または間接的に、実質的に誘導するか、活性化するか、促進するか、増大させるか、または亢進させることができる、作用物質を指すか、またはこれについて説明する。「アゴニスト」という用語は、タンパク質の活性を部分的または完全に誘導するか、活性化するか、促進するか、増大させるか、または亢進させる、任意の作用物質を含むように本明細書において用いられる。
【0052】
本明細書で使用する「アンタゴニスト」および「アンタゴニストの」という用語は、標的および/または経路の生物学的活性を直接的または間接的に、部分的または完全にブロックするか、阻害するか、低減するか、または中和することができる、作用物質を指すか、またはこれについて説明する。「アンタゴニスト」という用語は、タンパク質の活性を部分的または完全にブロックするか、阻害するか、低減するか、または中和する、任意の分子を含むように本明細書において用いられる。
【0053】
本明細書で使用する「調整」および「調整する」という用語は、生物学的活性の変更または変化を指す。調整には活性の刺激または阻害が含まれるが、これらに限定されない。調整は活性の増大もしくは減少でも、結合特性の変更でも、または、関心対象のタンパク質、経路、系、もしくは他の生物学的標的の活性に関連する生物学的特性、機能的特性、もしくは免疫学的特性の他の任意の変更でもよい。
【0054】
本明細書で使用する「抗体」という用語は、少なくとも1つの抗原結合部位を介して標的を認識し、かつ該標的に特異的に結合する免疫グロブリン分子を指す。該標的は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、または上記の任意の組み合わせであることができる。本明細書で使用する、この用語は、無傷のポリクローナル抗体、無傷のモノクローナル抗体、抗体断片(例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFv断片)、単鎖Fv(scFv)抗体、多重特異性抗体、二重特異性抗体、単一特異性抗体、一価抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体の抗原結合部分を含む融合タンパク質、ならびに抗体が望ましい生物学的活性を示す限り、抗原結合部位を含む他の任意の改変された免疫グロブリン分子を包含する。抗体は、重鎖定常ドメインの同一性に基づきそれぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる、5つの主要なクラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM、またはそのサブクラス(アイソタイプ)(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)のいずれかである。異なるクラスの免疫グロブリンは異なる周知のサブユニット構造および三次元構造を有する。抗体は、裸でもよいか、または毒素および放射性同位体を含むがこれらに限定されない他の分子に結合体化されてもよい。
【0055】
「抗体断片」という用語は、無傷の抗体の一部を指し、かつ、一般的に、無傷の抗体の抗原決定可変領域を指す。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFv断片、直鎖抗体、単鎖抗体、ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用する「抗体断片」は抗原結合部位またはエピトープ結合部位を含む。
【0056】
抗体の「可変領域」という用語は、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域を単独でまたは組み合わせて指す。一般的に、重鎖または軽鎖の可変領域は、「超可変領域」とも知られる、3つの相補性決定領域(CDR)によって接続された4つのフレームワーク領域からなる。各鎖内のCDRはフレームワーク領域によって近くにまとめられ、他の鎖からのCDRと共に抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRの決定には少なくとも2種類の技法:(1)異種間配列可変性に基づくアプローチ(すなわち、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Edition., 1991, National Institutes of Health, Bethesda MD));および(2)抗原-抗体複合体の結晶学研究に基づくアプローチ(Al-Lazikani et al (1997) J. Mol. Biol. 273:927-948))がある。さらに、CDRを決定するために、これらの2つのアプローチの組み合わせが当技術分野において用いられることもある。
【0057】
本明細書で使用する「モノクローナル抗体」という用語は、1つの抗原決定基、すなわちエピトープの極めて特異的な認識および結合に関与する均質な抗体集団を指す。これは、典型的に、異なる抗原決定基を認識する異なる抗体の混合物を含むポリクローナル抗体とは対照的である。「モノクローナル抗体」という用語は、無傷であり、かつ完全長であるモノクローナル抗体、ならびに抗体断片(例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv)、単鎖(scFv)抗体、抗体断片を含む融合タンパク質、および抗原結合部位を含む他の任意の改変された免疫グロブリン分子を包含する。さらに、「モノクローナル抗体」とは、ハイブリドーマ作製、ファージ選択、組換え体発現、およびトランスジェニック動物を含むが、これらに限定されない任意の数の技法によって作製された、このような抗体を指す。
【0058】
本明細書で使用する「ヒト化抗体」という用語は、最小の非ヒト配列を含む特異的な免疫グロブリン鎖、キメラ免疫グロブリン、またはその断片である、抗体を指す。典型的には、ヒト化抗体は、CDRのアミノ酸残基が、望ましい特異性、親和性、および/または結合能力を有する非ヒト種(例えば、マウス、ラット、ウサギ、またはハムスター)のCDR由来のアミノ酸残基により置き換えられているヒト免疫グロブリンである。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク可変領域アミノ酸残基は、非ヒト種由来の抗体中の対応するアミノ酸残基で置き換えられてもよい。さらに、ヒト化抗体を、フレームワーク可変領域中および/または置き換えられた非ヒトアミノ酸残基内のさらなるアミノ酸残基の置換によって改変して、さらに、抗体の特異性、親和性、および/または結合能力を精緻にしかつ最適化することができる。ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンに対応するCDRのうちの全て、または実質的に全てを含有する可変ドメインを含む場合があるのに対して、フレームワーク可変領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のフレームワーク領域である。一部の態様において、可変ドメインはヒト免疫グロブリン配列のフレームワーク領域を含む。一部の態様において、可変ドメインはヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のフレームワーク領域を含む。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリンの定常領域またはドメイン(Fc)の少なくとも一部、典型的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域またはドメイン(Fc)の少なくとも一部を含むこともできる。
【0059】
本明細書で使用する「ヒト抗体」という用語は、ヒトによって産生された抗体、または当技術分野で公知の任意の技術を用いて作製された、ヒトによって産生された抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体を指す。
【0060】
本明細書で使用する「キメラ抗体」という用語は、免疫グロブリン分子のアミノ酸配列が2つまたはそれ以上の種に由来する抗体を指す。典型的には、軽鎖および重鎖の可変領域は、望ましい特異性、親和性、および/または結合能力を有する1つの哺乳動物種(例えば、マウス、ラット、ウサギなど)由来の抗体の可変領域に対応し、一方、定常領域は、別の種に由来する抗体中の配列と相同である。定常領域は、通常、抗体において免疫応答が誘発されるのを避けるためにヒトである。
【0061】
「エピトープ」または「抗原決定基」という用語は本明細書において同義に用いられ、かつ特定の抗体が認識し、特異的に結合することができる抗原または標的の部分を指す。抗原または標的がポリペプチドである場合、エピトープは、連続したアミノ酸、およびタンパク質の三次フォールディング(tertiary folding)によって近接して並べられた非連続アミノ酸の両方から形成することができる。連続するアミノ酸から形成されたエピトープ(線状(linear)エピトープとも呼ばれる)は、タンパク質が変性した場合に典型的には保持されるのに対して、三次フォールディングによって形成されたエピトープ(コンホメーションエピトープとも呼ばれる)は、タンパク質が変性すると典型的には失われる。エピトープは独特の空間配置中に典型的には少なくとも3アミノ酸、より通常は少なくとも5、6、7、または8〜10アミノ酸を含む。
【0062】
「選択的に結合する」または「特異的に結合する」という用語は、作用物質が、関連タンパク質および非関連タンパク質を含む別の物質よりも高頻度で、迅速に、長い期間で、高い親和性で、または前記を組み合わせてエピトープ、タンパク質、または標的分子と反応することを意味する。ある特定の態様において、「特異的に結合する」とは、例えば、約0.1mMまたはそれ未満、より通常は約1μM未満のK
Dで、作用物質がタンパク質または標的に結合することを意味する。ある特定の態様において、「特異的に結合する」とは、少なくとも約0.1μMもしくはそれ未満、少なくとも約0.01μMもしくはそれ未満、または少なくとも約1nMもしくはそれ未満のK
Dで、作用物質が標的に結合することを意味する。異なる種における相同タンパク質間には配列同一性があるので、特異的結合は、複数の種におけるタンパク質または標的(例えば、マウスTIGITおよびヒトTIGIT)を認識する作用物質を含んでもよい。同様に、異なるタンパク質のポリペプチド配列のある特定の領域内には相同性があるので、特異的結合は、複数種のタンパク質または標的を認識する作用物質を含んでもよい。ある特定の態様では、第1の標的に特異的に結合する作用物質は第2の標的に特異的に結合してもよいかまたは特異的に結合しなくてもよいことが理解される。従って、「特異的結合」は、必ずしも、排他的な結合、すなわち、1種類の標的との結合を必要とするわけではない(だが、1種類の標的との結合を含んでもよい)。従って、作用物質は、ある特定の態様では、複数種の標的に特異的に結合してもよい。ある特定の態様では、複数種の標的が作用物質の同じ抗原結合部位に結合してもよい。例えば、抗体は、ある特定の場合では、2つ同一の抗原結合部位を含んでもよく、これらの抗原結合部位はそれぞれ、2種類またはそれ以上のタンパク質にある同じエピトープに特異的に結合する。ある特定の他の態様では、抗体は二重特異性でもよく、特異性の異なる少なくとも2種類の抗原結合部位を含んでもよい。必ずしもそうとは限らないが、一般的に、結合についての言及は特異的結合を意味する。
【0063】
「ポリペプチド」および「ペプチド」および「タンパク質」という用語は本明細書において同義に用いられ、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。ポリマーは直鎖または分枝鎖でもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸によって中断されてもよい。これらの用語はまた、天然に、あるいは介入によって、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識成分との結合体化などの他の任意の操作もしくは修飾によって改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。例えば、1つまたは複数のアミノ酸類似体(例えば、非天然アミノ酸を含む)ならびに当技術分野において公知の他の修飾を含有するポリペプチドも、この定義に含まれる。本発明のポリペプチドは、ある特定の態様では抗体または他の免疫グロブリンスーパーファミリーメンバーをベースとしてもよいため、「ポリペプチド」は単鎖または2つもしくはそれ以上の会合した鎖として生じうることが理解される。
【0064】
「ポリヌクレオチド」および「核酸」および「核酸分子」という用語は本明細書において同義に用いられ、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、および/またはその類似体、あるいはDNAポリメラーゼまたはRNAポリメラーゼによってポリマーに組み込むことができる任意の基質でもよい。
【0065】
2つまたはそれ以上の核酸またはポリペプチドの文脈において「同一の」またはパーセント「同一性」という用語は、配列同一性の一部として保存的アミノ酸置換を全く考慮することなく、最大一致(maximum correspondence)を得るように比較およびアラインメントされた場合に(必要であれば、ギャップを導入する)、同じであるか、または特定のパーセントの同じヌクレオチドもしくはアミノ酸残基を有する2つまたはそれ以上の配列または部分配列を指す。パーセント同一性は、配列比較ソフトウェアもしくはアルゴリズムを用いて、または目視検査によって、測定されてもよい。アミノ酸配列またはヌクレオチド配列のアラインメントを得るために用いられることがある様々なアルゴリズムおよびソフトウェアが当技術分野において周知である。これらのアルゴリズムおよびソフトウェアには、BLAST、ALIGN、Megalign、BestFit、GCG Wisconsin Package、およびそのバリエーションが含まれるが、これらに限定されない。一部の態様において、本発明の2つの核酸またはポリペプチドは実質的に同一である。実質的に同一であるとは、2つの核酸またはポリペプチドが最大限一致するように比較およびアラインメントされた場合に、配列比較アルゴリズムを用いて、または目視検査によって測定された場合に、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、一部の態様では少なくとも95%、96%、97%、98%、99%のヌクレオチド同一性またはアミノ酸残基同一性を有することを意味する。一部の態様において、同一性は、長さが少なくとも約10個、少なくとも約20個、少なくとも約40〜60個のヌクレオチドもしくはアミノ酸残基、少なくとも約60〜80個のヌクレオチドもしくはアミノ酸残基、またはその間の任意の整数値である、配列の領域にわたって存在する。一部の態様において、同一性は、60〜80個のヌクレオチドもしくはアミノ酸残基より長い領域、例えば、少なくとも約80〜100個のヌクレオチドもしくはアミノ酸残基にわたって存在し、一部の態様では、配列は、比較されている配列、例えば、ヌクレオチド配列のコード領域の完全長にわたって実質的に同一である。
【0066】
「保存的アミノ酸置換」とは、あるアミノ酸残基が、類似の側鎖を有する別のアミノ酸残基で置き換えられる置換である。一般的に、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む、類似の側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーが当技術分野において定義されている。例えば、チロシンからフェニルアラニンへの置換は保存的置換であると企図される。一般的に、本発明のポリペプチドの配列および/または抗体の配列における保存的置換は、アミノ酸配列を含有するポリペプチドまたは抗体と標的結合部位との結合を阻止しない。結合を無くさないヌクレオチドおよびアミノ酸の保存的置換を同定する方法は当技術分野において周知である。
【0067】
本明細書で使用する「ベクター」という用語は、宿主細胞中に関心対象の1つまたは複数の遺伝子または配列を送達することができる、通常、発現することができる構築物を意味する。ベクターの例には、ウイルスベクター、裸のDNA発現ベクターまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミド、またはファージベクター、カチオン性縮合剤と結合したDNA発現ベクターまたはRNA発現ベクター、ならびにリポソームにカプセル化されたDNA発現ベクターまたはRNA発現ベクターが含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
「単離された」ポリペプチド、可溶性タンパク質、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または組成物は、天然では見出されない形をとる、ポリペプチド、可溶性タンパク質、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または組成物である。単離されたポリペプチド、可溶性タンパク質、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または組成物は、天然で見出される形をもはやとっていない程度まで精製されているポリペプチド、可溶性タンパク質、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または組成物を含む。一部の態様において、単離された、ポリペプチド、可溶性タンパク質、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または組成物は実質的に純粋である。
【0069】
本明細書で使用する「実質的に純粋な」という用語は、少なくとも50%の純度(すなわち、汚染物質を含まない)、少なくとも90%の純度、少なくとも95%の純度、少なくとも98%の純度、または少なくとも99%の純度である材料を指す。
【0070】
本明細書で使用する「免疫応答」という用語は、自然免疫系および適応免疫系の両方からの応答を含む。「免疫応答」は細胞性免疫応答および/または体液性免疫応答を両方とも含む。「免疫応答」は、T細胞応答およびB細胞応答の両方、ならびに他の免疫系細胞、例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、マクロファージなどからの応答を含むがこれらに限定されない。
【0071】
本明細書で使用する「がん」および「がん性」という用語は、無秩序な細胞成長を特徴とする細胞集団がある哺乳動物における生理的状態を指すか、またはこれについて説明する。がんの例には、がん腫、芽腫、肉腫、ならびに血液がん、例えば、リンパ腫および白血病が含まれるが、これらに限定されない。
【0072】
本明細書で使用する「腫瘍」および「新生物」という用語は、過度の細胞成長または増殖に起因する、前がん病変を含む良性(非がん性)または悪性(がん性)いずれかの任意の組織塊を指す。
【0073】
本明細書で使用する「転移」という用語は、がんが、発生した部位(sight of origin)から他の身体領域に広がるか、または移って、新たな場所で同様のがん病変が発生するプロセスを指す。一般的に、「転移性の」または「転移している」細胞とは、隣接する細胞との付着性接触を失い、血流またはリンパを介して疾患の原発部位から身体を通って二次部位まで移動する細胞である。
【0074】
「がん幹細胞」および「CSC」および「腫瘍幹細胞」および「腫瘍開始細胞」という用語は本明細書で同義に用いられ、かつ、(1)高い増殖能を有し;(2)非対称細胞分裂を行って、増殖能力または発生能力の低下した1つまたは複数のタイプの分化した後代細胞を生じることができ;かつ(3)自己複製または自己維持のために対称細胞分裂を行うことができる、がんまたは腫瘍に由来する細胞を指す。これらの特性によって、がん幹細胞は適切な宿主(例えば、マウス)に連続移植されると、腫瘍を形成できない大多数の腫瘍細胞と比較して腫瘍またはがんを形成または確立する能力が付与される。がん幹細胞は、分化に対して、無秩序な様式で自己複製を起こして、変異が生じるにつれて経時変化することができる異常細胞タイプを含む腫瘍を形成する。
【0075】
「がん細胞」および「腫瘍細胞」という用語は、がん細胞集団の大部分を構成する非腫瘍形成性細胞と腫瘍形成性幹細胞(がん幹細胞)の両方を含む、がんもしくは腫瘍または前がん病変に由来する細胞の集団全体を指す。本明細書で使用する「がん細胞」または「腫瘍細胞」という用語は、複製および分化する能力が無い細胞だけを指している場合、このような腫瘍細胞とがん幹細胞を区別するために「非腫瘍形成性の」という用語で修飾される。
【0076】
本明細書で使用する「腫瘍形成性の」という用語は、(さらなる腫瘍形成性がん幹細胞を生じる)自己複製の特性と、(分化した、従って、非腫瘍形成性の腫瘍細胞を生じる)他の全ての腫瘍細胞を発生するための増殖を含む、がん幹細胞の機能的特徴を指す。
【0077】
本明細書で使用する「腫瘍形成能」という用語は、腫瘍に由来するランダムな細胞試料が、適切な宿主(例えば、マウス)に連続して移植された場合に触診可能な腫瘍を形成する能力を指す。
【0078】
「対象」という用語は、特定の処置のレシピエントとなる、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウサギ、げっ歯類などを含むが、これらに限定されない任意の動物(例えば、哺乳動物)を指す。典型的には、本明細書ではヒト対象については「対象」および「患者」という用語が同義に用いられる。
【0079】
「薬学的に許容される」という用語は、連邦政府または州政府の規制当局によって認可されているかもしくは認可可能である物質、または米国薬局方、もしくはヒトを含む動物において使用するための一般に認められている他の薬局方に列挙されている物質を指す。
【0080】
「薬学的に許容される賦形剤、担体、もしくはアジュバント」または「許容される薬学的担体」という用語は、本開示の少なくとも1種類の作用物質と共に対象に投与することができ、その薬理学的活性を破壊せず、治療効果をもたらすのに十分な用量で投与された場合に無毒の賦形剤、担体、またはアジュバントを指す。普通、当業者および米食品医薬品局は、薬学的に許容される賦形剤、担体、またはアジュバントが任意の製剤の不活性成分と考える。
【0081】
「有効量」または「治療的有効量」または「治療効果」という用語は、哺乳動物などの対象において、疾患または障害を「処置する」のに有効な、本明細書に記載の作用物質、抗体、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、有機低分子、または他の薬物の量を指す。がんまたは腫瘍の場合には、治療的有効量の作用物質(例えば、ポリペプチドまたは抗体)は、治療効果を有し、従って、免疫応答を増強もしくはブーストしてもよいか、抗腫瘍応答を増強もしくはブーストしてもよいか、免疫細胞の細胞溶解活性を増大させてもよいか、腫瘍細胞の死滅を増大させてもよいか、免疫細胞による腫瘍細胞の死滅を増大させてもよいか、腫瘍細胞の数を低減してもよいか、腫瘍形成能、腫瘍形成頻度、もしくは腫瘍形成能力を減少させてもよいか、がん幹細胞の数もしくは頻度を低減してもよいか、腫瘍サイズを低減してもよいか、がん細胞集団を低減してもよいか、例えば、軟部組織および骨へのがんの拡大を含む、末梢器官へのがん細胞浸潤を阻害もしくは停止してもよいか、腫瘍もしくはがん細胞転移を阻害および停止してもよいか、腫瘍もしくはがん細胞成長を阻害および停止してもよいか、がんに関連する症状の1つもしくは複数をある程度まで緩和してもよいか、罹患率および死亡率を低減してもよいか、生活の質を改善してもよいか、またはこのような効果の組み合わせでもよい。
【0082】
「処置する」もしくは「処置」もしくは「処置するために」または「軽減する」もしくは「軽減するために」という用語は、(1)診断された病理学的状態もしくは障害の症状を治癒し、診断された病理学的状態もしくは障害の症状を遅らせ、診断された病理学的状態もしくは障害の症状を和らげ、かつ/または診断された病理学的状態もしくは障害の進行を止める、治療的処置と、(2)標的とされた病理学的状態もしくは障害の発症を予防するかもしくは遅らせる予防的処置もしくは防止的処置の両方を指す。従って、処置を必要とする者には、既に障害がある者;障害になりやすい者;および障害を予防しようとする者が含まれる。がんまたは腫瘍の場合、患者が、以下の1つまたは複数を示す場合には、対象は本発明の方法に従って首尾良く「処置されている」:免疫応答の増大、抗腫瘍応答の増大、免疫細胞の細胞溶解活性の増大、腫瘍細胞死滅の増大、免疫細胞による腫瘍細胞死滅の増大、がん細胞の数の低減もしくはがん細胞の完全な欠如、腫瘍サイズの縮小、軟部組織および骨へのがん細胞の拡大を含む末梢器官へのがん細胞浸潤の阻害もしくは欠如、腫瘍もしくはがん細胞の転移の阻害もしくは欠如、がん成長の阻害もしくは欠如、特定のがんに関連する1つもしくは複数の症状の緩和、罹患率および死亡率の低減、生活の質の改善、腫瘍形成能の低減、がん幹細胞の数もしくは頻度の低減、または効果の何らかの組み合わせ。
【0083】
本開示および特許請求の範囲で使用する単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈によってはっきりと規定されていない限り複数形を含む。
【0084】
本明細書において「を含む」という言葉で態様が説明された場合はいつでも、「からなる」および/または「から本質的になる」という用語で説明された他の類似する態様も提供されることが理解される。本明細書において「から本質的になる」という言葉で態様が説明された場合はいつでも、「からなる」で説明された他の類似する態様も提供されることも理解される。
【0085】
本明細書で使用する、「約」値もしくはパラメータまたは「おおよそ」値もしくはパラメータについての言及は、その値もしくはパラメータを対象とする態様を含む(およびその態様について説明する)。例えば、「約X」について言及している説明は「X」の説明を含む。
【0086】
本明細書において「Aおよび/またはB」などの句で用いられる「および/または」という用語は、AおよびB、AまたはB、A(のみ)、ならびにB(のみ)を含むことが意図される。同様に、「A、B、および/またはC」などの句で用いられる「および/または」という用語は、以下の態様のそれぞれを包含することが意図される:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(のみ);B(のみ);ならびにC(のみ)。
【0087】
II.TIGIT結合物質
IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)は、免疫グロブリン可変(IgV)ドメインを含有するI型膜貫通糖タンパク質である。TIGITはポリオウイルス受容体(PVR)ファミリーに属し、高い親和性でポリオウイルス受容体(PVR;CD155)に結合し、低い親和性でPVRL-2(CD112)およびPVRL-3(CD113)に結合する。TIGITは、調節性T細胞およびメモリーT細胞を含むT細胞上で、ならびにNK細胞上で発現し、ナイーブCD4+T細胞が活性化された後に上方制御される。マウスTIGITの完全長アミノ酸(aa)配列(UniProtKB No.P86176)およびヒトTIGITの完全長アミノ酸(aa)配列(UniProtKB No.Q495A1)は当技術分野において公知であり、それぞれ、本明細書中ではSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:4と示される。本明細書で使用する、アミノ酸位置への言及は、シグナル配列を含む完全長アミノ酸配列のナンバリングのことを指す。
【0088】
本発明は、TIGITに特異的に結合する作用物質を提供する。これらの作用物質は本明細書中では「TIGIT結合物質」と呼ばれる。一部の態様において、TIGIT結合物質は抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質はポリペプチドである。ある特定の態様において、TIGIT結合物質はマウスTIGITに結合する。ある特定の態様において、TIGIT結合物質はヒトTIGITに結合する。ある特定の態様において、TIGIT結合物質はマウスTIGITとヒトTIGITに結合する。一部の態様において、TIGIT結合物質はヒトTIGITに結合し、マウスTIGITに結合しない。
【0089】
一部の態様において、作用物質はTIGITに結合し、TIGITと第2のタンパク質との相互作用を妨害する。一部の態様において、作用物質はTIGITに結合し、TIGITとPVRとの相互作用を妨害する。一部の態様において、作用物質はTIGITに結合し、TIGITとPVRL-2との相互作用を妨害する。一部の態様において、作用物質はTIGITに結合し、TIGITとPVRL-3との相互作用を妨害する。一部の態様において、作用物質はTIGITに特異的に結合し、かつ、この作用物質は、TIGITとPVRとの結合を破壊し、かつ/またはTIGITシグナル伝達のPVR活性化を破壊する。
【0090】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、TIGITの細胞外ドメインに特異的に結合する抗体またはその断片である。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、マウスTIGITの細胞外ドメインに特異的に結合する抗体またはその断片である。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、ヒトTIGITの細胞外ドメインに特異的に結合する抗体またはその断片である。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、マウスTIGITとヒトTIGITの細胞外ドメインに特異的に結合する抗体またはその断片である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、TIGITのIg様ドメインに特異的に結合する抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、TIGITのIgVドメインに特異的に結合する抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、ヒトTIGITのアミノ酸22〜141および/またはマウスTIGITのアミノ酸29〜148の内部に結合する抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:4のアミノ酸22〜141および/またはSEQ ID NO:1のアミノ酸29〜148の内部に結合する抗体である。一部の態様において、前記物質は、ヒトTIGITのアミノ酸22〜124および/またはマウスTIGITのアミノ酸29〜127の内部に結合する。一部の態様において、前記物質は、SEQ ID NO:4のアミノ酸22〜124および/またはSEQ ID NO:1のアミノ酸29〜127の内部に結合する。ある特定の態様において、TIGIT結合物質はSEQ ID NO:3またはその断片の内部に結合する。ある特定の態様において、TIGIT結合物質はSEQ ID NO:6またはその断片の内部に結合する。一部の態様において、TIGIT結合物質はヒトTIGITのアミノ酸22〜141の内部に結合する抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質はSEQ ID NO:4のアミノ酸22〜141の内部に結合する抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質はヒトTIGITのアミノ酸50〜124の内部に結合する抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質はSEQ ID NO:4のアミノ酸50〜124の内部に結合する抗体である。ある特定の態様において、TIGIT結合物質はSEQ ID NO:6またはその断片の内部に結合する。
【0091】
一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:79中のアミノ酸を含むエピトープに結合する抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:80中のアミノ酸を含むエピトープに結合する抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:79中およびSEQ ID NO:80中のアミノ酸を含むエピトープに結合する抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:4のアミノ酸Q62およびI109を含むエピトープに結合する抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:4のアミノ酸Q62およびT119を含むエピトープに結合する抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:4のアミノ酸Q64およびI109を含むエピトープに結合する抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:4のアミノ酸Q64およびT119を含むエピトープに結合する抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:4のアミノ酸Q62、Q64、およびI109を含むエピトープに結合する抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:4のアミノ酸Q62、Q64、およびT119を含むエピトープに結合する抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:4のアミノ酸Q62、I109、およびT119を含むエピトープに結合する抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:4のアミノ酸Q64、I109、およびT119を含むエピトープに結合する抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:4のアミノ酸Q62、Q64、I109、およびT119を含むエピトープに結合する抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:4のN58、E60、Q62、Q64、L65、F107、I109、H111、T117、T119、G120、およびR121からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸を含むエピトープに結合する抗体である。一部の態様において、エピトープはコンホメーションエピトープである。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:4のアミノ酸V100を含まないエピトープに結合する抗体である。
【0092】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質(例えば、抗体)は、約1μMもしくはそれ未満、約100nMもしくはそれ未満、約40nMもしくはそれ未満、約20nMもしくはそれ未満、約10nMもしくはそれ未満、約1nMもしくはそれ未満、約0.1nMもしくはそれ未満、50pMもしくはそれ未満、10pMもしくはそれ未満、または1pMもしくはそれ未満の解離定数(K
D)でTIGITに結合する。一部の態様において、TIGIT結合物質は約20nMまたはそれ未満のK
DでTIGITに結合する。一部の態様において、TIGIT結合物質は約10nMまたはそれ未満のK
DでTIGITに結合する。一部の態様において、TIGIT結合物質は約1nMまたはそれ未満のK
DでTIGITに結合する。一部の態様において、TIGIT結合物質は約0.5nMまたはそれ未満のK
DでTIGITに結合する。一部の態様において、TIGIT結合物質は約0.1nMまたはそれ未満のK
DでTIGITに結合する。一部の態様において、TIGIT結合物質は約50pMまたはそれ未満のK
DでTIGITに結合する。一部の態様において、TIGIT結合物質は約25pMまたはそれ未満のK
DでTIGITに結合する。一部の態様において、TIGIT結合物質は約10pMまたはそれ未満のK
DでTIGITに結合する。一部の態様において、TIGIT結合物質は約1pMまたはそれ未満のK
DでTIGITに結合する。一部の態様において、TIGIT結合物質は約10nMまたはそれ未満のK
DでヒトTIGITとマウスTIGITの両方に結合する。一部の態様において、TIGIT結合物質は約1nMまたはそれ未満のK
DでヒトTIGITとマウスTIGITの両方に結合する。一部の態様において、TIGIT結合物質は約0.1nMまたはそれ未満のK
DでヒトTIGITとマウスTIGITの両方に結合する。一部の態様において、TIGITに対する結合物質(例えば、抗体)の解離定数は、Biacoreチップ上に固定化されたTIGITタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも一部を含むTIGIT融合タンパク質を用いて求められた解離定数である。一部の態様において、TIGITに対する結合物質(例えば、抗体)の解離定数は、Biacoreチップ上にある抗ヒトIgG抗体によって捕捉された結合物質と、可溶性TIGITタンパク質を用いて求められた解離定数である。
【0093】
一部の態様において、TIGIT結合物質は、TIGITに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、第2の標的に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、TIGITに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、第2の標的に特異的に結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性作用物質である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、約100nMまたはそれ未満のK
DでTIGITと第2の標的の両方に結合する。一部の態様において、TIGIT結合物質は、約50nMまたはそれ未満のK
DでTIGITと第2の標的の両方に結合する。一部の態様において、TIGIT結合物質は、約20nMまたはそれ未満のK
DでTIGITと第2の標的の両方に結合する。一部の態様において、TIGIT結合物質は、約10nMまたはそれ未満のK
DでTIGITと第2の標的の両方に結合する。一部の態様において、TIGIT結合物質は、約1nMまたはそれ未満のK
DでTIGITと第2の標的の両方に結合する。一部の態様において、一方の抗原結合部位の親和性は他方の抗原結合部位の親和性より弱くてもよい。例えば、一方の抗原結合部位のK
Dは約1nMでもよく、第2の抗原結合部位のK
Dは約10nMでもよい。一部の態様において、2種類の抗原結合部位間の親和性の差は、約2倍もしくはそれ以上、約3倍もしくはそれ以上、約5倍もしくはそれ以上、約8倍もしくはそれ以上、約10倍もしくはそれ以上、約15倍もしくはそれ以上、約20倍もしくはそれ以上、約30倍もしくはそれ以上、約50倍もしくはそれ以上、または約100倍もしくはそれ以上でもよい。2種類の抗原結合部位の親和性の調整が二重特異性抗体の生物学的活性に影響を及ぼすことがある。例えば、TIGITまたは第2の標的に対する抗原結合部位の親和性の減少には、望ましい効果、例えば、結合物質の毒性の減少および/または治療指数の増大がある場合がある。
【0094】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質(例えば、抗体)は、約1μMもしくはそれ未満、約100nMもしくはそれ未満、約40nMもしくはそれ未満、約20nMもしくはそれ未満、約10nMもしくはそれ未満、約1nMもしくはそれ未満、または約0.1nMもしくはそれ未満の50%効果濃度(half maximal effective concentration)(EC
50)でTIGITに結合する。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、約1μMもしくはそれ未満、約100nMもしくはそれ未満、約40nMもしくはそれ未満、約20nMもしくはそれ未満、約10nMもしくはそれ未満、約1nMもしくはそれ未満、または約0.1nMもしくはそれ未満の50%効果濃度(EC
50)でヒトTIGITに結合する。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、約40nMもしくはそれ未満、約20nMもしくはそれ未満、約10nMもしくはそれ未満、約1nMもしくはそれ未満、または約0.1nMもしくはそれ未満のEC
50でマウスTIGITおよび/またはヒトTIGITに結合する。
【0095】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質は抗体である。一部の態様において、前記抗体は組換え抗体である。一部の態様において、前記抗体はモノクローナル抗体である。一部の態様において、前記抗体はキメラ抗体である。一部の態様において、前記抗体はヒト化抗体である。一部の態様において、前記抗体はヒト抗体である。一部の態様において、前記抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG、またはIgM抗体である。ある特定の態様において、前記抗体はIgG1抗体である。ある特定の態様において、前記抗体はIgG2抗体である。一部の態様において、前記抗体はIgG4抗体である。ある特定の態様において、前記抗体は、抗原結合部位を含む抗体断片である。一部の態様において、前記抗体は二重特異性抗体または多重特異性抗体である。一部の態様において、前記抗体は一価抗体である。一部の態様において、前記抗体は単一特異性抗体である。一部の態様において、前記抗体は二価抗体である。一部の態様において、前記抗体は細胞傷害性部分に結合体化されている。一部の態様において、前記抗体は単離されている。一部の態様において、前記抗体は実質的に純粋である。
【0096】
一部の態様において、TIGIT結合物質はポリクローナル抗体である。ポリクローナル抗体は任意の公知の方法によって調製することができる。一部の態様において、ポリクローナル抗体は、複数回の皮下注射または腹腔内注射を用いて、動物(例えば、ウサギ、ラット、マウス、ヤギ、ロバ)を関心対象の抗原(例えば、精製されたペプチド断片、完全長組換えタンパク質、または融合タンパク質)で免疫することによって産生される。抗原は、任意で、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)または血清アルブミンなどの担体に結合体化することができる。(担体タンパク質を含む、または担体タンパク質を含まない)抗原は滅菌食塩水で希釈され、安定したエマルジョンを形成するために、通常、アジュバント(例えば、完全フロイントアジュバントまたは不完全フロイントアジュバント)と組み合わされる。十分な時間が経過した後に、免疫された動物から、通常、血液または腹水からポリクローナル抗体が回収される。ポリクローナル抗体は、アフィニティクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、および透析を含むが、これらに限定されない、当技術分野における標準的な方法に従って血清または腹水から精製することができる。
【0097】
一部の態様において、TIGIT結合物質はモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、当業者に公知のハイブリドーマ法を用いて調製することができる。ハイブリドーマ法を用いた一部の態様では、免疫用抗原に特異的に結合する抗体の産生を誘発するために、前記のようにマウス、ラット、ウサギ、ハムスター、または他の適切な宿主動物が免疫される。一部の態様において、リンパ球はインビトロで免疫することができる。一部の態様において、免疫用抗原はヒトタンパク質またはその断片でもよい。一部の態様において、免疫用抗原はマウスタンパク質またはその断片でもよい。
【0098】
免疫後に、リンパ球は単離され、例えば、ポリエチレングリコールを用いて、適切なミエローマ細胞株と融合される。ハイブリドーマ細胞は、当技術分野において公知のように専用の培地を用いて選択され、融合しなかったリンパ球およびミエローマ細胞は選択プロセスに生き残らない。選択された抗原に対して特異的に作られたモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、免疫沈降、イムノブロッティング、およびインビトロ結合アッセイ(例えば、フローサイトメトリー、FACS、ELISA、およびラジオイムノアッセイ)を含むが、これらに限定されない様々な方法によって同定することができる。ハイブリドーマは、標準的な方法を用いてインビトロ培養で増殖されてもよく、動物の腹水腫瘍としてインビボで増殖されてもよい。モノクローナル抗体は、アフィニティクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、および透析を含むが、これらに限定されない当技術分野において標準的な方法に従って培養培地または腹水から精製することができる。
【0099】
ある特定の態様において、モノクローナル抗体は、当業者に公知のように組換えDNA法を用いて作製することができる。モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドは、例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子を特異的に増幅するオリゴヌクレオチドプライマーを用いたRT-PCRによって、成熟したB細胞またはハイブリドーマ細胞から単離され、これらの配列は標準的な技法を用いて決定される。次いで、重鎖および軽鎖をコードする単離されたポリヌクレオチドは適切な発現ベクターにクローニングされ、この発現ベクターは、トランスフェクションによって、宿主細胞、例えば、何もしなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌(E. coli)、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはミエローマ細胞に導入されるとモノクローナル抗体を産生する。
【0100】
ある特定の他の態様において、組換えモノクローナル抗体またはその断片は、望ましい種の可変ドメインまたはCDRを発現するファージディスプレイライブラリーから単離することができる。
【0101】
モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドは、例えば、組換えDNA技術を用いることによって、代わりの抗体を生じるように改変することができる。一部の態様では、キメラ抗体を作製するためには、軽鎖および重鎖、例えば、マウスモノクローナル抗体の軽鎖および重鎖の定常ドメインを、定常領域、例えば、ヒト抗体の定常領域で、または融合抗体を作製するためには非免疫グロブリンポリペプチドで置換することができる。一部の態様では、モノクローナル抗体の望ましい抗体断片を作製するために、定常領域は切断または除去される。可変領域の部位特異的変異誘発または高密度変異誘発を用いて、モノクローナル抗体の特異性、親和性などを最適化することができる。
【0102】
一部の態様において、TIGIT結合物質はヒト化抗体である。典型的には、ヒト化抗体は、当業者に公知の方法を用いて、CDRのアミノ酸残基が、望ましい特異性、親和性、および/または結合能力を有する非ヒト種(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスターなど)のCDRに由来するアミノ酸残基により置き換えられているヒト免疫グロブリンである。一部の態様において、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク可変領域アミノ酸残基の一部は、非ヒト種に由来する抗体にある対応するアミノ酸残基と置き換えられる。一部の態様において、ヒト化抗体は、フレームワーク可変領域中および/または置き換えられた非ヒト残基内のさらなる残基の置換によってさらに改変されて、抗体の特異性、親和性、および/または能力をさらに改良および最適化することができる。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンに対応する全てまたは実質的に全てのCDRを含む可変ドメイン領域を含むのに対して、全てまたは実質的に全てのフレームワーク領域がヒト免疫グロブリン配列のフレームワーク領域である。一部の態様において、フレームワーク領域は、ヒトコンセンサス免疫グロブリン配列のフレームワーク領域である。一部の態様において、ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域またはドメイン(Fc)の少なくとも一部、典型的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域またはドメイン(Fc)の少なくとも一部も含むことができる。ある特定の態様において、このようなヒト化抗体は、ヒト対象に投与された場合に抗原性およびHAMA(ヒト抗マウス抗体)応答を低減する可能性があるので治療に用いられる。
【0103】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質はヒト抗体である。ヒト抗体は、当技術分野において公知の様々な技法を用いて直接、調製することができる。一部の態様において、ヒト抗体は、インビトロで免疫された不死化ヒトBリンパ球から作製されてもよく、免疫された個体から単離されたリンパ球から作製されてもよい。どちらの場合でも、標的抗原に対して作られた抗体を産生する細胞を作製および単離することができる。一部の態様において、ヒト抗体を発現するファージライブラリーからヒト抗体を選択することができる。または、ファージディスプレイ技術を用いて、インビトロで、未免疫ドナーに由来する免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子レパートリーからヒト抗体および抗体断片を生成することができる。抗体ファージライブラリーを作製および使用するための技法は当技術分野において周知である。抗体が同定されたら、高親和性ヒト抗体を作製するために、鎖シャッフリング(chain shuffling)および部位特異的変異誘発を含むが、これらに限定されない当技術分野において公知の親和性成熟戦略が用いられる場合がある。
【0104】
一部の態様において、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含有するトランスジェニックマウスにおいて作製することができる。これらのマウスが免疫されると、内因性免疫グロブリン産生の非存在下で、ヒト抗体の全レパートリーを産生することができる。
【0105】
一部の態様において、TIGIT結合物質は二重特異性抗体である。従って、本発明は、TIGITと、少なくとも1つのさらなる標的を特異的に認識する二重特異性抗体を包含する。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原またはエピトープを特異的に認識および結合することができる。異なるエピトープは同じ分子内にあってもよく(例えば、TIGIT上の2つのエピトープ)、異なる分子上にあってもよい(例えば、1つのエピトープはTIGIT上にあり、1つのエピトープは異なるタンパク質上にある)。一部の態様において、二重特異性抗体の有効性は、個々の抗体と比較して、または複数種の抗体の組み合わせと比較して高い。一部の態様において、二重特異性抗体の毒性は、個々の抗体と比較して、または複数種の抗体の組み合わせと比較して低い。どの治療用物質も特有の薬物動態(PK)(例えば、循環半減期)を有し得ることは当業者に公知である。一部の態様において、二重特異性抗体には、2種類の活性結合物質のPKを同時発生させる能力がある。この場合、2種類の個々の結合物質のPKプロファイルは異なる。一部の態様において、二重特異性抗体には、2種類の作用物質の働きを共通の領域(例えば、腫瘍および/または腫瘍微小環境)に集める能力がある。一部の態様において、二重特異性抗体には、2種類の作用物質の働きを共通の標的(例えば、腫瘍または腫瘍細胞)に集める能力がある。一部の態様において、二重特異性抗体には、2種類の作用物質の働きを複数の生物学的経路または生物学的機能に標的化する能力がある。一部の態様において、二重特異性抗体には、2つの異なる細胞(例えば、免疫細胞および腫瘍細胞)を標的化し、近づける能力がある。
【0106】
一部の態様において、二重特異性抗体はモノクローナル抗体である。一部の態様において、二重特異性抗体はヒト化抗体である。一部の態様において、二重特異性抗体はヒト抗体である。一部の態様において、二重特異性抗体はIgG1抗体である。一部の態様において、二重特異性抗体はIgG2抗体である。一部の態様において、二重特異性抗体はIgG4抗体である。一部の態様において、二重特異性抗体は毒性および/または副作用が弱い。一部の態様において、二重特異性抗体は、2種類の個々の抗体の混合物または単一作用物質としての抗体と比較して毒性および/または副作用が弱い。一部の態様において、二重特異性抗体は治療指数が大きい。一部の態様において、二重特異性抗体は、2種類の個々の抗体の混合物または単一作用物質としての抗体と比較して治療指数が大きい。
【0107】
一部の態様において、前記抗体は、細胞防御機構を、第1の抗原標的を発現および/または産生する細胞に集中させるために、第1の抗原標的(例えば、TIGIT)、ならびに第2の抗原標的、例えば、免疫細胞上にあるエフェクター分子(例えば、CD2、CD3、CD28、CTLA4、PD-1、PD-L1、CD80、もしくはCD86)またはFc受容体(例えば、CD64、CD32、もしくはCD16)を特異的に認識および結合することができる。一部の態様において、前記抗体は、細胞傷害剤を、特定の標的抗原を発現する細胞に方向付けるのに使用することができる。これらの抗体は、抗原結合アーム、および細胞傷害剤または放射性核種キレート剤、例えば、EOTUBE、DPTA、DOTA、またはTETAに結合するアームを有する。
【0108】
二重特異性抗体を作製するための技法は当業者に公知である。一部の態様において、二重特異性抗体は、2本の重鎖間にある境界面の一部であるアミノ酸が改変された重鎖定常領域を含む。一部の態様において、二重特異性抗体は「ノブ-イントゥ-ホール」戦略を用いて作製することができる。場合によっては、「ノブ」および「ホール」という専門用語は「突起」および「空洞」という用語と置き換えられる。一部の態様において、二重特異性抗体は、重鎖間でジスルフィド結合を形成することができない変種ヒンジ領域を含んでもよい。一部の態様において、改変は、静電相互作用を変えるアミノ酸変化を含んでもよい。一部の態様において、改変は、疎水性相互作用/親水性相互作用を変えるアミノ酸変化を含んでもよい。
【0109】
二重特異性抗体は無傷の抗体でもよく、抗原結合部位を含む抗体断片でもよい。結合価が2を超える抗体も意図される。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。従って、ある特定の態様では、TIGITに対する抗体は多重特異性である。
【0110】
ある特定の態様において、本明細書に記載の抗体(または他のポリペプチド)は単一特異性でもよい。ある特定の態様において、抗体が含む1つまたは複数の抗原結合部位はそれぞれ、TIGIT上の相同エピトープに結合することができる(またはTIGIT上の相同エピトープに結合する)。
【0111】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質は抗体断片である。抗体断片は、無傷の抗体とは異なる機能または能力を有する場合がある。例えば、抗体断片は高い腫瘍浸透力を有することがある。無傷の抗体のタンパク質分解消化を含むが、これに限定されない、抗体断片を生成するための様々な技法が公知である。一部の態様において、抗体断片には、抗体分子のペプシン消化によって生成されるF(ab')2断片が含まれる。一部の態様において、抗体断片には、F(ab')2断片のジスルフィド架橋を還元することによって作製されるFab断片が含まれる。他の態様において、抗体断片には、抗体分子をパパインおよび還元剤で処理することによって作製されるFab断片が含まれる。ある特定の態様において、抗体断片は組換え法によって生成される。一部の態様において、抗体断片にはFvまたは単鎖Fv(scFv)断片が含まれる。Fab、Fv、およびscFv抗体断片は大腸菌または他の宿主細胞の中で発現させ、大腸菌または他の宿主細胞から分泌させることができ、これにより、これらの断片を多量に産生することが可能になる。一部の態様において、抗体断片は、本明細書において議論される抗体ファージライブラリーから単離される。例えば、TIGITまたはその誘導体、断片、類似体、もしくはホモログに対して望ましい特異性を有するモノクローナルFab断片を迅速かつ効果的に同定するためにFab発現ライブラリーを構築するための方法を使用することができる。一部の態様において、抗体断片は直鎖抗体断片である。ある特定の態様において、抗体断片は単一特異性または二重特異性である。ある特定の態様において、TIGIT結合物質はscFvである。TIGITに特異的な単鎖抗体を生成するために様々な技法を使用することができる。
【0112】
一部の態様において、特に抗体断片の場合、抗体の血清半減期を変える(例えば、延ばす、または短くする)ように抗体は改変される。これは、例えば、サルベージ(salvage)受容体結合エピトープを前記抗体断片に組み込むことによって、前記抗体断片にある適切な領域を変異させることによって、またはペプチドタグにエピトープを組み込み、次いで、これを、(例えば、DNA合成もしくはペプチド合成によって)どちらかの端に、もしくは中央で前記抗体断片と融合させることによって達成することができる。
【0113】
ヘテロ結合抗体も本発明の範囲内にある。ヘテロ結合抗体は、共有結合した2種類の抗体で構成される。例えば、免疫細胞を不必要な細胞に標的化するために、このような抗体が提案されている。ヘテロ結合抗体は、架橋剤が関与する方法を含む、合成タンパク質化学において公知の方法を用いてインビトロで調製できることも考えられている。例えば、ジスルフィド交換反応を用いて、またはチオエーテル結合を形成することによって免疫毒素を構築することができる。この目的に適した試薬の例には、イミノチオラートおよびメチル-4-メルカプトブチルイミダートが含まれる。
【0114】
本発明の目的では、改変された抗体は、前記抗体と標的(すなわち、TIGIT)を会合させる任意のタイプの可変領域を含んでもよいことが理解されるはずである。これに関して、可変領域は、体液性応答を開始し、望ましい抗原に対する免疫グロブリンを発生するように誘導することができる任意のタイプの哺乳動物を含んでもよく、体液性応答を開始し、望ましい抗原に対する免疫グロブリンを発生するように誘導することができる任意のタイプの哺乳動物に由来してもよい。従って、改変された抗体の可変領域は、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル、マカクなど)、またはウサギに由来する可変領域でもよい。一部の態様において、改変された免疫グロブリンの可変領域と定常領域は両方ともヒトである。他の態様において、適合性抗体(通常、非ヒト供給源に由来する)の可変領域は、分子の結合特性を改善するように、または分子の免疫原性を弱めるように操作されてもよく、特別に合わせられてもよい。これに関して、本発明において有用な可変領域はヒト化されもよく、移入アミノ酸配列を含めることによって他の方法で変えられてもよい。
【0115】
ある特定の態様において、重鎖および軽鎖の両方にある可変ドメインは1つまたは複数のCDRの少なくとも部分的な交換によって変えられ、必要に応じて、部分的なフレームワーク領域交換ならびに配列の改変および/または変化によって変えられる。CDRは、フレームワーク領域が得られた抗体と同じクラス、さらにはサブクラスの抗体に由来してもよいが、異なるクラスの抗体から、多くの場合、異なる種に由来する抗体から得られる場合があることが想定される。ある可変ドメインの抗原結合能力を別の可変ドメインに移すために、全CDRを、ドナー可変領域に由来する全CDRと交換することが必要でない場合がある。逆に、抗原結合部位の活性を維持するのに必要な残基を移すことだけ必要な場合がある。
【0116】
可変領域に対する変化にもかかわらず、当業者は、天然の定常領域または変化していない定常領域を含むほぼ同じ免疫原性の抗体と比較した場合に、本発明の改変された抗体が、高い腫瘍局在化または長い血清半減期などの望ましい生化学的特性を得るように定常領域ドメインのうちの1つまたは複数の少なくとも一部分が欠失されているかまたは他の方法で変えられている抗体(例えば、完全長抗体またはその免疫反応性断片)を含むことを理解する。一部の態様において、改変された抗体の定常領域はヒト定常領域を含む。本発明と適合する定常領域に対する改変は、1つまたは複数のドメインにおける1つまたは複数のアミノ酸の付加、欠失、または置換を含む。本明細書において開示された改変された抗体は、3つの重鎖定常ドメイン(CH1、CH2、もしくはCH3)のうちの1つもしくは複数、および/または軽鎖定常ドメイン(CL) に対する変化または改変を含んでもよい。一部の態様において、1つまたは複数のドメインは、改変された抗体の定常領域から部分的にまたは完全に欠失されている。一部の態様において、改変された抗体は、CH2ドメイン全体が取り除かれているドメイン欠失構築物または変種(ΔCH2構築物)を含む。一部の態様において、取り除かれる定常領域ドメインは、典型的には、存在しない定常領域によって付与される分子柔軟性の一部をもたらす短いアミノ酸スペーサー(例えば、10個のアミノ酸残基)と交換される。
【0117】
一部の態様において、改変された抗体は、CH3ドメインを抗体のヒンジ領域に直接融合させるように操作される。他の態様では、ヒンジ領域と、改変されたCH2ドメインおよび/またはCH3ドメインとの間にペプチドスペーサーが挿入される。例えば、CH2ドメインが欠失されており、5〜20アミノ酸スペーサーを用いて、残っているCH3ドメイン(改変または非改変)がヒンジ領域とつなげられている構築物が発現されてもよい。このようなスペーサーを付加することにより、定常ドメインの調節エレメントを遊離状態でアクセス可能に保つこと、またはヒンジ領域の可動性を保つことができる。しかしながら、アミノ酸スペーサーは場合によっては免疫原性を有することが判明しており、構築物に対して望ましくない免疫応答を誘発する場合があることに留意しなければならない。従って、ある特定の態様では、改変された抗体の望ましい生物学的特性が維持されるように、構築物に付加されるスペーサーは全て比較的、免疫原性がない。
【0118】
一部の態様において、改変された抗体には、定常ドメインの部分的欠失しかなくてもよいか、または数個のアミノ酸の置換、さらには1個のアミノ酸の置換しかなくてもよい。例えば、CH2ドメインの選択された領域中の一アミノ酸の変異はFc結合を大幅に減少させるのに十分である場合がある。一部の態様において、CH2ドメインの選択された領域中の一アミノ酸の変異は、Fc結合を大幅に減少させてがん細胞局在化および/または組織浸透力を高めるのに十分である場合がある。同様に、調整される特定のエフェクター機能(例えば、補体C1q結合)を制御する1つまたは複数の定常領域ドメインの一部を単に欠失させることが望ましい場合がある。定常領域のこのような部分的欠失は、この定常領域ドメインに関連する他の望ましい機能をそのままにしながら、該抗体の選択された特性(血清半減期)を改善する可能性がある。さらに、上記で言及したように、開示された抗体の定常領域は、結果として生じる構築物のプロファイルを向上させる、1つまたは複数のアミノ酸の変異または置換によって改変されてもよい。この点で、改変された抗体の構成および免疫原性プロファイルを実質的に維持しながら、保存された結合部位(例えば、Fc結合)によって提供される活性を混乱させることが可能な場合がある。ある特定の態様では、改変された抗体は、エフェクター機能の減少もしくは増大などの望ましい特性を強化するような、または細胞毒もしくは炭水化物接着部位をもっと増やすような、定常領域への1個または複数個のアミノ酸の付加を含む。
【0119】
定常領域はいくつかのエフェクター機能を媒介することが当技術分野において公知である。例えば、補体のC1成分と、(抗原に結合した)IgG抗体またはIgM抗体のFc領域が結合すると補体系が活性化される。補体活性化は細胞病原体のオプソニン化および溶解において重要である。補体活性化はまた炎症応答も刺激し、自己免疫過敏にも関与する場合がある。さらに、抗体のFc領域は、Fc受容体(FcR)を発現する細胞に結合することができる。IgG(γ受容体)、IgE(ε受容体)、IgA(α受容体)、およびIgM(μ受容体)を含む異なるクラスの抗体に特異的な多くのFc受容体がある。抗体と、細胞表面上のFc受容体が結合すると、抗体コーティング粒子の貪食および破壊、免疫複合体のクリアランス、キラー細胞による抗体コーティング標的細胞の溶解(抗体依存性細胞傷害またはADCCと呼ばれる)、炎症メディエーターの放出、胎盤通過、ならびに免疫グロブリン産生の制御を含む多くの重要かつ多様な生物学的応答が誘発される。
【0120】
ある特定の態様において、改変された抗体はエフェクター機能の変化をもたらし、次に、これにより、投与された抗体の生物学的プロファイルが影響を受ける。例えば、一部の態様では、(点変異または他の手段によって)定常領域ドメインが欠失または不活性化されると、改変された循環抗体のFc受容体結合が低減する可能性がある。一部の態様では、(点変異または他の手段によって)定常領域ドメインが欠失または不活性化されると、改変された循環抗体のFc受容体結合が低減し、それによって、がん細胞局在化および/または腫瘍浸透力が増大する可能性がある。他の態様において、定常領域の改変は前記抗体の血清半減期を延ばす。他の態様において、定常領域の改変は前記抗体の血清半減期を短くする。一部の態様において、ジスルフィド結合またはオリゴ糖部分を無くすように定常領域は改変される。本発明による定常領域の改変は、周知の生化学的または分子的な操作法を用いて容易に行われる場合がある。
【0121】
ある特定の態様において、抗体であるTIGIT結合物質には1つまたは複数のエフェクター機能がない。例えば、一部の態様において、前記抗体にはADCC活性がない、および/または補体依存性細胞傷害(CDC)活性がない。ある特定の態様において、前記抗体はFc受容体および/または補体因子に結合しない。ある特定の態様において、前記抗体にはエフェクター機能がない。
【0122】
本発明は、本明細書に記載の組換え抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、およびヒト抗体、またはその抗体断片と実質的に相同な変種および同等物をさらに含む。これらの変種は、例えば、保存的置換変異、すなわち、類似するアミノ酸による1つまたは複数のアミノ酸の置換を含有してもよい。
【0123】
本発明は、TIGITと第2の標的の両方に特異的に結合する二重特異性抗体を含む、TIGITに結合する抗体を産生するための方法を提供する。一部の態様において、TIGITに結合する抗体を産生するための方法は、ハイブリドーマ法を使用する工程を含む。一部の態様において、ヒトTIGITに結合する抗体を産生するための方法が提供される。一部の態様において、前記方法は、抗原として、マウスTIGITの細胞外ドメインを含むポリペプチドまたはその断片を使用する工程を含む。一部の態様において、前記方法は、抗原として、ヒトTIGITの細胞外ドメインを含むポリペプチドまたはその断片を使用する工程を含む。一部の態様において、前記方法は、抗原として、マウスTIGITのアミノ酸29〜148を含むポリペプチドを使用する工程を含む。一部の態様において、前記方法は、抗原として、ヒトTIGITのアミノ酸22〜141を含むポリペプチドを使用する工程を含む。一部の態様において、前記方法は、抗原として、SEQ ID NO:1のアミノ酸29〜148を含むポリペプチドを使用する工程を含む。一部の態様において、前記方法は、抗原として、SEQ ID NO:4のアミノ酸22〜141を含むポリペプチドを使用する工程を含む。一部の態様において、前記方法は、抗原として、SEQ ID NO:3を含むポリペプチドまたはその断片を使用する工程を含む。一部の態様において、前記方法は、抗原として、SEQ ID NO:6を含むポリペプチドまたはその断片を使用する工程を含む。一部の態様において、TIGITに結合する抗体を作製する方法は、ファージライブラリーをスクリーニングする工程を含む。一部の態様において、TIGITに結合する抗体を作製する方法は、ヒトファージライブラリーをスクリーニングする工程を含む。さらに、本発明は、TIGITに結合する抗体を同定する方法を提供する。一部の態様において、前記抗体は、TIGITまたはその断片との結合をFACSスクリーニングすることによって同定される。一部の態様において、前記抗体は、ELISAを用いて、TIGITまたはその断片との結合をスクリーニングすることによって同定される。一部の態様において、前記抗体は、FACSによって、TIGITとPVRとの結合のブロッキングをスクリーニングすることによって同定される。
【0124】
一部の態様において、TIGITに対する抗体を作製する方法は、哺乳動物を、マウスTIGITのアミノ酸29〜148を含むポリペプチドで免疫する工程を含む。一部の態様において、TIGITに対する抗体を作製する方法は、哺乳動物を、ヒトTIGITのアミノ酸22〜141を含むポリペプチドで免疫する工程を含む。一部の態様において、TIGITに対する抗体を作製する方法は、哺乳動物を、マウスTIGITのアミノ酸29〜148の断片(例えば、一部)を含むポリペプチドで免疫する工程を含む。一部の態様において、TIGITに対する抗体を作製する方法は、哺乳動物を、ヒトTIGITのアミノ酸22〜141の断片を含むポリペプチドで免疫する工程を含む。一部の態様において、前記方法は、哺乳動物から抗体または抗体産生細胞を単離する工程をさらに含む。一部の態様において、TIGITに結合するモノクローナル抗体を作製する方法は、(a)哺乳動物を、マウスTIGITのアミノ酸29〜148の断片を含むポリペプチドで免疫する工程;(b)免疫された哺乳動物から抗体産生細胞を単離する工程;および(c)抗体産生細胞をミエローマ細胞株の細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞を形成する工程を含む。一部の態様において、TIGITに結合するモノクローナル抗体を作製する方法は、(a)哺乳動物を、ヒトTIGITのアミノ酸22〜141の断片を含むポリペプチドで免疫する工程;(b)免疫された哺乳動物から抗体産生細胞を単離する工程;および(c)抗体産生細胞をミエローマ細胞株の細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞を形成する工程を含む。一部の態様において、前記方法は、(d)TIGITに結合する抗体を発現するハイブリドーマ細胞を選択する工程をさらに含む。ある特定の態様において、哺乳動物はマウスである。一部の態様において、哺乳動物はラットである。一部の態様において、哺乳動物はウサギである。一部の態様において、前記抗体は、マウスTIGITのアミノ酸29〜148を含むポリペプチドまたはその断片を用いて選択される。一部の態様において、前記抗体は、ヒトTIGITのアミノ酸22〜141を含むポリペプチドまたはその断片を用いて選択される。一部の態様において、前記抗体はヒトTIGITとマウスTIGITの両方に結合する。一部の態様において、前記抗体はマウスTIGITに結合しない。一部の態様において、前記抗体はカニクイザルTIGITに結合しない。一部の態様において、前記抗体はアカゲザルTIGITに結合しない。一部の態様において、前記抗体はラットTIGITに結合しない。一部の態様において、前記抗体はヒトTIGITに結合し、マウスTIGITに結合しない。一部の態様において、前記抗体はヒトTIGITに結合し、カニクイザルTIGITに結合しない。一部の態様において、前記抗体はヒトTIGITに結合し、アカゲザルTIGITに結合しない。一部の態様において、前記抗体はヒトTIGITに結合し、ラットTIGITに結合しない。
【0125】
一部の態様において、TIGITに結合する抗体を産生する方法は、1つの抗原結合部位を含む膜結合型ヘテロ二量体分子を用いて抗体を同定する工程を含む。一部の非限定的な態様では、前記抗体は、国際公報WO2011/100566に記載の方法およびポリペプチドを用いて同定される。
【0126】
一部の態様において、TIGITに結合する抗体を産生する方法は、抗体発現ライブラリーをスクリーニングする工程を含む。一部の態様において、抗体発現ライブラリーはファージライブラリーである。一部の態様において、スクリーニングはパニングを含む。一部の態様において、抗体発現ライブラリーは哺乳動物細胞ライブラリーである。一部の態様において、抗体発現ライブラリーは、マウスTIGITのアミノ酸29〜148またはその断片を用いてスクリーニングされる。一部の態様において、抗体発現ライブラリーは、ヒトTIGITのアミノ酸22〜141またはその断片を用いてスクリーニングされる。一部の態様において、スクリーニングにおいて同定された抗体はヒトTIGITとマウスTIGITの両方に結合する。一部の態様において、スクリーニングにおいて同定された抗体はTIGITアンタゴニストである。
【0127】
一部の態様において、本明細書に記載の方法によって作製された抗体はTIGITアンタゴニストである。一部の態様において、本明細書に記載の方法によって作製された抗体はTIGITシグナル伝達を阻害する。一部の態様において、本明細書に記載の方法によって作製された抗体はTIGITリン酸化を阻害する。
【0128】
ある特定の態様において、本明細書に記載の抗体は単離されている。ある特定の態様において、本明細書に記載の抗体は実質的に純粋である。
【0129】
本発明のTIGIT結合物質(例えば、抗体)は、当技術分野において公知の任意の方法によって特異的結合についてアッセイすることができる。使用することができるイムノアッセイには、Biacore分析、FACS分析、免疫蛍光、免疫細胞化学、ウエスタンブロット分析、ラジオイムノアッセイ、ELISA、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈殿反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散法アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射線測定法、蛍光イムノアッセイ、およびプロテインAイムノアッセイなどの技法を用いた競合的アッセイ系および非競合的アッセイ系が含まれるが、これらに限定されない。このようなアッセイは日常的なものであり、当技術分野において周知である(例えば、Ausubel et al., Editors, 1994-現行のCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., New York, NYを参照されたい。)。
【0130】
非限定的な例では、抗体とヒトTIGITとの特異的結合のスクリーニングはELISAを用いて判定される場合がある。ELISAは、抗原(例えば、TIGITまたはその断片)を調製する工程、96ウェルマイクロタイタープレートのウェルを抗原でコーティングする工程、検出可能な化合物、例えば、酵素基質(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)に結合体化された試験抗体をウェルに添加する工程、ある期間にわたってインキュベートする工程、および抗原に結合した抗体の存在を検出する工程を含む。一部の態様において、試験抗体は、検出可能な化合物に結合体化されず、その代わりに、抗体を認識し、検出可能な化合物に結合体化された二次抗体(例えば、抗Fc抗体)がウェルに添加される。一部の態様において、ウェルを抗原でコーティングする代わりに、試験抗体がウェルにコーティングされてもよく、抗原(例えば、TIGIT)がウェルに添加された後に、検出可能な化合物に結合体化された二次抗体が添加される。当業者であれば、検出されるシグナルを増やすように改変することができるパラメータならびに当技術分野において公知のELISAの他のバリエーションについて精通しているであろう。
【0131】
別の非限定的な例では、抗体とTIGITとの特異的結合はFACSを用いて判定される場合がある。FACSスクリーニングアッセイは、抗原を完全長タンパク質(TIGIT)または融合タンパク質(例えば、TIGIT-CD4TM)として発現するcDNA構築物を作製する工程、トランスフェクションによって構築物を細胞に導入する工程、細胞表面に抗原を発現させる工程、試験抗体を、トランスフェクトされた細胞と混合する工程、ある期間にわたってインキュベートする工程を含んでもよい。試験抗体が結合した細胞は、検出可能な化合物と結合体化した二次抗体(例えば、PE結合抗Fc抗体)とフローサイトメーターを用いて同定することができる。当業者であれば、検出されるシグナルを最適化するように改変することができるパラメータならびにスクリーニング(例えば、遮断抗体のスクリーニング)を強化し得るFACSの他のバリエーションについて精通しているであろう。
【0132】
競合的結合アッセイによって、抗体または他の結合物質と抗原(例えば、TIGIT)との結合親和性および抗体-抗原相互作用のオフレートを求めることができる。競合的結合アッセイの一例は、漸増量の非標識抗原の存在下で、標識された抗原(例えば、
3Hまたは
125I-TIGIT)またはその断片もしくは変種を関心対象の抗体とインキュベーションした後に、標識抗原に結合した抗体を検出する工程を含むラジオイムノアッセイである。抗原に対する抗体の親和性および結合オフレートは、スキャッチャードプロット分析によるデータから求めることができる。一部の態様において、抗原(例えば、TIGIT)に結合する抗体または作用物質の結合オンレートおよびオフレートを求めるために、Biacore動態解析が用いられる。一部の態様において、Biacore動態解析は、抗原(例えば、TIGIT)がチップ表面に固定化されているチップからの抗体の結合および解離を解析する工程を含む。一部の態様において、Biacore動態解析は、抗体(例えば、抗TIGIT抗体)がチップ表面に固定化されているチップからの抗原(例えば、TIGIT)の結合および解離を解析する工程を含む。
【0133】
ある特定の態様において、本発明は、TIGITに特異的に結合するTIGIT結合物質であって、抗体313R11、313R12、313R14、または313R19のCDR(表1を参照されたい)のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、および/または6つを含む、TIGIT結合物質(例えば、抗体)を提供する。一部の態様において、TIGIT結合物質は、313R11、313R12、313R14、もしくは313R19のCDRのうちの1つもしくは複数、またはそのヒト化変種;313R11、313R12、313R14、もしくは313R19のCDRのうちの2つもしくはそれ以上、またはそのヒト化変種;313R11、313R12、313R14、もしくは313R19のCDRのうちの3つもしくはそれ以上、またはそのヒト化変種;313R11、313R12、313R14、もしくは313R19のCDRのうちの4つもしくはそれ以上、またはそのヒト化変種;313R11、313R12、313R14、もしくは313R19のCDRのうちの5つもしくはそれ以上、またはそのヒト化変種;あるいは313R11、313R12、313R14、もしくは313R19のCDRの6つ全て、またはそのヒト化変種を含む。
【0134】
(表1)
[この文献は図面を表示できません]
【0135】
ある特定の態様において、本発明は、TIGITに特異的に結合するTIGIT結合物質(例えば、抗体)であって、
[この文献は図面を表示できません]
を含む重鎖CDR1、
[この文献は図面を表示できません]
を含む重鎖CDR2、および
[この文献は図面を表示できません]
を含む重鎖CDR3を含む、TIGIT結合物質を提供する。一部の態様において、TIGIT結合物質は、
[この文献は図面を表示できません]
を含む軽鎖CDR1、
[この文献は図面を表示できません]
を含む軽鎖CDR2、および
[この文献は図面を表示できません]
を含む軽鎖CDR3をさらに含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、
[この文献は図面を表示できません]
を含む軽鎖CDR1、
[この文献は図面を表示できません]
を含む軽鎖CDR2、および
[この文献は図面を表示できません]
を含む軽鎖CDR3を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、(a)
[この文献は図面を表示できません]
を含む重鎖CDR1、
[この文献は図面を表示できません]
を含む重鎖CDR2、および
[この文献は図面を表示できません]
を含む重鎖CDR3、ならびに(b)
[この文献は図面を表示できません]
を含む軽鎖CDR1、
[この文献は図面を表示できません]
を含む軽鎖CDR2、および
[この文献は図面を表示できません]
を含む軽鎖CDR3を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、(a)
[この文献は図面を表示できません]
を含む重鎖CDR1、
[この文献は図面を表示できません]
を含む重鎖CDR2、および
[この文献は図面を表示できません]
を含む重鎖CDR3、ならびに(b)
[この文献は図面を表示できません]
を含む軽鎖CDR1、DALKLAS(SEQ ID NO:11)を含む軽鎖CDR2、および
[この文献は図面を表示できません]
を含む軽鎖CDR3を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、(a)
[この文献は図面を表示できません]
を含む重鎖CDR1、
[この文献は図面を表示できません]
を含む重鎖CDR2、および
[この文献は図面を表示できません]
を含む重鎖CDR3、ならびに(b)
[この文献は図面を表示できません]
を含む軽鎖CDR1、RASTLAS(SEQ ID NO:15)を含む軽鎖CDR2、および
[この文献は図面を表示できません]
を含む軽鎖CDR3を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、(a)
[この文献は図面を表示できません]
を含む重鎖CDR1、
[この文献は図面を表示できません]
を含む重鎖CDR2、および
[この文献は図面を表示できません]
を含む重鎖CDR3、ならびに(b)
[この文献は図面を表示できません]
を含む軽鎖CDR1、RASTLAS(SEQ ID NO:15)を含む軽鎖CDR2、および
[この文献は図面を表示できません]
を含む軽鎖CDR3を含む。
【0136】
ある特定の態様において、本発明は、ヒトTIGITに特異的に結合するTIGIT結合物質(例えば、抗体)であって、(a)
[この文献は図面を表示できません]
または1個、2個、3個、もしくは4個のアミノ酸置換を含むその変種を含む、重鎖CDR1;(b)
[この文献は図面を表示できません]
または1個、2個、3個、もしくは4個のアミノ酸置換を含むその変種を含む、重鎖CDR2;(c)
[この文献は図面を表示できません]
または1個、2個、3個、もしくは4個のアミノ酸置換を含むその変種を含む、重鎖CDR3;(d)
[この文献は図面を表示できません]
または1個、2個、3個、もしくは4個のアミノ酸置換を含むその変種を含む、軽鎖CDR1;(e)
[この文献は図面を表示できません]
または1個、2個、3個、もしくは4個のアミノ酸置換を含むその変種を含む、軽鎖CDR2;および(f)
[この文献は図面を表示できません]
または1個、2個、3個、もしくは4個のアミノ酸置換を含むその変種を含む、軽鎖CDR3を含む、TIGIT結合物質を提供する。ある特定の態様において、アミノ酸置換は保存的置換である。一部の態様において、置換はヒト化プロセスの一環としてなされる。一部の態様において、置換は生殖系列ヒト化プロセスの一環としてなされる。
【0137】
ある特定の態様において、本発明は、TIGITに特異的に結合するTIGIT結合物質(例えば、抗体)であって、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:19、もしくはSEQ ID NO:32と少なくとも約80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、および/またはSEQ ID NO:18もしくはSEQ ID NO:20と少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む、TIGIT結合物質を提供する。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:17と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:19と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:32と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:18と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:20と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:19、もしくはSEQ ID NO:32と少なくとも約95%の配列同一性を有する重鎖可変領域、および/またはSEQ ID NO:18もしくはSEQ ID NO:20と少なくとも約95%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:19、もしくはSEQ ID NO:32を含む重鎖可変領域、および/またはSEQ ID NO:18もしくはSEQ ID NO:20を含む軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:19、またはSEQ ID NO:32を含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:18またはSEQ ID NO:20を含む軽鎖可変領域とを含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:19、またはSEQ ID NO:32から本質的になる重鎖可変領域と、SEQ ID NO:18またはSEQ ID NO:20から本質的になる軽鎖可変領域とを含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:19、またはSEQ ID NO:32からなる重鎖可変領域と、SEQ ID NO:18またはSEQ ID NO:20からなる軽鎖可変領域とを含む。
【0138】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:17を含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:18を含む軽鎖可変領域とを含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:17から本質的になる重鎖可変領域と、SEQ ID NO:18から本質的になる軽鎖可変領域とを含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:17からなる重鎖可変領域と、SEQ ID NO:18からなる軽鎖可変領域とを含む。
【0139】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:19を含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:20を含む軽鎖可変領域とを含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:19から本質的になる重鎖可変領域と、SEQ ID NO:20から本質的になる軽鎖可変領域とを含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:19からなる重鎖可変領域と、SEQ ID NO:20からなる軽鎖可変領域とを含む。
【0140】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:32を含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:20を含む軽鎖可変領域とを含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:32から本質的になる重鎖可変領域と、SEQ ID NO:20から本質的になる軽鎖可変領域とを含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:32からなる重鎖可変領域と、SEQ ID NO:20からなる軽鎖可変領域とを含む。
【0141】
ある特定の態様において、本発明は、TIGITに特異的に結合するTIGIT結合物質(例えば、抗体)であって、(a)SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:34、もしくはSEQ ID NO:56と少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖;および/または(b)SEQ ID NO:28もしくはSEQ ID NO:30と少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖を含む、TIGIT結合物質を提供する。一部の態様において、TIGIT結合物質は、(a)SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:34、もしくはSEQ ID NO:56と少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖;および/または(b)SEQ ID NO:28もしくはSEQ ID NO:30と少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:26を含む重鎖および/またはSEQ ID NO:28を含む軽鎖を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:27を含む重鎖および/またはSEQ ID NO:28を含む軽鎖を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:29を含む重鎖および/またはSEQ ID NO:30を含む軽鎖を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:34を含む重鎖および/またはSEQ ID NO:30を含む軽鎖を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:56を含む重鎖および/またはSEQ ID NO:30を含む軽鎖を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:26またはSEQ ID NO:27から本質的になる重鎖と、SEQ ID NO:28から本質的になる軽鎖を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:34、またはSEQ ID NO:56から本質的になる重鎖と、SEQ ID NO:30から本質的になる軽鎖を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:26からなる重鎖と、SEQ ID NO:28からなる軽鎖を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:27からなる重鎖と、SEQ ID NO:28からなる軽鎖を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:29からなる重鎖と、SEQ ID NO:30からなる軽鎖を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:34からなる重鎖と、SEQ ID NO:30からなる軽鎖を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:56からなる重鎖と、SEQ ID NO:30からなる軽鎖を含む。
【0142】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、313R11抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、313R11抗体に由来する重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域が親和性成熟している、313R11抗体の可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、(リーダー配列を有するかまたはリーダー配列を有さない)313R11抗体の重鎖および軽鎖を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は313R11抗体である。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域がヒト化されている、313R11抗体の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、ヒト化された形をとる、313R11抗体の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、IgG1重鎖、IgG2重鎖、またはIgG4重鎖の一部として313R11抗体の重鎖可変領域を含む。
【0143】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質は抗体313R11を含むか、抗体313R11から本質的になるか、または抗体313R11からなる。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は抗体313R11の変種を含むか、抗体313R11の変種から本質的になるか、または抗体313R11の変種からなる。
【0144】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質は313R12抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、313R12抗体に由来する重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域が親和性成熟している、313R12抗体の可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、(リーダー配列を有するかまたはリーダー配列を有さない)313R12抗体の重鎖および軽鎖を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は313R12抗体である。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域がヒト化されている、313R12抗体の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、ヒト化された形をとる、313R12抗体の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、IgG1重鎖、IgG2重鎖、またはIgG4重鎖の一部として313R12抗体の重鎖可変領域を含む。
【0145】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質は抗体313R12を含むか、抗体313R12から本質的になるか、または抗体313R12からなる。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は抗体313R12の変種を含むか、抗体313R12の変種から本質的になるか、または抗体313R12の変種からなる。
【0146】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、313R14抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、313R14抗体に由来する重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域が親和性成熟している、313R14抗体の可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、(リーダー配列を有するかまたはリーダー配列を有さない)313R14抗体の重鎖および軽鎖を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は313R14抗体である。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域がヒト化されている、313R14抗体の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、ヒト化された形をとる、313R14抗体の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、IgG1重鎖、IgG2重鎖、またはIgG4重鎖の一部として313R14抗体の重鎖可変領域を含む。
【0147】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質は抗体313R14を含むか、抗体313R14から本質的になるか、または抗体313R14からなる。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は抗体313R14の変種を含むか、抗体313R14の変種から本質的になるか、または抗体313R14の変種からなる。
【0148】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、313R19抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、313R19抗体に由来する重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域が親和性成熟している、313R19抗体の可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、(リーダー配列を有するかまたはリーダー配列を有さない)313R19抗体の重鎖および軽鎖を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は313R19抗体である。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域がヒト化されている、313R19抗体の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、ヒト化された形をとる、313R19抗体の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、IgG1重鎖、IgG2重鎖、またはIgG4重鎖の一部として313R19抗体の重鎖可変領域を含む。
【0149】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質は抗体313R19を含むか、抗体313R19から本質的になるか、または抗体313R19からなる。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は抗体313R19の変種を含むか、抗体313R19の変種から本質的になるか、または抗体313R19の変種からなる。
【0150】
一部の態様において、TIGIT結合物質は、ブダペスト条約の規定に基づいて2015年5月27日にアメリカン タイプ カルチャー コレクション(American Type Culture Collection) (ATCC), 10801 University Boulevard, Manassas, VA, USAに寄託され、PTA-122180と指定されたプラスミドによってコードされる重鎖可変領域を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、ブダペスト条約の規定に基づいて2015年5月27日にATCC, 10801 University Boulevard, Manassas, VA, USAに寄託され、PTA-122181と指定されたプラスミドによってコードされる軽鎖可変領域を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、ATCCに寄託され、PTA-122180と指定されたプラスミドによってコードされる重鎖可変領域と、ATCCに寄託され、PTA-122181と指定されたプラスミドによってコードされる軽鎖可変領域とを含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、ATCCに寄託され、PTA-122180と指定されたプラスミドによってコードされる重鎖可変領域を含む重鎖を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、ATCCに寄託され、PTA-122181と指定されたプラスミドによってコードされる軽鎖可変領域を含む軽鎖を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、ATCCに寄託され、PTA-122180と指定されたプラスミドによってコードされる重鎖可変領域を含む重鎖と、ATCCに寄託され、PTA-122181と指定されたプラスミドによってコードされる軽鎖可変領域を含む軽鎖を含む。
【0151】
ある特定の態様において、本発明は、TIGITに特異的に結合するTIGIT結合物質(例えば、抗体)であって、抗体313M26または313M32のCDR(表2を参照されたい)のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、および/または6つを含む、TIGIT結合物質を提供する。一部の態様において、TIGIT結合物質は、313M26もしくは313M32のCDRのうちの1つまたは複数;313M26もしくは313M32のCDRのうちの2つもしくはそれ以上;313M26もしくは313M32のCDRのうちの3つもしくはそれ以上;313M26もしくは313M32のCDRのうちの4つもしくはそれ以上;313M26もしくは313M32のCDRのうちの5つもしくはそれ以上;または313M26もしくは313M32のCDRの6つ全てを含む。
【0152】
(表2)
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【0153】
ある特定の態様において、本発明は、TIGITに特異的に結合するTIGIT結合物質(例えば、抗体)であって、TSDYAWN(SEQ ID NO:57)を含む重鎖CDR1、
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を含む重鎖CDR2、および
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を含む重鎖CDR3を含む、TIGIT結合物質を提供する。一部の態様において、TIGIT結合物質は、
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を含む軽鎖CDR1、SASYRYT(SEQ ID NO:61)を含む軽鎖CDR2、およびQQHYSTP(SEQ ID NO:62)を含む軽鎖CDR3をさらに含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、
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を含む軽鎖CDR1、SASYRYT(SEQ ID NO:61)を含む軽鎖CDR2、およびQQHYSTP(SEQ ID NO:62)を含む軽鎖CDR3を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、(a)TSDYAWN(SEQ ID NO:57)を含む重鎖CDR1、
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を含む重鎖CDR2、および
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を含む重鎖CDR3;ならびに(b)
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を含む軽鎖CDR1、SASYRYT(SEQ ID NO:61)を含む軽鎖CDR2、およびQQHYSTP(SEQ ID NO:62)を含む軽鎖CDR3を含む。
【0154】
ある特定の態様において、本発明は、ヒトTIGITに特異的に結合するTIGIT結合物質(例えば、抗体)であって、(a)TSDYAWN(SEQ ID NO:57)または1個、2個、3個、もしくは4個のアミノ酸置換を含むその変種を含む、重鎖CDR1;(b)
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または1個、2個、3個、もしくは4個のアミノ酸置換を含むその変種を含む、重鎖CDR2;(c)
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または1個、2個、3個、もしくは4個のアミノ酸置換を含むその変種を含む、重鎖CDR3;(d)
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または1個、2個、3個、もしくは4個のアミノ酸置換を含むその変種を含む、軽鎖CDR1;(e)SASYRYT(SEQ ID NO:61)または1個、2個、3個、もしくは4個のアミノ酸置換を含むその変種を含む、軽鎖CDR2;および(f)QQHYSTP(SEQ ID NO:62)または1個、2個、3個、もしくは4個のアミノ酸置換を含むその変種を含む、軽鎖CDR3を含む、TIGIT結合物質を提供する。ある特定の態様において、アミノ酸置換は保存的置換である。一部の態様において、置換はヒト化プロセスの一環としてなされる。一部の態様において、置換は生殖系列ヒト化プロセスの一環としてなされる。一部の態様において、置換は結合最適化プロセスの一環としてなされる。
【0155】
ある特定の態様において、本発明は、TIGITに特異的に結合するTIGIT結合物質(例えば、抗体)であって、SEQ ID NO:63もしくはSEQ ID NO:67と少なくとも約80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、および/またはSEQ ID NO:64もしくはSEQ ID NO:68と少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む、TIGIT結合物質を提供する。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:63と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:67と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:64と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:68と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:63もしくはSEQ ID NO:67と少なくとも約95%の配列同一性を有する重鎖可変領域および/またはSEQ ID NO:64もしくはSEQ ID NO:68と少なくとも約95%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:63もしくはSEQ ID NO:67を含む重鎖可変領域および/またはSEQ ID NO:64もしくはSEQ ID NO:68を含む軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:63もしくはSEQ ID NO:67を含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:64もしくはSEQ ID NO:68を含む軽鎖可変領域とを含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:63もしくはSEQ ID NO:67から本質的になる重鎖可変領域と、SEQ ID NO:64もしくはSEQ ID NO:68から本質的になる軽鎖可変領域とを含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:63もしくはSEQ ID NO:67からなる重鎖可変領域と、SEQ ID NO:64もしくはSEQ ID NO:68からなる軽鎖可変領域とを含む。
【0156】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:63を含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:64を含む軽鎖可変領域とを含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:63から本質的になる重鎖可変領域と、SEQ ID NO:64から本質的になる軽鎖可変領域とからなる。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:63からなる重鎖可変領域と、SEQ ID NO:64からなる軽鎖可変領域とを含む。
【0157】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:67を含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:68を含む軽鎖可変領域とを含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:67から本質的になる重鎖可変領域と、SEQ ID NO:68から本質的になる軽鎖可変領域とを含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:67からなる重鎖可変領域と、SEQ ID NO:68からなる軽鎖可変領域とを含む。
【0158】
ある特定の態様において、本発明は、TIGITに特異的に結合するTIGIT結合物質(例えば、抗体)であって、SEQ ID NO:70と少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖および/またはSEQ ID NO:72と少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖を含む、TIGIT結合物質を提供する。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:70と少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖および/またはSEQ ID NO:72と少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:70を含む重鎖および/またはSEQ ID NO:72を含む軽鎖を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:70から本質的になる重鎖と、SEQ ID NO:72から本質的になる軽鎖を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:70からなる重鎖と、SEQ ID NO:72からなる軽鎖を含む。
【0159】
ある特定の態様において、本発明は、TIGITに特異的に結合するTIGIT結合物質(例えば、抗体)であって、SEQ ID NO:82と少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖および/またはSEQ ID NO:72と少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖を含む、TIGIT結合物質を提供する。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:82と少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖および/またはSEQ ID NO:72と少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:82を含む重鎖および/またはSEQ ID NO:72を含む軽鎖を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:82から本質的になる重鎖と、SEQ ID NO:72から本質的になる軽鎖を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:82からなる重鎖と、SEQ ID NO:72からなる軽鎖を含む。
【0160】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、313M26抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、313M26抗体に由来する重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域が親和性成熟している、313M26抗体の可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、(リーダー配列を有するかまたはリーダー配列を有さない)313M26抗体の重鎖および軽鎖を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は313M26抗体である。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域がヒト化されている、313M26抗体の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、ヒト化された形をとる、313M26抗体の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、IgG1重鎖、IgG2重鎖、またはIgG4重鎖の一部として313M26抗体の重鎖可変領域を含む。
【0161】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質は抗体313M26を含むか、抗体313M26から本質的になるか、または抗体313M26からなる。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は抗体313M26の変種を含むか、抗体313M26の変種から本質的になるか、または抗体313M26の変種からなる。
【0162】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、313M32抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、313M32抗体に由来する重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域が親和性成熟している、313M32抗体の可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、(リーダー配列を有するかまたはリーダー配列を有さない)313M32抗体の重鎖および軽鎖を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は313M32抗体である。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、IgG1重鎖、IgG2重鎖、またはIgG4重鎖の一部として313M32抗体の重鎖可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、ヒトIgG1重鎖の一部として313M32抗体の重鎖可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、ヒトIgG2重鎖の一部として313M32抗体の重鎖可変領域を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、ヒトIgG4重鎖の一部として313M32抗体の重鎖可変領域を含む。ある特定の態様において、ヒトIgG4重鎖の一部として313M32抗体の重鎖可変領域を含むTIGIT結合物質は313M33抗体と呼ばれる。
【0163】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質は抗体313M32を含むか、抗体313M32から本質的になるか、または抗体313M32からなる。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は抗体313M32の変種を含むか、抗体313M32の変種から本質的になるか、または抗体313M32の変種からなる。
【0164】
一部の態様において、TIGIT結合物質は、ブダペスト条約の規定に基づいて2015年8月11日にアメリカン タイプ カルチャー コレクション(ATCC), 10801 University Boulevard, Manassas, VA, USAに寄託され、PTA-122346と指定されたプラスミドによってコードされる重鎖可変領域を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、ブダペスト条約の規定に基づいて2015年8月11日にATCC, 10801 University Boulevard, Manassas, VA, USAに寄託され、PTA-122347と指定されたプラスミドによってコードされる軽鎖可変領域を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、ATCCに寄託され、PTA-122346と指定されたプラスミドによってコードされる重鎖可変領域と、ATCCに寄託され、PTA-122347と指定されたプラスミドによってコードされる軽鎖可変領域とを含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、ATCCに寄託され、PTA-122346と指定されたプラスミドによってコードされる可変領域を含む重鎖を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、ATCCに寄託され、PTA-122347と指定されたプラスミドによってコードされる軽鎖を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、ATCCに寄託され、PTA-122346と指定されたプラスミドによってコードされる可変領域を含む重鎖と、ATCCに寄託され、PTA-122347と指定されたプラスミドによってコードされる軽鎖を含む。
【0165】
本発明はまた、ホモ二量体作用物質/分子およびヘテロ二量体作用物質/分子も包含する。一部の態様において、ホモ二量体作用物質はポリペプチドである。一部の態様において、ヘテロ二量体分子はポリペプチドである。一般的に、ホモ二量体分子は、2つの同一のポリペプチドを含む。一般的に、ヘテロ二量体分子は、少なくとも2つの異なるポリペプチドを含む。一部の態様において、ヘテロ二量体分子、例えば、二重特異性作用物質は、少なくとも2種類の標的に結合することができる。標的は、例えば、単一細胞の表面にある2つの異なるタンパク質でもよく、2つの別々の細胞の表面にある2つの異なるタンパク質でもよい。ホモ二量体作用物質、ヘテロ二量体作用物質、および/または二重特異性作用物質の構造について述べるために、本明細書において「アーム」という用語が用いられることがある。一部の態様において、それぞれのアームは少なくとも1つのポリペプチドを含む。一般的に、ヘテロ二量体分子のそれぞれのアームは、異なる機能、例えば、2つの異なる標的に結合する機能を有する。一部の態様において、あるアームは、抗体に由来する抗原結合部位を含んでもよい。一部の態様において、あるアームは受容体の結合部分を含んでもよい。一部の態様において、あるアームはリガンドを含んでもよい。一部の態様において、あるアームはリガンドの結合領域を含んでもよい。一部の態様において、ホモ二量体作用物質は2つの同一のアームを含む。一部の態様において、ヘテロ二量体作用物質は2つの異なるアームを含む。一部の態様において、二重特異性作用物質は2つの異なるアームを含む。
【0166】
一部の態様において、本発明は、ホモ二量体分子であるTIGIT結合物質を提供する。一部の態様において、ホモ二量体分子は、2つの同一のポリペプチドを含む。一部の態様において、本発明は、ヘテロ二量体分子であるTIGIT結合物質を提供する。一部の態様において、ヘテロ二量体分子は、少なくとも2つの異なるポリペプチドを含む。一部の態様において、本発明は、ヘテロ二量体作用物質であるTIGIT結合物質を提供する。一部の態様において、本発明は、二重特異性作用物質であるTIGIT結合物質を提供する。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は二重特異性抗体である。
【0167】
一部の態様において、ヘテロ二量体作用物質(例えば、二重特異性作用物質)は、本明細書に記載のTIGIT結合物質を含む。ある特定の態様において、ヘテロ二量体作用物質は免疫応答刺激作用物質またはその機能的断片を含む。一部の態様において、ヘテロ二量体分子は、少なくとも2つの機能、(i)TIGITに結合する機能と、(ii)第2の標的に結合する機能を含む。一部の態様において、ヘテロ二量体作用物質は、少なくとも2つの機能、(i)TIGITに結合する機能と、(ii)「非結合」機能を含む。ある特定の態様において、ヘテロ二量体分子は第2の免疫療法剤またはその機能的断片を含む。一部の態様において、ヘテロ二量体分子のあるアームは、本明細書に記載のTIGIT結合物質を含み、ヘテロ二量体分子のあるアームは第2の免疫療法剤を含む。一部の態様において、ヘテロ二量体作用物質のあるアームは、本明細書に記載のTIGIT結合物質を含み、ヘテロ二量体作用物質のあるアームは免疫応答刺激作用物質を含む。本明細書で使用する「免疫応答刺激作用物質」という句は最も広い意味で用いられ、任意の免疫系成分の活性化を誘導することによって、またはその活性を増大させることによって、免疫系を直接的または間接的に刺激する物質を指す。例えば、免疫応答刺激作用物質は、サイトカイン、ならびに腫瘍抗原および病原体に由来する抗原を含む様々な抗原を含んでもよい。一部の態様において、第2の免疫療法剤(例えば、免疫応答刺激作用物質)には、コロニー刺激因子(例えば、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、幹細胞因子(SCF))、インターロイキン(例えば、IL-1、IL2、IL-3、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18)、サイトカイン(例えば、γ-インターフェロン)、免疫抑制機能をブロックする抗体(例えば、抗CTLA4抗体、抗CD28抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体)、toll様受容体(例えば、TLR4、TLR7、TLR9)、またはB7ファミリーメンバー(例えば、CD80、CD86)が含まれるが、これらに限定されない。一部の態様において、免疫療法剤には、アゴニスト抗体(例えば、抗GITR抗体、抗OX40抗体)またはアゴニストリガンド(例えば、GITRLもしくはOX40L)が含まれるが、これらに限定されない。
【0168】
一部の態様において、TIGIT結合物質は、それぞれヘテロ多量体の形成を促進するように改変されている第1のCH3ドメインと第2のCH3ドメインを含む、ヘテロ二量体分子(例えば、二重特異性作用物質)である。一部の態様において、第1のCH3ドメインと第2のCH3ドメインはノブ-イントゥー-ホール法を用いて改変される。一部の態様において、第1のCH3ドメインと第2のCH3ドメインは、静電相互作用を変えるアミノ酸変化を含む。一部の態様において、第1のCH3ドメインと第2のCH3ドメインは、疎水性/親水性相互作用を変えるアミノ酸変化を含む。
【0169】
一部の態様において、TIGIT結合物質は二重特異性作用物質であり、該二重特異性作用物質は、(a)IgG1(SEQ ID NO:41)の位置253および292に対応するアミノ酸がグルタミン酸またはアスパラギン酸で置き換えられている第1のヒトIgG1定常領域、ならびに、IgG1(SEQ ID NO:41)の位置240および282に対応するアミノ酸がリジンで置き換えられている第2のヒトIgG1定常領域;(b)IgG2(SEQ ID NO:42)の位置249および288に対応するアミノ酸がグルタミン酸またはアスパラギン酸で置き換えられている第1のヒトIgG2定常領域、ならびに、IgG2(SEQ ID NO:42)の位置236および278に対応するアミノ酸がリジンで置き換えられている第2のヒトIgG2定常領域;(c)IgG3(SEQ ID NO:43)の位置300および339に対応するアミノ酸がグルタミン酸またはアスパラギン酸で置き換えられている第1のヒトIgG3定常領域、ならびに、IgG3(SEQ ID NO:43)の位置287および329に対応するアミノ酸がリジンで置き換えられている第2のヒトIgG3定常領域;ならびに(d)IgG4(SEQ ID NO:44)の位置250および289に対応するアミノ酸がグルタミン酸またはアスパラギン酸で置き換えられている第1のヒトIgG4定常領域、ならびに、IgG4(SEQ ID NO: 44)の位置237および279に対応するアミノ酸がリジンで置き換えられている第2のIgG4定常領域からなる群より選択される重鎖定常領域を含む。
【0170】
一部の態様において、TIGIT結合物質は、IgG1(SEQ ID NO:41)の位置253および292に対応する位置にアミノ酸置換を有する第1のヒトIgG1定常領域であって、IgG1(SEQ ID NO:41)の位置253および292に対応する位置にあるアミノ酸がグルタミン酸またはアスパラギン酸で置き換えられている、第1のヒトIgG1定常領域と、IgG1(SEQ ID NO:41)の位置240および282に対応する位置にアミノ酸置換を有する第2のヒトIgG1定常領域であって、IgG1(SEQ ID NO:41)の位置240および282に対応する位置にあるアミノ酸がリジンで置き換えられている、第2のヒトIgG1定常領域とを含む、二重特異性作用物質である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、IgG2(SEQ ID NO:42)の位置249および288に対応する位置にアミノ酸置換を有する第1のヒトIgG2定常領域であって、IgG2(SEQ ID NO:42)の位置249および288に対応する位置にあるアミノ酸がグルタミン酸またはアスパラギン酸で置き換えられている、第1のヒトIgG2定常領域と、IgG2(SEQ ID NO:42)の位置236および278に対応する位置にアミノ酸置換を有する第2のヒトIgG2定常領域であって、IgG2(SEQ ID NO:42)の位置236および278に対応する位置にあるアミノ酸がリジンで置き換えられている、第2のヒトIgG2定常領域とを含む、二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、IgG3(SEQ ID NO:43)の位置300および339に対応する位置にアミノ酸置換を有する第1のヒトIgG3定常領域であって、IgG3(SEQ ID NO:43)の位置300および339に対応する位置にあるアミノ酸がグルタミン酸またはアスパラギン酸で置き換えられている、第1のヒトIgG3定常領域と、IgG3(SEQ ID NO:43)の位置287および329に対応する位置にアミノ酸置換を有する第2のヒトIgG3定常領域であって、IgG3(SEQ ID NO:43)の位置287および329に対応する位置にあるアミノ酸がリジンで置き換えられている、第2のヒトIgG3定常領域とを含む、二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、IgG4(SEQ ID NO:44)の位置250および289に対応する位置にアミノ酸置換を有する第1のヒトIgG4定常領域であって、IgG4(SEQ ID NO:44)の位置250および289に対応する位置にあるアミノ酸がグルタミン酸またはアスパラギン酸で置き換えられている、第1のヒトIgG4定常領域と、IgG4(SEQ ID NO:44)の位置237および279に対応する位置にアミノ酸置換を有する第2のヒトIgG4定常領域であって、IgG4(SEQ ID NO:44)の位置237および279に対応する位置にあるアミノ酸がリジンで置き換えられている、第2のヒトIgG4定常領域とを含む、二重特異性抗体である。
【0171】
一部の態様において、TIGIT結合物質は、IgG1(SEQ ID NO:41)の位置253および292に対応する位置にアミノ酸置換を有する第1のヒトIgG1定常領域であって、アミノ酸がグルタミン酸で置き換えられている、第1のヒトIgG1定常領域と、IgG1(SEQ ID NO:41)の位置240および282に対応する位置にアミノ酸置換を有する第2のヒトIgG1定常領域であって、アミノ酸がリジンで置き換えられている、第2のヒトIgG1定常領域とを含む、二重特異性作用物質である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、IgG1(SEQ ID NO:41)の位置253および292に対応する位置にアミノ酸置換を有する第1のヒトIgG1定常領域であって、アミノ酸がアスパラギン酸で置き換えられている、第1のヒトIgG1定常領域と、IgG1(SEQ ID NO:41)の位置240および282に対応する位置にアミノ酸置換を有する第2のヒトIgG1定常領域であって、アミノ酸がリジンで置き換えられている、第2のヒトIgG1定常領域とを含む、二重特異性抗体である。
【0172】
一部の態様において、TIGIT結合物質は、IgG2(SEQ ID NO:42)の位置249および288に対応する位置にアミノ酸置換を有する第1のヒトIgG2定常領域であって、アミノ酸がグルタミン酸で置き換えられている、第1のヒトIgG2定常領域と、IgG2(SEQ ID NO:42)の位置236および278に対応する位置にアミノ酸置換を有する第2のヒトIgG2定常領域であって、アミノ酸がリジンで置き換えられている、第2のヒトIgG2定常領域とを含む、二重特異性作用物質である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、IgG2(SEQ ID NO:42)の位置249および288に対応する位置にアミノ酸置換を有する第1のヒトIgG2定常領域であって、アミノ酸がアスパラギン酸で置き換えられている、第1のヒトIgG2定常領域と、IgG2(SEQ ID NO:42)の位置236および278に対応する位置にアミノ酸置換を有する第2のヒトIgG2定常領域であって、アミノ酸がリジンで置き換えられている、第2のヒトIgG2定常領域とを含む、二重特異性抗体である。
【0173】
一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:45の重鎖定常領域を含む二重特異性作用物質である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:46の重鎖定常領域を含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:47の重鎖定常領域を含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:48の重鎖定常領域を含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:45の第1の重鎖定常領域と、SEQ ID NO:46の第2の重鎖定常領域とを含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:47の第1の重鎖定常領域と、SEQ ID NO:48の第2の重鎖定常領域とを含む二重特異性抗体である。
【0174】
一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:49の重鎖定常領域を含む二重特異性作用物質である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:50の重鎖定常領域を含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:51の重鎖定常領域を含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:52の重鎖定常領域を含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:49の第1の重鎖定常領域と、SEQ ID NO:50の第2の重鎖定常領域とを含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:51の第1の重鎖定常領域と、SEQ ID NO:52の第2の重鎖定常領域とを含む二重特異性抗体である。
【0175】
一部の態様において、TIGIT結合物質は、ヒトTIGITに特異的に結合する第1の抗原結合部位を含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、ヒトTIGITに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、第2の標的に結合する第2の抗原結合部位とを含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、ヒトTIGITに特異的に結合する第1の抗原結合部位であって、
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を含む重鎖CDR1、
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を含む重鎖CDR2、および
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を含む重鎖CDR3を含む、第1の抗原結合部位を含む、二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、ヒトTIGITに特異的に結合する第1の抗原結合部位であって、
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を含む重鎖CDR1、
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を含む重鎖CDR2、および
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を含む重鎖CDR3を含む、第1の抗原結合部位を含む、二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、ヒトTIGITに特異的に結合する第1の抗原結合部位であって、
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を含む重鎖CDR1、
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を含む重鎖CDR2、および
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を含む重鎖CDR3を含む、第1の抗原結合部位を含む、二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、ヒトTIGITに特異的に結合し(a)
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を含む重鎖CDR1、
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を含む重鎖CDR2、および
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を含む重鎖CDR3を含む、第1の抗原結合部位と、(b)第2の抗原結合部位とを含む、二重特異性抗体であって、第1の抗原結合部位および第2の抗原結合部位が共通の(すなわち、同一の)軽鎖を含む、二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、ヒトTIGITに特異的に結合し(a)
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を含む重鎖CDR1、
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を含む重鎖CDR2、および
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を含む重鎖CDR3、
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を含む軽鎖CDR1、
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を含む軽鎖CDR2、および
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を含む軽鎖CDR3を含む、第1の抗原結合部位と、(b)第2の抗原結合部位とを含む、二重特異性抗体である。一部の態様において、二重特異性抗体は、
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を含む軽鎖CDR1、
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を含む軽鎖CDR2、および
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を含む軽鎖CDR3を含む、第1の抗原結合部位を含む。
【0176】
一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:19、またはSEQ ID NO:32と少なくとも約80%の配列同一性を有する第1の重鎖可変領域を含む二重特異性抗体である。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:19、またはSEQ ID NO:32と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する第1の重鎖可変領域を含む二重特異性抗体である。一部の態様において、二重特異性抗体は、SEQ ID NO:18またはSEQ ID NO:20と少なくとも約80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。一部の態様において、二重特異性抗体は、SEQ ID NO:18またはSEQ ID NO:20と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:17を含む第1の重鎖可変領域を含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:19を含む第1の重鎖可変領域を含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:32を含む第1の重鎖可変領域を含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:18を含む第1の軽鎖可変領域を含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:20を含む第1の軽鎖可変領域を含む二重特異性抗体である。
【0177】
一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:17を含む第1の重鎖可変領域と、SEQ ID NO:45、SEQ ID NO:46、SEQ ID NO:47、SEQ ID NO:48、SEQ ID NO:49、SEQ ID NO:50、SEQ ID NO:51、またはSEQ ID NO:52を含む第1の重鎖定常領域とを含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:19を含む第1の重鎖可変領域と、SEQ ID NO:45、SEQ ID NO:46、SEQ ID NO:47、SEQ ID NO:48、SEQ ID NO:49、SEQ ID NO:50、SEQ ID NO:51、またはSEQ ID NO:52を含む第1の重鎖定常領域とを含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:32を含む第1の重鎖可変領域と、SEQ ID NO:45、SEQ ID NO:46、SEQ ID NO:47、SEQ ID NO:48、SEQ ID NO:49、SEQ ID NO:50、SEQ ID NO:51、またはSEQ ID NO:52を含む第1の重鎖定常領域とを含む二重特異性抗体である。
【0178】
一部の態様において、TIGIT結合物質は、ヒトTIGITに特異的に結合する第1の抗原結合部位を含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、ヒトTIGITに特異的に結合する第1の抗原結合部位と、第2の標的に結合する第2の抗原結合部位を含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、ヒトTIGITに特異的に結合する第1の抗原結合部位であって、TSDYAWN(SEQ ID NO:57)を含む重鎖CDR1、YISYSGSTSYNPSLRS(SEQ ID NO:58)を含む重鎖CDR2、およびARRQVGLGFAY(SEQ ID NO:59)を含む重鎖CDR3を含む、第1の抗原結合部位を含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、ヒトTIGITに特異的に結合し(a)TSDYAWN(SEQ ID NO:57)を含む重鎖CDR1、
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を含む重鎖CDR2、および
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を含む重鎖CDR3を含む第1の抗原結合部位と、(b)第2の抗原結合部位とを含む、二重特異性抗体であって、第1の抗原結合部位および第2の抗原結合部位が共通の(すなわち、同一の)軽鎖を含む、二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、ヒトTIGITに特異的に結合する第1の抗原結合部位であって、(a)TSDYAWN(SEQ ID NO:57)を含む重鎖CDR1、
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を含む重鎖CDR2、および
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を含む重鎖CDR3、
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を含む軽鎖CDR1、SASYRYT(SEQ ID NO:61)を含む軽鎖CDR2、およびQQHYSTP(SEQ ID NO:62)を含む軽鎖CDR3を含む、第1の抗原結合部位と、(b)第2の抗原結合部位とを含む、二重特異性抗体である。一部の態様において、二重特異性抗体は、
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を含む軽鎖CDR1、SASYRYT(SEQ ID NO:61)を含む軽鎖CDR2、およびQQHYSTP(SEQ ID NO:62)を含む軽鎖CDR3を含む、第1の抗原結合部位を含む。
【0179】
一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:63またはSEQ ID NO:67と少なくとも約80%の配列同一性を有する第1の重鎖可変領域を含む二重特異性抗体である。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:63またはSEQ ID NO:67と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する第1の重鎖可変領域を含む二重特異性抗体である。一部の態様において、二重特異性抗体は、SEQ ID NO:64またはSEQ ID NO:68と少なくとも約80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。一部の態様において、二重特異性抗体は、SEQ ID NO:64またはSEQ ID NO:68と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:63を含む第1の重鎖可変領域を含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:67を含む第1の重鎖可変領域を含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:64を含む第1の軽鎖可変領域を含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:68を含む第1の軽鎖可変領域を含む二重特異性抗体である。
【0180】
一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:63を含む第1の重鎖可変領域と、SEQ ID NO:45、SEQ ID NO:46、SEQ ID NO:47、SEQ ID NO:48、SEQ ID NO:49、SEQ ID NO:50、SEQ ID NO:51、またはSEQ ID NO:52を含む第1の重鎖定常領域とを含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:67を含む第1の重鎖可変領域と、SEQ ID NO:45、SEQ ID NO:46、SEQ ID NO:47、SEQ ID NO:48、SEQ ID NO:49、SEQ ID NO:50、SEQ ID NO:51、またはSEQ ID NO:52を含む第1の重鎖定常領域とを含む二重特異性抗体である。
【0181】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、ヒトTIGITと第2の標的に特異的に結合する二重特異性抗体である。一部の態様において、第2の標的は腫瘍抗原である。一部の態様において、二重特異性抗体は、本明細書に記載のTIGIT結合物質と、腫瘍抗原に特異的に結合する抗体を含む第2のポリペプチドを含む。腫瘍抗原に対する結合特異性をもつ二重特異性抗体は、TIGIT結合物質を腫瘍に方向付けるのに使用することができる。これは、腫瘍微小環境の近くで、または腫瘍微小環境内で免疫応答を誘導および/または増強するのに有用な場合がある。一部の態様において、二重特異性抗体は腫瘍浸潤免疫細胞の活性を誘導または増強するのに用いられることがある。一部の態様において、二重特異性抗体は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の活性を誘導または増強するのに用いられることがある。一部の態様において、二重特異性抗体はTreg細胞の活性を阻害するか、または減少させるのに用いられることがある。一部の態様において、二重特異性抗体はMSDCの活性を阻害するか、または減少させるのに用いられることがある。
【0182】
一部の態様において、TIGIT結合物質は、第1の標的がTIGITであり、第2の標的が免疫応答細胞上にある、二重特異性抗体である。一部の態様において、第2の標的は、T細胞上、NK細胞上、B細胞上、マクロファージ上、樹状細胞上、または骨髄系細胞上にある。一部の態様において、第2の標的は、PD-1、PD-L1、CTLA4、TIM-3、LAG-3、GITR、OX-40、GITRL、またはOX-40Lである。一部の態様において、第2の標的はCD28または4-1BBである。
【0183】
一部の態様において、二重特異性抗体は、本明細書に記載のTIGIT結合物質を含む第1のアーム、およびPD-1に特異的に結合する抗体を含む第2のアームを含む。一部の態様において、二重特異性抗体は、本明細書に記載のTIGIT結合物質を含む第1のアーム、およびPD-L1に特異的に結合する抗体を含む第2のアームを含む。一部の態様において、二重特異性抗体は、本明細書に記載のTIGIT結合物質を含む第1のアーム、およびGITRに特異的に結合する抗体を含む第2のアームを含む。一部の態様において、二重特異性抗体は、本明細書に記載のTIGIT結合物質を含む第1のアーム、およびOX-40に特異的に結合する抗体を含む第2のアームを含む。一部の態様において、二重特異性抗体は、本明細書に記載のTIGIT結合抗体を含む第1のアーム、およびCD40に特異的に結合する抗体を含む第2のアームを含む。一部の態様において、二重特異性抗体は、本明細書に記載のTIGIT結合物質を含む第1のアーム、およびCTLA4に特異的に結合する抗体を含む第2のアームを含む。一部の態様において、二重特異性抗体は、本明細書に記載のTIGIT結合抗体を含む第1のアーム、およびCD28に特異的に結合する抗体を含む第2のアームを含む。一部の態様において、二重特異性抗体は、本明細書に記載のTIGIT結合物質を含む第1のアーム、およびGITRLに特異的に結合する抗体を含む第2のアームを含む。一部の態様において、二重特異性抗体は、本明細書に記載のTIGIT結合物質を含む第1のアーム、およびOX-40Lに特異的に結合する抗体を含む第2のアームを含む。
【0184】
一部の態様において、TIGIT結合物質は、抗TIGIT抗体313R11に由来する重鎖可変領域を含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、抗TIGIT抗体313R12に由来する重鎖可変領域を含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、抗TIGIT抗体313R14に由来する重鎖可変領域を含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、抗TIGIT抗体313R19または313R20に由来する重鎖可変領域を含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、抗TIGIT抗体313R11または313R12に由来する軽鎖可変領域を含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、抗TIGIT抗体313R14、313R19、または313R20に由来する軽鎖可変領域を含む二重特異性抗体である。
【0185】
一部の態様において、TIGIT結合物質は、抗TIGIT抗体313M26に由来する重鎖可変領域を含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、抗TIGIT抗体313M26に由来する軽鎖可変領域を含む二重特異性抗体である。
【0186】
一部の態様において、TIGIT結合物質は、抗TIGIT抗体313M32に由来する重鎖可変領域を含む二重特異性抗体である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、抗TIGIT抗体313M32に由来する軽鎖可変領域を含む二重特異性抗体である。
【0187】
一部の態様において、二重特異性作用物質は、本明細書に記載のTIGIT結合物質を含む第1のアーム、およびGITRに特異的に結合するGITRLを含むポリペプチドを含む第2のアームを含む。一部の態様において、第2のアームは、少なくとも1コピーのGITRL細胞外ドメインを含むポリペプチドを含む。一部の態様において、二重特異性作用物質は、本明細書に記載のTIGIT結合物質を含む第1のアーム、およびOX-40に特異的に結合するOX-40Lを含むポリペプチドを含む第2のアームを含む。一部の態様において、第2のアームは、少なくとも1コピーのOX-40L細胞外ドメインを含むポリペプチドを含む。一部の態様において、二重特異性作用物質は、本明細書に記載のTIGIT結合物質を含む第1のアーム、およびCD40に特異的に結合するCD40Lを含むポリペプチドを含む第2のアームを含む。一部の態様において、第2のアームは、少なくとも1コピーのCD40L細胞外ドメインを含むポリペプチドを含む。一部の態様において、二重特異性作用物質は、本明細書に記載のTIGIT結合物質を含む第1のアーム、および4-1BBに特異的に結合する4-1BBリガンドを含むポリペプチドを含む第2のアームを含む。一部の態様において、第2のアームは、少なくとも1コピーの4-1BBリガンド細胞外ドメインを含むポリペプチドを含む。
【0188】
一部の態様において、TIGIT結合物質は、約50nMもしくはそれ未満、約25nMもしくはそれ未満、約10nMもしくはそれ未満、約1nMもしくはそれ未満、または約0.1nMもしくはそれ未満のK
DでTIGITに結合する二重特異性作用物質である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、約50nMもしくはそれ未満、約25nMもしくはそれ未満、約10nMもしくはそれ未満、約1nMもしくはそれ未満、または約0.1nMもしくはそれ未満のK
Dで第2の標的に結合する二重特異性作用物質である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、約50nMまたはそれ未満のK
DでTIGITに結合し、約50nMまたはそれ未満のK
Dで第2の標的に結合する二重特異性作用物質である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、約25nMまたはそれ未満のK
DでTIGITに結合し、約25nMまたはそれ未満のK
Dで第2の標的に結合する二重特異性作用物質である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、約10nMまたはそれ未満のK
DでTIGITに結合し、約10nMまたはそれ未満のK
Dで第2の標的に結合する二重特異性作用物質である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、約1nMまたはそれ未満のK
DでTIGITに結合し、約1nMまたはそれ未満のK
Dで第2の標的に結合する二重特異性作用物質である。
【0189】
一部の態様において、TIGIT結合物質は、第2の抗原結合部位の結合親和性より弱い結合親和性を有する、ある1つの抗原結合部位を含む、二重特異性作用物質である。例えば、一部の態様において、二重特異性作用物質は、約0.1nM〜1nMのK
DでTIGITに結合してもよく、約1nM〜10nMのK
Dで第2の標的に結合してもよい。または、二重特異性作用物質は約1nM〜10nMのK
DでTIGITに結合してもよく、約0.1nM〜1nMのK
Dで第2の標的に結合してもよい。一部の態様において、二重特異性作用物質は約0.1nM〜1nMのK
DでTIGITに結合してもよく、約1nM〜10nMのK
Dで第2の標的に結合してもよい。または、二重特異性作用物質は約1nM〜10nMのK
DでTIGITに結合してもよく、約0.1nM〜1nMのK
Dで第2の標的に結合してもよい。一部の態様において、2種類の抗原結合部位間の親和性の差は、約2倍もしくはそれ以上、約3倍もしくはそれ以上、約5倍もしくはそれ以上、約8倍もしくはそれ以上、約10倍もしくはそれ以上、約15倍もしくはそれ以上、約30倍もしくはそれ以上、約50倍もしくはそれ以上、または約100倍もしくはそれ以上でもよい。一部の態様では、TIGIT結合部位の親和性が変わるように、TIGITに対する抗原結合部位の少なくとも1つのCDRにある少なくとも1つのアミノ酸残基は異なるアミノ酸で置換される。一部の態様において、TIGIT結合部位の親和性は増大する。一部の態様において、TIGIT結合部位の親和性は減少する。一部の態様において、第2の抗原結合部位の親和性が変わるように、第2の標的に対する抗原結合部位の少なくとも1つのCDRにある少なくとも1つのアミノ酸残基は異なるアミノ酸で置換される。一部の態様において、第2の抗原結合部位の親和性は増大する。一部の態様において、第2の抗原結合部位の親和性は減少する。一部の態様において、TIGIT結合部位の親和性と、第2の抗原結合部位の親和性は変化する。
【0190】
本発明は、TIGITに特異的に結合する抗体を含むが、これに限定されない、ポリペプチドを提供する。一部の態様において、ポリペプチドはヒトTIGITに結合する。一部の態様において、ポリペプチドはマウスTIGITに結合する。一部の態様において、ポリペプチドはマウスTIGITとヒトTIGITに結合する。一部の態様において、ポリペプチドはヒトTIGITに結合し、マウスTIGITに結合しない。一部の態様において、ポリペプチドはヒトTIGITに結合し、ラットTIGITに結合しない。一部の態様において、ポリペプチドはヒトTIGITに結合し、ウサギTIGITに結合しない。一部の態様において、ポリペプチドはヒトTIGITに結合し、マーモセットTIGITに結合しない。一部の態様において、ポリペプチドはヒトTIGITに結合し、イヌTIGITに結合しない。一部の態様において、ポリペプチドはヒトTIGITに結合し、ブタTIGITに結合しない。一部の態様において、ポリペプチドはヒトTIGITに結合し、カニクイザルTIGITに結合しない。一部の態様において、ポリペプチドはヒトTIGITに結合し、アカゲザルTIGITに結合しない。
【0191】
ある特定の態様において、ポリペプチドは、抗体313R11、313R12、313R14、または313R19のCDRのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、および/または6つ(本明細書の表1を参照されたい)を含む。抗体313R20は、抗体313R19と同じCDRならびに重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含むが、313R20はIgG4形式を含む。一部の態様において、ポリペプチドは、1つのCDRにつき4個までの(すなわち、0個、1個、2個、3個、または4個の)アミノ酸置換を有するCDRを含む。ある特定の態様において、重鎖CDRは重鎖可変領域の中に含まれる。ある特定の態様において、軽鎖CDRは軽鎖可変領域の中に含まれる。
【0192】
一部の態様において、本発明は、TIGITに特異的に結合するポリペプチドであって、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:19、もしくはSEQ ID NO:32と少なくとも約80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/またはSEQ ID NO:18もしくはSEQ ID NO:20と少なくとも約80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、ポリペプチドを提供する。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:19、またはSEQ ID NO:32と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:18またはSEQ ID NO:20と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:19、もしくはSEQ ID NO:32と少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/またはSEQ ID NO:18もしくはSEQ ID NO:20と少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:17を含むアミノ酸配列および/またはSEQ ID NO:18を含むアミノ酸配列を含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:19を含むアミノ酸配列および/またはSEQ ID NO:20を含むアミノ酸配列を含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:32を含むアミノ酸配列および/またはSEQ ID NO:20を含むアミノ酸配列を含む。
【0193】
一部の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20、および/またはSEQ ID NO:32を含むアミノ酸配列を含む。本明細書において定義されるように、ポリペプチドは単鎖として生じてもよく、2本またはそれ以上の会合した鎖として生じてもよい。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:17を含むアミノ酸配列と、SEQ ID NO:18を含むアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:19を含むアミノ酸配列と、SEQ ID NO:20を含むアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:32を含むアミノ酸配列と、SEQ ID NO:20を含むアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:17から本質的になるアミノ酸配列と、SEQ ID NO:18から本質的になるアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:19から本質的になるアミノ酸配列と、SEQ ID NO:20から本質的になるアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:32から本質的になるアミノ酸配列と、SEQ ID NO:20から本質的になるアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:17からなるアミノ酸配列と、SEQ ID NO:18からなるアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:19からなるアミノ酸配列と、SEQ ID NO:20からなるアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:32からなるアミノ酸配列と、SEQ ID NO:20からなるアミノ酸配列とを含む。
【0194】
一部の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:55、および/またはSEQ ID NO:56を含むアミノ酸配列を含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:21を含むアミノ酸配列と、SEQ ID NO:23を含むアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:22を含むアミノ酸配列と、SEQ ID NO:23を含むアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:24を含むアミノ酸配列と、SEQ ID NO:25を含むアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:33を含むアミノ酸配列と、SEQ ID NO:25を含むアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:55を含むアミノ酸配列と、SEQ ID NO:25を含むアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:26を含むアミノ酸配列と、SEQ ID NO:28を含むアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:27を含むアミノ酸配列と、SEQ ID NO:28を含むアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:29を含むアミノ酸配列と、SEQ ID NO:30を含むアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:34を含むアミノ酸配列と、SEQ ID NO:30を含むアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:56を含むアミノ酸配列と、SEQ ID NO:30を含むアミノ酸配列とを含む。
【0195】
一部の態様において、TIGIT結合物質は、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:34、およびSEQ ID NO:56からなる群より選択される配列を含むポリペプチドを含む。
【0196】
ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:21からなるアミノ酸配列と、SEQ ID NO:23からなるアミノ酸配列を含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:22からなるアミノ酸配列と、SEQ ID NO:23からなるアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:24からなるアミノ酸配列と、SEQ ID NO:25からなるアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:33からなるアミノ酸配列と、SEQ ID NO:25からなるアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:55からなるアミノ酸配列と、SEQ ID NO:25からなるアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:26からなるアミノ酸配列と、SEQ ID NO:28からなるアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:27からなるアミノ酸配列と、SEQ ID NO:28からなるアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:29からなるアミノ酸配列と、SEQ ID NO:30からなるアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:34からなるアミノ酸配列と、SEQ ID NO:30からなるアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:56からなるアミノ酸配列と、SEQ ID NO:30からなるアミノ酸配列とを含む。
【0197】
ある特定の態様において、ポリペプチドは、抗体313M26または313M32のCDRのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、および/または6つ(本明細書の表2を参照されたい)を含む。一部の態様において、ポリペプチドは、1つのCDRにつき4個までの(すなわち、0個、1個、2個、3個、または4個の)アミノ酸置換を有するCDRを含む。ある特定の態様において、重鎖CDRは重鎖可変領域の中に含まれる。ある特定の態様において、軽鎖CDRは軽鎖可変領域の中に含まれる。
【0198】
一部の態様において、本発明は、TIGITに特異的に結合するポリペプチドであって、SEQ ID NO:63もしくはSEQ ID NO:67と少なくとも約80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/またはSEQ ID NO:64もしくはSEQ ID NO:68と少なくとも約80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、ポリペプチドを提供する。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:63またはSEQ ID NO:67と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:64またはSEQ ID NO:68と少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:63もしくはSEQ ID NO:167と少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列、および/またはSEQ ID NO:64もしくはSEQ ID NO:68と少なくとも約95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:63を含むアミノ酸配列および/またはSEQ ID NO:64を含むアミノ酸配列を含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:67を含むアミノ酸配列および/またはSEQ ID NO:68を含むアミノ酸配列を含む。
【0199】
一部の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:63、SEQ ID NO:64、SEQ ID NO:67、SEQ ID NO:68、SEQ ID NO:69、SEQ ID NO:70、SEQ ID NO:71、SEQ ID NO:72、SEQ ID NO:82、および/またはSEQ ID NO:83からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。本明細書において定義されるように、ポリペプチドは単鎖として生じてもよく、2本またはそれ以上の会合した鎖として生じてもよい。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:63を含むアミノ酸配列と、SEQ ID NO:64を含むアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:67を含むアミノ酸配列と、SEQ ID NO:68を含むアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:69を含むアミノ酸配列と、SEQ ID NO:71を含むアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:70を含むアミノ酸配列と、SEQ ID NO:72を含むアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:82を含むアミノ酸配列と、SEQ ID NO:72を含むアミノ酸配列とを含む。
【0200】
ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:63からなるアミノ酸配列と、SEQ ID NO:64からなるアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:67からなるアミノ酸配列と、SEQ ID NO:68からなるアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:69からなるアミノ酸配列と、SEQ ID NO:71からなるアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:70からなるアミノ酸配列と、SEQ ID NO:72からなるアミノ酸配列とを含む。ある特定の態様において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:82からなるアミノ酸配列と、SEQ ID NO:72からなるアミノ酸配列とを含む。
【0201】
抗体を含む多くのタンパク質は、様々な場所へのタンパク質の輸送を方向づけるシグナル配列を含有する。一般的に、シグナル配列(シグナルペプチドまたはリーダー配列とも呼ばれる)は新生ポリペプチドのN末端に位置する。シグナル配列はポリペプチドを小胞体に標的化し、タンパク質は目的地に、例えば、細胞小器官の内部空間に、内膜に、細胞の外膜に仕分けされるか、または分泌を介して細胞外部に仕分けされる。タンパク質が小胞体に輸送された後に、ほとんどのシグナル配列はシグナルペプチダーゼによってタンパク質から切断される。ポリペプチドからのシグナル配列の切断は、通常、アミノ酸配列中の特異的部位で起こり、シグナル配列内のアミノ酸残基に依存する。通常、一カ所の特異的切断部位が存在するが、複数の切断部位がシグナルペプチダーゼによって認識されてかつ/または使用されて、ポリペプチドの均質でないN末端が生じる場合がある。例えば、シグナル配列内にある異なる切断部位を用いると、異なるN末端アミノ酸を有する発現ポリペプチドを生じることができる。従って、一部の態様において、本明細書に記載のポリペプチドは、異なるN末端を有するポリペプチドの混合物を含んでもよい。一部の態様において、N末端の長さは1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸分だけ異なる。一部の態様において、前記ポリペプチドは実質的に均質である、すなわち、前記ポリペプチドは同じN末端を有する。一部の態様において、前記ポリペプチドのシグナル配列は、「天然」または「親」シグナル配列と比較して1つまたは複数の(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個などの)アミノ酸置換および/または欠失を含む。一部の態様において、前記ポリペプチドのシグナル配列は、一カ所の切断部位が優勢になり、それによって、あるN末端を有する実質的に均質なポリペプチドが生じるのを可能にするアミノ酸置換および/または欠失を含む。一部の態様において、ポリペプチドのシグナル配列は、ポリペプチドの発現レベル、例えば、発現の増大または発現の減少に影響を与える。
【0202】
ある特定の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について、本明細書に記載のTIGIT結合物質と競合する。一部の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について、(a)
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を含む重鎖CDR1、
[この文献は図面を表示できません]
を含む重鎖CDR2、および
[この文献は図面を表示できません]
を含む重鎖CDR3、ならびに(b)
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を含む軽鎖CDR1、
[この文献は図面を表示できません]
を含む軽鎖CDR2、および
[この文献は図面を表示できません]
を含む軽鎖CDR3を含む、TIGIT結合物質と競合する。
【0203】
ある特定の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について、(a) SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:19、または SEQ ID NO:32を含む重鎖可変領域と、(b) SEQ ID NO:18または SEQ ID NO:20を含む軽鎖可変領域とを含むTIGIT結合物質と競合する。ある特定の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について、SEQ ID NO:17を含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:18を含む軽鎖可変領と域を含むTIGIT結合物質と競合する。ある特定の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について、SEQ ID NO:19を含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:20を含む軽鎖可変領域とを含むTIGIT結合物質と競合する。ある特定の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について、SEQ ID NO:32を含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:20を含む軽鎖可変領域とを含むTIGIT結合物質と競合する。
【0204】
ある特定の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:34、または SEQ ID NO:56を含む重鎖と、SEQ ID NO:28または SEQ ID NO:30を含む軽鎖を含むTIGIT結合物質と競合する。ある特定の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について、SEQ ID NO:26を含む重鎖と、SEQ ID NO:28を含む軽鎖を含むTIGIT結合物質と競合する。ある特定の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について、SEQ ID NO:27を含む重鎖と、SEQ ID NO:28を含む軽鎖を含むTIGIT結合物質と競合する。ある特定の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について、SEQ ID NO:29を含む重鎖と、SEQ ID NO:30を含む軽鎖を含むTIGIT結合物質と競合する。ある特定の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について、SEQ ID NO:34を含む重鎖と、SEQ ID NO:30を含む軽鎖を含むTIGIT結合物質と競合する。一部の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について、SEQ ID NO:56を含む重鎖と、SEQ ID NO:30を含む軽鎖を含むTIGIT結合物質と競合する。
【0205】
ある特定の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について抗体313R11と競合する。ある特定の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について抗体313R12と競合する。ある特定の態様において、抗体は、ヒトTIGITとの特異的結合について抗体313R14と競合する。ある特定の態様において、抗体は、ヒトTIGITとの特異的結合について抗体313R19と競合する。ある特定の態様において、抗体は、ヒトTIGITとの特異的結合について抗体313R20と競合する。
【0206】
一部の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について、抗体313R11である参照抗体と競合する。一部の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について、抗体313R12である参照抗体と競合する。一部の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について、抗体313R14である参照抗体と競合する。一部の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について、抗体313R19である参照抗体と競合する。一部の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について、抗体313R20である参照抗体と競合する。
【0207】
ある特定の態様において、抗体は、TIGIT上の、本発明のTIGIT結合物質と同じエピトープまたは本質的に同じエピトープに結合する。ある特定の態様において、抗体は、TIGIT上の、抗体313R11と同じエピトープまたは本質的に同じエピトープに結合する。ある特定の態様において、抗体は、TIGIT上の、抗体313R12と同じエピトープまたは本質的に同じエピトープに結合する。ある特定の態様において、抗体は、TIGIT上の、抗体313R14と同じエピトープまたは本質的に同じエピトープに結合する。ある特定の態様において、抗体は、TIGIT上の、抗体313R19と同じエピトープまたは本質的に同じエピトープに結合する。ある特定の態様において、抗体は、TIGIT上の、抗体313R20と同じエピトープまたは本質的に同じエピトープに結合する。
【0208】
別の態様において、抗体は、本発明のTIGIT結合物質が結合するTIGIT上のエピトープと重複するTIGIT上のエピトープに結合する。一部の態様において、前記抗体は、抗体313R11が結合するTIGIT上のエピトープと重複するTIGIT上のエピトープに結合する。別の態様において、前記抗体は、抗体313R12が結合するTIGIT上のエピトープと重複するTIGIT上のエピトープに結合する。一部の態様において、前記抗体は、抗体313R14が結合するTIGIT上のエピトープと重複する、TIGIT上のエピトープに結合する。ある特定の態様において、前記抗体は、抗体313R19が結合するTIGIT上のエピトープと重複するTIGIT上のエピトープに結合する。ある特定の態様において、前記抗体は、抗体313R20が結合するTIGIT上のエピトープと重複するTIGIT上のエピトープに結合する。
【0209】
ある特定の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について、本明細書に記載のTIGIT結合物質と競合する。一部の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について、(a)TSDYAWN(SEQ ID NO:57)を含む重鎖CDR1、
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を含む重鎖CDR2、および
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を含む重鎖CDR3、ならびに(b)
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を含む軽鎖CDR1、SASYRYT(SEQ ID NO:61)を含む軽鎖CDR2、およびQQHYSTP(SEQ ID NO:62)を含む軽鎖CDR3を含む、TIGIT結合物質と競合する。
【0210】
ある特定の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について、(a)SEQ ID NO:63またはSEQ ID NO:67を含む重鎖可変領域と、(b)SEQ ID NO:64またはSEQ ID NO:68を含む軽鎖可変領域とを含むTIGIT結合物質と競合する。ある特定の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について、SEQ ID NO:63を含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:64を含む軽鎖可変領域とを含むTIGIT結合物質と競合する。ある特定の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について、SEQ ID NO:167を含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:68を含む軽鎖可変領域とを含むTIGIT結合物質と競合する。ある特定の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について、SEQ ID NO:70を含む重鎖と、SEQ ID NO:72を含む軽鎖を含むTIGIT結合物質と競合する。ある特定の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について、SEQ ID NO:82を含む重鎖と、SEQ ID NO:72を含む軽鎖を含むTIGIT結合物質と競合する。
【0211】
ある特定の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について抗体313M26と競合する。ある特定の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について抗体313M32と競合する。ある特定の態様において、抗体は、ヒトTIGITとの特異的結合について抗体313M32と競合する。一部の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について、抗体313M26である参照抗体と競合する。一部の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について、抗体313M32である参照抗体と競合する。一部の態様において、抗体は、TIGITとの特異的結合について、抗体313M33である参照抗体と競合する。一部の態様において、抗体は、ヒトTIGITとの特異的結合について、抗体313M32である参照抗体と競合する。一部の態様において、抗体は、ヒトTIGITとの特異的結合について、抗体313M33である参照抗体と競合する。
【0212】
ある特定の態様において、抗体は、TIGIT上の、本明細書に記載のTIGIT結合物質と同じエピトープまたは本質的に同じエピトープに結合する。ある特定の態様において、抗体は、TIGIT上の、抗体313M26と同じエピトープまたは本質的に同じエピトープに結合する。ある特定の態様において、抗体は、TIGIT上の、抗体313M32と同じエピトープまたは本質的に同じエピトープに結合する。ある特定の態様において、抗体は、TIGIT上の、抗体313M33と同じエピトープまたは本質的に同じエピトープに結合する。ある特定の態様において、抗体は、ヒトTIGITの、抗体313M32と同じエピトープまたは本質的に同じエピトープに結合する。ある特定の態様において、抗体は、ヒトTIGIT上の、抗体313M33と同じエピトープまたは本質的に同じエピトープに結合する。
【0213】
別の態様において、抗体は、本明細書に記載のTIGIT結合物質が結合するTIGIT上のエピトープと重複するTIGIT上のエピトープに結合する。一部の態様において、前記抗体は、抗体313M26が結合するTIGIT上のエピトープと重複するTIGIT上のエピトープに結合する。別の態様において、前記抗体は、抗体313M32が結合するTIGIT上のエピトープと重複するTIGIT上のエピトープに結合する。別の態様において、前記抗体は、抗体313M33が結合するTIGIT上のエピトープと重複するTIGIT上のエピトープに結合する。別の態様において、前記抗体は、抗体313M32が結合するヒトTIGIT上のエピトープと重複するTIGIT上のエピトープに結合する。別の態様において、前記抗体は、抗体313M33が結合するヒトTIGIT上のエピトープと重複するTIGIT上のエピトープに結合する。
【0214】
一部の態様において、抗体は、SEQ ID NO:79中のアミノ酸を含むエピトープとの結合について、本明細書に記載のTIGIT結合物質と競合する。一部の態様において、抗体は、SEQ ID NO:80中のアミノ酸を含むエピトープとの結合について、本明細書に記載のTIGIT結合物質と競合する。一部の態様において、抗体は、SEQ ID NO:79中およびSEQ ID NO:80中のアミノ酸を含むエピトープとの結合について、本明細書に記載のTIGIT結合物質と競合する。一部の態様において、抗体は、SEQ ID NO:4のアミノ酸Q62およびI109を含むエピトープとの結合について、本明細書に記載のTIGIT結合物質と競合する。一部の態様において、抗体は、SEQ ID NO:4のアミノ酸Q62およびT119を含むエピトープとの結合について、本明細書に記載のTIGIT結合物質と競合する。一部の態様において、抗体は、SEQ ID NO:4のアミノ酸Q64およびI109を含むエピトープとの結合について、本明細書に記載のTIGIT結合物質と競合する。一部の態様において、抗体は、SEQ ID NO:4のアミノ酸Q64およびT119を含むエピトープとの結合について、本明細書に記載のTIGIT結合物質と競合する。一部の態様において、抗体は、SEQ ID NO:4のアミノ酸Q62、Q64、およびI109を含むエピトープとの結合について、本明細書に記載のTIGIT結合物質と競合する。一部の態様において、抗体は、SEQ ID NO:4のアミノ酸Q62、Q64、およびT119を含むエピトープとの結合について、本明細書に記載のTIGIT結合物質と競合する。一部の態様において、抗体は、SEQ ID NO:4のアミノ酸Q62、I109、およびT119を含むエピトープとの結合について、本明細書に記載のTIGIT結合物質と競合する。一部の態様において、抗体は、SEQ ID NO:4のアミノ酸Q64、I109、およびT119を含むエピトープとの結合について、本明細書に記載のTIGIT結合物質と競合する。一部の態様において、抗体は、SEQ ID NO:4のアミノ酸Q62、Q64、I109、およびT119を含むエピトープとの結合について、本明細書に記載のTIGIT結合物質と競合する。一部の態様において、抗体は、SEQ ID NO:4のN58、E60、Q62、Q64、L65、F107、I109、H111、T117、T119、G120、およびR121からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸を含むエピトープとの結合について、本明細書に記載のTIGIT結合物質と競合する。
【0215】
ある特定の態様において、本明細書に記載のTIGIT結合物質(例えば、抗体)はTIGITに結合し、TIGIT活性を調整する。一部の態様において、TIGIT結合物質はTIGITアンタゴニストであり、TIGIT活性を減少させる。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、TIGIT活性を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、または約100%阻害する。ある特定の態様において、TIGIT活性を阻害するTIGIT結合物質は、抗体313R11、抗体313R12、抗体313R14、抗体313R19、または抗体313R20である。ある特定の態様において、ヒトTIGIT活性を阻害するTIGIT結合物質は、抗体313R11、抗体313R12、抗体313R14、抗体313R19、または抗体313R20のヒト化バージョンである。ある特定の態様において、TIGIT活性を阻害するTIGIT結合物質は抗体313M26または抗体313M32である。ある特定の態様において、ヒトTIGIT活性を阻害するTIGIT結合物質は抗体313M26(例えば、抗体313M32)のヒト化バージョンである。ある特定の態様において、TIGIT活性を阻害するTIGIT結合物質は抗体313M32である。
【0216】
一部の態様において、本明細書に記載のTIGIT結合物質はTIGITに結合し、TIGITシグナル伝達を阻害するか、または低減する。ある特定の態様において、TIGIT結合物質(例えば、抗体)はTIGITシグナル伝達を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、または約100%阻害する。一部の態様において、TIGIT結合物質はマウスTIGITシグナル伝達を阻害する。一部の態様において、TIGIT結合物質はヒトTIGITシグナル伝達を阻害する。一部の態様において、TIGIT結合物質はマウスシグナル伝達とヒトTIGITシグナル伝達を阻害する。ある特定の態様において、TIGITシグナル伝達を阻害するTIGIT結合物質は、抗体313R11、抗体313R12、抗体313R14、抗体313R19、または抗体313R20である。ある特定の態様において、TIGITシグナル伝達を阻害するTIGIT結合物質は抗体313M26または抗体313M32である。ある特定の態様において、TIGITシグナル伝達を阻害するTIGIT結合物質は抗体313M32である。
【0217】
TIGITはカウンターレセプターであるPVRと相互作用した後に、その細胞質テールがリン酸化される。TIGITのリン酸化は、他の公知のシグナル伝達経路に影響を及ぼす下流事象を含むカスケードの始まりである。従って、TIGITリン酸化を評価すると、TIGIT活性およびTIGITシグナル伝達についての情報を得ることができる。
【0218】
リン酸化アッセイは当業者に公知であり、タンパク質活性化および/または経路活性化をモニタリングするために一般的に用いられる。このアッセイは、標的タンパク質および/または標的経路の活性化に対する様々な処置の効果をモニタリングするために用いられてもよい。例えば、インビトロリン酸化アッセイを用いて、PVRによって誘導されたTIGIT活性化に対するTIGITアンタゴニストの効果を評価することができる。
【0219】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質(例えば、抗体)はTIGITと受容体との結合を阻害する。ある特定の態様において、TIGIT結合物質はTIGITとPVRとの結合を阻害する。一部の態様において、TIGIT結合物質は、TIGITとPVR-L2、PVR-L3、および/またはPVR-L4との結合を阻害する。ある特定の態様において、TIGIT結合物質とPVRとの結合の阻害は、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%である。ある特定の態様において、TIGIT結合物質とPVR-L2、PVR-L3、および/またはPVR-L4との結合の阻害は、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%である。ある特定の態様において、TIGITとPVRとの結合を阻害するTIGIT結合物質は、抗体313R11、抗体313R12、抗体313R14、抗体313R19、または抗体313R20である。ある特定の態様において、TIGITとPVR-L2、PVR-L3、および/またはPVR-L4との結合を阻害するTIGIT結合物質は、抗体313R11、抗体313R12、抗体313R14、抗体313R19、または抗体313R20である。ある特定の態様において、TIGITとPVRとの結合を阻害するTIGIT結合物質は抗体313M26または抗体313M32である。ある特定の態様において、TIGITとPVRとの結合を阻害するTIGIT結合物質は抗体313M32である。ある特定の態様において、TIGITとPVR-L2、PVR-L3、および/またはPVR-L4との結合を阻害するTIGIT結合物質は抗体313M26または抗体313M32である。ある特定の態様において、TIGITとPVR-L2、PVR-L3、および/またはPVR-L4との結合を阻害するTIGIT結合物質は抗体313M32である。
【0220】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質(例えば、抗体)はTIGITと受容体との結合をブロックする。ある特定の態様において、TIGIT結合物質はTIGITとPVRとの結合をブロックする。ある特定の態様において、TIGIT結合物質とPVRとの結合のブロッキングは、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%である。一部の態様において、TIGIT結合物質は、TIGITと、PVR-L2、PVR-L3、および/またはPVR-L4との結合をブロックする。ある特定の態様において、TIGIT結合物質とPVR-L2、PVR-L3、および/またはPVR-L4との結合のブロッキングは、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%である。ある特定の態様において、TIGITとPVRとの結合をブロックするTIGIT結合物質は、抗体313R11、抗体313R12、抗体313R14、抗体313R19、または抗体313R20である。ある特定の態様において、TIGITとPVR-L2、PVR-L3、および/またはPVR-L4との結合をブロックするTIGIT結合物質は、抗体313R11、抗体313R12、抗体313R14、抗体313R19、または抗体313R20である。ある特定の態様において、TIGITとPVRとの結合をブロックするTIGIT結合物質は抗体313M26または抗体313M32である。ある特定の態様において、TIGITとPVRとの結合をブロックするTIGIT結合物質は抗体313M32である。ある特定の態様において、TIGITとPVR-L2、PVR-L3、および/またはPVR-L4との結合をブロックするTIGIT結合物質は抗体313M26または抗体313M32である。ある特定の態様において、TIGITとPVR-L2、PVR-L3、および/またはPVR-L4との結合をブロックするTIGIT結合物質は抗体313M32である。
【0221】
結合アッセイは当業者に公知であり、本明細書において説明される。結合アッセイは、標的タンパク質と、このタンパク質の結合パートナー(例えば、受容体またはリガンド)との相互作用に対する試験作用物質の効果をモニタリングするために用いられてもよい。例えば、インビトロ結合アッセイを用いて、TIGITアンタゴニストがTIGITとPVRとの相互作用をブロックするかどうか評価することができる。
【0222】
ある特定の態様において、本明細書に記載のTIGIT結合物質は、以下の作用:腫瘍細胞の増殖を阻害すること、腫瘍成長を阻害すること、腫瘍の腫瘍形成能を低減すること、腫瘍内のがん幹細胞の頻度を低減することによって腫瘍の腫瘍形成能を低減すること、腫瘍細胞の細胞死を誘発すること、免疫応答を増強もしくはブーストすること、抗腫瘍応答を増強もしくはブーストすること、免疫細胞の細胞溶解活性を増大させること、腫瘍細胞の死滅を増大させること、免疫細胞による腫瘍細胞の死滅を増大させること、腫瘍内の細胞が分化するように誘導すること、腫瘍形成細胞を非腫瘍形成状態に分化させること、腫瘍細胞において分化マーカーの発現を誘導すること、腫瘍細胞の転移を阻止すること、腫瘍細胞の生存を減少させること、細胞接触依存性増殖の阻害を増大させること、腫瘍細胞アポトーシスを増大させること、上皮間葉転換(EMT)を低減すること、または腫瘍細胞の生存を減少させることのうちの1つまたは複数を有する。一部の態様において、前記物質は、以下の作用:ウイルス感染を阻害すること、慢性ウイルス感染を阻害すること、ウイルス量を低減すること、ウイルス感染細胞の細胞死を誘発すること、またはウイルス感染細胞の数もしくはパーセントを低減することのうちの1つまたは複数を有する。
【0223】
ある特定の態様において、本明細書に記載のTIGIT結合物質は腫瘍成長を阻害する。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、インビボで(例えば、マウスモデルにおいて、および/またはがんを有するヒトにおいて)腫瘍成長を阻害する。ある特定の態様において、未処置腫瘍と比較して、腫瘍成長は少なくとも約2倍、約3倍、約5倍、約10倍、約50倍、約100倍、または約1000倍、阻害される。
【0224】
ある特定の態様において、本明細書に記載のTIGIT結合物質は腫瘍の腫瘍形成能を低減する。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、マウスモデルなどの動物モデルにおいて腫瘍の腫瘍形成能を低減する。一部の態様において、マウスモデルはマウス異種移植片モデルである。一部の態様において、TIGIT結合物質はマウスTIGITに結合せず、マウスモデルにおいて有効でない。一部の態様において、マウスTIGITに結合する代理TIGIT結合物質がマウスモデルにおいて用いられる。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、マウスモデルなどの動物モデルにおいて、がん幹細胞を含む腫瘍の腫瘍形成能を低減する。ある特定の態様において、腫瘍内のがん幹細胞の数または頻度は、少なくとも約1/2、約1/3、約1/5、約1/10、約1/50、約1/100、または約1/1000分だけ低下する。ある特定の態様において、がん幹細胞の数または頻度の低下は、動物モデルを用いた限界希釈アッセイによって求められる。腫瘍内のがん幹細胞の数または頻度の低下を求める限界希釈アッセイの使用に関するさらなる例およびガイダンスは、例えば、国際公開番号WO2008/042236、米国特許出願公開第2008/0064049号、および米国特許出願公開第2008/0178305号において見られる。
【0225】
ある特定の態様において、本明細書に記載の作用物質(例えば、ポリペプチドおよび/または抗体)はTIGITに結合し、免疫応答を調整する。一部の態様において、本明細書に記載のTIGIT結合物質は、免疫応答を活性化しかつ/または増大させる。一部の態様において、TIGIT結合物質は細胞性免疫を増大させるか、促進するか、または増強する。一部の態様において、TIGIT結合物質は自然細胞性免疫を増大させるか、促進するか、または増強する。一部の態様において、TIGIT結合物質は適応細胞性免疫を増大させるか、促進するか、または増強する。一部の態様において、TIGIT結合物質はT細胞活性を増大させるか、促進するか、または増強する。一部の態様において、TIGIT結合物質は細胞溶解性T細胞(CTL)活性を増大させるか、促進するか、または増強する。一部の態様において、TIGIT結合物質はNK細胞活性を増大させるか、促進するか、または増強する。一部の態様において、TIGIT結合物質はリンホカイン活性化キラー細胞(LAK)活性を増大させるか、促進するか、または増強する。一部の態様において、TIGIT結合物質は腫瘍浸潤リンパ球(TIF)活性を増大させるか、促進するか、または増強する。一部の態様において、TIGIT結合物質はTreg細胞活性を阻害するか、または減少させる。一部の態様において、TIGIT結合物質はMDSC活性を阻害するか、または減少させる。一部の態様において、TIGIT結合物質は腫瘍細胞死滅を増大させるか、促進するか、または増強する。一部の態様において、TIGIT結合物質は腫瘍成長の阻害を増大させるか、促進するか、または増強する。
【0226】
ある特定の態様において、本明細書に記載の作用物質はヒトTIGITのアンタゴニストである。一部の態様において、前記作用物質はTIGITのアンタゴニストであり、免疫応答を活性化しかつ/または増大させる。一部の態様において、前記作用物質はTIGITのアンタゴニストであり、NK細胞の活性を活性化しかつ/または増大させる。ある特定の態様において、前記作用物質は、前記活性を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、または約100%増大させる。一部の態様において、前記作用物質は、TIGITのアンタゴニストであり、T細胞活性(例えば、T細胞細胞溶解活性)を活性化しかつ/または増大させる。ある特定の態様において、前記作用物質は前記活性を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、または約100%増大させる。一部の態様において、前記作用物質はTIGITのアンタゴニストであり、Th1型免疫応答を誘導および/または増強する。一般的に、Th1型免疫応答は、インターフェロン-γ(IFN-γ)、IL-2、および腫瘍壊死因子-β(TNF-β)の産生を含む。比較して、Th2型免疫応答は、一般的に、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10、およびIL-13の産生を含む。一部の態様において、前記作用物質はTIGITのアンタゴニストであり、サイトカインもしくはリンホカインの産生を誘導しかつ/または増大させる。一部の態様において、サイトカインまたはリンホカインの産生の誘導および/または増大は間接効果でもよい。
【0227】
ある特定の態様において、本明細書に記載のTIGIT結合物質はNK細胞の活性化を増大させる。ある特定の態様において、TIGIT結合物質はT細胞の活性化を増大させる。ある特定の態様において、TIGIT結合物質によってNK細胞および/またはT細胞が活性化されると、NK細胞および/またはT細胞の活性化のレベルが少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%増大する。ある特定の態様において、NK細胞の活性化を増大させるTIGIT結合物質は、抗体313R11、抗体313R12、抗体313R14、抗体313R19、または抗体313R20である。ある特定の態様において、NK細胞の活性化を増大させるTIGIT結合物質は抗体313M26または抗体313M32である。ある特定の態様において、NK細胞の活性化を増大させるTIGIT結合物質は抗体313M32である。
【0228】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質(例えば、抗体)は調節性T細胞(Treg)活性のアンタゴニストである。ある特定の態様において、本明細書に記載のTIGIT結合物質はTreg活性を阻害するか、または減少させる。ある特定の態様において、TIGIT結合物質によってTreg活性が阻害されると、Treg細胞の抑制活性が少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%阻害される。ある特定の態様において、Treg活性を阻害するTIGIT結合物質は、抗体313R11、抗体313R12、抗体313R14、抗体313R19、または抗体313R20である。ある特定の態様において、Treg活性を阻害するTIGIT結合物質は抗体313M26または抗体313M32である。ある特定の態様において、Treg活性を阻害するTIGIT結合物質は抗体313M32である。
【0229】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質(例えば、抗体)は骨髄由来抑制細胞(MDSC)のアンタゴニストである。ある特定の態様において、TIGIT結合物質はMDSC活性を阻害する。ある特定の態様において、TIGIT結合物質はMDSC活性を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、または約100%阻害する。ある特定の態様において、MDSC活性を阻害するTIGIT結合物質は、抗体313R11、抗体313R12、抗体313R14、抗体313R19、または抗体313R20である。ある特定の態様において、MDSC活性を阻害するTIGIT結合物質は抗体313M26または抗体313M32である。ある特定の態様において、MDSC活性を阻害するTIGIT結合物質は抗体313M32である。
【0230】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質(例えば、抗体)はナチュラルキラー(NK)細胞活性を増大させる。ある特定の態様において、TIGIT結合物質はNK細胞活性を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、または約100%増大させる。ある特定の態様において、NK細胞活性を増大させるTIGIT結合物質は、抗体313R11、抗体313R12、抗体313R14、抗体313R19、または抗体313R20である。ある特定の態様において、NK細胞活性を増大させるTIGIT結合物質は抗体313M26または抗体313M32である。ある特定の態様において、NK細胞活性を増大させるTIGIT結合物質は抗体313M32である。
【0231】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質(例えば、抗体)は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)活性を増大させる。ある特定の態様において、TIGIT結合物質はTIL活性を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、または約100%増大させる。ある特定の態様において、TIL細胞活性を増大させるTIGIT結合物質は、抗体313R11、抗体313R12、抗体313R14、抗体313R19、または抗体313R20である。ある特定の態様において、TIL細胞活性を増大させるTIGIT結合物質は抗体313M26または抗体313M32である。ある特定の態様において、TIL細胞活性を増大させるTIGIT結合物質は抗体313M32である。
【0232】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質(例えば、抗体)はリンホカイン活性化キラー細胞(LAK)活性を増大させるか、または増強する。ある特定の態様において、TIGIT結合物質はLAK活性を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、または約100%増大させる。ある特定の態様において、LAK細胞活性を増大させるTIGIT結合物質は、抗体313R11、抗体313R12、抗体313R14、抗体313R19、または抗体313R20である。ある特定の態様において、LAK細胞活性を増大させるTIGIT結合物質は抗体313M26または抗体313M32である。ある特定の態様において、LAK細胞活性を増大させるTIGIT結合物質は抗体313M32である。
【0233】
TIGIT結合物質(または候補結合物質)が免疫応答を調整するかどうか判定するためのインビボアッセイおよびインビトロアッセイは当技術分野において公知であるか、または開発中である。一部の態様では、T細胞活性化を検出する機能アッセイを使用することができる。一部の態様では、T細胞増殖を検出する機能アッセイを使用することができる。一部の態様では、NK活性を検出する機能アッセイを使用することができる。一部の態様では、CTL活性を検出する機能アッセイを使用することができる。一部の態様では、Treg活性を検出する機能アッセイを使用することができる。一部の態様では、MDSC活性を検出する機能アッセイを使用することができる。一部の態様では、サイトカインもしくはリンホカインの産生、またはサイトカインもしくはリンホカインを産生する細胞を検出する機能アッセイを使用することができる。一部の態様では、抗原特異的T細胞の頻度を測定するためにエリスポットアッセイが用いられる。一部の態様では、エリスポットアッセイはサイトカイン放出/産生を測定するために用いられ、かつ/またはサイトカインを産生する細胞の数を測定するために用いられる。一部の態様では、サイトカインアッセイはTh1型応答を同定するために用いられる。一部の態様では、サイトカインアッセイはTh2型応答を同定するために用いられる。一部の態様では、サイトカインアッセイはTh17型応答を同定するために用いられる。一部の態様では、FACS分析は、T細胞、B細胞、NK細胞、マクロファージ、および/または骨髄系細胞を含むが、これらに限定されない免疫細胞上にある活性化マーカーを測定するために用いられる。
【0234】
ある特定の態様において、本明細書に記載のTIGIT結合物質は、少なくとも約2時間、少なくとも約5時間、少なくとも約10時間、少なくとも約24時間、少なくとも約3日、少なくとも約1週間、または少なくとも約2週間のマウス、ラット、カニクイザル、またはヒトにおける循環半減期を有する。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、少なくとも約2時間、少なくとも約5時間、少なくとも約10時間、少なくとも約24時間、少なくとも約3日、少なくとも約1週間、または少なくとも約2週間のマウス、カニクイザル、またはヒトにおける循環半減期を有するIgG(例えば、IgG1、IgG2、またはIgG4)抗体である。ポリペプチド および抗体などの作用物質の半減期を延ばす(または短くする)方法は当技術分野において公知である。例えば、IgG抗体の循環半減期を延ばす公知の方法には、pH6.0で抗体と胎児性Fc受容体(FcRn)とのpH依存的結合を増大させる、Fc領域への変異の導入が含まれる。Fc領域が無い抗体断片の循環半減期を延ばす公知の方法にはペグ化などの技法が含まれる。
【0235】
本明細書に記載の一部の態様において、TIGIT結合物質はポリペプチドである。一部の態様において、前記ポリペプチドは、TIGITに結合する抗体またはその断片を含む、組換えポリペプチド、天然ポリペプチド、または合成ポリペプチドである。本発明のアミノ酸配列の中には、タンパク質の構造または機能に重大な影響を及ぼすことなく変えることができるものもあることが当技術分野において認められる。従って、本発明は、TIGITに結合するかなりの活性を示すか、またはTIGITに結合する抗体の領域またはその断片を含む、前記ポリペプチドのバリエーションをさらに含む。一部の態様において、TIGIT結合ポリペプチドのアミノ酸配列のバリエーションには、欠失、挿入、逆位、反復、および/または他のタイプの置換が含まれる。
【0236】
前記ポリペプチド、その類似体および変種は、通常、ポリペプチドの一部にはない、さらなる化学部分を含有するように、さらに改変することができる。誘導体化部分はポリペプチドの溶解度、生物学的半減期、および/または吸収を改善するか、そうでなければ調整することができる。これらの部分はまたポリペプチドおよび変種の望ましくない副作用を低減するか、または無くすこともできる。化学部分の概要は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 22
st Edition, 2012, Pharmaceutical Press, Londonにおいて見ることができる。
【0237】
ある特定の態様において、本明細書に記載のポリペプチドは単離されている。ある特定の態様において、本明細書に記載のポリペプチドは実質的に純粋である。
【0238】
本明細書に記載のポリペプチドは、当技術分野において公知の任意の適切な方法によって産生することができる。このような方法は、直接的なタンパク質合成法から、ポリペプチド配列をコードするDNA配列の構築、および適切な宿主におけるこれらの配列の発現に及ぶ。一部の態様において、DNA配列は、組換え技術を用いて、関心対象の野生型タンパク質をコードするDNA配列を単離または合成することによって構築される。任意で、この配列は、その機能類似体を得るために部位特異的変異誘発によって変異誘発することができる。
【0239】
一部の態様では、関心対象のポリペプチドをコードするDNA配列は、オリゴヌクレオチド合成機を用いた化学合成によって構築され得る。オリゴヌクレオチドは、望ましいポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて、および関心対象の組換えポリペプチドが産生される宿主細胞において好ましいコドンを選択することに基づいて設計することができる。標準的な方法を用いて、関心対象の単離されたポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を合成することができる。例えば、完全なアミノ酸配列を用いて、逆翻訳(back-translate)した遺伝子を構築することができる。さらに、特定の単離されたポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含有するDNAオリゴマーを合成することができる。例えば、望ましいポリペプチドの一部をコードする、いくつかの小さなオリゴヌクレオチドを合成し、次いで、連結することができる。個々のオリゴヌクレオチドは、典型的には、相補的に組み立てるための5'オーバーハングまたは3'オーバーハングを含有する。
【0240】
(合成、部位特異的変異誘発、または別の方法によって)組み立てたら、関心対象の特定のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を発現ベクターに挿入し、望ましい宿主におけるタンパク質の発現に適した発現制御配列に機能的に連結することができる。適切に組み立てられたことは、ヌクレオチド配列決定、制限酵素マッピング、および/または適切な宿主における生物学的に活性なポリペプチドの発現によって確かめることができる。当技術分野において周知のように、宿主において、トランスフェクトされた遺伝子の高い発現レベルを得るためには、遺伝子は、選択された発現宿主において機能する転写発現制御配列および翻訳発現制御配列に機能的に連結しなければならない。
【0241】
ある特定の態様では、ヒトTIGITに対する抗体またはその断片をコードするDNAを増幅および発現するために組換え発現ベクターが用いられる。例えば、組換え発現ベクターは、抗TIGIT抗体などのTIGIT結合物質またはその断片のポリペプチド鎖をコードする合成DNA断片またはcDNAに由来するDNA断片が、哺乳動物遺伝子、微生物遺伝子、ウイルス遺伝子、または昆虫遺伝子に由来する適切な転写調節エレメントおよび/または翻訳調節エレメントに機能的に連結されている、複製可能なDNA構築物でもよい。転写単位は、一般的に、(1)遺伝子発現を調節する役割を有する遺伝因子またはエレメント、例えば、転写プロモーターまたはエンハンサー、(2)mRNAに転写され、タンパク質に翻訳される構造配列またはコード配列、ならびに(3)適切な転写および翻訳の開始配列および終結配列の集合を含む。調節エレメントは、転写を制御するオペレーター配列を含むことがある。複製起点によって通常、付与される、宿主において複製する能力と、形質転換体の認識を容易にする選択遺伝子をさらに組み込むことができる。DNA領域は、これらが機能的に互いに関連している場合に「機能的に連結されている」。例えば、シグナルペプチド(分泌リーダー)のDNAは、ポリペプチド分泌に関与する前駆体としてポリペプチドが発現される場合、ポリペプチドDNAに機能的に連結されている。プロモーターは、コード配列の転写を制御する場合、コード配列に機能的に連結されている。または、リボソーム結合部位は、コード配列が翻訳されるように配置されている場合、コード配列に機能的に連結されている。一部の態様では、酵母発現系における使用を目的とした構造エレメントには、宿主細胞により翻訳されるタンパク質の細胞外分泌を可能にするリーダー配列が含まれる。他の態様では、組換えタンパク質がリーダー配列も輸送配列もなく発現される状況において、組換えタンパク質はN末端メチオニン残基を含むことができる。この残基は、任意で、最終産物を得るために発現組換えタンパク質から後で切断されてもよい。
【0242】
発現制御配列および発現ベクターの選択は宿主の選択によって決まる。多種多様な発現宿主/ベクターの組み合わせを使用することができる。真核生物宿主に有用な発現ベクターには、例えば、SV40、ウシパピローマウイルス、アデノウイルス、およびサイトメガロウイルスに由来する発現制御配列を含むベクターが含まれる。細菌宿主に有用な発現ベクターには、公知の細菌プラスミド、例えば、pCR1、pBR322、pMB9およびその誘導体を含む大腸菌に由来するプラスミド、さらに広い宿主域のプラスミド、例えば、M13、ならびに他の繊維状一本鎖DNAファージが含まれる。
【0243】
本発明のTIGIT結合物質(例えば、ポリペプチドまたは抗体)は1つまたは複数のベクターから発現させることができる。例えば、一部の態様において、ある1つの重鎖ポリペプチドは、ある1つのベクターによって発現され、第2の重鎖ポリペプチドは第2のベクターによって発現され、軽鎖ポリペプチドは第3のベクターによって発現される。一部の態様において、第1の重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドは、ある1つのベクターによって発現され、第2の重鎖ポリペプチドは第2のベクターによって発現される。一部の態様において、2種類の重鎖ポリペプチドは、ある1つのベクターによって発現され、軽鎖ポリペプチドは第2のベクターによって発現される。一部の態様において、3種類のポリペプチドが、ある1つのベクターによって発現される。従って、一部の態様において、第1の重鎖ポリペプチド、第2の重鎖ポリペプチド、および軽鎖ポリペプチドは1種類のベクターによって発現される。
【0244】
TIGIT結合ポリペプチドまたは抗体(または抗原として使用するTIGITタンパク質)を発現させるのに適した宿主細胞には、適切なプロモーターの制御下にある、原核生物、酵母細胞、昆虫細胞、または高等真核細胞が含まれる。原核生物には、グラム陰性生物またはグラム陽性生物、例えば、大腸菌または桿菌が含まれる。高等真核細胞には、下記に記載の哺乳動物に由来する樹立細胞株が含まれる。無細胞翻訳系も用いられることがある。細菌宿主、真菌宿主、酵母宿主、および哺乳動物細胞宿主と使用するのに適したクローニングベクターおよび発現ベクター、ならびに抗体作製を含むタンパク質作製の方法は当技術分野において周知である。
【0245】
組換えポリペプチドを発現させるために様々な哺乳動物培養系を用いてもよい。哺乳動物細胞における組換えタンパク質の発現は、これらのタンパク質がおおむね正しく折り畳まれ、適切に修飾され、かつ生物学的に機能するので望ましい場合がある。適切な哺乳動物宿主細胞株の例には、COS-7(サル腎臓由来)、L-929(マウス線維芽細胞由来)、C127(マウス乳がん由来)、3T3(マウス線維芽細胞由来)、CHO(チャイニーズハムスター卵巣由来)、HeLa(ヒト子宮頸がん由来)、BHK(ハムスター腎臓線維芽細胞由来)、HEK-293(ヒト胚腎臓由来)細胞株、およびその変種が含まれるがこれらに限定されない。哺乳動物発現ベクターは、非転写エレメント、例えば、複製起点、発現させようとする遺伝子に連結される適切なプロモーターおよびエンハンサー、ならびに他の5'または3'隣接非転写配列、ならびに5'または3'非翻訳配列、例えば、必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナー部位およびスプライスアクセプター部位、ならびに転写終結配列を含むことができる。
【0246】
昆虫細胞培養系(例えば、バキュロウイルス)における組換えタンパク質の発現もまた、正しく折り畳まれ、かつ生物学的に機能するタンパク質を産生するための頑強な方法を提供する。昆虫細胞において異種タンパク質を産生するためのバキュロウイルス系は当業者に周知である。
【0247】
従って、本発明は、本明細書に記載のTIGIT結合物質を含む細胞を提供する。一部の態様において、前記細胞は、本明細書に記載のTIGIT結合物質を産生する。一部の態様において、前記細胞は、マウスTIGITに結合する抗体を産生する。一部の態様において、前記細胞は、ヒトTIGITに結合する抗体を産生する。一部の態様において、前記細胞は、マウスTIGITとヒトTIGITに結合する抗体を産生する。ある特定の態様において、前記細胞は抗体313R11を産生する。ある特定の態様において、前記細胞は抗体313R12を産生する。ある特定の態様において、前記細胞は抗体313R14を産生する。ある特定の態様において、前記細胞は抗体313R19を産生する。ある特定の態様において、前記細胞は抗体313R20を産生する。ある特定の態様において、前記細胞は抗体313M26を産生する。ある特定の態様において、前記細胞は抗体313M32を産生する。ある特定の態様において、前記細胞は抗体313M33を産生する。一部の態様において、前記細胞は、TIGITに結合する二重特異性抗体を産生する。一部の態様において、前記細胞は、TIGITと第2の標的に結合する二重特異性抗体を産生する。一部の態様において、前記細胞はハイブリドーマ細胞である。一部の態様において、前記細胞は哺乳動物細胞である。一部の態様において、前記細胞は原核細胞である。一部の態様において、前記細胞は真核細胞である。
【0248】
形質転換宿主により産生されたタンパク質は任意の適切な方法に従って精製することができる。標準的な方法には、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、およびサイジング(sizing)カラムクロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度差、またはタンパク質精製のための他の任意の標準的な技法が含まれる。適切なアフィニティカラム上での通過による容易な精製を可能にするために、アフィニティタグ、例えば、ヘキサヒスチジン、マルトース結合ドメイン、インフルエンザコート配列、およびグルタチオン-S-トランスフェラーゼをタンパク質に取り付けることができる。免疫グロブリンを精製するために用いられるアフィニティクロマトグラフィーには、プロテインA、プロテインG、およびプロテインLクロマトグラフィーが含まれ得る。単離されたタンパク質は、タンパク質分解、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、質量分析法(MS)、核磁気共鳴(NMR)、等電点電気泳動(IEF)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、およびX線結晶学のような技法を用いて物理的に特徴決定することができる。単離されたタンパク質の純度は、SDS-PAGE、SEC、キャピラリーゲル電気泳動、IEF、およびキャピラリー等電点電気泳動(cIEF)を含むが、これらに限定されない当業者に公知の技法を用いて求めることができる。
【0249】
一部の態様では、最初に、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを用いて、組換えタンパク質を培養培地に分泌する発現系からの上清を濃縮することができる。濃縮工程後に、濃縮物を適切な精製マトリックスに適用することができる。一部の態様では、陰イオン交換樹脂、例えば、ペンダントジエチルアミノエチル(DEAE)基を有するマトリックスまたは支持体を使用することができる。マトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロース、またはタンパク質精製において一般に用いられる他のタイプでもよい。一部の態様では、陽イオン交換工程を使用することができる。適切な陽イオン交換体には、スルホプロピル基またはカルボキシメチル基を含む様々な不溶性のマトリックスが含まれる。一部の態様では、セラミックヒドロキシアパタイト(CHT)を含むが、これらに限定されないヒドロキシアパタイト媒体を使用することができる。ある特定の態様では、組換えタンパク質(例えば、TIGIT結合物質)をさらに精製するために、疎水性RP-HPLC媒体、例えば、ペンダントメチル基または他の脂肪族基を有するシリカゲルを用いた1つまたは複数の逆相HPLC工程を使用することができる。均質な組換えタンパク質を供給するために、前述の精製工程の一部または全てを様々な組み合わせで使用することができる。
【0250】
一部の態様において、二重特異性抗体などのヘテロ二量体タンパク質は、本明細書に記載の任意の方法に従って精製される。一部の態様において、抗TIGIT二重特異性抗体は少なくとも1つのクロマトグラフィー工程を用いて単離および/または精製される。一部の態様において、少なくとも1つのクロマトグラフィー工程はアフィニティクロマトグラフィーを含む。一部の態様において、少なくとも1つのクロマトグラフィー工程は陰イオン交換クロマトグラフィーをさらに含む。一部の態様において、単離および/または精製された抗体産物は少なくとも90%のヘテロ二量体抗体を含む。一部の態様において、単離および/または精製された抗体産物は少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%のヘテロ二量体抗体を含む。一部の態様において、単離および/または精製された抗体産物は約100%のヘテロ二量体抗体を含む。
【0251】
一部の態様では、細菌培養において産生されたポリペプチドは、例えば、最初に、細胞ペレットから抽出し、その後に、1回または複数回の濃縮、塩析、水性イオン交換、またはサイズ排除クロマトグラフィー工程を行うことによって単離することができる。最後の精製工程にはHPLCを使用することができる。組換えタンパク質の発現において用いられる微生物細胞は、凍結融解サイクル、超音波処理、機械的破壊、または細胞溶解剤の使用を含む任意の便利な法によって破壊することができる。
【0252】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、抗体ではないか、または免疫グロブリンFc領域を含まないポリペプチドである。タンパク質標的に高親和性で結合する非抗体ポリペプチドを特定および産生するための様々な方法が当技術分野において公知である。ある特定の態様では、TIGIT結合ポリペプチドを産生および/または同定するために、ファージディスプレイ技術または哺乳動物ディスプレイ技術が用いられることがある。ある特定の態様では、前記ポリペプチドは、プロテインA、プロテインG、リポカリン、フィブロネクチンドメイン、アンキリンコンセンサス反復ドメイン、およびチオレドキシンからなる群より選択されるタイプのタンパク質スキャフォールドを含む。タンパク質標的に高親和性で結合する非抗体ポリペプチドを特定および産生するための様々な方法が当技術分野において公知である。ある特定の態様では、結合ポリペプチドを産生および/または同定するために、ファージディスプレイ技術が用いられることがある。ある特定の態様では、結合ポリペプチドを産生および/または同定するために、哺乳動物細胞ディスプレイ技術が用いられることがある。
【0253】
さらに、血清半減期を延ばす(または短くする)ようにポリペプチドを改変することが望ましい場合がある。これは、例えば、サルベージ受容体結合エピトープを前記ポリペプチドに組み込むことによって、前記ポリペプチドにある適切な領域を変異させることによって、またはペプチドタグにエピトープを組み込み、次いで、これを、(例えば、DNA合成もしくはペプチド合成によって)どちらかの端に、もしくは中央で前記ポリペプチドと融合させることによって達成することができる。
【0254】
ヘテロ結合分子も本発明の範囲内にある。ヘテロ結合分子は、共有結合した2種類のポリペプチドからなる。例えば、免疫細胞を、腫瘍細胞などの不必要な細胞に標的化するために、このような抗体が提案されている。ヘテロ結合分子は、架橋剤が関与する方法を含む、合成タンパク質化学において公知の方法を用いてインビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を用いて、またはチオエーテル結合を形成することによって免疫毒素を構築することができる。この目的に適した試薬の例には、イミノチオラートおよびメチル-4-メルカプトブチルイミダートが含まれる。
【0255】
ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、多数の結合体化した形(すなわち、免疫結合体もしくは放射性結合体(radioconjugate))または結合体化していない形のいずれか1つで使用することができる。ある特定の態様において、前記物質は、補体依存性細胞傷害(CDC)および抗体依存性細胞傷害(ADCC)を含む対象の自然防御機構を用いて悪性細胞またはがん細胞を排除するために、結合体化していない形で使用することができる。
【0256】
一部の態様において、TIGIT結合物質は細胞傷害作用物質に結合体化される。一部の態様において、TIGIT結合物質は、ADC(抗体-薬物結合体)として細胞傷害作用物質に結合体化される抗体である。一部の態様において、細胞傷害作用物質は、メトトレキセート、アドリアマイシン/ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロランブシル、ダウノルビシン、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)、または他の挿入剤を含むが、これらに限定されない化学療法剤である。一部の態様において、細胞傷害作用物質は、細菌、真菌、植物、もしくは動物に由来する酵素活性を有する毒素、またはジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、エキソトキシンA鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンシンタンパク質、アメリカヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ニガウリ(Momordica charantia)阻害物質、クルシン、クロチン、サボンソウ(Sapaonaria officinalis)阻害物質、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、およびトリコテセン(tricothecene)を含むが、これらに限定されない、その断片である。一部の態様において、細胞傷害作用物質は、放射性結合体または放射性結合抗体を生成するための放射性同位体である。放射性結合抗体を生成するために、
90Y、
125I、
131I、
123I、
111In、
131In、
105Rh、
153Sm、
67Cu、
67Ga、
166Ho、
177Lu、
186Re、
188Re、および
212Biを含むが、これらに限定されない様々な放射性核種を用いることができる。抗体と、カリチアマイシン、マイタンシノイド、トリコテン(trichothene)、およびCC1065、ならびに毒素活性を有するこれらの毒素の誘導体などの1種類または複数種の低分子毒素との結合体も使用することができる。抗体と細胞傷害作用物質との結合体は、様々な二官能性タンパク質カップリング物質、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジジチオール(pyridyidithiol))プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)、およびビス活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を用いて作製されてもよい。
【0257】
III.ポリヌクレオチド
ある特定の態様において、本発明は、本明細書に記載の作用物質をコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを包含する。「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」という用語は、ポリペプチドのコード配列しか含まないポリヌクレオチド、ならびにさらなるコード配列および/または非コード配列を含むポリヌクレオチドを包含する。本発明のポリヌクレオチドは、RNAの形をとってもよいか、またはDNAの形をとってもよい。DNAはcDNA、ゲノムDNA、および合成DNAを含み、二本鎖または一本鎖でもよく、一本鎖である場合コード鎖または非コード(アンチセンス)鎖でもよい。
【0258】
ある特定の態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:55、およびSEQ ID NO:56からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、ヌクレオチド配列)を含む。
【0259】
ある特定の態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:55、およびSEQ ID NO:56からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドと少なくとも約80%同一の、少なくとも約85%同一の、少なくとも約90%同一の、少なくとも約95%同一の、一部の態様では、少なくとも約96%、97%、98%、または99%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含む。SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:55、およびSEQ ID NO:56からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドも提供される。ある特定の態様において、ハイブリダイゼーションは高ストリンジェンシー条件下で行われる。高ストリンジェンシーの条件は当業者に公知であり、(1)洗浄のために低いイオン強度および高い温度、例えば、50℃で、15mM塩化ナトリウム/1.5mMクエン酸ナトリウム(1×SSC)と0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを使用する条件;(2)ハイブリダイゼーションの間に、5×SSC(0.75M NaCl、75mMクエン酸ナトリウム)に溶解した変性剤、例えば、ホルムアミド、例えば、50%(v/v)ホルムアミドと、0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.5を42℃で使用する条件;または(3)50%ホルムアミド、5×SSC、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハート溶液、超音波処理済みサケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、および10%硫酸デキストランを42℃で使用し、55℃で50%ホルムアミドを含む0.2×SSCで洗浄し、その後に、EDTAを含む0.1×SSCからなる高ストリンジェンシー洗浄を55℃で行う条件を含んでもよいが、これに限定されない。
【0260】
ある特定の態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:63、SEQ ID NO:64、SEQ ID NO:67、SEQ ID NO:68、SEQ ID NO:69、SEQ ID NO:70、SEQ ID NO:71、SEQ ID NO:72、SEQ ID NO:82、およびSEQ ID NO:83からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0261】
ある特定の態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:63、SEQ ID NO:64、SEQ ID NO:67、SEQ ID NO:68、SEQ ID NO:69、SEQ ID NO:70、SEQ ID NO:71、SEQ ID NO:72、SEQ ID NO:82、およびSEQ ID NO:83からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドと少なくとも約80%同一の、少なくとも約85%同一の、少なくとも約90%同一の、少なくとも約95%同一の、一部の態様では、少なくとも約96%、97%、98%、または99%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含む。SEQ ID NO:63、SEQ ID NO:64、SEQ ID NO:67、SEQ ID NO:68、SEQ ID NO:69、SEQ ID NO:70、SEQ ID NO:71、SEQ ID NO:72、SEQ ID NO:82、およびSEQ ID NO:83からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドも提供される。
【0262】
一部の態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:65、SEQ ID NO:66、SEQ ID NO:73、SEQ ID NO:74、SEQ ID NO:75、SEQ ID NO:76、およびSEQ ID NO:84からなる群より選択されるポリヌクレオチド配列を含む。ある特定の態様において、ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:65、SEQ ID NO:66、SEQ ID NO:73、SEQ ID NO:74、SEQ ID NO:75、SEQ ID NO:76、およびSEQ ID NO:84からなる群より選択されるヌクレオチド配列と少なくとも約80%同一の、少なくとも約85%同一の、少なくとも約90%同一の、少なくとも約95%同一の、一部の態様では、少なくとも約96%、97%、98%、または99%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含む。SEQ ID NO:65、SEQ ID NO:66、SEQ ID NO:73、SEQ ID NO:74、SEQ ID NO:75、SEQ ID NO:76、およびSEQ ID NO:84からなる群より選択されるポリヌクレオチド配列にハイブリダイズするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドも提供される。ある特定の態様において、ハイブリダイゼーション法は、前記のように高ストリンジェンシー条件下で行われる。
【0263】
ある特定の態様において、ポリヌクレオチドは、同じ読み枠で、ポリヌクレオチド、例えば、宿主細胞からのポリペプチドの発現および分泌を助けるポリヌクレオチド(例えば、細胞からのポリペプチドの輸送を制御するための分泌配列として機能するリーダー配列)と融合した成熟ポリペプチドのコード配列を含む。リーダー配列を有するポリペプチドがプレタンパク質であり、成熟型ポリペプチドを形成するために宿主細胞によって切断されるリーダー配列を有してもよい。前記ポリヌクレオチドはまた、成熟タンパク質+さらなる5'アミノ酸残基であるプロタンパク質をコードしてもよい。プロ配列を有する成熟タンパク質がプロタンパク質であり、不活性型タンパク質である。プロ配列が切断されると、活性のある成熟タンパク質が残る。
【0264】
ある特定の態様において、ポリヌクレオチドは、同じ読み枠で、マーカー配列、例えば、コードされるポリペプチドの精製を可能にするマーカー配列と融合した成熟ポリペプチドのコード配列を含む。例えば、マーカー配列は、細菌宿主の場合、マーカーと融合した成熟ポリペプチドを精製するための、pQE-9ベクターによって供給されるヘキサヒスチジンタグでもよい。または、マーカー配列は、哺乳動物宿主(例えば、COS-7細胞)が用いられる場合、インフルエンザ血球凝集素タンパク質に由来する血球凝集素(HA)タグでもよい。一部の態様において、マーカー配列は、他のアフィニティタグと共に使用することができ、配列DYKDDDDK(SEQ ID NO:40)のペプチドであるFLAG-タグである。
【0265】
本発明はさらに、本明細書に記載のポリヌクレオチドの変種に関し、該変種は、例えば、断片、類似体、および/または誘導体をコードする。
【0266】
ある特定の態様において、本発明は、本明細書に記載のTIGIT結合物質を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約95%同一、一部の態様では少なくとも約96%、97%、98%、または99%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを提供する。
【0267】
本明細書で使用する、参照ヌクレオチド配列と少なくとも、例えば95%「同一の」ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドという句は、前記ポリヌクレオチド配列が、参照ヌクレオチド配列の100ヌクレオチドごとに5個までの点変異を含むことができること以外は、前記ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が参照配列と同一であることを意味することが意図される。言い換えると、参照ヌクレオチド配列と少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るためには、参照配列にあるヌクレオチドを5%まで欠失させるか、または別のヌクレオチドで置換することができる。または、参照配列にある全ヌクレオチドの5%までの数のヌクレオチドを参照配列に挿入することができる。参照配列のこれらの変異は参照ヌクレオチド配列の5'末端位置もしくは3'末端位置または末端位置の間にあるどの場所でも起こってもよく、参照配列においてヌクレオチド間で個別に散在してもよく、参照配列内で1つまたは複数の連続したグループとなって散在してもよい。
【0268】
ポリヌクレオチド変種は、コード領域、非コード領域、またはその両方の変化を含有してもよい。一部の態様において、ポリヌクレオチド変種は、サイレントな置換、付加、または欠失を生じるが、コードされるポリペプチドの性質も活性も変えない変化を含有する。一部の態様において、ポリヌクレオチド変種は、(遺伝暗号の縮重により)ポリペプチドのアミノ酸配列を変えないサイレントな置換を含む。ポリヌクレオチド変種は、様々な理由で、例えば、特定の宿主に合わせてコドン発現を最適化するように生成することができる(すなわち、ヒトmRNAのコドンを、細菌宿主、例えば、大腸菌に好ましいコドンに変えることができる)。一部の態様において、ポリヌクレオチド変種は配列の非コード領域またはコード領域において少なくとも1つのサイレント変異を含む。
【0269】
一部の態様において、コードされるポリペプチドの発現(または発現レベル)を調整するために、または変えるためにポリヌクレオチド変種が生成される。一部の態様において、コードされるポリペプチドの発現を増やすために、ポリヌクレオチド変種が生成される。一部の態様において、コードされるポリペプチドの発現を減らすために、ポリヌクレオチド変種が生成される。一部の態様において、ポリヌクレオチド変種は、コードされるポリペプチドの発現を親ポリヌクレオチド配列と比較して増やす。一部の態様において、ポリヌクレオチド変種は、コードされるポリペプチドの発現を親ポリヌクレオチド配列と比較して減らす。
【0270】
一部の態様において、ヘテロ二量体分子の産生を増やすために、(コードされるポリペプチドのアミノ酸配列を変えることなく)少なくとも1種類のポリヌクレオチド変種が生成される。一部の態様において、二重特異性抗体の産生を増大させるために、(コードされるポリペプチドのアミノ酸配列を変えることなく)少なくとも1種類のポリヌクレオチド変種が生成される。
【0271】
ある特定の態様において、前記ポリヌクレオチドは単離されている。ある特定の態様において、前記ポリヌクレオチドは実質的に純粋である。
【0272】
本明細書に記載のポリヌクレオチドを含むベクターおよび細胞も提供される。一部の態様において、発現ベクターはポリヌクレオチド分子を含む。一部の態様において、宿主細胞は、前記ポリヌクレオチド分子を含む発現ベクターを含む。一部の態様において、宿主細胞はポリヌクレオチド分子を含む。
【0273】
IV.使用方法および薬学的組成物
本発明のTIGIT結合物質は、がんの処置などの治療的処置方法を含むが、これに限定されない様々な用途において有用である。一部の態様において、治療的処置方法はがん免疫療法を含む。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、免疫応答を活性化するのに、促進するのに、増大させるのに、および/もしくは亢進させるのに、腫瘍成長を阻害するのに、腫瘍量を低減するのに、腫瘍細胞アポトーシスを増大させるのに、ならびに/または腫瘍の腫瘍形成能を低減するのに有用である。一部の態様において、本発明のTIGIT結合物質はまたウイルスなどの病原体に対する免疫療法にも有用である。ある特定の態様において、TIGIT結合物質は、免疫応答を活性化する、促進する、増大させる、かつ/もしくは亢進させるのに、ウイルス感染を阻害するのに、ウイルス感染を低減するのに、ウイルス感染細胞アポトーシスを増大させるのに、および/またはウイルス感染細胞の死滅を増大させるのに有用である。前記使用方法は、インビトロ方法、エクスビボ方法、またはインビボ方法でもよい。
【0274】
本発明は、本明細書に記載のTIGIT結合物質を用いて、対象において免疫応答を活性化するための方法を提供する。一部の態様において、本発明は、本明細書に記載のTIGIT結合物質を用いて、対象において免疫応答を促進するための方法を提供する。一部の態様において、本発明は、本明細書に記載のTIGIT結合物質を用いて、対象において免疫応答を増大させるための方法を提供する。一部の態様において、本発明は、本明細書に記載のTIGIT結合物質を用いて、対象において免疫応答を亢進させるための方法を提供する。一部の態様において、免疫応答の活性化、促進、増大、および/または亢進は細胞性免疫の増大を含む。一部の態様において、免疫応答の活性化、促進、増大、および/または亢進はT細胞活性の増大を含む。一部の態様において、免疫応答の活性化、促進、増大、および/または亢進はCTL活性の増大を含む。一部の態様において、免疫応答の活性化、促進、増大、および/または亢進はNK細胞活性の増大を含む。一部の態様において、免疫応答の活性化、促進、増大、および/または亢進はT細胞活性の増大およびNK細胞活性の増大を含む。一部の態様において、免疫応答の活性化、促進、増大、および/または亢進はCTL活性の増大およびNK細胞活性の増大を含む。一部の態様において、免疫応答の活性化、促進、増大、および/または亢進はTregの抑制活性の阻害または減少を含む。一部の態様において、免疫応答の活性化、促進、増大、および/または亢進はMDSCの抑制活性の阻害または減少を含む。一部の態様において、免疫応答は抗原性刺激の結果である。一部の態様において、抗原性刺激は腫瘍細胞である。一部の態様において、抗原性刺激はがんである。一部の態様において、抗原性刺激は病原体である。一部の態様において、抗原性刺激はウイルスである。一部の態様において、抗原性刺激はウイルス感染細胞である。本明細書に記載の任意の方法の一部の態様において、TIGIT結合物質は抗TIGIT抗体である。本明細書に記載の任意の方法の一部の態様において、TIGIT結合物質は抗体313M32である。
【0275】
一部の態様において、対象において免疫応答を増大させる方法は、治療的有効量の本明細書に記載のTIGIT結合物質を対象に投与する工程を含み、前記物質は、TIGITの細胞外ドメインに特異的に結合する抗体である。一部の態様において、対象において免疫応答を増大させる方法は、治療的有効量の本明細書に記載のTIGIT結合物質を対象に投与する工程を含み、前記物質は、ヒトTIGITの細胞外ドメインに特異的に結合する抗体である。一部の態様において、対象において免疫応答を増大させる方法は、治療的有効量の抗体313M32を対象に投与する工程を含む。
【0276】
一部の態様において、本発明は、免疫応答を活性化し、促進し、増大させ、かつ/または増強するための医薬の製造および調製における本明細書に記載のTIGIT結合物質の使用を提供する。一部の態様において、本発明は、細胞性免疫を増大させるための医薬の製造および調製における本明細書に記載のTIGIT結合物質の使用を提供する。一部の態様において、本発明は、T細胞活性を増大させるための医薬の製造および調製における本明細書に記載のTIGIT結合物質の使用を提供する。一部の態様において、本発明は、CTL活性を増大させるための医薬の製造および調製における本明細書に記載のTIGIT結合物質の使用を提供する。一部の態様において、本発明は、NK活性を増大させるための医薬の製造および調製における本明細書に記載のTIGIT結合物質の使用を提供する。一部の態様において、本発明は、Tregの抑制活性を阻害するための、または減少させるための医薬の製造および調製における本明細書に記載のTIGIT結合物質の使用を提供する。一部の態様において、本発明は、MDSCの抑制活性を阻害するための、または減少させるための医薬の製造および調製における本明細書に記載のTIGIT結合物質の使用を提供する。
【0277】
本発明はまた、細胞を、有効量の本明細書に記載のTIGIT結合物質と接触させる工程を含む、細胞におけるTIGITシグナル伝達を阻害および/または低減する方法を提供する。一部の態様において、細胞におけるTIGITシグナル伝達を阻害および/または低減する方法は、細胞を有効量の抗体313M32と接触させる工程を含む。一部の態様において、本発明は、細胞におけるTIGITシグナル伝達を阻害および/または低減するための医薬の製造および調製における本明細書に記載のTIGIT結合物質の使用を提供する。ある特定の態様において、前記細胞はT細胞である。一部の態様において、前記細胞は活性化T細胞である。一部の態様において、前記細胞はNK細胞である。一部の態様において、前記細胞はTregである。一部の態様において、前記細胞はMDSCである。ある特定の態様において、前記方法は、細胞を前記剤と接触させる工程が、治療的有効量のTIGIT結合物質を対象に投与する工程を含むインビボ方法である。一部の態様において、前記方法はインビトロ方法またはエクスビボ方法である。
【0278】
本発明はまた、本明細書に記載のTIGIT結合物質を用いて腫瘍成長を阻害するための方法も提供する。一部の態様において、腫瘍成長を阻害する方法は、抗体313M32を使用する工程を含む。ある特定の態様において、腫瘍成長を阻害する方法は、インビトロで、細胞混合物をTIGIT結合物質と接触させる工程を含む。例えば、免疫細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)と混合した不死化細胞株またはがん細胞株が、TIGITに結合する試験作用物質が添加された培地中で培養される。一部の態様において、腫瘍細胞は、患者試料、例えば、組織生検材料、胸水、または血液試料から単離され、免疫細胞(例えば、T細胞および/またはNK細胞)と混合され、TIGITに結合する試験作用物質が添加された培地中で培養される。一部の態様において、本発明は、腫瘍の成長または腫瘍細胞の増殖を阻害するための医薬の製造および調製における本明細書に記載のTIGIT結合物質の使用を提供する。一部の態様において、TIGIT結合物質は、免疫細胞の活性を増大させ、促進し、かつ/または増強する。一部の態様において、TIGIT結合物質は腫瘍細胞の増殖を阻害する。
【0279】
一部の態様において、腫瘍成長を阻害する方法は、インビボで腫瘍または腫瘍細胞を本明細書に記載のTIGIT結合物質と接触させる工程を含む。ある特定の態様において、腫瘍または腫瘍細胞をTIGIT結合物質と接触させる工程は動物モデルにおいて企てられる。例えば、試験作用物質は、腫瘍を有するマウスに投与されてもよい。一部の態様において、TIGIT結合物質は、マウスにおいて免疫細胞の活性を増大させ、促進し、かつ/または増強する。一部の態様において、TIGIT結合物質は腫瘍成長を阻害する。一部の態様において、TIGIT結合物質は腫瘍を退縮する。一部の態様において、腫瘍成長を阻止するために、動物に腫瘍細胞が導入されるのと同時に、または腫瘍細胞が導入された直後に、TIGIT結合物質は投与される(「予防モデル」)。一部の態様において、腫瘍が、指定されたサイズまで成長した後に、または「確立」した後に、TIGIT結合物質は治療剤として投与される(「治療モデル」)。
【0280】
ある特定の態様において、腫瘍成長を阻害する方法は、治療的有効量の本明細書に記載のTIGIT結合物質を対象に投与する工程を含む。ある特定の態様において、対象はヒトである。ある特定の態様において、対象は腫瘍を有するか、対象は腫瘍が少なくとも部分的に取り除かれている。一部の態様において、腫瘍成長を阻害する方法は、治療的有効量の抗体313M32を対象に投与する工程を含む。
【0281】
さらに、本発明は、治療的有効量の本明細書に記載のTIGIT結合物質を対象に投与する工程を含む、対象において腫瘍成長を阻害する方法を提供する。一部の態様において、本発明は、腫瘍の成長または腫瘍細胞の増殖を阻害するための医薬の製造および調製における本明細書に記載のTIGIT結合物質の使用を提供する。ある特定の態様において、腫瘍はがん幹細胞を含む。ある特定の態様において、腫瘍内のがん幹細胞の頻度は前記剤の投与によって低減する。一部の態様において、治療的有効量のTIGIT結合物質を対象に投与する工程を含む、対象において腫瘍内のがん幹細胞の頻度を低減する方法が提供される。
【0282】
さらに、本発明は、治療的有効量の本明細書に記載のTIGIT結合物質を対象に投与する工程を含む、対象において腫瘍の腫瘍形成能を低減する方法を提供する。ある特定の態様において、腫瘍はがん幹細胞を含む。一部の態様において、腫瘍の腫瘍形成能は、腫瘍内のがん幹細胞の頻度を低減することによって低減する。一部の態様において、前記方法は、本明細書に記載のTIGIT結合物質を使用する工程を含む。ある特定の態様において、腫瘍内のがん幹細胞の頻度は、本明細書に記載のTIGIT結合物質を投与することによって低減する。一部の態様において、対象において腫瘍の腫瘍形成能を低減する方法は、治療的有効量の抗体313M32を対象に投与する工程を含む。
【0283】
一部の態様において、腫瘍は固形腫瘍である。ある特定の態様において、腫瘍は、結腸直腸腫瘍、膵臓腫瘍、肺腫瘍、卵巣腫瘍、肝臓腫瘍、乳房腫瘍、腎臓腫瘍、前立腺腫瘍、神経内分泌腫瘍、胃腸腫瘍、メラノーマ、子宮頸部腫瘍、膀胱腫瘍、グリア芽細胞腫、および頭頚部腫瘍からなる群より選択される腫瘍である。ある特定の態様において、腫瘍は結腸直腸腫瘍である。ある特定の態様において、腫瘍は卵巣腫瘍である。一部の態様において、腫瘍は肺腫瘍である。ある特定の態様において、腫瘍は膵臓腫瘍である。ある特定の態様において、腫瘍はメラノーマ腫瘍である。
【0284】
本発明は、治療的有効量の本明細書に記載のTIGIT結合物質を対象(例えば、処置を必要とする対象)に投与する工程を含む、がんを処置する方法を提供する。一部の態様において、本発明は、がんを処置するための医薬の製造および調製における本明細書に記載のTIGIT結合物質の使用を提供する。一部の態様において、TIGIT結合物質はヒトTIGITに結合し、がんの成長を阻害または低減する。ある特定の態様において、対象はヒトである。ある特定の態様において、対象はがん性腫瘍を有する。ある特定の態様において、対象は腫瘍が少なくとも部分的に取り除かれている。一部の態様において、対象においてがんを処置するための方法は、治療的有効量の抗体313M32を対象に投与する工程を含む。
【0285】
ある特定の態様において、がんは、結腸直腸がん、膵臓がん、肺がん、卵巣がん、肝臓がん、乳がん、腎臓がん、前立腺がん、胃腸がん、メラノーマ、子宮頚がん、神経内分泌がん、膀胱がん、グリア芽細胞腫、および頭頚部がんからなる群より選択されるがんである。ある特定の態様において、がんは膵臓がんである。ある特定の態様において、がんは卵巣がんである。ある特定の態様において、がんは結腸直腸がんである。ある特定の態様において、がんは乳がんである。ある特定の態様において、がんは前立腺がんである。ある特定の態様において、がんは肺がんである。ある特定の態様において、がんはメラノーマである。
【0286】
一部の態様において、がんは血液がんである。一部の態様において、血液がんは白血病である。他の態様において、血液がんはリンパ腫である。一部の態様において、がんは、急性骨髄性白血病(AML)、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、毛様細胞性白血病、慢性骨髄性白血病(CML)、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、および皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)からなる群より選択される。
【0287】
本明細書に記載の一部の態様において、方法は、腫瘍またはがんにおいてPD-L1発現レベルを決定する工程をさらに含む。一部の態様において、PD-L1発現レベルを決定する工程は、本明細書に記載のTIGIT結合物質で処置される前に行われる。一部の態様において、腫瘍またはがんのPD-L1発現レベルが高い場合に、TIGIT結合物質が対象に投与される。一部の態様において、方法は、(i)対象のがんまたは腫瘍の試料を入手する工程;(ii)試料中のPD-L1発現レベルを測定する工程;および(iii)腫瘍またはがんのPD-L1発現レベルが高い場合に、対象に有効量のTIGIT結合物質を投与する工程を含む。一部の態様において、試料は生検試料である。一部の態様において、試料は、腫瘍細胞、腫瘍浸潤免疫細胞、ストローマ細胞、およびそれらの任意の組み合わせを含む。一部の態様において、試料はホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料である。一部の態様において、試料は、保管組織、新鮮組織、または凍結組織である。一部の態様において、試料中のPD-L1発現レベルは、予め決められたPD-L1発現レベルと比較される。一部の態様において、予め決定されたPD-L1発現レベル発現は、参照腫瘍試料、参照正常組織試料、一連の参照腫瘍試料、または一連の参照正常組織試料におけるPD-L1発現レベルである。一部の態様において、PD-L1発現レベルは免疫組織化学(IHC)アッセイを用いて決定される。一部の態様において、PD-L1発現レベルは、Hスコア評価を含むアッセイを用いて決定される。一部の態様において、PD-L1発現レベルは、PD-L1に特異的に結合する抗体を用いて決定される。一部の態様において、PD-L1は腫瘍細胞上に検出される。一部の態様において、PD-L1は腫瘍浸潤免疫細胞上に検出される。
【0288】
2種類またはそれ以上の治療用物質を用いた併用療法では、異なる作用機構によって働く作用物質を使用することが多いが、このことは必要とされない。異なる作用機構を有する作用物質を用いた併用療法を用いると相加効果または相乗効果が得られることがある。併用療法は、各作用物質の用量が単独療法において用いられる用量より少なくなり、それによって、前記作用物質の毒性副作用が低減しかつ/または前記作用物質の治療指数が増加することを可能にする場合がある。併用療法は、耐性がん細胞が発生する可能性を小さくする可能性がある。一部の態様において、併用療法は、免疫応答に影響を及ぼす(例えば、該応答を亢進させるかまたは活性化する)治療用物質と、腫瘍/がん細胞に影響を及ぼす(例えば、腫瘍/がん細胞を阻害または死滅する)治療用物質とを含む。
【0289】
一部の態様において、本明細書に記載の作用物質と、少なくとも1種類のさらなる治療用物質とを組み合わせると相加的または相乗的な結果が得られる。一部の態様において、併用療法は前記作用物質の治療指数を増加させる。一部の態様において、併用療法は、さらなる治療用物質の治療指数を増加させる。一部の態様において、併用療法は、前記作用物質の毒性および/または副作用を減少させる。一部の態様において、併用療法は、さらなる治療用物質の毒性および/または副作用を減少させる。
【0290】
ある特定の態様では、本明細書に記載のTIGIT結合物質を投与する工程に加えて、前記方法または処置は少なくとも1種類のさらなる治療用物質を投与する工程をさらに含む。さらなる治療用物質は、前記物質が投与される前に、前記ポリペプチドもしくは作用物質が投与されると同時に、および/または前記ポリペプチドもしくは作用物質が投与された後に投与することができる。一部の態様において、少なくとも1種類のさらなる治療用物質は、1種類、2種類、3種類、またはそれより多いさらなる治療用物質を含む。
【0291】
本明細書に記載の前記物質と組み合わせて投与され得る治療用物質には化学療法剤が含まれる。従って、一部の態様では、前記の方法または処置は、本発明の作用物質と化学療法剤を組み合わせて、または化学療法剤のカクテルと組み合わせて投与することを伴う。作用物質による処置は、化学療法が投与される前に、化学療法が投与されると同時に、または化学療法が投与された後に行うことができる。併用投与は、1種類の薬学的製剤中におけるもしくは別個の製剤を用いた同時投与を含んでもよいか、またはどちらの順番でもよいが、活性作用物質の全てがその生物活性を同時に発揮できるように一般的にある期間内で行われる連続投与を含んでもよい。このような化学療法剤の調製および投与計画は、製造業者の説明書に従って、または当業者により経験的に決定されたように使用することができる。このような化学療法の調製および投与計画はまた、The Chemotherapy Source Book, 4
th Edition, 2008, M. C. Perry, Editor, Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia, PAに記載されている。
【0292】
治療用物質の有用なクラスには、例えば、抗チューブリン剤、アウリスタチン(auristatin)、DNA副溝結合物質、DNA複製阻害物質、アルキル化剤(例えば、白金錯体、例えば、シスプラチン、モノ(白金)、ビス(白金)、およびトリ-核白金錯体、ならびにカルボプラチン)、アントラサイクリン、抗生物質、葉酸代謝拮抗剤、代謝拮抗物質、化学療法増感剤、デュオカルマイシン、エトポシド、フッ化ピリミジン、イオノフォア、レキシトロプシン(lexitropsin)、ニトロソ尿素、プラチノール、プリン代謝拮抗物質、ピューロマイシン、放射線増感剤、ステロイド、タキサン、トポイソメラーゼ阻害物質、ビンカアルカロイドなどが含まれる。ある特定の態様では、第2の治療用物質は、アルキル化剤、代謝拮抗物質、抗有糸分裂剤、トポイソメラーゼ阻害物質、または血管形成阻害物質である。
【0293】
本発明において有用な化学療法剤には、アルキル化剤、例えば、チオテパおよびシクロスホスファミド(cyclosphosphamide)(サイトキサン(CYTOXAN));アルキルスルホナート、例えば、ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、およびウレドーパ(uredopa);アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、およびトリメチローロメラミン(trimethylolomelamime)を含む、エチレンイミンおよびメチルアメラミン(methylamelamine)、ナイトロジェンマスタード、例えば、クロランブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベムビシン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソ尿素、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えば、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アウスラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリチアマイシン、カラビシン(carabicin)、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ユベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗物質、例えば、メトトレキセートおよび5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えば、デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シトシンアラビノシド、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FU;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎剤、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充剤、例えば、フロリン酸(folinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジクオン;エルフォルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリニック酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK;ラゾキサン;シゾフラン(sizofuran);スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(Ara-C);タキソイド、例えば、パクリタキセル(タキソール(TAXOL))およびドセタキセル(タキソテール(TAXOTERE));クロランブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;白金類似体、例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロン酸;CPT11;トポイソメラーゼ阻害物質RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン;カペシタビン(ゼローダ(XELODA));および前記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が含まれるが、これらに限定されない。化学療法剤には、腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害するように働く抗ホルモン剤、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびトレミフェン(ファレストン(FARESTON))を含む抗エストロゲン、ならびにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、およびゴセレリンなどの抗アンドロゲン、ならびに前記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体も含まれる。ある特定の態様において、さらなる治療用物質はシスプラチンである。ある特定の態様において、さらなる治療用物質はカルボプラチンである。
【0294】
ある特定の態様において、化学療法剤はトポイソメラーゼ阻害物質である。トポイソメラーゼ阻害物質は、トポイソメラーゼ酵素(トポイソメラーゼIまたはII)の働きを妨害する化学療法剤である。トポイソメラーゼ阻害物質には、ドキソルビシンHCl、クエン酸ダウノルビシン、ミトキサントロンHCl、アクチノマイシンD、エトポシド、トポテカンHCl、テニポシド(VM-26)、およびイリノテカン、ならびにこれらのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が含まれるが、これらに限定されない。一部の態様において、さらなる治療用物質はイリノテカンである。
【0295】
ある特定の態様において、化学療法剤は代謝拮抗物質である。代謝拮抗物質は、正常な生化学反応に必要な代謝産物に似ているが、細胞の1つまたは複数の正常機能、例えば、細胞分裂を妨害するのに十分に異なる構造を有する化学物質である。代謝拮抗物質には、ゲムシタビン、フルオロウラシル、カペシタビン、メトトレキセートナトリウム、ラルチトラキセド、ペメトレキセド、テガフール、シトシンアラビノシド、チオグアニン、5-アザシチジン、6-メルカプトプリン、アザチオプリン、6-チオグアニン、ペントスタチン、リン酸フルダラビン、およびクラドリビン、ならびにこれらのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の態様では、さらなる治療用物質はゲムシタビンである。
【0296】
ある特定の態様において、化学療法剤は、チューブリンに結合する剤を含むが、これに限定されない有糸分裂阻害剤である。一部の態様において、前記剤はタキサンである。ある特定の態様では、前記剤は、パクリタキセルもしくはドセタキセル、またはパクリタキセルもしくはドセタキセルの薬学的に許容される塩、酸、もしくは誘導体である。ある特定の態様では、前記剤は、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール)、アルブミン結合パクリタキセル(アブラキサン(ABRAXANE))、DHA-パクリタキセル、またはPG-パクリタキセルである。ある特定の他の態様では、有糸分裂阻害剤は、ビンカアルカロイド、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、もしくはビンデシン、またはその薬学的に許容される塩、酸、もしくは誘導体を含む。一部の態様では、有糸分裂阻害剤は、キネシンEg5の阻害物質または有糸分裂キナーゼ、例えば、AuroraAもしくはPlk1の阻害物質である。ある特定の態様では、さらなる治療用物質はパクリタキセルである。ある特定の態様では、さらなる治療用物質はアルブミン結合パクリタキセル(アブラキサン)である。
【0297】
一部の態様において、さらなる治療用物質は低分子などの作用物質を含む。例えば、処置は、本発明の作用物質と、EGFR、HER2(ErbB2)、および/またはVEGFを含むが、これらに限定されない腫瘍関連抗原に対する阻害物質として働く低分子との併用投与を伴ってもよい。一部の態様において、本発明の作用物質は、ゲフィチニブ(イレッサ(IRESSA))、エルロチニブ(タルセバ(TARCEVA))、スニチニブ(ステント(SUTENT))、ラパタニブ(lapatanib)、バンデタニブ(ザクティマ(ZACTIMA))、AEE788、CI-1033、セジラニブ(レセンチン(RECENTIN))、ソラフェニブ(ネクサバール(NEXAVAR))、およびパゾパニブ(GW786034B)からなる群より選択されるプロテインキナーゼ阻害物質と併用投与される。一部の態様において、さらなる治療用物質はmTOR阻害物質を含む。
【0298】
ある特定の態様において、さらなる治療用物質は、がん幹細胞経路を阻害する作用物質である。一部の態様において、さらなる治療用物質はNotch経路の阻害物質である。一部の態様において、さらなる治療用物質はWnt経路の阻害物質である。一部の態様において、さらなる治療用物質はBMP経路の阻害物質である。一部の態様において、さらなる治療用物質はHippo経路の阻害物質である。一部の態様において、さらなる治療用物質はRSPO/LGR経路の阻害物質である。一部の態様において、さらなる治療用物質はmTOR/AKR経路の阻害物質である。
【0299】
一部の態様において、さらなる治療用物質は抗体などの生物学的分子を含む。例えば、処置は、本発明の作用物質と、EGFR、HER2/ErbB2、および/またはVEGFに結合する抗体を含むがこれらに限定されない腫瘍関連抗原に対する抗体との併用投与を伴ってもよい。ある特定の態様において、さらなる治療用物質は、がん幹細胞マーカーに特異的な抗体である。一部の態様において、さらなる治療用物質は、Notch経路の成分に結合する抗体である。一部の態様において、さらなる治療用物質は、Wnt経路の成分に結合する抗体である。ある特定の態様において、さらなる治療用物質は、がん幹細胞経路を阻害する抗体である。一部の態様において、さらなる治療用物質はNotch経路の阻害物質である。一部の態様において、さらなる治療用物質はWnt経路の阻害物質である。一部の態様において、さらなる治療用物質はBMP経路の阻害物質である。一部の態様において、さらなる治療用物質は、β-カテニンシグナル伝達を阻害する抗体である。ある特定の態様において、さらなる治療用物質は、血管形成阻害物質である抗体(例えば、抗VEGF抗体または抗VEGF受容体抗体)である。ある特定の態様において、さらなる治療用物質は、ベバシズマブ(アバスチン(AVASTIN))、ラムシルマブ(ramucirumab)、トラスツズマブ(ハーセプチン(HERCEPTIN))、ペルツズマブ(オムニターグ(OMNITARG))、パニツムマブ(ベクチビックス(VECTIBIX))、ニモツズマブ(nimotuzumab)、ザルツムマブ、またはセツキシマブ(エルビタックス(ERBITUX))である。
【0300】
ある特定の態様において、本明細書に記載のTIGIT結合物質を投与する工程に加えて、前記方法または処置は、少なくとも1種類のさらなる免疫療法剤を投与する工程をさらに含む。一部の態様において、さらなる免疫療法剤は免疫応答刺激作用物質である。一部の態様において、免疫療法剤(例えば、免疫応答刺激作用物質)には、コロニー刺激因子(例えば、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、幹細胞因子(SCF))、インターロイキン(例えば、IL-1、IL2、IL-3、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18)、免疫抑制機能をブロックする抗体(例えば、抗CTLA4抗体、抗CD28抗体、抗CD3抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体)、免疫細胞機能を増強する抗体(例えば、抗GITR抗体もしくは抗OX-40抗体)、toll様受容体(例えば、TLR4、TLR7、TLR9)、可溶性リガンド(例えば、GITRLもしくはOX-40L)、またはB7ファミリーメンバー(例えば、CD80、CD86)が含まれるが、これらに限定されない。TIGIT結合物質が投与される前に、TIGIT結合物質が投与されるのと同時に、および/またはTIGIT結合物質が投与された後に、さらなる免疫療法剤(例えば、免疫応答刺激作用物質)を投与することができる。TIGIT結合物質と、さらなる免疫療法剤(例えば、免疫応答刺激作用物質)を含む薬学的組成物も提供される。一部の態様において、免疫療法剤は、1種類、2種類、3種類、またはそれより多い免疫療法剤を含む。一部の態様において、免疫応答刺激作用物質は、1種類、2種類、3種類、またはそれより多い免疫応答刺激作用物質を含む。
【0301】
一部の態様において、さらなる治療用物質は、免疫チェックポイント阻害物質である抗体である。一部の態様において、免疫チェックポイント阻害物質は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体、抗CD28抗体、抗LAG3抗体、抗TIM3抗体、抗GITR抗体、または抗OX-40抗体である。一部の態様において、免疫チェックポイント阻害物質は抗4-1BB抗体である。一部の態様において、さらなる治療用物質は、ニボルマブ(OPDIVO)、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA)、またはピジリズマブ(pidilzumab)からなる群より選択される抗PD-1抗体である。一部の態様において、さらなる治療用物質は、MEDI0680、REGN2810、BGB-A317、およびPDR001からなる群より選択される抗PD-1抗体である。一部の態様において、さらなる治療用物質は、BMS935559(MDX-1105)、アテキソリズマブ(atexolizumab)(MPDL3280A)、デュルバルマブ(durvalumab)(MEDI4736)、またはアベルマブ(avelumab)(MSB0010718C)からなる群より選択される抗PD-L1抗体である。一部の態様において、さらなる治療用物質は、イピリムマブ(YERVOY)またはトレメリムマブ(tremelimumab)からなる群より選択される抗CTLA-4抗体である。一部の態様において、さらなる治療用物質は、BMS-986016およびLAG525からなる群より選択される抗LAG-3抗体である。一部の態様において、さらなる治療用物質は、MEDI6469、MEDI0562、およびMOXR0916からなる群より選択される抗OX-40抗体である。一部の態様において、さらなる治療用物質は、PF-05082566からなる群より選択される抗4-1BB抗体である。
【0302】
さらに、本明細書に記載のTIGIT結合物質を用いた処置は、他の生物分子、例えば、1種類または複数種のサイトカイン(例えば、リンホカイン、インターロイキン、インターフェロン、腫瘍壊死因子、および/または増殖因子)との併用処置を含んでもよく、腫瘍の外科的除去、がん細胞の除去、または処置を行っている医師により必要だと考えられた他の任意の療法を伴ってもよい。
【0303】
一部の態様において、TIGIT結合物質は、アドレノメデュリン(AM)、アンジオポエチン(Ang)、BMP、BDNF、EGF、エリスロポエチン(EPO)、FGF、GDNF、G-CSF、GM-CSF、GDF9、HGF、HDGF、IGF、遊走刺激因子(migration-stimulating factor)、ミオスタチン(GDF-8)、NGF、ニューロトロフィン、PDGF、トロンボポエチン、TGF-α、TGF-β、TNF-α、VEGF、PlGF、γ-IFN、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-12、IL-15、およびIL-18からなる群より選択される生物分子と組み合わせて投与することができる。一部の態様において、TIGIT結合物質は、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)および幹細胞因子(SCF)からなる群より選択される生物分子と組み合わせて投与することができる。
【0304】
一部の態様において、本明細書に記載のTIGIT結合物質を用いた処置は、腫瘍の外科的除去、がん細胞の除去、または処置を行っている医師により必要だと考えられた他の任意の外科的療法を伴ってもよい。
【0305】
ある特定の態様において、処置は、本発明のTIGIT結合物質と放射線療法との併用投与を伴う。作用物質による処置は、放射線療法の投与の前に、放射線療法の投与と同時に、または放射線療法の投与の後に行ってもよい。このような放射線療法の投与計画は当業者により決定することができる。
【0306】
ある特定の態様において、処置は、本発明のTIGIT結合物質と抗ウイルス療法との併用投与を伴う。作用物質による処置は、抗ウイルス療法の投与の前に、抗ウイルス療法の投与と同時に、または抗ウイルス療法の投与の後に行ってもよい。併用療法において用いられる抗ウイルス薬は、対象に感染しているウイルスによって決まる。
【0307】
併用投与は、1種類の薬学的製剤中におけるもしくは別個の製剤を用いた同時投与を含んでもよいか、またはどちらの順番でもよいが、一般的に、活性作用物質の全てがその生物活性を同時に発揮できるような期間内で行われる連続投与を含んでもよい。
【0308】
本明細書に記載のTIGIT結合物質と少なくとも1種類のさらなる治療用物質の組み合わせは、任意の順序で投与されてもよいか、または同時に投与されてもよいことが理解される。一部の態様において、前記物質は、第2の治療用物質を用いて以前に治療されたことがある患者に投与される。ある特定の他の態様において、前記TIGIT結合物質と第2の治療用物質は実質的に同時に、または同時に投与される。例えば、対象は、第2の治療用物質(例えば、化学療法)による治療コースを受けながら作用物質が与えられてもよい。ある特定の態様では、TIGIT結合物質は、第2の治療用物質で処置して1年以内に投与される。ある特定の他の態様では、TIGIT結合物質は、第2の治療用物質で処置して10ヶ月以内、8ヶ月以内、6ヶ月以内、4ヶ月以内、または2ヶ月以内に投与される。ある特定の他の態様では、TIGIT結合物質は、第2の治療用物質で処置して4週間以内、3週間以内、2週間以内、または1週間以内に投与される。一部の態様では、作用物質は、第2の治療用物質で処置して5日以内、4日以内、3日以内、2日以内、または1日以内に投与される。さらに、2種類の(またはそれより多い)作用物質または処置が数時間または数分のうちに(すなわち、実質的に同時に)対象に投与されてもよいことが理解される。
【0309】
疾患を治療する場合、本発明のTIGIT結合物質の適切な投与量は、処置しようとする疾患のタイプ、疾患の重篤度および経過、疾患の応答性、前記物質が治療目的または予防目的で投与されるかどうか、以前の療法、患者の病歴などによって決まる。これらは全て、治療を行っている医師の自由裁量に委ねられている。前記TIGIT結合物質は一度に投与されてもよく、数日〜数ヶ月間続く一連の処置にわたって投与されてもよいか、または治癒するまで、もしくは疾患状態が低下(例えば、腫瘍サイズが縮小)するまで投与されてもよい。最適な投与計画は患者の体内の薬物蓄積測定値から算出することができ、個々の作用物質の相対的な効果に応じて変化する。投与を行っている医師は、最適投与量、投与方法、および反復率を容易に決定することができる。ある特定の態様において、投与量は、0.01μg〜100mg/kg体重、0.1μg〜100mg/kg体重、1μg〜100mg/kg体重、1mg〜100mg/kg体重、1mg〜80mg/kg体重、10mg〜100mg/kg体重、10mg〜75mg/kg体重、または10mg〜50mg/kg体重である。ある特定の態様において、前記物質の投与量は約O.1mg〜約20mg/kg体重である。一部の態様において、前記物質の投与量は約0.5mg/kg体重である。一部の態様において、前記物質の投与量は約1mg/kg体重である。一部の態様において、前記物質の投与量は約1.5mg/kg体重である。一部の態様において、前記物質の投与量は約2mg/kg体重である。一部の態様において、前記物質の投与量は約2.5mg/kg体重である。一部の態様において、前記物質の投与量は約5mg/kg体重である。一部の態様において、前記物質の投与量は約7.5mg/kg体重である。一部の態様において、前記物質の投与量は約10mg/kg体重である。一部の態様において、前記物質の投与量は約12.5mg/kg体重である。一部の態様において、前記物質の投与量は約15mg/kg体重である。ある特定の態様において、投与量は1日に、1週間に、1ヶ月に、または1年に1回または複数回与えることができる。ある特定の態様において、前記物質は1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、または4週間に1回、与えられる。
【0310】
一部の態様において、TIGIT結合物質は多量の初回「負荷(loading)」量で投与され、その後に、それより少ない1つまたは複数の用量で投与されてもよい。一部の態様において、投与頻度も変わってもよい。一部の態様において、投与計画は、初回量を投与し、その後に、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、または1か月に1回、さらなる用量(または「維持」用量)を投与する工程を含んでもよい。例えば、投与計画は、初回負荷量を投与し、その後に、毎週維持量、例えば、初回量の半分を投与する工程を含んでもよい。または、投与計画は、初回負荷量を投与し、その後に、維持量、例えば、初回量の半分を隔週で投与する工程を含んでもよい。または、投与計画は、3週間にわたって3つの初回量を投与し、その後に、維持量、例えば、同じ量を隔週で投与する工程を含んでもよい。
【0311】
当業者に公知であるとおり、どの治療用物質の投与でも副作用および/または毒性が生じる可能性がある。場合によっては、副作用および/または毒性は、治療に有効な用量の特定の作用物質を投与するのを止めるほど重篤である。場合によっては、薬物療法は中断しなければならず、他の作用物質が試みられる場合がある。しかしながら、同じ薬効分類(therapeutic class)にある多くの作用物質が同様の副作用および/または毒性を示すことが多い。このことは、患者は療法を停止しなければならないか、または可能なら、治療用物質に関連する不快な副作用に苦しまなければならないことを意味する。
【0312】
一部の態様において、投与計画は特定の回数の投与または「サイクル」に限定される場合がある。一部の態様において、前記物質は3回、4回、5回、6回、7回、8回、またはそれより多いサイクルのために投与される。例えば、前記物質は6回のサイクルのために2週間ごとに投与される、前記物質は6回のサイクルのために3週間ごとに投与される、前記物質は4回のサイクルのために2週間ごとに投与される、前記物質は4回のサイクルのために3週間ごとに投与されるなど。当業者は投与計画を決定し、その後に変更することができる。
【0313】
本発明は、1種類または複数種の作用物質を投与するために間欠投与戦略を使用する工程を含む、本明細書に記載のTIGIT結合物質を対象に投与する方法を提供する。間欠投与戦略を使用する工程によって、作用物質、化学療法剤などの投与に関連する副作用および/または毒性が低減する可能性がある。一部の態様において、ヒト対象においてがんを処置するための方法は、治療に有効な用量の作用物質と治療に有効な用量の化学療法剤を対象に併用投与する工程を含み、前記作用物質の一方または両方は間欠投与戦略に従って投与される。一部の態様において、間欠投与戦略は、初回量の作用物質を対象に投与する工程、および後の用量の前記作用物質を、およそ2週間に1回、投与する工程を含む。一部の態様において、間欠投与戦略は、初回量の作用物質を対象に投与する工程、および後の用量の前記作用物質を、およそ3週間に1回、投与する工程を含む。一部の態様において、間欠投与戦略は、初回量の作用物質を対象に投与する工程、および後の用量の前記作用物質を、およそ4週間に1回、投与する工程を含む。一部の態様において、前記作用物質は間欠投与戦略を用いて投与され、化学療法剤は毎週投与される。
【0314】
本発明は、本明細書に記載のTIGIT結合物質を含む組成物を提供する。本発明はまた、本明細書に記載のTIGIT結合物質と、薬学的に許容されるビヒクルとを含む薬学的組成物も提供する。一部の態様において、薬学的組成物は免疫療法における使用を見出す。一部の態様において、前記組成物は腫瘍成長の阻害における使用を見出す。一部の態様において、薬学的組成物は対象(例えば、ヒト患者)における腫瘍成長の阻害における使用を見出す。一部の態様において、前記組成物はがんの処置における使用を見出す。一部の態様において、薬学的組成物は対象(例えば、ヒト患者)におけるがんの処置における使用を見出す。
【0315】
精製された本発明の抗体または作用物質と、薬学的に許容されるビヒクル(例えば、担体または賦形剤)を組み合わせることによって、保管および使用のための製剤が調製される。当業者は、普通、薬学的に許容される担体、賦形剤、および/または安定剤が製剤または薬学的組成物の不活性成分であると考える。
【0316】
適切な薬学的に許容されるビヒクルには、無毒の緩衝液、例えば、リン酸、クエン酸、および他の有機酸;塩、例えば、塩化ナトリウム;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化物質;防腐剤、例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール、アルキルパラベン、例えば、メチルパラベンまたはプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、およびm-クレゾール;低分子量ポリペプチド(例えば、約10未満のアミノ酸残基);タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジン;炭水化物、例えば、単糖、二糖、グルコース、マンノース、またはデキストリン;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース、またはソルビトール;塩を形成する対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体、例えば、Zn-タンパク質錯体;および非イオン界面活性剤、例えば、TWEENまたはポリエチレングリコール(PEG)が含まれるが、これらに限定されない。(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 22
nd Edition, 2012, Pharmaceutical Press, London)。
【0317】
本発明の薬学的組成物は局所処置または全身処置のための多様な手法で投与することができる。投与は、表皮パッチもしくは経皮パッチ、軟膏、ローション剤、クリーム、ゲル、ドロップ、坐剤、スプレー、液剤、および散剤による局部投与;ネブライザーによる投与を含む、散剤もしくはエアゾール剤の吸入もしくはガス注入による肺投与、気管内投与、および鼻腔内投与;経口投与;または静脈内投与、動脈内投与、腫瘍内投与、皮下投与、腹腔内投与、もしくは筋肉内投与(例えば、注射もしくは注入)を含む非経口投与;あるいは頭蓋内投与(例えば、くも膜下腔内投与もしくは脳室内投与)でもよい。
【0318】
治療用製剤は単位剤形でもよい。このような製剤には、錠剤、丸剤、カプセル、散剤、顆粒剤、水もしくは非水性媒体に溶解した溶液もしくは懸濁液、または坐剤が含まれる。錠剤などの固形組成物では、主要な有効成分が薬学的担体と混合されている。従来の錠剤化成分には、コーンスターチ、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、またはゴム、および希釈剤(例えば、水)が含まれる。これらを用いて、本発明の化合物またはその無毒な薬学的に許容される塩の均質な混合物を含有する固体の予備処方組成物を形成することができる。次いで、固体の予備処方組成物は上述のタイプの単位剤形にさらに分けられる。長期作用という利点を与える剤形を得るために、製剤または組成物の錠剤、丸剤などがコーティングされてもよいか、または他の方法で調合されてもよい。例えば、錠剤または丸剤は内部組成物が外部成分によって覆われてもよい。さらに、崩壊に抵抗するよう働いて、内部成分がそのまま胃を通過するのを可能にするか、またはその放出を遅らせることができる腸溶層によって、2つの成分は分離されてもよい。このような腸溶層またはコーティングには様々な材料を使用することができる。このような材料には、多くのポリマー酸、ならびにポリマー酸と、セラック、セチルアルコール、および酢酸セルロースのような材料との混合物が含まれる。
【0319】
本明細書に記載のTIGIT結合物質はまたマイクロカプセルの中に封入することもできる。このようなマイクロカプセルは、例えば、コアセルベーション技法または界面重合法によって調製され、それぞれ、例えば、Remington, The Science and Practice of Pharmacy, 22
nd Edition, 2012, Pharmaceutical Press, London.に記載のように、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルを、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)の中に、またはマクロエマルジョンの中に入れる。
【0320】
ある特定の態様では、薬学的製剤には、リポソームと複合体化した本発明の作用物質が含まれる。リポソームを生成する方法は当業者に公知である。例えば、リポソームの中には、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を用いた逆相蒸発によって作製できるものもある。規定された孔径のフィルターに通してリポソームを押し出すことにより、望ましい直径を有するリポソームを得ることができる。
【0321】
ある特定の態様では、本明細書に記載のTIGIT結合物質を含む徐放性調製物を生成することができる。徐放性調製物の適切な例には、作用物質を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、そのマトリックスは、成形された物品(例えば、フィルムまたはマイクロカプセル)の形をしている。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル、例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール)、ポリ乳酸、L-グルタミン酸と7エチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドで構成される注射可能なミクロスフェア)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ならびにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。
【0322】
V.選択された態様
態様1において、TIGITの細胞外ドメインに特異的に結合する単離された抗体であって、(a)
[この文献は図面を表示できません]
を含む重鎖CDR1、
[この文献は図面を表示できません]
を含む重鎖CDR2、および
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を含む重鎖CDR3、ならびに/または(b)
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を含む軽鎖CDR1、
[この文献は図面を表示できません]
を含む軽鎖CDR2、および
[この文献は図面を表示できません]
を含む軽鎖CDR3を含む、単離された抗体。
【0323】
態様2において、態様1の抗体は、(a)
[この文献は図面を表示できません]
を含む重鎖CDR1、
[この文献は図面を表示できません]
を含む重鎖CDR2、および
[この文献は図面を表示できません]
を含む重鎖CDR3、ならびに/または(b)
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を含む軽鎖CDR1、DALKLAS(SEQ ID NO:11)を含む軽鎖CDR2、および
[この文献は図面を表示できません]
を含む軽鎖CDR3を含む。
【0324】
態様3において、態様1の抗体は、(a)
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を含む重鎖CDR1、
[この文献は図面を表示できません]
を含む重鎖CDR2、および
[この文献は図面を表示できません]
を含む重鎖CDR3;ならびに/または(b)
[この文献は図面を表示できません]
を含む軽鎖CDR1、RASTLAS(SEQ ID NO:15)を含む軽鎖CDR2、および
[この文献は図面を表示できません]
を含む軽鎖CDR3を含む。
【0325】
態様4において、TIGITに特異的に結合する単離された抗体であって、(a)SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:19、もしくはSEQ ID NO:32と少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖可変領域;および/または(b)SEQ ID NO:18もしくはSEQ ID NO:20と少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む、単離された抗体。
【0326】
態様5において、態様1〜4のいずれか1つの抗体は、(a)SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:19、もしくはSEQ ID NO:32と少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変領域;および/または(b)SEQ ID NO:18もしくはSEQ ID NO:20と少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。
【0327】
態様6において、態様5の抗体は、(a)SEQ ID NO:17を含む重鎖可変領域;および(b)SEQ ID NO:18を含む軽鎖可変領域を含む。
【0328】
態様7において、態様5の抗体は、(a)SEQ ID NO:19を含む重鎖可変領域;および(b)SEQ ID NO:20を含む軽鎖可変領域を含む。
【0329】
態様8において、態様5の抗体は、(a)SEQ ID NO:32を含む重鎖可変領域;および(b)SEQ ID NO:20を含む軽鎖可変領域を含む。
【0330】
態様9において、態様1〜8のいずれか1つの抗体はモノクローナル抗体である。
【0331】
態様10において、態様1〜9のいずれか1つの抗体はヒト化抗体である。
【0332】
態様11において、態様1〜9のいずれか1つの抗体はヒト抗体である。
【0333】
態様12において、態様1〜10のいずれか1つの抗体は組換え抗体またはキメラ抗体である。
【0334】
態様13において、態様1〜12のいずれか1つの抗体は二重特異性抗体である。
【0335】
態様14において、態様1〜13のいずれか1つの抗体は、抗原結合部位を含む抗体断片である。
【0336】
態様15において、態様1〜13のいずれか1つの抗体はIgG抗体である。
【0337】
態様16において、態様15の抗体は、IgG1抗体、IgG2抗体、またはIgG4抗体である。
【0338】
態様17において、抗体は、(a)SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:34、およびSEQ ID NO:56からなる群より選択される重鎖アミノ酸配列、ならびに(b)SEQ ID NO:28およびSEQ ID NO:30からなる群より選択される軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0339】
態様18において、態様17の抗体は、SEQ ID NO:26の重鎖アミノ酸配列、およびSEQ ID NO:28の軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0340】
態様19において、態様17の抗体は、SEQ ID NO:27の重鎖アミノ酸配列、およびSEQ ID NO:28の軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0341】
態様20において、態様17の抗体は、SEQ ID NO:29の重鎖アミノ酸配列、およびSEQ ID NO:30の軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0342】
態様21において、態様17の抗体は、SEQ ID NO:34の重鎖アミノ酸配列、およびSEQ ID NO:30の軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0343】
態様22において、態様17の抗体は、SEQ ID NO:56の重鎖アミノ酸配列、およびSEQ ID NO:30の軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0344】
態様23において、抗体は、313R11、313R12、313R14、313R19、および313R20からなる群より選択される抗体に由来する重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。
【0345】
態様24において、抗体は、313R11、313R12、313R14、313R19、および313R20からなる群より選択される。
【0346】
態様25において、抗体は、PTA-122180としてATCCに寄託されたプラスミドによってコードされる重鎖可変領域を含む。
【0347】
態様26において、抗体は、PTA-122181としてATCCに寄託されたプラスミドによってコードされる軽鎖可変領域を含む。
【0348】
態様27において、抗体は、PTA-121180としてATCCに寄託されたプラスミドによってコードされる重鎖可変領域を含むポリペプチドを含む。
【0349】
態様28において、抗体は、PTA-122181としてATCCに寄託されたプラスミドによってコードされる軽鎖可変領域を含むポリペプチドを含む。
【0350】
態様29において、抗体は、PTA-122180としてATCCに寄託されたプラスミドによってコードされる重鎖可変領域、およびPTA-122181としてATCCに寄託されたプラスミドによってコードされる軽鎖可変領域を含む。
【0351】
態様30において、抗体は、PTA-122180としてATCCに寄託されたプラスミドによって、およびPTA-122181としてATCCに寄託されたプラスミドによってコードされるポリペプチドを含む。
【0352】
態様31において、単離された抗体は、TIGITとの特異的結合について、態様1〜30のいずれか1つの抗体と競合する。
【0353】
態様32において、態様1〜30のいずれか1つの抗体と同じTIGIT上のエピトープに結合する、単離された抗体。
【0354】
態様33において、態様1〜30のいずれか1つの抗体が結合するTIGIT上のエピトープと重複するTIGIT上のエピトープに結合する、単離された抗体。
【0355】
態様34において、TIGITとポリオウイルス受容体(PVR)との結合を阻害する、態様1〜33のいずれか1つの抗体。
【0356】
態様35において、TIGITとPVRとの間の相互作用を阻害またはブロックする、態様1〜33のいずれか1つの抗体。
【0357】
態様36において、TIGITシグナル伝達を阻害する、態様1〜33のいずれか1つの抗体。
【0358】
態様37において、TIGITを介したシグナル伝達のアンタゴニストである、態様1〜33のいずれか1つの抗体。
【0359】
態様38において、TIGIT活性化を阻害する、態様1〜33のいずれか1つの抗体。
【0360】
態様39において、TIGITのリン酸化を阻害する、態様1〜33のいずれか1つの抗体。
【0361】
態様40において、TIGITの細胞表面発現を減少させる、態様1〜33のいずれか1つの抗体。
【0362】
態様41において、免疫応答を誘導および/または増強する、態様1〜33のいずれか1つの抗体。
【0363】
態様42において、免疫応答が腫瘍または腫瘍細胞に向けられている、態様41の抗体。
【0364】
態様43において、免疫応答がウイルスまたはウイルス感染細胞に向けられている、態様41の抗体。
【0365】
態様44において、細胞性免疫を増大させる、態様1〜33のいずれか1つの抗体。
【0366】
態様45において、T細胞活性を増大させる、態様1〜33のいずれか1つの抗体。
【0367】
態様46において、細胞溶解性T細胞(CTL)活性を増大させる、態様1〜33のいずれか1つの抗体。
【0368】
態様47において、ナチュラルキラー(NK)細胞活性を増大させる、態様1〜33のいずれか1つの抗体。
【0369】
態様48において、IL-2産生、および/またはIL-2産生細胞の数を増大させる、態様1〜33のいずれか1つの抗体。
【0370】
態様49において、IFN-γ産生、および/もしくはIFN-γ産生細胞の数を増大させる、態様1〜33のいずれか1つの抗体。
【0371】
態様50において、Th1型免疫応答を増大させる、態様1〜33のいずれか1つの抗体。
【0372】
態様51において、IL-4産生、および/もしくはIL-4産生細胞の数を減少させる、態様1〜33のいずれか1つの抗体。
【0373】
態様52において、IL-10、および/もしくはIL-10産生細胞の数を減少させる、態様1〜33のいずれか1つの抗体。
【0374】
態様53において、Th2型免疫応答を減少させる、態様1〜33のいずれか1つの抗体。
【0375】
態様54において、調節性T細胞(Treg)の抑制活性を阻害しかつ/または減少させる、態様1〜33のいずれか1つの抗体。
【0376】
態様55において、骨髄由来抑制細胞(MDSC)の抑制活性を阻害しかつ/または減少させる、態様1〜33のいずれか1つの抗体。
【0377】
態様56において、腫瘍成長を阻害する、態様1〜55のいずれか1つの抗体。
【0378】
態様57において、ヘテロ二量体作用物質は、態様1〜33のいずれか1つの抗体を含む。
【0379】
態様58において、二重特異性作用物質は、(a)TIGITに特異的に結合する第1のアーム、および(b)第2のアームを含み、第1のアームは、態様1〜33のいずれか1つの抗体を含む。
【0380】
態様59において、第2のアームが、抗体に由来する抗原結合部位を含む、態様58の二重特異性作用物質。
【0381】
態様60において、第2のアームが、PD-1、PD-L1、CTLA4、TIM-3、LAG-3、OX-40、またはGITRに特異的に結合する、態様58の二重特異性作用物質。
【0382】
態様61において、第2のアームが腫瘍抗原に特異的に結合する、態様58の二重特異性作用物質。
【0383】
態様62において、第2のアームが免疫応答刺激作用物質を含む、態様58の二重特異性作用物質。
【0384】
態様63において、免疫応答刺激作用物質が、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン3(IL-3)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン15(IL-15)、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、4-1BBリガンド、GITRL、OX-40L、抗CD3抗体、抗CTLA4抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗GITR抗体、抗OX-40抗体、抗LAG-3抗体、および抗TIM-3抗体からなる群より選択される、態様62の二重特異性作用物質。
【0385】
態様64において、第1のアームが第1のCH3ドメインを含み、第2のアームが第2のCH3ドメインを含み、それぞれのCH3ドメインがヘテロ二量体の形成を促進するように改変されている、態様58〜63のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0386】
態様65において、第1のCH3ドメインおよび第2のCH3ドメインが静電効果に基づいて改変されている、態様64の二重特異性作用物質。
【0387】
態様66において、第1のアームが、SEQ ID NO:41の位置253および292に対応する位置にアミノ酸置換を有する第1のヒトIgG1定常領域を含み、該アミノ酸がグルタミン酸またはアスパラギン酸で置き換えられており、第2のアームが、SEQ ID NO:41の位置240および282に対応する位置にアミノ酸置換を有する第2のヒトIgG1定常領域を含み、該アミノ酸がリジンで置き換えられている、態様58〜63のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0388】
態様67において、第1のアームが、SEQ ID NO:41の位置240および282に対応する位置にアミノ酸置換を有する第1のヒトIgG1定常領域を含み、該アミノ酸がリジンで置き換えられており、第2のアームが、SEQ ID NO:41の位置253および292に対応する位置にアミノ酸置換を有する第2のヒトIgG1定常領域を含み、該アミノ酸がグルタミン酸またはアスパラギン酸で置き換えられている、態様58〜63のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0389】
態様68において、第1のアームが、SEQ ID NO:42の位置249および288に対応する位置にアミノ酸置換を有する第1のヒトIgG2定常領域を含み、該アミノ酸がグルタミン酸またはアスパラギン酸で置き換えられており、第2のアームが、SEQ ID NO:42の位置236および278に対応する位置にアミノ酸置換を有する第2のヒトIgG2定常領域を含み、該アミノ酸がリジンで置き換えられている、態様58〜63のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0390】
態様69において、第1のアームが、SEQ ID NO:42の位置236および278に対応する位置にアミノ酸置換を有する第1のヒトIgG2定常領域を含み、該アミノ酸がリジンで置き換えられており、第2のアームが、SEQ ID NO:42の位置249および288に対応する位置にアミノ酸置換を有する第2のヒトIgG2定常領域を含み、該アミノ酸がグルタミン酸またはアスパラギン酸で置き換えられている、態様58〜63のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0391】
態様70において、第1のCH3ドメインおよび第2のCH3ドメインがノブ-イントゥー-ホール法を用いて改変されている、態様64の二重特異性作用物質。
【0392】
態様71において、TIGITとPVRとの結合を阻害する、態様58〜70のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0393】
態様72において、TIGITとPVRとの間の相互作用を阻害またはブロックする、態様58〜70のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0394】
態様73において、TIGITシグナル伝達を阻害する、態様58〜70のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0395】
態様74において、TIGITを介したシグナル伝達のアンタゴニストである、態様58〜70のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0396】
態様75において、TIGIT活性化を阻害する、態様58〜70のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0397】
態様76において、TIGITのリン酸化を阻害する、態様58〜70のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0398】
態様77において、TIGITの細胞表面発現を減少させる、態様58〜70のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0399】
態様78において、免疫応答を誘導および/または増強する、態様58〜70のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0400】
態様79において、免疫応答が腫瘍または腫瘍細胞に向けられている、態様78の二重特異性作用物質。
【0401】
態様80において、免疫応答がウイルスまたはウイルス感染細胞に向けられている、態様78の二重特異性作用物質。
【0402】
態様81において、細胞性免疫を増大させる、態様58〜70のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0403】
態様82において、T細胞活性を増大させる、態様58〜70のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0404】
態様83において、CTL活性を増大させる、態様58〜70のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0405】
態様84において、NK細胞活性を増大させる、態様58〜70のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0406】
態様85において、IL-2産生、および/またはIL-2産生細胞の数を増大させる、態様58〜70のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0407】
態様86において、IFN-γ産生、および/もしくはIFN-γ産生細胞の数を増大させる、態様58〜70のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0408】
態様87において、Th1型免疫応答を増大させる、態様58〜70のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0409】
態様88において、IL-4産生、および/もしくはIL-4産生細胞の数を減少させる、態様58〜70のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0410】
態様89において、IL-10、および/もしくはIL-10産生細胞の数を減少させる、態様58〜70のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0411】
態様90において、Th2型免疫応答を減少させる、態様58〜70のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0412】
態様91において、Tregの抑制活性を阻害しかつ/または減少させる、態様58〜70のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0413】
態様92において、MDSCの抑制活性を阻害しかつ/または減少させる、態様58〜70のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0414】
態様93において、腫瘍成長を阻害する、態様58〜92のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0415】
態様94において、ポリペプチドは、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:55、およびSEQ ID NO:56からなる群より選択される配列を含む。
【0416】
態様95において、細胞は、態様1〜94のいずれか1つの抗体、二重特異性作用物質、またはポリペプチドを含むかまたは産生する。
【0417】
態様96において、組成物は、態様1〜94のいずれか1つの抗体、二重特異性作用物質、またはポリペプチドを含む。
【0418】
態様97において、薬学的組成物は、態様1〜94のいずれか1つの抗体、二重特異性作用物質、またはポリペプチドと、薬学的に許容される担体とを含む。
【0419】
態様98において、単離されたポリヌクレオチド分子はポリヌクレオチドを含み、該ポリヌクレオチドは、態様1〜94のいずれか1つの抗体、二重特異性作用物質、またはポリペプチドをコードする。
【0420】
態様99において、ベクターは、態様98のポリヌクレオチドを含む。
【0421】
態様100において、単離された細胞は、態様98のポリヌクレオチドまたは態様99のベクターを含む。
【0422】
態様101において、態様1〜94のいずれか1つの抗体、二重特異性作用物質、またはポリペプチドの治療的有効量を投与する工程を含む、対象において免疫応答を誘導するか、活性化するか、促進するか、増大させるか、増強するか、または延長する方法。
【0423】
態様102において、態様1〜33のいずれか1つの抗体の治療的有効量を投与する工程を含む、対象において免疫応答を誘導するか、活性化するか、促進するか、増大させるか、増強するか、または延長する方法。
【0424】
態様103において、免疫応答が腫瘍またはがんに対する免疫応答である、態様101または態様102の方法。
【0425】
態様104において、腫瘍細胞を、有効量の態様1〜94のいずれか1つの抗体、二重特異性作用物質、またはポリペプチドと接触させる工程を含む、腫瘍細胞の増殖を阻害する方法。
【0426】
態様105において、態様1〜94のいずれか1つの抗体、二重特異性作用物質、またはポリペプチドの治療的有効量を対象に投与する工程を含む、対象において腫瘍成長を阻害する方法。
【0427】
態様106において、態様1〜33のいずれか1つの抗体の治療的有効量を対象に投与する工程を含む、対象において腫瘍成長を阻害する方法。
【0428】
態様107において、腫瘍または腫瘍細胞が、結腸直腸腫瘍、卵巣腫瘍、膵臓腫瘍、肺腫瘍、肝臓腫瘍、乳房腫瘍、腎臓腫瘍、前立腺腫瘍、胃腸腫瘍、メラノーマ、子宮頸部腫瘍、膀胱腫瘍、グリア芽細胞腫、および頭頚部腫瘍からなる群より選択される、態様103〜106のいずれか1つの方法。
【0429】
態様108において、態様1〜94のいずれか1つの抗体、二重特異性作用物質、またはポリペプチドの治療的有効量を対象に投与する工程を含む、対象においてがんを処置する方法。
【0430】
態様109において、態様1〜33のいずれか1つの抗体の治療的有効量を対象に投与する工程を含む、対象においてがんを処置する方法。
【0431】
態様110において、がんが、結腸直腸がん、卵巣がん、膵臓がん、肺がん、肝臓がん、乳がん、腎臓がん、前立腺がん、胃腸がん、メラノーマ、子宮頚がん、膀胱がん、グリア芽細胞腫、および頭頚部がんからなる群より選択される、態様108または態様109の方法。
【0432】
態様111において、少なくとも1種類のさらなる治療用物質を投与する工程をさらに含む、態様101〜110のいずれか1つの方法。
【0433】
態様112において、さらなる治療用物質が化学療法剤である、態様111の方法。
【0434】
態様113において、さらなる治療用物質が抗体である、態様111の方法。
【0435】
態様114において、さらなる治療用物質が、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体、抗LAG-3抗体、または抗TIM-3抗体である、態様111の方法。
【0436】
態様115において、さらなる治療用物質が免疫応答刺激作用物質である、態様111の方法。
【0437】
態様116において、免疫応答刺激作用物質が、GM-CSF、M-CSF、G-CSF、IL-2、IL-3、IL-12、IL-15、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、4-1BBリガンド、GITRL、OX-40リガンド、抗CD3抗体、抗CTLA4抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗GITR抗体、抗OX-40抗体、抗LAG-3抗体、および抗TIM-3抗体からなる群より選択される、態様115の方法。
【0438】
態様117において、さらなる治療用物質が、Notch経路、Wnt経路、またはRSPO/LGR経路の阻害物質である、態様111の方法。
【0439】
態様118において、対象がヒトである、態様101〜103または105〜117のいずれか1つの方法。
【0440】
態様119において、対象の腫瘍またはがんが取り除かれている、態様101〜103または105〜118のいずれか1つの方法。
【0441】
態様120において、腫瘍またはがんがPD-L1を発現する、態様101〜119のいずれか1つの方法。
【0442】
態様121において、腫瘍またはがんにおいてPD-L1発現レベルを決定する工程をさらに含む、態様101〜120のいずれか1つの方法。
【0443】
態様122において、PD-L1発現レベルを決定する工程が、抗体で処置される前に、または抗体と接触される前に行われる、態様121の方法。
【0444】
態様123において、腫瘍またはがんのPD-L1発現レベルが高い場合に、抗体、二重特異性作用物質、またはポリペプチドが(a)対象に投与されるか、または(b)腫瘍もしくは腫瘍細胞と接触される、態様121または態様122の方法。
【0445】
態様124において、ATCCに寄託され、指定番号PTA-122180が付与された、プラスミド。
【0446】
態様125において、ATCCに寄託され、指定番号PTA-122181が付与された、プラスミド。
【0447】
態様126において、ヒトTIGITの細胞外ドメインに特異的に結合する単離された抗体であって、(a)TSDYAWN(SEQ ID NO:57)を含む重鎖CDR1、
[この文献は図面を表示できません]
を含む重鎖CDR2、および
[この文献は図面を表示できません]
を含む重鎖CDR3、ならびに/または(b)
[この文献は図面を表示できません]
を含む軽鎖CDR1、SASYRYT(SEQ ID NO:61)を含む軽鎖CDR2、およびQQHYSTP(SEQ ID NO:62)を含む軽鎖CDR3を含む、単離された抗体。
【0448】
態様127において、ヒトTIGITに特異的に結合する単離された抗体であって、(a)SEQ ID NO:63もしくはSEQ ID NO:67と少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖可変領域;および/または(b)SEQ ID NO:64もしくはSEQ ID NO:68と少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む、単離された抗体。
【0449】
態様128において、(a)SEQ ID NO:63もしくはSEQ ID NO:67と少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変領域;および/または(b)SEQ ID NO:64もしくはSEQ ID NO:68と少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む、態様126または態様127の抗体。
【0450】
態様129において、SEQ ID NO:63を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:64を含む軽鎖可変領域を含む、態様128の抗体。
【0451】
態様130において、SEQ ID NO:67を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:68を含む軽鎖可変領域を含む、態様128の抗体。
【0452】
態様131において、モノクローナル抗体である、態様126〜130のいずれか1つの抗体。
【0453】
態様132において、ヒト化抗体である、態様126〜128、130、または131のいずれか1つの抗体。
【0454】
態様133において、ヒト抗体である、態様126の抗体。
【0455】
態様134において、組換え抗体またはキメラ抗体である、態様126〜133のいずれか1つの抗体。
【0456】
態様135において、二重特異性抗体である、態様126〜134のいずれか1つの抗体。
【0457】
態様136において、抗原結合部位を含む抗体断片である、態様126〜135のいずれか1つの抗体。
【0458】
態様137において、IgG抗体である、態様126〜136のいずれか1つの抗体。
【0459】
態様138において、IgG1抗体、IgG2抗体、またはIgG4抗体である、態様137の抗体。
【0460】
態様139において、SEQ ID NO:70の重鎖アミノ酸配列およびSEQ ID NO:72の軽鎖アミノ酸配列を含む、抗体。
【0461】
態様140において、抗体313M32と同じ重鎖可変領域アミノ酸配列および軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む、抗体。
【0462】
態様141において、PTA-122346としてATCCに寄託されたプラスミドによってコードされる重鎖可変領域を含む、抗体。
【0463】
態様142において、PTA-122347としてATCCに寄託されたプラスミドによってコードされる軽鎖可変領域を含む、抗体。
【0464】
態様143において、PTA-122347としてATCCに寄託されたプラスミドによってコードされる軽鎖を含む、抗体。
【0465】
態様144において、PTA-122346としてATCCに寄託されたプラスミドによってコードされる重鎖可変領域と、PTA-122347としてATCCに寄託されたプラスミドによってコードされる軽鎖可変領域とを含む、抗体。
【0466】
態様145において、PTA-122346としてATCCに寄託されたプラスミドによってコードされる重鎖可変領域と、PTA-122347としてATCCに寄託されたプラスミドによってコードされる軽鎖とを含む、抗体。
【0467】
態様146において、(a)マウスTIGIT;(b)ラットTIGIT;(c)カニクイザルTIGIT;および/または(d)アカゲザルTIGITに結合しない、態様126〜145のいずれか1つの抗体。
【0468】
態様147において、TIGITとの特異的結合について、態様126〜146のいずれか1つの抗体と競合する、単離された抗体。
【0469】
態様148において、態様126〜146のいずれか1つの抗体と同じTIGIT上のエピトープに結合する、単離された抗体。
【0470】
態様149において、態様126〜146のいずれか1つの抗体が結合するTIGIT上のエピトープと重複するTIGIT上のエピトープに結合する、単離された抗体。
【0471】
態様150において、ヒトTIGITに特異的に結合する単離された抗体であって、(a)SEQ ID NO:79中のアミノ酸;(b)SEQ ID NO:80中のアミノ酸;(c)SEQ ID NO:79中およびSEQ ID NO:80中のアミノ酸;(d)SEQ ID NO:4のアミノ酸Q62およびI109;(e)SEQ ID NO:4のアミノ酸Q62およびT119;(f)SEQ ID NO:4のアミノ酸Q64およびI109;(g)SEQ ID NO:4のアミノ酸Q64およびT119;(h)SEQ ID NO:4のアミノ酸Q62、Q64、およびI109;(i)SEQ ID NO:4のアミノ酸Q62、Q64、およびT119;(j)SEQ ID NO:4のアミノ酸Q62、I109、およびT119;(k)SEQ ID NO:4のアミノ酸Q64、I109、およびT119;または(l)SEQ ID NO:4のアミノ酸Q62、Q64、I109、およびT119を含むエピトープに結合する、単離された抗体。
【0472】
態様151において、SEQ ID NO:79中およびSEQ ID NO:80中のアミノ酸を含むエピトープに結合する、態様150の抗体。
【0473】
態様152において、SEQ ID NO:4のアミノ酸N58、E60、Q62、Q64、L65、F107、I109、H111、T117、T119、およびG120の少なくとも1つを含むエピトープに結合する、態様150の抗体。
【0474】
態様153において、エピトープがコンホメーションエピトープである、態様150〜152のいずれか1つの抗体。
【0475】
態様154において、TIGITとポリオウイルス受容体(PVR)との結合を阻害する、態様126〜153のいずれか1つの抗体。
【0476】
態様155において、TIGITとPVRとの間の相互作用を阻害またはブロックする、態様126〜153のいずれか1つの抗体。
【0477】
態様156において、TIGITシグナル伝達を阻害する、態様126〜153のいずれか1つの抗体。
【0478】
態様157において、TIGITを介したシグナル伝達のアンタゴニストである、態様126〜153のいずれか1つの抗体。
【0479】
態様158において、TIGIT活性化を阻害する、態様126〜153のいずれか1つの抗体。
【0480】
態様159において、TIGITのリン酸化を阻害する、態様126〜153のいずれか1つの抗体。
【0481】
態様160において、TIGITの細胞表面発現を減少させる、態様126〜153のいずれか1つの抗体。
【0482】
態様161において、免疫応答を誘導および/または増強する、態様126〜153のいずれか1つの抗体。
【0483】
態様162において、免疫応答が腫瘍または腫瘍細胞に向けられている、態様161の抗体。
【0484】
態様163において、細胞性免疫を増大させる、態様126〜153のいずれか1つの抗体。
【0485】
態様164において、T細胞活性を増大させる、態様126〜153のいずれか1つの抗体。
【0486】
態様165において、細胞溶解性T細胞(CTL)活性を増大させる、態様126〜153のいずれか1つの抗体。
【0487】
態様166において、ナチュラルキラー(NK)細胞活性を増大させる、態様126〜153のいずれか1つの抗体。
【0488】
態様167において、IL-2産生、および/またはIL-2産生細胞の数を増大させる、態様126〜153のいずれか1つの抗体。
【0489】
態様168において、IFN-γ産生、および/またはIFN-γ産生細胞の数を増大させる、態様126〜153のいずれか1つの抗体。
【0490】
態様169において、Th1型免疫応答を増大させる、態様126〜153のいずれか1つの抗体。
【0491】
態様170において、IL-4産生、および/またはIL-4産生細胞の数を減少させる、態様126〜153のいずれか1つの抗体。
【0492】
態様171において、IL-10産生、および/またはIL-10産生細胞の数を減少させる、態様126〜153のいずれか1つの抗体。
【0493】
態様172において、Th2型免疫応答を減少させる、態様126〜153のいずれか1つの抗体。
【0494】
態様173において、調節性T細胞(Treg)の抑制活性を阻害しかつ/または減少させる、態様126〜153のいずれか1つの抗体。
【0495】
態様174において、骨髄由来抑制細胞(MDSC)の抑制活性を阻害しかつ/または減少させる、態様126〜153のいずれか1つの抗体。
【0496】
態様175において、腫瘍成長を阻害する、態様126〜174のいずれか1つの抗体。
【0497】
態様176において、態様126〜146のいずれか1つの抗体を含む、ヘテロ二量体作用物質。
【0498】
態様177において、(a)TIGITに特異的に結合する第1のアーム、および(b)第2のアームを含み、第1のアームが、態様126〜146のいずれか1つの態様の抗体を含む、二重特異性作用物質。
【0499】
態様178において、第2のアームが、抗体に由来する抗原結合部位を含む、態様177の二重特異性作用物質。
【0500】
態様179において、第2のアームが、PD-1、PD-L1、CTLA-4、TIM-3、LAG-3、OX-40、またはGITRに特異的に結合する、クレーム177の二重特異性作用物質。
【0501】
態様180において、第2のアームが腫瘍抗原に特異的に結合する、態様177の二重特異性作用物質。
【0502】
態様181において、第2のアームが免疫療法剤を含む、態様177の二重特異性作用物質。
【0503】
態様182において、免疫療法剤が、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン3(IL-3)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン15(IL-15)、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、4-1BBリガンド、GITRL、OX-40L、抗CD3抗体、抗CTLA4抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗GITR抗体、抗OX-40抗体、抗4-1BB抗体、抗LAG-3抗体、および抗TIM-3抗体からなる群より選択される、態様181の二重特異性作用物質。
【0504】
態様183において、第1のアームが第1のCH3ドメインを含み、第2のアームが第2のCH3ドメインを含み、それぞれのCH3ドメインがヘテロ二量体の形成を促進するように改変されている、態様177〜182のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0505】
態様184において、第1のCH3ドメインおよび第2のCH3ドメインが静電効果に基づいて改変されている、態様183の二重特異性作用物質。
【0506】
態様185において、第1のアームが、SEQ ID NO:41の位置253および292に対応する位置にアミノ酸置換を有する第1のヒトIgG1定常領域を含み、該アミノ酸がグルタミン酸またはアスパラギン酸で置き換えられており、第2のアームが、SEQ ID NO:41の位置240および282に対応する位置にアミノ酸置換を有する第2のヒトIgG1定常領域を含み、該アミノ酸がリジンで置き換えられている、態様177〜182のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0507】
態様186において、第1のアームが、SEQ ID NO:41の位置240および282に対応する位置にアミノ酸置換を有する第1のヒトIgG1定常領域を含み、該アミノ酸がリジンで置き換えられており、第2のアームが、SEQ ID NO:41の位置253および292に対応する位置にアミノ酸置換を有する第2のヒトIgG1定常領域を含み、該アミノ酸がグルタミン酸またはアスパラギン酸で置き換えられている、態様177〜182のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0508】
態様187において、第1のCH3ドメインおよび第2のCH3ドメインがノブ-イントゥー-ホール法を用いて改変されている、態様183の二重特異性作用物質。
【0509】
態様188において、TIGITとPVRとの結合を阻害する、態様177〜187のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0510】
態様189において、TIGITとPVRとの間の相互作用を阻害またはブロックする、態様177〜187のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0511】
態様190において、TIGITシグナル伝達を阻害する、態様177〜187のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0512】
態様191において、TIGITを介したシグナル伝達のアンタゴニストである、態様177〜187のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0513】
態様192において、TIGIT活性化を阻害する、態様177〜187のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0514】
態様193において、TIGITのリン酸化を阻害する、態様177〜187のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0515】
態様194において、TIGITの細胞表面発現を減少させる、態様177〜187のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0516】
態様195において、免疫応答を誘導および/または増強する、態様177〜187のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0517】
態様196において、免疫応答が腫瘍または腫瘍細胞に向けられている、態様195の二重特異性作用物質。
【0518】
態様197において、細胞性免疫を増大させる、態様177〜187のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0519】
態様198において、T細胞活性を増大させる、態様177〜187のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0520】
態様199において、CTL活性を増大させる、態様177〜187のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0521】
態様200において、NK細胞活性を増大させる、態様177〜187のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0522】
態様201において、IL-2産生、および/またはIL-2産生細胞の数を増大させる、態様177〜187のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0523】
態様202において、IFN-γ産生、および/もしくはIFN-γ産生細胞の数を増大させる、態様177〜187のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0524】
態様203において、Th1型免疫応答を増大させる、態様177〜187のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0525】
態様204において、IL-4産生、および/もしくはIL-4産生細胞の数を減少させる、態様177〜187のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0526】
態様205において、IL-10産生、および/またはIL-10産生細胞の数を減少させる、態様177〜187のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0527】
態様206において、Th2型免疫応答を減少させる、態様177〜187のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0528】
態様207において、Tregの抑制活性を阻害しかつ/または減少させる、態様177〜187のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0529】
態様208において、MDSCの抑制活を阻害しかつ/または減少させる、態様177〜187のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0530】
態様209において、腫瘍成長を阻害する、態様177〜208のいずれか1つの二重特異性作用物質。
【0531】
態様210において、SEQ ID NO:63、SEQ ID NO:64、SEQ ID NO:67、SEQ ID NO:68、SEQ ID NO:69、SEQ ID NO:70、SEQ ID NO:71、SEQ ID NO:72、SEQ ID NO:82、およびSEQ ID NO:83からなる群より選択される配列を含む、ポリペプチド。
【0532】
態様211において、態様126〜210のいずれか1つの抗体、二重特異性作用物質、またはポリペプチドを含むかまたは産生する、細胞。
【0533】
態様212において、態様126〜210のいずれか1つの抗体、二重特異性作用物質、またはポリペプチドを含む、組成物。
【0534】
態様213において、態様126〜210のいずれか1つの抗体、二重特異性作用物質、またはポリペプチドと、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【0535】
態様214において、ポリヌクレオチドを含み、該ポリヌクレオチドが、態様126〜210のいずれか1つの抗体、二重特異性作用物質、またはポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチド分子。
【0536】
態様215において、SEQ ID NO:65、SEQ ID NO:66、SEQ ID NO:73、SEQ ID NO:74、SEQ ID NO:75、SEQ ID NO:76、およびSEQ ID NO:84からなる群より選択されるポリヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【0537】
態様216において、態様214または態様215のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【0538】
態様217において、態様214または態様215のポリヌクレオチドを含む、単離された細胞。
【0539】
態様218において、態様216のベクターを含む、単離された細胞。
【0540】
態様219において、態様126〜210のいずれか1つの抗体、二重特異性作用物質、またはポリペプチドの治療的有効量を投与する工程を含む、対象において免疫応答を誘導するか、活性化するか、促進するか、増大させるか、増強するか、または延長する方法。
【0541】
態様220において、態様126〜153のいずれか1つの抗体の治療的有効量を投与する工程を含む、対象において免疫応答を誘導するか、活性化するか、促進するか、増大させるか、増強するか、または延長する方法。
【0542】
態様221において、免疫応答が腫瘍またはがんに対する免疫応答である、態様219または態様220の方法。
【0543】
態様222において、腫瘍細胞を、有効量の態様126〜210のいずれか1つの抗体、二重特異性作用物質、またはポリペプチドと接触させる工程を含む、腫瘍細胞の増殖を阻害する方法。
【0544】
態様223において、態様126〜210のいずれか1つの抗体、二重特異性作用物質、またはポリペプチドの治療的有効量を対象に投与する工程を含む、対象において腫瘍成長を阻害する方法。
【0545】
態様224において、態様126〜153のいずれか1つの抗体の治療的有効量を対象に投与する工程を含む、対象において腫瘍成長を阻害する方法。
【0546】
態様225において、腫瘍または腫瘍細胞が、結腸直腸腫瘍、卵巣腫瘍、膵臓腫瘍、肺腫瘍、肝臓腫瘍、乳房腫瘍、腎臓腫瘍、前立腺腫瘍、胃腸腫瘍、メラノーマ、子宮頸部腫瘍、膀胱腫瘍、グリア芽細胞腫、および頭頚部腫瘍からなる群より選択される、態様221〜224のいずれか1つの方法。
【0547】
態様226において、態様126〜210のいずれか1つの抗体、二重特異性作用物質、またはポリペプチドの治療的有効量を対象に投与する工程を含む、対象においてがんを処置する方法。
【0548】
態様227において、態様126〜153のいずれか1つの抗体の治療的有効量を対象に投与する工程を含む、対象においてがんを処置する方法。
【0549】
態様228において、がんが、結腸直腸がん、卵巣がん、膵臓がん、肺がん、肝臓がん、乳がん、腎臓がん、前立腺がん、胃腸がん、メラノーマ、子宮頚がん、膀胱がん、グリア芽細胞腫、および頭頚部がんからなる群より選択される、態様226または態様227の方法。
【0550】
態様229において、少なくとも1種類のさらなる治療用物質を投与する工程をさらに含む、態様219〜228のいずれか1つの方法。
【0551】
態様230において、さらなる治療用物質が化学療法剤である、態様229の方法。
【0552】
態様231において、さらなる治療用物質が抗体である、態様229の方法。
【0553】
態様232において、さらなる治療用物質が免疫療法剤である、態様229の方法。
【0554】
態様233において、免疫療法剤が、GM-CSF、M-CSF、G-CSF、IL-2、IL-3、IL-12、IL-15、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、4-1BBリガンド、GITRL、OX-40リガンド、抗CD3抗体、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗GITR抗体、抗OX-40抗体、抗4-1BB抗体、抗LAG-3抗体、および抗TIM-3抗体からなる群より選択される、態様232の方法。
【0555】
態様234において、さらなる治療用物質が、Notch経路、Wnt経路、またはRSPO/LGR経路の阻害物質である、態様229の方法。
【0556】
態様235において、対象の腫瘍またはがんが取り除かれている、態様219〜221または223〜234のいずれか1つの方法。
【0557】
態様236において、腫瘍またはがんがPD-L1を発現する、態様221〜235のいずれか1つの方法。
【0558】
態様237において、腫瘍またはがんにおいてPD-L1発現レベルを決定する工程をさらに含む、態様221〜236のいずれか1つの方法。
【0559】
態様238において、PD-L1発現レベルを決定する工程が、抗体で処置される前に、または抗体と接触される前に行われる、態様237の方法。
【0560】
態様239において、腫瘍またはがんのPD-L1発現レベルが高い場合に、抗体、二重特異性作用物質、またはポリペプチドが(a)対象に投与されるか、または(b)腫瘍もしくは腫瘍細胞と接触される、態様236または態様237の方法。
【0561】
態様240において、ATCCに寄託され、指定番号PTA-122346が付与された、プラスミド。
【0562】
態様241において、ATCCに寄託され、指定番号PTA-122347が付与された、プラスミド。
【0563】
態様242において、SEQ ID NO:82の重鎖アミノ酸配列およびSEQ ID NO:72の軽鎖アミノ酸配列を含む、抗体。
【0564】
VI.スクリーニング
本発明は、免疫応答を調整するTIGIT結合物質を同定するためのスクリーニング方法を提供する。一部の態様において、本発明は、免疫応答を調整する、ポリペプチド、抗体、ペプチド、ペプチド模倣体、低分子、化合物、または他の薬物を含むが、これらに限定されない候補作用物質をスクリーニングするための方法を提供する。
【0565】
一部の態様において、免疫応答を調整する候補TIGIT結合物質をスクリーニングする方法は、前記物質が免疫細胞に影響を及ぼすかどうか判定する工程を含む。一部の態様において、免疫応答を調整する候補TIGIT結合物質をスクリーニングする方法は、前記物質が免疫細胞の活性を増大できるかどうか判定する工程を含む。一部の態様において、免疫応答を調整する候補TIGIT結合物質をスクリーニングする方法は、前記物質がCTLおよび/またはNK細胞などの細胞溶解性細胞の活性を増大できるかどうか判定する工程を含む。一部の態様において、免疫応答を調整する候補TIGIT結合物質をスクリーニングする方法は、前記物質がTregまたはMDSCなどの免疫サプレッサー細胞の活性を減少できるかどうか判定する工程を含む。
【0566】
VII.本明細書に記載の作用物質を含むキット
本発明は、本明細書に記載の方法を実施するために使用することができる、本明細書に記載のTIGIT結合物質を含むキットを提供する。ある特定の態様において、キットは、1つまたは複数の容器の中に、少なくとも1種類の精製されたTIGIT結合物質を含む。一部の態様において、キットは、全対照を含む、検出アッセイを実施するのに必要および/または十分な成分、アッセイを実施するための指示、ならびに結果を分析および提示するための任意の必要なソフトウェアを全て備える。当業者は、本発明の開示されたTIGIT結合物質を、当技術分野において周知の確立したキットの形式の1つに容易に組み入れることができることを容易に認識する。
【0567】
さらに、TIGIT結合物質と少なくとも1種類のさらなる治療用物質を含むキットが提供される。ある特定の態様において、第2の(または第3以上の)治療用物質は化学療法剤である。ある特定の態様において、第2の(または第3以上の)治療用物質は抗体である。
【0568】
本開示の態様を、以下の非限定的な実施例を参照してさらに明確にすることができる。以下の非限定的な実施例は、本開示のある特定の抗体の調製と、本開示の抗体を使用する方法を詳述する。本開示の範囲から逸脱することなく、材料と方法の両方に多くの変更を加えることができることは当業者に明らかである。
【実施例】
【0569】
実施例1
抗TIGIT抗体の作製
抗TIGIT抗体は、マウスTIGITの細胞外ドメインを用いてウサギを免疫して作製した。抗体がマウスTIGITとヒトTIGITに結合するかどうか、上清をフローサイトメトリーによってスクリーニングした。さらに特徴決定するために、9つの抗体クローンを選択した(
図1)。これらの抗体が、マウスTIGITとそのカウンターレセプターであるマウスPVRとの相互作用を特異的にブロックできるかどうか、これらの抗体からの上清をスクリーニングした。4つの抗体がTIGIT/PVR相互作用をブロックすることが示された。重要なことに、これらの抗体のうち2つがヒトTIGITに結合することができた(313Rb1および313Rb2)。
【0570】
313Rb1の重鎖可変領域および軽鎖可変領域をマウスIgG1形式にクローニングしてキメラ抗体313R11を作製し、マウスIgG2a形式にクローニングしてキメラ抗体313R12を作製した。313R11および313R12のCDRの配列は、(i)
重鎖
[この文献は図面を表示できません]
、(ii)重鎖
[この文献は図面を表示できません]
、(iii)重鎖
[この文献は図面を表示できません]
、(iv)軽鎖
[この文献は図面を表示できません]
、(v)軽鎖CDR2 DALKLAS(SEQ ID NO:11)、および(vi)軽鎖
[この文献は図面を表示できません]
である。313R11および313R12の重鎖可変領域の配列はSEQ ID NO:17であり、313R11および313R12の軽鎖可変領域の配列はSEQ ID NO:18である。313R11の重鎖の配列はSEQ ID NO:21またはSEQ ID NO:26(シグナル配列を有さない)である。313R12の重鎖の配列はSEQ ID NO:22またはSEQ ID NO:27(シグナル配列を有さない)である。313R11および313R12の軽鎖の配列はSEQ ID NO:23またはSEQ ID NO:28(シグナル配列を有さない)である。
【0571】
313Rb2の重鎖可変領域および軽鎖可変領域をヒトIgG1形式にクローニングして抗体313R14を作製した。CDRを、ヒトTIGITに対する親和性を高めるように改変し、フレームワーク領域を最適化および/またはヒト化して、313R19を含む、いくつかの変種を作製した。313R14および313R19のCDRの配列は、(i)重鎖
[この文献は図面を表示できません]
、(ii)重鎖
[この文献は図面を表示できません]
、(iii)重鎖
[この文献は図面を表示できません]
、(iv)軽鎖
[この文献は図面を表示できません]
、(v)軽鎖CDR2 RASTLAS(SEQ ID NO:15)、および(vi)軽鎖
[この文献は図面を表示できません]
である。313R14の重鎖可変領域の配列はSEQ ID NO:19であり、313R14の軽鎖可変領域の配列はSEQ ID NO:20である。313R19の重鎖可変領域の配列はSEQ ID NO:32であり、313R19の軽鎖可変領域の配列はSEQ ID NO:20である。313R14の重鎖の配列はSEQ ID NO:24またはSEQ ID NO:29(シグナル配列を有さない)である。313R19の重鎖の配列はSEQ ID NO:33またはSEQ ID NO:34(シグナル配列を有さない)である。313R14および313R19の軽鎖の配列はSEQ ID NO:25またはSEQ ID NO:30(シグナル配列を有さない)である。
【0572】
313R19抗体の重鎖可変領域を含むポリペプチドをコードするプラスミドは、ブダペスト条約の規定に基づいて2015年5月27日にアメリカン タイプ カルチャー コレクション(ATCC), 10801 University Boulevard, Manassas, VA, USAに寄託され、PTA-122180と指定された。313R19抗体の軽鎖可変領域を含むポリペプチドをコードするプラスミドは、ブダペスト条約の規定に基づいて2015年5月27日にATCC, 10801 University Boulevard, Manassas, VA, USAに寄託され、PTA-122181と指定された。
【0573】
実施例2
TIGITシグナル伝達およびTIGITリン酸化
本明細書に記載のように、TIGITはカウンターレセプターであるPVRと相互作用した後に、その細胞質テールがリン酸化される。TIGITのリン酸化は、他の公知のシグナル伝達経路に影響を及ぼす下流事象を含むカスケードの始まりである。従って、TIGITリン酸化と、下流タンパク質のリン酸化状態を評価すると、TIGITの機能およびTIGITアンタゴニストの作用についての情報を得ることができる。
【0574】
リアルタイムPCRおよびFACSによって確かめられた場合に、Jurkat CD4+ヒトT細胞株にはヒトTIGIT発現もマウスTIGIT発現も無い(データは示さず)。TIGIT発現細胞株を作製するために、Jurkat細胞を、FLAGおよび緑色蛍光タンパク質(GFP)でタグ化したマウスTIGIT(mTIGIT)を発現するレンチウイルス構築物を発現するレンチウイルス構築物に感染させた。リアルタイムPCRおよび/またはFACSによって確かめられた場合に、E.G7-OVAマウスリンパ腫細胞株にはヒトPVR発現もマウスPVR発現も無い。E.G7-OVA細胞はオボアルブミン(OVA)を構成的に合成および分泌し、E.G7-OVA細胞で免疫したC57BL/6マウスは、OVA 258-276ペプチドに特異的なH-2 K
b拘束(restricted)細胞傷害性リンパ球を生じる。PVR発現細胞株を作製するために、E.G7-OVA細胞を、マウスPVR(mPVR)およびGFPを発現するレンチウイルス構築物に感染させた。FACSAria II機器(BD Biosciences)を用いて、それぞれの感染細胞株からのGFP陽性細胞を選別して96ウェルプレートに入れ、単離された単一細胞を増殖させてクローンにした。単一細胞由来クローンにおけるGFP陽性とmTIGIT発現またはmPVR発現が、FACS分析およびリアルタイムPCRによって確認された(データは示さず)。
【0575】
PVRに応答したTIGITリン酸化を評価するために、細胞株を無血清培地中で37℃で2時間インキュベートした。Jurkat-mTIGIT細胞を親E.G7-OVA細胞またはE.G7-OVA-mPVR細胞と5:1の細胞比で混合し、チロシンホスファスターゼ(phosphastase)阻害物質(10mMオルトバナジン酸ナトリウム, New England Biolabs)の存在下で37℃で5分間インキュベートした。細胞溶解産物を調製し、FLAG-タグ化mTIGITタンパク質を捕捉した抗FLAGコーティング磁気ビーズを用いて免疫沈降させた。免疫沈降物をウエスタンブロット分析によって評価した。リン酸化TIGITの存在を、抗ホスホチロシン抗体(Cell Signaling Technology)を用いて評価した。全TIGITの存在を、抗FLAG抗体(Cell Signaling Technology)を用いることによって評価した。
【0576】
PVRを発現しない細胞と比較して、mPVRを発現する腫瘍細胞に応答したT細胞では、TIGITは高リン酸化されることが観察された(
図2A)。
【0577】
TIGITの影響を受けた可能性のある他のシグナル伝達経路を評価するために、細胞株を無血清培地中で37℃で2時間インキュベートした。Jurkat-mTIGIT細胞を親E.G7-OVA細胞またはE.G7-OVA-mPVR細胞と5:1の細胞比で組み合わせ、37℃で0分間、5分間、15分間、45分間、または60分間インキュベートした。細胞溶解産物を調製し、ウエスタンブロット分析によって評価した。リン酸化したSHP1(SH2含有チロシンホスファターゼ1)およびErk1/2のレベルを、それぞれ、抗ホスホSHP1(Tyr564)抗体および抗ホスホErk1/2(Thr202/Tyr204)抗体を用いて決定した(両方ともCell Signaling Technologyから入手した)。全Erk1/2のレベルを、抗Erk1/2抗体(Cell Signaling Technology)を用いて評価した。SHP1は、JAK/STAT経路を含む、サイトカインを介したシグナル伝達経路の重要な負の制御因子である。これに対して、Erk1/2は、Ras-Raf-MEK-ERKシグナル伝達カスケードに関与するプロテインキナーゼである。
【0578】
図2Bに示したように、TIGIT発現T細胞をmPVR発現腫瘍細胞とインキュベートした場合に、SHP1およびErk1/2は特異的に活性化された。リン酸化によって示されるような活性化は、5分の時点と早い段階で観察され、Erk1/2については45分までに、SHP1については60分までに減少し始めると考えられた。SHP1およびErk1/2は、mTIGITを発現しない親Jurkat T細胞ではmPVRに応答して活性化されなかった(データは示さず)。
【0579】
TIGITアンタゴニストがTIGIT活性を阻害するかどうか研究するために、抗TIGIT抗体の存在下でTIGITリン酸化アッセイを行った。前記のように、Jurkat-mTIGIT細胞を親E.G7-OVA細胞またはE.G7-OVA-mPVR細胞と5:1の細胞比で混合し、10mMオルトバナジン酸ナトリウムと、20μg/ml対照抗体(ポリクローナルマウスIgG; Sigma)、抗TIGIT抗体313R11、抗TIGIT抗体313R12、または抗TIGIT抗体313Rb1の存在下で37℃で5分間インキュベートした。細胞溶解産物を調製し、FLAG-タグ化mTIGITタンパク質を捕捉した抗FLAGコーティング磁気ビーズを用いて免疫沈降させた。免疫沈降物をウエスタンブロット分析によって評価した。リン酸化TIGITの存在を、抗ホスホチロシン抗体を用いて評価した。全TIGITの存在を、抗FLAG抗体を用いることによって評価した。
【0580】
前に示したように、mTIGIT発現Jurkat T細胞をmPVR発現腫瘍細胞と組み合わせた場合に、mTIGITは高リン酸化された。細胞を抗TIGIT抗体の存在下でインキュベートした場合には、mPVRとの相互作用に応答したmTIGITのリン酸化は少なくなった、および/または無くなった。TIGITリン酸化の減少は、抗TIGIT抗体313R12を用いた場合に最も顕著であった(
図3)。
【0581】
TIGITアンタゴニストがTIGITシグナル伝達を阻害するかどうか研究するために、さらなる実験に取りかかった。本明細書に記載の研究と同様に、Jurkat-mTIGIT細胞を親E.G7-OVA細胞またはE.G7-OVA-mPVR細胞と5:1の細胞比で混合し、漸増濃度(0〜40μg/ml)の抗TIGIT抗体313R11、抗TIGIT抗体313R12、または抗TIGIT抗体313Rb1の存在下で37℃で15分間インキュベートした。細胞溶解産物を調製し、ウエスタンブロット分析によって評価した。リン酸化SHP1(SH2含有チロシンホスファターゼ1)およびリン酸化Erk1/2を、それぞれ、抗ホスホSHP1(Tyr562)抗体および抗ホスホErk1/2(Thr202/Tyr204)抗体を用いて決定した。全SHP1のレベルを、抗SHP1抗体を用いて評価した。全Erk1/2のレベルを、抗Erk1/2抗体を用いて評価した。
【0582】
mTIGIT-mPVR相互作用に応答したErk1/2リン酸化は抗TIGIT抗体によって用量依存的にはっきりと阻害された(
図4)。mTIGIT-mPVR相互作用に応答したSHP1リン酸化は抗TIGIT抗体313Rb1および313#11によって用量依存的に阻害された。示された実験では、抗体313R12はSHP1リン酸化に対して弱い効果しかないと考えられた。
【0583】
これらの結果から、抗TIGIT抗体はTIGITの機能を阻害し、下流シグナル伝達経路に影響を及ぼすことが強く示唆される。
【0584】
実施例3
サイトカイン産生のTIGIT阻害
T細胞ハイブリドーマB3Z86/90.14(B3Z)はOVA特異的H-2K
bT細胞受容体(TCR)を安定発現する。B3Z細胞を、マウスTIGIT(mTIGIT)を発現するレンチウイルス構築物に感染させ、単一細胞由来mTIGITクローン(B3Z-mTIGIT)を作製した。E.G7-OVAマウスリンパ腫細胞株はOVAを安定発現し、B3Z細胞上にあるOVA特異的TCRを活性化して、IL-2を分泌させることができる。抗原特異的IL-2分泌に対するmTIGIT/mPVR相互作用の効果を判定するために、12ウェルプレートの中で、親B3Z細胞またはB3Z-mTIGIT細胞を親E.G7-OVAまたはE.G7-OVA-mPVR細胞(前記。実施例2を参照されたい)と2:1の比でインキュベートした。24時間後に、ELISA(R&D Systems)によって、無細胞培養上清中にあるIL-2濃度を測定した。データを、mPVR発現腫瘍細胞に応答した親B3ZまたはB3Z-mTIGIT T細胞によるIL-2分泌と、mPVR陰性腫瘍細胞に応答したIL-2分泌との比で表した。
【0585】
親B3Z T細胞については、OVA提示腫瘍細胞上でのmPVRの発現に関係なく、IL-2分泌は似ていた(すなわち、約1.0の比)。対照的に、mPVR発現腫瘍細胞の存在下でのB3Z-mTIGIT T細胞からのIL-2分泌はmPVR陰性腫瘍細胞の存在下よりも少なかった(すなわち、<1.0の比)(
図5A)。E.G7-OVA細胞と共培養する前に、B3Z-mTIGIT T細胞を20μg/ml抗TIGIT抗体313R11または313R12で前処理した場合には、IL-2産生はもはや阻害されなかった(
図5B)。
【0586】
これらの結果から、IL-2産生の減少により証明されたように、mPVRによるmTIGIT活性化によって、抗原に応答したT細胞活性化が阻害されることが示唆される。さらに、TIGITアンタゴニストによるTIGIT遮断によってTIGIT活性化は阻害され、強力なIL-2産生によって示されたように、TIGITに関連するT細胞活性阻害が小さくなると考えられる。これらのデータから、TIGIT阻害はT細胞抑制の「ブレーキを解除し」、免疫応答を増強することができるという理論が裏付けられる。
【0587】
実施例4
NK細胞による細胞傷害のTIGIT阻害
NK-92ヒトナチュラルキラー(NK)細胞株を、FLAGおよびGFPでタグ化したmTIGITを発現するレンチウイルス構築物に感染させ、前記のようにクローン細胞株(NK-92-mTIGIT)を得た。721.221ヒトB細胞株を、mPVRおよびGFPを発現するレンチウイルス構築物に感染させ、クローン細胞株を作製した(721.221-mPVR)。FACSおよびリアルタイムPCRによって、親721.221細胞にはヒトPVR発現もマウスPVR発現も無いことが確かめられた(データは示さず)。親NK-92細胞またはNK-92-mTIGIT細胞が親721.221または721.221-mPVR腫瘍細胞を溶解する能力を標準的な4時間カルセイン放出アッセイにおいて試験した。NK-92細胞またはNK-92-mTIGIT細胞を96ウェルV底プレートにプレートした。標的である721.221細胞または721-221-mPVR細胞を10μMカルセインAM(Life Technologies)で37℃で1時間、標識し、次いで、NK-92細胞と25:1または12:1のエフェクター:標的比で組み合わせた。37℃で4時間インキュベートした後に、無細胞上清を収集し、カルセイン放出を蛍光光度計によって485nmの励起および535nmの発光で定量した。経過観察実験では、NK-92細胞およびNK-92-mTIGITを20μg/ml抗TIGIT抗体313R11、抗体313R12、または対照抗体の存在下でX分間インキュベートした。次いで、細胞を前記のようにカルセイン放出アッセイにおいて使用した。
【0588】
特異的細胞溶解のパーセントを%溶解=100×(ER-SR)/(MR-SR)として求めた。式中、ER、SR、およびMRは、それぞれ、実験カルセイン放出、自発カルセイン放出、および最大カルセイン放出を表している。自発放出は、培地のみで(すなわち、エフェクター細胞の非存在下で)インキュベートした標的細胞が発した蛍光であるのに対して、最大放出は、等量の10%SDSを用いて標的細胞を溶解することによって求められる。データを、721.221-mPVR標的細胞に対するNK-92細胞(親またはNK-92-mTIGIT)の細胞傷害と、親(mPVR陰性)721.221標的細胞に対するNK-92細胞(親またはNK-92-mTIGIT)の細胞傷害との比で表した。
【0589】
図6Aに示したように、親NK-92細胞については、mPVR陽性およびmPVR陰性721.221標的細胞に対する細胞傷害は似ていた(すなわち、約1.0の比)。対照的に、NK-92-mTIGIT細胞については、mPVR陰性親721.221細胞株に対する細胞傷害と比較して、721.221-mPVR細胞に対する細胞傷害は少なかった(すなわち、<1.0の比)。エフェクター:標的比が25:1または12:1の時に、結果の差異は無かった。NK-92細胞またはNK-92-mTIGIT細胞を細胞傷害アッセイに使用する前に、抗TIGIT抗体313R11または抗体313R12で処理した場合に、細胞を介した細胞傷害の阻害は少なくなった、および/または無くなった(
図6B)。
【0590】
これらの結果から、mPVRによるmTIGIT活性化はNK細胞を介した細胞傷害を阻害することが示唆される。重要なことに、結果から、TIGITアンタゴニストはPVR-TIGIT相互作用を妨げ、NK細胞の細胞傷害能を回復するか、または「ブレーキを解除する」ことができると証明される。
【0591】
実施例5
抗TIGIT抗体によるインビボ腫瘍成長の阻害
マウス結腸腫瘍株CT26.WTを6〜8週齢Balb/cマウスの背面側腹部に皮下移植した(30,000個の細胞/マウス)。腫瘍が約50mm
3の体積に達するまで10日間成長させた。マウスを、0.25mg/マウスの抗TIGIT抗体313R11(mIgG1抗体)、抗TIGIT抗体313R12(mIgG2a抗体)、mIgG1対照抗体、またはmIgG2a対照抗体で処置した(対照抗体の場合、n=10匹/群、試験抗体の場合、20匹/群)。腹腔内注射によってマウスに3週間にわたって週2回、投薬した。腫瘍成長をモニタリングし、10日目、15日目、18日目、22日目、25日目、および29日目に、腫瘍量を電子ノギスを用いて測定した。
【0592】
図7Aに示したように、アイソタイプマッチ対照抗体と比較して、抗TIGIT抗体313R12は腫瘍成長をほぼ75%阻害した。29日目までに、9匹のマウスにおいて腫瘍は検出不可能なレベルに退縮した。アイソタイプマッチ対照抗体と比較して、抗TIGIT抗体313R11は腫瘍成長を約15%しか阻害しなかった。313R12はIgG2a抗体であり、313R11はIgG1抗体であるので、抗体313R11および313R12はIgGアイソタイプの点でしか差はない。これらの結果から、抗体のアイソタイプは抗TIGIT抗体の治療有効性に大きな影響を及ぼす可能性があることが示唆される。マウスIgG1抗体(ヒトIgG2に相当する)と比較して、マウスIgG2抗体(ヒトIgG1抗体に相当する)はADCC活性が高いことが知られており、この生物学的特徴が抗体313R12の強力な抗腫瘍効果に関与している可能性がある。
【0593】
抗TIGIT抗体313R12および対照mIgG2a抗体を用いて実験を繰り返した。前記のように、CT26.WT細胞を6〜8週齢Balb/cマウスの背面側腹部に皮下移植した(30,000個の細胞/マウス)。腫瘍が約55mm
3の体積に達するまで7日間成長させた。マウスを0.25mg/マウスの抗TIGIT抗体313R12またはmIgG2a対照抗体で処置した(n=10/群)。腹腔内注射によってマウスに3週間にわたって週2回、投薬した。腫瘍成長をモニタリングし、7日目、14日目、17日目、21日目、25日目、28日目、および31日目に、腫瘍量を電子ノギスを用いて測定した。
【0594】
以前の研究において観察されたように、抗TIGIT抗体313R12はCT26.WT腫瘍の成長を阻害し、腫瘍成長の阻害は10匹全てのマウスにおいて見られた(
図7B)。さらに、抗体313R12で処置した10匹のマウスのうち9匹の腫瘍は元々の腫瘍サイズから退縮し、処置して2週間後には、8つの腫瘍は検出不可能なレベルに退縮した。この研究では、IgG2抗体対照群において退縮した腫瘍が3つあったが、腫瘍退縮は、未処置の免疫応答性マウスにおいて、特に、腫瘍細胞の出発数が少なければ起こる場合があることが知られている。しかしながら、抗体313R12処置群における完全な成長阻害および/または腫瘍退縮から、抗TIGIT抗体による処置には有意な治療効果があり、これは、対象の免疫応答の調整および/または強化に起因し得ることが証明された。
【0595】
がんに対する成功した免疫療法は長期の抗腫瘍免疫を発生させることを含む。長期免疫が確立したかどうか研究するために、抗TIGIT抗体処置後に、CT26.WT腫瘍が検出不可能なレベルに退縮した、本明細書に記載の研究からのマウスを新鮮なCT26.WT腫瘍細胞に曝露した。完全な腫瘍退縮があった11匹のマウスには、132日目(抗TIGIT抗体313R12を最後に投与して102日後)に、増加した数のCT26.WT細胞(60,000個の細胞/マウス)を注射した。対照として、同数のCT26.WT細胞を用いて10匹のナイーブマウスにCT26.WT細胞を注射した。マウスを処置せず、腫瘍成長をモニタリングし、腫瘍量を電子ノギスを用いて測定した。
【0596】
対照群では、10匹全てのマウスが23日目までに大きな腫瘍を発症し、これらを安楽死させた。対照的に、CT26.WT腫瘍を以前に注射したマウスのうち10匹において腫瘍は成長しなかった。残りのマウスは、注射して14日後に小さな腫瘍成長を発症したが、この腫瘍は21日目に完全に退縮した。次いで、これらの11匹のマウスを、もう一度、150,000個のCT26.WT細胞(初回用量の細胞数の5倍)に再曝露した。再度、対照として、同数のCT26.WT細胞(150,000個の細胞/マウス)を用いて、10匹のナイーブマウスにCT26.WT細胞を注射した。前の実験と同様に、対照群のマウスは10匹全て大きな腫瘍を発症し、これらを22日目に安楽死させた。マウスのうち6匹において腫瘍は成長しなかった。さらに2匹のマウスが小さな腫瘍を発症し、これらの腫瘍は22日目までに完全に退縮した。他の3匹のマウスには小さな腫瘍があり、これらの腫瘍は退縮しつつあるとまたは安定していると考えられた。これらの結果を表3にまとめ、各群において腫瘍がないマウスのパーセントとして示した。
【0597】
(表3)
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1初回腫瘍曝露の後だけ313R12抗体を用いて処置したマウス
【0598】
これらの結果から、抗TIGIT抗体による処置は強力かつ有効な抗腫瘍応答を生じることができると分かる。重要なことに、抗腫瘍応答は腫瘍細胞に対する長期の免疫と保護をもたらすと考えられた。
【0599】
実施例6
抗TIGIT IgG2抗体のエフェクター活性
IgG-Fc領域のグリコシル化は、FcγRI、FcγII、FcγRIII、および補体のC1q成分によって媒介される生物学的活性(すなわち、ADCCおよびCDC)の最適発現に不可欠なことが示されている。例えば、マウスIgG2a抗体重鎖のグリコシル化部位はSEQ ID NO:22のアスパラギン314にある。このアスパラギンがアラニン残基で置換されると抗体は脱グリコシルし、ADCC活性は低減する。位置314にアラニン残基を含む、抗TIGIT抗体313R12抗体の脱グリコシル変種を作製し、313R13と名付けた。
【0600】
抗腫瘍活性に及ぼす脱グリコシルの影響を研究するために、抗TIGIT抗体313R13の活性を抗TIGIT抗体313R12と比較した。CT26.WT細胞を6〜8週齢Balb/cマウスの背面側腹部に移植した(30,000個の細胞/マウス)。腫瘍が約50mm
3の体積に達するまで10日間成長させた。マウスを0.25mg/マウスの抗TIGIT抗体313R12、抗TIGIT抗体313R13、またはmIgG2a対照抗体で処置した(対照抗体の場合、n=10/群、試験抗体の場合、20/群)。腹腔内注射によってマウスに3週間にわたって週2回、投薬した。腫瘍成長をモニタリングし、7日目、10日目、14日目、17日目、および21日目に、腫瘍量を電子ノギスを用いて測定した。
【0601】
図8に示したように、アイソタイプマッチ対照と比較して、抗TIGIT抗体313R12は有意な腫瘍成長の阻害を示した。対照的に、脱グリコシル抗TIGIT抗体313R13は有意な抗腫瘍活性を示さなかった。
【0602】
脱グリコシル抗体のADCC活性は少ないか、または無いと考えられているので、これらの結果から、ADCCは、抗TIGIT抗体313R12の強力な抗腫瘍活性において重大な役割を果たしている可能性があると示唆される。
【0603】
実施例7
IFN-γ、IL-2、IL-4、およびIL-10のエリスポットアッセイ
エリスポットは、サイトカイン分泌細胞を検出するための高感度イムノアッセイである。簡単に述べると、エリスポットアッセイでは、マイクロプレートのウェルにプレコーティングした、望ましいサイトカインに特異的な捕捉抗体を使用する。刺激された細胞をウェルに分散し、あらゆるサイトカイン分泌細胞のすぐ近くにある固定化抗体は、分泌されたサイトカインに結合する。標準的な洗浄工程および適切な検出試薬とのインキュベーションが続く。例えば、ビオチン化検出抗体とそれに続く、アルカリホスファターゼ結合ストレプトアビジンと発色基質溶液の組み合わせが一般的に用いられる。色のついた沈殿物がサイトカイン局在化部位に形成し、スポットとして現れる。それぞれの個々のスポットは個々のサイトカイン分泌細胞を表している。スポットは自動リーダーシステムを用いて計数されてもよく、手作業で顕微鏡を用いて計数されてもよい。一部の態様において、各ウェルの画像は自動リーダーシステムを用いて取り込まれ、定量のために全スポット、スポット面積、または全光学密度(TOD)が用いられる。
【0604】
IFN-γ分泌細胞がマウスIFN-γエリスポットキット(MabTech)を用いて検出された。抗TIGIT抗体313R12で処置したCT26.WT腫瘍担持マウス(n=6)またはアイソタイプマッチ対照抗体で処置したCT26.WT腫瘍担持マウス(n=6)の脾臓から細胞を単離した(実施例5を参照されたい)。マウスIFN-γに特異的な抗体でコーティングした96ウェルプレートに、各処置群の各マウスからの脾細胞(5×10
5/ウェル)を分配した。細胞を腫瘍特異的CD8+T細胞ペプチドAH-1の存在下または非存在下で培養し、48時間インキュベートした。AH-1ペプチド(SPSYVYHQF; SEQ ID NO:31)は、CT26.WT細胞株に内在するエコトロピックマウス白血病プロウイルスのgp70エンベロープタンパク質のH2-L
d-拘束エピトープである。製造業者の説明書に従ってIFN-γ分泌細胞が検出された。Bioreader 6000-F-z機器(BioSys)を用いて画像を取り込み、スポット数、スポット面積、および全光学密度を決定した。結果を全光学密度で示し、データを平均±S.E.Mで表した。
【0605】
図9Aに示したように、抗TIGIT抗体313R12で処置したマウスではIFN-γ分泌細胞は、対照抗体で処置したマウスと比較して有意に増大した。重要なことに、IFN-γ分泌細胞はAH-1ペプチドの存在下でしか増大しなかった。これらの結果から、抗TIGIT抗体313R12は腫瘍特異的CD8+T細胞を活性化したことが分かる。活性化は直接的でもよく、間接的、すなわち、サプレッサー細胞の阻害でもよい。
【0606】
IL-2分泌細胞がマウスIL-2エリスポットキット(MabTech)を用いて検出された。抗TIGIT抗体313R12で処置した腫瘍担持マウス(n=6)またはアイソタイプマッチ対照抗体で処置した腫瘍担持マウス(n=6)の脾臓から細胞を単離した。マウスIL-2に特異的な抗体でコーティングした96ウェルプレートに、各処置群の各マウスからの脾細胞(5×10
5/ウェル)を分配した。細胞を48時間インキュベートした。製造業者の説明書に従ってIL-2分泌細胞が検出された。Bioreader 6000-F-z機器(BioSys)を用いて画像を取り込み、スポット数、スポット面積、および全光学密度を決定した。結果を全光学密度で示し、データを平均±S.E.Mで表した。
【0607】
図9Bに示したように、対照抗体で処置したマウスと比較して、抗TIGIT抗体313R12で処置したマウスではIL-2分泌細胞はわずかに減少した。IL-2分泌細胞は、AH-1ペプチドの存在下または非存在下では同等のレベルまで減少した。
【0608】
IL-4分泌細胞がマウスIL-4エリスポットキット(MabTech)を用いて検出された。抗TIGIT抗体313R12で処置した腫瘍担持マウス(n=6)またはアイソタイプマッチ対照抗体で処置した腫瘍担持マウス(n=6)の脾臓から細胞を単離した。マウスIL-4に特異的な抗体でコーティングした96ウェルプレートに、各処置群の各マウスからの脾細胞(5×10
5/ウェル)を分配した。細胞を48時間インキュベートした。製造業者の説明書に従ってIL-4分泌細胞が検出された。Bioreader 6000-F-z機器(BioSys)を用いて画像を取り込み、スポット数、スポット面積、および全光学密度を決定した。結果を全光学密度で示し、データを平均±S.E.Mで表した。
【0609】
図9Cに示したように、対照抗体で処置したマウスと比較して、抗TIGIT抗体313R12で処置したマウスではIL-4分泌細胞は有意に減少した。
【0610】
IL-10分泌細胞がマウスIL-10エリスポットキット(MabTech)を用いて検出された。抗TIGIT抗体313R12で処置した腫瘍担持マウス(n=6)またはアイソタイプマッチ対照抗体で処置した腫瘍担持マウス(n=6)の脾臓から細胞を単離した。マウスIL-10に特異的な抗体でコーティングした96ウェルプレートに、各処置群の各マウスからの脾細胞(5×10
5/ウェル)を分配した。細胞を48時間インキュベートした。製造業者の説明書に従ってIL-10分泌細胞が検出された。Bioreader 6000-F-z機器(BioSys)を用いて画像を取り込み、スポット数、スポット面積、および全光学密度を決定した。結果を全光学密度で示し、データを平均±S.E.Mで表した。
【0611】
図9Dに示したように、対照抗体で処置したマウスと比較して、抗TIGIT抗体313R12で処置したマウスではIL-10分泌細胞は有意に減少した。
【0612】
IFN-γは、一般的に、NK細胞、Th1 CD4+T細胞、CD8+T細胞、抗原提示細胞、およびB細胞によって産生される。研究から、IFN-γは腫瘍免疫において役割があり、他のサイトカイン、特にIL-12およびIL-2によって媒介される抗腫瘍活性の制御因子である可能性があると示唆されている。従って、IFN-γを増大させる抗TIGIT抗体による処置は抗腫瘍免疫を増強するはずである。
【0613】
IL-4はCD4+Th2細胞によって産生され、ナイーブCD4+T細胞からTh2細胞への分化を誘導する。さらに、IL-4はTh1細胞の発生を阻害する、TNF-αおよびIL-12などのTh1サイトカインの産生を阻害する、ならびにマクロファージ活性化を阻害する。IL-10は一般的にTregおよびヘルパーT細胞によって産生される。IL-10は、元々は、自然免疫細胞の増殖および/または分化を調整し、T細胞、特に、細胞傷害性T細胞の活性化およびエフェクター機能を抑制するTh2サイトカインとして認められた。もっと最近になって、IL-10はいくつかの免疫刺激効果を有することが示され、従って、多面的機能を有すると考えられている。本研究における、抗TIGIT抗体で処置したマウスからIL-4産生細胞およびIL-10産生細胞が有意に減少したことから、TIGITの標的化はTh2応答を阻害することができ、Tregおよび/またはTreg機能を阻害する可能性があると示唆される。
【0614】
実施例8
細胞による細胞傷害アッセイ
T細胞による細胞傷害性アッセイのために、細胞を、前記のCT26.WT腫瘍担持るマウス(実施例5)の脾臓から収集した。細胞を、10%(v/v)胎仔ウシ血清(FBS)、2mM L-グルタミン、100U/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシン(Gibco)を加えたRPMI1640培養培地(Gibco/Life Technologies, Grand Island, NY)が入っている96ウェルV底プレートにプレートした。CT26.WT標的細胞を10μMカルセインAM(Life Technologies)で37℃で1時間、標識し、次いで、脾細胞と50:1のエフェクター:標的(E:T)比で組み合わせた。37℃で4時間インキュベートした後に、無細胞上清を収集し、カルセイン放出を蛍光光度計によって485nmの励起および535nmの発光で定量した。特異的細胞溶解のパーセントを%溶解=100×(ER-SR)/(MR-SR)として求めた。式中、ER、SR、およびMRは、それぞれ、実験カルセイン放出、自発カルセイン放出、および最大カルセイン放出を表している。自発放出は、培地のみで(すなわち、エフェクター細胞の非存在下で)インキュベートした標的細胞が発した蛍光であるのに対して、最大放出は、等量の10%SDSを用いて標的細胞を溶解することによって求められる。
【0615】
図10に示したように、CT26.WT腫瘍担持マウスが抗TIGIT抗体313R12で処置された場合に、CT26.WT腫瘍担持マウスに由来するCD8+細胞傷害性T細胞は、対照抗体で処置したマウスに由来する細胞と比較して増大したCT26.WT標的細胞死滅能力を示した。
【0616】
これらの結果から、抗TIGIT抗体は、抗原特異的な細胞傷害性T細胞活性を増やすことができ、従って、抗腫瘍免疫応答を増強できると示唆される。この細胞傷害性T細胞活性の増大は、抗TIGIT抗体の直接的または間接的な効果、すなわち、サプレッサー細胞の効果によるものである可能性がある。
【0617】
実施例9
調節性T細胞(Treg)アッセイ
調節性T細胞(Treg)はホメオスタシスの維持および自己免疫応答の阻止において必要不可欠な役割を果たしている。Tregは小さなT細胞サブセットであり、そのほとんどがCD4+細胞であり、CD25(IL-2受容体α鎖)と他のTreg細胞関連分子マーカーを発現する。転写因子であるFoxp3は、Treg細胞が発達および機能するための因子であることが認められている。Foxp3は、Treg細胞を規定および同定するための、ならびにTregを他のT細胞亜集団から分離するための特異的マーカーとみなされている。しかしながら、Tregに対するFoxp3の特異性はヒト細胞において問題となっていた。CD4+Treg細胞のほかに、CD8+Treg細胞が別の細胞亜集団に相当し、Foxp3は、CD4+Treg細胞と比較してCD8+Treg細胞が発達および機能するのに、それほど重要でない可能性がある。
【0618】
ナイーブCD4+T細胞またはナイーブCD8+T細胞の増殖に及ぼすTregの効果を判定することによって、抗TIGIT抗体で処置したマウスにおけるTregの機能性を評価した。ナイーブT細胞を、マウスCD3+T細胞濃縮カラム(mouse CD3+ T-cell enrichment column)(R&D Systems)を用いて未処置マウスの脾臓から精製した。これらの精製されたT細胞を5μMバイオレットトラッキングダイ(VTD; Life Technologies)で標識した。細胞増殖を刺激するために、2×10
5個のVTD標識T細胞を、抗CD3抗体および抗CD28抗体でコーティングしたビーズとインキュベートした。抗TIGIT抗体313R12で処置したCT26.WT腫瘍担持マウス(実施例5を参照されたい)(n=6)、またはアイソタイプマッチ対照抗体で処置したCT26.WT腫瘍担持マウス(n=5)の脾臓から、マウスTreg単離キット(mouse Treg isolation kit)(Miltenyi Biotec)を用いてTregを単離した。T細胞増殖に及ぼすTregの影響を判定するために、刺激されたVTD標識T細胞(エフェクター)を、抗TIGIT抗体313R12で処置したマウスおよび対照抗体で処置したマウスから単離した脾臓Tregと共培養した(1:0.5のエフェクター:Treg比)。4日目には、細胞を洗浄し、抗マウスCD4抗体または抗マウスCD8抗体とインキュベートした。FACSCanto II機器およびFACSDivaソフトウェアv6.1.3(BD Biosciences)を用いたFACS分析によって細胞を評価した。標識された細胞が分裂するにつれて、VTDシグナルは半分に低下する。従って、分析ゲートは、このアッセイにおいてTreg細胞なしで得られる最大シグナルと、抗CD3/CD28刺激なしで得られる最小シグナルとの間に設定した。CD4+T細胞およびCD8+T細胞について、この領域内にある(VTD発現が低下した)細胞のパーセントを用いて、CD4+T細胞およびCD8+T細胞の増殖を計算した。パーセント抑制を[最大シグナル-(試料シグナル/最大シグナル)]×100として計算した。
【0619】
図11に示したように、抗TIGIT抗体313R12を用いた処置は、CD4+T細胞増殖に対する脾臓由来Tregの抑制機能に対して、観察可能な影響を全く及ぼさなかった。対照的に、抗TIGIT抗体313R12を用いた処置によって、CD8+T細胞増殖に対する脾臓由来Tregの抑制機能が約30%低減した。
【0620】
これらの結果から、抗TIGIT抗体を用いた処置はTregの機能および/または抑制を低減する、すなわち、免疫応答の「ブレーキを外す」ことができると示唆される。Treg機能またはTreg抑制を低減することで、全体の抗腫瘍免疫応答を増強できる可能性がある。
【0621】
実施例10
抗TIGIT抗体313R12で処置したCT26.WT腫瘍担持マウスに由来する免疫細胞の特徴決定
抗TIGIT抗体313R12で処置したCT26.WT腫瘍担持マウスにおける免疫細胞をさらに深く特徴決定するために、マウス一匹一匹から単離した脾細胞をFACSによって分析した。CT26.WT細胞(20,000個の細胞/マウス)を6〜8週齢Balb/cマウスの背面側腹部に皮下注射した。腫瘍が約50mm
3に達するまで10日間成長させた。マウスを0.25mg/マウスの抗TIGIT抗体313R12またはアイソタイプマッチ対照抗体で処置した(n=10〜20/群)。腹腔内注射によってマウスに週2回、投薬した。腫瘍成長をモニタリングし、腫瘍量を電子ノギスを用いて測定した。分析のために、各処置群から6匹のマウスを使用した。細胞注射後32日目に(最後の抗体投与の1日後)、脾細胞を単離した。非特異的結合をブロックするために、脾細胞(1×10
6個)を組換えFcタンパク質と10分間インキュベートし、次いで、100μlのFACS染色緩衝液(HBSS+2%熱失活仔ウシ血清)中で蛍光色素結合体抗体と氷上で20分間インキュベートした。結合しなかった抗体を洗浄によって除去し、死細胞を、固定可能なバイアビリティダイ(viability dye)で標識した。細胞を2%パラホルムアルデヒドで室温で20分間、固定し、FACSCantoII機器およびFACSDivaソフトウェアv6.1.3(BD Biosciences)を用いて分析した。
【0622】
全T細胞は、抗マウスCD3e抗体を用いて同定し、CD4+T細胞は、抗マウスCD4抗体を用いて同定し、CD8+T細胞は、抗マウスCD8抗体を用いて同定した。セントラルメモリー細胞は、抗マウス/ヒトCD44抗体を用いて同定し、エフェクターメモリー細胞は、抗ヒトCD62L抗体を用いて同定した。前記のように、抗マウスCD8b抗体(クローン53-5.8, BioLegend)、抗マウスCD4抗体(クローンGK1.5, BioLegend)、抗マウスCD62L抗体(クローンMEL-14, BioLegend)、および抗マウスCD44抗体(クローン1M7, BioLegend)を用いてFACS染色を行った。セントラルメモリー細胞を示すCD44
highCD62L
high発現と、エフェクターメモリー細胞(CD8+T細胞にゲーティングした)を示すCD44
highCD62L
low発現について細胞を分析した。
【0623】
FACS分析から、抗TIGIT抗体313R12で処置したCT26.WT腫瘍担持マウスにある、全生脾細胞の中のT細胞集団は、対照抗体で処置したマウスに由来するT細胞集団と比較して増大したことが分かった(
図12A)。抗体313R12で処置したマウスでは、(全生細胞に対する)CD4+T細胞のパーセントならびに(全生細胞に対する)CD8+T細胞のパーセントは、対照で処置したマウスと比較して増加した(
図12Bおよび
図12C)。さらに、CD4+T細胞集団内にあるセントラルメモリー細胞のパーセントも増加した(
図12D)。しかしながら、CD8+T細胞集団内にあるセントラルメモリー細胞のパーセントは増加しなかった(
図12E)。
【0624】
これらのデータから、抗TIGIT抗体による処置はCD4+T細胞集団およびCD8+T細胞集団のパーセントを増やすことが分かった。これらの結果は免疫応答が増強されたことと一致する。
【0625】
標的発現に対する抗TIGIT抗体の効果を評価するために、Treg上でのTIGIT発現をフローサイトメトリーによって分析した。本明細書に記載のように、Tregはサプレッサー細胞であり、CD4+Tregは転写因子Foxp3を発現することが知られている。前記のように、抗TIGIT抗体313R12または対照抗体で処置したCT26.WT腫瘍担持マウスに由来する脾細胞を単離した。非特異的結合をブロックするために、脾細胞(1×10
6個)を組換えFcタンパク質と10分間インキュベートし、次いで、100μlのFACS染色緩衝液(HBSS+2%熱失活仔ウシ血清)中で抗TIGIT抗体313R12および抗マウスCD4抗体と氷上で20分間インキュベートした。FACS染色緩衝液で染色した後に、細胞を、固定可能な細胞バイアビリティダイで標識し、固定し、一晩、透過処理した。透過処理後に、細胞を1×透過処理用緩衝液で2回洗浄した。抗マウスFoxp3抗体を用いて、細胞を氷上で30分間、染色し、洗浄し、2%パラホルムアルデヒドで室温で20分間、固定した。FACSCantoII機器を用いてフローサイトメトリーを行い、FACSDivaソフトウェアv6.1.3(BD Biosciences)を用いてデータ解析を行った。
【0626】
図13Aに示したように、対照抗体で処置した腫瘍担持マウスに由来する脾細胞と比較して、抗TIGIT抗体313R12で処置したCT26.WT腫瘍担持マウスでは、TIGITを発現する全脾細胞のパーセントは低下した。全CD4+細胞に対する(Tregを示す)Foxp3+CD4+細胞のパーセントは両マウス群について約22〜23%であり、抗TIGIT抗体による処置の影響を受けないと考えられた(
図13B)。しかしながら、対照抗体で処置した腫瘍担持マウスと比較して、抗TIGIT抗体313R12で処置したCT26.WT腫瘍担持マウスに由来する脾細胞集団において、(全Tregに対する)TIGIT陽性Tregのパーセントは劇的に低下した(
図13C)。逆に、対照抗体で処置した腫瘍担持マウスと比較して、抗TIGIT抗体313R12で処置したCT26.WT腫瘍担持マウスに由来する脾細胞集団では、TIGIT陰性Tregのパーセントはわずかに増加した(
図13D)。
【0627】
これらの結果から、抗TIGIT抗体313R12はTIGIT陽性細胞、特にTregを枯渇させたことが示唆される。しかしながら、FACSによって評価されたTIGIT陽性細胞の低減はTIGITタンパク質の内部移行および/またはTIGIT細胞表面発現下方制御によるものであり、実際の細胞枯渇によるものではない可能性がある。
【0628】
骨髄由来抑制細胞(MDSC)は骨髄系細胞の不均一なファミリーであり、適応免疫と自然免疫の両方の強力なサプレッサーであることが示されている。MDSCはCD4+T細胞およびCD8+T細胞の増殖および活性化を抑制し、Tregの発生を容易にする。MDSCは、抗腫瘍免疫応答を阻害し、血管形成を促進し、転移前環境を作り出すことによってがん進行を容易にすると考えられている。MDSCは、骨髄系列分化抗原Gr1およびCD11bの細胞表面発現を特徴とする。Gr1は、主として、顆粒球系列の細胞上での発現に限定され、CD11bは、マクロファージ、顆粒球、NK細胞、およびT細胞の表面に見出される細胞表面インテグリンである。マウスにおいて、MDSCは2つの亜集団、顆粒球性MDSC(G-MDSC)および単球性MDSC(M-MDSC)に、部分的に、これらのマーカーに基づいて分けることができる。G-MDSCは、典型的には、多葉性の核と、CD11b+Gr1
high表現型を有するのに対して、M-MDSCは単球の形態とCD11b+Gr1
low表現型を有する。両MDSC集団とも、アルギナーゼ、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)、一酸化窒素、および活性酸素種の産生の増大を含む複数の機構によってT細胞応答を抑制することが示されている。従って、MDSCは免疫抑制性の腫瘍微小環境に寄与しており、抗腫瘍免疫応答の効果を限定する可能性がある。
【0629】
抗TIGIT抗体313R12または対照抗体で処置したCT26.WT腫瘍担持マウスに由来する骨髄系細胞、特に、MDSCをFACSによって分析した。非特異的結合をブロックするために、脾細胞(1×10
6個)を組換えFcタンパク質と10分間インキュベートし、次いで、100μlのFACS染色緩衝液(HBSS+2%熱失活仔ウシ血清)中で蛍光色素結合抗体と氷上で20分間インキュベートした。その後に、細胞を抗マウスCD11b抗体および抗マウスGr1抗体とインキュベートした。結合しなかった抗体を洗浄によって除去し、細胞を、固定可能なバイアビリティダイで標識した。細胞を2%パラホルムアルデヒドで室温で20分間、固定し、FACSCantoII機器およびFACSDivaソフトウェアv6.1.3(BD Biosciences)を用いて分析した。
【0630】
図14Aに示したように、抗TIGIT抗体313R12で処置したCT26.WT腫瘍担持マウスの脾臓に由来する(全生細胞に対する)CD11b+骨髄系細胞のパーセントは、対照抗体で処置した腫瘍担持マウスに由来するCD11b+骨髄系細胞と比較して約25%低下した。抗TIGIT抗体313R12で処置した腫瘍担持マウスの脾臓における(全CD11b+骨髄系細胞に対する)CD11b+Gr1+MDSCのパーセントは、対照抗体で処置した腫瘍担持マウスに由来するCD11b+Gr1+MDSCと比較して約45%低下した(
図14B)。MDSC集団内にある、抗TIGIT抗体313R12で処置したCT26.WT腫瘍担持マウスの脾臓に由来するG-MDSC(CD11b+Gr1
highとして同定された)のパーセントは約66%低下したが、抗TIGIT抗体313R12で処置したCT26.WT腫瘍担持マウスの脾臓に由来するM-MDSC(CD11b+Gr1
lowとして同定された)のパーセントは約30%増加した(それぞれ、
図14Cおよび14D)。
【0631】
これらの結果から、抗TIGIT抗体による処置は、特定の免疫細胞、すなわち、MDSCの抑制活性を低減することによって抗腫瘍応答を増強し得ることが示唆される。
【0632】
実施例11
抗TIGIT抗体によるインビボ腫瘍成長の阻害
Rencaは、ATCCから入手したBalb/c由来腎臓腺がん細胞株である。Renca細胞(5×10
5細胞/マウス)を6〜8週齢Balb/cマウスの背面側腹部に皮下移植した。腫瘍が約43mm
3の体積に達するまで7日間成長させた。マウスを0.25mg/マウスの抗TIGIT抗体313R12(mIgG2a抗体)またはmIgG2a対照抗体で処置した(n=10/群)。腹腔内注射によってマウスに3週間にわたって週2回、投薬した。腫瘍成長をモニタリングし、7日目、10日目、14日目、17日目、21日目、および24日目に、腫瘍量を電子ノギスを用いて測定した。
【0633】
図15に示したように、抗TIGIT抗体313R12はアイソタイプマッチ対照抗体と比較して腫瘍成長を強力に阻害した。腫瘍サイズが原因で、28日目までに対照マウスを全て安楽死させた。対照的に、28日目までに、抗体313R12で処置した10匹のマウスのうち8匹の腫瘍は退縮しており、これらのマウスのうち5匹には、検出可能な腫瘍が無かった。最初の10匹のマウスのうち5匹を飼育し、注射して少なくとも100日後まで、腫瘍は検出できなかった。これらの結果から、抗TIGIT抗体313R12の抗腫瘍活性はいくつかの異なる腫瘍タイプにおいて有効だったことが分かる。
【0634】
実施例12
抗TIGIT抗体によるインビボ腫瘍成長の阻害-用量研究
抗TIGIT抗体は腫瘍成長を阻害するのに有効なことが示されたので、用量範囲研究を行った。マウス結腸腫瘍株CT26.WTをBalb/cマウスに皮下移植し(30,000個の細胞/マウス)、腫瘍を約35mm
3の平均サイズまで成長させた。マウスを、30mg/kg、15mg/kg、10mg/kg、5mg/kg、3mg/kg、1mg/kg、もしくは0.5mg/kgの抗TIGIT抗体313R12、または対照抗体で処置した(n=10/群)。腹腔内注射によって合計3回投与するために、マウスに週1回投薬した。腫瘍成長をモニタリングし、示された時点で、腫瘍量を電子ノギスを用いて測定した。
【0635】
図16は、各処置群の平均腫瘍量を示す。抗TIGIT抗体313R12による処置によって、最低レベルの0.5mg/kgを含めて各用量でCT26.WT腫瘍の成長が強力に阻害された。表4に示したように、20日目に、どの用量レベルでもマウスの少なくとも40%において腫瘍は退縮した。どの処置群でも、腫瘍が検出不可能なレベルまで退縮したマウスがいた。この実験では用量反応曲線は認められなかった。これは、処置の初めでの腫瘍サイズが原因であった可能性がある。
【0636】
(表4)
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【0637】
これらの結果から、抗TIGIT抗体313R12は免疫療法剤として有効性があることが証明される。概して、これらの結果は、有意な抗腫瘍効果を見るのに必要な抗TIGIT抗体の量が少なかった点については驚くべきことである。
【0638】
実施例13
抗TIGIT抗体および抗PD-L1抗体によるインビボ腫瘍成長の阻害
マウス結腸腫瘍株CT26.WTをBalb/cマウスに皮下移植した(30,000個の細胞/マウス)。処置の初日(移植後10日目)に、腫瘍は約105mm
3の平均サイズであった。マウスを0.25mg/マウスの抗TIGIT抗体313R12、抗PD-L1抗体、313R12と抗PD-L1抗体の組み合わせ、または対照抗体で処置した(n=10〜20/群)。マウスに抗体を3週間にわたって週2回、投与した。腫瘍成長をモニタリングし、腫瘍量を電子ノギスを用いて測定した。
【0639】
図17Bに示したように、抗TIGIT抗体313R12による処置は多くのパーセントのマウスにおいてCT26.WT腫瘍の成長を強力に阻害した。抗TIGIT抗体313R12による処置はマウスの大多数で腫瘍成長を阻害できるだけでなく、個々の腫瘍の退縮を、多くの場合、検出不可能なレベルまで誘導できることも留意すべきである。抗PD-L1抗体による処置は単剤として腫瘍成長を阻害することにあまり成功しなかった(
図17C)。抗TIGIT抗体313R12と抗PD-L1抗体の組み合わせによる処置は作用物質単独より大きな程度で腫瘍成長を阻害した(
図17D)。平均腫瘍量を
図17Eに示し、各群からのマウスのパーセント生存率を
図17Fに示した。
【0640】
抗腫瘍性記憶細胞集団の存在および/または機能性を評価する方法の1つは、以前に処置されたことのあるマウスを新鮮な腫瘍細胞に再曝露することである。再曝露研究には、抗TIGIT抗体 313R12、抗mPD-L1抗体、または313R12と抗mPD-L1抗体の組み合わせを用いて以前に処置されたことのある(前記の研究からの)マウスを使用した。1回目の腫瘍注射の少なくとも128日後に腫瘍が完全に退縮していたマウスおよび腫瘍が検出不可能であったマウスをCT26.WT腫瘍細胞(30,000個の細胞)に再曝露した。腫瘍再曝露に供するマウスには、再曝露を受ける100日前に最後の処置用量が与えられている。対照群として、ナイーブBalb/cマウス(n=10)にCT26.WT腫瘍細胞(30,000個の細胞)を注射した。腫瘍成長をモニタリングし、示された時点で腫瘍量を電子ノギスを用いて測定した。データを平均±S.E.Mで表した。
【0641】
ナイーブマウスにおけるCT26.WT腫瘍の平均腫瘍量は28日目まで着実に成長し、平均腫瘍量は約1750mm
3であった。以前の実験から、抗PD-L1抗体で以前に処置されたことがあり、腫瘍が完全に退縮したマウスは2匹しかいなかったが、これらの2匹のマウスは腫瘍再曝露に対して完全な免疫を示した。抗TIGIT抗体で以前に処置されたことがあり、腫瘍が完全に退縮したマウスは4匹であった。これらのマウスはいずれも、再曝露後に腫瘍が成長せず、腫瘍再曝露に対して完全な免疫を示さなかった。さらに、313R12と抗PD-L1抗体の組み合わせで以前に処置されたことがあり、腫瘍が完全に退縮したマウスは7匹であった。これらのマウスは腫瘍再曝露に対して完全な免疫を示した。
【0642】
単剤としてまたは抗PD-L1抗体と組み合わせて抗TIGIT抗体を用いて処置したマウスは、CT26.WT腫瘍細胞を用いた再曝露から強く保護されると考えられた。これらの結果から、抗TIGIT抗体を単剤としてまたはチェックポイント阻害物質と組み合わせて処置した後には免疫原記憶(immunogenic memory)が存在することが示唆される。
【0643】
実施例14
抗TIGIT抗体および抗PD-1抗体によるインビボ腫瘍成長の阻害
処置の初日(移植後7日目)に、マウス結腸腫瘍株CT26.WTをBalb/cマウスに皮下移植した(30,000個の細胞/マウス)。腫瘍は約62mm
3の平均サイズであった。マウス(n=15)を、12.5mgの抗TIGIT抗体313R12、抗PD-1抗体、313R12と抗PD-1抗体の組み合わせ、または対照抗体で処置した(n=15/群)。腹腔内注射によって、マウスに前記抗体を3週間にわたって週2回、投与した。腫瘍成長をモニタリングし、腫瘍量を電子ノギスを用いて測定した。
【0644】
図18Bに示したように、抗TIGIT抗体313R12による処置は腫瘍成長を強力に阻害した。前の実施例に示したように、313R12による処置は腫瘍成長を阻害することができるだけでなく、一部の腫瘍の退縮を誘導することができる。抗TIGIT抗体313R12と抗PD-1抗体の組み合わせによる処置は腫瘍成長を作用物質単独より大きな程度で阻害した(
図18D)。24日目の4つの群における平均腫瘍量を
図18Eに示した。
【0645】
再曝露研究には、抗TIGIT抗体313R12、抗mPD-1抗体、または313R12と抗mPD-L1抗体の組み合わせで以前に処置されたことがあるマウスを使用した。1回目の腫瘍注射の少なくとも100日後に腫瘍が完全に退縮し、検出不可能になったマウスをCT26.WT腫瘍細胞(60,000個の細胞)に再曝露した。対照群としてナイーブBalb/cマウス(n=10)にCT26.WT腫瘍細胞(60,000細胞)を注射した。腫瘍成長をモニタリングし、示された時点で、腫瘍量を電子ノギスを用いて測定した。データを平均±S.E.Mで表した。
【0646】
ナイーブマウスにおけるCT26.WT腫瘍の平均腫瘍量は着実に大きくなり、21日目の平均腫瘍量は約1250mm
3であった。以前の実験から、313R12と抗PD-1抗体の組み合わせで以前に処置されたことがあり、腫瘍が完全に退縮したマウスは13匹いた。これらのマウスは腫瘍曝露に対して完全な免疫を示した。
【0647】
これらの結果から、抗TIGIT抗体313R12は単剤として投与された場合でも非常に強力な免疫療法剤だという考えがさらに裏付けられる。それに加えて、抗TIGIT抗体の有効性は他の免疫療法剤と組み合わせることでさらに強化される可能性がある。
【0648】
実施例15
抗TIGITモノクローナル抗体の作製
組換えヒトTIGITアミノ酸22-141(R&D Systems)および/または組換えヒトTIGITアミノ酸22-138(Sino Biological Inc.)に対して抗体を作製した。標準的な技法を用いてマウス(n=3)をTIGITで免疫した。最初に免疫して約70日後に、ヒトTIGITに対してマウス一匹一匹からの血清をFACS分析を用いてスクリーニングした。最後の抗原ブーストのために、抗体価が最も高い動物を選択した。この後に、ハイブリドーマ作製のために脾臓細胞を単離した。SP2/0細胞を、マウス脾臓細胞の融合パートナーとして使用した。ハイブリドーマ細胞を96ウェルプレートに1ウェルあたり1個の細胞でプレートし、上清をFACS分析によってヒトTIGITに対してスクリーニングした。
【0649】
抗TIGIT抗体のFACSスクリーニングのために、ヒトTIGIT細胞外ドメインの細胞表面発現を可能にするキメラ融合タンパク質を構築し(FLAG-hTIGIT-CD4TM-GFP)、トランスフェクションによってHEK-293T細胞に導入した。48時間後に、トランスフェクトされた細胞を、2%FBSおよびヘパリンを含有する氷冷PBSに懸濁し、50μlのハイブリドーマ上清の存在下で氷上で30分間インキュベートした。抗体が結合した細胞を検出するために、100μlのPE結合抗ヒトFc二次抗体ともう1回インキュベートした。細胞を正の対照として抗FLAG抗体(Sigma-Aldrich)とインキュベートし、負の対照として抗PE抗体とインキュベートした。FACSCalibur機器(BD Biosciences)で細胞を分析し、FlowJoソフトウェアを用いてデータを処理した。
【0650】
ヒトTIGITに結合したいくつかのハイブリドーマを同定し、抗体313M26を選択した。313M26の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれ、SEQ ID NO:63およびSEQ ID NO:64である。313M26の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列は、それぞれ、SEQ ID NO:65およびSEQ ID NO:66である。
【0651】
当業者に公知の標準的な技法を用いて、313M26抗体をヒト化した。313M26のヒト化バージョンは本明細書中では313M32と呼ばれ、IgG1抗体である。313M32のヒト化重鎖可変領域はIgG4バックボーン上に再フォーマットされ、313M32軽鎖と組み合わせて、313M33と呼ばれる。313M32(および313M33)の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれ、SEQ ID NO:67およびSEQ ID NO:68である。313M32の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列は、それぞれ、SEQ ID NO:73およびSEQ ID NO:74である。313M26/313M32の重鎖CDRおよび軽鎖CDRを本明細書中の表2に列挙した(SEQ ID NO:57-62)。推定シグナル配列を有する313M32の重鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO:69であり、シグナル配列を有さない313M32の重鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO:70である。推定シグナル配列を有する313M32の軽鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO:71であり、シグナル配列を有さない313M32の軽鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO:72である。313M32の重鎖および軽鎖のヌクレオチド配列は、それぞれ、SEQ ID NO:75およびSEQ ID NO:76である。推定シグナル配列を有する313M33の重鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO:83であり、シグナル配列を有さない313M33の重鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO:82である。推定シグナル配列を有する313M33の軽鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO:71であり、シグナル配列を有さない313M33の軽鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO:72である。313M33の重鎖および軽鎖のヌクレオチド配列は、それぞれ、SEQ ID NO:84およびSEQ ID NO:76である。
【0652】
313M32抗体の重鎖の可変領域をコードするプラスミドは、ブダペスト条約の規定に基づいて2015年8月11日にアメリカン タイプ カルチャー コレクション(ATCC), 10801 University Boulevard, Manassas, VA, USAに寄託され、PTA-122346と指定された。313M32抗体の軽鎖をコードするプラスミドは、ブダペスト条約の規定に基づいて2015年8月11日にATCC, 10801 University Boulevard, Manassas, VA, USAに寄託され、PTA-122347と指定された。
【0653】
いくつかの異なる種に由来するTIGITタンパク質に結合するかどうか、ヒト化抗TIGIT抗体313M32をスクリーニングした。313M32はヒトTIGITに強力に結合し、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、マーモセット、ブタ、イヌ、アカゲザル、およびカニクイザルを含む、試験した他の任意の種に由来するTIGITに結合しないと判定された。これは、モルモット以外の、これらの種の全てに由来するTIGITに結合した、OncoMed Pharmaceuticalsで作製した別の抗TIGIT抗体である313R19とは対照的である。抗体313R19は、最初に、マウスTIGITとヒトTIGITの両方に結合すると同定された、ウサギ抗TIGIT抗体(313R12)のヒト化バージョンである。表5は、抗TIGIT抗体、ならびにマウスTIGIT、ヒトTIGIT、カニクイザルTIGIT、およびアカゲザルTIGITとの結合をまとめたものである。
【0654】
(表5)
[この文献は図面を表示できません]
【0655】
実施例16
ヒトTIGITとPVRとの結合をブロックする抗TIGIT抗体のFACS分析
細胞表面ヒトTIGITタンパク質は、標準的な組換えDNA法を用いて、ヒトTIGITのアミノ酸22-141をCD4の膜貫通ドメインおよびC末端GFPタンパク質タグに連結することによって作製した(hTIGIT-CD4TM-GFP)。PVR-Fc構築物は標準的な組換えDNA法を用いて作製した。具体的には、ヒトPVRの細胞外ドメインをウサギFc領域にインフレームで連結し、CHO細胞において組換えhPVR-rbFcタンパク質を発現させた。プロテインAクロマトグラフィーを用いて細胞培養培地から融合タンパク質を精製した。
【0656】
HEK-293T細胞をhTIGIT-CD4TM-GFP構築物で一過的にトランスフェクトした。16時間後に、トランスフェクトされた細胞を、2%FBSおよびヘパリンを含有する氷冷HBSSに懸濁し、抗TIGIT抗体313R19、313M26、または313M32の存在下で0.5μg/ml hPVR-rbFc融合タンパク質と氷上で60分間インキュベートした。抗体313R19はウサギ抗TIGIT抗体のヒト化バージョンである。313R19はマウスTIGITとヒトTIGITに結合する。抗体を10ug/ml、2ug/ml、および0.4ug/mlの濃度で試験した。対照として、細胞を抗体なしで、またはhPVR-rbFcなしでインキュベートした。hPVR-rbFc融合タンパク質が結合した細胞を検出するために、100μlのPE結合抗ウサギFc二次抗体ともう1回インキュベートした。FACSCanto機器(BD Biosciences)によって細胞を分析し、FlowJoソフトウェアを用いてデータを処理した。
【0657】
図19Aに示したように、抗TIGIT抗体の非存在下では、hPVR-rbFcは、HEK-293T細胞の表面に発現しているhTIGITに強く結合した。3種類全ての抗TIGIT抗体が10μg/mlの最高濃度でhPVR-rbFcとhTIGITとの結合をブロックした。しかしながら、2μg/mlおよび0.4μg/ml抗体というさらに低い濃度では、313R19抗体はhPVR-rbFcとTIGITとの結合をブロックしなかった。対照的に、2μg/mlの抗hTIGIT抗体313M32はhPVR-rbFcとhTIGITとの結合を強力にブロックし、遮断レベルは親マウス抗体313M26より大きかった。これらの結果から、hTIGITに対するヒト化313M32抗体の親和性は親抗体313M26および抗体313R19よりも大きいことが示唆された。10μg/ml、5μg/ml、2.5μg/ml、および1.25μg/mlの濃度の抗体313R19および抗体313M32を用いて、さらなる実験を行った(
図19B)。これらの2つの研究からの結果から、hTIGITに対する抗体313M32の親和性は抗体313R19の約5倍であることが示唆される。さらに、予備的なBiacore結果から、313R19の親和性は2nMであり、313M32の親和性は0.4nMであることが分かった。
【0658】
実施例17
TIGITシグナル伝達およびTIGITリン酸化
TIGITはカウンターレセプターであるPVRと相互作用した後に、その細胞質テールがリン酸化される。TIGITのリン酸化は、他の公知のシグナル伝達経路に影響を及ぼす下流事象を含むカスケードの始まりである。従って、TIGITリン酸化を評価すると、TIGITの機能およびTIGITアンタゴニストの作用についての情報を得ることができる。
【0659】
リアルタイムPCRおよびFACSによって確かめられた場合に、JurkatCD4+ヒトT細胞株にはヒトTIGIT発現が無い(データは示さず)。TIGIT発現細胞株を作製するために、Jurkat細胞を、FLAGおよび緑色蛍光タンパク質(GFP)でタグ化したヒトTIGIT(hTIGIT)を発現するレンチウイルス構築物に感染させた。FACSAria IIセルソーター(BD Biosciences)を用いて、GFP陽性細胞を選別して96ウェルプレートに入れ、単一細胞を増殖させてクローンにし、クローン細胞株を選択した(Jurkat-hTIGIT)。
【0660】
リアルタイムPCRおよびFACSによって確かめられた場合に、721.221ヒトB細胞リンパ腫株にはPVR発現が無い(データは示さず)。PVR発現細胞株を作製するために、721.221細胞を、ヒトPVR(hPVR)およびGFPを発現するレンチウイルス構築物に感染させた。FACSAria IIセルソーター(BD Biosciences)を用いて、GFP陽性細胞を選別して96ウェルプレートに入れ、単一細胞を増殖させてクローンにし、クローン細胞株を選択した(721.221-hPVR)。
【0661】
PVRに応答したTIGITリン酸化を評価するために、Jurkat-hTIGIT細胞を無血清培地中で37℃で2時間インキュベートした。次いで、細胞を、20μg/mlの抗TIGIT抗体313R19、313M26、または313M32、または対照抗体で室温で20分間、前処理した。Jurkat-hTIGIT細胞を親721.221細胞または721.221-mPVR細胞と5:1の細胞比で混合し、チロシンホスファスターゼ阻害物質(10mMオルトバナジン酸ナトリウム, New England Biolabs)の存在下で37℃で5分間インキュベートした。細胞溶解産物を調製し、FLAG-タグ化hTIGITタンパク質を捕捉した抗FLAGコーティング磁気ビーズを用いて免疫沈降させた。免疫沈降物を4〜12%Bis-Trisゲル(Novex/Life Technologies)上で分離し、iBlot 2装置(Life Technologies)を用いてニトロセルロース膜に転写した。膜を、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合体化した抗チロシン抗体とインキュベートし、リン酸化TIGIT(pTIGIT)を、標準的な検出試薬を用いて視覚化した。全TIGITの存在を、抗FLAG抗体(Cell Signaling Technology)を用いて評価した。
【0662】
hPVR発現腫瘍細胞に応答したJurkat細胞において、hTIGITは高リン酸化されることが観察された。このリン酸化は、抗TIGIT抗体の存在下で、特に、313M32抗体の存在下で阻害された(
図20)。
【0663】
実施例18
エピトープマッピング
抗hTIGIT抗体のエピトープマッピング
抗体313M32の結合エピトープを同定するために、特定のアミノ酸置換を有する一連のヒトTIGIT変種を用いて分析を行った。変種は、ヒトTIGITアミノ酸配列、SEQ ID NO:4と、カニクイザルTIGITアミノ酸配列、SEQ ID NO:77との間の差異に基づいた。アカゲザルTIGITのアミノ酸配列(SEQ ID NO:78)はカニクイザルTIGITと同一である(
図21)。アミノ酸変種によって、カニクイザルTIGITに存在するアミノ酸残基が、ヒトTIGITにある対応する位置に導入される。作製したhTIGIT変種には、(1)E36KおよびI41V;(2)T51M、(3)Q62HおよびQ64H、(4)D72E、(5)S78YおよびS80A、(6)V100M、(7)I109TおよびT119R、ならびに(8)G135Sに置換を有する。それぞれの変種hTIGITは、実施例15に記載のhTIGIT(aa22-141)-CD4TM-GFP構築物を用いて作製した。
【0664】
TIGIT変種を、抗hTIGIT抗体を用いてFACSによって評価した。HEK-293T細胞に、hTIGIT-CD4TM-GFP、mTIGIT-CD4TM-GFP、または変種hTIGIT-CD4TM-GFP構築物の1つを一過的にトランスフェクトした。16時間後に、トランスフェクトされた細胞を、2%FBSを含有する氷冷HBSSに懸濁し、1μg/mlの抗hTIGIT抗体313R12、313M32、または313M34と氷上で30分間インキュベートした。313M34は、米国特許出願公開第2009/0258013号に記載の10A7抗体のアミノ酸配列に基づいて作製した抗hTIGIT抗体である。10A7抗体は、マウスTIGITとヒトTIGITの両方に結合する抗マウスTIGIT抗体である。これらの抗体が結合した細胞を検出するために、50μlのPE結合抗Fc二次抗体ともう1回インキュベートした。FACSCanto機器(BD Biosciences)によって細胞を分析し、FlowJoソフトウェアを用いてデータを処理した。
【0665】
図22に示したように、抗体313M32は、アミノ酸残基62および64に置換を有するTIGIT変種3ならびにアミノ酸残基109および119に置換を有するTIGIT変種7に結合しなかった。この抗体はhTIGITならびにTIGIT変種1、2、4、5、6、および8との強力な結合を保持していた。PVRに結合したTIGITの結晶構造の図に、アミノ酸残基62、64、109、および119を黒色で強調した(
図23)。ヒトTIGITの構造を球体図で示し、PVRの構造をリボン図で示した。アミノ酸の位置から、PVR結合をブロックおよび/または妨害すべき領域で抗体313M32はhTIGITに結合することが明らかになる。抗体313R12も、アミノ酸残基109および119に置換を有するTIGIT変種7との結合を失ったことは注目に値する。このことから、313R12は、313M32が結合するエピトープと重複するエピトープに結合することが示唆される。興味深いことに、抗体313M34とTIGITとの結合はTIGIT変種3または変種7のアミノ酸置換の影響を受けなかったが、TIGIT変種6の残基100におけるアミノ酸置換の影響を受けた。この結果から、抗体313M34は抗体313M32と同じエピトープに結合しないことが分かる。TIGIT上の、抗体313M32および313M34に対する重要な結合残基の相対位置を
図23の図に示した。
【0666】
抗体313M26(313M32の親マウス抗hTIGIT抗体)および313R19(313R12から作製したヒト化ウサギ抗hTIGIT抗体)が共通のエピトープに結合することを確かめるために、競合研究を行った。313M26および313R19抗体のFc部分は異なるので、すなわち、それぞれ、マウスFcおよびヒトFcであるので、ある抗体(313R19)の結合を、もう1つの抗体(313M26)の存在下または非存在下で判定することができる。簡単に述べると、HEK-293T細胞に、ヒトTIGIT-CD4TM-GFPをコードする発現ベクターを一過的にトランスフェクトした。細胞を0.5μgの抗体313M19および過剰量の抗体313M26(50〜0.78μg/ml、2倍希釈)と1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、蛍光で標識したヒトFc特異的二次抗体とインキュベートし、フローサイトメトリーによって分析した。
【0667】
図24Aに示したように、抗体313M26はhTIGITとの結合について313R19と競合し、過剰量の313M26は313R19とhTIGITとの結合を効果的にブロックした。これらのデータから、313M26/313M32および313R12/313R19は重複エピトープに結合し、
図23に示したエピトープ分析と一致することが分かる。並列実験において、TIGITとの結合について、313R19または313M32が313M34と競合する能力を調べた。
図24Bに示したように、313R19抗体も313M32抗体もhTIGITとの結合について313M34と競合することが観察されなかった。これらの結果から、313R19および313M32は、313M34が結合するエピトープとは異なるエピトープに結合することが分かる。これらの結果も、
図23に示したエピトープ分析と一致する。
【0668】
実施例19
サイトカイン産生
TIGITと、腫瘍細胞上または抗原提示細胞上で発現しているPVR(CD155)の結合は、T細胞エフェクター機能を下方制御し、抗腫瘍免疫応答を阻害することが示されている(例えば、Joller et al., 2014, Immunity, 40:569-581を参照されたい)。PVRによって媒介されるT細胞サイトカイン分泌阻害を抗TIGIT抗体313R19および313M32がブロックする能力を調べた。活性化ヒトT細胞芽細胞は、初代ヒトT細胞をフィトヘマグルチニン(PHA,2μg/ml)およびIL-2(4ng/ml)と共に10日間培養することによって作製した。芽細胞を、PHA/IL-2を含まない培地中で24時間、休ませ、5×10
5細胞/mlで再懸濁し、10μg/mLまたは25μg/mLの対照抗体(ポリクローナルヒトIgG、25μg/ml)、抗TIGIT抗体313R19、または313M32で室温で15分間、処理した。次いで、抗CD3抗体(Ebioscience)、ヒトPVR-Fc、または抗CD3抗体、およびhPVR-Fc(それぞれ10μg/m)で4℃で一晩コーティングしたウェルに細胞をプレートした。48時間後に無細胞培養上清を収集し、IFN-γおよびIL-2サイトカインをELISA(R&D Systems)によって測定した。結果は、抗CD3サイトカインレベルを1.0に設定した、抗CD3だけで活性化した細胞によるサイトカイン産生と比べて表した。
【0669】
図25に示したように、活性化細胞においてhPVR-FcはIFN-γ産生もIL-2産生も誘導しなかった。しかしながら、hPVR-Fcは、抗CD3結合によって誘導されるサイトカイン産生を強力に阻害する。この阻害は抗TIGIT抗体である313R19および313M32によって逆転され、25ug/mlの高用量ではIFN-γ産生またはIL-2産生は、実際に、抗CD3によって生じた量より多い。活性化T細胞はTIGITとCD226を発現し、両方ともPVRと相互作用することができるが、TIGIT/PVR相互作用は阻害性相互作用であり、CD226/PVR相互作用は活性化相互作用である。理論に拘束されるものではないが、活性化T細胞がPVRと接触している時には、TIGITはCD226よりも強くPVRに結合するので、TIGIT/PVR相互作用は「勝つ(win)」ことが示唆される。さらに、全体の相互作用が阻害性であるので、活性化T細胞上にはCD226よりも高レベルのTIGITがあると考えられる。例えば、
図25では、抗CD3のみを抗CD3+PVRと比較せよ。313R19または313M32を用いてTIGITが阻害された場合には、TIGITによって媒介される阻害は逆転されるが、理論上では、CD226/PVR相互作用は依然として発生し、この相互作用は活性化相互作用である。従って、
図25に示したように、TIGITがブロックされ、T細胞が抗CD3+PVRで刺激された場合には、IFN-γレベルは、実際に、抗CD3のみで刺激した場合よりも高い。
【0670】
これらの結果から、抗TIGIT抗体によるヒトTIGITの遮断はTIGIT/PVR相互作用を破壊し、抗腫瘍応答に有益なサイトカイン産生を回復できることが証明される。
【0671】
実施例20
抗体依存性細胞傷害アッセイ
抗体依存性細胞傷害(ADCC)とは、細胞傷害性エフェクター細胞が、通常、細胞傷害性顆粒の放出または細胞死誘導分子の発現を特徴とする非食作用プロセスによって、抗体でコーティングされた標的細胞を死滅させることを指している。ADCCを媒介するエフェクター細胞には、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、および樹状細胞が含まれる。抗TIGIT抗体313R19および313M32がNK細胞NK細胞ADCCを媒介する能力を調べた。ADCCを、標準的な4時間カルセイン放出アッセイにおいて、エフェクターとして初代ヒトNK細胞を使用し、標的として親Jurkat細胞またはJurkat-hTIGIT細胞を使用して試験した。Ficoll-Hypaque(Sigma)密度勾配遠心分離法の前にRosetteSepカクテル(Stem Cell Technologies)と30分間インキュベートすることによって、ヒトNK細胞を新鮮な末梢血バフィーコート(Stanford Blood Center, Palo Alto, CA)から直接単離した。標的である親Jurkat細胞またはJurkat-hTIGIT細胞を10μMカルセインAM(Life Technologies)で37℃で1時間標識し、次いで、対照ポリクローナルIgG抗体、抗TIGIT抗体313R19、または抗TIGIT抗体313M32(全て10μg/mL)で室温で15分間、処理した。インキュベートした後に、96ウェルV底プレートの中で、Jurkat細胞またはJurkat-hTIGIT細胞をNK細胞と20:1のエフェクター:標的比で組み合わせた。37℃で4時間インキュベートした後に、無細胞上清を収集し、カルセイン放出を蛍光光度計によって485nmの励起および535nmの発光で定量した。特異的細胞溶解のパーセントを%溶解=100×(ER-SR)/(MR-SR)として求めた。式中、ER、SR、およびMRは、それぞれ、実験カルセイン放出、自発カルセイン放出、および最大カルセイン放出を表している。自発放出は、培地のみで(すなわち、エフェクター細胞の非存在下で)インキュベートした標的細胞が発した蛍光であるのに対して、最大放出は、等量の10%SDSを用いて標的細胞を溶解することによって求められる。Jurkat細胞およびJurkat-hTIGIT細胞株については、ADCCのパーセントを、実験用抗体(313R19または313M32)の存在下での特異的溶解のパーセント-対照抗体の存在下での特異的溶解のパーセントとして求めた。
図26に示したように、標的細胞がTIGITを発現している時に、ADCCのパーセントは抗TIGIT抗体313R19および313M32の存在下で有意に増加した。抗TIGIT抗体がADCCを誘導する能力から、抗TIGIT抗体には、腫瘍細胞に対する免疫応答を増強するための複数の機能があり得ることが示唆されると考えられる。
【0672】
実施例21
抗TIGIT抗体によるヒト化マウスにおけるインビボ腫瘍成長の阻害
ヒト化マウスモデルを用いて、ヒト腫瘍に対する抗TIGIT抗体による処置の有効性を研究した。ヒト化マウスをJackson Laboratoriesから入手した。これらのマウスは、ヒト造血幹細胞(CD34+細胞)を放射線照射済みNSGマウスに注射することによって作り出される。15週間後に、成熟ヒトリンパ球の存在がフローサイトメトリーによって確かめられる。各マウスに患者由来メラノーマ腫瘍細胞(OMP-M9、75,000細胞/マウス)を皮下注射した。腫瘍が約50mm
3の平均量に達するまで19日間成長させた。腫瘍担持マウスを群に無作為化した(n=8匹マウス/群)。腫瘍担持マウスを、対照抗体、抗TIGIT抗体313R19、または抗TIGIT抗体313M32のいずれかで処置した。マウスに1mg/kgまたは5mg/kgで5日ごとに投薬した。腫瘍成長をモニタリングし、示された時点で、腫瘍量を電子ノギスを用いて測定した。
【0673】
図27に示したように、対照と比較して、抗体313R19および抗体313M32で処置したマウスでは腫瘍成長が阻害された。これらの結果から、TIGITの標的化はヒトリンパ球の抗腫瘍免疫応答を増大し、インビボでのヒト腫瘍成長の阻害に寄与するのに有効であったことが分かる。この実験では、抗TIGIT抗体313R19または313M32と抗hPD-1抗体の組み合わせは、単剤である抗TIGIT抗体よりも大きな程度で腫瘍成長を阻害しなかった(データは示さず)。
【0674】
抗体313M32および313R19はヒトリンパ球の状況において腫瘍成長を阻害し、同様のインビボ有効性を有することが見出された。これらの結果から、抗TIGIT抗体313R12および313R19とマウス腫瘍モデルを用いて行った前臨床研究と同時に、患者由来異種移植片を有するヒト化マウスモデルを用いて抗TIGIT抗体313M32(ヒトTIGITにしか結合しない)を研究できることが証明された。
【0675】
実施例22
抗TIGIT抗体の薬物動態
本明細書に記載のように、抗TIGIT抗体313R12はマウスTIGITに優先的に結合し、前臨床有効性研究のほとんどで用いられるマウス代理分子である。抗TIGIT抗体313R12のPKを0.1mg/kg、1mg/kg、および10mg/kgの用量でC57BL-6Jマウスにおいて決定した。血液試料を21日にわたって採取した。313R12は、研究された用量レベルで非線形2-コンパートメントPK特徴を示した。このような濃度依存的クリアランスは、標的が豊富にあり、薬物が容易に到達することができる時に、標的を介したクリアランスが全排泄機構の重要な成分であり得るモノクローナル抗体の典型的な特徴だと考えられている。10mg/kgでは、313R12の濃度-時間プロファイルは21日にわたって直線に近づいた。このことから、到達可能な標的分子が飽和したことが示唆される。非線形PKデータには、終末相半減期の評価を適用することができない。
【0676】
抗TIGIT抗体313R19のPKをBalb/cマウスにおいて決定した。各マウスに10mg/kgの単回用量をIVまたはIPで与えた。血液試料を21日にわたって採取した。313R19は、典型的なIgGクリアランスがある線形2-コンパートメントPK特徴を示した。10mg/kgでは、マウスにおける終末相半減期は7.6日と見積もられた。
【0677】
抗TIGIT抗体313R19のPKをカニクイザルでも決定した。各動物に、10mg/kg、30mg/kg、および100mg/kgの用量を、4回投与するために週2回、与えた。各用量群は4匹の雄動物であり、研究の終了は、回復期間なしで4回投与した後であった。カニクイザルにおいて313R19は、典型的なIgGクリアランスがある線形2-コンパートメントPK特徴を示した。カニクイザルにおける終末相半減期は15.3日と見積もられた。
【0678】
抗TIGIT抗体313M32の薬物動態をBalb/cマウスにおいて決定した。各マウスに、1mg/kgまたは10mg/kgの単回用量をIVで与えたか、10mg/kgをIPで与えた。血液試料を21日にわたって採取した。マウスにおいて313M32は線形2-コンパートメントPK特徴を示した。これは、313M32とマウスTIGITとの検出可能な結合が無かったという事実と一致した。クリアランスは遅く、予備的に、典型的なIgG PK挙動を示した。マウスにおける終末相半減期は11.7日と見積もられた。
【0679】
本明細書に記載の実施例および態様は例示目的にすぎず、本明細書に記載の実施例および態様を考慮して様々な修正または変更が当業者に示唆され、本願の精神および範囲の中に含まれることが理解される。
【0680】
本明細書において引用された、刊行物、特許、特許出願、インターネットサイト、ならびにポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列の両方を含むアクセッション番号/データベース配列は全て、それぞれ個々の刊行物、特許、特許出願、インターネットサイト、またはアクセッション番号/データベース配列が参照により組み入れられるように詳細かつ個々に示されるのと同じ程度に、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
により本明細書に組み入れられる。
【0681】
本願において開示された配列は以下である。
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