【文献】
SAIF, Ashraf et al.,Drug Discoveries & Therapeutics,2012年 1月 1日,Vol. 6, No. 6,pp. 315-320,DOI: 10.5582/ddt.2012.v6.6.315
【文献】
Xu, Ji-Feng et al.,PLOS ONE,2014年12月11日,Vol. 9, No. 12,Article No. e114627,DOI: 10.1371/journal.pone.0114627
【文献】
SUDA, Robin K. et al.,Stem Cells,2009年 9月 1日,Vol. 27, No. 9,pp. 2209-2219,DOI: 10.1002/stem.150
【文献】
PIGNOLO, Robert J. and SHORE, Eileen M.,Critical Reviews in Eukaryotic Gene Expression,2010年 1月 1日,Vol. 20, No. 2,pp. 171-180,DOI: 10.1615/CritRevEukarGeneExpr.v20.i2.70
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【文献】
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(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記骨形成前駆細胞が、SM30、MEL2、SK11および4D20.8からなる群より選択されるクローン性始原細胞株、またはMMP1、MYL4、ZIC2、DIO2、DLK1、HAND2、SOX11、COL21A1、PTPRNおよびZIC1のうちの1種以上のマーカーを発現する始原細胞のいずれかの分化により取得される、請求項2に記載の組成物。
前記骨形成前駆細胞が、インテグリン結合性シアロタンパク質(IBSP)、オステオポンチン(SPP1)、アルカリホスファターゼ組織非特異型アイソザイム(ALPL)、およびBMP-2から選択される1種以上のマーカーを発現する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
筋骨格疾患、離断性骨軟骨症(OCD)、膝関節または股関節の深部骨軟骨関節損傷、骨または関節の外傷または損傷、骨軟骨移植片を回収する処置に由来する外科的に生じた損傷の処置に使用するための、あるいは骨移植脊椎固定術の補助に使用するための、整形外科的骨再建に使用するための、軟骨形成の促進に使用するための、あるいは自家骨移植片の補強に使用するための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
前記生物学的担体が、コラーゲン、セラミックでコーティングされたコラーゲン、コラーゲンスポンジ、ヒドロゲル、セラミックが添加されたヒドロゲル、セラミック、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、コラーゲン/セラミック複合材料、ヒアルロナン、フィブリン、エラスチン、ゼラチン、天然に存在する細胞外マトリックス(ECM)、マトリゲル(登録商標)、羊膜、脱灰骨基質、合成ECM、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)またはそれらの組み合わせである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
骨形成前駆細胞(OPC)由来の溶解物、OPC由来の抽出物、またはOPC由来の溶解物とOPC由来の抽出物を生物学的担体と組み合わせて移植片形成ユニットを生成するステップ
を含む、骨形成を促進するための治療用組成物の作製方法。
前記始原細胞が、以下のマーカー:MMP1、MYL4、ZIC2、DIO2、DLK1、HAND2、SOX11、COL21A1、PTPRNおよびZIC1のうちの1種以上を発現する、あるいは前記始原細胞が、SM30、MEL2、SK11および4D20.8細胞株からなる群より選択される、請求項11に記載の方法。
前記OPCが、骨シアロタンパク質II(IBSP)、オステオポンチン(SPP1)およびアルカリホスファターゼ組織非特異型アイソザイム(ALPL)から選択される1種以上のマーカーを発現する、請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
前記生物学的担体が、コラーゲン、セラミックでコーティングされたコラーゲン、コラーゲンスポンジ、ヒドロゲル、セラミックが添加されたヒドロゲル、セラミック、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、コラーゲン/セラミック複合材料、ヒアルロナン、フィブリン、エラスチン、ゼラチン、天然に存在する細胞外マトリックス(ECM)、マトリゲル(登録商標)、羊膜、脱灰骨基質、合成ECM、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)またはそれらの組み合わせである、請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法。
筋骨格疾患、離断性骨軟骨症(OCD)、膝関節または股関節の深部骨軟骨関節損傷、骨または関節の外傷または損傷、骨軟骨移植片を回収する処置に由来する外科的に生じた損傷の処置、骨移植脊椎固定術の補助、整形外科的骨再建、骨および/または軟骨形成の促進、あるいは自家骨移植片の補強に使用するための、請求項9〜14のいずれか1項に記載の方法によって生成される移植片形成ユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、骨移植のための新規な方法および組成物が必要とされている。そのような方法および組成物は:
(1) 理想的には生理的比率での、骨誘導性因子および/または骨促進性因子の天然に存在する混合物を提供し;
(2) (1)に記載される混合物および濃度に関して極端なロット間変動の対象ではなく;
(3) 始原細胞(progenitor cell)および/もしくは前駆細胞(precursor cell)および/またはそれらの生物活性物質が豊富であり;
(4) 長い保存寿命を有し;
(5) 保存および輸送するのが容易であり;かつ/または
(6) 滅菌に適している
べきである。
【0007】
本開示に記載される本発明は、これらの必要性および当技術分野でのさらなる必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書中に記載される種々の実施形態では、本開示は、被験体での骨形成を刺激するために有用な組成物(例えば、骨誘導性および/または骨促進性である組成物)を提供し、このとき、特定の実施形態では、組成物は、生物学的担体と組み合わせて、骨形成前駆細胞から取得される細胞由来調製物を含む。特定の実施形態では、骨形成前駆細胞は、骨形成始原細胞のin vitro分化により取得される。例示的な骨形成始原細胞としては、SM30、MEL2およびSK11細胞株が挙げられる。例示的な細胞由来調製物としては、溶解物、抽出物、凍結乾燥物(lyophilisate)、エキソソーム調製物および馴化培地が挙げられる。例示的な生物学的担体としては、コラーゲン(例えば、コラーゲンスポンジ)およびヒドロゲルが挙げられる。
【0009】
追加の実施形態では、組成物は、生物学的担体と組み合わせて、1種以上の生物活性物質(例えば、骨誘導性物質または骨促進性物質)を含む。生物活性物質の供給源としては、限定するものではないが、骨形成前駆細胞由来の細胞溶解物、細胞抽出物、エキソソーム、および馴化培地;ならびに精製された骨誘導性および/または骨促進性タンパク質が挙げられる。
【0010】
開示される組成物を作製するための方法もまた提供され、該方法は、骨形成前駆細胞、および/または骨形成前駆細胞から取得される細胞由来調製物、および/または1種以上の生物活性物質を生物学的担体と組み合わせるステップを含む。特定の実施形態では、該方法は、骨形成前駆細胞を取得するステップ、任意により、1種以上の好適な分化因子の存在下で該細胞を培養することにより、該骨形成前駆細胞を分化させるステップ、ならびに該骨形成前駆細胞および/または分化させた細胞を生物学的担体に添加するステップを含む。特定の実施形態では、骨形成前駆細胞および/またはその分化させた子孫は、生物学的担体に添加される前に、精製または富化ステップに供される。他の実施形態では、骨形成前駆細胞および/またはその分化させた子孫は、細胞由来調製物を得るために処理されて、細胞由来調製物が生物学的担体に添加される。例示的な細胞由来調製物としては、溶解物、抽出物、エキソソーム調製物および馴化培地が挙げられる。一部の実施形態では、生物学的担体および細胞または細胞由来調製物は、長期間保存することができる移植片を取得するために処理される。例示的な処理方法は、細胞が播種された生物学的担体の凍結乾燥(lyophilization、すなわち、フリーズドライ(freeze-drying))である。
【0011】
特定の実施形態では、方法は、骨形成前駆細胞またはその分化させた子孫を生物学的担体と共培養して、それにより細胞が該担体に付着するステップ、およびそれに続いて、細胞が播種された担体を培養物から取り出すステップを含む。一部の実施形態では、生物学的担体および細胞は、引き続いて、長期間保存することができる移植片を取得するために処理される。例示的な処理方法は、細胞が播種された生物学的担体の凍結乾燥(lyophilization、すなわち、フリーズドライ(freeze-drying))である。
【0012】
生物活性物質(例えば、精製タンパク質、溶解物、抽出物、馴化培地、エキソソーム)を、生物学的担体に直接的に添加することができる。あるいは、細胞溶解物に関して、生物学的担体を細胞と共培養することができ、続いて細胞を溶解させて、それにより細胞の内容物が担体に吸着されたままにすることができる。組み合わせるステップに続いて、生物活性物質(例えば、精製タンパク質、溶解物、抽出物、馴化培地、エキソソームなど)が播種された生物学的担体は、任意により、長期間保存することができる移植片を取得するために処理(例えば、凍結乾燥)することができる。
【0013】
ヒトまたは動物被験体で骨形成を刺激するための方法もまた提供され、このとき、方法は、骨形成が望まれる被験体体内の部位へと本明細書中に記載される組成物を移植するステップを含む。
【0014】
本発明の組成物は同種的に用いることができるが、in vitroで培養され、かつ骨形成性組成物を回収するために処理される、多数(例えば、約1000,000個)のクローン性に誘導された前駆細胞(すなわち、クローン性の胚性始原細胞株から誘導された前駆細胞)の使用を本開示が可能にする点で、従前の同種組成物とは異なる。クローン性に誘導された前駆細胞から誘導される骨形成性組成物を、次に、合成骨空隙充填剤に添加する。生成物のすべてのロットを単一のクローン性細胞株(すなわち、単一のドナー)から製造することができるので、DBMまたは生存細胞含有骨移植片などの既存の生成物と比較して、低いロット間変動が生じるであろう。
【0015】
加えて、本明細書中に開示される移植片形成ユニットは、互いに対して生理的比率の、骨形成性、骨誘導性および/または骨促進性分子(例えば、増殖因子およびサイトカイン)の混合物を提供する。既存の方法と比較して、生理的比率のタンパク質の組み合わせを提供する本方法は、異所性骨化および免疫応答などの重篤な悪性作用を引き起こしにくい。
【0016】
最後に、本明細書中に開示される組成物は、滅菌することができ(移植時に感染症を移すリスクを最小限にする)、かつ冷蔵または室温のいずれでも保存できる、そのまま使える(off-the-shelf)生成物を提供する。
【0017】
したがって、本開示は、とりわけ、以下の実施形態を提供する。
1. 以下の構成要素:
(a) 骨形成前駆細胞由来の細胞由来調製物、および
(b) 生物学的担体
を含む組成物であって、
該骨形成前駆細胞は、間葉系幹細胞ではない、上記組成物。
2. 前記細胞由来調製物が、以下の調製物:
(a) 骨形成前駆細胞の凍結乾燥物;
(b) 骨形成前駆細胞の溶解物;
(c) 骨形成前駆細胞の抽出物;
(d) 骨形成前駆細胞由来のエキソソーム懸濁物;および
(e) 骨形成前駆細胞由来の馴化培地
のうちの1種以上からなる群より選択される、実施形態1に記載の組成物。
3. 前記骨形成前駆細胞が、始原細胞の分化により取得される、実施形態1または2のいずれかに記載の組成物。
4. 前記始原細胞がクローン性胚性始原細胞である、実施形態3に記載の組成物。
5. 前記骨形成前駆細胞が、SM30、MEL2およびSK11からなる群より選択されるクローン性始原細胞株の分化により取得される、実施形態1または2のいずれかに記載の組成物。
6. 前記骨形成前駆細胞が、TGF-β3、BMP-2、またはその両方の存在下で始原細胞を培養することにより取得される、実施形態5に記載の組成物。
7. 前記始原細胞が、以下のマーカー:MMP1、MYL4、ZIC2、DIO2、DLK1、HAND2、SOX11、COL21A1、PTPRNおよびZIC1のうちの1種以上を発現する、実施形態3〜6のいずれか1つに記載の組成物。
8. 前記骨形成前駆細胞が、インテグリン結合性シアロタンパク質(IBSP)、オステオポンチン(SPP1)、アルカリホスファターゼ組織非特異型アイソザイム(ALPL)、およびBMP-2から選択される1種以上のマーカーを発現する、実施形態1〜7のいずれか1つに記載の組成物。
9. 前記骨形成前駆細胞がヒト細胞である、実施形態1〜8のいずれか1つに記載の組成物。
10. 前記骨形成前駆細胞が胚様体の一部分ではない、実施形態1〜9のいずれか1つに記載の組成物。
11. 前記骨形成前駆細胞がクローン性細胞集団のメンバーである、実施形態1〜10のいずれか1つに記載の組成物。
【0018】
12. 軟骨形成前駆細胞由来の細胞由来調製物をさらに含み、該軟骨形成前駆細胞は、始原細胞の分化により取得される、実施形態1〜11のいずれか1つに記載の組成物。
13. 前記細胞由来調製物が、以下の調製物:
(a) 軟骨形成前駆細胞の凍結乾燥物;
(b) 軟骨形成前駆細胞の溶解物;
(c) 軟骨形成前駆細胞の抽出物;
(d) 軟骨形成前駆細胞由来のエキソソーム懸濁物;および
(e) 軟骨形成前駆細胞由来の馴化培地
のうちの1種以上からなる群より選択される、実施形態12に記載の組成物。
14.前記軟骨形成前駆細胞が、4D20.8、7PEND24、7SMOO32およびE15からなる群より選択されるクローン性始原細胞株の分化により取得される、実施形態12または13のいずれかに記載の組成物。
15. 前記始原細胞が、以下のマーカー:DIO2、DLK1、FOXF1、GABRB1、COL21A1、およびSRCRB4Dのうちの1種以上を発現する、実施形態12〜14のいずれか1つに記載の組成物。
16. 前記軟骨形成前駆細胞が、II型コラーゲンα1(COL2A1)およびアグレカン(aggrecan;ACAN)から選択される1種以上のマーカーを発現する、実施形態12〜15のいずれか1つに記載の組成物。
17. 前記生物学的担体が、コラーゲン、セラミックでコーティングされたコラーゲン、ヒドロゲル、またはセラミックが添加されたヒドロゲルである、実施形態1〜16のいずれか1つに記載の組成物。
18. 前記生物学的担体が、脱灰骨基質(DBM)ではない、実施形態1〜16のいずれか1つに記載の組成物。
19. 滅菌される、実施形態1〜18のいずれか1つに記載の組成物。
【0019】
20. 実施形態1〜19のいずれか1つに記載の組成物を被験体に移植するステップを含む、被験体での骨および/または軟骨の形成を促進するための方法。
21. 前記被験体がヒトである、実施形態20に記載の方法。
22. 前記被験体が非ヒト動物である、実施形態20に記載の方法。
23. 以下のステップ:
(a) 培養物中で始原細胞を生育させるステップ;
(b) 培養物中で該始原細胞を骨形成前駆細胞(OPC)へと分化させるステップ;
(c) 該OPCを生物学的担体と組み合わせるステップ;および
(d) ステップ(c)の組み合わせを凍結乾燥させるステップ
を含む、骨形成を促進するための治療用組成物の作製方法。
24. 以下のステップ:
(a) 培養物中で始原細胞を生育させるステップ;
(b) 培養物中で該始原細胞を骨形成前駆細胞(OPC)へと分化させるステップ;
(c) 該OPCを生物学的担体と組み合わせるステップ;および
(d) 該生物学的担体上に存在する該細胞を溶解して移植片形成ユニットを生成するステップ
を含む、骨形成を促進するための治療用組成物の作製方法。
25. 以下のステップ:
(a) 培養物中で始原細胞を生育させるステップ;
(b) 培養物中で該始原細胞を骨形成前駆細胞(OPC)へと分化させるステップ;
(c) 該OPCの溶解物を取得するステップ;および
(d) 該溶解物を生物学的担体と組み合わせて移植片形成ユニットを生成するステップ
を含む、骨形成を促進するための治療用組成物の作製方法。
26. 以下のステップ:
(a) 培養物中で始原細胞を生育させるステップ;
(b) 培養物中で該始原細胞を骨形成前駆細胞(OPC)へと分化させるステップ;
(c) 該OPCの抽出物を取得するステップ;および
(d) 該抽出物を生物学的担体と組み合わせて移植片形成ユニットを生成するステップ
を含む、骨形成を促進するための治療用組成物の作製方法。
27. 以下のステップ:
(a) 培養物中で始原細胞を生育させるステップ;
(b) 培養物中で該始原細胞を骨形成前駆細胞(OPC)へと分化させるステップ;
(c) 該OPCからエキソソームを調製するステップ;および
(d) 該エキソソームを生物学的担体と組み合わせて移植片形成ユニットを生成するステップ
を含む、骨形成を促進するための治療用組成物の作製方法。
28. 以下のステップ:
(a) 培養物中で始原細胞を生育させるステップ;
(b) 培養物中で該始原細胞を骨形成前駆細胞(OPC)へと分化させるステップ;
(c) 該培養物由来の馴化培地を取得するステップ;および
(d) 該馴化培地を生物学的担体と組み合わせて移植片形成ユニットを生成するステップ
を含む、骨形成を促進するための治療用組成物の作製方法。
29. ステップ(d)に続いて、
(e) ステップ(d)の移植片形成ユニットを凍結乾燥させるステップ
をさらに含む、実施形態24〜28のいずれか1つに記載の方法。
【0020】
30. 前記始原細胞がクローン性胚性始原細胞である、実施形態23〜29のいずれか1つに記載の方法。
31. 前記始原細胞が、SM30、MEL2およびSK11細胞株からなる群より選択される、実施形態23〜30のいずれか1つに記載の方法。
32. 前記始原細胞が、以下のマーカー:MMP1、MYL4、ZIC2、DIO2、DLK1、HAND2、SOX11、COL21A1、PTPRNおよびZIC1のうちの1種以上を発現する、実施形態23〜31のいずれか1つに記載の方法。
33. TGF-β3、BMP-2、またはその両方の存在下で前記始原細胞を培養することにより、該始原細胞をOPCへと分化させる、実施形態23〜32のいずれか1つに記載の方法。
34. 前記OPCが、骨シアロタンパク質II(IBSP)、オステオポンチン(SPP1)およびアルカリホスファターゼ組織非特異型アイソザイム(ALPL)から選択される1種以上のマーカーを発現する、実施形態23〜33のいずれか1つに記載の方法。
35. 前記OPCがヒト細胞である、実施形態23〜34のいずれか1つに記載の方法。
36. 前記OPCの培養物が胚様体を含まない、実施形態23〜35のいずれか1つに記載の方法。
37. 前記OPCの培養物がクローン性培養物である、実施形態23〜36のいずれか1つに記載の方法。
38. 前記生物学的担体が、コラーゲン、セラミックでコーティングされたコラーゲン、ヒドロゲル、またはセラミックが添加されたヒドロゲルである、実施形態23〜37のいずれか1つに記載の方法。
39. 前記コラーゲンがゼラチンである、実施形態38に記載の方法。
40. 前記生物学的担体が、脱灰骨基質(DBM)ではない、実施形態23〜39のいずれか1つに記載の方法。
【0021】
41. 以下の構成要素:
(a) 軟骨形成前駆細胞由来の細胞由来調製物、および
(b) 生物学的担体
を含む組成物であって、
該軟骨形成前駆細胞は、間葉系幹細胞ではない、上記組成物。
42. 前記細胞由来調製物が、以下の調製物:
(a) 軟骨形成前駆細胞の凍結乾燥物;
(b) 軟骨形成前駆細胞の溶解物;
(c) 軟骨形成前駆細胞の抽出物;
(d) 軟骨形成前駆細胞由来のエキソソーム懸濁物;および
(e) 軟骨形成前駆細胞由来の馴化培地
のうちの1種以上からなる群より選択される、実施形態41に記載の組成物。
43. 前記軟骨形成前駆細胞が、始原細胞の分化により取得される、実施形態41または42のいずれかに記載の組成物。
44. 前記始原細胞がクローン性胚性始原細胞である、実施形態43に記載の組成物。
45. 前記軟骨形成前駆細胞が、4D20.8、7PEND24、7SMOO32およびE15からなる群より選択されるクローン性始原細胞株の分化により取得される、実施形態41または42のいずれかに記載の組成物。
46. 前記軟骨形成前駆細胞が、TGF-β3、GDF5、BMP-4、またはそれらの組み合わせの存在下で始原細胞を培養することにより得られる、実施形態45に記載の組成物。
47. 前記始原細胞が、以下のマーカー:DIO2、DLK1、FOXF1、GABRB1、COL21A1、およびSRCB4Dのうちの1種以上を発現する、実施形態43〜46のいずれか1つに記載の組成物。
48. 前記軟骨形成前駆細胞が、COL2A1およびACANから選択される1種以上のマーカーを発現する、実施形態41〜47のいずれか1つに記載の組成物。
49. 前記軟骨形成前駆細胞がヒト細胞である、実施形態41〜48のいずれか1つに記載の組成物。
50. 前記軟骨形成前駆細胞が胚様体の一部分ではない、実施形態41〜49のいずれか1つに記載の組成物。
51. 前記軟骨形成前駆細胞がクローン性細胞集団のメンバーである、実施形態41〜50のいずれか1つに記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は、特に示さない限り、当技術分野での技能の範囲内である、細胞生物学、分子生物学、発生学、生化学、細胞培養、組み換えDNAの分野および関連分野での標準的方法および慣用的技術を用いる。そのような技術は文献に記載され、したがって当業者が利用可能である。例えば、Alberts, B. et al., “Molecular Biology of the Cell,” 5
th edition, Garland Science, New York, NY, 2008;Voet, D. et al. “Fundamentals of Biochemistry: Life at the Molecular Level,” 3
rd edition, John Wiley & Sons, Hoboken, NJ, 2008;Sambrook, J. et al., “Molecular Cloning: A Laboratory Manual,” 3
rd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001;Ausubel, F. et al., “Current Protocols in Molecular Biology,” John Wiley & Sons, New York, 1987および定期的な改訂;Freshney, R.I., “Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique,” 4
th edition, John Wiley & Sons, Somerset, NJ, 2000;ならびに“Methods in Enzymology,” Academic Press, San Diego, CA.のシリーズを参照されたい。
【0024】
本開示の目的のために、「始原細胞」(progenitor cell)とは、より限定された分化能力を有する細胞へと、in vivoまたはin vitroで分化するために誘導することができる、多能性細胞(pluripotent cell)である。例示的な始原細胞としては、SM30、MEL2およびSK11骨形成細胞株が挙げられる。
【0025】
用語「前駆細胞」(precursor cell)とは、本明細書中で用いる場合、多能性ではなく、かつ最終分化していないが、最終分化型細胞へと分化することが可能な細胞である。つまり、本明細書中に例示される適切な条件下では、始原細胞(上記で定義される通り)は、例えば、骨形成前駆細胞へと分化するために誘導することができ、骨形成前駆細胞は、それ自体が、1種以上の骨形成細胞(例えば、骨芽細胞、骨細胞など)へと発達することが可能である。
【0026】
用語「クローン性」とは、すべての細胞が元の単一細胞に由来し、かつ他の細胞を含有しない細胞集団への、単一細胞からの増加により取得される細胞集団を意味する。
【0027】
本開示の目的のために、用語「クローン性始原細胞」、「胚性クローン性始原細胞」、「クローン性始原細胞株」および「胚性クローン性始原細胞株」とは、それぞれ、クローン的に誘導される、すなわち、すべての細胞が元の単一細胞に由来し、かつ他の細胞を含有しない細胞集団への、単一細胞からの増加により誘導される、始原細胞株を意味する。
【0028】
本開示の目的のために、用語「骨誘導性」(osteoinductive)および「骨誘導」(osteoinduction)とは、骨が以前には存在しない環境でのde novo新規骨形成を誘導するプロセスを意味する。骨誘導性プロセスの一例は、BMP-2の皮下または筋内移植後の、レシピエント組織中での異所性骨形成である。
【0029】
本開示の目的のために、用語「骨促進性」(osteopromotive)および「骨促進」(osteopromotion)とは、既存の骨からの新規骨生長を刺激するプロセスを意味する。例えば、骨芽細胞の作用は、骨促進性であると考えることができる。
【0030】
用語「骨形成性」(osteogenic)は、骨誘導性プロセスと骨促進性プロセスとの両方を含むことが意図される。
【0031】
「細胞由来調製物」とは、生存細胞から取得され、かつ細胞由来の分子を含み、任意により残余の生存細胞も含む、組成物である。例示的な細胞由来調製物としては、溶解物、抽出物、凍結乾燥物(lyophilisate)、エキソソーム調製物および馴化培地が挙げられる。一部の実施形態では、細胞由来調製物は、生存細胞を、破壊して開かせるかまたは透過化し(または、他の方法で生存細胞にその内容物を放出させて)、それにより細胞の内容物が放出され、かつ生存細胞は残らないかまたはわずかしか残らないようにする様式で、生存細胞を処理することにより得られる。細胞由来調製物は、純粋な生物活性物質またはそれらの混合物を提供するために、さらに分画することができる。
【0032】
細胞由来調製物(例えば、抽出物、溶解物、馴化培地、エキソソーム、凍結乾燥物)の作製に関して、用語「生理的比率」および「生理的割合」とは、細胞により生成される種々の分子(例えば、タンパク質、例えば、増殖因子およびサイトカイン)が、そこから細胞由来調製物が取得された細胞中でそれらが存在するのと同じ相対的レベルで存在する、混合物を意味する。これらの用語は、「生理的濃度」とは区別されるべきである。例えば、希釈によって、抽出物中の様々な分子の濃度は、それらの正常な生理的濃度よりも低くなる場合があるが、しかしそれでもなお、それらは互いに対して正常な生理的割合で存在することができる。同様に、細胞由来調製物の濃縮は、互いに対して正常な生理的割合で存在する、生理的濃度を超える濃度の分子を含有する溶液を生じる場合がある。
【0033】
本開示の目的のために、「生物学的担体」とは、移植に先立って、それに対して、細胞、細胞由来調製物および生物活性物質を吸着させるか、または添加することができるいずれかの移植可能な材料を意味する。例示的な生物学的担体としては、コラーゲン、ヒアルロナン、フィブリン、エラスチン、ヒドロゲル、ゼラチン、天然に存在する細胞外マトリックス(ECM)(例えば、マトリゲル(登録商標)、羊膜、脱灰骨基質)、合成ECM(例えば、組み換え的に産生されたコラーゲン)、ならびに、例えば、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)およびそれらの組み合わせなどの合成担体が挙げられる。例えば、ヒドロキシアパタイトおよびリン酸三カルシウムなどの種々のセラミック、ならびにコラーゲン/セラミック複合材料もまた、生物学的担体として用いることができる。
【0034】
「間葉系幹細胞」(mesenchymal stem cell)または「間葉系間質細胞」(mesenchymal stromal cell;MSC)または「骨髄接着性幹細胞」(marrow adherent stem cell)または「骨髄接着性間質細胞」(marrow adherent stromal cells;MASC)または「骨髄間質細胞」(bone marrow stromal cells;BMSC)は、とりわけ、骨髄および臍帯血から取得することができる多能性細胞(multipotent cell)である。MSCは通常、骨、軟骨および脂肪組織へと分化し;それらは、プラスチック基材へと付着する能力により、骨髄穿刺液中で造血幹細胞から分離することができる。MSCは、表面マーカーCD73、CD90およびCD105を発現し;かつCD34、CD45、CD11b、CD14、CD79α、CD19またはHLA-DRを発現しない。Dominici et al. (2006), Cytotherapy 8(4): 315-317;Boxall and Jones, (2012) Stem Cells Int., 975871を参照されたい。MSCはさらに、表面マーカーCD74を発現し、これは本発明の始原細胞により発現されない。Barilleax et al. (2010), In Vitro Cell Dev Biol Anim. 46(6): 566-572;Sternberg et al., (2013) Regen. Med. 8(2): 125-144を参照されたい。
【0035】
本開示は、とりわけ、骨形成前駆細胞(および/または軟骨形成前駆細胞)からの細胞由来調製物および生物学的担体を含む組成物を提供する。そのような組成物は、骨形成が必要とされる被験体体内の部位へと組成物を移植することにより、ヒトまたは動物被験体での骨形成(および/または軟骨形成)を刺激するために用いることができる。該組成物の作製方法および使用方法もまた提供される。
【0036】
骨形成前駆細胞および軟骨形成前駆細胞は、例えば、下記のヒト胚性始原(hEP)細胞株から誘導することができる。
【0037】
始原細胞株
SK11、SM30、MEL2、4D20.8(X4D20.8と称される場合もある)、7PEND24(X7PEND24と称される場合もある)、7SMOO32(XSMOO32と称される場合もある)およびE15ヒト胚性始原(hEP)細胞株の誘導および特性決定は、例えば、West et al., 2008 Regenerative Medicine 3(3), pp. 287-308、米国特許出願公開第2010/0184033号、Sternberg et al., (2013) Regen. Med. 8(2):125-144および米国特許出願公開第2014/0234964号(これらのすべてが、その全体で参照により本明細書中に組み入れられる)に記載されている。
【0038】
SK11
SK11細胞は、以下のマーカーに関して陽性であり:BEX1、COL21A1、FST、ICAM5、IL1R1、TMEM199、PTPRN、SERPINA3、SFRP2およびZIC1、かつ以下のマーカーに関して陰性である:ACTC、AGC1、ALDH1A1、AQP1、ATP8B4、C6、C20orf103、CCDC3、CDH3、CLDN11、CNTNAP2、DIO2、DKK2、EMID1、GABRB1、GSC、HOXA5、HSPA6、IF127、INA、KRT14、KRT34、IGFL3、LOC92196、MEOX1、MEOX2、MMP1、MX1、MYH3、MYH11、IL32、NLGN4X、NPPB、OLR1、PAX2、PAX9、PDE1A、PENK、PROM1、PTN、RARRES1、RASD1、RELN、RGS1、SMOC1、SMOC2、STMN2、TAC1、TFPI2、RSPO3、TNFSF7、TNNT2、TRHおよびTUBB4。SK11細胞は、MSCマーカーであるCD74の発現に関して陰性である。
【0039】
適切な条件下(例えば、BMP-2もしくはTGF-β3もしくはBMP-4、またはこれらの因子の組み合わせの存在下での培養での生育)では、SK11細胞は、骨シアロタンパク質II(IBSP)、オステオポンチン(SPP1)およびアルカリホスファターゼ組織非特異型アイソザイム(ALPL)から選択される1種以上のマーカーを発現する骨形成前駆細胞へと分化することが可能である。
【0040】
SM30
SM30細胞は、以下のマーカーに関して陽性であり:COL15A1、CRYAB、DYSF、FST、GDF5、HTRA3、TMEM119、MMP1、MSX1、MSX2、MYL4、POSTN、SERPINA3、SRCRB4DおよびZIC2、かつ以下のマーカーに関して陰性である:ACTC、AGC1、AKRIC1、ALDH1A1、ANXA8、APCDD1、AQP1、ATP8B4、CFB、C3、C6、C7、C20orf103、CD24、CDH3、CLDN11、CNTNAP2、COMP、DIO2、METTL7A、DKK2、DLK1、DPT、FGFR3、TMEM100、FMO1、FMO3、FOXF2、GABRB1、GJB2、GSC、HOXA5、HSD11B2、HSPA6、ID4、IF127、IL1R1、KCNMB1、KIAA0644、KRT14、KRT17、KRT34、IGFL3、LOC92196、MEOX1、MEOX2、MGP、MYBPH、MYH3、MYH11、NLGN4X、NPPB、OGN、OLR1、OSR2、PAX2、PAX9、PDE1A、PENK、PRG4、PROM1、PRRX1、PTN、RARRES1、RASD1、RELN、RGS1、SLITRK6、SMOC1、SMOC2、SNAP25、STMN2、TAC1、RSPO3、TNFSF7、TNNT2、TRH、TUBB4、UGT2B7およびWISP2。SM30細胞は、MSCマーカーであるCD74の発現に関して陰性である。
【0041】
適切な条件下(例えば、BMP-2もしくはTGF-β3もしくはBMP-4、またはこれらの因子の組み合わせの存在下での培養での生育)では、SM30細胞は、骨シアロタンパク質II(IBSP)、オステオポンチン(SPP1)およびアルカリホスファターゼ組織非特異型アイソザイム(ALPL)から選択される1種以上のマーカーを発現する骨形成前駆細胞へと分化することが可能である。
【0042】
MEL2
細胞株MEL2は、以下のマーカーに関して陽性であり:AKR1C1、AQP1、COL21A1、CRYAB、CXADR、DIO2、METTL7A、DKK2、DLK1、DLX5、HAND2、HSD17B2、HSPB3、MGP、MMP1、MSX2、PENK、PRRX1、PRRX2、S100A4、SERPINA3、SFRP2、SNAP25、SOX11、TFPI2およびTHY1、かつ以下のマーカーに関して陰性である:ACTC、ALDH1A1、AREG、CFB、C3、C20orf103、CD24、CDH3、CDH6、CNTNAP2、COL15A1、COMP、COP1、CRLF1、FGFR3、FMO1、FMO3、FOXF2、FST、GABRB1、GAP43、GDF5、GDF10、GJB2、GSC、HOXA5、HSD11B2、HSPA6、ICAM5、KCNMB1、KRT14、KRT17、KRT19、KRT34、MASP1、MEOX1、MEOX2、MYBPH、MYH3、MYH11、TAGLN3、NPAS1、NPPB、OLR1、PAX2、PDE1A、PITX2、PRG4、PTN、PTPRN、RASD1、RELN、RGS1、SMOC1、STMN2、TACT、TNFSF7、TRH、TUBB4、WISP2、ZIC1およびZIC2。MEL2細胞は、MSCマーカーであるCD74の発現に関して陰性である。
【0043】
適切な条件下(例えば、BMP-2もしくはTGF-β3もしくはBMP-4、またはこれらの因子の組み合わせの存在下での培養での生育)では、MEL2細胞は、骨シアロタンパク質II(IBSP)、オステオポンチン(SPP1)およびアルカリホスファターゼ組織非特異型アイソザイム(ALPL)から選択される1種以上のマーカーを発現する骨形成前駆細胞へと分化することが可能である。
【0044】
4D20.8
細胞株4D20.8は、以下のマーカーに関して陽性であり:BEX1、CDH6、CNTNAP2、COL21A1、CRIP1、CRYAB、DIO2、DKK2、GAP43、ID4、LAMC2、MMP1、MSX2、S100A4、SOX11およびTHY1、かつ以下のマーカーに関して陰性である:AGC1、ALDH1A1、AREG、ATP8B4、CFB、C3、C7、C20orf103、CDH3、CLDN11、COP1、CRLF1、DLK1、DPT、FMO1、FMO3、GDF10、GJB2、GSC、HOXA5、HSD11B2、HSD17B2、HSPA6、HSPB3、ICAM5、IFI27、IGF2、KRT14、KRT17、KRT34、MASP1、MEOX2、MSX1、MX1、MYBPH、MYH3、MYH11、TAGLN3、NPAS1、NPPB、OGN、OLR1、PAX2、PDE1A、PRG4、PROM1、PTN、PTPRN、RARRES1、RGS1、SNAP25、STMN2、TAC1、TNNT2、TRH、TUBB4、WISP2、ZIC1およびZIC2。4D20.8細胞は、MSCマーカーであるCD74の発現に関して陰性である。
【0045】
適切な条件下(例えば、TGF-β3、またはTGF-β3+BMP-4またはTGF-β3+GDF5の存在下での培養での生育)では、4D20.8細胞は、COL2A1またはACANを発現する軟骨形成前駆細胞へと分化することが可能である。
【0046】
7PEND24
細胞株7PEND24は、以下のマーカーに関して陽性であり:AQP1、BEX1、CDH3、DIO2、DLK1、FOXF1、FST、GABRB1、IGF2、IGFBP5、IL1R1、KIAA0644、MSX1、PODN、PRRX2、SERPINA3、SOX11、SRCRB4DおよびTFPI2、かつ以下のマーカーに関して陰性である:ACTC、AGC1、AKR1C1、ALDH1A1、ANXA8、APCDD1、AREG、CFB、C3、C6、C7、PRSS35、CCDC3、CD24、CLDN11、COMP、COP1、CXADR、DKK2、EMID1、FGFR3、FMO1、FMO3、GAP43、GDF10、GSC、HOXA5、HSD11B2、HSPA6、HTRA3、ICAM5、ID4、IFI27、IFIT3、INA、KCNMB1、KRT14、KRT17、KRT34、IGFL3、LOC92196、MFAP5、MASP1、MEOX1、MEOX2、MMP1、MX1、MYBPH、MYH3、MYH11、MYL4、IL32、NLGN4X、NPPB、OGN、OSR2、PAX2、PAX9、PENK、PITX2、PRELP、PRG4、PRRX1、RARRES1、RELN、RGMA、SFRP2、SMOC1、SMOC2、SOD3、SYT12、TAC1、TNFSF7、TRH、TSLP、TUBB4、UGT2B7、WISP2、ZD52F10、ZIC1およびZIC2。7PEND24細胞は、MSCマーカーであるCD74の発現に関して陰性である。
【0047】
適切な条件下(例えば、TGF-β3、またはTGF-β3+BMP-4またはTGF-β3+GDF5の存在下での培養での生育)では、7PEND24細胞は、COL2A1またはACANを発現する軟骨形成前駆細胞へと分化することが可能である。
【0048】
7SMOO32
細胞株7SMOO32は、以下のマーカーに関して陽性であり:ACTC、BEX1、CDH6、COL21A1、CRIP1、CRLF1、DIO2、DLK1、EGR2、FGFR3、FOXF1、FOXF2、FST、GABRB1、IGFBP5、KIAA0644、KRT19、LAMC2、TMEM119、MGP、MMP1、MSX1、MSX2、PODN、POSTN、PRG4、PRRX2、PTN、RGMA、S100A4、SERPINA3、SOX11およびSRCRB4D、かつ以下のマーカーに関して陰性である:AGC1、AKR1C1、ALDH1A1、ANXA8、APCDD1、AREG、ATP8B4、BMP4、C3、C6、C7、PRSS35、C20orf103、CCDC3、CD24、CLDN11、CNTNAP2、COL15A1、COP1、CXADR、METTL7A、DKK2、DPT、EMID1、TMEM100、FMO1、FMO3、GDF5、GDF10、GJB2、GSC、HOXA5、HSD11B2、HSD17B2、HSPA6、HSPB3、HTRA3、ICAM5、ID4、IFI27、IL1R1、INA、KCNMB1、KRT14、KRT17、KRT34、IGFL3、LOC92196、MFAP5、MASP1、MEOX1、MEOX2、MYBPH、MYH3、MYH11、MYL4、IL32、NLGN4X、NPPB、OGN、OLR1、OSR2、PAX2、PAX9、PDE1A、PITX2、PRELP、PROM1、PTPRN、RASD1、RGS1、SFRP2、SMOC1、SMOC2、SOD3、STMN2、SYT12、TAC1、RSPO3、TNFSF7、TNNT2、TRH、TSLP、TUBB4、UGT2B7、WISP2、ZD52F10、ZIC1およびZIC2。7SMOO32細胞は、MSCマーカーであるCD74の発現に関して陰性である。
【0049】
適切な条件下(例えば、TGF-β3、またはTGF-β3+BMP-4またはTGF-β3+GDF5の存在下での培養での生育)では、7SMOO32細胞は、COL2A1またはACANを発現する軟骨形成前駆細胞へと分化することが可能である。
【0050】
E15
細胞株E15は、以下のマーカーに関して陽性であり:ACTC、BEX1、PRSS35、CRIP1、CRYAB、GAP43、GDF5、HTRA3、KRT19、MGP、MMP1、POSTN、PRRX1、S100A4、SOX11、SRCRB4DおよびTHY1、かつ以下のマーカーに関して陰性である:AGC1、AKR1C1、ALDH1A1、ANXA8、APCDD1、AQP1、AREG、ATP8B4、CFB、C3、C6、C7、C20orf103、CDH3、CNTNAP2、COP1、CXADR、METTL7A、DLK1、DPT、EGR2、EMID1、TMEM100、FMO1、FMO3、FOXF1、FOXF2、GABRB1、GDF10、GJB2、GSC、HOXA5、HSD11B2、HSD17B2、HSPA6、HSPB3、IFI27、IFIT3、IGF2、INA、KRT14、TMEM119、IGFL3、LOC92196、MFAP5、MASP1、MEOX1、MEOX2、MSX1、MX1、MYBPH、MYH3、MYL4、NLGN4X、TAGLN3、NPAS1、NPPB、OGN、OLR1、PAX2、PAX9、PDE1A、PENK、PITX2、PRG4、PROM1、PTPRN、RARRES1、RASD1、RELN、RGS1、SLITRK6、SMOC1、SMOC2、SNAP25、STMN2、TAC1、TFPI2、RSPO3、TNFSF7、TNNT2、TRH、TSLP、TUBB4、UGT2B7、WISP2、ZD52F10およびZIC1。E15細胞は、MSCマーカーであるCD74の発現に関して陰性である。
【0051】
適切な条件下(例えば、TGF-β3、またはTGF-β3+BMP-4またはTGF-β3+GDF5の存在下での培養での生育)では、E15細胞は、COL2A1またはACANを発現する軟骨形成前駆細胞へと分化することが可能である。
【0052】
骨形成前駆細胞
骨形成前駆細胞(OPC)は、例えば、SM30、MEL2およびSK11細胞株などの始原細胞のin vitro分化により、取得される。例えば、TGF-βスーパーファミリーからの1種以上のタンパク質の存在下でのSM30細胞またはMEL2細胞の培養は、始原細胞から骨形成前駆細胞への分化を誘導する。例示的なTGF-βスーパーファミリーのメンバーとしては、限定するものではないが、BMP-2、BMP-4、BMP-7およびTGF-β3が挙げられる。始原細胞を骨形成前駆細胞へと変換するために用いることができる例示的な培養条件は、米国特許出願公開第2014/0234964号に記載されている。
【0053】
特定の実施形態では、OPCのクローン性培養物およびOPCのクローン性培養物由来の細胞由来調製物が、本明細書中に記載される組成物の製造に用いられる。特定の実施形態では、本明細書中に記載される細胞由来調製物は、胚様体からは取得されない。
【0054】
軟骨形成前駆細胞
特定の実施形態では、本明細書中に開示される組成物は、単独で、または骨形成前駆細胞由来の細胞由来調製物に加えて、軟骨形成前駆細胞から取得される細胞由来調製物を含有することができ、それにより、複合移植片が提供される。例示的な軟骨形成前駆細胞は、米国特許出願公開第2010/0184033号、国際公開第2013/010045号および米国特許第8,695,386号(これらのすべてが、軟骨形成前駆細胞およびその性質を開示する目的のために、その全体で参照により本明細書中に組み入れられる)に記載されている。軟骨形成細胞から取得される生物活性因子もまた、複合移植片中の軟骨形成細胞由来の細胞由来調製物の代替物として、またはそれに加えて、用いることができる。
【0055】
複合移植片
骨形成前駆細胞および軟骨形成前駆細胞の両方に由来する細胞由来調製物、またはそれらから誘導される生物活性因子を含有する複合移植片を、様々な筋骨格疾患の治療のために用いることができる。これらとしては、限定するものではないが、離断性骨軟骨症(OCD)および他の深部骨軟骨関節の損傷(例えば、病的状態、傷害または骨軟骨移植片を回収する処置に由来する外科的に生じた損傷)が挙げられる。
【0056】
特定の実施形態では、複合移植片は、2つの別々の層を用いて作製される:宿主骨組織への固定のための骨形成性層、および摩擦のない関節運動表面を生じさせるための生物活性物質を含む軟骨でできている軟骨層。そのような複合移植片は、深部骨軟骨関節損傷部へと圧入することができる。移植材料は、生物学的担体の第1の層または一区画へと骨形成前駆細胞(または骨形成前駆細胞由来の細胞由来調製物)を、および生物学的担体の第2の層へと軟骨形成前駆細胞(または軟骨形成前駆細胞由来の細胞由来調製物)を、順番に付加することにより、調製される。
【0057】
複合移植片は、骨形成前駆細胞および/もしくは軟骨形成前駆細胞、骨形成前駆細胞および/もしくは軟骨形成前駆細胞由来の細胞由来調製物、または細胞と細胞由来調製物との組み合わせのうちのいずれかの組み合わせから作製できる。
【0058】
そのような複合移植片は、例えば、膝関節または股関節などの関節の骨軟骨損傷の治療に有用である。移植片の骨形成性部分は、構造的支持を与え、かつ軟骨下骨と一体化するであろうし、一方で、軟骨形成性部分は、関節中の軟骨損傷を修復し、滑らかな摩擦のない動作をもたらすであろう。複合移植片は、標準的な骨軟骨移植手術用具を用いる関節鏡下での配置を可能にするために、様々な円筒形形状の直径で切削または成形することができる。あるいは、比較的大きな可撓性表面領域の移植片を、大きな損傷領域を覆い、かつ関節表面の自然な輪郭に合わせるために設計することができるであろう。
【0059】
生物学的担体
移植に先立って、それに対して細胞および生物活性物質を吸着させることができる、移植可能な生物学的担体は、当技術分野で公知である。例えば、米国特許出願公開第2004/0062753号(参照により組み入れられる)を参照されたい。開示される組成物の製造での使用のための例示的な生物学的担体としては、コラーゲン(例えば、コラーゲンスポンジ)、ヒアルロナン、フィブリン、エラスチン、ヒドロゲル(例えば、Ahmed (2015) “Hydrogel: Preparation, Characterization and Applications: A Review,” J. Advanced Res. 6(2):105-121を参照されたい)、ゼラチン、天然に存在する細胞外マトリックス(ECM)(例えば、マトリゲル(登録商標)、羊膜、脱灰骨基質)、合成ECM(例えば、組み換え的に産生されたコラーゲン)、ならびに、例えば、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)およびそれらの組み合わせなどの合成担体が挙げられる。例えば、ヒドロキシアパタイトおよびリン酸三カルシウムなどの種々のセラミック、ならびにコラーゲン/セラミック複合材料もまた、生物学的担体として用いることができる。
【0060】
特定の実施形態では、合成マトリックスまたは生物学的に再吸収可能な固定化ビヒクル(「スキャホールド」と称される場合もある)に、本明細書中に開示される通りの始原細胞、骨形成前駆細胞、および/または軟骨形成前駆細胞を含侵させる。様々な担体マトリックスが現在までに用いられてきており、以下のものが挙げられる:三次元コラーゲンゲル(米国特許第4,846,835号;Nishimoto (1990) Med. J. Kinki University 15:75-86;Nixon et al. (1993) Am. J. Vet. Res. 54:349-356;Wakitani et al. (1989) J. Bone Joint Surg. 718:74-80;Yasui (1989) J. Jpn. Ortho. Assoc. 63:529-538);再構成フィブリン-トロンビンゲル(米国特許第4,642,120号;同第5,053,050号および同第4,904,259号);ポリ無水物、ポリオルト酸エステル、ポリグリコール酸およびそれらのコポリマーを含有する合成ポリマーマトリックス(米国特許第5,041,138号);ヒアルロン酸ベースのポリマー(Robinson et al. (1990) Calcif. Tissue Int. 46:246-253);ならびにヒアルロナンおよびコラーゲンベースのポリマー(HyStem(登録商標)-C(BioTime社)など、例えば、米国特許第7,981,871号および同第7,928,069号に記載される通り)(それらの開示は参照により本明細書中に組み入れられる)。HyStem(登録商標)-Cは、望ましくない炎症または線維化の予防が望まれる多数の用途、例えば、回旋腱板の腱の断裂などの外傷性整形外科的傷害、手根管症候群、および腱に対する外傷の修復などで広く用いることができる。
【0061】
本明細書中に開示される通りの骨形成前駆細胞および/または軟骨形成前駆細胞は、Methods of Tissue Engineering (2002)(Anthony Atala and Robert P. Lanza編、Academic Press (London)刊行)(組織再建のその説明に関して(例えば、1027〜1039頁)、参照により本明細書中に組み入れられる)に記載されている通りの組織再建に用いることができる。例えば、細胞を成形構造中に配置し(例えば、射出成形により)、かつ被験体に移植することができる。時間と共に、細胞により生成される組織が成形構造を置換し、それにより形づくられた構造(すなわち、当初の成形構造の形状での)を生じるであろう。成形構造に対する例示的な型の材料としては、ヒドロゲル(例えば、アルギン酸、アガロース、ポロキサマー(polaxomer;プルロニック))および天然材料(例えば、I型コラーゲン、II型コラーゲン、およびフィブリン)が挙げられる。
【0062】
特定の実施形態では、生物学的担体は、脱灰骨基質(DBM)である。他の実施形態では、生物学的担体は、脱灰骨基質ではない。
【0063】
細胞由来調製物
本明細書中に開示される通りの移植片形成ユニットは、骨形成前駆細胞由来の細胞由来調製物および/または軟骨形成前駆細胞由来の細胞由来調製物と組み合わされた生物学的担体を含む。細胞由来調製物は、例えば、凍結乾燥物、溶解物、抽出物、エキソソーム調製物および/または馴化培地の調製物であり得る。そのような細胞由来調製物は、互いに対して正常な生理的割合で生物活性物質の混合物を含有するであろう。骨化などのプロセスは、それぞれが最適な濃度で存在する複数の因子にしばしば依存するので、生理的割合の生物活性因子を含有する、本明細書中に記載されるものなどの組成物は、最大限有効であろう。
【0064】
細胞由来調製物は、特定の状況では、少数の残留生存細胞を含むことができる。細胞由来調製物の生存細胞含有量を推定するための方法としては、例えば、トリパンブルー染色およびLDH放出アッセイが挙げられる。特定の実施形態では、細胞由来調製物は、それに由来して細胞由来調製物が取得された細胞数と比較して、5%未満の生存細胞を含有する。追加の実施形態では、細胞由来調製物は、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.25%未満、0.1%未満、もしくは0.05%未満の生存細胞を含有するか、または生存細胞をまったく含有しない。
【0065】
溶解物
細胞溶解物の調製方法は、当技術分野で周知である。物理的方法としては、例えば、ブレンダーまたはホモジナイザー、超音波破砕、凍結融解および手動によるすり潰しを用いるものなどの、細胞膜の機械的破壊が挙げられる。化学的方法としては、例えば、SDS、Triton X-100、Triton N-101、Triton X-114、Triton X-405、Triton X-70S、Triton DF-16、モノラウリン酸エステル(Tween 20)、モノパルミチン酸エステル(Tween 40)、モノオレイン酸エステル(Tween 30 80)、ポリオキシエチレン-23-ラウリルエーテル(Brij 35)、ポリオキシエチレンエーテルW-l(Polyox)、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸塩、CHAPS、サポニン、n-デシル〜-D-グルコピラノシド(glucopuranoside)、n-ヘプチル〜-D-グルコピラノシド、n-オクチル a-D-グルコピラノシドおよびNonidet P-40などの界面活性剤を用いて細胞を処理することが挙げられる。
【0066】
特定の実施形態では、増殖因子を除去または不活性化しないので、溶解に対して物理的方法が用いられる。それに対して、界面活性剤は、増殖因子と共に複合体を形成する場合があり、これは覆す(逆転させる)ことが困難であり得る。例えば、RIPAバッファーまたはCellLyticバッファー(Sigma, St. Louis, MO)で見出される通り、この問題を最小限にするために、比較的低い濃度の界面活性剤を用いることができる。物理的溶解と少量の界面活性剤との両方を利用する組み合わせ法もまた、用いることができる。
【0067】
凍結融解溶解物を取得する例示的な方法では、細胞を培養し、かつ任意により分化させて、所望の個数の前駆細胞を得る。前駆細胞を、トリプシンを用いて培養容器から取り出し、生理食塩液でリンスし、トリプシンを除去するために遠心分離する。細胞ペレットを洗浄して生理食塩液を除去し、細胞ペレットを覆うために十分な体積の水に再懸濁する。細胞を−20℃以下の温度で維持し(例えば、30分間)、続いて、融解させる(例えば、37℃または室温で)。この凍結/融解サイクルは、必要な場合、1回以上(例えば、3回)繰り返すことができる。所望の回数の凍結/融解サイクルに続いて、溶解物を13,000rpmでの遠心分離に供する。ペレットは細胞膜残渣を含有し、上清は細胞のタンパク質を含有する。特定の実施形態では、凍結/融解サイクルは、膜から上清へのタンパク質(例えば、増殖因子)の放出を補助するために、少量の界面活性剤(例えば、0.1%Triton X-100)の存在下で行なわれる。
【0068】
凍結/融解溶解物を取得するための代替的な方法は、生物学的担体(例えば、スキャホールド)上で細胞を培養し、任意により分化させ、それにより所望の個数の前駆細胞を取得することである。細胞含有スキャホールドを、生理食塩液を用いて十分にリンスし、遠心分離する。生理食塩液を除去し、細胞播種スキャホールドを覆うために十分な体積の水を加える。細胞含有スキャホールドを−20℃で凍結させ(例えば、30分間)、かつ37℃または室温で融解させる。凍結/融解サイクルは、必要な場合には繰り返すことができ、所望の回数のサイクルに続いて、調製物を、任意により凍結乾燥させる。この方法を用いると、細胞膜はスキャホールド上に残り、これは表面分子(例えば、膜タンパク質)の回収に対して有利であると明らかになる可能性がある。
【0069】
超音波破砕により溶解物を得るためには、細胞を培養し、任意により分化させて所望の個数の前駆細胞を取得し、続いて、組織培養容器から取り出す(例えば、トリプシンを用いて)。細胞を遠心分離し、かつ過剰量のPBSまたは生理食塩液を用いて洗浄し(例えば、3回)、培養培地およびトリプシンを除去する。最終的な細胞ペレットを再懸濁し(例えば、PBS、水または生理食塩液中)、氷上に置く。あるいは、細胞を、プロテアーゼ阻害剤を含有するバッファー(例えば、50mM Tris-HCl pH7.5、10μg/mLアンチパイン、0.5μMペプスタチン、0.1mM DTT、0.1mM PMSF)中に再懸濁する。超音波破砕は、例えば、Soniprep(MSE, London, UK)またはBranson sonifier(Emerson Industrial, Danbury, CT)を用いて、サンプルを氷上に維持しながら、15秒間オン、5秒間オフで3サイクル、20%出力で行なわれる。あるいは、5秒間の3回のバーストを、25秒間隔で15度のミクロン出力(15 amplitude micron power)を使用して、用いることができる。当業者は、超音波破砕法を、パルス時間、反復数およびパルス強度を変更することにより最適化できることを認識する。超音波破砕されたサンプルは、15,000rcfでの5分間の遠心分離に供し、上清を回収する。上清は細胞内分子(例えば、タンパク質)を含有し、かつペレットは細胞膜を含有する。膜から上清への増殖因子および他の表面分子の放出を補助するために、少量の界面活性剤(例えば、0.1%Triton X-100)を含めることができる。
【0070】
凍結/融解溶解物および超音波破砕により取得される溶解物の両方に関して、上清の体積は、所望のタンパク質濃度を得るために調整することができる。あるいは、タンパク質を濃縮するための標準的な方法を用いることができる。例えば、Centricon(EMD Millipore, Temecula, CA)は、タンパク質を残しながら体積を減少させるために用いることができる遠心分離/ろ過方法である。硫酸アンモニウム、トリクロロ酢酸、アセトンまたはエタノールを用いるタンパク質沈殿もまた、タンパク質を濃縮するために慣用的に用いられる。
【0071】
特定の実施形態では、乾燥した生物学的担体に飽和濃度の溶解物を加え、かつ溶解物でコーティングされた生物学的担体を凍結乾燥させることにより、溶解物コーティングされた生物学的担体が取得される。
【0072】
凍結乾燥物
凍結乾燥(lyophilization、すなわち、フリーズドライ(freeze-drying))は当技術分野で公知であり、低圧および低温にサンプルを供するステップを含む。
【0073】
骨形成前駆細胞の凍結乾燥物を取得するための例示的な方法は、骨形成前駆細胞の懸濁物を生物学的担体に添加し(または、生物学的担体上で骨形成前駆細胞を生育させ)、かつ細胞播種担体を凍結乾燥させることである。
【0074】
抽出物
追加の実施形態では、骨形成前駆細胞および/または軟骨形成前駆細胞の溶解物を、さらに精製または分画して、細胞抽出物を得る。哺乳動物細胞の抽出物を作製するための方法は、当技術分野で公知である。続いて、抽出物を生物学的担体に添加することができ、抽出物播種担体を任意により凍結乾燥させる。
【0075】
本明細書中で用いる場合、「抽出物」とは、溶媒(例えば、水、界面活性剤、バッファー、有機溶媒)を用いて、細胞培養物、細胞溶解物、細胞ペレット、細胞上清または細胞画分から取得され、かつ任意により、例えば、遠心分離、ろ過、カラム分画、限外ろ過、相分配または他の方法により分離された溶液を意味する。細胞抽出物の調製に用いることができる例示的な溶媒としては、限定するものではないが、尿素、塩化グアニジウム、グアニジウムイソチオシアネート、過塩素酸ナトリウムおよび酢酸リチウムが挙げられる。
【0076】
馴化培地
追加の実施形態では、馴化培地は、骨形成前駆細胞および/または軟骨形成前駆細胞の培養物から調製され、かつ馴化培地は、任意により、さらに精製または分画される。馴化培地、またはその画分を、生物学的担体に添加し、飽和した担体を、任意により凍結乾燥させる。
【0077】
哺乳動物細胞培養物から馴化培地を取得するための方法は、当技術分野で公知である。一般的には、細胞を、増殖、または所望の場合には分化に適した条件下で培養する。続いて、細胞を培養容器から取り出し、洗浄し、少量の培養培地(例えば、DMEM+Glutamax(Gibco/Invitrogen, Carlsbad, CA))中に再播種する。細胞を培養し(例えば、24〜48時間)、かつ培地を回収して、馴化培地を得る。
【0078】
馴化培地は、様々な分化ステージで、かつ/または培養の様々な時点で取得することができる。例えば、馴化培地は、始原細胞(例えば、SM30細胞、MEL2細胞)から取得することができ、または馴化培地は、前駆細胞(例えば、骨形成前駆細胞および/または軟骨形成前駆細胞)から取得することができる。あるいは、馴化培地は、始原細胞から前駆細胞への分化中の1箇所以上のステージで取得することができる。あるいは、馴化培地は、様々な期間、非分化条件下で培養された細胞(例えば、始原細胞または前駆細胞)から取得することができる。
【0079】
一旦回収されたら、馴化培地は、任意により、当業者に公知の標準的な技術を用いて、濃縮または分画によりさらに処理することができる。濃縮は、例えば、培養培地を回収し、かつ該培地を限外ろ過に供することにより、達成される。
【0080】
エキソソーム
エキソソームは、30〜120nmの膜結合小胞であり、かつ広範囲の哺乳動物細胞タイプから分泌される。Keller et al., (2006) Immunol. Lett. 107 (2): 102;Camussi et al., (2010) Kidney International 78:838。エキソソームは、in vitroならびにin vivoで生育している細胞の両方に見出される。エキソソームは、組織培養培地から、ならびに血漿、尿、母乳および脳脊髄液などの体液から、単離することができる。George et al., (1982) Blood 60:834;Martinez et al., (2005) Am J. Physiol. Health. Cir. Physiol 288: H1004。エキソソームは、mRNAおよびmiRNAなどの核酸ならびに種々の増殖因子および/または分化因子などのタンパク質をはじめとする、細胞により合成される様々な分子を収容している。
【0081】
エキソソームは、エンドソーム膜区画から発生する。エキソソームは、後期エンドソームの多小胞体内の腔内小胞(intraluminal vesicle)中に保管される。多小胞体は、初期エンドソーム区画から誘導され、かつその中にエキソソームを含む小型の小胞を収容している。エキソソームは、多小胞体が形質膜に融合する際に、細胞から放出される。細胞からエキソソームを単離するための方法は当技術分野で公知であり、かつ、例えば、米国特許出願公開第2012/0093885号;Lamparski et al., (2002) J. Immunol. Methods 270(2):211-226;Lee et al., (2012) Circulation 126(22):2601-2611;Boing et al., (2013) J. Extracell Vesicles 3:23430およびWelton et al., (2015) J. Extracell Vesicles 4:27269に記載されている。骨形成前駆細胞からエキソソームを調製するための例示的な方法は、下記の実施例4に提供される。
【0082】
エキソソームは、様々な分化ステージで、かつ/または培養の様々な時点で取得することができる。例えば、エキソソームは、始原細胞(例えば、SM30細胞、MEL2細胞)から取得することができ、またはエキソソームは、前駆細胞(例えば、骨形成前駆細胞および/または軟骨形成前駆細胞)から取得することができる。あるいは、エキソソームは、始原細胞から前駆細胞への分化中の1箇所以上のステージで取得することができる。あるいは、エキソソームは、様々な期間、非分化条件下で培養された細胞(例えば、始原細胞または前駆細胞)から取得することができる。
【0083】
特定の実施形態では、エキソソームの調製物を生物学的担体に添加し、エキソソーム飽和担体を、任意により凍結乾燥させる。エキソソーム懸濁物は、任意により無菌的に、1千万個、1億個、10億個、100億個、または1000億個の粒子/1ccの滅菌されたマトリックス(またはそれらの間のいずれかの整数値)以上の範囲の様々な濃度で添加することができる。凍結乾燥は、マトリックス支持体により吸着されたエキソソーム由来の生物活性因子を安定化し、それにより、それらは室温で無期限に維持することができるようになる。
【0084】
精製された組み換え因子:
上述の細胞由来調製物のいずれかを、当技術分野で周知の方法により(例えば、相分配、遠心分離、サイズ排除、クロマトグラフィー、HPLC)、かつ/または分子量、電荷密度、もしくは種々の溶液中での相対的溶解度に従って分子を分離する方法により、さらに分画することができ、それにより、1種以上の生物活性因子を含有する画分が得られる。そのような画分を、移植片形成ユニットを提供するために、生物学的担体と組み合わせることができる。
【0085】
加えて、移植片形成ユニットを提供するために、1種以上の組み換えタンパク質を、生物学的担体と組み合わせることができる。例えば、骨形成タンパク質(BMP)のファミリーは、骨形成を刺激することが知られている。したがって、生物学的担体を、1種以上のBMPファミリーメンバー(例えば、BMP-2、BMP-4、BMP-7、BMP-12、BMP-14/GDF-5)と組み合わせて、移植後の骨形成を刺激するために用いることができる。
【0086】
製造方法
本発明の組成物は、(1)骨形成前駆細胞および/または軟骨形成前駆細胞の細胞由来調製物と(2)生物学的担体との組み合わせ、ならびに(1) 1種以上の生物活性物質と(2)生物学的担体との組み合わせを含む。組み合わせは、細胞、溶解物、抽出物、馴化培地、エキソソームまたは生物活性物質の担体への添加、および任意により、それに続く、例えば、溶解および/もしくは凍結乾燥により簡潔に組み立てることができ、または、担体を、細胞を含む培養物中に配置し、所定の時間後に取り出すことができる。次に、細胞播種担体を保存用に調製するか(例えば、凍結乾燥により)、または担体に吸着したままの細胞内の内容物を放出させる様式で処理することができる。後者の場合には、任意により、膜タンパク質を、保存および使用前に担体から除去し;これは、膜タンパク質が移植レシピエントでの炎症応答の一因となり得るからである。
【0087】
使用
本明細書中に開示される方法および組成物は、とりわけ、骨移植脊椎固定術を補助するために、または外傷および整形外科的骨再建に対して、用いることができる。本明細書中に記載される通りの移植片形成ユニットは、単独で損傷を治療するために、または、例えば自家骨移植片を補強するために組み合わせて、利用することができる。例えば、骨シェービング切片から局部的に誘導される自家骨移植片は、腸骨稜から誘導される自家骨よりも品質が低い。つまり、本明細書中に開示される移植片形成ユニットは、整形外科的骨修復処置のための自家骨移植片の使用を補助するであろう、そのまま使える骨移植用生成物を提供し、それにより、痛みおよびリスクを伴う自家骨回収プロセスを回避させる。あるいは、開示される組成物は、骨の治癒および固定を補強するために、自家骨シェービング切片と組み合わせて用いることができる。
【0088】
追加の適用としては、骨外傷、頭蓋顎顔面再建および端部の骨修復(例えば、足および/または足首の関節固定術)が挙げられる。
【0089】
細胞由来移植片形成ユニットの使用は、生存細胞を含む治療用組成物と比較して、多数の利点を有する。例えば、細胞由来組成物は滅菌することができ、それにより、より長い保存寿命および/または室温で保存できることを可能にする。加えて、cGMP製造、保存および輸送物流管理が、細胞由来移植片形成ユニットにより単純化され、したがって、製品原価もまた相当に低下することが期待される。腫瘍および/または奇形腫(生存細胞の移植により生じる)のリスクもまた、細胞由来組成物の使用により減少する。
【0090】
システムおよびキット
特定の実施形態では、任意により凍結乾燥または安定化された細胞由来調製物および/または生物活性物質は、医療現場で生物学的担体に添加される。したがって、本開示は、(1)骨形成前駆細胞由来の細胞由来調製物および/または軟骨形成前駆細胞由来の細胞由来調製物ならびに(2)生物学的担体を含むシステムおよびキットを提供する。システムおよびキットは、本明細書中に記載される通りの、研究および/または治療用途に対する、細胞の増殖および使用のための試薬および材料をさらに含むことができる。
【0091】
生物学的寄託
本出願中に記載される細胞株は、ブダペスト条約の下にAmerican Type Culture Collection(「ATCC」;P.O. Box 1549, Manassas, Va. 20108, USA)に寄託されている。細胞株4D20.8(ACTC84としても知られる)は第11継代で2009年7月23日にATCCに寄託され、ATCC受託番号PTA-10231を有する。細胞株SM30(ACTC256としても知られる)は第12継代で2009年7月23日にATCCに寄託され、ATCC受託番号PTA-10232を有する。細胞株7SM0032(ACTC278としても知られる)は第12継代で2009年7月23日にATCCに寄託され、ATCC受託番号PTA-10233を有する。細胞株E15(ACTC98としても知られる)は継代数20で2009年9月15日にATCCに寄託され、ATCC受託番号PTA-10341を有する。細胞株MEL2(ACTC268としても知られる)は継代数22で2010年7月1日にATCCに寄託され、ATCC受託番号PTA-11150を有する。細胞株SK11(ACTC250としても知られる)は継代数13で2010年7月1日にATCCに寄託され、ATCC受託番号PTA-11152を有する。細胞株7PEND24(ACTC283としても知られる)は継代数11で2010年7月1日にATCCに寄託され、ATCC受託番号PTA-11149を有する。
【実施例】
【0092】
以下の実施例は、本発明者らが自身の発明であると見なすものの範囲を限定することを意図するものではなく、かつ下記の実験が、行なわれたすべての実験であるか、またはそれしか行われなかった実験であることを表わすことを意図するものでもない。用いられる数(例えば、量、温度など)に関して、正確性を確認する努力がなされたものの、幾分かの実験的誤差および偏差が考慮されるべきである。
【0093】
実施例1:骨形成前駆体および軟骨形成前駆体へのヒト胚性始原(hEP)細胞の分化
hEP細胞株であるSM30、4D20.8、およびMEL2は、下記の例示的方法に記載される通り、in vitroで骨形成前駆体へと変換することができる。
【0094】
ゼラチンおよびビトロネクチンを含有するゲル中での骨形成前駆体への分化
組織培養プレートを、12μg/mLのI型コラーゲン(ゼラチン)および12μg/mLのビトロネクチンに24時間曝露した。続いて、ゼラチン/ビトロネクチン溶液を吸引除去し、細胞(SM30またはMEL2)を、コンフルエント密度で加えた。以下の成分を含む骨形成培地:DMEM(低グルコース)(L-グルタミン含有)、10%胎児ウシ血清、0.1μMデキサメタゾン、0.2mMアスコルビン酸2-リン酸塩、10mMグリセロール-2-リン酸、および100nM BMP7を添加し、細胞をさらに15〜21日間培養した。
【0095】
骨形成の程度を、以下の通りに行なわれるアリザリンレッドSによる相対的染色性によりスコア付けした:アリザリンレッド(Sigma社)(40mM)を蒸留水中に調製し、10%(v/v)水酸化アンモニウムを用いてpHを4.1に合わせる。6ウェルプレート(10cm
2/ウェル)中の単層をPBSで洗浄し、10%(v/v) ホルムアルデヒド(Sigma-Aldrich社)を用いて室温で15分間固定した。続いて、単層を過剰量の蒸留水で2回洗浄し、次に1ウェル当たり1mLの40mMアリザリンレッドS(pH4.1)を加えた。プレートを、穏やかに振盪しながら室温で20分間インキュベートした。取り込まれなかった色素の吸引除去後、5分間振盪しながら、ウェルを4mLの水で4回洗浄した。続いて、過剰な水の除去を促進するためにプレートを傾けたまま2分間置き、再度吸引除去し、続いて−20℃で保存して、その後に色素を抽出した。染色された単層は、倒立顕微鏡(Nikon社)を用いて位相差顕微鏡観察により可視化した。染色性の定量化のために、800μLの10%(v/v)酢酸を各ウェルに加え、プレートを、振盪しながら室温で30分間インキュベートした。単層(プレートに緩く付着している)を、セルスクレイパー(Fisher Lifesciences社)を用いてプレートから掻き取り、10%(v/v)酢酸と共に1.5mL微量遠心チューブへと広口ピペットを用いて移した。30秒間ボルテックスにかけた後、スラリーに500μLのミネラルオイル(Sigma-Aldrich社)を重ね、正確に85℃で10分間加熱し、5分間氷中に移した。完全に冷却されるまで、チューブは開けなかった。続いて、スラリーを20,000gで15分間遠心分離し;500μLの上清を、新しい1.5mL微量遠心チューブへと取り出した。200μLの10%(v/v)水酸化アンモニウムを、酸を中和するために加えた。この時点でpHを測定し、4.1から4.5の間であることを確認した。上清のアリコート(150μL)を、3回反復測定で、遮光壁の透明底プレート(Fisher Lifesciences社)を用いて96ウェル形式で405nmでの分光光度測定により、記載された通りにアッセイした(Gregory, CA et al., (2004) Analytical Biochemistry 329:77-84)。
【0096】
架橋されたヒアルロン酸およびゼラチンを含有するゲル中での骨形成前駆体への分化
本明細書中に開示される細胞株は、ヒアルロン酸およびゼラチンを含有する架橋型ゲルをはじめとするヒドロゲル中で、増殖因子および/もしくは分化因子の添加ありまたはなしでも分化させることができる(例えば、米国特許出願公開第2014/0234964号を参照されたい)。この方法では、細胞をトリプシン処理し、続いて、1〜30×10
6細胞/mLの濃度でHyStem-CSS(Glycosan Hydrogel Kit GS319)中に製造業者の指示に従って懸濁する。
【0097】
HyStem-CSSは、以下の通りに調製される。HyStem(チオール修飾型ヒアルロナン(thiol-modified hyaluranan))を1mLの脱気した脱イオン水中に溶解させる(約20分間かかる)。Gelin-S(チオール修飾型ゼラチン)を1mLの脱気した脱イオン水中に溶解させ、PEGSSDA(ジスルフィド含有ジアクリル酸PEG)を0.5mLの脱気した脱イオン水中に溶解させる(本明細書中では「PEGSSDA溶液」と称される)。HyStem(1mL)を、使用の直前に、気泡を作らずにGelin-S(1mL)と混合する(本明細書中では「HyStem:Gelin-Sミックス」と称される)。
【0098】
レチノイン酸(RA)および上皮増殖因子(EGF)を含有するHyStemヒドロゲル中での分化のためには、1.7×10
7個の細胞をペレット化して、1.4mLのHystem:Gelin-Sミックス中に再懸濁する。続いて、0.35mLのPEGSSDA溶液を加え、気泡を作らずにピペットで出し入れし、100μLのアリコートを、複数の24ウェルインサート(Corning社、カタログ番号3413)へと素早く載せる。約20分間のうちにゲル化が起こったら、封入された細胞に2mLの増殖培地(全トランス型RA(1μM)含有)(Sigma社、カタログ番号262)または2mLの増殖培地(EGF(100ng/mL)含有)(R&D systems社、カタログ番号236-EG)を加える。約28日間にわたって、細胞に週3回培地を加える。この時点またはそれ以降の時点で、細胞を溶解させることができ、かつ、所望であれば、qPCRまたはマイクロアレイ分析用に、RNAを回収することができる(例えば、RNeasy microキット(Qiagen社、カタログ番号74004)を用いる)。
【0099】
軟骨形成を誘導するための架橋されたヒアルロン酸およびゼラチンを含有するヒドロゲル中での分化
細胞を、1.4mLのHystem:Gelin-Sミックス中に2×10
7細胞/mLの密度で懸濁する。続いて、0.35mLのPEGSSDA溶液を加え、気泡を作らずにピペットで出し入れし、100μLのアリコートを、複数の24ウェルインサート(Corning社、カタログ番号3413)へと素早く載せる。約20分間のうちにゲル化が起こったら、封入された細胞に2mLの完全軟骨形成培地(Lonza不完全培地+TGF-β3(Lonza社、PT-4124))を加える。不完全軟骨形成培地は、hMSC Chondro BulletKit(PT-3925)と、これに加えられた添加物 (Lonza, Basel, Switzerland;Poietics Single-Quots、カタログ番号PT-4121)からなる。不完全軟骨形成培地を調製するために加えられる添加物は、以下の通りである:デキサメタゾン(PT-4130G)、アスコルビン酸塩(PT-4131G)、ITS+サプリメント(4113G)、ピルビン酸塩(4114G)、プロリン(4115G)、ゲンタマイシン(4505G)、およびグルタミン(PT-4140G)。無菌凍結乾燥TGF-β3を、無菌の4mM HCl(1mg/mLウシ血清アルブミン(BSA)含有)の添加により、20μg/mLの濃度に再調製し、アリコートに分けて−80℃で保存する。完全軟骨形成培地は、1μLの再調製されたTGF-β3をそれぞれ2mLの不完全軟骨形成培地に添加することにより、使用直前に調製する(最終的なTGF-β3濃度は10ng/mL)。細胞に、週3回、再度培地を加え、合計で14日間培養する。続いて、細胞を溶解させて、所望であれば、RNeasy microキット(Qiagen社、カタログ番号74004)を用いてRNAを回収することができる。
【0100】
実施例2:コラーゲン含有移植片
骨形成前駆細胞を含有する移植片の骨形成能力を試験するために、ヌードラット骨誘導モデルを用いた。簡潔には、コラーゲンスポンジスキャホールドと組み合わせた、記載される通りに以前に単離および特性決定されている細胞株SM30またはMEL2(West et al., Regen. Med. 3: 287-308 (2008))由来の
凍結乾燥物から構成される移植片形成ユニットを、ヌードラットの背中の筋内の空隙(intramuscular pouch)に移植し、異所的な骨形成の程度を評価した。
【0101】
細胞株を、単層として独立に播種し、以前に記載された条件を用いて増殖させた(Sternberg et al., 2013 Regen. Med. 8(2): 125-144;米国特許出願公開第2014/0234964号)。組織培養増殖後に、細胞を、0.083%トリプシン-EDTA(Gibco Life Technologies, NY)(SM30)またはAccutase(Gibco, NY)(MEL2)を用いて37℃で3〜5分間分散させ、増殖培地(PromoCell, Germany)中に0.5×10
6細胞/100μLで再懸濁した。乾燥コラーゲンスポンジ(寸法1×1×0.5cm、DANE Industrial Technologies Inc., NJ)を24ウェル超低クラスタープレート(Corning, MA)の各ウェルに、コラーゲンスポンジ(collage sponge)の孔側が上になるように入れた。約100μLの細胞を各コラーゲンスポンジへと1滴ずつ播種し、室温で10〜15分間静置した。続いて、1.5mLの増殖培地を各ウェルに加え、細胞を、5%O
2および10%CO
2を含む37℃のインキュベーター中で一晩維持した。
【0102】
骨形成分化を誘導するために、細胞が添加されたコラーゲンスポンジを、1×ITS(BD Bioscience, CA)、2mM Glutamax(Gibco社)、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン(Gibco社)、1mMピルビン酸ナトリウム(Gibco社)、100nMデキサメタゾン(Sigma社)、0.35mM L-プロリン(Sigma社)、0.17mM 2-ホスホ-L-アスコルビン酸(Sigma社)、10mM β-グリセロリン酸(Sigma社)、100ng/mL BMP2(Humanzyme, IL)および10ng/mL TGF-β3(R&D Systems, MN)が添加されたダルベッコ改変イーグル培地(Corning, MA)からなる誘導培地を用いて14日間処理した。14日目に、培地を吸引除去し、細胞播種スポンジをPBSで1回洗浄し、続いて、FreeZone 2.5(Labcono, Kansas City, Missouri)中で16〜24時間凍結乾燥させ、その後に移植した。
【0103】
陰性対照スポンジ(細胞を含有しない)は、増殖培地中または誘導培地中で14日間処理し、その時点で培地を除去し、スポンジをPBSで1回洗浄し、細胞播種スポンジに関して上記で説明した通りに凍結乾燥させた。
【0104】
陽性対照に関しては、0.3μg/μLの濃度まで滅菌水中に溶解させた組み換えヒト骨形成タンパク質(rhBMP-2)(R&D labs社)を含有する50μLの溶液を、乾燥コラーゲンスポンジに添加し、20分間吸収させて、その後に移植した。
【0105】
次に、移植片を、免疫不全NIH-Foxn1
rnu/rnuラット(ヒト抗原に対して免疫応答を生起しない)の背側の筋肉に外科的に作製された空隙に移植した。移植に先立って、50μLの水を各スポンジ(実験用および対照用)に添加した。ラット1頭当たりに4箇所の反復移植が用いられ、下記の通り、2箇所は背中の胸部(胸)領域であり、2箇所は背中の腰部領域であった。動物を、確立されたUCSD IACUC承認手順に従って麻酔し、UCSD IACUCガイドラインに記載される通りに外科手術に対して準備した。切開部位を剃毛し、ベタダインおよびアルコールを用いて消毒した。後正中線切開を皮膚に行なった。2箇所の別々の傍正中切開を、腰筋膜および胸部傍脊椎筋膜(thoracic paravertebral fascia)に正中線から3mmのところで行ない、各レベルで2箇所の筋内の空隙を、これらの切開部を介して作製した。移植片を、各筋内空隙に移植した。皮下組織を、4.0 Vicrylを用いて縫合し、皮膚をホッチキスで閉じた。動物に抗生物質を投与し、麻酔から回復させて、ケージに戻した。手術の1日後に、鎮痛のために、動物にBuprenex(登録商標)(0.05mg/kg IP)を投与した。その後、ラットをケージ中で自由運動(ad libitum)で維持した。
【0106】
骨形成を、手術後4週間および6週間でアッセイした。MicroCTスキャンを行ない、−(骨なし)から+++(大幅な骨形成)の定性的スコアを用いて、結果を定量化した。結果を表1に示す。
【表1】
【0107】
手術から6週間後に、CO
2を用いてすべての動物を安楽死させた。続いて、移植物の位置を目視で確認し、外科用メスおよび鉗子を用いて、一部の周囲軟組織と共に切り出した。切り出された移植物を、10%中性緩衝ホルマリンを用いて固定し、脱灰し、パラフィン包埋し、長軸方向に薄切した(4μm)。連続切片を、ヘマトキシリン・エオジン(H&E)またはマッソン・トリクロームを用いて染色した。組織学的画像を、Leica SCN400 Slide Scannerを用いて、40×の倍率でデジタル撮影した(Leica Microsystems, Milton Keynes, UK)。
【0108】
図1に示される結果は、SM30細胞およびMEL2細胞がその上で14日間、誘導培地中で培養された凍結乾燥コラーゲンスポンジの移植から生じた驚くべき骨形成を実証する。細胞播種スポンジの骨形成特性は、同一の条件下で用いられたコラーゲンスポンジ対照と比較して優れていた。細胞播種スポンジにより誘導される骨形成は、公知の骨誘導性タンパク質であるBMP-2をコラーゲンスポンジ上で用いて得られたものと同等か、またはそれよりも優れていた。
【0109】
実施例3:ヒドロゲル含有移植片
細胞株SM30(第22継代)を、10ng/mLのTGF-β3の存在下で14日間、製造業者の説明書に従って(Glycosan社)、ヒアルロン酸およびゼラチンのPEGDA架橋型ポリマーであるHyStemヒドロゲル中で分化させた。SM30細胞を、in vitroで21倍を超えて増殖させ、コンフルエンスまで生育させ、かつ血清および本明細書中に記載される通りの他のマイトジェンを10分の1まで減少させて添加した培地を用いて培地を交換することにより同期して休眠させるか(CTRL)、または本明細書中に記載される通りの微量培養条件(micromass condition)で分化させるか(MM)、または10ng/mLのTGF-β3、25ng/mL TGF-β3、10ng/mL BMP4、30ng/mL BMP6、100ng/mL BMP7、100ng/mL GDF5、もしくはこれらの増殖因子の組み合わせのいずれかの存在下で14日間、製造業者の説明書に従って(Glycosan社)、ヒアルロン酸およびゼラチンのPEGDA架橋型ポリマーであるHyStemヒドロゲル中で分化させた。簡潔には、ヒドロゲル/細胞製剤は、以下の通りに調製した:HyStem(Glycosan, Salt Lake, Utah;HyStem-CSSカタログ番号GS319)を製造業者の説明書に従って再構成させた。簡潔には、Hystem(チオール修飾型ヒアルロナン、10mg)を1mLの脱気した脱イオン水中に溶解させ(約20分間かかる)、1%溶液を調製した。Gelin-S(チオール修飾型ゼラチン、10mg)を1mLの脱気した脱イオン水中に溶解させ、1%溶液を調製し、PEGSSDA(ジスルフィド含有ジアクリル酸PEG、10mg)を0.5mLの脱気した脱イオン水中に溶解させ、2%溶液を調製した。続いて、HyStem(1mL、1%)を、使用の直前に、気泡を作らずにGelin-S(1mL、1%)と混合する。ペレット化した細胞を、調製したばかりの上記HyStem:Gelin-S(1:1)ミックス中に再懸濁した。架橋型PEGSSDA(ジスルフィド含有ジアクリル酸ポリエチレングリコール)の添加時に、100μLの細胞懸濁物を、最終濃度20×10
6細胞/mLで、複数の24ウェルプレート、6.5mmポリカーボネート(0.4μM孔径)トランスウェルインサート(Corning 3413)へとアリコートに分ける。約20分間のゲル化に続いて、軟骨形成培地を各ウェルに加える。続いて、プレートを、37℃、周囲O
2濃度、10%CO
2で加湿インキュベーターに入れ、細胞に週3回、培地を添加した。これらの条件下で、SM30は、50.0ng/mL BMP2および10ng/mL TGF-β3、ならびに10mg/mL BMP4および10ng/mL TGF-β3の存在下で、比較的高レベルの骨シアロタンパク質II(IBSP、骨形成性細胞の分子マーカー)ならびに非常に高レベルのCOL2A1およびCOL10A1を発現し、このことは、中間的な肥大軟骨細胞形成(すなわち、軟骨内骨化)を示唆した。それらよりは低いが、それでもなお上昇したレベルのIBSP発現が、10ng/mL TGF-β3でのペレット培養中の細胞株MEL2でも観察された。
【0110】
実施例4:エキソソームの調製
SM30、4D20.8またはMEL2細胞は、実施例1に記載される通りに骨形成前駆細胞へと分化するために誘導される。エキソソームは、37℃、5%CO
2および1%O
2で16時間、加湿組織培養インキュベーター中で培養された骨形成前駆細胞により馴化された培地から単離される。リン酸緩衝生理食塩液(PBS)を、最終濃度0.1mL/cm
2まで培養物に添加し、馴化培地を作製する。あるいは、胎児ウシ血清または増殖因子添加剤を含有しない基礎EGM培地(Promocell, Heidelberg, Germany)が、PBSの代わりになる。この培地は、37℃、5%CO
2および1%O
2で16時間、加湿組織培養インキュベーター中で細胞により馴化される。リン酸緩衝生理食塩液(PBS)を、最終濃度0.1mL/cm
2まで培養物に添加し、馴化培地を作製する。あるいは、胎児ウシ血清または増殖因子添加剤を含有しない基礎EGM培地(Promocell, Heidelberg, Germany)が、PBSの代わりになる。
【0111】
馴化培地を回収し、0.5体積のトータルエキソソーム単離試薬(Life Technologies, Carlsbad, CA)を添加して、均一な溶液が得られるまで、ボルテックスにかけることにより十分に混合する。あるいは、15%ポリエチレングリコール/1.5M NaClからなる溶液が、トータルエキソソーム単離試薬の代わりになる。エキソソームを沈殿させるために、サンプルを4℃で少なくとも16時間インキュベートし、続いて10,000×gで1時間、4℃で遠心分離する。上清を除去し、ペレットを0.01体積のPBS中に再懸濁する。
【0112】
エキソソーム粒径および濃度は、Nanoparticle Tracking Analysis(NTA;Nanosight社)を用いて、およびELISAにより測定することができる。SM30細胞、MEL2細胞およびSK11細胞から調製されるエキソソーム粒子は、88±2.9nmの予測粒径範囲にある。エキソソームマーカーであるCD63を担持するエキソソームの濃度は、標準曲線を作成するためにHT1080ヒト線維肉腫細胞から調製される既知濃度のエキソソームを用いて、ELISAにより測定される。サンプル(SM30細胞、MEL2細胞およびHT1080細胞由来)を、PBS中での一晩のインキュベーションによりELISAプレートに吸着させる。PBSを除去し、洗浄バッファー(Thermo Scientific社)中で3回洗浄し、続いて、マウス抗CD63一次抗体と共に、室温で1時間インキュベートする。一次抗体を除去し、続いて、洗浄バッファー中で3回洗浄し、二次抗体(HRPコンジュゲート化型抗マウス抗体)(1:3,000希釈)と共に、室温で1時間インキュベートする。ウェルを洗浄バッファーでさらに3回洗浄し、Super sensitive TMB ELISA基質(Sigma, St. Louis, MO)中で0.5時間インキュベートし、次に、ELISA停止溶液(InVitrogen, Carlsbad, CA)を添加する。エキソソームの濃度は、450nmの波長での標準的なプレートリーダーでの光学密度により決定される。
【0113】
同じ方法を、軟骨形成前駆細胞由来のエキソソームを調製するために用いることができる。この様式で精製されるエキソソームは、すぐに用いることができ、または必要時まで−80℃で保存することができる。
【0114】
実施例5:エキソソーム含有移植片
エキソソーム(新鮮または解凍)を、支持体へとエキソソーム懸濁物を1滴ずつ添加することにより、コラーゲンゲルもしくはスポンジなどの生物学的担体、または合成生体材料に(任意により、無菌的に)添加し、続いて凍結乾燥させる。様々な範囲のエキソソーム濃度、例えば、1×10
6〜1×10
9エキソソーム/cc生物学的または合成担体を用いることができる。ラット異所的移植片に関しては、合計約0.5ccの担体が用いられる。エキソソーム粒子濃度に応じて、合計で8×10
5〜1×10
6個の粒子が、200〜500μLの滴下添加により、担体に付加される。
【0115】
担体へのエキソソーム懸濁物の添加後に、エキソソーム付加担体を、実施例2に記載される通りに凍結乾燥させる。凍結乾燥プロセス後は、エキソソーム付加担体は、室温で保存されるか、または冷凍される。
【0116】
骨再生のために、エキソソーム付加担体を、上記の実施例2に記載される通り、成体ラットの背中に外科的に作製された筋肉空隙中に留置する。6〜12週間後、移植物を回収し、例えば、実施例2に記載される通りに、組織学的および生化学的特性決定を用いて、骨形成を評価する。
【0117】
実施例6:馴化培地含有移植片
馴化培地(例えば、骨形成前駆細胞および/または軟骨形成前駆細胞由来)を、限定するものではないが、エキソソームをはじめとする分泌因子の混合物を含有する移植片形成ユニットを調製するために用いることができる。馴化培地は、上記の通り、骨形成誘導または軟骨形成誘導後の細胞から回収される。
【0118】
馴化培地は、生物学的担体への添加前に濃縮することができる。濃縮された馴化培地を取得するために、実施例1に上記で説明される通りに生育されたSM30細胞が入った10個のT225組織培養フラスコからの500mLの馴化培地を、10kdの分子量カットオフ(大部分の増殖因子の喪失を防ぐ)を有するろ過カートリッジへと導入する。次に、カートリッジを遠心分離に供し、培地の体積を、例えば、5〜50mLまで減少させて、出発材料に対して10〜100倍の濃度を生じさせる。
【0119】
濃縮後または未濃縮の馴化培地を、移植に先立って、上記の通りにコラーゲンスポンジに滴下添加し、凍結乾燥させる。
【0120】
実施例7:分画された馴化培地を含有する移植片
実施例7で上記に説明された通りに取得される5mLの濃縮された馴化培地を、HPLCにより分画する。移植に先立って、特定のHPLC画分を、単独で、または他の画分と組み合わせて、上記の通りに生物学的担体に添加する。
【0121】
実施例8:複合移植片
4D20.8細胞、7PEND24細胞、7SMOO32細胞、またはE15細胞を、以前に記載された条件を用いて単層で生育させ、増殖させる(Sternberg et al., Regen. Med., vol. 8, no. 2, pp. 125-144, 2013;米国特許出願公開第2014/0234964号)。組織培養増殖後、細胞を(例えば、トリプシン-EDTAまたはAccutaseを用いて)37℃で3〜5分間、分散させ、DMEM(高グルコース)、ペニシリン/ストレプトマイシン(100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン)、GlutaMAX
TM(2mM)、ピルビン酸塩(10mM)、デキサメタゾン(0.1μM)、L-プロリン(0.35mM)、2-ホスホ-L-アスコルビン酸(0.17mM)、ITS(6.25μg/mLトランスフェリン、6.25ng/mL亜セレン酸、1.25mg/mL血清アルブミンおよび5.35μg/mLリノール酸)+10ng/mL TGF-β3および10ng/mL BMP-4または100ng/mL GDF5のいずれかからなる軟骨形成分化培地中に再懸濁させる。次に、細胞を組織培養ディッシュに播種し、1週間から4週間の範囲の期間、維持する。軟骨形成分化後、細胞、またはそれに由来する細胞由来調製物を、生物学的担体に付加して、軟骨層を形成させる。担体への軟骨形成性細胞(またはそれに由来する細胞由来調製物)の付加の前、または後に、骨形成性細胞(またはそれに由来する細胞由来調製物)を同じ担体に付加して、骨形成層を形成させる。