(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875320
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】安全キャビネット
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20210510BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20210510BHJP
F24F 13/10 20060101ALI20210510BHJP
F24F 13/14 20060101ALI20210510BHJP
F24F 11/72 20180101ALI20210510BHJP
B01L 1/00 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
F24F7/06 C
F24F7/007 B
F24F13/10 E
F24F13/14 D
F24F11/72
B01L1/00 A
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-83428(P2018-83428)
(22)【出願日】2018年4月24日
(65)【公開番号】特開2019-190724(P2019-190724A)
(43)【公開日】2019年10月31日
【審査請求日】2020年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】金子 健
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 隆浩
【審査官】
柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第03726206(US,A)
【文献】
特開2014−193463(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第107020169(CN,A)
【文献】
特開2011−104469(JP,A)
【文献】
特開2008−295448(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01920891(EP,A1)
【文献】
中国特許出願公開第106140770(CN,A)
【文献】
特開昭52−126281(JP,A)
【文献】
特開2008−149290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
B08B 15/02
B01L 1/00
F24F 7/007
F24F 11/72
F24F 13/10
F24F 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業を行う作業ステージと、
作業者が作業をする作業空間と、
前記作業空間の前面に配置した前面板と、
前記作業空間と接続する作業開口と、
前記作業開口から空気を吸い込み、前記作業空間の空気を、空気清浄手段を介して安全キャビネット外へ排気する排気手段と、
前記作業者の作業ができる高さを調節する高さ調節手段と、
前記作業空間に清浄な空気を吹き出す吹き出し側ファンフィルタユニットと、
リターン側の空気の流れに沿って設けられた空気吹きつけ部とを有し、
前記作業開口の位置に基づいて、前記空気吹きつけ部から空気を吹きつけることを特徴とする安全キャビネット。
【請求項2】
請求項1に記載の安全キャビネットにおいて、
前記高さ調節手段は、前記前面板を移動できる前面板移動機構であることを特徴とする安全キャビネット。
【請求項3】
請求項2に記載の安全キャビネットにおいて、
前記前面板は、複数に分かれていることを特徴とする安全キャビネット。
【請求項4】
請求項2に記載の安全キャビネットにおいて、
前記前面板を収納する収納領域を有することを特徴とする安全キャビネット。
【請求項5】
請求項2に記載の安全キャビネットにおいて、
前記前面板移動機構は、前記前面板を回転できる機構であることを特徴とする安全キャビネット。
【請求項6】
請求項1に記載の安全キャビネットにおいて、前記排気手段の制御部を有し、前記制御部は、前記作業開口の位置に基づいて、前記排気手段の運転を変更することを特徴とする安全キャビネット。
【請求項7】
請求項1に記載の安全キャビネットにおいて、
前記高さ調節手段は、前記作業ステージの高さを調節する作業ステージ高さ調節機構であることを特徴とする安全キャビネット。
【請求項8】
請求項1に記載の安全キャビネットにおいて、
前記高さ調節手段は、支持部の長さを伸縮する支持部長さ伸縮機構であることを特徴とする安全キャビネット。
【請求項9】
請求項1に記載の安全キャビネットにおいて、
前記高さ調節手段は、前記前面板を移動できる前面板移動機構、前記作業ステージの高さを調節する作業ステージ高さ調節機構、足の長さを伸縮する支持部長さ伸縮機構のうち、複数の機構を組み合わせたことを特徴とする安全キャビネット。
【請求項10】
請求項6に記載の安全キャビネットにおいて、前記制御部は、前記作業開口の位置が高いときには、前記排気手段の運転を強化することを特徴とする安全キャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物・病原体などを取り扱うために、安全な作業環境を実現する設備である安全キャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微生物・病原体などを取り扱う場合、内部清浄度を維持し、取り扱う微生物・病原体を人・環境から物理的に隔離して、安全に作業を行う安全キャビネットが用いられている。
安全キャビネットとしては特許文献1、2のような技術が知られている。
【0003】
特許文献1は、開放式ダクト接続により室外に排気する安全キャビネットにおいて、室外排気ダクト系統に不具合が発生し、開放式ダクトの開口部から少量の揮発性有害物質を含む安全キャビネットの排気空気が実験室に漏れ出る可能性が生じた際に、警報を発生する安全キャビネットについて、開示している。
【0004】
特許文献2は、作業者が安全キャビネットを使用して標準作業手順書や試料データを確認しながら作業を行うに際して、安全キャビネットに設けたモニター画面等の表示装置を、蛍光灯の光による乱反射や殺菌灯照射による劣化の影響を受けず、かつ気流経路の抵抗にならない位置に配置し、また除染作業からも保護し、併せて、表示に係わる部分に汚れが付着することを防止する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−78527号公報
【特許文献2】特開2016−165249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
安全キャビネットの開口部は、エアバリアを維持するため、作業者が手を入れられる程度の近辺の限られた大きさしかない。しかし、安全キャビネット内に設置する装置によっては、正面から作業するもの、上面から作業するもの等、種々の装置があり、定まった開口位置では、作業性に支障をきたす場合があった。
【0007】
特許文献1および特許文献2には、作業者が、作業しやすい高さに、開口部の高さを調節することについては、なんら開示されていない。
【0008】
本発明の目的は、作業者が、作業しやすい高さに調節できる安全キャビネットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の好ましい一例は、作業を行う作業ステージと、作業者が作業をする作業空間と、前記作業空間の前面に配置した前面板と、前記作業空間と接続する作業開口と、前記作業開口から空気を吸い込み、前記作業空間の空気を、空気清浄手段を介して安全キャビネット外へ排気する排気手段と、前記作業者の作業ができる高さを調節する高さ調節手段とを有する安全キャビネットである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、作業者が、作業しやすい高さに調節できる安全キャビネットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1における安全キャビネットの概略正面図を示す図ある。
【
図2】
図1のA−A’断面を右方より見た安全キャビネットの概略側面図である。
【
図3】空気の流れを矢印で示した安全キャビネットの概略側面図である。
【
図4】実施例1を説明するための安全キャビネットの概略側面図である。
【
図5】上側の前面板を移動する時の収納領域を、筐体の上側に設けた場合の安全キャビネットの概略側面図である。
【
図6】前面板を、3つに分割した場合の安全キャビネットの概略側面図である。
【
図7】前面板を、3つに分割した場合の前面板の移動機構を説明する図である。
【
図8】前面板の移動機構の例を示す安全キャビネットの概略側面図である。
【
図9】実施例2を説明するための安全キャビネットの概略側面図を示す。
【
図10】実施例2の変形例を説明するための安全キャビネットの概略側面図を示す。
【
図11】実施例3を説明するための安全キャビネットの概略側面図を示す。
【
図12】実施例4を説明するための安全キャビネットの概略側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施例を、
図1〜
図12を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1に、安全キャビネットの概略正面図を示す。また、
図2に、
図1のA−A’断面を右方より見た安全キャビネットの概略側面図を示す。
【0014】
安全キャビネット100の筐体101の中央域に開口が設けられ、その奥に作業空間104が設けられている。作業空間104の前面側には、開口の上部を塞ぐように前面板102が設けられ、その下側には作業開口103が設けられ、作業者は作業開口103から作業空間104に手を入れて、作業を行う。前面板102は、ガラス等の透明な材料で形成されており、作業者は前面板を通して作業を目視することができる。
【0015】
作業空間104の底面には略平坦な作業ステージ105が設けられ、作業者は作業ステージ上で作業を行う。作業ステージ105の前方側であって、作業開口103の近くには、下方に通じる吸気口107が設けられている。吸気口107は、例えば作業開口103に沿って筐体101の左右方向に延びるスリットで形成されている。作業空間104の背面側には、吸気口107から筐体101の上部に通じる背面流路108が設けられている。
【0016】
作業空間104の上側には吹き出し側FFU(ファンフィルタユニット)109が設けられている。吹き出し側FFU109は、モータで駆動されて回転する、送風手段であるファンと、微粒子を除去するフィルタ、例えば、空気清浄手段であるHEPAフィルタ109Aで構成されている。吹き出し側FFU109により、微粒子を除去した清浄な空気を、作業空間104に吹き出す。筐体101の上部には、排気側FFU(ファンフィルタユニット)110が設けられており、空気の一部をフィルタ、例えば、HEPAフィルタ110Aを通して、微粒子を除去して装置の外部へ排出する。
【0017】
図3に、安全キャビネット動作時の空気の流れを矢印で示す。作業ステージ105の前面側の吸気口107から吸引された空気90は、符号91で示すように筐体101の下部、背面流路108、筐体101の上部を通って、吹き出し側FFU109から作業空間104へ送風される。作業空間104には、吹き出し側FFU109のHEPAフィルタ109Aで微粒子が除去された清浄な空気が送風されることにより、作業空間104は清浄な状態に維持される。
【0018】
このとき、符号92で示す作業空間104への空気の流れのみでは、作業空間内の空気が外部へ漏出する恐れがある。そのため、排気側FFU110を設け、HEPAフィルタ110Aを通して空気の一部を外部へ放出する。これにより、作業空間104内の圧力が低下し、外部から前面板102の下方の作業開口103を通して内部へ導入されようとする空気の流れ94を生じる。この空気の流れ94がそのまま作業空間104へ流入すると、作業空間の清浄度が低下してしまう。
【0019】
しかし、吹き出し側FFU109から作業空間104へ吹き出す空気の流れ92の風量と、排気側FFU110から外部へ排出する空気の流れ93の風量を適切に制御することにより、作業開口103から流入する空気94の全てと、作業空間104へ送られた空気92の大半を吸気口107から吸い込むことで、作業空間104へ吹き出す空気の流れ92により、作業開口103からの空気94の作業空間104への流入を阻止する大気の壁(エアバリア)が形成される。
【0020】
これにより、外部からの空気が作業空間104を汚染することがなく、かつ、内部の清浄化前の空気が外部へ漏出することがないという均衡状態を実現することができる。また、これにより、作業者が作業開口103を通して作業空間104に手を入れて作業を行っても、清浄度の維持と汚染防止を実現することができる。
【0021】
図4は、実施例1を説明するための安全キャビネット100の概略側面図である。実施例1では、前面板102が上下に分割した構成である。作業者が作業できる高さを調節する高さ調節手段として、前面板102を上下に移動可能な移動機構を有する。前面板102は、完全に分離の場合もあり、1枚の前面板に、矩形の開口部を設けて、開口部を開閉する移動機構を有するようにしてもよい。筐体101側には、移動時の収納領域をあらかじめ設けている。
図4では、下側の前面板102を収納する収納領域を、筐体101の下方に設けている。
【0022】
図5は、上側の前面板102を移動する時の収納領域を、筐体の上側に設けた場合の安全キャビネット100の概略側面図である。前面板102を複数に分割し、特に、3分割以上となっていてもよい。
【0023】
図6は、前面板102を、3つに分割した場合の安全キャビネット100の概略側面図を示す。
【0024】
図7は、前面板102を、3つに分割した場合の前面板102の移動機構の例を説明する図である。符号71に示す状態は、前面板102を閉鎖した場合の図を示す。符号72に示す状態は、作業開口103を下に設定した場合の図を示す。符号73に示す状態は、作業開口103を上に設定した第1の例を示す。符号74に示す状態は、作業開口103を上に設定した第2の例を示す。
【0025】
エアバリアを維持するために、作業開口103の高さは、200mm程度に制限される。実施例1によれば、作業性を高めるには、作業開口103の高さは維持しながら、作業開口103の前面板102における位置を、高くすることで、作業空間における作業を容易に実施することができる。
【0026】
図8は、前面板の移動機構の別の例を示す安全キャビネット100の概略側面図である。上側の前面板102を上に動かして筐体101の収納領域に収納し、作業開口103を形成する。下の前面板102は、筐体101との接続部分を中心に回転でき、下の前面板102は、回転させて上側や、下側に位置を調節して、作業開口103を形成する。上側の前面板102を回転するようにし、下側の前面板102を、筐体101に収納するようにしてもよい。また、上下の前面板102の両方を、回転させて、作業開口103を形成するようにしてもよい。
【0027】
前面板102を回転させるようにすることで、筐体101に収納領域を設ける必要がないので安全キャビネット100の構成の自由度を高められる。
【実施例2】
【0028】
図9は、実施例2を説明するための安全キャビネットの概略側面図を示す。
実施例2は、作業開口103の位置に基づいて、排気側FFU110の運転を変更する実施例である。実施例2では、作業開口103の下部が作業ステージ105より上側となった場合は、排気側FFU110の運転を強化する実施例である。例えば、扉位置センサ(図示せず)を、上側の前面板102を移動する時の収納領域に設ける。作業開口103を上側に設けるため、前面板102を、筐体101の上側に収納したことを、扉位置センサは、検知する。
【0029】
図9に示すように、作業開口103の位置が、上側に設定した場合では、吸気口107と作業開口103との距離が、作業開口103を下側にしたときに比べて、長くなるため、外部空気が作業空間104に流入しやすくなる。
【0030】
そこで、扉位置センサにより、作業開口103を上側に設けたことを検知すると、排気側FFU110の回転を高速にするといった運転の強化をするように、排気側FFU110制御部(図示せず)が、排気側FFU110の制御をし、外部への排出空気量を増加し、リターン側の空気の流れ(
図3の空気の流れ90、91、92に相当)を生じるように負圧を強化する。そうすると、吸気口107からの大気導入量が増え、吹き出し側FFU109からのダウンフロー(
図3の空気の流れ92)の前面板102側が強化されるため、エアバリアの機能が強化され、外部エアーの作業空間104への侵入を抑止することができる。
【0031】
ダウンフロー強化に際しては、排気側FFU110の運転を強化する以外に、
図10に示すように、扉位置センサにより、作業開口103を上側に設けたことを検知すると、リターン側の空気の流れに沿って、空気吹きつけ部20を設け、高圧空気21を吹き付けてもよい。
【0032】
これにより、リターン側の空気の流れが増速し、結果的に、吸気口107直下の負圧が増大し、吸い込み量が増大する。また、排気側FFU110のファンの回転数を増やすといった、リターン側の空気の流れを強化する運転と組み合わせてもよい。高圧空気21は、高圧タンクなどにあらかじめ大量に蓄積しておいてもよい。
【実施例3】
【0033】
図11は、実施例3を説明するための安全キャビネット100の概略側面図を示す。実施例3では、作業者の作業ができる高さを調節する高さ調節手段として、筐体101内の作業ステージ30の全部または一部を、下降または上昇させるステージ高さ調節機構を備える(図示省略)。
【0034】
ステージ高さ調節機構は、例えば、ボタンあるいはタッチパネルの操作で、ステージ30の高さを調節することができる。高さの調節は、油圧等の動力で実現できる、機械式でもよい。本実施例によれば、前面板102を移動して形成した作業開口103との相対位置を上下方向に調節することができる。
【実施例4】
【0035】
図12は、実施例4を説明するための安全キャビネット100の概略側面図を示す。実施例4では、作業者の作業ができる高さを調節する高さ調節手段として、安全キャビネットを支持する支持部である足40の長さを伸縮する、支持部長さ伸縮機構を備える。支持部長さ伸縮機構は、ボタンあるいはタッチパネルの操作で、足40の長さを伸縮させ、安全キャビネット100全体の高さを変えることができる。伸縮は油圧等で容易に実現できる、機械式でもよい。
【0036】
この結果、作業者に対する作業開口103の位置を上下に調節できる。本実施例によれば、前面板やステージの変更をすることなく、作業性を高めることができる。さらに、実施例3に示す作業ステージ30の高さ調節と組み見合わせると、より作業性が向上する。また、前面板102の移動による開口部の位置の移動と組み合わせて用いてもよい。
【符号の説明】
【0037】
20 空気吹きつけ部、30 作業ステージ、40 足、100 安全キャビネット、101 筐体、102 前面板、103 作業開口、104 作業空間、105 作業ステージ、107 吸気口、108 背面流路、109 吹き出し側FFU、109A 吹き出し側HEPAフィルタ、110 排気側FFU、110A 排気側HEPAフィルタ