特許第6875328号(P6875328)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875328
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】エアゾール噴射用アタッチメント
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/30 20060101AFI20210510BHJP
   B65D 83/20 20060101ALI20210510BHJP
   B05B 9/04 20060101ALI20210510BHJP
   B65D 83/22 20060101ALI20210510BHJP
   B65D 83/24 20060101ALI20210510BHJP
   A01N 25/06 20060101ALN20210510BHJP
   A01N 25/00 20060101ALN20210510BHJP
   A01P 7/02 20060101ALN20210510BHJP
   A01M 7/00 20060101ALN20210510BHJP
【FI】
   B65D83/30
   B65D83/20 100
   B05B9/04
   B65D83/22
   B65D83/24
   !A01N25/06
   !A01N25/00 102
   !A01P7/02
   !A01M7/00 S
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-120185(P2018-120185)
(22)【出願日】2018年6月25日
(65)【公開番号】特開2020-1720(P2020-1720A)
(43)【公開日】2020年1月9日
【審査請求日】2020年2月18日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年6月14日 ウェブサイトに掲載 <URL:http://www.amazon.co.jp/%E3%82%BD%E3%83%95%E3%83%8899−SOFT99−%E3%83%8B%E3%82%AA%E3%83%8A%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E5%B8%83%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%88%E7%94%A8−%E6%B6%88%E8%87%AD%E5%89%A4−02183/dp/B07DRJZWK6>
(73)【特許権者】
【識別番号】000227331
【氏名又は名称】株式会社ソフト99コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】503025030
【氏名又は名称】アスモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082083
【弁理士】
【氏名又は名称】玉田 修三
(72)【発明者】
【氏名】中橋 沙織
(72)【発明者】
【氏名】平田 靖
(72)【発明者】
【氏名】高田 学
(72)【発明者】
【氏名】堺谷 哲也
(72)【発明者】
【氏名】平井 康雄
【審査官】 種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−260536(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3031405(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/30
B05B 9/04
B65D 83/20
B65D 83/22
B65D 83/24
A01M 7/00
A01N 25/00
A01N 25/06
A01P 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
突出位置から後退位置への押込み操作による後退動作を通じてエアゾールを噴射するステムが頂部に出退可能に設けられてなるエアゾール容器に装着されるエアゾール噴射用アタッチメントであって、
上記ステムに嵌着可能で上記ステムの噴射口に連通する孔部を備えた嵌合部と、この嵌合部から延び出て広口開口部を形成するカップ形のフード部と、を有するアタッチメント本体と、
上記エアゾール容器の頂部に装着される取付け部材と、
上記取付け部材に上記アタッチメント本体を上下方向揺動可能に連結するヒンジ部と、
上記ステムに上記嵌合部を介して取り付けられた上記アタッチメント本体の揺動方向を規制することによって上記ステムを突出位置と後退位置とのうちのいずれかの位置に選択的に保持可能なステム位置選択機能と上記アタッチメント本体の揺動方向の規制を解除するステム位置規制解除機能とを有する操作機構と、
を備えることを特徴とするエアゾール噴射用アタッチメント。
【請求項2】
上記アタッチメント本体は、そのフード部の上記広口開口部からその外側に張り出した環状の鍔部と、上記広口開口部から上向きに突出した環状の押当て座部とを有し、上記広口開口部を柔軟な素材に押し付けたときに当該押当て座部と上記鍔部との両方が上記素材に当接するように構成されている請求項1に記載されているエアゾール噴射用アタッチメント。
【請求項3】
上記アタッチメント本体のフード部における広口開口部の開口径が20mm以上で45mm未満であり、同フード部における内部空間の深さが15mmを超えて35mm未満である請求項1又は請求項2に記載したエアゾール噴射用アタッチメント。
【請求項4】
上記取付け部材が、エアゾール容器の頂部に備わっているリング状のマウンテンカップに外嵌着可能である請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載したエアゾール噴射用アタッチメント。
【請求項5】
上記操作機構が、上記嵌合部から外向きに突出された舌片状の押込み操作片と、上記エアゾール容器に回転可能に嵌合された操作輪と、この操作輪に設けられた係合片と、を備え、上記操作輪の回転位置に応じて、上記係合片が、上記押込み操作片の上側又は下側に重なり合う係合位置と、上記押込み操作片の上側及び下側に重ならない退避位置との間で変位するように構成されている請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載したエアゾール噴射用アタッチメント。
【請求項6】
上記操作機構が、上記操作輪に設けられた突出部と、上記取付け部材に設けられて上記係合片が上記係合位置に位置しているときに上記突出部に係合して上記操作輪の回転位置を位置決めする第1ストッパー、及び、上記係合片が上記退避位置に位置しているときに上記突出部に係合して上記操作輪の回転位置を位置決めする第2ストッパー、とをさらに有する請求項5に記載したエアゾール噴射用アタッチメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール噴射用アタッチメント、詳しくは、柔軟な素材で作られた布張りシートや寝具などの素材の内層部分に消臭芳香成分や殺虫成分といった薬剤の有効成分(エアゾール)を浸透させて拡散させるのに適したエアゾール噴射用アタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、畳やマットレスに殺虫性のエアゾールを注入して害虫などを駆除することに用いられるエアゾール噴射機構が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1によって提案されているエアゾール噴射機構では、エアゾール容器に取り付けた針状ノズルを畳やマットレスの中に刺し込み、その針状ノズルからエアゾールを噴射させることによって、畳やマットレスにエアゾールを注入することができる、とされている。また、針状ノズルは、その先端部の周壁の数箇所に細孔でなる憤口を有していて、それらの憤口からエアゾールが周囲に拡散するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平3−46441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1によって提案されているエアゾール噴射機構は、使用時に針状ノズルが畳やマットレスの中に刺し込まれるため、畳やマットレスの素材の種類によっては表面に針状ノズルの刺込み跡が残ってしまうという懸念があるほか、針状ノズルの周壁の数箇所に形成された細孔でなる憤口からエアゾールを拡散させる構造を採用していることから、素材の内層部分でのエアゾールの拡散領域が狭く抑えられてしまうということが考えられる。
【0005】
本発明は、以上の状況の下でなされたものであり、素材の種類にかかわらず、針状ノズルの刺込み跡が残ってしまうという事態を生じる余地がなく、しかも、柔軟な素材で作られた布張りシートや寝具などの内層部分に消臭芳香成分や殺虫成分といったエアゾールを効率よく広く拡散させることのできるエアゾール噴射用アタッチメントを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエアゾール噴射用アタッチメントは、突出位置から後退位置への押込み操作による後退動作を通じてエアゾールを噴射するステムが頂部に出退可能に設けられてなるエアゾール容器に装着される。そして、上記ステムに嵌着可能で上記ステムの噴射口に連通する孔部を備えた嵌合部と、この嵌合部から延び出て広口開口部を形成するカップ形のフード部と、を有するアタッチメント本体と、上記エアゾール容器の頂部に装着される取付け部材と、上記取付け部材に上記アタッチメント本体を上下方向揺動可能に連結するヒンジ部と、上記ステムに上記嵌合部を介して取り付けられた上記アタッチメント本体の揺動方向を規制することによって上記ステムを突出位置と後退位置とのうちのいずれかの位置に選択的に保持可能なステム位置選択機能と上記アタッチメント本体の揺動方向の規制を解除するステム位置規制解除機能とを有する操作機構と、を備えている。
【0007】
このように構成されたエアゾール噴射用アタッチメントにおいて、アタッチメント本体を構成しているフード部の広口開口部をたとえば布張りシートに押し付けることによってエアゾール容器のステムを押し込み操作すると、エアゾール容器のステムの噴射口からフード部の内部空間にエアゾールが噴射され、そのエアゾールがフード部の内部空間から布張りシートの内層部分に浸透して拡散する。そのため、たとえばエアゾールが消臭芳香成分を含む場合には、その消臭芳香成分が布張りシートの内層部分に一様に効率よく拡散される。この場合、布張りシートの内層部分にエアゾールを浸透させる手段として針状ノズルを用いるものではないので、針状ノズルの刺込み跡が布張りシートの表面に残る余地がない。そのほか、操作機構によるステム位置選択機能を利用することによって、ステムが不慮に押し込まれてエアゾールが噴出するという事態を防止したり、エアゾール容器を廃棄するのに際してエアゾールの残量を外部に放出するという操作を行ったりすることが可能であり、さらに、操作機構によるステム位置規制解除機能を利用することによって上記のようにフード部から布張りシートの内層部分にエアゾールを拡散させることができるほか、フード部から室内にエアゾールを拡散させたりすることも可能である。
【0008】
本発明において、上記アタッチメント本体は、そのフード部の上記広口開口部からその外側に張り出した環状の鍔部と、上記広口開口部から上向きに突出した環状の押当て座部とを有し、上記広口開口部を柔軟な素材に押し付けたときに当該押当て座部と上記鍔部との両方が上記素材に当接するように構成されていることが望ましい。この構成を採用しておくと、フード部の広口開口部を布張りシートのような柔軟な素材に押し付けると、環状の押当て座部と環状の鍔部との両方が素材に当接してフードと素材との接触部分が押当て座部と鍔部とによって2重に塞がれることになる。そのため、フード部の内部空間に噴射されたエアゾールが外部に漏れにくくなって素材の内層部分にエアゾールを効率よく浸透させて拡散させることが可能になる。
【0009】
本発明では、上記アタッチメント本体のフード部における広口開口部の開口径が20mm以上で45mm未満であり、同フード部における内部空間の深さが15mmを超えて35mm未満であることが望ましい。広口開口部の開口径が20mm未満であると、フード部の内部空間が狭くなりすぎて柔軟な素材の内層部分に浸透させるエアゾールの量を十分に確保できなくなる。広口開口部の開口径が45mm以上であると、フード部の内部空間が広くなりすぎてフード部の内部空間に噴射されたエアゾールの圧力が上がりにくくなり、エアゾールが素材に浸透しにくくなる。また、フード部における内部空間の深さが15mm以下であると、フード部の広口開口部を素材に押し付けたときにエアゾール容器のステムが素材に近付きすぎ、素材の内層部分でのエアゾールの拡散領域が狭くなる傾向が生じる。フード部における内部空間の深さが35mm以上であると、フード部の内部空間に噴射された液状の噴射剤を含むエアゾールがほとんど気化してしまって素材に浸透拡散しにくくなる。広口開口部の開口径やフード部の内部空間の深さを上記の範囲に収めておくと、素材の内層部分に浸透するエアゾールの量や拡散領域が満足できる程度になる。
【0010】
本発明では、上記取付け部材が、エアゾール容器の頂部に備わっているリング状のマウンテンカップに外嵌着可能であるという構成を採用することが望ましい。この構成を採用すると、エアゾール容器に対するアタッチメント本体の取付け取り外しを容易にかつ確実に行うことが可能になる。
【0011】
本発明では、上記操作機構が、上記嵌合部から外向きに突出された舌片状の押込み操作片と、上記エアゾール容器に回転可能に嵌合された操作輪と、この操作輪に設けられた係合片と、を備え、上記操作輪の回転位置に応じて、上記係合片が、上記押込み操作片の上側又は下側に重なり合う係合位置と、上記押込み操作片の上側及び下側に重ならない退避位置との間で変位するように構成されている、という構成を採用することが可能である。この構成を採用しておくと、操作輪を回転させるだけで、係合片を、押込み操作片の上側や下側に係合させたり、押込み操作片からの退避位置に変位範囲させたりすることが可能になる。そして、押込み操作片が押し下げられて下動位置に位置している状態でその上側に係合片を係合させておくと、押込み操作片の押し込み操作に伴って後退位置に押し込まれたステムがその後退位置にそのまま保持される。また、押込み操作片が突出位置に位置しているステムにより持ち上げられて上動位置に復帰している状態でその下側に係合片を係合させておくと、押込み操作片を押し下げることができなくなってステムがその突出位置にそのまま保持される。
【0012】
本発明では、上記操作機構が、上記操作輪に設けられた突出部と、上記取付け部材に設けられて上記係合片が上記係合位置に位置しているときに上記突出部に係合して上記操作輪の回転位置を位置決めする第1ストッパー、及び、上記係合片が上記退避位置に位置しているときに上記突出部に係合して上記操作輪の回転位置を位置決めする第2ストッパー、とをさらに有することが望ましい。この構成を採用することにより、押込み操作片に対する係合片の係合位置や、押込み操作片に対する係合片の退避位置を、容易にかつ確実に定めることが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明に係るエアゾール噴射用アタッチメントを用いると、布張りシートや寝具などの素材の種類にかかわらず、素材の内層部分にエアゾールを浸透させたり拡散させたりしたときに、針状ノズルの刺込み跡が残ってしまうという事態を生じる余地がなく、しかも、柔軟な素材の内層部分にエアゾールを効率よく広く拡散させることができる、という効果が奏される。そのため、自動車の布張りシートや家具としてのソファの内層部分に消臭芳香成分や殺虫成分を効率よく浸透させ拡散させることが可能になる。そのほか、本発明の上記アタッチメントは、室内にエアゾールを拡散させることにも用いることができる。また、本発明の上記アタッチメントによれば、エアゾール容器を廃棄するのに際してエアゾールの残量を楽に放出したりすることや、使用していないときに不慮にエアゾールが噴出してしまうという事態を未然に防止することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】エアゾール容器に装着されたエアゾール噴射用アタッチメントの概略斜視図である。
図2】取付け部材を下方から見て示した平面図である。
図3】係合片が押込み操作片の下側に重なり合う係合位置に位置している状態でのエアゾール噴射用アタッチメントの概略縦断側面図である。
図4】係合片が退避位置に位置している状態でのエアゾール噴射用アタッチメントの概略縦断側面図である。
図5】係合片が押込み操作片の上側に重なり合う係合位置に位置している状態でのエアゾール噴射用アタッチメントの概略縦断側面図である。
図6】使用状態の説明図である。
図7】他の使用状態の説明図である。
図8】本発明に係るエアゾール噴射用アタッチメントの性能試験についての評価結果を示した図面代用の表である。
図9図8の表に示された評価結果から導き出された広口開口部の開口径及びフード部における内部空間の深さの適否の範囲を図解した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1はエアゾール容器100に装着されたエアゾール噴射用アタッチメントA(以下、アタッチメントAという。)の概略斜視図である。同図のように、アタッチメントAは、アタッチメント本体10と、取付け部材30と、ヒンジ部40と、操作機構50と、によって構成されている。
【0016】
図2は取付け部材30を下方から見て示した平面図、図3はエアゾール容器100に装着された上記アタッチメントAの概略縦断側面図、図4はエアゾール容器100に装着された図3とは異なる状態での上記アタッチメントAの概略縦断側面図、図5はエアゾール容器100に装着された図3及び図4とは異なる状態での上記アタッチメントAの概略縦断側面図である。
【0017】
アタッチメントAが装着されるエアゾール容器100においては、図3図5に示したように、ステム120が上下方向に出退可能に取り付けられていて、図示していないばねの付勢作用によって常時突出方向に向けて付勢されている。また、ステム120がばねの付勢作用に抗して突出位置から後退位置に向けて押し込まれると、そのときのステム120の後退動作を通じて内容物通路のバルブ(不図示)が開かれてエアゾールがステム120の噴射口から噴出するのに対し、ステム120がばねの付勢作用によって後退位置から突出位置に向けて復帰すると、そのときのステム120の突出動作を通じて上記バルブが閉じ、ステム120の噴出口からのエアゾールの噴出が停止する。
【0018】
図2のように、取付け部材30は、開口31を有する上板部32に下向きに突き出た欠円状の輪部33を有し、この輪部33を図3図5のようにエアゾール容器100に備わっているリング状のマウンテンカップ110に嵌着することによって、取付け部材30がエアゾール容器100の頂部に装着されている。アタッチメント本体10は、エアゾール容器100の頂部に設けられたステム120に嵌着可能な嵌合部11とこの嵌合部11から上向き拡がり形状に延び出て円形の広口開口部17を形成するカップ形のフード部16とを有している。図3図5に示したように、嵌合部11は筒状に形成されていて、上記ステム120にその上方から嵌着されている。そして、嵌合部11に具備されている孔部12が、ステム120に具備されている噴射口(不図示)に連通している。
【0019】
ヒンジ部40は、取付け部材30にアタッチメント本体10を上下方向揺動可能に連結している。すなわち、ヒンジ部40は、取付け部材30とアタッチメント本体10の嵌合部11とを連結している板片部42の中間部に、繰り返し折り曲げが可能な薄肉の折曲部41を形成してなる。そして、板片部42と上記嵌合部11とが、図2のように上記取付け部材30の上板部32に設けられている上記開口31に配備されている。
【0020】
操作機構50は、上記ステム120に上記嵌合部11を介して取り付けられたアタッチメント本体10の揺動方向を規制することによって上記ステム120を突出位置と後退位置とのうちのいずれかの位置に選択的に保持可能なステム位置選択機能と、アタッチメント本体10の揺動方向の規制を解除するステム位置規制解除機能と、を有する。
【0021】
図例のアタッチメントAにおいて、操作機構50は、嵌合部11から外向きに突出された舌片状の押込み操作片51と、上記取付け部材30の下側でエアゾール容器100に回転可能に嵌合された操作輪52と、この操作輪52に立上り状に設けられた係合片53と、を備えている。そして、操作輪52の回転位置に応じて、係合片53が、押込み操作片51の上側又は下側に重なり合う係合位置と、押込み操作片51の上側及び下側に重ならない退避位置との間で変位するように構成されている。さらに、操作機構50は、図1に示したように、操作輪52に設けられた突出部54と、突出部54に係合して操作輪52の正方向回転位置を位置決めする第1ストッパー55と、突出部54に係合して操作輪52の逆方向回転位置を位置決めする第2ストッパー56と、を有していて、第1ストッパー55に突出部54が係合することによって係合片53が押込み操作片51に対する上記係合位置に位置し、第2ストッパー55に突出部54が係合することによって係合片53が押込み操作片51に対する上記退避位置に位置するようになっている。また、アタッチメント本体Aのヒンジ部40の作用により、押込み操作片51が上下動すると、それに応じて嵌合部11も上下動する。
【0022】
エアゾール容器100に装着されたアタッチメントAにおいて、ステム120が突出位置に位置しているときには、図3及び図4のように、そのステム120によって持ち上げられた押込み操作片51が上動位置に位置している。そして、押込み操作片51が上動位置に位置しているときに、操作輪52を正方向に回転操作して突出部54を図1のように第1ストッパー55に係合させると、図1及び図3のように、係合片53が上動位置に位置している押込み操作片51の下側に重なり合う係合位置に位置する。この状態では、押込み操作片51を手の指で押し下げようとしても、押込み操作片51が下動することがないので、ステム120も突出位置に位置したままになってステム120の噴射口からエアゾールが噴出することはない。これに対し、操作輪52を逆方向に回転操作して突出部54を第2ストッパー56に係合させると、係合片53が上動位置に位置している押込み操作片51の下側の係合位置から逃がされて退避位置に位置する。この状態では、図4のように、押込み操作片51の下側に係合片53が係合していないので、押込み操作片51を手の指で押し下げることができる。なお、図4図6図7では、係合片53は退避位置にあることを示している。
【0023】
次に、アタッチメントAが装着されたエアゾール容器100の内容物であるエアゾールに消臭芳香成分が用いられている場合の使用状態を説明する。図6は室内に消臭芳香成分を噴射している使用状態の説明図、図7は柔軟な素材で作られた布張りシートSの内層部分に消臭芳香成分を浸透させて拡散させている使用状態の説明図である。
【0024】
室内に消臭芳香成分を噴射するときには、図6に示したように、操作機構50の係合片53を上記した退避位置に位置させた状態で、押込み操作片51を手の指で矢印aのように押し下げる。この操作により、嵌合部11と共にステム120が突出位置から後退位置に押し込まれるので、ステム120の噴射口から噴出した消臭芳香成分が嵌合部11の孔部12及びフード部16の内部空間を経て矢印bのように室内に噴射されて拡散する。
【0025】
柔軟な素材で作られた布張りシートの内層部分に消臭芳香剤を浸透させて拡散させるときには、図7に示したように、操作機構50の係合片53を上記した退避位置に位置させた状態で、布張りシートSにフード部16の広口開口部17を押し付けることによって、嵌合部11と共にステム120を突出位置から後退位置に押し込む。この操作により、ステム120の噴射口から噴出した消臭芳香成分と液状の噴射剤が混合されているエアゾールが嵌合部11の孔部12を通過してフード部16の内部空間に噴出する。こうしてフード部16の内部空間に噴出した消臭芳香成分と液状の噴射剤が混合されているエアゾールは、その内部空間で一定の圧力が生じるので、そのときの圧力によって布張りシートSの内層部分に消臭芳香成分が浸透して拡散する。また、フード部16の広口開口部17を布張りシートSに押し付けてその内層部分を形成しているクッション層を圧縮した後、フード部16による押付力を解除してクッション層を復元させると、消臭芳香成分がフード部16の内部空間から布張りシートSのクッション層に浸透して拡散する。
【0026】
ところで、実施形態のアタッチメントAを使用して布張りシートSの内層部分に消臭芳香成分を浸透させて拡散させる場合に、フード部16の内部空間に噴出した消臭芳香成分の圧力の大きさは、布張りシートSの内層部分での消臭芳香成分の拡散領域の広さに影響を及ぼすことが判っている。また、フード部16の内部空間に噴出した消臭芳香成分の圧力の大きさは、その内部空間の広さによって変動することも判っている。上記アタッチメントAの性能試験についての評価結果及び評価結果を参照して考察した結果については後述する。
【0027】
また、フード部16の広口開口部17を布張りシートSに押し付けてその内層部分に消臭芳香成分を拡散させる場合に、広口開口部17と布張りシートSの表面との間に隙間が存在すると、その隙間の広さによっては、フード部16の内部空間に噴射された消臭芳香剤の圧力が上がりにくくなる。そこで、この実施形態ではそのような事態が起こるのを防ぐために次に説明する対策を講じている。
【0028】
すなわち、図7などに示したように、フード部16の広口開口部17からその外側に張り出した環状の鍔部18と、広口開口部17の上端開口部から上向きに突出した環状の押当て座部19とを設けてある。こうしておくと、広口開口部17を布張りシートSの表面部材に押し付けたときに、押当て座部19と鍔部18との両方が表面部材に当接するようになるため、フード部16と表面部材との接触部分が押当て座部19と鍔部18とによって2重に塞がれて消臭芳香剤成分が外部に漏れにくくなり、そのことが、布張りシートSの内層部分に消臭芳香成分を効率よく浸透させて拡散させることに役立つ。
【0029】
そのほか、この実施形態では、図3に示したように、押込み操作片51の先端部裏面に下向き三角形状の突起57を設けている。こうしておくと、操作機構50の操作輪52を正方向に回転させて、上動位置に位置している押込み操作片51の下側に係合片53を変位移動させたときに、係合片53の上に突起57が容易に乗り上がって押込み操作片51が円滑に持ち上げられて上動位置に保たれるという利点がある。さらにこの実施形態では、図5のように、係合片53を押込み操作片51の上側に重なり合う係合位置に位置したままにすることが可能である。そのため、エアゾール容器100を廃棄するのに際してその内容物であるエアゾールを容易に放出してしまうことが可能になる。
【0030】
この実施形態では、フード部16が逆円錐形状に形成されているけれども、円筒形状であっても、矩形筒形状であっても、その他の筒型であってもよい。また、フード部16の広口開口部17が円形に形成されているけれども、広口開口部17の形状は長円形であっても矩形であってもよい。また、噴射するエアゾールは、上記した消臭芳香成分に限定されることはなく、布張りシートや布団・ソファーなどで生息するダニなどを駆除することのできる殺虫成分であっても、さらには防カビ成分などであってもよい。
【0031】
図8(A)(B)は上記アタッチメントAの性能試験についての評価結果を示した図面代用の表である。また、図9(A)(B)は図8の表に示された評価結果から導き出された広口開口部の開口径及び同フード部における内部空間の深さの適否の範囲を図解した説明図である。
図8及び図9の評価結果は、自動車の布張りシートに使用されるものと同様の生地とスポンジを使用し、フード部の広口開口部を、1秒間、その布張りシートに押し付けて消臭芳香成分を含むエアゾールをフード部の内部空間に噴出させることによって得たものである。
【0032】
評価は、次の基準に従った。
◎:フード部からエアゾールが溢れることなく生地を通過してスポンジ内部まで到達する。
○:エアゾールが生地を通過しスポンジまで到達する。
△:生地の表面及び裏面がエアゾールで濡れるけれどもスポンジにはエアゾールが到達しない。
×:生地表面だけがエアゾールで濡れる。
【0033】
図8(A)及び図9(A)を併せ見ることによって判るように、フード部16における内部空間の深さD2を20mmに固定した場合、広口開口部17の開口径D1が20mm以上で45mm未満、すなわち、20mm≦D1<45mmであると、「◎」又は「○」の評価を得られるか、「◎」又は「○」の評価の得られることを類推することができる。また、開口径D1が20mm未満(D1<20mm)、及び、開口径D1が45mm以上(D1≦45mm)であると、「△」又は「×」の評価になるか、「△」又は「×」の評価になることを類推することができる。一方、図8(B)及び図9(B)を併せ見ることによって判るように、広口開口部17の開口径D1を35mmに固定した場合、フード部16における内部空間の深さD2が15mmを超えて35mm未満、すなわち、15mm<D2<35mmであると、「◎」の評価を得られるか、「◎」又は「○」の評価の得られることを類推することができる。また、深さD2が15mm以下(D1≦15mm)、及び、深さD2が35mm以上(D1≦35mm)であると、「△」又は「×」の評価になるか、「△」又は「×」の評価になることを類推することができる。
【0034】
ここで、広口開口部17の開口径D1が20mm未満であると、フード部16の内部空間が狭くなりすぎてスポンジに浸透させるエアゾールの量を十分に確保できなくなり、広口開口部17の開口径が45mm以上であると、フード部16の内部空間が広くなりすぎてフード部16の内部空間に噴射されたエアゾールの圧力が上がりにくくなり、エアゾールがスポンジに浸透しにくくなると考えられる。また、フード部16における内部空間の深さD2が15mm以下であると、フード部16の広口開口部17を生地に押し付けたときにエアゾール容器100のステム120が生地に近付きすぎ、スポンジでのエアゾールの拡散領域が狭くなる傾向が生じ、フード部16における内部空間の深さが35mm以上であると、フード部16の内部空間に噴射された液状の噴射剤を含むエアゾールがほとんど気化してしまってスポンジに浸透拡散しにくくなると考えられる。開口径D1が20mm以上で45mm未満であり、同フード部16における内部空間の深さD2が15mmを超えて35mm未満であると、スポンジに浸透するエアゾールの量や拡散領域が満足できる程度になり、しかも、30cm程度の間隔で消臭芳香成分剤を噴射させるとほぼ一様に消臭芳香剤が拡散することが判った。
【符号の説明】
【0035】
A エアゾール噴射用アタッチメント
11 嵌合部
12 孔部
16 フード部
17 広口開口部
18 鍔部
19 押当て座部
30 取付け部材
40 ヒンジ部
50 操作機構
51 押込み操作片
52 操作輪
53 係合片
54 突出部
55 第1ストッパー
56 第2ストッパー
100 エアゾール容器
110 マウンテンカップ
120 ステム
S 布張りシート(柔軟な素材)
D1 広口開口部の開口径
D2 フード部における内部空間の深さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9