特許第6875332号(P6875332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875332
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   B25J19/00 E
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-143893(P2018-143893)
(22)【出願日】2018年7月31日
(65)【公開番号】特開2020-19088(P2020-19088A)
(43)【公開日】2020年2月6日
【審査請求日】2019年12月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】本門 智之
【審査官】 貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−155881(JP,A)
【文献】 特開2005−14159(JP,A)
【文献】 特開平7−246587(JP,A)
【文献】 特開2010−36231(JP,A)
【文献】 特開平3−136778(JP,A)
【文献】 特開2002−307369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 − 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ベースと、
前記第1ベースに鉛直軸線周りに回転可能に支持された旋回アーム部材を含むロボットアームと、
第2ベースと、を備え、
前記第1ベースの下端部が前記第2ベースの上端部に締結部材を用いて固定されており、
前記旋回アーム部材が、前記ロボットアームに取付けられた溶接ツールに送られる溶接用ワイヤが内部を通過するコンジットを前記旋回アーム部材の内部に引き込むためのアーム部材開口部を有し、
前記第2ベースが、その上面に上端開口部を有すると共に、その側面に側面開口部を有し、
前記旋回アーム部材および前記第1ベースが、前記アーム部材開口部から前記旋回アーム部材の内部に引き込まれた前記コンジットを前記上端開口部まで通すことが可能な空洞部を有し、
前記側面開口部が、前記上端開口部から前記第2ベースの内部に引き込まれた前記コンジットを前記第2ベースの外に出すことができるものであり、
記コンジットが、前記旋回アーム部材には取付けられていない状態で、前記第1ベースに取付部材によって取付けられている、ロボット。
【請求項2】
第1ベースと、
前記第1ベースに鉛直軸線周りに回転可能に支持された旋回アーム部材を含むロボットアームと、
第2ベースと、を備え、
前記第1ベースの下端部が前記第2ベースの上端部に締結部材を用いて固定されており、
前記旋回アーム部材が、前記ロボットアームに取付けられた溶接ツールに送られる溶接用ワイヤが内部を通過するコンジットを前記旋回アーム部材の内部に引き込むためのアーム部材開口部を有し、
前記第2ベースが、その上面に上端開口部を有すると共に、その側面に側面開口部を有し、
前記旋回アーム部材および前記第1ベースが、前記アーム部材開口部から前記旋回アーム部材の内部に引き込まれた前記コンジットを前記上端開口部まで通すことが可能な空洞部を有し、
前記側面開口部が、前記上端開口部から前記第2ベースの内部に引き込まれた前記コンジットを前記第2ベースの外に出すことができるものであり、
記コンジットが、前記第1ベースには取付けられていない状態で、前記旋回アーム部材に取付部材によって取付けられている、ロボット。
【請求項3】
前記ロボットアームのモータを駆動するためのケーブルが、前記第2ベースの前記内部を経由して前記第1ベースの内部に導入されている、請求項1又は2に記載のロボット。
【請求項4】
前記ロボットアームが、前記旋回アーム部材に水平軸線周りに揺動可能に支持された第1揺動アーム部材と、前記第1揺動アーム部材に水平軸線周りに揺動可能に支持された第2揺動アーム部材と、を有し、
前記第1揺動アーム部材又は前記第2揺動アーム部材には、前記溶接用ワイヤを前記ロボットアームの先端側に送るためのワイヤ送給装置が取付けられ、
前記コンジットの端が前記ワイヤ送給装置に接続されている、請求項1〜3の何れかに記載のロボット。
【請求項5】
前記空洞部が前記鉛直軸線を含む位置に配置されている、請求項1〜4の何れかに記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベースと、ベースに垂直な軸線周りに回転可能に支持された旋回アーム部材を含むロボットアームとを備え、溶接用ワイヤが収容されたコンジットが旋回アーム部材の内部に旋回アーム部材の上方から引き込まれ、引き込まれたコンジットが旋回アーム部材の内部およびベースの内部を通過してベースの側面から引き出されるロボットが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−152591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボットによって溶接が行われる高さ位置は1m前後又はそれ以上であることが多く、この場合、溶接可能な水平方向の範囲を極力大きくするために、ロボットの旋回アーム部材を1m前後又はそれ以上の高さ位置に配置することが考えられる。一方、ロボットは溶接以外の用途も考慮して設計されているので、ロボットのベースの高さ寸法は1mよりもかなり低い。当該課題は、ロボットのベースを高い位置に固定すれば解決されるように思われる。
【0005】
しかし、溶接時にはヒューム等と称される粉塵が発生する。特許文献1のロボットのベースの側面にはコンジットを引き出すための開口部が設けられているので、当該開口部を介して粉塵がベース内に入り易い。ベース内には旋回アーム部材用のモータ等が配置されているので、ベース内への粉塵の侵入は好ましくない。
【0006】
一方、コンジット内で溶接用ワイヤが折れ曲ると、折れ曲った箇所がコンジットの内部に傷を付ける。当該傷は、続いて供給される溶接用ワイヤを傷付け、当該現象によってコンジット内に溶接用ワイヤの削り粉が溜り、溶接用ワイヤのスムーズな供給の妨げ、溶接品質の低下等に繋がる。
【0007】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされている。本発明の目的の一つは、粉塵のベース内への侵入を抑制することができ、しかも溶接用ワイヤの安定的な供給を可能とするロボットの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明の第1の態様のロボットは、第1ベースと、前記第1ベースに鉛直軸線周りに回転可能に支持された旋回アーム部材を含むロボットアームと、第2ベースと、を備え、前記第1ベースの下端部が前記第2ベースの上端部に締結部材を用いて固定されており、前記旋回アーム部材が、前記ロボットアームに取付けられた溶接ツールに送られる溶接用ワイヤが内部を通過するコンジットを前記旋回アーム部材の内部に引き込むためのアーム部材開口部を有し、前記第2ベースが、その上面に上端開口部を有すると共に、その側面に側面開口部を有し、前記旋回アーム部材および前記第1ベースが、前記アーム部材開口部から前記旋回アーム部材の内部に引き込まれた前記コンジットを前記上端開口部まで通すことが可能な空洞部を有し、前記側面開口部が、前記上端開口部から前記第2ベースの内部に引き込まれた前記コンジットを前記第2ベースの外に出すことができるものであり、前記コンジットが、前記旋回アーム部材には取付けられていない状態で、前記第1ベースに取付部材によって取付けられている。
また、本発明の第2の態様のロボットは、第1ベースと、前記第1ベースに鉛直軸線周りに回転可能に支持された旋回アーム部材を含むロボットアームと、第2ベースと、を備え、前記第1ベースの下端部が前記第2ベースの上端部に締結部材を用いて固定されており、前記旋回アーム部材が、前記ロボットアームに取付けられた溶接ツールに送られる溶接用ワイヤが内部を通過するコンジットを前記旋回アーム部材の内部に引き込むためのアーム部材開口部を有し、前記第2ベースが、その上面に上端開口部を有すると共に、その側面に側面開口部を有し、前記旋回アーム部材および前記第1ベースが、前記アーム部材開口部から前記旋回アーム部材の内部に引き込まれた前記コンジットを前記上端開口部まで通すことが可能な空洞部を有し、前記側面開口部が、前記上端開口部から前記第2ベースの内部に引き込まれた前記コンジットを前記第2ベースの外に出すことができるものであり、前記コンジットが、前記第1ベースには取付けられていない状態で、前記旋回アーム部材に取付部材によって取付けられている。
【0009】
上記態様では、第1ベースの下端部が第2ベースの上端部に締結部材を用いて固定される。このため、第1ベースが汎用ロボットのベースである場合でも、第1ベースを第2ベースの上端部に固定することによって、旋回アーム部材を1m前後又はそれ以上の高さ位置に配置することができる。
【0010】
ここで、旋回アーム部材内に引き込まれたコンジットは、第1ベースではなく第2ベースの側面に設けられた側面開口部を介して引き出される。このため、第1ベースにコンジットを引き出すための開口部を設ける場合と比較し、第1ベース内への粉塵の侵入を抑制できる。第1ベース内には旋回アーム部材用のモータ等が配置されているので、第1ベース内への粉塵の侵入を極力防止することが好ましい。
【0011】
また、旋回アーム部材内に引き込まれると共に前記旋回アーム部材および前記第1ベースの空洞部を通過したコンジットが、第1ベースの下に配置された第2ベースの側面開口部から引き出される。このため、旋回アーム部材内に引き込まれたコンジットが第1ベースの側面に設けられた開口部から引き出される場合と比較し、コンジットの曲率半径が大きくなり、コンジット内における溶接用ワイヤの折れ曲りを防止することが可能となる。
また、上記第1の態様では、旋回アーム部材の旋回によって取付部材が動かないので、取付部材よりも下方のコンジットの前記旋回による動きおよび変形が防止又は抑制される。
また、上記第2の態様では、旋回アーム部材の旋回によって取付部材が動く。例えば、ロボットアームが、旋回アーム部材に水平軸線周りに揺動可能に支持された第1揺動アーム部材と、第1揺動アーム部材に水平軸線周りに揺動可能に支持された第2揺動アーム部材と、を有し、第1揺動アーム部材又は第2揺動アーム部材に溶接用ワイヤをアームの先端側に送るためのワイヤ送給装置が取付けられて、旋回アーム部材とワイヤ送給装置との距離が短い場合等は、旋回アーム部材とワイヤ送給装置との間のコンジットの変形を極力防止するために、取付部材を旋回アーム部材に取付ける構造は有効である。
【0012】
上記態様において、好ましくは、前記ロボットアームのモータを駆動するためのケーブルが、前記第2ベースの前記内部を経由して前記第1ベースの前記内部に導入されている。
当該態様では、モータを駆動するためのケーブルが、一度第2ベースの内部を経由した後に、第1ベース内に導入される。当該態様は、モータを駆動するためのケーブルを第1ベースの側面から第1ベース内に引き込む場合と比較し、第1ベース内への粉塵の侵入を低減することができる。
【0013】
上記態様において、好ましくは、前記ロボットアームが、前記旋回アーム部材に水平な軸線周りに揺動可能に支持された第1揺動アーム部材と、前記第1揺動アーム部材に水平な軸線周りに揺動可能に支持された第2揺動アーム部材と、を有し、前記第1揺動アーム部材又は前記第2揺動アーム部材には、前記溶接用ワイヤを前記アームの先端側に送るためのワイヤ送給装置が取付けられ、前記コンジットの端が前記ワイヤ送給装置に接続されている。
【0014】
ワイヤ送給装置は溶接用ワイヤを第2揺動アーム部材の長手軸に沿って送る場合が多く、第2揺動アーム部材は、水平方向に延びる姿勢、又は、斜め上方若しくは斜め下方に延びる姿勢をとることが多い。このため、ワイヤ送給装置に供給される溶接用ワイヤも第2揺動アーム部材の長手軸に沿うことになり、ワイヤ送給装置に接続されているコンジットの端も溶接用ワイヤに沿った方向に延びる。
【0015】
このため、コンジットの第1部分として、ワイヤ送給装置から延びているコンジットが下方に向かって湾曲し、第2部分として、略下方に向かうコンジットが旋回アーム部材のアーム部材開口部から旋回アーム部材内に引き込まれ、第3部分として、第1ベースおよび第2ベース内のコンジットおよび第2ベースの側面開口部から引き出されたコンジットが水平方向に向かって湾曲する。なお、コンジットは曲率半径が小さいほど曲げに対する反力が大きくなる傾向がある。つまり、前記状態では、第3部分のコンジットの曲率半径が小さいと、第1部分のコンジットにその曲率を小さくする力が働く可能がある。
【0016】
当該態様では、少なくとも、第1ベース内のコンジット、第2ベース内のコンジット、および第2ベースの側面開口部から引き出されるコンジットの何れかの曲率半径を大きくすることができるので、第1部分のコンジットにその曲率を小さくする方向に働く力を低減することができる。
【0017】
上記態様において、好ましくは、前記空洞部が前記鉛直軸線を含む位置に配置されている。
当該構成では、空洞部を挿通するコンジットが、旋回アーム部材の回転中心である鉛直軸線の近傍を通過することになる。このため、当該構成は、旋回アーム部材が旋回する時のコンジットの変形量を低減するために有利である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、粉塵のベース内への侵入を抑制することができ、しかも溶接用ワイヤの安定的な供給が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態のロボットの一部断面側面図である。
図2】本実施形態のロボットの制御装置のブロック図である。
図3】本実施形態のロボットの要部の一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係るロボット1が、図面を参照しながら以下説明されている。
本実施形態のロボット1は、例えば6軸多関節ロボットであって、図1に示されるように、第1ベース10と、ロボットアーム30とを備え、ロボットアーム30が制御装置40によって制御される。
【0021】
ロボットアーム30は、例えば、第1ベース10に、鉛直である第1軸(鉛直軸線)J1周りに回転可能に支持された旋回アーム部材31と、旋回アーム部材31に、水平である第2軸(水平軸線)J2周りに揺動可能に支持された第1揺動アーム部材32と、第1揺動アーム部材32の先端部に、水平である第3軸(水平軸線)J3周りに揺動可能に支持された第2揺動アーム部材33と、第2揺動アーム部材33の先端部に、第2揺動アーム部材33の長手方向に延びる第4軸J4周りに回転可能に支持された第1先端側アーム部材34と、第1先端側アーム部材34の先端部に第2揺動アーム部材33の長手方向と直交する方向に延びる第5軸J5周りに揺動可能に支持された第2先端側アーム部材35と、第2先端側アーム部材35に第5軸J5の延びる方向と直交する第6軸J6周りに回転可能に支持された第3先端側アーム部材36とを有する。
【0022】
また、第1ベース10内には、旋回アーム部材31を駆動するためのサーボモータ31a(図2)が収容され、ロボットアーム30内には、第1揺動アーム部材32、第2揺動アーム部材33、第1先端側アーム部材34、第2先端側アーム部材35、および第3先端側アーム部材36をそれぞれ駆動するためのサーボモータ32a,33a,34a,35a,36a(図2)が収容されている。
【0023】
制御装置40は、図2に示されるように、CPU等であるプロセッサ41と、表示装置42と、不揮発性ストレージ、ROM、RAM等を有する記憶部43と、キーボード、タッチパネル、操作盤等である入力装置44と、信号の送受信を行うための送受信部45と、各サーボモータ31a,32a,33a,34a,35a,36aにそれぞれ接続されたサーボ制御器46とを備えている。
【0024】
記憶部43にはシステムプログラム43aが格納されており、システムプログラム43aは制御装置40の基本機能を担っている。また、記憶部43には動作プログラム43bが格納されている。プロセッサ41は、動作プログラム43bに基づき、各サーボモータ31a,32a,33a,34a,35a,36aを制御するための制御指令をサーボ制御器46に送ると共に、第3先端側アーム部材36に取付けられた溶接ガン等の溶接ツール(図示せず)のためのツールコントローラ49に制御指令を送り、これによりロボット1が溶接作業を行う。
【0025】
ロボット1と制御装置40とは信号線、動力線等が内部に配置された複数本のケーブルCA1,CA2を用いて接続されている。本実施形態では、制御装置40内に各サーボモータ31a,32a,33a,34a,35a,36aに電力を供給する電源装置(図示せず)が設けられているが、電源装置が制御装置40と別に設けられていてもよい。
【0026】
また、本実施形態では、制御装置40からの複数本のケーブルCA1の一端がコネクタ47によって第1ベース10の下面に取付けられ、第1ベース10内において複数本のケーブルCA2がそれぞれケーブルCA1に接続され、複数本のケーブルCA2がそれぞれ各サーボモータ31a,32a,33a,34a,35a,36a等に接続されている。例えば、複数本のケーブルCA2の一部が第1ベース10内に配置されたサーボモータ31aに接続されている。複数本のケーブルCA1はケーブルコンジット48によって覆われている。なお、ケーブルCA1とケーブルCA2とがコネクタ47を用いずに繋がっていてもよい。
【0027】
本実施形態のロボット1は第2ベース20を備え、第1ベース10の下端部がボルト等の締結部材Bを用いて第2ベース20の上端部に固定されている。本実施形態の第2ベース20は上下方向に延びる筒状に形成され、第2ベース20は内部空間(内部)20aを有する。第2ベース20はボルトBを用いて床面等の所定の固定面に固定されている。要求に応じて、様々な高さ寸法を有する第2ベース部材20が形成され得る。
【0028】
本実施形態の第1ベース10は下方に開口した鉢形状を有し、第1ベース10は内部空間(内部)10aを有する。
なお、第1ベース10および第2ベース20は、空洞である内部空間10a,20aを有していれば、他の形状であってもよい。
【0029】
第2ベース20は、その上面に上端開口部21を有すると共に、その側面に側面開口部22を有する。第2ベース20の内部空間20aは上端開口部21を介して第1ベース10の内部空間10aと繋がっている。
旋回アーム部材31の上端側にはアーム部材開口部31bが設けられ、アーム部材開口部31bは旋回アーム部材31の内部空間(内部)31cと繋がっている。また、旋回アーム部材31の内部空間31cは第1ベース10の内部空間10aと繋がっており、内部空間31cおよび内部空間10aは、第1軸J1を含む位置に配置された空洞部となっている。なお、ロボット1の仕様によっては、内部空間31cおよび内部空間10aの一方又は両方が第1軸J1を含む位置に配置されない場合もある。
【0030】
第2揺動アーム部材33の基端側には支持部材33bを介してワイヤ送給装置50が取付けられている。ワイヤ送給装置50は、溶接用ワイヤWを溶接作業時に徐々に溶接ツール側に送るための装置である。ワイヤ送給装置50は特開2011−152591号公報に示される公知の構造を用いており、例えば、溶接用ワイヤWを把持する一対のローラと、一対のローラを駆動するモータとを備えており、モータによるローラの駆動によって溶接用ワイヤWは溶接ツール側に徐々に送られる。
【0031】
ワイヤ送給装置50への溶接用ワイヤWの供給は、コンジット60を用いて行われる。一例では、コンジット60の一端がワイヤ送給装置50に接続され、コンジット60の他端側が溶接用ワイヤWの供給源(図示せず)の近傍に配置される。供給源は例えば溶接用ワイヤWが巻回されたリールである。供給源からの溶接用ワイヤWがコンジット60の他端からコンジット60内に供給され、コンジット60内を通過した溶接用ワイヤWがワイヤ送給装置50に供給される。
【0032】
ここで、コンジット60の一端と他端との間の中間部が、アーム部材開口部31bおよび側面開口部22を介して旋回アーム部材31の内部空間31c、第1ベース10の内部空間10a、および第2ベース20の内部空間20aに配置される。
【0033】
また、ワイヤ送給装置50には、ワイヤ送給装置50と制御装置40等の制御装置とを繋ぐ信号線、動力線等が内部に配置された制御ケーブルコンジット61の一端が接続され、制御ケーブルコンジット61の他端は制御装置の近傍に配置される。制御ケーブルコンジット61の一端と他端との間の中間部が、アーム部材開口部31bおよび側面開口部22を介して旋回アーム部材31の内部空間31c、第1ベース10の内部空間10a、および第2ベース20の内部空間20aに配置される。
【0034】
図3に示されるように、旋回アーム部材31および第1ベース10内に配置されたコンジット60および制御ケーブルコンジット61は、取付部材62によって第1ベース10の一部に取付けられている。取付部材62は例えば板状部材をプレス加工することによって成形されており、複数のボルト62aによって取付部材62を第1ベース10に固定すると、取付部材62と第1ベース10との間にコンジット60および制御ケーブルコンジット61が挟まれ、これによりコンジット60および制御ケーブルコンジット61が位置決めされる。なお、取付部材62は結束バンド等の他の取付部材であってもよい。
【0035】
当該構成では、旋回アーム部材31の旋回によって取付部材62が動かないので、取付部材62よりも下方のコンジット60および制御ケーブルコンジット61の旋回による動きおよび変形が防止又は抑制される。
なお、取付部材62が旋回アーム部材31に取付けられてもよい。この場合、旋回アーム部材31の旋回によって取付部材62が動く。旋回アーム部材31とワイヤ送給装置50との距離が短い場合等は、旋回アーム部材31とワイヤ送給装置50との間のコンジット60および制御ケーブルコンジット61の変形を極力防止するために、取付部材62を旋回アーム部材31に取付ける構造は有効である。
【0036】
このように、本実施形態のロボットは、第1ベース10と、第1ベース10に第1軸J1周りに回転可能に支持された旋回アーム部材31を含むロボットアーム30と、第2ベース20と、を備え、第1ベース10の下端部が第2ベース20の上端部に締結部材Bを用いて固定されており、旋回アーム部材31が、コンジット60を旋回アーム部材31の内部に引き込むためのアーム部材開口部31bを有し、第2ベース20が、その上面に上端開口部21を有すると共に、その側面に側面開口部22を有し、旋回アーム部材31および第1ベース10が、アーム部材開口部31bから旋回アーム部材31の内部空間31cに引き込まれたコンジット60を上端開口部21まで通すことが可能な空洞部を有し、側面開口部22が、上端開口部21から第2ベース20の内部空間20aに引き込まれたコンジット60を第2ベース20の外に出すことができるものであり、コンジット60が溶接用ワイヤWを収容するためのものである。
【0037】
当該構成では、第1ベース10の下端部が第2ベース20の上端部に締結部材Bを用いて固定される。このため、第1ベース10が汎用ロボットのベースである場合でも、第1ベース10を第2ベース20の上端部に固定することによって、旋回アーム部材31を1m前後又はそれ以上の高さ位置に配置することが可能となる。
【0038】
ここで、旋回アーム部材31内に引き込まれたコンジット60は、第1ベース10ではなく第2ベース20の側面に設けられた側面開口部22を介して引き出される。このため、第1ベース10にコンジット60を引き出すための開口部を設ける場合と比較し、第1ベース10内への粉塵の侵入を抑制できる。第1ベース10内には旋回アーム部材31用のモータ31a等が配置されているので、第1ベース10内への粉塵の侵入を極力防止することが好ましい。
【0039】
また、旋回アーム部材31内に引き込まれると共に旋回アーム部材31および第1ベース10の空洞部を通過したコンジット60が、第1ベース10の下に配置された第2ベース20の側面開口部22から引き出される。このため、旋回アーム部材32内に引き込まれたコンジット60が第1ベース10の側面に設けられた開口部から引き出される場合と比較し、コンジット60の曲率半径が大きくなり、コンジット60内における溶接用ワイヤWの折れ曲りを防止することが可能となる。
【0040】
コンジット60は、その内部に、例えば螺旋状に巻かれた鋼線によって形成された内壁を有する。このためコンジット60は湾曲可能であるが、コンジット60の曲率半径が小さくなると、コンジット60内の溶接用ワイヤWに折れ曲りが発生する可能性がある。特に、溶接用ワイヤWがアルミワイヤである場合は、折れ曲がりが発生し易い。折れ曲った溶接用ワイヤWが湾曲しているコンジット60内を移動すると、溶接用ワイヤWの折れ曲り部によってコンジット60の内壁に傷がつく。この傷により次に送られてくる溶接用ワイヤWに傷がつくことがあり、当該現象によってコンジット60内に削り粉が溜まる。本実施形態は、このような削り粉の蓄積を防止又は抑制するために有用である。
【0041】
なお、本実施形態では、コンジット60の中間部は取付部材62によって旋回アーム部材31又は第1ベース10に取付けられるが、コンジット60において取付部材62よりも下方の部分が第1ベース10又は第2ベース20に取付けられていない。また、側面開口部22はコンジット60および制御ケーブルコンジット61の外径よりも大きく、このため、側面開口部22内においてコンジット60および制御ケーブルコンジット61はその長手方向と直交する方向に動くことができる。アーム30が様々な動作を行う際にコンジット60および制御ケーブルコンジット61も様々な動きを行うが、上記構成は、アーム30の様々な動作によってコンジット60および制御ケーブルコンジット61に加わる曲げ方向および長手方向の大きな力を防止又は抑制できる。
【0042】
また、本実施形態では、ロボットアーム30のモータ31a〜36aを駆動するためのケーブルCA1,CA2が、第2ベース20の内部空間20aを経由して第1ベース10の内部空間10aに導入されている。
当該構成では、モータ31a〜36aを駆動するためのケーブルが、一度第2ベース20の内部空間20aを経由した後に、第1ベース10内に導入される。当該構成は、モータ31a〜36aを駆動するためのケーブルCA1,CA2を第1ベース10の側面から第1ベース10内に引き込む場合と比較し、第1ベース10内への粉塵の侵入を低減することができる。
【0043】
また、本実施形態では、ロボットアーム30が、旋回アーム部材31に水平である第2軸J2周りに揺動可能に支持された第1揺動アーム部材32と、第1揺動アーム部材32に水平である第3軸J3周りに揺動可能に支持された第2揺動アーム部材33と、を有し、第2揺動アーム部材33には溶接用ワイヤWをアーム30の先端側に送るためのワイヤ送給装置50が取付けられ、コンジット60の端がワイヤ送給装置50に接続されている。
【0044】
ワイヤ送給装置50は溶接用ワイヤWを第2揺動アーム部材33の長手軸に沿って送る場合が多く、第2揺動アーム部材33は、水平方向に延びる姿勢、又は、斜め上方若しくは斜め下方に延びる姿勢をとることが多い。このため、ワイヤ送給装置50に供給される溶接用ワイヤWも第2揺動アーム部材33の長手軸に沿うことになり、ワイヤ送給装置50に接続されているコンジット60の端も溶接用ワイヤWに沿った方向に延びる。
【0045】
このため、コンジット60の第1部分として、ワイヤ送給装置50から延びているコンジット60が下方に向かって湾曲し、第2部分として、略下方に向かうコンジット60が旋回アーム部材31のアーム部材開口部31bから旋回アーム部材31内に引き込まれ、第3部分として、第1ベース10および第2ベース20内のコンジット60および第2ベース20の側面開口部22から引き出されたコンジット60が水平方向に向かって湾曲する。なお、コンジット60は曲率半径が小さいほど曲げに対する反力が大きくなる傾向がある。つまり、前記状態では、第3部分のコンジット60の曲率半径が小さいと、第1部分のコンジット60にその曲率を小さくする力が働く可能がある。
【0046】
本実施形態では、少なくとも、第1ベース10内のコンジット60、第2ベース20内のコンジット60、および第2ベース20の側面開口部22から引き出されているコンジット60の何れかの曲率半径を大きくすることができるので、第1部分のコンジット60にその曲率を小さくする方向に働く力を低減することができる。
なお、第1揺動アーム部材32にワイヤ送給装置50が取付けられていてもよい。
【0047】
本実施形態では、内部空間31cおよび内部空間10aが第1軸J1を含む位置に配置されている。当該構成では、内部空間31cおよび内部空間10aを挿通するコンジット60が、旋回アーム部材31の回転中心である第1軸J1の近傍を通過することになる。このため、当該構成は、旋回アーム部材31が旋回する時のコンジット60の変形量を低減するために有利である。
なお、上端開口部21が第1軸J1を含む位置に配置されていることがより好ましい。この場合、コンジット60が旋回アーム部材31の回転中心である第1軸J1の近傍を通過し易くなる。
【符号の説明】
【0048】
1 ロボット
10 第1ベース
10a 内部空間(内部)
20 第2ベース
20a 内部空間(内部)
21 上端開口部
22 側面開口部
30 ロボットアーム
31 旋回アーム部材
32 第1揺動アーム部材
33 第2揺動アーム部材
34 第1先端側アーム部材
35 第2先端側アーム部材
36 第3先端側アーム部材
31a〜36a サーボモータ(モータ)
40 制御装置
47 コネクタ
48 ケーブルコンジット
50 ワイヤ送給装置
60 コンジット
61 制御ケーブルコンジット
W 溶接用ワイヤ
CA1,CA2 ケーブル
図1
図2
図3