特許第6875348号(P6875348)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファナック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6875348-ロボットおよび第1アーム部材 図000002
  • 特許6875348-ロボットおよび第1アーム部材 図000003
  • 特許6875348-ロボットおよび第1アーム部材 図000004
  • 特許6875348-ロボットおよび第1アーム部材 図000005
  • 特許6875348-ロボットおよび第1アーム部材 図000006
  • 特許6875348-ロボットおよび第1アーム部材 図000007
  • 特許6875348-ロボットおよび第1アーム部材 図000008
  • 特許6875348-ロボットおよび第1アーム部材 図000009
  • 特許6875348-ロボットおよび第1アーム部材 図000010
  • 特許6875348-ロボットおよび第1アーム部材 図000011
  • 特許6875348-ロボットおよび第1アーム部材 図000012
  • 特許6875348-ロボットおよび第1アーム部材 図000013
  • 特許6875348-ロボットおよび第1アーム部材 図000014
  • 特許6875348-ロボットおよび第1アーム部材 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875348
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】ロボットおよび第1アーム部材
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/06 20060101AFI20210517BHJP
   B25J 17/00 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   B25J9/06 B
   B25J17/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-195560(P2018-195560)
(22)【出願日】2018年10月17日
(65)【公開番号】特開2020-62715(P2020-62715A)
(43)【公開日】2020年4月23日
【審査請求日】2020年3月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】及川 暁寛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 駿輔
【審査官】 貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−202287(JP,A)
【文献】 特開昭62−282886(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0283709(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 − 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材に対して上下方向に延びる第1軸線周りに回転可能な第1アーム部材と、
前記第1アーム部材に水平方向に延びる第2軸線周りに揺動可能に支持された第2アーム部材と、
前記第2アーム部材の先端側に前記水平方向に延びる第3軸線周りに揺動可能に支持された第3アーム部材と、を備え、
前記第1アーム部材には、前記第2軸線に対して略垂直な面であり、前記第2アーム部材を取付け可能な第1の取付面と、前記第1の取付面と反対方向を臨み、前記第2アーム部材を取付け可能な第2の取付面とが設けられ
前記第2アーム部材の基端側を前記第1の取付面に取付けることが可能であり、前記第1の取付面から取外された前記第2アーム部材の前記基端側を前記第2の取付面に取付けることが可能である、ロボット。
【請求項2】
前記第3アーム部材には、前記第3軸線に対して略垂直な面であり、前記第2アーム部材の先端側を取付け可能な第3の取付面と、前記第3の取付面と反対方向を臨み、前記第2アーム部材の前記先端側を取付け可能な第4の取付面とが設けられている、請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記第1アーム部材が、前記第1の取付面および前記第2の取付面に平行な面に対して対称形状を有する、請求項1および2に記載のロボット。
【請求項4】
前記第3アーム部材が、前記第3の取付面および前記第4の取付面に平行な面に対して対称形状を有する、請求項に記載のロボット。
【請求項5】
前記第2アーム部材が、前記第2軸線および前記第3軸線が含まれる面に対して対称形状を有する、請求項1〜4の何れかに記載のロボット。
【請求項6】
前記第3アーム部材にその長手方向に延びる第4軸線周りに回転可能に支持された第4アーム部材と、
前記第4アーム部材に前記第4軸線と直交する方向に延びる第5軸線周りに揺動可能に支持された第5アーム部材と、
前記第5アーム部材に第6軸線周りに回転可能に支持された第6アーム部材と、を備え、
前記第4アーム部材および前記第5アーム部材が、前記第4軸線および前記第5軸線を含む面に対して対称形状を有する、請求項1〜5の何れかに記載のロボット。
【請求項7】
ベース部材に対して上下方向に延びる第1軸線周りに回転可能な第1アーム部材と、前記第1アーム部材に水平方向に延びる第2軸線周りに揺動可能に支持された第2アーム部材と、前記第2アーム部材の先端側に前記水平方向に延びる第3軸線周りに揺動可能に支持された第3アーム部材と、を備えるロボットに用いられる第1アーム部材であって、
前記第1アーム部材用の減速機に固定される第1部分と、
前記第1部分に固定された第2部分とを備え、
前記第2部分には、前記第2軸線に対して略垂直な面であり、前記第2アーム部材を取付け可能な第1の取付面と、前記第1の取付面と反対方向を臨み、前記第2アーム部材を取付け可能な第2の取付面とが設けられ
前記第1の取付面は、前記第2アーム部材の基端側を取付けることが可能なものであり、前記第2の取付面は、前記第1の取付面から取外された前記第2アーム部材の前記基端側を取付けることが可能なものである、第1アーム部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロボットおよび第1アーム部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アーム部材を2部品で構成し、片方の部材の周囲に複数の取付面を設け、二者を任意の取付面で接続することで、形状を変更可能なロボットの手首構造が知られている。
(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−26748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、製造のための作業を行うロボットが複数配置された製造ラインが多く存在している。このような製造ラインは、例えば、対象物の搬送装置を備え、搬送方向を見た場合の搬送装置の右側および左側にそれぞれ複数ずつロボットが配置されている。また、搬送装置によって搬送される対象の下側に複数のロボットが配置される場合もある。
【0005】
このような製造ラインでは、互いに動作領域が異なる複数種類のロボットを用いることによって、製造ラインの無駄な空間の低減、作業効率の向上等をより適切に行える場合がある。例えば、動作領域が異なる2つのロボットが互いの動作領域に干渉しない位置に配置されると、無駄に2つのロボットの間隔を広く設定する必要が無くなり、空間が有効に活用される。
【0006】
しかし、製造対象の変更に応じて製造ラインは変更又は新設される。このため、複数種類のロボットを保有する場合、全ての種類のロボットが次の製造対象に適する訳ではないので、幾つかの種類のロボットを次の製造ラインで使用しなくなる可能性が高い。これは、ロボットの保管場所、ロボットの管理の煩雑化、使用しない期間におけるロボットの部品の劣化等の点で好ましくない。
【0007】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされている。本発明の目的の一つは、効率的な製造ラインの構築を行うことができ、しかも管理の負荷を軽減することができるロボットおよび第1アーム部材の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明の第1の態様のロボットは、ベース部材に対して上下方向に延びる第1軸線周りに回転可能な第1アーム部材と、前記第1アーム部材に水平方向に延びる第2軸線周りに揺動可能に支持された第2アーム部材と、前記第2アーム部材の先端側に前記水平方向に延びる第3軸線周りに揺動可能に支持された第3アーム部材と、を備え、前記第1アーム部材には、前記第2軸線に対して略垂直な面であり、前記第2アーム部材を取付け可能な第1の取付面と、前記第1の取付面と反対方向を臨み、前記第2アーム部材を取付け可能な第2の取付面とが設けられ、前記第2アーム部材の基端側を前記第1の取付面に取付けることが可能であり、前記第1の取付面から取外された前記第2アーム部材の前記基端側を前記第2の取付面に取付けることが可能である。
【0009】
当該構成では、第2アーム部材が第1の取付面に取付けられた時と、第2アーム部材が第2の取付面に取付けられた時とでは、ロボットのアーム構造が異なる。つまり、第2アーム部材の位置の変更によってロボットのアーム構造を変更することができる。当該構造は、効率的な製造ラインの構築を行うために有用であり、しかもロボットの管理の容易化のためにも有用である。
【0010】
上記態様において、好ましくは、前記第3アーム部材には、前記第3軸線に対して略垂直な面であり、前記第2アーム部材の先端側を取付け可能な第3の取付面と、前記第3の取付面と反対方向を臨み、前記第2アーム部材の前記先端側を取付け可能な第4の取付面とが設けられている。
【0011】
当該構成では、第2アーム部材の先端側が第3の取付面に取付けられた時と、第2アーム部材の先端側が第4の取付面に取付けられた時とでは、ロボットのアーム構造が異なる。つまり、第3アーム部材に対する第2アーム部材の位置の変更によってロボットのアーム構造を変更することができる。
【0012】
上記態様において、好ましくは、前記第1アーム部材が、前記第1の取付面および前記第2の取付面に平行な面に対して対称形状を有する。
当該構成では、第2アーム部材の取付位置を第1の取付面から第2の取付面に変更すると、第2アーム部材の位置が前記面に関して対称な位置に移動する。このため、第2アーム部材の取付位置を第1の取付面から第2の取付面に変更した時にアームの構造の変更を操作者が理解し易い。これは、第2アーム部材の取付位置の変更後のロボットの教示作業の容易化、動作プログラムの設定の容易化等のために有用である。
【0013】
上記態様において、好ましくは、前記第3アーム部材が、前記第3の取付面および前記第4の取付面に平行な面に対して対称形状を有する。
当該構成では、第2アーム部材の先端側の取付位置を第3の取付面から第4の取付面に変更すると、第2アーム部材の位置が前記面に関して対称な位置に移動する。このため、第2アーム部材の取付位置を第3の取付面から第4の取付面に変更した時にアームの構造の変更を操作者が理解し易い。これは、第2アーム部材の取付位置の変更後のロボットの教示作業の容易化、動作プログラムの設定の容易化等のために有用である。
【0014】
より好ましくは、前記第1アーム部材が、前記第1の取付面および前記第2の取付面に平行な面に対して対称形状を有し、前記第3アーム部材が、前記第3の取付面および前記第4の取付面に平行な面に対して対称形状を有する。この場合、例えば第2アーム部材の取付位置を第1の取付面および第3の取付面から第2の取付面および第4の取付面に変更した時に、第1アーム部材に対する第3アーム部材の位置の変更が無い状態で、第2アーム部材の位置が前記面に対して対称な位置に移動する。つまり、変更前と変更後のアームの第1〜第3アームの部分が互いに対してミラー形状となる。これは、第2アーム部材の取付位置の変更後のロボットの教示作業の容易化、動作プログラムの設定の容易化等のために極めて有用である。
【0015】
上記態様において、好ましくは、前記第2アーム部材が、前記第2軸線および前記第3軸線が含まれる面に対して対称形状を有する。
当該構成では、第2アーム部材の取付位置が第1の取付面から第2の取付面に変更されても、前記面に垂直な方向における第2アーム部材の存在範囲が変わらない。これは、第2アーム部材の取付位置の変更後のロボットの教示作業の容易化、動作プログラムの設定の容易化等のために有用である。
【0016】
上記態様において、好ましくは、前記第3アーム部材にその長手方向に延びる第4軸線周りに回転可能に支持された第4アーム部材と、前記第4アーム部材に前記第4軸線と直交する方向に延びる第5軸線周りに揺動可能に支持された第5アーム部材と、前記第5アーム部材に第6軸線周りに回転可能に支持された第6アーム部材と、を備え、前記第4アーム部材および前記第5アーム部材が、前記第4軸線および前記第5軸線を含む面に対して対称形状を有する。
【0017】
当該構成では、例えば第2アーム部材の取付位置を第1の取付面および第3の取付面から第2の取付面および第4の取付面に変更し、さらに、第4〜第6アーム部材から成る手首部を第4軸線周りに180°回転させて取付けた時に、変更前と変更後のアームの全体が互いに対してミラー形状となる。これは、第2アーム部材の取付位置の変更後のロボットの教示作業の容易化、動作プログラムの設定の容易化等のために極めて有用である。
【0018】
本発明の第2態様は、ベース部材に対して上下方向に延びる第1軸線周りに回転可能な第1アーム部材と、前記第1アーム部材に水平方向に延びる第2軸線周りに揺動可能に支持された第2アーム部材と、前記第2アーム部材の先端側に前記水平方向に延びる第3軸線周りに揺動可能に支持された第3アーム部材と、を備えるロボットに用いられる第1アーム部材であって、前記第1アーム部材用の減速機に固定される第1部分と、前記第1部分に固定された第2部分とを備え、前記第2部分には、前記第2軸線に対して略垂直な面であり、前記第2アーム部材を取付け可能な第1の取付面と、前記第1の取付面と反対方向を臨み、前記第2アーム部材を取付け可能な第2の取付面とが設けられ、前記第1の取付面は、前記第2アーム部材の基端側を取付けることが可能なものであり、前記第2の取付面は、前記第1の取付面から取外された前記第2アーム部材の前記基端側を取付けることが可能なものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、効率的な製造ラインの構築を行うことができ、しかも管理の負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態のロボットの斜視図である。
図2】本実施形態のロボットの分解斜視図である。
図3】本実施形態のロボットの第1アーム部材の斜視図である。
図4】本実施形態のロボットの第1アーム部材の平面図である。
図5】本実施形態のロボットの第1アーム部材の図4におけるV−V線を切断面とする断面図である。
図6】本実施形態のロボットの第3アーム部材の斜視図である。
図7】本実施形態のロボットの第3アーム部材の平面図である。
図8】本実施形態のロボットの第3アーム部材の、図7におけるVIII−VIII線を切断面とする断面図である。
図9】本実施形態のロボットの分解斜視図である。
図10】本実施形態のロボットの第2アーム部材の正面図である。
図11】本実施形態のロボットの第2アーム部材の、図10におけるXI−XI線を切断面とする断面図である。
図12】本実施形態のロボットの第4〜第6アーム部材の斜視図である。
図13】本実施形態のロボットの斜視図である。
図14】本実施形態のロボットの制御装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態に係るロボット1が、図面を用いながら以下説明されている。
本実施形態のロボット1は、図1に示されるように、アーム2を有し、アーム2の先端部には任意のツールが取付けられる。
【0022】
アーム2は、図1図2等に示されるように、所定の設置面に固定されたベース部材BAに上下方向に延びる第1軸線J1周りに回転可能に支持された第1アーム部材10と、第1アーム部材10に水平方向に延びる第2軸線J2周りに揺動可能に基端側が支持された第2アーム部材20と、第2アーム部材20の先端側に水平方向に延びる第3軸線J3周りに揺動可能に基端側が支持された第3アーム部材30とを備える。
【0023】
また、アーム2は、第3アーム部材30の長手方向に延びる第4軸線J4周りに回転可能に第3アーム部材30に支持された第4アーム部材40と、第4アーム部材40に第4軸線J4と直交する方向に延びる第5軸線J5周りに揺動可能に支持された第5アーム部材50と、第5アーム部材50に第6軸線J6周りに回転可能に支持された第6アーム部材60とを備える。第4〜第6アーム部材40〜60は手首部と称される場合があり、第6アーム部材60は手首フランジと称される場合がある。
【0024】
また、アーム2は、第1〜第6アーム部材10〜60をそれぞれ駆動する複数のサーボモータ11,21,31,41,51,61を備えている(図14参照)。各サーボモータ11〜61として、回転モータ、直動モータ等の各種のサーボモータが用いられ得る。第1〜第6アーム部材10〜60はサーボモータ11〜61によってそれぞれ駆動される。各サーボモータ11〜61はその作動位置および作動速度を検出するための作動位置検出装置を有し、作動位置検出装置は一例としてエンコーダである。作動位置検出装置の検出値は制御装置70に送信される。
【0025】
本実施形態では、第2アーム部材20、第3アーム部材30、および第5アーム部材50は、その基端側又は中間部を中心として、先端側が所定の軌道上を移動する。このような動きを本実施形態では揺動と称する。一方、第1アーム部材10,第4アーム部材40,および第6アーム部材60の基端側から先端側に延びる中心軸は、第1軸線J1、第4軸線J4、および第6軸線J6にそれぞれ沿っている。換言すると、第1軸線J1、第4軸線J4、および第6軸線J6はそれぞれ、第1アーム部材10,第4アーム部材40,および第6アーム部材60の基端側から先端側にそれぞれ延びている。このような第1軸線J1、第4軸線J4、および第6軸線J6周りの第1アーム部材10,第4アーム部材40,および第6アーム部材60の動きを本実施形態では回転と称する。
【0026】
アーム2は制御装置70によって制御される。制御装置70は、図14に示されるように、プロセッサ等を有する制御部71と、表示装置72と、不揮発性ストレージ、ROM、RAM等を有する記憶部73と、キーボード、タッチパネル、操作盤等である入力装置74と、信号の送受信を行うための送受信部75と、各サーボモータ11〜61にそれぞれ接続されたサーボ制御器76とを備えている。入力装置74および送受信部75は入力部として機能する。
【0027】
記憶部73にはシステムプログラム73aが格納されており、システムプログラム73aは制御装置70の基本機能を担っている。また、記憶部73には動作プログラム73bが格納されている。制御部71は、動作プログラム73bに基づき、サーボモータ11〜61を駆動するための一連の制御指令をサーボ制御器76に送信する。これにより、ロボット1のアーム2が動作プログラム73bに基づく動作を行う。
【0028】
続いて、アーム2の構造について説明する。
図1および図2に示されるように、第1アーム部材10は第1アーム部材10用の減速機11aに複数のボルトBによって取付けられている。図3図5に示されるように、第1アーム部材10は、第1軸線J1と同軸状に設けられた円板形状又はリング形状を有する第1部分13と、第2軸線J2と同軸状に設けられた円板形状又はリング形状を有する第2部分14とを有する。なお、第1部分13および第2部分14が他の形状を有していてもよい。第1部分13と第2部分14とは中間部分15を介して互いに固定されている。中間部分15はプレート、リブ等から成る。第1部分13は複数のボルトBによって減速機11aに取付けられる。
【0029】
第2部分14には、第2軸線J2に対して略垂直な面であり、図1および図2に示されるように第2アーム部材20の基端側を取付け可能な第1の取付面14aと、第1の取付面14aと反対方向を臨み、第2アーム部材20の基端側を取付け可能な第2の取付面14bとが設けられている。本実施形態では第1の取付面14aおよび第2の取付面14bはリング形状を有するが、他の形状を有していてもよい。
【0030】
より具体的には、第1の取付面14a又は第2の取付面14bには、第2アーム部材20の基端側に設けられた減速機21aが複数のボルトBを用いて取付けられる。減速機21aは複数のボルトBを用いて第2アーム部材20の基端側に取付けられている。なお、他の部材を介して第2アーム部材20の基端側が第1の取付面14a又は第2の取付面14bに取付けられてもよい。
【0031】
第2部分14には、第2軸線J2に対して略垂直な面であり、サーボモータ21を取付け可能な第1のモータ取付面14cと、第1のモータ取付面14cと反対方向を臨み、サーボモータ21を取付け可能な第2のモータ取付面14dとが設けられている。
【0032】
図2に示されるように、第3アーム部材30には複数のボルトBによって第2アーム部材20の先端側が取付けられている。図6図8に示されるように、第3アーム部材30の基端側には、第3軸線J3と同軸状に設けられた円板形状又はリンク形状を有する取付部分33が設けられている。なお、取付部分33が他の形状を有していてもよい。取付部分33には、第3軸線J3に対して略垂直な面であり、第2アーム部材20の先端側を取付け可能な第3の取付面33aと、第3の取付面33aと反対方向を臨み、第2アーム部材20を取付け可能な第4の取付面33bとが設けられている。本実施形態では第3の取付面33aおよび第4の取付面33bはリング形状を有するが、他の形状を有していてもよい。
【0033】
より具体的には、第3の取付面33a又は第4の取付面33bには、第2アーム部材20の先端側に設けられた減速機31aが複数のボルトBを用いて取付けられる。減速機31aは複数のボルトBを用いて第2アーム部材20の先端側に取付けられている。なお、他の部材を介して第2アーム部材20の先端側が第3の取付面33a又は第4の取付面33bに取付けられてもよい。
【0034】
取付部分33には、第3軸線J3に対して略垂直な面であり、サーボモータ31を取付け可能な第3のモータ取付面33cと、第3のモータ取付面33cと反対方向を臨み、サーボモータ31を取付け可能な第4のモータ取付面33dとが設けられている。
【0035】
また、図10に示されるように、第2アーム部材20は、第2軸線J2および第3軸線J3が含まれる面S1に対して対称形状を有する。
また、図4および図5に示されるように、第1アーム部材10は、第1の取付面14aおよび第2の取付面14bに平行な面S2に対して対称形状を有する。面S2から第1の取付面14a迄の距離は、面S2から第2の取付面14b迄の距離と同一である。本実施形態では、第1軸線J1は面S2に含まれている。
【0036】
また、図7および図8に示されるように、第3アーム部材30は、第3の取付面33aおよび第4の取付面33bに平行な面S3に対して対称形状を有する。面S3から第3の取付面33a迄の距離は、面S3から第4の取付面33b迄の距離と同一である。本実施形態では、第4軸線J4は面S3に含まれている。
また、図12に示されているように、第4アーム部材40および第5アーム部材50は、第4軸線J4および第5軸線J5を含む面に対して対称形状を有する。
【0037】
アーム2がこのように構成されているので、図2に示されるように第2アーム部材20の基端側を第1アーム部材10の第1の取付面14aに取付けることも可能であり、図9に示されるように、第2アーム部材20が反転された状態で、第2アーム部材20の基端側を第1アーム部材10の第2の取付面14bに取付けることも可能である。なお、図2では、第2アーム部材20が第1の取付面14aに取付けられる時、第2アーム部材20の先端側が第3アーム部材30の第3の取付面33aに取付けられる。また、図9では、第2アーム部材20が第2の取付面14bに取付けられる時、第2アーム部材20の先端側が第3アーム部材30の第4の取付面33bに取付けられる。
【0038】
第2アーム部材20が第2軸線J2および第3軸線J3が含まれる面S1に対して対称形状を有するので、第2アーム部材20の基端側の取付位置が第1の取付面14aから第2の取付面14bに変更されても、面S1に垂直な方向における第2アーム部材20の存在範囲が変わらない。
【0039】
また、第1アーム部材10が第1の取付面14aおよび第2の取付面14bに平行な面S2に対して対称形状を有し、第3アーム部材30が第3の取付面33aおよび第4の取付面33bに平行な面S3に対して対称形状を有する。このため、第2アーム部材20の基端側の取付位置が第1の取付面14aから第2の取付面14bに変更され、第2アーム部材20の先端側の取付位置が第3の取付面33aから第4の取付面33bに変更されても、面S2に垂直な方向における第3アーム部材30の存在範囲が変わらず、第3軸線J3周りにおける第3アーム部材30の存在範囲も変わらない。
【0040】
また、上記のようにアーム2がこのように構成されているので、第2アーム部材20の基端側が第1アーム部材10の第1の取付面14aに取付けられている状態で、図1および図2に示されるように、第3アーム部材30の第3の取付面33aを第2アーム部材20の先端側に取付けることも可能であり、図13に示されるように、第3アーム部材30の第4の取付面33bを第2ベース部材20の先端側に取付けることも可能である。図13の取付状態は図1の取付状態よりもアーム2がロボット1の上方および後方に動き易い。
【0041】
なお、図9に示されるように、第2アーム部材20の基端側が第1アーム部材10の第2の取付面14bに取付けられている状態では、第3アーム部材30の第3の取付面33aに第2アーム部材20の先端側が取付けられると、図13の取付状態と同様にアーム2がロボット1の上方および後方に動き易い取付状態となる。
【0042】
本実施形態では、第2アーム部材20が第1の取付面14aに取付けられた時と、第2アーム部材20が第2の取付面14bに取付けられた時とでは、ロボット1のアーム2の構造が異なる。つまり、第2アーム部材20の位置の変更によってロボット1のアーム構造を変更することができる。当該構成は、効率的な製造ラインの構築を行うために有用であり、しかもロボット1の管理の容易化のためにも有用である。
【0043】
効率的な製造ラインの構築を行うためには、様々なアーム構造を有する複数種類のロボットを用いることが好ましい。一方、製造する対象に応じて製造ラインの変更、新設等が行われるが、保有しているロボットの種類が多過ぎると次の製造ラインで使われない種類のロボットが出易い。また、ロボットの種類が多い場合、その管理が煩雑となる。これに対し、本実施形態では、ロボット1のアーム構造を変更できるので、これらの課題を解決できる。
【0044】
また、本実施形態では、第3アーム部材30には、第3軸線J3に対して略垂直な面であり、第2アーム部材20の先端側を取付け可能な第3の取付面33aと、第3の取付面33aと反対方向を臨み、第2アーム部材20の先端側を取付け可能な第4の取付面33bとが設けられている。
【0045】
当該構成では、第2アーム部材20の先端側が第3の取付面33aに取付けられた時と、第2アーム部材20の先端側が第4の取付面33bに取付けられた時とでは、ロボット1のアーム構造が異なる。つまり、第3アーム部材30に対する第2アーム部材20の位置の変更によってロボット1のアーム構造を変更することができる。
【0046】
また、本実施形態では、第1アーム部材10が、第1の取付面14aおよび第2の取付面14bに平行な面S2に対して対称形状を有する。
当該構成では、第2アーム部材20の取付位置を第1の取付面14aから第2の取付面14bに変更すると、第2アーム部材20の位置が前記面S2に関して対称な位置に移動する。このため、第2アーム部材20の取付位置を第1の取付面14aから第2の取付面14bに変更した時にアーム2の構造の変更を操作者が理解し易い。これは、第2アーム部材20の取付位置の変更後のロボット1の教示作業の容易化、動作プログラムの設定の容易化等のために有用である。
【0047】
また、本実施形態では、第3アーム部材30が、第3の取付面33aおよび第4の取付面33bに平行な面S3に対して対称形状を有する。
当該構成では、第2アーム部材20の先端側の取付位置を第3の取付面33aから第4の取付面33bに変更すると、第2アーム部材20の位置が前記面S3に関して対称な位置に移動する。このため、第2アーム部材20の取付位置を第3の取付面33aから第4の取付面33bに変更した時にアーム2の構造の変更を操作者が理解し易い。これは、第2アーム部材20の取付位置の変更後のロボット1の教示作業の容易化、動作プログラムの設定の容易化等のために有用である。
【0048】
また、本実施形態では、第1アーム部材10が面S2に対して対称形状を有し、第3アーム部材30が面S3に対して対称形状を有する。この場合、例えば第2アーム部材20の取付位置を第1の取付面14aおよび第3の取付面33aから第2の取付面14bおよび第4の取付面33bに変更した時に、第1アーム部材10に対する第3アーム部材30の第3軸線J3に沿った方向の位置の変更が無い状態で、第2アーム部材20の位置が前記面S2,S3に対して対称な位置に移動する。つまり、変更前と変更後のアーム2の第1〜第3アーム部材10〜30の部分が互いに対してミラー形状となる。これは、第2アーム部材20の取付位置の変更後のロボット1の教示作業の容易化、動作プログラムの設定の容易化等のために極めて有用である。
【0049】
また、本実施形態では、第2アーム部材20が、第2軸線J2および第3軸線J3が含まれる面S1に対して対称形状を有する。
当該構成では、第2アーム部材20の取付位置が第1の取付面14aから第2の取付面14bに変更されても、前記面S1に垂直な方向における第2アーム部材20の存在範囲が変わらない。これは、第2アーム部材20の取付位置の変更後のロボット1の教示作業の容易化、動作プログラムの設定の容易化等のために有用である。
【0050】
ロボット1等の多関節ロボットを製造ラインに設置した後の教示作業は多くの時間を要する。例えば、搬送装置によって搬送されている対象に対する溶接、その他の加工、取出し等の作業をロボット1がその先端部のツールによって行うための教示が行われる。この時、作業を行うための一連の教示位置の各々において、ツールと対象との位置関係、ツールによって対象に正確な作業を行うためのアーム2の位置、姿勢等の設定、ロボット1のアーム2と周辺機器との干渉の有無等が少なくとも確認され、その他、作業の品質の最適化も行われる。
【0051】
このような教示は、アーム2を動かすための動作プログラムの作成および調整よって行われる。製造ラインでの教示作業を短時間で行うために、動作プログラムがシミュレーション装置を用いて作成される場合もある。しかし、シミュレーション上のロボット1と実際のロボット1との僅かな差、対象のばらつき、重力、他の外力等の影響があるため、シミュレーション装置を用いて作成された動作プログラムを実際のロボット1の作業に適合するように調整する必要がある。
【0052】
このように、ロボット1の動作プログラムの作成および調整の作業を容易化する上で、本実施形態の構成は有用である。例えば、製造ラインの右側に配置されたロボット1と左側に配置されたロボット1が同じ作業を行う時に、一方のロボット1の動作プログラムを他方のロボット1の動作プログラムの基礎として用いることができる。一方のロボット1と他方のロボット1とが互いにミラー構造を有する場合、動作プログラムをミラー変換することによって、他方のロボット1の動作プログラムとして使用できる。勿論、他方のロボット1において動作プログラムの微調整作業は必要であるが、動作プログラムの設定の容易化のために極めて有用である。
【0053】
また、本実施形態では、第3アーム部材30にその長手方向に延びる第4軸線J4周りに回転可能に支持された第4アーム部材40と、第4アーム部材40に第4軸線J4と直交する方向に延びる第5軸線J5周りに揺動可能に支持された第5アーム部材50と、第5アーム部材50に第6軸線J6周りに回転可能に支持された第6アーム部材60と、を備え、第4アーム部材40および第5アーム部材50が、第4軸線J4および第5軸線J5を含む面に対して対称形状を有する。
【0054】
当該構成では、例えば第2アーム部材20の取付位置を第1の取付面14aおよび第3の取付面33aから第2の取付面14bおよび第4の取付面33bに変更し、さらに、第4、第5、および第6アーム部材40,50,60から成る手首部を第4軸線J4周りに180°回転させて取付けた時に、変更前と変更後のアーム2の全体が互いに対してミラー形状となる。これは、第2アーム部材20の取付位置の変更後のロボット1の教示作業の容易化、動作プログラムの設定の容易化等のために極めて有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 ロボット
2 アーム
10 第1アーム部材
13 第1部分
14 第2部分
14a 第1の取付面
14b 第2の取付面
20 第2アーム部材
30 第3アーム部材
33 取付部分
33a 第3の取付面
33b 第4の取付面
40 第4アーム部材
50 第5アーム部材
60 第6アーム部材
11〜61 サーボモータ
70 制御装置
BA ベース部材
S1〜S3 面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14