特許第6875374号(P6875374)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テルモ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6875374-医療用長尺体 図000002
  • 特許6875374-医療用長尺体 図000003
  • 特許6875374-医療用長尺体 図000004
  • 特許6875374-医療用長尺体 図000005
  • 特許6875374-医療用長尺体 図000006
  • 特許6875374-医療用長尺体 図000007
  • 特許6875374-医療用長尺体 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875374
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】医療用長尺体
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/14 20060101AFI20210517BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   A61M25/14 514
   A61M25/00 600
   A61M25/14 516
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-507309(P2018-507309)
(86)(22)【出願日】2017年3月17日
(86)【国際出願番号】JP2017010935
(87)【国際公開番号】WO2017164122
(87)【国際公開日】20170928
【審査請求日】2019年11月8日
(31)【優先権主張番号】特願2016-56649(P2016-56649)
(32)【優先日】2016年3月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太
(72)【発明者】
【氏名】垂永 明彦
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−128602(JP,A)
【文献】 特表2001−520085(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0265805(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/14
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流通可能な内腔(26)を有するシャフト(20)と、
前記シャフト(20)の先端部に設けられ、挿通孔(46)を有する筒構造部(24、25A、25B、72)と、を備え、
前記筒構造部(24、25A、25B、72)は、
前記挿通孔(46)を有し、前記シャフト(20)の先端部に固定された第1チューブ体(42、43A、43B、74)と、
前記第1チューブ体(42、43A、43B、74)の径方向外側に配置され、前記シャフト(20)の先端部及び前記第1チューブ体(42、43A、43B、74)の基端部に液密に固定された第2チューブ体(44、45A、45B)と、
前記第1チューブ体(42、43A、43B、74)と前記第2チューブ体(44、45A、45B)の間に設けられ、前記シャフト(20)の内腔(26)に連通する空間部(50)と、
前記筒構造部(24、25A、25B、72)の先端部に位置し、前記シャフト(20)の内腔(26)から前記空間部(50)に流入した流体を前記筒構造部(24、25A、25B、72)の外部に流出する開口部(56)と、を備え
前記シャフト(20)は、前記シャフト(20)の先端側に前記シャフト(20)の外表面が前記シャフト(20)の内腔(26)に向かって凹んだ溝部(34)を有し、
前記シャフト(20)の軸心に直交する断面における前記シャフト(20)の先端部の内腔(26)の断面積は、前記シャフト(20)の軸心に直交する断面における前記シャフト(20)の基端部の内腔(26)の断面積よりも小さい
ことを特徴とする医療用長尺体(10、70)。
【請求項2】
請求項記載の医療用長尺体(10、70)において、
前記第1チューブ体(42、43A、43B、74)は、前記シャフト(20)の前記溝部(34)に固定される
ことを特徴とする医療用長尺体(10、70)。
【請求項3】
流体が流通可能な内腔(26)を有するシャフト(20)と、
前記シャフト(20)の先端部に設けられ、挿通孔(46)を有する筒構造部(24、25A、25B、72)と、を備え、
前記筒構造部(24、25A、25B、72)は、
前記挿通孔(46)を有し、前記シャフト(20)の先端部に固定された第1チューブ体(42、43A、43B、74)と、
前記第1チューブ体(42、43A、43B、74)の径方向外側に配置され、前記シャフト(20)の先端部及び前記第1チューブ体(42、43A、43B、74)の基端部に液密に固定された第2チューブ体(44、45A、45B)と、
前記第1チューブ体(42、43A、43B、74)と前記第2チューブ体(44、45A、45B)の間に設けられ、前記シャフト(20)の内腔(26)に連通する空間部(50)と、
前記筒構造部(24、25A、25B、72)の先端部に位置し、前記シャフト(20)の内腔(26)から前記空間部(50)に流入した流体を前記筒構造部(24、25A、25B、72)の外部に流出する開口部(56)と、を備え、
前記シャフト(20)の軸心に直交する断面における前記シャフト(20)の先端部の内腔(26)は、U字状に形成されている
ことを特徴とする医療用長尺体(10、70)。
【請求項4】
流体が流通可能な内腔(26)を有するシャフト(20)と、
前記シャフト(20)の先端部に設けられ、挿通孔(46)を有する筒構造部(24、25A、25B、72)と、を備え、
前記筒構造部(24、25A、25B、72)は、
前記挿通孔(46)を有し、前記シャフト(20)の先端部に固定された第1チューブ体(42、43A、43B、74)と、
前記第1チューブ体(42、43A、43B、74)の径方向外側に配置され、前記シャフト(20)の先端部及び前記第1チューブ体(42、43A、43B、74)の基端部に液密に固定された第2チューブ体(44、45A、45B)と、
前記第1チューブ体(42、43A、43B、74)と前記第2チューブ体(44、45A、45B)の間に設けられ、前記シャフト(20)の内腔(26)に連通する空間部(50)と、
前記筒構造部(24、25A、25B、72)の先端部に位置し、前記シャフト(20)の内腔(26)から前記空間部(50)に流入した流体を前記筒構造部(24、25A、25B、72)の外部に流出する開口部(56)と、を備え、
前記筒構造部(24、25A、25B、72)は、前記第2チューブ体(44、45A、45B)よりも柔軟な材料で構成される先端チップ(52、53A、53B)を先端部に有し、
前記先端チップ(52、53A、53B)は、前記開口部(56)を形成しつつ、前記筒構造部(24、25A、25B、72)の先端側において前記第1チューブ体(42、43A、43B、74)及び前記第2チューブ体(44、45A、45B)を液密に固定する
ことを特徴とする医療用長尺体(10、70)。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の医療用長尺体(10、70)において、
前記シャフト(20)の軸心に直交する断面における前記開口部(56)の断面積は、前記シャフト(20)の軸心に直交する断面における前記シャフト(20)の先端部の内腔(26)の断面積よりも小さい
ことを特徴とする医療用長尺体(10、70)。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の医療用長尺体(70)において、
前記第1チューブ体(74)の外面及び前記第2チューブ体(44、45A、45B)の内面うち少なくとも一方は、前記筒構造部(72)を補強する補強体(76)が設けられる
ことを特徴とする医療用長尺体(70)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターベンション手技時に、例えば、医療デバイスの進出を補助するために用いられる医療用長尺体に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内の治療を行う場合、術者は、血管内に先行させたガイドワイヤに沿ってガイディングカテーテルを進出し、このガイディングカテーテル内を通してインターベンション用の医療デバイスを送達する。そして、ガイディングカテーテルから医療用デバイスを送出した後、この医療用デバイスを病変部に進出させて病変部の処置を行う。この種の手技において、ガイディングカテーテルから医療デバイスを送出する距離が長いと、例えば、血管内の狭窄や屈曲、蛇行等が大きい箇所等において医療デバイスが抵抗を受けることで、医療デバイスを進出させることが困難となる。
【0003】
このような場合、術者は、ガイディングカテーテル(親カテーテル)を血管内の所望箇所に配置した後、ガイディングカテーテルの先端から医療用長尺体(子カテーテル)を送出し、この医療用長尺体を狭窄部(病変部)の近位まで進出させる(特開2011−135989号公報を参照)。これにより、医療用長尺体は、ガイディングカテーテルの先端において医療デバイスを支持してその進出をサポートすることができる。特に、特開2011−135989号公報に開示の医療用長尺体は、ワイヤと、ワイヤの先端部に挿通チューブを備えたラピッドエクスチェンジ型のカテーテルであるため、術者は、チューブ内に医療デバイスを簡単に挿通させる、又はガイディングカテーテルに対して医療用長尺体を容易に移動させることができる。
【発明の概要】
【0004】
ところで、術者は、血管内を治療する際、病変部の位置等の血管内の状況を確認するため、ガイディングカテーテルのルーメンを通して血管内に造影剤(流体)を流出し、病変部付近の放射線撮影を行っている。しかしながら、ラピッドエクスチェンジ型の医療用長尺体を使用する場合、ガイディングカテーテルの手元から注入された造影剤は、医療用長尺体の外形よりも大きな内腔を有するガイディングカテーテルの内腔を通じて、ガイディングカテーテルの先端側に送達される。そのため、医療用長尺体よりも先端側に造影剤を吐出して病変部付近を造影する際、術者は、造影剤を多量に使用することになる。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、ラピッドエクスチェンジ型の医療用長尺体の先端側から流体を確実に吐出させることができ、これにより流体の使用量を減少させることが可能な医療用長尺体を提供することを目的とする。
【0006】
前記の目的を達成するために、本発明に係る医療用長尺体は、流体が流通可能な内腔を有するシャフトと、前記シャフトの先端部に設けられ、挿通孔を有する筒構造部と、を備え、前記筒構造部は、前記挿通孔を有し、前記シャフトの先端部に固定された第1チューブ体と、前記第1チューブ体の径方向外側に配置され、前記シャフトの先端部及び前記第1チューブ体の基端部に液密に固定された第2チューブ体と、前記第1チューブ体と前記第2チューブ体の間に設けられ、前記シャフトの内腔に連通する空間部と、前記筒構造部の先端部に位置し、前記シャフトの内腔から前記空間部に流入した流体を前記筒構造部の外部に流出する開口部と、を備え、前記シャフトは、前記シャフトの先端側に前記シャフトの外表面が前記シャフトの内腔に向かって凹んだ溝部を有し、前記シャフトの軸心に直交する断面における前記シャフトの先端部の内腔の断面積は、前記シャフトの軸心に直交する断面における前記シャフトの基端部の内腔の断面積よりも小さいことを特徴とする。
【0007】
上記によれば、医療用長尺体は、シャフトの内腔、筒構造部の空間部及び開口部が連通した構成となる。また、空間部を構成する第1チューブ体の基端部は、第2チューブ体に液密に固定されている。そのため、医療用長尺体は、シャフトの基端側から注入された流体を筒構造部の開口部から確実に流出することができる。すなわち、第2チューブ体がシャフト及び第1チューブ体に液密に固定されているため、シャフトの内腔から空間部に流入した流体は、シャフトの外部に漏れずに空間部を先端方向に円滑に流動する。これにより、医療用長尺体は、医療用長尺体の先端側から造影剤(流体)を吐出し、X線撮影下において、血管内の状態(例えば、医療用長尺体の先端側の病変部)をより鮮明に認識させることが可能となる。また、医療用長尺体は、医療用長尺体の先端側に確実に造影剤を流動させることができるため、流体である造影剤の使用量を減少させることができる。
【0009】
また、シャフトの先端側に溝部を有するため、医療用長尺体は、医療デバイスが挿通される筒構造部の基端側の空間を広くすることができる。これにより、医療デバイスが筒構造部に向かって挿入される際、医療用長尺体は、溝部により医療デバイスがシャフトに引っ掛かることを抑制することができる。よって、術者は、医療用長尺体の筒構造部の挿通孔に医療デバイスをスムーズに挿通させることができる。また、シャフトの先端部の内腔の断面積がシャフトの基端部の内腔の断面積よりも小さいことで、流体がシャフトの内腔を流動する際、シャフトの基端側からシャフトの先端側に向かって、流体の流動速度を速めることができる。よって、医療用長尺体は、造影剤等の粘性の高い流体をスムーズに流動させることができる。また、医療用長尺体は、シャフトの外面に溝部を備えることで、医療デバイスを溝部に沿わせることができ、医療デバイスをより円滑に摺動させることができる。
【0010】
なお、シャフトの内腔の軸心に直交する断面における断面積は、シャフトの内腔の基端側からシャフトの先端側に向かって小さくなることが好ましい。これにより、医療用長尺体は、造影剤等の粘性の高い流体をさらにスムーズに流動させることができる。また、シャフトの外形の軸心に直交する断面における断面積は、シャフトの外形の基端側からシャフトの先端側に向かって小さくなることが好ましい。これにより、術者は、医療用長尺体の筒構造部の挿通孔に医療デバイスをよりスムーズに挿通させることができる。また、シャフトの外形の軸心に直交する断面における断面積は、シャフトの基端側からシャフトの先端側に向かって小さくなり、且つ、シャフトの軸心に直交する断面の外周の周長は、シャフトの基端側からシャフトの先端側に向かって小さくなることがより好ましい。これにより、シャフトの基端側からシャフトの先端側に向かって柔軟になるため、医療用長尺体は、細く湾曲した血管でも好適に操作することができる。また、前記第1チューブ体は、前記シャフトの前記溝部に固定されることが好ましい。このように、第1チューブ体が溝部に固定されることで、第1チューブ体を強固に固定することができる。そのため、医療用長尺体は、筒構造部とシャフトとの接合が高められ、筒構造部とシャフトの破断リスクを抑制することができる。
【0011】
また、前記の目的を達成するために、本発明に係る医療用長尺体は、流体が流通可能な内腔を有するシャフトと、前記シャフトの先端部に設けられ、挿通孔を有する筒構造部と、を備え、前記筒構造部は、前記挿通孔を有し、前記シャフトの先端部に固定された第1チューブ体と、前記第1チューブ体の径方向外側に配置され、前記シャフトの先端部及び前記第1チューブ体の基端部に液密に固定された第2チューブ体と、前記第1チューブ体と前記第2チューブ体の間に設けられ、前記シャフトの内腔に連通する空間部と、前記筒構造部の先端部に位置し、前記シャフトの内腔から前記空間部に流入した流体を前記筒構造部の外部に流出する開口部と、を備え、前記シャフトの軸心に直交する断面における前記シャフトの先端部の内腔は、U字状に形成されていることを特徴とする
【0012】
このように、シャフトの先端部の内腔がU字状に形成されていることで、医療用長尺体は、シャフトと筒構造部との接合部におけるシャフトの内腔を広く確保することができる。これにより、術者は、シャフトの手元側からシャフトの内腔及び筒構造部の空間部を通して造影剤を筒構造部の開口部までスムーズに流動させることができる。また、シャフトの先端部の内腔がU字状に形成されていることで、医療用長尺体は、医療デバイスが挿入される筒構造部の基端側の空間を広くすることができる。よって、術者は、医療用長尺体の筒構造部の挿通孔に医療デバイスをスムーズに挿通させることができる。
【0013】
また、前記の目的を達成するために、本発明に係る医療用長尺体は、流体が流通可能な内腔を有するシャフトと、前記シャフトの先端部に設けられ、挿通孔を有する筒構造部と、を備え、前記筒構造部は、前記挿通孔を有し、前記シャフトの先端部に固定された第1チューブ体と、前記第1チューブ体の径方向外側に配置され、前記シャフトの先端部及び前記第1チューブ体の基端部に液密に固定された第2チューブ体と、前記第1チューブ体と前記第2チューブ体の間に設けられ、前記シャフトの内腔に連通する空間部と、前記筒構造部の先端部に位置し、前記シャフトの内腔から前記空間部に流入した流体を前記筒構造部の外部に流出する開口部と、を備え、前記筒構造部は、前記第2チューブ体よりも柔軟な材料で構成される先端チップを先端部に有し、前記先端チップは、前記開口部を形成しつつ、前記筒構造部の先端側において前記第1チューブ体及び前記第2チューブ体を液密に固定することを特徴とする。
【0014】
このように、筒構造部は、柔軟な先端チップを備えることで、医療用長尺体の先端部が生体管腔を傷付けることを抑制できる。
【0015】
また、前記シャフトの軸心に直交する断面における前記開口部の断面積は、前記シャフトの軸心に直交する断面における前記シャフトの先端部の内腔の断面積よりも小さいことが好ましい。
【0016】
このように、医療用長尺体は、開口部の断面積がシャフトの先端部の内腔の断面積よりも小さいことで、シャフトの内腔から流動した流体をよりスムーズに吐出することができる。従って、医療用長尺体は、造影剤等の粘性の高い流体を開口部に向けてスムーズに流動させることができる。
【0019】
また、前記第1チューブ体の外面及び第2チューブ体の内面うち少なくとも一方には、前記筒構造部を補強する補強体が設けられてもよい。
【0020】
このように、医療用長尺体は、第1チューブ体及び第2チューブ体の少なくとも一方に補強体を有することで、筒構造部の延在状態を安定的に確保することが可能となる。また、医療用長尺体は、補強体により空間部を流動する流体を撹拌するため、筒構造部の空間部の周方向に流体を行き渡らせることができる。そして、医療用長尺体は、第1チューブ体の外面又は第2チューブ体の内面に補強体が螺旋状に設けられていることで、流体が空間部内を周方向に回転しながら流動するように案内して、開口部の周方向から一層均等的に流体を流出させることができる。
【0021】
本発明によれば、ラピッドエクスチェンジ型の医療用長尺体は、医療用長尺体の先端側から造影剤を確実に吐出させることができるため、血管等の生体管腔を簡便に造影することができる。また、本発明の医療用長尺体は、造影剤の使用量を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る医療用長尺体の全体構成を示す斜視図である。
図2図1の医療用長尺体の側面断面図である。
図3図3Aは、図2のIIIA−IIIA線断面図であり、図3Bは、図2のIIIB−IIIB線断面図であり、図3Cは、図2のIIIC−IIIC線断面図である。
図4図4Aは、図1の医療用長尺体の正面図であり、図4Bは、第1変形例に係る筒構造部の先端部分を示す側面断面図であり、図4Cは、第2変形例に係る筒構造部の先端部分を示す正面図である。
図5図5Aは、経皮的冠動脈形成術の手順を示す第1説明図であり、図5Bは、図5Aに続く手技の手順を示す第2説明図である。
図6図6Aは、図5Bに続く手技において図1の医療用長尺体の動作を示す第3説明図であり、図6Bは、図6Aに続く医療用長尺体の動作を示す第4説明図であり、図6Cは、図6Bに続く医療用長尺体の動作を示す第5説明図である。
図7】他の応用例に係る医療用長尺体の筒構造部を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る医療用長尺体について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
本実施形態に係る医療用長尺体10は、血管等の生体管腔内の治療又は診断時に、医療デバイス12(例えば、バルーンカテーテル、ステントデリバリーデバイス等:図5A参照)を病変部に通すため、医療デバイス12をサポートするデバイスとして構成されている。よって、以下、医療用長尺体をサポートカテーテル10ともいう。なお、サポートカテーテル10が使用される生体管腔としては、血管の他にも、例えば、胆管、気管、食道、尿道、鼻腔、或いはその他の臓器等、種々の器官があげられる。
【0025】
また、図1に示すように、サポートカテーテル10は、ガイディングカテーテル14の内部を通ってガイディングカテーテル14の先端から送出され、ガイディングカテーテル14よりも先端側の血管内で医療デバイス12を支持する。すなわち、サポートカテーテル10は、親カテーテルであるガイディングカテーテル14に挿入案内される子カテーテルでもある。
【0026】
ガイディングカテーテル14は、特に限定されず、処置する生体管腔に挿入可能な太さで、且つインターベンション用の医療デバイス12を摺動可能な空洞部16(ルーメン)を内部に有する管体を適用することができる。空洞部16は、ガイディングカテーテル14の先端開口16aと、ガイディングカテーテル14を固定支持するハブ(図示略)の基端開口16bとに連通している。サポートカテーテル10は、この空洞部16を移動可能なサイズに形成されている。以下、本実施形態に係るサポートカテーテル10の構成について、具体的に説明していく。
【0027】
サポートカテーテル10は、図1及び図2に示すように、シャフト20と、シャフト20の基端側に連結固定されたハブ22と、シャフト20の先端部に連結固定された筒構造部24とを備える。サポートカテーテル10の全長は、ガイディングカテーテル14の全長に応じて適宜(ガイディングカテーテル14より長く)設定されることが好ましく、例えば200〜5000mm程度であるとよい。
【0028】
また、筒構造部24により、サポートカテーテル10は、その先端と軸方向の途中位置から医療デバイス12やガイドワイヤ13を露出するラピッドエクスチェンジ型のデバイスに構成されている。これにより、ラピッドエクスチェンジ型のサポートカテーテル10は、筒構造部24の挿通孔46に挿通されたガイドワイヤ13の交換、医療デバイス12の移動や交換等を簡単に実施可能とする。
【0029】
シャフト20は、軸方向に所定長さを有し、サポートカテーテル10の全長の大半を占めている。このシャフト20は、中空状の管体であり、その内部には、造影剤(流体)を流動可能な内腔26が設けられている。
【0030】
また、シャフト20は、該シャフト20の軸方向上で異なる外形を呈している。詳細には、シャフト20の軸心に直交する断面で、シャフト20は、シャフト20の基端側が正円状の丸棒部28に形成されている。また、シャフト20の丸棒部28よりも先端側は、全体的に半円の円弧状を呈する凹状棒部30に形成されている。さらに、丸棒部28と凹状棒部30の境界部分には、シャフト20の外形を徐々に移行する移行部32が設けられている。凹状棒部30は、移行部32からシャフト20の先端までの間を延在し、シャフト20の軸方向の大部分を構成している。例えば、凹状棒部30の軸方向長さは、ガイディングカテーテル14の全長よりも長く設定される。
【0031】
さらに具体的には、凹状棒部30は、シャフト20の軸心に直交する断面で、凹状棒部30の外面の略半分が丸棒部28に曲率が一致する大径の半円面30aに形成され、もう半分が小径の半円面30bで大径の半円面30a側に窪んだ形状となっている(図3A参照)。つまり、小径の半円面30bは、凹状棒部30の軸方向に沿って延びる凹溝34(溝部)を構成している。
【0032】
なお、凹状棒部30の断面形状は、シャフト20の軸心に直交する断面で、半円に限定されず、半円よりも浅い凹溝34を有する円弧状、又は半円よりも深い凹溝34を有するC字状又はU字状に形成されてもよい。特に、U字状の凹溝34であれば、医療デバイス12やガイドワイヤ13がシャフト20の幅方向にぶれることを抑制して、シャフト20を通すことができる。
【0033】
一方、シャフト20の内腔26は、シャフト20の外形に応じてその形状が形成されている。つまり、内腔26は、丸棒部28において断面円形状に形成され、凹状棒部30において断面円弧状に形成されている(図3Aも参照)。また図示は省略するが、移行部32では、流体の流動を妨げない(逆流や大きな乱流を生じさせない等)ように、内腔26を断面円形状から断面円弧状に徐々に形状変化させている。そして、凹状棒部30の内腔26は、断面形状及び断面積が一定のまま、シャフト20の軸方向に沿って延在している。シャフト20の先端には、凹状棒部30の外形に応じて正面視で半円の円弧状を呈し、内腔26に連通して造影剤を流出可能な流出口36が設けられている。
【0034】
凹状棒部30の内腔26の断面積は、丸棒部28の内腔26の断面積よりも充分に小さく設定される。例えば、凹状棒部30の内腔26の断面積は、丸棒部28の内腔26の断面積の1/5以下であるとよい。これにより、ハブ22の中空部22aからシャフト20の内腔26に造影剤を供給した際に、凹状棒部30の内腔26において造影剤の流動を速める(勢いを増す)ことができ、造影剤をスムーズに血管内に吐出することができる。
【0035】
また、丸棒部28と凹状棒部30の間の移行部32は、ハブ22の先端近傍に位置するように設計されている。従って手技時に、ガイディングカテーテル14にサポートカテーテル10を挿入した状態でも、凹溝34がガイディングカテーテル14の基端から常に露出されることになる。サポートカテーテル10は、医療デバイス12の使用時に、ガイディングカテーテル14の基端から凹溝34内を沿わせることで、ガイディングカテーテル14の空洞部16内を円滑に相対移動させることができる。また、丸棒部28の基端部は、ハブ22の内部に挿入されて、適宜の固着手段(かしめ、融着、接着等)によりハブ22に固定される。
【0036】
シャフト20を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼、Ni−Ti系合金、Ni−Al系合金、Cu−Zn系合金等の超弾性合金等の種々の金属材料を適用することが好ましい。シャフト20の外周面には、医療デバイス12やガイドワイヤ13、ガイディングカテーテル14を含む医療デバイス12との摺動抵抗を低減するコーティングが施されてもよい。凹状棒部30は、丸棒部28と同径で管状の金属前駆体を、プレス等により押し潰すことにより形成してもよい。なお、シャフト20は、金属材料に限定されず、樹脂材料を適用してもよく、例えば樹脂材料を所定の型枠に射出して上記形状に成形してもよい。
【0037】
サポートカテーテル10のハブ22は、ハブ22の内部においてシャフト20を強固に固定している。そのため、ハブ22は、術者がハブ22を把持してサポートカテーテル10を操作する際、術者による進退操作や回転操作等をシャフト20に伝達する。ハブ22は、手技時に術者が把持し易いように、シャフト20よりも大径に形成されている。また、ハブ22は、ハブ22の内部に中空部22aを有すると共に、この中空部22aに連通する基端開口22bを有する。中空部22aは、先端側においてシャフト20の内腔26に連通する。そのため、ハブ22の基端開口22bから注入された流体は、中空部22aを通してシャフト20の内腔26に流入する。
【0038】
さらに、ハブ22の外周面には、ハブ22の操作性向上のため、一対のウイング23が設けられている。例えば、ウイング23は、シャフト20の周方向上で凹溝34が形成されている箇所に一致するように設けられるとよい。これにより、術者がサポートカテーテル10を患者の体内に挿入した状態で、凹溝34の位置を容易に認識させる。なお、ハブ22の外周面には、一対のウイング23が設けられていなくてもよい。
【0039】
一方、サポートカテーテル10の筒構造部24は、シャフト20の一部分(凹状棒部30の先端部分)に固定されることで、医療デバイス12やガイドワイヤ13の挿通部分を構成する。筒構造部24は、シャフト20の先端から先端方向に直線状に延びている。筒構造部24の基端側は、医療デバイス12やガイドワイヤ13を基端側から挿入又は抜去し易くするため、シャフト20の軸方向に対して斜めに傾斜した基端傾斜部40を備えているとよい。
【0040】
図2に示すように、筒構造部24は、内筒42(第1チューブ体)と、外筒44(第2チューブ体)とを2重に重ねたデュアルルーメンタイプのカテーテルに形成されている。また、筒構造部24は、その長手方向上において、シャフト20に重なってシャフト20に固着される固定領域24aと、固定領域24aから先端方向に所定長さ延びる延出領域24bとに分け得る。固定領域24aは、シャフト20、内筒42及び外筒44により構成され、延出領域24bは、内筒42及び外筒44により構成される。
【0041】
内筒42は、軸方向に沿って直線状に延びる中空円筒状に形成され、その内側に医療デバイス12やガイドワイヤ13を挿通可能な挿通孔46を有する。図3B及び図3Cに示すように、内筒42の外周面の曲率は、シャフト20の凹溝34の内周面(半円面30b)の曲率と略一致している。そのため、内筒42の基端側外周面は、凹溝34の先端側内周面に沿って面状に固着されている。シャフト20と内筒42の固着手段は、特に限定されず、例えば、融着や接着等により凹溝34の周方向を液密に閉塞するように固着される。
【0042】
図2に示すように、挿通孔46は、内筒42の内部を軸方向に貫通しており、内筒42の先端に設けられた先端開口46aに連通すると共に、内筒42の基端に設けられた基端開口46bに連通している。基端開口46bは、筒構造部24の基端傾斜部40に応じて、内筒42の軸心に対し所定角度傾斜している。従って、挿通孔46は、基端傾斜部40の形成箇所において、溝状に延在している(図3Bも参照)。
【0043】
内筒42は、シャフト20よりも柔軟に構成されることが好ましい。内筒42の構成材料は、特に限定されるものではないが、例えば、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂もしくはそれらのポリオレフィン系エラストマー、フッ素系樹脂もしくはフッ素系エラストマー、メタクリル樹脂、ポリフェニレンオキサイド、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン、環状ポリオレフィン、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミドもしくはポリアミド系エラストマー、ポリカーボネート、ポリアセタール、スチレン系樹脂もしくはスチレン系エラストマー、熱可塑性ポリイミド等があげられる。
【0044】
一方、外筒44は、内筒42の径方向外側に配置され、筒構造部24の外観を構成する。また、外筒44は、軸方向に沿って直線状に延びる中空円筒状に形成されている。外筒44の軸方向の長さは、内筒42の軸方向の長さと概ね一致するように形成される。一方で、外筒44の外径は、内筒42よりも大径に形成される。外筒44の内側には、内筒42を収容する空洞状の収容部48が設けられる。また、外筒44は、外筒44の軸心と内筒42の軸心が相互に近接して平行に延在するように内筒42を全体的に覆っている。収容部48の直径は、内筒42の外径よりも大きな寸法に設定され、内筒42を収容した状態で外筒44と内筒42の間に所定容積の空間部50を構築させる。
【0045】
この外筒44は、例えば、熱収縮チューブにより構成されることが好ましい。熱収縮チューブに構成された外筒44は、シャフト20及び内筒42を収容部48の基端側に配置した状態で、外筒44の基端側の所定範囲を加熱することによって収縮し、シャフト20及び内筒42に密着固定される。これにより、外筒44の固定領域24aに位置する部分の基端側内周面は、シャフト20及び内筒42の外周面に液密に固着される。例えば図3Bに示すように、外筒44は、加熱収縮されることで、シャフト20及び内筒42との間の隙間を埋めるように溶融する。なお、図2中では、外筒44の固着部分の外径が、未固着部分の外径よりも小径になっているが、外筒44の外周面の外径は、自由に設計してよく、例えば、先端方向に向かって先細りになるテーパ状に形成されてもよい。
【0046】
なお、筒構造部24の基端傾斜部40は、製造工程中に、内筒42及び外筒44を固着した状態で、固定領域24aにおける図2中の2点鎖線部分を切り取ることで形成される。これにより、内筒42の基端と外筒44の基端とが簡単に揃って基端傾斜部40を構成することができる。
【0047】
一方、延出領域24bにおける外筒44は、空間部50を挟んで内筒42の側方を直線状に延在する。空間部50は、周方向に沿って内筒42の外面を周回すると共に、筒構造部24の軸方向に沿って直線状に延在する筒状を呈している。この空間部50は、シャフト20の流出口36に連通し、流出口36から流入される造影剤を受け入れ、先端方向に向かって流動させる。
【0048】
外筒44は、上述したように熱収縮チューブを構成し得る材料を適用するとよい。或いは、外筒44は内筒42と同一の材料により構成されてもよく、この場合は、内筒42及び外筒44に同時に熱を加えることにより、シャフト20に強固に溶着させることもできる。また外筒44は、血管の損傷を抑制するため内筒42よりも柔軟に構成されてもよい。外筒44の外周面には、血管内を円滑に送達するためのコーティング(例えば、親水性コーティング)が施されていてもよい。なお、内筒42や外筒44は、内筒42であげたような材料を混合したチューブや、複数積層した多層チューブに構成され得る。
【0049】
そして、外筒44の先端は、図2及び図4Aに示すように、内筒42の先端側外周面に設けた先端チップ52に連結されている。先端チップ52は、内筒42の先端外周面に固着され、この先端外周面を周回するリング状に形成されている。筒構造部24は、外筒44の先端が先端チップ52の基端面52bに固着されることで、内筒42と外筒44の間の空間部50を塞いでいる。また、先端チップ52が内筒42又は外筒44に固着した状態で、外筒44の外周面と先端チップ52の外周面とは面一に連続しているとよい。なお、筒構造部24は、先端チップ52を有さなくてもよい。
【0050】
先端チップ52は、先端チップ52の軸方向に対し平行に貫通形成された複数(図4A中では8個)の孔部54(開口部56)を有している。複数の孔部54は、同一の直径に構成されると共に、先端チップ52の周方向に沿って等間隔に設けられている。また、各孔部54は、先端チップ52の先端面52aに先端開口54aを有すると共に、先端チップ52の基端面52bに基端開口54bを有し、空間部50を流動する造影剤を吐出する機能を有している。なお、複数の孔部54は、互いに同一の直径に構成されていなくてもよい。また、複数の孔部54は、先端チップ52の周方向に沿って等間隔に設けられていなくてもよい。
【0051】
ここで、開口部56の面積(複数の孔部54の総断面積)は、シャフト20の流出口36の面積(内腔26の断面積)よりも小さく設定されることが好ましい。これにより、流出口36から空間部50に流出され、空間部50内を流動する造影剤を孔部54から勢いよく吐出することが可能となる。よって、サポートカテーテル10は、生体管腔に送出された際に、その先端側の血管内(病変部等を含む)を良好に造影させることができる。
【0052】
先端チップ52は、サポートカテーテル10の進出時に生体管腔に主に接触する部分でもあり、所望の物性を有するように設定されるとよい。例えば、先端チップ52は、生体管腔を傷付けないように外筒44よりも柔軟に構成されるとよい。先端チップ52の構成材料は、特に限定されるものではないが、例えば、天然ゴム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑性ポリエステルエラストマーであるペルプレン(登録商標)、ナイロン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等があげられる。
【0053】
なお、筒構造部24は、内筒42、外筒44及び先端チップ52の構成について特に限定されるものではない。例えば、図4Bに示す第1変形例のように、筒構造部25Aは、先端チップ53Aを外筒45Aの内周面に固定して、先端チップ53Aの基端面の径方向内側と内筒43Aの先端を固着するように構成してもよい。これにより本実施形態に係る筒構造部24と同様に、筒構造部25Aは、空間部50の先端を閉塞しつつ、孔部54(開口部56)を介して造影剤を良好に吐出することができる。要するに、筒構造部24は、シャフト20の内腔26、空間部50、開口部56を液漏れ不能に連通可能であれば、その構成について特に限定されるものではない。
【0054】
また例えば、図4Cに示す第2変形例のように、筒構造部25Bは、内筒43Bと外筒45Bの間に先端チップ53Bを挟みこんで空間部50の先端側を閉塞する構成でもよい。さらに、図4Cに示すように、先端チップ53Bは、開口部56として孔部54の代わりにその内面側又は外面側に1以上の溝部58を備えてもよく、この溝部58を介して造影剤を吐出する構成でもよい。要するに、造影剤を外部に吐出するための開口部56は、自由に設計してよい。例えば、開口部56は、先端チップ52に設けずに、内筒42又は外筒44を構成する周壁に貫通形成されてもよい。
【0055】
本実施形態に係るサポートカテーテル10は、基本的には、以上のように構成され、以下その作用効果について説明する。
【0056】
例えば、サポートカテーテル10は、図5Aに示すように、冠動脈(血管100)に生じた狭窄部102を経皮的冠動脈形成術(PCI:percutaneous coronary intervention)によって治療を行う場合に選択的に使用される。このインターベンション手技において、術者は、ガイドワイヤ13を患者の大動脈内に挿入して先行させ、このガイドワイヤ13に沿ってガイディングカテーテル14を挿入及び送達する。そして、ガイディングカテーテル14の先端を冠動脈の入口に配置する。
【0057】
その後、術者は、ガイドワイヤ13(最初のガイドワイヤから治療用のガイドワイヤに交換してもよい)を冠動脈内に進出させていき、狭窄部102を通過させる。この状態で、ガイディングカテーテル14の空洞部16を通して医療デバイス12(バルーンカテーテル)を移動し、さらにガイディングカテーテル14の先端開口16aから医療デバイス12を送出する。そして、医療デバイス12をガイドワイヤ13に沿わせて狭窄部102に案内する。
【0058】
ここで、狭窄部102が冠動脈の入口から遠い位置に形成されている場合には、先端開口16aから医療デバイス12を送出する距離が長くなる。この距離が長くなる程、冠動脈内での医療デバイス12の押し込み力(進出力)が弱くなり、例えば、医療デバイス12を狭窄部102に挿入しようとしても、医療デバイス12のシャフト部12bが曲がる等のプッシュロスが生じて狭窄部102に進入できなくなる。
【0059】
上記のような場合には、ガイディングカテーテル14から医療デバイス12を一旦抜去して、代わりにサポートカテーテル10をガイディングカテーテル14に挿入する。サポートカテーテル10は、空洞部16を通って先端開口16aから送出されると、図5Bに示すように、冠動脈(血管100)内をガイドワイヤ13に沿って移動する。
【0060】
そして、術者は、サポートカテーテル10の移動時又は狭窄部102の近位において血管100の状態を確認したい場合に、図6Aに示すように、サポートカテーテル10の先端から造影剤を吐出させる。具体的には、ハブ22に造影剤のインフレータ104(図2参照)を接続して、インフレータ104からハブ22の中空部22aに造影剤を供給する。これにより造影剤は、中空部22aからシャフト20の内腔26に流入して、丸棒部28における断面円形状から凹状棒部30の断面円弧状に徐々に移行する内腔26を流動する。凹状棒部30の内腔26に移動する際には、造影剤の流速が速められる。
【0061】
そして、シャフト20の先端まで流動した造影剤は、流出口36から内筒42と外筒44の間の空間部50に流出する。ここで、空間部50の基端は、内筒42の外周面がシャフト20の半円面30bに液密に固着され、外筒44の内周面がシャフト20の半円面30aに液密に固着され、また内筒42の外周面と外筒44の内周面が液密に固着されている。そのため、造影剤は、外部に漏れずに空間部50を周方向に回り込みながら先端方向に流動する。さらに、造影剤は、空間部50の先端を塞ぐ先端チップ52の開口部56である複数の孔部54に流入して、各孔部54の先端開口54aから先端方向に吐出される。
【0062】
ここで、開口部56の断面積は、上述したように、凹状棒部30の内腔26の断面積よりも小さく設定されている。そのため、先端チップ52は、造影剤を先端チップ52の周方向に回り込み易くすると共に、孔部54内でも造影剤の流速を速めて、筒構造部24の先端方向に造影剤を一層勢いよく吐出することができる。その結果、狭窄部102の周辺を少量の造影剤で造影することが可能となる。
【0063】
サポートカテーテル10の先端が狭窄部102の近くに到達すると、術者は、医療デバイス12を再び使用して、サポートカテーテル10及びガイディングカテーテル14に沿ってこの医療デバイス12を移動させる。ここで、ガイディングカテーテル14の空洞部16では、図1に示すように、シャフト20の軸方向に沿って凹溝34が存在している。そのため、術者は、空洞部16及び凹溝34内を通して医療デバイス12を良好に進出させることができる。
【0064】
さらに、医療デバイス12は、凹溝34から筒構造部24の挿通孔46に挿入されると、挿通孔46内を進出して冠動脈(血管100)内を移動する。そして医療デバイス12の先端は、筒構造部24の先端開口46aから送出された段階で、狭窄部102の近位に位置することになる。このため、術者が、医療デバイス12を狭窄部102に押し込む操作をすると、サポートカテーテル10がシャフト部12bの周囲を支えて、医療デバイス12の押し込みを補助する。その結果、図6Bに示すように、医療デバイス12のバルーン12a(処置部)が狭窄部102に容易に押し込まれる。
【0065】
そして、バルーン12aが狭窄部102に配置された段階で、術者は、図6Cに示すように、バルーン12aを拡張させることにより狭窄部102を良好に押し広げることができる。その後は、例えば、医療デバイス12(バルーンカテーテル)を後退及び抜去して、他の医療デバイス(ステントデリバリーデバイス)に代えて、上記と同様にサポートカテーテル10により他の医療デバイスを狭窄部102の近位に案内することで、ステントを狭窄部102に留置することができる。
【0066】
以上のように、本実施形態に係るサポートカテーテル10は、シャフト20の内腔26を通して造影剤を流動させて空間部50に流出し、さらにこの造影剤を、空間部50を流動させて開口部56から筒構造部24の先端方向に確実に流出させることができる。すなわち、筒構造部24の空間部50は、外筒44の基端部分(固定領域24a)がシャフト20及び内筒42に液密に固定されているため、造影剤を流動途中で外部に漏らすことを防止する。これにより、サポートカテーテル10は、サポートカテーテル10の先端側から造影剤を確実に吐出することができる。また、サポートカテーテル10は、造影剤の使用量を減少させることができ、また筒構造部24よりも先端側に流出した造影剤によって、体内の状態をより鮮明に認識(放射線造影)させることが可能となる。
【0067】
また、サポートカテーテル10は、シャフト20の先端側に凹溝34を有するため、筒構造部24の基端側の空間が広くなっている。そのため、サポートカテーテル10は、医療デバイス12が筒構造部24に向かって挿入される際に、筒構造部24に医療デバイス12が引っ掛かることを抑制して、医療デバイス12を挿通孔46にスムーズに挿通させることができる。また、シャフト20の先端部の内腔26の断面積がシャフト20の基端部の内腔26の断面積よりも小さいことで、造影剤がシャフト20の内腔26を流動する際、シャフト20の基端側からシャフト20の先端側に向かって、造影剤の流動速度を速めることができる。よって、サポートカテーテル10は、造影剤等の粘性の高い流体をスムーズに流動させることができる。また、サポートカテーテル10は、シャフト20の外面に凹溝34を備えることで、医療デバイス12を凹溝34に沿わせることができ、医療デバイス12をより円滑に摺動させることができる。
【0068】
さらに、サポートカテーテル10は、シャフト20の先端部の内腔26がU字状に形成されていることで、シャフト20と筒構造部24との接合部におけるシャフト20の内腔26を広く確保することができる。これにより、術者は、シャフト20の手元側からシャフト20の内腔26及び筒構造部24の空間部50を通して造影剤を筒構造部24の開口部56までスムーズに流動させることができる。また、シャフト20の先端部の内腔26がU字状に形成されていることで、サポートカテーテル10は、医療デバイス12が挿入される筒構造部24の基端側の空間を広くすることができる。よって、術者は、筒構造部24の挿通孔46に医療デバイス12をスムーズに挿通させることができる。
【0069】
そして、内筒42が凹溝34に固定されることで、内筒42を強固に固定することができる。そのため、サポートカテーテル10は、筒構造部24とシャフト20との接合が高められ、筒構造部24とシャフト20の破断リスクを抑制することができる。
【0070】
サポートカテーテル10は、開口部56の断面積がシャフト20の内腔26の先端側の断面積よりも小さいことで、シャフト20の内腔26から流動した流体をよりスムーズに吐出することができる。従って、サポートカテーテル10は、造影剤等の粘性の高い流体を開口部56に向けてスムーズに流動させることができる。
【0071】
また、筒構造部24は、柔軟な先端チップ52を備えることで、サポートカテーテル10が血管100内を進出する際に、その先端部が血管100を傷付けることを抑制できる。
【0072】
なお、本発明に係るサポートカテーテル10は、上述した構成に限定されるものではなく、種々の変形例や応用例を適用し得る。例えば、シャフト20の内腔26の断面形状は、凹状棒部30に対応した円弧状に形成されるだけでなく、種々の構成を採用してよい。
【0073】
また、サポートカテーテル10が吐出する流体は、造影剤に限定されるものではなく、インターベンション手技で適用される種々の流体を流出するように構成することができる。この流体としては、例えば、生理食塩水、塞栓剤、治療に使用する様々な薬液等があげられる。サポートカテーテル10の開口部56は、流体の粘性に応じて適宜改変してよく、例えば、先端チップ52を備えずに、筒構造部24の周方向全周にわたって開口部56を開放した構成でもよい。
【0074】
また、図7に示す他の応用例に係るサポートカテーテル70(医療用長尺体70)は、空間部50を構成する筒構造部72の内筒74の外周面に筒構造部72を補強する補強線76(補強体)を設けた点で、本実施形態に係るサポートカテーテル10と異なる。この補強線76は、内筒74の外周面を螺旋状に巻回するコイルとして形成されている。補強線76を構成する材料は、特に限定されず、金属材料(金属ブレード等)や樹脂材料(ナイロンブレード等)を適宜適用してよい。
【0075】
空間部50は、この補強線76により、シャフト20から流入された造影剤を先端方向に流動させる際に、螺旋状の凹凸に沿うように造影剤を流動させ、空間部50の周方向に造影剤を満遍なく行き渡らせることができる。すなわち、内筒42に設けた補強線76は、筒構造部72の延在状態を安定的に確保すると同時に、造影剤を撹拌することができる。
【0076】
なお、サポートカテーテル10は、造影剤を拡散させる構成について、自由に設計してよく、例えば、外筒44の内周面に補強線76を設置してもよい。また、補強線76の形状も、螺旋状に限定されず、例えば、メッシュ状のものが空間部50を構成する壁面の一部又は全部に設けられてもよく、或いは、空間部50を周回するリング状のものが1以上設けられてもよい。また例えば、サポートカテーテル10は、内筒42の外周面又は外筒44の内周面から突起(図示せず)を1以上突出形成して他方の面を支持することで、空間部50を確保する構成としてもよい。この突起は、空間部50に流入した造影剤を撹拌させることもできる。
【0077】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。例えば、サポートカテーテル10は、適宜の改変を施すことで、血管100内でガイドワイヤ13を進出する際に狭窄部102等を通ることが困難な場合に、ガイドワイヤ13を補強してその移動を補助するマイクロカテーテルとして構成されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7