特許第6875378号(P6875378)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6875378湿潤表面に対する接着力が高められた(メタ)アクリレート感圧接着剤を含む陰圧閉鎖創傷療法被覆材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875378
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】湿潤表面に対する接着力が高められた(メタ)アクリレート感圧接着剤を含む陰圧閉鎖創傷療法被覆材
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/00 20060101AFI20210517BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20210517BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20210517BHJP
   A61F 13/02 20060101ALI20210517BHJP
   A61L 15/58 20060101ALI20210517BHJP
   A61L 15/24 20060101ALI20210517BHJP
   A61M 27/00 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   A61F13/00 308
   C09J133/06
   C09J7/38
   A61F13/02 350
   A61L15/58 100
   A61L15/24 100
   A61M27/00
【請求項の数】6
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2018-511016(P2018-511016)
(86)(22)【出願日】2016年8月19日
(65)【公表番号】特表2018-532450(P2018-532450A)
(43)【公表日】2018年11月8日
(86)【国際出願番号】US2016047884
(87)【国際公開番号】WO2017040074
(87)【国際公開日】20170309
【審査請求日】2019年8月19日
(31)【優先権主張番号】62/212,219
(32)【優先日】2015年8月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】ジューン チャッタージー
(72)【発明者】
【氏名】サイモン エス.ファング
【審査官】 塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0316359(US,A1)
【文献】 特表2011−504126(JP,A)
【文献】 特表平07−501958(JP,A)
【文献】 特表2010−508386(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0050613(US,A1)
【文献】 特開平07−258610(JP,A)
【文献】 特開2003−049142(JP,A)
【文献】 特表2013−509969(JP,A)
【文献】 特開平09−132525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00−13/14
A61F 15/00−17/00
A61L 15/24
A61L 15/58
A61M 27/00
C09J 7/38
C09J 133/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体を含む陰圧閉鎖創傷療法被覆材であって、前記支持体は、前記支持体の主表面の少なくとも一部分に湿潤粘着感圧接着剤を有し、且つ少なくとも1つの開口部を含み、前記開口部は、前記開口部を通して真空をかけることができるように構成されており、
前記湿潤粘着感圧接着剤は、約25000〜約200000の数平均分子量を有するポリ(メタ)アクリレート高分子を含む接着剤前駆組成物の架橋反応生成物であり、
前記接着剤前駆組成物は、約−20℃未満のTを示し、25℃で約4Pa〜約10000Paの貯蔵弾性率を示す、陰圧閉鎖創傷療法被覆材。
【請求項2】
前記ポリ(メタ)アクリレート高分子が、アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位から本質的になる、請求項1に記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材。
【請求項3】
前記接着剤前駆組成物の前記ポリ(メタ)アクリレート高分子が、実質的に直鎖状の高分子である、請求項1又は2のいずれかに記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材。
【請求項4】
前記湿潤粘着感圧接着剤が、前記湿潤粘着感圧接着剤の総重量に基づいて約2重量%〜約10重量%の可塑剤を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材。
【請求項5】
前記ポリ(メタ)アクリレート高分子が、少なくとも1種の連鎖移動剤を含むモノマー混合物の第1の合成反応の反応生成物であり、少なくとも一部の前記ポリ(メタ)アクリレート高分子が、少なくとも1つの連鎖移動剤残基を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材。
【請求項6】
前記湿潤粘着感圧接着剤が、約40〜約70%のゲル含有量を示す、請求項1〜5のいずれか一項に記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(メタ)アクリレート感圧接着剤(PSA)は、多くの用途で魅力的な材料である。(メタ)アクリレートは、光学的透明度、酸化耐性、及び本来的な粘着性で知られている。しかしながら、そのような(メタ)アクリレートポリマーの多くは本質的に疎水性であり、修飾しなければ、「湿潤粘着」接着剤(例えば、湿潤又は湿性表面、特に皮膚に対して十分に接着することが可能な感圧接着剤)として不適当であると一般に考えられてきた;例えば、米国特許第6518343号及び米国特許第6441092号を参照されたい。
【発明の概要】
【0002】
広範な概要として、本明細書において、約25000〜約200000の数平均分子量を有するポリ(メタ)アクリレート高分子を含む接着剤前駆組成物を架橋することにより得られる感圧接着剤が開示される。また、かかる接着剤を含む陰圧閉鎖創傷療法デバイス、及びかかるデバイスの使用方法もまた開示される。少なくとも幾つかの実施形態では、かかる接着剤は、本明細書において開示されるように、湿潤粘着特性を示す。本発明のこれらの態様及び他の態様は、以下の詳細な説明から明らかとなろう。しかしながら、かかる主題が、最初に出願された出願の特許請求の範囲において提示されたか、又は補正後の特許請求の範囲において提示されたか、さもなければ特許審査中に提示されたかに関係なく、この広範な概要は、いかなる場合にも請求可能な主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1】本明細書において開示される感圧接着剤を含む物品の例の観念的な側面図である。
図2】本明細書において開示される例示的な陰圧閉鎖創傷療法被覆材の観念的な側面図である。
図3】本明細書において開示される様々な接着剤前駆組成物の例について得られた動的粘弾性(DMA)データを示す。
図4】本明細書において開示される様々な更なる接着剤前駆組成物の例について得られたDMAデータを示す。
図5】様々な実施例及び比較例についての湿潤粘着性接着試験データを示す。
図6】様々な実施例及び比較例についての空気漏れ試験データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0004】
定義
本明細書で使用するとき、用語「感圧接着剤」は、周知のダルキストのクライテリオン(例えば、25℃、周波数1Hzにおいて、感圧接着剤の貯蔵弾性率が3×10Pa未満である)を満たす粘弾性材料を指す。
【0005】
本明細書で使用するとき、用語「接着剤前駆組成物」は、数平均分子量が約25000〜200000である一群のポリ(メタ)アクリレート高分子と、任意選択的に、例えば、可塑剤、粘着付与剤、溶剤、安定剤、及び加工助剤などの1つ以上の成分とを合わせたもの指す。接着剤前駆組成物は必ずしも感圧性を示さなくてもよく、架橋により本明細書において開示される感圧接着剤を提供することができるものである。
【0006】
本明細書で使用する場合、用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート、又は両方を指す。用語「(メタ)アクリレート」は、式CH=C(R)−(CO)−ORのモノマーを指し、式中、Rがアルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、又はアリール(又はこのようなモノマーに由来するモノマー単位)である。アルキル、ヘテロアルキル、又はアルケニルであるR基は、アリール、アリールオキシ、ハロ、又はこれらの組み合わせで置換されてもよい。アリールであるR基は、アルキル、ヘテロアルキル、ハロ、アルコキシ、アリールオキシ、又はこれらの組み合わせで置換されてもよい。用語「アルキル(メタ)アクリレート」は、Rがアルキル基である(メタ)アクリレートを指す。
【0007】
本明細書で使用するとき、用語「湿潤粘着」感圧接着剤は、本明細書において開示される湿潤粘着試験法により試験した場合に、少なくとも約2000gのピーク引っ張り力を示す感圧接着剤を指す。
【0008】
本明細書で使用するとき、用語「環状」は、一般的な意味で、中央領域を取り囲む部材を表すために用いられ、部材が実質的に、又は更には概して円形の形状を示す必要はない。(例えば、電極の「環状」PSAは、例えば、矩形状の額縁の縁の形状をしていてもよい。)
【0009】
当業者であれば、ある種の構成要素から「本質的になる」、あるいは特定の材料を「実質的に含まない」などの用語は、例えば、慣習的な洗浄手順を行う大規模製造施設を使用したときに生じ得るような、極めて少量(すなわち、0.05重量%以下)でかかる材料が存在することを除外するわけではないことを認識するであろう。
【0010】
本明細書において開示されるすべての部及び百分率は、別段の指定がない限り重量によるものである。すべての分子量(例えば、M)は、グラム/モルによる。
【0011】
感圧接着剤/接着剤前駆組成物
本明細書では、感圧接着剤(PSA)及びこのような接着剤を含む物品が開示される。感圧接着剤は、約25000〜約200000の数平均分子量を有するポリ(メタ)アクリレート高分子を含む接着剤前駆組成物を架橋することにより調製された、ネットワーク化された(メタ)アクリレート成分を含有する。本開示により認識されるように、このような接着剤前駆組成物は、結果として、例えば、不快感を最小限に抑え、人間の皮膚からの脱着性を向上させたPSAを提供する、特有のレオロジーを示すことができる。
【0012】
「接着剤前駆組成物を架橋することにより調製された」、「接着剤前駆組成物の架橋反応生成物」、及び同様の用語は、接着剤前駆組成物(例えば、本明細書で以下に詳述する第1の合成反応において、第1の(メタ)アクリレートモノマー混合物から調製することができる)に対し、接着剤前駆組成物の少なくとも一部のポリ(メタ)アクリレート高分子を組成物中のその他の高分子と共有結合させて、感圧接着特性を示すポリマーネットワークを形成させる架橋反応を実施することを意味する(注:感圧接着特性を増強させるために、可塑剤などの成分を含有させてもよい)。本明細書における記載をもとに認識され得るように、このような二段階プロセス(すなわち、接着剤前駆組成物の調製後、かかる組成物を架橋する)、及びこのようなプロセスにより得られる感圧接着剤生成物は、例えば、一段階合成プロセスにおいて、例えば、モノマー/オリゴマーにより構成されるポリマーネットワークと区別することができる。
【0013】
当然のことながら、接着剤前駆組成物のポリ(メタ)アクリレート高分子は、(例えば、本明細書における実施例に記載されるポリスチレン標準を用いるゲル浸透クロマトグラフィーにより評価され得るものとして)約25000〜約200000(グラム/モル)の数平均分子量を有する。本明細書において開示されるように、分子量が低すぎると(例えば、約25000未満)、結果的に、接着剤前駆組成物を架橋させて好適な感圧接着剤を形成することが難しくなることがある。反対に、分子量が高すぎると(例えば、約200000超)、かかる接着剤前駆組成物から生成される架橋された感圧接着剤が高すぎる弾性率を示すことになる(そしてPSAは、例えば、最適なタック性及び/又は短時間での粘着性を失う場合がある)。様々な実施形態において、接着剤前駆組成物のポリ(メタ)アクリレート高分子は、少なくとも約26000、27000、28000、30000、又は32000の数平均分子量を有していてもよい。更なる実施形態において、接着剤前駆組成物のポリ(メタ)アクリレート高分子は、最大で約110000、100000、80000、60000、40000、又は35000の数平均分子量を有していてもよい。かかる分子量は、すべて、従来の多くの感圧接着剤に使用される(メタ)アクリレートポリマー材料の分子量未満であり、本明細書に記載する有利な結果を有するものである。幾つかの実施形態では、ポリ(メタ)アクリレート高分子は、本質的に直鎖状のポリマーであってよい(例えば、(メタ)アクリレートモノマー、例えば、単官能性モノマーの重合反応において統計的に稀に生じ得る分岐は除く)。
【0014】
本明細書における実施例に記載するように、接着剤前駆組成物の高分子の分子量(並びに接着剤前駆組成物中の任意の可塑剤の有無及び/又は量)は、接着剤前駆組成物の弾性率に顕著に影響を与え得るものであり、ひいてはかかる組成物から形成されるPSAの特性に顕著に影響を与え得る。本明細書で開示される接着剤前駆組成物は、かかる組成物から形成される感圧接着剤に有利な特性(例えば、皮膚からの優しい剥離)を提供するように機能する範囲内で、貯蔵弾性率を示すことが判明している。当然のことながら、接着剤前駆組成物は、(本明細書における実施例に記載の手順を用いて25℃で測定した場合)最大で約10000Paの貯蔵弾性率を示す。接着剤前駆組成物は、最大で約7000、4000、2000、1000、又は500Paの貯蔵弾性率を示し得る。更なる実施形態において、接着剤前駆組成物は、最大で約4、10、20、40、80、100、200、又は400Paの貯蔵弾性率を示し得る。
【0015】
本明細書において開示する接着剤前駆組成物は、かかる組成物から形成される感圧接着剤に有利な特性(例えば、皮膚からの優しい剥離)を提供するように機能する、ガラス転移温度(T)を示すことが判明している。(例えば、低Tは、しばしば低剥離接着力と相関する)。当然のことながら、接着剤前駆組成物は、最大で約−20℃のTを示す(本明細書における実施例に記載の手順を用いて測定される)。様々な実施形態において、接着剤前駆組成物は、最大で約−30℃、−35℃、−40℃、又は−45℃のTであってよい。更なる実施形態において、接着剤前駆組成物は、少なくとも約−60℃、−55℃、又は−50℃のTであってよい。
【0016】
本明細書の実施例で示すように、接着剤前駆組成物のポリ(メタ)アクリレート高分子の分子量は、接着剤前駆組成物のTに作用し得ることが判明している。これにより、かかる組成物から形成される感圧接着剤の特性を最適化するように、接着剤前駆組成物のTを調整することも可能である。当業者であれば、本明細書において開示されるポリ(メタ)アクリレート高分子の分子量が、Tなどの特性がプラトーに達し、分子量に伴う変化がほとんどないことが見込まれる程度に十分高いことは認識するであろう。例えば、試料PRE−1、PRE−2、PRE−3、及びPRE−4のポリ(メタ)アクリレート高分子は、(実施例の表3に記載のように)それぞれ約130、151、187、及び300の範囲の重合度(すなわち、高分子鎖あたりの平均モノマー単位数)に対応する分子量を有する。これらは、Tが分子量変化による影響を相対的に受け易くなることが予想される高分子鎖の原子数の閾値をはるかに上回る(例えば、Rodriguez,Principles of Polymer System(第2版,1982年);第8−7節,第221頁を参照されたい)。しかしながら、これらの試料は、(表3及び図3に記載のように)それぞれ−48℃、−42℃、−39℃、及び−36℃のTsを示した。比較のため、当業者であれば、例えば、200000超〜500000の分子量である従来のポリ(アクリル酸イソオクチル)のTは、同様の方法により測定したときに−30℃〜−35℃の範囲であるものと予想するであろう。(当業者であれば、このような材料が、本明細書に記載される材料によって示される弾性率よりも、顕著に高い弾性率を示すことも予想するであろう。)接着剤前駆組成物のポリ(メタ)アクリレート高分子の分子量を、特許請求する分子量範囲にわたって結果に影響する変数として利用して、接着剤前駆組成物のTに作用させることができる(そして、接着剤前駆組成物から生成されるPSAの特性に影響を与えることができる)という発見は、予期せぬものである。
【0017】
幾つかの場合、例えば、貯蔵弾性率及び/又はTなどの特性は、主に又は本質的に完全に、接着剤前駆組成物のポリ(メタ)アクリレート高分子の特性に由来し得る(例えば、接着剤前駆組成物がポリ(メタ)アクリレート高分子から本質的になる場合)。しかしながら、幾つかの実施形態では、1つ以上の可塑剤を接着剤前駆組成物に含有させることができる。かかる実施形態では、接着剤前駆組成物の貯蔵弾性率、T、及び/又は粘度などの特性は、可塑剤によってわずかに、又は顕著に影響されることがある。したがって、このような可塑剤の量及び/又は種類は、本明細書の実施例に記載のように、接着剤前駆組成物及びかかる組成物から形成されるPSAの特性に影響を与えるよう好都合に選択することができる(例えば、ポリ(メタ)アクリレート高分子の分子量に加えて)。
【0018】
接着剤前駆組成物中に1種以上の可塑剤が存在する実施形態では、可塑剤は、少なくとも約2、4、8、12、又は20重量%(接着剤前駆組成物の合計重量に基づく)で存在してもよい。更なる実施形態において、このような可塑剤は、最大で約50、30、20、10、4、2、又は1重量%で存在してもよい。PSAが形成される接着剤前駆組成物の特性に許容不能な影響を与えない限り、任意の好適な可塑剤を使用することができる。このような可塑剤は、接着剤前駆組成物中のその他の成分(例えば、ポリ(メタ)アクリレート高分子)と相溶性(すなわち、混和性)であるように、最適に選択することができる。潜在的に好適な可塑剤としては、様々なエステル類、例えば、アジピン酸エステル、ギ酸エステル、りん酸エステル、安息香酸エステル、フタル酸エステル;スルホンアミド、及びナフテン油が挙げられる。潜在的に好適なその他の可塑剤としては、例えば、炭化水素油(例えば、芳香族、パラフィン系又はナフテン系のもの)、植物油、炭化水素樹脂、ポリテルペン、ロジンエステル、フタレート、ホスフェートエステル、二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、ポリエーテル、及びこれらの組み合わせ;オリーブ油、ヒマシ油、及びパーム油などの植物油脂;ラノリンなどの動物油脂;グリセリン脂肪酸エステル及びプロピレングリコール脂肪酸エステルなどの多価アルコールの脂肪酸エステル;並びにオレイン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソトリデシル、及びラウリン酸エチル、脂肪酸エステルなどの脂肪酸アルキルエステルが挙げられる。特定の実施形態では、可塑剤はカプリル酸トリグリセリドであってよい。上記の任意の可塑剤は、単独で、又は組み合わせて(及び/又は本明細書において言及される任意のその他の添加剤と組み合わせて)使用することができる;上記のリストは例示的なものであり、限定するものではないことは認識されるであろう。幾つかの実施形態では、任意のかかる可塑剤は疎水性可塑剤であってもよく、疎水性可塑剤とは、JT Daviesによる方法:A quantitative kinetic theory of emulsion type,I.Physical chemistry of the emulsifying agent,Gas/Liquid and Liquid/Liquid Interface(Proceedings of the International Congress of Surface Activity);426〜38,1957によって評価した場合に、HLB(親水性−疎水性バランス)パラメータが、10未満であることを意味する。更なる実施形態において、かかる可塑剤のHLBパラメータは、8未満、又は6未満であってもよい。かかる1種の可塑剤又は複数の可塑剤は、しばしば、接着剤前駆組成物から形成されたPSA中に、その特性を好適に増強するよう残存することは認識されるであろう。更に、このような可塑剤は接着剤前駆組成物に添加することができる;すなわち、可塑剤が例えば非反応性の希釈剤として提供され得る場合、接着剤前駆組成物が形成されるモノマー混合物(反応混合物)に含有させることができる。
【0019】
本明細書において開示されるポリ(メタ)アクリレート高分子は任意の好適なモノマー単位(単数又は複数)を含有することができる。好適なモノマー単位は、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、アルケニル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、アリール置換アルキル(メタ)アクリレート、及びアリールオキシ置換アルキル(メタ)アクリレートなどを含む、様々な非極性(メタ)アクリレートモノマー単位から選択することができる。
【0020】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート(すなわち、イソアミル(メタ)アクリレート)、3−ペンチル(メタ)アクリレート、2−メチル−1−ブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−1−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、イソヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチル−1−ペンチル(メタ)アクリレート、3−メチル−1−ペンチル(メタ)アクリレート、4−メチル−2−ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−1−ブチル(メタ)アクリレート、2−メチル−1−ヘキシル(メタ)アクリレート、3,5,5−トリメチル−1−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、3−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチル−1−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、2−プロピルヘプチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート(すなわち、ラウリル(メタ)アクリレート)、n−トリデシル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、3,7−ジメチル−オクチル(メタ)アクリレート、1−オクタデシル(メタ)アクリレート、17−メチル−1−ヘプタデシル(メタ)アクリレート、及び1−テトラデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられるがこれに限定されない。
【0021】
多くの場合、このようなモノマー単位は、アクリル酸又はメタクリル酸のいずれかと、非第三級アルコールとのエステルである、モノマーから誘導される。好適なモノマーの具体例としては、アクリル酸又はメタクリル酸のいずれかと、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、イソオクチルアルコール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−デカノール、2−プロピルヘプタノール、1−ドデカノール、1−トリデカノール、1−テトラデカノール、シトロネロール、及びジヒドロシトロネロールなどとのエステルを挙げることができる。更に他の、好適な非極性(メタ)アクリレートは、アリール(メタ)アクリレート、例えば、フェニル(メタ)アクリレート又はベンジル(メタ)アクリレート;アルケニル(メタ)アクリレート、例えば、3,7−ジメチル−6−オクテニル−1(メタ)アクリレート及びアリル(メタ)アクリレート;並びにアリール置換アルキル(メタ)アクリレート又はアリールオキシ置換アルキル(メタ)アクリレート、例えば、2−ビフェニルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及び2−フェノキシエチル(メタ)アクリレートである。上記のリストのすべてのものは例であって、非限定的なものであることは認識されるであろう。
【0022】
幾つかの実施形態では、モノマー単位及びかかる単位から形成されるポリ(メタ)アクリレート高分子は、参照によりその全体が本明細書に援用される米国特許第8137807号(Clapper)に記載のモノマー単位及び高分子から選択してもよい。接着剤前駆組成物が光架橋されて感圧接着剤を形成する実施形態では、接着剤前駆組成物は、本明細書において以降に詳述するように、例えば、アクリロイルエトキシベンゾフェノンなどのモノマー単位により提供される、光により活性化可能な架橋剤を含有してもよい。
【0023】
多くの実施形態において、少なくとも一部のモノマー単位がアルキル(メタ)アクリレートモノマー単位(このような単位の多くは、上記の例示的なリストに含まれる)であると好都合な場合がある。アルキル基の大きさ(例えば、炭素原子数)は、所望のとおりに選択することができる。特に好都合なアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、いずれも炭素原子を8個有するアルキル基を有する、2−エチルヘキシルアクリレート及びイソオクチルアクリレートを挙げることができる。幾つかの実施形態では、ポリ(メタ)アクリレート高分子の一部又はすべてはホモポリマー、すなわち、それらは本質的に特定の1種類のモノマー単位(実施例のイソオクチルアクリレートホモポリマーにより例示のものなど)から構成されてもよい。その他の実施形態では、様々なモノマー単位を所望のとおりの異なる1種以上のモノマー単位と共重合させることもできる。様々な実施形態において、ポリ(メタ)アクリレートコポリマー高分子は、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーであってよい。
【0024】
特定の実施形態では、例えば、Tを調整する目的で、ある程度少量の高Tモノマー単位(すなわち、少なくとも約−20℃の公称Tを有する)を、(本明細書において開示される所望の範囲内にとどまる限り)ポリ(メタ)アクリレート高分子に含有させることができる。様々な実施形態において、かかる高Tモノマーは、存在する場合、例えば、少なくとも0℃、少なくとも25℃、少なくとも30℃、少なくとも40℃、又は少なくとも50℃の公称Tを示してもよい。(本開示のポリ(メタ)アクリレート高分子に、例えば数重量%で組み込まれる場合、かかるモノマーはこのような公称Tを示さないと、認識されたい。むしろ公称Tは、高Tモノマー自体を重合させてホモポリマーを形成させた場合の、高Tモノマーの公称Tであることが認識されたい。)適切な高Tモノマーとしては、メチルメタクリレート、三級ブチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、三級ブチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジルメタクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、又はこれらの組み合わせが挙げられるがこれに限定されない。
【0025】
極性モノマー単位を高濃度にすると、本明細書において開示されるPSAの皮膚接着特性に望ましくない影響が生じ得ることが判明している。当然のことながら、接着剤前駆組成物のポリ(メタ)アクリレート高分子が含む極性モノマー単位は約4.0重量%未満である。様々な実施形態において、ポリ(メタ)アクリレート高分子は、約3.0、2.0、1.0、0.6、0.4、0.2、又は0.1重量%未満の極性モノマー単位を含有する。特定の実施形態では、ポリ(メタ)アクリレート高分子は、極性モノマー単位を実質的に含まず、すなわち、含有する極性モノマー単位は約0.05重量%未満である。このような、除外される極性モノマー単位としては、PCT国際公開第2013/048735号(Lewandowski)の第6頁第27行から第7頁第31行に記載のモノマー単位が挙げられるがこれらに限定されない。特定の実施形態では、ポリ(メタ)アクリレート高分子は、(メタ)アクリル酸モノマー単位、アクリルアミドモノマー単位、アクリロニトリルモノマー単位、2−ヒドロキシエチルアクリレートモノマー単位、及び/又はグリシジルメタクリレートモノマー単位を実質的に含まない。
【0026】
更なる実施形態において、本明細書において開示されるPSAは、合わせて約4.0、3.0、2.0、1.0、0.6、0.4、0.2、又は0.1重量%未満の親水性添加剤を、かかる添加剤(単数又は複数)が例えば可塑剤、粘着付与剤、界面活性剤、湿潤剤、増粘剤などのいずれの種類であるかにかかわらず、含んでいてもよい。この関係において、親水性とは、HLBパラメータが、Davies法によって評価した場合に、10以上である材料を意味する。
【0027】
幾つかの実施形態では、ポリ(メタ)アクリレート高分子は、ビニル(オレフィン)官能基を含む(メタ)アクリレートモノマー単位を含んでもよい。かかるモノマー単位は、例えば接着剤前駆組成物を形成する最初の合成反応において反応する(メタ)アクリレート基によって、ポリ(メタ)アクリレート高分子に組み込まれてもよい。ビニル官能基は、この最初の反応中、未反応のままであってもよく、したがって、接着剤前駆組成物のPSAへの転換に使われる後続の架橋プロセスを促進するために利用してもよい。例えば、かかるビニル官能基(例えば、高分子の(メタ)アクリレートに由来する骨格のペンダント基に存在する)は、例えば、少ない照射線量の電子線で電子線照射架橋を行うことを可能にする場合がある。このようにしてビニル基などを含むのに好適であり得るモノマーの非限定的なリストとして、例えば、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、アリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアリルアクリルアミド、シンナモイル(メタ)アクリレート、クロチルアクリレート、ウンデセノイル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、3−ブテニル(メタ)アクリレート、シトロネリル(メタ)アクリレート(citronelyl(meth)acrylate)、ゲラノイル(メタ)アクリレート、リナロイル(メタ)アクリレート、イソプロペニル(メタ)アクリレート、ブタジエン(メタ)アクリレート、O−オイゲニル(メタ)アクリレート、アリルフェニル(メタ)アクリレート、アリルオキシエトノイル(メタ)アクリレート(allyloxyethnoyl(meth)acrylate)、ビニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノアリルエーテル(メタ)アクリレート、アビトール(メタ)アクリレート、コレステロール(メタ)アクリレート、ポリ(ブタジエニル)(メタ)アクリレートオリゴマー、及びポリ(イソプレニル)(メタ)アクリレートオリゴマーが含まれる。幾つかの実施形態では、(メタ)アクリレートエステルモノマーは、2種以上の異なる(メタ)アクリレートエステルモノマーの組み合わせが好適であるが、(メタ)アクリル酸と、アリルアルコール若しくは10−ウンデセン−1−オール又はこれらの組み合わせとのエステルである。幾つかの実施形態では、(メタ)アクリレートエステルモノマーは、(メタ)アクリル酸と、シトロネロール、及びゲラニオールなどの再生可能資源に由来するアルコールとのエステルである。任意のかかるモノマー又はモノマーの組み合わせは、全モノマー(単数又は複数)の100重量部に対して、0〜10重量部の量で、例えば、1〜5重量部の量で存在してもよい。
【0028】
接着剤前駆組成物又はかかる組成物から形成されるPSAの特性に許容できないような影響を与えなければ、その他の(例えば、非(メタ)アクリレート)モノマー単位を、ポリ(メタ)アクリレート高分子に少量含有させてもよい。したがって、幾つかの実施形態では、ポリ(メタ)アクリレート高分子は、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル);アルキル置換スチレン(例えば、α−メチルスチレン)などのスチレン又はそれらの誘導体;ハロゲン化ビニル;又はこれらの混合物などの1種以上のその他のビニルモノマー単位を更に含むコポリマーであってよい。これらの他のビニルモノマー単位は、存在する場合、任意の好適な量で存在することができる。幾つかの実施形態では、ビニルモノマー単位は、最大でポリ(メタ)アクリレート高分子の5、2、1、又は0.5重量%の量で存在する。しかしながら、幾つかの実施形態では、ポリ(メタ)アクリレート高分子は、非(メタ)アクリレートビニルモノマー単位を実質的に含まない。特定の実施形態では、ポリ(メタ)アクリレート高分子は、少なくとも約90、95、98、99、99.5、又は99.8重量%の、ヘテロ原子を全く含まない非極性アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位から構成されていてよい。
【0029】
様々な実施形態において、ポリ(メタ)アクリレート高分子は、接着剤前駆組成物の少なくとも約60、80、90、95、98、99、99.5、又は99.8重量%の高分子成分を構成していてもよい(例えば、これらの成分は2000超の平均分子量を有する)。更なる実施形態において、ポリ(メタ)アクリレート高分子は、接着剤前駆組成物の全成分の少なくとも約60、80、90、95、98、99、99.5、又は99.8重量%を構成していてもよい。幾つかの実施形態では、接着剤前駆組成物(及びかかる組成物から形成されるPSA)には、例えば、顔料、ガラスビーズ、ポリマービース(例えば、発泡性ビーズ又は発泡ビーズ)、無機充てん材、例えば、シリカ、及び炭酸カルシウムなど、難燃剤、老化防止剤、及び安定剤などの任意選択的な成分を含有させることができる。幾つかの実施形態では、接着剤前駆組成物(及びかかる組成物から形成されるPSA)には、1種以上の親水コロイド(例えば、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ペクチン、及びクロスカルメロースナトリウムなど)を含有させることができる。様々な実施形態において、かかる1種の親水コロイド又は複数種の親水コロイドは、PSAの(合計で)少なくとも約0.5、1、5、又は10重量%で存在させることができる。更なる実施形態において、かかる1種の親水コロイド又は複数種の親水コロイドは、PSAの(合計で)最大約35、25、又は15重量%で存在させることができる。
【0030】
これらの任意選択的な成分のいずれかは、接着剤前駆組成物及びかかる組成物から形成されるPSAの特性及び機能に許容できないような影響を与えない限り、所望の特性を得るのに十分な量加えることができる。概して、極性成分(前述の極性モノマー単位だけでなく、本質的に極性であり得る、例えば、任意の親水コロイド、可塑剤、充填剤、増粘剤、及び湿潤剤などを含む)に関しては、接着剤前駆組成物及びかかる組成物から形成されるPSAは、各種実施形態において、(合計で)約5、2、1、0.5、0.2、0.1、0.05、又は0.01重量%未満で存在する極性成分を有する。
【0031】
幾つかの実施形態では、接着剤前駆組成物(及びかかる組成物から形成されるPSA)は、任意選択的に少なくとも1種の粘着付与剤を含有することができる。好適な粘着付与剤、及びそれらがPSA中に存在し得る量は、PCT国際公開第2013/048735号(Lewandowski)の第13頁第22行から第15頁第12行に詳述されている。特定の実施形態では、接着剤前駆組成物は約2、1、0.4、0.2、又は0.1重量%未満の粘着付与剤を含有する。
【0032】
幾つかの実施形態では、接着剤前駆組成物(及びかかる組成物から形成されるPSA)には、任意選択的に、任意の好適な抗菌剤、消毒剤、殺菌剤、又は防腐剤などを含有させることができる。
【0033】
作製方法
概して、本明細書において開示される方法は、少なくとも、約25000〜約200000の数平均分子量を有するポリ(メタ)アクリレート高分子から構成される接着剤前駆組成物を架橋して、感圧接着剤を形成することを含む。少なくとも幾つかの実施形態では、方法は、(メタ)アクリレートモノマーを含む第1のモノマー混合物(反応混合物)を重合させて、接着剤前駆組成物のポリ(メタ)アクリレート高分子を形成する、第1の合成反応も含む。(用語「モノマー混合物」は、簡潔さのために使用され、並びにかかる混合物はモノマーに限定されず、むしろ例えば、1種以上の開始剤、連鎖移動剤、溶剤、及び可塑剤などを含んでいてよいことは認識されるであろう)。
【0034】
最初に、少なくとも接着剤前駆組成物のポリ(メタ)アクリレート高分子を形成する合成反応が、任意の好適な方法で実施することができる。例えば、(上記のように)所望の量の1種以上の(メタ)アクリレートモノマーと、任意の所望の開始剤及び溶剤などとを反応容器に入れ、合成反応を実施することができる。好適な開始剤は、例えば、任意の熱開始剤、光開始剤、又は両方を含んでもよく、任意の好適な量で存在させることができる。好適な熱開始剤は、例えば、周知の過酸化物から、及び/又は例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)及びそれらの誘導体(このような熱開始剤の多くは商品名VAZOでDuPontから市販されている)などの脂肪族アゾ化合物から選択することができる。好適な光開始剤は、例えば、Cibaから商品名IRGACUREで市販されている製品から選択することができる。(メタ)アクリレート及び同様のモノマーの重合に使用することのできる各種熱開始剤及び光開始剤の更なる詳細については、PCT国際公開第2013/048735号(Lewandowski)、第11頁第21行〜第12頁第19行に開示されている。
【0035】
熱開始剤を使用する場合、第1の合成反応は、例えば、熱開始剤を活性化するのに十分な温度に反応混合物を加熱することにより開始してもよい。光開始剤を使用する場合、例えば、任意の好適な光源(例えば、紫外線電球など)を使用して、反応混合物を紫外線又は可視光で露光してよい。本明細書における実施例から認識されるように、使用する開始剤の量(例えば、存在する重合性モノマーの量に対する量)は、得られるポリ(メタ)アクリレート高分子の重合度/分子量に影響を与え得ることから、開始剤の量を、結果に影響する変数として利用して、これらのパラメータに影響を及ぼすことができる。
【0036】
幾つかの実施形態では、第1の合成反応のためのモノマー混合物(反応混合物)は、少なくとも1種の連鎖移動剤を含有してもよい。本明細書における実施例から明らかであるように、連鎖移動剤を使用することによって、得られるポリ(メタ)アクリレート高分子の重合度/分子量の所望のとおりに調整することができる。有用な連鎖移動剤の例としては、四臭化炭素、アルコール、イソオクチルチオグリコレートなどのメルカプタン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これに限定されない。連鎖移動剤を使用する場合、反応混合物は、重合性材料の総重量に基づいて最大で0.5重量パーセントの連鎖移動剤を含んでもよい。様々な実施形態において、第1の合成反応の反応混合物は、0.01〜0.5重量%、0.05〜0.5重量%、又は0.05〜0.2重量%の連鎖移動剤を含有することができる。連鎖移動剤を使用する場合、少なくともある程度のポリ(メタ)アクリレート高分子が、少なくとも1つの連鎖移動剤残基を有し得ることは認識されるであろう(ここでいう用語「残基」は、連鎖移動剤に由来するものとして識別することのできるポリマー部分を意味する)。
【0037】
幾つかの実施形態では、第1の合成反応の反応混合物には、任意選択的に、任意の好適な量の有機溶剤を含有させることができる。様々な実施形態において、反応混合物は、2、1、0.4、0.2、又は0.1重量%未満の溶剤(反応混合物の合計重量に基づく)を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、第1の合成反応の反応混合物は、有機溶剤を実質的に含まない。有機溶剤を使用する場合、有機溶剤は、例えば、メタノール、テトラヒドロフラン、エタノール、イソプロパノール、ヘプタン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアセテート、エチルアセテート、トルエン、キシレン、及びエチレングリコールアルキルエーテルなどの任意の好適な溶剤から選択してよい。かかる溶剤は、単独で又はそれらの混合物として使用できる。溶剤が存在する場合、溶剤を接着剤前駆組成物に残存させて、以降のプロセスを促進する(例えば、粘性を低減させて、例えば、基材に対する組成物のコーティングを容易にさせる)ことができ、あるいは溶剤は、得られる接着剤前駆組成物の含む溶剤の量を低減させるように(例えば、有機溶剤を実質的に含まないことがあり得る)、重合完了後に除去することができる。前述のように、1種以上の可塑剤を接着剤前駆組成物に含有させることができ、同様に(溶剤の方法でコーティングした後に除去するのではなく、最終的なPSA生成物に残存させつつ)接着剤前駆混合物の粘性を低減するために有用であり得る。
【0038】
従来では見られなかった低分子量のポリ(メタ)アクリレート高分子を含む、本明細書において開示される接着剤前駆組成物は、有利に、相対的に(例えば、25℃にて)低い粘性を有してもよい。これにより、溶媒含有量がごく少なかったとしても、例えば、組成物が溶剤を実質的に含まない場合にも、かかる組成物で少なくともある程度コーティングすることができる。いくつかの場合では、かかるコーティングは室温で実施され、その他の場合には、コーティング操作を容易にするため、組成物を(例えば、ホットメルト型コーティング組成物の方法で)加熱してもよい。様々な実施形態において、接着剤前駆組成物は、25℃で、約4000、1600、800、400、200、100、50、20、又は10Pa・s以下の平均粘性を有していてもよい。更なる実施形態において、溶剤を実質的に含まない接着剤前駆組成物は、これらの粘性のうちいずれを有してもよい。
【0039】
幾つかの実施形態では、使用する溶剤(例えば、揮発性溶剤)が少量である、又は更にはかかる溶剤を実質的に使用しないものであり得る環境下における、第1の合成反応の実施を可能にする、反応混合物、条件、及び手順を採用することができる。かかる手法は、例えば、参照によりすべて本明細書に援用される、米国特許第5637646号、同第5753768号、同第5986011号、同第7691437号、及び同第7968661号(Ellis)、並びに国際公開第2014/078123号(Kurian)に記載の一般的な方法及び組成物を利用し得る。しかしながら、所望される場合、非反応性の希釈剤(例えば、不揮発性可塑剤)を存在させてもよい。更に、接着剤前駆混合物が無溶剤環境で形成された場合であっても、例えば、所望される場合、基材に対する組成物のコーティングを容易にするため、ある程度の量(例えば、少量)の溶剤を接着剤前駆組成物に添加してもよい。本明細書で定義するように、無溶剤組成物(例えば、反応混合物、コーティング混合物、又は特に接着剤前駆組成物)は、約0.2重量%未満の任意の揮発性溶剤(この分類は、例えば、可塑剤、連鎖移動剤、開始剤、加工助剤、又は最終的なPSA生成物中に残存する任意のその他の成分を含まない)を含む組成物である。
【0040】
接着剤前駆組成物を任意の好適な基材(例えば、支持体)に配置し(例えばコーティングし)、架橋して接着剤前駆組成物をPSAに転換することもできる。接着剤前駆組成物は、具体的な基材に適するよう変更を加えて、従来の一般的なコーティング法を用い、コーティングすることができる。例えば、組成物を、ローラーコーティング、フローコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティング、及びダイコーティングなどの方法により、様々な基材に適用することができる。得られるPSAは、任意の好適な厚さ(例えば、架橋及び存在する場合任意の溶剤の除去後の最終厚さ)であってよい。幾つかの実施形態では、感圧接着剤層の厚さは少なくとも12μm、又は少なくとも25μmである。様々な実施形態において、感圧接着剤層は、1200μm、500μm、250μm、125μm、100μm、75μm、又は50μm以下の厚さを有する。コーティングした接着剤前駆組成物層を光照射により(下記のように)架橋させる特定の実施形態では、層を約50、40、30、又は20マイクロメートル以下の(乾燥)コーティング厚さでコーティングするのが有利であり得る。
【0041】
本明細書において開示されるように、接着剤前駆組成物は(第2の架橋反応において)架橋され、感圧接着剤を形成する。しばしば、上記のように、所望の基材の主表面に対し層としてコーティングした後、接着剤前駆組成物に対するかかる架橋を実施するのは好都合である。本明細書において開示される接着剤前駆組成物(特に、それらのポリ(メタ)アクリレート高分子)を架橋することで、人間の皮膚に対して極めて優しく、なおかつ例えば、皮膚に接着させる感圧接着剤として良好に機能させるのに十分な凝集力並びにその他の特性を有する、感圧接着剤が得られることが判明している。架橋度は、感圧接着剤のゲル含有量(ゲル%)により評価できる。(ゲル含有量は、本明細書における実施例に記載のように得ることができ、可溶性成分の抽出後に残存する不溶性(ネットワーク化)ポリマー材料の尺度である)。様々な実施形態において、接着剤前駆組成物のポリ(メタ)アクリレート高分子を架橋することにより得られる感圧接着剤のゲル含有量は、少なくとも約10、20、30、40、又は50%である。更なる実施形態において、感圧接着剤のゲル含有量は、最大で約90、80、70、又は65%であってよい。(ゲル含有量は、組成物の高分子成分に関する特性であり、特に、溶剤及び可塑剤などが反応生成物(例えば、PSA生成物)中に存在する実施形態では、かかる成分はゲル含有量の評価に含められないことを理解されたい。)
【0042】
幾つかの実施形態では、電子線(eビーム)による架橋を実施するのが好都合である。電子線照射は、広く利用可能な任意の好適な装置を利用して行うことができる。電子線照射は、任意の好適な条件、例えば、操作電圧(例えば、kV)及び照射量(例えば、Megarad)で実施することができる。当業者であれば、電子線照射は、概して非特異的な様式で高エネルギーの電子と分子とを相互作用させて、例えば、次にその他の高分子と共有結合を形成し得るフリーラジカルを生成する、架橋の一態様であると認識するであろう。したがって、このような方法は、高分子鎖に沿った任意の部分での架橋を活性化させることができ、架橋部分に特定の部分(化学的特徴)を持たせる必要のない、非特異的な方法(例えば、高エネルギーの電子により)で架橋反応が開始される、第1の一般的な分類のPSA作製方法に該当することも認識されたい。第2の架橋反応を促進するために電子線を利用することによって、第1の合成反応の開始するために、任意の好適な開始機構(例えば、熱開始又は光開始)が利用可能になることは認識されるであろう。
【0043】
幾つかの実施形態では、光架橋により接着剤前駆組成物の架橋を実施することが好都合である。このようなアプローチは、接着剤前駆組成物に、例えば、100〜500nmの波長範囲で(非イオン化)電磁放射線を光照射することを含む(このような手順は、しばしば、例えば、紫外線硬化及び光硬化などと呼ばれる)。このような硬化は、(広く利用可能な)任意の好適な装置を使用して実施することができ、任意の好適な条件で、例えば、波長及び線量率などを組み合わせて実施することができる。
【0044】
このような手法を容易にするため、接着剤前駆組成物(具体的には、接着剤前駆組成物を構成する高分子)は1種以上の光架橋剤を含有してよい。かかる架橋は、第1の合成反応に使用するモノマー混合物中に1種以上の光架橋剤(光により活性化可能な部分と、(メタ)アクリレート部分とを両方含む部分を意味する)が含まれ、接着剤前駆組成物を形成することにより、簡便に達成することができる。したがって、第1の合成反応中に、このような分子を(かかる分子の(メタ)アクリレート官能性を利用することにより)接着剤前駆組成物の高分子鎖に組み込むこともできる。次に、この接着剤前駆組成物を層として、好適な基材にコーティングすることができる。次に、コーティング層に光を照射することにより、光架橋剤分子の、光により活性化可能な部分のうち少なくとも一部を活性化することができる。この活性化により、例えば、次に接着剤前駆組成物を架橋して感圧接着剤を形成するための共有結合をその他の高分子と形成し得る、フリーラジカルが生成される。
【0045】
通常、高エネルギー電子を高分子に衝突させることにより得られる、非特異的なフリーラジカルの生成とは対照的に、光照射によるフリーラジカルの生成は、通常、光架橋剤の、光により活性化可能な部分の分解により、特異的に起こる。したがって、光照射法は、特定の機能性部分(例えば、光架橋剤の光により活性化可能な部分)を活性化させることにより架橋反応が開始されるPSA製造方法において、2番目に一般的な手法に該当することを理解されたい。すなわち、光により活性化可能な架橋剤の特に識別可能な残基(化学的に特徴的な部分)をPSA生成物の高分子に観察することができる、例えば、光により活性化可能な架橋剤が、例えば、ベンゾフェノンである場合、得られる感圧接着剤の高分子は、検出され得るベンゾフェノンの残基を示し得る。
【0046】
例えば、(メタ)アクリレート重合性部分及び光により活性化可能な部分により提供される2重官能性を有する任意の分子を提供するものなどの、任意の好適な、光により活性化可能な架橋剤を使用できる。このような好適な分子の1つは、アクリロイルエトキシベンゾフェノンである。その他の可能性のある公的な分子としては、例えば、メタクリロイルエトキシベンゾフェノン、アクリロイルベンゾフェノン、及びメタクリロイルベンゾフェノンが挙げられる。このような光により活性化可能な架橋剤は、第1の合成反応に使用する反応混合物に、任意の好適な量で仕込むことができる。特定の実施形態では、光により活性化可能な架橋剤は、第1の合成反応混合物中のアクリレート系重合性モノマーの総重量に基づき約1.2、1.0、0.8、0.6、0.4、又は0.2重量%以下存在させることができる。更なる実施形態において、光により活性化可能な架橋剤を、少なくとも約0.05、0.1、0.15、0.2、又は0.3重量%存在させることができる。
【0047】
接着剤前駆組成物を光架橋させるとき、光により開始する以外の何らかの方法で第1の合成反応を開始することが有利であり得ることも認識されたい(例えば、第1の合成反応を熱的に開始することができる)。これにより、光により活性化可能な架橋剤が、第1の合成反応中に想定よりも早く活性化されてしまう可能性を、最小限に抑えることができる。
【0048】
接着剤前駆組成物、かかる組成物の製造方法、及びかかる組成物からPSA及びPSAを含有する物品を調製する方法は、参照によりその全体が本明細書に援用される2015年2月25日出願のGentle to Skin(Meth)Acrylate Pressure−Sensitive Adhesiveと題された国際特許出願PCT/US2015/017489号に記載されている。
【0049】
本明細書において開示される接着剤前駆組成物を、上記のように、任意の好適な基材の主表面に対し配置(例えば、コーティング)し、架橋して、感圧接着剤(PSA)層を提供することができる。幾つかの実施形態では、このような基材は、(下記の架橋後に)付着したPSAとしてコーティング層が残るテープ支持体であってよい。テープ支持体の裏面が剥離特性を有する場合、テープを巻取ロール(self-wound roll)形状で提供してもよい。
【0050】
より概括的には、本明細書において開示される接着剤前駆組成物は、任意の基材に、例えば連続的又は非連続的なやり方で配置することができ、得られるPSAを含む物品が得られるように架橋することができる。少なくとも幾つかの実施形態では、かかる物品は、巻取物としてではなく、(製造されたままであるか、もととなる巻取物などの連続する基材からの変換によるものかを問わず)分離している物品の形態で提供されてもよい。この場合において、本明細書においてテープという用語は簡潔さのために使用され、「テープ」は、巻取物の形態でなければならないわけではない。好適な基材(例えば、支持体)としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネート、ポリメチル(メタ)アクリレート(PMMA)、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、及びエチルセルロースから調製されるポリマーフィルムなどのポリマーフィルムが挙げられるが、これらに限定されない。かかるフィルムは、中実であってもよく、少なくともある程度の多孔性を有していてもよい。幾つかの実施形態では、多孔性基材は、線維状基材、例えば、不織ウェブ、紙支持体、織支持体、又は布支持体などであってもよい。幾つかの実施形態では、支持体は、フォーム(フォームは、例えば、連続気泡フォーム又は独立気泡フォームであってよい)から構成されていてもよい。接着剤前駆組成物を、例えば、基材の主表面に、(当業者によってよく理解されるであろうように、例えば、コーティング操作中に稀に生じうるようなコーティングの欠陥は別として)本質的に連続的にコーティングしてもよく、又は接着剤前駆組成物を、基材の主表面に非連続的にコーティング、例えば、パターンコーティングしてもよい。接着剤前駆組成物は、基材の主表面を直接コーティングしてもよく、又は1つ以上のプライマーコーティング、あるいは結合層(tie layer)などを備えていてもよい。
【0051】
幾つかの実施形態では、接着剤前駆組成物でコーティングする基材は、剥離ライナであってよく、これによって、ライナ/PSAの積層が形成される。このような場合、次に、剥離ライナとは反対側のPSA主表面をテープ支持体と接触させて(テープ支持体に対し接着させて)、(テープの使用中に取り除くことのできる剥離ライナを有する)接着テープを形成することもできる。このような生成物は、接着テープのロールとして、又は別々の長さの接着テープとして提供できる。幾つかの実施形態では、接着剤前駆組成物をコーティングした基材は、組成物でコーティングされ(例えば、架橋され)、次に得られるPSAがテープ支持体に転写される、犠牲基材(例えば、一時的な保持材)であってもよい。
【0052】
本明細書に記載の組成物は、(メタ)アクリレート(及び、存在する場合、可塑剤)などの比較的安価な材料を利用するものでありながら、有利な特性(例えば、皮膚からの優しい剥離、並びに/又は例えば、感圧接着特性の損失を最小限に抑えた皮膚からの脱着及び皮膚への再接着能)を示すことができる。また、本明細書において開示される組成物は、極性モノマー単位及び/又は添加剤をほとんど又は全く含有させなくても十分な、又は更には優れた、透湿性を示す。本明細書において、皮膚、例えば、人間の皮膚への接着などの用途を開示する他、本明細書において開示される組成物は、かかる組成物をこのような用途に特に有利なものとする特性を示すものの、これらは非限定的な例であり、本明細書において開示される接着剤前駆組成物、かかる組成物から形成されるPSAは、民生用、業務用、又はその他の領域において、任意の所望の用途に使用できることは認識されるであろう。更に、かかる組成物は、本明細書において開示される特定の方法例により作製されたものに限定されない(例えば、上記の特定の種類の第1の合成反応)。
【0053】
湿潤表面に対する接着
本明細書に記載される接着剤前駆組成物から誘導されるPSAは、湿潤又は湿性表面に対して高められた接着力を示すことができることが判明している。かかる特性によって、これらのPSAは、湿潤表面に結合することが要求される用途において、特に好適となり得る。更に、かかる特性によって、これらのPSAは、結合する表面に目に見えるような水が必ずしも存在しない場合でも、従来のPSAによって実現される結合を不十分にするのに十分な表面結露が表面に存在し得る、湿った環境又は高湿度環境における使用に好適となり得る。よって、本接着剤が使用され得る用途の非限定的なリストとして、マスキングテープ(例えば、屋外用マスキングテープ)、屋外建造物で用いられるテープ、例えば、洗面所、ロッカールームなどの湿った環境又は湿潤環境で用いられるテープ、及び海洋又は船舶用途で用いられるテープが含まれる。かかる接着剤は、例えば、たまたま水がかかっているかもしれない箱に封をするために時に必要とされ得るので、例えば、ボックスシーリングテープのような従来の用途であっても、本接着剤を使用する利益は存在し得る。更に、かかる用途のすべてにおいて、テープなどの巻取物形態であることが必要とされるわけではない。むしろ、本明細書において開示されるPSAは、特に物品が高湿度環境で用いられ得る場合、例えば伸長剥離両面接着剤物品などの、個別の物品として用いられてもよい。
【0054】
本明細書において開示される接着剤は、湿った皮膚、例えば、湿ったヒト皮膚に結合するのに特に好適であることも判明している。かかる特性によって、本接着剤は、(これらに限定されないが)例えば、医療用テープ、アスレチックテープ、絆創膏(例えば、広く利用可能な一般的な種類の処方箋を必要としない包帯、例えば、3M社から商品名NEXCAREで市販されている包帯)、創傷被覆材、創傷閉鎖片(例えば、チョウ型絆創膏、滅菌片など)、外科用ドレープ、モニター電極、患者接地板、経皮的な電気的神経刺激(TENS)デバイス、経皮的薬物送達デバイス、オストミー装具、カニューレ保持用被覆材(例えば、静脈ライン及び/又は動脈ライン用)などに好適となり得る。湿潤表面、例えば、湿った皮膚に対するPSAの結合能は、例えば、本明細書の実施例に記載の湿潤粘着試験法によって評価することができる。(この試験方法において、例えば、国際公開第2011153308(参照によりその全体が本明細書に援用される)に記載されている一般的な種類の人工皮膚基材が用いられる)湿潤粘着試験法によって試験した場合に、少なくとも約2000gのピーク引っ張り力を示すPSAを、本明細書において「湿潤粘着」PSAと定義する。様々な実施形態において、本明細書において開示される湿潤粘着PSAは、このようにして試験した場合、少なくとも約2500g、3000g、3500g、4000g、又は4500gのピーク引っ張り力を示し得る。
【0055】
湿った皮膚に対するPSAの結合能は、Lucastに対する米国特許第6518343号のカラム12及び13に記載のAdhesion to Dry and Wet Skin Test Protocolsによって評価することもできる(この箇所は、この特定の目的のために、参照により本明細書に援用される)。これらのTest Protocolによって取得可能なパラメータは、ニュートン/デシメートルで記録される、湿った皮膚に対する初期皮膚接着力(T)である。様々な実施形態において、本明細書において開示されるPSAは、少なくとも約0.8、1.6、2.0、3.0、又は4.0N/dmの、湿った皮膚に対する初期皮膚接着力を示し得る。
【0056】
本明細書において開示されるPSAの湿潤粘着を示す有利な能力は、本明細書の実施例において明示されるように、これらのPSAが、優れた湿潤粘着を示すために極性成分の存在を要しないという点で予期せぬものである。従来、本質的に疎水性である(メタ)アクリレートポリマーは、修飾により親水性特性を向上させなければ、(例えば、米国特許第6518343号及び第6441092号の背景技術の項における記述で明示されているように)一般に湿潤粘着接着剤として不適当であると考えられてきた。本研究において、例えば、95重量%のポリ(エチルヘキシルアクリレート)及び5重量%のカプリル酸トリグリセリド可塑剤に基づく代表的なPSAによって、優れた湿潤粘着接着が示された。当業者は、ポリ(エチルヘキシルアクリレート)は本質的に疎水性のアクリレートであると考えるであろうし、カプリル酸トリグリセリドは相対的に疎水性の可塑剤(Davies法によって評価した場合、HLB値がおよそ5である)になると考えるであろう。よって、当業者は、試験したサンプルを疎水性(メタ)アクリレート組成物に基づくPSAの典型例だと考えるであろうから、これらのPSAが示す優れた湿潤粘着特性を、当技術分野における教示に基づいて予期せぬものであると考えるであろう。
【0057】
よって、当業者は、本明細書において開示されるPSAによって、かなりの量の親水性部分(moities)を(例えば、高分子鎖に組み込まれる親水性(メタ)アクリレートモノマー単位として加えるか、及び/又は例えば、親水性界面活性剤、及び親水性ポリマーなどのような添加剤によるかを問わず)包含させることは必ずしも必要とせずに、湿潤粘着特性が高められた(メタ)アクリレートPSAを提供することが可能であると認識するであろう。更に、PSAの背景知識と、可塑剤、粘着付与剤などの潜在的成分の背景知識とを有する当業者は、例えば、カプリル酸トリグリセリドなどの疎水性可塑剤の効果は、例えば、組成物のTをわずかに低下させることであろうと予想するであろう。すなわち、疎水性可塑剤の添加によって、PSAの湿潤粘着特性が向上するであろうとは予想しないであろう。よって、当業者は、本明細書の実施例において示された効果は、可塑剤、例えば、疎水性可塑剤、特にカプリル酸トリグリセリドなどを含むPSAに必ずしも限定されないと考えるであろう。
【0058】
一実施形態において、本明細書に記載されるPSAを含む医療用テープ(患者への静脈ラインを確保するため、患者に包帯又は被覆材を付けるためなどに用いられ、サージカルテープとしても知られる)が本明細書で開示される。別の実施形態において、本明細書に記載されるPSAを含む創傷被覆材(かかる創傷被覆材は、当業者によってよく理解されるであろうように、任意選択的に1種以上の吸収性材料、例えば、フォーム、ガーゼ、又はヒドロコロイドなどを含んでもよい)が本明細書で開示される。別の実施形態において、本明細書に記載されるPSAを含む創傷閉鎖片が本明細書で開示される。別の実施形態において、本明細書に記載されるPSAを含む絆創膏が本明細書で開示される。別の実施形態において、本明細書に記載されるPSAを含む外科用ドレープが本明細書で開示される。別の実施形態において、本明細書に記載されるPSAを含むカニューレ保持用デバイスが本明細書で開示される。別の実施形態において、本明細書に記載されるPSAを含む電極(例えば、モニター電極又は診断用電極)が本明細書で開示される(かかる電極は、多くの場合、例えば、導電性ゲルパッドを取り囲むPSAの環状の裾がある支持体、例えばフォーム支持体を含んでもよい)。別の実施形態において、本明細書に記載されるPSAを含む患者接地板が本明細書で開示される。別の実施形態において、本明細書に記載されるPSAを含む経皮的な電気的神経刺激(TENS)デバイスが本明細書で開示される。別の実施形態において、本明細書に記載されるPSAを含む経皮的薬物送達デバイス(例えば、パッチ)が本明細書で開示される。別の実施形態において、本明細書に記載されるPSAを含むオストミー装具が本明細書で開示される。
【0059】
上記のリストは非限定的であることが認識されるであろう;更に、当業者であれば、そこで用いられる用語間に明確な線引き」がある必要はない(例えば、医療用テープとサージカルテープなどの用語は、ドレープと被覆材、及び/又は包帯と被覆材などの用語も同様と同様に、ある程度互換的に用いられることがある)ことを認識するであろう。しかしながら、かかるすべての生成物及び用途には、(分離しているか、巻取物の形態であるかにかかわらず)支持体に配置したPSA(例えば、湿潤粘着PSA)を、特定の用途における機能に役立ち得るように、任意のかかる補助的なデバイス(単数又は複数)又は構成部分(単数又は複数)(例えば、剥離ライナ、1種以上の吸収性材料、1種以上の導電性ゲル、1種以上の薬物送達リザーバ、及び/又は配線、管、ベント、ポート、バルブなど)と共に、使用するという共通点がある。かかるすべての物品及び用途は、本明細書における開示範囲に含まれる。
【0060】
幾つかの実施形態では、任意のかかる物品1は、(分離しているか、巻取物の形態であるかにかかわらず)、図1の例示的な図に示されるように、支持体15上に配置(例えば、コーティング)された、例えば、湿潤粘着感圧接着剤10の層の形態を取っていてもよい。幾つかの実施形態では、PSAは、本質的に支持体の範囲全体に配置してもよく、支持体の範囲の一部だけに配置してもよい。支持体15は、任意の好適な材料、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタンなどから構成され得る(特に、この支持体は、当業者によく知られているであろう医療用ドレープ又は被覆材用の支持体として一般に用いられる材料から構成されてよい)。基材は、単層基材又は多層基材であってもよく、特定の用途において役立ちうるように、特定の特性(例えば、引裂き強度、多孔性又は多孔性でないこと、透明性又は不透明性、表面粗さ又は滑らかさなど)を有していてもよい。支持体15は、連続的又は非連続的(例えば、支持体は、布支持体、紙支持体、不織支持体、フィルム支持体などの形状をしていてもよい。)であってよい。幾つかの実施形態において、支持体15は、(例えば、脆弱にした適当な線を、例えば、目打ちの形態で設けることによって)物品の横幅方向にわたって手で引き裂くことができるように構成してもよい。ある特定の用途において、支持体15とPSA 10とは、(任意の適当な方法によって)滅菌されていてもよく、滅菌包装で最終的な使用者に供給してもよい。幾つかの実施形態では、支持体15は、多孔性支持体15を用いることによってか、非多孔であったとしても比較的高い水蒸気通気率(MVTR)を示し得る材料(例えば、親水性ポリウレタン)からなる支持体15を用いることによってかにかかわらず、高いMVTRを示すように選択してもよい。様々な実施形態において、支持体15は、米国特許第6121508号のカラム12の概略的な手順に従って試験した場合に、24時間、1平方メートルあたり、水約500〜3000、500〜1500、又は1000〜1500gのMVTRを示し得る。代替的な実施形態では、支持体15は、24時間、1平方メートルあたり、水約500、400、300、200、100、又は50gのMVTRを示し得る。任意のかかる物品は、支持体の反対側のPSAの主表面に、任意選択的に剥離ライナ16を備えていてもよく、この剥離ライナは、物品を使用する際に取り除くことができる。様々な実施形態において、任意のかかる物品1は、(特に、例えば、被覆材、及び包帯などとして用いる場合)例えば、水吸収性、水透過性、及び/又は水吸い取り性の任意の所望の材料を含んでいてもよい。かかる材料は、例えば、1種以上のヒドロコロイド、ガーゼ、織物、網状ポリウレタンフォームなどの連続気泡フォーム、又は高吸収性材料など、及びこれらの任意の組み合わせを含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、物品1は、例えば、創傷治癒を促進し得る、及び/又は患者の快適さを向上させることができる1種以上の活性薬剤を含んでいてもよい。かかる活性薬剤は、例えば、抗微生物、抗真菌、若しくは抗ウイルス剤、成長因子、麻酔薬、又はこれらの任意の組み合わせであってよい。
【0061】
幾つかの実施形態では、本明細書において開示される感圧接着剤のみが、物品1の使用に際して皮膚に結合するように構成された物品1中に、又は物品1上に存在する感圧接着剤である(当然ながら、1種以上の他のPSAは、他の目的、例えば、物品1の製造と同時に物品1の様々な部分を結合するために用いる目的で、存在してよい)。幾つかの実施形態では、物品1は、本明細書において開示されるPSAだけを使用して、物品1を皮膚に結合するために他の接着テープ、きれ、包帯などを使用せずに、皮膚に結合される。
【0062】
陰圧閉鎖創傷療法
特定の実施形態では、本明細書において開示されるPSAは、例えばNPWT被覆材などの、いわゆる陰圧閉鎖創傷療法(NPWT)デバイスに用いられる。かかるデバイスは、(例えば、湿った皮膚を含む)皮膚に対する優れた接着性を示し、更に皮膚からの優しい剥離性を示すPSAの使用から恩恵を受けるであろう。少なくとも幾つかの本技術分野のNPWT被覆材には、(例えば、皮膚に対する接着力を高めることを求めて)強力な感圧接着剤が用いられてきたが、かかる強力さによって、剥離する間に皮膚に創傷が生じ得る。かかる事情から、幾つかのNPWT被覆材の製造業者は、剥がすときに優しいシリコーンPSAを使用するようになっている。しかしながら、本研究において、少なくとも幾つかのシリコーンPSAは、(例えば、(メタ)アクリレートと比べて高価であることに加えて)NPWT用途において不利になり得る、比較的高いガス漏出性を示すことが判明している。
【0063】
本発明において開示される(メタ)アクリレートPSAは、皮膚に対して良好に接着する(また、特に湿性又は湿潤皮膚に対して十分に結合し得ることが見出された)と同時に、皮膚から優しく剥離されることが見出された。更に、本発明において開示される(メタ)アクリレートPSAは、他の、従来の(メタ)アクリレートPSAよりも低いガス漏出性を示すことが見出された。理論又は機序によって制限されることを望むものではないが、本明細書において開示されるPSAは、(例えば、非常に柔軟であることによって)PSAが結合する表面の顕微鏡的欠陥(亀裂、くぼみなど)によくなじむことができ、それによって、例えばPSA−基材界面を通して起こりうる、なんらかのガス漏出を最小化することに役立つ。かかる特性は、PSAが皮膚、例えばヒト皮膚(皮膚は、かなりの程度の表面粗さを示すことが知られている)に結合する場合に特に有益であり得る。更に、本明細書において開示されるPSAは、NPWT被覆材に従来用いられている幾つかのシリコーンPSAよりも低いガス漏出性を示し得る。やはり理論又は機序によって制限されることを望むものではないが、本明細書において開示される(メタ)アクリレート材料は、皮膚に対して濡れ性に優れ、及び/又は通過するガスに対する透過性がシリコーンよりも低い(シリコーンは、ほとんどのガスに対して高い透過性を示すことがよく知られている)可能性がある。
【0064】
本明細書に記載のPSAが示し得る有利に低いガス漏出性は、実施例に記載された空気漏れ試験方法で評価されるように、実施例で立証されている。陰圧閉鎖創傷療法デバイスを含む幾つかの実施形態では、本明細書において開示されるPSAは、ガス漏出に対する十分なシーリングを提供し、NPWT被覆材を所定の場所に保持するために用いられるPSAとは分離した、PSAに加えて用いられるあらゆるシーリング部材(例えば、ガスケット、又はシーリング剤のビードなど)を必要としない場合もある。(かかる追加のPSAは、それ自体では十分なシーリングを実現できないPSAを用いたNPWT被覆材と共に用いる必要があると分かることが多い。)よって、幾つかの実施形態では、本明細書において開示されるNPWT被覆材は、PSAそれ自体以外に、被覆材支持体と患者の皮膚との間に、どのような種類のシーリング部材も含まない。
【0065】
例示的なNPWT被覆材100を、図2に観念的な代表的説明図で示す。最も一般的な形態では、NPWT被覆材100は少なくとも本明細書において開示されるPSA110を含み、このPSA110は支持体115の少なくとも一部分に配置されており、且つ、被覆材100に(したがって、NPWT被覆材100を創傷130に適用したときに形成される創傷床135に)陰圧(部分真空)をかけることができる少なくとも1つの開口部120(例えば、ポート又はバルブ)を共に含む。このようにして形成された創傷ウェブ135は、「密閉」創傷床と呼ばれる。これは、開口部120に部分真空をかけることによって、(開口部120が、例えば、真空配管が接続され、又は挿入されて部分真空がかけられるまで開放されているであろうこととは関係なく)陰圧が効果的にかかるようにPSA110によって密閉されていることを意味する。
【0066】
被覆材100のPSA110は、支持体115の主表面の一部分に接着結合している第1の主表面111と、例えば、創傷130近傍の(例えば、創傷130を部分的に、又は完全に取り囲む)皮膚150の一部分に結合した、反対側の第2の主表面112とを含んでもよい。幾つかの実施形態では、被覆材100は、例えば、創傷充填材として機能し得る少なくとも1つの物体(任意の好適な形態、例えば、層形態、物品形態などを取り得る)140を含んでもよい。かかる材料は、例えば、水吸収性、水透過性及び/又は水吸い取り性などであってもよい。かかる層140は、例えば、ヒドロコロイド、ガーゼ、織物、網状ポリウレタンフォームなどの連続気泡フォーム、又は高吸収性材料など、及びこれらの任意の組み合わせから構成されていてもよい。幾つかの実施形態では、かかる層は、無期限に、例えば、物体に分解吸収されるまで、創腔内に残り得る、分解吸収性材料であってもよい。幾つかの実施形態では、被覆材100は、例えば、創傷治癒を促進し得る、及び/又は患者の快適さを向上させ得る1種以上の活性薬剤を含んでいてもよい。かかる活性薬剤は、例えば、抗微生物、抗真菌、若しくは抗ウイルス剤、成長因子、麻酔薬、又はこれらの任意の組み合わせであってよい。幾つかの実施形態では、被覆材100は、例えば、液体を創腔から排出/除去する、又は創腔に加えることを可能にする1つ以上のポートなどを(例えば、ポート120(これを通して部分真空を適用してもよい)に加えて)含んでもよい。
【0067】
支持体115は、任意の好適な材料、例えば、皮膚に適合するように選択される有機ポリマーフィルムから構成されていてもよい。様々な実施形態において、支持体115は、例えば、ポリウレタンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、又はポリエチレンテレフタレートフィルムなどを含んでもよい。少なくとも幾つかの実施形態において、支持体115は、(上記のように、例えば、部分真空をかけられるように開口部120を含んでいることを除き)ガスに対して不透過性である。支持体115は材料の単層を含んでもよく、又は多層(例えば、1つの層はPSA110との接着性を向上させるために選択され、1つの層はガス及び/又は蒸気バリア特性などのために選択される)を含んでもよい。例えば、支持体115中の層の数にかかわらず、PSA110が結合する支持体115の主表面に、所望により、PSA110に対する接着性を向上させるために(例えば、1種以上の下塗りを施すことによって、任意の好適な表面処理、例えば、コロナ処理、プラスマ処理、火炎処理などによって)処理を施してもよい。
【0068】
被覆材100は、任意の好適なNPWTシステムと共に使用してもよく、システムとしては、例えば、1つ以上の真空源(例えば、ポンプ)122、連結された配管121、並びに、例えば、1つ以上の逆流防止バルブ、液収集容器、モニター及びセンサーなどが挙げられるが、当業者にはよく知られているであろう。被覆材100は、予め取り付けられたかかる様々な器具(例えば、配管121)と共に供給されてもよく、又はかかる器具は、使用の際に被覆材100に取り付けられてもよい。被覆材100は、例えば、使用説明書又はバーチャルな使用説明書(例えば、かかる説明書を入手できるウェブリンクのリスト)を含むキットの一部として供給してもよい。他の潜在的に有用な、NPWTデバイス(例えば、被覆材)に含まれ得る構成要素、NPWTシステムと共に用いられ得る器具、及びかかるデバイス及びシステムの使用方法は、この目的のために参照によりその全体が援用されるLockeに対する米国特許出願公開第20130131616号に詳細に開示されている。
【0069】
幾つかの実施形態では、被覆材100は、例えば、医療施設の部屋に備え付けられた、例えば、恒久的に備え付けられた、NPWTシステムと共に用いられてよい。他の実施形態において、被覆材100は、例えば、部屋から部屋へ移動できるように移動可能な(例えば、車輪付き)カート又はスタンドに備え付けられた、少なくとも幾つかの構成要素(例えば、1つ以上の真空ポンプ、液収集容器など)を含むNPWTシステムと共に用いられてよい。更に他の実施形態において、被覆材100は、完全携帯型の、例えば、使用者が家に持ち帰れるほど小さいNPWTシステムと共に用いられ得てよい。具体的な実施形態では、かかるNPWTシステムは、使い捨ての、又は再利用可能な小型真空ポンプを用いた、1回だけ使用できるシステムであってよい。かかるポンプは、例えば、バッテリー駆動であってよい。
【0070】
かかるNPWTデバイスは、任意の好適な陰圧で稼働させてよい。様々な実施形態において、NPWTデバイスは、約50〜250mmHg、約60〜約150mmHg、又は約75〜約125mmHgの陰圧(患者が置かれた環境の雰囲気圧に対して、密閉された創腔内の圧力が減少した変化量を意味する)で稼働させてよい。
【0071】
幾つかの実施形態では、本明細書において開示される感圧接着剤のみが、被覆材100の使用に際して皮膚に結合するように構成された、被覆材100中、又は被覆材100上に存在する感圧接着剤である(当然ながら、1種以上の他のPSAは、例えば、被覆材100の製造と同時に被覆材100の様々な部分を結合するために用いる場合、他の目的のために存在してよい)。幾つかの実施形態では、被覆材100は、本明細書において開示されるPSAだけを使用して、被覆材100を皮膚に結合するために他の接着テープ、きれ、包帯などを使用せずに、皮膚に結合される。
【0072】
(乾燥)剥離接着力
本明細書において開示される感圧接着剤の性能のある特定の側面は、剥離接着力試験(すなわち、本明細書において実施例に開示されるように測定される180°剥離接着力試験)により特性評価することもできる。かかる目的のために、PSAを、従来のテープ支持体、例えば、2014年の時点で3M社(St.Paul MN)から商品名KIND REMOVAL SILICONE TAPEで市販されている製品に使用されている一般的な種類の不織支持体に、好都合に適用する(例えば、本明細書において開示される方法により付着させる)ことができる。従来の感圧接着剤テープ(すなわち、PSAが既にテープ支持体に載っているもの)の剥離接着力を評価する際、もちろん、供給されたままの接着テープに対し試験を実施することができる。様々な実施形態において、本明細書において開示される感圧接着剤及び/又は感圧接着剤テープは、最大で約400、300、240、又は200グラム/インチの剥離接着力を示し得る。更なる実施形態において、本明細書において開示される感圧接着剤及び/又は感圧接着剤テープは、少なくとも約50、100、140、又は180グラム/インチの剥離接着力を示し得る。少なくとも幾つかの実施形態では、本明細書において開示される感圧接着剤及び/又は感圧接着剤テープは、剥離接着力試験中に凝集破壊を示さない。当業者であれば、これは、接着剤層で分離する、あるいは試験基材に大量の接着剤が残されるのではなく、接着剤層が接着剤層及び試験基材間の界面で試験基材から脱離(剥がれる)ことを意味するものと認識するであろう。(換言すれば、当業者であれば、試験基材の表面から接着剤層の表面が分離するというかたちで剥がれが生じるものと認識するであろうし、ひいては凝集破壊が生じない条件とは、剥離接着力試験においてPSAが「界面剥離」を示すものとして表現できることを認識するであろう)。
【0073】
例示的な実施形態の一覧
実施形態1は、支持体を含む陰圧閉鎖創傷療法被覆材であって、支持体は、支持体の主表面の少なくとも一部分に湿潤粘着感圧接着剤を有し、且つ少なくとも1つの開口部を含み、開口部は、開口部を通して真空をかけることができるように構成されており、湿潤粘着感圧接着剤は、約25000〜約200000の数平均分子量を有するポリ(メタ)アクリレート高分子を含む接着剤前駆組成物の架橋反応生成物であり、接着剤前駆組成物は、約−20℃未満のTを示し、25℃で約4Pa〜約10000Paの貯蔵弾性率を示す、陰圧閉鎖創傷療法被覆材である。
【0074】
実施形態2は、湿潤粘着感圧接着剤が、環状片として設けられ、環状片は、支持体の外縁の周囲までひろがっており、且つ創傷を取り囲む皮膚に接着するように構成され、被覆材が、湿潤粘着感圧接着剤によって密閉された密閉創傷床を提供する、実施形態1に記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材である。実施形態3は、支持体の開口部が、真空配管を受け入れるように構成され、真空配管を通して密閉創傷床に部分真空をかけることができる、実施形態1〜2のいずれかに記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材である。実施形態4は、湿潤粘着感圧接着剤以外に、創傷床を密閉するためにシーリング部材を用いない、実施形態1〜3のいずれかに記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材である。実施形態5は、被覆材が、創傷充填材を含む少なくとも1つの物体を含む、実施形態1〜4のいずれかに記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材である。
【0075】
実施形態6は、実施形態1〜5のいずれかに記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材と、真空源とを含む陰圧閉鎖創傷療法システムであって、陰圧閉鎖創傷療法被覆材が、真空源に流体連通するように構成されている、陰圧閉鎖創傷療法システムである。実施形態7は、陰圧閉鎖創傷療法被覆材が、陰圧閉鎖創傷療法被覆材と真空源との間に液体収集容器を含む真空ラインによって、真空源に流体連通している、実施形態6に記載の陰圧閉鎖創傷療法システムである。
【0076】
実施形態8は、接着剤前駆組成物のポリ(メタ)アクリレート高分子が、約25000〜約100000の数平均分子量を有する、実施形態1〜5のいずれかに記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材である。実施形態9は、接着剤前駆組成物が、約100Pa〜約1000Paの貯蔵弾性率を示す、実施形態1〜5及び8のいずれかに記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材である。実施形態10は、接着剤前駆組成物が、25℃で約10Pa・s〜約800Pa・sの粘度を示す、実施形態1〜5、及び8〜9のいずれかに記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材である。実施形態11は、ポリ(メタ)アクリレート高分子が、接着剤前駆組成物の高分子成分の少なくとも約95重量%を占める、実施形態1〜5及び8〜10のいずれかに記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材である。
【0077】
実施形態12は、ポリ(メタ)アクリレート高分子が、Tが0℃未満の非極性(メタ)アクリレートモノマー単位から本質的になる、実施形態1〜5及び8〜11のいずれかに記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材である。実施形態13は、ポリ(メタ)アクリレート高分子が、アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位から本質的になる、実施形態1〜5及び8〜12のいずれかに記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材である。実施形態14は、接着剤前駆組成物のポリ(メタ)アクリレート高分子が、実質的に直鎖状の高分子である、実施形態1〜5及び8〜13のいずれかに記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材である。
【0078】
実施形態15は、湿潤粘着感圧接着剤が、湿潤粘着試験法に従って試験した場合に、少なくとも約3000gのピーク引っ張り力を示す、実施形態1〜5及び8〜14のいずれかに記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材である。実施形態16は、湿潤粘着感圧接着剤が、湿潤粘着感圧接着剤の総重量に基づいて約2重量%〜約10重量%の可塑剤を含む、実施形態1〜5及び8〜15のいずれかに記載の接着剤物品である。実施形態17は、ポリ(メタ)アクリレート高分子が、少なくとも1種の連鎖移動剤を含むモノマー混合物の第1の合成反応の反応生成物であり、少なくとも一部のポリ(メタ)アクリレート高分子が、少なくとも1つの連鎖移動剤残基を含む、実施形態1〜5及び8〜16のいずれかに記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材である。実施形態18は、感圧接着剤が、約40〜約70%のゲル含有量を示す、実施形態1〜5及び8〜17のいずれかに記載の接着剤物品である。
【0079】
実施形態19は、感圧接着剤が、接着剤前駆組成物の電子線架橋反応生成物である、実施形態1〜5及び8〜18のいずれかに記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材である。実施形態20は、感圧接着剤が、接着剤前駆組成物の光架橋反応生成物であり、架橋反応生成物の少なくとも一部のポリ(メタ)アクリレート高分子が、少なくとも1つの光活性化可能な架橋剤残基を含む、実施形態1〜5及び8〜18のいずれかに記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材である。
【0080】
実施形態21は、実施形態1〜5及び8〜20のいずれかに記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材を、陰圧閉鎖創傷療法被覆材の湿潤粘着感圧接着剤が創傷を取り囲む皮膚に結合するように皮膚に適用し、密閉創傷床を提供することと;陰圧閉鎖創傷療法被覆材の支持体の開口部を通して部分真空をかけて密閉創傷床に陰圧をかけることと、を含む陰圧閉鎖創傷療法の実施方法である。
【0081】
実施形態22は、密閉創傷床における陰圧が約−30mmHg〜約−200mgHgの範囲になるように部分真空をかける、実施形態21に記載の方法である。
【実施例】
【0082】
材料
表1は、使用した原料及び試薬についての用語を含む。本明細書において開示されるすべての部及び百分率は、別段の指定がない限り重量によるものである。
【0083】
【表1】

【0084】
試験方法
分子量
数平均分子量(M)及び重量平均分子量(M)は、一般的なゲル透過クロマトグラフィーを用いて求めた。溶剤及び移動相としてテトラヒドロフランを使用し、EasiCalポリスチレン分子量標準(Agilent Technologies,Santa Clara,CA,USA)に対する値を求めた。Agilent 1100(ポンプ、脱ガス装置、オートサンプラー、カラムオーブン、示差屈折計)[Agilent Technologies(Santa Clara,CA,USA)]から構成された装置を40℃かつ流速1.0mL/分で操作した。固定相は、Jordi Gel DVB Mixed column[250mm×10mm ID(Jordi Labs(Mansfield,MA,USA))]から構成されていた。分子量の計算にはPolymer Labs(現Agilent Technologies(Santa Clara,CA,USA))のCirrus GPCを使用した。ポリマーの重合度(DP)は、Mをモノマー単位の分子量(例えば、アクリル酸イソオクチルモノマー単位については184g/mole)により除算することで得た;例えば、開始剤、架橋剤及び/又は連鎖移動剤の関与は無視した。
【0085】
動的粘弾性測定(DMA)
接着剤前駆組成物の貯蔵弾性率、粘性、及びガラス転移温度の測定にはDMAを使用した。少量の接着剤前駆組成物を、レオメータ(商品名「ARES G2 RHEOMETER」でTA Instruments(New Castle,DE)から入手)の下側のプレートに載せた。レオメータは、直径25mmの平行な上側プレート及び下側プレートを有していた。サンプルプレートの間隔が1mmになるまで、レオメータの上側プレートを接着剤前駆組成物サンプルの上に下ろした。サンプルに振動せん断力(歪振幅=1%、周波数=1Hz)を加えつつ、5℃/分の速度でサンプル温度を連続的に−65℃から100℃に上昇させ、その間にせん断弾性率、粘性、及びtan(δ)を温度掃引試験法によって評価した。貯蔵弾性率(G’)はPaで記録した。接着剤前駆組成物の粘性(η)は、パスカル秒(Pa・s)で記録した。G”/G’(損失弾性率/貯蔵弾性率)比としてTan(δ)を記録した。tan(δ)が局所的なピークを有する温度をガラス転移温度(「T」)として記録した。
【0086】
ゲル濃度
ゲル濃度%(ゲル含有量)は、ASTM D3616−95(2009年に規定)に記載の方法に以下の変更を加え、ほぼ同様の方法で求めた。架橋した感圧接着剤でコーティングしたテープから、実測直径63/64インチ(2.50cm)の試験片を打ち抜いた。この試験片を、1.5インチ(約3.8cm)×1.5インチ(約3.8cm)のメッシュバスケットに入れた。試験片を入れたバスケットを0.1mg単位で計量し、サンプルを被覆させるのに十分なEtOAcを入れた蓋付きの瓶に入れた。24時間後、バスケット(試験片を含む)を取り出し、EtOAcをきって、120℃のオーブンに30分入れた。抽出前の接着試料の重量に対する、接着試料に残存する未抽出重量部の割合により、ゲル濃度を求めた。(テープ支持体の重量を補正するため、同じ寸法の未コーティングの支持体材料試料片をダイカットし、計量した。)ゲル濃度(%)の計算に用いた式を次に示す:
【数1】
【0087】
剥離接着力試験
IMASS SP−200 SLIP/PEEL TESTER(IMASS社(Accord,MA)から市販されている)を使用し、12インチ/分(305mm/分)の速度で180°剥離接着力を測定した。ステンレス鋼製パネル基材に、2−プロパノールで濡らした実験用ワイプを手で押し付け、8〜10回拭って試験パネルを用意した。この拭き取り手順を、2−プロパノールで濡らした清浄な実験用ワイプで2回以上繰り返した。清浄にした試験パネルを少なくとも30分間風乾させた。
【0088】
接着剤テープ試料から、実測1/2インチ(約1.27cm)×8インチ(約20cm)の細片を切り出し、2.0kgのゴムローラーを2往復させて、この細片を清浄なパネルに対して伸ばして貼り付けた。作製した試験片は、試験前に23℃かつ相対湿度50%でおよそ1時間保管した。実験を3回〜5回繰り返し、平均値を剥離強さとして記録した。
【0089】
湿潤粘着試験法
人工皮膚基材を、商品名VITRO−SKINでIMS社(Portland,ME)から入手した(この材料は、供給された状態で、ヒトの皮膚のトポグラフィー、pH、臨界表面張力などを模倣するように作製されている)。人工汗液体を、ヒトの汗の特性を模倣するように作成した。第1の成分(人工皮脂)は、5.5gのオリーブ油、2.5gのオレイン酸、及び2.0gのスクアレンの混合物であった。第2の成分は、3.75gの塩化ナトリウム、0.75gの尿素、及び0.75gの乳酸の混合物であった。第2の成分を、水で750mLに希釈し、NHOHを用いてpHを6.5に合わせた。0.375gの第1の成分を、750mLの第2の成分と激しく混合し、人工汗を作成した。
【0090】
湿潤粘着接着力を(例えば、湿った皮膚に対する接着能の代わりとして)、人工皮膚基材と人工汗液体との組み合わせを用いて測定した。幅5.1cm×長さ15.2cmの人工皮膚片を切り取り、両面接着テープでステンレス鋼板に貼り付けた。およそ0.7mLの人工汗を、人工皮膚の上面に吹きかけた。これを4回繰り返した(合計で、5回別々に吹きかけた)。人工汗を、およそ3分間人工皮膚上に放置し、その後実験用ティッシュ(商品名キムワイプで入手した)を用いて手で軽く押さえて人工皮膚を乾かした。人工汗を、生体外皮膚に再び5回吹きかけた(このようにして人工汗を最後に適用した後には、人工皮膚を実験用ティッシュでは押さえなかった)。
【0091】
湿潤皮膚粘着試験用の物品を、商品名RED DOT 2560で3M社から市販されている製品によって例示される、一般的な形状と寸法の医療用電極の形状で作成した。各電極は、およそ3.5cm×4.0cmの寸法で、角が丸められており、評価するPSAが付着した外縁領域を有するフォーム支持体を含んでいた。外縁領域/PSAは、支持体のそれぞれの端からおよそ0.8cm内側までひろがっており、環状の境界を形成していた。導電性ゲルを、電極の中心に置いた。導電性ゲルは、およそ2cm×1.8cm(わずかに楕円形状)の範囲を占め、導電性ゲルの外縁は、PSAの内縁から、環状の隙間で隔てられていた。各フォーム支持体は、3M RED DOT 2560電極と共に用いられる一般的な種類の金属コネクタを備え、金属コネクタの第1の主面は、導電性ゲルと接触しており、金属コネクタの反対側からスタッドが突出していた。
【0092】
試験するサンプル電極を、PSAと導電性ゲルを下向きし、金属コネクタのスタッドを上向きにして、湿らせた人工皮膚上に置いた。電極を、2本の指で、程よい圧力で人工皮膚に2秒間押しつけた。標準的な心電計リード線を、電極の突出しているスタッドに接続した。商品名Z2.5でZwick/Roellから入手した材料試験装置を用い、心電計リード線を30.5cm/分の速度で引っ張り、電極にせん断力を(本質的に0度の角度で)加えた。電極を引っ張っている間の力のピーク値(材料試験装置によってグラムで記録される)を、引っ張り力として記録した。任意の所定の種類の少なくとも3種のサンプル電極を試験し、サンプルの平均ピーク引っ張り力を得た。
【0093】
空気漏れ試験方法
板の中心部に開放型で上向きの穴を有するアルミ板(およそ15cm×15cmの寸法、及び厚さ2.5cm)を備えた、試験装置を作成した。この穴は、直径およそ5cm、深さおよそ1.25cmの円柱状であり、開放型の穴の底部に真空ポンプ(商品名S041でATMOS MedizinTechnik(Lenzkirch,Germany)から入手した)に接続した真空ラインが配管されていた。真空ライン内の圧力がモニターできるように真空計を真空ラインに接続し、閉止バルブを、試験装置/真空計と真空ポンプとの間に備え付けた。
【0094】
試験のために、商品名GRANUFOAMでKCIから市販されている種類のフォームの切片を、穴の中に入れ、実質的に穴を塞いだ。主表面にPSAを有するフィルム基材を含むサンプルを、およそ15cm×15cmの寸法に切断し、それをアルミ箇所の表面に、PSAを下向きにして置き、サンプルで穴を対称的に覆った。次いで閉止バルブを開け、真空ポンプを稼働させて真空ラインから排気し、フォームが詰められた穴の(絶対)圧力をおよそ200mmHgにした。真空がこの値で安定したら閉止バルブを閉じ(そして真空ポンプを切り)、真空ラインと穴とを含むシステムを形成した。システムは、一端が閉止バルブによって密閉され、他端がサンプルによって密閉されていた。次いで、密閉されたシステム内の圧力を、真空計で経時的に(典型的には、48時間まで)モニターした。その結果を、経時的な(初期値およそ200mg Hgから)圧力の増分として(mmHgで)記録した。
【0095】
光開始による接着剤前駆組成物の調製(第1の合成反応)
接着剤前駆組成物PRE−1の調製
透明な無着色のガラス瓶で75gのIOA、0.38gのIRG651、0.37gのIOTG、及び75gのEtOAcを合わせ、混合して均一な溶液を形成した。溶液内にプラスチックチューブを差し込み、この溶液に窒素ガスを10分間吹き込んだ。ガラス瓶にはしっかりと栓をした。この密閉ビンをローターに配置し、ローラーに向けた紫外線ランプ(Sylvania 35 Blacklight,Osram Sylvania社(Danvers,MA))で照射しながら40分間ゆっくりと回転させた。紫外線照射後、瓶を開け、重合を停止させた。ポリマー溶液を入れた瓶を、100℃に設定した真空炉に入れ、一定重量が観察されるまで接着剤前駆組成物PRE−1を乾燥させた。乾燥させた接着剤前駆組成物は粘稠であったが流動性の液体であり、色は透明であった。
【0096】
接着剤前駆組成物PRE−2〜PRE−4の調製
IOA、IRG651、IOTG、及びEtOAcの量が表2に列挙したとおりであることを除き、PRE−1についての記載と同じ方法を用い、接着剤前駆組成物PRE−2〜PRE−4を調製した。
【0097】
【表2】

【0098】
上記の試験方法により、接着剤前駆組成物PRE−1〜PRE−4の各種特性を測定した。DMA試験データを図3に示す;試験結果を表3にまとめる。
【0099】
【表3】

【0100】
可塑剤を含む接着剤前駆組成物の調製
PRE−4と必要量の溶剤とを瓶内で合わせて、接着剤前駆組成物PRE−4をEtOAcに溶解して固形部50重量%とし、この瓶を室温(約22℃)で12時間回転させて、PRE−4の均一な溶液を形成した。均一なPRE−4溶液のそれぞれの試料に、表4に列挙した比率でカプリル酸トリグリセリド(CTG)可塑剤を滴下した。次に、減圧下で100℃に加熱して、一定重量が観察されるようになるまでEtOAc溶剤を除去した。上記の試験方法により、接着剤前駆組成物PRE−4(0)、(10)、(20)、及び(30)を特性評価した。(これらの及び以降のすべてのサンプルにおいて、括弧内の数字(xx)は、接着剤前駆組成物部あたりの可塑剤部を示す)DMA試験データを図4に示す;試験結果を表4にまとめる。
【0101】
【表4】

【0102】
電子線照射による感圧接着剤(架橋反応)の調製
実施例WE−1A
スパンレース不織布ウェブ(商品名SONTARAでDuPont(Wilmington,DE)から入手)を基材(支持体)として得た。接着剤前駆組成物PRE−3を70℃で20分加熱した後、4mil(約100マイクロメートル)の層として基材に対し手作業でナイフコートした。基材は1つの主表面上に厚さ0.8mil(約20マイクロメートル)のポリマーフィルムを有していた;同じ面上にポリマーコーティングとして接着剤前駆組成物をコーティングした。続いて、照射量が16 Megarad(Mrad)になるよう230キロボルト(kV)で操作して、コーティングPRE−3層に電子線を照射した(商品名CB−300でEnergy Sciences社(Wilmington,MA)から市販されている装置を用いる)。これにより接着剤前駆組成物の高分子を架橋させ、接着剤前駆組成物を感圧接着剤に転換させることにより、不織布基材と、かかる基材の主表面上に配置された感圧接着剤(「PSA」)層とを含む感圧接着剤テープを用意した。
【0103】
上記のゲル濃度%法により実施例WE−1Aの感圧接着剤テープの試験片を試験したところ、得られるゲル含有量は62.6重量%であった。実施例WE−1Aの感圧接着剤テープを上記の剥離接着力試験で試験したところ、結果は269g/インチ(106g/cm)であった。
【0104】
実施例WE−1B〜WE−1D、WE−2及び比較例
接着剤前駆組成物PRE−3の追加のサンプルでコーティングし、電子線照射線量を表5にまとめたように実施したことを除き、実施例WE−1Aに記載した電子線照射により処理した。接着剤前駆組成物PRE−2のサンプルで同様にコーティングし、表5に列挙した様々な照射線量で電子線照射した。同様に接着剤前駆組成物PRE−1のサンプルでコーティングし、様々な照射線量で電子線を照射した。しかしながら、接着剤前駆組成物PRE−1を用いたサンプルに関しては、電子線照射では、適度にネットワーク化された生成物の生成は確認されなかった(例えば、架橋させたポリマー生成物を試験表面に接着させた後、これから脱着させたときに後に残される量による判断)。したがって、PRE−1接着剤前駆組成物の分子量(約24,400)は、架橋により、許容され得る感圧接着剤を生成させるには、低すぎることが明らかとなった。したがって、本明細書において、接着剤前駆組成物PRE−1から作製したサンプルは「比較例」と表記する。
【0105】
接着剤前駆組成物PRE−3及びPRE−2から作製した実施例サンプルの180°剥離接着強さの試験データを表5に列挙する。
【0106】
【表5】

【0107】
試験基材(ステンレス鋼)からの剥離接着力試験に加え、PSAには、定性的な皮膚への接着試験も行った。このようなPSAサンプルの多くは皮膚に対し良好な接着能を示しただけでなく、優しく皮膚から除去することもできた(すなわち、ボランティにより申告された不快感は最小限に抑えられていた)。特に、実施例WE−1Aは一般的な性質について優れた特性を示し、更には皮膚から取り外した後に皮膚に数回再接着させることもできた。
【0108】
可塑剤を含む実施例PSA
上記のように、可塑剤を様々な量で含む接着剤前駆組成物PRE−4(10)、PRE−4(20)、及びPRE−4(30)の試料で支持体をコーティングし、実施例WE−1Aに記載したように、電子線照射により処理した。使用する電子線量は16〜28Mradに変化させた。定性的な試験において、得られるPSAは、典型的には人間の皮膚から剥がすときの感触が優しかった。可塑剤を最も高濃度で含むものでは、後に残る接着剤がわずかに増えた。
【0109】
接着剤前駆組成物及びその他のモノマーを使用する実施例PSA
接着剤前駆組成物PRE−5及びPRE−5(10)の調製
EHAをモノマーとして使用した(IOAの代わりに)ことを除き、PRE−3に用いたのと同じ方法により組成物PRE−5を作製した。次に、PRE−4(10)について用いたのと同じ方法を用い、可塑剤(CTG)を添加して接着剤前駆組成物PRE−5(10)を形成した。
【0110】
接着剤前駆組成物PRE−6及びPRE−6(10)の調製
DDAをモノマーとして使用し(IOAの代わりに)、反応成分比が表6に示すとおりであること除き、PRE−3に用いたのと同じ方法により組成物PRE−6を作製した。次に、PRE−4(10)について用いたのと同じ方法を用い、可塑剤(CTG)を添加して接着剤前駆組成物PRE−6(10)を形成した。
【0111】
【表6】

【0112】
実施例WE−3
接着剤前駆組成物PRE−5(10)を使用し、コーティング時のナイフコートのギャップを7milに設定し、電子線を200KVに設定したことを除き、WE−1Aと同じ方法でPSAサンプルWE−3を作製した。得られた実施例WE−3の感圧接着剤テープを上記の剥離接着力試験で試験したところ、276g/インチ(109g/cm)の結果が得られた。
【0113】
実施例WE−4
接着剤前駆体PRE−6(10)を使用し、コーティング時のナイフコートのギャップを7milに設定し、電子線を240KVに設定したことを除き、WE−1Aと同じ方法でPSAサンプルWE−4を作製した。得られた実施例WE−4の感圧接着剤テープを上記の剥離接着力試験で試験したところ194g/inch(77g/cm)の結果が得られた。
【0114】
【表7】

【0115】
親水コロイドを含む接着剤前駆組成物及び実施例PSA
接着剤前駆組成物シリーズPRE−7の調製
PRE−3と同じ方法、かつおよそ同じ組成で組成物PRE−7を作製した。次に、組成物PRE−4(10)を作製したのと同じ方法により、10部の可塑剤(CTG)を組成物PRE−7に加えた。組成物PRE−7(10)を様々な比率で親水コロイド(CMC)と混合して、表8に示すように、様々な親水コロイド含有接着剤前駆組成物を形成した。接着剤前駆組成物をローラーで6時間混練した。(下記のすべての試料において、接着剤前駆組成物中の親水コロイドの部は角括弧[yy]中に示す;可塑剤の部は丸括弧で示す。)
【0116】
【表8】

【0117】
実施例WE−5A〜WE−5E
コーティング中のナイフコートギャップを7mil(4milに代えて)に設定したことを除き、サンプルWE−1Aに使用したものと同じ方法でPSAサンプルWE−5A〜WE−5Eを作製した。実施例の接着テープを、上記の剥離接着力試験で試験したところ、下記に示す結果が得られた:
【0118】
【表9】

【0119】
熱により開始される、接着剤前駆組成物の調製(第1の合成反応)
接着剤前駆組成物PRE−101の調製
薄く色のついたガラス瓶で100部(グラム)のIOAモノマー、0.4gのAeBP、0.14gのVA67、0.14gのIOTG、及び100gのEtOAcを合わせ、反応混合物を形成した。振盪機を使用してこの混合物を十分に混合して、均質な溶液を形成した。溶液に窒素ガスを10分間吹き込んだ。瓶にしっかりと栓をして、60℃で一定に維持した水を入れた回転装置にこの瓶を設置し、反応を進行させた。約24時間の反応時間後、回転装置からガラス瓶を取り出し、開栓して大気/酸素を瓶内に流入させることにより反応を停止させた。
【0120】
接着剤前駆組成物PRE−102〜PRE−107の調製
IOA、AeBP、VA67、IOTG、及びEtOAcの部が表10に列挙したとおりであることを除き、PRE−101についての記載と同じ方法を用い、接着剤前駆組成物PRE−102〜PRE−107を調製した。(試料106i〜106vはAeBPの量のみを変えた)
【0121】
【表10】

【0122】
上記の試験方法により、接着剤前駆組成物PRE−101〜PRE−107の分子量及び重合度を測定した。これらの分子量及び重合度を表11にまとめる。
【0123】
【表11】

【0124】
光架橋による感圧接着剤(架橋反応)の調製
実施例WE−101
90部の接着剤前駆組成物PRE−106iiiを、10部のCTG可塑剤と、均質な溶液が得られるまで混合した。次に、コーティングギャップ約10milとした実験用ナイフコーターを用い、2014年の時点で3M社(St.Paul MN)から商品名KIND REMOVAL SILICONE TAPEで市販されている製品に見られるテープ支持体を、手作業により溶液でコーティングした。次に、70℃に設定した炉に、コーティングしたテープ支持体を、(コーティングした面を上にして)20分間放置し、溶剤を除去した。その後、コーティングしたテープ支持体に、総線量約270mJ/cmで高強度紫外線照射(UV−B、「D」球)した。得られた感圧接着剤テープは、約220グラム/インチの剥離接着力を示すことが判明した。
【0125】
無溶剤接着剤前駆組成物の調製
100部のIOA、0.3部のAeBP、0.16部のIOTG、及び各種熱開始剤及び老化防止剤から反応混合物を調製した。第1の反応工程で反応混合物を反応させた後、追加の各種熱開始剤及び老化防止剤を添加し、第2の反応工程を実施した。(使用した熱開始剤及び老化防止剤の組み合わせと、2工程手順とは、米国特許第7968661号(Ellis)の実施例に概説される一般的な教示に従った。)AeBP及びある種の熱開始剤は、確実に溶解させるためにEtOAcに含ませた。したがって、この名目上無溶剤の反応混合物にはごく少量の溶剤が存在した。このようにして得られた接着剤前駆組成物は約75,400グラム/モルの分子量(M)を有した。
【0126】
この接着剤前駆組成物を100℃の真空炉で2時間乾燥させた後、固形分約50%になるようEtOAcに溶解した。(コーティングのための組成物の加熱を必要とすることなく、手作業でのコーティングを容易にするために、組成物を溶剤に溶解した。)均質な溶液が得られるまで、90部のかかる接着剤前駆組成物を10部のCTG可塑剤と混合した。次に、コーティングギャップ約3milとした実験用ナイフコーターを用い、テープ支持体を手作業により溶液でコーティングした。次に、70℃に設定した炉に、コーティングしたテープ支持体を、(コーティングした面を上にして)20分間放置し、溶剤を除去した。その後、コーティングしたテープ支持体に、総線量約180mJ/cmで高強度紫外線照射(UV−B、D球)した。得られた感圧接着剤テープは、約163グラム/インチの剥離接着力を示すことが判明した。このPSAに定性的皮膚接着試験も実施したところ、皮膚から剥がす際に感じられる刺激は優しいものであったことが判明した。
【0127】
湿潤粘着性接着試験
接着剤前駆組成物を、無溶媒の手順で、上記とほぼ同様にして作成した。接着剤前駆組成物は、およそ40000g/moleの実測数平均分子量を有する、本質的に直鎖状のポリ(エチルヘキシルアクリレート)高分子を含んでいた。カプリル酸トリグリセリド(CTG)可塑剤を、接着剤前駆組成物に混ぜ、pEHA/CTG重量比を95/5にした。商品名RED DOT ELECTRODE 2560で3M社(St.Paul MN)から市販されている製品の支持体として用いられている、一般的な種類のポリエチレン独立気泡フォーム基材を、接着剤前駆組成物でコーティングした。フォーム基材の厚さは、およそ1.6mmと推定された。接着剤前駆組成物で、フォーム基材の表面を、最終的な厚さがおよそ75μmになるようにコーティングした。次いで、コーティングした接着剤前駆組成物に、220kVで、12Mradの線量の電子線を照射して高分子を互いに架橋させ、接着剤前駆組成物をPSAに変換した。2種類の異なる実施例サンプルセットを作成した。一方(結果として得られたデータセットにおいて「E−1」と表示した)は、フォーム基材の表面(その上に接着剤前駆組成物が付着している)が下塗りされたサンプルであり、他方(結果として得られたデータセットにおいて「E−2」と表示した)は、フォームが下塗りされていないサンプルであった。
【0128】
次いで、上に電子線硬化PSAを有するフォーム基材サンプルを、湿潤粘着試験法に記載したようにして電極に変換し、次いで湿潤粘着試験法に従って試験した。実施例電極の寸法は、湿潤粘着試験法に記載したように、およそ3.5×4.0cmであった。3種類の市販の電極を、比較例EC−1、EC−2、及びEC−3として試験した。比較例EC−2の電極は、実施例の電極と、ほぼ等しい寸法及び形状を有していた。比較例EC−1の電極は、実施例の電極よりも大きく(およそ5.0×5.5cm)、似た形状(角が丸い長方形)を有していた。比較例EC−3の電極は、長さ方向がおよそ4.9cm、幅方向がおよそ4.5cmであり、やや涙滴状であった。試験結果を図5に示す。
【0129】
空気漏れ試験
接着剤前駆組成物を、湿潤粘着性接着試験の項に記載したようにして作成した。接着剤前駆組成物で、弾性ポリウレタンフィルム基材の表面を(およそ75μmの最終被膜厚さまで)コーティングし、電子線で硬化させた。ポリウレタンフィルム基材の厚さはおよそ25μmであり、商品名TEGADERMで3M社から市販されている製品で用いられているフィルム基材とほぼ同様であった。3種類の異なるサンプルセットを作成した。サンプルセットは、それぞれ10、12、及び14Mradの電子線で硬化させたことを除き、同様であった。これらの実施例サンプルは、S−10、S−12、及びS−14と表示した。サンプルを試験装置上に置き、上記の空気漏れ試験方法の項に記載したようにして試験した。様々な市販の接着剤ドレープを、比較例として試験した。更に、(本明細書において開示された種類ではない)様々なPSAを入手し、実施例に用いたものと同じ種類のポリウレタンフィルム基材をコーティングした。これらも比較例として試験した。試験結果を図6に示す。(市販のドレープ、及び他の様々なPSAでできたドレープを、EC−A〜EC−Gと表示する。)
【0130】
前述の実施例は、理解を明確にするためだけに提示されたのであり実施例に由来する不要な制限は存在しないものと認識される。実施例に記載の試験及び試験結果は、予想ではなく実例を意図したものである。実施例のすべての定量的値は、含まれる周知の許容差の観点から近似値であると理解されるべきである。本明細書において開示される特定の例示的な要素、構造、特徴、詳細、構成等を、多くの実施形態において修正及び/又は組み合わせることができることは、自明であろう。すべてのかかる変形例及び組み合わせは、発明者によって、考えられた発明の境界内であると企図され、例示的な図示として役立つように選択された単なる代表的な設計ではない。したがって、本発明の範囲は、本明細書に記載される特定の例示的な構造に限定されるべきではなく、むしろ少なくとも請求項の文言によって説明される構造、及びそれらの構造に相当する構造にまで拡大する。(本明細書に代替物として積極的に記載される要素のいずれも、望ましい任意の組み合わせにおいて、特許請求の範囲に明確に含まれる場合も、又は特許請求の範囲から除外される場合もある。)オープンエンド言語で本明細書に記載されているいずれの要素又は要素の組み合わせ(例えば、を含む及びその派生体)も、クローズエンド言語(例えば、からなる及びその派生体)並びに一部クローズエンド言語(例えば、から本質的になる、及びその派生体など)で更に記載されているとみなされる。記載されたとおりの本明細書と、参照によって本明細書に援用されるいずれかの文書の開示内容との間に矛盾又は食い違いが存在する場合、記載されたとおりの本明細書が優先するものとする。本発明の実施態様の一部を以下の項目1−22に記載する。
項目1
支持体を含む陰圧閉鎖創傷療法被覆材であって、前記支持体は、前記支持体の主表面の少なくとも一部分に湿潤粘着感圧接着剤を有し、且つ少なくとも1つの開口部を含み、前記開口部は、前記開口部を通して真空をかけることができるように構成されており、
前記湿潤粘着感圧接着剤は、約25000〜約200000の数平均分子量を有するポリ(メタ)アクリレート高分子を含む接着剤前駆組成物の架橋反応生成物であり、
前記接着剤前駆組成物は、約−20℃未満のTを示し、25℃で約4Pa〜約10000Paの貯蔵弾性率を示す、陰圧閉鎖創傷療法被覆材。
項目2
前記湿潤粘着感圧接着剤が、環状片として設けられ、前記環状片は、前記支持体の外縁の周囲までひろがっており、且つ創傷を取り囲む皮膚に接着するように構成され、前記被覆材が、前記湿潤粘着感圧接着剤によって密閉された密閉創傷床を提供する、項目1に記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材。
項目3
前記支持体の前記開口部が、真空配管を受け入れるように構成され、前記真空配管を通して前記密閉創傷床に部分真空をかけることができる、項目2に記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材。
項目4
前記湿潤粘着感圧接着剤以外に、前記創傷床を密閉するためにシーリング部材を用いない、項目2に記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材。
項目5
前記被覆材が、創傷充填材を含む少なくとも1つの物体を含む、項目1に記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材。
項目6
項目1に記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材と、真空源とを含む陰圧閉鎖創傷療法システムであって、前記陰圧閉鎖創傷療法被覆材が、前記真空源に流体連通するように構成されている、陰圧閉鎖創傷療法システム。
項目7
前記陰圧閉鎖創傷療法被覆材が、前記陰圧閉鎖創傷療法被覆材と前記真空源との間に液体収集容器を含む真空ラインによって、前記真空源に流体連通している、項目6に記載の陰圧閉鎖創傷療法システム。
項目8
前記接着剤前駆組成物の前記ポリ(メタ)アクリレート高分子が、約25000〜約100000の数平均分子量を有する、項目1に記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材。
項目9
前記接着剤前駆組成物が、約100Pa〜約1000Paの貯蔵弾性率を示す、項目1に記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材。
項目10
前記接着剤前駆組成物が、25℃で約10Pa・s〜約800Pa・sの粘度を示す、項目1に記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材。
項目11
前記ポリ(メタ)アクリレート高分子が、前記接着剤前駆組成物の高分子成分の少なくとも約95重量%を占める、項目1に記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材。
項目12
前記ポリ(メタ)アクリレート高分子が、Tが0℃未満の非極性(メタ)アクリレートモノマー単位から本質的になる、項目1に記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材。
項目13
前記ポリ(メタ)アクリレート高分子が、アルキル(メタ)アクリレートモノマー単位から本質的になる、項目1に記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材。
項目14
前記接着剤前駆組成物の前記ポリ(メタ)アクリレート高分子が、実質的に直鎖状の高分子である、項目1に記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材。
項目15
前記湿潤粘着感圧接着剤が、湿潤粘着試験法に従って試験した場合に、少なくとも約3000gのピーク引っ張り力を示す、項目1に記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材。
項目16
前記湿潤粘着感圧接着剤が、前記湿潤粘着感圧接着剤の総重量に基づいて約2重量%〜約10重量%の可塑剤を含む、項目1に記載の接着剤物品。
項目17
前記ポリ(メタ)アクリレート高分子が、少なくとも1種の連鎖移動剤を含むモノマー混合物の第1の合成反応の反応生成物であり、少なくとも一部の前記ポリ(メタ)アクリレート高分子が、少なくとも1つの連鎖移動剤残基を含む、項目1に記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材。
項目18
前記感圧接着剤が、約40〜約70%のゲル含有量を示す、項目1に記載の接着剤物品。
項目19
前記感圧接着剤が、前記接着剤前駆組成物の電子線架橋反応生成物である、項目1に記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材。
項目20
前記感圧接着剤が、前記接着剤前駆組成物の光架橋反応生成物であり、前記架橋反応生成物のうち少なくとも一部の前記ポリ(メタ)アクリレート高分子が、少なくとも1つの光活性化可能な架橋剤残基を含む、項目1に記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材。
項目21
項目1に記載の陰圧閉鎖創傷療法被覆材を、前記陰圧閉鎖創傷療法被覆材の前記湿潤粘着感圧接着剤が創傷を取り囲む皮膚に結合するように皮膚に適用し、密閉創傷床を提供することと;
前記陰圧閉鎖創傷療法被覆材の前記支持体の前記開口部を通して部分真空をかけて前記密閉創傷床に陰圧をかけることと、を含む陰圧閉鎖創傷療法の実施方法。
項目22
前記密閉創傷床における前記陰圧が約−30mmHg〜約−200mmHgの範囲になるように前記部分真空をかける、項目21に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6