特許第6875396号(P6875396)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6875396ディスクブレーキキャリパー、キャリパーの製造方法、及びキャリパー用ばね
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875396
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】ディスクブレーキキャリパー、キャリパーの製造方法、及びキャリパー用ばね
(51)【国際特許分類】
   F16D 55/228 20060101AFI20210517BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20210517BHJP
   F16D 65/097 20060101ALI20210517BHJP
   F16D 65/02 20060101ALI20210517BHJP
   B22C 9/24 20060101ALI20210517BHJP
   F16D 121/04 20120101ALN20210517BHJP
   F16D 125/06 20120101ALN20210517BHJP
【FI】
   F16D55/228
   F16D65/18
   F16D65/097 E
   F16D65/02 B
   B22C9/24 Z
   F16D121:04
   F16D125:06
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-524239(P2018-524239)
(86)(22)【出願日】2016年11月15日
(65)【公表番号】特表2019-501339(P2019-501339A)
(43)【公表日】2019年1月17日
(86)【国際出願番号】IB2016056864
(87)【国際公開番号】WO2017085619
(87)【国際公開日】20170526
【審査請求日】2019年8月8日
(31)【優先権主張番号】102015000073426
(32)【優先日】2015年11月17日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】501016696
【氏名又は名称】フレニ・ブレンボ エス・ピー・エー
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100183232
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 敏行
(74)【代理人】
【識別番号】100176463
【弁理士】
【氏名又は名称】磯江 悦子
(72)【発明者】
【氏名】ファビオ・スコッティ
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ・インサバート
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・テルッツィ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・クリッパ
【審査官】 羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−189188(JP,A)
【文献】 特開2009−041775(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0092481(US,A1)
【文献】 特開平02−186131(JP,A)
【文献】 実開昭62−114226(JP,U)
【文献】 独国特許出願公開第04301684(DE,A1)
【文献】 特開2015−059657(JP,A)
【文献】 特開2010−007686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00−71/04
F16D 121/04
F16D 125/06
B22C 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(Z)を中心として回転可能なディスクに適用可能なディスクブレーキのためのキャリパー(1)であって、
主に周方向に延びる第1側方部分(2a)及び第2側方部分(2b)と、周方向に相互に離間すると共に上記第1及び第2側方部分(2a,2b)の周方向端に配置されてこれらを結合する前部ブリッジ部(4a)及び後部ブリッジ部(4b)とからなるキャリパー本体(2)と、
摩擦材(27)を有し、軸方向にスライド可能な態様で上記キャリパー本体(2)によって支持されて上記ディスクの一側及び他側にそれぞれ配置される一対のパッド(20)と、
各側方部分(2a,2b)において、上記パッド(20)に作用するために上記キャリパー本体(2)によって支持されると共に、圧力中心(22a’,22b’)を有し、上記圧力中心は半径方向に離間すると共に整列している、つまり、上記圧力中心は同じ半径方向(R)上に配置されている、遠位ピストン(22a)及び近位ピストン(22b)と
を備えたことを特徴とするキャリパー。
【請求項2】
各側方部分(2a,2b)において、上記回転軸(Z)を中心とする仮想円周(I)上であって、所定の角距離(A)離れたところに圧力中心(24a’,24b’)を有する前側ピストン(24a)及び後側ピストン(24b)を備え、上記遠位及び近位ピストン(22a、22b)の圧力中心(22a’,22b’)は上記角距離(A)によって定まる角領域内に角度的に包含されている、請求項1に記載のキャリパー。
【請求項3】
上記遠位ピストン(22a)の圧力中心(22a’)及び上記近位ピストン(22b)の圧力中心(22b’)は、上記角距離(A)によって定まる上記角領域を二等分する二等分線(B)上にある、請求項2に記載のキャリパー。
【請求項4】
上記圧力中心(22a’,22b’,24a’,24b’)は上記パッド(20)の外形内に入っている、請求項2又は3に記載のキャリパー。
【請求項5】
上記圧力中心(22a’,22b’,24a’,24b’)は短い方の対角線が半径方向に配されている仮想菱形の頂点にある、請求項2、3又は4に記載のキャリパー。
【請求項6】
上記ピストン(22a,22b,24a,24b)の断面全体が上記パッドの外形内に入っている、請求項2乃至5のいずれかに記載のキャリパー。
【請求項7】
上記キャリパー本体(2)は、
上記第1側方部分(2a)と上記第2側方部分(2b)とを結合し、主に軸方向に延び、かつ、上記前部ブリッジ部(4a)と上記後部ブリッジ部(4b)との間の中間位置に配置されている上側軸方向部分(6a)と、
上記前部ブリッジ部(4a)と上記後部ブリッジ部(4b)とを結合し、主に周方向に延び、かつ、上記第1側方部分(2a)と上記第2側方部分(2b)との間の中間位置に配置されている上側周方向部分(6b)と
を備え、
上記上側部分(6a,6b)は中央部(8)において交差して、軸方向のアーム(6a’,6a'')と周方向のアーム(6b',6b'')とからなるクロス体を形成する、請求項2乃至6のいずれかに記載のキャリパー。
【請求項8】
各軸方向のアーム(6a’,6a'')はそれぞれの側方部分(2a,2b)から中央部(8)に向かって先細の形状を有する、請求項7に記載のキャリパー。
【請求項9】
上記キャリパー本体(2)の上記中央部(8)は、上記遠位ピストン(22a)及び近位ピストン(22b)の圧力中心(22a’,22b’)の半径方向Rに対称に交差する、請求項7又は8に記載のキャリパー。
【請求項10】
前部ブリッジ部(4a)及び後部ブリッジ部(4b)は、上記前側及び後側ピストン(24a,24b)の圧力中心(24a’,24b’)の外側で周方向に配置される、請求項7乃至9のいずれかに記載のキャリパー。
【請求項11】
ディスクブレーキのためのキャリパー(1)の製造方法であって、
重力鋳造法によって、別個のピストン室が設けられたキャリパー本体(2)の半製品(50)を実現するステップと、
上記ピストン室のうちの少なくとも2つを接続するための穴を開けるステップと
を備えたことを特徴とする製造方法。
【請求項12】
重力鋳造によってキャリパー本体(2)を実現するためのロストコア(30)であって、
上記キャリパー本体内にパッドを収容するためのスペースを設けるためのコア本体(31)と、
近位ピストン室(54)及び遠位ピストン室(56)を上記コア本体(31)の各側に実現するために、上記コア本体(31)の一側及び他側から軸方向に延びる中間室コア(32a,32b)と、
上記近位ピストン室コア(32b)から突出して、上記遠位ピストン室コア(32a)の方へと延びる近位ブランチコア(36)及び上記遠位ピストン室コア(32a)から突出して、上記近位ピストン室コア(32b)の方へと延びる遠位ブランチコア(38)と
を備え、
上記近位ブランチコア(36)及び上記遠位ブランチコア(38)は、互いに分離しているそれぞれの自由端(40,42)で終端していることを特徴とするロストコア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ブレーキシステムの分野に関し、特に、本発明は、ディスクブレーキキャリパーに関する。
【背景技術】
【0002】
非常に簡単に言うと、ディスクブレーキは、車輪と共に回転するように一体化されているディスクと、摩擦材を支持する一対のパッドが収容された固定キャリパーとから成る。このキャリパーはピストンを保持してもおり、これらのピストンが、油圧によって作動されることによって、ディスク表面に上記パッドを押しつけ、こうして、摩擦材の作用により制動を得るのである。
【0003】
上記ピストンの数と相対位置は、ディスクブレーキの動作に大きく影響する。例えば、キャリパー剛性(多かれ少なかれ迅速な制動はこれから得られる。)、摩擦材の消耗均一性、等の重要なファクターが、それらに依存している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、特に迅速かつ即時の制動を得ることができるディスクブレーキキャリパーを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、請求項1にしたがって作られたキャリパーによって達成される。請求項1に従属する請求項は異なる実施形態を記載している。
【0006】
本発明によるキャリパーの特徴および利点は、添付の図面にしたがって、非限定的な例として与えられる以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係るディスクブレーキキャリパーを示す。
図2図1のキャリパーの平面図を示す。
図3図1におけるキャリパーのピストンと係合しているパッドを示す。
図4図3のピストンと係合しているパッドの背正面図(rear front view)である。
図5図1のキャリパーにおけるブリッジ部の重心の位置とピストン領域の重心の位置を強調表示した図を示す。
図6】本発明によるキャリパーのパッドの圧力分布を示す。
図7】従来技術によるキャリパーのパッドの圧力分布を示す。
図8】本発明のさらなる態様によるキャリパーのキャリパー本体を製造するためのロストコアを示す
図9】本発明に係るキャリパー本体半製品を示す図である。
図10】本発明に係るキャリパー本体半製品を示す図である。
図11】本発明の別の態様による戻りばねと結合されたパッドを示す
図12図11の戻りばねと結合されたパッドの断面を示す。
図13図11の戻りばねを示す。
図14図11の戻りばねを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
添付の図面を参照すると、参照番号1は本発明の一実施形態に係るディスクブレーキキャリパーを示している。このキャリパーは、回転軸Zを中心として回転可能なディスクを跨いで配置されることが意図されている。
【0009】
以下、文言「軸方向」または「軸方向に」は、ディスクの回転軸Zに平行な方向について使用され、文言「半径方向」又は「半径方向に」は、上記回転軸に関しての半径方向について使用され、文言「周方向」又は「周方向に」は、上記回転軸の周りの円周パターンについて使用される。
【0010】
キャリパー1は、通常はモノリシックの、好ましくは重力鋳造法で作られたキャリパー本体2を備えている。
【0011】
キャリパー本体2は以下のものからなる。
第1側方部分2a及び第2側方部分2b。これらは、キャリパーがディスクに結合したとき、主に周方向に沿って延び(have prevailing extension along the circumferential direction)、このディスクの表面に接する。
前部ブリッジ部4a及び後部ブリッジ部4b。これらは、上記側方部分2a,2bの周方向端に配置され、上記ディスクを跨いでいる。
上記ディスクを跨いで配置された上側軸方向部分6a。この上側軸方向部分6aは上記第1側方部分2aと上記第2側方部分2bとを結合し、主に軸方向に延びており(has predominantly axial extension)、上記前部ブリッジ部4aと上記後部ブリッジ部4bとの間の中間位置に配置されている。そして、
上側周方向部分6b。これは上記前部ブリッジ部4aと上記後部ブリッジ部4bとを結合し、主に周方向に延びており(has predominantly circumferential extension)、上記第1側方部分2aと上記第2側方部分2bとの間の中間位置に配置されている。
【0012】
上記上側部分6a,6bは中央部8において交差して、軸方向のアーム6a’,6a''と周方向のアーム6b',6b''とからなるクロス体を作る。
【0013】
好ましくは、各軸方向のアーム6a’,6a''はそれぞれの側方部分2a,2bから中央部8に向かって先細になっている。
【0014】
キャリパー本体2内、特にその側方部分2a,2bに、それぞれのピストンを収容するピストン室が形成されている。これらのピストンは、主にポンプ本体内に形成される油圧回路によって供給される加圧油により油圧で作動させることができる。
【0015】
キャリパー1はさらに、一対のパッド20を備えている。これらのパッドは、キャリパー本体2内に収容され、上記ピストンのバイアス下で軸方向のスライドを可能とするよう、スライド可能の態様で支持されている。
【0016】
好ましくは、本発明に係るキャリパーは8つのピストンを有しており、これらのピストンは4つずつそれぞれのパッドに対して働く。
【0017】
特に、パッド20は、中間の遠位ピストン22a、中間の近位ピストン22b、前側ピストン24a、及び後側ピストン24bによって付勢されることができる。
【0018】
ディスクの回転軸Zを特定すると、上記前側及び後側ピストン24a,24bの圧力中心24a’,24b’は、回転軸Zを中心とする仮想円周I上であって、所定の角距離A離れたところにある。一方、中間ピストン22a,22bの圧力中心22a’,22b’は、角度的に、上記角距離Aによって特定される角領域内に含まれている。
【0019】
好ましくは、第1の中間ピストン22aの圧力中心22a’は、上記角距離Aによって特定される角領域を二等分する二等分線B上であって、上記回転軸Zから第1の半径方向距離Raのところにある。例えば、遠位中間ピストン22aの圧力中心22a’は上記仮想円周I上にある。
【0020】
さらに、本発明によれば、近位中間ピストン22bの圧力中心22b’は、上記二等分線B上であって、回転軸Zからの距離が上記第1の半径方向距離Raよりも小さい第2の半径方向距離Rbのところにある。
【0021】
換言すれば、遠位中間ピストン22aの圧力中心22a’と近位中間ピストン22bの圧力中心22b’は離間しており、かつ、半径方向Rに沿って半径方向に整列している。
【0022】
パッド20に関して、上記圧力中心22a’,22b’,24a’,24b’は、このパッドの外形(輪郭)内に入っており、好ましくは、短い方の対角線が半径方向に配されている仮想菱形の頂点にある。好ましくは、上記ピストン22a,22b,24a,24bの断面全体がこのパッドの外形(輪郭)内に入っている。
【0023】
パッド20をポンプ本体2に位置決めすると、キャリパー本体2の中央部8は中間ピストン22a,22bの圧力中心22a’,22b’の半径方向Rに、好ましくは対称に、交差する。一方、前部ブリッジ部4a及び後部ブリッジ部4bは、上記前側及び後側ピストン24a,24bの圧力中心24a’,24b’の外側で、周方向に配置される(図5)。
【0024】
都合の良いことに、前部ブリッジ部4a、後部ブリッジ部4b、及び中央部8の重心は上記ピストン22a,22b,24a,24bの重心の近くにあるので、特に剛である(硬くてしっかりした)キャリパー、即ち、特に迅速かつ強力な制動をもたらすことのできるキャリパーとなる。
【0025】
さらに、有利なことに、制動中、上記パッド上の負荷分布は、従来技術による通常のパッド上の分布(図7)に対して、特に均一である(図6)。このことは、本発明によるキャリパーにおいて、摩擦材の異常で不均一な消耗を低減し、制動作用を改善することを可能にする。
【0026】
本発明のさらなる態様によれば、本発明に係るキャリパー本体の鋳造時に、ロストコア30が使用される。このロストコア30は、十字(クロス)状のコア体31を備える。このコア体31は、上記キャリパー本体内に上記パッドを収納するためのスペースを形成することを意図したものであり、上記中間ピストン22a、22b用の室を作るための中間室コア32a,32bと、上記前側及び後側ピストン34a,34b用の室を作るための側室コア34a,34bとが上記コア体31から軸方向一方の側及び他方の側に突出している(図8)。
【0027】
好ましくは、上記コア30は、加圧油供給回路の回路ブランチ(分枝)を作るために少なくとも2つのピストン室コアを接続する少なくとも1つの回路ブランチコアを含んでいる。
【0028】
具体的には、コア30は、近位ピストン室コア32bから突出して遠位ピストン室コア32aに向かって延びている近位ブランチコア36と、遠位ピストン室コア32aから突出して近位ピストン室コア32bに向かって延びている遠位ブランチコア38とを有する。
【0029】
上記近位ブランチコア36及び上記遠位ブランチコア38は、それぞれの自由端40,42で終端している。これらの自由端は互いに非常に近接しているが、離れている。つまり、上記近位ブランチコア36及び上記遠位ブランチコア38は、互いに離れてはいるが、互いの先端のところにある。
【0030】
コア30を除去した後、鋳造から、キャリパー本体の半製品50が得られる。このキャリパー本体半製品50には、側方部分2a,2bに、近位中間ピストン22b及び遠位中間ピストン22aをそれぞれ収容するための近位ピストン室52及び遠位ピストン室54と、前側ピストン24a及び後側ピストン24bをそれぞれ収容するための前部ピストン室56及び後部ピストン室58とが設けられている。
【0031】
さらに、近位回路ブランチ60が近位ピストン室52から遠位ピストン室54へ向けて延び、遠位回路ブランチ62が遠位ピストン室54から近位ピストン室52へ向けて延びている。
【0032】
このキャリパー半製品50において、近位回路ブランチ60は遠位回路ブランチ62と交差(intercept)しない。即ち、これらのブランチ60,62は、それぞれのブランチコア36,38同様に、分離されている。
【0033】
上記キャリパー半製品50は材料除去による処理を受ける。具体的には、第1の穴を開け、近位回路ブランチ60を遠位回路ブランチ62から分離している材料をキャリパー本体から除去し、これにより両ブランチを連通つまり接続する(図10)。
【0034】
好ましくは、前部ピストン室56を後部ピストン室58に連通させるために、第2の穴をさらに開ける。好ましくは、第1の穴を開けるのと同時に、同じ穿孔軸Fに沿って、第2の穴を開ける。
【0035】
このようにして、キャリパー本体半製品70が得られる。このキャリパー本体半製品70では、ポンプ本体2に形成された近位ブランチ60及び遠位ブランチ56によって近位ピストン室52が遠位ピストン室54に接続されると共に、接続パイプ72によって前部ピストン室56が後部ピストン室58に接続されている。接続パイプ72は近位ブランチ60及び/又は遠位ブランチ62と交差する(intercept)。
【0036】
接続ブランチ72は前ギャップ74を有する前部4a及び後ギャップ76を有する後部4bへと通じている。後ギャップは塞がれる(栓がされる)ことになっている。一方、キャリパー本体2の一側にある前ギャップ74は、ブリッジパイプ78を介して、このキャリパー本体の他側にある前ギャップ74’に接続されることが意図されている。ブリッジパイプ78は、ポンプ本体2の外側に配置される管によって構成されている(図1)。
【0037】
本発明の別の態様によれば、上記パッド20は、少なくとも1つのばね80、好ましくは一対の同一ばね80によって、それぞれの静止位置の方へと永久的に付勢されている。上記ばね80は、好ましくは、適切な形状に形成されたスチールシートを曲げることによって形成される。
【0038】
パッド20は、支持板21と摩擦材27とを備えている。支持板21は、ピストンの作用のための外面23と、その反対側の内面25とを有し、摩擦材27は支持板21によって上記内面25上に支持されている。
【0039】
支持板21は、パッド20を摺動自在に支持するための小穴(鳩目穴)が設けられた近位エッジ27と、側面31,33と、ばね80が取り付けられる遠位エッジ35とを有する。
【0040】
ばね80(これは、両パッド20に同時に作用する)は、中央ストリップ82を備えている。この中央ストリップ82は、ばね80がキャリパー本体2に取り付けられたとき、ディスクを跨いで両パッド20間を軸方向に延びる。
【0041】
上記中央ストリップ82は、各端にカール84を形成するよう両端で折り曲げられ、続いて、パッド20の遠位エッジ35に接触するための当接平面(abutment plane)86内を延びる。
【0042】
ばね80は中央に配置された連結部88をさらに備えている。この連結部88は、2対90の翼部92を備えている。これら2対90は、凹部94を形成する中央ストリップ部分に、上記中央ストリップ82と並行して配置されている。
【0043】
革新的なことに、本発明に係るキャリパーは特に剛であり、したがって、迅速かつ強力にブレーキを掛けることを可能とする。このような挙動(behavior)は、さらに、ブリッジ部の重心に非常に近接した重心を定めるピストンの配置によって与えられる。
【0044】
さらに、摩擦材の消耗及びブレーキバンド上の圧力分布は、有利なことに、均一である。
【0045】
さらなる有利な態様によれば、ブレーキキャリパーの製造方法は、非常に信頼性があるものであり、特に、ピストン室間の油圧接続を形成するためにキャリパー本体へ穴を開けることは、鋳造時に破損しやすい脆弱部分をコアが有しないようにできる。
【0046】
当業者は必要に応じて、次に続く特許請求の範囲で定義された保護範囲に包含される全ての変更を上述のキャリパーに加えることができることは明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14