(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875405
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】斜板角センサ
(51)【国際特許分類】
F04B 1/22 20060101AFI20210517BHJP
F04B 53/00 20060101ALI20210517BHJP
F03C 1/253 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
F04B1/22
F04B53/00 J
F03C1/253
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-534922(P2018-534922)
(86)(22)【出願日】2016年12月7日
(65)【公表番号】特表2019-505717(P2019-505717A)
(43)【公表日】2019年2月28日
(86)【国際出願番号】EP2016080125
(87)【国際公開番号】WO2017121545
(87)【国際公開日】20170720
【審査請求日】2019年11月14日
(31)【優先権主張番号】102016200234.1
(32)【優先日】2016年1月12日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513033696
【氏名又は名称】ダンフォス パワー ソリューションズ ゲーエムベーハー ウント コンパニ オーハーゲー
【氏名又は名称原語表記】Danfoss Power Solutions GmbH&Co.OHG
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】バーナ,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】マルシュ,ズエニエ
(72)【発明者】
【氏名】ラフレンツェン,ハイコ
【審査官】
松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−180655(JP,A)
【文献】
実開昭57−150277(JP,U)
【文献】
特開2005−299640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 1/00−7/06
F04B 25/00−37/20
F04B 41/00−41/06
F03C 1/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッド状のフィードバックリンク(12)が取り付けられた、旋回可能な斜板(3)を含む、可変容積型油圧ユニット(1)用の斜板角センサ(10)であって、センサ軸(18)のまわりに回転可能なマグネット担体(13)に取り付けられたマグネット(16)と、前記マグネット(16)の向きを検出するためのセンサ(15)とを含む斜板角センサ(10)において、
リンク機構要素(11)を含み、前記リンク機構要素(11)は、前記斜板(3)の旋回により、前記リンク機構要素(11)が前記フィードバックリンク(12)を介して移動して、前記マグネット担体(13)が回転するように、前記フィードバックリンク(12)と前記マグネット担体(13)との間に機械リンク機構を形成することを特徴とする斜板角センサ(10)。
【請求項2】
前記リンク機構要素(11)は、前記フィードバックリンク(12)とスライド可能に密着して、前記フィードバックリンク(12)を囲む、U字形状の細長い穴部分(20)と、2つの脚部(21)とを有するばねを含み、前記脚部(21)の端部(22)は、前記マグネット担体(13)に連結される、請求項1に記載の斜板角センサ(10)。
【請求項3】
前記リンク機構要素(11)は、前記フィードバックリンク(12)とスライド可能に密着して、前記フィードバックリンク(12)を囲む細長い穴部分(20)と、隣接する脚部(21)とを含み、前記脚部(21)の端部(22)は、前記マグネット担体(13)に連結される、請求項1に記載の斜板角センサ(10)。
【請求項4】
前記リンク機構要素(11)の前記細長い穴部分(20)の長さは、前記フィードバックリンク(12)の隣接する直径(19)よりも大きい、請求項2または3に記載の斜板角センサ(10)。
【請求項5】
前記マグネット担体(13)から突出する前記リンク機構要素(11)の前記端部(22)は、少なくとも90°の角度で曲げられる、請求項1、2、4のいずれか一項に記載の斜板角センサ(10)。
【請求項6】
前記リンク機構要素(11)は、方形、円形、または長円形の断面を有するトーションタイプのリンク機構ばねである、請求項1、2、4、5のいずれか一項に記載の斜板角センサ(10)。
【請求項7】
前記リンク機構要素(11)の前記端部(22)は、制御ブロック(14)の内壁(24)とスライド可能に接触する、請求項1、2、4、5、6のいずれか一項に記載の斜板角センサ(10)。
【請求項8】
前記マグネット担体のセンサ軸(18)は、前記フィードバックリンク(12)の長手軸(26)および/または斜板旋回軸(5)に平行である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の斜板角センサ(10)。
【請求項9】
前記マグネット担体(13)は、前記油圧ユニット(1)のハウジング(2)または制御ブロック(14)に置かれる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の斜板角センサ(10)。
【請求項10】
可変容積型油圧ユニット(1)の制御ブロック(14)であって、前記油圧ユニット(1)のハウジング(2)に固定されるのに適し、前記油圧ユニット(1)のフィードバックリンク(12)に連結されるのに適した、請求項1〜9のいずれか一項に記載の斜板角センサ(10)を含む制御ブロック(14)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロッド状のフィードバックリンクが固定して取り付けられた旋回可能な斜板を有する可変容積型油圧ユニット用の斜板角センサに関する。角度センサは、請求項1のプリアンブルに従って、センサ軸のまわりに回転可能なマグネット担体に取り付けられたマグネットと、マグネットの向きを検出するセンサとを含む。
【背景技術】
【0002】
斜板角センサは、油圧モータまたはポンプの可変容積を制御するのに寄与する。米国特許出願公開第2004/0115065A1号明細書は、斜板の角度位置が、磁気センサを用いて測定される可変容積型ポンプユニットについて記載している。このために、マグネットが斜板に取り付けられ、斜板と共に回転する。半導体チップは、ポンプのハウジング内でマグネットに近接して配置される。コントローラは、電流を半導体チップに通し、チップ両端間の電圧を求める。この電圧は、ホール効果に基づいて、磁場内でのチップの相対位置によって決まり、マグネットひいては斜板の、チップひいてはハウジングに対する角度を求めるために使用される。
【0003】
独国特許出願公開第10 2013 220 298A1号明細書は、移動要素の位置が、やはり磁気手段によって求められる斜軸油圧ユニットについて記載している。この場合に、マグネットは、斜板の角度位置を制御するサーボピストンに回転可能に取り付けられた中空管の端部に取り付けられる。管は、管軸に対してある角度に向けられた長手方向スリットを有する。サーボピストンに連結されたカムは管の中に突出する。サーボピストンの長手方向の移動により、管がマグネット共に回転する。この回転は、油圧ユニットの制御ブロックに配置された磁気センサによって検出される。
【0004】
独国特許発明第101 19 239C1号明細書では、シリンダブロックを特徴として備えた可変容積型油圧ユニットが記載されており、シリンダブロックは、ユニットの押しのけ容積を制御するために、軸のまわりに旋回可能である。シリンダブロックの傾斜角を測定するための、種類が特定されない回転センサが、油圧ユニットのハウジングに取り付けられる。このセンサの可動部は、シリンダブロックの傾斜軸と同軸上にあり、ワイヤを用いてシリンダブロックの担体に連結される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最新技術から公知の斜板角センサは、斜板または移動要素が回転できる回転中心である回転シャフトに実装できない場合に比較的複雑になり、場所を取り、構造が比較的複雑なために、コストも比較的高くなる。斜板角センサはまた、機械加工ばらつきと、油圧ユニットの使用中の摩耗とにより誤差を生じることがある。また、一般的に、大きな労力をかけなければ、斜板角センサを既存の油圧ユニットに取り付けることができない。
【0006】
本発明の目的は、正確かつ信頼性が高く、同時に、摩耗および製造ばらつきを補償できる可変容量型油圧ユニットを提供することである。さらに、本発明の斜板角センサは、低コストで製造および設置するのに適しており、適用可能な場合に、斜板または斜軸構造タイプの既存の油圧ユニットにうまく設置することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的に対する問題解決策は、請求項1のプリアンブルによる可変容積型油圧ユニットの斜板角センサによってもたらされ、請求項1の特徴記載部分に提示された機構を特徴とする。好ましい実施形態では、この問題解決策は、油圧ユニットのハウジングに取り付けられた制御ブロックに配置され、センサ軸のまわりに回転可能なマグネット担体を含む。好ましくは、リンク機構ばねの形態の機械リンク機構要素は、斜板が旋回することで、フィードバックリンクによりマグネット担体が回転するように、斜板に取り付けられたフィードバックリンクとマグネット担体との間のリンク機構を形成する。マグネット担体の回転により、マグネットは、センサ軸のまわりに回転し、それと共に、測定値、この場合、例えば、センサの両端間の電圧の変化を引き起こす。
【0008】
斜板構造タイプの油圧ユニットおよび斜軸構造タイプの油圧ユニットは、それらの押しのけ容積を変えるために、多くの場合、回転軸のまわりに旋回することができる。それに関して、これらの油圧ユニットの移動要素、例えば、斜板は、駆動手段から離れて配置された中心線のまわりに回転して移動を行う。多くの場合では、旋回中心線は、油圧ユニットの加圧および/または回転要素の領域に配置される。したがって、多くの場合、感知可能な角度センサ手段を中心軸の近くに設置するための十分な空間がない。そのほか、油圧ユニットの構造を変更および/または拡張しないで、角度センサ手段を中心軸の近くに設置する、または角度センサが損傷するのを防止するのは困難である。油圧ユニットの他の構造では、中心軸に近いハウジングの片側は、油圧ユニットを載せることができる、いわゆる「障害のない側」である。したがって、この側/領域は、感知可能なセンサ要素がない。
【0009】
移動要素位置のフィードバックを受け取るために、多くの場合、移動要素上に、移動要素の実際の位置を示すフィードバックリンクが設けられる。好ましくは、フィードバックリンクは、斜板位置を制御ユニットにフィードバックするために、油圧ユニットの制御ブロックの中に突出する。しかし、フィードバックリンク、または移動要素の絶対位置については、移動を制御/調整するために、制御ユニットが直接求めることができない。もっとも、フィードバックリンクは、通常、制御スプールをその初期位置に、例えば、電子制御ユニット(EDC)の制御スプールをその中立位置に案内する、または戻すために使用される。したがって、例えば、作業機械のオペレータまたは制御ユニットによって選択された移動角度値に対する制御はない。通常、フィードバックリンクは、特定の移動力に応じた移動を達成したことを知らせるために、カウンタ信号を制御装置の駆動手段に供給するために使用される。そのため、移動角の制御または測定は行われない。
【0010】
本発明による斜板角センサの機械構成は、斜板のフィードバックリンクの円弧動作をマグネット担体のそのセンサ軸のまわりの回転に変換する。この回転は、磁気センサによって検出されて、電気信号に変換され、この電気信号は、斜板の角度を求めるために、油圧ユニットの制御ブロックに配置された制御ユニットにより使用することができる。フィードバックリンクが円弧上を移動するときの、フィードバックリンクとマグネット担体との間の距離の変動によって引き起こされる、斜板の旋回角とマグネット担体の誘導回転との間の非線形性は、リンク機構要素のスロット、細長いまたは長円形の開口によって補償することができる。これらの非線形性は、完全に幾何学由来のものであり、斜板の旋回軸と、フィードバックリンクの移動中心と、マグネット担体の軸との間の寸法および距離によって決まる。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、斜板角センサのリンク機構要素は、フィードバックリンクを囲み、リンク機構要素の2つの脚部間に細長い開口を形成する長円形の開口部分を有する。リンク機構要素のこの部分は、例えば、脚部または細長い開口の側壁を内側に曲げてフィードバックリンクに押し当てようとする圧縮ばね作用により、フィードバックリンクにスライド可能に密着するのが好ましい。一実施形態では、長円形の、または細長い開口部分は、例えば、2つの隣接する脚部が続く開口、または閉じたU字形状の穴部分として設計することができる。その結果、脚部の端部は、例えば、マグネット担体のスリットに挿入される。本発明の斜板角センサのさらに可能な実施形態では、リンク機構要素は、フィードバックリンクを中心とした、細長い開口の自己調心動作を保証するために、フィードバックリンクに両側で接触する対称構成であるのが好ましい。細長い開口の自己調心とは、細長い開口を形成するリンク機構要素の2つの横部が、フィードバックピンの横面とスライド可能に常に密着するように、それぞれ力をフィードバックピンに向かって作用させることを表す。リンク機構要素の内力により、細長い開口がフィードバックリンクを中心支えとして中心に置かれる。これはまた、例えば、中心位置または任意の他の位置から遠ざかる、フィードバックリンクの両移動方向で、斜板角センサの応答を同一にする。一方、好ましい実施形態では、リンク機構要素の端部またはリンク機構ばねの各端部は、フィードバックリンクから遠ざかる方向を向いた端部でマグネット担体のスリットの側壁のまわりに曲げられる。一実施形態では、脚部の端部は、90°の角度に、または制御ブロックのハウジングまたは壁との任意の接触を回避するために90°を超える角度にさえ曲げられる。これは、摩擦により引き起こされる障害を防止し、それらによって引き起こされる可能性があるヒステリシス効果を弱める。
【0012】
フィードバック要素が中に突出する長円形の開口を画定するリンク機構要素のU字形状部分の長さは、フィードバックリンクの隣接する断面よりも長くなければならない。この開口は、フィードバックリンクが、斜板の回転軸を中心とした円弧を移動するときに、フィードバックリンクとマグネット担体との間の距離の変動を吸収するのに十分でなければならない。
【0013】
好ましくは、U字形状部分の反対側で、マグネット担体から突出するリンク機構要素の端部は、少なくとも90°の角度で曲げられる。これは、リンク機構ばねをマグネット担体上でリンク機構ばねの長手方向に固定するのを保証する。リンク機構ばねの、マグネット担体の軸方向の固定は、例示として、制御ブロックのハウジングの内壁にグローブを形成することで実現することができ、リンク機構要素の端部は、このグローブに挿入され、このハウジングは、本発明の角度センサを支持する。この構成では、リンク機構要素の端部は、制御ブロックの内壁とスライド可能に接触することができる。摩擦を最小化するために、端部が制御ブロックの側壁に小領域だけで接触するように、リンク機構要素の端部を、90°を超える角度で曲げることが好ましい。
【0014】
しかし、当然のことながら、リンク機構要素の端部と制御ブロックの内壁または任意の他の構造物との接触は、本発明を実現するのに必須ではない。これは、リンク機構要素の細長いU字形状の穴部分の長さが、リンク機構要素の長手方向のある程度の移動を吸収するほど十分に長くすることができるからである。また、リンク機構要素の動作/移動は、マグネット担体のスリットの側壁に脚部を押し付けようとし、ある程度の摩擦固定をもたらす。いずれにせよ、リンク機構要素の端部と制御ブロックの内壁との接触は、むしろ、ガタを持たせることができ、その理由は、マグネット担体の回転軸とフィードバックリンクの中心との間の距離だけが、回転角を確定するのに重要だからである。
【0015】
1つの好ましい実施形態では、リンク機構要素は、方形、円形、または長円形の断面を有するトーションタイプのリンク機構ばねとすることができる。リンク機構ばねは、略ヘアピン状に曲げられたばね鋼からなるロッドまたはワイヤで形成することができる。別の実施形態では、ばねは、例えば、ヘアピン状に曲げられた板ばねタイプからなる。さらなる実施形態では、フィードバックリンクとマグネット担体との間のリンク機構要素は、マグネット担体に連結される剛性脚部と、予圧された態様でフィードバックリンクに隣接する、可撓性でばね状の細長いループ部分とを含むと想定することができる。別の好ましい実施形態では、リンク機構要素は、細長い穴部分を形成する比較的剛性の本体を含む。この場合に、例えば、細長い穴部分の内側側壁は、フィードバックリンクの直径よりも短い、隣接する幅を含むことができるが、製造ばらつきおよび摩耗を補償するために圧縮される弾性材料で被覆することができる。
【0016】
フィードバックリンクおよびリンク機構要素自体の製造ばらつきを低減するために、リンク機構要素のうちのフィードバックリンクを囲む部分は、フィードバックリンクが内部に取り付けられていないときに、細長い穴部分の幅が、リンク機構要素によって保持されるフィードバックリンクの断面よりも短いように設計されるのが好ましい。したがって、フィードバックリンクを保持するリンク機構要素の細長い穴の領域は、フィードバックリンクが、斜板の任意の位置において、または斜板の任意の移動方向において、予圧された態様で隙間なく、この領域に保持されるように、可撓性に、または弾性に設計されるのが好ましい。それにより、油圧ユニットの運転寿命中に発生する摩耗だけでなく製造ばらつきも補償することができる。
【0017】
本発明は、構造が単純かつ頑強であり、旋回可能な斜板または斜板の担体に連結されたフィードバックリンクに適切に接近した制御ブロックの側壁に、または油圧ユニットの一画に設置することができる斜板角センサまたは斜軸角センサを提供する。制御ブロックの適切な側壁またはハウジングの他の部分に十分な厚さがあるという条件で、大掛かりな機械加工なしに、油圧ユニットの既存の制御ブロックに後付けすることが可能である。センサは、自己位置決め式であり、ヒステリシスがなく、組立が容易である。また、斜板角センサは、接触する構成要素の機械加工ばらつき、または摩耗を自動的に補償する。
【0018】
本発明概念の範囲を限定しない本発明の例示的な実施形態が
図1〜5に示され、以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の例示的な実施形態による斜板角センサを有する油圧ユニットの概略的な断面図を示している。
【
図2】
図1に示す概略的な断面図の細部を示している。
【
図3】
図2に示すA−A線による、
図1に示す油圧ユニットの一部の概略的な断面図を示している。
【
図4】使用されている例示的なリンク機構ばねが未圧縮の状態で、
図3による断面図を示している。
【
図5】油圧ユニットが非中立動作状態にあり、使用されている例示的なリンク機構ばねが圧縮状態にある
図4の断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の例示的な実施形態による斜板角センサ10を有する可変容積型油圧ユニット1の概略的な断面図を示している。油圧ユニット1は、クレードル軸受4に支持され、一点鎖線で示す斜板旋回軸5のまわりに回転可能な斜板3を収容するハウジング2を含む。斜板3の回転は、通常、電磁気式、機械式、または油圧式アクチュエータを使用するサーボシステム40を用いて制御される。フィードバックリンク12は、斜板3に連結され、油圧ユニット1の制御ブロック14内に突出し、長手軸26(
図2を参照のこと)が、斜板3の回転軸5に平行であるように向きを合わされている。略ロッド状のフィードバックリンク12は、斜板3に堅固に連結されて、斜板3と共に回転し、それにより、駆動シャフト8の軸に対する斜板3の角度位置を返す。フィードバックリンク12は、油圧ユニット1の制御ユニット30の制御スプールに連結されたフィードバックレバー17と相互作用する。そのような制御ユニットおよびその機能は、例えば、独国特許出願公開第10 2004 033 314 B3号明細書に記載されており、したがって、本明細書では詳細に説明しない。
【0021】
油圧ユニット1のハウジング2はまた、いくつかの作動ピストン7を有するシリンダブロック6も収容している。シリンダブロック6は、駆動シャフト8に連結され、駆動シャフト8の軸のまわりに回転可能である。駆動シャフト8は、斜板3の拡張開口9を貫通し、斜板3が駆動シャフト8に対して傾転するのを可能にする。シリンダブロック6から突出したピストン7の端部は、斜板3とスライド可能に接触している。制御ユニット30により始動するサーボシステム40を介して斜板3を傾転させることで、ピストン7のストロークが変更され、すなわち、油圧ユニット1の押しのけ容積が変わり、それと共に、制御ブロック14内のフィードバックリンク12の位置が変わる。可変容積型油圧ユニット1のこれらの特徴および一般的な機能は十分に周知であるので、これらについてのさらに詳細な説明も、本明細書において省略することができる。
【0022】
図1に示す本発明の例示的な実施形態では、油圧ユニット1は、油圧ユニット1のハウジング2に取り付けられた制御ブロック14に収容された斜板角センサ10を含む。角度センサ10は、制御ブロック14の壁内で、長手軸18のまわりに回転可能に支持された、略ロッド状のマグネット担体13を含む。この長手軸18は、フィードバックリンク12の長手軸26に平行であり、さらに、長手軸26は、斜板3の旋回軸5に平行である。マグネット16は、マグネット担体13の一端に堅固に固定され、マグネット担体13と共に回転可能である。磁気回転センサ15は、マグネット16に直接隣接して、制御ブロック14に設けられている。それにより、マグネット16の任意の回転は、センサ15によって検出され、油圧ユニット1の動作を制御するために油圧ユニット1に取り付けられた制御システム(図示せず)によって利用され得る電気信号に変換される。
【0023】
本発明によれば、機械式リンク機構要素11を用いて、フィードバックリンク12とマグネット担体13との間に、リンク機構が形成される。本発明の好ましい実施形態では、下記にさらに詳細に説明するように、リンク機構要素11は、概略的にはヘアピン状に曲げられたリンク機構ばねからなる。
【0024】
以下の図において、同様な構造的特徴部を示すすべての参照数字は続けて使用される。また、リンク機構要素11およびリンク機構ばね11は、同義語として使用される。
【0025】
図2は、
図1による油圧ユニット1の概略的な断面図の細部を示している。制御ブロック14が、制御ブロック14の中に延びるフィードバックリンク12の上側部分と共に示されている。リンク機構ばね11は、フィードバックリンク12から制御ブロック14の壁部分の中に延び、制御ブロック14の壁部分に回転可能に取り付けられたマグネット担体13に連結されている。リンク機構ばね11の脚部21は、例えば、マグネット担体13のスリットに保持され、フィードバックリンク12の円弧移動が、マグネット担体13を回転させるように、マグネット担体13とフィードバックリンク12との間を機械連結している。マグネット16は、マグネット担体13の上面に取り付けられ、リンク機構ばね11が、マグネット担体13を回転させるときに、マグネット担体13と共に回転する。磁気回転センサ15は、制御ブロック14の外で、マグネット16に対向して位置する。センサ15およびマグネット16は、例えば、マグネット16を保護し、好ましくは、さらに油圧ユニット1の内部を封止して、油圧流体の漏洩または埃の進入を防止する非磁性薄膜によって分離される。
【0026】
図3は、
図2に示すA−A線による、
図1に示す油圧ユニットの一部の概略的な断面図を示している。
図3に示す油圧ユニット1は、駆動シャフト8の回転軸に対する斜板3の傾転角が0°である(
図1を参照のこと)中立動作状態にある。
【0027】
図3に示すように、リンク機構ばね11は、フィードバックリンク12の軸方向断面を囲む(
図2も参照のこと)長円形の開口を画定する、閉じたU字形状部分20または細長い穴部分20を有する。リンク機構ばね11の2つの脚部21は、マグネット担体13のベース部のスリット23に保持されている。マグネット担体13から突出したリンク機構ばね11の脚部21の端部22は、
図3に示す実施形態では、約90°の角度をなして曲げられ、制御ブロック14のグローブ25の内壁24とスライド可能に接触している。リンク機構ばね11のこの構成は、フィードバックリンク12を中心とした、リンク機構要素11の調心を支援する。しかし、この構成は、リンク機構要素11の端部22が制御ブロック14の内壁24上で望ましくない摩耗を受けるという欠点を有する。別の実施形態では、
図4および
図5に例示的な態様で示すように、リンク機構ばね11の脚部21の端部22を90°を超える角度で曲げ、かつ/またはリンク機構ばね11の端部22と、油圧ユニット1のマグネット担体13以外の部分との間の任意の接触をなくすことが好ましい。
【0028】
図4は、本発明の好ましい実施形態で使用されるリンク機構ばね11が、圧縮されておらず、最終組立状態ではない
図3による断面図を示している。この図では、リンク機構ばね11の1つの脚部21だけが、マグネット担体13のベース部のスリット23に挿入されている。閉じたU字形状部20、脚部21、および端部22を有するリンク機構ばね11の略ヘアピン形状が見て分かる。端部22は、90°を超える角度で曲げられ、リンク機構ばね11をマグネット担体13のスロット23に固定する働きをする。この実施形態では、リンク機構ばね11の端部22は、制御ブロック14の内壁24と接触せず、マグネット担体13用の穴も含む制御ブロック14の内壁24に設けられたグローブ25内を自由に移動する。
【0029】
リンク機構ばね11は、ばね鋼などの弾性金属で作製されるのが好ましく、方形、円形、または長円形の断面を有することができる。しかし、例えば、強化版のプラスチック材料でできたリンク機構要素11を想定することもできる。
図2、3、5に示す最終組立状態では、リンク機構ばね11のU字形状部分20は、フィードバックリンク12と密着している。リンク機構要素11のU字形状部分20によって形成された長円形の開口は、相対動作、すなわち、マグネット担体13の軸に対するフィードバックリンク12の隔たりの変化を可能にする。これは、斜板3の傾転軸5を中心とし、フィードバックリンク12の軌跡を示す両矢印29によって
図5に示す円弧上でのフィードバックリンク14の移動に対処することを可能にする。
【0030】
リンク機構ばね11のU字形状部分20の両側は、リンク機構ばね11の両方の端部22が、マグネット担体13のスリット23に挿入されたときに、フィードバックリンク12の両側を押す。これは、フィードバックリンク12とリンク機構ばね11との間の確実な接触を常に保証し、任意の製造誤差、またはフィードバック要素12もしくはリンク機構ばね11自体の摩耗を補償することを可能にし、一方で、リンク機構ばね11のU字形状部分によって形成された長円形開口20の方向のフィードバックリンク12の相対自由移動を可能にする。潤滑剤として働く、油圧ユニット1のハウジング2内の油圧流体の漏洩が(不可避的に)存在することで、動作状態下で摩擦が低減される。
【0031】
フィードバックリンク11は、斜板3に固定して連結されるので、本発明の斜板角センサ10の動作中に、斜板3の任意の移動は、フィードバックリンク11によって共有される。したがって、フィードバックリンク12は、斜板3の傾転軸5を中心とした円弧上を斜板3と共に移動する。この移動は、リンク機構ばね11を回転させ、この回転は、マグネット担体13に伝達される。それにより、マグネット担体13の長手軸18は、リンク機構ばね11の回転軸を画定する。マグネット16は、マグネット担体13と共に動作/回転し、したがって、磁気センサ15の検出要素に対するマグネット16の向きを変え、それにより、対応する信号をセンサ15に発生させる。この信号は、所与の基準位置に対する斜板3の実際の角度の測定値を示す。例えば、斜板が油圧ユニット1の駆動シャフト8の軸に直角ならば、これは、通常、中立点、すなわちゼロ角度位置である、すなわち、作動ピストン7による押しのけ容積はない。
【0032】
図5は、油圧ユニット1が非中立動作状態にある
図4の断面図を示しており、使用されている例示的なリンク機構ばね11を圧縮状態で示している。
図5で一部だけが見える斜板3は、
図3および
図4に示す中立位置に対して位置を変えている。フィードバックリンク12はこの移動に追従し、両矢印29で示す円弧に沿って移動した。これは、マグネット担体13に伝えられるリンク機構ばね11の回転を引き起こす。フィードバックリンク12は、マグネット担体13の固定回転軸18に対して凸円弧上を移動するので、斜板3が傾転するときにフィードバックリンク12の中心と、マグネット担体13の回転軸18との間の距離が変わるのは
図5から明らかである。しかし、この結果引き起こされる、斜板3の傾転角に対するマグネットの回転角の非線形応答は、完全に幾何学由来のものであり、この非線形応答は、センサシステムの様々な構成要素間の所与の実際の寸法および距離によって容易に補償することができる。
【0033】
要約すると、本発明は、可変容積型油圧ユニットの斜板の傾転角を求めるための単純かつ頑強なセンサシステムを提供する。そのようなセンサシステムは、比較的軽微な修正および機械加工だけで済ますことができる既存の油圧ユニットにも取り付けることができる。さらに、そのような発明的角度センサは、斜軸構造タイプの油圧ユニットにも取り付けることができる。この結果、フィードバックリンクは、シリンダブロックの移動を案内する移動要素に配置される。